説明

記録装置、停電時のキャップによる記録ヘッドの封止方法

【課題】停電した際、補助電源を用いずに、キャップが記録ヘッドを封止した状態にすることができる記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置(1)は、媒体送り手段(31)が駆動している場合に停電した際、前記媒体送り手段(31)の駆動中の慣性力を利用して第1モーター(36)を回転させて電力を回生させ、制御部80は、該回生させた電力により第2モーター(44)を駆動させて記録ヘッド41をヘッド退避時ポジションH2へ移動させると共に、前記回生させた電力により第3モーター(51)を駆動させてキャップ50を封止時ポジションK1へ移動させる構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源の電力によって駆動する第1モーターと、該第1モーターの動力によって駆動し、被記録媒体を送り方向下流側へ送る媒体送り手段と、被記録媒体に対してインクを吐出するノズル列を有し、前記媒体送り手段と対向する記録時ポジションと、前記媒体送り手段と対向しないヘッド退避時ポジションとを有する記録ヘッドと、前記電源の電力によって駆動する第2モーターと、該第2モーターの動力によって駆動し、前記記録ヘッドを前記記録時ポジションと前記ヘッド退避時ポジションとの間において移動させるヘッド移動手段と、前記記録ヘッドの前記ノズル列が形成された面を封止可能に設けられており、前記記録ヘッドが前記ヘッド退避時ポジションに位置する場合に前記ノズル列が形成された面を封止する封止時ポジションと、前記ノズル列が形成された面を封止しないキャップ退避時ポジションとを有するキャップと、前記電源の電力によって駆動する第3モーターと、該第3モーターの動力によって駆動し、前記キャップを前記封止時ポジションと前記キャップ退避時ポジションとの間において移動させるキャップ移動手段と、前記第1乃至第3モーターを制御する制御部と、を備えた記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、記録装置は、記録ヘッドと、キャップと、復電検出器とを備えていた。このうち、前記記録ヘッドは、用紙に対してインクを吐出して記録を実行することができるように構成されていた。また、前記キャップは、移動可能に設けられており、移動によって前記記録ヘッドのノズルが形成された面を封止することができるように構成されていた。またさらに、前記復電検出器は、電源の復帰を検出することができるように設けられていた。従って、印字中に何らかの原因で電源が不通になった際、記録装置のスイッチがoffになっていても、電源復帰後に自動的に記録装置のスイッチをonにして、前記記録ヘッドを所定の位置に戻すことができた。更に、必要な場合には前記キャップにより前記記録ヘッドのキャッピングを行うことができた。
【特許文献1】特開平8−174974号公報
【特許文献2】特開2002−361838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、停電した状態から電源が復帰した際に自動的に前記キャップによって前記記録ヘッドを封止する構成であり、停電時に対する直接の対策ではなかった。従って、停電した状態が長時間続いた場合、前記記録ヘッドのノズルの内部のインクが乾燥してノズル詰まりが生じる虞がある。また、ノズルの内部のインクの粘度が変化することにより吐出不良の原因となる虞がある。
【0004】
また、特許文献2に示す如く、各電動機によって駆動するそれぞれの輪転機と、停電信号を出力する停電検出部とを備えた記録装置があった。
しかしながら、各電動機によって駆動するそれぞれの輪転機を、停電時に同調させて減速、停止させるための構成であった。即ち、記録ヘッドを備えた構成ではなく、記録ヘッドを保護する目的ではなかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、媒体送り手段が駆動している場合に停電した際、補助電源を用いずに、キャップが記録ヘッドを封止した状態にすることができる記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、電源の電力によって駆動する第1モーターと、該第1モーターの動力によって駆動し、被記録媒体を送り方向下流側へ送る媒体送り手段と、被記録媒体に対してインクを吐出するノズル列を有し、前記媒体送り手段と対向する記録時ポジションと、前記媒体送り手段と対向しないヘッド退避時ポジションとを有する記録ヘッドと、前記電源の電力によって駆動する第2モーターと、該第2モーターの動力によって駆動し、前記記録ヘッドを前記記録時ポジションと前記ヘッド退避時ポジションとの間において移動させるヘッド移動手段と、前記記録ヘッドの前記ノズル列が形成された面を封止可能に設けられており、前記記録ヘッドが前記ヘッド退避時ポジションに位置する場合に前記ノズル列が形成された面を封止する封止時ポジションと、前記ノズル列が形成された面を封止しないキャップ退避時ポジションとを有するキャップと、前記電源の電力によって駆動する第3モーターと、該第3モーターの動力によって駆動し、前記キャップを前記封止時ポジションと前記キャップ退避時ポジションとの間において移動させるキャップ移動手段と、前記第1乃至第3モーターを制御する制御部と、前記電源から前記制御部への送電停止を検出する停電検出手段と、を備え、前記媒体送り手段が駆動している場合に停電した際、前記媒体送り手段の駆動中の慣性力を利用して前記第1モーターを回転させて電力を回生させ、前記制御部は、該回生させた電力により前記第2モーターを駆動させて前記記録ヘッドを前記ヘッド退避時ポジションへ移動させると共に、前記回生させた電力により前記第3モーターを駆動させて前記キャップを前記封止時ポジションへ移動させる構成であることを特徴とする。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、前記記録装置は、停電した際、前記媒体送り手段の動作中の慣性力を利用して前記第1モーターを回転させて電力を回生させることができる。そして、前記制御部は、該回生させた電力により前記第2モーターを駆動させて前記記録ヘッドを前記ヘッド退避時ポジションへ移動させると共に、前記回生させた電力により前記第3モーターを駆動させて前記キャップを前記封止時ポジションへ移動させることができる。その結果、前記記録ヘッドを、前記キャップによって封止された状態にすることができる。
【0008】
