記録装置
【課題】液体の消費を抑えつつ吐出口内の液体の乾燥を抑制できる。
【解決手段】キャップ110がヘッド2の吐出面2aを覆っている際、キャップ110と吐出面2aとの間に内包空間110aが形成されている。ヘッド2を吐出面2aから離隔させる際は、その前に内包空間110a内の高湿な空気を貯留室124aへと吸引する。キャップ110が一旦吐出面2aから離隔し、その後再び吐出面2aを覆った際、貯留室124a内に退避させていた高湿の空気を内包空間110aへと戻す。
【解決手段】キャップ110がヘッド2の吐出面2aを覆っている際、キャップ110と吐出面2aとの間に内包空間110aが形成されている。ヘッド2を吐出面2aから離隔させる際は、その前に内包空間110a内の高湿な空気を貯留室124aへと吸引する。キャップ110が一旦吐出面2aから離隔し、その後再び吐出面2aを覆った際、貯留室124a内に退避させていた高湿の空気を内包空間110aへと戻す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を成分とする液体を吐出する記録ヘッドを有する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドにおいて液体を吐出する吐出口内の液体の乾燥を防止するために、液体を吐出しない期間中、吐出口が形成された吐出面をキャップで覆うことがある。しかし、記録ヘッドの吐出面をキャップで覆った直後はキャップ内の空気が比較的乾燥しており、キャップ内の水蒸気が飽和状態になるまで、吐出口から水分が蒸発し続ける。これに対して特許文献1では、ヘッドのノズル形成面を覆うキャッピング手段に、大気開放口とこの大気開放口を開閉するバルブ部材とを設けている。そして、装置を長期間休止させる場合には大気開放口を開放してノズルにおけるインクの乾燥を促進し、これによってノズルの開口部のインクを固化させることによりノズルの開口部より奥までインクが固化するのを防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−218806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、キャッピング中にノズルの開口部でインクを固化させる。このため、ノズルからインクを吐出させて記録媒体への記録動作を実行する前に、ノズルからインクを予備的に吐出させて固化されたインクを除去する必要がある。したがって、インクを余計に消費するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、液体の消費を抑えつつ吐出口内の液体の乾燥を抑制できる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、水を成分とする液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する記録ヘッドと、前記吐出面に当接して前記吐出口が形成された吐出領域を覆うキャッピング手段と、前記吐出面に当接して前記吐出領域を覆った被覆位置と前記吐出面から離隔して前記吐出領域を開放した離隔位置との間で前記キャッピング手段を前記記録ヘッドに対して相対移動させるキャップ移動手段と、前記キャッピング手段が前記被覆位置にあるときに、前記キャッピング手段と前記吐出面との間に形成される内包空間とその外部とを連通させる外部連通流路と、空気を貯留する貯留室を有し、前記内包空間と前記貯留室との間で空気を移動する空気貯留手段と、前記被覆位置から前記離隔位置へと前記キャッピング手段が移動し始める前に前記内包空間から前記貯留室へと空気を流入させると共に、前記離隔位置から前記被覆位置へと前記キャッピング手段が移動した後に前記貯留室内の空気を前記内包空間に流入させるように、前記キャップ移動手段及び空気貯留手段を制御する制御手段とを備えている。
【0007】
キャッピング手段を離隔位置から被覆位置へと移動させると、吐出口から水分が蒸発する一方、内包空間の空気が飽和状態となれば、これ以上吐出口内の乾燥が進まない。しかし、この後キャッピング手段を被覆位置から離隔位置へと移動させると、内包空間内の高湿の空気が大気中へと散逸するので、再度キャッピング手段を被覆位置へと移動させても、移動直後における内包空間の空気は外気と同程度に乾燥しているため、やはり吐出口から水分が蒸発する。これに対して、本発明の記録装置によると、キャッピング手段を被覆位置から離隔位置へと移動させる前に内包空間から移動した空気を、キャッピング手段を離隔位置から被覆位置へと移動させた後に内包空間に戻す。したがって、内包空間内が高湿の状態となり、吐出口付近の液体が乾燥するのが抑制される。また、吐出口内の液体の乾燥を促進したりしないので、予備吐出する液体の量を抑制したり、予備吐出そのものを不要としたりすることができる。
【0008】
また、本発明においては、前記空気貯留手段が、前記貯留室へと空気を流入させるときに前記内包空間から空気を吸引する吸引手段を有していることが好ましい。これによると、内包空間から貯留室へと吸引によって空気が移動するので、例えば加圧することによって移動する場合と比べて貯留室内への外気の混入を少なくでき、高湿の空気のまま貯留室に退避させることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記吐出領域が一方向に長尺であり、前記空気貯留手段が、前記内包空間から吸引した空気を前記貯留室へと導入する吸引流路を有しており、前記吸引流路と前記内包空間との連通部が前記一方向に関して前記内包空間の一端近傍に配置されていると共に、前記外部連通流路と前記内包空間との連通部が前記一方向に関して前記内包空間の他端近傍に配置されていることが好ましい。これによると、内包空間と吸引流路との連通部が一端に、外部連通流路と内包空間との連通部が他端に配置されているので、他端から外部の空気を取り込みつつ一端から内包空間内の空気を円滑に吸引できる。
【0010】
また、本発明においては、前記内包空間が、前記一端に向かって先細りに形成されていると共に、前記他端に向かって先細りに形成されていることが好ましい。これによると、吸引流路との連通部が配置された一端に向かって内包空間が先細りに形成されているため、内包空間内の高湿の空気が、滞留を生じることなく貯留室に円滑に吸引される。また、外部連通流路との連通部が配置された他端に向かっても内包空間が先細りに形成されているため、外部連通流路から内包空間へと外部の空気が円滑に導入される。
【0011】
また、本発明においては、前記制御手段が、前記内包空間の空気を乱流が発生しないような速さで吸引するように前記空気貯留手段を制御することが好ましい。これによると、内包空間に乱流が発生しないように吸引するので、外部連通流路を通じて内包空間に流入する空気と内包空間に存在する高湿の空気とが混ざりにくく、高湿の空気のみが円滑に貯留室へと吸引されやすい。
【0012】
また、本発明においては、前記空気貯留手段が、前記貯留室内において変位することで前記貯留室の容積を変化させる変位部材を有していてもよい。これによると、簡易な構成で貯留室へと空気を吸引することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記空気貯留手段が、前記内包空間から移動した空気を、前記貯留室を介して前記内包空間へと戻すまでに加湿する第1の加湿手段を有していることが好ましい。これによると、加湿した空気を内包空間へと排出できるため、内包空間から貯留室へと空気を移動させた際に高湿な空気を十分に回収できていなかったとしても、内包空間の空気を速やかに高湿な状態にすることができる。
【0014】
また、本発明においては、前記空気貯留手段が、前記内包空間内から移動した空気を前記貯留室へと導入する第1の流路と、前記貯留室の空気を前記第1の加湿手段に導入する第2の流路と、前記第1の加湿手段からの空気を前記内包空間へと導出する第3の流路と、前記内包空間から前記貯留室へ向かう方向に空気を流通させる、前記内包空間と前記貯留室との間に配置された第1の逆止弁と、前記第1の加湿手段から前記内包空間へ向かう方向に空気を流通させる、前記第1の加湿手段と前記内包空間との間に配置された第2の逆止弁とを有していることが好ましい。これによると、貯留室の圧力が小さくなった際、第1及び第2の逆止弁の作用により、第1の流路を通じて内包空間からの空気が貯留室へと流入するが、第3の流路を通じて第1の加湿手段から内包空間へと空気が流出しないようにできる。また、貯留室の圧力が大きくなった際、第1及び第2の逆止弁の作用により、第3の流路を通じて第1の加湿手段からの空気が内包空間へと流出するが、第1の流路を通じて内包空間からの空気が貯留室へと流入しないようにできる。これにより、内包空間の空気を貯留室内に取り込み、その空気を第1の加湿手段によって加湿した後、内包空間へと排出する構成が簡易に実現する。
【0015】
また、本発明においては、前記外部連通流路が、移動する空気を加湿する第2の加湿手段を介して大気と連通していることが好ましい。これによると、外部から内包空間に流入する空気が常に加湿されることになるので、貯留室には確実に高湿状態の空気が貯留されることになる。
【0016】
また、本発明においては、前記外部連通流路を外部に開放する開放状態と前記外部連通流路を閉鎖する閉鎖状態とを選択的に取る弁が設けられており、前記制御手段が、前記弁の状態を切り替えることが好ましい。これによると、必要に応じて内包空間と外部との間で空気をやり取りできる状態と空気をやり取りしない状態とを切り替えることができるので、内包空間と貯留室との空気のやり取りを円滑にしつつキャッピング手段の密閉性を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
キャッピング手段を離隔位置から被覆位置へと移動させると、吐出口から水分が蒸発する一方、内包空間の空気が飽和状態となれば、これ以上吐出口内の乾燥が進まない。しかし、この後キャッピング手段を被覆位置から離隔位置へと移動させると、内包空間内の高湿の空気が大気中へと散逸するので、再度キャッピング手段を被覆位置へと移動させても、移動直後における内包空間の空気は大気と同程度に乾燥しているため、やはり吐出口から水分が蒸発する。これに対して、本発明によると、キャッピング手段を被覆位置から離隔位置へと移動させる前に内包空間から移動した空気を、キャッピング手段を離隔位置から被覆位置へと移動させた後に内包空間に戻す。したがって、内包空間内が高湿の状態となり、吐出口付近の液体が乾燥するのが抑制される。また、吐出口内の液体が固化するのを促進させたりしないので、予備吐出する液体の量を抑制したり、予備吐出そのものを不要としたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態である第1の実施形態に係るインクジェットプリンタの内部構成を概略的に示す模式図である。
【図2】図2(a)はキャッピングユニットの平面図、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図であって、移動台に接続された空気チューブや空気タンクを含む図である。
【図3】ヘッド及びキャップの一連の動作を示す図である。
【図4】ヘッドに対するキャップの移動を示す図である。ピストン移動機構の図示は省略されている。
【図5】図5(a)はキャップの平面図、図5(b)はキャップの正面図である。
【図6】本発明の別の一実施の形態である第2の実施形態において、キャップの内包空間から空気を吸引する様子を示す図である。ピストン移動機構の図示は省略されている。
【図7】図6の構成において、キャップの内包空間へと空気を戻す様子を示す図である。ピストン移動機構の図示は省略されている。
【図8】本発明のさらに別の一実施の形態である第3の実施形態において、キャップの内包空間から空気を吸引したり、キャップの内包空間へと空気を戻したりする様子を示す図である。ピストン移動機構の図示は省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施の形態である第1の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタ1)の内部構成を示す模式図である。プリンタ1は、4つのインクジェットヘッド2(以下、ヘッド2)を有するライン式のカラーインクジェットプリンタである。
