説明

記録装置

【課題】 記録装置本体が移動した場合において、排出された被記録媒体を載置するスタック部が破損する虞がない記録装置を提供すること。
【解決手段】 記録装置(1)は、被記録媒体(P)に対して記録を実行する記録部(4)と、回動軸(22)を支点とする回動により第1位置と第2位置とを有し、該第2位置のとき前記記録部(4)から排出された被記録媒体(P)を載置するスタック部(20)と、を備え、前記第2位置のときの前記スタック部(20)の自由端側(23)が該記録装置(1)と対向する面(T)に押し付けられたとき、前記スタック部(20)において前記第1位置側へ回動させる力Fを発生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に対して記録を実行する記録部と、回動軸を支点とする回動により第1位置と第2位置とを有し、該第2位置のとき前記記録部から排出された被記録媒体を載置するスタック部と、を備えた記録装置に関する。
【0002】
本願において、記録装置には、インクジェットプリンタ、ワイヤドットプリンタ、レーザープリンタ、ラインプリンタ、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
従来では、特許文献1に示す如く、大型サイズのロール紙を記録することができる記録装置があった。該記録装置は、給送部によってロール紙が給送方向下流側の記録部へ給送されるように設けられていた。そして、用紙は、前記記録部において記録され、排紙部によって排出されていた。排出された用紙は、通常、脚部にもうけられたスタッカに載置される。
【0004】
ところが、対応する用紙サイズの大型化に伴って、前記スタッカを大きくする必要がある。具体的には、用紙の長さ方向に前記スタッカを延長する必要がある。
【特許文献1】特開2007−261086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、用紙の長さ方向に前記スタッカを延長すると、記録装置本体に対して幅方向または奥行き方向に該スタッカが突出する構成となる。係る場合、ユーザは、脚輪を回転させて記録装置を室内の壁から離して使用しなければならない。例えば、前記スタッカが記録装置の後方において後方へ突出している場合、ユーザは、記録装置を前方へ移動し、記録装置本体を壁から離して使用する必要がある。このような使用形態は一般的ではない。また、ユーザの位置から前記スタッカの状態が視認することが困難な場合がある。従って、ユーザは、無意識に記録装置本体を壁側に押して移動させてしまう虞がある。係る場合、前記スタッカに無理な力が作用して該スタッカが破損する虞がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、何らかの原因により記録装置本体が移動した場合において、排出された被記録媒体を載置するスタック部が破損する虞がない記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、被記録媒体に対して記録を実行する記録部と、回動軸を支点とする回動により第1位置と第2位置とを有し、該第2位置のとき前記記録部から排出された被記録媒体を載置するスタック部と、を備え、前記第2位置のときの前記スタック部の自由端側が該記録装置と対向する面に押し付けられたとき、前記スタック部において前記第1位置側へ回動させる力を発生させることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、前記記録装置は、前記第2位置のときの前記スタック部の自由端側が該記録装置と対向する面に押し付けられたとき、前記スタック部において前記第1位置側へ回動させる力を発生させる。従って、前記スタック部が前記対向する面に押し付けられたとき、前記スタック部を前記第1位置側へ回動させて退避させることができる。即ち、前記対向する面に押し付けられたとき、自動で前記スタック部を収納することができる。
【0009】
例えば、前記記録装置が前記対向する面の一例である壁側に押されて移動した場合、前記第2位置状態である前記スタック部を前記第1位置側へ退避移動させることができる。その結果、前記スタック部が破損する虞がない。特に、前記第2位置の前記スタック部が、前記記録装置において前後左右の一方向へ突出した構成である場合に有効である。
また、前記記録装置がB0サイズ以上の被記録媒体に対して記録可能である場合、前記スタック部はB0サイズ以上の被記録媒体を載置することができるように大きく設ける必要がある。係る場合、前記第2位置の前記スタック部が、前記記録装置において前後左右の一方向へ突出した構成となる。係る場合に特に有効である。
【0010】
