説明

記録装置、記録システム、および記録モジュール

【課題】複数の記録ヘッドの制御系の独立性を維持しつつ、それらの記録ヘッドの駆動タイミングを関連的に設定して、高品位の画像を記録することができる記録モジュール、記録装置、および記録システムを提供すること。
【解決手段】記録媒体の搬送量に応じたエンコーダ信号と、記録媒体に付されたマークを検出したときに出力されるTOF信号と、を記録モジュールA,Bに入力する。記録モジュールA,Bは、それぞれ、記録媒体が所定量搬送される毎にHsync信号を独自に発生する。記録モジュールAは、Hsync信号の立ち上がり時点tAと、TOF信号の立ち上がり時点t0と、との間のずれに応じて、記録ヘッド1Kの駆動信号の出力タイミングを設定する。記録モジュールBは、Hsync信号の立ち上がり時点tBと、TOF信号の立ち上がり時点t0と、との間のずれに応じて、記録ヘッド2Kの駆動信号の出力タイミングを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送路に沿って搬送される記録媒体に対して、複数の記録ヘッドを用いて画像を記録するための記録装置、記録システム、および記録モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の搬送路に沿って連続的に搬送される記録媒体に対して画像を記録するために、その搬送路上の記録媒体と対向する位置に、記録動作を独立的に実行する複数の記録ヘッドを備えた記録システムがある(特許文献1参照)。それらの記録ヘッドを複数の記録モジュールに分けて備えた場合、それらの記録モジュールは、搬送路と交差する方向、あるいは搬送路に沿って配備される。それらの記録モジュールは、それらに備わる記録ヘッドを駆動することにより、1つの記録媒体に対して協働して画像を記録することができる。それぞれの記録モジュールは、記録媒体の搬送速度に対応する共通の第1パルス信号に同期して記録ヘッドを駆動することができる。また、記録モジュールは、記記録媒体が所定量搬送される毎に独自に第2パルス信号を発生させて、その第2パルス信号に同期して記録ヘッドを駆動することにより、独立した制御系を構成することができる。すなわち、それぞれの記録モジュールは、個別に入力する記録データおよび第1パルス信号と、個別に設定する第2パルス信号と、を用いて、記録モジュール毎に独立して記録ヘッドを制御することができ、相互間においてデータや信号を送受信する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−160916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の記録モジュールが独自に第2パルス信号を発生させた場合には、複数の記録モジュールの相互間において、それらの記録ヘッドの駆動タイミングの関係が管理されないため、それらの第2パルス信号にずれが生じるおそれがある。そのようなずれが生じた場合には、複数の記録モジュールの記録ヘッドの協働により記録される画像に乱れが生じて、画像品位が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、複数の記録ヘッドの制御系の独立性を維持しつつ、それらの記録ヘッドの駆動タイミングを関連的に設定して、高品位の画像を記録することができる記録モジュール、記録装置、および記録システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、記録媒体が所定の搬送路に搬送される搬送路と対向する位置に配備された複数の記録ヘッドを用いて、前記搬送路上の記録媒体に、記録データに基づいて画像を記録する記録装置であって、前記記録媒体の搬送量に応じた第1パルス信号を発生する第1発生手段と、前記記録媒体の所定部分が前記搬送路上の所定位置を通過したときに検出信号を出力する検出手段と、前記記録媒体が所定量搬送される毎に、前記記録ヘッド毎に対応する第2パルス信号を前記第1パルス信号に基づいて発生する第2発生手段と、前記検出信号の出力タイミングと、前記記録ヘッド毎に対応する前記第2パルス信号の発生タイミングと、の間のずれに応じて、前記記録ヘッド毎に、当該記録ヘッドを駆動するための駆動信号の出力タイミングを設定する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の記録ヘッドに共通の信号に基づいて、それらの記録ヘッドの駆動信号の出力タイミングを設定することにより、それらの記録ヘッドの制御系の独立性を維持しつつ、それらの記録位置を合わせて、高品位の画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態としてのプリントシステムの概略構成図である。
