説明

記録装置及び記録制御方法

【課題】例えば、2つの記録ヘッドで記録する場合、各カラムデータの解像度が従来の1/2になってしまうため、主走査方向の解像度が低下してしまい、画像品位が低下する。
【解決手段】同じ色のインクを吐出する、複数のノズルからなる2つのノズル列を有する記録ヘッドを時分割駆動して記録を行なう際に、次の制御を行う。即ち、ホストから受信した記録データを受信バッファに格納する。次に、受信バッファに格納された記録データを読み出し、テーブルに予め格納された時分割駆動の駆動順序とノズル列の数に従って、各ノズル列の記録要素を駆動するための記録データに振り分ける。その振り分けられた記録データを各ノズル列に対応して2つの記録データバッファに格納する。格納された記録データは記録データ信号として記録ヘッドに転送し、記録ヘッドの各ノズル列に対応した記録要素の駆動を同じタイミングで時分割駆動して記録を行なうよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置及び記録制御方法に関する。特に本発明は、時分割駆動によりインクジェット記録ヘッドを駆動させながらインクを記録媒体に吐出することにより画像を記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般のインクジェット記録装置(以下、記録装置)は、インク吐出口(以下、吐出口)とヒータやピエゾ素子などインク滴を吐出するためのエネルギーを発生させる素子とを対応させて配列して成る記録ヘッドを備えている。記録装置は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを所定の方向(主走査方向)へ移動させながら記録媒体でインク滴を吐出して記録を行なう一方、主走査方向と交差する方向(副走査方向)へ記録媒体の搬送する動作を繰り返して、記録媒体に画像を記録する。
【0003】
記録ヘッドの全ての吐出口から同時にインク滴を吐出するに必要な電力を記録装置が備えることは、電源のコストアップ等の理由により困難である。そこで、通常は記録要素を時分割駆動して記録を行なっている。時分割駆動では、記録ヘッドに備えられた複数の記録要素において、物理的に隣接した複数の記録要素を複数のグループに分け、各グループから選択された記録要素を1つのブロックに割り当てる。そして、各ブロックの記録要素を時分割に順次駆動することで全記録要素を駆動する。この動作を記録ヘッドを主走査方向に移動させながら繰り返すことで、1主走査分の記録領域に記録を行う。
【0004】
通常、主走査方向の記録を高速化するためには、記録ヘッドの走査速度を上げることが考えられる。この走査速度が高速になると、主走査方向に沿って設けられたスケールから主走査方向の記録ヘッドの位置を検出するために用いられるエンコーダ信号に基づいて生成される記録周期が短くなる。このため、記録装置から記録ヘッドに送信される記録データ信号を記録ヘッドでラッチするラッチ信号の間隔(ラッチ間隔と呼ぶ)も短くなる。ラッチ間隔が短くなると、これに伴って、クロック信号や記録データ信号は転送周波数を上げるが必要になる。
【0005】
しかしながら、記録ヘッドに転送されるヒート信号は、これにより実際に記録要素からインクを吐出するためのパルス幅を規定しているため、吐出口からのインクの吐出に必要とするエネルギー量分のパルス幅は必要となる。従って、そのパルス幅よりも短い、即ち、高速なラッチ間隔を生成するような記録制御は難しくなる。
【0006】
このために、従来は、主走査方向に複数個の記録ヘッド、或いは複数の吐出口列を配置し、同じ色成分の記録データ信号を複数個の記録ヘッド或いは複数の吐出口列に分配して記録を行ってきた。
【0007】
この制御方法について、図9を用いて詳細に説明する。
【0008】
図9(a)に示すように、1つの記録ヘッドでカラム1→2→3→4と、例えば、主走査方向に600dpiの解像度で記録する場合、その走査速度が高速になると、前述のように1カラム内の1ブロックの駆動パルス幅がラッチ間隔に収まらなくなってしまう。図9(a)では、ブロック4やブロック12がこれに相当する。
【0009】