【0021】
プリンタ1は、ほぼ直方体形状の筐体1aを有している。筐体1aの天板上部には、排紙部15が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に3つの空間に区分できる。上空間および中空間では、排紙部15に連なる用紙の搬送経路が構成されている。上空間では、用紙の搬送と用紙への画像形成が行われる。中空間では、用紙の収納とその搬出が行われる。下空間は、インク供給源が収納されており、対応するインクジェットヘッド2へインクの供給が行われる。
【0022】
上空間には、4つのヘッド2、用紙を搬送する搬送機構16、用紙をガイドするガイド部、ヘッド2の下面(吐出面2a)を保護するキャッピングユニット100等が配置されている。上空間の上部には、これらの機構を含め、プリンタ全体の動作を司る制御部99が配置されている。
【0023】
4つのヘッド2は、主走査方向(図1の紙面に直交する方向)に長尺なラインヘッドであって、略直方体の外形形状を有する。各ヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドフレーム9に固定されている。ヘッドフレーム9は、ヘッド移動機構20によって副走査方向に両側から支持されている。ヘッド移動機構20は、制御部99によって制御され、4つのヘッド2をヘッドフレーム9ごと上下に移動させる。
【0024】
以下、副走査方向とは、搬送ユニット21において用紙Pが搬送されるときの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向であるとする。
【0025】
各ヘッド2の下面(吐出面2a)には複数の吐出口が開口している。各吐出面2aからは、画像形成に際して、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが吐出される。吐出面2aにおいて吐出口が開口した領域である吐出領域2cは、主走査方向に長尺である(図2参照)。
【0026】
搬送機構16は、図1に示すように、ベルトローラ6、7および両ローラ6、7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8に加え、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4および剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたテンションローラ10、直方体形状のプラテン18等を有している。
【0027】
ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ19によって、図1中時計回りに回転する。このとき、搬送ベルト8は、太矢印に沿って走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8の走行に伴い、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、前段のガイド部から供給された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえつける。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して後段のガイド部に導く。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループを外側に向けて付勢し、搬送ベルト8の弛みを取る。プラテン18は、4つのヘッド2に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。これにより、外周面8aとヘッド2の吐出面2aとの間には、画像形成に適した所定の間隙が形成される。
【0028】
ガイド部は、搬送機構16を挟んで両側に配置されている。上流側ガイド部(前段のガイド部)は、2つのガイド13a、13bおよび一対の送りローラ14を有する。このガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送機構16とを繋ぐ。下流側ガイド部(後段のガイド部)は、2つのガイド29a、29bおよび二対の送りローラ28を有する。このガイド部は、搬送機構16と排紙部15とを繋ぐ。
【0029】
キャッピングユニット100は、後述の通りヘッド2の吐出面2aを覆って吐出口内のインクの乾燥を防止するものであり、主走査方向に関してヘッド2に隣接して配置されている。
【0030】
中空間には、給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ11および給紙ローラ12を有し、給紙トレイ11が筐体1aに着脱可能に装着されている。給紙トレイ11は、上方に開口した箱体であって、複数の用紙Pを収納する。給紙ローラ12は、給紙トレイ11内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0031】
上述したように、上空間および中空間によって、給紙ユニット1bから搬送機構16を介して排紙部15に至る用紙搬送経路が形成されている。印字指令に基づいて、給紙トレイ12から繰り出された用紙Pは、上流側ガイド部を介して搬送機構16に供給される。用紙Pが各ヘッド2の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出面2aからインクが吐出されて、用紙P上にカラー画像が形成される。用紙Pは、さらに下流側ガイド部を介して搬送され、上方の開口22から排紙部15に排紙される。
【0032】
下空間には、インクタンクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクタンクユニット1cには、4つのインクタンク17が並んで収納されている。各インクタンク17からは、インクチューブ(図示せず)を介して、対応するヘッド2にインクが供給される。
【0033】
以下、キャッピングユニット100の構成について、図2及び図3を参照しつつ詳細に説明する。キャッピングユニット100は、図2(a)に示すように、上面に4つのキャップ110(キャッピング手段)が固定された移動台101と、移動台101を主走査方向に往復移動させる移動台移動機構102とを有している。移動台移動機構102は、移動台101を、主走査方向に関してヘッド2からずれた図3(a)に示す位置(退避位置)と、ヘッド2の下方の図3(c)に示す位置(対向位置)との間で移動させる。
【0034】
キャップ110は、移動台101の平坦な上面から上方に突出する突起111を有している。突起111は、平面視において、長い方の辺が主走査方向に沿った平行四辺形の四辺に沿って細長く延びており、平坦な上端を有している。4つの突起111は、副走査方向に沿ってヘッド2と同じピッチで配列されている。移動台101が図3(c)の位置にあるとき、各突起111は、図2(a)に示すように、ヘッド2の吐出領域2cを平面視で取り囲む。突起111は、ゴムなどの弾性材料から形成されている。
【0035】
突起111の鋭角な方の角部内には、移動台101を鉛直方向に貫通する連通孔112及び113が形成されている。連通孔113は、平行四辺形の対角線方向に関して連通孔112とは反対側に位置している。連通孔112の下面側の開口には、図2(b)に示すように、空気チューブ121(外部連通流路)の一端が接続されている。空気チューブ121は、移動台101が移動してもその動きに追随可能な柔軟性と長さを有している。空気チューブ121の他端は、大気に開放されており、その途中には開閉弁122が設けられている。開閉弁122は、制御部99によって制御されることにより、空気チューブ121内を空気が流通する状態(以下、開放状態とする)と、空気チューブ121内が閉鎖され、空気が流通できない状態(以下、閉鎖状態とする)とに切り替えられる。
【0036】
移動台101の下面における連通孔113の開口には、空気チューブ123(吸引流路)の一端が接続されている。空気チューブ123の他端は、空気タンク124(空気貯留手段)と接続されている。空気タンク124の内部には、空気を貯留する貯留室124aが形成されている。空気チューブ123は、移動台101が移動してもその動きに追随可能な柔軟性と長さを有している。空気タンク124はシリンダ状に構成されており、下方からピストン125(変位部材)が挿入されている。ピストン125は、ピストン移動機構126に連結されている。ピストン移動機構126は、ピストン125を貯留室124aの奥へと向かう方向と、その反対方向とに往復移動させる。制御部99は、ピストン移動機構126を制御してピストン125を変位させることにより、貯留室124aの容積(貯留室124aに貯留可能な空気の容量)を変化させる。
【0037】
制御部99は、ヘッド移動機構20及び移動台移動機構102を制御することにより、キャップ110とヘッド2とを移動させる。これにより、制御部99は、以下のように、キャップ110をヘッド2に対して相対移動させる。ヘッド2からインクを吐出させる際は、キャップ110が図3(a)に示す位置に配置される。このとき、キャップ110は主走査方向に関してヘッド2から離れた退避位置にある。インクの吐出が終了すると、制御部99は、ヘッド移動機構20を制御し、図3(a)の状態から矢印X1に示すようにヘッド2を上昇させる。これによって、図3(b)に示すように、ヘッド2と搬送機構16との間にキャップ110及び移動台101を挿入可能な隙間が形成される。
【0038】
そして、制御部99は、移動台移動機構102を制御して、図3(c)に示すヘッド2の直下の対向位置まで、矢印X2に沿って移動台101を水平移動させる。さらに、制御部99は、ヘッド移動機構20を制御し、矢印X3に沿ってヘッド2を降下させ、図3(d)に示すように、吐出面2aを突起111の上端に当接させる。これによって、吐出領域2cが平面視において突起111に取り囲まれ、キャップ110によって被覆される。
【0039】
以上のように、制御部99は、キャップ110をヘッド2に対して相対的に移動させることにより、ヘッド2から離隔した離隔位置(図3(a)〜図3(c)の位置)から、吐出面2aに当接して吐出領域2cを覆う被覆位置(図3(d)の位置)へと移動させる。これとは逆に、キャップ110を被覆位置から離隔位置へと相対移動させる際は、制御部99は、上記と逆の順序で移動台101とヘッド2を移動させる。
【0040】
キャップ110が被覆位置にあるとき、キャップ110とヘッド2の吐出面2aとの間には、内包空間110aが形成される。内包空間110aは、図4(a)に示すように、吐出面2a、突起111及び移動台101の上面によって画定される空間である。このとき、吐出領域2cは内包空間110aに覆われるため、吐出口が外気から隔離される。したがって、吐出口から水分が蒸発することによって内包空間110a内が一旦飽和状態になると、それ以上水分が蒸発しない。
【0041】
しかし、再び印刷処理を実行するなどの際、内包空間110aに高湿の空気が溜まっている状態でキャップ110を被覆位置から離隔させることになるので、内包空間110aの空気がキャップ110外へと散逸する。そして、印刷処理が終了し、キャップ110が再び被覆位置に移動した直後は、内包空間110a内の空気が外気と同じ程度に乾燥している。したがって、キャップ110で吐出領域2cを覆っても、内包空間110a内の空気が水蒸気の飽和状態となるまで、吐出口からの水分蒸発は避けられない。仮に、吐出口が、印刷処理中に殆どインクの吐出をしなかった場合、吐出口内のインクは、この水分蒸発によって吐出特性を損なう程に増粘が進むおそれがある。
【0042】
そこで本実施形態では、印刷処理を実行するときなどにキャップ110を移動させる際、制御部99が以下のようにピストン移動機構126及び開閉弁122を制御する。まず、図4(a)のように、キャップ110が被覆位置にあったとする。内包空間110a内は、水蒸気が飽和した状態にある。このとき、制御部99が開閉弁122を開放状態にすると共に、ピストン移動機構126(図4においては不図示)を制御して、矢印X4に沿ってピストン125を下方へと移動させる。このとき、貯留室124aの容積が増大する。これに伴って内包空間110a内の空気が、矢印Y1に示すように、空気チューブ123を通じて貯留室124a内に流入する。このように、ピストン125及びピストン移動機構126は、内包空間110aから貯留室124aへと空気を吸引する吸引手段を構成している。一方、主走査方向に関して連通孔113と反対側では、空気チューブ121を通じて外部の空気が、矢印Y2及びY3に沿って内包空間110aへと流入する。