【図2】(a)は、図1のプリントシステムにおける記録装置の平面図、(b)は、その記録装置の側面図である。
【図3】図1のプリントシステムの制御系のブロック構成図である。
【図4】1つの記録モジュールの基本動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】1つの記録モジュールの基本動作による記録画像の説明図である。
【図6】2つの記録モジュールの基本動作と記録媒体との関係の説明図である。
【図7】図6の2つの記録モジュールに備わる記録ヘッドの記録動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】図6の2つの記録モジュールに備わる記録ヘッドによる記録画像の説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態における2つの記録モジュールの記録動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】図9の2つの記録モジュールの記録動作による記録画像の説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態における記録モジュールの記録動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】(a)は、本発明の第2の実施形態における記録装置の平面図、(b)は、その記録装置の側面図である。
【図13】図12の2つの記録モジュールに備わる記録ヘッドによる記録画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における記録システムの構成図であり、記録モジュールを備えた記録装置と、制御装置としてのホストコンピュータ(ホスト装置)と、を接続した構成となっている。図2(a)および(b)は、記録装置の要部の平面図および側面図である。
【0011】
本例の記録装置10は、2つの記録モジュール1,2と搬送部3とを備えており、それらの記録モジュール1,2は、プリンタケーブル52によってホストコンピュータ51に接続されている。ホストコンピュータ51は、制御コマンドとして、画像データ、および用紙(記録媒体)に関する情報等をプリンタケーブル52を介して記録モジュール1,2に出力する。また、ホストコンピュータ51は、記録モジュール1,2のステータス情報(エラー情報など)を制御コマンドとして受信することにより、記録モジュール1,2のステータスを使用者に通知する。
【0012】
搬送部3は、ローラ7上の搬送路に沿って、矢印Aの搬送方向に記録媒体Pを搬送する。搬送部3は、搬送モータ5によってローラ7を駆動することにより、記録媒体Pを矢印A方向に連続的に搬送する。ローラ7には、その回転を検出するためのエンコーダ(第1発生手段)6が取り付けられており、その検出信号は、後述するようにエンコーダ信号(第1パルス信号)として記録モジュール1,2に入力される。そのエンコーダ信号は、記録媒体の搬送量に応じて出力され、本例の場合、ローラ7の回転量に応じて出力される。搬送部3は、図2(b)のように、ローラ7とガイドローラ4との間に掛け渡された搬送ベルト8を備える構成であってもよい。記録媒体Pには、所定範囲毎にマークMが付けられている。例えば、連続する記録媒体Pに対して、1ページに対応する所定範囲毎に画像を記録する場合には、その所定範囲毎にマークMが付けられている。図2(a)の例においては、連続する記録媒体Pに対して、1ページに対応する所定範囲毎に同一のが画像を繰り返し記録する。また、1ページ単位の記録媒体Pに画像を記録する場合には、その1ページ毎にマークMが付けられている。以下の説明においては、1ページ毎にマークMが付されているとして説明する。搬送部3には、マークMを検出するためのTOFセンサ9が備えられており、そのTOFセンサ9の検出信号は、後述するように、ページ毎の記録開始位置を検出するためTOF信号として記録モジュール1,2に入力される。そのTOF信号は、マークMが付された記録媒体の所定部分が搬送路上の所定位置(TOFセンサの設置位置)を通過したときに出力されることになる。
