説明

記録装置及びその記録方法

【課題】
大規模な構成の追加を伴わずに、ブロンズ現象を低減させるようにした技術を提供する。
【解決手段】
記録装置は、複数種類の液滴を記録媒体上に吐出して記録を行なう記録ヘッドを有し、当該記録ヘッドを用いてマルチパス記録を行なう。記録装置は、マルチパス記録の各走査毎に、複数種類の液滴に対応した吐出データをそれぞれ生成する画像処理手段と、当該生成した吐出データに基づいて、記録ヘッドの各走査毎に異なる種類の液滴を記録ヘッドから吐出させる吐出制御手段とを具備する。このとき、画像処理手段は、記録媒体上の所定領域の記録に用いる複数種類の液滴の中から、記録媒体上の最表面を構成する第1の層の形成に用いる液滴と、第1の層に接し且つ第1の層との光学特性の差が所定の基準以上異なる第2の層の形成に用いる液滴とを少なくとも決定し、当該決定に基づいて吐出データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及びその記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顔料インクは、製造技術の進歩により、顔料インク本来の長期保存性能と、染料インクに匹敵する高発色性の両立が可能になっっている。そのため、記録した画像を長期に亘って保存する要求の高い、写真やポスターなどを中心に、顔料インクを用いた記録が行なわれている。
【0003】
しかし、上述した用途の場合に顔料を用いると、画像の光沢性が不均一になり易い光沢ムラや、顔料シアンインクに代表されるブロンズ現象などが生じる場合があり、従来、懸念されてきた銀塩写真には無い画像品位の問題が出てくる。また、ポスターなどの展示用途が増すにつれ、オフセット印刷物と比較した場合の画像の強度や長期保存性などを示す画像の堅牢性の弱さも、新たな問題として挙げられている。
【0004】
ここで、ブロンズ現象とは、照明光が顔料画像表面で正反射(鏡面反射)する際、照明光の色と異なった色を反射する現象であり、特に、シアンインクで顕著に現れることが知られている。
【0005】
このような光沢ムラ、ブロンズ現象及び堅牢性の問題を解決するため、特許文献1には、記録された画像を転写フィルムによる透明樹脂層で覆う転写ラミネートフィルム方式を用いた技術が提案されている。また、特許文献2では、樹脂などを含有する透明な処理液で完全又は部分的に画像の表面を覆う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−153677号公報
【特許文献2】特開2004−1446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
顔料インクを用いて記録された記録媒体上の画像の最表面を透明層で覆う手法は、光沢ムラ、ブロンズ現象及び堅牢性の問題を解決するには極めて効果的である。
【0008】
しかし、特許文献1で提案される手法では、作業工程が複雑であり、且つ記録装置の他にラミネート装置も必要になり、作業スペースや装置が大掛かりなものになってしまう。
【0009】
また、特許文献2で提案される手法では、薄い透明層により光沢ムラや堅牢性がほぼ解決されるが、画像の色によってブロンズ現象の低減される画像が限定されるため、全体的に画像品位が低下してしまう。
【0010】
そこで、本発明は、大規模な構成の追加を伴わずに、ブロンズ現象を低減させるようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、複数種類の液滴を記録媒体上に吐出して記録を行なう記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを用いてマルチパス記録を行なう記録装置であって、前記マルチパス記録の各走査毎に、前記複数種類の液滴に対応した吐出データをそれぞれ生成する画像処理手段と、前記画像処理手段により生成された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドの各走査毎に異なる種類の液滴を前記記録ヘッドから吐出させる吐出制御手段とを具備し、前記画像処理手段は、前記記録媒体上の所定領域の記録に用いる前記複数種類の液滴の中から、前記記録媒体上の最表面を構成する第1の層の形成に用いる液滴と、該第1の層に接し且つ該第1の層との光学特性の差が所定の基準以上異なる第2の層の形成に用いる液滴とを少なくとも決定し、該決定に基づいて前記吐出データを生成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大規模な構成の追加を伴わずに、ブロンズ現象を低減させられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる記録装置30の構成の一例を示す斜視図。
【図2】記録ヘッド22の構成の一例を示す図。
【図3】ブロンズ現象を低減する手法について説明ための図。
【図4】ブロンズ現象を低減する手法について説明ための図。
【図5】ブロンズ現象を低減する手法について説明ための図。
【図6】ブロンズ現象を低減する手法について説明ための図。
【図7】ブロンズ現象を低減する手法について説明ための図。
【図8】図1に示す記録装置30における制御系の構成の一例を示す図
【図9】吐出データの生成方法の流れの一例を示すフローチャート。
【図10】マスク処理を説明するための図。
【図11】マスク処理を説明するための図。
【図12】マスク処理を説明するための図。
【図13】記録処理の一例を示す図。
【図14】マスク処理を説明するための図。
【図15】記録ヘッド22の構成の一例を示す図。
【図16】吐出データの生成方法の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明においては、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げて説明する。記録装置は、例えば、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであっても良いし、また、例えば、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであっても良い。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であっても良い。
【0015】
なお、以下の説明において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。更に人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物等を形成する、又は媒体の加工を行なう場合も表す。
【0016】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
【0017】
更に、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表す。
【0018】
また、「画像を向上させる特性を有するインク」とは、画像の堅牢性や品位といった画像性能を向上させたインクを指す。また、「処理液」とは、インクと接触させることによって、画像の堅牢性や品位といった画像性能を向上させる液体(画像性能向上液)を指す。
【0019】
ここで、「画像の堅牢性を向上させる」とは、耐擦過性、耐候性、耐水性及び耐アルカリ性の少なくとも1つを向上させて、インク画像の堅牢性を向上させることを指す。一方、「画像の品位を向上させる」とは、光沢性、ヘイズ性及びブロンズ性の少なくとも1つを向上させて、インク画像の品位を向上させる意である。
【0020】
ここで、「耐擦過性」は、JIS K 5600−5−5に定められた方法に準じて測定される最小負荷値により評価されるものである。そして、「耐擦過性を向上させる」とは、「最小負荷値の値を高くする」ことを意味する。
【0021】
