説明

記録材冷却加湿装置、画像形成装置、及び画像加熱システム

【課題】画像加熱部に対する通紙前のシートの水分量と排紙後のシートの水分量の差をできるだけ小さくする。
【解決手段】熱及び圧力をトナー及びシートに加えることでシートにトナーを定着させる定着装置を有する電子写真装置においてシート搬送途中に、シートを冷却する機構を有し、定着装置と冷却装置ニップ間の上部まで冷却装置のベルトを拡張しその内部にベルト冷却装置を配置する。冷却されたベルトに水蒸気が付着するとその水分はベルトによって冷却装置ニップ内に搬送されシートとベルトにニップされ再びシートに戻る。これにより効率的にシートの水分を留めることができシート波打ち及びカールを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材冷却加湿装置、画像形成装置、及び画像加熱システムに関する。
【0002】
記録材冷却加湿装置は、例えば電子写真方式を用いた画像形成装置において画像加熱装置を出た、画像を担持して加熱されている状態の記録材を冷却すると共に水分を付加して記録材の波打ちやカールを抑制する装置として有効である。
【背景技術】
【0003】
従来、例えば電子写真方式を用いた画像形成装置においては、像担持体としての感光体ドラム上に形成された潜像を現像剤(トナー)により現像して可視画像化する。この可視画像(トナー像)を記録材(以下、シートと記す)に静電気力を用いて転写させる。次いで、転写画像を定着装置(画像加熱装置)により加熱、加圧して固着画像として定着させることによって、シート上に画像が記録形成されるようになっている。
【0004】
従来、定着装置としては、熱ローラ定着装置(ローラ定着方式の装置)を用いる例が多い。この装置は、例えば、ハロゲンヒータ等の内蔵熱源により加熱されて所定の温度に維持させた定着ローラと、これに圧接させた弾性を有する加圧ローラとの圧接ニップ部(定着ニップ部)にシートを導入して挟持搬送させる。これにより、シート表面の未定着トナー像が定着ローラの熱とニップ圧により加熱、加圧されて定着される。この定着工程では熱をトナー及びシートに付加するので、シート内部の水分が圧接ニップ部および圧接ニップ後に蒸発する。
【0005】
シートの水分量変化とシートにかかるストレスで波打ち及びカールが発生する。シートを繊維のレベルで見ると、シートは短い繊維どうしが絡み合って構成されており、繊維内部または繊維どうしの間には水分が含まれ、繊維と水は水素結合を生じる。セルロースは多数のヒドロキシル基を有しており、このヒドロキシル基の極性により他の水素原子を引き付ける性質を持っている。そのため繊維の間に水が入っていると繊維と水で水素結合を生じる。
【0006】
定着工程においてシートに熱が加わると、シート内部の水分が蒸発し、水と水素結合していたセルロースは水分子の変わりに他のセルロースのヒドロキシル基と水素結合し、水の体積分の変形が生じる。繊維どうしで水素結合が生じ変形する。シートを放置していると環境から吸湿し、繊維どうしの水素結合が再び切り離される。だが、一部の繊維間には水分が入っていかず、それにより変形が維持される。変形のパターンはシートの表裏の伸縮差で変形するもの(カール)とシートの中央部と端部での伸縮差で起きるものがあり、これらの変形によりシートの波打ちまたはカールが生じる。
【0007】
この問題に対する解決策が特許文献1に開示されている。これは、カール癖がつかないように定着装置後のシートを冷却する装置およびシステムである。一対の冷却部に設けた密着したベルトの間にシートを挟み込んで搬送する。また、ベルトの内側には、金属部材を配置し、ベルトがシートから受けた熱を吸収し、放熱する。また、このシートを挟み込んだベルトを平面搬送する。このように、定着装置を通過したシートを密着冷却することで、シートの水分蒸発そのものを防止し、波打ちおよびカールが軽減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−112102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術では、定着装置から排紙したシートを冷却装置に通紙し、シートの冷却及び水分蒸発抑制をおこないカール及び波打ちを低減している。しかし、この機構を用いた場合、定着ローラ直後には分離板や分離爪などのシート分離部材や搬送ガイド板が必要となるため定着ローラニップと冷却装置ニップには一定の間隔が必要となる。
【0010】
シートは定着装置通紙直後の温度が一番高く水分蒸発量が多くなるので冷却装置ニップまでの短時間においても水分が蒸発してしまい、定着装置通紙前と定着装置通紙後のシートの水分量の差が大きくなる。定着装置通紙直後から環境に放置し水分平衡状態となるまでのシートが吸収する水分量が多ければ時間経過によって波打ちが増大してしまう。よって、定着装置と冷却装置の水分蒸発対策が必要となる。
【0011】
排紙後のシートの水分が放置環境よりも低ければ、シートを積載放置すると、端部から水分を吸収し、水分を吸収した部分は水の体積分膨張し伸びる。よって、水分を吸収しづらい中央部は体積膨張が小さく、端部は体積膨張が大きいので中央端部に伸縮の差が生まれ、波打ちがおこる。これにより放置環境との水分平衡状態よりもシートの水分量が低ければ低いほど波打ちは大きくなる。
【0012】
よって、定着装置通紙前のシートの水分量と排紙後の水分量の差をできるだけ小さくする必要があり、効率的にカール及び波打ちを低減させるには、定着装置と冷却装置との間での水分蒸発の問題を解決する必要がある。また、水分が蒸発すると結露の問題もある。
【0013】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するためになされたものである。その目的とするところは、画像加熱部に対する通紙前のシートの水分量と排紙後のシートの水分量の差をできるだけ小さくすることが出来る手段構成を提供することにある。これにより、効率的にシート波打ち及びカールの低減を図ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明に係る記録材冷却加湿装置の代表的な構成は、画像加熱部を通って加熱された状態にある記録材をニップ部にて挟持搬送して冷却すると共に加湿する記録材冷却加湿装置であって、前記ニップ部を構成すると共に、前記画像加熱部の記録材出口部と前記ニップ部の記録材入口部との間の離間空間部に及んでいるベルト拡張部を構成している回転可能なエンドレスのベルトと、前記記録材を前記ニップ部において前記ベルトを介して冷却する第1の冷却手段と、前記ベルト拡張部を冷却して前記離間空間部において前記画像加熱部を通って加熱された状態にある記録材から出る水蒸気を前記ベルト拡張部の外面に結露水として付着させる第2の冷却手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像加熱部に対する通紙前の記録材の水分量と排紙後の記録材の水分量の差をできるだけ小さくすることが出来、これにより、効率的にシート波打ち及びカールの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における画像形成装置の概略構成図