そこで、図9(b)に示すように2つの記録ヘッドを用いて記録する場合を考える。記録ヘッド2つで同色の記録データを記録する場合、カラム1とカラム3のデータ(奇数カラムのデータ)を1つの記録ヘッドのCHIP−Aに記録させ、カラム2とカラム4のデータ(偶数カラムのデータ)をもう1つの記録ヘッドのCHIP−Bに記録させる。記録ヘッドCHIP−Bは2カラム目からの記録となるため、記録ヘッド1つで駆動した場合における、2カラム目の記録を開始するタイミングから記録を開始する。このように記録を行うと、各カラムデータの駆動周波数は記録ヘッド1つで記録する場合に比べ1/2で良いため、周波数向上が見込める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−074632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記従来例のように、例えば、2つの記録ヘッドで記録する場合、各カラムデータの解像度が1/2の解像度に収まってしまうため、主走査方向の解像度が低下してしまい、画像品位が低下する可能性があるという問題があった。
【0012】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、画像品位を損なうことなく高解像度で高速な記録が可能な記録装置及び記録制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は次のような構成からなる。
【0014】
即ち、同じ色のインクを吐出する複数のノズルにより形成されるノズル列を複数、並列に配置した記録ヘッドを走査させながら、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の記録要素を複数のブロックに分割し、各ブロック毎に時分割駆動することで、インクを吐出して記録媒体に記録を行なう記録装置であって、前記時分割駆動の駆動順序を格納するテーブルと、ホスト装置からインタフェースを介してラスタ形式で受信した記録データを格納する受信バッファと、前記受信バッファに格納された記録データを読み出して、前記テーブルに格納された駆動順序と前記ノズル列の数に従って、各ノズル列の記録要素を駆動するための記録データに振り分ける振り分け手段と、前記振り分け手段により振り分けられた記録データを各ノズル列に対応して格納する複数の記録データバッファと、前記複数の記録データバッファに格納された記録データを記録データ信号として前記記録ヘッドに転送し、前記記録ヘッドの各ノズル列に対応した記録要素の駆動を同じタイミングで時分割駆動して記録を行なうよう制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0015】
また他の発明によれば、上記構成の装置に適用する記録制御方法を備える。
【発明の効果】
【0016】
従って本発明によれば、同じ色のインクを用いた複数のノズル列に対応して受信した記録データを時分割の駆動順序に従って振り分け、各ノズル列による各カラム毎の記録を同じタイミングで行なうことができる。これにより、記録ヘッドの走査方向に関する記録解像度を低下させることなく記録を行なうことが可能になる。従って、画像品位を損なうことなく高解像度で高速な記録が可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示した記録装置の制御構成(ASIC200の構成)についての比較例の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した記録装置の制御構成についての本発明に従う実施例の構成を示すブロック図である。
【図4】記録ヘッド3のノズル構成とヒータ駆動順序を示す図である。
【図5】ASIC200が記録ヘッド3に転送する制御信号のタイムチャートである。
【図6】比較例として同じ色のインクに対して記録ヘッドを2つ用いて記録を行なう場合の駆動制御を説明する図である。
【図7】本発明の実施例に従う同じ色のインクに対して記録ヘッドを2つ用いて記録を行なう場合の駆動制御を説明する図である。
【図8】データ並び替えブロックにおいて実行される記録データの並び替え処理の詳細を模式的に説明する図である。
【図9】2つの記録ヘッドを用いて同じ色のインクに対する記録データを用いて記録を行なった場合の解像度低下を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、既に説明した部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0019】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0020】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0021】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0022】