また、「耐候性」は、JIS K 5600−7に定められた方法に準じて測定される変化の程度(等級)により評価されるものである。例えば、色の変化の程度の評価には、色差等を用いる。そして、「耐候性を向上させる」とは、「変化の程度(等級)の値を低くする」ことを意味する。
【0022】
また、「耐水性」、「耐アルカリ性」は、JIS K 5600−6−1に定められた方法に準じて測定される損傷の兆候の観察により評価されるものである。そして、「耐水性を向上させる」とは、「損傷の兆候を小さくする」ことを意味する。
【0023】
また、「光沢性」は、JIS K 5600−4−7に定められた方法に準じて測定される光沢度により評価されるものである。そして、「光沢性を向上させる」とは、「光沢度の値を高くする」ことを意味する。
【0024】
また、「ヘイズ性」は、JIS K 7374に定められた方法に準じて測定されるヘイズ値により評価されるものである。そして、「ヘイズ性を向上させる」とは、「ヘイズ値の値を低くする」ことを意味する。
【0025】
また、「ブロンズ性」は、JIS K 0115に定められた方法に準じて測定される色度により評価されるものである。そして、「ブロンズ性を向上させる」とは、「色度の値を無彩色化する」ことを意味する。
【0026】
(実施形態1)
[全体構成]
以下、実施形態1について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係わるインクジェット記録装置(以下、記録装置と呼ぶ)30の構成の一例を示す斜視図である。
【0027】
記録ヘッド22は、複数種類の液滴(ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び処理液(H))をそれぞれ吐出する5つの記録ヘッド22K、22C、22M・・・22Hから構成される。これらの記録ヘッド22に設けられる吐出口から記録媒体1に対して液滴(インクや処理液)が吐出されることで記録が行なわれる。
【0028】
タンク21は、記録ヘッド22K、22C、22M・・・22Hの夫々にインクや処理液を供給する。タンク21は、各色に対応したインク及び処理液を貯蔵する7つのタンク21K、21C、21M・・・21Hから構成される。これら記録ヘッド22及びタンク21は、主走査方向(矢印X方向)に移動可能に構成される。なお、本実施形態においては、各色に対応したインクのタンク21には、顔料インクが貯蔵されている。処理液は、この顔料インクを用いて記録媒体上に形成された顔料インク層(以下、インク層と呼ぶ)の最表面に透明層を形成するために用いられる。この処理液による透明層がインク層の最表面に形成されることにより、画像堅牢性のうち、耐擦過性を向上させることができる。
【0029】
キャップ20は、5つの記録ヘッド夫々の吐出面をキャップするために、5つのキャップ20K、20C、20M・・・20Hから構成される。記録ヘッド22及びタンク21は、記録を行なわないときにはキャップ20が配されたホームポジションに戻って待機する。そして、記録ヘッド22のホームポジションでの待機が一定時間に達した場合には、記録ヘッド22の吐出面(吐出口の形成面)が乾燥するのを防止するために、記録ヘッド22がキャップされる。
【0030】
なお、これらの記録ヘッドやタンクを個別的に言及する場合には、夫々に付された参照番号を用いるが、包括的に言及する場合には総称的な参照番号として、記録ヘッドには「22」、タンクには「21」、キャップには「20」を用いる。また、ここで用いる記録ヘッド及びタンクは、一体的に構成されても良いし、夫々が分離可能に構成されても良い。
【0031】
ここで、図2は、記録ヘッド22を吐出口側から見た図である。この記録ヘッド22K、22C、22M・・・22Hには、主走査方向と直交する方向(副走査方向:矢印Y方向)に沿って1200dpiの密度で1280個の吐出口が配列されており、各色の吐出口列が形成されている。記録ヘッド22Hは、記録ヘッド22K、22C、22M・・・22Hに対して副走査方向(矢印Y方向)に沿って記録媒体の搬送方向の下流側にずれて配置されており、640個の吐出口が配列されている。各吐出口23から1度に吐出されるインクの吐出量は、例えば、約4.5ngである。
【0032】
[ブロンズ現象の低減手法]
ここで、図3を用いて、ブロンズ現象を低減する手法について説明する。
【0033】
図3は、インク層が形成された記録媒体の断面の一例を示す図である。なお、インク層は、記録媒体に対して顔料インクが吐出され、当該顔料インクが記録媒体の表面に付着することにより形成される。
【0034】
符号61は記録媒体を示し、符号62はインク層を示す。符号64は光の入る方向(入射方向)を示し、符号65は光が反射して出て行く方向(出射方向)を示す。以下、符号64を入射光、符号65を反射光と呼ぶ。
【0035】
ここで、ブロンズ現象とは、入射光が正反射した場合に光の色とは異なる色味に色付く現象のことである。正反射では反射の法則により、光の入射角及び反射角は、インク層62の表面に対して同じ角度となる(θi=θr)。
【0036】
ブロンズを測定する場合、まず、符号64に示す入射方向側において、白色の光源によって所定の角度からインク層62の表面を照射し、正反射した反射光65を受光器によって検出する。そして、当該検出されたCIE XYZ表色系における三刺激値XxYxZxを変換し、当該変換されたCIE L*a*b*表色系のL*a*b*より得られる色相や彩度C*などをブロンズの大きさを示す値として取得すれば良い。ブロンズは、映り込んだ照明の像の明るさではなく、その色味(色味を示す値)に関係するため、本実施形態においては、明るさを示す値であるL*の値は評価に用いない。
【0037】
なお、光源としては、例えば、ハロゲン電球、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、重水素ランプ、LED(Light Emitting Diode)、又はこれらのいずれか複数を組み合わせたものを用いれば良い。また、受光器としては、例えば、単受光面形のフォトダイオード、光電管、光電子増倍管や、多素子受光面形のSiフォトダイオードアレイ、又はCCD等を用いれば良い。光源及び受光器は、それぞれ光学(レンズ等)系を備える構成であっても良い。本実施形態においては、コニカミノルタ製SPECTRORADIOMETER CS−2000Aを用いて色度を測定することによりブロンズを測定する。なお、測定器は、顔料インクのブロンズを測定できれば良く、どのような測定器を用いても良い。
【0038】
また、記録媒体は、乾燥したインクのブロンズの大きさを測定できれば良く、その種類は限定されない。例えば、OHPシートなど任意のシート状の媒体であっても構わない。その他、必ずしも記録装置で記録を行なう必要はなく、シート状の媒体表面にインクの層が形成されていれば良い。
【0039】
ここで、表1は、シアンインクとマゼンタインクとイエローインクとを用いて記録が行なわれた記録媒体上から測定したブロンズに関する測定値を示す。
【0040】
ブロンズの大きさは、彩度(C*)とする。表1の測定結果では、記録媒体に対して、顔料インクを100%Dutyで吐出し、合計8回の走査のマルチパス記録を行なっている。ここで、本実施形態においては、記録媒体上の1/1200インチ四方(以下、1200dpi四方と呼ぶ)の領域に対して、インクドットを1ドット吐出することを100%Dutyとする。なお、表1の測定においては、記録媒体には、キヤノン製フォト光沢紙(商品名「フォト光沢紙[薄口]LFM−GP421R」を使用している。

【0041】
表1に示すように、ブロンズ現象は、光源の白色でもなければ、インク本来の色味でもなく、異なる色味の反射光として人の目に映ることがある。また、その強さは、ブロンズ値(C*)により測定できる。
【0042】
表1を参照すると、シアンインク及びマゼンタインクは、イエローインクに比べ、ブロンズ値が大きい。また、シアンインク及びイエローインクには、インク本来の色味とは異なる色味のブロンズが生じている。この中では、シアンインクは、赤味のブロンズを生じており、更にブロンズ値も大きい。そのため、人の目には最も画像品質が悪く感じられる。
