説明

記録画像作成プログラムおよび多機能周辺装置

【課題】記録媒体上に重畳して記録される画像と文書との両方の視認性をバランス良く設定することができる記録画像作成プログラムおよび多機能周辺装置を提供すること。
【解決手段】記録用紙P上に画像Gと文字Mとが重畳した印刷画像Kを印刷する場合、図7(a)に示すように、画像Gの透過率N1が低く(濃度が薄く)、画像Gが視認し難い場合には、図7(b)に示すように、画像Gの透過率が高く(濃度が濃く)なるように、画像Gの透過率N1を透過率N2に設定し、画像Gの視認性を向上させる。その結果、文字Mが視認し難くなるものの、図7(c)に示すように、文字Mの線分太さが、太くなるように、文字Mの線分太さT1を線分太さT2に設定することで、文字Mの視認性が向上し、画像Gと文字Mとの両方の視認性をバランス良く設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録画像作成プログラムおよび多機能周辺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、写真やイラストを例とする画像の上に文書を重ねて構成される記録画像を作成する記録画像作成プログラムが知られている。例えば、パーソナルコンピュータにインストールされているプリンタドライバには、文書作成用のアプリケーションで作成した文書を記録用紙に印刷する場合に、WaterMarkとして所定の画像が選択されると、その画像上に文書を重ねて構成される記録画像を作成する機能を備えたものが知られている。しかし、この記録画像では、画像の透過率が高い(濃度が濃い)場合、その画像と重複する文書が視認しづらいという問題点があった。
【0003】
一方、この問題点に関連し、次の特許文献1には、絵柄領域と背景領域とから成る元画像のうち、絵柄領域をマスクするマスク画像と、元画像とを重畳表示させる場合には、元画像を透過率tに設定し、マスク画像の色Iに(1−t)の割合で色付けをして表示する。そして、透過率tを可変可能に構成することで、絵柄領域と背景領域との境界が、良好に視認できるようにする技術が記載されている。
【特許文献1】特開平8−241394号公報(段落第0031乃至0037、図4,図5等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透過率が高い(濃度が濃い)画像と重複する文書を視認し易くするために、上述した特許文献1に記載されている技術を利用した場合、文書の視認性を向上させることはできたとしても、画像が視認し難くなるという問題点があった。即ち、画像と文書との両方の視認性を、バランス良く設定するのが困難であるという問題点があった。
【0005】
具体的には、文書を構成する文字、記号、符合、数字を例とする文書構成要素の各々は、所定太さ(所定幅)の線分で構成されており、一定領域を占める画像よりも一般的に視認し難いので、文書の透過率はある程度高く(濃度を濃く)設定する必要があった。そのため、画像の透過率が低くなり、画像が視認し難くなるという問題点があった。即ち、画像と文書との両方の視認性を、バランス良く設定するのが困難であるという問題点があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、記録媒体上に重畳して記録される画像と文書との両方の視認性をバランス良く設定することができる記録画像作成プログラムおよび多機能周辺装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載の記録画像作成プログラムは、記録媒体に背景として記録される画像と、その画像上に重ねて前記記録媒体に記録される文書とによって構成される記録画像を作成するものであって、前記画像を取得する第1取得ステップと、前記文書を取得する第2取得ステップと、前記第1取得ステップで取得した画像の透過率を設定する第1設定ステップと、その第1設定ステップで設定した透過率に応じて、前記第2取得ステップで取得した文書を構成する文字、記号、符合、数字を例とする文書構成要素の線分幅を設定する第2設定ステップと、前記第1設定ステップで設定した透過率で構成される前記第1取得ステップで取得した画像に、前記第2設定ステップで設定した線分幅の文書構成要素で構成される前記第2取得ステップで取得した文書を重ねて構成される記録画像を作成する作成ステップとを備えている。
【0008】
請求項2記載の記録画像作成プログラムは、請求項1に記載の記録画像作成プログラムにおいて、前記第2設定ステップは、前記第1設定ステップで設定した透過率が所定の基準よりも高い程、前記文書構成要素の線分幅を太く設定し、又は、前記第1設定ステップで設定した透過率が所定の基準よりも低い程、前記文書構成要素の線分幅を細く設定する。
【0009】
請求項3記載の記録画像作成プログラムは、請求項2に記載の記録画像作成プログラムにおいて、前記所定の基準は、中域程度の所定範囲に設定されており、前記第2取得ステップは、前記文書を取得した当初における前記文書構成要素の線分幅を当初幅として取得し、前記第2設定ステップは、前記第1設定ステップで設定した透過率が前記所定の基準に含まれている場合には、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅に設定し、前記第1設定ステップで設定した透過率が前記所定の基準よりも高い程、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅よりも太く設定し、前記第1設定ステップで設定した透過率が前記所定の基準よりも低い程、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅よりも細く設定する。
【0010】
請求項4記載の記録画像作成プログラムは、請求項3に記載の記録画像作成プログラムにおいて、前記第2設定ステップは、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅よりも太く設定する場合、前記当初幅が太い程、前記文書構成要素の線分幅を太く設定し、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅よりも細く設定する場合、前記当初幅が太い程、前記文書構成要素の線分幅を細く設定する。
【0011】
請求項5記載の記録画像作成プログラムは、請求項3又は4に記載の記録画像作成プログラムにおいて、前記当初幅が所定の閾値よりも細いかを判断する判断手段と、その判断手段によって前記当初幅が所定の閾値よりも細いと判断された場合に、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅に設定する第3設定ステップを備え、前記作成ステップは、前記判断手段よって前記当初幅が所定の閾値よりも細いと判断された場合には、前記第1設定ステップで設定した透過率で構成される前記第1取得ステップで取得した画像に、前記第3設定ステップで設定した線分幅の文書構成要素で構成される前記第2取得ステップで取得した文書を重ねて構成される記録画像を作成する。
