説明

記録装置

【課題】記録装置の動作中にユーザが誤った手順で記録ヘッド交換を行うことを未然に防止し、ユーザが不用意に記録ヘッドを交換しようとしてもインクの飛散を防止することができるフェールセーフを実現すること。
【解決手段】インク供給手段の駆動源と同じ駆動源によってカバーの開閉を行い、インク貯蔵手段への加圧と共にカバーを閉じる動作を行う。さらに記録装置は、インク供給手段がインク貯蔵手段に空気を送り込んで加圧している際には、カバーは開くことができない。これによって、記録装置の動作中にユーザが誤った手順でヘッド交換を行うことを未然に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンクから記録ヘッドにインクを供給するチューブを有するインク供給装置を備えるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクタンクとキャリッジ上の記録ヘッドとを供給チューブで接続し、各種ポンプなどを用いてインクタンクから記録ヘッドにインクを供給するインクジェット記録装置がある。
【0003】
特許文献1には、記録動作中にユーザがインクタンクのカバーを開蓋して、インクタンクを着脱することを防止するために、インク供給部の動作を制御する制御部とインクタンクのカバーの開蓋動作を、別個独立の駆動制御によって行う構成が開示されている。記録動作中はインクタンクのカバーが閉蓋されるので、ユーザはインクタンクのカバーを開けることが出来ずインクタンクは不用意に着脱されることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−249651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置において、インクタンクのカバーを開蓋する駆動制御部に不具合が生じた場合、ユーザがインクタンクのカバーを開蓋してインクタンクを外すことになる。その場合、インクタンクを外した後さらに記録ヘッドを取り出した際には、インク流路を形成する部材が大気と連通することで、インク流路を形成する部材からインクが飛散する畏れがある。これによって、ユーザもしくは記録シートにインクが付着する可能性がある。
【0006】
本発明は上述の課題の認識に基づいてなされたものである。本発明は、記録装置の動作中にユーザが誤った手順で記録ヘッド交換を行うことを未然に防止し、ユーザが不用意に記録ヘッドを交換しようとしてもインクの飛散を防止することができるフェールセーフを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明の記録装置は、インクを吐出する記録ヘッドを搭載可能なキャリッジと、前記インクを貯蔵しておく貯蔵手段と、駆動源の動作によって前記貯蔵手段に空気を送り込んで加圧することで前記貯蔵手段から前記記録ヘッドに前記インクを供給する供給手段と、閉じた際に前記記録ヘッドを覆う部材の少なくとも一部を覆う開閉可能なカバーと、を備え、前記カバーの開閉は前記駆動源の動作によって行われ、前記駆動源の動作によって前記貯蔵手段への加圧と共に前記カバーを閉じる動作を行い、前記駆動源の動作によって前記貯蔵手段への加圧の解除と共に前記カバーを開く動作を行い、前記供給手段が前記貯蔵手段に空気を送り込んで加圧している際には、前記カバーは開くことができないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば記録装置は、インク供給手段の駆動源と同じ駆動源によってカバーの開閉を行い、インク貯蔵手段への加圧と共にカバーを閉じる動作を行い、インク貯蔵手段への加圧の解除と共にカバーを開く動作を行う。さらに記録装置は、インク供給手段がインク貯蔵手段に空気を送り込んで加圧している際には、カバーは開くことができない。これによって、記録装置の動作中にユーザが誤った手順でヘッド交換を行うことを未然に防止し、ユーザが不用意に記録ヘッドを交換しようとしてもインクの飛散を防止することができるフェールセーフを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】記録装置の構成を示した斜視図である。
