説明

記録媒体搬送装置及び画像形成装置

【課題】描画胴の昇温を抑制しつつ、液滴吐出後の記録媒体に対する乾燥を早める。
【解決手段】描画ドラム170から液滴が吐出され描画された記録媒体が受け渡される第2渡し胴128と、第2渡し胴128に設けられ、描画ドラム170で搬送される記録媒体へ熱風を吹き付けて乾燥させる乾燥ユニット210と、描画ドラム170上に記録媒体がないとき、乾燥ユニット210の熱風が描画ドラム170上へ行かないように乾燥ユニット210を制御する熱風制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体搬送装置を備えた画像形成装置としては、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク液滴を、搬送される記録媒体に対して吐出して、画像形成を行なうものである。
【0003】
このような液体吐出記録方式の画像形成装置において、画像形成後の用紙を乾燥させるプロセスでは、用紙を変形させずに安定的に短時間で乾燥させる必要がある。
【0004】
用紙の乾燥性は、用紙の坪量(例:100〜300gsm)や、用紙へのインク吐出量などに大きく依存することが一般的に知られており、想定される最も厳しい(乾燥しにくい)乾燥条件のケース(厚紙使用を想定など)で乾燥性を確保すべく装置側の工夫がなされている。
【0005】
一方で、用紙として薄紙が用いられる場合では、乾燥しにくい厚紙を基準として制定した乾燥条件では、乾燥能力が高すぎる関係で用紙変形(カックル)が大きくなってしまうため、それぞれの条件に見合った乾燥装置の条件設定が必要となってくる。
【0006】
すなわち、厚紙を乾燥させる場合では、必要な膜強度を得るために要する用紙温度まで加熱するには大容量のヒータが必要となる。これに対して薄紙を乾燥させる場合では、厚紙に対応した乾燥装置では用紙を加熱しすぎで、用紙変形が抑えられない虞がある。
【0007】
ここで、吐出(画像形成)直後の用紙への浸透を抑えられれば、上記のカックル現象は、ある程度抑えられることが分かっている。つまり、吐出直後であれば、浸透が進んでいない状態でおおよそ表面のインクを乾かすことができるので、カックルも抑え易い。また、付与する熱量も抑えられるので、用紙へのダメージも少なく済ますことが可能である。
【0008】
そこで、本出願人は、特許文献1等に示すように、液体吐出記録方式の画像形成装置において、画像を形成する描画部と、画像形成後に主に乾燥する乾燥部との間にある中間搬送部に、搬送される用紙を乾燥する乾燥ユニットを設ける構成を提案している。
【0009】
また、特許文献2には、液体吐出記録方式の画像形成装置において、搬送ベルトで搬送される用紙の移動速度に同期して発熱体の発熱部を移動して、用紙上のインク塗布部を加熱する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−149417号公報
【特許文献2】特開平9−314818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の構成では、中間搬送部で搬送される用紙を乾燥するため、描画部から中間搬送部まで搬送されている間は用紙を乾燥できないので、吐出直後の乾燥とは言い難く、カックルを確実に抑制できない虞がある。同様に、特許文献2の構成でも、搬送ベルトで搬送される用紙を乾燥するため、描画部から中間搬送部まで搬送されている間は用紙を乾燥できない。
【0012】
したがって、液滴吐出後の用紙に対する乾燥をより早める必要がある。ただし、乾燥をより早めると、描画胴にある用紙を乾燥することになるため、描画胴を同時に暖めることになり、各種障害が発生し得るので好ましくない。
【0013】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、描画胴の昇温を抑制しつつ、液滴吐出後の記録媒体に対する乾燥を早める記録媒体搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1態様に係る記録媒体搬送装置は、液滴が吐出され描画される記録媒体を回転して搬送する描画胴と、前記描画胴から描画された前記記録媒体が受け渡される渡し胴と、前記渡し胴に設けられ、前記描画胴で搬送される前記記録媒体へ熱風を吹き付けて乾燥させる熱風乾燥手段と、前記描画胴上に前記記録媒体がないとき、前記熱風乾燥手段の熱風が前記描画胴上へ行かないように前記熱風乾燥手段を制御する熱風制御手段と、を備える。
【0015】
この構成によれば、熱風乾燥手段が、描画胴で搬送される記録媒体へ熱風を吹き付けて乾燥させるため、液滴吐出後の記録媒体に対する乾燥を従来よりも早めることができる。この際、描画胴は一時的に暖められることになるが、描画胴上に記録媒体がないとき、例えば描画胴から描画された記録媒体が渡し胴に受け渡された後は、熱風制御手段が、熱風乾燥手段の熱風が描画胴上へ行かないように制御するため、描画胴の昇温を抑制できる。
【0016】
本発明の第2態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様において、前記渡し胴は、外周面が開口しており、前記熱風乾燥手段は、前記渡し胴の内部に配置され、前記開口から前記記録媒体の描画面へ熱風を吹き付け、前記熱風制御手段は、前記熱風乾燥手段を前記渡し胴の回転軸周りに回転させ熱風の吹き出し向きを変える。
【0017】
この構成によれば、描画胴上に記録媒体がないとき、熱風制御手段により、熱風乾燥手段の熱風が描画胴上へ行かないように熱風乾燥手段を渡し胴の回転軸周りに回転させるため、熱風乾燥手段の熱風を止めなくても、描画胴の昇温を抑制できる。
【0018】
本発明の第3態様に係る記録媒体搬送装置では、第2態様において、前記熱風乾燥手段は、ファンと、前記ファンの吹き出し方向に設けられたヒータが一体とされた乾燥ユニットであり、前記乾燥ユニットは、前記回転軸回りに回転可能に取付けられたシャフトに固定され、前記シャフトを回転させることで、熱風の吹き出し向きを変える。
【0019】
