説明

記録装置

【課題】吐出面を密封するための構造を簡素化しつつ吐出面を確実に密封する。
【解決手段】2つのインクジェットヘッドが、各インク吐出面3aが露出するようにヘッドフレーム4aに支持されている。ヘッドフレーム4aには、位置決め孔41a、41bが形成されている。キャップ76が、環状突起76aと環状突起76aを下方から支持する矩形状の底板部76bと、環状突起76aの内側領域に配置された位置決めピン61a、61bとを有している。各位置決めピン61a、61bが対応する位置決め孔41a、41bに挿入されるように、環状突起76aをヘッドフレーム4aに当接させる。このとき、環状突起76aが2つのインク吐出面3aを囲んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出して記録媒体に画像を記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙等の記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録するインクジェットプリンタとして、記録媒体にインク滴を吐出する複数のノズルが開口するインク吐出面が形成されたインクジェットヘッドを有するものがある。このようなインクジェットヘッドにおいては、ノズル内に紙粉が侵入したりノズル内のインクが増粘したりすることによって、ノズルが吐出不良を起こすことがある。そこで、このような吐出不良を防止するため、休止時においては、キャップによってインク吐出面を密封する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−122423号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術では、複数のインク吐出面を1つのキャップで密封する。これにより、キャップ構造を簡素化することができる。一方、キャップが大型化するため、キャップを正確に位置決めして、インク吐出面を確実に密封することが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、吐出面を密封するための構造を簡素化しつつ吐出面を確実に密封することができる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、複数のノズルが開口する吐出面を有する複数の記録ヘッドと、前記記録ヘッドが配置される配置位置において貫通する穴が形成されており、前記配置位置においてそれぞれ対応する前記記録ヘッドの吐出面が前記穴に係る一方の開口から露出するように前記複数の記録ヘッドを支持するヘッドフレームと、前記ヘッドフレームに当接することによって、前記フレームから露出した複数の吐出面を囲む環状突起と、前記環状突起を支持しており、前記環状突起とともに前記複数の吐出面を覆う支持トレイと、前記ヘッドフレームと前記環状突起とが離隔する離隔状態と、前記ヘッドフレームと前記環状突起とが当接する当接状態とを選択的に取り得るように、前記ヘッドフレーム及び前記支持トレイの少なくともいずれかを移動させる移動機構とを備えている。前記支持トレイにおける前記環状突起の内側領域に、前記環状突起に係る前記ヘッドフレームとの当接部を含む平面に直交する方向に延在する1又は複数の位置決めピンが形成されており、前記ヘッドフレームには、前記環状突起が前記当接状態にあるときに、前記位置決めピンが挿入される位置決め孔が形成されている。
【0007】
本発明によると、複数の記録ヘッドの吐出面を、位置決めピンで位置決めされた環状突起で覆うことができるため、吐出面を密封するための構造を簡素化しつつ吐出面を確実に密封することができる。また、位置決めピンが内側領域に形成されているため、記録装置の小型化を図ることができる。
【0008】
本発明においては、前記内側領域において、点対称となる位置にそれぞれの前記位置決めピンが形成されていることが好ましい。これによると、環状突起の位置決めがさらに正確になるため、吐出面をより確実に密封することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記内側領域の中心に前記位置決めピンが形成されていることがより好ましい。これによると、温度環境の変化によって環状突起及び支持トレイの形状が変化しても、環状突起の内側領域の中心を基準として変化が均一化されて、吐出面を密封することができる。
【0010】
さらに、本発明においては、前記内側領域が一方向に延在しており、前記内側領域の中心を除く位置に1又は複数の前記位置決めピンがさらに形成されており、前記内側領域の中心を除く位置に形成された前記位置決めピンが挿入される前記位置決め孔が、前記中心から離隔する方向に細長い長孔になっていることが好ましい。これによると、温度環境の変化によって位置決めピンの位置が変化しても、位置決めピンを位置決め孔に挿入させることができる。
【0011】
加えて、本発明においては、前記位置決めピンが、前記内側領域に係る前記延在方向に関する両端近傍に形成されていることが好ましい。これによると、環状突起の位置決めがさらに正確になる。
【0012】
また、本発明においては、前記複数の記録ヘッドが、前記吐出面の延在方向と直交する直交方向に千鳥状に配列されており、前記環状突起は、前記当接状態にあるときに、前記直交方向に関して互いに隣接する前記吐出面を2つずつ囲み、前記内側領域の中心に配置された前記位置決めピンに対応する前記位置決め孔が、前記環状突起が囲む2つの前記吐出面に係る中心同士を結ぶ線分の中心に対応して形成されていることがより好ましい。これによると、環状突起をコンパクトにすることができる。また、内側領域の中心と2つの吐出面に関する中心とが一致するため、当接状態における環状突起がヘッドフレームを押圧する押圧力が均一となる。
【0013】
さらに、本発明においては、前記離隔状態において、前記位置決めピンの先端が、前記環状突起の先端より、前記支持トレイから離れた位置にあることが好ましい。これによると、環状突起の位置決めが完了したのちに、環状突起がヘッドフレームに当接することになるため、環状突起が、ヘッドフレームに当接した後に位置ズレを起こすのを防止することができる。
【0014】
また、本発明においては、前記位置決め孔が、前記吐出面を含む面内において前記吐出面に隣接していることが好ましい。これによると、吐出面をより確実に密封することができる。
【0015】
さらに、本発明においては、前記位置決めピンの硬度が、前記環状突起よりも高いことが好ましい。これによると、環状突起を正確に位置決めしつつ、環状突起をヘッドフレームに軽い押圧力で当接させることで吐出面を密封することができる。