【0013】
記録モジュール1,2は、搬送部3の上方に配置されており、搬送部3によって矢印Aの搬送方向に搬送される記録媒体Pに対して画像を記録する。本例の場合、記録モジュール1,2は、記録媒体Pの幅方向および搬送方向にずれて配備されており、記録媒体Pに対して、互いに協働して画像を記録する。すなわち、記録モジュール1は、記録媒体Pの搬送方向Aに向かって左側に位置して、記録すべき画像の左側部分を記録し、一方、記録モジュール2は、記録媒体Pの搬送方向Aに向かって右側に位置して、記録すべき画像の右側部分を記録する。ホストコンピュータ51は、記録モジュール1,2の配備位置に応じて記録データを分割してから、それらの分割後の記録データを対応する記録モジュール1,2に送信することができる。
【0014】
記録モジュール1,2のそれぞれには、画像を記録可能なインクジェット方式またはサーマル方式などの記録ヘッドが備えられており、それらの記録ヘッドには、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向に配列された複数の記録素子が備えられている。例えば、インクジェット記録ヘッドの場合は、記録素子を構成するノズルが配列され、サーマル記録ヘッドの場合は記録素子を構成する発熱部が配列される。
【0015】
本例の場合、記録モジュール1には、ブラックインク吐出用の記録ヘッド1K、シアンインク吐出用の記録ヘッド1C、マゼンタインク吐出用の記録ヘッド1M、イエローインク吐出用の記録ヘッド1Yが備えられている。同様に、記録モジュール2には、ブラックインク吐出用の記録ヘッド2K、シアンインク吐出用の記録ヘッド2C、マゼンタインク吐出用の記録ヘッド2M、イエローインク吐出用の記録ヘッド2Yが備えられている。本例において、記録モジュール1,2に備わる記録ヘッドは、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向(本例の場合は、直交する方向)に配列された複数のノズルからインクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドである。このような記録ヘッドは、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いて、ノズル先端の吐出口からインクを吐出することができる。例えば、電気熱変換素子を用いた場合には、それを発熱させてインクを発泡させることにより、その発泡エネルギーを利用してインクを吐出することができる。記録モジュール1,2に備わる記録ヘッドは、このようなインクジェット記録ヘッドのみに特定されず、矢印A方向に搬送される記録媒体Pに対して画像を記録することができるものであればよい。
【0016】
図3は、本実施形態における記録装置10の制御系のブロック構成図である。
【0017】
記録モジュール1(以下、「記録モジュールA」ともいう)と記録モジュール2(以下、「記録モジュールA」ともいう)は同様に構成されているため、以下においては、記録モジュール1の構成を代表して説明する。
【0018】
ホストコンピュータ51から記録モジュール1に送信される記録データやコマンドは、メインコントローラ11Aの制御下において、インターフェースコントローラ12Aを介してメインコントローラ11Aに受信される。メインコントローラ11Aは、記録モジュール1における記録データの受信や記録動作等の全般の制御を掌る演算処理装置である。メインコントローラ11Aは、ホストコンピュータ51からインターフェースコントローラ12Aを介して受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ14Aにビットマップ展開して描画する。イメージメモリ14Aは、画像の展開部として使用される。画像記録前における記録モジュール1の動作処理としては、メインコントローラ11Aによって、入出力ポート16Aとモータ駆動部18Aを介してキャッピングモータ20Aとヘッド昇降モータ19Aを駆動する処理が含まれる。キャッピングモータ20Aは、記録ヘッドのノズルをキャッピング可能なキャップを移動させるためのモータであり、ヘッド昇降モータ19Aは、記録ヘッドを昇降させるためのモータである。これらのモータをメインコントローラ11Aが駆動することにより、記録ヘッドをキャップから離して画像の記録位置に移動させることができる。
【0019】