即ち、停電した際、前記媒体送り手段の動作中の慣性力を利用して前記第1モーターを回転させて発電する構成である。さらに言い換えると、前記媒体送り手段の運動エネルギーを電力に変換する構成である。そして、発電した電力によって所謂、キャッピング動作を実行する。従って、停電した際、別途補助電源等を設けることなく、前記記録ヘッドのノズル列を封止することができる。その結果、停電したとき、前記記録ヘッドのノズル列内のインクの粘度変化や乾燥を防止することができる。即ち、停電した際、前記記録ヘッドを保護することができる。
【0009】
また、別途補助電源等を設ける必要がないので、構造の簡略化をすることができる。またさらに、コストダウンをすることができる。また、補助電源等の設けた場合のようなメンテナンスを必要としない。
尚、前記停電検出手段は、例えば、電磁石とばねとを利用して構成することができる。停電したとき、電磁力が消滅することによりばね力が打ち勝って作用を及ぼす構成とすることにより停電を検出することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記電源から前記制御部の入力側へ電力を供給する第1回路上に設けられ、電気的に接続した状態および切断した状態を切替える第1スイッチと、前記制御部の出力側と前記第1モーターとを電気的に繋ぐと共に、前記第1モーターと前記制御部の入力側とを電気的に繋ぐ第2回路上に設けられ、前記制御部の出力側および入力側のいずれか一方と前記第1モーターとを電気的に接続し、他方と前記第1モーターとを電気的に切断した状態に選択して切替える第2スイッチと、前記停電検出手段が前記送電停止を検出したとき、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチの状態を切替えるスイッチ切替え手段と、を備えている。
【0011】
そして、前記電源から前記制御部へ電力が供給されているとき、前記第1スイッチは、前記接続した状態であり、前記第2スイッチは、前記制御部の出力側と前記第1モーターとを電気的に接続し、前記制御部の入力側と前記第1モーターとを電気的に切断した状態であり、前記第1モーターの駆動中において、前記停電検出手段が前記送電停止を検出したとき、前記スイッチ切替え手段は、前記第1スイッチを前記切断した状態に切り替え、前記第2スイッチを前記制御部の入力側と前記第1モーターとを電気的に接続し、前記制御部の出力側と前記第1モーターとを電気的に切断した状態に切り替え、前記第1モーターから前記回生された電力が、前記制御部の入力側に送られ、前記制御部の出力側から前記第2モーターおよび前記第3モーターへ送られる構成であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、停電した際、容易に、電流の流れを変えることができ、前記第1モーターから前記制御部を介して前記第2モーターおよび前記第3モーターへ電力を供給することができる。即ち、停電した際、電気の流れをスムーズに変えることができる。
尚、前記スイッチ切替え手段は、例えば、電磁石とばねとを利用して構成することができる。停電したとき、電磁力が消滅することによりばね力が打ち勝って作用を及ぼす構成とすることによりスイッチを切替えることができる。即ち、停電したことを利用してスイッチを切替える構成とすることができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記第1モーターと前記媒体送り手段との間において動力を伝達する動力伝達手段を有し、該動力伝達手段は、動力を伝達する回転軸上に錘部を有することを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、前記媒体送り手段の動作中の慣性力を、前記錘部を設けない構成と比較して、増大させることができる。所謂、フライホイールである。その結果、停電した際、前記第1モーターが停止するまでの回転量を増大させ、回生する電力量を増加させることができる。
ここで、前記錘部の大きさ、重量、位置等は、前記キャップが前記記録ヘッドのノズル列が形成された面を封止するまでに必要な電力量に応じて設定するのは言うまでもない。
【0014】
また、前記錘部は、停電した際の前記第1モーターの回転を安定させることができる。具体的には、前記第1モーターの回転ムラを低減することができる。従って、回生する電力を安定させることができる。その結果、前記第2モーターおよび前記第3モーターへの電力供給を安定させることができる。
またさらに、前記媒体送り手段による被記録媒体の送り精度をより安定させることができる。
【0015】
本発明の第4の態様の停電時のキャップによる記録ヘッドの封止方法は、第1モーターを駆動させて、媒体送り手段によって被記録媒体を送り方向下流側へ送る媒体送り工程と、記録ヘッドが前記媒体送り手段と対向し、前記記録ヘッドに設けられたノズル列がインクを被記録媒体に対して吐出することにより記録を実行する記録実行工程と、停電検出手段によって電源から前記第1モーターを制御する制御部までの送電停止を検出する停電検出工程と、前記媒体送り手段の駆動中において前記停電検出工程により前記送電停止を検出したとき、前記媒体送り手段の駆動中の慣性力によって前記第1モーターを回転させ、電力を回生する電力回生工程と、該電力回生工程により回生された電力により、第2モーターを駆動させ、ヘッド移動手段によって前記記録ヘッドが前記媒体送り手段と対向しない位置まで退避移動させる記録ヘッド退避移動工程と、前記電力回生工程により回生された電力により、第3モーターを駆動させ、キャップ移動手段によってキャップを移動させ、前記記録ヘッド退避移動工程により退避移動した前記記録ヘッドの前記ノズル列が形成された面を封止するキャップ封止移動工程と、を具備することを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、上記第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。即ち、停電したとき、前記記録ヘッドのノズル列内のインクの粘度変化や乾燥を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明に係る「記録装置」或いは「液体噴射装置」の一例としてのインクジェットプリンター(以下「プリンター」と言う)1の全体の概略を示す側面図である。
