説明

記録装置及び記録方法

【課題】記録媒体のエッジ検出の高速化および高精度化が可能な記録装置および記録方法を提供する。
【解決手段】高速、高精度で記録媒体のエッジ位置を検出可能なエッジセンサによって、印刷中に記録媒体の両端のエッジ位置を取得し、スキューや記録媒体の伸縮をリアルタイムで認識する。この情報に基づき再計算された作画領域に基づいて印刷動作を行うことで、記録媒体のスキューや伸び縮み、ロール状の記録媒体の巻きずれ等があっても記録媒体の所定の領域に作画が可能となり、印刷精度の向上を図ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の搬送方向と直行する方向に印刷ヘッドを走査させながら印刷を行う記録装置および記録方法に関する。特に記録媒体のエッジの検出をする記録装置、記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体である記録用紙を縦方向に間歇的に送っていくとともに、印刷ヘッドを横方向にスキャン(走査)させながら印刷を行っていくインクジェットプリンタが知られている。
【0003】
このプリンタには、記録用紙の横幅を検出したり、記録用紙の横方向のズレ(スキュー)を検出したりするために、プラテン上にセットされた記録用紙の横方向のエッジすなわち左右のエッジを検出するエッジ検出装置が設けられている。
【0004】
また、印字前に記録用紙のエッジ位置を検知し、作画開始地点を記録用紙端から一定の距離に保つようにしている。
【0005】
また印字動作中、一定周期でエッジを検知することで、横方向のズレ(スキュー)がないかどうかを監視し、スキューが発生した場合には印刷動作を中断するか否かをユーザーにオペレーションパネル上で選択させるようにしている。
【0006】
ここで、従来のエッジ検出装置について簡単に説明する。
エッジ検出装置には、反射型フォトマイクロセンサなどのエッジ検出用フォトセンサが、プラテンと対向するように、キャリッジに設けられている。
【0007】
エッジ検出装置は、フォトセンサが、プラテン上にセットされた記録用紙と対向する状態で記録用紙のエッジを横切るように、キャリッジを横方向にスキャンさせ、記録用紙の反射光量と記録用紙から外れた位置にあるプラテン上の無反射テープの反射光量との違いによりフォトセンサのセンサ出力が所定のしきい値以下に変化した点を、記録用紙のエッジとして検出していた。
【0008】
具体的にはエッジ検出装置内のCPUが、フォトセンサのセンサ出力を所定周期(たとえば10ms周期)で取得し、そのセンサ出力と所定のしきい値とを比較して、記録用紙のエッジを検出していた。
【0009】
このほか特開2007−210747号公報には、印字中でもエッジ検知が可能となるように、記録用紙のエッジを横切る際のフォトセンサからのステップ応答をAC結合し微分波形とし、オペアンプで増幅、フィルタリングした後にその微分波形をコンパレータで検波する提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−210747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし従来の方法では、フォトセンサのセンサ出力が所定周期(たとえば、10ms周期)で取得されていたため、キャリッジの移動速度が速くなるにつれて、所定周期の間にフォトセンサが移動する距離が長くなる。よって、キャリッジの移動速度が速くなるにつれて、エッジの検出精度が低下してしまう。
【0012】
このため、従来のエッジ検出装置付きプリンタは、記録用紙のエッジを検出する際、キャリッジの移動速度を印字時の移動速度より遅くして、エッジ検出の精度を保っていた。よって、印字中に高速でキャリッジを移動しながらエッジ検知を行うことができず、スループットの低下とチェック頻度の低下が生じていた。
【0013】
また、プラテン上の無反射テープでの反射光の受光レベルと、記録用紙での反射光の受光レベルとを、受光レベルそのものでしきい値と比較するため、これらの受光レベル差が小さいと(例えば、記録用紙がトレーシングペーパの場合)、それらの受光レベルとのしきい値との差が小さくなり、記録用紙のエッジ検出が正確に行えなくなってしまう。