【0012】
請求項6記載の多機能周辺装置は、前記画像を格納する格納手段と、前記文書が記録されている記録媒体から前記文書を読み取る読取手段と、記録媒体に記録する記録手段とを備えたものであって、請求項1から5のいずれかに記載の記録画像作成プログラムを備え、前記第1取得ステップは前記格納手段に格納されている画像を取得し、前記第2取得ステップは前記読取手段で読み取った文書を取得し、前記作成ステップは、その作成した記録画像を前記記録手段によって記録媒体に記録する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の記録画像作成プログラムによれば、第1ステップで取得した画像上に第2ステップで取得した文書を重ねて構成される記録画像が作成ステップによって作成される場合、その画像の透過率は、第1設定ステップで設定した透過率で構成される。また、文書を構成する文字、記号、符合、数字を例とする文書構成要素の線分幅は、第1設定ステップで設定した画像の透過率に応じて、第2設定ステップで設定される線分幅で構成される。よって、第1設定ステップで画像が視認し易いように設定された透過率では、文書が視認しにくい状況になったとしても、第2設定ステップで文書構成要素の線分幅を調節設定することで、文書をも視認し易くすることができる。従って、記録媒体上に重畳して記録される画像と文書との両方の視認性をバランス良く設定することができるという効果がある。
【0014】
請求項2記載の記録画像作成プログラムによれば、請求項1に記載の記録画像作成プログラムの奏する効果に加え、第2設定ステップは、第1設定ステップで設定した透過率が所定の基準よりも高い程、文書構成要素の線分幅を太く設定する。よって、画像の透過率が低い場合に画像の透過率を高く設定し、画像の視認性を良好な状態にできたとしても、文書が視認し難くなる可能性があるが、文書構成要素の線分太さを太く設定することで、文書の視認性をも良好な状態に設定することができる。または、第2設定ステップは、第1設定ステップで設定した透過率が所定の基準よりも低い程、文書構成要素の線分幅を細く設定する。よって、画像の透過率が高い場合に画像の透過率を低く設定し、画像の視認性を良好な状態にできたとしても、文書が極端に目立ち、記録画像全体のバランスが崩れる可能性があるが、文書構成要素の線分太さを細く設定することで、記録画像全体のバランスを良好な状態に設定することができる。従って、記録媒体上に重畳して記録される画像と文書との両方の視認性をバランス良く設定することができるという効果がある。
【0015】
請求項3記載の記録画像作成プログラムによれば、請求項2に記載の記録画像作成プログラムの奏する効果に加え、第2設定ステップは、第1設定ステップで設定した透過率が中域程度の所定範囲に含まれている場合、記録する文書構成要素の線分幅を第2取得ステップで取得した文書の当初幅に設定し、かかる透過率が中域程度の所定範囲よりも高い程、記録する文書構成要素の線分幅を当初幅よりも太く設定し、かかる透過率が中域程度の所定範囲よりも低い程、記録する文書構成要素の線分幅を当初幅よりも細く設定する。即ち、画像透過率の中域程度を基準に、文書構成要素の線分幅を設定するので、画像の視認性を良好な状態に設定しつつ、当初幅として指示されている文書構成要素の線分幅が大きく変化するのを抑制することができる。従って、当初の文書構成要素の線分幅から受ける印象を極力維持しつつ、記録媒体上に重畳して記録される画像と文書との両方の視認性をバランス良く設定することができるという効果がある。
【0016】
請求項4記載の記録画像作成プログラムによれば、請求項3に記載の記録画像作成プログラムの奏する効果に加え、第2設定ステップは、文書構成要素の線分幅を当初幅よりも太く設定する場合、当初幅が太い程、文書構成要素の線分幅を太く設定し、文書構成要素の線分幅を当初幅よりも細く設定する場合、当初幅が太い程、文書構成要素の線分幅を細く設定する。よって、記録媒体上に重畳して記録される画像と文書との両方の視認性を一層バランス良く設定することができるという効果がある。
【0017】
請求項5記載の記録画像作成プログラムによれば、請求項3又は4に記載の記録画像作成プログラムの奏する効果に加え、第2ステップで取得した文書の当初幅が判断手段によって所定の閾値よりも細いと判断された場合、作成ステップは記録画像における文書構成要素の線分幅を、第1設定ステップで設定した画像の透過率にかかわらず、第3設定ステップで設定した当初幅で構成する。よって、文書構成要素の幅が所定の閾値より細くなって、文書構成要素の各々が視認し難くなるのを抑制することができるという効果がある。
【0018】
請求項6記載の多機能周辺装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の記録画像作成プログラムを備え、第1取得ステップは格納手段に格納されている画像を取得し、第2取得ステップは読取手段で読み取った文書を取得し、作成ステップは、その作成した記録画像を記録手段によって記録媒体に記録するので、請求項1から5のいずれかに記載の記録画像作成プログラムの奏する効果に加え、一つの装置で、画像の上に文書を重ねて構成される記録画像を、画像と文書との両方の視認性がバランス良くとれた状態で記録媒体上に記録することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である複合機10の外観斜視図である。この複合機10には、後述する印刷処理プログラムが格納されており、この印刷処理プログラムにより、記録媒体の一例である記録用紙上に重畳して印刷される画像と文書との両方の視認性をバランス良く設定することができる装置である。
【0020】
複合機10は、通話機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能、及び、コピー機能などの各種の機能を有し、主に、下部に設けられるプリンタ部11と、上部に設けられるスキャナ部12と、正面上部に設けられる操作パネル40と、正面に設けられるスロット部43とが設けられている。
【0021】
プリンタ部11は、正面に開口13が形成されており、この開口13から一部が露呈するようにして給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20は、記録用紙を積載するためのものである。この給紙トレイ20に積載された記録用紙は、プリンタ部11の内部へ給送され、所望の画像が印刷された後に排紙トレイ21へ排出されるようになっている。
【0022】