【図2】定着装置と冷却装置の部分の概略図
【図3】定着装置と冷却装置の部分の平面図(上面図)
【図4】実施例2における冷却装置の概略図
【図5】実施例3における冷却装置の構成説明図
【図6】実施例3における冷却装置の分割冷却平板のシフト機構の説明図
【図7】実施例4における冷却装置の構成説明図
【図8】実施例5における冷却装置の構成説明図
【図9】実施例6における冷却装置の構成説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る記録材冷却加湿装置あるいは画像加熱システムを用いた画像形成装置の一例の概略構成図である。この装置100はタンデム方式−中間転写方式の電子写真フルカラー(天然色、多色)レーザビームプリンタである。パソコン等のホスト装置(不図示)から制御回路部(不図示)に入力する画像信号に基づいて記録材Sに4色フルカラー画像を形成することができる。記録材Sは現像剤像を形成することができるシート状の記録媒体であり、普通紙、光沢紙、封筒、はがき、ラベル、OHPシートなどである。
【0018】
装置100内には、図面上、左側から右側に水平方向に順に第1乃至第4の画像形成部U(UY,UM,UC,UK)が直列に配置されており、並列処理により各色の現像剤像を形成する。各画像形成部Uはそれぞれ現像装置に収容させた現像剤(以下、トナーと記す)の色が本実施例においてはイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)と異なるだけで互いに同様の構成の電子写真画像形成機構である。
【0019】
各画像形成部UY,UM,UC,UKの構成及び動作は共通である部分が多い。そこで、以下の説明においては、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すために符号に与えた添え字Y,M,C,Kは省略して総括的に説明する。
【0020】
各画像形成部Uは、それぞれ、表面に静電潜像を形成するための回転可能な像担持体としての感光体ドラム1を有する。ドラム1は矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。ドラム1の周囲には回転方向に沿って、一次帯電装置(ローラ)2,露光装置(レーザスキャナユニット)3,現像装置4,一次転写装置(ローラ)5,クリーニング装置6が配設されている。
【0021】
一次帯電装置2には所定の帯電バイアスが印加される。これにより、回転するドラム1の表面が所定の極性・電位に一様に帯電される。ユニット3は、ホスト装置から制御回路部に入力した画像情報に応じて変調されたレーザビームLを出力してドラム1の帯電処理面を走査露光する。これによりドラム1の表面に画像露光に対応した静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置4によりトナー像として現像される。
【0022】
上記のような帯電、露光、現像の画像形成プロセスにより、第1の画像形成部UYのドラム1Yにはフルカラー画像のY色成分像に対応するY色トナー像が形成される。第2の画像形成部UMのドラム1Mにはフルカラー画像のM色成分像に対応するM色トナー像が形成される。第3の画像形成部UCのドラム1Cにはフルカラー画像のC色成分像に対応するC色トナー像が形成される。第4の画像形成部UKのドラム1Kにはフルカラー画像のK色成分像に対応するK色トナー像が形成される。
【0023】
第1乃至第4の画像形成部Uの下方に配設された中間転写ベルトユニット7は、循環して移動して各画像形成部Uのドラム1からトナー像の転写を順次に受ける中間転写体としての可撓性を有する無端状の中間転写ベルト8を有する。ベルト8は駆動ローラ9,二次転写対向ローラ10,テンションローラ11の3本のローラ間に張架されている。ベルト8はローラ9により矢印の時計方向にドラム1とほぼ同じ速度で回転駆動される。
【0024】
各画像形成部Uの一次転写装置5はベルト8を挟んでドラム1の下面に圧接している。ドラム1とベルト8との当接部が一次転写ニップ部である。ローラ5に所定の一次バイアスが印加されることで、ドラム1側のトナー像が一次転写ニップ部においてベルト8の表面に一次転写される。ドラム1側の残トナーはクリーニング装置6でドラム面から除去される。各画像形成部Uのドラム1に対するトナー像の形成は、各画像形成部Uのドラム1からベルト8へのトナー像の一次転写が順次に所定に重ね合わされた状態でなされるように制御される。
【0025】
かくして、第4の画像形成部UKの一次転写ニップ部を通ったベルト8の表面には、Y色+M色+C色+K色の4色重ね合わせのフルカラーの未定着トナー像が合成形成される。ローラ10にはベルト8を挟んで二次転写装置(ローラ)17が圧接している。ローラ17とベルト8との当接部が二次転写ニップ部である。ベルト8に形成されたトナー像は引き続くベルト8の移動で二次転写ニップ部に搬送される。
【0026】
一方、所定の制御タイミングにて、第1または第2の給紙カセット12,13の給紙ユニット14が駆動されてカセット12または13に積載収納されている記録材(以下、シートと記す)Sが一枚分離給送される。シートSは第1のシートパス15を通り、レジストローラ対16により二次転写ニップ部に対して所定の制御タイミングで導入される。これによりシートSは二次転写ニップ部を挟持搬送されるとともに、ローラ17に印加される所定の二次転写バイアスにより、シートSに対してベルト8側のトナー像が順次に一括して二次転写される。
【0027】
本実施例の画像形成装置100において大小各種幅サイズのシートSの通紙はシート幅中心を基線とする中央基準搬送でなされる。シートSの幅とはシート搬送方向に直交する方向のシート寸法である。
【0028】
二次転写ニップ部を通ったシートSはベルト8から分離されて搬送ベルト装置19により画像加熱装置としての定着装置(定着器:未定着画像を担持した記録材を加熱して画像定着する画像加熱部)20に導入される。ベルト8側の残トナーはローラ11のベルト懸回部に配設されているクリーニング装置18でベルト面から除去される。シートSは定着装置20により加熱加圧される。これにより未定着トナー像が固着画像としてシート面に熱圧定着される。
【0029】
定着装置20を出たシートSは定着装置20に隣接して配設された記録材冷却加湿装置(記録材冷却加湿部:以下、冷却装置と記す)21に導入されて加湿および冷却処理を受ける。定着装置20と冷却装置21については次の(2)項と(3)項で詳述する。
【0030】
冷却装置21を出たシートSは片面画像形成モードが選択されている場合には、フラッパ22の切換え制御により第2のシートパス23側に進路案内されて排出ローラ24により機外の排出トレイ25上に排出される。