【0014】
また、センサ自体に感度ばらつきがあり、これを吸収するためにセンサの発光電流や受光感度を可変とすると、これらを選択するのに時間がかかってしまう。
【0015】
また、複数の印刷成果物を並べて貼り付けるようなタイリングと呼ばれる施工をする場合には、長時間の印字中にスキューや記録用紙の伸び縮み(各種ヒータに熱せられることで記録用紙は膨張、収縮する)や、そもそもロール状態での記録に巻きずれがあったりすると、各印刷成果物間において、作画開始地点とともに記録用紙幅に対する作画領域もずれてしまい、貼り合わせたときの画像がずれる問題を生じてしまう。
【0016】
また、スタガ配置などと呼ばれる、記録用紙の送り方向に印刷ヘッドをずらした配置をとる場合には、先行する印刷ヘッドによる作画によって記録用紙が伸びてしまい、後続する印刷ヘッドによる作画において着弾位置がずれてしまう場合がある。結果的に各色間で着弾位置がずれてしまうことから、画質不良を招いてしまう。
【0017】
また、一定周期でスキューを監視する場合、ある時点の監視から次の時点での監視までの間に大きく記録用紙がスキューし、作画領域がずれてしまう場合があるため、スキューの監視はリアルタイムに行うことが望ましい。
【0018】
スキューの監視によってスキューが検知された場合に、ユーザーにオペレーションパネル上で印刷動作を中断するか否かを選択させる方式だと、常にユーザーがプリンタの動作を監視していなければならず、無人の夜間運転などができない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、自己の検出領域に前記記録媒体がある場合に、第1レベルの信号を出力し、該検出領域に該記録媒体がない場合に該第1レベルと異なる第2レベルの信号を出力するセンサと、前記センサの検出領域が前記記録媒体のエッジを横切るように、前記センサを搬送する搬送部と、前記センサが出力した信号のレベルが変化したときに変化検知信号を出力する出力発生部と、前記出力発生部が出力した変化検知信号の変化に基づいて、前記記録媒体のエッジを検知するエッジ検知制御部と、前記センサの位置を検出する位置検出手段と、検知された前記記録媒体の左右のエッジと前記位置検出手段によって検出する位置に基づいて前記記録媒体幅と該幅の変化量を計算し、該幅に基づいて前記記録媒体上への作画領域を計算する作画領域計算部と、計算された前記作画領域に対して前記変化量に基づいて印刷動作を行う印刷制御部と、を含む。
【0020】
また、本発明の記録装置の作画領域計算部は、前記記録媒体の前記エッジから一定の距離を保つように前記作画領域を計算することを特徴とする作画領域計算部を含むことができる。
【0021】
また、本発明の記録装置の作画領域計算部は、前記記録媒体幅に基づき、前記記録媒体の左右方向の一定の範囲内を保つように前記作画領域を計算する作画領域計算部を含むことができる。
【0022】
また、本発明の記録装置の印刷制御部は、前記作画領域計算部によって計算された前記作画領域が初期状態から変化した場合に、前記作画領域に対して所定のドットを重複することで増やすか、間引きすることで減らすことによって、前記記録媒体の作画領域幅を変化させる印刷動作を行う印刷制御部を含むことができる。
【0023】
また、本発明のエッジの検知は、前記記録媒体の搬送方向の異なる地点のエッジを同時に検知するため、前記センサを複数個、前記異なる地点のエッジが検知可能な箇所に設置することができる。
【0024】
上記発明によれば、記録媒体のエッジは、変化検知信号に基づいて検出される。
変化検知信号は、センサが出力した信号のレベルが変化したときに出力される。このため、センサが記録媒体を検出したときと検出していないときの、センサの出力信号レベル差が小さくても、センサが記録媒体のエッジを検出したときに、変化検知信号は出力される。よって、従来、センサの出力信号のレベル差が小さいために検出できなかった記録媒体のエッジを検出することが可能となる。
【0025】
また、センサの出力信号レベルは、センサの検出領域が記録媒体のエッジを横切るときに変化し、また、その横切る速度が速くなるほど、そのレベルの変化の割合が大きくなる。このため、センサの検出領域が記録媒体のエッジを横切る速度が速くなっても、記録媒体のエッジを検出することが可能となり、エッジ検出の高速化を図ることが可能になる。