【0016】
加えて、本発明においては、前記位置決めピンを含む前記支持トレイと前記環状突起とが二色成型によって形成されていてもよい。これによると、製造工程を簡略化することができる。
【0017】
また、本発明においては、前記当接状態において、前記位置決めピンと前記位置決め孔との間隙を封止する封止部材が、前記位置決めピン及び前記位置決め孔の少なくともいずれかに取り付けられていてもよい。これによると、位置決め孔を介して記録ヘッドの本体側に液滴が侵入するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。図2は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタ要部の概略平面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。図4は8つのインクジェットヘッドを下方から見たときの図である。
【0020】
インクジェットプリンタ1は、図1に示すように、8つのインクジェットヘッド2を有するカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ1には、図1中左方に給紙機構11が、図1中右方に排紙部12が、それぞれ構成されている。
【0021】
インクジェットプリンタ1の内部には、給紙機構11から排紙部12に向かって記録媒体である用紙が搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙機構11には、用紙トレイ21内に収納された複数の用紙のうち、最も上方に位置する用紙を送り出すピックアップローラ22が設けられている。ピックアップローラ22によって用紙は図1中左方から右方へ送られる。用紙搬送経路の中間部には、二つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とが配置されている。搬送ベルト8の外周面、すなわち搬送面8aにはシリコーン処理が施され粘着性を有している。給紙機構11のすぐ下流側には、搬送ベルト8と対向する位置に押さえローラ5が配置されており、給紙機構11から送り出された用紙を搬送ベルト8の搬送面8aに押さえ付けている。これにより、搬送面8aに押さえ付けられた用紙は、搬送面8aの粘着力により保持されながら、下流側に向かって搬送される。このとき、用紙搬送方向下流側のベルトローラ6は、図示しない駆動モータから駆動力が与えられ、図1中時計回り(矢印A方向)に回転している。
【0022】
用紙搬送経路の中間部における、インクジェットヘッド2と対向する領域が、用紙に画像が形成される画像形成領域となっている。さらに、用紙搬送経路に沿って搬送ベルト8のすぐ下流側には、剥離プレート13が設けられている。剥離プレート13は、搬送ベルト8の搬送面8aに保持されている用紙を搬送面8aから剥離して、右方の排紙部12へ向けて送るように構成されている。
【0023】
搬送ベルト8によって囲まれた領域内には、インクジェットヘッド2と対向する位置において、搬送ベルト8の内周面と接触することによって、搬送ベルト8を支持するほぼ直方体形状のプラテン9が配置されている。
【0024】
8つのインクジェットヘッド2は、用紙搬送方向(図2中下方から上方に向かう方向)Bに沿って千鳥状に配置されている。そして、用紙搬送方向Bの上流側から順に現れる2つずつのインクジェットヘッド2が、それぞれインクジェットヘッド組を形成している。これにより、4つのインクジェットヘッド組が用紙搬送方向Bに配列されている。これら4つのインクジェットヘッド組は、互いに異なる4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応しており、各インクジェットヘッド2は、対応する色のインク滴を吐出する。各インクジェットヘッド組の2つのインクジェットヘッド2は、用紙搬送方向Bに関して一部がオーバーラップしているとともに、用紙搬送方向Bに直交する主走査方向に関して互いに隣接するように固定されている。
【0025】
つまり、このインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。インクジェットヘッド2は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交した方向に長尺な細長い直方体形状となっている。また、インクジェットヘッド2の下端には、図1及び図3に示すように、ヘッド本体(圧力室を含むインク流路が形成された流路ユニットと、圧力室のインクに圧力を与えるアクチュエータとが貼り合わされた積層体)3を有している。
【0026】
ヘッド本体3の上面には、カバー14によって部分的に覆われた、インクを一時的に貯溜するリザーバユニット10が固定されている。リザーバユニット10の内部には、図示しないインクタンクから供給されたインクを貯溜するインク溜まりが形成されている。リザーバユニット10のインク溜まりに貯溜されたインクは、ヘッド本体3の図示しないインク流路に供給される。ヘッド本体3の底面には、図4に示すように、インク流路に連通する微小径のノズル(吐出口)3bの開口が多数並べて形成されており、この底面が搬送面8aと対向するインク吐出面3aとなっている。このインク吐出面3aの表面には図示しない撥水膜が形成されている。この撥水膜が、ノズル3bの開口の周囲に余分なインクが付着するのを防止している。
【0027】
ヘッド本体3は、インク吐出面3aと搬送ベルト8の搬送面8aとが平行となり、且つこれらの面の間に少量の隙間が形成されるように配置されている。この隙間部分が用紙搬送経路の一部として構成されている。この構成で、搬送ベルト8上を搬送される用紙が8つのヘッド本体3のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙の上面すなわち印刷面に向けてノズル3bから各色のインクが吐出されることで、用紙上に所望のカラー画像が印刷される。
【0028】
図2及び図4に示すように、用紙搬送方向Bに配列された4つのヘッドフレーム4aがフレーム4に固定されている。各ヘッドフレーム4aは、矩形状の板部材であり、対応するインクジェットヘッド組に係る2つのインクジェットヘッド2を支持する。ヘッドフレーム4aにおける各インクジェットヘッド2の配置位置には、主走査方向に延在した矩形状を有する2つの穴4bが形成されている。2つの穴4bは、用紙搬送方向Bに関して一部がオーバーラップしているとともに、主走査方向に関して互いに隣接するように形成されている。また、ヘッドフレーム4aは、各インク吐出面3aが穴4bに係る下方の開口からそれぞれ1つずつ露出するように、対応するインクジェットヘッド組の2つのインクジェットヘッド2を支持している。そして、本実施形態においては、各インク吐出面3aとヘッドフレーム4a及びフレーム4の下面とが同一平面に配置されている。これにより、インク吐出面3a間の隙間がヘッドフレーム4aによって塞がれている。