この構成によれば、乾燥ユニット全体を回転させることができるため、乾燥ユニットのファンやヒータ等を個別に制御しなくて済む。
【0020】
本発明の第4態様に係る記録媒体搬送装置では、第3態様において、前記シャフトは、前記渡し胴の外側で回動装置に連結され、前記熱風制御手段は、前記描画胴上に前記記録媒体がないとき、前記回動装置を制御して前記シャフトを回転させ、前記乾燥ユニットの熱風が前記描画胴上へ行かないようにする。
【0021】
この構成によれば、渡し胴の外側にある回動装置を制御することによりシャフトを回転させて乾燥ユニットを回転させることができるため、渡し胴の動作とは別個に乾燥ユニットを動作させることができる。
【0022】
本発明の第5態様に係る記録媒体搬送装置では、第1態様において、前記渡し胴は、外周面が開口しており、前記熱風乾燥手段は、前記渡し胴の内部に配置され、前記開口から前記記録媒体の描画面へ熱風を吹き付け、前記熱風制御手段は、前記熱風乾燥手段を構成するヒータとファンの間を遮断するシャッターである。
【0023】
この構成によれば、描画胴上に前記記録媒体がないとき、熱風乾燥手段の熱風が描画胴上へ行かないようにシャッターでヒータとファンの間を遮断することができるため、ファンを止めなくても、描画胴の昇温を抑制できる。
【0024】
本発明の第6態様に係る記録媒体搬送装置では、第3態様〜第5態様の何れか1つにおいて、前記熱風制御手段は、前記描画胴から描画された記録媒体が渡し胴に受け渡された後、前記熱風乾燥手段を制御して、前記ヒータを停止させ、前記ヒータの停止から時間的間隔をおいて前記ファンの回転を停止させる。
【0025】
この構成によれば、ヒータの残熱でファンが溶けることを抑制することができる。
【0026】
本発明の第7態様に係る記録媒体搬送装置は、第3態様〜第6態様の何れか1つにおいて、前記渡し胴に設けられ、前記記録媒体の温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段の測定温度に従って前記ヒータのオン・オフ時間の長さを制御する、デューティ制御を行う温度制御手段と、を備え、前記温度制御手段は、予め設定された目標管理上限温度と目標管理下限温度の閾値に対して、前記測定温度が上限を越えた際には前記ヒータをオフにする時間を増やし、前記測定温度が下限を下回った際には前記ヒータをオンにする時間を増やし、前記測定温度と、目標管理上限温度と目標管理下限温度の中間値である目標温度との差分に応じた重み付けがなされるフィードバック制御を行う。
【0027】
この構成によれば、ヒータの温度を目標管理上限温度と目標管理下限温度の間でDUTY制御を行うことにより、記録媒体の過剰乾燥を防ぐことができる。
【0028】
本発明の第8態様に係る記録媒体搬送装置では、第7態様において、前記温度制御手段は、前記描画胴上に前記記録媒体がないときに、前記測定温度が前記目標値を越えた場合は前記ヒータをオフし、前記下限を下回った場合には前記ヒータをオンする。
【0029】
この構成によれば、消費電力を低減しつつ、次に行われる印刷で迅速に記録媒体の加熱ができる。
【0030】
本発明の第9態様に係る記録媒体搬送装置では、第7態様又は第8態様において、前記温度制御手段は、前記目標値を、前記記録媒体の種類によって変更する。
【0031】
この構成によれば、記録媒体の種類に応じて最適な乾燥制御を行うことができる。
【0032】
本発明の第10態様に係る画像形成装置では、第1態様〜第9態様の何れか1つに記載の記録媒体搬送装置と、前記記録媒体搬送装置の描画胴上に設けられ、前記記録媒体に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、を備える。
【0033】
この構成によれば、記録媒体搬送装置の描画胴の昇温を抑制しつつ、液滴吐出ヘッドによる液滴吐出後の記録媒体に対する乾燥を早めることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、描画胴の昇温を抑制しつつ、液滴吐出後の記録媒体に対する乾燥を早める記録媒体搬送装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成を示した概略構成図である。
【図2】図2は、本第1実施形態のインクジェット記録装置の主要部である記録媒体搬送装置200を拡大して示す図である。
【図3】図3(A)は、第2渡し胴の斜視図である。図3(B)は、乾燥ユニットを取り除いた第2渡し胴の斜視図である。
【図4】図4は、乾燥ユニットの斜視図である。
【図5】図5は、一方の乾燥装置の一部分解斜視図である。
【図6】図6は、乾燥ユニットを含んだ第2渡し胴の断面図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置及び記録媒体搬送装置の作用を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置及び記録媒体搬送装置の乾燥ユニットにおける乾燥装置を示した図である。
【図10】図10は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置及び記録媒体搬送装置の変形例を示す図であって、乾燥ユニットを含んだ第2渡し胴の断面図である。
【図11】図11は、温度制御手段のヒータに対するDUTY制御についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0037】
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成を示した概略構成図である。
【0038】
インクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体Pの記録面にインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体P上に処理液(インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体P上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0039】