【0026】
また、本発明の記録方法は、記録媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、検出領域に前記記録媒体がある場合に第1レベルの信号を出力し、該検出領域に前記記録媒体がない場合に該第1レベルと異なる第2レベルの信号を出力するセンサを含む記録装置の記録方法であって、前記センサの検出領域が前記記録媒体のエッジを横切るように、前記センサおよび前記印刷ヘッドを搬送する搬送ステップと、前記センサが出力した信号のレベルが変化したときに変化検知信号を出力する出力発生ステップと、前記変化検知信号の変化に基づいて前記記録媒体のエッジを検出するエッジ検出ステップと、前記エッジ検出に基づいて前記印刷ヘッドを制御する制御ステップと、検知された前記記録媒体の左右端のエッジに基づいて前記記録媒体上の作画領域を計算する作画領域計算ステップと、前記エッジ検出に基づいて前記記録媒体の幅の変化量を計算する変化量計算ステップと、計算された前記作画領域と前記変化量に基づいて印刷動作を行う印刷制御ステップと、を含む。
【0027】
上記発明によれば、記録媒体のエッジを高速かつ高精度で印刷動作中に検出でき、それにより記録媒体の所定の位置に精度よく印刷を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、記録媒体のエッジは、センサが出力した信号のレベルが変化したときに出力される変化検知信号に基づいて検出されるので、センサの出力信号のレベル差が小さいために検出できなかった記録媒体のエッジを検出することが可能となり、また、センサの検出領域が記録媒体のエッジを横切る速度が速くなっても、記録媒体の表面状態に左右されず、不意の外乱光などの影響を受けずに、記録媒体のエッジを検出することが可能となる。さらに、印刷中に検知した記録媒体の左右のエッジから作画領域を随時計算することで、記録媒体のスキューや伸び縮み、ロール状の記録媒体の巻きずれ等があっても記録媒体の所定の領域に作画が可能となり、印刷精度の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施の形態のプリンタ装置の主要構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、プリンタ装置の用紙搬送機構の一例を示した構成図である。
【図3】図3は、プリンタ装置のエッジ検出機構の一例を示したブロック図である。
【図4】図4は、バンドパスフィルタの信号通過帯域の設定例を説明するための説明図である。
【図5】図5は、印刷開始当初の用紙のエッジ位置を示した図である。
【図6】図6は、スキュー等によってずれた場合の用紙のエッジ位置を示した図である。
【図7】図7は、伸縮等が合った場合の用紙のエッジ位置を示した図である。
【図8】図8は、用紙の伸縮が無い場合の作画領域のドットを示す図である。
【図9】図9は、用紙が伸びた場合に作画領域でドットを追加して作画することを示す図である。
【図10】図10は、用紙が縮んだ場合に作画領域でドットを間引いて作画することを示す図である。
【図11】図11は、記録装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】図12は、印刷ヘッドをスタガ配置した場合のキャリッジの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態のプリンタ装置の主要構成を示すブロック図である。
図1において、プリンタ装置1は、例えばA1判やA0判ならびに大判ロール紙など、大判の用紙(記録媒体)を縦方向に間歇的に送っていくとともに、インクをドット噴射する印刷ヘッド60を横方向にスキャン(走査)させながら印刷を行っていく大判用紙用のインクジェットプリンタである。
【0031】
プリンタ装置1は、CPU10と、紙送りモータドライバ20と、紙送りモータ21と、キャリッジ制御モータドライバ30と、キャリッジ制御モータ31と、エッジセンサ40と、センサ制御回路45と、印刷ヘッド60と、ヘッド制御部65とを含む。
