記録素子基板、記録素子基板を備えた記録ヘッド
【課題】 記録素子基板の回路に対するサブヒータの熱の影響を抑制しつつ、記録素子基板の温度を制御するサブヒータを配置できる記録素子基板を提供する。
【解決手段】 複数の記録素子を備えた記録素子列と、前記記録素子を駆動する駆動回路とを備えた記録素子基板であって、前記記録素子基板の表面を垂直な方向からみて前記記録素子列を囲むように配置され、前記記録素子基板の断面をみて前記駆動回路に含まれる容量素子または抵抗素子の上方または下方に配置されているヒータを備える。
【解決手段】 複数の記録素子を備えた記録素子列と、前記記録素子を駆動する駆動回路とを備えた記録素子基板であって、前記記録素子基板の表面を垂直な方向からみて前記記録素子列を囲むように配置され、前記記録素子基板の断面をみて前記駆動回路に含まれる容量素子または抵抗素子の上方または下方に配置されているヒータを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録素子基板、および記録素子基板を備えた記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、特許文献1に開示されている記録素子基板の構成の説明する図である。基板300は、ヒータ及び駆動回路を半導体プロセスにより一体形成されている。インク供給口301に沿ってヒータを複数備えたヒータ列302Aが配置されている。サブヒータ301は、基板300の保温を行い、温度検出手段304は基板300の温度を検知する。端子305は、電力や信号を基板外部から入力する。駆動回路303は、ヒータを駆動するための回路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−79671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動回路303には、上述したように熱の影響により動作特性が変わるMOSトランジスタを有している。このため、MOSトランジスタの近くにサブヒータ301が配置されていると、サブヒータの熱がMOSトランジスタの動作に影響を与える可能性がある。図12は、MOSトランジスタのゲート・ソース間電圧(横軸)の変化に対するドレイン電流(縦軸)の変化を表すグラフである。温度が変化することにより、電圧−電流特性が変化する。
【0005】
ロジック回路の動作も、温度の影響を同様にうける。例えば、回路の速度の変化をシミュレーションにより比較したところ、25℃では1周期が約65[ns]であったのに対して100℃では1周期が約90[ns]となり、1.5倍程度遅くなっていることがわかった。つまり、熱のためにロジック回路の応答速度が低下すると、回路が誤動作する恐れある。
【0006】
本発明の目的は、記録素子基板の回路に対するサブヒータの熱の影響を抑制しつつ、記録素子基板の温度を制御するサブヒータを配置できる記録素子基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の記録素子基板は、複数の記録素子を備えた記録素子列と、前記記録素子を駆動する駆動回路とを備えた記録素子基板であって、前記記録素子基板の表面を垂直な方向からみて前記記録素子列を囲むように配置され、前記記録素子基板の断面をみて前記駆動回路に含まれる容量素子または抵抗素子の上方または下方に配置されているヒータを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
記録素子基板の回路に対するサブヒータの熱の影響を抑制しつつ、記録素子基板の温度を制御するサブヒータを配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態における記録素子基板の回路の配置を示す図である。
【図2】図1の回路の一部を拡大した図である。
【図3】第2の実施形態における記録素子基板の回路の配置を示す図である。
【図4】図3の回路の一部を拡大した図である。
【図5】第2の実施形態における記録素子基板のブロックの説明図である。
【図6】実施形態における記録素子基板の断面図である。
【図7】その他の実施形態における記録素子基板の回路の配置を示す図である。
【図8】従来の記録素子基板の回路のレイアウト図である。
【図9】第1の実施形態と比較を行うための図である。
【図10】第1の実施形態における記録素子基板のブロックの説明図である。
【図11】1つのヒータについての駆動回路の構成を説明する図である。
【図12】MOSトランジスタの温度特性説明図である。
