記録装置および温度検出方法
【課題】記録速度を低下させることなく、記録ヘッドへの転送信号の影響を受けずに正確に記録ヘッドの温度を取得することが可能な記録装置及び温度取得方法を提供することである。
【解決手段】複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置における記録ヘッドの温度検出は以下のように行う。まず、記録ヘッドの駆動周波数より定められる記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する。そして、その活性区間に記録ヘッドに対して記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する一方、非活性区間に記録ヘッドから出力された温度データ信号をA/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む。
【解決手段】複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置における記録ヘッドの温度検出は以下のように行う。まず、記録ヘッドの駆動周波数より定められる記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する。そして、その活性区間に記録ヘッドに対して記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する一方、非活性区間に記録ヘッドから出力された温度データ信号をA/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置と温度検出方法に関し、特に、インクジェット方式の記録ヘッドを搭載した記録装置において、記録ヘッドを走査しながら記録ヘッド内部の温度を検出する温度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタに代表される記録装置が普及しており、そのような記録装置の一つの傾向として、高速記録、高解像度記録、装置の静音化が求められている。そして、これらを実現した安価な製品としてインクジェット記録装置が広く普及している。インクジェット方式は、記録ヘッドの吐出口からインク滴を吐出させて紙などの記録媒体に付着させて記録する方式である。このため、高速記録等が比較的容易に実現可能であるとともに、記録ヘッドと記録媒体とが非接触で記録を行うことからインクの乱れが少なく比較的画像の安定した記録が可能である。
【0003】
ここで、図9〜図10を参照して、インクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)の構成と駆動方法について説明する。
【0004】
図9は256ノズルを有する記録ヘッドの駆動制御回路の周辺部の構成を示すブロック図である。図9において、406a、406b、406c、406dは256ノズルに対応する256個ヒータの内の一部のヒータであり、405a、405b、405c、405dはヒータ406a〜dを駆動するトランジスタである。また、401は転送クロックによって記録データ信号を受信するシフトレジスタ、402は所定のタイミングでシフトレジスタ401に受信した記録データ信号をラッチするラッチ回路である。さらに、403は駆動ブロックのイネーブル信号を生成するデコード回路、404a、404b、404c、404dは記録データ信号とブロックイネーブル信号とヒートパルス信号との論理積を演算するAND回路である。
【0005】
図10は、記録ヘッドに対する記録データ信号の転送に係わる種々の信号を示すタイムチャートである。この図では、256ノズル(即ち、256個のヒータ)を16個ずつ16分割して駆動する例を示している。
【0006】
従って、記録装置本体から記録ヘッドに、16ノズル分の16ビットの記録データ信号(d0〜15)と駆動ブロック番号を示す4ビットの信号(BLE0〜4)の計20ビットのデータ信号をブロック毎に転送する。転送データ(H_DATA)を転送クロック(H_CLK)のパルス信号の両エッジを使って転送し、転送データのラッチ信号(H_LAT)を送出する。また、ヒータを駆動するためのヒートイネーブル信号(H_ENB)も送出する。
【0007】
ここでは、説明の便宜上、駆動ブロック“0”から駆動ブロック“15”の順にノズル列を駆動するとする。従って、まず、転送クロック(H_CLK)に同期して転送データ(H_DATA)をシリアル転送すると、記録ヘッド内のシフトレジスタ401に順次その転送データが保持されていく。次に、データラッチ信号(H_LAT)によって、転送データ(H_DATA)はラッチ回路402にラッチされる。ラッチされた20ビットの転送データ信号のうち、4ビットはデコード回路403でデコードされてブロックイネーブル信号が生成され、各ANDゲートに所定のブロックイネーブル信号と記録データ信号とヒートイネーブル信号が入力される。AND回路に対する3つの信号入力がすべて有効であった場合のみ、これに対応するトランジスタがONして対応するヒータを駆動することによってインクが吐出される。
【0008】
実際に駆動ブロック“0”が駆動されているタイミングでは、駆動ブロック“1”に対するデータ転送が行われており、これを繰り返して16ブロック分、即ち、256個のヒータが駆動される。そして、記録ヘッドの走査方向に対してインクを連続的に吐出することで走査領域に画像を形成する。
【0009】
ところで、ヒータを用いてインクを吐出する記録ヘッドでは、ヘッド温度、より詳しくはインク温度が変化すると、インク吐出量が変化することは広く知られている。インク吐出量が変化すると、記録媒体上に付着したインク液滴により形成されるドット径に差が生じ、その結果、微細な濃度差となってしまう。シリアル記録の場合、図11に示すようにこの濃度差は記録ヘッドの走査方向の記録開始位置から記録終了位置までの濃度差になって現われる。これは記録の濃度ムラとなって画質の低下につながってしまう。
【0010】
例えば、記録データが同じ値をもつのであれば、図11(a)に示すように、記録開始位置から記録終了位置まで濃度差がないのが理想的である。言い換えると、この場合,図11(b)に示すように、記録開始位置から記録終了位置までインク吐出量に変化はない。しかしながら、実際の記録ヘッドでは、記録の進行とともに図11(c)に示すようにヘッド温度は上昇していくので、図11(d)に示すように、インク吐出量に変化が生じるのである。
【0011】
そこで、ヘッドの温度上昇によるこのインク吐出量変化を抑制するため、例えば、特許文献1では、1回のインク吐出にダブルパルスを印加し、プレパルスのパルス幅等を制御(プレヒート制御)することを提案している。このパルス制御はヘッド温度に基くため、記録装置と記録ヘッドとの間を図12に示すような構成を採用して記録ヘッドの温度を取得していた。
【0012】
図12に示す構成において、記録装置本体301、記録ヘッド302とはフレキシブルケーブルを介して接続される。記録装置本体301はCPU303を備え、A/Dコンバータ306の出力値を読み込むことができる。ヘッド制御回路304は、記録ヘッド302を制御するとともに、記録ヘッド302を駆動するための制御信号を生成する。また、記録装置本体301は、記録ヘッド302のヘッド温度センサ310のアナログ出力信号を増幅するアンプ305を備え、その出力はA/Dコンバータ306に入力され、デジタル値に変換される。記録ヘッド302には、ヘッド制御回路304から送られた制御信号によりヒータ駆動信号を生成するヘッド駆動制御回路307と実際にヒータ309を駆動するヘッド駆動回路308とを備える。なお、ヒータ309は図8に示すヒータ406a〜dに相当する。なお、記録ヘッド302はさらに記録ヘッド302内の温度を検出し、アナログ信号を出力するヘッド温度センサ310を備える。
【0013】
このような構成において、より高画質な記録を実現するためには、記録ヘッドを駆動するパルス制御をヘッドの温度変化に対してなるべくリアルタイムに行うことが望ましい。しかしながら、記録ヘッド302と記録装置本体301がフレキシブルケーブルで接続される場合、ヘッド温度センサ310からの出力信号に対して、データ転送クロック、転送データ、ラッチ信号、ヒートイネーブル信号などからのクロストークが生じる。その結果、ヘッド温度センサ310からの出力信号に誘導ノイズが発生し、記録ヘッドの記録走査中は正確なヘッド温度の取得は困難であるという問題があった。
【0014】