本発明の第2の態様の記録装置は、被記録媒体に対して記録を実行する記録部と、回動軸を支点とする回動により第1位置と第2位置とを有し、該第2位置のとき前記記録部から排出された被記録媒体を載置するスタック部と、を備え、前記第2位置のときの前記スタック部の自由端側である該記録装置と対向する面との当接点は、前記対向する面における前記回動軸を通る垂直線より前記スタック部の回動方向における前記第1位置側であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、前記第2位置のときの前記スタック部の自由端側である該記録装置と対向する面との当接点は、前記対向する面における前記回動軸を通る垂直線より前記スタック部の回動方向における前記第1位置側である。従って、前記スタック部が前記対向する面に押し付けられたとき、前記スタック部を前記第1位置側へ回動させて退避させることができる。その結果、第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、自由に方向を変えることができる脚輪を有し、前記スタック部は、該記録装置の操作部を前方とした場合の該記録装置の後方に設けられ、前記第1位置から後方へ回動して前記第2位置となることを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、自由に方向を変えることができる脚輪を有し、前記スタック部は、該記録装置の操作部を前方とした場合の該記録装置の後方に設けられ、前記第1位置から後方へ回動して前記第2位置となる。即ち、前記第2位置の前記スタック部は、前記記録装置の後方において後方へ突出している。
【0013】
ここで、ユーザは、前記スタック部が前記第2位置状態であることを視認することができない虞がある。さらに、前記脚輪が設けられている記録装置の移動は容易である。
従って、ユーザが、前記脚輪を回転させて前記記録装置を後方へ移動させ、誤って前記記録装置を後方の壁等に押し付けてしまう虞がある。係る場合、前記スタック部を退避移動させることができるので特に有効である。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記スタック部の自由端側の前記対向する面と当接する当接部は、回動自在なコロを有していることを特徴とする。
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記スタック部の自由端側の前記対向する面と当接する当接部は、回動自在なコロを有している。従って、該当接部と前記対向する面との間において生じる摩擦抵抗を低減することができる。その結果、前記第2位置の前記スタック部が前記第1位置側へ退避移動することを容易にすることができる。
また、前記対向する面に傷跡が発生する虞を低減することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記スタック部が前記第2位置から前記第1位置側へ回動するとき、前記スタック部の自由端側の前記対向する面と当接する当接部は、前記スタック部の径方向において前記対向する面との当接点が徐々に前記回動軸側へ移動するように弧状に形成されていることを特徴とする。
本発明の第5の態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記スタック部が前記第2位置から前記第1位置側へ回動するとき、前記スタック部の自由端側の前記対向する面と当接する当接部は、前記スタック部の径方向において前記対向する面との当接点が徐々に前記回動軸側へ移動するように弧状に形成されている。従って、前記当接部が前記対向する面上を摺動する際、滑らかに摺動させることができる。その結果、前記第2位置の前記スタック部が前記第1位置側へ退避移動することを容易にすることができる。
【0016】
また、前記当接点が徐々に前記回動軸側へ移動するので、前記スタック部の自由端に係る力を徐々に減少させることができる。その結果、前記スタック部の自由端側が変形する虞を低減することができる。前記スタック部が比較的大きい場合に特に有効である。
またさらに、前記弧状にすることによって、弧状に設けなかった場合と比較して、前記対向する面における前記当接点の移動距離を短くすることができる。その結果、前記対向する面に生じる虞がある傷跡の長さを短くすることができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、送り方向の長さがB0サイズ以上の被記録媒体に対して記録を実行することができることを特徴とする。
本発明の第6の態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、送り方向の長さがB0サイズ以上の被記録媒体に対して記録を実行することができる。