【図13】第1の実施形態と第2の実施形態の記録ヘッドの一部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における、記録素子基板100の表面を垂直方向(上方または下方)からみたレイアウトを示す図である。ヒータ(記録素子)102は図1に示すように配置されヒータ列(記録素子列)102Aを構成している。駆動回路103は、ヒータ102を駆動するトランジスタやロジック回路などを備えている。このロジック回路は、シフトレジスタおよびデコーダ等を備えている。配線領域104は、電力を供給するための電源ラインや制御信号などを供給するための信号ラインが配置されている。端子105は、外部からの信号や電力を入力する。この配線領域104は、駆動回路103に端子105の信号などを供給する信号線が配置されている。容量素子109は、信号をノイズの影響を抑制するために、端子105と駆動回路103とを結ぶ信号線や電源ラインなどに接続されている。図13は、記録ヘッドの一部の図である。インクがインク供給口から供給され、ヒータ102の熱によりインクが、ノズル1201から吐出する。
【0012】
ヒータ(サブヒータ)106は、基板100を加熱することによって、基板100の温度制御を行なう加熱部である。このヒータ(サブヒータ)106は、図1から基板の表面をみると、インク供給口101を囲むように配置されている。また、ヒータ106は容量素子109の上方に設けられている。これは、容量素子(コンデンサ)109は、MOSトランジスタほど熱の影響を受けないからである。
【0013】
図2は、図1で説明した駆動回路103の一部を拡大した図である。図1で説明した符号101から107については説明を省く。また、説明を簡単にするために、他の信号線などを省いている。図1で説明した駆動回路103は、デコーダ108、駆動電圧発生回路110、データ出力回路111、ラッチ回路112、シフトレジスタ113などのロジック回路を備えている。データ出力回路111は、外部からシフトレジスタ113へ入力されるデータ信号を確認する。端子105は、ロジック電圧VDDを入力し、電源ライン114を介してデコーダ108に供給する。容量素子109は電源ライン114に接続されている。このロジック電圧VDDを供給する電源ライン114は、ラッチ回路112やシフトレジスタ113等のロジック回路に対して接続されており、容量素子109はそれぞれ接続されている。
【0014】
図6Aは、記録素子基板100の断面図である。ヒータ(サブヒータ)106の下方に容量素子109が配置されている。この記録素子基板は、シリコン基板201、酸化膜202、ポリシリコン203、BPSG(boron−doped phospho−silicate glass)204、絶縁膜205、アルミ配線207などで構成されている。MOSトランジスタ113は、サブヒータ106から離れているので、ヒータ(サブヒータ)106から生じる熱の影響を小さくできる。
【0015】
図10は、記録素子基板の機能ブロックの説明図である。図を簡略化するために、信号線や回路ブロックを一部省略している。基板100には端子105が備えられ、VH電圧(24ボルト)、VHT電圧(24ボルト)、VDD電圧(5V)、DATA信号、CLK信号,LT信号、HE信号が入力される。上述したロジック回路は、デコーダ108やラッチ回路112やシフトレジスタ113、レベル変換部(LVC)121、AND回路122A、123Aを備えている。
【0016】
例えば、ヒータ列102Aは、128個のヒータ102を備え、16個のヒータが同時に駆動し、8駆動タイミングにわけて128個のヒータを駆動する時分割駆動を行うとする。このためにシフトレジスタ113は、16ビットのデータを格納する。ラッチ回路112はシフトレジスタ113のデータをラッチする。
【0017】
駆動電圧発生回路110は、電圧VHT(24ボルト)を入力して電圧VHTM(14ボルト)を生成し、生成した電圧VHTMを出力する。AND回路122Aはヒータ102に対応して設けられている。
【0018】
図11は、駆動回路103の一部を説明する図である。説明を簡単にするために1つヒータを駆動する回路の等価回路図である。MOSトランジスタ(MOSFET)120を制御してヒータ102を駆動する。AND回路122は、デコーダ108から入力した信号と論理回路123Aから入力した信号との論理積の処理を行い、レベル変換部121へ出力する。レベル変換部(LVC)121は、電圧VHTMの電力供給を受けて、AND回路122の出力電圧をトランジスタ120の駆動電圧に変換する。ヒータ102は電圧VHの電力供給を受ける。AND回路122は電圧VDDの電力供給を受ける。MOSトランジスタ120はグランド(GND)と接続している。
【0019】
次に、第1の実施形態(図1、図2)を実施しない場合について、図9を用いて説明する。駆動回路は、記録素子駆動回路407や、データ出力回路411、容量素子(コンデンサ)409、駆動電圧生成回路410、デコーダ408、ラッチ回路412、シフトレジスタ413を備えている。他の構成は、図1や図2と同様であるので説明を省く。図9の構成では、データ出力回路411の配置を、ヒータ(サブヒータ)406から生じる熱の影響を考慮せず、ヒータ(サブヒータ)406の領域とデータ出力回路411との領域が重なるように配置している。このために、ヒータ406が発する熱がデータ出力回路411の動作へ影響を与えてしまう。
【0020】