【0029】
なお、ヘッドフレームが2つのインクジェットヘッド2を所定の位置関係に支持してインクジェットヘッド組を構成する点は同じであるが、インクジェットヘッド組をフレーム4に組み付けた場合、インク吐出面3aとヘッドフレーム及びフレーム4の下面とが、必ずしも同一平面にある必要はない。このとき、インクジェットヘッド組を含む密閉空間が、後述のキャップ76によって形成されることが重要である。例えば、インクジェットヘッド2とフレーム4間に生じる隙間や段差を埋める板部材(フィラープレート)を別途配置する構成とし、フィラープレートをキャップが当接する位置に配置してもよい。このフィラープレートは、フレーム4と一体であってもよいし、インクジェットヘッド組側に固定されていてもよい。
【0030】
ヘッドフレーム4aには、後述するキャップ動作において、キャップ76を位置決めするための位置決めピン61a、61bがそれぞれ挿入される1つの位置決め孔41a及び2つの位置決め孔41bが形成されている。位置決め孔41aは、インクジェットヘッド組に係る各インク吐出面3aの中心同士を結ぶ線分の中心であるヘッドフレーム4aの中心に円形の開口を有する貫通孔である。位置決め孔41aの内壁面にはOリング41cが配置されている(図5参照)。位置決めピン61aが位置決め孔41aに挿入されたとき、Oリング41cの内周面と位置決めピン61aの外周面とが接触する。これにより、位置決め孔41aが封止される。
【0031】
さらに、2つの位置決め孔41bは、ヘッドフレーム4aの主走査方向に関する両端近傍における用紙搬送方向Bに関する中央であって、インク吐出面3aに隣接する位置に形成されている。また、各位置決め孔41bは、ヘッドフレーム4aの中心(位置決め孔41a)から離隔する方向(主走査方向)に細長い長孔となっており、その上面は封止されている(図5参照)。このように、位置決め孔41a、41bは、ヘッドフレーム4aの中心を通過して主走査方向に延在する同一直線上に配置されている。また、2つの位置決め孔41bは、ヘッドフレーム4aの中心を基準として互いに点対称に配置されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、フレーム4は、インクジェットプリンタ1に設けられたフレーム移動機構51により、上下に移動可能に支持されている。フレーム移動機構51は、図2に示すように、8つのインクジェットヘッド2に係る並びの外側(図2中上下)に配設されている。各フレーム移動機構51は、フレーム4を上下動する駆動源としての駆動モータ52と、各駆動モータ52の軸に固定されたピニオンギヤ53と、各ピニオンギヤ53と噛合されるようにフレーム4に立設されたラックギヤ54と、ピニオンギヤ53とでラックギヤ54を挟む位置に配置されたガイド56とを含んでいる。
【0033】
2つの駆動モータ52は、用紙搬送方向Bに関して互いに対向して配置されたインクジェットプリンタ1の本体フレーム1aに固定されている。2つのラックギヤ54は、上下方向に延在しており、下端部がフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。また、ラックギヤ54のピニオンギヤ53とは反対側の側面は、ガイド56と摺動可能に接している。ガイド56は、本体フレーム1aに固定されている。
【0034】
この構成において、2つの駆動モータ52を同調させて各ピニオンギヤ53を正及び逆方向に回転させると、ラックギヤ54が上下方向に移動する。このラックギヤ54の上下動に伴ってフレーム4、ヘッドフレーム4a及び8つのインクジェットヘッド2が上下方向に移動する。
【0035】
また、ガイド部59が、インクジェットヘッド2の長手方向の両側に配設されている。各ガイド部59は、棒状部材58とこれを挟む一対のガイド57とから構成されている。このうち、一対のガイド57は、図3に示すように上下方向に延在し、用紙搬送方向Bと直交する方向に関して、互いに対向する本体フレーム1bにそれぞれ固定されている。一方、棒状部材58は、ガイド57と同様に上下方向に延在し、本体フレーム1bと平行に対向配置されたフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。さらに、棒状部材58は、一対のガイド57間にそれぞれ摺動可能に挟まれている。このガイド部59により、フレーム移動機構51によってフレーム4が上下方向に移動したときに、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aが搬送面8aに対して傾くのを防ぐことができる。
【0036】
通常、フレーム4は、8つのインクジェットヘッド2が用紙に対してインク滴を吐出する印刷位置(図3に示す位置)に配置されており、インクジェットヘッド2のメンテナンス時にだけ、フレーム移動機構51によって移動されて、8つのインクジェットヘッド2が印刷位置よりも上方にあるヘッドメンテナンス位置に配置される。
【0037】
次に、インクジェットヘッド2に対してメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70について説明する。インクジェットプリンタ1には、図2及び図3に示すように、ヘッド本体3に対するメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2の左側(退避位置)に配置されている。メンテナンスユニット70は、図3に示すように、水平移動可能な2つのトレイ71、75を有している。このうち、トレイ71は、図2及び図3に示すように、上方に開口したほぼ方形の箱形状を有し、トレイ75を内包可能に構成されている。トレイ71とトレイ75とは、後述の係合手段によって着脱可能に結合されている。両者は、メンテナンス処理の内容に応じて着脱される。
【0038】
図3に示すように、トレイ71は、インクジェットヘッド2とは反対側の側面が開放されており、例えばパージ動作時のように両者の係合が解かれているとき、トレイ75を残して、トレイ71のみが移動可能となる。また、係合手段の係合状態に係わらず、メンテナンスユニット70が後述のように水平移動する際には、予めフレーム4が上方(図3中矢印C方向)のヘッドメンテナンス位置まで移動され、8つのインク吐出面3aと搬送面8aとの間にメンテナンスユニット70用のスペースが確保される。この後、メンテナンスユニット70が、図3中矢印D方向に水平移動されることになる。