ここで、液体噴射装置とは、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドから記録紙等の被記録材へインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えて特定の用途に対応する液体を前述した記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから、被記録材に相当する被噴射材に噴射して、液体を被噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。
【0018】
またさらに、液体噴射ヘッドとしては、前述した記録ヘッド以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料を噴射する試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0019】
本実施形態のプリンター1は、大型であることを前提とする。用紙幅についてはA2以上のサイズに対応することができるものである。また、プリンター全体のサイズは、一般の軽自動車と同程度またはそれ以上の大きさである。またさらに、後述する第1サクションベルト機構31は、全幅約1m、全長約2m以上の大型のものである。本実施形態のプリンター1は、一般家庭で使用されるためのものではなく、専ら業務用のプリンターである。
【0020】
図1に示す如く、プリンター1は、給送部10と、紙揃え部20と、プレヒート部39と、記録部40と、ポストヒート部60と、排出部70とを備えている。このうち、給送部10は、ローラーおよびベルトを備え、用紙Pを送り方向下流側(矢印Yの方向)へ給送することができるように構成されている。また、紙揃え部20は、ローラーと、ベルトと、用紙Pの側端と当接するガイド部(図示せず)とを備えている。そして、給送された用紙Pの姿勢を正しながら用紙Pを送り方向下流側へ送ることができるように構成されている。
【0021】
また、プレヒート部39は、紙揃え部20から送られた用紙Pを、記録部40へ送る前の段階において、予め熱を加えて温めてから送り方向下流側の記録部40へ送ることができるように構成されている。予め熱を加えるのは、後に用紙Pに着弾するインクの乾燥を促進するためである。具体的には、プレヒート部39は、記録部40まで延設された搬送部30としての第1サクションベルト機構31と、予備加熱時用紙支持部32と、後述する予備加熱手段33とを有している。搬送部30は、媒体送り工程として用紙Pを送り方向下流側へ送ることができるように構成されている。
【0022】
このうち、第1サクションベルト機構31は、三つのローラー34、34、34aと、該三つのローラー34、34、34aに巻回された複数の穴を有するベルト35と、該複数の穴を介して空気を吸引する吸引手段(図示せず)とを有する。そして、送り方向下流側のローラー34aが搬送用モーター36の動力によって駆動することにより、ベルト35が駆動し用紙Pを送ることができるように構成されている。また、第1サクションベルト機構31の上面側に形成される予備加熱時用紙支持部32が、用紙Pを裏面から支持することができるように設けられている。また、予備加熱時用紙支持部32には、熱伝導式の予備加熱手段33が設けられている。
【0023】
ここで、「熱伝導式」とは、物体の内部を通って高温部から低温部へ熱を伝える方式をいう。即ち、物体が用紙Pと接触することにより熱を伝導する方式である。
例えば、予備加熱手段33の一例としてニクロム線を用いる手段がある。該ニクロム線を通電させることにより、ニクロム線自体が発熱し、予備加熱時用紙支持部32を介して用紙Pの裏面に熱を伝導することができる。また、前述した吸引手段は、ベルト35の複数の穴を介して予備加熱時用紙支持部32の上方の空気を下方へ吸引するように構成されている。
【0024】
従って、吸引手段は、予備加熱時用紙支持部32上の用紙Pを、予備加熱時用紙支持部32にぴったりと吸着させることができる。その結果、用紙Pを加熱することができる。
またさらに、記録部40は、プレヒート部39から送られた用紙Pの表面に対して、インクを吐出して記録を実行することができるように設けられている。具体的には、記録部40は、プレヒート部39から延設された第1サクションベルト機構31と、記録時用紙支持部48と、記録ヘッド41とを有している。
【0025】
また、記録時用紙支持部48は、第1サクションベルト機構31の上面側に形成され、ベルトを介して用紙Pを裏面から支持することができるように設けられている。そして、記録時用紙支持部48には、前述した予備加熱手段33と同様に、熱伝導式の記録時加熱手段49が設けられている。またさらに、記録ヘッド41は、記録時用紙支持部48の上方に、用紙Pの幅方向Xへ移動可能に設けられている。詳しくは後述するように、幅方向Xに延設された第1ボールねじ45(図2参照)に案内されながら、ヘッド移動用モーター44(図2参照)の動力によって移動するように構成されている。
【0026】
そして、記録実行工程として、記録ヘッド41がノズル形成面43のノズル列42からインクを用紙Pの表面に対して吐出することにより、記録が実行されるように構成されている。
尚、記録ヘッド41は、多数のヘッドユニットから構成されており、該ヘッドユニットのそれぞれにノズル列42が形成されているものとする。
【0027】
また、記録が実行されない所謂、待機状態では、記録ヘッド41は、記録領域外のヘッド退避時ポジションH2(図3および図5参照)に位置する。
ここで、「記録領域」とは、記録ヘッド41が記録時用紙支持部48と対向する領域であって、インクを吐出して記録を実行する領域をいう。
記録が実行された後、用紙Pは、第1サクションベルト機構31によって送り方向下流側のポストヒート部60へ送られる。
【0028】
また、ポストヒート部60は、記録された用紙P上のインクを乾燥することができるように構成されている。具体的には、ポストヒート部60は、第2サクションベルト機構62と、乾燥時用紙支持部63と、乾燥機構としての対流式の温風ヘッド61とを有している。
ここで、「対流式」とは、気体や液体などの流体によって熱を伝える方式をいう。
【0029】
第2サクションベルト機構62は、前述した第1サクションベルト機構31の構成と同様である。その説明は省略する。
また、乾燥時用紙支持部63は、第2サクションベルト機構62の上面側に形成され、ベルトを介して用紙Pを裏面から支持することができるように設けられている。
【0030】
またさらに、温風ヘッド61は、温めた風を吹出すことができるように構成されている。そして、用紙Pの表面に対して温風を吹出すことによって、用紙Pの表面に着弾したインクを乾燥させることができる。