一方で、第1の実施形態(図1、図2)のように、ヒータ106の領域と容量素子109との領域が重なるように、容量素子109を配置している。この理由は、上述したように、容量素子(コンデンサ)109は、MOSトランジスタほど熱の影響を受けないからである。なお、容量素子109の他に抵抗素子109Aを配置する形態でも構わない。従って、図6Bに示すように、ヒータ106の領域と抵抗素子109Aとの領域が重なるように、抵抗素子を配置する形態でも構わない。抵抗素子として、ポリシリコン層に配置されるPOL抵抗などが挙げられる。
【0021】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態における、記録素子基板100の回路レイアウトを示すブロック図である。図1と同じ内容については説明を省き、図1と異なる内容について説明する。
【0022】
容量素子109は、ヒータ列102Aと端子105との間に配置されている。ヒータ(サブヒータ)106は、更に、ヒータ列102Aと駆動回路103と間に配置されている。実施形態1と同様に、実施形態2においてもヒータ106(サブヒータ)は容量素子109の上方に設けられている。
【0023】
図4は、図3で説明した駆動回路103の一部を拡大した図である。第1の実施形態と同じ内容については説明を省く。また、説明を簡単にするために、他の信号線などを省いている。端子105から電圧VHTを入力し、電源ライン115を介して記録素子駆動回路107に供給する。容量素子109は電源ライン115に接続されている。
【0024】
図5は、図4の記録素子駆動回路107の説明する図である。記録素子駆動回路107は、シフトレジスタ/ラッチ506、デコーダ505、シフトレジスタ/ラッチ508、トランジスタ120、論理素子503、504等を備えている。説明を簡単にするために、駆動電圧発生回路110は省略している。
【0025】
記録ヘッドは、複数のヒータを複数(M個)のグループに分けて、時分割駆動を行う。各グループはN個のヒータ102を備えている。1回の駆動タイミングで、各グループから選ばれた1つのヒータが駆動する。そして、駆動タイミング毎に、駆動するヒータが切り替わる。
【0026】
シフトレジスタ506は、各グループに含まれるヒータを選択するためのデータ(DATAB)を格納する。デコーダ505は、シフトレジスタ506が格納しているデータをデコードして信号を信号線507へ出力する。シフトレジスタ508は、各グループ(G1,G2,・・・,GM)に割当てられ、1ビットのデータを保持する。このシフトレジスタ/ラッチ508は、ヒータ102が配列する方向に配置されている。デコーダ505は、N個のうちの1つを選択する信号を出力する。デコーダ505で駆動するべきヒータ102を選択し、シフトレジスタ/ラッチ508に保持されたデータの値に従って、トランジスタ120が駆動する。
【0027】
なお、第1の実施形態と同様に、熱の影響が相対的に小さい素子として容量素子109の他に、抵抗素子109Aを、ヒータ106の下方に配置しても構わない。
【0028】
(その他の実施形態)
図7は、その他の実施形態の記録素子基板レイアウトである。符号100から109までは、図1や図3と同様である。容量素子109をヒータ102の配列方向に沿って、配置した構成でも構わない。
【0029】
また、ヒータ(サブヒータ)106は、図1、図3について基板の表面をみると、インク供給口101を囲むように配置されている。このヒータ106は無端であってもかまわないし、一部に切れ目があっても構わない。
【0030】
ヒータ106の領域との領域が重なるように配置される回路素子は、熱の影響が相対的に小さければ、容量素子109や抵抗素子109Aに限定するものではない。
【符号の説明】
【0031】
102 ヒータ
105 端子
106 ヒータ(サブヒータ)
109 容量素子
【技術分野】
【0001】
本発明は記録素子基板、および記録素子基板を備えた記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、特許文献1に開示されている記録素子基板の構成の説明する図である。基板300は、ヒータ及び駆動回路を半導体プロセスにより一体形成されている。インク供給口301に沿ってヒータを複数備えたヒータ列302Aが配置されている。サブヒータ301は、基板300の保温を行い、温度検出手段304は基板300の温度を検知する。端子305は、電力や信号を基板外部から入力する。駆動回路303は、ヒータを駆動するための回路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−79671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動回路303には、上述したように熱の影響により動作特性が変わるMOSトランジスタを有している。このため、MOSトランジスタの近くにサブヒータ301が配置されていると、サブヒータの熱がMOSトランジスタの動作に影響を与える可能性がある。図12は、MOSトランジスタのゲート・ソース間電圧(横軸)の変化に対するドレイン電流(縦軸)の変化を表すグラフである。温度が変化することにより、電圧−電流特性が変化する。