すなわち、図1に示すように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122を備えて構成されている。
【0040】
給紙部112は、記録媒体Pを処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体Pが積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体Pが一枚ずつ処理液付与部114に給紙されるようになっている。記録媒体Pの浮き上がりを防止するために、給紙トレイ150は外面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。
【0041】
本第1実施形態のインクジェット記録装置100においては、記録媒体Pとして、紙種や大きさ(用紙サイズ)の異なる複数種類の記録媒体Pを使用することができる。給紙部112において各種の記録媒体をそれぞれ区別して集積する複数の用紙トレイ(図示省略)を備え、これら複数の用紙トレイの中から給紙トレイ150に送る用紙を自動で切り換える態様も可能であるし、必要に応じてオペレータが用紙トレイを選択し、若しくは交換する態様も可能である。なお、本例では、記録媒体Pとして、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0042】
処理液付与部114は、記録媒体Pの記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含み、処理液とインクとが接触することによりインクと凝集反応を起こし、インクは色材と溶媒との分離が促進され、インク着弾後の滲みや着弾干渉(合一)あるいは混色が発生せず高品位画像の形成が可能となる。なお、処理液としては、凝集剤の他に必要に応じてさらに他の成分を用いて構成することもできる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば、細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
【0043】
このような処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体Pを保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体Pを挟み込むことによって記録媒体Pの先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体Pを処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
【0044】
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。記録媒体Pは、処理液塗布装置156によって記録面に処理液が塗布される。
【0045】
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体Pは、処理液ドラム154から中間搬送部126(第1渡し胴)を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
【0046】
描画部116は、描画ドラム170、及びインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yを備えている。なお、図1では図示を省略しているが、描画ドラム170に対してインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの手前側に記録媒体Pの皺をとるための用紙抑えローラを配置するようにしても良い。
【0047】
描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備え、記録媒体の先端部を保持固定するようになっている。また、描画ドラム170は、外周面に複数の吸引孔を有し、負圧によって記録媒体Pを描画ドラム170の外周面に吸着させる。これにより、用紙浮きによるヘッドとの接触が回避され、用紙ジャムが防止される。また、ヘッドとのクリアランス変動による画像ムラが防止される。
【0048】
このように描画ドラム170に固定された記録媒体Pは、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yからインクが打滴される。
【0049】
インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yは、それぞれ記録媒体Pにおける画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yは、記録媒体Pの搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置されている。
【0050】
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体Pの記録面に向かって各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体P上での色材流れなどが防止され、記録媒体Pの記録面に画像が形成されるようになっている。
【0051】
以上のように構成された描画部116により、記録媒体Pに対してシングルパスで描画を行うことができる。これにより、高速記録及び高速出力が可能であり、生産性を高めることができる。
【0052】
描画部116で画像が形成された記録媒体Pは、描画ドラム170から中間搬送部128(第2渡し胴)を介して、乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
【0053】
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム176と溶媒乾燥装置178とを備えている。
【0054】
乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体Pの先端を保持するとともに、ドラム外周表面に吸引孔(図示省略)を有し、負圧により記録媒体Pを乾燥ドラム176に吸着できるようになっている。
溶媒乾燥装置178は、この乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、IRヒータ180と温風ノズル182の組み合わせを複数配置した構成である。温風ノズル182から記録媒体Pに向けて吹き付けられる熱風の温度と風量を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。記録媒体Pは記録面が外側を向くように、乾燥ドラム176の外周面に吸着拘束されて搬送され、この記録面に対して上記IRヒータ180及び温風ノズル182による乾燥処理が行われる。
【0055】
また、乾燥ドラム176は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を有している。これにより記録媒体Pを乾燥ドラム176の周面に密着保持することができる。また、負圧吸引を行うことにより、記録媒体Pを乾燥ドラム176に拘束することができるので、記録媒体Pのカックルを防止することができる。
【0056】
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体Pは、乾燥ドラム176から中間搬送部130(第3渡し胴)を介して定着部120の定着ドラム184に受け渡される。
【0057】
定着部120は、定着ドラム184、押圧ローラ188(平滑化手段)、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体Pの先端を保持できるようになっている。
【0058】
定着ドラム184の回転により、記録媒体Pは記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、押圧ローラ188による平滑化処理が行われてインクの定着が行われる。
【0059】
押圧ローラ188は、インクが乾燥された記録媒体Pを加圧することによって記録媒体Pを平滑化するものである。また、インラインセンサ190は、記録媒体P上のチェックパターンや水分量、表面温度、光沢度等を計測するものであり、例えばCCDラインセンサを好適に用いることができる。
【0060】
定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122には、排紙ユニット192が設置される。定着部120の定着ドラム184から排紙ユニット192までの間に、第4渡し胴194、搬送チェーン196が設けられている。搬送チェーン196は、張架ローラ198に巻き掛けられている。定着ドラム184を通過した記録媒体Pは、第4渡し胴194を介して、搬送チェーン196に送られ、搬送チェーン196から排紙ユニット192へと受け渡される。
【0061】
また、図1には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100は、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体Pの位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0062】
なお、以上説明した、インクジェット記録装置100の構成のうち、処理液ドラム154と、描画ドラム170と、乾燥ドラム176と、定着ドラム184と、これらの間の各中間搬送部126,128,130等が、本発明の第1実施形態に係る記録媒体搬送装置200を構成する。
【0063】
<中間搬送部(渡し胴)の詳細>
図2に、本第1実施形態のインクジェット記録装置100の主要部である記録媒体搬送装置200を拡大して示し、本第1実施形態に係る記録媒体搬送装置200の特に渡し胴についてさらに詳しく説明する。
【0064】
図2に示すように、記録媒体搬送装置200では、処理液ドラム154、中間搬送部126(第1渡し胴)、描画ドラム170、中間搬送部128(第2渡し胴)、乾燥ドラム176、中間搬送部130(第3渡し胴)及び定着ドラム184が、並んで配置され、それぞれのドラムにより記録媒体Pが搬送され、搬送されるうちに処理液付与、描画、乾燥、定着(硬化)が順に行われるようになっている。
【0065】
各渡し胴126,128,130は、それぞれリブ付きのガイド部材127,129,131を備え、回転軸を挟んで180度対向する方向に延びたアームの先端部の保持爪133,135,137が記録媒体Pの先端部を把持して回転軸の回りを回転し、記録媒体Pの後端部はフリーの状態で、それぞれガイド部材(127,129,131)に沿って記録媒体Pを記録面の裏面側が凸になるようにして搬送するように構成されている。
【0066】
なお、各渡し胴126,128,130は、チェーングリッパを用いて、記録媒体Pを掴んで、裏面側を凸にして搬送するように構成してもよい。
【0067】
次に、各渡し胴126,128,130のうち、第2渡し胴128について詳細に説明するが、その他の渡し胴126,130も同様の構成である。
【0068】
図3(A)は、第2渡し胴128の斜視図である。
【0069】
第2渡し胴128は、インクジェット記録装置100の本体フレーム202に後述する回転軸が回転可能に連結された渡し胴フレーム204と、その回転軸の先端に固定された回転ギア206とを有している。そして、渡し胴フレーム204は、当該フレームと回転ギア206とで本体フレーム202を挟み、回転ギア206の回転によって回転可能とされている。渡し胴フレーム204は、外周面が開口しており、内部(回転軸付近)に熱風乾燥手段としての乾燥ユニット210を有し、搬送中内側を向いている記録媒体Pの記録面(表面)側に熱風を吹き付けて乾燥させる。
【0070】
図3(B)は、乾燥ユニット210を取り除いた第2渡し胴128の斜視図である。
【0071】
乾燥ユニット210は、後述するシャフトを有しており、そのシャフトが渡し胴フレーム204に設けられたシャフト穴212に挿入されて、渡し胴フレーム204に装着される。
【0072】