【0043】
このように、キャップ110が被覆位置から離隔する前に、高湿の空気が貯留室124a内に収容される。その後、図4(b)に示すようにキャップ110がヘッド2から離隔しても、貯留室124a内には高湿の空気が保管されている。このとき、貯留室124aにおける空気の保管量は、少なくとも内包空間110aの占める体積と等量であればよく、本実施の形態では、開閉弁122から内包空間110aを介して空気チューブ123と貯留室124aとの接続部までの流路の占める体積に等量とされている。
【0044】
そして、印刷処理が終了した後に、図4(c)に示すようにキャップ110が再び被覆位置に移動した場合、制御部99が開閉弁122を開放状態にする。これと共に、ピストン移動機構126を制御して、矢印X5に沿ってピストン125を上方へと移動させる。ピストン125の移動によって、貯留室124aの容積が減少する。これに伴って貯留室124aの空気が、矢印Y4に示すように、空気チューブ123を通じて内包空間110a内に流入する。一方、主走査方向に関して空気チューブ123の接続側とは反対側では、矢印Y5及びY6に示すように、内包空間110aの空気が空気チューブ121を通じて外部へと流出する。ピストン125が最上方の位置まで到達すると、制御部99は開閉弁122を閉鎖状態にする。以上により、貯留室124a内に貯留されていた高湿の空気が内包空間110aに戻されると共に、開閉弁122により外部の空気が内包空間110a内へと侵入するのが防止される。
【0045】
ところで、内包空間110aと貯留室124aとの間で空気を移動する際、ピストン125の移動速度が大きすぎると、内包空間110a内に乱流が発生して、内包空間110a内の空気が攪拌されるおそれがある。この場合、例えば内包空間110a内に流入した外気が、内包空間110a内に存在した高湿の空気と混ざり合うことにより、貯留室124aへと収容する空気に乾燥した外気が混入しやすくなる。あるいは、内包空間110aに戻された高湿の空気が、内包空間110a内の乾燥した空気と混ざり合い、連通孔112から漏れ出しやすくなる。そこで、本実施形態の制御部99は、内包空間110a内に乱流が発生しないような速さでピストン125が移動するように、ピストン移動機構126を制御する。
【0046】
以下は、内包空間110a内に乱流が発生しないようにピストン125を移動させるための一実施例である。この実施例では、図5(a)に示す内包空間110aの幅Wが2.5*10−2m(25mm)であり、図5(b)に示す内包空間110aの深さDが2*10−3m(2mm)であるとする。また、乱流と層流の境界となるレイノルズ数を2300とする。このとき、内包空間110a内の気流の速さをU[m/s]とし、気温が常温20℃であるときの空気の動粘度νを1.0*10−6m2/sとすると、レイノルズ数Re=U*D/νが成り立つことから、U=2300*1.0*10−6/(2*10−3)=1.15[m/s]となる。なお、気流の方向に直交する内包空間110aの中央部の断面形状が横(W)2.5*10−2m・縦(D)2*10−3mの長方形であることから、代表長さをD=2*10−3mとした。気流の速さU=1.15[m/s]に対応する連通孔113からの吸引流量Qは、Q=U*D*W=1.15*2.5*10−2*2*10−3=5.75*10−5m3/s=57.5ml/sである。
【0047】
したがって、本実施例では、連通孔113を通じて貯留室124aと内包空間110aとの間で移動する空気の流量が57.5ml/s未満となるようにピストン125を移動させた場合、内包空間110a内に乱流が発生しないこととなる。実際は、代表長さの取り方の違いや乱流と層流の境界となるレイノルズ数の取り方の違いによって乱流の影響を受けることとなるが、大部分の高湿空気を貯留室124a内に収容し、あるいは内包空間110a内に充填することができる。さらに乱流の影響を抑えるには、連通孔113を通じた空気の流量が57.5ml/s未満となる速さよりも十分に小さい速さでピストン125を移動させることがより好ましい。このとき、内包空間110a内に乱流が確実に発生しない速さの実測値に基づいて、ピストン125の速さが設定されてもよい。
【0048】
以上説明した第1の実施形態によると、キャップ110を被覆位置から離隔位置へと移動させる前に、内包空間110aの空気を貯留室124aへと吸引する。これにより、内包空間110aの高湿な空気を貯留室124aへと一旦退避させておく。そして、再びキャップ110を被覆位置へと移動させた後に、貯留室124a内の高湿な空気を速やかに内包空間110aへと戻す。これにより、キャップ110によって吐出面2aを保護する間、吐出口内のインクから内包空間110aへと水分が蒸発するのが抑制される。吐出口での増粘が進みにくいことから、各吐出口の吐出特性が長期的に維持される。仮に、強制的な特性の回復処理が必要となっても、無駄に捨てるインク量を抑えることができる。
【0049】
また、キャップ110の突起111が平面視で平行四辺形の形状を有しており、平行四辺形の2つの鋭角のうち、一方の付近に連通孔112が、他方の付近に連通孔113が配置されている。これにより、内包空間110aに対して、一方からは外気を導入しつつ他方からは高湿な空気を吸引することが円滑に行える。また、連通孔112及び113が、平行四辺形の鋭角内に配置されている。つまり、連通孔112及び113に向かって内包空間110aが先細りになっている。このため、内包空間110a内に空気の滞留を生じさせることなく、連通孔112及び113に向かって空気を円滑に流通させることができると共に、連通孔112及び113から空気を円滑に導入することができる。
【0050】
さらに、上記の実施例のように、内包空間110aに乱流が発生しないように空気を流通させることにより、外部の空気と内包空間110aの空気とが混ざり合うのを抑制できる。このため、内包空間110aの高湿の空気を貯留室124aへと吸引する際、吸引する空気に外部の空気が混入しにくくなり、貯留室124aに退避した高湿の空気を内包空間110aに戻す際、高湿の空気が外部へと漏れ出しにくくなる。
【0051】
(第2の実施形態)
以下、本発明の別の一実施形態である第2の実施形態について説明する。第2の実施形態において第1の実施形態との違いは、キャッピングユニットに関する構成のみである。以下においては第1の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0052】
第2の実施形態のキャッピングユニット200は、図6(a)に示すように、キャップ110と、連通孔112に接続された空気チューブ121とを有している。空気チューブ121には開閉弁122が設けられており、制御部99が開閉弁122を制御することにより、空気チューブ121が外部に対して開放された状態と空気チューブ121が閉鎖された状態とが切り替えられる。
【0053】
連通孔113には、空気チューブ223(第1の流路)を介して空気タンク224が接続されている。内包空間110aと空気タンク224内の貯留室224aとは、空気チューブ223を通じて互いに連通している。空気タンク224は、空気タンク124と同様にシリンダ状に構成されており、下方からピストン125が挿入されている。ピストン125は、ピストン移動機構126(図6及び図7においては不図示)に連結されており、ピストン移動機構126によって貯留室124aの奥へと向かう方向とその反対方向とに往復移動される。
【0054】
空気チューブ223と貯留室224aとの連通部には逆止弁231が設けられている。逆止弁231は、図示しない付勢部材により連通部に押し付けられており、連通部を封鎖している(図6(a)、図7(a)参照)。ここで、空気チューブ223側の圧力が貯留室224a側の圧力より所定の大きさだけ大きくなると、逆止弁231に作用する圧力差が付勢部材の付勢力を上回り、逆止弁231が貯留室224a側へと移動する。これにより連通部が開放され、空気チューブ223と貯留室224aとが連通した状態となる(図6(b)参照)。
【0055】
空気タンク224は、別のタンクである加湿タンク226(第1の加湿手段)と空気チューブ227(第2の流路)を介して接続されている。貯留室224aは、空気チューブ227を通じて加湿タンク226内の加湿室226aと連通している。この加湿室226a内には、水Wtが貯留されている。空気チューブ227の下端は、水面下に配置されている。したがって、空気タンク224から空気チューブ227を介して加湿タンク226へと流入した空気は、まず水中を通って加湿される。
【0056】
加湿タンク226は、空気チューブ228(第3の流路)を介して空気チューブ223の途中部とも接続されている。加湿室226aは、空気チューブ228を通じて空気チューブ223と連通している。空気チューブ223と空気チューブ228との連通部には、逆止弁232が設けられている。逆止弁232は、図示しない付勢部材により連通部に押し付けられており、連通部を封鎖している(図6(a)〜図7(a)参照)。ここで、空気チューブ228側の圧力が空気チューブ223側の圧力より所定の大きさだけ大きくなると、逆止弁232に作用する圧力差が付勢部材の付勢力を上回り、逆止弁232は空気チューブ223側へと移動する。これにより連通部が開放され、空気チューブ223と空気チューブ228とが連通した状態となる(図7(b)参照)。
【0057】
本実施形態においては、制御部99が、ピストン移動機構126及び開閉弁122を以下のように制御する。まず、図6(a)のように、キャップ110が被覆位置にあって、内包空間110a内が外部より高湿の状態、例えば、水蒸気量が飽和しているとする。この状態から、制御部99が、開閉弁122を開放状態にすると共に、ピストン移動機構126を制御して、図6(b)の矢印X6に沿ってピストン125を下方へと移動させる。これにより貯留室224a内の圧力が所定の大きさまで下がり、逆止弁231が貯留室224a側へと移動して、空気チューブ223と貯留室224aとが連通する。これに伴って内包空間110aの空気が、矢印Y6に示すように、空気チューブ223を通じて貯留室224a内へと流入する。一方、外部からの空気が、空気チューブ121を矢印Y7及びY8に沿って、内包空間110aへと流入する。
【0058】
ピストン125が下方へと移動する間、空気チューブ228内の圧力は、空気チューブ223内より小さいか、せいぜい同程度である。このため、逆止弁232は、連通部を封鎖した状態に留まる。したがって、貯留室224a内には内包空間110aから流入する空気のみが収容されることになる。
【0059】
制御部99がピストン125の移動を停止すると、空気チューブ223側と貯留室224a側との圧力差が小さくなり、やがて逆止弁231がこれらの間の連通部を封鎖する。これによって、図7(a)に示すように、貯留室224a内の空気が、逆止弁231及び232によって、外部へと漏れ出さないように保持される。この状態になると、制御部99が、ヘッド2を被覆位置から上方に移動させ、キャップ110を退避位置に移動させる。
【0060】
その後、図7(b)に示すように、キャップ110を再び被覆状態にした場合は、制御部99が速やかに、開閉弁122を開放状態にすると共に、ピストン移動機構126を制御して、矢印X7に沿ってピストン125を上方へと移動させる。これに伴って貯留室224a内の圧力が上がるので、逆止弁231は連通部を封鎖した状態を維持する一方、貯留室224a内の空気が、矢印Y9及びY10に示すように、空気チューブ227を介して加湿室226aへと流入する。加湿室226a内に流入した空気は水中を通って加湿され、さらに矢印Y11に沿って空気チューブ228へと流入する。これにより、空気チューブ228内の圧力が所定の大きさまで増大するので、逆止弁232が空気チューブ223側へと移動し、加湿された空気が空気チューブ223へと流入する。さらに、加湿された空気は、矢印Y12に示すように、空気チューブ223から内包空間110aへと流出する。一方、内包空間110aの空気が、空気チューブ121を矢印Y13及びY14に沿って、外部へと流出する。ピストン125が最上方の位置まで到達すると、制御部99は開閉弁122を閉鎖状態にする。