【0005】
ロジック回路の動作も、温度の影響を同様にうける。例えば、回路の速度の変化をシミュレーションにより比較したところ、25℃では1周期が約65[ns]であったのに対して100℃では1周期が約90[ns]となり、1.5倍程度遅くなっていることがわかった。つまり、熱のためにロジック回路の応答速度が低下すると、回路が誤動作する恐れある。
【0006】
本発明の目的は、記録素子基板の回路に対するサブヒータの熱の影響を抑制しつつ、記録素子基板の温度を制御するサブヒータを配置できる記録素子基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の記録素子基板は、複数の記録素子を備えた記録素子列と、前記記録素子を駆動する駆動回路とを備えた記録素子基板であって、前記記録素子基板の表面を垂直な方向からみて前記記録素子列を囲むように配置され、前記記録素子基板の断面をみて前記駆動回路に含まれる容量素子または抵抗素子の上方または下方に配置されているヒータを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
記録素子基板の回路に対するサブヒータの熱の影響を抑制しつつ、記録素子基板の温度を制御するサブヒータを配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態における記録素子基板の回路の配置を示す図である。
【図2】図1の回路の一部を拡大した図である。
【図3】第2の実施形態における記録素子基板の回路の配置を示す図である。
【図4】図3の回路の一部を拡大した図である。
【図5】第2の実施形態における記録素子基板のブロックの説明図である。
【図6】実施形態における記録素子基板の断面図である。
【図7】その他の実施形態における記録素子基板の回路の配置を示す図である。
【図8】従来の記録素子基板の回路のレイアウト図である。
【図9】第1の実施形態と比較を行うための図である。
【図10】第1の実施形態における記録素子基板のブロックの説明図である。
【図11】1つのヒータについての駆動回路の構成を説明する図である。
【図12】MOSトランジスタの温度特性説明図である。
【図13】第1の実施形態と第2の実施形態の記録ヘッドの一部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における、記録素子基板100の表面を垂直方向(上方または下方)からみたレイアウトを示す図である。ヒータ(記録素子)102は図1に示すように配置されヒータ列(記録素子列)102Aを構成している。駆動回路103は、ヒータ102を駆動するトランジスタやロジック回路などを備えている。このロジック回路は、シフトレジスタおよびデコーダ等を備えている。配線領域104は、電力を供給するための電源ラインや制御信号などを供給するための信号ラインが配置されている。端子105は、外部からの信号や電力を入力する。この配線領域104は、駆動回路103に端子105の信号などを供給する信号線が配置されている。容量素子109は、信号をノイズの影響を抑制するために、端子105と駆動回路103とを結ぶ信号線や電源ラインなどに接続されている。図13は、記録ヘッドの一部の図である。インクがインク供給口から供給され、ヒータ102の熱によりインクが、ノズル1201から吐出する。
【0012】
ヒータ(サブヒータ)106は、基板100を加熱することによって、基板100の温度制御を行なう加熱部である。このヒータ(サブヒータ)106は、図1から基板の表面をみると、インク供給口101を囲むように配置されている。また、ヒータ106は容量素子109の上方に設けられている。これは、容量素子(コンデンサ)109は、MOSトランジスタほど熱の影響を受けないからである。
【0013】
図2は、図1で説明した駆動回路103の一部を拡大した図である。図1で説明した符号101から107については説明を省く。また、説明を簡単にするために、他の信号線などを省いている。図1で説明した駆動回路103は、デコーダ108、駆動電圧発生回路110、データ出力回路111、ラッチ回路112、シフトレジスタ113などのロジック回路を備えている。データ出力回路111は、外部からシフトレジスタ113へ入力されるデータ信号を確認する。端子105は、ロジック電圧VDDを入力し、電源ライン114を介してデコーダ108に供給する。容量素子109は電源ライン114に接続されている。このロジック電圧VDDを供給する電源ライン114は、ラッチ回路112やシフトレジスタ113等のロジック回路に対して接続されており、容量素子109はそれぞれ接続されている。
【0014】
図6Aは、記録素子基板100の断面図である。ヒータ(サブヒータ)106の下方に容量素子109が配置されている。この記録素子基板は、シリコン基板201、酸化膜202、ポリシリコン203、BPSG(boron−doped phospho−silicate glass)204、絶縁膜205、アルミ配線207などで構成されている。MOSトランジスタ113は、サブヒータ106から離れているので、ヒータ(サブヒータ)106から生じる熱の影響を小さくできる。