この問題を解決するために、従来より、例えば特許文献2に開示するような方法が提案されている。即ち、記録装置に搭載する複数の記録ヘッド各々にサンプルホールド信号を設け、記録ヘッドの内部温度を検出するときにそのサンプルホールド信号から各記録ヘッドに対して駆動パルスが印加されているか否かを判別する。そして、いずれの記録ヘッドに対しても駆動パルスが印加されていないタイミングで温度測定データを記録装置本体に出力することで制御信号のクロストークによる影響を受けずに温度を取得するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平5−31905号公報
【特許文献2】特開2002−264305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記従来例は、複数の記録ヘッドのいずれに対しても駆動パルスが印加されていないタイミングで温度取得を行う方法であるため、実際に温度取得が可能なタイミングは図13に示す3通りとなる。図13において、(a)は記録ヘッドA、記録ヘッドBともに記録領域外の位置の場合のタイミングを示している。この場合には、実際の記録中の温度取得は困難である。(b)は、1カラムの区間で16ブロック分の記録が終了し、次のカラムの吐出タイミングまでの余った時間で温度取得する場合のタイミングを示している。この場合、記録速度が遅いならカラム間の時間が長くなるため、記録中の温度取得が可能となるが、記録速度が高速になると16ブロックの記録終了から次のカラムまでの時間は短くなるので、温度取得のための時間を確保することは困難になる。(c)は1カラムの区間を均等分割した1ブロックの中で制御信号が出力されない区間に温度取得する場合のタイミングを示している。この場合は、1ブロックの区間そのものを長く取る必要があり、(b)の場合と同様、記録速度が高速になると温度取得が困難となる。
【0017】
本発明は上記従来例を鑑みてなされたものであり、記録速度を低下させることなく、記録ヘッドへの転送信号の影響を受けずに正確に記録ヘッドの温度を取得することが可能な記録装置及び温度検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は次のような構成からなる。
【0019】
即ち、複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、前記複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/D変換するA/Dコンバータと、前記記録ヘッドの駆動周波数より定められる前記記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記A/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する分割手段と、前記活性区間に前記記録ヘッドに対して前記記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する転送手段と、前記非活性区間に前記記録ヘッドから出力された温度データ信号を前記A/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む読み込み手段とを有することを特徴とする。
【0020】
また本発明を別の側面から見れば、複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、前記複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置の温度検出方法であって、前記記録ヘッドの駆動周波数より定められる前記記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する分割工程と、前記活性区間に前記記録ヘッドに対して前記記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する転送工程と、前記非活性区間に前記記録ヘッドから出力された温度データ信号を前記A/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む読み込み工程とを有することを特徴とする温度検出方法を備える。
【発明の効果】
【0021】
従って本発明によれば、1記録周期を記録ヘッドの駆動信号が転送される活性区間と転送されない非活性区間とに分割し、非活性区間でヘッド温度信号の取得を行うため、駆動信号のクロストークによる影響を受けずに正確なヘッド温度取得を行うことができる。また、記録ヘッドの駆動周波数から前記活性区間と前記非活性区間とを創り出すので、記録速度に影響を与えず、記録速度が低下することがないという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す記録装置におけるヘッド温度取得を実現するための構成を表す図である。
【図4】1カラム周期を16個の駆動ブロック数に対して2ブロック分の非活性区間を考慮して18ブロックに分割したようすを表した図である。
【図5】ノズル列毎にレジ調整を行う場合のブロック分割の様子と各ノズル列の駆動ブロック番号を示した図である。
【図6】非活性区間におけるヘッド温度の取得の第1の方法に関連する信号のタイムチャートである。
【図7】非活性区間におけるヘッド温度の取得の第2の方法に関連する信号のタイムチャートである。
【図8】非活性区間におけるヘッド温度の取得の第1と第2の方法を組み合わせた方法に関連する信号のタイムチャートである。
【図9】256ノズルを有する記録ヘッドの駆動制御回路の周辺部の構成を示すブロック図である。
【図10】記録ヘッドに対する記録データ信号の転送に係わる種々の信号を示すタイムチャートである。
【図11】記録ヘッドの走査方向の記録開始位置から記録終了位置までの濃度差発生を説明する図である。
【図12】記録装置本体と記録ヘッドとの接続の様子を示す図である。
【図13】従来の記録装置におけるヘッド温度取得が可能なタイミングを示す図である。
【図14】別の実施例であるフルラインタイプのインクジェット記録装置の概略構成を示す側断面図とそのフルライン記録ヘッドを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。
なお、この明細書において、「記録」(以下、「プリント」とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【0024】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0025】
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
【0026】
またさらに、「記録要素」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0027】
図1は、本発明の代表的な実施例であるカラー記録可能なシリアル方式のインクジェット記録装置(以下、記録装置)の概観斜視図とインクジェット記録ヘッドのノズル構成を示す図である。
【0028】
図1(b)に示すようにインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)1は、複数のノズル列を有し、インク滴を吐出することにより、記録媒体8上にインク液滴を吐出してドットを形成して画像記録を行う。記録ヘッド1はキャリッジ2に搭載される。
【0029】
さらに、記録装置は、図1(a)に示すように、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジ3a、3b、3c、3dをキャリッジ2に搭載している。これらのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。キャリッジ2はプーリ7a、7bにより張架されたベルト6に装着される。なお、2つのプーリの内の1つはキャリッジモータ(不図示)に接続され、キャリッジモータの駆動力によりキャリッジ2は、ガイド軸5a、5bに沿って矢印A、B方向に往復移動される。
【0030】
そして、記録時には、記録用紙などの記録媒体12を給紙機構(不図示)を介して給紙し、搬送ローラ4により記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド1から記録媒体8にインクを吐出することで記録を行なう。
【0031】