スキャナ部12は、いわゆるフラットベッドスキャナとして構成されている。原稿カバー30は、複合機10の天板として設けられており、その原稿カバー30の下には、図示しないプラテンガラスが配置されている。原稿は、プラテンガラス上に載置され、原稿カバー30に覆われた状態でスキャナ部12に読み取られる。例えば、原稿に、文字、記号、符合、数字を例とする文書構成要素の集合として構成されている文書が記載されている場合には、この文書がスキャナ部12によって読み取られる。
【0023】
操作パネル40は、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するためのものであって、各種操作ボタンや液晶表示部が設けられている。ユーザは、操作パネル40を操作することで、各種機能の設定や動作を実行することができる。例えば、ファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能、及び、コピー機能などの各種機能の選択や、記録用紙の種類(普通紙又は葉書)の設定や、片面印刷モードの設定、両面印刷モードの設定等を、操作パネル40を介して指示することができる。
【0024】
また、特に、本実施形態では、コピー機能の一部としてWaterMark機能が搭載されている。WaterMark機能は、後述する小型メモリカードに格納されている画像や、スキャナ部12で原稿から読み取った画像や、内部メモリに予め記憶されている所定の画像をWaterMarkとして、このWaterMarkに、スキャナ部12で原稿から読み取った文書を重畳させた印刷画像を記録用紙に印刷する機能である。そして、このWaterMark機能を実行する場合のユーザからの指示が、この操作パネル40を介して入力される。
【0025】
スロット部43は、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填され得るように構成されている。例えば、スロット部43に小型メモリカードが装填された状態でユーザーが操作パネル40の操作を行うことにより、小型メモリカードに記憶された画像データを読み出し、その読み出した画像データを液晶表示部に表示したり、記録用紙に印刷することができる。
【0026】
次に、図2を参照して、プリンタ部11の構成について略述する。図2は、プリンタ部11の構造を示す縦断面図である。プリンタ部11には、給紙トレイ20の上側に配置されている給紙ローラ25と、給紙トレイ20の一端側から立設する分離傾斜壁22と、分離傾斜壁22から連続して延び、U字状の経路を形成する搬送路23と、搬送路23の一端側に配置されている搬送ローラ60と、搬送ローラ60から搬送される記録用紙を支持するプラテン42と、プラテン42と対向配置されキャリッジ38に搭載されている記録ヘッド39と、記録ヘッド39を搬送ローラ60との間に挟んで配置される排紙ローラ62と、排紙ローラ62から搬送される記録用紙を挟持する第1ローラ45および第2ローラ46と、第2ローラ46を一端側に軸支して、上流側に延び、第1ローラ45の回転中心を中心に回動可能な経路切換アーム41と、経路切換アーム41の他端側から給紙ローラ25に向かって延びる裏面用経路16とによって構成されている。
【0027】
このプリンタ部11で、記録用紙の片面(表面)に画像を印刷する場合には、給紙トレイ20に積載されている記録用紙が給紙ローラ25によって分離傾斜壁22に向けて給紙され、引続き、搬送路23に沿って下流側に搬送される。そして、搬送ローラ60によって、プラテン42と記録ヘッド39との間に搬送され、その間に記録ヘッド39から記録用紙の片面(表面)にインクが吐出され、記録用紙の片面(表面)に画像が印刷される。片面(表面)に画像が印刷された記録用紙は、排紙ローラ62と、第1ローラ45および第2ローラ46とによって下流側に搬送され、排紙トレイ21に排紙される。
【0028】
一方、記録用紙の両面(表裏面)に画像を印刷する場合には、上述したのと同様に片面(表面)に画像が印刷され、片面(表面)に画像が印刷された記録用紙の一端側が排紙ローラ62の下流側に位置する用紙ガイド面32に支持され、他端側が第1ローラ45および第2ローラ46によって挟持されている状態で、一旦停止される。
【0029】
そして、この状態において、経路切換アーム41を図2に示す状態から第1ローラ45の回転中心を中心に反時計回りに回動させ、経路切換アーム41で記録用紙を押し下げる。これにより、記録用紙は、用紙ガイド面32に支持されている方の先端部から裏面用経路16に進入する。そして、第1ローラ45および第2ローラ46を逆転駆動すると、記録用紙は裏面用経路16内を搬送され、表面が給紙ローラ25に当接する。その後は、片面印刷の場合と同様に、再び、給紙ローラ25によって給紙され、記録ヘッド39によって裏面に画像が印刷された後で、排紙トレイ21に排紙される。
【0030】
次に、図3を参照して、複合機10の制御部84の構成について説明する。図3は、複合機10の制御部84の構成を示すブロック図である。制御部84は、プリンタ部11のみでなくスキャナ部12も含む複合機10の全体動作を制御するものであるが、スキャナ部12についての詳細な説明は省略する。
【0031】
制御部84は、図に示すように、CPU(Central Processing Unit)88、ROM(Read Only Memory)89、RAM(Random Access Memory)90、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納されるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)91を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス92を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)93に接続されている。
【0032】
ROM89には、複合機10の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。例えば、図5に示す印刷処理を複合機10に実行させる印刷処理プログラム89aが格納されている。
【0033】
RAM90は、CPU88が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又は作業領域として使用される。RAM90には、画像データメモリ90a、文書データメモリ90b、印刷画像データメモリ90c、透過率メモリ90d、線分太さメモリ90e、ポインタ90fの各領域が割り当てられている。
【0034】
画像データメモリ90aは、コピー機能の一部に含まれているWaterMark機能を使用する場合に、WaterMarkとして記録用紙に印刷する画像のデータを一時的に記憶する領域である。文書データメモリ90bは、WaterMarkとしての画像と重畳して記録用紙に印刷する文書のデータを一時的に記憶する領域である。印刷画像データメモリ90cは、WaterMark機能によって記録用紙に印刷する印刷画像のデータを一時的に記憶する領域である。
