記録装置
【課題】キャリッジの速度変動によって、媒体支持部材が自由振動を起こしてキャリッジと媒体支持部材との間で相対位置変動が生じて、副走査方向の記録ピッチにむらが生じる。
【解決手段】インクジェットプリンター1を、ガイド軸3と、タイミングベルト部4と、キャリッジ8と、キャリッジモーター10と、紙送りモーター11と、プラテン12と、キャリッジ変位部30と、制御部90とを含み、制御部90において、キャリッジ8の搭載する記録ヘッド14に配設された加速度センサーCa及びCbと、プラテン12に配設された加速度センサーPa及びPbとで検出した加速度に基づきキャリッジ8とプラテン12の相対位置変位を算出し、算出した相対位置変位を打ち消すようにキャリッジ8を変位させる位置制御を行う構成とした。
【解決手段】インクジェットプリンター1を、ガイド軸3と、タイミングベルト部4と、キャリッジ8と、キャリッジモーター10と、紙送りモーター11と、プラテン12と、キャリッジ変位部30と、制御部90とを含み、制御部90において、キャリッジ8の搭載する記録ヘッド14に配設された加速度センサーCa及びCbと、プラテン12に配設された加速度センサーPa及びPbとで検出した加速度に基づきキャリッジ8とプラテン12の相対位置変位を算出し、算出した相対位置変位を打ち消すようにキャリッジ8を変位させる位置制御を行う構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、主走査方向に往復移動するキャリッジを有する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンター等の記録装置において、搬送される記録媒体に対してヘッドユニットから正確な位置に液滴を吐出するための様々な技術が提案されている。
例えば、下記の特許文献1に記載されているインクジェット塗布装置は、インクを噴射するノズルを有するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドを支持する支持基体と、前記支持基体とインクジェットヘッドとの間に設けられる弾性体と、インクジェットヘッドの移動速度及び変位を検出するセンサとしての速度センサー及び位置センサーと、支持基体に設けられ、インクジェットヘッドに振動方向と逆向きの力を付与するアクチュエーターと、速度センサー及び前記位置センサからの信号に基づいてアクチュエーターにインクジェットヘッドの振動を打ち消す信号を出力する振動制御装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−142237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のインクジェット塗布装置においては、インクジェットヘッドの変位を検出する位置センサーが上記支持基体に設けられている。ここで、インク塗布時に被塗布材を支持しているステージは、インクジェットヘッドの加速等によって生じる加振力によって自由振動を起こす。この自由振動は、インクジェットヘッドとステージ上の被塗布材との相対的な位置を変動させる。
【0005】
つまり、インクジェットヘッドの変位を検出する位置センサーを支持基体だけに配設しても、インクジェットヘッドと被塗布材との相対位置の変動は検出することができない。そのため、支持基体に配設した位置センサーだけで検出した位置変位を打ち消しても相対変動分の誤差が生じるため、誤差の分だけ液滴の塗布精度が低減する。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、上述の課題の少なくとも一部を解決することが可能な記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1の記録装置は、記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置であって、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドのインク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出手段と、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出手段と、
前記第1の変位情報検出手段で検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出手段で検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出手段と、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御手段と、を備える。
【0007】
このような構成であれば、第1の変位情報検出手段で検出したキャリッジの第1の変位情報と、第2の変位情報検出手段で検出した媒体支持部材の第2の変位情報とから、相対位置変位算出手段によって、キャリッジと媒体支持部材との相対的な位置変位を算出することができる。
更に、制御手段によって、相対位置変位算出手段で算出した相対的な位置変位を打ち消すように、キャリッジ位置変位手段の第2のアクチュエーターを制御することができる。
【0008】
これによって、例えば、キャリッジの速度変動などによって生じる加振力により、媒体支持部材が副走査方向に自由振動を起こしても、両者の相対的な位置変位を正確に検出することができる。更に、相対的な位置変位を、キャリッジの位置を変位させて打ち消すことができるので、キャリッジの位置制御をより高精度に行うことができ、記録ヘッドのインク吐出精度を向上することができるという効果が得られる。
ここで、上記媒体支持部材は、搬送手段で搬送される記録媒体の記録面とは反対側の面を支持する役割に加えて、インク吐出時の記録ヘッドと記録媒体の記録面との位置関係を規定する(一定にする)役割を果たすものである。
【0009】
〔形態2〕 更に、形態2の記録装置は、形態1に記載の記録装置において、前記第1の変位情報検出手段は、前記第1の変位情報として前記キャリッジの加速度を検出する、前記キャリッジに配設された2以上の第1加速度センサーを備え、
前記第2の変位情報検出手段は、前記第2の変位情報として前記媒体支持部材の加速度を検出する、前記媒体支持部材に配設された2以上の第2加速度センサーを備え、
前記相対位置変位算出手段は、前記第1加速度センサーで検出される加速度を2回積分して前記キャリッジの所定方向の変位である第1の変位を算出し、前記第2加速度センサーで検出される加速度を2回積分して前記媒体支持部材の所定方向の変位である第2の変位を算出し、算出した前記第1及び第2の変位に基づき前記相対位置変位を算出する。
このような構成であれば、加速度センサーの検出値から、キャリッジと媒体支持部材との相対的な位置変位を算出することができるので、キャリッジと媒体支持剤とに配設するセンサーの数を低減することができるという効果が得られる。
【0010】
〔形態3〕 更に、形態3の記録装置は、形態2に記載の記録装置において、前記記録ヘッドの前記主走査方向に面する一方の側面に1つの前記第1加速度センサーを配設すると共に他方の側面に1つの前記第1加速度センサーを配設し、
前記媒体支持部材の前記主走査方向の一方の端部に1つの前記第2加速度センサーを配設すると共に他方の端部に1つの前記第2加速度センサーを配設し、
2つの前記第1加速度センサーと2つの前記第2加速度センサーとを、前記主走査方向の同一直線上に配設した。
【0011】
このような構成であれば、キャリッジと媒体支持剤とに配設するセンサーの数を低減することができると共に、各センサー間で主走査方向の位置ずれが生じないため、検出した加速度から相対変位を簡易に算出することができるという効果が得られる。
なお、上記同一直線上とは、相対位置変位の算出値の誤差が許容範囲内に収まる範囲での微小な位置ズレであれば同一の範囲に含むものとする。
【0012】
〔形態4〕 一方、上記目的を達成するために形態4の記録装置の制御プログラムは、記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置の制御プログラムであって、
前記記録装置は、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドの前記インク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、を備えており、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出ステップと、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出ステップと、
前記第1の変位情報検出ステップで検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出ステップで検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出ステップと、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御ステップとを有する処理をコンピューターに実行させるためのプログラムを含む。
このような構成であれば、コンピューターによってプログラムが読み取られ、読み取られたプログラムに従ってコンピューターが処理を実行すると、形態1の記録装置と同等の作用および効果が得られる。
【0013】
〔形態5〕 また、上記目的を達成するために形態5の記録装置の制御方法は、記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置の制御方法であって、
前記記録装置は、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドの前記インク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、を備えており、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出ステップと、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出ステップと、
前記第1の変位情報検出ステップで検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出ステップで検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出ステップと、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御ステップと、を含む。
これにより、形態1に記載の記録装置と同等の作用及び効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係るインクジェットプリンター1の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、エンコーダースケール9とセンサー20との位置関係の一例を示す図であり、(b)は、センサー20の構成例を示す図である。
【図3】キャリッジ変位部30の各アクチュエーターの配設構成及び加速度センサーの配設構成の一例を示す平面図である。
【図4】キャリッジ8の溝部を右端側から見た平面図である。
【図5】(a)及び(b)は、制御部90の構成を示す図である。
【図6】モーター制御部92のキャリッジモーター10の制御ブロックの一例を示す図である。
【図7】キャリッジモーター10の速度変化を示す図である。
【図8】(a)は、キャリッジ8の主走査方向の位置に対する副走査方向の位置変動の一例を示す図であり、(b)は、プラテン12の自由振動によるキャリッジ8の位置変動の一例を示す図である。
【図9】相対位置変位を算出するための情報を記載したインクジェットプリンター1の主要部の概略構成を示す平面図である。
【図10】キャリッジ8の位置制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】本実施の形態のキャリッジ8の位置制御処理を行った場合の、キャリッジ8の主走査方向の位置に対する副走査方向の位置変動の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1〜図11は、本発明に係る記録装置の実施の形態を示す図である。
以下、記録媒体に記録を行う記録装置の一例として、インク滴を吐出して用紙等の記録媒体に画像を記録(印刷)するインクジェットプリンターについて説明する。ここでのインクジェットプリンターは、用紙搬送方向と交差する方向に往復移動する、インク滴を吐出する記録ヘッドの搭載されたキャリッジを備えており、いわゆるマルチパスでの印刷が可能なマルチパス型インクジェットプリンターである。
【0016】
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの概略構成を図面に基づき説明する。
ここで、図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター1の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、フレーム2と、ガイド軸3と、タイミングベルト部4と、フレキシブルケーブル5と、キャリッジ8と、エンコーダースケール9と、キャリッジモーター10と、紙送りモーター11と、プラテン12とを含んで構成される。
【0017】
なお、図1中のX1方向(左方向)と、X1方向とは反対方向のX2方向(右方向)とは、キャリッジ8が往復移動する方向であり、以下、これら双方向をまとめて主走査方向と称す。また、図1中のY1方向(手前方向)と、Y1方向とは反対方向のY2方向(奥行方向)とは、用紙13の搬送方向であり、以下、これら双方向をまとめて副走査方向と称す。なお、主走査方向及び副走査方向については他の図においても同様である。
【0018】