【0039】
また、メンテナンスユニット70のすぐ下方には、廃インク受けトレイ77が、メンテナンスユニット70の退避位置の直下に配置されている。この廃インク受けトレイ77は、平面視でトレイ71を内包するサイズを有し、トレイ71が図2において右端まで移動したときでも、トレイ71のインクジェットヘッド2と反対側の辺縁部が重なる形状を有している。廃インク受けトレイ77のインクジェットヘッド2側の端部には、上下方向に貫通したインク排出孔77aが形成されている。インク排出孔77aは、トレイ71から廃インク受けトレイ77上に流れ込んだインクを図示しない廃インク溜めに流通させる。
【0040】
トレイ71内には、インクジェットヘッド2に近い側から順に、ワイパー72、インク受け取り部材73及びトレイ75が配置されている。トレイ75内には、図2に示すように、4つのキャップ76が配置されている。キャップ76は、環状突起76aと環状突起76aを下方から支持する矩形状の底板部76bと、環状突起76aの内側領域に配置された1つの位置決めピン61a及び2つの位置決めピン61bとを有している。各位置決めピン61a、61bは、底板部76bに立設されている。4つのキャップ76は、各ヘッドフレーム4aと対応するように、用紙搬送方向Bに配列されている。
【0041】
環状突起76aは、底板部76bの外周縁部から上方に突出している。これにより、環状突起76a及び底板部76bが一体となって上方に開口した凹部76cを画定している。凹部76cは、1つのインクジェットヘッド組に関する2つのインク吐出面3aを包含する平面形状を有している。また、環状突起76aは、後述するキャップ動作により、対応するヘッドフレーム4aの外周縁部のみと当接する。このとき、当該ヘッドフレーム4aが支持するインクジェットヘッド組に係る2つのインク吐出面3aが1つの凹部76cによって覆われる(図6参照)。このように、キャップ76は、2つのインク吐出面3aを覆うことが可能となっており、ノズル3b内のインクの乾燥を防止することができる。また、環状突起76aは、ゴムなどの弾性材料で構成されている。そのため、ヘッドフレーム4aと環状突起76aとが密着しやすく、ヘッドフレーム4aと環状突起76aとが当接したときに各凹部76cの気密性を保持することができる。
【0042】
1つの位置決めピン61a及び2つの位置決めピン61bは、底板部76bから上方(環状突起76aに係るヘッドフレーム4aとの当接部を含む平面に直交する方向)に延在する円柱形状を有している。また、位置決めピン61a、61bの各先端は先細りとなっている。位置決めピン61aは、環状突起76aの内側領域の中央に配置されている。また、2つの位置決めピン61bは、環状突起76aの内側領域に係る主走査方向に関する両端近傍における用紙搬送方向Bに関する中央に配置されている。
【0043】
このように、位置決めピン61a、61bは、環状突起76aの内側領域の中心を通過して主走査方向に延在する同一直線上に配置されている。また、2つの位置決めピン61bは、環状突起76aの内側領域の中心を基準として互いに点対称に配置されている。そのため、環状突起76aがヘッドフレーム4aに当接するとき、両者の当接部に対して環状突起76aからの押圧力が均一に加わることになる。これは、押圧力を下げても、キャップ時の密閉空間を確実に形成することに寄与する。
【0044】
また、位置決めピン61a、61bの各先端が、環状突起76aの先端より、底板部76bから離れた位置、すなわち上方に位置している。後述するキャップ動作において、位置決めピン61aが位置決め孔41aに、位置決めピン61aが、位置決め孔41bにそれぞれ挿入される。これにより、環状突起76aがインク吐出面3aと常に一定の位置関係を保った状態で、キャップ76の位置決めがなされる。
【0045】
なお、キャップ76は、環状突起76aが弾性材料で、位置決めピン61a、61bを含む底板部76bが硬質の樹脂材料でそれぞれ構成されるように、二色成型によって形成される。
【0046】
キャップ76は、バネ75a(図5(b)参照)によってトレイ75の底面に支持されつつ上方に付勢されている。また、キャップ76の側面とトレイ75の内壁面との間に僅かな空隙が形成されている。これにより、キャップ76の環状突起76aとヘッドフレーム4aとが当接したときに、バネ75aがその衝撃力を緩和する。さらに、ヘッドフレーム4aに対するキャップ76の平行度に多少誤差が生じていても、ヘッドフレーム4aに対する傾きにキャップ76が追従することが可能となる。そのため各凹部76c内を密閉空間とすることができる。
【0047】
トレイ71のインクジェットヘッド2側には、図2に示すように、ワイパー72及びインク受け取り部材73が保持された保持部材74が固定されている。保持部材74は、図2に示すように、平面形状がU字形状となっており、保持部材74の用紙搬送方向Bに沿う部分にワイパー72及びインク受け取り部材73が保持されている。一方、保持部材74の用紙搬送方向Bと直交する方向に延在した部分の端部には、係合手段を構成する凹部74aが形成されている。
【0048】
インク受け取り部材73は、図2及び図3に示すように、用紙搬送方向Bに配列した8つのインクジェットヘッド2全体の長さよりも若干長い複数の薄板73aを備えている。各薄板73aは、インクに対する毛管力に合わせた間隔で互いに平行に配置されている。さらに、インク受け取り部材73は、ワイパー72がインク吐出面3aに当接した状態において、インク吐出面3aとの間に僅かな隙間(例えば、0.5mm)が常に形成されるようになっている。各薄板73aは、ステンレス製である。
【0049】
ワイパー72は、薄板73aと同様に、用紙搬送方向Bに配列した8つのインクジェットヘッド2全体の長さよりも若干長く、その長手方向が用紙搬送方向Bに平行となるように配置されている。保持部材74には、図2に示すように、溝72aが用紙搬送方向Bの両端間に延びて形成されており、ワイパー72が溝72aの底面部に固定されている。ワイパー72によって拭き取られたインクは、溝72aからトレイ71を介して廃インク受けトレイ77に流れ落ちることになる。なお、ワイパー72は、ゴムなどの弾性材料からなる。
【0050】