【0032】
CPU10は、プリンタ装置1の全体的な制御を司る。CPU10に接続されたメモリにプログラムが格納され、このプログラムにしたがってCPU10が動作し、プリンタ装置1を制御する。紙紙送りモータ21は、記録媒体である用紙を縦方向に送るための駆動部である。モータドライバ20は、モータ21の駆動を制御する。印刷ヘッド60は、インクのドットを噴射して印刷を行う。ヘッド制御部65は、印刷ヘッド60からのインクのドットを噴射させる。キャリッジ制御モータ31は、搬送部の一例であり、印刷ヘッド60およびエッジセンサ40を横方向に送る。モータドライバ30は、キャリッジ制御モータ31の駆動を制御する。
【0033】
エッジセンサ40は、自己の検出領域に用紙がある場合に第1レベルの信号を出力し、また、その検出領域に用紙がない場合には第1レベルと異なる第2レベルの信号を出力する。エッジセンサ40は、例えば、用紙からの反射光、およびプラテン上の一領域に設置された無反射テープからの反射光を検出するフォトセンサなどである。センサ制御回路45は、エッジセンサ40が出力した信号を処理する。
【0034】
印刷制御部55は、図示しないホストPCからの印刷データを印刷データ格納メモリ50に格納し、また必要に応じて読み出す。また、読み出した印刷データを印刷ヘッド60に入力できるデータ列に変換し、エッジセンサ制御回路45によって検知されたエッジ位置に基づき計算された作画領域に応じて加工したのち、ヘッド制御部65へ転送する。
【0035】
図2は、印刷ヘッド60の搬送系の機構を示した模式図である。なお、図2において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0036】
図2において、印刷ヘッド60は、横方向にスライド可能に構成されているキャリッジ70に取り付けられて、キャリッジ70が横方向にスライド移動されることでプラテン53およびプラテン53上にセットされた用紙5の上方を横方向にスキャン移動する。
【0037】
また、キャリッジ70の側端には、エッジセンサ40が、その検出方向をプラテン53側に向けた状態で取りつけられ、印刷ヘッド60とともにスキャン移動する。
【0038】
キャリッジ70は、搬送部を構成する搬送ベルト機構71のスチールベルト72に固着され、搬送ベルト機構71の駆動プーリ73がキャリッジ制御モータ31により回転され、タイミングベルト79、従動プーリ74を介して横方向にスライド移動する。
【0039】
また、キャリッジ70には、移動量を検出するためのリニアセンサ75が設けられ、リニアセンサ75は、キャリッジ70の移動方向に沿って固定的に配接されているリニアスケール76の検出溝を検出し、その検出溝をカウントしていくことで、キャリッジ70の移動量を検出する。
【0040】
リニアセンサ75からの検出出力(カウント値)は、キャリッジ制御モータ31のモータドライバ30、および、印刷ヘッド60のヘッド制御部65に入力され、キャリッジ70の移動量制御に使用されたり、印刷ヘッド60のインク噴出タイミングの制御に使用されたりする。
【0041】
図3は、プリンタ装置1内のエッジ検出機構、具体的には、エッジセンサ40とセンサ制御回路45とCPU10の一例を示したブロック図である。なお、図3において、図1、ないし図2に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0042】
エッジセンサ40は、発光素子40aと、光センサ40bとを含む。センサ制御回路45は、コンデンサC1と、抵抗R1と、オペアンプ45aと、コンデンサC2と、抵抗R2と、コンパレータ45bと、コンパレータ45cと、FPGA(Field Programmable Gate Array)45dとを含む。
【0043】
発光素子40aは、エッジセンサ40の検出領域に向けて光を発する。発光素子40aは、抵抗R3と直列に接続されている。光センサ40bは、抵抗R4と直列に接続され、エッジセンサ40の検出領域内の物体による反射光を受光する。
【0044】