ガイド軸3は、長手方向と直行する方向に切ったときの断面形状が略コ字状の棒状の部材から構成されている。ガイド軸3は、フレーム2の内側において、コ字を時計回りに90°回転させ、且つそのコ字状の対向する板状の2辺の一方の辺側3aをY1方向側に、他方の辺側3bをY2方向側に位置させた姿勢で配設されている。以下、一方の辺側3aを前板部3aと称し、他方の辺側3bを奥板部3bと称す。更に、ガイド軸3は、前板部3aを、キャリッジ8の下端部に形成された溝内をその一方の側面側から他方の側面側へと貫通して配設されている。ここで、前板部3aの板厚は、溝の福走査方向の幅よりも薄く形成されている。更に、ガイド軸3の一端部はフレーム2の左側面に固定され、他端部はフレーム2の右側面に固定されている。この構成によって、ガイド軸3は、フレーム2の内側の左右側面間に亘って延在し、キャリッジ8の往復移動を案内する案内部材としての役割を担っている。
【0019】
タイミングベルト部4は、フレーム2の背面部の内側にガイド軸3と略同じ高さ位置に、背面部と直交する軸回りに回転自在に軸支された左右2つのプーリーと、該2つのプーリーに掛け回された無端ベルトとから構成される。更に、右側プーリーの回転軸には、キャリッジモーター10の出力軸が接続されており、キャリッジモーター10の回転駆動力を回転軸に伝達し、右側プーリーを回転させる。この回転力は、無端ベルトに伝達され無端ベルトを回動させる。無端ベルトには、キャリッジ8が固定されており、無端ベルトの回動に応じてキャリッジ8がガイド軸3に沿って移動する。この移動距離は、左右2つのプーリー間の距離で規定される。
【0020】
プラテン12は、主走査方向の長さが、記録可能な最大用紙幅よりも若干長い矩形平板状に形成されて、ガイド軸3に沿って配設されている。更に、プラテン12は、用紙吸引部(不図示)に繋がる図示しない複数の孔が穿設され、表面には吸湿によって生じる用紙のコックリング等を吸収する図示しない複数の凹凸部が形成されている。
なお、用紙吸引部は、プラテン12の下部に配設された圧力室と、圧力室の下部に配設されたファンを備え、ファンを回転させることにより、プラテン12に穿設されている孔から圧力室内に吸気が行われる。これによって、プラテン12の上面にロール紙やカット紙などの用紙13が供給されると、用紙13の下面側に負圧が発生し、用紙13をプラテン12の上面に吸着させて用紙13の浮き上がりを防止することができる。
【0021】
キャリッジ8は、インクカートリッジ(モノクロ)6と、インクカートリッジ(カラー)7と、不図示のダンパ(インク貯留部)及びチューブと、ダンパ及びチューブを介してインクカートリッジ6及び7から供給されるインクを吐出する記録ヘッド14(不図示)とを搭載している。また、キャリッジ8は、タイミングベルト部4の無端ベルトに固定され、無端ベルトの回動に応じてガイド軸3に沿って主走査方向に往復移動する。
【0022】
記録ヘッド14は、キャリッジ8の下部においてプラテン12の上面に供給される用紙13と所定間隔を空けて対向するように配設されており、圧電素子から構成される各インク色に対応する複数のノズル(不図示)を備えている。そして、記録ヘッド14は、後述する制御部90からの記録制御信号に応じて圧電素子が駆動されると、コントロールされた大きさの、モノクロインク、カラーインク(イエロー、マゼンタ、シアン等)のインク滴を各色に対応するノズルの吐出孔から吐出する。
なお、ノズルからインク滴を吐出する方式は、上記の方式に限定されるものではなく、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰インクジェット方式等の各種方式を採用することができる。
【0023】
静電方式は、静電ギャップに駆動パルスを与えてキャビティ内の振動板を変位させ、これによって生じるキャビティ内の圧力変化によってインク滴を吐出する方式である。ピエゾ方式は、ピエゾ素子に駆動パルスを与えてキャビティ内の振動板を変位させ、これによって生じるキャビティ内の圧力変化によってインク滴を吐出する方式である。膜沸騰インクジェット方式は、キャビティ内に備えた微小ヒータによってインクを加熱し、気泡の生成に伴う圧力変化によってインク滴を吐出する方式である。
【0024】
キャリッジ8は、更に、下端部に形成された溝内にキャリッジ変位部30(後述)を備えている。キャリッジ変位部30は、溝内を貫通する前板部3aの両板面に対して、副走査方向の力を付与する複数のアクチュエーターを備えており、制御部90からの制御信号に応じて、各アクチュエーターを制御することで、キャリッジ8を変位させる。
具体的に、本実施の形態のインクジェットプリンター1は、画像の記録時において、キャリッジ8とプラテン12の加速度を検出し、検出した加速度に基づきキャリッジ8とプラテン12の副走査方向の相対的な位置変位(以下、相対位置変位という)を算出する。そして、制御部90によって、算出した相対位置変位を打ち消すようにキャリッジ変位部30の各アクチュエーターを制御して、キャリッジ8とプラテン12の副走査方向の相対的な位置変位を打ち消すようになっている。
【0025】
エンコーダースケール9は、プラテン12の主走査方向の長さよりも若干短い長さの矩形平板状の透過性を有する部材から構成され、その板面には格子状の目盛が設けられている。
エンコーダースケール9は、ガイド軸3の前板部3a及び奥板部3bとの間に位置すると共にガイド軸3の長手方向に沿って、目盛の設けられた板面を副走査方向に向けた状態で長手方向の一端がフレーム2の内側の左側面に設けられた支持部(不図示)にばね部材(不図示)を介して支持されている。更に、エンコーダースケール9の長手方向の他端はフレーム2の内側の右側面に設けられた支持部(不図示)に支持されている。ばね部材は、エンコーダースケール9の左端部にX1方向への張力を付勢するように所定の収縮力をもって配設されている。これにより、エンコーダースケール9が撓むのを防ぎ、真っ直ぐな状態を維持する。
【0026】
ここで、図2(a)は、エンコーダースケール9とセンサー20との位置関係の一例を示す図であり、(b)は、センサー20の構成例を示す図である。
キャリッジ8は、図2(a)に示すように、背面部にエンコーダースケール9に設けられた目盛を読み取るセンサー20が設けられている。
センサー20は、図2(a)に示すように、キャリッジ8の背面部に突設されており、図2(b)に示すように、LED等の発光素子を有する発光部20a及びフォトダイオード等の受光素子を有する受光部20bを備えている。そして、エンコーダースケール9の格子状の目盛を透過する光の受光量の変化から正弦波信号を生成することで、目盛を読み取るようになっている。
【0027】
本実施の形態では、発光部20aの有する発光素子からの光を4つの走査窓に分け、各窓に対応する受光部20bの受光素子が格子状の目盛を透過した光の光量変化から正弦波信号を生成する。各窓から生成される正弦波信号は90度ずつ位相がずれており、後述する制御部90において、この位相差を持つ4つの正弦波信号により移動量を算出する。
また、エンコーダースケール9とセンサー20とは、図2(a)及び(b)に示すように、エンコーダースケール9の目盛部分がセンサー20の発光部20aと受光部20bとの間に位置する位置関係に配設されている。
【0028】
フレキシブルケーブル5は、一端がキャリッジ8に搭載された記録ヘッド及びセンサー20のコネクター部に接続され、他端が制御部90(後述)のコネクター部に接続されている。そして、制御部90からの記録制御信号を記録ヘッドに供給すると共に、センサー20の検出信号を制御部90に伝送する。
紙送りモーター11は、制御部90からのモーター制御信号に応じて駆動し、紙送りローラー等の紙送り機構(不図示)に駆動力を伝達するモーターである。
【0029】
具体的に、記録媒体としての用紙13は、制御部90からのモーター制御信号によって駆動される紙送りモーター11と紙送り機構とによって、プラテン12上を副走査方向に搬送される。
上記構成によって、インクジェットプリンター1は、上記相対位置変位を打ち消しながら、センサー20の検出信号に基づき用紙13の搬送とキャリッジ8の往復移動とを繰り返し、プラテン12上に支持された用紙13の記録面に対して記録ヘッドからインク滴を吐出して用紙13に画像を記録することができる。
【0030】
次に、図3及び図4に基づき、本発明の主要な構成について説明する。
ここで、図3は、キャリッジ変位部30の各アクチュエーターの配設構成及び加速度センサーの配設構成の一例を示す平面図である。また、図4は、キャリッジ8の溝部を右端側から見た平面図である。
図3に示すように、キャリッジ8の下端側には記録ヘッド14が搭載されており、記録ヘッド14の右側面には加速度センサーCaが配設され、左側面には加速度センサーCbが配設されている。
【0031】
また、図3に示すように、プラテン12の右端上面には加速度センサーPaが配設され、左端上面には加速度センサーPbが配設されている。
本実施の形態において、加速度センサーCa及びCb並びにPa及びPbは、同じ型番のセンサーであり、且つ、図3に示すように、平面視でいずれも主走査方向の直線上に位置するように配設されている。この構成によって、検出特性及び副走査方向の加速度の検出点の位置を一致又は略一致させている。
【0032】
また、図3に示すように、キャリッジ変位部30は、溝内の右端部におけるガイド軸3の前板部3aを挟んでY1方向側の壁面に設けられたアクチュエーター33と、ガイド部を挟んでY2方向側の壁面に設けられたアクチュエーター34とを備えている。
キャリッジ変位部30は、更に、溝内の左端部におけるガイド軸3のガイド部を挟んでY1方向側の壁面に設けられたアクチュエーター35と、ガイド部を挟んでY2方向側の壁面に設けられたアクチュエーター36とを備えている。
【0033】
本実施の形態において、アクチュエーター33〜36は、キャリッジ8の溝内の壁に固定された第1強磁性体と、第1強磁性体に巻回されたコイルと、第1強磁性体の上面と対向してキャリッジ8の溝内を貫通する前板部3aの板面に固定された第2強磁性体とを備えた電磁式のアクチュエーターである。この構成によって、コイルに電流を流すことにより第1強磁性体とコイルとが電磁石となり、その磁気吸引力により対向配置された第2強磁性体及び第2強磁性体を固定している前板部3aの板面を、第1強磁性体の固定された壁側に引き付ける力を発生させる。
【0034】
従って、前板部3aの板面を挟んで対向配置された、右端側のアクチュエーター33及び34と、左端側のアクチュエーター35及び36とをそれぞれ独立に制御することで、キャリッジ8を様々な方向に変位させることができる。
具体的に、両端部で同じ方向に力をかけることでキャリッジ8を副走査方向に真っ直ぐに変位させられると共に、例えば、両端部の一方と他方とに逆方向の変位力(均一)をかけることで、図3中の軸40を回転軸とした回転方向にも変位させることができる。両端部の変位方向が同じで変位力が異なる場合にも回転方向の変位となる。但し、両端部の変位力が均一でない場合は軸40の位置がずれる。
【0035】
更に、図4に示すように、キャリッジ8の溝内には、前板部3aとキャリッジ8との間の隙間によるがたつきの発生を防止するために、前板部3aを挟み込んで、溝内のZ2方向側の端部近傍のY1方向側の壁部に弾性部材31が、Y2方向側の壁部に弾性部材32がそれぞれ配設されている。なお、これら弾性部材31及び32は、前板部3aにキャリッジ8の往復移動を必要以上に妨げない程度の圧力を付与した状態で接触して配設される。
また、図4に示すように、アクチュエーター33及び34は、弾性部材31及び32よりもZ1方向側の溝の下端部近傍に配設されている。アクチュエーター35及び36についても同様である。
【0036】
次に、図5に基づき、制御部90の構成を説明する。
ここで、図5(a)及び(b)は、制御部90の構成を示す図である。
制御部90は、図5(a)に示すように、不図示のコネクター部を介してフレキシブルケーブル5と電気的に接続されている。そして、フレキシブルケーブル5を介して、センサー20の検出信号(エンコーダー検出信号)及び加速度センサーの検出信号(加速度信号)を受信し、また、記録ヘッド14に記録制御信号を、アクチュエーター33〜36にアクチュエーター制御信号をそれぞれ供給する。また、他のフレキシブルケーブル(不図示)を介して、キャリッジモーター10、紙送りモーター11とも電気的に接続されており、該フレキシブルケーブルを介してキャリッジモーター10及び紙送りモーター11にモーター制御信号をそれぞれ供給する。また、フレキシブルケーブル5を介して、加速度センサーCa及びCbと電気的に接続されており、他のフレキシブルケーブルを介して加速度センサーPa及びPbと電気的に接続されている。各フレキシブルケーブルを介して、各加速度センサーの加速度信号を受信するようになっている。
【0037】
また、制御部90は、図5(b)に示すように、検出部91と、モーター制御部92と、ヘッド制御部93と、相対位置変位算出部94と、アクチュエーター制御部95とを含んで構成される。
検出部91は、センサー20の検出信号に基づき、キャリッジ8の位置と速度とを検出する。
具体的に、センサー20からの位相の異なる4つの正弦波信号からキャリッジ8の移動方向及び移動量を算出し、基準位置と移動方向及び移動量とからキャリッジ8の位置を算出し、移動量を微分してキャリッジ8の移動速度を算出する。
【0038】
モーター制御部92は、検出部91で検出したキャリッジ8の検出位置及び検出速度とに基づき、PID制御により、キャリッジモーター10を制御して、キャリッジ8の移動速度が目標速度となるように制御する。
ヘッド制御部93は、予め設定された吐出タイミングで記録ヘッドにインク滴を吐出させる記録制御信号を生成し、生成した記録制御信号をフレキシブルケーブル5を介してキャリッジ8の記録ヘッドに供給して、記録ヘッドのインク滴の吐出動作を制御する。
【0039】
相対位置変位算出部94は、加速度センサーCa及びCbで検出されたキャリッジ8の記録ヘッド14の両端部の副走査方向の加速度の検出信号である加速度信号LCb及びRCaを取得する。更に、加速度センサーPa及びPbで検出されたプラテン12の両端部の副走査方向の加速度の検出信号である加速度信号RPa及びLPbを取得する。更に、ROMに記憶された、相対位置変位を算出するための算出情報を取得する。そして、取得した加速度信号LCb及びRCa及び加速度信号RPa及びLPbと、算出情報とに基づきキャリッジ8とプラテン12との相対位置変位を算出し、算出した相対位置変位をアクチュエーター制御部95に出力する。