【0043】
図4は、顔料インクにより形成されたインク層の上に、処理液により透明層が形成された記録媒体の断面の一例を示す図である。
【0044】
符号61は記録媒体を示し、符号62はインク層を示し、符号63は透明層を示す。ここで、入射光64は、透明層63の表面で正反射する光(表面反射光)65と透明層63の表面で進行方向の角度を変え透明層63の中を進む光67とに分かれる。また更に、透明層を通過した光67は、インク層62の表面で正反射する光69と、インク層62の表面で進行方向の角度を変えインク層62の中を進む光70とに分かれる。
【0045】
ここで、空気と透明層63、透明層63とインク層62のように、直進する光が異なる媒質の境界で進行方向の角度を変える割合(位相速度の比ともいわれる)のことを屈折率という。
【0046】
光が屈折率の異なった媒質に入射すると、その界面では必ず反射という現象が発生する。例えば、空気層(屈折率n0)から屈折率n1の媒質へ入射する時には、以下のような強度の反射が発生する。
R=(n1−n0)^2/(n1+n0)^2・・・・・(式1)
R:反射率
n0:空気層の屈折率
n1:媒質の屈折率
【0047】
これは、フレネル公式の垂直入射の場合の式である。
【0048】
ここで、本実施形態においては、ブロンズ現象を低減させるため、インク層62の表面に透明層63を設け、当該設けた透明層63の表面での反射光65と、透明層63及びインク層62の界面からの反射光66とを干渉させる。
【0049】
表面反射光65の強度は、透明層63の屈折率(n1)に依存し、界面反射光69の強度は、インク層62の屈折率(n)と透明層63の屈折率(n1)との差に依存する。
【0050】
インク層62と透明層63とは、屈折率の差が大きいため、界面に入射した光の大部分は、界面で反射する。そのため、界面反射光69と表面反射光65との干渉が生じ易い。逆に、インク層62と透明層63との屈折率の差が小さい場合には、界面反射光69は減少し、干渉が起き難くなる。従って、上述した手法を用いてブロンズ現象を低減させるためには、透明層63とインク層62との屈折率の差を大きくする必要がある。
【0051】
ここで、屈折率は、例えば、分光エリプソメータなどを用いて測定すれば良い。分光エリプソメータは、試料にレーザー光を照射し、薄膜の表面で反射した光と、膜の裏面で反射した光との干渉によって生じる偏向状態の変化から、膜厚や屈折率を測定する。なお、測定器は、屈折率を測定できるのであれば、どのような測定器を用いても良い。
【0052】
続いて、透明層63及びインク層62から測定した屈折率について説明する。これらの屈折率は、キヤノン製フォト光沢紙(商品名「フォト光沢紙[薄口]LFM−GP1R」に対して顔料インクを100%Dutyで吐出し、それにより得られた画像を上記分光エリプソメータを用いて測定した結果である。
【0053】
透明層63(処理液)の屈折率は、約1.4前後となった。また、インク層62(顔料インク)の屈折率は、約1.3〜1.8となり、波長分散特性のあるものであった。例えば、ブラックインクの屈折率は、約1.5〜1.6となり、マゼンタインクの屈折率は、約1.5〜1.7となり、シアンインクの屈折率は、約1.3〜1.6となり、イエローインクの屈折率は、約1.75〜2.2となった。
【0054】
この結果を踏まえ、以下の説明では、処理液との屈折率の差が大きい顔料インクをマゼンタインク及びイエローインクとし、その差が小さい顔料インクをシアンインク及びブラックインクとして説明する。なお、処理液との屈折率の差が大きいか否かは、例えば、閾値(所定の基準)を設けて分類すれば良い。例えば、上述した測定値に基づいて、ブラックインクの屈折率を1.6(最大値)とし、マゼンタインクの屈折率を1.7(最大値)とし、シアンインクの屈折率を1.6(最大値)とし、イエローインクの屈折率を2.2(最大値)とする。この場合、処理液との屈折率(1.4)に対して所定の基準(0.3)以上の値となっていれば、処理液との屈折率の差が大きいというルールを決めれば、上述したような分類分けが行なえる。
【0055】
次に、屈折率の差によって生じる反射光の干渉について説明する。まず、(薄膜における)反射光の干渉とは、透明層63の表面で反射された光と、層の表面を通過して層の裏側で反射された光とが干渉し合って、強め合ったり打ち消し合ったりし、干渉色が発現する現象のことである。
【0056】
処理液により形成された透明層63の厚さは、一般に、約100nm〜500nm程度である。このような透明層(透明薄膜層)63は干渉色が発生し易い。透明層63を通過した光67と入射光68との間で光路差が発生し、当該光路差の距離と光の波長との関係により光が強め合ったり、弱め合ったりする。
【0057】
この場合、一般に、以下の式が成り立つ。
m * λ=n1 * 2d * cosθ + λ/2・・・・・(式2)
m:整数
n1:透明層の屈折率
d:透明層の厚さ
θ:入射角
【0058】
この条件を満たす波長λの光が強め合って、強く発色することになる。
【0059】
表2は、干渉色に関する測定値を示す。この測定値の測定に際しては、シアンインク、(処理液の膜厚が略一定になるように)処理液を順番に記録媒体上に付着させた後、当該記録媒体から測定器を用いて測定を行なう。なお、記録媒体としては、キヤノン製フォト光沢紙(商品名「フォト光沢紙[薄口]LFM−GP421R」を使用している。また、干渉色の測定に用いる測定器としては、コニカミノルタ製SPECTRORADIOMETER CS−2000Aを用いている。すなわち、当該測定器を用いて、色度を測定している。なお、測定器は、干渉色を測定できるのであれば、どのような測定器を用いても良い。
【0060】
ここで、シアンインクは、100%Dutyで吐出されており、処理液は、その吐出Dutyが段階的に切り替えられている。

【0061】
表2に示すように、処理液の付着量が少ない場合は干渉色が見られない。式2を満たす波長領域が可視光領域に無いためである。これに対して、処理液の付着量が増加(膜厚が増大)した場合、それに応じて、干渉色となる波長が長くなっている。すなわち、干渉色は、透明層63の膜厚dに応じて色が変化することになる。
【0062】
このような態様でインク層62及び透明層63に入射した光の反射光は、色味を帯びることになる。例えば、画像に映りこんだ蛍光灯の光等は、自然な白色の反射でなく干渉色となる。
【0063】
ここで、本実施形態に係わる手法を用いて、ブロンズ現象を抑制するためには、
a)透明層63の膜厚dをばらつかせる点
b)透明層63とインク層62との界面で強く反射させ、薄膜干渉を起こす点、
が重要であるといえる。
【0064】
上記a)に示す透明層63の膜厚dにばらつきについて説明する。なお、透明層63の膜厚dのばらつきは、例えば、透明層63の表面を凹凸形状にすることで実現しても良いし、また、透明層63とインク層62との界面、つまり、インク層62の表面を凹凸形状にすることで実現しても良い。
【0065】
図5は、インク層の表面がどの程度の表面粗さ(Ra)になると、干渉色がばらつき、色を相殺するのかをシミュレーションした結果を示している。すなわち、インク層の表面の表面粗さを振ったときに、干渉色の強さ(C*)がどのように変化するかがグラフ化されている。
【0066】
ここで、干渉色の強さの数値が小さいほど、干渉色は、画像全体として無彩色化する。一般に、約5以下になれば、視覚的に問題無しとされる。透明層63の膜厚が300、700、1500μmの場合、表面粗さ(Ra)が約80nm以上になれば、干渉色の強さが約5以下となることが分かる。図5に示すシミュレーション結果によれば、ブラックインクの表面粗さ(Ra)を、例えば、90nmにすれば、干渉色の強さが約5以下となる。より具体的には、ブラックインクの表面粗さ(Ra)は、単色記録で表面粗さ(Ra)が約80nm以上で且つ100nm前後の範囲になるようにすれば良い。
【0067】