またさらに、「記録要素」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0023】
<インクジェット記録装置の説明(図1)>
図1は本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【0024】
図1に示すように、インクジェット記録装置(以下、記録装置)はインクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)3をキャリッジ2に搭載し、キャリッジ2を矢印A方向に往復移動させて記録を行う。記録紙などの記録媒体Pを給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行なう。
【0025】
記録装置1のキャリッジ2には記録ヘッド3を搭載するのみならず、記録ヘッド3に供給するインクを貯留するインクカートリッジ6を装着する。インクカートリッジ6はキャリッジ2に対して着脱自在になっている。
【0026】
図1に示した記録装置1はカラー記録が可能であり、そのためにキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジを搭載している。これら4つのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。
【0027】
この実施例の記録ヘッド3は、熱エネルギを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用している。このため、電気熱変換素子(ヒータ)を備えている。この電気熱変換素子は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。
【0028】
以下、本発明に従う記録制御の実施例を比較例と対照させながら説明する。
【0029】
図2は図1に示した記録装置の制御構成(ASIC200の構成)についての比較例の構成を示すブロック図である。また、図3は図1に示した記録装置の制御構成についての本発明に従う実施例の構成を示すブロック図である。なお、図2〜図3において、同じ構成要素には同じ参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0030】
図2〜図3に共通して、記録装置1はパーソナルコンピュータ(PC)201に接続され、記録データを記録装置に対し、より厳密には、ASIC200のデータ受信部に対し転送をする。ASIC200で処理された記録データは記録データ信号として記録ヘッド3に出力される。また、記録ヘッド3の記録動作を制御するパルス信号、ラッチ信号、クロック信号などは、ASIC200の内部で生成される。さらに、記録装置のキャリッジ2の移動方向に沿って設けられたスケール(不図示)をキャリッジ2に設けられたエンコーダ215が読み取って、エンコーダ信号ENCを発生し、これをASIC200に入力する。なお、記録装置に記録データを送信する装置としてはPC以外にもデジタルカメラやスキャナ装置などでも良く、これらは総称してホスト装置と呼ばれる。
【0031】
まず、図2に示す比較例のASIC200の内部について説明する。
【0032】
ASIC200はASIC200全体の動作を統括・管理するCPU203、メインメモリであるSD−RAM204、PC201から転送される記録データを受信するインタフェース部(受信I/F)205を備える。なお、メインメモリは必ずしもSD−RAMである必要は無く、DRAMでも、SRAMでも、RAMの定義の範疇に属するメモリであれば、特に、SD−RAM以外のメモリでも構わない。また、インタフェース部205は、USBやIEEE1384と言った規格に準拠した信号受信を行い、ASIC200が扱いやすい形(通常、データを1バイト単位の形に整形)にデータを生成し、SD−RAM204に保存する。通常、SD−RAM204の中で、インタフェース部205によって制御される部分は受信バッファ206と呼ばれる。
【0033】
インタフェース部205により受信バッファ206に保存されたデータは各記録制御のタイミングに応じてデータ並べ替えブロック207に読み込まれ、ラスタデータからノズル列データへ縦横変換され(H−V変換)、記録データバッファ208に保存される。記録データバッファ208に保存を行うまでの処理を多値データ(主に色毎に圧縮されている)で行うことで、受信バッファ206と記録データバッファ208の必要な容量を削減することができる。さらには、記録ヘッドの多ノズル化・多色化に起因するSD−RAM204のサイズ増大によるコストアップを削減している。
