説明

記録方法

【課題】感熱記録材料を備えた記録媒体に対し、水性インクジェット記録用インクを用いて、オンデマンドで、フェザリング、カラーブリードの無い高画質画像を形成できる記録方法の提供。
【解決手段】支持体の一方の面に、感熱記録層と保護層を積層した感熱記録材料を備えた記録媒体に対し、前処理液を付与する前処理工程と、該記録媒体に、水性インクジェット記録用インクを用いて画像を形成するインクジェット記録工程と、感熱記録材料を加熱する感熱記録工程とを有する記録方法であって、前処理液が、水溶性脂肪族系有機酸、水溶性有機モノアミン化合物、湿潤剤及び水を含有し、インクジェット記録用インクが、水分散性着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水を含有する記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料を備えた記録媒体に対し、水性インクジェット記録用インクを用いて高画質画像を形成できる記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体表面に前処理液を塗布又は吐出した後、顔料インクを吐出して、記録媒体上で顔料を凝集させ、高画質化を図るという画像形成方法が既に知られている。
しかし、今までの画像形成方法では、前処理液を付与する目的が、主に高画質化及びフェザリング、カラーブリード、裏抜け抑制などインクジェット適性を付与するためだけに留まっている。一方、昨今では産業用途向け、とりわけ配送用伝票用紙、ラベル、チケット用紙等の元々感熱記録紙の活用を主体としていた分野へのインクジェット技術の展開も進んでおり、活用する用紙に対して感熱、インクジェット双方の適性が求められるようになってきた。このような分野ではこれまで感熱記録紙をベースにインクジェット適性を印字面の保護層を中心に付与する展開で改良が進められてきているが、主に活性光線による硬化を主体とした溶剤系インクジェットインクに対する印刷適性付与を目的としたものが大半であり、水性インクジェットインクに対しては十分とは言えなかった。
【0003】
特許文献1には、インクジェット画像の色相不良や滲みやインクジェット用インクに起因する感熱記録画像の画像褪色を伴わないインクジェット適性を有する感熱記録材料を得る目的で、感熱紙の感熱記録層に対してインクジェットインクに含まれる溶剤を遮蔽する中間層、インクジェット記録層、感熱記録時のスティッキングを防止する保護層、更に支持体と感熱記録層との間に感熱記録画像の高感度化のための下塗り層を設けて、感熱とインクジェットの複合適性を付与する方法が開示されている。しかし本発明のようにオンデマンドで感熱記録材料を備えた記録媒体に前処理液を付与し、インクジェット適性を持たせた後、連続してインクジェット印刷する方法とは基本構成が異なる上に、水性インクジェットインクに対するインクジェット適性は十分とは言えず、フェザリング、カラーブリード、定着性などの問題は解消できていない。更に感熱記録層の上に複数の層を積層するため感熱記録時に高いエネルギーが必要であり、結果的にサーマルヘッドの寿命を縮め、印刷耐久性にも乏しくなること、記録媒体自体がコスト高となることなど問題点が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、少なくとも感熱記録層と保護層を順次積層した感熱記録材料を備えた記録媒体に対し、水性インクジェット記録用インクを用いて、オンデマンドで、フェザリング、カラーブリードの無い高画質画像を形成できる記録方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、次の1)〜3)の発明によって解決される。
1) 支持体の一方の面に、少なくとも感熱記録層と保護層を順次積層した感熱記録材料を備えた記録媒体に対し、インクジェット記録用前処理液を付与する前処理工程と、該前処理液を付与した記録媒体に、水性インクジェット記録用インクを用いて画像を形成するインクジェット記録工程と、感熱記録材料を加熱する感熱記録工程とを有する記録方法であって、前記前処理液が、水溶性脂肪族系有機酸、水溶性有機モノアミン化合物、湿潤剤及び水を含有し、前記インクジェット記録用インクが、水分散性着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水を含有することを特徴とする記録方法。
2) 前記前処理液中に、更に脂肪族系有機酸塩化合物又は無機金属塩化合物を含有することを特徴とする1)に記載の記録方法。
3) 前記水分散性着色剤が次の(1)〜(3)の何れかを含有することを特徴とする1)又は2)に記載の記録方法。
(1)表面に少なくとも1種の親水性基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を示す顔料(自己分散性顔料)
(2)顔料、顔料分散剤及び高分子分散安定化剤を含有する顔料分散体
(3)顔料を含有するポリマー微粒子の水分散体
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、少なくとも感熱記録層と保護層を順次積層した感熱記録材料を備えた記録媒体に対し、水性インクジェット記録用インクを用いて、オンデマンドで、フェザリング、カラーブリードの無い高画質画像を形成可能な記録方法を提供できる。
また、チケット、ラベル、配送用伝票などを作成するに当たり、感熱記録紙へのインクジェット記録用インクによる印刷がオンデマンドでできる。そのため画像退色のリスクが軽減し、また必要量のみを印字できるためコスト削減にも貢献できる。
更に、水性インクジェット記録用インクを用いるので、安全性や環境対応面での効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を実施するのに好適なラインインクジェット装置の一例を示す図。
【図2】図1の装置のヘッドユニットのヘッド配列を示す概略図。
【図3】図2のインクジェットヘッドの概略拡大図。
【図4】シリアルインクジェット装置の一例を示す図。
【図5】シリアルインクジェット装置の一例を示す図。
【図6】インクジェット装置の制御部の全体ブロック説明図。
【図7】インクカートリッジの一例を示す概略図。
【図8】インクカートリッジのケース(外装)も含めた概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明の記録方法は、少なくとも感熱記録層と保護層を順次積層した感熱記録材料を備えた記録媒体に対し、インクジェット記録用前処理液(以下、前処理液ということもある)を付与する前処理工程と、該前処理液を付与した記録媒体に、インクジェット記録用インク(以下、インクということもある)を用いて画像を形成するインクジェット記録工程と、感熱記録材料を加熱する感熱記録工程とを有する。
また、前処理液としては、水溶性脂肪族系有機酸、水溶性有機モノアミン化合物、湿潤剤及び水を含有し、インクには、水分散性着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水を含有する水性インクを用いる。
前処理液を記録媒体全体に付与し、前処理した直後にインクジェット方式で画像形成することにより、インク中の顔料が前処理液中の有機酸と反応し、記録媒体表面に留まりやすくなるので高品位画像を得ることができる。
【0009】
≪前処理液の組成≫
本発明で使用する前処理液は、水溶性脂肪族系有機酸、水溶性有機モノアミン化合物、湿潤剤、及び水を含有する。更に、脂肪族系有機酸塩化合物又は無機金属塩化合物、を含有することが好ましく、必要に応じて界面活性剤、浸透剤、防腐剤、防錆剤などの添加剤を加えてもよい。
【0010】
<水溶性脂肪族系有機酸>
水溶性脂肪族系有機酸は顔料の凝集(酸析)による表面定着性向上の目的で添加する。
添加量は、前処理液全体の1〜40質量%が好ましく、更に好ましくは3〜30質量%である。添加量が40質量%よりも多いと中和に必要な量の水溶性有機モノアミン化合物を入れられない可能性があり、1質量%よりも少ないと画像品質を向上させる効果が小さくなる可能性がある。
水溶性脂肪族系有機酸としては、水溶性脂肪族系カルボキシル基含有有機酸や水溶性脂肪族系スルホン酸基含有有機酸が好適に用いられる。ここで、脂肪族とは直鎖又は分岐の飽和又は不飽和炭化水素基を含むことを意味する。水溶性脂肪族系有機酸の炭素数は特に限定されないが、溶媒への溶解性の点から1分子あたり6個以下であることが好ましい。
水溶性脂肪族系有機酸における酸基の数は、画像濃度の点から、1分子当たり3個以下であることが好ましく、より好ましくは2個以下、更に好ましくは1個である。
水溶性脂肪族系有機酸としては、次の(I)〜(III)式で表される水溶性脂肪族系カルボキシル基含有有機酸が好適に用いられる。
【0011】
【化1】