記録モジュール1のメインコントローラ11Aは、入出力ポート(入力部)17Aを介して、搬送部3のエンコーダ6およびTOFセンサ9から出力されるエンコーダ信号およびTOF信号を入力する。メインコントローラ11Aは、後述するように、エンコーダ6からのエンコーダ信号に基づいて記録媒体の搬送状態を検出し、またTOFセンサ9からのTOF信号に基づいてページ毎の記録開始タイミングを決定する。さらにメインコントローラ11Aは、エンコーダ6からのエンコーダ信号に同期して、イメージメモリ14Aから記録データを順次に読み出す。そのイメージメモリ14Aから読み出された記録データは、メインコントローラ11Aにより、記録ヘッド制御回路22Aを介して、対応する記録ヘッドに転送される。
【0020】
メインコントローラ11Aの動作は、プログラムROM13Aに記憶されたプログラムに基づいて実行される。プログラムROM13Aには、後述する制御に対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとして、ワークRAM15Aが使用される。メインコントローラ11Aは、記録ヘッドのクリーニングや回復動作時に、入出力ポート16Aおよびモータ駆動部18Aを介してポンプモータ21Aを駆動させることにより、記録ヘッド内のインクを加圧したり吸引したりする。
【0021】
またメインコントローラ11Aは、後述するように、エンコーダ6からのエンコーダ信号に基づいて、記録媒体Pの搬送に同期した水平同期信号(Hsync信号)を生成する。Hsync信号は、記録媒体が所定量搬送される毎に出力されるパルス信号(第2パルス信号)であり、メインコントローラ11Aは、その信号を発生する第2発生手段として機能する。このHsync信号とTOF信号とに応じて、メインコントローラ11Aにより記録ヘッド毎の駆動信号の出力タイミングが決定される。その駆動信号と共に、イメージメモリ14Aに格納されている1ラスター分の画像データがメインコントローラ11Aにより記録ヘッド制御回路22Aに送られる。その画像データに基づいて、対応する記録ヘッドが記録媒体Pに向かってインクを吐出することによって画像が記録される。
【0022】
記録モジュール2は、記録モジュール1と同様に構成されているため、記録モジュール1における構成要素11Aから22Aと同様の部分には符号11Bから22Bを付して説明を省略する。
【0023】
搬送部3において、メインコントローラ23はモータ駆動回路24を介して搬送モータ5を駆動し、入出力ポート25は記録モジュール1,2の入出力ポート17A,17Bに接続されている。また搬送部3は、オペレータからの入力を受けるオペレーションパネル26が備えられている。
【0024】
(記録モジュールの基本動作)
図4は、記録モジュールの基本動作を説明するためのタイミングチャートであり、図5は、その基本動作による記録結果の説明図である。ここでは、図5のように1つの記録モジュール1における1つの記録ヘッド1Kを用いる場合を例として、その記録モジュール1の動作について説明する。
【0025】
記録モジュールは、搬送部3から入力するエンコーダ信号により、記録媒体Pの走行状態を検出する。本例の場合、そのエンコーダ信号は、記録媒体Pが矢印A方向に1インチ搬送される毎に4800パルスを出力する信号であり、4800dpiの記録密度に相当する。記録モジュールは、このエンコーダ信号を基に、記録ヘッド1Kの吐出周期を決定する信号として水平同期信号(Hsync信号)を生成する。本例では、4800dpiのエンコーダ信号を分周し、600dpiの記録密度に相当するHsync信号を生成する。エンコーダ信号を逓倍してHsync信号を生成する場合もある。
【0026】
記録モジュールは、マークMの検出信号であるTOF信号を搬送部3から入力した後、記録媒体Pが距離(L1+L2)だけ矢印A方向に搬送された時点にて、Hsync信号に同期して駆動信号を記録ヘッド1Kに出力する。距離L1は、TOFセンサ9と記録ヘッド1Kとの間の距離であり、距離L2は、マークMから1ページ分の画像の記録開始位置までの間(先端余白)の距離である。記録ヘッド1Kは、記録媒体Pが距離(L1+L2)だけ搬送された時点から、つまり、1ページ分の画像の記録開始位置が記録ヘッド1Kの対向位置を通過する時点から、記録データに応じてインクを吐出することにより画像を記録する。TOF信号のエッジの検出、および、その後の記録ヘッド1Kの駆動タイミングまでの記録媒体の搬送距離の計算は、全てHsync信号の周期単位で行われる。記録モジュール1内の記録ヘッド1K,1C,1M,1Yを用いて画像記録する場合には、同一のHsync信号に基づいて、それらの記録ヘッド毎に駆動信号が出力される。