トレイ71とトレイ75とは、上述したように係合手段によって着脱可能に係合されている。図2に示すように、係合手段は、トレイ71、75の図中上下の各辺近傍にそれぞれ設置され、主には、トレイ71の保持部材74に設けられた凹部74aと、トレイ75に回動可能に支持された引っ掛け部材83とから構成されている。引っ掛け部材83は、用紙搬送方向Bと直交する方向に延在しており、中央において回動可能に支持されている。また、引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2側の端部には、凹部74aに係合する引っ掛け部83aが形成されている。メンテナンスユニット70の上方には、各引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2と最も離れた端部83bに当接可能な当接部材84がそれぞれ回動可能に支持されている。これら当接部材84が回動し、端部83bに当接すると、引っ掛け部83aと凹部74aとの係合が解除される。一方、当接部材84が端部83bから離れると、引っ掛け部83aが凹部74aと係合し、図3に示す状態に戻る。
【0051】
メンテナンスユニット70は、後述のメンテナンスが行われないとき、図3に示すように、インクジェットヘッド2から離れた「退避位置」(図2において、インクジェットヘッド2と対向しない左側位置)にて静止している。そして、メンテナンスが行われるときに、この退避位置からメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対向した「メンテナンス位置」へ水平移動される。このとき、インクジェットヘッド2はヘッドメンテナンス位置に配置されているので、ワイパー72や環状突起76aの先端が、インク吐出面3aに接触しない。
【0052】
インク吐出面3aをキャップ76で覆うときには、トレイ71とトレイ75が係合手段によって結合されて、メンテナンス位置に移動されることになる。各トレイ71、75は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交する方向に延びた一対のガイド軸96a、96bに移動可能に支持されている。トレイ71には、2つの軸受け部材97a、97bが設けられており、保持部材74の上下両側面から突出している。トレイ75には、2つの軸受け部材98a、98bが設けられており、トレイ75の上下両側面から突出している。また、一対のガイド軸96a、96bは、それぞれの両端が本体フレーム1b、1dに固定されており、両フレーム1b、1d間に互いに平行に配置されている。ここでは、それぞれネジで固定されている。このような構成で、各トレイ71、75がこのガイド軸96a、96bに沿って図中左右方向(矢印D方向)に移動される。
【0053】
ここで、トレイ71、75を水平移動させる水平移動機構91について説明する。水平移動機構91は、図2に示すように、モータ92、モータプーリ93、アイドルプーリ94、タイミングベルト95、及び、ガイド軸96a、96b等を有する。モータ92は、用紙搬送方向Bに平行に延びる本体フレーム1bの端部に形成された取り付け部1cにネジなどで固定されている。モータプーリ93は、モータ92に接続されており、モータ92の駆動に伴って回転する。アイドルプーリ94は、図2中最も左側の本体フレーム1dに回転可能に支持されている。タイミングベルト95は、ガイド軸96aと平行に配設され、モータプーリ93とこれと対になったアイドルプーリ94との間に架け渡されるように巻回されている。また、タイミングベルト95は、保持部材74に設けられた軸受け部材97aが接続されている。
【0054】
この構成において、モータ92を駆動すると、モータプーリ93が正又は逆方向に回転するに伴ってタイミングベルト95が走行する。このタイミングベルト95の走行により、タイミングベルト95に軸受け部97aを介して接続されたトレイ71が、図2左又は右方向に、即ち退避位置又はメンテナンス位置に向かう方向に移動する。なお、保持部材74の凹部74aと引っ掛け部83aとが係合しているときは、トレイ71内のワイパー72及びインク受け取り部材73と、トレイ75内のキャップ76とが一緒にメンテナンス位置又は退避位置に移動する。一方、引っ掛け部83aが凹部74aから離隔しているときは、トレイ71内のワイパー72及びインク受け取り部材74がメンテナンス位置又は退避位置に移動する。
【0055】
次に、メンテナンスユニット70の動作について、図5〜図7を参照しつつ以下に説明する。インクジェットヘッド2に対するメンテナンスは、主には、ノズル3bへの異物付着やノズル3b近傍のインクの増粘によって生じる吐出不良を改善・回復するために行われる。このとき、所定量のインクがノズル3bから強制的に排出(パージ)される。また、メンテナンスは、このような吐出不良を予防するためにも行われる。このときには、所定数のインク滴がノズル3bから吐出(フラッシング)される。本実施形態では、パージ時に廃棄されるインクをキャップ76で受け取る構成とされている。
【0056】
図5(a)はメンテナンスユニット70全体がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図5(b)はキャップ76の環状突起76aとインク吐出面3aとが接しているときの状況図である。図6は、キャップ76の環状突起76aとフレーム4とが当接しているときのヘッドフレーム4aと環状突起76aとの位置関係を示す平面図である。図7(a)はインクジェットヘッド2が印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動しメンテナンスユニット70のトレイ71がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図7(b)はインク受け取り部材73及びワイパー72によりインク吐出面3aに付着したインクを払拭しているときの状況図である。
【0057】
吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2を回復させるパージ動作を行う場合は、最初に、フレーム移動機構51によりフレーム4を上方に移動させる。このとき、2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、各ピニオンギヤ53を正方向(図3中時計回り方向)に回転させる。これにより、ラックギヤ54がピニオンギヤ53の回転に伴って上方に移動する。ラックギヤ54に固定されたフレーム4は8つのインクジェットヘッド2とともに上方に移動する。そして、フレーム4及びインクジェットヘッド2が、ヘッドメンテナンス位置に到達したときに駆動モータ52の回転を停止する。こうして、インク吐出面3aと搬送ベルト8との間にメンテナンスユニット70が配置可能なスペースが形成される。このようにヘッドメンテナンス位置にあるインクジェットヘッド2のインク吐出面3aを含む平面は、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動してきたときに、ワイパー72及び環状突起76aの先端と接触しない位置となっている。