[式中、Rは水素原子、又はカルボキシル基により置換されたメチル基を示し、Rはメチル基、カルボキシル基により置換されたメチル基、又は水酸基及びカルボキシル基により置換されたメチル基を示す。]
【化2】

[式中、nは0〜4の整数を示す。]
【化3】

[式中、nは0〜4の整数を示す。]
【0012】
(I)式で表される化合物としては、例えば、乳酸(pKa:3.83)、リンゴ酸(pKa:3.4)、クエン酸(pKa:3.13)、酒石酸(pKa:2.93)等が挙げられる。(II)式で表される化合物としては、例えば、蓚酸(pKa:1.04)、マロン酸(pKa:2.05)、琥珀酸(pKa:4.21)、アジピン酸(pKa:4.42)等が挙げられる。(III)式で表される化合物としては、例えば、酢酸(pKa:4.76)、プロピオン酸(pKa:4.87)、酪酸(pKa:4.82)、吉草酸(pKa:4.82)等が挙げられる。
(I)〜(III)式以外の水溶性脂肪族系カルボキシル基含有有機酸としては、グルコン酸(pKa:2.2)、ピルビン酸(pKa:2.49)、フマル酸(pKa:3.02)等が挙げられる。また、水溶性脂肪族系スルホン酸基含有有機酸としてはタウリン等が挙げられる。
【0013】
<水溶性有機モノアミン化合物>
水溶性有機モノアミン化合物は、水溶性脂肪族系有機酸との中和塩形成の目的で添加する。添加量は、水溶性脂肪族系有機酸に含まれる酸基1モルに対して1.0〜1.5モルが好ましい。より好ましくは1.0〜1.2モルである。該添加量が1.0モルよりも少ないと、画像形成物のドットの絞まりにより白スジが発生することがあり、1.5モルよりも多いと、遊離した水溶性有機モノアミン化合物がインクの浸透を促進して画像濃度を低下させることがある。
水溶性有機モノアミン化合物は、1級、2級、3級、4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。なお、4級アミンとは、窒素原子に4つのアルキル基が置換した化合物を意味する。
水溶性有機モノアミン化合物としては、次の(VI)又は(V)式で表される化合物が好適に用いられる。
【0014】
【化4】

[式中、R、R、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、ヒドロキシエチル基、又はヒドロキシプロピル基を示す。但し、全て水素原子である場合を除く。]
【化5】

[式中、Rはヒドロキシメチル基を示し、Rはメチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はヒドロキシメチル基を示す。]
【0015】
(IV)式で表される化合物としては、例えば、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、等が挙げられる。
(V)式で表される化合物としては、例えば、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
(IV)式又は(V)式以外の水溶性有機モノアミン化合物としては、例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、3−エトキシプロピルアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、3−メトキシプロピルアミン、コリン等が挙げられる。
【0016】
<湿潤剤>
湿潤剤は前処理液の保湿性向上の目的で添加する。
添加量は特に限定されないが、通常、前処理液全体の10〜80質量%、好ましくは15〜60質量%である。80質量%よりも多いと湿潤剤の種類によっては前処理後の記録媒体上で乾燥不良となる可能性があり、10質量%よりも少ないと前処理液塗布工程等で水分蒸発が生じ、前処理液の組成が大きく変わってしまう等の可能性がある。
湿潤剤としては、主に水溶性有機溶剤を用いるが、固体の材料を用いてもよい。
具体例としては、1,2,3−ブタントリオール(bp175℃/33hPa、38質量%)、1,2,4−ブタントリオール(bp190〜191℃/24hPa、41質量%)、グリセリン(bp290℃、49質量%)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa、38質量%)、トリエチレングリコール(bp285℃、39質量%)、テトラエチレングリコール(bp324〜330℃、37質量%)、ジエチレングリコール(bp245℃、43質量%)、1,3−ブタンジオール(bp203〜204℃、35質量%)等が挙げられる。この中でもグリセリン、1,3−ブタンジオールは水分を含んだ場合に低粘度化することや顔料分散体が凝集せず安定に保てるなどの理由により特に好適に用いられる。グリセリン、1,3−ブタンジオールを湿潤剤全体の50質量%以上用いた場合、吐出安定性確保やインク吐出装置の維持装置での廃インク固着防止に優れるため好ましい。
【0017】
必要に応じて前記湿潤剤の一部に代えて、又は前記湿潤剤に加えて、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどの材料を用いることができる。
前記多価アルコール類としては、例えば、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5−ペンタンジオール(bp242℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(bp203℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196〜198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体〜固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6−ヘキサンジオール(bp253〜260℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、mp199〜201℃)、トリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。
【0018】
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(bp135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(bp171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(bp197℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(bp231℃)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(bp229℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(bp132℃)などが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(bp237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン(bp250℃、mp25.5℃、47〜48質量%)、N−メチル−2−ピロリドン(bp202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(bp226℃)、ε−カプロラクタム(bp270℃)、γ−ブチロラクトン(bp204〜205℃)などが挙げられる。
【0019】
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド(bp210℃)、N−メチルホルムアミド(bp199〜201℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(bp153℃)、N,N−ジエチルホルムアミド(bp176〜177℃)などが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン(bp170℃)、ジエタノールアミン(bp268℃)、トリエタノールアミン(bp360℃)、N,N−ジメチルモノエタノールアミン(bp139℃)、N−メチルジエタノールアミン(bp243℃)、N−メチルエタノールアミン(bp159℃)、N−フェニルエタノールアミン(bp282〜287℃)、3−アミノプロピルジエチルアミン(bp169℃)などが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(bp139℃)、スルホラン(bp285℃)、チオジグリコール(bp282℃)などが挙げられる。
【0020】
また、上記材料に加えて、固体の湿潤剤として糖類を添加してもよい。糖類の例としては単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式:HOCH(CHOH)nCHOH(ただし、nは2〜5の整数を表す)で表わされる。〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0021】
<脂肪族系有機酸塩化合物、無機金属塩化合物>
脂肪族系有機酸塩化合物、無機金属塩化合物は顔料の塩析効果促進の目的で添加する。
添加量は前処理液全体の0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは1〜20質量%である。30質量%よりも多いと、脂肪族系有機酸塩化合物や無機金属塩化合物が十分に溶解せずに析出することがあり、0.1質量%よりも少ないと画像濃度向上効果が小さくなることがある。
前記脂肪族系有機酸塩化合物としては、例えば、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸カルシウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム、琥珀酸二ナトリウム、琥珀酸二アンモニウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸カルシウム、クエン酸アルミニウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸アンモニウム、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウム、酒石酸カリウム、DL−酒石酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸カルシウム等が挙げられる。
前記無機金属塩化合物としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸鉄(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛、硝酸ストロンチウム、硝酸マンガン(II)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸コバルト、硝酸ニッケル(II)、硝酸銅(II)、硝酸鉛(II)、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化ニッケル(II)、塩化スズ(II)等が挙げられる。
【0022】
<界面活性剤>
界面活性剤は、記録媒体表面の濡れ性を改質し、画像形成物の画像濃度、彩度及び白ポチを改良する目的で添加する。
添加量は前処理液全体の0.001〜5質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%未満では、界面活性剤の添加効果が小さくなることがあり、5質量%よりも多いと添加量を増やしても効果に違いが見られないことがある。
また、界面活性剤の添加により前処理液の静的表面張力を30mN/mに調整することが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好適に用いられ、特にシリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤は1種を単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。
【0023】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2〜16のものが好ましく、フッ素置換した炭素数が4〜16であるものがより好ましい。フッ素置換した炭素数が2未満では、フッ素の効果が得られないことがあり、16を超えると保存性などの問題を生じることがある。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物、などが挙げられる。
これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は、起泡性が少ないので好ましく、特に次の(1)式で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化6】