【0034】
記録データバッファ208に保存されたデータは、データ展開ブロック209に読み込まれ、多値データ展開、マルチパス記録、マスク制御など様々な処理が行われ、記録データ信号格納用の高速メモリ210に保存される。高速メモリ210は、システム上必須ではないが、記録速度向上のために記録データを一定量生成し、高速アクセス可能なSRAMのようなメモリに一旦格納している。また、ここで格納される記録データは、マルチパス記録、多値データ展開、マスク処理と言った各種データ処理を施された後の2値データである。従って、これをヘッド駆動ブロックに転送すれば、即座に記録可能な形態のデータとなる。
【0035】
高速メモリ210に格納された記録データは、データ変換ブロック211によって読み出しが行われ、ヘッド駆動ブロック213が効率的に読出し可能な形態にデータを変換し、高速メモリ212に保存する。高速メモリ212もまた記録速度を向上するために備えられたものである。高速メモリ212は、ヘッド駆動ブロック213からアクセスされ、記録データ信号を記録ヘッド3に転送したり、記録ヘッド3へパルス信号を送信したりするための、記録ヘッド3特有の制御のために用いられる。
【0036】
また、記録タイミング生成部214はエンコーダ信号ENCを入力し各種記録タイミングを生成する。記録タイミング生成部214は、データ展開ブロック209、データ変換ブロック211、ヘッド駆動ブロック213が適切なタイミングでリアルタイムにデータを生成可能にするためにエンコーダ信号ENCから適切な間隔で制御信号を生成する。
【0037】
次に、図3に示す本発明に従う実施例であるASIC200に特有の構成について説明する。
【0038】
インタフェース部205によりSD−RAM204内の受信バッファ206に保存されたデータは、各記録制御のタイミングに応じてデータ並べ替えブロック207に読み込まれる。次に、ヘッド駆動ブロック213に備えられたブロック駆動テーブル222を参照して2つの記録ヘッド(詳細は後述)に対して、それぞれが記録するデータに分配し、さらにラスタデータからノズル列データへの縦横変換(H−V変換)を実行する。その結果、2つの記録ヘッドに対応したH−V変換されたデータが記録データバッファ208のCHIP_Aバッファ220とCHIP_Bバッファ221に保存される。
【0039】
高速メモリ212はヘッド駆動ブロック213からアクセスされ、ブロック駆動テーブル222に定義された順に従い、記録データ信号を記録ヘッド3に転送したり、記録ヘッド3へ吐出パルス信号を送信する等の記録ヘッド3に特有の制御を行う。
【0040】
次に、記録ヘッド3の構成とヒータの駆動について説明する。
【0041】
図4は記録ヘッド3のノズル構成とヒータ駆動順序を示す図である。図4に示すように記録ヘッド3は64個の吐出口302から構成され、64個の吐出口302に対応して配設されたヒータ(不図示)は、それぞれが物理的に近接する16個のヒータからなる4つのグループ0〜3に分けられている。そして、各グループでヒータを異なるブロックに割り当て、同じブロックに属するヒータを順次、(ブロック毎に)時分割駆動している。
【0042】
ここでは、図4に示されているように、記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)の上流側のヒータから、また、各グループについて副走査方向の上流側のヒータから順に、ブロック0〜15を割り当てている。従って、ヒータへの駆動順序は、図2〜図3のASIC200内のヘッド駆動ブロック213に駆動順序を格納することで、自由に駆動順序を変更することが可能である。
【0043】
例えば、ブロック0→1→2→3→4→5→6→7→8→9→10→11→12→13→14→15のような駆動順序や、図4に示すような0→8→5→13→1→9→6→14→2→10→7→15→3→11→4→12の駆動順序も可能である。このようにブロック駆動順序に従って1周期の駆動が行われ、これを主走査方向に繰り返し制御することによって、1主走査分の記録を行っている。なお、記録ヘッド3は主走査方向に移動しながら記録を行なうので、64個全てのヒータからの記録を行なった場合の主走査方向の記録幅(記録領域)を1カラムと呼ぶ。
【0044】