【0027】
本例の場合、記録ヘッドは16のブロックに分けてブロック駆動される。すなわち、記録ヘッドの全ノズルが16ブロックに分けられ、それらのノズルがブロック毎にタイミングをずらして駆動される。そのため、記録ヘッドの駆動信号として、Hsync信号のエッジの検出時点から、16ブロック分の駆動信号A1,A2,A3,・・・A16が出力される。図5の例においては、記録ヘッド1Kに、同図中の左側から右側に向かってノズル番号を1,2,3,・・・64とする64ノズルが形成されており、それらのノズルが16ずつの4組に分けられている。1回目の駆動信号A1により、16n+1番目(nは0を含む正の整数)のノズルがインクを吐出してドットD1を形成する。同様に、2回目、3回目、・・・16回目の駆動信号A2,A3,・・・A16により、16n+2番目、16n+3番目、・・・16n+16番目のノズルがインクを吐出してドットD2,D3,・・・D16を形成する。このように、64ノズルから16ブロックに分けてインクを吐出することにより、図5中のラインA,B,Cのように画像が1ライン分ずつ記録される。
【0028】
図6から図8は、記録モジュール1,2を用いた場合の記録動作を説明するための図であり、記録モジュール1,2(記録モジュールA,B)は、上述したようにエンコーダ信号よりHsync信号を生成する。これらの記録モジュール1,2が生成するHsync信号は、同期しているとは限らない。その理由は、記録モジュール1,2が独自にHsync信号を生成するためであり、それらのHsync信号は、いずれも共通のエンコーダ信号に同期するように生成されるものの、互いに同期をとることなく個別に生成されるからである。つまり、記録モジュール1,2は、それら個々の起動タイミングなどに応じて独自にHsync信号を生成するため、それらのHsync信号にタイミングのずれが生じることがある。
【0029】
このようなHsync信号のずれが発生した場合には、記録モジュール1,2は、共通のエンコーダ信号およびTOF信号を入力したとしても、記録媒体P上に形成するドットの位置(インク滴の着弾位置)にずれが生じる。
【0030】
記録モジュール1は、TOF信号が立ち上った時点t0の後、Hsyncの最初の立ち上がり時点t1から、記録媒体Pが距離(L1A+L2)だけ矢印A方向に搬送された時点にて、Hsync信号に同期して記録ヘッド1K用の駆動信号を出力する。距離L1Aは、TOFセンサ9と記録ヘッド1Kとの間の距離であり、距離L2は、マークMから1ページ分の画像の記録開始位置までの間(先端余白)の距離である。PAは、記録媒体P上の1ページ分の画像の記録領域である。同様に、記録モジュール2は、TOF信号が立ち上った時点t0の後、Hsyncの最初の立ち上がり時点t2から、記録媒体Pが距離(L1B+L2)だけ矢印A方向に搬送された時点にて、Hsync信号に同期して記録ヘッド2K用の駆動信号を出力する。距離L1Bは、TOFセンサ9と記録ヘッド2Kとの間の距離である。同様に、記録モジュール1の記録ヘッド1C,1M,1Y用の駆動信号、および記録モジュール2の記録ヘッド2C,2M,2Y用の駆動信号もHsync信号に基づいて出力される。
【0031】
本例の場合は、図7のように、記録モジュール1,2のHsync信号の立ち上がり時点t1、t2がエンコード信号の3パルス分ずれている。それらのHsync信号は、前述したように、600dpiの記録密度に相当する信号である。
【0032】
このように、記録モジュール1,2のHsync信号がずれた状態において、前述した図5と同様のブロック駆動方式により、記録ヘッド1K,2Kからインクを吐出して画像を記録した場合には、図8のように、記録画像のずれが生じる。すなわち、それらのHsync信号のずれに応じて、記録ヘッド1K,2Kの駆動信号の出力タイミングがずれるため、記録ヘッド1KによるラインA,B,・・・の記録画像と、記録ヘッド2KによるラインA,B,・・・の記録画像と、の間にずれが生じる。
【0033】
(本実施形態の特徴的な構成)
図9(a),(b)は、本実施形態における記録動作を説明するためのタイミングチャート、図10は、その記録動作による記録結果の説明図、図12は、その記録動作を説明するためのフローチャートである。
【0034】