[式中、mは0〜10の整数を示す。nは1〜40の整数を示す。]
【0024】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0025】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR(いずれも、DuPont社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)などが挙げられ、これらの中でも良好な印字品質、特に発色性、紙に対する均染性が著しく向上する点から、DuPont社製のFS−300、ネオス社製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW及びオムノバ社製のポリフォックスPF−151Nが特に好ましい。
【0026】
上記の他に、次の(2)〜(10)式で表わされるものも好適に用いられる。
(A)アニオン系フッ素系界面活性剤
【化7】

ただし、式中のRfは下記〔化8〕で示されるフッ素含有疎水基の混合物を表わす。Aは、−SOX、−COOX、又は−POX〔Xは、H、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、又はNH(CHCHOH)など〕を表わす。
【化8】

【0027】
【化9】

ただし、式中のRf′は下記〔化10〕で表わされるフッ素含有基を表わす。Xは、前記(2)式のXと同じ意味を表わす。nは1又は2の整数、mは2−nを表わす。
【化10】

ただし、式中のnは3〜10の整数を表わす。
【0028】
【化11】

ただし、式中のRf′及びXは、前記(3)式のRf′及びXと同じ意味を表わす。
【0029】
【化12】

ただし、式中のRf′及びXは、前記(3)式のRf′及びXと同じ意味を表わす。
【0030】
(B)ノニオン系フッ素系界面活性剤
【化13】

ただし、式中のRfは、前記(2)式のRfと同じ意味を表わす。nは5〜20の整数を表わす。
【0031】
【化14】

ただし、式中、Rf′は、前記(3)式のRf′と同じ意味を表わす。nは1〜40の整数を表わす。
【0032】
(C)両性フッ素系界面活性剤
【化15】

ただし、式中、Rfは、前記(2)式のRfと同じ意味を表わす。
【0033】
(D)オリゴマー型フッ素系界面活性剤
【化16】

ただし、式中、Rf″は、下記〔化17〕で表わされるフッ素含有基を表わす。nは0〜10の整数を表わす。Xは、前記(2)式のXと同じ意味を表わす。
【化17】

ただし、前記構造式中、nは1〜4の整数を表わす。
【0034】
【化18】

ただし、式中のRf″は、前記(9)式のRf″と同じ意味を表わす。lは0〜10の整数、mは0〜10の整数、nは0〜10の整数をそれぞれ表わす。

【0035】
前記シリコーン系界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから容易に入手できる。
【0036】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記(11)式で表わされるポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物、などが挙げられる。
【化19】