【0031】
両面画像形成モードが選択されている場合には、冷却装置21を出た第1面側画像形成済みのシートSがフラッパ22の切換え制御により第3のシートパス26側に導入される。さらにスイッチバックシートパス27内に入り、次いで該シートパス27から引き出し搬送されてフラッパ28の切換え制御により再搬送シートパス(両面搬送パス)29に誘導される。そして、該シートパス29から第1のシートパス15に戻されて、レジストローラ対16により二次転写ニップ部に対して表裏反転状態で所定のタイミングで再導入される。
【0032】
これにより、シートSの第2面側に対して、ベルト8上のトナー像の二次転写がなされる。二次転写ニップ部にて第2面に対するトナー像の二次転写を受けたシートSはベルト8から分離されて定着装置20と冷却装置21へ順次に再導入され、画像の定着処理とシートSの加湿および冷却処理を受ける。そして、第2のシートパス23を通って両面画像形成物としてトレイ25に排出される。
【0033】
モノクロなどモノカラーモードは指定された色の画像形成部が画像形成動作することでなされる。他の画像形成部はドラムの回転はなされるが画像形成動作はなされない。なお、各色の画像形成部の配列順序は上記実施例のY色→M色→C色→K色に限られるものではなく任意の色順とすることができる。また、フルカラー画像形成装置において画像形成部の数は上記実施例の4つに限られるものではない。画像形成装置は画像形成部が一つのモノクロなどの単色画像形成装置であってもよい。
【0034】
(2)定着装置20
図2は定着装置20と冷却装置21の部分の概略図である。定着装置20は本実施例においては熱ローラ方式の装置であり、上下に並行に配列して圧接させた定着ローラ31と加圧ローラ32を有する。
【0035】
定着ローラ31はシートSの未定着トナー像(未定着画像)を担持した面(画像形成面)に接触する熱ローラとして、ハロゲンヒータ等の内蔵熱源33により内側から加熱されて表面温度が温調制御系(不図示)により所定の定着温度に維持される中空ローラである。加圧ローラ32は耐熱ゴム層を有する弾性ローラであり、定着ローラ31との圧接でシート搬送方向(記録材搬送方向)aにおいて所定幅の定着ニップ部N20を形成する。
【0036】
定着ローラ31は定着モータ(不図示)により矢印の時計方向に所定のプロセススピード(シート搬送速度)に対応した速度で回転駆動される。加圧ローラ32は定着ニップ部N20における定着ローラ31との摩擦力で定着ローラ31の回転に従動して矢印の反時計方向に回転する。定着ローラ31が回転駆動され、そして熱源33により加熱されて表面温度が所定の定着温度に温調維持された状態において、画像形成機構部側から上面に未定着トナー像を担持したシートSが定着装置20に送り込まれて定着ニップ部N20で挟持搬送される。
【0037】
これによりシートSが定着ニップ部N20で加熱加圧されて、画像形成面であるシート表面の未定着トナー像が固着画像として加熱加圧定着される。定着ニップ部N20のシート出口側には定着ローラ31と加圧ローラ32にそれぞれ先端部を近接または当接させて上側と下側のシート分離部材34と35が配設されており、定着ニップ部N20を出たシートSは定着ローラ31及び加圧ローラ32から分離される。そして、シートSは上側と下側のシート分離部材34と35の間を通り、更に上側と下側のシート搬送ガイド板36と37の間を通って次に説明する冷却装置21のニップ部N21に導入される。
【0038】
加圧ローラ32も熱源により所定の表面温度に加熱する装置構成にすることもできる。加圧ローラ32も駆動する構成にすることもできる。
【0039】
(3)冷却装置21
冷却装置21は定着装置20よりもシート搬送方向aの下流側(記録材搬送方向下流側)で、上記のシート分離部材34,35およびシート搬送ガイド板36,37を中にして、定着装置20に近接させて配設されている。定着装置20では熱をトナー及びシートに付加するので、シート内部の水分が定着ニップ部N20及び定着ニップ部通過後に蒸発する。冷却装置21は定着装置20を出た直後のシートSを加湿すると共に冷却する装置である。この装置21により画像形成装置100から排出されたシートSのカールや波打ちの発生を効果的に軽減することが可能となる。
【0040】
本実施例における冷却装置21は、定着装置20を出たシートSを挟持搬送しながら加湿と冷却を行うニップ部N21を形成する上側の第1のベルトユニット21Aと下側の第2のベルトユニット21Bとを有する。
【0041】
第1のベルトユニット21Aは、シート搬送方向aにおいて上流側と下流側とに所定の間隔をあけて並行に配列した水平2本の第1と第2のローラ41と42を有する。ローラ41と42の回転軸線は定着ローラ31の回転軸線と並行である。また、第2のローラ42の上方部において所定に間隔をあけて第2のローラ42に並行に配列した第3のローラ43を有する。また、第3のローラ43とほぼ同じ高さ位置であって、第1のローラ43よりも上流側である上側シート分離部材34の上方部に位置し、第3のローラ43に並行に配列した第4のローラ44を有する。
【0042】
そして、上記の第1乃至第4の並行4本のローラ41〜44に対して可撓性を有するエンドレスのベルト45が懸回張設されている。ベルト45の内側には第1の冷却平板(第1の冷却手段)46と第2の冷却平板(第2の冷却手段)47が配設されている。各冷却平板46と47の背面側には冷却平板の熱を放熱させる空冷式のヒートシンク46aと47aが配設されている。熱放熱性及び加工性を考慮してアルミを用いている。
【0043】
第1の冷却平板46は第1と第2のローラ41と42の間のベルト部分の内面に対してほぼ全面的に当接している。また、第2の冷却平板47は第4と第1のローラ44と41の間のベルト部分の内面に対してほぼ全面的に当接している。また、第3と第4のローラ43と44との間のベルト部分の外面には結露除去手段としてのブレード部材(板状の水分除去板)48が先端エッジ部を加圧当接させて配設されている。
【0044】
上記の第1のベルトユニット21Aにおいて、第2のローラ42は駆動ローラとされている。また、第3のローラ43はベルト45に張りを与えるテンションローラとされている。
【0045】
第2のベルトユニット21Bは、シート搬送方向aにおいて上流側と下流側とに所定の間隔をあけて並行に配列した水平2本の第1と第2のローラ51と52を有する。ローラ51と52の回転軸線は定着ローラ31の回転軸線と並行である。また、第2のローラ52の下方部において所定に間隔をあけて第2のローラ52に並行に配列した第3のローラ53を有する。また、第1のローラ51の下方部において所定に間隔をあけて第1のローラ51に並行に配列した第4のローラ54を有する。
【0046】