【0061】
ピストン125が上方へと移動する間、空気チューブ223内は貯留室224a内より圧力が小さいか、せいぜい同程度の圧力である。このため、逆止弁231は、連通部を封鎖した状態に留まる。したがって、内包空間110aには、加湿された空気が確実に充填されることになる。
【0062】
以上説明した第2の実施形態によると、内包空間110aの空気を貯留室224aへと取り込んだ後、その空気を内包空間110aへと戻す前に加湿タンク226を通して加湿する。したがって、十分に湿度を含んだ空気を内包空間110aに戻すことができる。
【0063】
(第3の実施形態)
以下、本発明のさらに別の一実施形態である第3の実施形態について説明する。第3の実施形態において第1の実施形態との違いは、キャッピングユニットに関する構成のみである。以下においては第1の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0064】
第3の実施形態のキャッピングユニット300は、図8(a)に示すように、キャップ110と、空気チューブ223を介して連通孔113に接続された空気タンク124及びピストン125を有している。ピストン125は、ピストン移動機構126(図8においては不図示)に連結されている。
【0065】
連通孔112には、空気チューブ321を介して加湿タンク326(第2の加湿手段)が接続されている。加湿室326a内には水Wtが貯留されている。内包空間110aと加湿室326aとは、空気チューブ321を通じて互いに連通している。加湿室326aは、空気チューブ327及び328を介して、外部と連通可能である。空気チューブ327の下端は加湿室326a内で水面下に配置されているが、空気チューブ328の下端は加湿室326a内に挿入されていない。空気チューブ327及び328には、逆止弁331及び332が設けられている。逆止弁331は、外部から空気チューブ327を通じて加湿室326a内へ向かう方向にのみ空気を流通させる。逆止弁332は、加湿室326aから空気チューブ328を通じて外部へ向かう方向にのみ空気を流通させる。
【0066】
この構成において、図8(a)に示すように、制御部99がピストン移動機構126を制御し、矢印X8に沿ってピストン125を下方へと移動させると、内包空間110aの空気が矢印Y15に沿って貯留室124aへと流入する。これにより、内包空間110a内の高湿の空気が、貯留室124aに収容される。加湿室326aからは、加湿された空気が矢印Y16に沿って内包空間110aに流入することになる。加湿室326aからの空気が貯留室124aに流入する態様であっても、乾燥した外気の混入はないので、貯留室124a内の空気の湿度が殆ど低下することがない。なお、このとき、加湿室326aには、内包空間110aに流出してしまう空気に代わって、空気チューブ327から外気が流入する。外気は、乾燥していても、加湿室326a内に流入するとき加湿されるので、貯留室124aには、加湿された空気のみが収容されることになる。
【0067】
この後、ヘッド2からキャップ110が離隔し、再び被覆状態に戻った場合には、制御部99がピストン移動機構126を制御し、図8(c)の矢印X9に沿ってピストン125を上方に移動させる。これにより、貯留室124aに退避されていた高湿の空気が、矢印Y18に示すように内包空間110aへと戻る。内包空間110aの空気は、矢印Y19に沿って加湿室326aへと流入する。加湿室326a内の空気は、逆止弁331及び332の作用により、空気チューブ328から外部へと流出するが、空気チューブ327からは流出しない。加湿室326a内の空気は、水中を通ることなく容易に外部へと流出する。そのため、吐出口に形成されたインクのメニスカスを破壊することがない。
【0068】
以上説明した第3の実施形態によると、内包空間110aの高湿の空気を貯留室124aへと吸引する際、外部の空気が一旦加湿されてから内包空間110aへと流入する。つまり、外部の空気が内包空間110a内に流入する際は常に加湿されてからとなるので、貯留室124a内には高湿の空気が確実に貯留される。
【0069】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0070】
例えば、上述の実施形態では、内包空間110aと貯留室124a等との間で空気を移動するのと同時に、外部と内包空間110aとの間でも空気を移動している。この場合の「外部の空気」は、外気であってもよいし、別の空気タンク内の空気であってもよい。要は、内包空間110aと内包空間110aの外部との空気のやりとりが行われればよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、ピストン125を移動させることにより、内包空間110aの空気が貯留室124a等へ吸引されている。しかし、貯留室124aへの空気の移動が加圧によってなされてもよい。例えば、連通孔112側に加圧用のシリンダやポンプを接続し、これによって連通孔112側から内包空間110aへと空気を送り込むことにより、反対側の連通孔113から貯留室124aへと空気を移動させてもよい。また、ピストン125の代わりに吸引ポンプを用いて内包空間110aの空気を貯留室124aへと吸引してもよい。なお、加圧により貯留室124aへと空気を移動させる場合は、吸引によって貯留室124aへと空気を移動させる場合と比べて、内包空間110a内の空気に外気が混入しやすい。このため、加湿室を介して空気を送り込むとよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、ヘッド2を鉛直方向に移動するヘッド移動機構20と移動台101を水平方向に移動する移動台移動機構102により、キャップ110をヘッド2に対して相対移動するキャップ移動手段が構成されている。しかし、ヘッド2に対してキャップ110を相対移動させる具体的な構成はどのようなものでもよい。例えば、ヘッド2は固定したままキャップ110のみを移動させる構成であってもよいし、その逆であってもよい。また、ヘッド2を水平移動させる移動機構や、キャップ110を鉛直移動させる移動機構が設けられていてもよい。
【0073】
また、第1〜第3の実施形態の各構成は互いに組み合わせ可能である。例えば、第2及び第3の実施形態の加湿タンク226と加湿タンク326は、それぞれの実施形態においていずれか一方のみが設けられているが、両方が同じ実施形態として設けられてもよい。また、第2の実施形態や第3の実施形態の逆止弁が、第1の実施形態に適宜設けられてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、内包空間110aを外部へと連通させる空気チューブ121に開閉弁122が設けられており、開放状態と閉鎖状態とが切り換えられる。しかし、内包空間110aがラビリンス流路を通じて常に外部に開放されていてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、キャップ110が、例えば、主走査方向に細長く、主走査方向の両端部に配置された連通孔112、113に向かって先細形状であれば、上述のような平行四辺形の形状でなくてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態は、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例であるが、本発明を適用可能な対象はこのようなインクジェットヘッドに限られない。成分として水を含む液体を吐出するあらゆる記録ヘッドに適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 プリンタ
2 インクジェットヘッド(ヘッド)
2a 吐出面
2c 吐出領域
20 ヘッド移動機構
99 制御部
110 キャップ
110a 内包空間
122 開閉弁
125 ピストン
100,200,300 キャッピングユニット
124,224 空気タンク
124a,224a 貯留室
226,326 加湿タンク
231,232 逆止弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を成分とする液体を吐出する記録ヘッドを有する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドにおいて液体を吐出する吐出口内の液体の乾燥を防止するために、液体を吐出しない期間中、吐出口が形成された吐出面をキャップで覆うことがある。しかし、記録ヘッドの吐出面をキャップで覆った直後はキャップ内の空気が比較的乾燥しており、キャップ内の水蒸気が飽和状態になるまで、吐出口から水分が蒸発し続ける。これに対して特許文献1では、ヘッドのノズル形成面を覆うキャッピング手段に、大気開放口とこの大気開放口を開閉するバルブ部材とを設けている。そして、装置を長期間休止させる場合には大気開放口を開放してノズルにおけるインクの乾燥を促進し、これによってノズルの開口部のインクを固化させることによりノズルの開口部より奥までインクが固化するのを防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−218806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、キャッピング中にノズルの開口部でインクを固化させる。このため、ノズルからインクを吐出させて記録媒体への記録動作を実行する前に、ノズルからインクを予備的に吐出させて固化されたインクを除去する必要がある。したがって、インクを余計に消費するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、液体の消費を抑えつつ吐出口内の液体の乾燥を抑制できる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、水を成分とする液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する記録ヘッドと、前記吐出面に当接して前記吐出口が形成された吐出領域を覆うキャッピング手段と、前記吐出面に当接して前記吐出領域を覆った被覆位置と前記吐出面から離隔して前記吐出領域を開放した離隔位置との間で前記キャッピング手段を前記記録ヘッドに対して相対移動させるキャップ移動手段と、前記キャッピング手段が前記被覆位置にあるときに、前記キャッピング手段と前記吐出面との間に形成される内包空間とその外部とを連通させる外部連通流路と、空気を貯留する貯留室を有し、前記内包空間と前記貯留室との間で空気を移動する空気貯留手段と、前記被覆位置から前記離隔位置へと前記キャッピング手段が移動し始める前に前記内包空間から前記貯留室へと空気を流入させると共に、前記離隔位置から前記被覆位置へと前記キャッピング手段が移動した後に前記貯留室内の空気を前記内包空間に流入させるように、前記キャップ移動手段及び空気貯留手段を制御する制御手段とを備えている。
【0007】
キャッピング手段を離隔位置から被覆位置へと移動させると、吐出口から水分が蒸発する一方、内包空間の空気が飽和状態となれば、これ以上吐出口内の乾燥が進まない。しかし、この後キャッピング手段を被覆位置から離隔位置へと移動させると、内包空間内の高湿の空気が大気中へと散逸するので、再度キャッピング手段を被覆位置へと移動させても、移動直後における内包空間の空気は外気と同程度に乾燥しているため、やはり吐出口から水分が蒸発する。これに対して、本発明の記録装置によると、キャッピング手段を被覆位置から離隔位置へと移動させる前に内包空間から移動した空気を、キャッピング手段を離隔位置から被覆位置へと移動させた後に内包空間に戻す。したがって、内包空間内が高湿の状態となり、吐出口付近の液体が乾燥するのが抑制される。また、吐出口内の液体の乾燥を促進したりしないので、予備吐出する液体の量を抑制したり、予備吐出そのものを不要としたりすることができる。