ここで、排出方向の長さがB0サイズ以上の被記録媒体に対して記録を実行する構成であれば、前記スタック部も対応して大きく設ける必要がある。従って、前記第2位置の前記スタック部が、前記記録装置において前後左右の一方向へ突出した構成となる。係る場合に特に有効である。
【0018】
本発明の第7の態様は、第1から第6のいずれか一の態様において、前記スタック部における被記録媒体が載置される面側に、排出方向に延設されたフィルム状の低摩擦部材が設けられていることを特徴とする。
本発明の第7の態様によれば、第1から第6のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記スタック部における被記録媒体が載置される面側に、排出方向に延設されたフィルム状の低摩擦部材が設けられている。従って、排出された被記録媒体と、前記スタック部との間に生じる摩擦抵抗を低減することができる。
ここで、特に被記録媒体のサイズがB0サイズ以上の場合、自重によって前記摩擦抵抗が大きくなる傾向にある。そして、排出途中で被記録媒体が止まって排出不良である所謂、排出ジャムが発生する虞がある。
係る場合に排出不良を防止することができ有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る「記録装置」或いは「液体噴射装置」の一例としてのインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1の外観斜視図である。
ここで、液体噴射装置とは、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドから記録紙等の被記録材へインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えて特定の用途に対応する液体を前述した記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから、被記録材に相当する被噴射材に噴射して、液体を被噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。
【0020】
またさらに、液体噴射ヘッドとしては、前述した記録ヘッド以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料を噴射する試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0021】
プリンタ1は、例えばJIS規格のA0判やB0判などといった比較的大型サイズの幅を有する被噴射媒体或いは被記録媒体としてのロール紙Pにまで記録できる大型のプリンタであり、ロール紙供給部3及び記録実行部4を備えた本体部2と、排紙受け部5とを備えて構成されている。
本体部2はベース9に立設された支柱8の上部に設けられており、記録の行われたロール紙Pを斜め下方に排出する排出口6を有している。排出口6の下方にはスタッカ10の開口部7が位置しており、記録の行われたロール紙Pが排出口6から開口部7へ向けて排出され、スタッカ10によって受け止められる。
【0022】
ロール紙供給部3にはロール紙ロール(以下「ロール」と言う)Rが収納可能に構成され、ロールRからロール紙Pが繰り出され、記録を実行する記録実行部4へと斜め下方へ供給される。そして、ロール紙ホルダ(図示せず)に、ロールRがセットされる。ロール紙供給時には、ロール紙ホルダがロール駆動手段としてのスピンドルモータ(図示せず)により回転駆動されることにより、ロール紙Pが下流側に供給される。
【0023】
記録実行部4は、ロール紙Pに対し液体としてのインクを吐出(噴射)する、液体噴射手段或いは記録手段としての記録ヘッド(図示せず)と、記録ヘッドと対向配置されるプラテン(図示せず)と、記録ヘッドの上流側に設けられ、ロール紙Pを下流側へ搬送する搬送駆動ローラ(図示せず)およびこれに圧接して従動回転する搬送従動ローラ(図示せず)と、を有している。
【0024】
記録ヘッドはキャリッジ(図示せず)に設けられ、キャリッジは、記録ヘッドの走査方向(主走査方向)に延びるガイド軸(図示せず)と、同様に主走査方向に延びるガイド板(図示せず)と、によってガイドされながら、図示しないモータの動力を受けて主走査方向に移動する。
記録ヘッドの下流側には、用紙吸引部としてのエア吸引手段(図示せず)が設けられており、このエア吸引手段(図示せず)によって記録ヘッドの下流側においてロール紙Pが浮き上がらないように規制状態に置かれ、ロール紙Pの浮き上がりによる記録品質の低下が防止されるようになっている。
【0025】