【図2】記録装置の供給部、キャリッジ部の構成を示した斜視図である。
【図3】記録ヘッドの交換におけるシーケンスを示したフローチャートである。
【図4】記録ヘッド交換をユーザが行う際のユーザインターフェースの表示例を示す説明図である。
【図5】(a)、(b)は、キャリッジ部のセットレバーの閉蓋・開蓋状態を示す斜視図である。
【図6】供給部の駆動部の構成を示した斜視図である。
【図7】記録ヘッド交換カバー駆動ユニットの構成を示す斜視図である。
【図8】記録ヘッド交換カバーと記録ヘッド交換アームの構成を示す下面図である。
【図9】記録ヘッド交換カバー駆動ユニットと供給部筐体の配置を示す上面図である。
【図10】記録ヘッド交換カバーが閉蓋している時の記録ヘッド交換アームの状態図を示している。
【図11】記録装置の動作中のキャリッジ部と記録ヘッド交換カバーの状態を示す上面図である。
【図12】(a)、(b)、(c)は記録ヘッド交換の一連動作を示す斜視図である。
【図13】駆動源の回転方向における供給動作、記録ヘッド交換カバーと攪拌手段の動作状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の構成を示した斜視図であり、図2は、図1のインクジェット記録装置の供給部、キャリッジ部の構成を示した斜視図である。図1の記録装置1は、給紙装置2、送紙部3、排紙部4、供給部5、キャリッジ部6、記録ヘッド7、クリーニング部、制御部から構成されている。
【0011】
(基本的構成)
(給紙部)
給紙部2は、記録媒体を積載する圧板21、記録媒体を給紙する給紙ローラ22、記録媒体を分離する分離ローラ、記録媒体を積載位置に戻すための戻しレバー、の夫々がベース20に取り付けられて構成されている。また、積載された記録媒体を保持するための給紙トレイがベース20または外装に取り付けられている。給紙ローラ22は、断面円弧の棒状であり、1つの分離ローラゴムが設けられており、これによって記録媒体を給紙する。給紙ローラ22への駆動は、給紙部2に設けられた不図示のクリーニング部と共用のモータ(APモータ)24とからギア列によって伝達される。圧板21には、可動サイドガイド23が移動可能に設けられており、この可動サイドガイド23によって記録媒体の積載位置を規制している。圧板21は、ベース20に嵌合された回転軸を中心に回転可能であり、圧板バネにより給紙ローラ22に付勢されている。給紙ローラ22と対向する圧板21の部位には、積載された記録媒体の最終近くにおける重送を防止する人工皮等の摩擦係数の大きい材質からなる分離シート25が設けられている。圧板21は圧板カムによって、給紙ローラ22に、当接、離間できるように構成されている。さらに、ベース20には、記録媒体を一枚ずつ分離するための分離ローラを取り付けた分離ローラホルダーが、回転軸を中心に回転可能に設けられており、分離ローラバネにより給紙ローラ22に付勢されている。また、記録媒体を積載位置に戻すための戻しレバーは、回転可能にベース20に取り付けられ、解除方向に戻しレバーバネで付勢されている。
【0012】
通常の待機状態では、圧板21は圧板カムでリリースされ、分離ローラはコントロールカムでリリースされる。また戻しレバーは記録媒体を戻し、積載時に記録媒体が奥に入らないように、積載口を塞ぐような積載位置に設けられている。このように記録媒体が積載された状態から給紙が始まると、モータ駆動によって、まず、分離ローラが給紙ローラ22に当接する。そして、戻しレバーがリリースされ、圧板21が給紙ローラ22に当接する。この状態で記録媒体の給紙が開始される。記録媒体はベース20に設けられた前段分離部で制限され、記録媒体の所定枚数のみが給紙ローラ22と分離ローラから構成されるニップ部に送られる。送られた記録媒体はこのニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。記録媒体が、後述の搬送ローラ31、ピンチローラ32まで到達すると、圧板21は圧板カムによって、分離ローラはコントロールカムによって、積載位置に戻る。この時、給紙ローラ22と分離ローラから構成されるニップ部に到達していた記録媒体を積載位置まで戻すことができる。