図1(a)(b)において、記号Fは記録媒体8の搬送方向である。図1(b)に示すように記録ヘッド1には複数のノズルが設けられている。ここでは、説明を簡単にするために記録ヘッドは32個のノズルを備えているとする。32個のノズルは2つのグループ(G0,G1)に分けられ、各グループのノズルは16ブロックに割り当てられて時分割で駆動を行う。
【0032】
なお、記録ヘッド1は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用している。このため、電気熱変換体(ヒータ)を備えている。この電気熱変換体は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによってインクを加熱し対応する吐出口からインクを吐出する。
【0033】
図2は図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0034】
図2において、101はCPU、102はCPU101が実行するプログラムとその他のテーブルデータ等を格納しておくROM、103は画像データを格納する画像バッファやCPUのバッファ等の作業領域として用いられるRAMである。104は、RAM103内の画像バッファ上のデータから実際の記録データを生成する記録データ生成部であり、ここで生成された記録データは後述のヘッド制御部107内のデータ転送回路を介して記録ヘッド1に転送される。
【0035】
105は駆動タイミング制御部であり、外部から入力されるエンコーダ信号を基に、記録ヘッドの走査方向に対する位置管理、速度制御、記録データ生成のタイミング制御、記録ヘッドを駆動のためのタイミング制御を行っている。106は駆動タイミング制御部105で生成されたタイミング信号をもとに記録ヘッド1を搭載したキャリッジ2を走査させるキャリッジモータの駆動を行うモータ制御部である。107はヘッド制御部であり、記録ヘッド1に対する記録データの転送制御、ヘッド駆動のための分散駆動制御およびヒートパルス制御、温度取得タイミングの制御などを行う。
【0036】
108はヘッド温度検出部であり、ヘッド制御部107から入力されるタイミング信号をもとに、所定のタイミングでA/Dコンバータ109の出力を取得する。記録ヘッド1の温度は、記録ヘッド1内の温度センサ111のアナログ出力がアンプ(AMP)110で増幅された後、A/Dコンバータ109に入力され、A/D変換されたデジタル信号の値をCPU101が読込むことで取得される。
【0037】
この実施例では、1カラム周期を駆動ブロック数と温度取得に必要な時間に相当するブロック数との合計のブロック数で均等に分割することで、ヘッド制御信号が駆動される活性区間とヘッド制御信号が駆動されない非活性区間とを生成する。そして、この非活性区間でヘッド温度取得タイミングを生成してヘッド温度を取得する。
【0038】
図3は、図1に示す記録装置におけるヘッド温度取得を実現するための構成を表す図である。なお、図3において、図2で説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0039】
図3において、201は分割ブロック数レジスタであり、1カラム周期を何ブロックで分割するかを設定するレジスタである。202は周期分割ブロックであり、エンコーダ信号をもとに分割ブロック数レジスタ201を参照して1カラム周期を分割してブロック周期の同期信号(H_LAT)を生成する。212は記録領域設定レジスタであり、各ノズル列に対して記録ヘッドの走査方向の記録開始位置と記録終了位置を設定する。213は記録領域設定レジスタ212の設定おと周期分割ブロック202からの信号によって各ノズル列に対する記録許可信号(H_WIN)を生成する。H_WIN信号は、そのノズル列が記録領域内を走査している区間、アサートされる。
【0040】
203は駆動ブロック数レジスタであり、1カラムを何ブロックで駆動するかを設定する設定レジスタである。駆動ブロック数レジスタに設定する値は、記録ヘッドによって一意に決定される。204は周期管理ブロックであり、駆動タイミング制御部105から入力されるH_WIN信号とH_LAT信号と分割ブロック数レジスタ201の設定をもとに駆動ブロック数レジスタ203を参照して1カラム周期を分割ブロック数で構成する。そして、記録ヘッドを駆動する区間(駆動ブロック数)と駆動しない区間(分割ブロック数から駆動ブロック数を引いたブロック数)とに分けて管理する。205a〜205dはノズル列毎に活性区間と非活性区間とを管理する駆動ブロックカウンタであり、206a〜206dは、駆動ブロックカウンタ205a〜205dの情報に基づいてノズル列毎に記録データの転送制御を行うデータ転送回路である。
【0041】
207a〜207dは、駆動ブロックカウンタ205a〜205dの情報に基づいてノズル列毎にヒートイネーブル信号を制御するヒートパルス生成ブロックである。208は、A/D取り込みタイミング制御ブロックであり、周期管理ブロック204の情報により非活性区間中に温度取得制御を行うためのタイミング制御を行う。209はA/Dトリガ生成ブロックであり、A/D取り込みタイミング制御ブロック208からのタイミング信号をもとにA/Dコンバータ109のA/D変換のトリガ信号やA/Dコンバータ109からのデータをDMA転送するためのトリガ信号を生成する。210はA/Dコンバータ109から取り込んだデータを格納するA/D値格納レジスタである。211はDMAコントローラであり、A/Dトリガ生成ブロック209からの入力信号をトリガとしてA/D値格納レジスタ210に格納された温度データをRAM103の温度取得データ格納領域にDMA転送する。
【0042】
図4は1カラム周期を16個の駆動ブロック数に対して2ブロック分の非活性区間を考慮して18ブロックに分割したようすを表した図である。ここで、AD_ENB信号は非活性区間を表す信号である。例えば、記録ヘッドが16分割駆動で駆動周波数が24kHzとすると、1カラム周期(1記録周期)は41.7μsec程度となるため、非活性区間は41.7/18×2=5.2μsec程度となる。
【0043】
これは、A/DコンバータがA/D変換に要する時間としても十分な時間である。但し、記録ヘッドの駆動周波数が変わった場合、非活性区間に割り当てるブロック数も変える必要があるため、1カラム周期の分割数と非活性区間に当てるブロック数はレジスタ設定とすることで可変となっている。
【0044】
図5はノズル列毎にレジ調整を行う場合のブロック分割の様子と各ノズル列の駆動ブロック番号を示した図である。図5に示す例は、走査方向の記録解像度を1200dpiとすると、レジ調整の解像度はノズル列Cを基準として、ノズル列Mは4800dpi、ノズル列Yは2400dpi、ノズル列Kは調整なしとなっている。このように、この実施例では各ノズル列に対して、1カラム中の非活性区間(図中の区間ina)が重なるようにブロック毎に駆動を行う。
【0045】
この実施例では、分割ブロック数レジスタ201には“18”、駆動ブロック数レジスタ203には“16”が設定されている。周期分割ブロック202は、入力されるエンコーダ信号から1カラム周期を求め、分割ブロック数レジスタ201の設定により、1カラム周期を18ブロックに均等分割してH_LAT信号を生成する。周期管理ブロック204は、ノズル列毎のH_WIN信号とH_LAT信号から、ノズル列Cを基準として18ブロックを1カラム周期とする区間を16ブロックの活性区間と2ブロックの非活性区間に分けて管理する。なお、この管理は、上述した値に限定するものではなく、18ブロックを17ブロックの活性区間と1ブロックの非活性区間に割り当てる形態でも構わない。
【0046】
このとき、非活性区間にはAD_ENB信号がアサートされる。AD_ENB信号のアサート区間はヘッド制御信号を駆動していないのでノイズの影響を受けずにヘッド温度データの検知が可能である。各ノズル列の駆動ブロックカウンタ205a〜205dは、対応するH_WIN信号がアサートされている区間でインクリメントされるが、AD_ENB信号がアサートされている区間は非活性区間であるためカウンタを更新しない。データ転送ブロック206a〜206dとヒートパルス生成ブロック207a〜207dは、AD_ENB信号がアサートされている非活性区間では記録ヘッドへのデータ転送と駆動制御信号の転送は行わない。
【0047】
次に、非活性区間におけるヘッド温度の取得方法について、図6〜図7を参照して2つの方法を説明する。
【0048】
第1の方法は、非活性区間のタイミングでのみA/DコンバータにA/D変換のトリガをかけてA/D変換を実行する方法である。