【0035】
透過率メモリ90dは、WaterMarkとして記録用紙に印刷する画像の透過率を一時的に記憶する領域である。線分太さメモリ90eは、WaterMarkとしての画像と重畳して記録用紙に印刷する文書を構成する文書構成要素(例えば、文字、記号、符合、数字)の当初の線分太さを一時的に記憶する領域である。ポインタ90fは、透過率メモリ90dに記憶されている画像の透過率が示すアドレスを、後述する線分太さ設定テーブル(図4参照)において指し示すものである。
【0036】
EEPROM91は、書き換え可能な不揮発性のメモリであり、線分太さ設定メモリ91aが割り当てられている。この線分太さ設定メモリ91aには、図4に示す線分太さ設定テーブルが格納されている。図4は、この線分太さ設定テーブルの構成を模式的に示す図である。
【0037】
図4に示すように、線分太さ設定テーブルは、WaterMark機能によって記録用紙に印刷される印刷画像に関し、その印刷画像に含まれる画像の透過率に応じて設定される文書構成要素の線分太さを設定するためのテーブルであり、「透過率」欄と、「透過率」欄に応じた「線分太さ」欄とが設けられている。
【0038】
「透過率」欄は、WaterMarkとして印刷される画像の透過率を示し、0%〜100%までを10%毎にグループ化して区画されており、そのパーセンテージが高い程、画像の濃度が濃く、そのパーセンテージが低い程、画像の濃度が薄いことを示している。
【0039】
「線分太さ」欄は、記録用紙に印刷される文書構成要素の線分太さを示し、「線分太さ」欄は、更に「10ドット以上30ドット以下」欄と、「31ドット以上」欄とに区画されている。そして、この「10ドット以上30ドット以下」欄と、「31ドット以上」欄との各々には、WaterMarkとして印刷される画像の透過率に応じて設定される文書構成要素の線分太さの設定条件が記憶されている。
【0040】
この設定条件は、画像の透過率「40%〜50%」と、当初の文書構成要素の線分太さとを基準として、画像の透過率が、「40%〜50%」に設定された場合には、文書構成要素の線分太さを当初太さから変化させないとしている。そして、かかる基準となる画像の透過率「40%〜50%」よりも画像の透過率が高い程(濃度が濃い程)、記録用紙に印刷する文書構成要素の線分太さが当初よりも太くなるように設定されている。逆に、基準となる画像の透過率「40%〜50%」よりも画像の透過率が低い程(濃度が薄い程)、記録用紙に印刷する文書構成要素の線分太さが当初よりも細くなるように設定されている。
【0041】
具体的には、この線分太さ設定テーブルによれば、記録用紙に印刷される文書構成要素の線分太さは、設定される画像の透過率に応じて、例えば、次のように設定される。
【0042】
画像の透過率が「90%〜100%」に設定された場合には、当初の文書構成要素の線分太さが「10ドット以上30ドット以下」であるか、又は、「31ドット以上」であるかに応じて、「10ドット以上30ドット以下」であれば、当初の文書構成要素の線分太さから「外側に5ドット増加」、「31ドット以上」であれば、当初の文書構成要素の線分太さから「両サイド5ドットずつ、合計10ドット増加」するように記録用紙に印刷される文書構成要素の線分太さが設定される。
【0043】
即ち、画像の透過率が基準範囲(40%〜50%)よりも高い程(濃度が濃い程)、当初の文書構成要素の線分太さよりも記録用紙に印刷する際の線分太さが太くなるように設定され、更に、当初の文書構成要素の線分太さが太い程、線分太さが太くなるように設定される。
【0044】
また、画像の透過率が「40%〜50%」に設定された場合には、文書構成要素の当初の線分太さが、そのまま設定される。即ち、画像の透過率が「40%〜50%」という中域程度の範囲内に設定された場合には、当初の文書構成要素の線分太さのまま(当初太さから変化なし)で、記録用紙に文書が印刷される。
【0045】
更に、画像の透過率が「0%〜10%」に設定された場合には、当初の文書構成要素の線分太さが「10ドット以上30ドット以下」であるか、又は、「31ドット以上」であるかに応じて、「10ドット以上30ドット以下」であれば、当初の文書構成要素の線分太さから「外側に4ドット減少」、「31ドット以上」であれば、当初の文書構成要素の線分太さから「両サイド4ドットずつ、合計8ドット減少」するように記録用紙に印刷される文書構成要素の線分太さが設定される。
【0046】
即ち、画像の透過率が基準範囲(40%〜50%)よりも低い程(濃度が薄い程)、当初の文書構成要素の線分太さよりも記録用紙に印刷する線分太さが細くなるように設定され、更に、当初の文書構成要素の線分太さが太い程、線分太さが細くなるように設定される。
【0047】
ASIC93は、CPU88からの指令に従い、LFモータ71に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をLFモータ71の駆動回路94に付与し、該駆動回路94を介して駆動信号をLFモータ71に通電することにより、LFモータ71の回転制御を行っている。
【0048】
駆動回路94は、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、第1ローラ45などに接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC93からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を生成する。該電気信号を受けてLFモータ71が回転し、該LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、第1ローラ45へ伝達される。
【0049】
この複合機10では、LFモータ71は、給紙トレイ20からの記録用紙の給紙のための駆動源となっており、また、プラテン42上に位置する記録用紙の搬送や印刷済みの記録用紙を排紙トレイ21へ排出するための駆動源となっており、更には、所定の動力伝達機構を介して排紙ローラ62を駆動する駆動源にもなっている。
【0050】
即ち、LFモータ71は、搬送ローラ60と、駆動伝達機構27を介して給紙ローラ25と、所定の動力伝達機構を介して排紙ローラ62とを駆動する。なお、所定の動力伝達機構は、例えば歯車列により構成してもよいし、組付スペースの関係上、タイミングベルト等を使用してもよい。
【0051】
また、ASIC93は、CPU88からの指令に従い、CR(キャリッジ)モータ95に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をCRモータ95の駆動回路96に付与し、該駆動回路96を介して駆動信号をCRモータ95に通電することにより、CRモータ95の回転制御を行っている。