【0040】
アクチュエーター制御部95は、相対位置変位算出部94から入力された相対位置変位に基づき、相対位置変位を打ち消す方向にキャリッジ8を変位させるようにアクチュエーター33〜36を制御する制御値を算出する。更に、アクチュエーター駆動回路(不図示)において、算出した制御値に応じたアクチュエーター制御信号を生成する。そして、生成したアクチュエーター制御信号をアクチュエーター33〜36に供給する。これにより、相対位置変位を打ち消す方向にキャリッジ8を変位させる制御を行う。
また、制御部90は、図示しないCPU,ROM,RAM等を備え、インクジェットプリンター1における各部及び各機構等の全体を制御する。
【0041】
次に、図6に基づき、モーター制御部92のキャリッジモーター10の制御部分の構成について説明する。
ここで、図6は、モーター制御部92のキャリッジモーター10の制御ブロックの一例を示す図である。
キャリッジモーター10の制御ブロックは、図6に示すように、位置指令生成器300と、減算器301と、目標速度演算部302と、減算器303と、PID制御器304とを含んで構成される。
【0042】
ここで、図4中の検出部91は、フィードバック制御の制御量として、センサー20からの出力信号に基づき検出した検出位置EDPを減算器301に出力し、センサー20からの出力信号に基づき検出した検出速度EDVを減算器303に出力している。
位置指令生成器300は、キャリッジモーター10を所定動作で駆動させるために制御ブロックに入力される目標位置を出力する。図6に示した制御ブロックは、実際のキャリッジ8の位置情報(EDP)をフィードバックさせて、この目標位置に追従するようにキャリッジモーター10を制御する。
【0043】
減算器301は、位置指令生成器300から出力された目標位置と、キャリッジ8の実際の位置である検出位置EDPとの位置偏差を演算し、目標速度演算部302に出力する。
目標速度演算部302は、減算器301から出力された位置偏差に基づいて、キャリッジ8の目標速度を演算する。この演算は位置偏差に位置ゲインGpを乗算することにより行われる。この位置ゲインGpは位置偏差に応じて決定される。演算後、目標速度を減算器303に出力する。
【0044】
減算器303は、目標速度演算部302から出力された目標速度と、キャリッジ8の実際の速度である検出速度EDVとの速度偏差を演算する。演算後、速度偏差をPID制御器304に出力する。
PID制御器304は、図示しない比例要素、積分要素及び微分要素から構成されている。各要素は減算器303から出力された速度偏差に要素毎の演算を行い、図示しない加算器で加算する。その後、PID制御器304からの出力は、図示しないD/Aコンバーターに送られてアナログ電流に変換された後、キャリッジモーター10に供給される。
【0045】
図7は、キャリッジモーター10の速度変化を示す図である。図7では、キャリッジ8の往復移動のうち、往路又は復路のいずれかの駆動をさせた場合のキャリッジモーター10の速度変化を示しており、縦軸に速度V[m/s]を横軸に時間T[s]を表している。上述したキャリッジモーター10の速度制御は、図7に示す速度変化のように、所定の速度V1になるまで加速され(時間0−T1間)、所定の速度V1に達した後、定速度制御に切り替わる。その後、キャリッジモーター10は、所定の時間(定速時)、一定速度で駆動される(T1−T2間)。その後、所定の割合で減速されて停止させられる(T2−T3間)。
【0046】
次に、図8に基づき、キャリッジ8及びプラテン12の振動によって生じる相対位置変動について説明する。
ここで、図8(a)は、キャリッジ8の主走査方向の位置に対する副走査方向の位置変動の一例を示す図であり、(b)は、プラテン12の自由振動によるキャリッジ8の位置変動の一例を示す図である。図8において、縦軸に定速時のキャリッジ8の副走査方向の変位を、横軸にキャリッジ8の主走査方向の位置を表している。
【0047】
図7に示したキャリッジモーター10の速度変化において、キャリッジモーター10が定速度制御で駆動されている期間、すなわち定速時T1−T2間において、実際には図8(a)に示すように、キャリッジ8の副走査方向の位置変動が生じている。この位置変動は、キャリッジモーター10のコギングによる位置変動や、キャリッジ8の加速動作によってプラテン12が加振され、プラテン12が自由振動を起こすことによって生じる相対位置変動分等が含まれる。
【0048】
従来の振動抑制制御では、記録ヘッドの支持部等のプラテン以外のキャリッジ側にだけ設けられたセンサーから読み取った情報に基づき生成された変位情報を用いてその変位を打ち消す制御を行っている。そのため、図8(b)に示すように、プラテン12の自由振動による相対位置変動分が補正されずに残ってしまう。このプラテン12の自由振動による相対位置変動は、用紙13とキャリッジ8との間の相対位置変動となるため、副走査方向の記録ピッチにむらを生じさせる。
【0049】
本実施の形態では、上述したように、キャリッジ8に搭載された記録ヘッド14のみではなく、プラテン12にも加速度センサーを配設している。そして、画像の記録期間(定速時T1−T2間)において、加速度センサーの検出信号に基づきキャリッジ8とプラテン12との相対位置変位を算出し、この相対位置変位を打ち消すように、キャリッジ変位部30のアクチュエーター33〜36を制御する。
【0050】
次に、図9に基づき、相対位置変位算出部94における相対位置変位の算出方法について説明する。ここで、図9は、相対位置変位を算出するための情報を記載したインクジェットプリンター1の主要部の概略構成を示す平面図である。
本実施の形態においては、相対位置変位算出部94において、下式(1)及び(2)に基づき、キャリッジ8とプラテン12との相対位置変位ΔYR及びΔYLを算出する。
ΔYR=ΔYca−((ΔYpb−ΔYpa)×(X−Xca)/W)+ΔYpa
・・・(1)
ΔYL=ΔYcb−((ΔYpb−ΔYpa)×(X+Xcb)/W)+ΔYpa
・・・(2)
【0051】
上式(1)及び(2)において、ΔYRは、図9に示すように、キャリッジ8の右端側の加速度センサーCaの検出点とプラテン12の右端側の加速度センサーYaの検出点との副走査方向の相対位置変位である。また、ΔYcaは、図9に示すように、キャリッジ8の右端側の加速度センサーCaの検出点の副走査方向の変位であり、ΔYcbは、キャリッジ8の左端側の加速度センサーCbの検出点の福走査方向の変位である。また、ΔYpaは、図9に示すように、プラテン12の右端側の加速度センサーPaの検出点の副走査方向の変位であり、ΔYpbは、プラテン12の左端側の加速度センサーPbの検出点の福走査方向の変位である。
【0052】
また、Xは、図9に示すように、検出部91で検出されるキャリッジ8の主走査方向の移動量であり、Xcaは、移動量Xの位置から加速度センサーCaの検出点までの距離であり、Xcbは、移動量Xの位置から加速度センサーCbの検出点までの距離である。また、Wは、図9に示すように、加速度センサーPa及びPbの主走査方向の検出点間の距離である。
ここで、ΔYca、ΔYcb、ΔYpa及びΔYpbは、加速度センサーCa、Cb、Pa及びPbで検出された加速度を二回積分して算出する。
なお、センサー20のキャリッジ8の位置検出点と加速度センサーCa及びCbの検出点との間の距離Xca及びXcb、及び加速度センサーPa及びPbの主走査方向の検出点間の距離Wは固定値となるので、算出用情報として、制御部90の具備するROMに予め記憶しておく。
【0053】
次に、図10に基づき、相対位置変位算出部94及びアクチュエーター制御部95におけるキャリッジ8の位置制御処理の流れを説明する。
ここで、図10は、キャリッジ8の位置制御処理の一例を示すフローチャートである。
位置制御処理は、制御部90の具備するCPUによって、専用のプログラムを実行することで行われる処理であって、処理が開始されると、図10に示すように、まず、ステップS100に移行する。
【0054】
ステップS100では、相対位置変位算出部94において、画像の記録動作が開始されたか否かを判定し、開始されたと判定した場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでない場合(No)は、開始されるまで判定処理を繰り返す。
ステップS102に移行した場合は、相対位置変位算出部94において、ROMから算出用情報を取得して、ステップS104に移行する。
ステップS104では、相対位置変位算出部94において、検出部91からキャリッジ8の移動量Xを取得して、ステップS106に移行する。
【0055】
ステップS106では、相対位置変位算出部94において、加速度センサーCa及びCbからキャリッジ8の加速度RCa及びLCbを取得して、ステップS108に移行する。
ステップS108では、相対位置変位算出部94において、加速度センサーPa及びPbからプラテン12の加速度RPa及びLPbを取得して、ステップS110に移行する。
ステップS110では、相対位置変位算出部94において、ステップS106で取得した加速度RCa及びLCbからキャリッジ8の位置変位ΔYca及びΔYcbを算出し、ステップS108で取得した加速度RPa及びLPbからプラテン12の位置変位ΔYpa及びΔYpbを算出して、ステップS112に移行する。
【0056】
ステップS112では、キャリッジの移動量Xと、ステップS110で算出した位置変位ΔYca、ΔYcb、ΔYpa及びΔYpbと、ステップSS102で取得した算出用情報とを用いて、上式(1)及び(2)から、相対位置変位ΔYR及びΔYLを算出する。そして、算出した相対位置変位ΔYR及びΔYLをアクチュエーター制御部95に出力して、ステップS114に移行する。
【0057】
ステップS114では、アクチュエーター制御部95において、相対位置変位算出部94から取得した相対位置変位ΔYR及びΔYLを打ち消す方向にキャリッジ8を変位させるためのアクチュエーターの制御値を生成する。更に、生成した制御値に応じたアクチュエーター制御信号をアクチュエーター駆動回路で生成する。そして、生成したアクチュエーター制御信号をアクチュエーター33〜36に供給することで、アクチュエーター33〜36を相対位置変位を打ち消す方向にキャリッジ8を変位させるように駆動制御して、ステップS116に移行する。
ステップS116では、相対位置変位算出部94において、画像の記録処理が終了したか否かを判定し、終了したと判定した場合(Yes)は、一連の処理を終了し、そうでない場合(No)は、ステップS104に移行する。
【0058】
次に、図11に基づき、本実施の形態のインクジェットプリンター1の動作を説明する。
ここで、図11は、本実施の形態のキャリッジ8の位置制御処理を行った場合の、キャリッジ8の主走査方向の位置に対する副走査方向の位置変動の一例を示す図である。
インクジェットプリンター1は、電源が投入されると、暖機運転、用紙詰まり等のエラーの確認、各タイマーの初期値のリセット、メモリ内の不要なデータの削除等を行う初期化動作を実行する。
そして、初期化動作後において、印刷指示を受信すると、制御部90において、印刷指示に基づき、インクジェットプリンター1の具備する給紙部(不図示)及び紙送りモーター11及び搬送機構に、用紙13の給紙及び搬送を開始させる。
【0059】
次に、不図示の紙位置検出用センサーの検出信号から用紙13がプラテン12上に供給されたことを検出すると、制御部90において、キャリッジ8の駆動制御を開始する。
一方、電源の投入に応じて、キャリッジ8の背面部に配設されたセンサー20は、フレーム2に固定支持されたエンコーダースケール9の目盛を読み取り、位相の異なる4種類の読取信号(正弦波信号)を制御部90の検出部91に出力する。
キャリッジ8の駆動制御が開始されると、まず、検出部91において、センサー20からの検出信号に基づき、キャリッジ8の基準位置からの移動量Xを算出し、算出した移動量Xに基づきキャリッジ8の現在位置(EDP)を算出する。なお、算出した位置の情報は、以降の位置算出に用いるためメモリに記憶しておく。更に、算出した移動量Xを微分して移動速度(EDV)を算出する。そして、検出部91は、移動量Xを相対位置変位算出部94に出力し、検出位置EDPを減算器301に出力し、検出速度EDVを減算器303に出力する。
【0060】
一方、モーター制御部92は、位置指令生成器300においてキャリッジ8の目標位置を生成し、生成した目標位置を減算器301に出力する。これにより、減算器301は、位置指令生成器300から出力される目標位置から、検出部91から出力される検出位置EDPを減算して位置偏差を算出し、算出した位置偏差を目標速度演算部302に出力する。
目標速度演算部302は、減算器301から出力された位置偏差に基づき、キャリッジ8の目標速度を演算し、演算した目標速度を減算器303に出力する。
減算器303は、目標速度演算部302から出力される目標速度から、検出部91から出力される検出速度を減算して速度偏差を算出し、算出した速度偏差をPID制御器304に出力する。
【0061】
PID制御器304は、減算器303から出力される速度偏差に基づき、比例要素(P)、積分要素(I)及び微分要素(D)の算出を行う。更に、加算器において、これら算出した要素P,I,Dを加算し、加算結果をD/Aコンバーターでアナログ電流に変換して、このアナログ電流をキャリッジモーター10にフレキシブルケーブルを介して供給する。
これにより、キャリッジモーター10が、供給電流に応じた速度で回転駆動し、この回転駆動力が出力軸を介してタイミングベルト部4の右側プーリーに伝達される。右側プーリーが回転駆動すると、無端ベルトが回動し、左側プーリーを回転させると共に、無端ベルトに固定されたキャリッジ8をX1方向又はX2方向に移動させる。
【0062】
一方、キャリッジ8の移動制御が開始され、画像の記録動作が開始されると(ステップS100の「Yes」の分岐)、相対位置変位算出部94は、ROMから算出用情報を取得し(ステップS102)、検出部91からキャリッジ8の移動量Xを取得する(ステップS104)。更に、加速度センサーCa及びCbから、フレキシブルケーブル5を介してキャリッジ8に搭載された記録ヘッド14の左右側面の副走査方向の加速度LCb及びRCaを取得する(ステップS106)。更に、加速度センサーPa及びPbから、プラテン12の左右端部の副走査方向の加速度LPb及びRPaを取得する(ステップS108)。具体的に、上記取得した各情報はRAMに記憶する。