【0008】
また、本発明においては、前記空気貯留手段が、前記貯留室へと空気を流入させるときに前記内包空間から空気を吸引する吸引手段を有していることが好ましい。これによると、内包空間から貯留室へと吸引によって空気が移動するので、例えば加圧することによって移動する場合と比べて貯留室内への外気の混入を少なくでき、高湿の空気のまま貯留室に退避させることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記吐出領域が一方向に長尺であり、前記空気貯留手段が、前記内包空間から吸引した空気を前記貯留室へと導入する吸引流路を有しており、前記吸引流路と前記内包空間との連通部が前記一方向に関して前記内包空間の一端近傍に配置されていると共に、前記外部連通流路と前記内包空間との連通部が前記一方向に関して前記内包空間の他端近傍に配置されていることが好ましい。これによると、内包空間と吸引流路との連通部が一端に、外部連通流路と内包空間との連通部が他端に配置されているので、他端から外部の空気を取り込みつつ一端から内包空間内の空気を円滑に吸引できる。
【0010】
また、本発明においては、前記内包空間が、前記一端に向かって先細りに形成されていると共に、前記他端に向かって先細りに形成されていることが好ましい。これによると、吸引流路との連通部が配置された一端に向かって内包空間が先細りに形成されているため、内包空間内の高湿の空気が、滞留を生じることなく貯留室に円滑に吸引される。また、外部連通流路との連通部が配置された他端に向かっても内包空間が先細りに形成されているため、外部連通流路から内包空間へと外部の空気が円滑に導入される。
【0011】
また、本発明においては、前記制御手段が、前記内包空間の空気を乱流が発生しないような速さで吸引するように前記空気貯留手段を制御することが好ましい。これによると、内包空間に乱流が発生しないように吸引するので、外部連通流路を通じて内包空間に流入する空気と内包空間に存在する高湿の空気とが混ざりにくく、高湿の空気のみが円滑に貯留室へと吸引されやすい。
【0012】
また、本発明においては、前記空気貯留手段が、前記貯留室内において変位することで前記貯留室の容積を変化させる変位部材を有していてもよい。これによると、簡易な構成で貯留室へと空気を吸引することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記空気貯留手段が、前記内包空間から移動した空気を、前記貯留室を介して前記内包空間へと戻すまでに加湿する第1の加湿手段を有していることが好ましい。これによると、加湿した空気を内包空間へと排出できるため、内包空間から貯留室へと空気を移動させた際に高湿な空気を十分に回収できていなかったとしても、内包空間の空気を速やかに高湿な状態にすることができる。
【0014】
また、本発明においては、前記空気貯留手段が、前記内包空間内から移動した空気を前記貯留室へと導入する第1の流路と、前記貯留室の空気を前記第1の加湿手段に導入する第2の流路と、前記第1の加湿手段からの空気を前記内包空間へと導出する第3の流路と、前記内包空間から前記貯留室へ向かう方向に空気を流通させる、前記内包空間と前記貯留室との間に配置された第1の逆止弁と、前記第1の加湿手段から前記内包空間へ向かう方向に空気を流通させる、前記第1の加湿手段と前記内包空間との間に配置された第2の逆止弁とを有していることが好ましい。これによると、貯留室の圧力が小さくなった際、第1及び第2の逆止弁の作用により、第1の流路を通じて内包空間からの空気が貯留室へと流入するが、第3の流路を通じて第1の加湿手段から内包空間へと空気が流出しないようにできる。また、貯留室の圧力が大きくなった際、第1及び第2の逆止弁の作用により、第3の流路を通じて第1の加湿手段からの空気が内包空間へと流出するが、第1の流路を通じて内包空間からの空気が貯留室へと流入しないようにできる。これにより、内包空間の空気を貯留室内に取り込み、その空気を第1の加湿手段によって加湿した後、内包空間へと排出する構成が簡易に実現する。
【0015】
また、本発明においては、前記外部連通流路が、移動する空気を加湿する第2の加湿手段を介して大気と連通していることが好ましい。これによると、外部から内包空間に流入する空気が常に加湿されることになるので、貯留室には確実に高湿状態の空気が貯留されることになる。
【0016】
また、本発明においては、前記外部連通流路を外部に開放する開放状態と前記外部連通流路を閉鎖する閉鎖状態とを選択的に取る弁が設けられており、前記制御手段が、前記弁の状態を切り替えることが好ましい。これによると、必要に応じて内包空間と外部との間で空気をやり取りできる状態と空気をやり取りしない状態とを切り替えることができるので、内包空間と貯留室との空気のやり取りを円滑にしつつキャッピング手段の密閉性を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
キャッピング手段を離隔位置から被覆位置へと移動させると、吐出口から水分が蒸発する一方、内包空間の空気が飽和状態となれば、これ以上吐出口内の乾燥が進まない。しかし、この後キャッピング手段を被覆位置から離隔位置へと移動させると、内包空間内の高湿の空気が大気中へと散逸するので、再度キャッピング手段を被覆位置へと移動させても、移動直後における内包空間の空気は大気と同程度に乾燥しているため、やはり吐出口から水分が蒸発する。これに対して、本発明によると、キャッピング手段を被覆位置から離隔位置へと移動させる前に内包空間から移動した空気を、キャッピング手段を離隔位置から被覆位置へと移動させた後に内包空間に戻す。したがって、内包空間内が高湿の状態となり、吐出口付近の液体が乾燥するのが抑制される。また、吐出口内の液体が固化するのを促進させたりしないので、予備吐出する液体の量を抑制したり、予備吐出そのものを不要としたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態である第1の実施形態に係るインクジェットプリンタの内部構成を概略的に示す模式図である。
【図2】図2(a)はキャッピングユニットの平面図、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図であって、移動台に接続された空気チューブや空気タンクを含む図である。
【図3】ヘッド及びキャップの一連の動作を示す図である。
【図4】ヘッドに対するキャップの移動を示す図である。ピストン移動機構の図示は省略されている。
【図5】図5(a)はキャップの平面図、図5(b)はキャップの正面図である。
【図6】本発明の別の一実施の形態である第2の実施形態において、キャップの内包空間から空気を吸引する様子を示す図である。ピストン移動機構の図示は省略されている。
【図7】図6の構成において、キャップの内包空間へと空気を戻す様子を示す図である。ピストン移動機構の図示は省略されている。
【図8】本発明のさらに別の一実施の形態である第3の実施形態において、キャップの内包空間から空気を吸引したり、キャップの内包空間へと空気を戻したりする様子を示す図である。ピストン移動機構の図示は省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施の形態である第1の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタ1)の内部構成を示す模式図である。プリンタ1は、4つのインクジェットヘッド2(以下、ヘッド2)を有するライン式のカラーインクジェットプリンタである。
【0021】
プリンタ1は、ほぼ直方体形状の筐体1aを有している。筐体1aの天板上部には、排紙部15が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に3つの空間に区分できる。上空間および中空間では、排紙部15に連なる用紙の搬送経路が構成されている。上空間では、用紙の搬送と用紙への画像形成が行われる。中空間では、用紙の収納とその搬出が行われる。下空間は、インク供給源が収納されており、対応するインクジェットヘッド2へインクの供給が行われる。
【0022】
上空間には、4つのヘッド2、用紙を搬送する搬送機構16、用紙をガイドするガイド部、ヘッド2の下面(吐出面2a)を保護するキャッピングユニット100等が配置されている。上空間の上部には、これらの機構を含め、プリンタ全体の動作を司る制御部99が配置されている。
【0023】
4つのヘッド2は、主走査方向(図1の紙面に直交する方向)に長尺なラインヘッドであって、略直方体の外形形状を有する。各ヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドフレーム9に固定されている。ヘッドフレーム9は、ヘッド移動機構20によって副走査方向に両側から支持されている。ヘッド移動機構20は、制御部99によって制御され、4つのヘッド2をヘッドフレーム9ごと上下に移動させる。
【0024】
以下、副走査方向とは、搬送ユニット21において用紙Pが搬送されるときの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向であるとする。
【0025】
各ヘッド2の下面(吐出面2a)には複数の吐出口が開口している。各吐出面2aからは、画像形成に際して、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが吐出される。吐出面2aにおいて吐出口が開口した領域である吐出領域2cは、主走査方向に長尺である(図2参照)。
【0026】
搬送機構16は、図1に示すように、ベルトローラ6、7および両ローラ6、7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8に加え、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4および剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたテンションローラ10、直方体形状のプラテン18等を有している。
【0027】
ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ19によって、図1中時計回りに回転する。このとき、搬送ベルト8は、太矢印に沿って走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8の走行に伴い、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、前段のガイド部から供給された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえつける。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して後段のガイド部に導く。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループを外側に向けて付勢し、搬送ベルト8の弛みを取る。プラテン18は、4つのヘッド2に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。これにより、外周面8aとヘッド2の吐出面2aとの間には、画像形成に適した所定の間隙が形成される。
【0028】
ガイド部は、搬送機構16を挟んで両側に配置されている。上流側ガイド部(前段のガイド部)は、2つのガイド13a、13bおよび一対の送りローラ14を有する。このガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送機構16とを繋ぐ。下流側ガイド部(後段のガイド部)は、2つのガイド29a、29bおよび二対の送りローラ28を有する。このガイド部は、搬送機構16と排紙部15とを繋ぐ。
【0029】
キャッピングユニット100は、後述の通りヘッド2の吐出面2aを覆って吐出口内のインクの乾燥を防止するものであり、主走査方向に関してヘッド2に隣接して配置されている。
【0030】