【0058】
そして、インク吐出面3aをキャップ76で覆うキャップ動作を行う。なお、キャップ動作は、インクジェットプリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時において、ノズル3b内のインクの乾燥を防止するためにも行われる。そして、図5(a)に示すように、キャップ動作においては、トレイ71とトレイ75とが引っ掛け部材83によって連結された状態で、トレイ71及びトレイ75を水平移動機構91によりメンテナンス位置に移動させる。このとき、図6に示すように、キャップ76の環状突起76aが対応するヘッドフレーム4aの周囲縁部と対向する位置に配置される。このとき、キャップ76の各凹部76cが、対応するインクジェットヘッド組に係る2つのインクジェットヘッド2の各インク吐出面3aと対向している。さらに、このとき、各キャップ76に係る位置決めピン61a、61bが、対向するヘッドフレーム4aに係る位置決め孔41a、41bとそれぞれ対向している。
【0059】
次に、図5(b)に示すように、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2(フレーム4)を下方に移動させることによって、まず、位置決めピン61a、61bの先端が、対向する位置決め孔41a、41bにそれぞれ挿入される。このとき、キャップ76が熱によって膨張したとしても、位置決め孔41bが位置決め孔41a(ヘッドフレーム4aの中心)から離隔する方向に細長い長孔になっているため、位置決め孔41aに対する位置決めさえできていれば、位置決めピン61bが位置決め孔41bに確実に挿入される。位置決めピン61bが位置決め孔41bに挿入されると、キャップ76が、位置決めピン61aを中心として回転するのが規制される。これにより、キャップ76がヘッドフレーム4aに対して高精度に位置決めされる。
【0060】
そして、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2をさらに下方に移動させることによって、環状突起76aの先端が対応するヘッドフレーム4aに当接して当接状態となる。このとき、インクジェットヘッド組に係る2つのインクジェットヘッド2の各インク吐出面3aが1つの凹部76cによって覆われる。これにより、各インク吐出面3aが密封されてキャップ動作が完了する。
【0061】
キャップ動作が完了した状態で、インクタンク内のインクをインクジェットヘッド2へ強制的に送るポンプ(ともに図示せず)を駆動して、パージ動作を行う。このとき、所定量のインクがノズル3bからキャップ76の凹部76c内に排出される。このパージ動作によって、吐出不良の原因であるノズル3bの詰まりやノズル3b内のインクの増粘が解消される。凹部76c内に吐出されたインクは、図示しない排出流路を介してトレイ71内に流れ込み、さらに、トレイ71の底面に沿って図5中左側に移動し、廃インク受けトレイ77に流れ込む。そして、廃インク受けトレイ77のインク排出孔77aからパージされたインクが排出される。しかし、一部のインクは、インク滴となってインク吐出面3aに残留する。
【0062】
次に、ワイプ動作を行う。なお、ワイプ動作を行うときは、図7(a)に示すように、当接部材84を引っ掛け部材83の端部83bに当接させて引っ掛け部83aを凹部74aから離隔させ、凹部74aと引っ掛け部83aとの係合を解除させることによって、トレイ71とトレイ75との連結を解除し、トレイ71のみをメンテナンス位置に移動させてから開始する。
【0063】
ワイプ動作においては、トレイ71がメンテナンス位置に移動された状態で、フレーム移動機構51によってインクジェットヘッド2を下方に移動させる。このとき、インクジェットヘッド2は、トレイ71が左側(すなわち、退避位置)に移動するときに、ワイパー72の先端がインク吐出面3aと当接可能な位置であって、インク吐出面3aとインク受け取り部材73の薄板73aの上端との間に、例えば、0.5mmの隙間が形成されるような位置に配置される。そして、図7(b)に示すように、水平移動機構91によってトレイ71を、左側に移動させる。
【0064】
このとき、インク吐出面3aに付着しているインクのうち比較的大きな液滴は、インク受け取り部材73の各薄板73a間に毛管現象によって移動する。また、このとき、ワイパー72は、その上端がインク吐出面3aより上側にあるので、インク吐出面3aと撓みながら接触し、インク受け取り部材73によって除去できなかったインク吐出面3a上のインクを拭き取る。
【0065】
こうして、インク吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2をパージで回復し、パージによってインク吐出面3aに残留したインクを拭き取るメンテナンス動作が終了する。なお、上述したように、メンテナンス動作が終了したのちに、再びキャップ動作を行って、インク吐出面3aをキャップ76で密封することが好ましい。これにより、ノズル3b内のインクの乾燥を防止することができる。
【0066】
以上のような本実施の形態によるインクジェットプリンタ1によると、1つのインクジェットヘッド組に関する2つのインク吐出面3aを、位置決めピン61a、61bで位置決めされたキャップ76で覆うため、インク吐出面3aを密封するための構造を簡素化しつつインク吐出面3aを確実に密封することができる。また、位置決めピン61a、61bが環状突起76aの内側領域に形成されているため、インクジェットプリンタ1の小型化を図ることができる。
【0067】
また、環状突起76aの内側領域において、点対称となる位置にそれぞれの位置決めピン61bが形成されているため、環状突起76aの位置決めがさらに正確になる。
【0068】
さらに、環状突起76aの内側領域の中心に位置決めピン61aが形成されているため、温度環境の変化によって環状突起76a及び底板部76bの形状が変化しても、環状突起76aの内側領域の中心を基準として変化が均一化されて、インク吐出面3aを密封することができる。
【0069】