【0063】
そして、相対位置変位算出部94は、取得した加速度LCb、RCa、LPb及びRPaを2回積分して、キャリッジ8の記録ヘッド14の左右側面の位置変位ΔYcb及びΔYcaと、プラテン12の左右端部の位置変位ΔYpb及びΔYpaとを算出する(ステップS110)。更に、算出した位置変位ΔYca、ΔYcb、ΔYpa及びΔYpbと、取得した算出用情報W、X、Xca及びXcbと、取得したキャリッジ8の移動量Xとを用いて、上式(1)及び(2)に従って、キャリッジ8とプラテン12の副走査方向の相対位置変位ΔYR及びΔYLを算出する(ステップS112)。
【0064】
そして、算出した相対位置変位ΔYR及びΔYLをアクチュエーター制御部95に出力する。
アクチュエーター制御部95は、相対位置変位ΔYR及びΔYLを取得すると、アクチュエーター駆動回路において、これら相対位置変位ΔYR及びΔYLを打ち消す方向にキャリッジ8を変位させるアクチュエーター制御信号を生成する。
ここで、アクチュエーター制御信号は、アクチュエーター33〜36をそれぞれ独立に制御する4種類の信号を生成する。アクチュエーター制御部95は、生成した4種類のアクチュエーター制御信号の各制御信号をアクチュエーター33〜36の各対応するアクチュエーターにそれぞれ供給する(ステップS114)。
【0065】
次に、相対位置変位算出部94において、記録動作が終了したか否かを判定し(ステップS116)、記録動作が終了していないと判定した場合(ステップS116の「No」の分岐)は、キャリッジ8の移動量Xの取得処理からの上記ステップS104〜S114の処理を実行する。上記ステップS104〜S114の処理は、例えば、1秒間に1000回などのキャリッジ8とプラテン12の相対位置変動に追随可能な速度で繰り返し実行される。
【0066】
これにより、アクチュエーター33〜36が駆動して、キャリッジ8とプラテン12の相対位置変動に追随して、例えば、左右の相対位置変位ΔYR及びΔYLの変位方向が同じであれば、キャリッジ8の右端部をY1方向又はY2方向にΔYRだけ変位させ、キャリッジ8の左端部を右端部と同じ方向にΔYLだけ変位させる。一方、左右の相対位置変位ΔYR及びΔYLの変位方向が異なる場合は、キャリッジ8の右端部をY1方向又はY2方向にΔYRだけ変位させ、キャリッジ8の左端部を右端部とは反対の方向にΔYLだけ変位させる。また、相対位置変位が「0」の場合は変位をさせないように制御される。
【0067】
一方、ヘッド制御部93において、記録制御信号を生成し、生成した記録制御信号をフレキシブルケーブル5を介してキャリッジ8に搭載された記録ヘッドに供給する。
これにより、記録ヘッドの各ノズルが駆動し、予め設定された吐出タイミングで、プラテン12上に支持された用紙13の記録面にインク滴を吐出する。
上記一連の記録動作及び位置制御動作は繰り返し実行され、キャリッジ8が記録ヘッドから用紙13にインク滴を吐出しながら且つ相対位置変動を打ち消しながら主走査方向に往復移動すると共に、用紙13が副走査方向に搬送される。これにより、用紙13の記録面に画像が記録される。
【0068】
本実施の形態では、キャリッジ8とプラテン12の相対位置変位を算出して、キャリッジ変位部30を制御して、キャリッジ8を相対位置変位を打ち消す方向に変位させるようにした。これにより、図11に示すように、プラテン12の自由振動による相対位置変動を打ち消すことができるので、プラテン12の副走査方向の自由振動による用紙13に対するインク滴の吐出位置の目標位置との誤差を低減することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態のインクジェットプリンター1によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施の形態のインクジェットプリンター1は、加速度センサーCa及びCbをキャリッジ8の記録ヘッド14に配設すると共に、加速度センサーPa及びPbをプラテン12に配設した。更に、相対位置変位算出部94において、加速度センサーCa及びCbで検出した副走査方向の加速度と、加速度センサーPa及びPbで検出した副走査方向の加速度とに基づき、キャリッジ8とプラテン12の相対的な位置変位を算出するようにした。
【0070】
また、キャリッジ8の下端部に形成された溝内に、ガイド軸3の前板部3aを介して、キャリッジ8の右端部及び左端部に電磁式のアクチュエーター33〜36によって副走査方向の変位力を付与するキャリッジ変位部30を配設した。
更に、アクチュエーター制御部95において、算出した相対位置変位を打ち消すように変位部30のアクチュエーター33〜36を制御するようにした。
【0071】
これにより、キャリッジ8の加速移動によってプラテン12が自由振動を起こし、キャリッジ8とプラテン12との副走査方向の相対位置に変動が生じても、キャリッジ8のプラテン12に対する正確な相対位置変動を検出することができる。更に、この相対位置変動を打ち消すようにアクチュエーター33〜36を制御することができるので用紙13の目標位置により近い位置にインク滴を吐出することができ、副走査方向の記録ピッチの精度を向上することができる。
上記実施の形態において、キャリッジモーター10は、第1のアクチュエーターに対応し、プラテン12は、媒体支持部材に対応し、キャリッジ変位部30は、キャリッジ位置変位手段に対応し、アクチュエーター33〜36は、第2のアクチュエーターに対応する。
【0072】
また、上記実施の形態において、加速度センサーCa及びCbは、第1の変位情報検出手段に対応し、加速度センサーPa及びPbは、第2の変位情報検出手段に対応する。
また、上記実施の形態において、相対位置変位算出部94は、相対位置変位算出手段に対応し、アクチュエーター制御部95は、制御手段に対応する。
また、上記実施の形態において、加速度センサーCa及びCbによってキャリッジ8の加速度を検出する処理は、第1の変位情報検出ステップに対応し、加速度センサーPa及びPbによってプラテン12の加速度を検出処理は、第2の変位情報検出ステップに対応する。
【0073】
また、上記実施の形態において、ステップS100〜S110は、相対位置変位算出ステップに対応し、ステップS112は、制御ステップに対応する。
なお、上記実施の形態においては、図10のフローチャートに示すように、CPUによって専用のプログラムを実行することで、キャリッジ8の位置制御をソフトウェア主体で行う構成としたが、この構成に限らない。例えば、積分器等の各種演算器を用いたハードウェア主体で行う構成としてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態においては、キャリッジ変位部30によって、キャリッジ8の両端部に副走査方向の変位力を付与してキャリッジ8を変位させる構成としたが、この構成に限らない。
例えば、キャリッジ8の所定部に垂直方向(Z1及びZ2方向)の変位力を付与して、キャリッジ8を高さ方向にも変位させる構成としてもよい。これにより、高さ方向の相対位置変位も打ち消すことができる。
【0075】
また、上記実施の形態においては、電磁式のアクチュエーターで、キャリッジ8を変位させる構成としたが、この構成に限らず、圧電素子などの他の方式のアクチュエーターを用いる構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、エンコーダースケール9の目盛を読み取るセンサー20として光学式のセンサーを用いた光学検出方式を例に挙げて説明したが、この構成に限らず、磁気センサーを用いた電磁誘導検出方式などの他の検出方式を採用した構成としてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態においては、エンコーダースケール9を光を透過する材料を用いて構成し、透過光量の変化から目盛を読み取る構成としたが、この構成に限らず、例えば、光不透過の材料を用いて、反射光量の変化から目盛を読み取る構成にするなど他の構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、エンコーダースケール9の目盛を読み取って、基準位置からの相対的な移動量から位置を検出する構成としたが、この構成に限らない。例えば、バーコードのようにエンコーダースケールの目盛パターンそのものに位置情報を持たせることで、キャリッジの絶対位置を検出できる構成としてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態においては、本発明を記録装置の1つであるインクジェットプリンターについて実施しているが、特にこれに限られること無く、キャリッジを備えるスキャナ等の他の装置であっても適用可能である。
また、上記実施の形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1…インクジェットプリンター、2…フレーム、3…ガイド軸、3a…前板部、3b…奥板部、4…タイミングベルト部、5…フレキシブルケーブル、6,7…インクカートリッジ、8…キャリッジ、9…エンコーダースケール、10…キャリッジモーター、11…紙送りモーター、12…プラテン、13…用紙、14…記録ヘッド、20…センサー、20a…発光部、20b…受光部、30…キャリッジ変位部、31,32…弾性部材、33〜36…アクチュエーター、40…回転軸、90…制御部、91…検出部、92…モーター制御部、93…ヘッド制御部、94…相対位置変位算出部、95…アクチュエーター制御部、300…位置指令発生器、301,303…減算器、302…目標速度演算部、304…PID制御器
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、主走査方向に往復移動するキャリッジを有する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンター等の記録装置において、搬送される記録媒体に対してヘッドユニットから正確な位置に液滴を吐出するための様々な技術が提案されている。
例えば、下記の特許文献1に記載されているインクジェット塗布装置は、インクを噴射するノズルを有するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドを支持する支持基体と、前記支持基体とインクジェットヘッドとの間に設けられる弾性体と、インクジェットヘッドの移動速度及び変位を検出するセンサとしての速度センサー及び位置センサーと、支持基体に設けられ、インクジェットヘッドに振動方向と逆向きの力を付与するアクチュエーターと、速度センサー及び前記位置センサからの信号に基づいてアクチュエーターにインクジェットヘッドの振動を打ち消す信号を出力する振動制御装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−142237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のインクジェット塗布装置においては、インクジェットヘッドの変位を検出する位置センサーが上記支持基体に設けられている。ここで、インク塗布時に被塗布材を支持しているステージは、インクジェットヘッドの加速等によって生じる加振力によって自由振動を起こす。この自由振動は、インクジェットヘッドとステージ上の被塗布材との相対的な位置を変動させる。
【0005】
つまり、インクジェットヘッドの変位を検出する位置センサーを支持基体だけに配設しても、インクジェットヘッドと被塗布材との相対位置の変動は検出することができない。そのため、支持基体に配設した位置センサーだけで検出した位置変位を打ち消しても相対変動分の誤差が生じるため、誤差の分だけ液滴の塗布精度が低減する。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、上述の課題の少なくとも一部を解決することが可能な記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1の記録装置は、記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置であって、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドのインク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出手段と、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出手段と、
前記第1の変位情報検出手段で検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出手段で検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出手段と、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御手段と、を備える。
【0007】
このような構成であれば、第1の変位情報検出手段で検出したキャリッジの第1の変位情報と、第2の変位情報検出手段で検出した媒体支持部材の第2の変位情報とから、相対位置変位算出手段によって、キャリッジと媒体支持部材との相対的な位置変位を算出することができる。
更に、制御手段によって、相対位置変位算出手段で算出した相対的な位置変位を打ち消すように、キャリッジ位置変位手段の第2のアクチュエーターを制御することができる。
【0008】
これによって、例えば、キャリッジの速度変動などによって生じる加振力により、媒体支持部材が副走査方向に自由振動を起こしても、両者の相対的な位置変位を正確に検出することができる。更に、相対的な位置変位を、キャリッジの位置を変位させて打ち消すことができるので、キャリッジの位置制御をより高精度に行うことができ、記録ヘッドのインク吐出精度を向上することができるという効果が得られる。