ただし、式中の、m、n、a、及びbは整数を表わす。R及びR′はアルキル基、アルキレン基を表わす。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー社)などが挙げられる。
【0037】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、などが挙げられる。
【0038】
<浸透剤>
浸透剤は記録媒体への水溶性有機溶剤の浸透促進の目的で添加する。
浸透剤としては、炭素数8〜11の非湿潤剤性ポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。これらの中でも、25℃の水中において0.2〜5.0質量%の溶解度を有するものが好ましく、特に、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]が好ましい。
その他の非湿潤剤性ポリオール化合物としては、脂肪族ジオールとして、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、などが挙げられる。
【0039】
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類、などが挙げられる。
浸透剤の前処理液における添加量は、0.1〜5.0質量%が好ましい。添加量が0.1質量%未満では、インクを浸透させる効果がなくなることがあり、5.0質量%を超えると、溶媒への溶解性が低い為に溶媒から分離して浸透性を向上させる効果が飽和してしまうことがある。
【0040】
≪前処理工程における前処理の方法≫
前処理工程には、記録媒体表面に前処理液を均一に塗工する塗工方法を用いればよく、特に制限はない。このような塗工方法の例としては、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
前処理工程は、表面が充分乾燥されている記録媒体に対して行っても、乾燥中の記録媒体に対して行ってもよい。尚、前処理した記録媒体に対し、必要に応じて乾燥工程を設けることができる。この場合、ロールヒーター、ドラムヒーターや温風により記録媒体を乾燥することができる。
前処理液の記録媒体へのウェット付着量は、0.1〜30.0g/mの範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜10.0g/mである。付着量が0.1g/m未満では画像品質(画像濃度、彩度、カラーブリード、文字滲み及び白ポチ)の向上効果が殆ど見られないことがあり、30.0g/mを超えると普通紙としての風合いが損われたり、カールが発生することがある。
【0041】
≪インクの組成≫
本発明で用いるインクは、水分散性着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水を含有する。更に、水分散性樹脂、pH調整剤、防腐防黴剤及び防錆剤を含有することが好ましく、必要に応じてキレート試薬、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤などの添加剤を加えてもよい。
【0042】
<水分散性着色剤>
水分散性着色剤としては、耐候性の面から主として顔料が用いられるが、色調調整の目的で耐候性を劣化させない範囲内で染料を含有しても構わない。
着色剤の含有量は、固形分でインク全体の2〜15質量%が好ましく、3〜12質量%がより好ましい。含有量が2質量%未満では、インクの発色性及び画像濃度が低くなってしまうことがあり、15質量%を超えると、インクが増粘して吐出性が悪くなってしまうことがあるため好ましくない。
顔料としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用又はカラー用の無機顔料や有機顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用できる。
有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、特に、水と親和性の良いものが好ましい。
【0044】
上記の中で、好ましく用いられる顔料の具体例を示すと、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
また、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、128、138、150、151、153、183、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2〔パーマネントレッド2B(Ca)〕、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が挙げられる。
【0045】
着色剤が顔料である場合の特に好ましい形態として、次の第1、第2の形態が挙げられる。
(1)第1形態:着色剤は、水不溶乃至水難溶性の顔料を含有するポリマー微粒子の水分散体を含有する。
(2)第2形態:着色剤は、表面に少なくとも1種の親水性基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を示す顔料(以下「自己分散性顔料」と称することもある)を含有する。
前記第1形態の水分散性着色剤としては、上記顔料に加え、ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンを使用することが好ましい。ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンとは、ポリマー微粒子中に顔料を封入したもの、又はポリマー微粒子の表面に顔料を吸着させたものである。この場合、全ての顔料が封入又は吸着している必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲で顔料がエマルジョン中に分散にしていてもよい。ポリマーエマルジョンを形成するポリマー(ポリマー微粒子におけるポリマー)としてはビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリウレタン系ポリマー等が挙げられるが、特に好ましく用いられるポリマーはビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーであり、特開2000−53897号公報、特開2001−139849号公報に開示されているポリマーを使用することができる。
【0046】
前記第2形態の自己分散性顔料は、顔料の表面に少なくとも1種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合するように表面改質されたものである。該表面改質には、顔料の表面に、ある特定の官能基(スルホン酸基やカルボキシル基等の官能基)を化学的に結合させるか、あるいは、次亜ハロゲン酸又はその塩の少なくともいずれかを用いて湿式酸化処理するなどの方法が用いられる。これらの中でも、顔料の表面にカルボキシル基が結合され、水中に分散している形態が特に好ましい。このように顔料が表面改質され、カルボキシル基が結合していると、分散安定性が向上する上に、高品位な印字品質が得られ、かつ印字後の記録媒体の耐水性が向上する。
また、上記自己分散性顔料を含有するインクは乾燥後の再分散性に優れるため、長期間印字を休止し、インクジェットヘッドノズル付近のインク水分が蒸発した場合も目詰まりを起こさず、簡単なクリーニング動作で容易に良好な印字が行なえる。
上記自己分散性顔料の体積平均粒径(D50)は、インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。
また、第2形態の場合は、後述する水分散性樹脂を含むことが好ましい。
【0047】
自己分散性顔料としては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものが好適である。
アニオン性とするためのアニオン性親水性基としては、例えば、−COOM、−SOM、−POHM、−PO、−SONH、−SONHCOR(ただし、Mは、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす)等が挙げられる。前記「M」のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。また有機アンモニウムとしては、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。
顔料がカーボンブラックの場合、前記親水性基は、他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。その具体例としては、−CCOOM(ただし、Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表わす)、−PhSOM(ただし、Phはフェニル基を表わす。Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表わす)等が挙げられる。
上記の中でも、−COOM、−SOMがカラー顔料表面に結合されたものが好ましい。このようなアニオン性に帯電したカラー顔料を得る方法としては、カラー顔料表面に、−COONaを導入する方法として、例えば、カラー顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化による方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられる。
【0048】
<水溶性有機溶剤>
水溶性有機溶剤は主に湿潤剤として添加する。
インクにおける水分散性着色剤と水溶性有機溶剤の質量比は、ヘッドからのインク吐出安定性に影響を与える。例えば、水分散性着色剤の固形分が高いのに水溶性有機溶剤の配合量が少ないとノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらすことがある。したがって、インク中の水溶性有機溶剤の添加量は、20〜50質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましい。添加量が20質量%未満では、吐出安定性が低下したりインクジェット記録装置の維持装置で廃インク固着したりする可能性がある。また、50質量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣り更に普通紙上の文字品位が低下することがある。
水溶性有機溶剤としては、前記前処理液の場合と同じものが好適に用いられる。
【0049】
<界面活性剤>
界面活性剤はインクの表面張力低下、浸透性、レベリング性向上の目的で添加する。
添加量はインク全体の0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。添加量が0.01質量%未満では、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0質量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種が好適である。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が特に好ましい。これら界面活性剤は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
界面活性剤の具体例としては、前記前処理液の場合と同様のものが挙げられる。
【0050】
<浸透剤>
浸透剤は、インク中の水溶性有機溶剤の記録媒体への浸透促進、インクの乾燥性向上の目的で添加する。
添加量はインク全体の0.1〜4.0質量%が好ましい。添加量が0.1質量%未満では、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0質量%を超えると、着色剤の分散安定性が損なわれてノズルが目詰まりしやすくなったり、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなって画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
浸透剤の例としては、前記前処理液の場合と同様のものが挙げられる。
【0051】
<水分散性樹脂>
水分散性樹脂は高画質化、画像耐候性、定着性向上のために添加することが好ましい。
添加量は、固形分でインク全体の1〜15質量%が好ましく、2〜7質量%がより好ましい。
水分散性樹脂としては、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。
前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
これらの中でも、特にポリウレタン樹脂微粒子、アクリル−シリコーン樹脂微粒子及びフッ素系樹脂微粒子が好ましい。また、前記水分散性樹脂を2種類以上併用することは全く問題ない。
【0052】
<その他の添加剤>
その他の添加剤としては特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができるが、例えば、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。pHが前記範囲を外れるとインクジェットヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きくなり、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
pH調整剤の例としては、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオール等が挙げられる。
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
前記ホスホニウム水酸化物としては、例えば、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0053】
防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0054】
≪インクジェット記録工程におけるインク付与の方法≫
インクジェット記録工程は、インクに刺激(エネルギー)を印加し、前処理液を塗布した記録媒体にインクを飛翔させて画像を形成する工程である。