図4は、乾燥ユニット210の斜視図である。
【0073】
乾燥ユニット210は、ユニットフレーム220に2つの乾燥装置222,224が内蔵されて構成されている。
【0074】
一方の乾燥装置222は、描画ドラム170側に設けられ、そのノズル口226から描画ドラム170で搬送される記録媒体Pへ熱風HWを吹き付けて乾燥させる。他方の乾燥装置224は、乾燥ドラム176側に設けられ、そのノズル口228から第2渡し胴128で搬送される記録媒体Pへ熱風HWを吹き付けて乾燥させる。
【0075】
図5は、一方の乾燥装置222の一部分解斜視図である。なお、他方の乾燥装置224も以下と同様な構成である。
【0076】
乾燥装置222は、ノズル口226側から順に、温度センサ230と、抵抗線ヒータ232と、遮蔽板234と、軸流ファン236と、を備えている。
【0077】
温度センサ230は、ノズル口226から吹き出される熱風HWの温度を測定するものである。抵抗線ヒータ232は、発熱して軸流ファン236の風が当たることにより熱風HWを発生させる。遮蔽板234は、一部が開口しており、当該開口から軸流ファン236の風が抵抗線ヒータ232に当たるようにしつつ、抵抗線ヒータ232の熱が軸流ファン236にいかないように抵抗線ヒータ232と軸流ファン236の間を一部遮蔽している。軸流ファン236は、樹脂製のプロペラを有しており、そのプロペラにより風を発生するものである。
【0078】
図6は、乾燥ユニット210を含んだ第2渡し胴128の断面図である。
【0079】
乾燥ユニット210は、渡し胴フレーム204の回転軸250回りに回転可能にユニットフレーム220に取付けられたシャフト240を有している。シャフト240は、上述したようにシャフト穴212に挿入されて、乾燥ユニット210が渡し胴フレーム204に装着される。シャフト240の先端は、渡し胴フレーム204を回転させる回転ギア206より外側に向かってシャフト穴212から突出し、卍部材242によって挟持されている。この卍部材242の一端は、回動装置としてのソレノイド244に連結されており、上下に移動可能となっている。
【0080】
そして、この卍部材242の一端の上下移動により、シャフト240が回転して乾燥ユニット210が回転する。ただし、この回転が行き過ぎないように、卍部材242にはクラッチ246が連結されている。
【0081】
なお、渡し胴フレーム204の回転軸250は、本体フレーム202に設けられたベアリング252に挿入され、本体フレーム202の外側で回転ギア206に連結されている。また、回転軸250の中に、上述したシャフト穴212が設けられている。ここで、渡し胴フレーム204の回転は、回転軸250を介して回転ギア206により行われ、乾燥ユニット210の回転は、シャフト240を介して卍部材242及びソレノイド244により行われるため、渡し胴フレーム204の動作とは別個に乾燥ユニット210を動作させることができる。
【0082】
<制御系の説明>
図7は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【0083】
インクジェット記録装置100は、通信インターフェース300、システムコントローラ302、プログラム格納部303、メモリ304、センサ305、モータドライバ306、プリント制御部308、画像バッファメモリ310、ヘッドドライバ312等を備えている。
【0084】
通信インターフェース300は、ホストコンピュータ314から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース300にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ314から送出された画像データは通信インターフェース300を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ304に記憶される。
【0085】
メモリ304は、通信インターフェース300を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ302を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ304は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0086】
システムコントローラ302は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ302は、通信インターフェース300、プログラム格納部303、メモリ304、モータドライバ306、熱風制御部320、処理液付与制御部322、乾燥制御部324及び定着制御部326等の各部を制御し、ホストコンピュータ314との間の通信制御、メモリ304の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0087】
メモリ304には、システムコントローラ302のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ304は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ304は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0088】
プログラム格納部303には、各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ302の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部303はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部303は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0089】
