説明

記録装置、記録装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】インクジェットヘッドの使用後、できるだけ早くインクの増粘の抑制に係る処理を実行することにより、効果的に増粘を抑制する。
【解決手段】プリンター12の記録制御部40は、ホストコンピューター10から受信した制御コマンドの実行に際し、記録に係る特定の制御コマンドの実行と対応させて、キャッピングを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に接続可能な記録装置、当該記録装置の制御方法、及び、当該記録装置を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドからインクを吐出して記録媒体に記録するインクジェット式の記録装置において、インクジェットヘッドに形成されたノズルにおけるインクの乾燥、及び、インクの乾燥に伴うインクの増粘を抑制することを目的としてキャッピングを行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−314605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、キャッピング等のノズルの増粘を抑制するための処理は、インクジェットヘッドの使用が終了した後、できるだけ早く実行することにより、より効果的にインクの増粘を抑制可能である。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、インクジェットヘッドの使用後、できるだけ早くインクの増粘の抑制に係る処理を実行することにより、効果的に増粘を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、制御装置に接続可能な記録装置であって、インクを吐出するノズルが形成されたインクジェットヘッドと、記録媒体を搬送する搬送部と、前記制御装置から制御コマンドを受信する受信部と、前記受信部で受信した前記制御コマンドに基づいて、前記インクジェットヘッド、及び、前記搬送部を制御して、前記記録媒体に記録する記録制御部と、を備え、前記記録制御部は、記録に係る特定の前記制御コマンドの実行と対応させて、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行することを特徴とする。
この構成によれば、記録に係る特定の制御コマンドの実行に対応させて、ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を行うため、例えば、ある一連のジョブの最後に記録すべき画像の記録に係る制御コマンドを実行したことをトリガーとして、当該増粘の抑制に係る処理を実行することが可能となり、これにより、インクジェットヘッドを利用した記録が終了した後、迅速に、当該増粘の抑制に係る処理を実行して、効果的にインクの増粘を抑制することが可能となる。
【0006】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、記録に係る特定の前記制御コマンドには、特定の文字列の記録を指示するコマンド、及び、特定のグラフィック画像の記録を指示するコマンドが含まれ、前記記録制御部は、前記特定の文字列の記録を指示するコマンド、又は、前記特定のグラフィック画像の記録を指示するコマンドの実行と対応させて、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行することを特徴とする。
この構成によれば、例えば、ある一連のジョブの最後に記録すべき特定の文字列や特定のグラフィック画像を記録した後、すなわち、当該ジョブではインクジェットヘッドを利用する必要がなくなった後、すぐに、ノズルにおけるインクの増粘を抑制する処理を実行することが可能となり、より効果的にインクの増粘を抑制可能である。
【0007】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記記録媒体は、末端画像が末端部に記録されたレシートとなるものであり、前記記録制御部は、前記末端画像の記録に係るコマンドの実行後、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行することを特徴とする。
ここで、レシートでは、感謝を示す文言や、ボトムロゴ等、その末端部に末端画像を定型的に記録する場合が多い。
そして、上記構成によれば、末端画像を記録した後、すなわち、レシートに記録すべき画像を全て記録した後、すぐに、インクの増粘の抑制に係る処理を実行するため、上記レシートの特徴を利用して、より効果的にインクの増粘の抑制を図ることが可能である。
【0008】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理には、前記インクジェットヘッドのキャッピングが含まれることを特徴とする。