また、プリンタ1の前方には、ユーザが操作することができる操作部60が設けられている。
またさらに、プリンタ1の後方には、後方スタック20が設けられている。後方スタック20は、長さがB0以上の用紙Pを記録するときに使用するように構成されている。そして、後方スタック20は、使用状態において、載置する長さを確保するべくプリンタ本体部2より後方へ突出するように設けられている。
また、ベース9の下方には、自由に方向が変えられる脚輪52、52…が4つ設けられている。
以下、後方スタック20について説明する。
【0026】
図2に示すのは、本発明に係る後方スタック収納状態のプリンタの側面図である。また、図3に示すのは、本発明に係る後方スタック使用状態のプリンタの側面図である。
図4に示すのは、使用状態における後方スタックを示す後方拡大斜視図である。また、図5に示すのは、図5の側面図である。
図6に示すのは、収納状態における後方スタックの回動軸の位置を示す要部拡大斜視図である。また、図7に示すのは、使用状態における後方スタックの回動軸の位置を示す要部拡大斜視図である。
【0027】
図2および図3に示す如く、プリンタ1の下方のスタッカ10は、操作部60を前方としたときの前方スタック11と、後方スタック20とを有している。
このうち、前方スタック11は、フロントパイプ12、12と、第1布シート30と、アーム部14、14とを有する。フロントパイプ12、12およびアーム部14、14は、用紙Pの幅方向Xにそれぞれ一対設けられている。そして、一対のフロントパイプ12、12は、ベース9に設けられた第1回動軸13を支点に揺動可能に設けられている。同様に、一対のアーム部14、14は、ベース9に設けられたアーム回動軸15を支点に揺動可能に設けられている。
【0028】
従って、一対のフロントパイプ12、12を後方へ揺動させ、一対のアーム部14、14を前方へ揺動させて第1布シート30をぴんと張ることができる。該状態では、開口部7から排出された用紙Pを前方へ案内して排出することができる。
一方、一対のフロントパイプ12、12を前方へ揺動させると第1布シート30を弛ませることができる。そして、開口部7の真下に第2布シート31が位置するように構成することができる。従って、該状態では、開口部7から排出された用紙Pを後方へ、即ち、後方スタック20へ案内することができる。
【0029】
図2〜図5に示す如く、後方スタック20は、スタックフレーム部21、21と、ジョイント部23と、第2布シート31と、フィルム材40、40…と、第1布固定軸50と、第2布固定軸51とを有する。スタックフレーム部21、21は、用紙Pの幅方向Xに一対設けられている。そして、ベース9に設けられた第2回動軸22を支点に揺動可能に設けられている。ジョイント部23は、スタックフレーム部21、21の自由端側に一対のスタックフレーム部21、21を繋ぐように設けられている。
【0030】
また、第2布シート31は、ベース9に設けられた第1布固定軸50および第2布固定軸51によって固定されている。またさらに、第2布シート31の前方である排出方向上流端は、第1布シート30と同様にフロントパイプ12、12の先端に取付けられている。一方、第2布シート31の後方である排出方向下流端は、ジョイント部23に取付けられている。
【0031】
ここで、第1布固定軸50および第2布固定軸51の位置関係は、第2布固定軸51が第1布固定軸50より下がった位置となるように構成されている。従って、排出された用紙Pは、用紙Pの自重によって排出方向下流側へ容易に進むことができる。
尚、第1布固定軸50および第2布固定軸51は、第2布シート31において約一周巻き付けられて形成された孔に挿通することによって第2布シート31を固定するように構成されている(図6および図7参照)。
【0032】
またさらに、第2布シート31の上面側には、プラスチック等の低摩擦部材であるフィルム材40、40…が複数本、排出方向Yに延設されている。具体的には、フィルム材40、40…は、それぞれ、第1係止部41、41…、第2係止部42、42…および第3係止部43、43…の3箇所で第2布シート31に係止されている。
従って、撓み具合が異なる部材を曲げる際、異なる径(アール)を描くことができ、曲げが妨げられる虞がない。
【0033】
その結果、図2に示す如く、後方スタック20を無理なく収納することができる。このとき、第2布固定軸51とジョイント部23との間において、第2布シート31はぴんと張った状態である。従って、見栄えがよい。また、収納した状態でプリンタ1を移動させた際、第2シートが床Uと接触する虞がない。従って、プリンタ1を移動した際に、第2布シート31が汚れる虞がない。
【0034】