【0031】
尚、温風ヘッド61の内部構造は、ニクロム線等の熱発生手段と、ファン等の風力発生手段とから構成されているものとする。
また、乾燥された用紙Pは、第2サクションベルト機構62によって送り方向下流側の排出部70へ送られる。
排出部70は、ローラーおよびベルトを備え、用紙Pを送り方向下流側へ排出することができるように構成されている。
【0032】
続いて、記録部40および搬送部30についてより詳しく説明する。
図2に示すのは、本発明に係る記録部の概略を示す斜視図である。また、図3に示すのは、本発明に係る記録部の概略を示す正面断面図およびブロック図である。
図2および図3に示す如く、搬送部30は、第1サクションベルト機構31と、搬送用モーター36と、動力伝達手段37と、フライホイール38とを有している。
【0033】
このうち、動力伝達手段37は、搬送用モーター36の動力をローラー34aへ伝達することができるように構成されている。そして、動力伝達手段37における動力伝達経路上の回転軸上には、錘部としてのフライホイール38が設けられている。フライホイール38は、錘であるので、回転している軸に対して慣性力により回転を続けさせようと作用する。詳しい作用効果については後述する。
【0034】
尚、搬送用モーター36は、ステップモーター、直流モーターのどちらでもよいが、ステップモーターであることが望ましい。搬送精度を確保するためである。
ここで、「ステップモーター」とは、交流電流によって駆動し、ステップ数で駆動量が決まるモーターをいう。一方、「直流モーター」とは、直流電流によって駆動するモーターをいう。
【0035】
また、記録ヘッド41は、記録時にとる記録時ポジションH1と、待機時にとるヘッド退避時ポジションH2とを有する。このうち、記録時ポジションH1は、前述した記録領域内のポジションである。また、ヘッド退避時ポジションH2は、前述した記録領域外のポジションである。また、記録ヘッド41は、第1ボールねじ45によってヘッド移動用モーター44の動力が伝達され、記録時ポジションH1と、ヘッド退避時ポジションH2との間を移動することができるように構成されている。
【0036】
ここで、第1ボールねじ45は、第1ねじ軸46と、第1ナット47とを有する。第1ねじ軸46は、X軸方向へ延設され、ヘッド移動用モーター44の動力によってX軸を軸に回転するように設けられている。一方、第1ナット47は、記録ヘッド41側に設けられている。そして、第1ナット47は、第1ねじ軸46のねじ溝と係合し、第1ねじ軸46の回動する動力をX軸方向の動力に変換することができるように構成されている。
【0037】
尚、ヘッド移動用モーター44は、ステップモーター、直流モーターのどちらでもよい。
ステップモーターを使用すると、ステップ数で駆動量を管理することができる。従って、記録ヘッド41の記録時ポジションH1およびヘッド退避時ポジションH2を精度よく決めることができる。
一方、直流モーターを使用する場合、記録時ポジションH1およびヘッド退避時ポジションH2に対応する位置に度当て部(図示せず)を設ければよい。移動する記録ヘッド41が度当て部に度当たった時、電流値が上昇するので、該上昇したことにより制御部80がヘッド移動用モーター44を停止させればよい。従って、直流モーターを使用する場合も、記録時ポジションH1およびヘッド退避時ポジションH2を精度よく決めることができる。
【0038】
また、キャップ50は、記録ヘッド41から退避したキャップ退避時ポジションK2と、記録ヘッド41のノズル形成面43を封止する封止時ポジションK1とを有する。このうち、キャップ退避時ポジションK2は、記録時にとるポジションである。一方、封止時ポジションK1は、記録を実行しない待機時にとるポジションであって、ヘッド退避時ポジションH2に位置する記録ヘッド41のノズル形成面43を封止することができるポジションである。
【0039】
また、キャップ50は、第2ボールねじ52によってキャップ移動用モーター51の動力が伝達され、キャップ退避時ポジションK2と、封止時ポジションK1との間を移動することができるように構成されている。
【0040】
ここで、第2ボールねじ52は、第2ねじ軸53と、第2ナット54とを有する。第2ねじ軸53は、記録ヘッド41と搬送部30とが対向する方向であるZ軸方向に延設され、キャップ移動用モーター51の動力によってZ軸を軸に回転するように設けられている。一方、第2ナット54は、キャップ50側に設けられている。そして、第2ナット54は、第2ねじ軸53のねじ溝と係合し、第2ねじ軸53の回動する動力をZ軸方向の動力に変換することができるように構成されている。
尚、キャップ移動用モーター51は、ヘッド移動用モーター44と同様にステップモーター、直流モーターのどちらでもよい。ヘッド移動用モーター44の場合と同様に、いずれの場合も、キャップ退避時ポジションK2および封止時ポジションK1を精度よく決めることができる。
【0041】
また、プリンター1は、出力側80bと電気的に接続された搬送用モーター36、ヘッド移動用モーター44およびキャップ移動用モーター51を制御する制御部80を有している。具体的には、制御部80は、ヘッド移動制御部81(80)と、キャップ移動制御部82(80)と、搬送制御部83(80)とを有する。このうち、ヘッド移動制御部81(80)は、出力側81bからヘッド移動用モーター44へ電力を供給すると共に、記録ヘッド41の記録時ポジションH1とヘッド退避時ポジションH2との切替えを行うことができるように構成されている。
【0042】
また、キャップ移動制御部82(80)は、出力側82bからキャップ移動用モーター51へ電力を供給すると共に、キャップ50のキャップ退避時ポジションK2と封止時ポジションK1との切替えを行うことができるように構成されている。またさらに、搬送制御部83(80)は、出力側83bから搬送用モーター36へ電力を供給すると共に、搬送用モーター36を制御することができるように構成されている。
【0043】
また、第1回路C1は、商用電源100と制御部80の入力側80aとを電気的に繋ぐように構成されている。具体的には、商用電源100と、ヘッド移動制御部81の入力側81a、キャップ移動制御部82の入力側82aおよび搬送制御部83の入力側83aとを電気的に繋ぐように構成されている。そして、第1回路C1上には、スイッチ切替え手段91を兼ねる停電検出手段90および第1スイッチS1が設けられている。このうち、停電検出手段90は、詳しい構造については後述するように商用電源100の電力供給が停止した場合、停電検出工程として該停止したことを検出することができるように設けられている。