モータドライバ306は、システムコントローラ302からの指示にしたがってモータ307を駆動するドライバである。図7には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号307で図示されている。例えば、図7に示すモータ307には、図1に示す処理液ドラム154、中間搬送部126(第1渡し胴)、描画ドラム170、中間搬送部128(第2渡し胴)、乾燥ドラム176、中間搬送部130(第3渡し胴)及び定着ドラム184等の回転を駆動するモータが含まれている。
【0090】
プリント制御部308は、システムコントローラ302の制御に従い、メモリ304内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ312に供給する制御部である。プリント制御部308において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ312を介してインクジェットヘッド172の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0091】
また、プリント制御部308には画像バッファメモリ310が備えられており、プリント制御部308における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ310に一時的に格納される。また、プリント制御部308とシステムコントローラ302とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0092】
ヘッドドライバ312は、プリント制御部308から与えられる画像データに基づいてインクジェットヘッド172の圧電素子に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子に印加して圧電素子を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図7に示すヘッドドライバ312には、インクジェットヘッド172の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0093】
センサ305は、装置内の各部に設けられる各種センサ類であり、図1に示したインラインセンサ190や図5に示した温度センサ230の他、位置検出センサ、圧力センサ等が含まれている。センサ305の出力信号はシステムコントローラ302に送られ、システムコントローラ302は該出力信号に基づいて装置各部に対して制御信号を送り、装置各部の制御が行われている。
【0094】
更に、このインクジェット記録装置100は、熱風制御部320、処理液付与制御部322、乾燥制御部324、及び定着制御部326を備えており、システムコントローラ302からの指示にしたがって、それぞれ、乾燥ユニット210、処理液塗布装置156、溶媒乾燥装置178、及び押圧ローラ188の各部の動作を制御する。
【0095】
<作用>
次に、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置100及び記録媒体搬送装置200の作用を説明する。
図8は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置100及び記録媒体搬送装置200の作用を説明する図である。
【0096】
図8(A)及び(B)に示すように、インクジェット記録装置100(の記録媒体搬送装置200)の熱風制御部320は、印刷ジョブが開始された時に、乾燥ユニット210(の各乾燥装置222,224)を制御して各ヒータ232と各ファン236をオンして、各ノズル口226,228熱風HWを吹き出させる。そして、熱風制御部320は、ソレノイド244を制御してシャフト240を回転させる。これにより、乾燥ユニット210を第2渡し胴128の回転軸250周りに回転させ熱風HWの吹き出し向きを変え、描画ドラム170で搬送される記録媒体Pへ熱風を吹き付けて乾燥させる。なお、この回転の度合いは、乾燥装置222のノズル口226が描画ドラム170に対向するように回転させればよく、例えば、ノズル口226が下向きの時を0度とすると、90度回転させる。より液滴吐出(画像形成)後の記録媒体Pに対する乾燥を早めるという観点から、図8(B)に示すように90度超でインクジェットヘッド172側であることが好ましい。
【0097】
次に、図8(B)及び(C)に示すように、熱風制御部320は、描画ドラム170上に前記記録媒体Pがないとき、例えば描画ドラム170から描画された記録媒体Pが第2渡し胴128に受け渡された後、又は1枚の記録媒体Pの搬送が終わった後、ソレノイド244を制御してシャフト240を回転させる。これにより、乾燥ユニット210を第2渡し胴128の回転軸250周りに回転させ熱風HWの吹き出し向きを変え、乾燥ユニット210の熱風HWが描画ドラム170上へ行かないようにする。なお、この回転の度合いは、乾燥装置222のノズル口226が描画ドラム170に対向しないように回転させればよく、例えば、ノズル口226が下向きの時を0度とすると、45度回転させる。より熱風HWを描画ドラム170に当てないという観点から、45度未満とすることが好ましく、乾燥装置224の配置を考慮しなければ、0度やマイナスの回転角度とすることが好ましい。
【0098】
以上、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置100及び記録媒体搬送装置200によれば、熱風乾燥手段としての乾燥ユニット210が、描画ドラム170で搬送される記録媒体Pへ熱風HWを吹き付けて乾燥させるため、液滴吐出後の記録媒体Pに対する乾燥を従来よりも早めることができる。この際、描画ドラム170は一時的に暖められることになるが、描画ドラム170上に記録媒体Pがないとき、例えば描画ドラム170から描画された記録媒体Pが渡し胴に受け渡された後は、熱風制御部320が、乾燥ユニット210の熱風HWが描画ドラム170上へ行かないように制御するため、描画ドラム170の昇温を抑制できる。また、この際乾燥ユニット210を回転軸250周りに回転制御するため、乾燥ユニット210の熱風HWを止めなくても、描画ドラム170の昇温を抑制できる。
【0099】