なお、表面粗さ(Ra)とは、中心線平均粗さと呼ばれ、図6に示すように、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線とによって得られた面積を長さLで割った値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。本実施形態においては、表面粗さの測定には、株式会社キーエンス製のNANOSCALE HYBRID MICROSCOPEを使用している。なお、測定器は、インク層の表面粗さを測定できるのであれば、どのような測定器を用いても良い。
【0068】
透明層63やインク層62の表面の粗さを粗くする方法は、種々考えられるが、どのような手法を用いても良い。例えば、顔料インクの種類や処方、顔料インクの記録条件、処理液の記録条件などを変更等すれば良い。
【0069】
また、上記b)に示す薄膜干渉は、透明層63と、当該透明層63に接するインク層62との屈折率の差を大きくすれば生じる。ここで、この屈折率の差の違いにより、各色の顔料インクを記録媒体上に付着させる順番を最適化した場合の有効性について説明する。ここでは、顔料インクのうち、透明層との屈折率の差が大きかったマゼンタインクと、その差が小さかったシアンインクとを例に挙げて説明する。
【0070】
図7(a)は、マゼンタインクにより形成されたインク層62上に透明層63が設けられており、図7(b)は、シアンインクにより形成されたインク層62上に透明層63が設けられている。
【0071】
ここで、図7(a)では、透明層63に対して屈折率の差が大きいインク層(マゼンタインク)が透明層63の直下に配されている。この場合、入射光64は、透明層63の表面で反射する光65と透明層63の内部に進む光67に分かれる。光67は、透明層63の屈折率n1とインク層(マゼンタインク)62の屈折率nMとの差が大きいため、その大部分が界面での反射光69となる。このような積層構造によれば、界面から強い反射光が得られるので、透明層63の表面では、光65と光66とが干渉し、透明層63の膜厚dに応じたいろいろな波長の干渉色が生じる。その結果、インク層(マゼンタインク)62のブロンズ色を相殺することができるため、人の目には白く映り、画像品位が良く感じられる。
【0072】
一方、図7(b)では、透明層63に対して屈折率の差が小さいインク層(シアンインク)が透明層63の直下に配されている。この場合、入射光64は、透明層63の表面で反射する光65と透明層63の内部に進む光67とに分かれる。光67は、透明層63の屈折率n1とインク層(シアンインク)62の屈折率nCとの差が小さいため、更に、顔料インク内部に進む光70に分かれてしまう。そのため、透明層63とインク層62との界面での反射光69は弱まり、透明層63の表面においては、光65と光66との干渉が生じ難くなる。すなわち、透明層63とインク層62との屈折率の差が小さい場合、入射光64は、透明層63とインク層62との界面で反射する光が弱くなり、インク層62の内部に進んでしまう。その結果、透明層表面で干渉が起こり難く、顔料インク(シアンインク)のブロンズが目に映ってしまい、人の目には画像品位が悪く感じられる。
【0073】
以上のように本実施形態においては、透明層63とインク層62との屈折率の差による干渉の起こり易さに着目し、顔料インクにより記録された画像のブロンズ色を低減させる。すなわち、透明層63とインク層62との屈折率の差が大きいと、干渉が起こり易くなるので、透明層63と屈折率の差が大きくなるようなインク層が透明層63と接するように顔料インクを記録媒体上へ付着させる。
【0074】
(記録装置の構成例)
図8は、図1に示す記録装置30における制御系の構成の一例を示す図である。
【0075】
記録装置30の説明に先立って、まず、ホストコンピュータ40について説明する。
【0076】
ホストコンピュータ40は、記録装置30に画像を供給する画像供給手段として機能する。より具体的には、ハードディスク等の記憶媒体に記憶されているRGB形式の多値画像データを記録装置30に供給する。なお、記録装置30においては、ホストコンピュータ40の他、スキャナやデジタルカメラ等の画像入力機器から多値画像データを入力しても良い。
【0077】
ここで、記録装置30には、制御系の構成として、プリントバッファ301と、マスクバッファ302と、MPU303と、ROM304と、RAM305と、ASIC306と、画像処理部307とが設けられる。また更に、記録装置30には、制御系の構成として、キャリッジ駆動制御部308、搬送制御部309、記録ヘッド制御部310も設けられる。
【0078】
画像処理部307は、ホストコンピュータ40から入力された多値画像データに対して画像処理を実施し、当該多値画像データを2値画像データに変換する。これにより、複数種類の顔料インクを記録ヘッドから吐出するための2値画像データ(インク用の吐出データ)が生成される。また、画像処理部307は、処理液を吐出するための2値画像データ(処理液用吐出データ)の生成も行なう。
【0079】
記録ヘッド制御部310は、記録ヘッド22(の吐出口)からのインクや処理液の吐出制御を行なう。より具体的には、記録ヘッド制御部310は、画像処理部307により生成された少なくとも2種類以上の顔料インクの2値画像データに基づいて、記録ヘッド22の走査毎に異なる種類の顔料インク(液滴)を記録ヘッド22から吐出させる。
【0080】
ROM304は、例えば、プログラム等を格納する。RAM305は、MPU303の作業領域や一時データ格納領域として利用される。MPU(Micro Processeor Unit)302は、ROM304等に格納されたプログラムに従って、記録装置30における処理を統括制御する。
【0081】
また、MPU303は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)306を介して、キャリッジ駆動制御部308、記録媒体の搬送制御部309、記録ヘッド制御部310等の制御も行なう。なお、MPU303は、ASIC306を介してプリントバッファ301への読み書きが可能に構成されている。
【0082】
プリントバッファ301は、記録ヘッド22へ転送可能な形式に変換された画像データを一時的に格納する。マスクバッファ302は、記録ヘッド22に転送する際にプリントバッファ301から転送されるデータに応じてAND処理する所定のマスクパターンを一時的に格納する。
【0083】
[画像処理]
次に、図9を用いて、処理液及び顔料インクの吐出データ(2値画像データ)の生成方法について説明する。
【0084】
この処理は、記録装置30において、ホストコンピュータ40からRGB形式の多値画像データが入力されると開始する。この処理が開始すると、記録装置30は、画像処理部307において、RGB形式の多値画像データを色変換し、複数種類のインク(K、C、M、Y)夫々に対応した多値画像データを生成する(S101)。
【0085】
続いて、記録装置30は、画像処理部307において、2値化処理を実施し、各種インクに対応した多値画像データを2値の画像データに展開する。これにより、複数種類の顔料インクに対応した2値画像データが生成される(S102)。
【0086】
また、記録装置30は、画像処理部307において、当該生成した複数種類の顔料インク(K、C、M、Y)の2値画像データをAND処理(論理積演算)する。これにより、処理液用の2値画像データを生成する(S103)。なお、処理液用の2値画像データの生成方法は、このような手法に限られず、例えば、記録媒体全域が均一に覆われるパターンになるように生成しても良い。本実施形態においては、顔料インクのドットの有無に関わらず、処理液は、約100%Dutyとなるような処理液用パターンを用いる。
【0087】
記録装置30は、画像処理部307において、顔料インクの2値画像データに基づき、所定領域の記録に用いられる複数種類の顔料インクのうち、処理液との屈折率の差が大きい(所定の基準以上異なる)顔料インクを判定する(S104)。なお、処理液及び顔料インクの屈折率の値は、例えば、ROM304に予め記憶しておけば良い。
【0088】