また、図6および図7に示す如く、第2回動軸22は、第2布固定軸51の位置より上方に設けられている。従って、ジョイント部23における第2布シート31が取付けられている箇所から第2回動軸22までも距離と、該箇所から第2布固定軸51までの距離との差が、後方スタック20の回動と共に変化する。具体的には、後方スタック20の収納状態から使用状態へ回動すると共に、前記差が小さくなる。さらに言い換えると、前記箇所から第2布固定軸51までの距離が徐々に短くなる。その結果、使用状態において、第2布固定軸51から第3係止部43、43…までの間において、第2布シート31が弛んで、フィルム材40、40…から離間する。
【0035】
このとき、フィルム材40、40…は、第2係止部42、42…から第3係止部43、43…までぴんと張った状態である。従って、排出された用紙Pを排出方向下流側へ滑らかに案内することができる。このとき、用紙Pは徐々に排出されるので、用紙Pに作用する自重が徐々に大きくなる。従って、用紙Pと後方スタック20との間に生じる摩擦抵抗が徐々に増加する。用紙Pの厚み等にもよるが、特にB0サイズ以上の場合において摩擦抵抗の影響を受けやすい。
【0036】
そこで、前述したように、第2布固定軸51から第3係止部43、43…までの間において、第2布シート31を弛ませて、フィルム材40、40…から離間させるように構成されている。従って、第2布固定軸51から第3係止部43、43…までの間において、摩擦抵抗が小さいフィルム材40、40…のみを用紙Pと接触させることができる。
その結果、用紙Pの排出と共に増加する摩擦抵抗の増加分を最小限にすることができる。そして、摩擦抵抗が大きいことによって用紙Pが後方スタック20における排出方向上流側で詰まる虞を低減することができる。即ち、排出不良である所謂、排出ジャムを防止することができる。
【0037】
また、第2布固定軸51から第3係止部43、43…までの間において、第2布シート31を弛ませたが、第2布シート31は、フィルム材40、40…と床Uとの間に位置している。従って、用紙Pがフィルム材40、40…の間や外側から垂れ下がった場合であっても、用紙Pが床Uと直接触れる虞がない。その結果、用紙Pが床Uと接触して汚れる虞がない。
【0038】
図8(A)〜(C)はフィルム材の係止部を示す平面図である。このうち、図8(A)は第1係止部である。また、図8(B)は第2係止部である。またさらに、図8(C)は第3係止部である。
図8(A)に示す如く、第1係止部41は、フィルム材側に設けられた第1片41aと、第2布シート側に設けられた第1スリット孔32とを有する。そして、第1片41aが第1スリット孔32に挿通されることによって、フィルム材40、40…を、第2布シート31に係止することができる。
ここで、第1片41a、41a…は、排出方向上流側から下流側へ向かって挿通されている。
【0039】
従って、フィルム材40、40…を第1係止部41、41…より第2係止部側へ引っ張る力に対して対抗することができる。その結果、第1片41a、41a…が抜けにくく、何らかの力によって第1係止部41、41…の係止が容易に解除される虞がない。
尚、第1片41a、41a…の形状は、先端側を第1スリット孔32が設けられている方向に大きくすることによって抜けにくくする効果を有している。
また、第1係止部41、41…〜第3係止部43、43…は、各フィルム材40、40…において排出方向Yにおける同じ位置に設けられている。
【0040】
図8(B)に示す如く、第2係止部42は、フィルム材側に設けられた2つの第2片42a、42bと、第2布シート側に設けられた2つの第2スリット孔33、33とを有する。そして、2つの第2片42a、42bがそれぞれの第2スリット孔33、33に挿通されることによって、フィルム材40、40…を、第2布シート31に係止することができる。
【0041】
ここで、一方の第2片42a、42a…は、排出方向上流側から下流側へ向かって挿通されている。また、他方の第2片42b、42b…は、排出方向下流側から上流側へ向かって挿通されている。
従って、フィルム材40、40…を第2係止部42、42…より第3係止部側へ引っ張る力および逆方向へ引っ張る力に対して対抗することができる。その結果、第2片42a、42a…、42b、42b…が抜けにくく、何らかの力によって第2係止部42、42…の係止が容易に解除される虞がない。
【0042】
図8(C)に示す如く、第3係止部43は、フィルム材側に設けられた第3片43aと、第2布シート側に設けられた第3スリット孔34とを有する。そして、第3片43aが第3スリット孔34に挿通されることによって、フィルム材40、40…を、第2布シート31に係止することができる。
ここで、第3片43a、43a…は、排出方向下流側から上流側へ向かって挿通されている。
【0043】