そして、上記の第1乃至第4の並行4本のローラ51〜54に対して可撓性を有するエンドレスのベルト55が懸回張設されている。第3のローラ53はベルト55に張りを与えるテンションローラとされている。ベルト55の内側には第3の冷却平板(第1の冷却手段)56が配設されている。この冷却平板55の背面側にもヒートシンク55aが配設されている。
【0047】
第3の冷却平板55は第1と第2のローラ51と52の間のベルト部分の内面に対してほぼ全面的に接している。また、第3と第4のローラ53と54との間のベルト部分の外面には結露除去手段としてのブレード部材58が先端エッジ部を加圧当接させて配設されている。
【0048】
第1と第2のベルトユニット21Aと21Bは、それぞれの第1のローラ41と51とが上下に対向してベルト45と56を挟んで所定の押圧力で圧接している。また、第2のローラ42と52とが上下に対向してベルト45と56を挟んで所定の押圧力で圧接している。また、第1の冷却平板46と第3の冷却平板56とが上下に対向してベルト45と56を挟んで所定の押圧力で圧接している。
【0049】
そして、第1のベルトユニット21Aにおける第1と第2のローラ41と42の間のベルト部分と、第2のベルトユニット21Bにおける第1と第2のローラ51と52の間のベルト部分と、が所定の押圧力で腹当てに密着している。これにより、シート搬送方向(記録材搬送方向)aにおいて幅広の平面的なニップ部N21が形成されている。
【0050】
第1のベルトユニット21Aにおけるベルト45は、駆動ローラである第2のローラ42が装置モータ(不図示)により駆動されることで矢印の時計方向に所定のプロセススピード(シート搬送速度)に対応した速度で回転駆動される。第2のベルトユニット21Bにおけるベルト55は、ニップ部N21におけるベルト45との摩擦力でベルト45の回転に従動して矢印の反時計方向に回転する。
【0051】
また、第1と第2のベルトユニット21Aと21Bのベルト45と55の内側にはそれぞれ送風装置(不図示)によりエアーが流される。これにより第1乃至第3の冷却平板46,47,56の各ヒートシンク46,47,56が空冷される。
【0052】
ベルト45と55はニップ部N21においてそれぞれ内面が第1の冷却平板46と第3の冷却平板56に密着して摺動移動する。これによりベルト45と55とがニップ部N21において冷却される。また、第1のベルトユニット21Aにおいて、第4と第1のローラ44と41の間のベルト部分が第2の冷却平板47により冷却される。
【0053】
本実施例において、ベルト45と55は幅560mmのポリイミド樹脂製である。ベルト幅とはシート搬送路面内においてシート搬送方向aに直交する方向の寸法である。ニップ部N21のシート搬送方向aにおける幅は400mm程度である。第1と第3の冷却平板46と56縦横寸法は400×400mm程度とした。
【0054】
60は定着装置20の定着ニップ部N20のシート出口部(記録材出口部)と冷却装置21のニップ部N21のシート入口部(記録材入口部)との間の離間空間部である。定着装置20の定着ニップ部N20を出たシートSは、離間空間部60において、上側と下側のシート分離部材34と35の間を通り、更に上側と下側のシート搬送ガイド板36と37の間を通って冷却装置21のニップ部N21に進入して挟持搬送される。
【0055】
ニップ部N21において第1のベルトユニット21Aのベルト45がシートSの画像形成面側に接触し、第2のベルトユニット21Bのベルト55がシートSの画像形成面側とは反対面側(裏面側)に接触する。シートSはその挟持搬送過程でニップ部N21内で、冷却平板46と56で冷却されるベルト45と55により密封冷却される。ベルト45と55は、シートSがニップ部N21に挿入されると同時的に冷却が開始されるように、ベルト45と55の密着が始まる位置と、冷却平板46と56による冷却が開始する位置をほぼ一致させている。
【0056】
また、密閉されたニップ部N21内で平面搬送されるシートSの画像形成面側に対して第1のベルトユニット21Aのベルト45から水分が付与される。この水分の付与は次のようにしてなされる。
【0057】
本実施例の冷却装置21においては、前記のように、ベルト45を懸架しているローラの1つである第4のローラ44を第1のローラ41よりも上流側で上側のシート分離部材34よりも上方部に配設している。これにより、第4のローラ44と第1のローラ41の間のベルト部分が定着装置20の定着ニップ部N20のシート出口部と冷却装置21のニップ部N21のシート入口部との間の離間空間部60において定着ローラ31の上部に向って張り出している。
【0058】
即ち、定着装置20の定着ニップ部N20のシート出口側と冷却装置21のニップ部N21のシート入口側との間で、上側のシート分離部材34と上側のシート搬送ガイド36の上方部に上記のベルト部分が展張されて位置する。
【0059】
以下、上記の第4のローラ44と第1のローラ41の間のベルト部分をベルト拡張部45Aとする。即ち、ベルト45はニップ部N21を構成すると共に、定着装置20の定着ニップ部N20のシート出口側と冷却装置21のニップ部N21のシート入口側との間の離間空間部60に及んでいるベルト拡張部45Aを構成している。
【0060】
定着装置20は定着ニップ部N20でシートSを挟持搬送して熱をトナー及びシートに付加するので、シート内部の水分が定着ニップ部N20及び定着ニップ部通過後に蒸発する。シートSが定着ニップ部N20を出て冷却装置21のニップ部N21に入る間の離間空間部60において、シートSの表面側に出た水蒸気は、上側のシート搬送ガイド板36に開けられた多数の通気孔や上側のシート分離部材34の間を通じて上方に立ち昇る。
【0061】
そして、その水蒸気は、シート搬送ガイド板36と、定着ローラ31と、上記のベルト拡張部45Aとで囲われる空間部分に篭り、第2のヒートシンク47で冷却されているベルト拡張部45Aの外面に対して結露水(水滴)となって付着する。bとcは立ち昇る水蒸気とベルト拡張部45Aの外面に対して付着した結露水を模式的に示したものである。70は離間空間部60からの水蒸気の流出を抑制するために離間空間部60を囲うように配設したハウジングを示す。
【0062】
ベルト拡張部45Aの外面に対して付着した結露水cが引き続くベルト45の回動によりニップ部N21に持ち運ばれてニップ部N21を挟持搬送されるシートSの画像形成面側(表面側)に付着する。即ち、シートSから蒸発した水分がベルト45に結露水cとして捕集され、その結露水cが再びシートSに対して還元(水分付与)されるのである。
【0063】
これにより、効率的にシートSに水分を留めることができシート波打ち及びカール低減に効果がある。さらに、シートSの密閉冷却を行うことで、シートSが高温・高湿のヤング率が低く、こわさが低下している状態でシートSを矯正することができるため、効果的にカール及び波打ちの軽減が可能となる。密閉空間においてシートSに冷却を行うため、シートが密閉空間から解放された時には、シートSは冷却されて水分を蒸発しない状態となり、結露などの問題が生じず、搬送性や積載性が安定する。
