説明

記録装置

【課題】吐出面に付着した液体を効率よく回収する。
【解決手段】インク吐出面3aを払拭するワイプ動作において、ワイパ62に係るインク吐出面3aとの接触領域が、払拭方向に対して傾斜している。ワイパ62の払拭方向に関する下流側の面に隣接して吸引ボックス63が配置されている。吸引ボックス63の上面に、吸引室に連通するとともにワイパ62の延在方向に配列された吸引口63a、63bが形成されている。吸引ポンプが吸引室の空気を吸引することによって、ワイパ62によって払拭されたインクが吸引口63a、63bから吸引される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出して記録媒体に画像を記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙等の記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録するインクジェットプリンタとして、記録媒体にインク滴を吐出する複数のノズルが開口するインク吐出面を有するインクジェットヘッドを備えるものがある。そして、このような記録装置において、インク吐出面をクリーニングするため、板形状を有する弾性部材からなるワイパを、インク吐出面に接触させつつ移動させることによってインク吐出面を払拭することが知られている。しかしながら、ワイパでインク吐出面を払拭すると、払拭されたインクがワイパに沿ってインク吐出面の外側に押し出され、インク吐出面の周辺にインクが付着して汚れることがある。そこで、インク吐出面に付着した不要なインクを吸引装置で直接吸引することによって、インク吐出面をクリーニングする技術がある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−150523号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術によると、吸引装置において吸引ムラが生じることがあり、インクを効率よく回収することが難しく、インク吐出面に不要なインクが残存することがある。
【0005】
そこで、本発明は、吐出面に付着した液体を効率よく回収することができる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、液滴を吐出する複数のノズルが開口する吐出面を有する記録ヘッドと、前記吐出面を払拭するための板形状を有するワイパと、前記ワイパに隣接して設けられており、前記ワイパが払拭した前記吐出面からの液体を吸引する吸引手段と、前記ワイパの先端が前記吐出面と接触した状態で、前記ワイパ及び前記記録ヘッドの少なくともいずれかを相対移動させる移動機構とを備えており、前記ワイパに係る前記吐出面と接触する接触領域の延在方向が、前記移動機構に関する移動方向に対して傾斜しており、前記吸引手段が、少なくとも前記ワイパの前記延在方向に係る端部のうち前記移動方向に関する上流側の端部近傍において液体を吸引する。
【0007】
本発明によると、ワイパの吐出面との接触領域が移動方向に対して傾斜しているため、ワイパが吐出面を払拭したとき、ワイパによって払拭された液体が、ワイパに係る端部のうち移動方向に関する上流側の端部に向かって移動する。そして、吸引手段がワイパの当該端部に移動してきた液体を吸引するため、吐出面に残存する液体を効率よく回収することができる。
【0008】
本発明においては、前記吸引手段が、前記ワイパに係る前記移動方向の下流側の面に配置されているとともに前記ワイパの接触領域に向かって開口した吸引口を介して外部と連通している吸引室と、前記吸引室内の空気を吸引する吸引ポンプとを有しており、前記吸引口が、前記ワイパの前記延在方向に係る端部のうち前記移動方向に関する上流側の端部近傍に形成されていることが好ましい。これによると、吐出面に残存する液体をより効率よく回収することができる。
【0009】
このとき、前記吸引口が、前記ワイパの前記延在方向に係る端部のうち前記移動方向に関する下流側の端部近傍にさらに形成されていることがより好ましい。これによると、吐出面に残存する液体を確実に回収することができる。
【0010】
さらに、このとき、複数の前記吸引口が、前記ワイパの前記延在方向に係る両端部の間に配列するように形成されていることがさらにより一層好ましい。これによると、吐出面に残存する液体をさらにより確実に回収することができる。
【0011】
本発明においては、前記吸引手段が、多孔質体であってもよい。これによると、吸引手段を安価に構成することができる。
【0012】
このとき、前記吸引手段が、前記多孔質体内の液体を吸引する吸引ポンプをさらに備えていることが好ましい。これによると、吸引手段を安価に構成しつつ多量の液体を回収することができる。
【0013】