中空間には、給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ11および給紙ローラ12を有し、給紙トレイ11が筐体1aに着脱可能に装着されている。給紙トレイ11は、上方に開口した箱体であって、複数の用紙Pを収納する。給紙ローラ12は、給紙トレイ11内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0031】
上述したように、上空間および中空間によって、給紙ユニット1bから搬送機構16を介して排紙部15に至る用紙搬送経路が形成されている。印字指令に基づいて、給紙トレイ12から繰り出された用紙Pは、上流側ガイド部を介して搬送機構16に供給される。用紙Pが各ヘッド2の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出面2aからインクが吐出されて、用紙P上にカラー画像が形成される。用紙Pは、さらに下流側ガイド部を介して搬送され、上方の開口22から排紙部15に排紙される。
【0032】
下空間には、インクタンクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクタンクユニット1cには、4つのインクタンク17が並んで収納されている。各インクタンク17からは、インクチューブ(図示せず)を介して、対応するヘッド2にインクが供給される。
【0033】
以下、キャッピングユニット100の構成について、図2及び図3を参照しつつ詳細に説明する。キャッピングユニット100は、図2(a)に示すように、上面に4つのキャップ110(キャッピング手段)が固定された移動台101と、移動台101を主走査方向に往復移動させる移動台移動機構102とを有している。移動台移動機構102は、移動台101を、主走査方向に関してヘッド2からずれた図3(a)に示す位置(退避位置)と、ヘッド2の下方の図3(c)に示す位置(対向位置)との間で移動させる。
【0034】
キャップ110は、移動台101の平坦な上面から上方に突出する突起111を有している。突起111は、平面視において、長い方の辺が主走査方向に沿った平行四辺形の四辺に沿って細長く延びており、平坦な上端を有している。4つの突起111は、副走査方向に沿ってヘッド2と同じピッチで配列されている。移動台101が図3(c)の位置にあるとき、各突起111は、図2(a)に示すように、ヘッド2の吐出領域2cを平面視で取り囲む。突起111は、ゴムなどの弾性材料から形成されている。
【0035】
突起111の鋭角な方の角部内には、移動台101を鉛直方向に貫通する連通孔112及び113が形成されている。連通孔113は、平行四辺形の対角線方向に関して連通孔112とは反対側に位置している。連通孔112の下面側の開口には、図2(b)に示すように、空気チューブ121(外部連通流路)の一端が接続されている。空気チューブ121は、移動台101が移動してもその動きに追随可能な柔軟性と長さを有している。空気チューブ121の他端は、大気に開放されており、その途中には開閉弁122が設けられている。開閉弁122は、制御部99によって制御されることにより、空気チューブ121内を空気が流通する状態(以下、開放状態とする)と、空気チューブ121内が閉鎖され、空気が流通できない状態(以下、閉鎖状態とする)とに切り替えられる。
【0036】
移動台101の下面における連通孔113の開口には、空気チューブ123(吸引流路)の一端が接続されている。空気チューブ123の他端は、空気タンク124(空気貯留手段)と接続されている。空気タンク124の内部には、空気を貯留する貯留室124aが形成されている。空気チューブ123は、移動台101が移動してもその動きに追随可能な柔軟性と長さを有している。空気タンク124はシリンダ状に構成されており、下方からピストン125(変位部材)が挿入されている。ピストン125は、ピストン移動機構126に連結されている。ピストン移動機構126は、ピストン125を貯留室124aの奥へと向かう方向と、その反対方向とに往復移動させる。制御部99は、ピストン移動機構126を制御してピストン125を変位させることにより、貯留室124aの容積(貯留室124aに貯留可能な空気の容量)を変化させる。
【0037】
制御部99は、ヘッド移動機構20及び移動台移動機構102を制御することにより、キャップ110とヘッド2とを移動させる。これにより、制御部99は、以下のように、キャップ110をヘッド2に対して相対移動させる。ヘッド2からインクを吐出させる際は、キャップ110が図3(a)に示す位置に配置される。このとき、キャップ110は主走査方向に関してヘッド2から離れた退避位置にある。インクの吐出が終了すると、制御部99は、ヘッド移動機構20を制御し、図3(a)の状態から矢印X1に示すようにヘッド2を上昇させる。これによって、図3(b)に示すように、ヘッド2と搬送機構16との間にキャップ110及び移動台101を挿入可能な隙間が形成される。
【0038】
そして、制御部99は、移動台移動機構102を制御して、図3(c)に示すヘッド2の直下の対向位置まで、矢印X2に沿って移動台101を水平移動させる。さらに、制御部99は、ヘッド移動機構20を制御し、矢印X3に沿ってヘッド2を降下させ、図3(d)に示すように、吐出面2aを突起111の上端に当接させる。これによって、吐出領域2cが平面視において突起111に取り囲まれ、キャップ110によって被覆される。
【0039】
以上のように、制御部99は、キャップ110をヘッド2に対して相対的に移動させることにより、ヘッド2から離隔した離隔位置(図3(a)〜図3(c)の位置)から、吐出面2aに当接して吐出領域2cを覆う被覆位置(図3(d)の位置)へと移動させる。これとは逆に、キャップ110を被覆位置から離隔位置へと相対移動させる際は、制御部99は、上記と逆の順序で移動台101とヘッド2を移動させる。
【0040】
キャップ110が被覆位置にあるとき、キャップ110とヘッド2の吐出面2aとの間には、内包空間110aが形成される。内包空間110aは、図4(a)に示すように、吐出面2a、突起111及び移動台101の上面によって画定される空間である。このとき、吐出領域2cは内包空間110aに覆われるため、吐出口が外気から隔離される。したがって、吐出口から水分が蒸発することによって内包空間110a内が一旦飽和状態になると、それ以上水分が蒸発しない。
【0041】
しかし、再び印刷処理を実行するなどの際、内包空間110aに高湿の空気が溜まっている状態でキャップ110を被覆位置から離隔させることになるので、内包空間110aの空気がキャップ110外へと散逸する。そして、印刷処理が終了し、キャップ110が再び被覆位置に移動した直後は、内包空間110a内の空気が外気と同じ程度に乾燥している。したがって、キャップ110で吐出領域2cを覆っても、内包空間110a内の空気が水蒸気の飽和状態となるまで、吐出口からの水分蒸発は避けられない。仮に、吐出口が、印刷処理中に殆どインクの吐出をしなかった場合、吐出口内のインクは、この水分蒸発によって吐出特性を損なう程に増粘が進むおそれがある。
【0042】
そこで本実施形態では、印刷処理を実行するときなどにキャップ110を移動させる際、制御部99が以下のようにピストン移動機構126及び開閉弁122を制御する。まず、図4(a)のように、キャップ110が被覆位置にあったとする。内包空間110a内は、水蒸気が飽和した状態にある。このとき、制御部99が開閉弁122を開放状態にすると共に、ピストン移動機構126(図4においては不図示)を制御して、矢印X4に沿ってピストン125を下方へと移動させる。このとき、貯留室124aの容積が増大する。これに伴って内包空間110a内の空気が、矢印Y1に示すように、空気チューブ123を通じて貯留室124a内に流入する。このように、ピストン125及びピストン移動機構126は、内包空間110aから貯留室124aへと空気を吸引する吸引手段を構成している。一方、主走査方向に関して連通孔113と反対側では、空気チューブ121を通じて外部の空気が、矢印Y2及びY3に沿って内包空間110aへと流入する。
【0043】
このように、キャップ110が被覆位置から離隔する前に、高湿の空気が貯留室124a内に収容される。その後、図4(b)に示すようにキャップ110がヘッド2から離隔しても、貯留室124a内には高湿の空気が保管されている。このとき、貯留室124aにおける空気の保管量は、少なくとも内包空間110aの占める体積と等量であればよく、本実施の形態では、開閉弁122から内包空間110aを介して空気チューブ123と貯留室124aとの接続部までの流路の占める体積に等量とされている。
【0044】
そして、印刷処理が終了した後に、図4(c)に示すようにキャップ110が再び被覆位置に移動した場合、制御部99が開閉弁122を開放状態にする。これと共に、ピストン移動機構126を制御して、矢印X5に沿ってピストン125を上方へと移動させる。ピストン125の移動によって、貯留室124aの容積が減少する。これに伴って貯留室124aの空気が、矢印Y4に示すように、空気チューブ123を通じて内包空間110a内に流入する。一方、主走査方向に関して空気チューブ123の接続側とは反対側では、矢印Y5及びY6に示すように、内包空間110aの空気が空気チューブ121を通じて外部へと流出する。ピストン125が最上方の位置まで到達すると、制御部99は開閉弁122を閉鎖状態にする。以上により、貯留室124a内に貯留されていた高湿の空気が内包空間110aに戻されると共に、開閉弁122により外部の空気が内包空間110a内へと侵入するのが防止される。
【0045】
ところで、内包空間110aと貯留室124aとの間で空気を移動する際、ピストン125の移動速度が大きすぎると、内包空間110a内に乱流が発生して、内包空間110a内の空気が攪拌されるおそれがある。この場合、例えば内包空間110a内に流入した外気が、内包空間110a内に存在した高湿の空気と混ざり合うことにより、貯留室124aへと収容する空気に乾燥した外気が混入しやすくなる。あるいは、内包空間110aに戻された高湿の空気が、内包空間110a内の乾燥した空気と混ざり合い、連通孔112から漏れ出しやすくなる。そこで、本実施形態の制御部99は、内包空間110a内に乱流が発生しないような速さでピストン125が移動するように、ピストン移動機構126を制御する。
【0046】
以下は、内包空間110a内に乱流が発生しないようにピストン125を移動させるための一実施例である。この実施例では、図5(a)に示す内包空間110aの幅Wが2.5*10−2m(25mm)であり、図5(b)に示す内包空間110aの深さDが2*10−3m(2mm)であるとする。また、乱流と層流の境界となるレイノルズ数を2300とする。このとき、内包空間110a内の気流の速さをU[m/s]とし、気温が常温20℃であるときの空気の動粘度νを1.0*10−6m2/sとすると、レイノルズ数Re=U*D/νが成り立つことから、U=2300*1.0*10−6/(2*10−3)=1.15[m/s]となる。なお、気流の方向に直交する内包空間110aの中央部の断面形状が横(W)2.5*10−2m・縦(D)2*10−3mの長方形であることから、代表長さをD=2*10−3mとした。気流の速さU=1.15[m/s]に対応する連通孔113からの吸引流量Qは、Q=U*D*W=1.15*2.5*10−2*2*10−3=5.75*10−5m3/s=57.5ml/sである。
【0047】
したがって、本実施例では、連通孔113を通じて貯留室124aと内包空間110aとの間で移動する空気の流量が57.5ml/s未満となるようにピストン125を移動させた場合、内包空間110a内に乱流が発生しないこととなる。実際は、代表長さの取り方の違いや乱流と層流の境界となるレイノルズ数の取り方の違いによって乱流の影響を受けることとなるが、大部分の高湿空気を貯留室124a内に収容し、あるいは内包空間110a内に充填することができる。さらに乱流の影響を抑えるには、連通孔113を通じた空気の流量が57.5ml/s未満となる速さよりも十分に小さい速さでピストン125を移動させることがより好ましい。このとき、内包空間110a内に乱流が確実に発生しない速さの実測値に基づいて、ピストン125の速さが設定されてもよい。
【0048】