【0049】
図6は第1の方法に関連する信号のタイムチャートである。図6において、AD_ENB信号は非活性区間にアサートされる信号である。A/Dトリガ生成ブロック209は、AD_ENB信号を受けてA/D変換の外部トリガ信号となるAD_TRG信号を生成する。A/Dコンバータ109はAD_TRG信号によって起動されてA/D変換を実行し、A/D変換後のヘッド温度データ信号(AD_OUT)とストローブ信号AD_STBをアサートする。A/D値格納レジスタ210にはAD_STB信号によってA/D変換後のヘッド温度データ信号が格納される。CPUは所定の周期でA/D値格納レジスタ210の値を読込むことで正確なヘッド温度データを取得することができる。
【0050】
勿論、割り込み信号を発生させ、CPU101がA/D値格納レジスタ210の値を読込む構成を取っても良い。
【0051】
第2の方法は、A/D変換は常時実行しつつ、非活性区間で実行された温度測定の温度データ信号のみを取り込む方法である。
【0052】
図7は第2の方法に関連する信号のタイムチャートである。この方法によれば、A/Dコンバータ109は常時A/D変換を行っているため、図7に示すように、A/D変換後の温度データ信号(AD_OUT)とストローブ信号(AD_STB)とはA/D変換が実行するたびに出力される。そして、温度データ信号はA/D値格納レジスタ210に格納される。一方、A/Dトリガ生成ブロック209は、AD_ENB信号を受けてDMAコントローラ211を起動し、非活性区間でA/D変換された温度データ信号のみをRAM103の温度取得データ格納領域にDMA転送する。CPU101は所定の周期で温度取得データ格納領域にアクセスすることで正確なヘッド温度データを取得することができる。
【0053】
この実施例によれば、上述した第1の方法と第2の方法は、ヘッド温度検出部のレジスタ設定によってモード設定を行う構成となっている。
【0054】
また、図8に示すように、第1の方法と第2の方法を合わせて実行する事も可能である。この場合、非活性区間でのみA/D変換を実行してA/D値格納レジスタ210に格納されたヘッド温度データをRAM103の温度取得データ格納領域にDMA転送する。
【0055】
以上説明した実施例に従えば、記録ヘッドに対してデータ信号転送や制御信号転送を生じないタイミングで記録ヘッドの温度センサからの温度データ信号を記録装置本体に入力することができる。従って、記録ヘッドと記録装置本体部とを接続するフレキシブルケーブルにおいて、信号転送に伴って生じるクロストークに起因する雑音が温度データ信号に混入することがなく、高精度な温度制御を行うことができる。
【0056】
また、カラム周期を分割駆動ブロック数より僅かに多い数(この実施例では+2)で分割し、各カラム毎のデータ信号転送の間に温度データ信号の入力を組み込ませることで記録速度の低下を生じさせることなく、温度データ信号を取得することができる。
【0057】
次に別の実施例について説明する。
【0058】
図14はフルラインタイプのインクジェット記録装置の概略構成を示す側断面図とそのフルラインインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を説明する図である。
【0059】
図14において、(a)はカラー記録可能なフルライン形式のインクジェット記録装置の断面図である。図14(a)に示すように、記録ヘッド14の上流側に、メイン搬送ローラ17とメインピンチローラ18が配置されている。そして、記録ヘッド14の下流側に、サブ搬送ローラ19とサブピンチローラ20が配置されている。また、メイン搬送ローラ17の上流側に、プレメイン搬送ローラ21とプレメインピンチローラ22が配置されている。これらのローラにより記録媒体8は記録ヘッド14の下を矢印Fの方向に搬送される。メイン搬送ローラ17にはロータリーエンコーダ30が設けられており、メイン搬送ローラ17の回転位相を検知する。メイン搬送ローラ17とプレメイン搬送ローラ21の間には、速度計測部25が設けられている。また、記録ヘッド14の下方には、紙先端検知センサ26が配置されている。また、ロータリーエンコーダ30を用いて、メイン搬送ローラ17の所定回転量(単位回転量)あたりの記録媒体の移動量を取得する。
【0060】
図14(b)に示すように、記録ヘッド14は、記録媒体の幅に相当する数のノズルを有している。これらのノズルは記録媒体の搬送方向Fと交差する方向に配置している。ここでは、説明を簡単にするためにノズル数を48としている。隣り合う16個のノズルが1つのグループ(G0〜G2)を形成し、1つのグループを16個のブロックに分けて駆動する。このような形態でも上述した制御を行うことができる。
【0061】
フルラインタイプのインクジェット記録装置に関連して、図2の説明に関して補足すると、この実施例では、1ラスタ周期を駆動ブロック数と温度取得に必要な時間に相当するブロック数との合計のブロック数で均等に分割する。また、モータ制御部106は、メイン搬送ローラ17の駆動するモータを制御する。
【0062】
さらに、図3の説明に関して補足すると、上述のシリアル方式の記録装置はカラム位置やカラム周期に対する設定を行うのに対し、フルライン形式の記録装置ではラスタ位置やラスタ周期に対する設定を行う。この点に留意すれば、図3の構成をフルライン形式の記録装置にも適用できる。
【0063】
例えば、1ラスタ周期を分割する値を分割ブロック数レジスタ201に設定すればよい。分割ブロック数レジスタ201を参照して1ラスタ周期を分割してブロック周期の同期信号を生成する。また、記録領域設定レジスタ212には、記録媒体の搬送方向の記録開始位置や記録終了位置を設定する。駆動ブロック数レジスタ203は、1ラスタを何ブロックで駆動するかを設定する。
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置と温度検出方法に関し、特に、インクジェット方式の記録ヘッドを搭載した記録装置において、記録ヘッドを走査しながら記録ヘッド内部の温度を検出する温度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタに代表される記録装置が普及しており、そのような記録装置の一つの傾向として、高速記録、高解像度記録、装置の静音化が求められている。そして、これらを実現した安価な製品としてインクジェット記録装置が広く普及している。インクジェット方式は、記録ヘッドの吐出口からインク滴を吐出させて紙などの記録媒体に付着させて記録する方式である。このため、高速記録等が比較的容易に実現可能であるとともに、記録ヘッドと記録媒体とが非接触で記録を行うことからインクの乱れが少なく比較的画像の安定した記録が可能である。
【0003】
ここで、図9〜図10を参照して、インクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)の構成と駆動方法について説明する。
【0004】
図9は256ノズルを有する記録ヘッドの駆動制御回路の周辺部の構成を示すブロック図である。図9において、406a、406b、406c、406dは256ノズルに対応する256個ヒータの内の一部のヒータであり、405a、405b、405c、405dはヒータ406a〜dを駆動するトランジスタである。また、401は転送クロックによって記録データ信号を受信するシフトレジスタ、402は所定のタイミングでシフトレジスタ401に受信した記録データ信号をラッチするラッチ回路である。さらに、403は駆動ブロックのイネーブル信号を生成するデコード回路、404a、404b、404c、404dは記録データ信号とブロックイネーブル信号とヒートパルス信号との論理積を演算するAND回路である。
【0005】
図10は、記録ヘッドに対する記録データ信号の転送に係わる種々の信号を示すタイムチャートである。この図では、256ノズル(即ち、256個のヒータ)を16個ずつ16分割して駆動する例を示している。
【0006】
従って、記録装置本体から記録ヘッドに、16ノズル分の16ビットの記録データ信号(d0〜15)と駆動ブロック番号を示す4ビットの信号(BLE0〜4)の計20ビットのデータ信号をブロック毎に転送する。転送データ(H_DATA)を転送クロック(H_CLK)のパルス信号の両エッジを使って転送し、転送データのラッチ信号(H_LAT)を送出する。また、ヒータを駆動するためのヒートイネーブル信号(H_ENB)も送出する。
【0007】