従って、フィルム材40、40…を第3係止部43、43…より第2係止部側へ引っ張る力に対して対抗することができる。その結果、第3片43a、43a…が抜けにくく、何らかの力によって第3係止部43、43…の係止が容易に解除される虞がない。特に、後方スタック20が収納状態から使用状態へ回動した際の第2布シート31が弛むときに有効である。
また、工具を使用せずにフィルム材40、40…を第2布シート31に係止することができるので、ユーザが組み立てるとき、および部品を交換するときに使い勝手がよい。
【0044】
図9(A)(B)は後方スタックの動作を示す側面図である。このうち、図9(A)はジョイント部が壁に当接したときを示す。一方、図9(B)は図9(A)の状態からプリンタが壁側へ押された状態を示す。
図9(A)に示す如く、何らかの原因によってジョイント部23が壁Tと当接したとき、ジョイント部23と壁Tとの当接点Hは、第2回動軸22を通る壁Tにおける垂直線Sより、収納状態の位置側であるように構成されている。従って、後方スタック20が使用状態において、プリンタ1が壁Tに向かって押された場合、後方スタック20を収納状態にする方向へ回動させる力F、即ち、ベクトル成分を発生させることができる。
【0045】
ここで、ジョイント部23にコロ24、24、24…を設けることによって、ジョイント部23と壁Tとの間に発生する摩擦抵抗を低減することができる。具体的には、ジョイント部23の表面からコロ24、24、24…を僅かに突出させて配置することによって摩擦抵抗を低減することができる。従って、より効率よく前記ベクトル成分Fを後方スタック20に作用させることができる。
【0046】
図9(B)に示す如く、図9(A)の状態からさらにプリンタ1が壁側へ押されて移動すると、前記ベクトル成分Fが作用するので、後方スタック20は収納状態の位置側へ回動する。そして、プリンタ1が壁側へ押されて移動すると共に、前記ベクトル成分Fがさらに大きく作用して後方スタック20をさらに回動させる。即ち、後方スタック20は、収納状態の位置側へ退避移動することができる。その結果、後方スタック20が破損する虞がない。
【0047】
ここで、ジョイント部23は、収納状態の位置側への回動と共に当接点Hが徐々に第2回動軸22に接近するように弧状に形成されている。従って、壁Tにおける当接点Hの移動範囲である摺動箇所の範囲を、前記弧状に形成しない場合と比較して、小さくすることができる。その結果、壁Tに生じる虞がある傷跡の長さを短くすることができる。
また、ジョイント部23にコロ24、24、24…を設けたことによって、傷自体が発生する虞を低減することができる。
【0048】
本実施形態の記録装置であるプリンタ1は、被記録媒体の一例であるロール紙Pに対して記録を実行する記録部としての記録実行部4と、回動軸としての第2回動軸22を支点とする回動により第1位置としての収納状態の位置と第2位置としての使用状態の位置とを有し、使用状態の位置のとき記録実行部4から排出されたロール紙Pを載置するスタック部としての後方スタック20と、を備え、使用状態の位置のときの後方スタック20の自由端側がプリンタ1と対向する面の一例である壁Tに押し付けられたとき、後方スタック20において収納状態の位置側へ回動させる力Fを発生させることを特徴とする。
【0049】
本実施形態のプリンタ1は、ロール紙Pに対して記録を実行する記録実行部4と、第2回動軸22を支点とする回動により収納状態の位置と使用状態の位置とを有し、使用状態の位置のとき記録実行部4から排出されたロール紙Pを載置する後方スタック20と、を備え、使用状態の位置のときの後方スタック20の自由端側であるプリンタ1と対向する壁Tとの当接点Hは、前記対向する壁Tの面における第2回動軸22を通る垂直線Sより後方スタック20の回動方向における収納状態の位置側であることを特徴とする。
【0050】
また、本実施形態において、自由に方向を変えることができる脚輪52、52…を有し、後方スタック20は、プリンタ1の操作部60を前方とした場合のプリンタ1の後方に設けられ、収納状態の位置から後方へ回動して使用状態の位置となることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、後方スタック20の自由端側の前記対向する壁Tの面と当接する当接部であるジョイント部23は、回動自在なコロ24、24、24…を有していることを特徴とする。
【0051】
本実施形態において、後方スタック20が使用状態の位置から収納状態の位置側へ回動するとき、後方スタック20の自由端側の前記対向する壁Tの面と当接するジョイント部23は、後方スタック20の径方向において前記対向する壁Tの面との当接点Hが徐々に第2回動軸側へ移動するように弧状に形成されていることを特徴とする。