この構成によれば、インクジェットヘッドの利用が終了した後、迅速に、キャッピングを行うことができ、キャッピングによるインクの乾燥の抑制、及び、乾燥の抑制に伴う増粘の抑制をより効果的に達成可能である。
【0009】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記キャッピングの処理には、前記インクジェットヘッドをホームポジションに位置させることが含まれることを特徴とする。
この構成によれば、この構成によれば、インクジェットヘッドの利用が終了した後、迅速に、インクジェットヘッドをホームポジションに位置させてキャッピングを行うことができ、キャッピングによるインクの乾燥の抑制、及び、乾燥の抑制に伴う増粘の抑制をより効果的に達成可能である。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、制御装置に接続可能であり、インクを吐出するノズルが形成されたインクジェットヘッドと、前記制御装置から制御コマンドを受信する受信部と、を備える記録装置の制御方法であって、前記受信部で前記制御コマンドを受信し、受信した前記制御コマンドに、記録に係る特定の前記制御コマンドが含まれている場合は、当該制御コマンドの実行と対応させて、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行することを特徴とする。
この制御方法によれば、記録に係る特定の制御コマンドの実行に対応させて、ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を行うため、例えば、ある一連のジョブの最後に記録すべき画像の記録に係る制御コマンドを実行したことをトリガーとして、当該増粘の抑制に係る処理を実行することが可能となり、これにより、インクジェットヘッドを利用した記録が終了した後、迅速に、当該増粘の抑制に係る処理を実行して、効果的にインクの増粘を抑制することが可能となる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、制御装置に接続可能であり、インクを吐出するノズルが形成されたインクジェットヘッドと、記録媒体を搬送する搬送部と、前記制御装置から制御コマンドを受信する受信部と、を備える記録装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記受信部で受信した制御コマンドに基づいて、前記インクジェットヘッド、及び、前記搬送部を制御して、前記記録媒体に記録する一方、前記受信部で受信した前記制御コマンドの実行に際し、記録に係る特定の前記制御コマンドの実行と対応させて、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行する記録制御部として機能させることを特徴とする。
このプログラムを実行すれば、記録に係る特定の制御コマンドの実行に対応させて、ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を行うため、例えば、ある一連のジョブの最後に記録すべき画像の記録に係る制御コマンドを実行したことをトリガーとして、当該増粘の抑制に係る処理を実行することが可能となり、これにより、インクジェットヘッドを利用した記録が終了した後、迅速に、当該増粘の抑制に係る処理を実行して、効果的にインクの増粘を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクジェットヘッドの使用後、できるだけ早くインクの増粘の抑制に係る処理を実行することにより、効果的に増粘を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】記録システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】記録データ、及び、レシートを示す図である。
【図3】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る記録システム1の機能的構成を示すブロック図である。
記録システム1は、ホストコンピューター10(制御装置)と、プリンター12(記録装置)とを備え、ホストコンピューター10の制御の下、プリンター12により記録媒体に記録するシステムである。
特に、本実施形態に係る記録システム1では、ホストコンピューター10と、プリンター12とが協働して、レシート13(図2(B))を発行可能である。レシート13を発行する際のホストコンピューター10、及び、プリンター12の動作については、後述する。
【0015】
ホストコンピューター10は、ホスト側制御部15と、ホスト側表示部16と、ホスト側入力部17と、ホスト側インターフェイス部18(I/F)と、ホスト側記憶部19と、を備えている。