以上説明した第1の実施形態によると、キャップ110を被覆位置から離隔位置へと移動させる前に、内包空間110aの空気を貯留室124aへと吸引する。これにより、内包空間110aの高湿な空気を貯留室124aへと一旦退避させておく。そして、再びキャップ110を被覆位置へと移動させた後に、貯留室124a内の高湿な空気を速やかに内包空間110aへと戻す。これにより、キャップ110によって吐出面2aを保護する間、吐出口内のインクから内包空間110aへと水分が蒸発するのが抑制される。吐出口での増粘が進みにくいことから、各吐出口の吐出特性が長期的に維持される。仮に、強制的な特性の回復処理が必要となっても、無駄に捨てるインク量を抑えることができる。
【0049】
また、キャップ110の突起111が平面視で平行四辺形の形状を有しており、平行四辺形の2つの鋭角のうち、一方の付近に連通孔112が、他方の付近に連通孔113が配置されている。これにより、内包空間110aに対して、一方からは外気を導入しつつ他方からは高湿な空気を吸引することが円滑に行える。また、連通孔112及び113が、平行四辺形の鋭角内に配置されている。つまり、連通孔112及び113に向かって内包空間110aが先細りになっている。このため、内包空間110a内に空気の滞留を生じさせることなく、連通孔112及び113に向かって空気を円滑に流通させることができると共に、連通孔112及び113から空気を円滑に導入することができる。
【0050】
さらに、上記の実施例のように、内包空間110aに乱流が発生しないように空気を流通させることにより、外部の空気と内包空間110aの空気とが混ざり合うのを抑制できる。このため、内包空間110aの高湿の空気を貯留室124aへと吸引する際、吸引する空気に外部の空気が混入しにくくなり、貯留室124aに退避した高湿の空気を内包空間110aに戻す際、高湿の空気が外部へと漏れ出しにくくなる。
【0051】
(第2の実施形態)
以下、本発明の別の一実施形態である第2の実施形態について説明する。第2の実施形態において第1の実施形態との違いは、キャッピングユニットに関する構成のみである。以下においては第1の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0052】
第2の実施形態のキャッピングユニット200は、図6(a)に示すように、キャップ110と、連通孔112に接続された空気チューブ121とを有している。空気チューブ121には開閉弁122が設けられており、制御部99が開閉弁122を制御することにより、空気チューブ121が外部に対して開放された状態と空気チューブ121が閉鎖された状態とが切り替えられる。
【0053】
連通孔113には、空気チューブ223(第1の流路)を介して空気タンク224が接続されている。内包空間110aと空気タンク224内の貯留室224aとは、空気チューブ223を通じて互いに連通している。空気タンク224は、空気タンク124と同様にシリンダ状に構成されており、下方からピストン125が挿入されている。ピストン125は、ピストン移動機構126(図6及び図7においては不図示)に連結されており、ピストン移動機構126によって貯留室124aの奥へと向かう方向とその反対方向とに往復移動される。
【0054】
空気チューブ223と貯留室224aとの連通部には逆止弁231が設けられている。逆止弁231は、図示しない付勢部材により連通部に押し付けられており、連通部を封鎖している(図6(a)、図7(a)参照)。ここで、空気チューブ223側の圧力が貯留室224a側の圧力より所定の大きさだけ大きくなると、逆止弁231に作用する圧力差が付勢部材の付勢力を上回り、逆止弁231が貯留室224a側へと移動する。これにより連通部が開放され、空気チューブ223と貯留室224aとが連通した状態となる(図6(b)参照)。
【0055】
空気タンク224は、別のタンクである加湿タンク226(第1の加湿手段)と空気チューブ227(第2の流路)を介して接続されている。貯留室224aは、空気チューブ227を通じて加湿タンク226内の加湿室226aと連通している。この加湿室226a内には、水Wtが貯留されている。空気チューブ227の下端は、水面下に配置されている。したがって、空気タンク224から空気チューブ227を介して加湿タンク226へと流入した空気は、まず水中を通って加湿される。
【0056】
加湿タンク226は、空気チューブ228(第3の流路)を介して空気チューブ223の途中部とも接続されている。加湿室226aは、空気チューブ228を通じて空気チューブ223と連通している。空気チューブ223と空気チューブ228との連通部には、逆止弁232が設けられている。逆止弁232は、図示しない付勢部材により連通部に押し付けられており、連通部を封鎖している(図6(a)〜図7(a)参照)。ここで、空気チューブ228側の圧力が空気チューブ223側の圧力より所定の大きさだけ大きくなると、逆止弁232に作用する圧力差が付勢部材の付勢力を上回り、逆止弁232は空気チューブ223側へと移動する。これにより連通部が開放され、空気チューブ223と空気チューブ228とが連通した状態となる(図7(b)参照)。
【0057】
本実施形態においては、制御部99が、ピストン移動機構126及び開閉弁122を以下のように制御する。まず、図6(a)のように、キャップ110が被覆位置にあって、内包空間110a内が外部より高湿の状態、例えば、水蒸気量が飽和しているとする。この状態から、制御部99が、開閉弁122を開放状態にすると共に、ピストン移動機構126を制御して、図6(b)の矢印X6に沿ってピストン125を下方へと移動させる。これにより貯留室224a内の圧力が所定の大きさまで下がり、逆止弁231が貯留室224a側へと移動して、空気チューブ223と貯留室224aとが連通する。これに伴って内包空間110aの空気が、矢印Y6に示すように、空気チューブ223を通じて貯留室224a内へと流入する。一方、外部からの空気が、空気チューブ121を矢印Y7及びY8に沿って、内包空間110aへと流入する。
【0058】
ピストン125が下方へと移動する間、空気チューブ228内の圧力は、空気チューブ223内より小さいか、せいぜい同程度である。このため、逆止弁232は、連通部を封鎖した状態に留まる。したがって、貯留室224a内には内包空間110aから流入する空気のみが収容されることになる。
【0059】
制御部99がピストン125の移動を停止すると、空気チューブ223側と貯留室224a側との圧力差が小さくなり、やがて逆止弁231がこれらの間の連通部を封鎖する。これによって、図7(a)に示すように、貯留室224a内の空気が、逆止弁231及び232によって、外部へと漏れ出さないように保持される。この状態になると、制御部99が、ヘッド2を被覆位置から上方に移動させ、キャップ110を退避位置に移動させる。
【0060】
その後、図7(b)に示すように、キャップ110を再び被覆状態にした場合は、制御部99が速やかに、開閉弁122を開放状態にすると共に、ピストン移動機構126を制御して、矢印X7に沿ってピストン125を上方へと移動させる。これに伴って貯留室224a内の圧力が上がるので、逆止弁231は連通部を封鎖した状態を維持する一方、貯留室224a内の空気が、矢印Y9及びY10に示すように、空気チューブ227を介して加湿室226aへと流入する。加湿室226a内に流入した空気は水中を通って加湿され、さらに矢印Y11に沿って空気チューブ228へと流入する。これにより、空気チューブ228内の圧力が所定の大きさまで増大するので、逆止弁232が空気チューブ223側へと移動し、加湿された空気が空気チューブ223へと流入する。さらに、加湿された空気は、矢印Y12に示すように、空気チューブ223から内包空間110aへと流出する。一方、内包空間110aの空気が、空気チューブ121を矢印Y13及びY14に沿って、外部へと流出する。ピストン125が最上方の位置まで到達すると、制御部99は開閉弁122を閉鎖状態にする。
【0061】
ピストン125が上方へと移動する間、空気チューブ223内は貯留室224a内より圧力が小さいか、せいぜい同程度の圧力である。このため、逆止弁231は、連通部を封鎖した状態に留まる。したがって、内包空間110aには、加湿された空気が確実に充填されることになる。
【0062】
以上説明した第2の実施形態によると、内包空間110aの空気を貯留室224aへと取り込んだ後、その空気を内包空間110aへと戻す前に加湿タンク226を通して加湿する。したがって、十分に湿度を含んだ空気を内包空間110aに戻すことができる。
【0063】
(第3の実施形態)
以下、本発明のさらに別の一実施形態である第3の実施形態について説明する。第3の実施形態において第1の実施形態との違いは、キャッピングユニットに関する構成のみである。以下においては第1の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0064】
第3の実施形態のキャッピングユニット300は、図8(a)に示すように、キャップ110と、空気チューブ223を介して連通孔113に接続された空気タンク124及びピストン125を有している。ピストン125は、ピストン移動機構126(図8においては不図示)に連結されている。
【0065】
連通孔112には、空気チューブ321を介して加湿タンク326(第2の加湿手段)が接続されている。加湿室326a内には水Wtが貯留されている。内包空間110aと加湿室326aとは、空気チューブ321を通じて互いに連通している。加湿室326aは、空気チューブ327及び328を介して、外部と連通可能である。空気チューブ327の下端は加湿室326a内で水面下に配置されているが、空気チューブ328の下端は加湿室326a内に挿入されていない。空気チューブ327及び328には、逆止弁331及び332が設けられている。逆止弁331は、外部から空気チューブ327を通じて加湿室326a内へ向かう方向にのみ空気を流通させる。逆止弁332は、加湿室326aから空気チューブ328を通じて外部へ向かう方向にのみ空気を流通させる。
【0066】
この構成において、図8(a)に示すように、制御部99がピストン移動機構126を制御し、矢印X8に沿ってピストン125を下方へと移動させると、内包空間110aの空気が矢印Y15に沿って貯留室124aへと流入する。これにより、内包空間110a内の高湿の空気が、貯留室124aに収容される。加湿室326aからは、加湿された空気が矢印Y16に沿って内包空間110aに流入することになる。加湿室326aからの空気が貯留室124aに流入する態様であっても、乾燥した外気の混入はないので、貯留室124a内の空気の湿度が殆ど低下することがない。なお、このとき、加湿室326aには、内包空間110aに流出してしまう空気に代わって、空気チューブ327から外気が流入する。外気は、乾燥していても、加湿室326a内に流入するとき加湿されるので、貯留室124aには、加湿された空気のみが収容されることになる。
【0067】
この後、ヘッド2からキャップ110が離隔し、再び被覆状態に戻った場合には、制御部99がピストン移動機構126を制御し、図8(c)の矢印X9に沿ってピストン125を上方に移動させる。これにより、貯留室124aに退避されていた高湿の空気が、矢印Y18に示すように内包空間110aへと戻る。内包空間110aの空気は、矢印Y19に沿って加湿室326aへと流入する。加湿室326a内の空気は、逆止弁331及び332の作用により、空気チューブ328から外部へと流出するが、空気チューブ327からは流出しない。加湿室326a内の空気は、水中を通ることなく容易に外部へと流出する。そのため、吐出口に形成されたインクのメニスカスを破壊することがない。
【0068】
以上説明した第3の実施形態によると、内包空間110aの高湿の空気を貯留室124aへと吸引する際、外部の空気が一旦加湿されてから内包空間110aへと流入する。つまり、外部の空気が内包空間110a内に流入する際は常に加湿されてからとなるので、貯留室124a内には高湿の空気が確実に貯留される。
【0069】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0070】