ここで、上記媒体支持部材は、搬送手段で搬送される記録媒体の記録面とは反対側の面を支持する役割に加えて、インク吐出時の記録ヘッドと記録媒体の記録面との位置関係を規定する(一定にする)役割を果たすものである。
【0009】
〔形態2〕 更に、形態2の記録装置は、形態1に記載の記録装置において、前記第1の変位情報検出手段は、前記第1の変位情報として前記キャリッジの加速度を検出する、前記キャリッジに配設された2以上の第1加速度センサーを備え、
前記第2の変位情報検出手段は、前記第2の変位情報として前記媒体支持部材の加速度を検出する、前記媒体支持部材に配設された2以上の第2加速度センサーを備え、
前記相対位置変位算出手段は、前記第1加速度センサーで検出される加速度を2回積分して前記キャリッジの所定方向の変位である第1の変位を算出し、前記第2加速度センサーで検出される加速度を2回積分して前記媒体支持部材の所定方向の変位である第2の変位を算出し、算出した前記第1及び第2の変位に基づき前記相対位置変位を算出する。
このような構成であれば、加速度センサーの検出値から、キャリッジと媒体支持部材との相対的な位置変位を算出することができるので、キャリッジと媒体支持剤とに配設するセンサーの数を低減することができるという効果が得られる。
【0010】
〔形態3〕 更に、形態3の記録装置は、形態2に記載の記録装置において、前記記録ヘッドの前記主走査方向に面する一方の側面に1つの前記第1加速度センサーを配設すると共に他方の側面に1つの前記第1加速度センサーを配設し、
前記媒体支持部材の前記主走査方向の一方の端部に1つの前記第2加速度センサーを配設すると共に他方の端部に1つの前記第2加速度センサーを配設し、
2つの前記第1加速度センサーと2つの前記第2加速度センサーとを、前記主走査方向の同一直線上に配設した。
【0011】
このような構成であれば、キャリッジと媒体支持剤とに配設するセンサーの数を低減することができると共に、各センサー間で主走査方向の位置ずれが生じないため、検出した加速度から相対変位を簡易に算出することができるという効果が得られる。
なお、上記同一直線上とは、相対位置変位の算出値の誤差が許容範囲内に収まる範囲での微小な位置ズレであれば同一の範囲に含むものとする。
【0012】
〔形態4〕 一方、上記目的を達成するために形態4の記録装置の制御プログラムは、記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置の制御プログラムであって、
前記記録装置は、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドの前記インク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、を備えており、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出ステップと、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出ステップと、
前記第1の変位情報検出ステップで検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出ステップで検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出ステップと、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御ステップとを有する処理をコンピューターに実行させるためのプログラムを含む。
このような構成であれば、コンピューターによってプログラムが読み取られ、読み取られたプログラムに従ってコンピューターが処理を実行すると、形態1の記録装置と同等の作用および効果が得られる。
【0013】
〔形態5〕 また、上記目的を達成するために形態5の記録装置の制御方法は、記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置の制御方法であって、
前記記録装置は、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドの前記インク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、を備えており、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出ステップと、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出ステップと、
前記第1の変位情報検出ステップで検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出ステップで検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出ステップと、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御ステップと、を含む。
これにより、形態1に記載の記録装置と同等の作用及び効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係るインクジェットプリンター1の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、エンコーダースケール9とセンサー20との位置関係の一例を示す図であり、(b)は、センサー20の構成例を示す図である。
【図3】キャリッジ変位部30の各アクチュエーターの配設構成及び加速度センサーの配設構成の一例を示す平面図である。
【図4】キャリッジ8の溝部を右端側から見た平面図である。
【図5】(a)及び(b)は、制御部90の構成を示す図である。
【図6】モーター制御部92のキャリッジモーター10の制御ブロックの一例を示す図である。
【図7】キャリッジモーター10の速度変化を示す図である。
【図8】(a)は、キャリッジ8の主走査方向の位置に対する副走査方向の位置変動の一例を示す図であり、(b)は、プラテン12の自由振動によるキャリッジ8の位置変動の一例を示す図である。
【図9】相対位置変位を算出するための情報を記載したインクジェットプリンター1の主要部の概略構成を示す平面図である。
【図10】キャリッジ8の位置制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】本実施の形態のキャリッジ8の位置制御処理を行った場合の、キャリッジ8の主走査方向の位置に対する副走査方向の位置変動の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1〜図11は、本発明に係る記録装置の実施の形態を示す図である。
以下、記録媒体に記録を行う記録装置の一例として、インク滴を吐出して用紙等の記録媒体に画像を記録(印刷)するインクジェットプリンターについて説明する。ここでのインクジェットプリンターは、用紙搬送方向と交差する方向に往復移動する、インク滴を吐出する記録ヘッドの搭載されたキャリッジを備えており、いわゆるマルチパスでの印刷が可能なマルチパス型インクジェットプリンターである。
【0016】
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの概略構成を図面に基づき説明する。
ここで、図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター1の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、フレーム2と、ガイド軸3と、タイミングベルト部4と、フレキシブルケーブル5と、キャリッジ8と、エンコーダースケール9と、キャリッジモーター10と、紙送りモーター11と、プラテン12とを含んで構成される。
【0017】
なお、図1中のX1方向(左方向)と、X1方向とは反対方向のX2方向(右方向)とは、キャリッジ8が往復移動する方向であり、以下、これら双方向をまとめて主走査方向と称す。また、図1中のY1方向(手前方向)と、Y1方向とは反対方向のY2方向(奥行方向)とは、用紙13の搬送方向であり、以下、これら双方向をまとめて副走査方向と称す。なお、主走査方向及び副走査方向については他の図においても同様である。
【0018】
ガイド軸3は、長手方向と直行する方向に切ったときの断面形状が略コ字状の棒状の部材から構成されている。ガイド軸3は、フレーム2の内側において、コ字を時計回りに90°回転させ、且つそのコ字状の対向する板状の2辺の一方の辺側3aをY1方向側に、他方の辺側3bをY2方向側に位置させた姿勢で配設されている。以下、一方の辺側3aを前板部3aと称し、他方の辺側3bを奥板部3bと称す。更に、ガイド軸3は、前板部3aを、キャリッジ8の下端部に形成された溝内をその一方の側面側から他方の側面側へと貫通して配設されている。ここで、前板部3aの板厚は、溝の福走査方向の幅よりも薄く形成されている。更に、ガイド軸3の一端部はフレーム2の左側面に固定され、他端部はフレーム2の右側面に固定されている。この構成によって、ガイド軸3は、フレーム2の内側の左右側面間に亘って延在し、キャリッジ8の往復移動を案内する案内部材としての役割を担っている。
【0019】
タイミングベルト部4は、フレーム2の背面部の内側にガイド軸3と略同じ高さ位置に、背面部と直交する軸回りに回転自在に軸支された左右2つのプーリーと、該2つのプーリーに掛け回された無端ベルトとから構成される。更に、右側プーリーの回転軸には、キャリッジモーター10の出力軸が接続されており、キャリッジモーター10の回転駆動力を回転軸に伝達し、右側プーリーを回転させる。この回転力は、無端ベルトに伝達され無端ベルトを回動させる。無端ベルトには、キャリッジ8が固定されており、無端ベルトの回動に応じてキャリッジ8がガイド軸3に沿って移動する。この移動距離は、左右2つのプーリー間の距離で規定される。
【0020】
プラテン12は、主走査方向の長さが、記録可能な最大用紙幅よりも若干長い矩形平板状に形成されて、ガイド軸3に沿って配設されている。更に、プラテン12は、用紙吸引部(不図示)に繋がる図示しない複数の孔が穿設され、表面には吸湿によって生じる用紙のコックリング等を吸収する図示しない複数の凹凸部が形成されている。
なお、用紙吸引部は、プラテン12の下部に配設された圧力室と、圧力室の下部に配設されたファンを備え、ファンを回転させることにより、プラテン12に穿設されている孔から圧力室内に吸気が行われる。これによって、プラテン12の上面にロール紙やカット紙などの用紙13が供給されると、用紙13の下面側に負圧が発生し、用紙13をプラテン12の上面に吸着させて用紙13の浮き上がりを防止することができる。
【0021】
キャリッジ8は、インクカートリッジ(モノクロ)6と、インクカートリッジ(カラー)7と、不図示のダンパ(インク貯留部)及びチューブと、ダンパ及びチューブを介してインクカートリッジ6及び7から供給されるインクを吐出する記録ヘッド14(不図示)とを搭載している。また、キャリッジ8は、タイミングベルト部4の無端ベルトに固定され、無端ベルトの回動に応じてガイド軸3に沿って主走査方向に往復移動する。
【0022】
記録ヘッド14は、キャリッジ8の下部においてプラテン12の上面に供給される用紙13と所定間隔を空けて対向するように配設されており、圧電素子から構成される各インク色に対応する複数のノズル(不図示)を備えている。そして、記録ヘッド14は、後述する制御部90からの記録制御信号に応じて圧電素子が駆動されると、コントロールされた大きさの、モノクロインク、カラーインク(イエロー、マゼンタ、シアン等)のインク滴を各色に対応するノズルの吐出孔から吐出する。
なお、ノズルからインク滴を吐出する方式は、上記の方式に限定されるものではなく、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰インクジェット方式等の各種方式を採用することができる。
【0023】
静電方式は、静電ギャップに駆動パルスを与えてキャビティ内の振動板を変位させ、これによって生じるキャビティ内の圧力変化によってインク滴を吐出する方式である。ピエゾ方式は、ピエゾ素子に駆動パルスを与えてキャビティ内の振動板を変位させ、これによって生じるキャビティ内の圧力変化によってインク滴を吐出する方式である。膜沸騰インクジェット方式は、キャビティ内に備えた微小ヒータによってインクを加熱し、気泡の生成に伴う圧力変化によってインク滴を吐出する方式である。
【0024】
キャリッジ8は、更に、下端部に形成された溝内にキャリッジ変位部30(後述)を備えている。キャリッジ変位部30は、溝内を貫通する前板部3aの両板面に対して、副走査方向の力を付与する複数のアクチュエーターを備えており、制御部90からの制御信号に応じて、各アクチュエーターを制御することで、キャリッジ8を変位させる。
具体的に、本実施の形態のインクジェットプリンター1は、画像の記録時において、キャリッジ8とプラテン12の加速度を検出し、検出した加速度に基づきキャリッジ8とプラテン12の副走査方向の相対的な位置変位(以下、相対位置変位という)を算出する。そして、制御部90によって、算出した相対位置変位を打ち消すようにキャリッジ変位部30の各アクチュエーターを制御して、キャリッジ8とプラテン12の副走査方向の相対的な位置変位を打ち消すようになっている。
【0025】
エンコーダースケール9は、プラテン12の主走査方向の長さよりも若干短い長さの矩形平板状の透過性を有する部材から構成され、その板面には格子状の目盛が設けられている。
エンコーダースケール9は、ガイド軸3の前板部3a及び奥板部3bとの間に位置すると共にガイド軸3の長手方向に沿って、目盛の設けられた板面を副走査方向に向けた状態で長手方向の一端がフレーム2の内側の左側面に設けられた支持部(不図示)にばね部材(不図示)を介して支持されている。更に、エンコーダースケール9の長手方向の他端はフレーム2の内側の右側面に設けられた支持部(不図示)に支持されている。ばね部材は、エンコーダースケール9の左端部にX1方向への張力を付勢するように所定の収縮力をもって配設されている。これにより、エンコーダースケール9が撓むのを防ぎ、真っ直ぐな状態を維持する。
【0026】
ここで、図2(a)は、エンコーダースケール9とセンサー20との位置関係の一例を示す図であり、(b)は、センサー20の構成例を示す図である。