ホスト側制御部15は、ホストコンピューター10の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行部としてのCPUや、このCPUに実行される基本制御プログラムや、この基本制御プログラムに係るデータ等を不揮発的に記憶するROM、CPUに実行されるプログラムやこのプログラムに係るデータ等を一時的に記憶するRAM、その他の周辺回路等を備えている。
図1に示すように、ホスト側制御部15は、アプリケーション実行部20と、プリンタードライバー実行部21と、を備えているが、これらについては後述する。
【0016】
ホスト側表示部16は、液晶ディスプレーパネルや、有機ELパネル等の表示パネルを備え、ホスト側制御部15の制御の下、表示パネルに各種情報を表示する。
ホスト側入力部17は、各種入力デバイスに接続され、これら入力デバイスに対する操作を検出し、ホスト側制御部15に出力する。
ホスト側インターフェイス部18(I/F)は、ホスト側制御部15の制御の下、プリンター12との間で通信規格に準拠した通信を行う。
ホスト側記憶部19は、各種データを書き換え可能に記憶する部位であり、ハードディスクや、EEPROM等の記憶装置を備えている。ホスト側記憶部19には、少なくとも、プリンター12制御用のプリンタードライバーが記憶されている。
【0017】
一方、プリンター12は、インクジェットヘッド25を備え、ホストコンピューター10の制御の下、このインクジェットヘッド25に形成されたノズルからインクを吐出して、記録媒体にドットを形成することにより、記録媒体に画像を記録するインクジェット式プリンターである。特に、プリンター12は、ロール紙を収納可能に構成され、ロール紙に所定の画像を記録した後、所定の位置で切断することにより、レシート13を発行可能である。
図1に示すように、プリンター12は、制御部30と、表示部31と、入力部32と、プリントエンジン33と、記憶部35と、インターフェイス部36(I/F)と、を備えている。
制御部30は、上述したホスト側制御部15と同様、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路を備え、プリンター12の各部を中枢的に制御する。制御部30は、記録制御部40を備えているが、これについては後述する。
表示部31は、プリンター12の動作状態等の各種情報を表示する液晶パネルや有機ELパネル等の表示パネルや、LED等を備え、制御部30の制御の下、当該表示パネルに各種情報を表示し、又は、LEDを所定の態様で点灯/消灯する。
入力部32は、プリンター12に設けられた各種操作スイッチに接続され、操作スイッチに対する操作を検出し操作信号として制御部30に出力する。
【0018】
プリントエンジン33は、上述したインクジェットヘッド25のほか、インクジェットヘッド25を走査方向に走査するためのキャリッジを駆動するためのキャリッジ駆動モーター37や、ロール紙を搬送する搬送ローラーを駆動するための搬送モーター38、ロール紙を切断するカッターを駆動するためのカッター駆動モーター39等を備えている。
制御部30の記録制御部40は、各種センサーの検出値を監視しながら、インクジェットヘッド25や、キャリッジ駆動モーター37、搬送モーター38、カッター駆動モーター39を制御して、ロール紙に所定の画像を記録し、所定の位置でロール紙を切断することにより、所定の画像が記録された紙片であるレシート13を発行する。制御部30、及び、搬送モーター38や、搬送ローラー等が協働して、記録媒体を搬送する搬送部として機能する。
また、プリントエンジン33は、キャップ(不図示)を駆動するためのキャップ駆動モーター41を備えており、記録制御部40は、キャップ駆動モーター41を駆動してキャッピングを実行する。キャッピングとは、インクジェットヘッド25を、キャップ(不図示)に収納し、これによりノズルが露出していない状態とし、ノズルに留まっているインクの乾燥、及び、乾燥に伴う増粘を抑制する処理である。キャップはインクジェットヘッド25のホームポジションの直下に設けられており、記録制御部40は、インクジェットヘッド25がホームポジションに位置している状態で、キャップ駆動モーター41を駆動して、インクジェットヘッド25のノズル面を覆った状態となるようにキャップを移動させることにより、キャッピングを実行する。
記録制御部40の機能は、CPUがファームウェアを読み出して実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
【0019】
インターフェイス部36(I/F)は、制御部30の制御の下、ホストコンピューター10との間で通信規格に準拠した通信を行う。インターフェイス部36と、制御部30とが協働して、受信部として機能する。
記憶部35は、EEPROMや、ハードディスク等の不揮発性メモリーを備え、各種データを書き換え可能に不揮発的に記憶する。記憶部35には、プリンター12の動作を制御するためのファームウェアが記憶されている。