判定の結果、記録装置30は、画像処理部307において、処理液との屈折率の差が大きいと判定した顔料インクに対して、後半マスクパターンを用いるように設定する(S104、S105)。また、差が小さいと判定した残りの顔料インクに対して、前半マスクパターンを用いるように設定する(S104、S106)。
【0089】
その後、記録装置30は、画像処理部307において、複数種類の顔料インクの2値画像データに対して、当該データを複数回の走査に分配するためのマスクパターン処理を実施する。これにより、記録ヘッド22へ転送可能な形式の吐出データが生成される(S107)。
【0090】
ここで、上述した処理の具体例を挙げると、例えば、S102において2値化処理された所定領域の画像が、処理液との屈折率の差が大きいマゼンタインクと、その差が小さいシアンインクとで構成されていたとする。この場合、S105において、マゼンタインクに対して後半マスクパターンが設定され、S107において、吐出データが生成される。一方、S106において、シアンインクに対して前半マスクパターンが設定され、S107において、吐出データが生成される。このように生成された吐出データに基づき、記録装置30の記録ヘッド22から後述するマルチパス記録方式で顔料インクの吐出が行なわれ、記録媒体上に画像が記録される。
【0091】
[記録動作]
次に、図1に示す記録装置30における記録動作について説明する。ここでは、合計8回の走査によって、所定領域毎に画像を記録するマルチパス記録方式により記録を行なう場合について説明する。すなわち、本実施形態においては、記録媒体上の所定領域に対して記録ヘッド22を複数回走査(8回走査)させることにより当該領域に対する記録を完成させる。
【0092】
ここで、記録ヘッドの8回の走査のうち、前半4回の走査では、顔料インクにより記録媒体上にインク層が形成され、その後、後半4回の走査では、当該インク層62を覆うように処理液による透明層63が記録媒体上に形成される。なお、処理液の記録方式は、1回の走査でも良く、走査回数や記録媒体への付着方法は、特に、ここに示す方法に限定されない。
【0093】
顔料インクを用いた合計8回の記録走査においては、従来であれば、図10に示すように、各走査で均等にインクを分配するマスクパターンが用いられ、吐出口列全域に渡ってインクが分配されていた。
【0094】
これに対して、本実施形態においては、所定領域の記録に用いられる複数種類の顔料インクの中から、処理液との屈折率の差が大きくなる層を形成可能な顔料インク(の2値画像データ)を決定する。そして、当該顔料インクの2値画像データに対して後半マスクパターンを設定して吐出データを生成する。
【0095】
ここで、図11は、後半マスクパターンの一例を示す。なお、後半マスクパターンにより生成された吐出データに基づくインクの吐出は、B1、B2、B3、・・・B8の順に行なわれる。
【0096】
後半マスクパターンは、合計8回の走査のうち最初の4回の走査ではインクが吐出されないように構成される。言い換えれば、後半マスクパターンは、最後の走査を含む後半の4回の走査だけで全ての画素にインクを吐出するように構成されている。
【0097】
一方、屈折率の差が小さいと判定された顔料インクの2値画像データに対しては、上述した通り、前半マスクパターンを設定して吐出データを生成する。
【0098】
図12は、前半マスクパターンの一例を示す。なお、前半マスクパターンにより生成された吐出データに基づくインクの吐出は、B1、B2、B3、・・・B8の順に行なわれる。
【0099】
前半マスクパターンは、合計8回の走査のうち最初の4回の走査でのみインクを吐出するように構成される。言い換えれば、前半マスクパターンは、最初の走査を含む前半の4回の走査のみで全ての画素にインクを吐出するように構成されている。
【0100】
また、処理液を用いた合計4回の走査では、不図示ではあるが、25%Dutyで均等に処理液を分配するマスクパターンが用いられる。処理液に用いるマスクパターンは、これに限られず、全ての走査回数で合計100%のDutyになれば良く、その配分は変更しても良い。
【0101】
ここで、図13を用いて、所定領域に対して、後半マスクパターンで吐出データが生成されたマゼンタインクと、前半マスクパターンで吐出データが生成されたシアンインクとを用いて記録を行なう際の処理の概要について説明する。
【0102】
シアン(C)インク吐出用の記録ヘッド22C、及びマゼンタ(M)インク吐出用の記録ヘッド22Mは、1280個の吐出口が160個ずつの8つのブロックB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8に8等分される。
【0103】
記録ヘッド22Cは、ブロックB1〜B4の範囲α(図2参照)における640個の吐出口が用いられる。以下においては、それらのブロックB1〜B4の吐出口をA、B、C、D領域の吐出口と呼ぶ場合もある。
【0104】
記録ヘッド22Mは、ブロックB5〜B8の範囲β(図2参照)における640個の吐出口が用いられる。以下においては、それらのブロックB5〜B8の吐出口をe、f、g、h領域の吐出口と呼ぶ場合もある。
【0105】
処理液用の記録ヘッド22Hは、640個の吐出口が160個ずつ4つのブロックB9、B10、B11、B12に4等分される。記録ヘッド22Hは、ブロックB9〜B12の範囲γ(図2参照)における640個の吐出口が用いられる。なお、符号50−1、50−2、50−3・・・は、記録ヘッド22の1つのブロックに相当する記録媒体上の記録領域である。
【0106】
まず、第1走査において、記録領域50−1の第1走査時の吐出データに基づいて、記録ヘッド22CのA領域の吐出口からインクが吐出される。次に、記録ヘッドの160個の吐出口の長さ分だけ記録媒体が副走査方向(矢印Y方向)に搬送される。図13においては、記録ヘッドが副走査方向と逆の方向(矢印X方向)に相対移動するものとして表わされている。
【0107】
第2走査においては、記録領域50−1の第2走査時の吐出データに基づいて、記録ヘッド22CのB領域の吐出口からインクが吐出される。第2走査時には、記録領域50−2に対する第1走査が行なわれる。
【0108】
上記同様にして、第3走査、第4走査が行なわれる。このような第1から第4走査によって、シアン(C)インクによる記録領域50−1への画像の記録が終了する。
【0109】
次に、記録ヘッドの160個の吐出口の長さ分だけ記録媒体が副走査方向に搬送される。その後の第5走査においては、記録領域50−1の第5走査時の吐出データに基づいて、記録ヘッド22Mのe領域の吐出口からインクが吐出される。第5走査時には、記録領域50−2に対する第4走査と・・・記録領域50−5に対する第1走査とが行なわれる。
【0110】
次に、記録ヘッドの160個の吐出口の長さ分だけ記録媒体が副走査方向に搬送される。その後の第6走査においては、記録領域50−1の第6走査時の吐出データに基づいて、記録ヘッド22Mのf領域の吐出口からインクが吐出される。第6走査時には、記録領域50−2に対する第5走査と・・・記録領域50−6に対する第1走査とが行なわれる。
【0111】
上記同様にして、第7走査、第8走査が行なわれる。このような第5から第8走査によって、マゼンタ(M)インクによる記録領域50−1への画像の記録が終了する。
【0112】
次に、記録ヘッドの160個の吐出口の長さ分だけ記録媒体が副走査方向に搬送される。その後の第9走査においては、記録領域50−1の第9走査時の吐出データに基づいて、記録ヘッド22Hの吐出口から処理液が吐出される。第9走査時には、記録領域50−2に対する第8走査と・・・記録領域50−9に対する第1走査とが行なわれる。
【0113】
次に、記録ヘッドの160個の吐出口の長さ分だけ記録媒体が副走査方向に搬送される。その後の第10走査においては、記録領域50−1の第9走査時の吐出データに基づいて、記録ヘッド22Hの吐出口から処理液が吐出される。第10走査時には、記録領域50−2に対する第9走査と・・・記録領域50−10に対する第1走査とが行なわれる。
【0114】