ここでは、説明の便宜上、駆動ブロック“0”から駆動ブロック“15”の順にノズル列を駆動するとする。従って、まず、転送クロック(H_CLK)に同期して転送データ(H_DATA)をシリアル転送すると、記録ヘッド内のシフトレジスタ401に順次その転送データが保持されていく。次に、データラッチ信号(H_LAT)によって、転送データ(H_DATA)はラッチ回路402にラッチされる。ラッチされた20ビットの転送データ信号のうち、4ビットはデコード回路403でデコードされてブロックイネーブル信号が生成され、各ANDゲートに所定のブロックイネーブル信号と記録データ信号とヒートイネーブル信号が入力される。AND回路に対する3つの信号入力がすべて有効であった場合のみ、これに対応するトランジスタがONして対応するヒータを駆動することによってインクが吐出される。
【0008】
実際に駆動ブロック“0”が駆動されているタイミングでは、駆動ブロック“1”に対するデータ転送が行われており、これを繰り返して16ブロック分、即ち、256個のヒータが駆動される。そして、記録ヘッドの走査方向に対してインクを連続的に吐出することで走査領域に画像を形成する。
【0009】
ところで、ヒータを用いてインクを吐出する記録ヘッドでは、ヘッド温度、より詳しくはインク温度が変化すると、インク吐出量が変化することは広く知られている。インク吐出量が変化すると、記録媒体上に付着したインク液滴により形成されるドット径に差が生じ、その結果、微細な濃度差となってしまう。シリアル記録の場合、図11に示すようにこの濃度差は記録ヘッドの走査方向の記録開始位置から記録終了位置までの濃度差になって現われる。これは記録の濃度ムラとなって画質の低下につながってしまう。
【0010】
例えば、記録データが同じ値をもつのであれば、図11(a)に示すように、記録開始位置から記録終了位置まで濃度差がないのが理想的である。言い換えると、この場合,図11(b)に示すように、記録開始位置から記録終了位置までインク吐出量に変化はない。しかしながら、実際の記録ヘッドでは、記録の進行とともに図11(c)に示すようにヘッド温度は上昇していくので、図11(d)に示すように、インク吐出量に変化が生じるのである。
【0011】
そこで、ヘッドの温度上昇によるこのインク吐出量変化を抑制するため、例えば、特許文献1では、1回のインク吐出にダブルパルスを印加し、プレパルスのパルス幅等を制御(プレヒート制御)することを提案している。このパルス制御はヘッド温度に基くため、記録装置と記録ヘッドとの間を図12に示すような構成を採用して記録ヘッドの温度を取得していた。
【0012】
図12に示す構成において、記録装置本体301、記録ヘッド302とはフレキシブルケーブルを介して接続される。記録装置本体301はCPU303を備え、A/Dコンバータ306の出力値を読み込むことができる。ヘッド制御回路304は、記録ヘッド302を制御するとともに、記録ヘッド302を駆動するための制御信号を生成する。また、記録装置本体301は、記録ヘッド302のヘッド温度センサ310のアナログ出力信号を増幅するアンプ305を備え、その出力はA/Dコンバータ306に入力され、デジタル値に変換される。記録ヘッド302には、ヘッド制御回路304から送られた制御信号によりヒータ駆動信号を生成するヘッド駆動制御回路307と実際にヒータ309を駆動するヘッド駆動回路308とを備える。なお、ヒータ309は図8に示すヒータ406a〜dに相当する。なお、記録ヘッド302はさらに記録ヘッド302内の温度を検出し、アナログ信号を出力するヘッド温度センサ310を備える。
【0013】
このような構成において、より高画質な記録を実現するためには、記録ヘッドを駆動するパルス制御をヘッドの温度変化に対してなるべくリアルタイムに行うことが望ましい。しかしながら、記録ヘッド302と記録装置本体301がフレキシブルケーブルで接続される場合、ヘッド温度センサ310からの出力信号に対して、データ転送クロック、転送データ、ラッチ信号、ヒートイネーブル信号などからのクロストークが生じる。その結果、ヘッド温度センサ310からの出力信号に誘導ノイズが発生し、記録ヘッドの記録走査中は正確なヘッド温度の取得は困難であるという問題があった。
【0014】
この問題を解決するために、従来より、例えば特許文献2に開示するような方法が提案されている。即ち、記録装置に搭載する複数の記録ヘッド各々にサンプルホールド信号を設け、記録ヘッドの内部温度を検出するときにそのサンプルホールド信号から各記録ヘッドに対して駆動パルスが印加されているか否かを判別する。そして、いずれの記録ヘッドに対しても駆動パルスが印加されていないタイミングで温度測定データを記録装置本体に出力することで制御信号のクロストークによる影響を受けずに温度を取得するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平5−31905号公報
【特許文献2】特開2002−264305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記従来例は、複数の記録ヘッドのいずれに対しても駆動パルスが印加されていないタイミングで温度取得を行う方法であるため、実際に温度取得が可能なタイミングは図13に示す3通りとなる。図13において、(a)は記録ヘッドA、記録ヘッドBともに記録領域外の位置の場合のタイミングを示している。この場合には、実際の記録中の温度取得は困難である。(b)は、1カラムの区間で16ブロック分の記録が終了し、次のカラムの吐出タイミングまでの余った時間で温度取得する場合のタイミングを示している。この場合、記録速度が遅いならカラム間の時間が長くなるため、記録中の温度取得が可能となるが、記録速度が高速になると16ブロックの記録終了から次のカラムまでの時間は短くなるので、温度取得のための時間を確保することは困難になる。(c)は1カラムの区間を均等分割した1ブロックの中で制御信号が出力されない区間に温度取得する場合のタイミングを示している。この場合は、1ブロックの区間そのものを長く取る必要があり、(b)の場合と同様、記録速度が高速になると温度取得が困難となる。
【0017】
本発明は上記従来例を鑑みてなされたものであり、記録速度を低下させることなく、記録ヘッドへの転送信号の影響を受けずに正確に記録ヘッドの温度を取得することが可能な記録装置及び温度検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は次のような構成からなる。
【0019】
即ち、複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、前記複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/D変換するA/Dコンバータと、前記記録ヘッドの駆動周波数より定められる前記記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記A/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する分割手段と、前記活性区間に前記記録ヘッドに対して前記記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する転送手段と、前記非活性区間に前記記録ヘッドから出力された温度データ信号を前記A/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む読み込み手段とを有することを特徴とする。
【0020】
また本発明を別の側面から見れば、複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、前記複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置の温度検出方法であって、前記記録ヘッドの駆動周波数より定められる前記記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する分割工程と、前記活性区間に前記記録ヘッドに対して前記記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する転送工程と、前記非活性区間に前記記録ヘッドから出力された温度データ信号を前記A/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む読み込み工程とを有することを特徴とする温度検出方法を備える。
【発明の効果】
【0021】