【0020】
次いで、アプリケーション実行部20及びプリンタードライバー実行部21の説明を通して、記録システム1がレシート13を発行する際の基本的な動作について説明する。
アプリケーション実行部20は、ホストコンピューター10に予めインストールされたアプリケーションを実行することにより、レシート13に記録すべき画像の情報を含む印刷データを生成し、プリンタードライバー実行部21に出力する。
プリンタードライバー実行部21は、ホストコンピューター10に予めインストールされたプリンタードライバーを実行することにより、アプリケーション実行部20から入力された印刷データに基づいて、プリンター12のコマンド仕様に対応した制御コマンドを生成し、プリンター12に出力する。
制御コマンドとは、プリンター12にレシート13の発行に係る各種動作を行わせるためのコマンド群のことであり、所定の搬送量だけロール紙の搬送を指示する搬送指示コマンドや、ロール紙の切断を指示する切断指示コマンドのほか、記録データ50が含まれている。
記録データ50(図2(A))とは、ロール紙に記録すべき画像の情報、具体的には、記録すべき画像の内容(文字列や、所定のグラフィック、バーコード等)や、その順序を具体的に指定し、記録させる情報のことである。この記録データ50の具体的な態様については、後に詳述する。
ホストコンピューター10からプリンター12に出力された制御コマンドは、順次、受信バッファー(不図示)に格納される。プリンター12の制御部30の記録制御部40は、受信バッファーに格納された制御コマンドを、順次、読み出して実行することにより、プリントエンジン33を制御して、レシート13の発行に係る各種動作を実行する。特に、記録制御部40は、記録データ50に基づいてプリントエンジン33を制御することにより、ロール紙への所定の画像の記録、及び、画像の記録に伴う必要な搬送を行う。
【0021】
次いで、記録データ50、及び、記録データ50に基づいて画像が記録されたレシート13の具体例について、説明する。
【0022】
図2(A)は、記録データ50の内容の一例を示す図であり、図2(B)は、図2(A)の記録データ50に基づいて画像が記録されたレシート13の一例を示す図である。
図2(B)のレシート13では、図中上に向かう方向が、搬送方向に対応する方向である。従って、レシート13の発行の際には、ロール紙が切断されて先端13aが形成された後、インクジェットヘッド25によってレシート13の先端13a側から後端13b側へ向かって、順次、ドットが形成されて画像が記録され、その後、ロール紙が切断されて後端13bが形成される。
【0023】
本実施形態では、プリンター12が発行するレシート13のレイアウトは、所定の例外を除き、いずれのレシート13についても基本的に同一である。
すなわち、図2(B)に示すように、レシート13では、先端13aから後端13bへ向かって順番に、換言すれば、インクジェットヘッド25による記録が行われる順番に、先頭画像エリアA1、レシート情報エリアA2、グラフィックエリアA3、バーコードエリアA4、及び、末端画像エリアA5が形成される。
先頭画像エリアA1には、所定の文字列が所定の態様で定型的に記録されるエリアである。図2(B)の例では、「AAA△Store」(△はスペース。以下同じ。)という文字列が、基準の大きさの2倍の大きさで、中央寄せ(レシート13の幅方向の中央部に文字列が記録されるようにすること。)で記録され、次の行に「at△BBB△Area」という文字列が、基準の大きさで、中央寄せで記憶される。
レシート情報エリアA2は、レシート13を発行した日時や、購入した商品の名称、商品の単価、合計購入金額、その他の付加的な情報が文字列として記録されるエリアである。
グラフィックエリアA3は、所定のグラフィック画像が記録されるエリアである。グラフィック画像については、後述する。
バーコードエリアA4は、バーコードが記録されるエリアである。
末端画像エリアA5は、所定の文字列が所定の態様で定型的に記録されるエリアである。図2(B)の例では、「Thank△you」という文字列が、基準の大きさで、中央寄せで記録される。
本実施形態では、所定の例外を除き、プリンター12が発行する全てのレシート13について、末端画像エリアA5には、同一の文字列が同一の態様で記録される。以下、末端画像エリアA5に定型的に記録される文字列のことを「末端画像」と表現するものとする。すなわち、末端画像とは、レシート13の末端部に定型的に記録される文字列に係る画像のことである。
【0024】
記録データ50は、上述したように、ロール紙に記録すべき画像の情報を含むデータであるが、具体的には、ロール紙に所定の画像を所定の態様で記録させることを指示するコマンドが、記録させる順番に並んで構成されたデータである。プリンター12の制御部30の記録制御部40は、記録データ50を構成する各コマンドを、順次、読み出して実行することにより、ロール紙への画像の記録、及び、画像の記録に伴う必要な搬送を行う。