本例においては、前述した図6の場合と同様に、記録モジュール1,2を用いて記録媒体Pに画像を記録し、それらの記録モジュールは、図12のフローチャートにしたがって独立的に記録動作を実行する。
【0035】
まず、それぞれの記録モジュールは、ホストコンピュータ51から記録データを受信(ステップS1)して、それをイメージメモリ14A,14Bに展開すると共に、その記録モジュールに備わる記録ヘッドを所定の記録位置に移動させる(ステップS2)。その後、搬送部3から入力するエンコーダ信号により、記録媒体Pの搬送状態を検出し(ステップS3)、そのエンコーダ信号を基にHsync信号を生成する(ステップS4)。本例では、図9(a)のように4800dpiの記録密度に相当するエンコーダ信号を分周して、600dpiの記録密度に相当するHsync信号を生成する。このように記録モジュール毎に生成されるHsync信号は、それらの記録モジュール毎における記録ヘッドの駆動信号の基準となる。また、記録モジュール毎に独立して生成されるHsync信号は、前述したように同期せずにずれることがある。本例の場合、記録モジュール1,2のHsync信号は、図9(a)のようにエンコーダ信号の3パルス分ずれている。
【0036】
次に、それぞれの記録モジュールは、搬送部3から入力されるTOF信号によりマークMを検出し(ステップS5)、それぞれの記録モジュールにおける記録ヘッド毎の距離(L1+L2)をHsync信号のパルス単位で算出する(ステップS6)。前述したように、距離L1は、TOFセンサ9と記録ヘッドとの間の距離であり、距離L2は、マークMから1ページ分の画像の記録開始位置までの間(先端余白)の距離である。具体的に、記録モジュール1(A)は、記録ヘッド1K用の距離(L1+L2)として図6のような距離(L1A+L2)を算出し、また記録モジュール2(B)は、記録ヘッド2K用の距離(L1+L2)として図6のような距離(L1B+L2)を算出する。さらに、それぞれの記録モジュールは、TOF信号の出力タイミングと、Hsync信号の発生タイミングと、の間の遅延時間Tを駆動信号のパルス単位で計測する(ステップS7)。具体的に、記録モジュール1(A)は、遅延時間Tとして図9(a)のような時点tAから時点t0までの時間T1を計測し、また記録モジュール2(B)は、遅延時間Tとして図9(a)のような時点tBから時点t0までの時間T2を計測する。
【0037】
次に、それぞれの記録モジュールは、それらの記録モジュールにおける記録ヘッド毎の駆動信号の出力タイミングを設定する(ステップS8)。具体的に、記録モジュール1(A)は、記録ヘッド1K用の駆動信号の出力タイミングとして図9(a)中の時点taを設定する。その時点taは、距離(L1A+L2)に相当するパルス数と、遅延時間T1に相当するパルス数と、を加えたパルス分だけ、Hsync信号の立ち上がり時点t1から経過した時点である。また、記録モジュール2(B)は、記録ヘッド2K用の駆動信号の出力タイミングとして図9(a)中の時点tbを設定する。その時点tbは、距離(L1B+L2)に相当するパルス数と、遅延時間T2に相当するパルス数と、を加えたパルス分だけ、Hsync信号の立ち上がり時点t2から経過した時点である。
【0038】
本例の場合は、前述したように、記録ヘッドを16のブロックに分けてブロック駆動する。そのため、記録ヘッド1K用の16ブロック分の駆動信号A1,A2,・・・A16は時点taから出力され、記録ヘッド2K用の16ブロック分の駆動信号B1,AB,・・・B16は時点tbから出力されることになる。より具体的には、記録ヘッド1Kに関しては、時点t0から距離(L1B+L2)に相当する数のHsync信号のパルスをカウントし、その後、さらに遅延時間T1に相当する数の駆動信号のパルスをカウントした時点taから、駆動信号を出力する。同様に、記録ヘッド2Kに関しては、時点t0から距離(L1A+L2)に相当する数のHsync信号のパルスをカウントし、その後、さらに遅延時間T2に相当する数の駆動信号のパルスをカウントした時点tbから、駆動信号を出力する。
【0039】
それぞれの記録モジュールは、それらの記録モジュールにおける記録ヘッド毎の記録データおよび駆動信号に基づいて、それらの記録ヘッドがインクを吐出することにより、記録媒体Pに画像を記録する(ステップS9)。記録データは、記録ヘッドのノズルからのインクの吐出、不吐出に対応し、駆動信号は、インクの吐出タイミングに対応する。このような記録ヘッド毎の駆動信号に基づいて、記録モジュール1,2の記録ヘッド1K,1C,1M,1Yおよび2K,2C,2M,2Yから、インクを吐出することにより、記録媒体P上にカラー画像を記録することができる。このような記録動作は、記録媒体Pに対する記録量が指定量(例えば、所定枚数など)に達するまで繰り返される(ステップS10)。