【0064】
効率的にシートSの波打ち及びカールを低減するには、定着装置20から出たシートSを冷却する冷却装置を定着装置20の直ぐ下流に設置したほうが良い。しかし、定着ローラ31の直ぐ下流にはシート分離部材34,35やシート搬送ガイド板36,37が配置されている。そのため、冷却装置自体を定着装置に近づけるには限界がある。
【0065】
本実施例のように、第1のベルトユニット21Aのベルト45の一部分を冷却平板47で冷却されるベルト拡張部45Aとして、定着装置直後の通紙面上部にシート分離部材34,35やシート搬送ガイド板36,37を避けて配置する。即ち、ベルト拡張部45Aを離間空間部60において定着ローラ31の上部に向って張り出させて配置する。これにより、上昇してきた水蒸気をベルト拡張部45Aに結露水として捕集して再びシートSに与える。この構成により、シート分離部材34,35やシート搬送ガイド板36,37の存在は問題とならない。
【0066】
第1と第2のベルトユニット21Aと21Bにおける結露除去手段としてのブレード部材48と58はそれぞれベルト45と55の外面の通紙領域外に付着してしまった水分を除去する役目をする。図3は定着装置20と冷却装置21の部分の平面図(上面図)であり、第1のベルトユニット21A側のブレード部材48が示されている。ブレード部材48は第2の冷却平板47の位置よりもベルト45の移動方向(ベルト回転方向)の上流側に配置されている。
【0067】
即ち、ブレード部材48は、第3のローラ43と第4のローラ44との間のベルト部分の外面に対して先端エッジ部を加圧当接させて、ベルト45の移動方向(ベルト回転方向)に対して45度の傾きを持たせて、かつベルト45を横断させて配設されている。Aはベルト45の外面の通紙領域、Bは通紙領域外を示している。通紙領域Aの幅と通紙領域外Bの幅は通紙されるシートSの幅の大小に応じて変わる。
【0068】
第1のベルトユニット21Aにおいて、ベルト45の通紙領域Aに対応する外面部分の結露水はニップ部N21に導入されたシートSの画像形成面側に対する水分付与に用いられる。通紙領域外Bに対応するベルト外面の結露水cはシートSに対する水分付与に用いられずに残留する。その残留結露水cはブレード部材48によりしごかれて斜め配設のブレード部材48の先端エッジ部に沿って高位の端部側から低位の端部側(一端側)に流れて集結しベルト45の外面から除去されて貯留タンク(水分回収ボックス)49内に回収される。
【0069】
第2のベルトユニット21Bのベルト55の通紙領域外Bに対応する外面にもニップ部N21において第1のベルトユニット21Aのベルト55の通紙領域外Bに対応するベルト外面の結露水は転写されて付着する。その付着結露水は第1のベルトユニット21Aの場合と同様にブレード58によりベルト外面から除去される。
【0070】
本実施例の冷却装置21の利用により、例えば、シート搬送速度475mm/s、定着ローラ31の温度170℃とし、6.0%の水分量を有するシートS(キヤノン製CS−814:81gsm)を250枚通紙し、積載した。
【0071】
冷却装置21を利用しない場合の最大波打ち高さは1.8mmであった。第2の冷却平板47がない場合の冷却装置21を利用した場合の最大波打ち高さは1.0mmとなり44%低減させることができる。このときのシートSの水分量は5.6%となる。これを一般的な放置環境例えば温度23℃、湿度50%の環境に1日放置するとシートSの水分量は6.3%となる。
【0072】
このとき250枚積載されたシートSは端部から水分を吸収しやすい。そのため、シートの中央と端部で水分量の差が生まれ、水分吸収が多い部分ではシートの膨張が大きいので中央と端部で伸縮差が生じ時間経過で波打ちが増大する。本条件では1日放置後最大波打ち高さが2.1mmに増加した。
【0073】
上記の比較例との対応において、本実施例に示す構成の場合は、最大波打ち高さは1.0mm、このときのシートSの水分量は5.9%、1日放置後最大波打ち高さは1.3mmに増加した。
【0074】
本実施例に示す構成を用いてシートの水分蒸発をさらに抑制すれば、定着装置通紙直後から環境に放置し水分平衡状態となるまでにシートが吸収する水分量を低減でき時間経過による波打ちの増大を抑制することができる。
【0075】
かくして、本実施例によれば、定着直後のシートSは冷却装置21のニップ部N21までの短期間においても水分が蒸発する。定着装置20と冷却装置21との間の離間空間部60の上部まで冷却装置21のベルト45を拡張する。そして、そのベルト拡張部45Aを冷却手段47で冷却する。
【0076】
これによりベルト拡張部45Aの冷却されたベルト部分に水蒸気が結露して付着し、その水分はベルト45の移動によって冷却装置21のニップ部N21内に搬送され、シートとベルトにニップされ再びシートに戻る。これにより効率的にシートの水分を留めることができシート波打ち及びカールを低減することができ、印刷機と同等な成果物品位を得ることができる。
【0077】
[実施例2]
本実施例2は、実施例1の冷却装置21において、図4に示すように、第2のベルトユニット21Bのベルト55にも、離間空間部60においてシートSから生じた水蒸気を結露水として捕集するベルト拡張部55Aを具備させたものである。
【0078】
即ち、ベルト55を懸架しているローラの1つである第4のローラ54を第1のローラ51よりも上流側で下側のシート分離部材35よりも下方部に配設している。これにより、第4のローラ54と第1のローラ51の間のベルト部分が加圧ローラ32の下部に向って張り出している。即ち、定着装置20の定着ニップ部N20のシート出口側と冷却装置21のニップ部N21のシート入口側との間で、下側のシート分離部材35と下側のシート搬送ガイド37の下方部に上記のベルト部分がベルト拡張部55Aとして展張されて位置する。
【0079】
このベルト拡張部55Aの内面側に第4の冷却平板(第2の冷却手段)57が配設されている。この冷却平板57の背面側にもヒートシンク57aが配設されている。冷却平板57はベルト拡張部55Aである第4と第1のローラ54と51の間のベルト部分の内面に対してほぼ全面的に接している。
【0080】
シートSが定着ニップ部N20を出て冷却装置21のニップ部N21に入る間の離間空間部60においてシートSの裏面側に出た水蒸気bは、下側のシート搬送ガイド板37に開けられた多数の通気孔や下側のシート分離部材35の間を通じて下方に流れる。そして、シート搬送ガイド板37と、加圧ローラ32と、上記のベルト拡張部55Aとで囲われる空間部分に篭る。
【0081】
そして、第4の冷却平板57で冷却されているベルト拡張部55Aの外面に対して結露水cとなって付着する。このようにベルト拡張部45Aの外面に対して付着した結露水cが引き続くベルト55の回動によりニップ部N21に持ち運ばれてニップ部N21で挟持搬送されるシートSの裏面側に付着する。
【0082】