【0015】
図10は、記録素子基板の機能ブロックの説明図である。図を簡略化するために、信号線や回路ブロックを一部省略している。基板100には端子105が備えられ、VH電圧(24ボルト)、VHT電圧(24ボルト)、VDD電圧(5V)、DATA信号、CLK信号,LT信号、HE信号が入力される。上述したロジック回路は、デコーダ108やラッチ回路112やシフトレジスタ113、レベル変換部(LVC)121、AND回路122A、123Aを備えている。
【0016】
例えば、ヒータ列102Aは、128個のヒータ102を備え、16個のヒータが同時に駆動し、8駆動タイミングにわけて128個のヒータを駆動する時分割駆動を行うとする。このためにシフトレジスタ113は、16ビットのデータを格納する。ラッチ回路112はシフトレジスタ113のデータをラッチする。
【0017】
駆動電圧発生回路110は、電圧VHT(24ボルト)を入力して電圧VHTM(14ボルト)を生成し、生成した電圧VHTMを出力する。AND回路122Aはヒータ102に対応して設けられている。
【0018】
図11は、駆動回路103の一部を説明する図である。説明を簡単にするために1つヒータを駆動する回路の等価回路図である。MOSトランジスタ(MOSFET)120を制御してヒータ102を駆動する。AND回路122は、デコーダ108から入力した信号と論理回路123Aから入力した信号との論理積の処理を行い、レベル変換部121へ出力する。レベル変換部(LVC)121は、電圧VHTMの電力供給を受けて、AND回路122の出力電圧をトランジスタ120の駆動電圧に変換する。ヒータ102は電圧VHの電力供給を受ける。AND回路122は電圧VDDの電力供給を受ける。MOSトランジスタ120はグランド(GND)と接続している。
【0019】
次に、第1の実施形態(図1、図2)を実施しない場合について、図9を用いて説明する。駆動回路は、記録素子駆動回路407や、データ出力回路411、容量素子(コンデンサ)409、駆動電圧生成回路410、デコーダ408、ラッチ回路412、シフトレジスタ413を備えている。他の構成は、図1や図2と同様であるので説明を省く。図9の構成では、データ出力回路411の配置を、ヒータ(サブヒータ)406から生じる熱の影響を考慮せず、ヒータ(サブヒータ)406の領域とデータ出力回路411との領域が重なるように配置している。このために、ヒータ406が発する熱がデータ出力回路411の動作へ影響を与えてしまう。
【0020】
一方で、第1の実施形態(図1、図2)のように、ヒータ106の領域と容量素子109との領域が重なるように、容量素子109を配置している。この理由は、上述したように、容量素子(コンデンサ)109は、MOSトランジスタほど熱の影響を受けないからである。なお、容量素子109の他に抵抗素子109Aを配置する形態でも構わない。従って、図6Bに示すように、ヒータ106の領域と抵抗素子109Aとの領域が重なるように、抵抗素子を配置する形態でも構わない。抵抗素子として、ポリシリコン層に配置されるPOL抵抗などが挙げられる。
【0021】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態における、記録素子基板100の回路レイアウトを示すブロック図である。図1と同じ内容については説明を省き、図1と異なる内容について説明する。
【0022】
容量素子109は、ヒータ列102Aと端子105との間に配置されている。ヒータ(サブヒータ)106は、更に、ヒータ列102Aと駆動回路103と間に配置されている。実施形態1と同様に、実施形態2においてもヒータ106(サブヒータ)は容量素子109の上方に設けられている。
【0023】
図4は、図3で説明した駆動回路103の一部を拡大した図である。第1の実施形態と同じ内容については説明を省く。また、説明を簡単にするために、他の信号線などを省いている。端子105から電圧VHTを入力し、電源ライン115を介して記録素子駆動回路107に供給する。容量素子109は電源ライン115に接続されている。
【0024】
図5は、図4の記録素子駆動回路107の説明する図である。記録素子駆動回路107は、シフトレジスタ/ラッチ506、デコーダ505、シフトレジスタ/ラッチ508、トランジスタ120、論理素子503、504等を備えている。説明を簡単にするために、駆動電圧発生回路110は省略している。
【0025】
記録ヘッドは、複数のヒータを複数(M個)のグループに分けて、時分割駆動を行う。各グループはN個のヒータ102を備えている。1回の駆動タイミングで、各グループから選ばれた1つのヒータが駆動する。そして、駆動タイミング毎に、駆動するヒータが切り替わる。
【0026】