インクを飛翔させて記録媒体に画像を形成する方法としては、公知の種々のインクジェット記録方法を適用でき、例えば、ヘッドを走査する方式のインクジェット記録方法や、ライン化されたヘッドを用いて、ある枚葉の記録媒体に画像記録を行うインクジェット記録方法が挙げられる。
インク飛翔手段である記録ヘッドの駆動方式には特に限定はなく、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータ等を利用したオンディマンド型のヘッドを用いてもよいし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いてもよい。熱エネルギーを作用させる方式においては、液滴の噴射を自在に制御することが困難とされており、記録媒体の種類等による画像のばらつきが大きくなりがちであるが、前処理液を記録媒体に付与することにより、これらの課題は解消され、記録媒体の種類に依らず安定した高画質を得ることができる。
【0055】
図1に、前処理工程及びインクジェット記録工程に好適なラインインクジェット装置の一例を示す。
インクジェット装置101は、インクを吐出するヘッドを集積したヘッドユニット110K、110C、110M、110Y(以下、110と略称する)、各ヘッドユニットに対応しヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニット111K、111C、111M、111Y、インクを供給するインクカートリッジ107K、107C、107M、107Y、該インクカートリッジからのインクを一部貯蔵し、ヘッドに適切な圧力でインクを供給するサブインクタンク108K、108C、108M、108Y(以下、108と略称する)を備えている。
更に用紙114(記録媒体)を吸着し搬送する搬送ベルト113、搬送ベルト113を支える搬送ローラ119、121、搬送ベルト113が適切な張力を保つようにコントロールするテンションローラ115、給紙押さえ部材122、搬送ベルト113が適切な平面性を保つためのプラテン124、用紙114を吸着するための静電帯電を与える帯電ローラ118からなる搬送機構、用紙114を搬送ベルト113から分離させる分離爪120、排紙するための搬送を行う排紙ローラ116、用紙114を押さえる排紙コロ117、排紙した用紙114をストックしておく排紙トレイ104からなる排紙機構、印写する用紙114をストックする給紙トレイ103、給紙トレイ103から一枚ずつ用紙114を送り出す分離コロ112、送られてきた用紙114を帯電ベルトに確実に吸着させるカウンターローラ123、手差しで給紙した場合に用いられる手差しトレイ105からなる給紙機構を有している。またメンテナンス後に排出される廃液を回収する廃液タンク109や、装置を操作し装置状態を表示することができる操作パネル106も備えている。
各ヘッドユニットのノズル列は用紙114の搬送方向に直行するように配列されており、記録領域以上の長さのノズル列を形成している。給紙トレイ103から用紙114が分離コロ112により一枚に分離され、加圧コロ(不図示)により搬送ベルトに密着されて搬送ベルト113上に固定され、ヘッドユニット110の下を通過する際に用紙114に液滴を吐出することにより、高速に用紙114にパターンニングができ、分離爪120により搬送ベルト113から分離され、排紙ローラ116と排紙コロ117に支えられて排紙トレイ104に記録物が排出される。
【0056】
図2は図1の装置のヘッドユニット110におけるヘッド配列を示した図である。ヘッドユニット110はヘッド外周部材160にヘッド154A〜154L(以下、154と略称する)を固定しており、ヘッド154はノズルの一部が重複するように千鳥配置で固定されている。
図3は図2のヘッドユニット110に配列しているヘッド154を示した図で、ヘッド154にはノズルプレート201に2列の千鳥配置で開口されたノズル200が設けられており、ヘッド154とヘッド外周部材160との間は充填剤202により密閉されており、ノズル面側からの隙間をなくしている。
【0057】
上記図1はラインヘッドインクジェット装置であるが、これに限られるわけではなく、図4、図5に示すようなシリアルインクジェット装置も適用可能である。
図4、図5のシリアルインクジェット装置は、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド130とステー133とでキャリッジ131を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって図5の矢示方向に移動走査する。
キャリッジ131には、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の記録用インク滴を吐出するヘッドユニット110の複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ131には、記録ヘッドに各色のインクを供給するための各色のサブインクタンク108を搭載している。サブインクタンク108には、記録用インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジからインクが供給されて補充される。
装置本体背面部には、両面給紙ユニット132が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット132は、搬送ベルト113の逆方向回転により戻される用紙を取り込んで反転させ、再度カウンタローラ123と搬送ベルト113との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット132の上面には手差しトレイ105が設けられている。
副走査方向への間欠的な用紙搬送動作に応じて、上記主走査モータ(不図示)がキャリッジ131を走査させ液滴を吐出することにより、ヘッドが用紙に非接触の状態で像を形成することが出来る。
【0058】
<前処理機構について>
上記インクジェット装置には前処理液の塗布機構を付設する。塗布方法はローラ塗布、スプレー塗布、昇華塗布など種々の方式を採用できる。
一例として図1のインクジェット装置に組み込まれたローラ塗布方式を示す。前処理液135は組み上げローラ137によりローラ表面に組み上げられ、膜厚制御ローラ138に転写される。塗布ローラ136に転写された前処理液135は塗布用カウンターローラ139との間に通す用紙114に転写され、塗布される。
膜厚制御ローラ138と塗布ローラ136とのニップ厚を制御することにより塗布ローラ136に転写する前処理液135の塗膜量を制御する。また前処理液135を塗布したくないときは、前処理液135を塗布ローラ136に残さないように可動ブレード134を塗布ローラ136に押し付け、塗布ローラ表面の前処理液135を掻き取ることが出来る。前処理液135が塗布ローラ136に残留すると前処理液135の乾燥による増粘や、塗布用カウンターローラ139との固着、塗布ムラなどの機能障害が起こる可能性があるが、前処理液135を掻き取ることにより、これらの機能障害を未然に防ぐことができる。なお、140は前処理液カートリッジである。
このようなローラー塗布以外に、前処理液135をインクジェット方式でスプレー塗布してもよい。例えば図4、図5のようなシリアルインクジェット装置の場合は、インクを前処理液135と交換することにより同一プロセスで塗布することができ、塗布量や塗布位置の制御を高精度かつ容易に行うことが出来る。
何れの方式を用いても、前処理液を任意の位置に任意の量だけ塗布することが出来る。
【0059】
<制御部>
次に、上記インクジェット装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、この図は制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部300は、装置全体の制御を司るCPU301、CPU301が実行するプログラム、本発明において使用する所定インク吐出に対するノズル面汚染度合の値及びノズル面汚染許容閾値、駆動波形データ、その他の固定データを格納するROM302、画像データ等を一時格納するRAM303、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)304、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC305を備えている。
また、この制御部300は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのホストインターフェイス(ホストI/F)306、記録ヘッド154の圧力発生手段を駆動制御するための駆動波形を生成するヘッド駆動制御部307、記録媒体搬送モータ309を駆動するための記録媒体搬送モータ駆動制御部308、ヘッドユニット(キャリッジ)移動モータ311を駆動するためのヘッドユニット移動モータ駆動制御部310、メンテナンスユニット移動モータ313を駆動するためのメンテナンスユニット移動モータ駆動制御部312、インク経路の電磁弁315を開閉制御するためのインク経路バルブ制御部314、キャップ吸引ポンプのモータ317及びヘッドインク供給モータ318の駆動を制御する送液吸引モータ駆動制御部316、搬送ベルト113の移動量及び移動速度に応じた検知信号を出力するエンコーダ(不図示)、環境温度及び環境湿度(いずれか一方でも良い)を検出するセンサ323からの検知信号、サブインクタンクのインク量検知信号及びその他の各種センサ(不図示)からの検知信号を入力するためのI/O322などを備えている。制御部300には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作/表示部106が接続されている。
【0060】
制御部300は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの印刷データ等をケーブル或いはネットを介してI/F316で受信する。
そして、CPU301は、I/F306に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC305で必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、記録ヘッド154のヘッド幅の1ページ分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッド駆動制御部307に送出する。
そして、CPU301は、I/F306に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC305で必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ってヘッド駆動制御部307に画像データを転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM302にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしても良い。
ヘッド駆動制御部307は、ページ単位で入力される記録ヘッド154の1ページ分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて選択的に記録ヘッド154の圧力発生手段に印加して記録ヘッド154を駆動する。
また図示していないが前処理液をローラ塗工する場合、塗布ローラなどの塗工用ローラ群の駆動制御が必要となるため、塗工用モータ制御部と、制御されるモータ、制御用のセンサが存在する。
更にインクジェットで前処理液を吐出して塗工する場合は、維持動作を他のインクと異なる動作を行わないと、混色によるノズル詰まりの危険性が存在する。そのため維持ユニット移動モータは、インク用とは別に前処理用のものを設けることが望ましい。
【0061】
<インクカートリッジ>
インクカートリッジは、インクを容器中に収容したものであり、必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有する。容器としては特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものが挙げられる。
インクカートリッジの一例について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、図8のインクカートリッジのケース(外装)も含めた図である。
インクカートリッジ200は、図7に示すように、インク注入口242からインク袋241内に充填され、排気した後、該インク注入口242は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給される。
インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、図8に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース244内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
上記インクカートリッジは、インク(インクセット)を収容し、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることができる。
上記インクカートリッジのインクの代わりに前処理液を収容すれば、前処理液カートリッジとして用いることができる。
【0062】
本発明の対象となる記録媒体は、支持体の一方の面に、少なくとも感熱記録層と保護層を順次積層した感熱記録材料を有する。
感熱記録層は、少なくとも発色剤と顕色剤を含有する。発色剤としては、感熱記録材料において公知のロイコ染料を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
ロイコ染料としては、例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が好ましく用いられる。その具体例としては以下に示すようなものが挙げられる。
【0063】