【0044】
さらに、停電検出手段90は、スイッチ切替え手段91として、第1スイッチS1および第2スイッチS2の状態を切替えることができるように設けられている。所謂、リレースイッチである。また、第1スイッチS1は、商用電源100と制御部80の入力側80aとの間において、電気的に接続された接続状態と、電気的に切断された切断状態とを切替えることができるように設けられている。
尚、本実施形態では、後述するように、第1スイッチS1は停電検出手段90と一体に構成されている(図4参照)。
【0045】
またさらに、第2回路C2は、制御部80とヘッド移動用モーター44、キャップ移動用モーター51および搬送用モーター36とを電気的に繋ぐように構成されている。より詳しく説明すると、第2回路C2は、搬送制御部83(80)の出力側83bと搬送用モーター36とを電気的に繋ぎ、ヘッド移動制御部81(80)の入力側81aおよびキャップ移動制御部82(80)の入力側82aと搬送用モーター36とを電気的に繋ぐ。さらに、ヘッド移動制御部81(80)の出力側81bとヘッド移動用モーター44とを電気的に繋ぎ、キャップ移動制御部82(80)の出力側82bとキャップ移動用モーター51とを電気的に繋ぐように設けられている。
【0046】
そして、第2回路C2上には、第2スイッチS2が設けられている。具体的には、搬送制御部83(80)の出力側83bと搬送用モーター36とを繋ぐ回路上、およびヘッド移動制御部81(80)の入力側81aおよびキャップ移動制御部82(80)の入力側82aと搬送用モーター36とを繋ぐ回路上に設けられている。そして、いずれか一方のみを電気的に接続状態にし、他方を電気的に切断状態にするように構成されている。また、第2スイッチS2の切替えは、停電検出手段90の第1スイッチS1と連動して行われるように構成されている。即ち、第2スイッチS2は、停電検出手段90と所謂、リレースイッチの関係を有している。
【0047】
図4に示すのは、停電検出手段の概略を示す図である。
図4に示す如く、スイッチ切替え手段91を兼ねる停電検出手段90は、ばね94と、揺動部93と、電磁石92と、第1端子95と、第2端子96と、電源供給端子97とを備えている。このうち、ばね94の一端は揺動部93と係合している。そして、ばね94は、揺動部93に設けられた電源供給端子97を第2端子96と接触させるように付勢している。
【0048】
また、電磁石92は、商用電源100から電気が流れてくると磁力を発生することができるように設けられている。そして、発生した磁力が、ばね94の付勢力に抗して、揺動部93を電磁石92へ引きつける。これにより、電源供給端子97を第2端子96から離間させると共に第1端子95と接触させることができる。
ここで、第1端子95は、制御部80の入力側80aと電気的に繋がっている。一方、第2端子96は、所謂、アースとしての接地端子である。
尚、第1端子95、第2端子96および電源供給端子97は第1スイッチS1を構成する。
【0049】
従って、商用電源100から電力が供給されている場合、電磁石92の磁力によって、第1回路C1上の第1スイッチS1が接続状態となる。
一方、何らかの原因で商用電源100からの電力の供給が停止した場合、即ち、停電した場合、磁力が消滅しばね94の付勢力によって、電源供給端子97が第1端子95から離間すると共に第2端子96と接触する。従って、第1回路C1上の第1スイッチS1が切断状態となる。
【0050】
図3に戻って商用電源100から電力が供給されている場合について説明を続ける。
商用電源100から電力が供給されている場合、前述したように第1スイッチS1は接続状態である。従って、電力は、制御部80の入力側80aへ供給される。また、第2スイッチS2は、搬送制御部83(80)の出力側83bと搬送用モーター36とを接続状態にし、ヘッド移動制御部81(80)の入力側81aおよびキャップ移動制御部82(80)の入力側82aと搬送用モーター36との間を切断状態にしている。
【0051】
そして、記録時において、搬送制御部83(80)の出力側83bから搬送用モーター36へ電力が供給される。即ち、電流は、搬送制御部83(80)の出力側83bから搬送用モーター36へ向かって流れる。従って、第1サクションベルト機構31を駆動させえることができる。
尚、給送部10、紙揃え部20、第2サクションベルト機構62および排出部70についても同様に駆動させることができるものとする。動力源は、搬送用モーター36の動力を利用してもよいし、別途設けてもよいのは勿論である。
【0052】
また、待機時になると、先ず、ヘッド移動制御部81(80)が、ヘッド移動用モーター44を駆動させ、記録ヘッド41を記録時ポジションH1からヘッド退避時ポジションH2へ移動させる。具体的には、ヘッド移動制御部81(80)の出力側81bからヘッド移動用モーター44へ電力を供給する。即ち、電流は、ヘッド移動制御部81(80)の出力側81bからヘッド移動用モーター44へ向かって流れる。従って、ヘッド移動用モーター44を駆動させることができる。
【0053】
次に、キャップ移動制御部82(80)が、キャップ移動用モーター51を駆動させ、キャップ50をキャップ退避時ポジションK2から封止時ポジションK1へ移動させる。具体的には、キャップ移動制御部82(80)の出力側82bからキャップ移動用モーター51へ電力を供給する。即ち、電流は、キャップ移動制御部82(80)の出力側82bからキャップ移動用モーター51へ向かって流れる。
【0054】
従って、キャップ移動用モーター51を駆動させることができる。その結果、記録ヘッド41のノズル形成面43を封止することができ、ノズル列42を乾燥等から保護することができる。
尚、搬送用モーター36は、停止させることが望ましい。電力消費の無駄を低減するためである。
【0055】
またさらに、再度記録時になると、先ず、搬送制御部83(80)が、搬送用モーター36を駆動させ、第1サクションベルト機構31を駆動させる。
次に、キャップ移動制御部82(80)が、キャップ移動用モーター51を先ほどと逆方向へ駆動させ、キャップ50を封止時ポジションK1からキャップ退避時ポジションK2へ移動させる。
続いて、ヘッド移動制御部81(80)が、ヘッド移動用モーター44を先ほどと逆方向へ駆動させ、記録ヘッド41をヘッド退避時ポジションH2から記録時ポジションH1へ移動させる。
その結果、記録を実行することができる。
尚、本実施形態では、記録ヘッド41が記録時ポジションH1に位置するとき、常に第1サクションベルト機構31が駆動しているものとする。