【0013】
(送紙部)
送紙部3は、曲げ起こした板金からなるシャーシ11に取り付けられており、記録媒体を搬送する搬送ローラ31とPEセンサとを有している。搬送ローラ31は金属軸の表面にセラミックの微小粒をコーティングした構成であり、両端の金属部分を軸受で受け、シャーシ11に取り付けられている。PEセンサは、記録媒体の先端・後端を検知する光学的なセンサであり、記録媒体の搬送の制御を行うための信号を出力している。搬送ローラ31には従動する複数のピンチローラ32が当接して設けられている。ピンチローラ32はピンチローラホルダー30に保持され、ピンチローラバネがピンチローラ32を付勢することで、ピンチローラ32が搬送ローラ31に圧接し、記録媒体の搬送力を生み出している。この時、ピンチローラホルダー30は、回転軸がシャーシ11の軸受に取り付けられており、そこを中心に回転する。さらに、記録媒体が搬送されてくる送紙部3の入り口には記録媒体をガイドするペーパーガイドフラッパーが配設されており、搬送ローラ31とピンチローラ32との間を通過した記録媒体は、プラテン33上に通紙される。また、ピンチローラホルダー30には記録媒体の先端、後端検出をPEセンサに伝えるPEセンサレバーが設けられている。プラテン33はシャーシ11に取り付けられ、位置決めされる。ペーパーガイドフラッパーは、搬送ローラ31と勘合し、摺動する軸受部を中心に回転可能で、シャーシ11に当接することで位置決めされている。
【0014】
このような構成において、送紙部3に送られた記録媒体はピンチローラホルダー30およびペーパーガイドフラッパーに案内されて、搬送ローラ31とピンチローラ32とのローラ対に送られる。この時、PEセンサレバーは搬送されてきた記録媒体の先端を検知し、この検出により記録媒体の記録位置を決めている。また、記録媒体は搬送モータにより搬送ローラ31とピンチローラ32とのローラ対が回転することでプラテン33上を搬送される。プラテン33上には、搬送基準面になるリブが形成されており、記録ヘッド7と記録媒体とのギアップを管理している。さらに、プラテン33は後述の排紙部と合わせて、記録媒体の波打が大きくならないように構成されている。
【0015】
搬送ローラ31の駆動は、DCモータからなる搬送モータの回転力をタイミングベルトで搬送ローラ31の軸上に設けたプーリ311に伝達することで行われている。また、搬送ローラ31の軸上には、搬送ローラ31による搬送量を検出するための、1インチあたり150〜360の等間隔なマーキングを形成したコードホイール312が設けられている。そして、コードホイール312のマーキングを読み取るためのエンコーダセンサがコードホイール312の隣接する位置のシャーシ11に取り付けられている。
【0016】
また、搬送ローラ31の記録媒体搬送方向における下流側には、画像情報に基づいて画像を形成する記録ヘッド7が設けられている。記録ヘッド7は各色インクタンク別体の交換可能なインクタンクが搭載されたインクジェット記録ヘッドが用いられている。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式などを採用することができる。
【0017】
(排紙部)
排紙部4は、排紙ローラ41と、排紙ローラ41に所定圧で当接、従動して回転可能なごとく構成された拍車と、搬送ローラの駆動を排紙ローラ41に伝達するためのギア列と、から構成されている。排紙ローラ41は、プラテン33に取り付けられている。記録媒体搬送方向で下流側の排紙ローラ41は金属軸に複数のゴム部を設けた状態で構成されている。搬送ローラ31からの駆動がアイドラギアを介し、排紙ローラ41に伝達されることによって駆動される。また、排紙ローラ41の上流側に設けた排紙ローラ41は樹脂の軸にエラストマーの弾性体を複数取り付けた構成になっている。排紙ローラ41への駆動は、排紙ローラ41からアイドラギアを介して伝達される。