シフトレジスタ506は、各グループに含まれるヒータを選択するためのデータ(DATAB)を格納する。デコーダ505は、シフトレジスタ506が格納しているデータをデコードして信号を信号線507へ出力する。シフトレジスタ508は、各グループ(G1,G2,・・・,GM)に割当てられ、1ビットのデータを保持する。このシフトレジスタ/ラッチ508は、ヒータ102が配列する方向に配置されている。デコーダ505は、N個のうちの1つを選択する信号を出力する。デコーダ505で駆動するべきヒータ102を選択し、シフトレジスタ/ラッチ508に保持されたデータの値に従って、トランジスタ120が駆動する。
【0027】
なお、第1の実施形態と同様に、熱の影響が相対的に小さい素子として容量素子109の他に、抵抗素子109Aを、ヒータ106の下方に配置しても構わない。
【0028】
(その他の実施形態)
図7は、その他の実施形態の記録素子基板レイアウトである。符号100から109までは、図1や図3と同様である。容量素子109をヒータ102の配列方向に沿って、配置した構成でも構わない。
【0029】
また、ヒータ(サブヒータ)106は、図1、図3について基板の表面をみると、インク供給口101を囲むように配置されている。このヒータ106は無端であってもかまわないし、一部に切れ目があっても構わない。
【0030】
ヒータ106の領域との領域が重なるように配置される回路素子は、熱の影響が相対的に小さければ、容量素子109や抵抗素子109Aに限定するものではない。
【符号の説明】
【0031】
102 ヒータ
105 端子
106 ヒータ(サブヒータ)
109 容量素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を備えた記録素子列と、前記記録素子を駆動する駆動回路とを備えた記録素子基板であって、
前記記録素子基板の表面を垂直な方向からみて前記記録素子列を囲むように配置され、前記記録素子基板の断面をみて前記駆動回路に含まれる容量素子または抵抗素子の上方または下方に配置されているヒータを備えることを特徴とする記録素子基板。
【請求項2】
前記容量素子は、前記駆動回路へ電力を供給する電源ラインに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の記録素子基板。
【請求項3】
前記駆動回路は、少なくともシフトレジスタ、ラッチ回路、デコーダを少なくとも備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録素子基板。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記記録素子を駆動する記録素子駆動回路と、前記記録素子駆動回路へ供給する電圧を生成する電圧生成回路を備え、
前記容量素子は、電圧生成回路と記録素子駆動回路とを結ぶ電源ラインに接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録素子基板。
【請求項5】
前記ヒータは、前記記録素子基板の垂直な方向からみて前記駆動回路を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録素子基板。
【請求項6】
請求項1に記載の記録素子基板を備えた記録ヘッド。
【請求項1】
複数の記録素子を備えた記録素子列と、前記記録素子を駆動する駆動回路とを備えた記録素子基板であって、
前記記録素子基板の表面を垂直な方向からみて前記記録素子列を囲むように配置され、前記記録素子基板の断面をみて前記駆動回路に含まれる容量素子または抵抗素子の上方または下方に配置されているヒータを備えることを特徴とする記録素子基板。
【請求項2】
前記容量素子は、前記駆動回路へ電力を供給する電源ラインに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の記録素子基板。
【請求項3】
前記駆動回路は、少なくともシフトレジスタ、ラッチ回路、デコーダを少なくとも備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録素子基板。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記記録素子を駆動する記録素子駆動回路と、前記記録素子駆動回路へ供給する電圧を生成する電圧生成回路を備え、
前記容量素子は、電圧生成回路と記録素子駆動回路とを結ぶ電源ラインに接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録素子基板。
【請求項5】
前記ヒータは、前記記録素子基板の垂直な方向からみて前記駆動回路を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録素子基板。
【請求項6】
請求項1に記載の記録素子基板を備えた記録ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−149510(P2010−149510A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263080(P2009−263080)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]