このため、エッジセンサ40は、光センサ40bが受光した反射光の光量に応じたレベルの信号を端子Aから出力する。具体的には、エッジセンサ40は、自己の検出領域が用紙5のエッジを横切った際に、ステップ応答(用紙5なしの場合はレベル大で、用紙5ありの場合はレベル小)の信号を出力する。
【0045】
コンデンサC1は、このステップ応答から交流成分(微分波形)を得る。なお、端子Aで交流成分が生じるのは、エッジセンサ40が用紙のエッジを横切ったときである。
【0046】
オペアンプ45aは、反転入力端子(−端子)がコンデンサC1および抵抗R1を介して端子Aと接続され、非反転入力端子(+端子)が基準電圧Vref1と接続され、出力端子がコンデンサC2と抵抗R2の並列回路を介して反転入力端子と接続されている。オペアンプ45aは、コンデンサC1が抽出した交流成分を増幅する。オペアンプ45aにて増幅された交流成分は、変化検知信号として用いられる。
【0047】
コンデンサC1と抵抗R1とでハイパスフィルタが形成され、コンデンサC2と抵抗R2とでローパスフィルタが形成される。なお、コンデンサC1の静電容量をc1、抵抗R1の抵抗値をr1、コンデンサC2の静電容量をc2、抵抗R2の抵抗値をr2とする。
【0048】
このハイパスフィルタとこのローパスフィルタとで構成されるバンドパスフィルタの通過帯域(fCL=1/2πc1r1、fCH=1/2πc2r2)と、コンデンサC1で得られた微分波形の信号周波数とをマッチングさせることで、不要な帯域成分を除去できる。なお、微分波形の信号周波数は、キャリッジの移動速度に依存する。
【0049】
図4は、バンドパスフィルタの通過帯域の設定例を説明するための説明図である。
図4に示されたように、バンドパスフィルタの通過帯域(fCL〜fCH)は、端子Aでの電圧変化の傾きに応じて設定されることが望ましい。
【0050】
コンパレータ45bは、出力発生部45eの出力すなわちオペアンプ45aの出力を、しきい値用の基準電圧Vref2と比較し、オペアンプ45aの出力が基準電圧Vref2より大きいと検出出力を発生する。コンパレータ45cは、出力発生部45eの出力すなわちオペアンプ45aの出力を、しきい値用の基準電圧Vref3と比較し、オペアンプ45aの出力が基準電圧Vref3より小さいと検出出力を発生する。
【0051】
FPGA45dは、制御部の一例であり、コンパレータ45b、およびコンパレータ45cが検出出力を発生すると、その瞬間のリニアセンサ75の検出出力(カウント値)をハードウエア的に内蔵メモリに格納する。
【0052】
CPU10は、FPGA45dに格納されたリニアセンサ75の検出出力(カウント値)を読み出すことで、用紙5のエッジ位置を取得する。
【0053】
以上によって、印字中キャリッジ70のスキャンごとに、高精度に用紙5の両端のエッジ位置が検知可能となる。
【0054】
次に、検知されたエッジ位置から、作画領域を計算する方法を説明する。
図5は、印刷開始時の用紙5のエッジ位置Y1、Y2を示したものであり、いずれもエッジセンサ40によって前述の手段で検知されたものである。
【0055】
当初の用紙幅YW1=Y2−Y1の関係にあり、また作画領域は一端のエッジ位置Y1からあらかじめ定められたオフセット量ΔD0分用紙5の内側に位置するD1から、作画領域幅DW1の幅を加算したD2までとなる。
【0056】
当初の用紙幅YW1=Y2−Y1の関係にあり、また作画領域は一端のエッジ位置Y1からあらかじめ定められたオフセット量ΔD0分用紙5の内側に位置するD1から、作画するイメージによって決まる作画領域幅DW1を加算したD2まで、すなわちDW1=D2−D1である。
【0057】
当初の用紙幅YW1=Y2−Y1の関係にあり、また作画領域は一端のエッジ位置Y1からあらかじめ定められたオフセット量ΔD0分、用紙5の内側に位置するD1から作画するイメージによって決まる作画領域幅DW1を加算したD2まで、すなわちDW1=D2−D1となる。
【0058】
印字中、図6に示すように用紙5がスキュー等によってずれた場合、仮にエッジ位置がY3、Y4と検知されたとすると、このときの用紙幅YW2=Y4−Y3が印刷開始当初と同じYW1と等しければ用紙50の伸び縮みはなく、単にスキューによって主走査方向にずれただけとなるから、Y3−Y1の用紙5のずれ量分だけ、印刷開始当初の作画領域に対してオフセットした作画領域を新たに設定すれば、用紙5に対する印刷開始当初の作画領域は維持されることになる。