【0056】
続いて、停電時について説明する。
図5に示すのは、本発明に係る記録部の停電時の動作を示す正面断面図およびブロック図である。
図5に示す如く、何らかの原因により商用電源100からの電力の供給が停止すると、停電検出手段90が停電を検出する。
【0057】
具体的には、前述したように電磁石92の磁力が消滅するため(図4参照)、第1スイッチS1が切断状態に切り替る。
これと共に、停電検出手段90とリレー関係を有する第2スイッチS2も切り替る。具体的には、搬送制御部83(80)の出力側83bと搬送用モーター36とを切断状態にし、ヘッド移動制御部81(80)の入力側81aおよびキャップ移動制御部82(80)の入力側82aと搬送用モーター36との間を接続状態に切替える。
【0058】
ここで、商用電源100からの電力の供給が停止したため、記録時であった場合、搬送制御部83(80)の出力側83bから搬送用モーター36への電力供給も停止する。このとき、記録ヘッド41は、記録時ポジションH1に位置する。また、キャップ50は、キャップ退避時ポジションK2に位置する。従って、このまま放置すると、記録ヘッド41のノズル列42が乾燥する虞がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、前述したように停電と同時に第1スイッチS1および第2スイッチS2を切替える。本実施形態のプリンター1は大型であるため、搬送部30の第1サクションベルト機構31は直ちに停止しない。大型であるため、停電した瞬間から慣性力により例えば10〜20秒またはそれ以上の間、第1サクションベルト機構31は駆動し続けようとする。
【0060】
従って、搬送用モーター36は、電力回生工程として、第1サクションベルト機構31の慣性力によって回転することができる。その結果、搬送用モーター36は、電力を発電することができる。即ち、電力回生をすることができる。
回生された電力は、搬送用モーター36からヘッド移動制御部81(80)の入力側81aおよびキャップ移動制御部82(80)の入力側82aへ送られる。
【0061】
即ち、電気は、搬送用モーター36からヘッド移動制御部81(80)の入力側81aおよびキャップ移動制御部82(80)の入力側82aへ向かって流れる。そして、ヘッド移動制御部81(80)は、記録ヘッド退避移動工程として、回生された電力を出力側81bからヘッド移動用モーター44へ供給し、記録ヘッド41を記録時ポジションH1からヘッド退避時ポジションH2へ移動させる。
【0062】
また、キャップ移動制御部82(80)は、キャップ封止移動工程として、回生された電力を出力側82bからキャップ移動用モーター51へ供給し、キャップ50をキャップ退避時ポジションK2から封止時ポジションK1へ移動させる。その結果、記録ヘッド41のノズル形成面43を封止することができ、ノズル列42を乾燥等から保護することができる。即ち、停電時に補助バッテリーを備えていなくても、記録ヘッド41をキャップ50で封止してノズル列42を保護することができる。
【0063】
また、前述したように搬送部30の動力伝達手段37には、フライホイール38が設けられている。従って、停電する前の運動エネルギーを、フライホイール38を設けていない場合と比較して、大きくすることができる。そして、停電した際、慣性力を大きくすることができ、停電した瞬間の搬送用モーター36が回転している状態から、停止するまでの回転量を、多くすることができる。
【0064】
その結果、回生することができる電力量を、フライホイール38を設けていない場合と比較して、大きくすることができる。即ち、ヘッド移動用モーター44およびキャップ移動用モーター51を駆動させ記録ヘッド41をキャップ50で封止するために必要十分な電力量を回生することができる。
また、フライホイール38を設けることにより、第1サクションベルト機構31および搬送用モーター36の回転を安定させることができる。即ち、回転ムラを低減することができる。従って、電力を回生する際の電力を安定させることができる。その結果、回生した電力によるヘッド移動用モーター44およびキャップ移動用モーター51の駆動を安定させることができる。
【0065】
尚、回生される電力の電流は交流である。ヘッド移動用モーター44およびキャップ移動用モーター51が直流モーターかステップモーターかによってヘッド移動制御部81(80)およびキャップ移動制御部82(80)が電流の種類を変換するのは言うまでもない。交流を直流に変換する場合、整流器を用いるのは勿論である。
また、ステップモーターの場合は、所定のステップの信号にして送るのは言うまでもない。
【0066】
またさらに、ヘッド移動制御部81(80)およびキャップ移動制御部82(80)を介して回生された電力をヘッド移動用モーター44およびキャップ移動用モーター51へ供給する構成としたが、整流器等で十分である場合はヘッド移動制御部81(80)およびキャップ移動制御部82(80)を介することを要しない。ただし、ヘッド移動用モーター44およびキャップ移動用モーター51の駆動量を制御するため、ヘッド移動制御部81(80)およびキャップ移動制御部82(80)を介して制御することが望ましい。
【0067】
以上、説明したように、記録時に停電した場合、搬送部30の慣性力によって電力を回生することができ、記録ヘッド41をキャップ50で封止することができる。その結果、記録ヘッド41を保護することができる。
一方、待機時に停電した場合は、既に記録ヘッド41はキャップ50によって封止されているので、特に問題はない。
【0068】
また、停電が復旧した際、オペレーターが停電検出手段90を操作する。従って、第1スイッチS1は通電状態に切り替わる。これに伴い、第2スイッチS2については、搬送制御部83(80)の出力側83bと搬送用モーター36とが接続状態になり、ヘッド移動制御部81(80)の入力側81aおよびキャップ移動制御部82(80)の入力側82aと搬送用モーター36との間が切断状態に切替わる。そして、異常がないことを確認して記録を再開することができる。
【0069】
またさらに、停電した際、媒体送り手段の一例である搬送部30としての第1サクションベルト機構31の慣性力を利用して電力回生を行ったがこれに限られない。第1サクションベルト機構31以外に、媒体送り手段である給送部10、紙揃え部20、ポストヒート部60の第2サクションベルト機構62、排出部70等の用紙Pを送る機構のいずれかまたは全ての機構における慣性力を利用して電力回生を行ってもよいのは勿論である。