なお、描画ドラム170上に記録媒体Pが搬送された直後に、ヒータ232及びファン236を停止すれば、描画ドラム170の昇温を抑制できるものの、ヒータ232の残熱でファン236の溶融する恐れがある。したがって、安全のためには、描画ドラム170から描画された記録媒体Pが第2渡し胴128に受け渡された後、乾燥ユニット210を制御して、ヒータ232を停止させ、ヒータ232の停止から時間的間隔(例えば10分程度)をおいてファン236の回転を停止させる。
【0100】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置及び記録媒体搬送装置について説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置及び記録媒体搬送装置の乾燥ユニットにおける乾燥装置を示した図である。
【0101】
本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置及び記録媒体搬送装置は、第1実施形態と同様の構成を備えているが、第1実施形態と異なり乾燥ユニットが回転しない構成である。
【0102】
その代わり、乾燥ユニットの描画ドラム170側の乾燥装置400において、ファン236とヒータ232との間を遮断する長板状のシャッター402が備えられている。シャッター402は、不図示のソレノイド等に連結され、ファン236とヒータ232との間に乾燥装置400の外側からスライド可能となっている。
【0103】
そして、第2実施形態の乾燥ユニットは、常に、図8(B)に示す状態となっており、描画ドラム170で搬送される記録媒体Pへ熱風を吹き付けて乾燥させる。そして、熱風制御部320は、描画ドラム170上に記録媒体Pがないとき、例えば描画ドラム170から描画された記録媒体Pが第2渡し胴128に受け渡された後、又は1枚の記録媒体Pの搬送が終わった後、ソレノイドを制御してシャッター402をファン236とヒータ232との間にスライドさせる。これにより、ファン236の風をヒータ232及びノズル口226側と遮断し、乾燥ユニットの熱風HWが描画ドラム170上へ行かないようにする。
【0104】
以上、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置及び記録媒体搬送装置によれば、描画ドラム170上に記録媒体Pがないとき、乾燥ユニットの乾燥装置400の熱風HWが描画ドラム170上へ行かないようにシャッター402でヒータ232とファン236の間を遮断することができるため、ファン236を止めなくても、描画ドラム170の昇温を抑制できる。
【0105】
(変形例)
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わせて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
【0106】
例えば、第1実施形態では、乾燥ユニット210の回動装置としてソレノイド244を用いる場合を説明したが、図10に示すように、モータ500を用いるようにしてもよい。
【0107】
また、図7に示すシステムコントローラ302には、温度センサ230の測定温度(記録媒体Pの表面温度)に従ってヒータ232のオン・オフ時間の長さを制御する、デューティ制御を行う温度制御手段を設けるようにしてもよい。この温度制御手段では記録媒体Pの用紙種類等や装置内の温湿度等の条件因子を加味して、ヒータ232を細かくオン・オフすることで能力を細かく制御する。
【0108】
図11は、温度制御手段のヒータ232に対するDUTY制御についての説明図である。すなわち図11(A)及び(B)に示すように記録媒体Pに関して、予め設定された目標管理上限温度と目標管理下限温度に対して、温度センサ230の測定温度が上限を越えた際にはヒータ232をOFFする時間を増やし、温度が下限を下回った際にはヒータ232をONする時間を増やすように駆動時間を制御することで温度差△tを制御し、目標管理上限温度と目標管理下限温度の間に記録媒体Pの表面温度を収める。
【0109】
このとき、測定された記録媒体Pの表面温度と、目標管理上限温度と目標管理下限温度の中間値である用紙目標温度との差分に応じた重み付けがなされるフィードバック制御を行うようにしてもよい。
【0110】
例えば装置内の温湿度の変化によって、同じ熱量を印加しても目標とする記録媒体P(または描画ドラム170)の温度に達しない、あるいは過熱してしまう場合が考えられる。そこで目標温度と実測温度との偏差(残留偏差)を時間軸方向に積分して印加する熱量を制御するPI制御、あるいは更に実測温度の変化を時間で微分した変化速度を加味するPID制御などを用いてもよい。具体的には目標温度を行き過ぎてオーバーシュートする、あるいは目標温度に達しても維持できない等の状況に対して有効である。
【0111】
上記のように本発明では記録媒体Pの表面温度を計測しながらヒータ232をDUTY制御(DUTY補正比率を決める)している。また記録媒体Pの坪量、用紙種、温湿度などの環境、液滴の打滴量等に合わせてDUTY目標値(目標温度)を決定(変更)する。
【0112】
これにより、厚手の記録媒体Pを乾燥させるに足る乾燥能力を備えた乾燥ユニット210を用いながら、薄手の記録媒体Pを乾燥させた際にも乾燥過剰でカックルを生じることがなく、種々の条件(記録媒体Pの坪量、用紙種、温湿度などの環境、液滴の打滴量等)に応じて乾燥ユニット210の乾燥能力を最適な状態に調整することができる。
【0113】
また、上記温度制御手段は、描画ドラム170上に記録媒体Pがないときに、温度センサ230の測定温度が前記目標値を越えた場合はヒータ232をオフし、前記下限を下回った場合にはヒータ232をオンするようにしてもよい。これにより、消費電力を低減しつつ、次に行われる印刷で迅速に記録媒体Pの加熱ができる。
【0114】
また、上記実施形態では水を溶媒として使用する水性インクを用いたインクジェット方式の画像記録装置を例に挙げたが、吐出される液は画像記録・文字印刷用などのインクに限定されず、記録媒体に染み込む溶媒あるいは分散媒を使用している液体であれば種々の吐出液に応用することができる。