従って、本実施例の冷却装置21においては、シートSの画像形成面側と裏面の両方から蒸発した水分を効率的にシートSに戻しシートの波打ち及びカールを低減させることが出来る。
【0083】
シートSの画像形成面に対して裏面のほうが比較的水分蒸発量は少ないが裏面からの水分蒸発を抑制しなければ画像形成面と裏面で水分量に差が生まれカールの原因となる。本実施例を用いることで裏面から蒸発した水分を再びシートに戻すことができ画像形成面と裏面での水分量差を抑えカールを抑制することが出来る。また、シートの画像形成面に加えて裏面への水分還元もあり、実施例1と比較して通紙前と通紙後の水分量差が小さくなる。これによりさらに時間経過による波打ち増加を抑制することできる。
【0084】
[実施例3]
本実施例3は、実施例1の冷却装置21においてベルト45のベルト拡張部45Aの外面に対する結露水の付着を、通紙されるシートSの幅にほぼ対応する通紙領域Aの部分に集中させるように構成したものである。即ち、ベルト拡張部45Aを冷却する第2の冷却平板(第2の冷却手段)47を、装置に通紙されるシートの幅サイズに応じてベルト拡張部45Aの幅方向における冷却範囲を変更可能に構成したものである。
【0085】
実施例1ではシートSから出た水蒸気を結露させるベルト45のベルト拡張部45Aの通紙領域外Bにおいても第2の冷却平板47はベルトを冷却しており、ベルト外面の通紙領域外Bに付着した水滴はシートSに還元されない。シートに還元されない水分が多ければ多いほど通紙後のシートの水分量は低くなり、放置環境からの吸湿量が多くなるので波打ちが増大する。
【0086】
よって、水分がベルト45の通紙領域外Bに付着することを抑制しほぼ通紙領域A内に水分付着が集中する手法を本実施例で説明する。本実施例においては、第2の冷却平板47は幅方向に複数に分割されている。そして、装置に通紙されるシートSの幅サイズに応じて前記複数の分割された冷却平板が選択的にベルト拡張部45Aに対して接離制御されることでベルト拡張部45Aの幅方向における冷却範囲の変更がなされる。
【0087】
より具体的には、図5の(a)は本実施例における冷却装置21の外観斜視図、(b)は(a)において第1のベルトユニット21Aからベルト45を省いた状態の外観斜視図である。また、図6の(a)と(b)は第2の冷却平板47(ヒートシンク47aも含む)について分割した可動の分割冷却平板のシフト機構の説明図である。
【0088】
本実施例においてはベルト45のベルト拡張部45Aを冷却する第2の冷却平板(ヒートシンク47aも含む)47についてその幅方向において5つの冷却平板部分に分割してある。即ち、中央部の冷却平板部分47(a)と、その両側のそれぞれ2つずつの冷却平板部分47(b)と47(c)の合計5つの冷却平板部分に分割してある。
【0089】
上記5つの分割冷却平板部分の全体の合計幅が装置に通紙使用可能な最大幅サイズのシート(大サイズシート)の幅にほぼ対応している。中央部の分割冷却平板部分47(a)の幅が通紙使用可能な最小幅サイズのシート(小サイズシート)の幅にほぼ対応している。そして、中央部とその両脇1つずつの分割冷却平板部分47(b)+47(a)+47(b)の合計幅が大サイズシートと小サイズシートの中間幅サイズの記録材(中サイズシート)の幅にほぼ対応している。
【0090】
中央部の分割冷却平板部分47(a)は、冷却平板をベルト45のベルト拡張部45Aの内面に対して接触させた状態にして位置を固定して配設されている。この中央部の分割冷却平板部分47(a)の両側のそれぞれ2つずつの分割冷却平板部分47(b)と47(c)はいずれも、図6のように、第1のローラ41側の端部を回動軸49に支持させてあり、この回動軸49を支点にして上下方向に回動可能である。
【0091】
また、第4のローラ44側の端部にはそれぞれ腕部50が設けられており、その各腕部50にそれぞれ対応して腕部50に作用する偏心カム103が配設されている。各偏心カム103はそれぞれ制御回路部101で制御される駆動部102により軸部103aを中心に、図6の(a)のように、小径部が腕部50に対応した第1回転角姿勢と、(b)のように、大径部が腕部50に対応した第2回転角姿勢と、に回転駆動される。
【0092】
対応する偏心カム103が第1回転角姿勢にされることで、分割冷却平板部分47(b)と47(c)は個々に回動軸49を支点にして下げ回動されてベルト拡張部45Aの内面に対して接触した状態に保持される(図6の(a))。また、対応する偏心カム103が第2回転角姿勢にされることで、分割冷却平板部分47(b)と47(c)は個々に回動軸49を支点にして上げ回動されてベルト拡張部45Aの内面から離された状態に保持される(図6の(b))。
【0093】
制御回路部101にはホスト装置あるいは操作部(不図示)から通紙されるシートSのサイズ情報Dが入力する。
【0094】
制御回路部101は入力したサイズ情報Dが大サイズシートである場合には、全ての可動の分割ヒートシンク部分に対応する偏心カム103を第1回転角姿勢に制御する。これにより、中央部の分割冷却平板部分47(a)も含めて5つ全ての分割冷却平板部分がベルト拡張部45Aの内面に対して接触した状態になる。よって、ベルト拡張部45Aの大サイズシートの幅にほぼ対応する通紙領域Aが冷却され、その通紙領域Aに対応するベルト外面に対して結露水cが付着する。
【0095】
また、制御回路部101は入力したサイズ情報Dが小サイズシートである場合には、全ての可動の分割冷却平板部分に対応する偏心カム103を第2回転角姿勢に制御する。これにより、中央部の分割冷却平板部分47(a)だけがベルト拡張部45Aの内面に対して接触した状態になる。よって、ベルト拡張部45Aの小サイズシートの幅にほぼ対応する通紙領域Aが冷却され、その通紙領域Aに対応するベルト外面に結露水が付着する。
【0096】
また、制御回路部101は入力したサイズ情報Dが中サイズシートである場合には、中央部の分割冷却平板部分47(a)の両側の1つずつの可動の分割冷却平板部分47(b),47(b)に対応する偏心カム103を第1回転角姿勢に制御する。これにより、その分割冷却平板部分47(b),47(b)がそれぞれベルト拡張部45Aの内面に対して接触した状態になる。
【0097】
また、それらの分割冷却平板部分47(b),47(b)の更に外側の可動の分冷却平板部分47(c),47(c)に対応する偏心カム103を第2回転角姿勢に制御する。これにより、その分割冷却平板部分47(c),47(c)がそれぞれベルト拡張部45Aの内面から離された状態に保持される(図5の(b)、図6の(b))。
【0098】
よって、ベルト拡張部45Aの内面には中央部の分割冷却平板部分47(a)とその両側の1つずつの分割冷却平板部分47(b),47(b)とが接触した状態にされる。これにより、ベルト拡張部45Aの中サイズシートの幅にほぼ対応する通紙領域Aが冷却され、その通紙領域Aに対応するベルト外面に結露水cが付着する。