従って本発明によれば、1記録周期を記録ヘッドの駆動信号が転送される活性区間と転送されない非活性区間とに分割し、非活性区間でヘッド温度信号の取得を行うため、駆動信号のクロストークによる影響を受けずに正確なヘッド温度取得を行うことができる。また、記録ヘッドの駆動周波数から前記活性区間と前記非活性区間とを創り出すので、記録速度に影響を与えず、記録速度が低下することがないという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す記録装置におけるヘッド温度取得を実現するための構成を表す図である。
【図4】1カラム周期を16個の駆動ブロック数に対して2ブロック分の非活性区間を考慮して18ブロックに分割したようすを表した図である。
【図5】ノズル列毎にレジ調整を行う場合のブロック分割の様子と各ノズル列の駆動ブロック番号を示した図である。
【図6】非活性区間におけるヘッド温度の取得の第1の方法に関連する信号のタイムチャートである。
【図7】非活性区間におけるヘッド温度の取得の第2の方法に関連する信号のタイムチャートである。
【図8】非活性区間におけるヘッド温度の取得の第1と第2の方法を組み合わせた方法に関連する信号のタイムチャートである。
【図9】256ノズルを有する記録ヘッドの駆動制御回路の周辺部の構成を示すブロック図である。
【図10】記録ヘッドに対する記録データ信号の転送に係わる種々の信号を示すタイムチャートである。
【図11】記録ヘッドの走査方向の記録開始位置から記録終了位置までの濃度差発生を説明する図である。
【図12】記録装置本体と記録ヘッドとの接続の様子を示す図である。
【図13】従来の記録装置におけるヘッド温度取得が可能なタイミングを示す図である。
【図14】別の実施例であるフルラインタイプのインクジェット記録装置の概略構成を示す側断面図とそのフルライン記録ヘッドを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。
なお、この明細書において、「記録」(以下、「プリント」とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【0024】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0025】
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
【0026】
またさらに、「記録要素」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0027】
図1は、本発明の代表的な実施例であるカラー記録可能なシリアル方式のインクジェット記録装置(以下、記録装置)の概観斜視図とインクジェット記録ヘッドのノズル構成を示す図である。
【0028】
図1(b)に示すようにインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)1は、複数のノズル列を有し、インク滴を吐出することにより、記録媒体8上にインク液滴を吐出してドットを形成して画像記録を行う。記録ヘッド1はキャリッジ2に搭載される。
【0029】
さらに、記録装置は、図1(a)に示すように、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジ3a、3b、3c、3dをキャリッジ2に搭載している。これらのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。キャリッジ2はプーリ7a、7bにより張架されたベルト6に装着される。なお、2つのプーリの内の1つはキャリッジモータ(不図示)に接続され、キャリッジモータの駆動力によりキャリッジ2は、ガイド軸5a、5bに沿って矢印A、B方向に往復移動される。
【0030】
そして、記録時には、記録用紙などの記録媒体12を給紙機構(不図示)を介して給紙し、搬送ローラ4により記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド1から記録媒体8にインクを吐出することで記録を行なう。
【0031】
図1(a)(b)において、記号Fは記録媒体8の搬送方向である。図1(b)に示すように記録ヘッド1には複数のノズルが設けられている。ここでは、説明を簡単にするために記録ヘッドは32個のノズルを備えているとする。32個のノズルは2つのグループ(G0,G1)に分けられ、各グループのノズルは16ブロックに割り当てられて時分割で駆動を行う。
【0032】
なお、記録ヘッド1は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用している。このため、電気熱変換体(ヒータ)を備えている。この電気熱変換体は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによってインクを加熱し対応する吐出口からインクを吐出する。
【0033】
図2は図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0034】
図2において、101はCPU、102はCPU101が実行するプログラムとその他のテーブルデータ等を格納しておくROM、103は画像データを格納する画像バッファやCPUのバッファ等の作業領域として用いられるRAMである。104は、RAM103内の画像バッファ上のデータから実際の記録データを生成する記録データ生成部であり、ここで生成された記録データは後述のヘッド制御部107内のデータ転送回路を介して記録ヘッド1に転送される。
【0035】
105は駆動タイミング制御部であり、外部から入力されるエンコーダ信号を基に、記録ヘッドの走査方向に対する位置管理、速度制御、記録データ生成のタイミング制御、記録ヘッドを駆動のためのタイミング制御を行っている。106は駆動タイミング制御部105で生成されたタイミング信号をもとに記録ヘッド1を搭載したキャリッジ2を走査させるキャリッジモータの駆動を行うモータ制御部である。107はヘッド制御部であり、記録ヘッド1に対する記録データの転送制御、ヘッド駆動のための分散駆動制御およびヒートパルス制御、温度取得タイミングの制御などを行う。
【0036】
108はヘッド温度検出部であり、ヘッド制御部107から入力されるタイミング信号をもとに、所定のタイミングでA/Dコンバータ109の出力を取得する。記録ヘッド1の温度は、記録ヘッド1内の温度センサ111のアナログ出力がアンプ(AMP)110で増幅された後、A/Dコンバータ109に入力され、A/D変換されたデジタル信号の値をCPU101が読込むことで取得される。
【0037】
この実施例では、1カラム周期を駆動ブロック数と温度取得に必要な時間に相当するブロック数との合計のブロック数で均等に分割することで、ヘッド制御信号が駆動される活性区間とヘッド制御信号が駆動されない非活性区間とを生成する。そして、この非活性区間でヘッド温度取得タイミングを生成してヘッド温度を取得する。
【0038】
図3は、図1に示す記録装置におけるヘッド温度取得を実現するための構成を表す図である。なお、図3において、図2で説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0039】
図3において、201は分割ブロック数レジスタであり、1カラム周期を何ブロックで分割するかを設定するレジスタである。202は周期分割ブロックであり、エンコーダ信号をもとに分割ブロック数レジスタ201を参照して1カラム周期を分割してブロック周期の同期信号(H_LAT)を生成する。212は記録領域設定レジスタであり、各ノズル列に対して記録ヘッドの走査方向の記録開始位置と記録終了位置を設定する。213は記録領域設定レジスタ212の設定おと周期分割ブロック202からの信号によって各ノズル列に対する記録許可信号(H_WIN)を生成する。H_WIN信号は、そのノズル列が記録領域内を走査している区間、アサートされる。
【0040】
203は駆動ブロック数レジスタであり、1カラムを何ブロックで駆動するかを設定する設定レジスタである。駆動ブロック数レジスタに設定する値は、記録ヘッドによって一意に決定される。204は周期管理ブロックであり、駆動タイミング制御部105から入力されるH_WIN信号とH_LAT信号と分割ブロック数レジスタ201の設定をもとに駆動ブロック数レジスタ203を参照して1カラム周期を分割ブロック数で構成する。そして、記録ヘッドを駆動する区間(駆動ブロック数)と駆動しない区間(分割ブロック数から駆動ブロック数を引いたブロック数)とに分けて管理する。205a〜205dはノズル列毎に活性区間と非活性区間とを管理する駆動ブロックカウンタであり、206a〜206dは、駆動ブロックカウンタ205a〜205dの情報に基づいてノズル列毎に記録データの転送制御を行うデータ転送回路である。