キャリッジ8は、図2(a)に示すように、背面部にエンコーダースケール9に設けられた目盛を読み取るセンサー20が設けられている。
センサー20は、図2(a)に示すように、キャリッジ8の背面部に突設されており、図2(b)に示すように、LED等の発光素子を有する発光部20a及びフォトダイオード等の受光素子を有する受光部20bを備えている。そして、エンコーダースケール9の格子状の目盛を透過する光の受光量の変化から正弦波信号を生成することで、目盛を読み取るようになっている。
【0027】
本実施の形態では、発光部20aの有する発光素子からの光を4つの走査窓に分け、各窓に対応する受光部20bの受光素子が格子状の目盛を透過した光の光量変化から正弦波信号を生成する。各窓から生成される正弦波信号は90度ずつ位相がずれており、後述する制御部90において、この位相差を持つ4つの正弦波信号により移動量を算出する。
また、エンコーダースケール9とセンサー20とは、図2(a)及び(b)に示すように、エンコーダースケール9の目盛部分がセンサー20の発光部20aと受光部20bとの間に位置する位置関係に配設されている。
【0028】
フレキシブルケーブル5は、一端がキャリッジ8に搭載された記録ヘッド及びセンサー20のコネクター部に接続され、他端が制御部90(後述)のコネクター部に接続されている。そして、制御部90からの記録制御信号を記録ヘッドに供給すると共に、センサー20の検出信号を制御部90に伝送する。
紙送りモーター11は、制御部90からのモーター制御信号に応じて駆動し、紙送りローラー等の紙送り機構(不図示)に駆動力を伝達するモーターである。
【0029】
具体的に、記録媒体としての用紙13は、制御部90からのモーター制御信号によって駆動される紙送りモーター11と紙送り機構とによって、プラテン12上を副走査方向に搬送される。
上記構成によって、インクジェットプリンター1は、上記相対位置変位を打ち消しながら、センサー20の検出信号に基づき用紙13の搬送とキャリッジ8の往復移動とを繰り返し、プラテン12上に支持された用紙13の記録面に対して記録ヘッドからインク滴を吐出して用紙13に画像を記録することができる。
【0030】
次に、図3及び図4に基づき、本発明の主要な構成について説明する。
ここで、図3は、キャリッジ変位部30の各アクチュエーターの配設構成及び加速度センサーの配設構成の一例を示す平面図である。また、図4は、キャリッジ8の溝部を右端側から見た平面図である。
図3に示すように、キャリッジ8の下端側には記録ヘッド14が搭載されており、記録ヘッド14の右側面には加速度センサーCaが配設され、左側面には加速度センサーCbが配設されている。
【0031】
また、図3に示すように、プラテン12の右端上面には加速度センサーPaが配設され、左端上面には加速度センサーPbが配設されている。
本実施の形態において、加速度センサーCa及びCb並びにPa及びPbは、同じ型番のセンサーであり、且つ、図3に示すように、平面視でいずれも主走査方向の直線上に位置するように配設されている。この構成によって、検出特性及び副走査方向の加速度の検出点の位置を一致又は略一致させている。
【0032】
また、図3に示すように、キャリッジ変位部30は、溝内の右端部におけるガイド軸3の前板部3aを挟んでY1方向側の壁面に設けられたアクチュエーター33と、ガイド部を挟んでY2方向側の壁面に設けられたアクチュエーター34とを備えている。
キャリッジ変位部30は、更に、溝内の左端部におけるガイド軸3のガイド部を挟んでY1方向側の壁面に設けられたアクチュエーター35と、ガイド部を挟んでY2方向側の壁面に設けられたアクチュエーター36とを備えている。
【0033】
本実施の形態において、アクチュエーター33〜36は、キャリッジ8の溝内の壁に固定された第1強磁性体と、第1強磁性体に巻回されたコイルと、第1強磁性体の上面と対向してキャリッジ8の溝内を貫通する前板部3aの板面に固定された第2強磁性体とを備えた電磁式のアクチュエーターである。この構成によって、コイルに電流を流すことにより第1強磁性体とコイルとが電磁石となり、その磁気吸引力により対向配置された第2強磁性体及び第2強磁性体を固定している前板部3aの板面を、第1強磁性体の固定された壁側に引き付ける力を発生させる。
【0034】
従って、前板部3aの板面を挟んで対向配置された、右端側のアクチュエーター33及び34と、左端側のアクチュエーター35及び36とをそれぞれ独立に制御することで、キャリッジ8を様々な方向に変位させることができる。
具体的に、両端部で同じ方向に力をかけることでキャリッジ8を副走査方向に真っ直ぐに変位させられると共に、例えば、両端部の一方と他方とに逆方向の変位力(均一)をかけることで、図3中の軸40を回転軸とした回転方向にも変位させることができる。両端部の変位方向が同じで変位力が異なる場合にも回転方向の変位となる。但し、両端部の変位力が均一でない場合は軸40の位置がずれる。
【0035】
更に、図4に示すように、キャリッジ8の溝内には、前板部3aとキャリッジ8との間の隙間によるがたつきの発生を防止するために、前板部3aを挟み込んで、溝内のZ2方向側の端部近傍のY1方向側の壁部に弾性部材31が、Y2方向側の壁部に弾性部材32がそれぞれ配設されている。なお、これら弾性部材31及び32は、前板部3aにキャリッジ8の往復移動を必要以上に妨げない程度の圧力を付与した状態で接触して配設される。
また、図4に示すように、アクチュエーター33及び34は、弾性部材31及び32よりもZ1方向側の溝の下端部近傍に配設されている。アクチュエーター35及び36についても同様である。
【0036】
次に、図5に基づき、制御部90の構成を説明する。
ここで、図5(a)及び(b)は、制御部90の構成を示す図である。
制御部90は、図5(a)に示すように、不図示のコネクター部を介してフレキシブルケーブル5と電気的に接続されている。そして、フレキシブルケーブル5を介して、センサー20の検出信号(エンコーダー検出信号)及び加速度センサーの検出信号(加速度信号)を受信し、また、記録ヘッド14に記録制御信号を、アクチュエーター33〜36にアクチュエーター制御信号をそれぞれ供給する。また、他のフレキシブルケーブル(不図示)を介して、キャリッジモーター10、紙送りモーター11とも電気的に接続されており、該フレキシブルケーブルを介してキャリッジモーター10及び紙送りモーター11にモーター制御信号をそれぞれ供給する。また、フレキシブルケーブル5を介して、加速度センサーCa及びCbと電気的に接続されており、他のフレキシブルケーブルを介して加速度センサーPa及びPbと電気的に接続されている。各フレキシブルケーブルを介して、各加速度センサーの加速度信号を受信するようになっている。
【0037】
また、制御部90は、図5(b)に示すように、検出部91と、モーター制御部92と、ヘッド制御部93と、相対位置変位算出部94と、アクチュエーター制御部95とを含んで構成される。
検出部91は、センサー20の検出信号に基づき、キャリッジ8の位置と速度とを検出する。
具体的に、センサー20からの位相の異なる4つの正弦波信号からキャリッジ8の移動方向及び移動量を算出し、基準位置と移動方向及び移動量とからキャリッジ8の位置を算出し、移動量を微分してキャリッジ8の移動速度を算出する。
【0038】
モーター制御部92は、検出部91で検出したキャリッジ8の検出位置及び検出速度とに基づき、PID制御により、キャリッジモーター10を制御して、キャリッジ8の移動速度が目標速度となるように制御する。
ヘッド制御部93は、予め設定された吐出タイミングで記録ヘッドにインク滴を吐出させる記録制御信号を生成し、生成した記録制御信号をフレキシブルケーブル5を介してキャリッジ8の記録ヘッドに供給して、記録ヘッドのインク滴の吐出動作を制御する。
【0039】
相対位置変位算出部94は、加速度センサーCa及びCbで検出されたキャリッジ8の記録ヘッド14の両端部の副走査方向の加速度の検出信号である加速度信号LCb及びRCaを取得する。更に、加速度センサーPa及びPbで検出されたプラテン12の両端部の副走査方向の加速度の検出信号である加速度信号RPa及びLPbを取得する。更に、ROMに記憶された、相対位置変位を算出するための算出情報を取得する。そして、取得した加速度信号LCb及びRCa及び加速度信号RPa及びLPbと、算出情報とに基づきキャリッジ8とプラテン12との相対位置変位を算出し、算出した相対位置変位をアクチュエーター制御部95に出力する。
【0040】
アクチュエーター制御部95は、相対位置変位算出部94から入力された相対位置変位に基づき、相対位置変位を打ち消す方向にキャリッジ8を変位させるようにアクチュエーター33〜36を制御する制御値を算出する。更に、アクチュエーター駆動回路(不図示)において、算出した制御値に応じたアクチュエーター制御信号を生成する。そして、生成したアクチュエーター制御信号をアクチュエーター33〜36に供給する。これにより、相対位置変位を打ち消す方向にキャリッジ8を変位させる制御を行う。
また、制御部90は、図示しないCPU,ROM,RAM等を備え、インクジェットプリンター1における各部及び各機構等の全体を制御する。
【0041】
次に、図6に基づき、モーター制御部92のキャリッジモーター10の制御部分の構成について説明する。
ここで、図6は、モーター制御部92のキャリッジモーター10の制御ブロックの一例を示す図である。
キャリッジモーター10の制御ブロックは、図6に示すように、位置指令生成器300と、減算器301と、目標速度演算部302と、減算器303と、PID制御器304とを含んで構成される。
【0042】
ここで、図4中の検出部91は、フィードバック制御の制御量として、センサー20からの出力信号に基づき検出した検出位置EDPを減算器301に出力し、センサー20からの出力信号に基づき検出した検出速度EDVを減算器303に出力している。
位置指令生成器300は、キャリッジモーター10を所定動作で駆動させるために制御ブロックに入力される目標位置を出力する。図6に示した制御ブロックは、実際のキャリッジ8の位置情報(EDP)をフィードバックさせて、この目標位置に追従するようにキャリッジモーター10を制御する。
【0043】
減算器301は、位置指令生成器300から出力された目標位置と、キャリッジ8の実際の位置である検出位置EDPとの位置偏差を演算し、目標速度演算部302に出力する。
目標速度演算部302は、減算器301から出力された位置偏差に基づいて、キャリッジ8の目標速度を演算する。この演算は位置偏差に位置ゲインGpを乗算することにより行われる。この位置ゲインGpは位置偏差に応じて決定される。演算後、目標速度を減算器303に出力する。
【0044】
減算器303は、目標速度演算部302から出力された目標速度と、キャリッジ8の実際の速度である検出速度EDVとの速度偏差を演算する。演算後、速度偏差をPID制御器304に出力する。
PID制御器304は、図示しない比例要素、積分要素及び微分要素から構成されている。各要素は減算器303から出力された速度偏差に要素毎の演算を行い、図示しない加算器で加算する。その後、PID制御器304からの出力は、図示しないD/Aコンバーターに送られてアナログ電流に変換された後、キャリッジモーター10に供給される。
【0045】
図7は、キャリッジモーター10の速度変化を示す図である。図7では、キャリッジ8の往復移動のうち、往路又は復路のいずれかの駆動をさせた場合のキャリッジモーター10の速度変化を示しており、縦軸に速度V[m/s]を横軸に時間T[s]を表している。上述したキャリッジモーター10の速度制御は、図7に示す速度変化のように、所定の速度V1になるまで加速され(時間0−T1間)、所定の速度V1に達した後、定速度制御に切り替わる。その後、キャリッジモーター10は、所定の時間(定速時)、一定速度で駆動される(T1−T2間)。その後、所定の割合で減速されて停止させられる(T2−T3間)。
【0046】
次に、図8に基づき、キャリッジ8及びプラテン12の振動によって生じる相対位置変動について説明する。
ここで、図8(a)は、キャリッジ8の主走査方向の位置に対する副走査方向の位置変動の一例を示す図であり、(b)は、プラテン12の自由振動によるキャリッジ8の位置変動の一例を示す図である。図8において、縦軸に定速時のキャリッジ8の副走査方向の変位を、横軸にキャリッジ8の主走査方向の位置を表している。
【0047】
図7に示したキャリッジモーター10の速度変化において、キャリッジモーター10が定速度制御で駆動されている期間、すなわち定速時T1−T2間において、実際には図8(a)に示すように、キャリッジ8の副走査方向の位置変動が生じている。この位置変動は、キャリッジモーター10のコギングによる位置変動や、キャリッジ8の加速動作によってプラテン12が加振され、プラテン12が自由振動を起こすことによって生じる相対位置変動分等が含まれる。
【0048】
従来の振動抑制制御では、記録ヘッドの支持部等のプラテン以外のキャリッジ側にだけ設けられたセンサーから読み取った情報に基づき生成された変位情報を用いてその変位を打ち消す制御を行っている。そのため、図8(b)に示すように、プラテン12の自由振動による相対位置変動分が補正されずに残ってしまう。このプラテン12の自由振動による相対位置変動は、用紙13とキャリッジ8との間の相対位置変動となるため、副走査方向の記録ピッチにむらを生じさせる。
【0049】
本実施の形態では、上述したように、キャリッジ8に搭載された記録ヘッド14のみではなく、プラテン12にも加速度センサーを配設している。そして、画像の記録期間(定速時T1−T2間)において、加速度センサーの検出信号に基づきキャリッジ8とプラテン12との相対位置変位を算出し、この相対位置変位を打ち消すように、キャリッジ変位部30のアクチュエーター33〜36を制御する。
【0050】
次に、図9に基づき、相対位置変位算出部94における相対位置変位の算出方法について説明する。ここで、図9は、相対位置変位を算出するための情報を記載したインクジェットプリンター1の主要部の概略構成を示す平面図である。
本実施の形態においては、相対位置変位算出部94において、下式(1)及び(2)に基づき、キャリッジ8とプラテン12との相対位置変位ΔYR及びΔYLを算出する。