加えて、位置決めピン61bが挿入される位置決め孔41bが、位置決め孔41aから離隔する方向に細長い長孔になっているため、温度環境の変化によって位置決めピン61bの位置が変化しても、位置決めピン61bを位置決め孔41bに確実に挿入させることができる。
【0070】
また、長孔(位置決め孔41b)については、内側領域の中心を基準とした位置決めピン61bの変位量に対応して決めればよく、基準位置を他の部位に設定した場合に比べて、その長さを短くすることができる。また、長孔はこの中心位置に関して対象に配置されているので、形状とサイズとを同じに形成すればよく、加工が簡略化される。
【0071】
また、位置決めピン61bが、環状突起76aの内側領域に係る延在方向に関する両端近傍に形成されているため、環状突起76aの位置決めがより一層正確になる。
【0072】
さらに、環状突起76aが、当接状態にあるときに、用紙搬送方向Bに関して互いに隣接するインク吐出面3aを2つずつ囲み、環状突起76aの内側領域の中心に配置された位置決めピン61aに対応する位置決め孔41aが、用紙搬送方向Bに関して互いに隣接する2つのインク吐出面3aに係る中心同士を結ぶ直線の中心に対応して形成されている。このため、環状突起76aをコンパクトにすることができる。また、環状突起76aの内側領域の中心と2つのインク吐出面3aに関する中心とが一致するため、当接状態における環状突起76aがヘッドフレーム4aを押圧する押圧力が均一となる。
【0073】
加えて、位置決めピン61a、61bの先端が、環状突起76aの先端より、底板部76bから離れた位置にあるため、キャップ動作において、環状突起76aの位置決めが完了したのちに、環状突起76aがヘッドフレーム4aに当接することになる。これにより、環状突起76aが、ヘッドフレーム4aに当接した後に位置ズレを起こすのを防止することができる。
【0074】
また、位置決め孔41bが、インク吐出面3aに隣接しているため、インク吐出面3aをより確実に密封することができる。
【0075】
さらに、位置決めピン61a、61bの硬度が、環状突起76aよりも高いため、キャップ76を正確に位置決めしつつ、環状突起76aをヘッドフレーム4aに軽い押圧力で当接させることによってインク吐出面3aを密封することができる。
【0076】
加えて、位置決めピン61a、61bを含む底板部76bと環状突起76aとが二色成型によって形成されているため、製造工程を簡略化することができる。
【0077】
また、当接状態において、位置決めピン61aが位置決め孔41aに挿入されたとき、Oリング41cの内周面と位置決めピン61aの外周面とが接触し、位置決め孔41aが封止されるため、位置決め孔41aを介してインクジェットヘッド2の本体側にインクが侵入するのを防止することができる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した実施形態においては、環状突起76aの内側領域において、当該内側領域の中心に位置決めピン61aが、位置決めピン61aを基準とした互いに点対称となる位置に位置決めピン61bがそれぞれ形成される構成であるが、各位置決めピンは、環状突起76aの内側領域における任意の位置に形成されていてもよい。これによって、インクジェットヘッド2を含めて、各位置決めピン61a、61bやこれに対応した位置決め孔41a、41bの配置の自由度が高くなる。
【0079】
また、上述の実施形態においては、環状突起76aの内側領域に3つの位置決めピン61a、61bが形成される構成であるが、環状突起76aの内側領域に1つ、2つ、または4つ以上の位置決めピンが形成される構成であってもよい。
【0080】
加えて、上述の実施形態においては、位置決めピン61a、61bが円柱形状を有する構成であるが、位置決めピンが任意の断面形状を有していてもよい。例えば、三角形や四角形など断面形状を有していてもよい。なお、この場合、ヘッドフレームに形成される位置決め孔は、対応する位置決めピンの断面形状に合わせて形成されることが好ましい。これによって、位置決めピンが滑らかに位置決め孔に挿入されることになり、キャップ動作が確実に完了する。
【0081】
さらに、上述の実施形態においては、位置決めピン61bが挿入される位置決め孔41bが、位置決め孔41aから離隔する方向に細長い長孔となる構成であるが、当該位置決め孔が円形の開口を有していてもよい。
【0082】
また、上述の実施形態においては、環状突起76aが、当接状態にあるときに、用紙搬送方向Bに関して互いに隣接する前記吐出面を2つずつ囲む構成であるが、環状突起が3つ以上のインク吐出面3aを囲む構成であってもよい。この場合でも、基準となる位置決めピンに対応する位置決め孔は、これら複数のインク吐出面3aの配置の中心に極力近づけて形成することが好ましい。
【0083】
さらに、上述の実施形態においては、位置決めピン61a、61bの先端が、環状突起76aの先端より、底板部76bから離れた位置にある構成であるが、位置決めピン61a、61bの先端が、環状突起76aの先端より底板部76bから近い位置にあってもよいし、これらが底板部76bから同じ距離にあってもよい。
【0084】
また、上述の実施形態においては、位置決めピン61a、61bの硬度が、環状突起76aよりも高くなっているが、位置決めピン61a、61bの硬度が、環状突起76aよりも低くなっていてもよいし、両者の硬度が同じであってもよい。
【0085】
加えて、上述の実施形態においては、位置決め孔41aを封止するためのOリング41cが位置決め孔41a内に配置されている構成であるが、このような封止部材が位置決めピンに取り付けられていてもよいし、封止部材を用いない構成であってもよい。
【0086】
また、上述した実施形態においては、インクの種類毎に2つのインクジェットヘッド2からなるインクジェットヘッド組を構成しているが、インクの種類毎に3つ以上のインクジェットヘッド2からなるインクジェットヘッド組を構成してもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、パージ時に廃棄されるインクをキャップで受ける構成であったが、パージに限らずノズル3bから廃棄されるインクは、トレイ71で受け取る構成としてもよい。例えば、パージ時には、トレイ75を残して、トレイ71がメンテナンス位置に移動してインクを受け取る。このインクは、トレイ71から廃インク受けトレイ77へと流れて排出される。このパージ後には、図7(b)に示すように、トレイ71を退避位置に戻しながら、インク受け取り部材73やワイパー72によってインク吐出面3aの除去を行えばよく、パージ動作後にトレイ75(キャップ76)を切り離す操作が不要になる。この後、インクの増粘防止が必要であれば、上述のキャップ動作を行えばよい。このように、キャップは、主にインクの増粘防止のために用いられることになる。これによって、キャップのインクによる汚染が無くなり、インク吐出面3aが常に清浄なキャップによって封止されることになり、キャップ内の汚染物がノズル3bに付着することが無くなる。