【0018】
拍車はステンレスの薄板で周囲に凸形状を複数設けたものを樹脂部と一体成型され、拍車ホルダー42に取り付けられている。コイルバネを棒状に設けた拍車バネによって、拍車は拍車ホルダー42への取り付けと、排紙ローラ41等への押圧を行っている。拍車バネは排紙ローラ41、排紙ローラ41のゴム部、弾性体部に対応する位置に設けられている。拍車バネは主に記録媒体の搬送力を生み出す役割のものがある。また、拍車バネは、排紙ローラ41、排紙ローラ41のゴム部や弾性体部が無い位置に設けられ、主に記録媒体が記録される時の浮き上がりを抑える役割のものがある。
【0019】
(供給部)
供給部5は、インクを貯蔵した貯蔵手段を有したインクタンク50、インクタンク50をセットするタンクホルダー51、キャリッジ部6にインクタンク50のインクを供給するインク供給チューブ52を備えている。更に供給部5は、インク供給チューブ52の垂れ下がりを規制するインク供給チューブ支持部材53、インクタンク内に空気を送り込んで貯蔵手段を加圧してインク供給を行うインク供給駆動部を備えている。インク供給駆動部は、外部から空気を取り込む空気供給口541、所定の空気圧以上になった際に開放される安全弁54を備えている。更にインク供給駆動部は、空気圧を制御する圧力センサ543、電子弁等による空気圧開放弁544、モータ等による駆動源545、インクタンク内に空気を送り込む空気供給チューブ546を備えている。そしてこれらの空気圧開放弁544やモータ等による駆動源545は、通常、開閉可能な記録ヘッド交換カバー55にて覆われている。
【0020】
(キャリッジ部)
キャリッジ部6は、記録ヘッド7を搭載可能なキャリッジ60、インク供給チューブ52から記録ヘッド7までのインク流路を形成しているジョイントベース61、記録ヘッド7を交換する際に使用するジョイントベースに連動したセットレバー62を備えている。キャリッジ60は、記録媒体の搬送方向に対して直角方向に往復走査させるためのガイドシャフト63およびキャリッジ60の後端を保持して記録ヘッド7と記録媒体との隙間を維持するガイドレール111によって支持されている。なお、このガイドシャフト63はシャーシ11に取り付けられている。ガイドレール111はシャーシ11に一体に形成されている。また、キャリッジ60はシャーシ11に取り付けられたキャリッジモータ65によりタイミングベルト641を介して駆動される。このタイミングベルト641は、アイドルプーリ642によって張設、支持されている。タイミングベルト641とキャリッジ60とは、ゴム等からなるダンパーを介して結合されており、キャリッジモータ65等の振動を減衰することで、画像ムラ等の発生を低減している。そして、キャリッジ60の位置を検出するために1インチあたり150〜300の等間隔のマーキングを形成したコードストリップ66がタイミングベルト641と平行に設けられている。さらに、コードストリップ66を読み取るエンコーダセンサがキャリッジ60に設けられている。
【0021】
このような構成において、記録媒体に画像形成をする時は、画像形成する行位置(記録媒体の搬送方向の位置)に搬送ローラ31とピンチローラ32とのローラ対が記録媒体を搬送する。また、キャリッジモータ65によりキャリッジ60を画像形成する列位置(記録媒体の搬送方向と垂直な位置)に移動させて、記録ヘッド7を記録媒体の画像形成位置に対向させる。そして、電気基板からの信号により記録ヘッド7が記録媒体に向けてインクを吐出して画像が形成される。以上の構成によって、キャリッジ部6で画像形成された記録媒体は、排紙ローラ40と拍車42とのニップ部に挟まれ、搬送されて排紙トレイに排出される。
【0022】
(特徴的構成)
(駆動制御)