図2に示した比較例のASICでは、以上のような構成の記録ヘッド3を各色のインクに対して1つ用いるが、図3に示した本発明に従う実施例では記録ヘッド3を同じ色のインクに対して2つ用いる。そして、いずれの場合でも主走査方向に解像度600dpiで記録を行なう。なお、同じ構成の記録ヘッドを2つの用いる代わりに同じ色のインクを吐出するノズル列を2列並列に配置した構成の記録ヘッドを用いても良いことはいうまでもない。この場合、その記録ヘッドには2列のノズル列に対応した記録要素(ヒータ)を駆動するために2つのチップ(基板)が設けられる。これら2つチップが後述するCHIP_AとCHIP_Bに対応する。
【0045】
さらに記録制御の詳細を説明する。
【0046】
図5はASIC200が記録ヘッド3に転送する制御信号のタイムチャートである。図4に示すように、ASIC200から記録ヘッド3には、クロック信号、クロック信号のエッジに同期して送出する記録データ信号、記録データ信号のラッチタイミングを生成するラッチ信号、ヒータを駆動する時間を規定するヒート信号の4つの信号がある。実際には記録ヘッドは各色インクに対応した複数のノズル列で、また、本発明の実施例に従うASIC200では同じインクに対して2つの記録ヘッドを記録に用いるため、記録データ信号やヒート信号は複数必要となる。しかしながら、ここでは、説明を簡単にするために以上の構成として制御信号を説明している。
【0047】
ASIC200はエンコーダ信号ENCを受信して、記録タイミング生成部214が記録タイミングを生成する。生成された記録タイミングにより、ヘッド駆動ブロック213は、記録ヘッド3に対して、図4に示すように最初にクロック信号とクロック信号に同期して記録データ信号を送出する。ただし、実際には記録データ信号には記録データ信号と、どのブロックを駆動するかを決定する情報を含む。そして、ラッチ信号によって記録ヘッド3は記録データ信号をラッチし、次のタイミングで送出されるヒート信号によって、ヒータを駆動する。これによって駆動されたヒータに対応する吐出口からインクが吐出されて記録がなされる。このように、記録データ信号とラッチ信号とヒート信号の送出を繰り返すことによって、主走査方向に記録が行われる。
【0048】
ここで、本発明に従う実施例である図3に示したASIC200により、比較例として図6を参照して同じ色のインクに対して図5に示した記録ヘッド3を2つ用いて記録を行なう場合の記録ヘッドの駆動制御について説明する。
【0049】
図3に示したASIC200では2つの記録ヘッド3を同じ色のインクの記録に用いるために記録データバッファ208に2つの記録ヘッドに対応してCHIP_Aバッファ220とCHIP_Bバッファ221とを設けている。2つの記録ヘッドの基板をそれぞれ、CHIP_A、CHIP_Bとすると、この実施例では、図6に示すように、主走査方向にCHIP_AとCHIP_Bをそれぞれ解像度300dpiで駆動する。
【0050】
その際、記録ヘッドは16ブロックで時分散駆動を行なうため、解像度300dpiに相当する長さ、或いは、駆動時間間隔で16回のブロック駆動を行っている。ブロック駆動順は前述の通り、ヘッド駆動ブロック213のブロック駆動テーブル222を参照し、そのテーブルに格納された順序に従う。
【0051】
ここで、図6に示されているように、解像度300dpiに相当する1カラム分の記録について、各駆動時間間隔を前半、後半に分割すると、解像度600dpiに相当する駆動時間間隔内に1カラム分のうち、半分の8ブロックの記録をしていることがわかる。例えば、前半の駆動時間間隔ではブロック0→8→5→13→1→9→6→14の順に記録がなされ、後半の駆動時間間隔ではブロック2→10→7→15→3→11→4→12の順に記録がなされる。また、CHIP_AとCHIP_Bの駆動開始タイミングを解像度600dpiの駆動時間間隔だけづらすようにする。
【0052】
次に、本発明の特徴となる駆動制御について、1色のインクに対応する記録データを2つの記録ヘッドで記録する場合を図7を参照して説明する。
【0053】
図6に示す比較例では、CHIP_Aではカラム1、3、……と偶数カラムの記録データを、CHIP_Bではカラム2、4、……と奇数カラムの記録データを用いて記録している。
【0054】