図2(A)において、コマンド群H1は、レシート13の先頭画像を構成する2行の文字列のうち、「AAA△Store」の文字列を所定の態様で記録させるコマンド群であり、文字列装飾コマンドMS1、及び、文字列記録指示コマンドMK1の2つのコマンドが含まれている。
文字列装飾コマンドMS1は、「AAA△Store」の文字列に施す装飾を指定するコマンドであり、具体的には、当該文字列の大きさを基準の2倍の大きさとすること、及び、当該文字列を中央寄せすることを指定するコマンドである。なお、装飾とは、記録する文字列に対して描画に関する何らかの処理を行うことを意味し、例えば、上述した文字列の拡大や、文字列の位置の移動のほか、例えば、縮小、回転、強調、太字化、装飾文字又は装飾記号の付加等が装飾に該当する。
文字列記録指示コマンドMK1は、「AAA△Store」の文字列を記録することを指示するコマンドである。本実施形態では、基本的に、文字列記録指示コマンドは、命令コードと、所定の文字コード(例えば、アスキーコード。)で表現された文字の組み合わせからなる文字列と、が組み合わされて構成されている。例えば、文字列記録指示コマンドMK1は、「XXX△“AAA△Store”」(ただし、XXXは、文字列を記録することを指示する命令コード。また、ダブルクォーテーション内の文字列は、アスキーコードで表現された文字の組み合わせによって構成された文字列。)という構成となっている。
【0025】
記録制御部40は、プリントエンジン33を制御して、文字列装飾コマンドMS1により指定された装飾を施した上で、文字列記録指示コマンドMK1に記述された文字列を記録媒体に記録する。これにより、図2(B)に示すように、基準の2倍の大きさで、中央寄せされた「AAA△Store」の文字列が記録される。
詳述すると、プリンター12の記憶部35には、フォントテーブル70が記憶されている。フォントテーブル70とは、フォントデータを集合して記憶するテーブルであり、また、フォントデータとは、文字をロール紙に記録可能な態様で表現する実データのことである。本実施形態では、フォントデータの態様は、ビットマップフォントデータである。フォントデータの態様としては、ビットマップデータのほか、スケイラブルフォントデータや、ベクトルフォントデータ、アウトラインフォントデータ等がある。
なお、本実施形態では、ロール紙に記録する「文字」は、言語で使用される意味を持った文字のみならず、記憶部35に記憶されたフォントデータに基づいてロール紙に記録可能な「図形」の全てを指す概念である。
アスキーコードで表現された文字のそれぞれは、フォントテーブル70に記憶されたいずれかのフォントデータと対応関係にあり、この対応関係を示す情報が記憶部35に予め記憶されている。例えば、各アスキーコードと、各アスキーコードに対応するフォントデータの位置(フォントテーブル70における記憶領域のアドレス)とが対応づけて記憶されたテーブルが記憶部35に予め記憶されている。
そして、文字列装飾コマンドMS1、及び、文字列記録指示コマンドMK1に基づいて、「AAA△Store」の文字列を記録する際、記録制御部40は、フォントテーブル70、及び、アスキーコードとフォントデータとの対応関係を示す情報を参照して、当該文字列を構成する各文字のフォントデータを取得し、文字列装飾コマンドMS1が指定する装飾を反映した上で、取得したフォントデータに基づいて、プリントバッファー(不図示)に文字列に係る画像データ(ビットマップデータ)を展開する。次いで、記録制御部40は、プリントバッファーに展開した当該文字列に係る画像データに基づいて、インクジェットヘッド25や、搬送モーター38等を駆動して、ロール紙に文字列に係る画像を構成するドットを形成することにより、「AAA△Store」の文字列を記録する。
【0026】
コマンド群H1に続く、コマンド群H2は、「at△BBB△Area」の文字列を所定の態様で記録させるコマンド群であり、当該文字列の大きさを基準の大きさとすること、及び、当該文字列を中央寄せすることを指定する文字列装飾コマンドMS2、及び、「at△BBB△Area」の文字列を記録することを指示する文字列記録指示コマンドMK2を含んで構成されている。
記録制御部40は、コマンド群H2に含まれる各コマンドに基づいて、プリントエンジン33を制御して、図2(B)に示すように、基準の大きさで、中央寄せされた「at△BBB△Area」の文字列を記録する。
コマンド群H2の後には、2つの改行コマンドLFが続いている。これにより、図2(B)に示すように、「at△BBB△Area」の文字列の後には、改行が2つ挿入される。
【0027】
2つの改行コマンドLFの後には、コマンド群H3が続いている。このコマンド群H3は、レシート13のレシート情報エリアA2に画像を記録させるコマンド群であり、上述した文字列装飾コマンド、文字列記録指示コマンド、及び、改行コマンドが組み合わされて構成されている。このコマンド群H3の詳細については省略する。