【0115】
また、上記実施形態ではCMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては特に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定されない。
【0116】
また、処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。ただし、本実施形態においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。
【0117】
また、乾燥ユニット210は、第2渡し胴128に内蔵される場合を説明したが、第2渡し胴128の上又は下に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0118】
100 インクジェット記録装置
128 中間搬送部、第2渡し胴(渡し胴)
170 描画ドラム(描画胴)
172 インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)
200 記録媒体搬送装置
210 乾燥ユニット(熱風乾燥手段)
222 乾燥装置(熱風乾燥手段)
230 温度センサ(温度測定手段)
232 抵抗線ヒータ
236 軸流ファン
240 シャフト
242 卍部材(回動装置)
244 ソレノイド(回動装置)
246 クラッチ(回動装置)
250 回転軸
305 センサ(温度測定手段)
320 熱風制御部(熱風制御手段)
400 乾燥装置(熱風乾燥手段)
402 シャッター
500 モータ(回動装置)
HW 熱風
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴が吐出され描画される記録媒体を回転して搬送する描画胴と、
前記描画胴から描画された前記記録媒体が受け渡される渡し胴と、
前記渡し胴に設けられ、前記描画胴で搬送される前記記録媒体へ熱風を吹き付けて乾燥させる熱風乾燥手段と、
前記描画胴上に前記記録媒体がないとき、前記熱風乾燥手段の熱風が前記描画胴上へ行かないように前記熱風乾燥手段を制御する熱風制御手段と、
を備える記録媒体搬送装置。
【請求項2】
前記渡し胴は、外周面が開口しており、
前記熱風乾燥手段は、前記渡し胴の内部に配置され、前記開口から前記記録媒体の描画面へ熱風を吹き付け、
前記熱風制御手段は、前記熱風乾燥手段を前記渡し胴の回転軸周りに回転させ熱風の吹き出し向きを変える、
請求項1に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項3】
前記熱風乾燥手段は、ファンと、前記ファンの吹き出し方向に設けられたヒータが一体とされた乾燥ユニットであり、
前記乾燥ユニットは、前記回転軸回りに回転可能に取付けられたシャフトに固定され、 前記シャフトを回転させることで、熱風の吹き出し向きを変える、
請求項2に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項4】
前記シャフトは、前記渡し胴の外側で回動装置に連結され、
前記熱風制御手段は、前記描画胴上に前記記録媒体がないとき、前記回動装置を制御して前記シャフトを回転させ、前記乾燥ユニットの熱風が前記描画胴上へ行かないようにする、
請求項3に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項5】
前記渡し胴は、外周面が開口しており、
前記熱風乾燥手段は、前記渡し胴の内部に配置され、前記開口から前記記録媒体の描画面へ熱風を吹き付け、
前記熱風制御手段は、前記熱風乾燥手段を構成するヒータとファンの間を遮断するシャッターである、
請求項1に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項6】
前記熱風制御手段は、前記描画胴から描画された記録媒体が渡し胴に受け渡された後、前記熱風乾燥手段を制御して、前記ヒータを停止させ、前記ヒータの停止から時間的間隔をおいて前記ファンの回転を停止させる、
請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項7】
前記渡し胴に設けられ、前記記録媒体の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段の測定温度に従って前記ヒータのオン・オフ時間の長さを制御する、デューティ制御を行う温度制御手段と、
を備え、
前記温度制御手段は、
予め設定された目標管理上限温度と目標管理下限温度の閾値に対して、前記測定温度が上限を越えた際には前記ヒータをオフにする時間を増やし、前記測定温度が下限を下回った際には前記ヒータをオンにする時間を増やし、前記測定温度と、目標管理上限温度と目標管理下限温度の中間値である目標温度との差分に応じた重み付けがなされるフィードバック制御を行う、
請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項8】
前記温度制御手段は、前記描画胴上に前記記録媒体がないときに、前記測定温度が前記目標値を越えた場合は前記ヒータをオフし、前記下限を下回った場合には前記ヒータをオンする、
請求項7に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項9】
前記温度制御手段は、前記目標値を、前記記録媒体の種類によって変更する、
請求項7又は請求項8に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置と、
前記記録媒体搬送装置の描画胴上に設けられ、前記記録媒体に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−131065(P2012−131065A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283431(P2010−283431)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】