例えば、上述の実施形態では、内包空間110aと貯留室124a等との間で空気を移動するのと同時に、外部と内包空間110aとの間でも空気を移動している。この場合の「外部の空気」は、外気であってもよいし、別の空気タンク内の空気であってもよい。要は、内包空間110aと内包空間110aの外部との空気のやりとりが行われればよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、ピストン125を移動させることにより、内包空間110aの空気が貯留室124a等へ吸引されている。しかし、貯留室124aへの空気の移動が加圧によってなされてもよい。例えば、連通孔112側に加圧用のシリンダやポンプを接続し、これによって連通孔112側から内包空間110aへと空気を送り込むことにより、反対側の連通孔113から貯留室124aへと空気を移動させてもよい。また、ピストン125の代わりに吸引ポンプを用いて内包空間110aの空気を貯留室124aへと吸引してもよい。なお、加圧により貯留室124aへと空気を移動させる場合は、吸引によって貯留室124aへと空気を移動させる場合と比べて、内包空間110a内の空気に外気が混入しやすい。このため、加湿室を介して空気を送り込むとよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、ヘッド2を鉛直方向に移動するヘッド移動機構20と移動台101を水平方向に移動する移動台移動機構102により、キャップ110をヘッド2に対して相対移動するキャップ移動手段が構成されている。しかし、ヘッド2に対してキャップ110を相対移動させる具体的な構成はどのようなものでもよい。例えば、ヘッド2は固定したままキャップ110のみを移動させる構成であってもよいし、その逆であってもよい。また、ヘッド2を水平移動させる移動機構や、キャップ110を鉛直移動させる移動機構が設けられていてもよい。
【0073】
また、第1〜第3の実施形態の各構成は互いに組み合わせ可能である。例えば、第2及び第3の実施形態の加湿タンク226と加湿タンク326は、それぞれの実施形態においていずれか一方のみが設けられているが、両方が同じ実施形態として設けられてもよい。また、第2の実施形態や第3の実施形態の逆止弁が、第1の実施形態に適宜設けられてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、内包空間110aを外部へと連通させる空気チューブ121に開閉弁122が設けられており、開放状態と閉鎖状態とが切り換えられる。しかし、内包空間110aがラビリンス流路を通じて常に外部に開放されていてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、キャップ110が、例えば、主走査方向に細長く、主走査方向の両端部に配置された連通孔112、113に向かって先細形状であれば、上述のような平行四辺形の形状でなくてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態は、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例であるが、本発明を適用可能な対象はこのようなインクジェットヘッドに限られない。成分として水を含む液体を吐出するあらゆる記録ヘッドに適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 プリンタ
2 インクジェットヘッド(ヘッド)
2a 吐出面
2c 吐出領域
20 ヘッド移動機構
99 制御部
110 キャップ
110a 内包空間
122 開閉弁
125 ピストン
100,200,300 キャッピングユニット
124,224 空気タンク
124a,224a 貯留室
226,326 加湿タンク
231,232 逆止弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を成分とする液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する記録ヘッドと、
前記吐出面に当接して前記吐出口が形成された吐出領域を覆うキャッピング手段と、
前記吐出面に当接して前記吐出領域を覆った被覆位置と前記吐出面から離隔して前記吐出領域を開放した離隔位置との間で前記キャッピング手段を前記記録ヘッドに対して相対移動させるキャップ移動手段と、
前記キャッピング手段が前記被覆位置にあるときに、前記キャッピング手段と前記吐出面との間に形成される内包空間とその外部とを連通させる外部連通流路と、
空気を貯留する貯留室を有し、前記内包空間と前記貯留室との間で空気を移動する空気貯留手段と、
前記被覆位置から前記離隔位置へと前記キャッピング手段が移動し始める前に前記内包空間から前記貯留室へと空気を流入させると共に、前記離隔位置から前記被覆位置へと前記キャッピング手段が移動した後に前記貯留室内の空気を前記内包空間に流入させるように、前記キャップ移動手段及び空気貯留手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記空気貯留手段は、前記貯留室へと空気を流入させるときに前記内包空間から空気を吸引する吸引手段を有していることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記吐出領域が一方向に長尺であり、
前記空気貯留手段が、前記内包空間から吸引した空気を前記貯留室へと導入する吸引流路を有しており、
前記吸引流路と前記内包空間との連通部が前記一方向に関して前記内包空間の一端近傍に配置されていると共に、前記外部連通流路と前記内包空間との連通部が前記一方向に関して前記内包空間の他端近傍に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記内包空間が、前記一端に向かって先細りに形成されていると共に、前記他端に向かって先細りに形成されていることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記内包空間の空気を乱流が発生しないような速さで吸引するように前記空気貯留手段を制御することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記空気貯留手段が、前記貯留室内において変位することで前記貯留室の容積を変化させる変位部材を有していることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記空気貯留手段が、前記内包空間から移動した空気を、前記貯留室を介して前記内包空間へと戻すまでに加湿する第1の加湿手段を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記空気貯留手段が、
前記内包空間内から移動した空気を前記貯留室へと導入する第1の流路と、
前記貯留室の空気を前記第1の加湿手段に導入する第2の流路と、
前記第1の加湿手段からの空気を前記内包空間へと導出する第3の流路と、
前記内包空間から前記貯留室へ向かう方向に空気を流通させる、前記内包空間と前記貯留室との間に配置された第1の逆止弁と、
前記第1の加湿手段から前記内包空間へ向かう方向に空気を流通させる、前記第1の加湿手段と前記内包空間との間に配置された第2の逆止弁とを有していることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記外部連通流路は、移動する空気を加湿する第2の加湿手段を介して大気と連通していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記外部連通流路を外部に開放する開放状態と前記外部連通流路を閉鎖する閉鎖状態とを選択的に取る弁が設けられており、
前記制御手段が、前記弁の状態を切り替えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項1】
水を成分とする液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する記録ヘッドと、
前記吐出面に当接して前記吐出口が形成された吐出領域を覆うキャッピング手段と、
前記吐出面に当接して前記吐出領域を覆った被覆位置と前記吐出面から離隔して前記吐出領域を開放した離隔位置との間で前記キャッピング手段を前記記録ヘッドに対して相対移動させるキャップ移動手段と、
前記キャッピング手段が前記被覆位置にあるときに、前記キャッピング手段と前記吐出面との間に形成される内包空間とその外部とを連通させる外部連通流路と、
空気を貯留する貯留室を有し、前記内包空間と前記貯留室との間で空気を移動する空気貯留手段と、
前記被覆位置から前記離隔位置へと前記キャッピング手段が移動し始める前に前記内包空間から前記貯留室へと空気を流入させると共に、前記離隔位置から前記被覆位置へと前記キャッピング手段が移動した後に前記貯留室内の空気を前記内包空間に流入させるように、前記キャップ移動手段及び空気貯留手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記空気貯留手段は、前記貯留室へと空気を流入させるときに前記内包空間から空気を吸引する吸引手段を有していることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記吐出領域が一方向に長尺であり、
前記空気貯留手段が、前記内包空間から吸引した空気を前記貯留室へと導入する吸引流路を有しており、
前記吸引流路と前記内包空間との連通部が前記一方向に関して前記内包空間の一端近傍に配置されていると共に、前記外部連通流路と前記内包空間との連通部が前記一方向に関して前記内包空間の他端近傍に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記内包空間が、前記一端に向かって先細りに形成されていると共に、前記他端に向かって先細りに形成されていることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記内包空間の空気を乱流が発生しないような速さで吸引するように前記空気貯留手段を制御することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記空気貯留手段が、前記貯留室内において変位することで前記貯留室の容積を変化させる変位部材を有していることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記空気貯留手段が、前記内包空間から移動した空気を、前記貯留室を介して前記内包空間へと戻すまでに加湿する第1の加湿手段を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記空気貯留手段が、
前記内包空間内から移動した空気を前記貯留室へと導入する第1の流路と、
前記貯留室の空気を前記第1の加湿手段に導入する第2の流路と、
前記第1の加湿手段からの空気を前記内包空間へと導出する第3の流路と、
前記内包空間から前記貯留室へ向かう方向に空気を流通させる、前記内包空間と前記貯留室との間に配置された第1の逆止弁と、
前記第1の加湿手段から前記内包空間へ向かう方向に空気を流通させる、前記第1の加湿手段と前記内包空間との間に配置された第2の逆止弁とを有していることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記外部連通流路は、移動する空気を加湿する第2の加湿手段を介して大気と連通していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記外部連通流路を外部に開放する開放状態と前記外部連通流路を閉鎖する閉鎖状態とを選択的に取る弁が設けられており、
前記制御手段が、前記弁の状態を切り替えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−240624(P2011−240624A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115314(P2010−115314)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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