ΔYR=ΔYca−((ΔYpb−ΔYpa)×(X−Xca)/W)+ΔYpa
・・・(1)
ΔYL=ΔYcb−((ΔYpb−ΔYpa)×(X+Xcb)/W)+ΔYpa
・・・(2)
【0051】
上式(1)及び(2)において、ΔYRは、図9に示すように、キャリッジ8の右端側の加速度センサーCaの検出点とプラテン12の右端側の加速度センサーYaの検出点との副走査方向の相対位置変位である。また、ΔYcaは、図9に示すように、キャリッジ8の右端側の加速度センサーCaの検出点の副走査方向の変位であり、ΔYcbは、キャリッジ8の左端側の加速度センサーCbの検出点の福走査方向の変位である。また、ΔYpaは、図9に示すように、プラテン12の右端側の加速度センサーPaの検出点の副走査方向の変位であり、ΔYpbは、プラテン12の左端側の加速度センサーPbの検出点の福走査方向の変位である。
【0052】
また、Xは、図9に示すように、検出部91で検出されるキャリッジ8の主走査方向の移動量であり、Xcaは、移動量Xの位置から加速度センサーCaの検出点までの距離であり、Xcbは、移動量Xの位置から加速度センサーCbの検出点までの距離である。また、Wは、図9に示すように、加速度センサーPa及びPbの主走査方向の検出点間の距離である。
ここで、ΔYca、ΔYcb、ΔYpa及びΔYpbは、加速度センサーCa、Cb、Pa及びPbで検出された加速度を二回積分して算出する。
なお、センサー20のキャリッジ8の位置検出点と加速度センサーCa及びCbの検出点との間の距離Xca及びXcb、及び加速度センサーPa及びPbの主走査方向の検出点間の距離Wは固定値となるので、算出用情報として、制御部90の具備するROMに予め記憶しておく。
【0053】
次に、図10に基づき、相対位置変位算出部94及びアクチュエーター制御部95におけるキャリッジ8の位置制御処理の流れを説明する。
ここで、図10は、キャリッジ8の位置制御処理の一例を示すフローチャートである。
位置制御処理は、制御部90の具備するCPUによって、専用のプログラムを実行することで行われる処理であって、処理が開始されると、図10に示すように、まず、ステップS100に移行する。
【0054】
ステップS100では、相対位置変位算出部94において、画像の記録動作が開始されたか否かを判定し、開始されたと判定した場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでない場合(No)は、開始されるまで判定処理を繰り返す。
ステップS102に移行した場合は、相対位置変位算出部94において、ROMから算出用情報を取得して、ステップS104に移行する。
ステップS104では、相対位置変位算出部94において、検出部91からキャリッジ8の移動量Xを取得して、ステップS106に移行する。
【0055】
ステップS106では、相対位置変位算出部94において、加速度センサーCa及びCbからキャリッジ8の加速度RCa及びLCbを取得して、ステップS108に移行する。
ステップS108では、相対位置変位算出部94において、加速度センサーPa及びPbからプラテン12の加速度RPa及びLPbを取得して、ステップS110に移行する。
ステップS110では、相対位置変位算出部94において、ステップS106で取得した加速度RCa及びLCbからキャリッジ8の位置変位ΔYca及びΔYcbを算出し、ステップS108で取得した加速度RPa及びLPbからプラテン12の位置変位ΔYpa及びΔYpbを算出して、ステップS112に移行する。
【0056】
ステップS112では、キャリッジの移動量Xと、ステップS110で算出した位置変位ΔYca、ΔYcb、ΔYpa及びΔYpbと、ステップSS102で取得した算出用情報とを用いて、上式(1)及び(2)から、相対位置変位ΔYR及びΔYLを算出する。そして、算出した相対位置変位ΔYR及びΔYLをアクチュエーター制御部95に出力して、ステップS114に移行する。
【0057】
ステップS114では、アクチュエーター制御部95において、相対位置変位算出部94から取得した相対位置変位ΔYR及びΔYLを打ち消す方向にキャリッジ8を変位させるためのアクチュエーターの制御値を生成する。更に、生成した制御値に応じたアクチュエーター制御信号をアクチュエーター駆動回路で生成する。そして、生成したアクチュエーター制御信号をアクチュエーター33〜36に供給することで、アクチュエーター33〜36を相対位置変位を打ち消す方向にキャリッジ8を変位させるように駆動制御して、ステップS116に移行する。
ステップS116では、相対位置変位算出部94において、画像の記録処理が終了したか否かを判定し、終了したと判定した場合(Yes)は、一連の処理を終了し、そうでない場合(No)は、ステップS104に移行する。
【0058】
次に、図11に基づき、本実施の形態のインクジェットプリンター1の動作を説明する。
ここで、図11は、本実施の形態のキャリッジ8の位置制御処理を行った場合の、キャリッジ8の主走査方向の位置に対する副走査方向の位置変動の一例を示す図である。
インクジェットプリンター1は、電源が投入されると、暖機運転、用紙詰まり等のエラーの確認、各タイマーの初期値のリセット、メモリ内の不要なデータの削除等を行う初期化動作を実行する。
そして、初期化動作後において、印刷指示を受信すると、制御部90において、印刷指示に基づき、インクジェットプリンター1の具備する給紙部(不図示)及び紙送りモーター11及び搬送機構に、用紙13の給紙及び搬送を開始させる。
【0059】
次に、不図示の紙位置検出用センサーの検出信号から用紙13がプラテン12上に供給されたことを検出すると、制御部90において、キャリッジ8の駆動制御を開始する。
一方、電源の投入に応じて、キャリッジ8の背面部に配設されたセンサー20は、フレーム2に固定支持されたエンコーダースケール9の目盛を読み取り、位相の異なる4種類の読取信号(正弦波信号)を制御部90の検出部91に出力する。
キャリッジ8の駆動制御が開始されると、まず、検出部91において、センサー20からの検出信号に基づき、キャリッジ8の基準位置からの移動量Xを算出し、算出した移動量Xに基づきキャリッジ8の現在位置(EDP)を算出する。なお、算出した位置の情報は、以降の位置算出に用いるためメモリに記憶しておく。更に、算出した移動量Xを微分して移動速度(EDV)を算出する。そして、検出部91は、移動量Xを相対位置変位算出部94に出力し、検出位置EDPを減算器301に出力し、検出速度EDVを減算器303に出力する。
【0060】
一方、モーター制御部92は、位置指令生成器300においてキャリッジ8の目標位置を生成し、生成した目標位置を減算器301に出力する。これにより、減算器301は、位置指令生成器300から出力される目標位置から、検出部91から出力される検出位置EDPを減算して位置偏差を算出し、算出した位置偏差を目標速度演算部302に出力する。
目標速度演算部302は、減算器301から出力された位置偏差に基づき、キャリッジ8の目標速度を演算し、演算した目標速度を減算器303に出力する。
減算器303は、目標速度演算部302から出力される目標速度から、検出部91から出力される検出速度を減算して速度偏差を算出し、算出した速度偏差をPID制御器304に出力する。
【0061】
PID制御器304は、減算器303から出力される速度偏差に基づき、比例要素(P)、積分要素(I)及び微分要素(D)の算出を行う。更に、加算器において、これら算出した要素P,I,Dを加算し、加算結果をD/Aコンバーターでアナログ電流に変換して、このアナログ電流をキャリッジモーター10にフレキシブルケーブルを介して供給する。
これにより、キャリッジモーター10が、供給電流に応じた速度で回転駆動し、この回転駆動力が出力軸を介してタイミングベルト部4の右側プーリーに伝達される。右側プーリーが回転駆動すると、無端ベルトが回動し、左側プーリーを回転させると共に、無端ベルトに固定されたキャリッジ8をX1方向又はX2方向に移動させる。
【0062】
一方、キャリッジ8の移動制御が開始され、画像の記録動作が開始されると(ステップS100の「Yes」の分岐)、相対位置変位算出部94は、ROMから算出用情報を取得し(ステップS102)、検出部91からキャリッジ8の移動量Xを取得する(ステップS104)。更に、加速度センサーCa及びCbから、フレキシブルケーブル5を介してキャリッジ8に搭載された記録ヘッド14の左右側面の副走査方向の加速度LCb及びRCaを取得する(ステップS106)。更に、加速度センサーPa及びPbから、プラテン12の左右端部の副走査方向の加速度LPb及びRPaを取得する(ステップS108)。具体的に、上記取得した各情報はRAMに記憶する。
【0063】
そして、相対位置変位算出部94は、取得した加速度LCb、RCa、LPb及びRPaを2回積分して、キャリッジ8の記録ヘッド14の左右側面の位置変位ΔYcb及びΔYcaと、プラテン12の左右端部の位置変位ΔYpb及びΔYpaとを算出する(ステップS110)。更に、算出した位置変位ΔYca、ΔYcb、ΔYpa及びΔYpbと、取得した算出用情報W、X、Xca及びXcbと、取得したキャリッジ8の移動量Xとを用いて、上式(1)及び(2)に従って、キャリッジ8とプラテン12の副走査方向の相対位置変位ΔYR及びΔYLを算出する(ステップS112)。
【0064】
そして、算出した相対位置変位ΔYR及びΔYLをアクチュエーター制御部95に出力する。
アクチュエーター制御部95は、相対位置変位ΔYR及びΔYLを取得すると、アクチュエーター駆動回路において、これら相対位置変位ΔYR及びΔYLを打ち消す方向にキャリッジ8を変位させるアクチュエーター制御信号を生成する。
ここで、アクチュエーター制御信号は、アクチュエーター33〜36をそれぞれ独立に制御する4種類の信号を生成する。アクチュエーター制御部95は、生成した4種類のアクチュエーター制御信号の各制御信号をアクチュエーター33〜36の各対応するアクチュエーターにそれぞれ供給する(ステップS114)。
【0065】
次に、相対位置変位算出部94において、記録動作が終了したか否かを判定し(ステップS116)、記録動作が終了していないと判定した場合(ステップS116の「No」の分岐)は、キャリッジ8の移動量Xの取得処理からの上記ステップS104〜S114の処理を実行する。上記ステップS104〜S114の処理は、例えば、1秒間に1000回などのキャリッジ8とプラテン12の相対位置変動に追随可能な速度で繰り返し実行される。
【0066】
これにより、アクチュエーター33〜36が駆動して、キャリッジ8とプラテン12の相対位置変動に追随して、例えば、左右の相対位置変位ΔYR及びΔYLの変位方向が同じであれば、キャリッジ8の右端部をY1方向又はY2方向にΔYRだけ変位させ、キャリッジ8の左端部を右端部と同じ方向にΔYLだけ変位させる。一方、左右の相対位置変位ΔYR及びΔYLの変位方向が異なる場合は、キャリッジ8の右端部をY1方向又はY2方向にΔYRだけ変位させ、キャリッジ8の左端部を右端部とは反対の方向にΔYLだけ変位させる。また、相対位置変位が「0」の場合は変位をさせないように制御される。
【0067】
一方、ヘッド制御部93において、記録制御信号を生成し、生成した記録制御信号をフレキシブルケーブル5を介してキャリッジ8に搭載された記録ヘッドに供給する。
これにより、記録ヘッドの各ノズルが駆動し、予め設定された吐出タイミングで、プラテン12上に支持された用紙13の記録面にインク滴を吐出する。
上記一連の記録動作及び位置制御動作は繰り返し実行され、キャリッジ8が記録ヘッドから用紙13にインク滴を吐出しながら且つ相対位置変動を打ち消しながら主走査方向に往復移動すると共に、用紙13が副走査方向に搬送される。これにより、用紙13の記録面に画像が記録される。
【0068】
本実施の形態では、キャリッジ8とプラテン12の相対位置変位を算出して、キャリッジ変位部30を制御して、キャリッジ8を相対位置変位を打ち消す方向に変位させるようにした。これにより、図11に示すように、プラテン12の自由振動による相対位置変動を打ち消すことができるので、プラテン12の副走査方向の自由振動による用紙13に対するインク滴の吐出位置の目標位置との誤差を低減することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態のインクジェットプリンター1によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施の形態のインクジェットプリンター1は、加速度センサーCa及びCbをキャリッジ8の記録ヘッド14に配設すると共に、加速度センサーPa及びPbをプラテン12に配設した。更に、相対位置変位算出部94において、加速度センサーCa及びCbで検出した副走査方向の加速度と、加速度センサーPa及びPbで検出した副走査方向の加速度とに基づき、キャリッジ8とプラテン12の相対的な位置変位を算出するようにした。
【0070】
また、キャリッジ8の下端部に形成された溝内に、ガイド軸3の前板部3aを介して、キャリッジ8の右端部及び左端部に電磁式のアクチュエーター33〜36によって副走査方向の変位力を付与するキャリッジ変位部30を配設した。
更に、アクチュエーター制御部95において、算出した相対位置変位を打ち消すように変位部30のアクチュエーター33〜36を制御するようにした。
【0071】
これにより、キャリッジ8の加速移動によってプラテン12が自由振動を起こし、キャリッジ8とプラテン12との副走査方向の相対位置に変動が生じても、キャリッジ8のプラテン12に対する正確な相対位置変動を検出することができる。更に、この相対位置変動を打ち消すようにアクチュエーター33〜36を制御することができるので用紙13の目標位置により近い位置にインク滴を吐出することができ、副走査方向の記録ピッチの精度を向上することができる。
上記実施の形態において、キャリッジモーター10は、第1のアクチュエーターに対応し、プラテン12は、媒体支持部材に対応し、キャリッジ変位部30は、キャリッジ位置変位手段に対応し、アクチュエーター33〜36は、第2のアクチュエーターに対応する。
【0072】
また、上記実施の形態において、加速度センサーCa及びCbは、第1の変位情報検出手段に対応し、加速度センサーPa及びPbは、第2の変位情報検出手段に対応する。