上記同様にして、第11走査、第12走査が行なわれる。このような第9から第12走査によって、処理液(H)インクによる記録領域50−1の画像の被覆が終了する。以降、同様の走査を繰り返すことにより、記録領域50−2、50−3・・・に対する顔料インクによる画像の記録と処理液による画像の被覆とが順次終了することになる。
【0115】
以上説明したように本実施形態によれば、透明層との光学特性(実施形態1においては、屈折率)の差が大きいインク層は、透明層と接するように複数回の走査のうち後半の走査で形成する。また、その差が小さいインク層は、透明層と接しないように複数回の走査のうち前半の走査で形成する。
【0116】
これにより、透明層(第1の層)と、当該透明層に接するインク層(第2の層)との界面での反射光が強まり、透明層表面で干渉を起こすことができるため、顔料インクによるブロンズ色を低減させることができる。また、大規模な構成(例えば、ラミネート装置)の追加等も伴わない。
【0117】
なお、上述した説明では、マゼンタインクのインク層は、最後の走査を含む4回の走査で形成され、シアンインクのインク層は、最初の走査を含む4回の走査で形成されていたが、これに限られない。具体的には、顔料インクによる走査回数に制限はない。また、いずれかの顔料インクを少ない走査回数で吐出させるなど、各顔料インクを吐出する走査回数が偏っても良い。
【0118】
また、上述した説明では、透明層との屈折率の差が小さいシアンインクの吐出データの生成には、前半マスクパターンを用いる場合について説明したが、これに限られない。具体的には、本実施形態によれば、透明層との屈折率の差が大きい顔料インクにより形成されるインク層が透明層と接する割合が高くなれば良い。そのため、例えば、このような差が小さい顔料インクに対しては、従来用いられる図10に示すような均等の割合のマクスパターンなどを用いても良い。また、例えば、このような差が大きい顔料インクに対しては、図14に示すマスクパターン(全走査のうち、後半の走査でインクが吐出される割合が高い)を用いても良い。
【0119】
また、上述した説明では、マスクパターンを用いて吐出データを生成する場合について説明したが、これに限られない。すなわち、透明層との屈折率の差が大きいインク層が透明層と接するように顔料インクの吐出データを生成できれば良く、どのような構成を用いても良い。
【0120】
また、上述した説明では、透明層との屈折率の差に基づいて、記録媒体上へのインクの付着順序を決めていたが、例えば、付着量、付着量の総和、画像の濃度、画像の階調なども考慮して当該付着順序を決めるようにしても良い。また、複数回の走査のうち後半の走査時にインクを付着させる割合や走査回数なども、上記条件などにより異ならせても良い。
【0121】
また、上述した説明では、処理液との屈折率の差が大きい顔料インクGr(マゼンタインク、イエローインク)と、その差が小さい顔料インクGr(シアンインク、ブラックインク)とに分類して説明したが、例えば、分類する数は、これに限られない。分類数を増やした場合であっても、複数の基準や複数のマスクパターンなどを用意すれば、上述した説明と同様の制御が行なえる。
【0122】
また、上述した説明では、処理液により形成された層(透明層)により顔料インクによる画像性能(前述の実施例では耐擦過性)を向上させる場合について説明したが、これに限られない。例えば、淡色の顔料インク(例えば、ライトシアンインクやライトマゼンタインク、ライトグレーインク)の一部又は全てに耐擦過性などの機能を向上させる材料(例えば、透明樹脂材料)を追加し、当該インクにより最表層を形成するようにしても良い。この場合、(インク)タンクや記録ヘッドなどに追加の部品を搭載する必要がなくなるので、記録ヘッド等の小型化や低コスト化を図れる。なお、濃色の顔料インク(例えば、シアンインク、ブラックインク、マゼンタインク)の一部又は全てが処理液を兼ねても良い。
【0123】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2では、処理液により透明層(最表層)を形成するのではなく、淡色の顔料インクにより形成される層に耐擦過性を向上させる機能を持たせ、淡色の顔料インクを最表層になるようにする場合について説明する。
【0124】
また、実施形態1では、最表層とそれに接するインク層との屈折率の差に基づいて当該インク層の形成に用いるインクを決定していた。これに対して、実施形態2においては、測定方法が容易であり、屈折率とも非常に相関のある反射光の色味の差を用いてこの決定を行なう。すなわち、最表層の淡色のインク層に対して反射光の色味の差が大きくなる顔料インクを判定し、当該顔料インクが最表層の淡色のインク層と接するように記録媒体へのインクの付着順序を制御する。なお、実施形態2においては、実施形態1との相違点を重点的に説明し、実施形態1と同様の部分については説明を省略する場合もある。
【0125】
[全体構成]
実施形態2に係わる記録装置30の全体の構成は、実施形態1を説明した図1の構成から処理液用の記録ヘッド22Hが省かれる。
【0126】
実施形態2に係わる記録ヘッド22には、図15に示すように、記録ヘッド22K、22C、22M、22Y、22LC、22LMが設けられる。記録ヘッド22K、22C、22M、22Yには、副走査方向(矢印Y方向)に沿って1200dpiの密度で1280個の吐出口が配列されており、各色の吐出口列が形成されている。また、記録ヘッド22LC、22LMは、記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに対して副走査方向(矢印Y方向)に沿って記録媒体の搬送方向の下流側にずれて、1280個の吐出口が配列されている。
【0127】
[ブロンズ現象の低減手法]
実施形態2では、淡色の顔料インクを画像の最表層となるように形成する。表3は、ライトシアンインクとライトマゼンタインクとを記録媒体上に付着させた場合のブロンズに関する測定値である。

【0128】
表3に示すように、淡色の顔料インクは、濃色の顔料インクに比べ、ブロンズ値が小さい。これは、実施形態2に係わる淡色の顔料インクには、耐擦過性を向上させる機能を持つ透明樹脂材料が含有されているためである。樹脂は、顔料(色材)と比較すると、正反射光が光源色に近い色に反射される。つまり、分光強度の波長依存性が小さいため、樹脂が多く含有している淡色の顔料インクの方が、よりブロンズ値が小さいと考えられる。
【0129】
このことから、ブロンズ値の小さい淡色の顔料インクにより形成されたインク層を用いて、濃色の顔料インクにより形成されたインク層を覆うように記録媒体上に画像を記録することによって、画像のブロンズを抑える効果が得られる。
【0130】
また、実施形態2においては、上述した通り、最表層に対する反射光の色味の差に基づいて、記録媒体上への顔料インクの付着順序を制御する。ここで、単色の顔料インクによりインク層が形成された記録媒体上の画像に対して、白色の光源を所定の角度で当該インク層に入射すると、屈折率に応じて、顔料インク毎に違った色味を帯びた反射光が得られる。そして、単色の顔料インクを2種類選んだ場合、それらの正反射光の色差(ΔE)が大きいと、屈折率の差も大きく干渉が起き易い。一方、それらの正反射光の色差が小さいと、屈折率の差も小さく干渉が起き難い。本実施形態においては、コニカミノルタ製SPECTRORADIOMETER CS−2000Aを用いて色度を測定する。なお、測定器は、正反射光の色を測定できるのであれば、どのような測定器を用いても良い。
【0131】
表4は、ライトシアンインクと濃色の各色インクとの色差(ΔE)、ライトマゼンタインクと濃色の各色インクとの色差(ΔE)を測定した結果を示す。また、表4には、ライトシアンインク及びライトマゼンタインクを最表層として、濃色の各色インクが接した場合における干渉の度合いも示される。
【0132】