【0028】
コマンド群H3の後には、グラフィック記録指示コマンドGSが続いている。
記録制御部40は、このグラフィック記録指示コマンドGSに基づいてロール紙にグラフィック画像を記録する。
詳述すると、プリンター12の記憶部35には、登録グラフィックテーブル71が記憶されている。この登録グラフィックテーブル71では、複数のグラフィック画像データと、各グラフィック画像に一意に付与された識別コードとが対応づけて記憶されている。グラフィック画像データとは、フォントデータに基づいて記録される画像ではない、所定の画像(グラフィック画像)を表現するビットマップデータのことであり、例えば、図2(B)のレシート13のグラフィックエリアA3のグラフィック画像(強調用の飾り枠の中に「10%Off」という文字列が描画された画像)を表現するビットマップデータである。
そして、グラフィック記録指示コマンドGSには、記録すべきグラフィック画像の識別コードを特定する情報が含まれており、グラフィック記録指示コマンドGSに基づいてグラフィック画像を記録する際、記録制御部40は、登録グラフィックテーブル71を参照して、当該識別コードに対応するグラフィック画像データを取得し、取得したグラフィック画像データをプリントバッファーに展開し、展開したグラフィック画像データに基づいてプリントエンジン33を制御して、グラフィック画像の記録を行う。
なお、グラフィック記録指示コマンドGSを、グラフィックエリアA3に記録すべき画像のビットマップデータを含んだ構成とし、当該ビットマップデータに係る画像を記録させるコマンドとすること可能である。この場合、記録制御部40は、グラフィック記録指示コマンドGSに含まれるビットマップデータをプリントバッファーに展開して画像を記録する。
【0029】
グラフィック記録指示コマンドGSの後には、バーコード記録指示コマンドBSが続いている。
バーコード記録指示コマンドBSは、HRI文字に関する各種設定(HRI文字を記録するか否か、HRI文字をバーコードとの関係でどこに記録するか等)を指定するコマンドや、バーコードを記録する際のサイズを指定するコマンド、バーコードに変換しようとしている文字列(以下、「変換前文字列」という。)を指定すると共に当該変換前文字列に基づくバーコードの画像を記録することを指示するコマンド等が含まれて構成されている。
バーコード記録指示コマンドBSに基づいてバーコードを記録する際、記録制御部40は、バーコード記録指示コマンドBSに含まれる変換前文字列を取得し、取得した変換前文字列を、ファームウェアに実装された所定の機能により、画像としてのバーコードを表現するビットマップデータに変換し、HRI文字に関する各種設定や、バーコードのサイズに関する各種設定を反映した上で、画像としてのバーコードを表現するビットマップデータをプリントバッファーに展開し、展開したビットマップデータに基づいて、プリントエンジン33を制御して、バーコード、及び、HRI文字に係る画像をロール紙に記録する。
【0030】
バーコード記録指示コマンドBSの後には、コマンド群H4が続いている。
コマンド群H4は、末端画像たる「Thank△you」の文字列を所定の態様で記録させるコマンド群であり、当該文字列の大きさを基準の大きさとすること、及び、当該文字列を中央寄せすることを指定する文字列装飾コマンドMS4、及び、「Thank△you」の文字列を記録することを指示する文字列記録指示コマンドMK4を含んで構成されている。
記録制御部40は、コマンド群H4に含まれる各コマンドに基づいて、プリントエンジン33を制御して、図2(B)に示すように、基準の大きさで、中央寄せされた「Thank△you」の文字列を記録する。
【0031】
ところで、上述したように、本実施形態に係るプリンター12は、キャッピングを実行可能である。キャッピングは、キャップにインクジェットヘッド25を収納することにより、ノズルに留まっているインクの乾燥、及び、乾燥に伴う増粘を抑制する処理であるため、記録媒体への画像の記録が終了し、インクジェットヘッド25を使用しなくなった場合は、できるだけ早くキャッピングを行うことにより、増粘の抑制という効果をより効果的に達成できる。
以上を踏まえ、プリンター12は、以下の動作を実行する。
【0032】
図3は、記録データ50に基づいてロール紙に画像を記録する際の記録制御部40の動作を示すフローチャートである。
以下の動作の前提として、ホストコンピューター10からプリンター12に、図2(A)の記録データ50を含む制御コマンドが送信されており、プリンター12の受信バッファーに記録データ50が既に格納されているものとする。
まず、記録制御部40は、記録データ50に含まれる画像記録指示コマンドを読み出し(ステップSA1)、読み出した画像記録指示コマンドを実行し、画像を記録する(ステップSA2)。