これに対して、この実施例ではさらに、各カラムの記録データを解像度600dpiに相当する駆動時間で駆動される8ブロック単位に記録データを分割する。図6と同様な図7(a)に示す比較例では、CHIP_Aで駆動していた奇数カラムの後半8ブロックを、この実施例では図7(b)に示すようにCHIP_Bで駆動する。また、図7(a)に示す比較例では、CHIP_Bで駆動していた偶数カラムの後半8ブロックを、図7(b)に示すようにCHIP_Aで駆動する。このようにして、CHIP_AとCHIP_Bの駆動開始/終了位置を同じタイミングに設定する。さらに、CHIP_B側のブロック駆動順をCHIP_Aに対して8ブロック分オフセットする(半位相分ずらす)ことで、図7(b)に示すように、各カラムを解像度600dpiに相当する間隔におさめる。また、CHIP_AとCHIP_Bが担当する駆動ブロックを奇数カラムと偶数カラムで交互に、即ち、カラム毎に交互に入れ替えて駆動する。
【0055】
この結果、解像度600dpiの記録でも2つの記録ヘッドを用いれば、全てのブロックの駆動が解像度600dpiに相当するカラムの間隔におさまる、即ち、駆動開始タイミングと駆動終了タイミングとが同じとすることができる。これにより、主走査方向の解像度を低下させることなく、高速な記録が可能となる。
【0056】
以上のような駆動制御は、図3に示すASIC200のデータ並べ替えブロック207で記録データを分配することにより実行される。以下、その制御の詳細について、図8を参照して説明する。
【0057】
図8は受信バッファ206のデータを読み出し、データ並び替えブロック207でデータの並べ替え処理を行い、記録データバッファ208に並び替えられたデータを格納するまでの処理詳細を模式的に説明する図である。
【0058】
まず、受信バッファ206は、記録ヘッド3に記録に用いる記録データを、ノズル番号順にカラム方向に連続して、所謂ラスタ形式で格納している。即ち、図8に示すように、ノズル番号0のノズルに関し、カラム番号0→1→2→……→Nの順に記録データが格納され、次に、ノズル番号1のノズルに関し、カラム番号0→1→2→……→Nの順に記録データが格納される。このように、最後、ノズル番号63に関し、カラム番号0→1→2→2→……→Nの順に記録データが格納されている。
【0059】
さて、データ並び替えブロック207はまず、データ読み出し部207aで受信バッファ206に格納された記録データを順に読み出す。読み出した記録データは、ブロック駆動テーブル222を参照してデータ振り分け部207bが記録データの振り分けを行う。この実施例において、記録ヘッド3は16ブロックの時分散駆動で1カラムの分の記録データにより記録を行なっている。
【0060】
また、2つの記録ヘッドで1色のインクに対応する記録データを用いて記録する場合、1カラム分の記録データのうち、前半8ブロックを駆動するための記録データの内、偶数カラムの記録データをCHIP_Aのために振り分ける。一方、奇数カラムの記録データをCHIP_Bのために振り分ける。このように振り分けられた記録データにH−V変換を施し、H−V変換された記録データが、CHIP_Aバッファ(第1の記録データバッファ)220とCHIP_Bバッファ(第2の記録データバッファ)221に格納される。
【0061】
一方、後半8ブロックを駆動するための記録データについては、前半8ブロックでの駆動に用いる記録データとは反対の記録データ、即ち、奇数カラムの記録データをCHIP_Aのために振り分ける。一方、偶数カラムの記録データをCHIP_Bのために振り分ける。このように振り分けられた記録データにH−V変換を施し、H−V変換された記録データがCHIP_Aバッファ220(第1の記録データバッファ)とCHIP_Bバッファ221(第2の記録データバッファ)に分けて格納される。
【0062】
図8に示す2つのバッファは受信バッファ206に対して、主走査方向(カラム方向)に1/2間引きしたようなバッファ構成となる。また、記録データはH−V変換が施されているため、カラム番号0に関し、ノズル番号0→1→2……→63の順に、次に、カラム番号1に関し、ノズル番号0→1→2……→63の順に格納される。このようにして、最後にはカラム番号Nに関し、ノズル番号0→1→2……→ノズル63の順に格納される。
【0063】
このように格納された記録データバッファにアクセスすることにより、従来と同様、エンコーダ信号ENCの入力から生成された記録タイミングに基づいて、2つの記録ヘッドを用いて記録を行なう。
【0064】
従って以上説明した実施例に従えば、2つの記録ヘッドを用いて各カラム内で所望の解像度で記録が行なわれるので、画像品位を損なうことなく、高速な記録が可能となる。
【0065】