ここで、正反射光の色差の値は、記録動作が合計8回の走査のマルチパス記録によって顔料インクが100%Dutyで吐出された画像から得られた値である。また、干渉の度合いの(目視)評価は、記録媒体に対して、濃色の顔料インクを100%Dutyで吐出した後、淡色の顔料インクを100%Dutyで吐出することにより記録された画像に基づいてなされている。なお、この場合、記録媒体は、キヤノン製フォト光沢紙(商品名「フォト光沢紙[薄口]LFM−GP421R」が使用されている。

【0133】
表4に示すように、最表層の淡色のインク層と、それに接するインク層との正反射光の色差が大きいと干渉が起き易く、その差が小さいと干渉が起き難いことが分かる。また、干渉の起こるインクの組み合わせや、干渉の起きないインク組み合わせは、インクの種類によって異なり、且つ正反射光の色差の大きさに依存することが分かる。すなわち、ライトシアンインクが最表層の場合、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクにより形成されたインク層が接すると干渉が起こり易くなる。また、ライトマゼンタインクが最表層の場合、シアンインクにより形成されたインク層が接すると干渉が起こり易くなる。このように顔料インクの記録媒体上への付着順序を最適化することで、顔料インク画像のブロンズ色を低減させることができる。
【0134】
[画像処理]
次に、図16を用いて、実施形態2に係わる吐出データの生成方法について説明する。 この処理は、記録装置30において、ホストコンピュータ40からRGB形式の多値画像データが入力されると開始する。この処理が開始すると、記録装置30は、画像処理部307において、RGB形式の多値画像データを色変換し、複数種類のインク(K、C、M、Y)夫々に対応した多値画像データを生成する(S201)。
【0135】
続いて、記録装置30は、画像処理部307において、2値化処理を実施し、各種インクに対応した多値画像データを2値の画像データに展開する。これにより、複数種類の顔料インクに対応した2値画像データが生成される(S202)。
【0136】
また、記録装置30は、画像処理部307において、顔料インクの2値画像データに基づき、記録媒体上の所定領域の記録に用いられる淡色の顔料インク(LC、LM)のうち、最表層となる顔料インクを判定する(S203)。
【0137】
記録装置30は、画像処理部307において、顔料インクの2値画像データに基づき、記録媒体上の所定領域の記録に用いられる顔料インク(K、C、M、Y)の中からいずれかの顔料インクを判定する。すなわち、記録媒体上の所定領域の記録に用いられる顔料インクのうち、最表層を形成する淡色の顔料インクとの正反射光の色差が大きい(所定の基準以上異なる)顔料インクを判定する。顔料インクの正反射光の値は、例えば、ROM304に予め記憶しておけば良い。
【0138】
判定の結果、記録装置30は、画像処理部307において、最表層との正反射光の色差が大きいと判定された顔料インク対して、後半マスクパターンを用いるように設定される(S204、S205)。また、差が小さいと判定された残りの顔料インクに対して、前半マスクパターンを用いるように設定される(S204、S206)。
【0139】
その後、記録装置30は、画像処理部307において、複数種類の顔料インクの2値画像データに対して、当該データを複数回の走査に分配するためのマスクパターン処理を実施する。これにより、記録ヘッド22へ転送可能な形式の吐出データを生成される(S207)。
【0140】
ここで、上述した処理の具体例を挙げると、例えば、S202において2値化処理された所定領域の画像が、ライトシアンインクと、マゼンタインクと、シアンインクとで構成されていたとする。この場合、S203において、ライトシアンインクが最表層の形成に用いられる顔料インクとして判定される。マゼンタインクは、S204において、ライトシアンインクとの正反射光の色差が大きいと判定され、S205において、後半マスクパターンが設定される。シアンインクは、S204において、ライトシアンインクとの正反射光の色差が小さいと判定され、S206において、前半マスクパターンが設定される。そして、S207において、各インクに対応した吐出データが生成され、当該吐出データに基づき、マルチパス記録方式で記録ヘッド22から顔料インクが吐出され、記録媒体上に画像が記録される。
【0141】
[記録動作]
次に、実施形態2に係わる記録装置30における記録動作について説明する。ここでは、合計16回の走査によって、所定領域毎に画像を記録するマルチパス記録方式により記録を行なう場合について説明する。より具体的には、記録ヘッドの16回の走査のうち、前半8回の走査で(濃色の)顔料インクにより記録媒体上にインク層が形成され、その後、後半8回の走査で当該インク層を覆うように淡色の顔料インクによる最表層が記録媒体上に形成される。なお、走査回数や記録媒体への付着方法は、特に、ここに示す方法に限定されない。
【0142】
ここで、最表層の直下にインク層を形成する合計8回の走査では、最表層との正反射光の色差の大きい顔料インクが用いられる。色差が大きいと決定された顔料インクは後半マスクパターンが設定され、その差が小さいと決定された顔料インクは前半マスクパターンが設定される。
【0143】
以上説明したように実施形態2によれば、最表層と最表層に接するインク層との間の光学特性(実施形態2においては、反射光の色)の差の差に応じて、顔料インクを記録媒体上へ付着させる順番を制御する。正反射光の色差は、屈折率の差と相関があるため、淡色の顔料インクによる最表層(第1の層)とそれに接するインク層(第2の層)との界面での反射光が強まる。そのため、最表層表面での干渉により顔料インクによるブロンズを低減させることができる。
【0144】
なお、実施形態2では、正反射光の色差としてΔEを用いたが、色相差も屈折率の差と相関があるため、例えば、色相差などを用いても良い。
【0145】
また、実施形態2では、最表層を形成するインクを淡色の顔料インク(LC、LM)とし、所定領域の最表層を形成するインクの具体的な例としてライトシアンインクを挙げて説明したが、これに限られない。例えば、ライトシアンインクとマゼンタインクとの両方を用いて最表層を形成しても良い。その場合、例えば、ROM304等に混色したときの正反射光の色を予め記憶させておけば、最表層に接する顔料インクを判定できる。本実施形態で用いた記録ヘッドは、淡色の顔料インクが濃色の顔料インクの上に付着される構成であるため、淡色の顔料インクを合わせて最表層とすることができる。これは、濃色の顔料インクとは異なり、淡色の顔料インクにのみ透明樹脂材料を含有させ、実施形態1を説明した処理液と同様の働きをさせているためである。また、淡色の顔料インクのうち、いずれかのインクに注目し、最表層に接する顔料インクを決定しても、従来の構成よりも画像の最表層での干渉が起り易くなり、その結果、ブロンズを低減できる。
【0146】
また、実施形態2では、最表層を形成するインクとして、顔料インクのうち画像性能(例えば、耐擦過性)を向上させるライトシアンインクやライトマゼンタインクを用いたが、これに限られない。例えば、無色透明に近い処理液を更に追加しても良い。この処理液は、ライトシアンインクやライトマゼンタインクと同時に記録させても良いし、それらを覆うように記録させても良い。その場合、上述した制御を組み合わせることによって、最適な制御を行なうのが好ましい。また、最表層を形成するインクとして淡色の顔料インクではなく、濃色の顔料インクを用いても良い。
【0147】
また、実施形態2では、色味の差を用いて、最表層の直下の形成に用いる顔料インクを決定する場合について説明したが、これに限られない。例えば、反射された光を波長毎に細かく分光して、各波長の反射率を関数として表わした反射スペクトルの差を用いても良い。すなわち、最表層と反射スペクトルの差が大きくなる(所定の基準以上異なる)顔料インクを判定し、その顔料インクが最表層と接するようにその記録媒体上へのインクの付着順序を制御する。なお、具体的な制御方法などは上記説明と同様であるため、その説明については省略する。なお、反射スペクトルの測定には、一般的な分光測色計(例えば、コニカミノルタ製分光測色計CM−2600d)を用いれば良い。