【0041】
207a〜207dは、駆動ブロックカウンタ205a〜205dの情報に基づいてノズル列毎にヒートイネーブル信号を制御するヒートパルス生成ブロックである。208は、A/D取り込みタイミング制御ブロックであり、周期管理ブロック204の情報により非活性区間中に温度取得制御を行うためのタイミング制御を行う。209はA/Dトリガ生成ブロックであり、A/D取り込みタイミング制御ブロック208からのタイミング信号をもとにA/Dコンバータ109のA/D変換のトリガ信号やA/Dコンバータ109からのデータをDMA転送するためのトリガ信号を生成する。210はA/Dコンバータ109から取り込んだデータを格納するA/D値格納レジスタである。211はDMAコントローラであり、A/Dトリガ生成ブロック209からの入力信号をトリガとしてA/D値格納レジスタ210に格納された温度データをRAM103の温度取得データ格納領域にDMA転送する。
【0042】
図4は1カラム周期を16個の駆動ブロック数に対して2ブロック分の非活性区間を考慮して18ブロックに分割したようすを表した図である。ここで、AD_ENB信号は非活性区間を表す信号である。例えば、記録ヘッドが16分割駆動で駆動周波数が24kHzとすると、1カラム周期(1記録周期)は41.7μsec程度となるため、非活性区間は41.7/18×2=5.2μsec程度となる。
【0043】
これは、A/DコンバータがA/D変換に要する時間としても十分な時間である。但し、記録ヘッドの駆動周波数が変わった場合、非活性区間に割り当てるブロック数も変える必要があるため、1カラム周期の分割数と非活性区間に当てるブロック数はレジスタ設定とすることで可変となっている。
【0044】
図5はノズル列毎にレジ調整を行う場合のブロック分割の様子と各ノズル列の駆動ブロック番号を示した図である。図5に示す例は、走査方向の記録解像度を1200dpiとすると、レジ調整の解像度はノズル列Cを基準として、ノズル列Mは4800dpi、ノズル列Yは2400dpi、ノズル列Kは調整なしとなっている。このように、この実施例では各ノズル列に対して、1カラム中の非活性区間(図中の区間ina)が重なるようにブロック毎に駆動を行う。
【0045】
この実施例では、分割ブロック数レジスタ201には“18”、駆動ブロック数レジスタ203には“16”が設定されている。周期分割ブロック202は、入力されるエンコーダ信号から1カラム周期を求め、分割ブロック数レジスタ201の設定により、1カラム周期を18ブロックに均等分割してH_LAT信号を生成する。周期管理ブロック204は、ノズル列毎のH_WIN信号とH_LAT信号から、ノズル列Cを基準として18ブロックを1カラム周期とする区間を16ブロックの活性区間と2ブロックの非活性区間に分けて管理する。なお、この管理は、上述した値に限定するものではなく、18ブロックを17ブロックの活性区間と1ブロックの非活性区間に割り当てる形態でも構わない。
【0046】
このとき、非活性区間にはAD_ENB信号がアサートされる。AD_ENB信号のアサート区間はヘッド制御信号を駆動していないのでノイズの影響を受けずにヘッド温度データの検知が可能である。各ノズル列の駆動ブロックカウンタ205a〜205dは、対応するH_WIN信号がアサートされている区間でインクリメントされるが、AD_ENB信号がアサートされている区間は非活性区間であるためカウンタを更新しない。データ転送ブロック206a〜206dとヒートパルス生成ブロック207a〜207dは、AD_ENB信号がアサートされている非活性区間では記録ヘッドへのデータ転送と駆動制御信号の転送は行わない。
【0047】
次に、非活性区間におけるヘッド温度の取得方法について、図6〜図7を参照して2つの方法を説明する。
【0048】
第1の方法は、非活性区間のタイミングでのみA/DコンバータにA/D変換のトリガをかけてA/D変換を実行する方法である。
【0049】
図6は第1の方法に関連する信号のタイムチャートである。図6において、AD_ENB信号は非活性区間にアサートされる信号である。A/Dトリガ生成ブロック209は、AD_ENB信号を受けてA/D変換の外部トリガ信号となるAD_TRG信号を生成する。A/Dコンバータ109はAD_TRG信号によって起動されてA/D変換を実行し、A/D変換後のヘッド温度データ信号(AD_OUT)とストローブ信号AD_STBをアサートする。A/D値格納レジスタ210にはAD_STB信号によってA/D変換後のヘッド温度データ信号が格納される。CPUは所定の周期でA/D値格納レジスタ210の値を読込むことで正確なヘッド温度データを取得することができる。
【0050】
勿論、割り込み信号を発生させ、CPU101がA/D値格納レジスタ210の値を読込む構成を取っても良い。
【0051】
第2の方法は、A/D変換は常時実行しつつ、非活性区間で実行された温度測定の温度データ信号のみを取り込む方法である。
【0052】
図7は第2の方法に関連する信号のタイムチャートである。この方法によれば、A/Dコンバータ109は常時A/D変換を行っているため、図7に示すように、A/D変換後の温度データ信号(AD_OUT)とストローブ信号(AD_STB)とはA/D変換が実行するたびに出力される。そして、温度データ信号はA/D値格納レジスタ210に格納される。一方、A/Dトリガ生成ブロック209は、AD_ENB信号を受けてDMAコントローラ211を起動し、非活性区間でA/D変換された温度データ信号のみをRAM103の温度取得データ格納領域にDMA転送する。CPU101は所定の周期で温度取得データ格納領域にアクセスすることで正確なヘッド温度データを取得することができる。
【0053】
この実施例によれば、上述した第1の方法と第2の方法は、ヘッド温度検出部のレジスタ設定によってモード設定を行う構成となっている。
【0054】
また、図8に示すように、第1の方法と第2の方法を合わせて実行する事も可能である。この場合、非活性区間でのみA/D変換を実行してA/D値格納レジスタ210に格納されたヘッド温度データをRAM103の温度取得データ格納領域にDMA転送する。
【0055】
以上説明した実施例に従えば、記録ヘッドに対してデータ信号転送や制御信号転送を生じないタイミングで記録ヘッドの温度センサからの温度データ信号を記録装置本体に入力することができる。従って、記録ヘッドと記録装置本体部とを接続するフレキシブルケーブルにおいて、信号転送に伴って生じるクロストークに起因する雑音が温度データ信号に混入することがなく、高精度な温度制御を行うことができる。
【0056】
また、カラム周期を分割駆動ブロック数より僅かに多い数(この実施例では+2)で分割し、各カラム毎のデータ信号転送の間に温度データ信号の入力を組み込ませることで記録速度の低下を生じさせることなく、温度データ信号を取得することができる。
【0057】
次に別の実施例について説明する。
【0058】
図14はフルラインタイプのインクジェット記録装置の概略構成を示す側断面図とそのフルラインインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を説明する図である。
【0059】
図14において、(a)はカラー記録可能なフルライン形式のインクジェット記録装置の断面図である。図14(a)に示すように、記録ヘッド14の上流側に、メイン搬送ローラ17とメインピンチローラ18が配置されている。そして、記録ヘッド14の下流側に、サブ搬送ローラ19とサブピンチローラ20が配置されている。また、メイン搬送ローラ17の上流側に、プレメイン搬送ローラ21とプレメインピンチローラ22が配置されている。これらのローラにより記録媒体8は記録ヘッド14の下を矢印Fの方向に搬送される。メイン搬送ローラ17にはロータリーエンコーダ30が設けられており、メイン搬送ローラ17の回転位相を検知する。メイン搬送ローラ17とプレメイン搬送ローラ21の間には、速度計測部25が設けられている。また、記録ヘッド14の下方には、紙先端検知センサ26が配置されている。また、ロータリーエンコーダ30を用いて、メイン搬送ローラ17の所定回転量(単位回転量)あたりの記録媒体の移動量を取得する。
【0060】