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロへキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,3−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−(3′−フルオルトリメチルフェニル)アミノ}−6−ジエチルアミノフルオラン、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−n−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロへキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6′−クロロ−8′−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6′−ブロモ−3′−メトキシ−ベンゾインドリノスピロピラン、3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−クロルフェニル)フタリド、3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−ニトロフェニル)フタリド、3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジエチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−メチルフェニル)フタリド、3−(2′−メトキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−ヒドロキシ−4′−クロル−5′−メチルフェニル)フタリド、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−m−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3′)−6′−ジメチルアミノフタリド、3−(N−ベンジル−N−シクロへキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4′−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4′,5′−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−3−イソプロピル−8−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2′,4′−ジメチルアニリノ)フルオランなど。
【0064】
顕色剤としては、前記ロイコ染料に対して加熱時に反応しこれを発色させる公知の種々の電子受容性物質を用いることができ、その具体例としては、以下に示すようなフェノール性物質、有機又は無機酸性物質、あるいはそれらのエステルや塩などが挙げられる。
没食子酸、サリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−シクロへキシルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4,4′−イソプロピリデンジフェノール、1,1′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4′−sec−ブチリデンジフェノール、4,4′−シクロへキシリデンビスフェノール、4,4′−シクロへキシリデンビス(2−メチルフェノール)、4−tert−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフェノキシド、α−ナフトール、β−ナフトール、3,5−キシレノール、チモール、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−ヒドロキシアセトフェノン、ノボラック型フェノール樹脂、2,2′−チオビス(4,6−ジクロロフェノール)、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、フロログリシンカルボン酸、4−tert−オクチルカテコール、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−ジヒドロキシジフェニル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−o−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−オクチル、安息香酸、サリチル酸亜鉛、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸亜鉛、4−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸スズ、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、ステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、ホウ酸、チオ尿素誘導体、4−ヒドロキシチオフェノール誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸エチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸−n−プロピル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸−n−ブチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェネチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸−n−プロピル、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサへプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサヘプタン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ−4′−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−エトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−tert−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−フェノキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−(m−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−(p−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−(o−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−(p−クロロベンジロキシ)ジフェニルスルホンなど。
【0065】
感熱記録層には、必要に応じて、この種の感熱記録材料に慣用される補助添加成分、例えば、フィラー、界面活性剤、滑剤、圧力発色防止剤などを添加することができる。
フィラーとしては、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカなどの無機系微粉末の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの有機系の微粉末が挙げられる。
界面活性剤としては、脂肪酸の金属石鹸類、ポリカルボン酸型高分子活性剤類、高級アルコールの硫酸エステル塩類、アルキルポリエーテルの硫酸エステル塩類、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物類、アルキルアリールスルホン酸塩類、アルキルスルホン酸類、アリールスルホン酸類、リン酸エステル類、脂肪族リン酸エステル類、芳香族リン酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル類、ポリオキシエチレンアリール硫酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル類、ジアルキルスルホコハク酸エステル類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、アセチレングリコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレングリコールのプロピレンオキサイド付加物、アセチレングリコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
滑剤としては高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性、植物性、鉱物性又は石油系の各種ワックス類などが挙げられる。
【0066】
感熱記録層を形成するには、支持体上にロイコ染料及び顕色剤を結合支持させるため、慣用の種々の結合剤を適宜用いることができる。その具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ポリビニルアルコール、各種変性ポリビニルアルコール、殿粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロ−スなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼインなどの水溶性高分子の他、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのエマルジョンやスチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体などのラテックスなど。
【0067】
保護層には樹脂を用いる。その例としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、澱粉及びその誘導体、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びその誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体及びその誘導体、ポリ(メタ)アクリルアミド及びそれらの誘導体、スチレン−アクリル酸−アクリルアミド共重合体、アミノ基変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、水性ポリエステル、水性ポリウルタン、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体及びその誘導体等の水溶性樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル酸エステル系(共)重合体、スチレン−アクリル系共重合体、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル及びこれらの共重合体が挙げられるが、中でも水溶性樹脂が好ましい。
保護層には、上記の樹脂の他に、従来用いられている補助添加成分、例えばフィラー、界面活性剤、熱可融性物質(又は滑剤)、圧力発色防止剤等を添加することができ、更に耐水化剤を含有させることもできる。このフィラー及び滑剤の例としては、前記感熱記録層において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0068】
感熱記録材料には、感熱記録層及び保護層に加えて、必要に応じて、感熱記録層と保護層の間にアンダー層を設けたり、支持体の裏面(感熱記録層と反対側の面)にバック層を設けてもよい。
感熱記録材料は、例えば、前記した各層形成用塗液を、紙、プラスチックフィルムなどの適当な支持体上に塗布し、乾燥することによって製造できる。
支持体には特に限定は無く、例えば上質紙、再生紙、片艶紙、耐油紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、微塗工紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成樹脂フィルムなどを適宜使用できる。
感熱記録材料に対する記録は、公知の種々の感熱記録装置を用いて行えばよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例より限定されるものではない。なお、例中の「%」及び「部」は何れも質量基準である。
【0070】
実施例1〜8及び比較例1、2
−感熱記録材料を備えた記録媒体(感熱紙)の作製−
下記組成の混合物を、それぞれ平均粒径が1.5μm以下となるようにサンドミルを用いて分散して、(A液)(B液)(C液)を調製した。
(A液)
・3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 20部
・ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
・水 60部
(B液)
・ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルホン 4部
・シュウ酸ジ(p−メチルベンジル) 4部
・4,4′−〔オキシビス(エチレンオキシ−p−フェニレンスルホニル)〕
ジフェノールを主成分とする重合物 4部
・シリカ 4部
・ポリビニルアルコール10%水溶液 12部
・水 72部
(C液)
・水酸化アルミニウム 30部
・ポリビニルアルコール10%水溶液 30部
・水 40部
【0071】
次いで、下記組成の混合物を混合撹拌し、感熱記録層塗布液(D液)を調製した。これを市販の上質紙(坪量80g/m)の表面に乾燥付着量が5.0g/mとなるように塗布乾燥して感熱記録層を設けた。
(D液)
・(A液) 9.1部
・(B液) 90.9部
【0072】
次いで、下記組成の混合物を混合撹拌し、保護層塗布液(E液)を調製した。これを前記感熱記録層塗布済用紙の表面に乾燥付着量が2.0g/mとなるように塗布乾燥して保護層を設けた。
(E液)
・(C液) 16.7部
・ポリビニルアルコール10%水溶液 50部
・ポリアミドエピクロロヒドリン12.5%水溶液 14部
・ステアリン酸亜鉛分散体(固形分濃度30%) 2.5部
・水 16.8部