また、上記実施の形態において、相対位置変位算出部94は、相対位置変位算出手段に対応し、アクチュエーター制御部95は、制御手段に対応する。
また、上記実施の形態において、加速度センサーCa及びCbによってキャリッジ8の加速度を検出する処理は、第1の変位情報検出ステップに対応し、加速度センサーPa及びPbによってプラテン12の加速度を検出処理は、第2の変位情報検出ステップに対応する。
【0073】
また、上記実施の形態において、ステップS100〜S110は、相対位置変位算出ステップに対応し、ステップS112は、制御ステップに対応する。
なお、上記実施の形態においては、図10のフローチャートに示すように、CPUによって専用のプログラムを実行することで、キャリッジ8の位置制御をソフトウェア主体で行う構成としたが、この構成に限らない。例えば、積分器等の各種演算器を用いたハードウェア主体で行う構成としてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態においては、キャリッジ変位部30によって、キャリッジ8の両端部に副走査方向の変位力を付与してキャリッジ8を変位させる構成としたが、この構成に限らない。
例えば、キャリッジ8の所定部に垂直方向(Z1及びZ2方向)の変位力を付与して、キャリッジ8を高さ方向にも変位させる構成としてもよい。これにより、高さ方向の相対位置変位も打ち消すことができる。
【0075】
また、上記実施の形態においては、電磁式のアクチュエーターで、キャリッジ8を変位させる構成としたが、この構成に限らず、圧電素子などの他の方式のアクチュエーターを用いる構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、エンコーダースケール9の目盛を読み取るセンサー20として光学式のセンサーを用いた光学検出方式を例に挙げて説明したが、この構成に限らず、磁気センサーを用いた電磁誘導検出方式などの他の検出方式を採用した構成としてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態においては、エンコーダースケール9を光を透過する材料を用いて構成し、透過光量の変化から目盛を読み取る構成としたが、この構成に限らず、例えば、光不透過の材料を用いて、反射光量の変化から目盛を読み取る構成にするなど他の構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、エンコーダースケール9の目盛を読み取って、基準位置からの相対的な移動量から位置を検出する構成としたが、この構成に限らない。例えば、バーコードのようにエンコーダースケールの目盛パターンそのものに位置情報を持たせることで、キャリッジの絶対位置を検出できる構成としてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態においては、本発明を記録装置の1つであるインクジェットプリンターについて実施しているが、特にこれに限られること無く、キャリッジを備えるスキャナ等の他の装置であっても適用可能である。
また、上記実施の形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1…インクジェットプリンター、2…フレーム、3…ガイド軸、3a…前板部、3b…奥板部、4…タイミングベルト部、5…フレキシブルケーブル、6,7…インクカートリッジ、8…キャリッジ、9…エンコーダースケール、10…キャリッジモーター、11…紙送りモーター、12…プラテン、13…用紙、14…記録ヘッド、20…センサー、20a…発光部、20b…受光部、30…キャリッジ変位部、31,32…弾性部材、33〜36…アクチュエーター、40…回転軸、90…制御部、91…検出部、92…モーター制御部、93…ヘッド制御部、94…相対位置変位算出部、95…アクチュエーター制御部、300…位置指令発生器、301,303…減算器、302…目標速度演算部、304…PID制御器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置であって、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドのインク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出手段と、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出手段と、
前記第1の変位情報検出手段で検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出手段で検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出手段と、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1の変位情報検出手段は、前記第1の変位情報として前記キャリッジの加速度を検出する、前記キャリッジに配設された2以上の第1加速度センサーを備え、
前記第2の変位情報検出手段は、前記第2の変位情報として前記媒体支持部材の加速度を検出する、前記媒体支持部材に配設された2以上の第2加速度センサーを備え、
前記相対位置変位算出手段は、前記第1加速度センサーで検出される加速度を2回積分して前記キャリッジの所定方向の変位である第1の変位を算出し、前記第2加速度センサーで検出される加速度を2回積分して前記媒体支持部材の所定方向の変位である第2の変位を算出し、算出した前記第1及び第2の変位に基づき前記相対位置変位を算出することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドの前記主走査方向に面する一方の側面に1つの前記第1加速度センサーを配設すると共に他方の側面に1つの前記第1加速度センサーを配設し、
前記媒体支持部材の前記主走査方向の一方の端部に1つの前記第2加速度センサーを配設すると共に他方の端部に1つの前記第2加速度センサーを配設し、
2つの前記第1加速度センサーと2つの前記第2加速度センサーとを、前記主走査方向の同一直線上に配設したことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置の制御プログラムであって、
前記記録装置は、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドの前記インク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、を備えており、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出ステップと、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出ステップと、
前記第1の変位情報検出ステップで検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出ステップで検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出ステップと、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御ステップとを有する処理をコンピューターに実行させるためのプログラムを含むことを特徴とする記録装置の制御プログラム。
【請求項5】
記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置の制御方法であって、
前記記録装置は、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドの前記インク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、を備えており、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出ステップと、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出ステップと、
前記第1の変位情報検出ステップで検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出ステップで検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出ステップと、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御ステップと、を含むことを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項1】
記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置であって、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドのインク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出手段と、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出手段と、
前記第1の変位情報検出手段で検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出手段で検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出手段と、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1の変位情報検出手段は、前記第1の変位情報として前記キャリッジの加速度を検出する、前記キャリッジに配設された2以上の第1加速度センサーを備え、
前記第2の変位情報検出手段は、前記第2の変位情報として前記媒体支持部材の加速度を検出する、前記媒体支持部材に配設された2以上の第2加速度センサーを備え、
前記相対位置変位算出手段は、前記第1加速度センサーで検出される加速度を2回積分して前記キャリッジの所定方向の変位である第1の変位を算出し、前記第2加速度センサーで検出される加速度を2回積分して前記媒体支持部材の所定方向の変位である第2の変位を算出し、算出した前記第1及び第2の変位に基づき前記相対位置変位を算出することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドの前記主走査方向に面する一方の側面に1つの前記第1加速度センサーを配設すると共に他方の側面に1つの前記第1加速度センサーを配設し、
前記媒体支持部材の前記主走査方向の一方の端部に1つの前記第2加速度センサーを配設すると共に他方の端部に1つの前記第2加速度センサーを配設し、
2つの前記第1加速度センサーと2つの前記第2加速度センサーとを、前記主走査方向の同一直線上に配設したことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置の制御プログラムであって、
前記記録装置は、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドの前記インク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、を備えており、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出ステップと、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出ステップと、
前記第1の変位情報検出ステップで検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出ステップで検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出ステップと、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御ステップとを有する処理をコンピューターに実行させるためのプログラムを含むことを特徴とする記録装置の制御プログラム。
【請求項5】
記録媒体にインク滴を吐出して画像を記録する記録装置の制御方法であって、
前記記録装置は、
インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載し、第1のアクチュエーターから付与される駆動力によって案内部材に沿って主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記主走査方向と交差する方向である副走査方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
第2のアクチュエーターから付与される駆動力によって前記キャリッジの位置を変位させるキャリッジ位置変位手段と、
前記キャリッジの往復移動路に沿って延在し且つ前記キャリッジに搭載された記録ヘッドの前記インク滴の吐出孔に対向する搬送面を有し、前記搬送手段で搬送される前記記録媒体を前記搬送面上で支持する媒体支持部材と、を備えており、
前記キャリッジの変位に係る情報を検出する第1の変位情報検出ステップと、
前記媒体支持部材の変位に係る情報を検出する第2の変位情報検出ステップと、
前記第1の変位情報検出ステップで検出した第1の変位情報と前記第2の変位情報検出ステップで検出した第2の変位情報とに基づき、前記キャリッジと前記媒体支持部材との相対的な位置変位を算出する相対位置変位算出ステップと、
前記相対的な位置変位を打ち消すように前記第2のアクチュエーターを制御する制御ステップと、を含むことを特徴とする記録装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−156722(P2011−156722A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19265(P2010−19265)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]