図14(b)に示すように、記録ヘッド14は、記録媒体の幅に相当する数のノズルを有している。これらのノズルは記録媒体の搬送方向Fと交差する方向に配置している。ここでは、説明を簡単にするためにノズル数を48としている。隣り合う16個のノズルが1つのグループ(G0〜G2)を形成し、1つのグループを16個のブロックに分けて駆動する。このような形態でも上述した制御を行うことができる。
【0061】
フルラインタイプのインクジェット記録装置に関連して、図2の説明に関して補足すると、この実施例では、1ラスタ周期を駆動ブロック数と温度取得に必要な時間に相当するブロック数との合計のブロック数で均等に分割する。また、モータ制御部106は、メイン搬送ローラ17の駆動するモータを制御する。
【0062】
さらに、図3の説明に関して補足すると、上述のシリアル方式の記録装置はカラム位置やカラム周期に対する設定を行うのに対し、フルライン形式の記録装置ではラスタ位置やラスタ周期に対する設定を行う。この点に留意すれば、図3の構成をフルライン形式の記録装置にも適用できる。
【0063】
例えば、1ラスタ周期を分割する値を分割ブロック数レジスタ201に設定すればよい。分割ブロック数レジスタ201を参照して1ラスタ周期を分割してブロック周期の同期信号を生成する。また、記録領域設定レジスタ212には、記録媒体の搬送方向の記録開始位置や記録終了位置を設定する。駆動ブロック数レジスタ203は、1ラスタを何ブロックで駆動するかを設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、前記複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/D変換するA/Dコンバータと、
前記記録ヘッドの駆動周波数より定められる前記記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記A/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する分割手段と、
前記活性区間に前記記録ヘッドに対して前記記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する転送手段と、
前記非活性区間に前記記録ヘッドから出力された温度データ信号を前記A/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む読み込み手段とを有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記読み込み手段は、前記非活性区間で前記A/DコンバータにA/D変換のトリガをかけることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記A/DコンバータはA/D変換を常時実行し、
前記読み込み手段は、前記非活性区間で前記温度センサにより実行された温度測定の温度データ信号を読み込むことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記A/D変換されたデジタル信号を格納する格納手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記分割手段は、
前記1記録周期の分割数を設定する設定手段と、
前記分割数の内、前記分割駆動の数に相当する時間を前記活性区間に割り当て、残りの数の相当する時間を前記非活性区間に割り当てる割り当て手段とを含み、
前記分割数により分割された区間の長さは均等であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記複数の記録要素それぞれはヒータを含み、
前記記録ヘッドは前記ヒータによりインクを加熱することによりインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、前記複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置の温度検出方法であって、
前記記録ヘッドの駆動周波数より定められる前記記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する分割工程と、
前記活性区間に前記記録ヘッドに対して前記記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する転送工程と、
前記非活性区間に前記記録ヘッドから出力された温度データ信号を前記A/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む読み込み工程とを有することを特徴とする温度検出方法。
【請求項1】
複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、前記複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/D変換するA/Dコンバータと、
前記記録ヘッドの駆動周波数より定められる前記記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記A/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する分割手段と、
前記活性区間に前記記録ヘッドに対して前記記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する転送手段と、
前記非活性区間に前記記録ヘッドから出力された温度データ信号を前記A/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む読み込み手段とを有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記読み込み手段は、前記非活性区間で前記A/DコンバータにA/D変換のトリガをかけることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記A/DコンバータはA/D変換を常時実行し、
前記読み込み手段は、前記非活性区間で前記温度センサにより実行された温度測定の温度データ信号を読み込むことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記A/D変換されたデジタル信号を格納する格納手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記分割手段は、
前記1記録周期の分割数を設定する設定手段と、
前記分割数の内、前記分割駆動の数に相当する時間を前記活性区間に割り当て、残りの数の相当する時間を前記非活性区間に割り当てる割り当て手段とを含み、
前記分割数により分割された区間の長さは均等であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記複数の記録要素それぞれはヒータを含み、
前記記録ヘッドは前記ヒータによりインクを加熱することによりインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
複数の記録要素と温度センサとを備えた記録ヘッドを備え、前記複数の記録要素を複数のブロックに分割し各ブロック毎に分割駆動しながら記録媒体に記録を行う記録装置の温度検出方法であって、
前記記録ヘッドの駆動周波数より定められる前記記録ヘッドの1記録周期を、前記分割駆動に必要な活性区間と前記温度センサからアナログ出力された温度データ信号をA/DコンバータによるA/D変換に必要な非活性区間とに分割する分割工程と、
前記活性区間に前記記録ヘッドに対して前記記録ヘッドの駆動に必要な信号を転送する転送工程と、
前記非活性区間に前記記録ヘッドから出力された温度データ信号を前記A/DコンバータによりA/D変換されたデジタル信号を読込む読み込み工程とを有することを特徴とする温度検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−144039(P2012−144039A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256416(P2011−256416)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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