【0099】
本実施例では、上記のような第2の冷却平板47の分割シフト構成により、装置に通紙されるシートSの幅サイズに応じて、第2の冷却平板47のベルトに対する接触幅を変更し、ベルト拡張部45Aの幅方向における冷却範囲を変更する。接触する可動の分割冷却平板は各シートサイズ以下(シートの通紙領域幅以下)になるようにシートサイズに応じて接触範囲を設定している。
【0100】
ベルト拡張部45Aの幅方向における冷却範囲を通紙されるシートの通紙領域幅以下に設定すると、ベルト拡張部45AにはシートSから蒸発した水分が結露水として通紙領域A内で付着する。これにより、通紙されるシートの幅サイズに応じて水分をシートに還元できる。
【0101】
ここで、ベルト拡張部45Aにおける冷却範囲を通紙領域幅以下に設定した理由は、シートの端部は中央に比べ冷却されやすく放置後吸湿もしやすいのためシート端部は中央に比べ冷却効果が低くても良いため。また、シートSの幅サイズは無数にあり、それに応じてヒートシンク47を分割することはできないため、3から5個程度に分割し冷却範囲が、常に、通紙されるシートの幅以下(シートの通紙領域幅以下)になるように設定した。
【0102】
これによりシートサイズに応じて適した範囲に水分を還元することが出来るので、カール及び波打ちの低減効率があがりベルト45の通紙領域外の結露も軽減できる。
【0103】
本実施例の第2の冷却平板47の分割シフト構成は、実施例2(図4)における第2のベルトユニット21B側のベルト拡張部55Aを冷却する第4の冷却平板57にも適用することができる。
【0104】
[実施例4]
本実施例4は、実施例1の冷却装置21における第2の冷却平板47を、図7のように、ベルト拡張部45Aの内面に当接しており、当接部はベルト45の回転方向に湾曲しベルト45の外側方向に凸となるように湾曲している湾曲部を有する形態にしたものである。
【0105】
この構成により、ベルト拡張部45Aの外面にたいする結露水の付着をより効果的なものにすることができる。この構成は、実施例2(図4)における第2のベルトユニット21B側のベルト拡張部55Aを冷却する第4の冷却平板57にも適用することができる。
【0106】
[実施例5]
本実施例5は、実施例1または実施例4の冷却装置21における第1と第2の冷却平板46と47を、図8の(a)または(b)のように一連につなげた構成としたものである。この構成は、実施例2(図4)における第2のベルトユニット21B側の第3と第4の冷却平板56と57にも適用することができる。
【0107】
[実施例6]
本実施例6は実施例1における第2のベルトユニット21Bを、図9の(a)のように、シート摺動板21Cに変更、或いは(b)のように、シート搬送方向aにおいて間隔をあけて配列した並行複数本の回転ローラ21Dに変更したものである。
【0108】
図9の(a)のシート摺動板21Cは第1のベルトユニット21Aの第1と第2のローラ41と42、及びその間の第1の冷却平板46に対してベルト45を挟んで圧接して、ベルト45とニップ部N21を形成している。シート摺動板21Cのベルト対向面はシートSの裏面が摺動する低摩擦材料面としている。
【0109】
図9の(b)の並行複数本の回転ローラ21Dも、第1のベルトユニット21Aの第1と第2のローラ41と42、及びその間の第1の冷却平板46に対してベルト45を挟んで圧接して、ベルト45とニップ部N21を形成している。
【0110】
[その他の装置構成]
1)冷却手段である各冷却平板46,47,56,57がベルト45や55から奪熱した熱を放熱させる熱移動手段はヒートシンクに限られない。ヒートパイプなどであってもよい。また、冷却手段は冷却平板に限られない。冷風装置などその他の適宜の冷却手段を用いることができる。
【0111】
2)画像加熱部としての画像加熱定着装置は実施例の熱ローラ方式に限られない。熱チャンバー方式、赤外線照射方式、電磁加熱方式など従来公知の各種構成の加熱方式の定着装置を使用することができる。
【0112】
3)また画像加熱部は画像加熱定着装置に限られない。記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢増大装置(画像改質装置)であってもよい。
【0113】
4)画像形成装置の画像形成部は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式で未定着画像を形成する構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0114】
20・・画像加熱部、21・・記録材冷却加湿装置、45・・ベルト、45A・・ベルト拡張部、N21・・ニップ部、S・・記録材、60・・離間空間部、46・・第1の冷却手段、47・・第2の冷却手段、b・・水蒸気、c・・結露水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像加熱部を通って加熱された状態にある記録材をニップ部にて挟持搬送して冷却すると共に加湿する記録材冷却加湿装置であって、
前記ニップ部を構成すると共に、前記画像加熱部の記録材出口部と前記ニップ部の記録材入口部との間の離間空間部に及んでいるベルト拡張部を構成している回転可能なエンドレスのベルトと、
前記記録材を前記ニップ部において前記ベルトを介して冷却する第1の冷却手段と、
前記ベルト拡張部を冷却して前記離間空間部において前記画像加熱部を通って加熱された状態にある記録材から出る水蒸気を前記ベルト拡張部の外面に結露水として付着させる第2の冷却手段と、
を有することを特徴とする記録材冷却加湿装置。
【請求項2】
前記ベルトは前記ニップ部において前記記録材の画像形成面側に接触することを特徴とする請求項1に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項3】
前記ベルトは前記ニップ部において前記記録材の画像形成面側とは反対面側に接触することを特徴とする請求項1に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項4】
前記ニップ部において前記記録材の画像形成面側に接触するベルトと前記画像形成面側とは反対面側に接触するベルトを有することを特徴とする請求項1に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項5】
前記第2の冷却手段は前記記録材の画像形成面側に接触するベルトの側と前記画像形成面側とは反対面側に接触するベルトの側の少なくとも1つの側に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項6】
前記第2の冷却手段の幅はシートの通紙領域幅以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項7】