【0088】
加えて、上述した実施形態においては、キャップ動作において、フレーム移動機構51がインクジェットヘッド2を移動させる構成であるが、キャップ動作において、トレイ75を移動させる構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタ要部の概略平面図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2に示す8つのインクジェットヘッドを下方から見たときの図である。
【図5】(a)は図2に示すメンテナンスユニット全体がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、(b)は図2に示すキャップの環状突起とヘッドフレームとが当接しているときの状況図である。
【図6】図2に示すキャップの環状突起とヘッドフレームとが当接しているときのインクジェットヘッドと環状突起との位置関係を示す平面図である。
【図7】(a)は図2に示すインクジェットヘッドが印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動しメンテナンスユニットのトレイがメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、(b)は図2に示すインク受け取り部材及びワイパーによりインク吐出面に付着したインクを払拭しているときの状況図である。
【符号の説明】
【0090】
1 インクジェットプリンタ
2 インクジェットヘッド
3 ヘッド本体
3a インク吐出面
3b ノズル
4 フレーム
4a ヘッドフレーム
4b 穴
8 搬送ベルト
8a 搬送面
41a、41b 位置決め孔
41c Oリング
61a、61b 位置決めピン
70 メンテナンスユニット
75 トレイ
75a バネ
76 キャップ
76a 環状突起
76b 底板部
76c 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが開口する吐出面を有する複数の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドが配置される配置位置において貫通する穴が形成されており、前記配置位置においてそれぞれ対応する前記記録ヘッドの吐出面が前記穴に係る一方の開口から露出するように前記複数の記録ヘッドを支持するヘッドフレームと、
前記ヘッドフレームに当接することによって、前記フレームから露出した複数の吐出面を囲む環状突起と、
前記環状突起を支持しており、前記環状突起とともに前記複数の吐出面を覆う支持トレイと、
前記ヘッドフレームと前記環状突起とが離隔する離隔状態と、前記ヘッドフレームと前記環状突起とが当接する当接状態とを選択的に取り得るように、前記ヘッドフレーム及び前記支持トレイの少なくともいずれかを移動させる移動機構とを備えており、
前記支持トレイにおける前記環状突起の内側領域に、前記環状突起に係る前記ヘッドフレームとの当接部を含む平面に直交する方向に延在する1又は複数の位置決めピンが形成されており、
前記ヘッドフレームには、前記環状突起が前記当接状態にあるときに、前記位置決めピンが挿入される位置決め孔が形成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記内側領域において、点対称となる位置にそれぞれの前記位置決めピンが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記内側領域の中心に前記位置決めピンが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記内側領域が一方向に延在しており、
前記内側領域の中心を除く位置に1又は複数の前記位置決めピンがさらに形成されており、
前記内側領域の中心を除く位置に形成された前記位置決めピンが挿入される前記位置決め孔が、前記中心から離隔する方向に細長い長孔になっていることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記位置決めピンが、前記内側領域に係る前記延在方向に関する両端近傍に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記複数の記録ヘッドが、前記吐出面の延在方向と直交する直交方向に千鳥状に配列されており、
前記環状突起は、前記当接状態にあるときに、前記直交方向に関して互いに隣接する前記吐出面を2つずつ囲み、
前記内側領域の中心に配置された前記位置決めピンに対応する前記位置決め孔が、前記環状突起が囲む2つの前記吐出面に係る中心同士を結ぶ線分の中心に対応して形成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記離隔状態において、前記位置決めピンの先端が、前記環状突起の先端より、前記支持トレイから離れた位置にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
前記位置決め孔が、前記吐出面を含む面内において前記吐出面に隣接していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
前記位置決めピンの硬度が、前記環状突起よりも高いことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記位置決めピンを含む前記支持トレイと前記環状突起とが二色成型によって形成されていることを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記当接状態において、前記位置決めピンと前記位置決め孔との間隙を封止する封止部材が、前記位置決めピン及び前記位置決め孔の少なくともいずれかに取り付けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−178846(P2009−178846A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17144(P2008−17144)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】