【0059】
具体的には、新たな作画領域はD3=D1+(Y3−Y1)、D4=D2+(Y3−Y1)の範囲であり、当然D4−D3=DW1=DW2となる。
【0060】
以上に示したように、印刷開始当初の用紙幅YW1が維持されているときは、検知されたエッジ位置に対して当初のオフセット量ΔD0を適用するだけで、スキュー等の影響をなくすことが出来る。
【0061】
次に、用紙5に伸び縮み等があった場合の作画領域を計算する方法を説明する。
用紙5に伸び縮み等があった場合には、図7に示すように、検知されたエッジ位置Y5とY6が印刷開始当初のY1、Y2とは逆方向にずれていることが考えられるため、検知された用紙幅YW3=Y6−Y5はYW1には一致しない。
【0062】
ここで、伸び縮みの係数αは、α=YW3/YW1であり、これらから、用紙エッジ位置からのオフセット量ΔD3=ΔDxα、作画領域幅DW3=DW1xα、作画領域端はそれぞれD5=Y5+ΔD3、D6=D5+DW3、と算出することで、用紙5の一定の範囲で作画領域を維持することは可能となる。
【0063】
ここで、用紙5の伸び縮み等によって伸縮した作画領域に対して、同じ幅で与えられるピクセルデータをどう適用するかが問題となるが、一例として図8〜10に示す方法が考えられる。
【0064】
図8はかなり極端な例ではあるが、主走査方向の1ラインにドットを吐出するものとし、作画領域幅DW1はドットの数を基準とすると、10である。図中のドットには区別する為に便宜上1〜10の番号を付けた。
【0065】
用紙5が伸びたときに、作画領域幅DW3が11になったとすると、特定のドットを重複して吐出すれば、作画領域幅を11になる。図9(a)では、5の位置のドットを重複しているが、副走査方向に連続するラインについて、同様に5の位置のノズルを重複させてしまうと、完成した画の5の箇所が副走査方向に濃いラインとして視認される可能性があるため、図9(b)、(c)、(d)のようにこの重複させる箇所は副走査方向のライン毎に分散させることが好ましい。
【0066】
一方、用紙5が縮んで作画領域幅DW3が9となったときには、特定のドットを間引いて作画すればよいのだが、これも同様に、間引く箇所は、図10(a)、(b)、(c)、(d)に示すように副走査方向に分散させることが好ましい。
【0067】
実際には、720dpiで作画する際に、1000mmの作画領域が5mm伸びた場合、27581ドットが142ドット重複して吐出することになる。割合的には0.5%分、濃度が増すことにもなるが、全体から見れば微小である。
【0068】
重複、もしくは間引くドットの箇所は、乱数的に発生させることが考えられるが、主走査方向全域に、ほぼ均一に用紙5の伸縮に対応させるためには、まず、作画領域全体に対して、重複、もしくは間引くドットを均等に配置しておいて、その上でその位置を、乱数的にずらす手法が考えられる。
【0069】
たとえば、先の1000mmから5mm伸びた場合については、重複する142ドットを、トータル作画長27723ドットを142分割した位置(すなわち195ドット間隔)に仮置きしておき、それぞれに対して独立して発生させた乱数を適用して分散させることが考えられる。
【0070】
また、極端に多くのドットを重複させる必要が生じたときには、全体として濃度の変化をもたらしてしまう可能性がある。この場合は重複して吐出するドットの位置にはドットを吐出しないことも考えられる。吐出したほうが良いか、吐出しないほうが良いかは用紙5の種類によって異なるため、事前の実験に基づきパラメータとしてプリンタ装置1が有していることが好ましい。
【0071】
以上によって、スキューや用紙の伸縮があったとしても、結果的にその影響を受けずに印刷動作を行うことができる。
【0072】
図11は、記録装置の動作を説明するフローチャートである。用紙のエッジを検出し、用紙幅に変化があった場合に印刷する動作をフローチャートに沿って説明する。
【0073】
CPU10はメモリに格納されているプログラムに従って動作し、プリンタ装置1の制御を行う。
【0074】