更に、前記感熱記録面が、ベック平滑度1,500〜2,500秒になるように金属ロールでスーパーキャレンダー処理して感熱記録材料を備えた記録媒体(感熱紙1)を得た。
一方、保護層を設けない点以外は感熱紙1と同様にして感熱紙2を得た。
【0073】
−前処理液の作製−
各前処理液の作製は、以下の手順で行った。
まず、表1の実施例及び比較例の前処理液の欄に示す材料を用いて1時間撹拌混合し、均一な混合物を得た。次いで、平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターを用いて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去し、各前処理液を調製した。
【0074】
−インクの作製−
下記調製例1〜6のようにして、各分散液を調製した。
(調製例1)
−表面処理ブラック顔料分散液の調製−
CTAB比表面積150m/g、DBP吸油量100mL/100gのカーボンブラック90gを、2.5規定の硫酸ナトリウム溶液3,000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行った。
この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。
得られたカーボンブラックを水洗し、乾燥させて、固形分30質量%となるよう純水中に分散させ、充分に撹拌して表面処理ブラック顔料分散液を得た。
このブラック顔料分散液における顔料分散体の体積平均粒子径(D50)は103nmであった。なお、(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装社製、ナノトラックUPA−EX150)を用いて行った。
【0075】
(調製例2)
−マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製−
<ポリマー溶液Aの調製>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し65℃に昇温した。
次いで、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。
滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。
65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
【0076】
<顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製>
ポリマー溶液Aを28g、C.I.ピグメントレッド122を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。
得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くため、該分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料を15質量%含有する、固形分20質量%のマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。
得られた分散液におけるポリマー微粒子の体積平均粒子径(D50)は127nmであった。なお、(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装社製、ナノトラックUPA−EX150)を用いて行った。
【0077】
(調製例3)
−シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製−
顔料をフタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)に変えた点以外は、調製例2と同様にして、シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られた分散液のポリマー微粒子について、調製例2と同様にして測定した体積平均粒子径(D50)は93nmであった。
【0078】
(調製例4)
−イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製−
顔料をモノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)に変えた点以外は、調製例2と同様にして、イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られた分散液のポリマー微粒子について、調製例2と同様にして測定した体積平均粒子径(D50)は76nmであった。
【0079】
(調製例5)
−ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製−
顔料をカーボンブラック(デグサ社製、FW100)に変えた点以外は、調製例2と同様にして、ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られた分散液のポリマー微粒子について、調製例2と同様にして測定した体積平均粒子径(D50)は104nmであった。
【0080】
(調製例6)
−イエロー顔料含有界面活性剤分散液の調製−
モノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74、大日精化工業社製)30.0質量部、ポリオキシエチレンスチレンフェニルエーテル(ノニオン系界面活性剤、第一工業製薬社製、ノイゲンEA−177、HLB値=15.7)10.0質量部、イオン交換水60.0質量部を用意し、まず、界面活性剤をイオン交換水に溶解し、次いで顔料を混合して充分に湿潤したところで、湿式分散機(ダイノーミル KDL A型、WAB社製)に直径0.5mmのジルコニアビーズを充填し、2,000rpmで2時間分散を行って一次顔料分散体を得た。
次に、一次顔料分散体に、水溶性高分子化合物水溶液として、水溶性ポリウレタン樹脂(タケラックW−5661、三井化学社製、有効成分35.2質量%、酸価40mgKOH/g、分子量18,000)を4.26質量部添加し、充分に撹拌してイエロー顔料含有界面活性剤分散液を得た。
得られた分散液における顔料分散体の体積平均粒子径(D50)を、粒度分布測定装置(日機装社製、ナノトラックUPA−EX150)で測定したところ62nmであった。
【0081】
次に、上記各分散液を用い、以下の手順でインクを作製した。
まず、表1の実施例及び比較例のインク組成の欄に示す、水溶性有機溶剤、浸透剤、界面活性剤、防黴剤、及び水を混合し、1時間攪拌を行い均一に混合した。
この混合液に対し、水分散性樹脂を添加して1時間撹拌し、更に顔料分散液、消泡剤、pH調整剤を添加して1時間攪拌した。
得られた分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して、実施例1〜8及び比較例1、2の各インクを得た。
【0082】
感熱紙1及び感熱紙2に対し、実施例及び比較例の前処理液とインクを用いて、インクジェット記録と感熱記録を行い、インクジェット記録については画像濃度、スミア定着性、拍車痕、フェザリング、カラーブリードを、感熱記録については画像濃度を評価した。
【0083】
<画像濃度1(インクジェット記録)>
図1に示すインクジェットプリンタにインクを充填し、感熱紙に解像度1200dpiでCYMKの4色を併用したコンポジットブラックのベタ印字を行った。印字乾燥後、反射型カラー分光測色濃度計(X−Rite社製)を用いて画像濃度を測定した。インクの付着量は9.5g/mであった。
【0084】
<画像濃度2(感熱記録)>
前記インクジェット記録済みの記録媒体に対し、パナソニックエレクトロニックデバイス社製薄膜ヘッドを有する感熱印字実験装置を用いて、ヘッド電力0.45W/ドット1ライン記録時間20msec/L、走査密度8×385ドット/mmの条件下で、1msec毎にパルス巾0.2〜1.2msecに印字し、印字濃度を反射型カラー分光測色濃度計(X−Rite社製)で測定し、最も高い値をDmax(最大発色濃度)として評価した。
【0085】
<スミア定着性>
印字後3時間以上経過した時点で、クロックメータ(東洋精機社製)に装着した白綿布(東洋精機社製)で印字したベタ画像部を10往復させ、白綿布に付着したインクの汚れを目視で観察し、下記基準により評価した。
ランク5…汚れが全くない。
ランク4…汚れがわずかにある。
ランク3…汚れがあるが、実用上問題なし。
ランク2…汚れがやや顕著に認められる。
ランク1…汚れが顕著に認められる。
【0086】
<拍車痕の評価>
各画像プリントの拍車痕の程度を目視で観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:全く認められない。
○:かすかに認められる。
×:明確に拍車痕が認められる。
【0087】
<フェザリング>
黒文字部分を観察し、ランク見本と比較することにより下記基準で画質評価を行った。
ランク5…滲み出しが全くない。
ランク4…滲み出しがわずかにある。
ランク3…滲み出しがあるが、実用上問題なし。
ランク2…滲み出しがやや多い。
ランク1…滲み出しが多い。
【0088】
<カラーブリード>
黒ベタとイエローベタとの境界部分を観察し、ランク見本と比較することにより下記基準で画質評価を行なった。
ランク5…混色が全くない。
ランク4…混色がわずかにある。
ランク3…混色があるが、実用上問題なし。
ランク2…混色がやや多い。
ランク1…混色が多い。
【0089】
【表1】