【0052】
駆動回路96は、上記キャリッジ38に接続されたCRモータ95を駆動させるものであり、ASIC93からの出力信号を受けて、CRモータ95を回転するための電気信号を生成する。該電気信号を受けてCRモータ95が回転し、該CRモータ95の回転力がキャリッジ38へ伝達されことによりキャリッジ38が往復動される。
【0053】
駆動回路97は、記録ヘッド39から所定のタイミングでインクを記録用紙に対して選択的に吐出させるものであり、CPU88から出力される駆動制御手順に基づいてASIC93において生成された出力信号を受け、記録ヘッド39を駆動制御する。
【0054】
ASIC93には、スキャナ部12や、複合機10の操作指示を行うための操作パネル40、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部43、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース(I/F)98及びUSBインタフェース(I/F)99、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)100やモデム(MODEM)101が接続されている。
【0055】
その他、ASIC93には、給紙ローラ25から搬送ローラ60近傍に記録用紙が搬送されたことを検出するレジセンサ102、LFモータ71により駆動された各ローラの回転量を検出するロータリエンコーダ87、キャリッジ38の移動量を検出するためのリニアエンコーダ85、プラテン42上の記録用紙の存在の有無を検出するメディアセンサ86が接続されている。
【0056】
ここで、複合機10の制御部84で行われる処理を簡単に説明する。複合機10の電源がオンされると、キャリッジ38は、一旦そのスライド端まで移動され、リニアエンコーダ85による検出位置が初期化される。キャリッジ38が初期位置からスライド移動すると、キャリッジ38に設けられた光学センサ107がエンコーダストリップのパターンを検出する。
【0057】
制御部84は、光学センサ107の検出に基づくパルス信号数によって、キャリッジ38の移動量を把握し、この移動量に基づいてキャリッジ38の往復動を制御すべく、CRモータ95の回転を制御する。また、制御部84は、レジセンサ102の出力信号及びロータリーエンコーダ87が検出するエンコーダ量に基づいて記録用紙の先端又は後端の位置並びに記録用紙の搬送量を把握する。
【0058】
制御部84は、記録用紙の先端がプラテン42の所定の位置に到達すると、記録用紙を所定の改行幅ごとに間欠搬送すべくLFモータ71の回転を制御する。この改行幅は、印刷条件として入力された解像度等に基づいて設定される。特に高解像度印刷、具体的には、縁無し写真印刷が行われる場合においては、メディアセンサ86による記録用紙の存在の検出と、ロータリーエンコーダ87が検出するエンコーダ量とに基づいて、制御部84が記録用紙の先端、後端を正確に検知する。
【0059】
さらに、メディアセンサ86による記録用紙の存在の検出と、リニアエンコーダ85が検出するエンコーダ量とに基づいて、制御部84が記録用紙の両端の位置を正確に検知する。そして、このようにして検知された記録用紙の先端、後端及び両端の位置に基づいて、制御部84は、インクジェット記録ヘッド39によるインク滴の吐出を制御する。
【0060】
次に、図5を参照して、印刷処理について説明する。図5は、印刷処理を示すフローチャートであり、印刷処理プログラム89aに従ってCPU88によって実行される処理である。この印刷処理は、ユーザによる操作パネル40の操作を介して、ファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能、及び、コピー機能などの各種機能から、コピー機能が選択された場合に実行される処理であり、特に、記録用紙上に重畳して印刷される画像と文書との両方の視認性をバランス良く設定することができる処理である。
【0061】
この処理では、まず、WaterMarkコピーが選択されたかを判断する(S1)。本実施形態では、ユーザによってコピー機能が選択されると、液晶表示部には、WaterMarkコピー、通常コピー、両面コピー等のコピー種別を選択する要求が表示され、その中からWaterMarkコピーが選択されたかを判断する。WaterMarkコピーが選択されない場合には(S1:No)、本処理は終了する。
【0062】
一方、WaterMarkコピーが選択されると(S1:Yes)、MEDIA画像を用いたWaterMarkかを判断する(S2)。本実施形態では、ユーザによってWaterMarkコピーが選択されると、液晶表示部には、WaterMarkとして使用する画像を、MEDIA画像、または、スキャン画から取得するかを選択する要求が表示され、その中からMEDIA画像が選択されたかを判断する。
【0063】
そして、MEDIA画像が選択されると(S2:Yes)、スロット部43に装着されているメモリカードから、そのメモリカードに格納されている画像をWaterMark候補として液晶表示部に表示する(S3)。
【0064】
そして、その液晶表示部に表示されているWaterMark候補の中から所定の画像が選択されるまで待機し(S4:No)、所定の画像が選択されると(S4:Yes)、その選択されたMEDIA画像を画像データメモリ90aに記憶する(S5)。
【0065】
そして、スキャナ部12を起動し、スキャナ部12によってプラテンガラス上に載置されている文書原稿に記載されている文書を読み取り(S6)、その読み取った文書を文書データメモリ90bに記憶する(S7)。ここまでの処理によって、WaterMarkとして記録する画像の画像データと、その画像上に重畳して記録される文書の文書データとが取得されるのである。
【0066】
そして、このS5で取得した画像に、S7で取得した文書を重畳して構成される印刷画像を作成するために、まず、各種設定処理を行う(S8)。この各種設定処理では、文書に対する画像の位置、角度を設定する。例えば、画像を方向キーで操作して文書に対する画像の位置を設定すると共に、角度を指定可能な表示を液晶表示部に表示し、その入力から画像の角度を設定する。尚、この各種設定処理において設定された情報は、RAM90の所定領域に記憶される。
【0067】
各種設定処理を終了すると(S8)、次に、画像の透過率を設定する透過率設定処理を行う(S9)。透過率設定処理は、例えば、画像の透過率を0%から100%までの何れかのパーセンテージを選択可能な表示を液晶表示部に表示し、その表示を介して入力される画像の透過率に設定する。また、設定された透過率の画像を、液晶表示部に表示し、設定した透過率の視認性を確認可能に構成されている。尚、設定された透過率は透過率メモリ90dに記憶される。
【0068】