画像記録指示コマンドとは、何らかの画像の記録を指示するコマンド(コマンド群であってもよい)の便宜的な総称であり、具体的には、コマンド群H1〜H3、グラフィック記録指示コマンドGS、又は、バーコード記録指示コマンドBSのいずれかのコマンド群、又は、コマンドことである。上述したように、記録データ50は、画像を記録する順番に、画像記録指示コマンドが並んで構成されたデータであり、記録制御部40は、記録データ50における順番通り、順次、画像記録指示コマンドを読み出して、実行する。
【0033】
次いで、記録制御部40は、直近で実行した画像記録指示コマンドが、末端画像の記録に係るコマンド群H4であったか否かを判別する(ステップSA3)。
具体的には、記録制御部40は、画像記録指示コマンドに、文字列記録指示コマンドが含まれているか否かを判別すると共に、文字列記録指示コマンドが含まれている場合には、当該文字列記録指示コマンドが指定する文字列が「Thank△you」の文字列であるか否かを、既存の文字列検索を利用して判別する。文字列記録指示コマンドが指定する文字列が「Thank△you」の文字列である場合は、直近で実行した画像記録指示コマンドは、末端画像の記録に係るコマンド群H4である。なお、上述したように、文字列記録指示コマンドにおいて、文字列は、所定の文字コードからなる文字の組み合わせによって表現されているため、既存の文字列検索用のアルゴリズムを用いて、記録データ50から、キーワード文字列の検索が可能である。
ステップSA3において、直近で実行した画像記録指示コマンドが、末端画像の記録に係るコマンド群H4でない場合(ステップSA3:NO)、記録制御部40は、処理手順をステップSA1へ移行して、記録データ50に含まれる残りの画像記録指示コマンドを実行する。
【0034】
一方、直近で実行した画像記録指示コマンドが、末端画像の記録に係るコマンド群H4である場合(ステップSA3:YES)、記録制御部40は、プリントエンジン33を制御して、キャッピングを開始する(ステップSA4)。
次いで、記録制御部40は、制御コマンドに基づいて、レシート13の発行に係る残りの処理を行う(ステップSA5)。具体的には、記録制御部40は、制御コマンドに基づいて、プリントエンジン33を制御して、ロール紙を所定量だけ搬送すると共に、所定の位置でロール紙を切断し、レシート13を発行する。ロール紙の搬送、及び、ロール紙の切断を行うための機構は、キャッピングを行うための機構と独立した機構であるため、これらロール紙の搬送、及び、ロール紙の切断は、キャッピングと並行して実行可能である。
【0035】
このように、本実施形態に係るプリンター12は、末端画像を記録したことをトリガーとして、キャッピングを行うが、これは、以下の理由による。
すなわち、末端画像は、レシート13の末端部に定型的に記録される画像である。従って、末端画像の記録が終了した時点では、レシート13に記録すべき画像の全てについて記録が完了している。このため、末端画像の記録が終了した後は、インクジェットヘッド25を使用しない。そして、本実施形態のように、末端画像の記録が終了したことをトリガーとして、キャッピングを行うことにより、インクジェットヘッド25の使用が終了した後、すぐにキャッピングを開始できることとなり、より効果的にインクの増粘を抑制できる。
【0036】
なお、本実施形態では、末端画像が特定の文字列であったため、当該特定の文字列の記録をトリガーとしてキャッピングを行うようにしていたが、末端画像が特定のグラフィック画像である場合は、当該特定のグラフィック画像の記録をトリガーとしてキャッピングを行うようにしてもよい。この場合、グラフィック記録指示コマンドGSの命令コードと、当該コマンドに含まれるグラフィック画像の識別コードを特定する情報とに基づいて、直近で実行した画像記録指示コマンドが、特定のグラフィック画像の記録に係るコマンドであったか否かを判別するようにすればよい。また、末端画像がバーコードである場合は、バーコードの記録をトリガーとしてキャッピングを行うようにしてもよい。なお、バーコードはフォントデータに基づいて記録される画像ではないグラフィック画像に含まれる概念である。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、記録制御部40は、制御装置たるホストコンピューター10から受信した制御コマンドの実行に際し、記録に係る特定の制御コマンドの実行と対応させて、ノズルにおけるインクの粘度の上昇の抑制に係る処理であるキャッピングを実行する。
より具体的には、末端画像たる「Thank△you」の文字列を記録したことをトリガーとして、キャッピングを開始する。
これによれば、レシート13に記録すべき全ての画像が記録が終了し、インクジェットヘッド25を使用しなくなった後、すぐに、キャッピングを開始することができ、より効果的にインクの増粘を抑制可能である。