さらに、本発明においては、前記多孔質体が、前記ワイパの前記延在方向に係る端部のうち前記移動方向に関する上流側の端部に固定されていてもよい。これによると、ワイパの端部から液体がはみ出るのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。図2は、インクジェットプリンタ要部の概略平面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、8つのインクジェットヘッド2を有するカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ1には、図1中左方に給紙機構11が、図1中右方に排紙部12が、それぞれ構成されている。
【0017】
インクジェットプリンタ1の内部には、給紙機構11から排紙部12に向かって記録媒体である用紙が搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙機構11には、用紙トレイ21内に収納された複数の用紙のうち、最も上方に位置する用紙を送り出すピックアップローラ22が設けられている。ピックアップローラ22によって用紙は図1中左方から右方へ送られる。用紙搬送経路の中間部には、二つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とが配置されている。搬送ベルト8の外周面、すなわち搬送面8aにはシリコーン処理が施され粘着性を有している。給紙機構11のすぐ下流側には、搬送ベルト8と対向する位置に押さえローラ5が配置されており、給紙機構11から送り出された用紙を搬送ベルト8の搬送面8aに押さえ付けている。これにより、搬送面8aに押さえ付けられた用紙は、搬送面8aの粘着力により保持されながら、下流側に向かって搬送される。このとき、用紙搬送方向下流側のベルトローラ6は、図示しない駆動モータから駆動力が与えられ、図1中時計回り(矢印A方向)に回転している。
【0018】
用紙搬送経路の中間部における、インクジェットヘッド2と対向する領域が、用紙に画像が形成される画像形成領域となっている。さらに、用紙搬送経路に沿って搬送ベルト8のすぐ下流側には、剥離プレート13が設けられている。剥離プレート13は、搬送ベルト8の搬送面8aに保持されている用紙を搬送面8aから剥離して、右方の排紙部12へ向けて送るように構成されている。
【0019】
搬送ベルト8によって囲まれた領域内には、インクジェットヘッド2と対向する位置において、搬送ベルト8の内周面と接触することによって、搬送ベルト8を支持するほぼ直方体形状のプラテン9が配置されている。これによって搬送される用紙がインクジェットヘッド2と所定の間隙を介して対向することになり、所望の画品質の画像が形成される。
【0020】
8つのインクジェットヘッド2は、用紙搬送方向(図2中下方から上方に向かう方向)Bに2列の千鳥状に配置されている。そして、用紙搬送方向Bの上流側から順に現れる2つずつのインクジェットヘッド2が、それぞれインクジェットヘッド組を形成している。これにより、4つのインクジェットヘッド組が用紙搬送方向Bに配列されている。これら4つのインクジェットヘッド組は、互いに異なる4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応しており、各インクジェットヘッド2は、対応する色のインク滴を吐出する。また、各インクジェットヘッド組の2つのインクジェットヘッド2は、用紙搬送方向Bに関して一部がオーバーラップするように固定されているとともに、用紙搬送方向Bに直交する主走査方向に関して互いに隣接している。つまり、このインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。
【0021】
インクジェットヘッド2は、用紙搬送方向Bに直交した方向に長尺な細長い直方体形状となっている。また、インクジェットヘッド2の下端には、ヘッド本体(圧力室を含むインク流路が形成された流路ユニットと、圧力室のインクに圧力を与えるアクチュエータとが貼り合わされた積層体)3を有している。
【0022】
ヘッド本体3の上面には、カバー14によって部分的に覆われた、インクを一時的に貯溜するリザーバユニット10が固定されている。リザーバユニット10の内部には、図示しないインクタンクから供給されたインクを貯溜するインク溜まりが形成されている。リザーバユニット10のインク溜まりに貯溜されたインクは、ヘッド本体3の図示しないインク流路に供給される。ヘッド本体3の底面には、インク流路に連通する微小径のノズル3b(図5参照)の開口が多数並べて形成されており、この底面が搬送面8aと対向するインク吐出面3aとなっている。このインク吐出面3aの表面には図示しない撥水膜が形成されている。この撥水膜が、ノズル3bの開口の周囲に余分なインクが付着するのを防止している。
【0023】