【0040】
このように本実施形態においては、記録モジュール1,2毎に個別に設定されるHsync信号と、それらの記録モジュール1,2に共通するTOF信号と、の間の遅延時間Tを考慮して記録ヘッドの駆動信号を生成する。そのため、記録モジュール1,2毎のHsync信号がずれた場合に、そのずれをTOF信号を基準として補正することができる。この結果、記録モジュール1,2による画像の記録位置を高精度に合わせることができる。例えば、図10のように、記録モジュール1,2の記録ヘッド1K,2Kによる記録ラインA,B,C・・・を高精度に合わせて、高品位の画像を記録することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、4色のインクを用いてカラー画像を記録可能な記録モジュールを複数用いた。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、1つの記録モジュールに、同一色の画像を記録するための記録ヘッドを複数搭載し、このような記録モジュールを複数用いて、複数の記録ヘッドが協働して画像を記録するように構成することができる。
【0042】
図12(a),(b)は、前述した実施形態と同様に配置された記録モジュール1および2に、ブラックインク吐出用の記録ヘッド1K−1から1K−4および2K−1から2K−4が搭載されている。記録モジュール1,2のそれぞれは、イメージメモリ上の同一の記録データを4つに分割し、それらを4つの記録ヘッドによって記録する。
【0043】
前述した実施形態と同様に、記録モジュール1,2毎のHsync信号がずれをTOF信号を基準として補正することにより、図13のように、記録モジュール1および2のおける4つずつの記録ヘッドによって、高品位の画像を高速に記録することができる。すなわち、ラインAを記録ヘッド1K−1,2K−1によって記録し、ラインBを記録ヘッド1K−2,2K−2によって記録し、ラインCを記録ヘッド1K−3,2K−3によって記録し、ラインDを記録ヘッド1K−4,2K−4によって記録する。この結果、前述した第1の実施形態の場合に比して、記録媒体Pの搬送速度を4倍にして、4倍の速度で画像を記録することができる。
【0044】
このように本実施形態においては、複数の記録媒体のそれぞれに、同一色の画像を記録するための記録ヘッドを複数搭載することにより、それら複数の記録ヘッドの協働により画像を高速に記録することができる。
【0045】
(他の実施形態)
前述した第1および第2の実施形態においては、2つの記録モジュールを備えた記録装置について説明した。しかし、3つ以上の記録モジュールを備えてもよい。また、記録モジュールに搭載される記録ヘッドは1つ以上であればよい。また、搬送部3は、エンコーダ6を用いてエンコーダ信号を出力する構成のみに限定されず、記録媒体の搬送速度に応じたパルス信号を生成する構成であればよい。
【0046】
また本発明は、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェイス機器、プリンタなど)から構成されるシステム、および、1つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に対しても適用することができる。また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体をシステムあるいは装置に供給することによっても達成できる。すなわち、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(または、CPUやMPU)が記憶媒体からプログラムコードを読出して実行することによっても、本発明の目的は達成できる。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0047】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでない。例えば、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能を実現することができる。また、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、前述した実施形態の機能を実現することもできる。すなわち、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 記録モジュール