まず、記録媒体である用紙のエッジを検出する(ステップS1)。検出した用紙のエッジから用紙の幅を演算し、さらに作画領域を演算し、演算結果をメモリに記憶する(ステップS2)。次に、新たに取得した作画領域と過去の作画領域から作画領域の伸縮情報、例えば伸縮率、伸縮量など、を演算し、結果をメモリに記憶する。(ステップS3)。
【0075】
次に伸縮情報から印刷する画像のドットを追加または間引きするか決定し、どの位置のドットを追加あるいは間引くか演算する(ステップS4)。例えば、伸縮量に応じて作画領域を分割し、その分割された範囲のランダムな位置のドットについて追加あるいは間引くことになる。ランダムな位置を特定する場合は、乱数を発生させ、その乱数に基づいて位置決めする。
【0076】
使用している記録媒体の情報が予めメモリに記憶されている。その記録媒体の情報を取得する(ステップS5)。この取得した記録媒体の情報とステップS4で演算したドットの追加あるいは間引き位置の情報から、ドットを間引く、ドットを追加する、ドットをついかしないなどのドットの吐出に関する吐出情報を生成する(ステップS6)。
このドット情報に基づいて、ステップ4で演算された位置のドットの重複印刷、間引き印刷をする(ステップS7)。
【0077】
また図12に示すように、印刷ヘッド60をスタガ配置などと呼ばれる用紙送り方向にずらして設置しているときには、先行する印刷ヘッド60の吐出したインクの影響による用紙5のきわめて短時間で発生する伸びのために、後続するヘッドの吐出の着弾位置がずれてしまうことがあるが、この場合でも、先行する印刷ヘッド60による伸び量をエッジセンサ40aおよび40bによって検知すれば、ずれを補正した作画を行う応用が可能である。
【0078】
具体的には、図12のように、キャリッジ70上において、M色、K色の先行する印刷ヘッド60の近傍に位置するエッジセンサ40aと、後続するY色、C色の印刷ヘッド60の近傍に位置するエッジセンサ40bの2つのセンサを使えば実現できる。エッジセンサ40aはM色及びK色の印刷ヘッド60の制御に対して用紙5のエッジの情報を与え、エッジセンサ40bはY色及びC色の印刷ヘッド60の制御に対して用紙5のエッジの情報を与える。例えば、図12のようにエッジセンサ40aは、M色及びK色の印刷ヘッド60の先頭の走査方向のキャリッジ70の端部に配置されている。エッジセンサ40bは、Y色及びC色の印刷ヘッド60の先頭の走査方向のキャリッジ70の端部に配置されている。エッジセンサ40aは、M色、K色の印刷ヘッド60の先頭位置における用紙5のエッジを検出できる。エッジセンサ40bは、Y色、C色の印刷ヘッド60の先頭位置における用紙5のエッジを検出できる。また、同じラインを印字する各列の印刷ヘッド60のノズル位置における用紙5のエッジを検出させるため、2列に配列された印刷ヘッド60の各列の、例えば先頭、後端、中央などの、同様の位置で検出することが望ましい。
【0079】
まず、先行して作画する、M色、K色の印刷ヘッド60に対しては、これまでに述べた手法に基づき、エッジセンサ40aを用いて、スキューや用紙5の伸縮に応じた作画を行う。
【0080】
一方、後続して作画するY色、C色の印刷ヘッド60で作画する際には、先行する印刷ヘッド60による作画の結果、用紙5が主走査方向に伸びた状態で搬送されてくることがあるが、この用紙50の伸縮による変化量を、エッジセンサ40bで検知するので、その変化量に応じた作画を行えば、結果的に先行する印刷ヘッド60との着弾位置ずれはなくせる。
これは、特にインクの吐出によって短時間で伸縮がおきやすいメディアについて有効である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・プリンタ装置、10・・・CPU、40・・・エッジセンサ、45・・・センサ制御回路、45a・・・オペアンプ、45b・・・コンパレータ、45c・・・コンパレータ、45d・・・FPGA、53・・・プラテン、60・・・印刷ヘッド、70・・・キャリッジ、C1・・・コンデンサ、C2・・・コンデンサ、R1・・・抵抗、R2・・・抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷が行われる記録媒体のエッジを検出しながら印刷動作を行う記録装置であって、