ヘッド本体3は、インク吐出面3aと搬送ベルト8の搬送面8aとが平行となり、且つこれらの面の間に少量の隙間が形成されるように配置されている。この隙間部分が用紙搬送経路の一部として構成されている。この構成で、搬送ベルト8上を搬送される用紙が8つのヘッド本体3のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙の上面すなわち印刷面に向けてノズル3bから各色のインクが吐出されることで、用紙上に所望のカラー画像が印刷される。
【0024】
8つのインクジェットヘッド2はフレーム4に固定されている。フレーム4の下方の面には、各インクジェットヘッド2のインク吐出面3aがそれぞれ露出している。本実施形態においては、各インク吐出面3aとフレーム4の下面とが同一平面に配置されている。これにより、インク吐出面3a間の隙間がフレーム4によって塞がれている。なお、フレームが、フレームの下面のさらに下方にインク吐出面3aが位置するように各インクジェットヘッド2を支持し、インク吐出面3a間の隙間を、別途準備した板部材(フィラープレート)で塞ぐように構成してもよい。また、フレーム4は、インクジェットプリンタ1に設けられた図示しないフレーム移動機構により、上下に移動可能に支持されている。
【0025】
通常、フレーム4は、8つのインクジェットヘッド2が用紙に対してインク滴を吐出する印刷位置(図4(a)参照)に配置されており、インクジェットヘッド2のメンテナンス時にだけ、フレーム移動機構によって移動されて、8つのインクジェットヘッド2が印刷位置よりも上方にあるヘッドメンテナンス位置に配置される(図4(b)参照)。
【0026】
次に、インクジェットヘッド2に対してメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70について説明する。図2に示すように、インクジェットプリンタ1には、ヘッド本体3に対するメンテナンスの1つであるインク吐出面3aのクリーニング(ワイプ動作)を行うためのメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2の左側に配置されている。メンテナンスユニット70は、インクジェットプリンタ1の用紙搬送方向Bに関する両端近傍に配置されているとともに用紙搬送方向Bに直交する方向(インク吐出面3aの長手方向)に延在する一対のシャフト72と、一対のシャフト72に対して摺動自在に支持されているトレイ71と、トレイ71の上面に配置された8つのワイピングユニット60とを有している。
【0027】
トレイ71の上面には、インク吐出面3aの長手方向に沿って延在する8つのガイドレール73が形成されている。8つのガイドレール73は、8つのインクジェットヘッド2に係るインク吐出面3aとそれぞれ対応するように、用紙搬送方向Bに千鳥状に配列されている。各ガイドレール73には、図示しないアクチュエータによってガイドレール73上を走行する8つのワイピングユニット60が取り付けられている。これにより、ワイピングユニット60がインク吐出面3aの長手方向に沿って走行可能となっている。このように、このアクチュエータとガイドレール73とがワイピングユニット60を移動させる移動機構を構成している。
【0028】
そして、後述するように、インク吐出面3aを払拭するワイプ動作を行うときには、各ワイピングユニット60が、インク吐出面3aの長手方向に関するトレイ71の内側から外側に向かう払拭方向に移動する。このとき、8つのガイドレール73が用紙搬送方向Bに千鳥状に配列されているため、用紙搬送方向Bに関して隣接するワイピングユニット60に関する払拭方向が互いに反対方向となっている(図5参照)。これによって、インク吐出面3aの払拭終了部分にインク滴が残留していても、このインク滴が落下して用紙を汚すことがなくなる。つまり、払拭終了部分は印刷領域の外側に位置している。
【0029】
図3をさらに参照しつつ、ワイピングユニット60について説明する。図3は、ワイピングユニット60の構造を示す図であり、図3(a)は、ワイピングユニット60の上面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すIIIB−IIIB線の断面図である。図3に示すように、ワイピングユニット60は、インク吐出面3aを払拭するためのワイパ62と、ワイパ62によって払拭されたインクを吸引する吸引ボックス63と、ワイパ62及び吸引ボックス63を支持するホルダ61とを有している。
【0030】
ワイパ62は、ゴムや樹脂などの弾性材料からなるとともに水平方向に延在する矩形状の板部材であり、インク吐出面3aを含む平面に対して所定の角度(鋭角側の角度)で接するように傾斜した状態でホルダ61に支持されている。なお、ここで所定の角度は45°以下であることが好ましい。そして、ワイパ62に係る払拭方向の下流側の面に、テーパ面62aが形成されている。テーパ面62aは、ワイパ62によってインク吐出面3aを払拭するワイプ動作を行うときに、インク吐出面3aと接触する接触領域を含んでいる。そして、ワイピングユニット60は、ワイパ62の延在方向がワイプ動作に係る払拭方向(図5矢印参照)に対して傾斜するように配置されている。