また、本実施形態において、後方スタック20におけるロール紙Pが載置される面側に、排出方向Yに延設されたフィルム状の低摩擦部材の一例であるフィルム材40、40…が設けられていることを特徴とする。
【0052】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るプリンタの外観斜視図。
【図2】本発明に係るプリンタの側面図(後方スタック収納状態)。
【図3】本発明に係るプリンタの側面図(後方スタック使用状態)。
【図4】使用状態における後方スタックを示す後方拡大斜視図。
【図5】図4の側面図。
【図6】収納状態における後方スタックの回動軸の位置を示す要部拡大斜視図。
【図7】使用状態における後方スタックの回動軸の位置を示す要部拡大斜視図。
【図8】(A)〜(C)はフィルム材の係止部を示す平面図。
【図9】(A)(B)は後方スタックの動作を示す側面図。
【符号の説明】
【0054】
1 インクジェットプリンタ、2 本体部、3 ロール紙供給部、4 記録実行部、
5 排紙受け部、6 (ロール紙の)排出口、7 開口部、8 支柱、9 ベース、
10 (ロール紙の)スタッカ、11 前方スタック、12 フロントパイプ、
13 第1回動軸、14 アーム部、15 アーム回動軸、20 後方スタック、
21 スタックフレーム部、22 第2回動軸、23 ジョイント部、24 コロ、
30 第1布シート、31 第2布シート、32 第1スリット孔、
33 第2スリット孔、34 第3スリット孔、40 フィルム材、41 第1係止部、
41a 第1片、42 第2係止部、42a 第2片、43 第3係止部、
43a 第3片、50 第1布固定軸、51 第2布固定軸、52 脚輪、
60 操作部、F 回動させる力(ベクトル成分)、H 当接点、P ロール紙、
R ロール、S 壁における第2回動軸を通る垂直線、T 壁、U 床、X 幅方向、
Y 排出方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に対して記録を実行する記録部と、
回動軸を支点とする回動により第1位置と第2位置とを有し、該第2位置のとき前記記録部から排出された被記録媒体を載置するスタック部と、を備え、
前記第2位置のときの前記スタック部の自由端側が該記録装置と対向する面に押し付けられたとき、前記スタック部において前記第1位置側へ回動させる力を発生させる記録装置。
【請求項2】
被記録媒体に対して記録を実行する記録部と、
回動軸を支点とする回動により第1位置と第2位置とを有し、該第2位置のとき前記記録部から排出された被記録媒体を載置するスタック部と、を備え、
前記第2位置のときの前記スタック部の自由端側である該記録装置と対向する面との当接点は、前記対向する面における前記回動軸を通る垂直線より前記スタック部の回動方向における前記第1位置側である記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、自由に方向を変えることができる脚輪を有し、
前記スタック部は、該記録装置の操作部を前方とした場合の該記録装置の後方に設けられ、前記第1位置から後方へ回動して前記第2位置となる記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記スタック部の自由端側の前記対向する面と当接する当接部は、回動自在なコロを有している記録装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記スタック部が前記第2位置から前記第1位置側へ回動するとき、前記スタック部の自由端側の前記対向する面と当接する当接部は、前記スタック部の径方向において前記対向する面との当接点が徐々に前記回動軸側へ移動するように弧状に形成されている記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録装置において、送り方向の長さがB0サイズ以上の被記録媒体に対して記録を実行することができる記録装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の記録装置において、前記スタック部における被記録媒体が載置される面側に、排出方向に延設されたフィルム状の低摩擦部材が設けられている記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−208284(P2009−208284A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51701(P2008−51701)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】