【0090】
上記表中の材料の詳細及び*〜****の意味は次のとおりである。
FT−251(フッ素系界面活性剤:ネオス社製)
KF−643(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤:信越化学工業社製)
ゾニールFS−300(フッ素系界面活性剤:DuPont社製)
Proxel GXL(アーチ・ケミカルズ・ジャパン社製)
KM−72F(シリコーン消泡剤:信越シリコーン社製)
*:保護層を設けた感熱記録材料を有する。
**:保護層を設けない感熱記録材料を有する。
***:インクジェット記録した時に感熱記録層の地肌かぶりが顕著なため視認不可能
****:前処理液塗布時に感熱記録層の地肌かぶりが顕著なため視認不可能
【符号の説明】
【0091】
101 インクジェット装置
103 給紙トレイ
104 排紙トレイ
105 手差しトレイ
106 操作パネル
107K インクカートリッジ
107C インクカートリッジ
107M インクカートリッジ
107Y インクカートリッジ
108K サブインクタンク
108C サブインクタンク
108M サブインクタンク
108Y サブインクタンク
109 廃液タンク
110K ヘッドユニット
110C ヘッドユニット
110M ヘッドユニット
110Y ヘッドユニット
111K メンテナンスユニット
111C メンテナンスユニット
111M メンテナンスユニット
111Y メンテナンスユニット
112 分離パッド
113 搬送ベルト
114 用紙(記録媒体)
115 テンションローラ
116 排紙ローラ
117 排紙コロ
118 帯電ローラ
119 搬送ローラ
120 分離爪
121 搬送ローラ
122 給紙押さえ部材
123 カウンターローラ
124 プラテン
130 ガイドロット
131 キャリッジ
132 両面ユニット
133 ステー
134 可動ブレード
135 前処理液
136 塗布ローラ
137 組み上げローラ
138 膜厚制御ローラ
139 塗布用カウンターローラ
140 前処理液カートリッジ
154A ヘッド
154B ヘッド
154C ヘッド
154D ヘッド
154E ヘッド
154F ヘッド
154G ヘッド
154H ヘッド
154I ヘッド
154J ヘッド
154K ヘッド
154L ヘッド
160 ヘッド外周部材
200 ノズル(千鳥配列)
201 ノズルプレート
202 充填剤
240 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジ外装
300 制御部
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 NVRAM
305 ASIC
306 ホストインターフェース
307 ヘッド駆動制御部
308 記録媒体搬送モータ駆動制御部
309 記録媒体搬送モータ
310 ヘッドユニット移動モータ駆動制御部
311 ヘッドユニット移動モータ
312 メンテナンスユニット移動モータ駆動制御部
313 メンテナンスユニット移動モータ
314 インク経路バルブ制御部
315 電磁弁
316 送液吸引モータ駆動制御部
317 キャップ吸引ポンプのモータ
318 ヘッドインク供給ポンプのモータ
319 搬送ベルト
320 キャップ吸引経路
321 インク供給経路
322 I/O
323 センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】
【特許文献1】特開2003−231357号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に、少なくとも感熱記録層と保護層を順次積層した感熱記録材料を備えた記録媒体に対し、インクジェット記録用前処理液を付与する前処理工程と、該前処理液を付与した記録媒体に、水性インクジェット記録用インクを用いて画像を形成するインクジェット記録工程と、感熱記録材料を加熱する感熱記録工程とを有する記録方法であって、前記前処理液が、水溶性脂肪族系有機酸、水溶性有機モノアミン化合物、湿潤剤及び水を含有し、前記インクジェット記録用インクが、水分散性着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水を含有することを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記前処理液中に、更に脂肪族系有機酸塩化合物又は無機金属塩化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記水分散性着色剤が、次の(1)〜(3)の何れかを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録方法。
(1)表面に少なくとも1種の親水性基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を示す顔料(自己分散性顔料)
(2)顔料、顔料分散剤及び高分子分散安定化剤を含有する顔料分散体
(3)顔料を含有するポリマー微粒子の水分散体

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−236296(P2012−236296A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105638(P2011−105638)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】