【0031】
吸引ボックス63は一方向に延在する直方体形状を有する箱体であり、ワイパ62に係る払拭方向の下流側の面に隣接するようにホルダ61に支持されている。また、ホルダ61の上面には、ワイパ62のテーパ面62a(接触領域)に向かって上方に開口しているとともにテーパ面62aの延在方向に配列された2つの吸引口63a及び3つの吸引口63bが形成されている。2つの吸引口63aは、テーパ面62aの延在方向(ホルダ61の長手方向)に関する両端近傍に配置されており、3つの吸引口63bは、2つの吸引口63aの間に配列されている。そして、吸引口63aの開口面積が、吸引口63bより大きくなっている。
【0032】
吸引ボックス63内には、各吸引口63a、63bを介して外部と連通する吸引室63cが形成されている。そして、ワイプ動作において、吸引ポンプ65が、吸引ボックス63の底面に形成された吸引室63cと連通する開口に接続された吸引チューブ64を介して、吸引室63c内の空気を吸引する。これにより、ワイプ動作において、ワイパ62がインク吐出面3aを払拭したときに、ワイパ62に払拭されたインクが吸引口63a、63bを介して吸引ボックス63に吸引される。吸引ボックス63に吸引されたインクは、吸引チューブ64を介して図示しない廃インクタンクに貯溜される。
【0033】
メンテナンスユニット70は、後述のメンテナンスが行われないとき、図2に示すように、インクジェットヘッド2から離れた「退避位置」(図2において、インクジェットヘッド2と対向しない左側位置:図4(a)参照)にて静止している。そして、メンテナンスが行われるときには、予めフレーム4が上方のヘッドメンテナンス位置まで移動されることによって、8つのインク吐出面3aと搬送面8aとの間にメンテナンスユニット70用のスペースが確保された後に(図4(b)参照)、この退避位置からメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対向した「メンテナンス位置」へ水平移動されることになる(図4(c)参照)。このとき、インクジェットヘッド2はヘッドメンテナンス位置に配置されているので、ワイパ62の先端が、インク吐出面3aに接触しない。
【0034】
次に、メンテナンスユニット70の動作について、図4及び図5を参照しつつ説明する。インクジェットヘッド2に対するメンテナンスは、主には、ノズル3bへの異物付着やノズル3b近傍のインクの増粘によって生じる吐出不良を改善・回復するために行われる。このとき、所定量のインクがノズル3bから強制的に排出(パージ)される。また、メンテナンスは、このような吐出不良を予防するためにも行われる。このときには、所定数のインク滴がノズル3bから吐出(フラッシング)される。
【0035】
図4は、メンテナンスユニット70の動作状態を示す図であり、図4(a)はメンテナンスを行う前の状態を、図4(b)はインクジェットヘッド2がヘッドメンテナンス位置に移動したときの状態を、図4(c)はメンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動したときの状態を、図4(d)はワイプ動作を開始するときの状態をそれぞれ示している。図5は、ワイプ動作を行うときのワイピングユニット60の動作を示す図である。なお、図5においては、1つのインクジェット組に関する2つのインク吐出面3aを払拭するときの状態を示している。
【0036】
図4(a)に示すように、通常印刷を行っているときは、インクジェットヘッド2が印刷位置に、メンテナンスユニット70が退避位置にそれぞれ配置されている。そして、インクジェットプリンタ1が起動されたとき、インクジェットプリンタ1が起動された後に所定時間が経過したとき、ユーザからメンテナンス実行の指令があったとき、ノズル検査を行った結果、ノズル3bに吐出不良が確認されたときなどに、インクジェットヘッド2のメンテナンスが開始される。インクジェットヘッド2のメンテナンスが開始されると、図4(b)に示すように、フレーム移動機構によりフレーム4を上方に移動させて、インクジェットヘッド2をヘッドメンテナンスに配置させる。これにより、インク吐出面3aと搬送ベルト8との間にメンテナンスユニット70が配置可能なスペースが形成される。このとき、ヘッドメンテナンス位置にあるインクジェットヘッド2のインク吐出面3aを含む平面は、ワイパ62の先端から離隔している。
【0037】