前記第2の冷却手段は装置に通紙される記録材の幅サイズに応じて前記ベルト拡張部の幅方向における冷却範囲を変更することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項8】
前記第2の冷却手段は幅方向に複数に分割されており、装置に通紙される記録材の幅サイズに応じて前記複数の分割された冷却手段が選択的に前記ベルト拡張部に対して接離制御されることで前記ベルト拡張部の幅方向における冷却範囲の変更がなされることを特徴とする請求項7に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項9】
前記第2の冷却手段は前記ベルト拡張部の内面に当接しており、当接部は前記ベルトの回転方向に湾曲し前記ベルトの外側方向に凸となるように湾曲している湾曲部を有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項10】
前記第2の冷却手段はヒートシンクを有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項11】
前記ベルトの外面の残留結露水を除去する結露除去手段を有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項12】
前記結露除去手段は前記第2の冷却手段の位置よりもベルト回転方向の上流側に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項13】
前記結露除去手段は前記ベルトの外面に当接されたブレード部材であることを特徴とする請求項10または12に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項14】
前記ブレード部材の幅は前記ベルトの幅よりも大きくベルト回転方向に対して傾きを有し、前記ブレード部材の一端側に水分を回収するための水分回収ボックスが設置されていることを特徴とする請求項13に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項15】
前記離間空間部からの水蒸気の流出を抑制するハウジングを有することを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項16】
記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、前記未定着画像を担持した記録材を加熱して画像定着する画像加熱部と、前記画像加熱部を通って加熱された状態にある記録材をニップ部にて挟持搬送して冷却すると共に加湿する冷却加湿部と、を有する画像形成装置であって、前記冷却加湿部が請求項1乃至15の何れか一項の記録材冷却加湿装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
画像を担持した記録材を加熱する画像加熱部と、
前記画像加熱部を通って加熱された状態にある記録材をニップ部にて挟持搬送して冷却すると共に加湿する記録材冷却加湿部であって、前記ニップ部を構成すると共に、前記画像加熱部の記録材出口部と前記ニップ部の記録材入口部との間の離間空間部に及んでいるベルト拡張部を構成している回転可能なエンドレスのベルトと、前記記録材を前記ニップ部において前記ベルトを介して冷却する第1の冷却手段と、前記ベルト拡張部を冷却して前記離間空間部において前記画像加熱部を通って加熱された状態にある記録材から出る水蒸気を前記ベルト拡張部の外面に結露水として付着させる第2の冷却手段と、
を有することを特徴とする画像加熱システム。
【請求項18】
前記ベルトは前記ニップ部において前記記録材の画像形成面側に接触することを特徴とする請求項17に記載の画像加熱システム。
【請求項19】
前記ベルトは前記ニップ部において前記記録材の画像形成面側とは反対面側に接触することを特徴とする請求項17に記載の画像加熱システム。
【請求項20】
前記ニップ部において前記記録材の画像形成面側に接触するベルトと前記画像形成面側とは反対面側に接触するベルトを有することを特徴とする請求項17に記載の画像加熱システム。
【請求項21】
前記第2の冷却手段は前記記録材の画像形成面側に接触するベルトの側と前記画像形成面側とは反対面側に接触するベルトの側の少なくとも1つの側に設置されていることを特徴とする請求項19に記載の画像加熱システム。
【請求項22】
前記第2の冷却手段の幅はシートの通紙領域幅以下であることを特徴とする請求項17乃至21の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項23】
前記第2の冷却手段は装置に通紙される記録材の幅サイズに応じて前記ベルト拡張部の幅方向における冷却範囲を変更することを特徴とする請求項17乃至22の何れか1項に記載の画像加熱システム。
【請求項24】
前記第2の冷却手段は幅方向に複数に分割されており、装置に通紙される記録材の幅サイズに応じて前記複数の分割された冷却手段が選択的に前記ベルト拡張部に対して接離制御されることで前記ベルト拡張部の幅方向における冷却範囲の変更がなされることを特徴とする請求項23に記載の画像加熱システム。
【請求項25】
前記第2の冷却手段は前記ベルト拡張部の内面に当接しており、当接部は前記ベルトの回転方向に湾曲し前記ベルトの外側方向に凸となるように湾曲している湾曲部を有することを特徴とする請求項17乃至24の何れか1項に記載の画像加熱システム。
【請求項26】
前記第2の冷却手段はヒートシンクを有することを特徴とする請求項17乃至25の何れか1項に記載の画像加熱システム。
【請求項27】
前記ベルトの外面の残留結露水を除去する結露除去手段を有することを特徴とする請求項17乃至26の何れか1項に記載の画像加熱システム。
【請求項28】
前記結露除去手段は前記第2の冷却手段の位置よりもベルト回転方向の上流側に配置されていることを特徴とする請求項27に記載の画像加熱システム。
【請求項29】
前記結露除去手段は前記ベルトの外面に当接されたブレード部材であることを特徴とする請求項27または28に記載の画像加熱システム。
【請求項30】
前記ブレード部材の幅は前記ベルトの幅よりも大きくベルト回転方向に対して傾きを有し、前記ブレード部材の一端側に水分を回収するための水分回収ボックスが設置されていることを特徴とする請求項29に記載の画像加熱システム。
【請求項31】
前記離間空間部からの水蒸気の流出を抑制するハウジングを有することを特徴とする請求項17乃至30の何れか1項に記載の画像加熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−88564(P2013−88564A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227899(P2011−227899)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】