ここで、ここまでの処理を、図7(a)、(b)を参照して説明する。図7(a)は、透過率N1の画像G上に、線分太さT1の文字M(文書を構成する「ブラザー」という片仮名文字)が重畳した印刷画像Kが印刷された記録用紙Pを示している。図7(b)は、透過率N1から透過率N2に変更した画像G上に、線分太さT1の文字Mが重畳した印刷画像Kが印刷された記録用紙Pを示しいる。
【0069】
即ち、S5で取得した画像を画像G、S7で取得した文書を文字Mとして、S8の各種設定処理では、記録用紙Pの範囲内において、画像Gを文字Mに対してどの位置に、どの角度で配置するかを設定する。そして、例えば、図7(a)に示す位置、角度に設定した場合には、次に、S9の透過率設定処理において、図7(a)に示す画像Gの透過率N1では、透過率が低く(濃度が薄く)、画像Gが視認し難いとして、画像Gの透過率N1を、図7(b)に示すように、透過率N1よりも高い透過率N2に設定する。
【0070】
このように、画像Gの透過率が低い(濃度が薄い)場合には、透過率設定処理により画像Gの透過率を高く(濃度を濃く)設定するこで、画像Gを視認し易くすることができるのである。
【0071】
次に、上述した別の例を、図8(a)、(b)を参照して説明する。図8(a)は、透過率N3の画像G上に、線分太さT3の文字M(文書を構成する「ブラザー」という片仮名文字)が重畳した印刷画像Kが印刷された記録用紙Pを示している。図8(b)は、透過率N3から透過率N2に変更した画像G上に、線分太さT3の文字Mが重畳した印刷画像Kが印刷された記録用紙Pを示しいる。
【0072】
上述したのと同様に、S8の各種設定処理では、記録用紙Pの範囲内において、画像Gを文字Mに対してどの位置に、どの角度で配置するかを設定する。そして、例えば、図8(a)に示す位置、角度に設定した場合には、次に、S9の透過率設定処理において、図8(a)に示す画像Gの透過率N3では、透過率が高く(濃度が濃く)、画像Gが視認し難いとして、画像Gの透過率N3を、図8(b)に示すように、透過率N3よりも低い透過率N2に設定する。 このように、画像Gの透過率が高い(濃度が濃い)場合には、透過率設定処理により画像Gの透過率を低く(濃度を薄く)設定するこで、画像Gを視認し易くすることができるのである。
【0073】
再び、図5に戻り、説明を続ける。こうして、S9で透過率設定処理で画像の透過率を設定すると、次に、線分太さ設定処理を実行する(S10)。この線分太さ設定処理は(S10)、記録用紙に記録する文書構成要素の線分太さを、S9で設定した画像の透過率に応じて設定する処理である。
【0074】
ここで、この線分太さ設定処理(S10)を図6のフローチャートを参照して説明する。図6は、線分太さ設定処理を示すフローチャートである。
【0075】
この線分太さ設定処理では、まず、文書データメモリ90bに記憶されている文書データから、その文書を構成する各文書構成要素(例えば、文字、記号、符合、数字)の線分太さを検出する(S30)。そして、その検出した線分太さを当初線分太さとして線分太さメモリ90eに記憶する(S31)。
【0076】
そして、その当初線分太さ(線分幅)が10ドット以上かを判断する(S32)。その結果、当初線分太さが10ドット以上である場合には(S32:Yes)、S9で設定した透過率メモリ90dに記憶されている透過率を読み出し(S33)、その読み出した透過率が、線分太さ設定メモリ91aに記憶されている線分太さ設定テーブル(図4参照)のグループ(「透過率」欄)のうち、どのグループに属するかを検出し、その属するグループのアドレスにポインタ90fを設定する(S34)。
【0077】
次に、線分太さメモリ90eに記憶されている当初線分太さが30ドット以下かを判断し(S35)、30ドット以下であれば(S35:Yes)、線分太さ設定テーブル(図4参照)において、「線分太さが10ドット以上30ドット以下」として設定されている条件に、線分太さを設定する(S36)。
【0078】
一方、線分太さメモリ90eに記憶されている当初線分太さが30ドット以下でなければ、31ドット以上であるとして(S35:No)、線分太さ設定テーブル(図4参照)において、「線分太さが31ドット以上」として設定されている条件に、線分太さを設定する(S37)。
【0079】
尚、S32の処理において、当初線分太さが10ドット以上でない、9ドット以下であると判断した場合には(S32:No)、印刷する線分太さを当初線分太さとして設定する(S38)。こうして、S36,37,38によって記録用紙に印刷する線分太さが設定され、本処理を終了する。
【0080】
ここで、図4,図7を参照して、上述した線分太さ設定処理において、当初線分太さよりも、印刷する線分太さを太く設定する場合について説明する。上述した通り、図7(b)は、図5に示すS9の透過率設定処理において、図7(a)に示す画像Gの透過率N1では、その濃度が薄く、画像Gが視認し難いとして、画像Gの透過率N1を、透過率N1よりも高い(濃度が濃い)透過率N2に設定されている。
【0081】
具体的には、図7(a)に示す状態では、画像Gの透過率N1は25%、線分太さT1は15ドット、そして、図7(b)に示すように、透過率設定処理において、画像Gの透過率N2を75%に設定したとする。
【0082】
この場合、図6のS30では線分太さT1が15ドットとして検出され、図6のS34ではポインタ90fは、線分太さ設定テーブル(図4参照)において、透過率70%〜80%を指し示す。そして、この線分太さ(15ドット)は、10ドット以上30ドット以下なので、図6のS36では、線分太さ設定テーブル(図4参照)から、「外側3ドット増加」の設定条件(横方向に延びる線分であれば上側に3ドット増加、縦方向に延びる線分であれば右側に3ドット増加)を取得する。よって、この設定条件に基づき、図7(c)に示すように、文字Mの線分太さT1を20ドットから、線分太さT2である23ドットになるように設定する。
【0083】
尚、仮に、図7(a)、(b)に示す文字Mの線分太さT1が31ドット以上であった場合には、図6のS37では、該当する線分太さ設定テーブル(図4参照)から、「両サイド3ドットずつ、合計6ドット増加」の設定条件(横方向に延びる線分であれば上下側に3ドットずつ増加、縦方向に延びる線分であれば左右側に3ドットずつ増加)を取得する。よって、この設定条件に基づき、文字Mの線分太さT1を20ドットから、線分太さT2である26ドットになるように設定する。
【0084】
次に、図4,図8を参照して、上述した線分太さ設定処理において、当初線分太さよりも、印刷する線分太さを細く設定する場合について説明する。上述した通り、図8(b)は、図5に示すS9の透過率設定処理において、図8(a)に示す画像Gの透過率N3では、その濃度が濃く、画像Gが視認し難いとして、画像Gの透過率N3を、透過率N3よりも低い(濃度が薄い)透過率N2に設定されている。
【0085】