そして、図4(c)に示すように、トレイ71をメンテナンス位置に移動させる。このとき、インク吐出面3aを含む平面がワイパ62の先端から離隔しているため、ワイパ62の先端がインク吐出面3aに接触することがない。また、トレイ71がメンテナンス位置に移動したとき、図2及び図5に示すように、各ワイピングユニット60が、対応するインク吐出面3aに係る払拭方向の上流側である払拭開始位置に位置している。この状態で、各インク吐出面3aに係る全てのノズル3bからトレイ71に向かってインクを強制排出するパージ動作を行う。これにより、ノズル3b内にある増粘したインクや不純物が排出され、吐出不良に陥っていたノズル3bが回復する。トレイ71上に排出されたインクは、トレイ71の表面を流れた後図示しない廃インクタンクに流れ落ちる。しかし、一部のインクは、インク滴となってインク吐出面3aに残留する。
【0038】
次に、インク吐出面3aを払拭するワイプ動作を行う。図4(d)に示すように、フレーム移動機構によりフレーム4を下方に移動させることによって、ワイパ62のテーパ面62aがインク吐出面3aに接触するように、インクジェットヘッド2をヘッドメンテナンス位置よりも若干下方に配置させる。この状態で、図5に示すように、各ワイピングユニット60をそれぞれ払拭方向に走行させる。これにより、ワイパ62がインク吐出面3aを払拭し、インク吐出面3aに残存したインクがワイパ62の払拭方向に関する下流側の面を伝って下方に流れ落ちる。流れ落ちたインクは、吸引口63a、63bを介して吸引ボックス63に吸引される。吸引ボックス63に吸引されたインクは、吸引チューブ64を介して図示しない廃インクタンクに貯溜される。そして、ワイピングユニット60が、インク吐出面3aを通過するとワイプ動作が完了する。
【0039】
このとき、ワイパ62のインク吐出面3aとの接触領域が払拭方向に対して傾斜しているため、ワイパ62によって払拭されたインクが、ワイパ62に係る端部のうち払拭方向に関する上流側の端部に向かって移動する。これにより、ワイパ62に払拭されたインクが、当該端部近傍に位置する吸引口63aに向かって誘導される。当該吸引口63aは、吸引口63bよりも開口面積が大きくなっているため、誘導された多量のインクを積極的に吸引可能となっている。
【0040】
また、図5に示すように、1つのインクジェットヘッド組に着目すると、各ワイパ62の払拭方向に関する上流側の端部が、インクジェットヘッド組に係る配列方向(用紙搬送方向B)に関する両端近傍にそれぞれ配置されているため、ワイパ62に払拭されたインクが、インクジェットヘッド組に係る外側に向かって移動することになる。
【0041】
ワイプ動作が完了すると、インクジェットヘッド2を再びヘッドメンテナンス位置に戻した後に、メンテナンスユニット70をメンテナンス位置から退避位置に移動させつつ、ワイピングユニット60を払拭開始位置まで戻す。その後、インクジェットヘッド2を再び印刷位置に配置することによって、メンテナンスが完了する。
【0042】
以上のような本実施形態によるインクジェットプリンタ1によると、ワイパ62のインク吐出面3aとの接触領域が払拭方向に対して傾斜しているため、ワイパ62がインク吐出面3aを払拭したとき、ワイパ62によって払拭されたインクが、ワイパ62に係る払拭方向に関する上流側の端部に向かって移動する。そして、吸引ボックス63が、特に、払拭方向に関する上流側の端部に位置する吸引口63aにおいてワイパ62に係る当該端部に移動してきたインクを積極的に吸引するため、インク吐出面3aに残存するインクを効率よく回収することができる。
【0043】
また、吸引ポンプ65が吸引室63c内の空気を吸引することによって、ワイパ62に払拭されたインクが吸引ボックス63に吸引されるため、インク吐出面3aに残存するインクをさらに効率よく回収することができる。
【0044】
さらに、吸引ボックス63が、払拭方向に関する下流側の端部近傍に配置された吸引口63a、及び、2つの吸引口63aの間に配列された3つの吸引口63bを有しているため、インク吐出面3aに残存するインクを確実に回収することができる。
【0045】
<変形例>
本実施形態においては、吸引ポンプ65が吸引室63c内の空気を吸引することによって、吸引ボックス63がワイパ62に払拭されたインクを積極的に吸引する構成となっているが、他の機構によりワイパ62に払拭されたインクを吸引する構成であってもよい。例えば、図6に示すように、ワイパ162の延在方向に係る端部のうち払拭方向に関する上流側の端部にインクを吸引可能な多孔質体163が固定されており、吸引ポンプ165が、多孔質体163に吸引されたインクをさらに吸引する構成であってもよい。
【0046】
これによると、安価な構成で、払拭されたインクを多量に回収することができる。また、ワイパ162の払拭方向に関する上流側の端部からインクがはみ出るのを防止することができる。なお、吸引ポンプ165で多孔質体163に吸引されたインクをさらに吸引しない構成であってもよいし、ワイパ162の延在方向に係る両端部に多孔質体が配置される構成であってもよい。