【0070】
本実施形態の記録装置であるプリンター1は、電源としての商用電源100の電力によって駆動する第1モーターの一例である搬送用モーター36と、搬送用モーター36の動力によって駆動し、被記録媒体の一例である用紙Pを送り方向下流側へ送る媒体送り手段の一例である搬送部30の第1サクションベルト機構31と、用紙Pに対してインクを吐出するノズル列42を有し、第1サクションベルト機構31と対向する記録時ポジションH1と、第1サクションベルト機構31と対向しないヘッド退避時ポジションH2とを有する記録ヘッド41と、商用電源100の電力によって駆動する第2モーターとしてのヘッド移動用モーター44と、ヘッド移動用モーター44の動力によって駆動し、記録ヘッド41を記録時ポジションH1とヘッド退避時ポジションH2との間において移動させるヘッド移動手段の一例である第1ボールねじ45と、記録ヘッド41のノズル列42が形成された面であるノズル形成面43を封止可能に設けられており、記録ヘッド41がヘッド退避時ポジションH2に位置する場合にノズル形成面43を封止する封止時ポジションK1と、ノズル形成面43を封止しないキャップ退避時ポジションK2とを有するキャップ50と、商用電源100の電力によって駆動する第3モーターとしてのキャップ移動用モーター51と、キャップ移動用モーター51の動力によって駆動し、キャップ50を封止時ポジションK1とキャップ退避時ポジションK2との間において移動させるキャップ移動手段の一例である第2ボールねじ52と、搬送用モーター36、ヘッド移動用モーター44およびキャップ移動用モーター51を制御する制御部80と、商用電源100から制御部80への送電停止を検出する停電検出手段90と、を備えている。
【0071】
さらに、第1サクションベルト機構31が駆動している場合に停電した際、第1サクションベルト機構31の駆動中の慣性力を利用して搬送用モーター36を回転させて電力を回生させ、制御部80は、該回生させた電力によりヘッド移動用モーター44を駆動させて記録ヘッド41をヘッド退避時ポジションH2へ移動させると共に、前記回生させた電力によりキャップ移動用モーター51を駆動させてキャップ50を封止時ポジションK1へ移動させる構成であることを特徴とする。
【0072】
また、本実施形態において、商用電源100から制御部80の入力側80aへ電力を供給する第1回路C1上に設けられ、電気的に接続した状態および切断した状態を切替える第1スイッチS1と、制御部80の搬送制御部83の出力側83bと搬送用モーター36とを電気的に繋ぐと共に、搬送用モーター36と制御部80としてのヘッド移動制御部81の入力側81aおよびキャップ移動制御部82の入力側82aとを電気的に繋ぐ第2回路C2上に設けられ、搬送制御部83の出力側83bと、ヘッド移動制御部81の入力側81aおよびキャップ移動制御部82の入力側82aとののいずれか一方と搬送用モーター36とを電気的に接続し、他方と搬送用モーター36とを電気的に切断した状態に選択して切替える第2スイッチS2と、停電検出手段90が送電停止を検出したとき、第1スイッチS1および第2スイッチS2の状態を切替えるスイッチ切替え手段91と、を備えている。
【0073】
さらに、商用電源100から制御部80へ電力が供給されているとき、第1スイッチS1は、前記接続した状態であり、第2スイッチS2は、搬送制御部83の出力側83bと搬送用モーター36とを電気的に接続し、ヘッド移動制御部81の入力側81aおよびキャップ移動制御部82の入力側82aと搬送用モーター36とを電気的に切断した状態であり、搬送用モーター36の駆動中において、停電検出手段90が送電停止を検出したとき、スイッチ切替え手段91は、第1スイッチS1を前記切断した状態に切り替え、第2スイッチS2をヘッド移動制御部81の入力側81aおよびキャップ移動制御部82の入力側82aと搬送用モーター36とを電気的に接続し、搬送制御部83の出力側83bと搬送用モーター36とを電気的に切断した状態に切り替え、搬送用モーター36から前記回生された電力が、ヘッド移動制御部81の入力側81aおよびキャップ移動制御部82の入力側82aに送られ、ヘッド移動制御部81の出力側81bおよびキャップ移動制御部82の出力側82bからそれぞれヘッド移動用モーター44およびキャップ移動用モーター51へ送られる構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、搬送用モーター36と第1サクションベルト機構31のローラー34aとの間において動力を伝達する動力伝達手段37を有し、動力伝達手段37は、動力を伝達する回転軸上に錘部としてのフライホイール38を有することを特徴とする。
【0074】
本実施形態の停電時のキャップ50による記録ヘッド41の封止方法は、搬送用モーター36を駆動させて、第1サクションベルト機構31によって用紙Pを送り方向下流側へ送る媒体送り工程と、記録ヘッド41が第1サクションベルト機構31と対向し、記録ヘッド41に設けられたノズル列42がインクを用紙Pに対して吐出することにより記録を実行する記録実行工程と、停電検出手段90によって商用電源100から搬送用モーター36を制御する制御部80までの送電停止を検出する停電検出工程と、第1サクションベルト機構31の駆動中において停電検出工程により送電停止を検出したとき、第1サクションベルト機構31の駆動中の慣性力によって搬送用モーター36を回転させ、電力を回生する電力回生工程と、電力回生工程により回生された電力により、ヘッド移動用モーター44を駆動させ、第1ボールねじ45によって記録ヘッド41が第1サクションベルト機構31と対向しない位置であるヘッド退避時ポジションH2まで退避移動させる記録ヘッド退避移動工程と、電力回生工程により回生された電力により、キャップ移動用モーター51を駆動させ、第2ボールねじ52によってキャップ50を封止時ポジションK1まで移動させ、記録ヘッド退避移動工程により退避移動した記録ヘッド41のノズル列42が形成されたノズル形成面43を封止するキャップ封止移動工程と、を具備していることを特徴とする。
【0075】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るプリンターの全体の概略を示す側面図。
【図2】本発明に係る記録部の概略を示す斜視図。
【図3】本発明に係る記録部の概略を示す正面断面図およびブロック図。
【図4】本発明に係る停電検出手段の概略を示す図。
【図5】本発明に係る記録部の停電時の動作を示す正面断面図およびブロック図。
【符号の説明】