具体的には、図8(a)に示す状態では、画像Gの透過率N1は75%、線分太さT1は36ドット、そして、図8(b)に示すように、透過率設定処理において、画像Gの透過率N2を15%に設定したとする。
【0086】
この場合、図6のS30では線分太さT1が36ドットとして検出され、図6のS34ではポインタ90fは、線分太さ設定テーブル(図4参照)において、透過率70%〜80%を指し示す。そして、この線分太さ(36ドット)は、31ドット以上なので、図6のS37では、線分太さ設定テーブル(図4参照)から、「両サイド3ドットずつ、合計6ドット減少」の設定条件(横方向に延びる線分であれば上下側に3ドットずつ減少、縦方向に延びる線分であれば左右側に3ドットずつ減少)を取得する。よって、この設定条件に基づき、文字Mの線分太さT3を36ドットから、線分太さT2である30ドットになるように設定する。
【0087】
尚、仮に、線分太さT3が10ドット以上30ドット以下であった場合には、図6のS36では、「外側3ドット減少」の設定条件(横方向に延びる線分であれば上側に3ドット減少、縦方向に延びる線分であれば右側に3ドット減少)を取得する。よって、この設定条件に基づき、図8(c)に示すように、文字Mの線分太さT3を36ドットから、線分太さT2である33ドットになるように設定する。
【0088】
尚、設定された画像の透過率が40%〜50%の場合には、線分太さ設定テーブル(図4参照)に示すように、当初の線分太さが10ドット以上30ドット以下であっても、31ドット以上であっても、印刷する線分太さは、当初の線分太さのまま設定する。また、図6のS38のように、「当初の線分太さが9ドット以下である」という当初の線分太さが細い場合にも、線分太さを変更することなく設定する。
【0089】
再び、図5に戻り、説明を続ける。こうして、S10によって文書構成要素の線分太さを設定すると、S8乃至S10で設定した設定内容に基づいて、記録用紙に印刷する印刷画像のデータを作成する(S11)。
【0090】
そして、その作成した作成データに基づいて印刷画像に対応する画像を、液晶表示部に表示し(S12)、ユーザから操作パネル40を介して「印刷OK」の入力がされたかを判断し(S13)、「印刷OK」の入力がない場合には(S13:No)、S8からの処理を繰り返すし、「印刷OK」の入力があった場合には(S13:Yes)、印刷を開始し(S14)、本処理を終了する。
【0091】
このように、図5の各種設定処理(S8)だけをした場合には、図7(a)に示す印刷画像が作成され、画像Gを所望の位置、角度に配置することができるが、画像Gの濃度が薄く視認し難い。そこで、図5の透過率設定処理(S9)を実行し、画像Gの透過率を高く(濃度を濃く)設定することで、図7(b)に示すように、画像Gの視認性を向上させることができるが、文字Mが視認し難くなる。そこで、更に、図5,6の線分太さ設定処理(S10)によって文字Mの線分太さT1が、太くなるように設定することで、文字Mの視認性が向上し、図7(c)に示すように、記録用紙P上に重畳して記録される画像Gと文字M(文書)との両方の視認性をバランス良く設定することができる。
【0092】
また、同様に、図5の各種設定処理(S8)だけをした場合には、図8(a)に示す印刷画像が作成され、画像Gを所望の位置、角度に配置することができるが、画像Gの濃度が濃く視認し難い。そこで、図5の透過率設定処理(S9)を実行し、画像Gの透過率を低く(濃度を薄く)設定することで、図8(b)に示すように、画像Gの視認性を向上させることができるが、文字Mが極端に目立ち印刷画像K全体のバランスを欠くことになる。そこで、更に、図5,6の線分太さ設定処理(S10)によって文字Mの線分太さT3が、細くなるように設定することで、印刷画像K全体のバランスが向上し、図8(c)に示すように、記録用紙P上に重畳して記録される画像Gと文字M(文書)との両方の視認性をバランス良く設定することができる。
【0093】
また、図5,6の線分太さ設定処理(S10)では、画像の透過率の中域程度の所定範囲(40%〜50%)を基準とし、図5の透過率設定処理(S9)で設定した画像の透過率が、この基準範囲内であれば、印刷する文書構成要素の線分太さを、当初の太さに設定し、図5の透過率設定処理(S9)で設定した画像の透過率が基準範囲よりも高い程、印刷する文書構成要素の線分太さを当初太さよりも太く設定し、図5の透過率設定処理(S9)で設定した画像の透過率が基準範囲よりも低い程、印刷する文書構成要素の線分太さを当初太さよりも細く設定する。よって、画像の視認性を良好な状態に設定しつつ、文書構成要素の線分太さが当初から大きく変化するのを抑制することができる。従って、当初の文書構成要素の線分太さから受ける印象を極力維持しつつ、記録用紙に重畳して記録される画像と文書との両方の視認性をバランス良く設定することができる。
【0094】
尚、S2の処理において、MEDIA画像が選択されない場合には(S2:No)、スキャン画像を用いたWaterMarkかを判断する(S15)。その結果、スキャン画像を用いたWaterMarkが選択された場合には(S15:Yes)、WaterMarkとして印刷する画像が記載された画像原稿をセットするように要求する表示を液晶表示部に表示する(S16)。
【0095】
そして、スキャナ部12を起動し、プラテンガラスに設置されている画像原稿から画像を読み取り(S17)、その読み取った画像を画像データメモリ90aに記憶する(S18)。そして、上述したのと同様に透過率設定処理を実行し(S19)、読み取った画像の透過率を設定する。
【0096】
その後、画像原稿を、文書が記載された文書原稿に差し替えてセットするように要求する表示を液晶表示部に表示し(S20)、スキャナ部12を起動し、文書原稿に記載されている文書を読み取り(S21)、その読み取った文書を文書データメモリ90bに記憶する(S22)。こうして、WaterMarkとして印刷する画像の画像データと、その画像上に重畳して印刷する文書の文書データとが取得される。そして、その取得した画像データと、文書データとに基づいて印刷画像を作成し(S23)、その印刷画像に基づく印刷を開始し(S14)、本処理を終了する。
【0097】
また、S15の処理でスキャン画像を用いたWaterMarkでない場合には(S15:No)、予め用意されている内部メモリに記憶されている画像をWaterMarkとして記録する指示であるとして、スキャナ部12を起動し、文書原稿に記載されている文書を読み取り(S24)、その読み取った文書を文書データメモリ90bに記憶する(S25)。そして、その文書に対し、予め内部メモリに記憶されている画像の印刷位置を設定する上述したのと同様の各種設定処理を実行し(S26)、その各種設定処理によって設定された設定条件に基づいて、印刷画像を作成し(S27)、その印刷画像に基づく印刷を開始し(S14)、本処理を終了する。