【0047】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した実施形態では、吸引ボックス63が、払拭方向に関する両端近傍に配置された2つの吸引口63a、及び、2つの吸引口63aの間に配列された3つの吸引口63bを有する構成であるが、吸引ボックス63には、少なくとも払拭方向に関する上流側の端部近傍に配置された吸引口63aが形成されていればよく、吸引ボックス63が、他の吸引口63a、63bの少なくともいずれかを有さない構成であってもよい。
【0048】
加えて、上述の実施形態においては、ワイプ動作において、インクジェットヘッド2の位置を固定した状態で、ワイピングユニット60を走行させることによって、インク吐出面3aを払拭する構成であるが、ワイピングユニット60を固定した状態で、インクジェットヘッド2を走行させることによって、インク吐出面3aを払拭する構成であってもよいし、インクジェットヘッド2及びワイピングユニット60を同時に走行させることによって、インク吐出面3aを払拭する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタ要部の概略平面図である。
【図3】図2に示すワイピングユニットの構造を示す図である。
【図4】図2に示すメンテナンスユニットの動作状態を示す図である。
【図5】図2に示すワイピングユニットの動作を示す図である。
【図6】変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0050】
1 インクジェットプリンタ
2 インクジェットヘッド
3 ヘッド本体
3a インク吐出面
3b ノズル
4 フレーム
60 ワイピングユニット
61 ブロック
61 ホルダ
62a テーパ面
62 ワイパ
63 吸引ボックス
63a、63b 吸引口
63c 吸引室
64 吸引チューブ
65 吸引ポンプ
70 メンテナンスユニット
71 トレイ
72 シャフト
73 ガイドレール
162 ワイパ
163 多孔質体
165 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルが開口する吐出面を有する記録ヘッドと、
前記吐出面を払拭するための板形状を有するワイパと、
前記ワイパに隣接して設けられており、前記ワイパが払拭した前記吐出面からの液体を吸引する吸引手段と、
前記ワイパの先端が前記吐出面と接触した状態で、前記ワイパ及び前記記録ヘッドの少なくともいずれかを相対移動させる移動機構とを備えており、
前記ワイパに係る前記吐出面と接触する接触領域の延在方向が、前記移動機構に関する移動方向に対して傾斜しており、
前記吸引手段が、少なくとも前記ワイパの前記延在方向に係る端部のうち前記移動方向に関する上流側の端部近傍において液体を吸引することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記吸引手段が、前記ワイパに係る前記移動方向の下流側の面に配置されているとともに前記ワイパの接触領域に向かって開口した吸引口を介して外部と連通している吸引室と、前記吸引室内の空気を吸引する吸引ポンプとを有しており、
前記吸引口が、前記ワイパの前記延在方向に係る端部のうち前記移動方向に関する上流側の端部近傍に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記吸引口が、前記ワイパの前記延在方向に係る端部のうち前記移動方向に関する下流側の端部近傍にさらに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
複数の前記吸引口が、前記ワイパの前記延在方向に係る両端部の間に配列するように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記吸引手段が、多孔質体であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記吸引手段が、前記多孔質体内の液体を吸引する吸引ポンプをさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記多孔質体が、前記ワイパの前記延在方向に係る端部のうち前記移動方向に関する上流側の端部に固定されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−172952(P2009−172952A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16290(P2008−16290)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】