【0077】
1 プリンター、10 給送部、20 紙揃え部、30 搬送部、
31 第1サクションベルト機構、32 予備加熱時用紙支持部、33 予備加熱手段、
34 ローラー、35 ベルト、36 搬送用モーター、37 動力伝達手段、
38 フライホイール、39 プレヒート部、40 記録部、41 記録ヘッド、
42 ノズル列、43 ノズル形成面、44 ヘッド移動用モーター、
45 第1ボールねじ、46 第1ねじ軸、47 第1ナット、
48 記録時用紙支持部、49 記録時加熱手段、50 キャップ、
51 キャップ移動用モーター、52 第2ボールねじ、53 第2ねじ軸、
54 第2ナット、60 ポストヒート部、61 温風ヘッド、
62 第2サクションベルト機構、63 乾燥時用紙支持部、70 排出部、
80 制御部、81 ヘッド移動制御部、82 キャップ移動制御部、
83 搬送制御部、90 停電検出手段、91 スイッチ切替え手段、92 電磁石、
93 揺動部、94 ばね、100 商用電源、C1 第1回路、C2 第2回路、
H1 記録時ポジション、H2 ヘッド退避時ポジション、K1 封止時ポジション、
K2 キャップ退避時ポジション、S1 第1スイッチ、S2 第2スイッチ、
P 用紙、X 幅方向、Y 送り方向、Z 記録ヘッドと搬送部とが対向する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の電力によって駆動する第1モーターと、
該第1モーターの動力によって駆動し、被記録媒体を送り方向下流側へ送る媒体送り手段と、
被記録媒体に対してインクを吐出するノズル列を有し、前記媒体送り手段と対向する記録時ポジションと、前記媒体送り手段と対向しないヘッド退避時ポジションとを有する記録ヘッドと、
前記電源の電力によって駆動する第2モーターと、
該第2モーターの動力によって駆動し、前記記録ヘッドを前記記録時ポジションと前記ヘッド退避時ポジションとの間において移動させるヘッド移動手段と、
前記記録ヘッドの前記ノズル列が形成された面を封止可能に設けられており、前記記録ヘッドが前記ヘッド退避時ポジションに位置する場合に前記ノズル列が形成された面を封止する封止時ポジションと、前記ノズル列が形成された面を封止しないキャップ退避時ポジションとを有するキャップと、
前記電源の電力によって駆動する第3モーターと、
該第3モーターの動力によって駆動し、前記キャップを前記封止時ポジションと前記キャップ退避時ポジションとの間において移動させるキャップ移動手段と、
前記第1乃至第3モーターを制御する制御部と、
前記電源から前記制御部への送電停止を検出する停電検出手段と、を備え、
前記媒体送り手段が駆動している場合に停電した際、前記媒体送り手段の駆動中の慣性力を利用して前記第1モーターを回転させて電力を回生させ、
前記制御部は、該回生させた電力により前記第2モーターを駆動させて前記記録ヘッドを前記ヘッド退避時ポジションへ移動させると共に、前記回生させた電力により前記第3モーターを駆動させて前記キャップを前記封止時ポジションへ移動させる構成である記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記電源から前記制御部の入力側へ電力を供給する第1回路上に設けられ、電気的に接続した状態および切断した状態を切替える第1スイッチと、
前記制御部の出力側と前記第1モーターとを電気的に繋ぐと共に、前記第1モーターと前記制御部の入力側とを電気的に繋ぐ第2回路上に設けられ、前記制御部の出力側および入力側のいずれか一方と前記第1モーターとを電気的に接続し、他方と前記第1モーターとを電気的に切断した状態に選択して切替える第2スイッチと、
前記停電検出手段が前記送電停止を検出したとき、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチの状態を切替えるスイッチ切替え手段と、を備え、
前記電源から前記制御部へ電力が供給されているとき、前記第1スイッチは、前記接続した状態であり、前記第2スイッチは、前記制御部の出力側と前記第1モーターとを電気的に接続し、前記制御部の入力側と前記第1モーターとを電気的に切断した状態であり、
前記第1モーターの駆動中において、前記停電検出手段が前記送電停止を検出したとき、前記スイッチ切替え手段は、前記第1スイッチを前記切断した状態に切り替え、前記第2スイッチを前記制御部の入力側と前記第1モーターとを電気的に接続し、前記制御部の出力側と前記第1モーターとを電気的に切断した状態に切り替え、
前記第1モーターから前記回生された電力が、前記制御部の入力側に送られ、前記制御部の出力側から前記第2モーターおよび前記第3モーターへ送られる構成である記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記第1モーターと前記媒体送り手段との間において動力を伝達する動力伝達手段を有し、該動力伝達手段は、動力を伝達する回転軸上に錘部を有する記録装置。
【請求項4】
第1モーターを駆動させて、媒体送り手段によって被記録媒体を送り方向下流側へ送る媒体送り工程と、
記録ヘッドが前記媒体送り手段と対向し、前記記録ヘッドに設けられたノズル列がインクを被記録媒体に対して吐出することにより記録を実行する記録実行工程と、
停電検出手段によって電源から前記第1モーターを制御する制御部までの送電停止を検出する停電検出工程と、
前記媒体送り手段の駆動中において前記停電検出工程により前記送電停止を検出したとき、前記媒体送り手段の駆動中の慣性力によって前記第1モーターを回転させ、電力を回生する電力回生工程と、
該電力回生工程により回生された電力により、第2モーターを駆動させ、ヘッド移動手段によって前記記録ヘッドが前記媒体送り手段と対向しない位置まで退避移動させる記録ヘッド退避移動工程と、
前記電力回生工程により回生された電力により、第3モーターを駆動させ、キャップ移動手段によってキャップを移動させ、前記記録ヘッド退避移動工程により退避移動した前記記録ヘッドの前記ノズル列が形成された面を封止するキャップ封止移動工程と、を具備する停電時のキャップによる記録ヘッドの封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−167618(P2010−167618A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10942(P2009−10942)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】