【0038】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、図1に示す各機能部はハードウェアとソフトウェアの協働により任意に実現可能であり、特定のハードウェア構成を示唆するものではない。
また、上述した実施形態では、プリンター12自身が記録制御部40を有する制御部30を備えていたが、例えば、制御部30の機能を、プリンター12に外部接続される別の装置に持たせるようにしてもよい。
また、本発明を適用可能なプログラムは、ホストコンピューター10に搭載されるプリンタードライバーに含むものであってもよい。
また、上記のフローチャートの各ステップを実行するプログラムを、プリンター12の外部の記憶媒体に記憶させたものを読み出して、制御部30により実行させることもできる。
また、ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理は、キャッピングに限らず、フラッシング、クリーニング、ノズルチェック等であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…記録システム、10…ホストコンピューター(制御装置)、12…プリンター(記録装置)、25…インクジェットヘッド、30…制御部(受信部、搬送部)、36…インターフェイス部(受信部)、38…搬送モーター(搬送部)、40…記録制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置に接続可能な記録装置であって、
インクを吐出するノズルが形成されたインクジェットヘッドと、
記録媒体を搬送する搬送部と、
前記制御装置から制御コマンドを受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記制御コマンドに基づいて、前記インクジェットヘッド、及び、前記搬送部を制御して、前記記録媒体に記録する記録制御部と、を備え、
前記記録制御部は、
記録に係る特定の前記制御コマンドの実行と対応させて、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
記録に係る特定の前記制御コマンドには、特定の文字列の記録を指示するコマンド、及び、特定のグラフィック画像の記録を指示するコマンドが含まれ、
前記記録制御部は、
前記特定の文字列の記録を指示するコマンド、又は、前記特定のグラフィック画像の記録を指示するコマンドの実行と対応させて、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録媒体は、末端画像が末端部に記録されたレシートとなるものであり、
前記記録制御部は、
前記末端画像の記録に係るコマンドの実行後、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理には、
前記インクジェットヘッドのキャッピングが含まれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記キャッピングの処理には、前記インクジェットヘッドをホームポジションに位置させることが含まれることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
制御装置に接続可能であり、インクを吐出するノズルが形成されたインクジェットヘッドと、前記制御装置から制御コマンドを受信する受信部と、を備える記録装置の制御方法であって、
前記受信部で前記制御コマンドを受信し、受信した前記制御コマンドに、記録に係る特定の前記制御コマンドが含まれている場合は、当該制御コマンドの実行と対応させて、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項7】
制御装置に接続可能であり、インクを吐出するノズルが形成されたインクジェットヘッドと、記録媒体を搬送する搬送部と、前記制御装置から制御コマンドを受信する受信部と、を備える記録装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記受信部で受信した制御コマンドに基づいて、前記インクジェットヘッド、及び、前記搬送部を制御して、前記記録媒体に記録する一方、
前記受信部で受信した前記制御コマンドの実行に際し、記録に係る特定の前記制御コマンドの実行と対応させて、前記ノズルにおけるインクの増粘の抑制に係る処理を実行する記録制御部として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−250355(P2012−250355A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122155(P2011−122155)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】