以上の説明では、1つの色のインクに対応した記録データを2つの記録ヘッドを用いて記録する例について説明したが本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、1色のインクに対応した記録データを4つの記録ヘッドで記録するように、1カラム分に相当する駆動時間間隔を4つずつのブロック間隔に分割し、記録データをブロック順を参照して分配することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ色のインクを吐出する複数のノズルにより形成されるノズル列を複数、並列に配置した記録ヘッドを走査させながら、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の記録要素を複数のブロックに分割し、各ブロック毎に時分割駆動することで、インクを吐出して記録媒体に記録を行なう記録装置であって、
前記時分割駆動の駆動順序を格納するテーブルと、
ホスト装置からインタフェースを介してラスタ形式で受信した記録データを格納する受信バッファと、
前記受信バッファに格納された記録データを読み出して、前記テーブルに格納された駆動順序と前記ノズル列の数に従って、各ノズル列の記録要素を駆動するための記録データに振り分ける振り分け手段と、
前記振り分け手段により振り分けられた記録データを各ノズル列に対応して格納する複数の記録データバッファと、
前記複数の記録データバッファに格納された記録データを記録データ信号として前記記録ヘッドに転送し、前記記録ヘッドの各ノズル列に対応した記録要素の駆動を同じタイミングで時分割駆動して記録を行なうよう制御する制御手段とを有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記振り分け手段により振り分けられた記録データにH−V変換を施す変換手段をさらに有し、
前記複数の記録データバッファには前記変換手段によりH−V変換が施された記録データが格納されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記複数のノズル列の数は2である場合、
前記複数の記録データバッファの数は2であり、
前記テーブルに格納された駆動順序の前半のブロックの駆動に用いられる記録データが第1の記録データバッファに格納され、前記駆動順序の後半のブロックの駆動に用いられる記録データが第2の記録データバッファに格納されることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記2つのノズル列に対応した記録要素を駆動するために、前記記録ヘッドには2つのチップが設けられ、
前記2つのチップがそれぞれ、前記前半のブロックの駆動と前記後半のブロックの駆動を各カラム毎に交互に行なうことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記2つのチップによる駆動開始タイミングは同じであり、前記2つのチップによる駆動終了タイミングも同じであり、前記2つのチップによる各カラム分の記録が予め定められた解像度に相当する駆動時間間隔におさまることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
同じ色のインクを吐出する複数のノズルにより形成されるノズル列を複数、並列に配置した記録ヘッドを走査させながら、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の記録要素を複数のブロックに分割し、各ブロック毎に時分割駆動することで、インクを吐出して記録媒体に記録を行なうための記録制御方法であって、
ホスト装置からインタフェースを介してラスタ形式で受信した記録データを受信バッファに格納する工程と、
前記受信バッファに格納された記録データを読み出して、テーブルに予め格納された前記時分割駆動の駆動順序と前記ノズル列の数に従って、各ノズル列の記録要素を駆動するための記録データに振り分ける工程と、
前記振り分けられた記録データを各ノズル列に対応して複数の記録データバッファに格納する工程と、
前記複数の記録データバッファに格納された記録データを記録データ信号として前記記録ヘッドに転送し、前記記録ヘッドの各ノズル列に対応した記録要素の駆動を同じタイミングで時分割駆動して記録を行なうよう制御する工程とを有することを特徴とする記録制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−16849(P2012−16849A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154354(P2010−154354)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】