【0098】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0099】
本実施形態では、印刷処理プログラム89aを搭載した複合機10について説明したが、例えば、この印刷処理プログラム89aをパーソナルコンピュータに搭載し、この印刷処理プログラム89aで作成した画像と文書とが重畳した印刷画像を、パーソナルコンピュータに接続された印刷可能な印刷装置に印刷させるように構成しても良い。
【0100】
また、本実施形態では、図5の透過率設定処理(S9)で設定された画像の透過率に応じて、文書構成要素の線分太さを設定する場合について説明したが、例えば、文書構成要素の線分太さは、解像度、記録用紙の種類(普通紙、葉書、光沢紙)に応じて変化するので、画像の透過率に加え、解像度、記録用紙の種類に応じて、設定する文書構成要素の線分太さの割合を変更するように構成しても良い。
【0101】
また、本実施形態では、設定された画像の透過率が「40%〜50%」を基準範囲として説明したが、基準範囲は、かかる範囲限定されるものではなく、例えば、「50%〜60%」を基準範囲に設定するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態の複合機の外観斜視図である。
【図2】複合機のプリンタ部の構造を示す縦断面図である。
【図3】複合機の制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】線分太さ設定テーブルを示す模式図である。
【図5】印刷処理を示すフローチャートである。
【図6】線分太さ設定処理を示すフローチャートである。
【図7】記録用紙に印刷される印刷画像を説明するための図である。
【図8】記録用紙に印刷される印刷画像を説明するための図である。
【符号の説明】
【0103】
10 複合機(多機能周辺装置)
11 プリンタ部(記録手段)
12 スキャナ部(読取手段)
43 スロット部(格納手段)
89a 印刷処理プログラム(記録画像作成プログラム)
S5 第1取得ステップ
S7 第2取得ステップ
S9 第1設定ステップ
S10 第2設定ステップ
S11 作成ステップ
S32 判断手段
S38 第3設定ステップ
G 画像
K 印刷画像(記録画像)
M 文字(文書、文書構成要素)
P 記録用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に背景として記録される画像と、その画像上に重ねて前記記録媒体に記録される文書とによって構成される記録画像を作成する記録画像作成プログラムにおいて、
前記画像を取得する第1取得ステップと、
前記文書を取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップで取得した画像の透過率を設定する第1設定ステップと、
その第1設定ステップで設定した透過率に応じて、前記第2取得ステップで取得した文書を構成する文字、記号、符合、数字を例とする文書構成要素の線分幅を設定する第2設定ステップと、
前記第1設定ステップで設定した透過率で構成される前記第1取得ステップで取得した画像に、前記第2設定ステップで設定した線分幅の文書構成要素で構成される前記第2取得ステップで取得した文書を重ねて構成される記録画像を作成する作成ステップとを備えていることを特徴とする記録画像作成プログラム。
【請求項2】
前記第2設定ステップは、
前記第1設定ステップで設定した透過率が所定の基準よりも高い程、前記文書構成要素の線分幅を太く設定し、
又は、前記第1設定ステップで設定した透過率が所定の基準よりも低い程、前記文書構成要素の線分幅を細く設定することを特徴とする請求項1に記載の記録画像作成プログラム。
【請求項3】
前記所定の基準は、中域程度の所定範囲に設定されており、
前記第2取得ステップは、前記文書を取得した当初における前記文書構成要素の線分幅を当初幅として取得し、
前記第2設定ステップは、
前記第1設定ステップで設定した透過率が前記所定の基準に含まれている場合には、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅に設定し、
前記第1設定ステップで設定した透過率が前記所定の基準よりも高い程、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅よりも太く設定し、
前記第1設定ステップで設定した透過率が前記所定の基準よりも低い程、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅よりも細く設定することを特徴とする請求項2に記載の記録画像作成プログラム。
【請求項4】
前記第2設定ステップは、
前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅よりも太く設定する場合、前記当初幅が太い程、前記文書構成要素の線分幅を太く設定し、
前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅よりも細く設定する場合、前記当初幅が太い程、前記文書構成要素の線分幅を細く設定することを特徴とする請求項3に記載の記録画像作成プログラム。
【請求項5】
前記当初幅が所定の閾値よりも細いかを判断する判断手段と、
その判断手段によって前記当初幅が所定の閾値よりも細いと判断された場合に、前記文書構成要素の線分幅を前記当初幅に設定する第3設定ステップを備え、
前記作成ステップは、前記判断手段よって前記当初幅が所定の閾値よりも細いと判断された場合には、前記第1設定ステップで設定した透過率で構成される前記第1取得ステップで取得した画像に、前記第3設定ステップで設定した線分幅の文書構成要素で構成される前記第2取得ステップで取得した文書を重ねて構成される記録画像を作成することを特徴とする請求項3又は4に記載の記録画像作成プログラム。
【請求項6】
前記画像を格納する格納手段と、前記文書が記録されている記録媒体から前記文書を読み取る読取手段と、記録媒体に記録する記録手段とを備えた多機能周辺装置において、
請求項1から5のいずれかに記載の記録画像作成プログラムを備え、
前記第1取得ステップは前記格納手段に格納されている画像を取得し、
前記第2取得ステップは前記読取手段で読み取った文書を取得し、
前記作成ステップは、その作成した記録画像を前記記録手段によって記録媒体に記録することを特徴とする多機能周辺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−159354(P2009−159354A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335670(P2007−335670)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】