【0148】
以上が本発明の代表的な実施形態の例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0149】
例えば、上述した実施形態1では、顔料インクを吐出する(ノズルを構成する)吐出口と、処理液を吐出するための吐出口とが副走査方向(図1に示す矢印Y方向)にずれてた記録ヘッドを例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、そのようなずれがない記録ヘッドであっても良い。また更に、処理液用のノズルの数が顔料インク用のノズルの数よりも多く、処理液用のノズルの列が顔料インク用のノズルの列よりも長くても良い。このような記録ヘッドの構成は、実施形態2においても同様のことがいえる。
【0150】
また、上述した実施形態1では、最表層に用いるインクを処理液とし、上述した実施形態2では、ライトシアンインクとライトマゼンタインクとしたが、最表層に用いるインクの種類と数は、これに限られない。例えば、濃色のマゼンタインクやシアンインクが最表層であっても良い。その場合、処理液や淡色の顔料インクに含有した透明樹脂材料を、濃色の顔料インクに含有させる。また、記録媒体上の所定領域毎に、最表層のインクの種類が異なっていても良い。
【0151】
また、上述した実施形態1及び2では、最表層に接しない顔料インク層については特に説明していないが、当該層についての形成の順番はどのように制御しても良い。例えば、2層目(最表層に接するインク層)と、3層目(最表層に接しないインク層)との界面での反射についても考慮し、上述した実施形態を応用して各層を形成する顔料インクを決めるようにしても良い。また更に、3層目(最表層に接しないインク層)に分類される層を更に、3層目(最表層に接しないインク層)と4層目(3層目よりも更に最表層から離れているインク層)とに分類しても良い。この場合、3層目と4層目とで更に界面での反射について考慮して積層を行なうか否かの処理の切り替えを行なっても良い。
【0152】
また、上述した実施形態1及び2では、耐擦過性を向上させるため点を重点的に説明したが、勿論、これ以外の性能を向上させても良い。すなわち、光沢性等の画像品位や、耐水性、耐アルカリ性、耐候性等の画像堅牢性など、画像について何らかの性能を向上させる顔料インクや処理液を用いて実施しても良い。例えば、そのようなインク及び処理液には、水溶性樹脂や水分解性樹脂の他、シリコーンオイル等の材料を使用できる。
【0153】
また、上述した実施形態1及び2では、所定領域の画像の記録に用いる複数種類の顔料インク全てを判定し、その中から最表層の直下の層の形成に用いる顔料インクを決定していたが、このような処理に限定されない。例えば、ある特定の数種類の顔料インクの中から最表層の直下の層の形成に用いる顔料インクを決定しても良いし、また、決定したインクが複数種類の顔料インクとなっても良い。
【0154】
また、上述した実施形態2では、最表層に接する顔料インクを、屈折率や正反射光の色や反射スペクトルの値の差に基づいて決定していたが、これに限られない。例えば、最表層に接する顔料インクは、それらの値の差が最も大きい顔料インクに決定しても良い。また、これらの値の差に対して閾値を設け、その閾値以上のインク全てを差の大きいインクと判定しても良い。また更に、記録媒体の種類(高吸収受容層など受容層の種類、光沢紙・マット紙など用途別種類)や記録モードの種類(ドラフトモードや高精細モードなど)に応じて、当該差の閾値を変更するように構成しても良い。
【0155】
また、処理液や淡色の顔料インクは、最表面の形成に用いられるのが最も機能を発揮することになる。しかし、記録動作中に他の顔料インクとともに処理液や淡色の顔料インクを吐出し、最表層の直下のインク層の内部に、処理液や淡色の顔料インクにより形成される層を配しても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の液滴を記録媒体上に吐出して記録を行なう記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを用いてマルチパス記録を行なう記録装置であって、
前記マルチパス記録の各走査毎に、前記複数種類の液滴に対応した吐出データをそれぞれ生成する画像処理手段と、
前記画像処理手段により生成された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドの各走査毎に異なる種類の液滴を前記記録ヘッドから吐出させる吐出制御手段と
を具備し、
前記画像処理手段は、
前記記録媒体上の所定領域の記録に用いる前記複数種類の液滴の中から、前記記録媒体上の最表面を構成する第1の層の形成に用いる液滴と、該第1の層に接し且つ該第1の層との光学特性の差が所定の基準以上異なる第2の層の形成に用いる液滴とを少なくとも決定し、該決定に基づいて前記吐出データを生成する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記光学特性は、前記第1の層と前記第2の層とにおける屈折率である
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記光学特性は、前記第1の層と前記第2の層とにおける反射スペクトルである
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項4】
前記光学特性は、前記第1の層と前記第2の層とにおける反射光の色である
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項5】
前記複数種類の液滴は、
各色に対応した複数種類のインクと、処理液とを含み、
前記画像処理手段は、
前記処理液により前記第1の層を形成させるとともに、前記所定領域の記録に用いる前記複数種類のインクの中から前記所定の基準以上異なる層を形成可能なインクにより前記第2の層を形成させるように前記吐出データの生成を行なう
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記複数種類の液滴は、
各色に対応した複数種類のインクであるとともに、その少なくとも1つの種類のインクが透明樹脂材料を含み、
前記画像処理手段は、
前記透明樹脂材料を含むいずれかのインクにより前記第1の層を形成させるとともに、前記所定領域の記録に用いる前記複数種類のインクの中から前記所定の基準以上異なる層を形成可能なインクにより前記第2の層を形成させるように前記吐出データの生成を行なう
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
複数種類の液滴を記録媒体上に吐出して記録を行なう記録ヘッドを有し、該記録ヘッドを用いてマルチパス記録を行なう記録装置の記録方法であって、
画像処理手段が、前記マルチパス記録の各走査毎に、前記複数種類の液滴に対応した吐出データをそれぞれ生成する工程と、
吐出制御手段が、前記画像処理手段により生成された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドの各走査毎に異なる種類の液滴を前記記録ヘッドから吐出させる工程と
を含み、
前記画像処理手段は、
前記記録媒体上の所定領域の記録に用いる前記複数種類の液滴の中から、前記記録媒体上の最表面を構成する第1の層の形成に用いる液滴と、該第1の層に接し且つ該第1の層との光学特性の差が所定の基準以上異なる第2の層の形成に用いる液滴とを少なくとも決定し、該決定に基づいて前記吐出データを生成する
ことを特徴とする記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−166520(P2012−166520A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31258(P2011−31258)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】