自己の検出領域に前記記録媒体がある場合に、第1レベルの信号を出力し、該検出領域に該記録媒体がない場合に該第1レベルと異なる第2レベルの信号を出力するセンサと、
前記センサの前記検出領域が前記記録媒体のエッジを横切るように、前記センサを搬送する搬送部と、
前記センサが出力した信号のレベルが変化したときに変化検知信号を出力する出力発生部と、
前記出力発生部が出力した変化検知信号の変化に基づいて、前記記録媒体のエッジを検知するエッジ検知制御部と、
前記センサの位置を検出する位置検出手段と、
検知された前記記録媒体の左右のエッジと前記位置検出手段によって検出する位置に基づいて前記記録媒体幅と該幅の変化量を計算し、該幅に基づいて前記記録媒体上への作画領域を計算する作画領域計算部と、
計算された前記作画領域に対して前記変化量に基づいて印刷動作を行う印刷制御部と、を含む記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
前記作画領域計算部は前記記録媒体の前記エッジから一定の距離を保つように前記作画領域を計算することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の記録装置において、
前記作画領域計算部は前記記録媒体幅に基づき、前記記録媒体の左右方向の一定の範囲内を保つように前記作画領域を計算することを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記作画領域計算部によって計算された前記作画領域が初期状態から変化した場合に、前記作画領域に対して所定のドットを重複することで増やすか、間引きすることで減らすことによって、前記記録媒体の作画領域幅を変化させる印刷動作を行う印刷制御部を含む記録装置。
【請求項5】
記録媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、検出領域に前記記録媒体がある場合に第1レベルの信号を出力し、該検出領域に前記記録媒体がない場合に該第1レベルと異なる第2レベルの信号を出力するセンサを含む記録装置の記録方法であって、
前記センサの検出領域が前記記録媒体のエッジを横切るように、前記センサおよび前記印刷ヘッドを搬送する搬送ステップと、
前記センサが出力した信号のレベルが変化したときに変化検知信号を出力する出力発生ステップと、前記変化検知信号の変化に基づいて前記記録媒体のエッジを検出するエッジ検出ステップと、
前記エッジ検出に基づいて前記印刷ヘッドを制御する制御ステップと、
検知された前記記録媒体の左右端のエッジに基づいて前記記録媒体上の作画領域を計算する作画領域計算ステップと、
前記エッジ検出に基づいて前記記録媒体の幅の変化量を計算する変化量計算ステップと、
計算された前記作画領域と前記変化量に基づいて印刷動作を行う印刷制御ステップと、を含む記録方法。
【請求項6】
前記搬送部に搭載され、前記記録媒体にインクを吐出して印刷する第1の印刷ヘッドと前記第1の印刷ヘッドに対して前記記録媒体の搬送方向下流にずれた位置に配置された第2の印刷ヘッドを少なくとも有し、
前記センサは前記第1の印刷ヘッドが印刷する位置に対応する前記記録媒体のエッジを検出するための第1センサと前記第2の印刷ヘッドが印刷する位置に対応する前記記録媒体のエッジを検出するための第2センサを少なくとも有し、
前記印刷制御部は、前記第1センサの出力に基づいて計算された前記作画領域および前記変化量に基づいて前記第1の印刷ヘッドを制御して前記印刷動作を行い、前記第2センサの出力に基づいて計算された前記作画領域および前記変化量に基づいて前記第2の印刷ヘッドを制御して前記印刷動作を行うことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−71575(P2012−71575A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109427(P2011−109427)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】