1K,1C,1M,1Y 記録ヘッド
2 記録モジュール
2K,2C,2M,2Y 記録ヘッド
3 搬送部
6 エンコーダ
9 TOFセンサ
51 ホストコンピュータ
11A,11B メインコントローラ
P 記録媒体
M マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が所定の方向に搬送される搬送路と対向する位置に配備された複数の記録ヘッドを用いて、前記搬送路上の記録媒体に、記録データに基づいて画像を記録する記録装置であって、
前記記録媒体の搬送量に応じた第1パルス信号を発生する第1発生手段と、
前記記録媒体の所定部分が前記搬送路上の所定位置を通過したときに検出信号を出力する検出手段と、
前記記録媒体が所定量搬送される毎に、前記記録ヘッド毎に対応する第2パルス信号を前記第1パルス信号に基づいて発生する第2発生手段と、
前記検出信号の出力タイミングと、前記記録ヘッド毎に対応する前記第2パルス信号の発生タイミングと、の間のずれに応じて、前記記録ヘッド毎に、当該記録ヘッドを駆動するための駆動信号の出力タイミングを設定する設定手段と、
を備える
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第2発生手段は、前記第2パルス信号を2つ以上の前記記録ヘッドに対して共通に発生し、
前記設定手段は、同じ前記ずれに応じて、前記2つ以上の記録ヘッドの駆動信号の出力タイミングを設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1発生手段は、前記搬送路上のローラの回転量を検出するエンコーダを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドは、前記記録媒体の搬送方向と交差する方向に配列された複数の記録素子を備え、
前記複数の記録素子は、前記駆動信号に基づいて駆動される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記複数の記録素子は、複数のブロックに分割され、
前記駆動信号は、前記複数のブロック毎に出力される
ことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記複数の記録ヘッドは、異なる色の画像を記録可能な複数の記録ヘッドを含み、少なくとも前記記録媒体の搬送方向に沿う方向または交差する方向にずれて配備されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記複数の記録ヘッドは、同じ色の画像を記録可能な複数の記録ヘッドを含み、少なくとも前記記録媒体の搬送方向に沿う方向または交差する方向にずれて配備されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
前記複数の記録ヘッドは、複数の記録モジュールに分けて搭載され、
前記第1パルス信号と前記検出信号は、前記複数の記録モジュールのそれぞれに入力され、
前記第2発生手段と前記設定手段は、前記複数の記録モジュールのそれぞれに備わる
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の記録装置と、
前記複数の記録ヘッドに対して、当該記録ヘッドの配備位置に応じた前記記録データを生成して出力するホスト装置と、
を備えることを特徴とする記録システム。
【請求項10】
請求項8の記録装置に備わる記録モジュールであって、
少なくとも1つの前記記録ヘッドと、前記第1パルス信号および前記検出信号を入力する入力部と、前記第2発生手段と、前記設定手段と、を含むことを特徴とする記録モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−35602(P2012−35602A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180233(P2010−180233)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】