次に本実施形態における記録装置の記録ヘッドを交換する際の駆動制御について説明する。この駆動制御は制御部9の指令に基づいてなされる。なお、以下、記録ヘッド7の交換をプリンタドライバで行う実施形態について説明するが、同様の処理を記録装置で行ってもよい。
【0023】
図3は、記録ヘッド7の交換におけるシーケンスを示したフローチャートである。また、図4は、記録ヘッド交換をユーザが行う際のユーザインターフェースの表示例を示す説明図である。以下、図3のフローチャートに沿って記録ヘッド交換のシーケンスを説明する。まず、図4に示す記録ヘッド交換を行うボタンB401を選択すると、記録ヘッド7の交換シーケンスが開始される。ステップS301にて駆動源545の停止を行い、インクタンク内への空気供給を停止する。そして、ステップS302に移行して、空気圧開放弁544の開口によって空気供給部チューブ内の大気開放を行う。これによって、空気供給チューブ546とインクタンク内への加圧が解除され、インクタンクから記録ヘッド部へのインクの供給が停止する。本実施形態においては電子弁を用いて大気開放を行っているが、駆動源545で駆動するカムによってチューブを開閉する仕様であってもよい。次にステップS303でキャリッジ60がクリーニング部に移動を行い、インク供給チューブ52および記録ヘッド7に含まれているインクをクリーニング部によって吸引動作を開始する。この吸引動作により、ステップS304でインク供給チューブ52および記録ヘッド内のインクの残圧を解消する。吸引動作後ステップS305で、キャリッジ60はヘッド交換ポジションに移動し、記録ヘッド交換カバー55が開蓋され終了する。この一連の動作が終了後、ユーザは記録ヘッド7を交換することができる。開くことで記録装置1内部へアクセスすることが可能な不図示のアクセスカバーには、開閉を検知するセンサを設けて、記録ヘッド交換シーケンスはアクセスカバーが閉じられている時に実施が可能になるように構成されている。そして、記録ヘッド交換シーケンスが終了後、アクセスカバーが開放されセンサがアクセスカバーの開放を検知すると、記録ヘッド交換カバー55の開蓋動作が行われる。ユーザが不用意にキャリッジ60への接触を避けるためにも、記録ヘッド交換シーケンスが終了した後に、アクセスカバーを開蓋するようにユーザへ指令を出すことが好ましい。
【0024】
図5(a)、(b)は、キャリッジ部のセットレバーの閉蓋・開蓋状態を示す斜視図である。以下、記録ヘッド7の交換手順について説明する。レバーロック622は、バネ623により付勢されており、セットレバー621(記録ヘッドを覆う部材)に可動可能に取り付けており、矢印A方向に押すことでセットレバー621を開くことが可能になる。ジョイントベース61には、セットレバー621のボス621aをガイドするガイド溝61aとガイドボス60aをガイドするガイド溝61bが備えられている。ここで、レバーロック622を矢印Aの方向に押しながら、矢印Eに回動させる。すると、セットレバー621に取り付けられたボス621aがジョイントベースのガイド溝61aを矢印Bの方向に押し出し、ジョイントベース61は矢印Bの方向に移動を行う。このような、セットレバー621の開蓋およびジョイントベース61の平行移動によって、記録ヘッド7の取り出しが可能となる。次に、記録ヘッド7をキャリッジ60に装着した後に、セットレバー621を矢印Fの方向に回動する。すると、セットレバー621のボス621aの回動に伴い、ジョイントベース61は矢印Cの方向に移動して、記録ヘッド7がキャリッジ60に当接されて、記録ヘッド7の交換が完了する。ここで、レバーロック622にラッチ622aを、ジョイントベース61にラッチ溝61cを設けてクリック感を出している。これによってユーザは記録ヘッド7をキャリッジ60に確実に着荷することが可能となる。
【0025】
図6は、供給部の駆動部の構成を示した斜視図であり、図7は、記録ヘッド交換カバー駆動ユニットの構成を示す斜視図である。また図8は、記録ヘッド交換カバー55と記録ヘッド交換アーム573の構成を示す下面図であり、図9は、記録ヘッド交換カバー駆動ユニットと供給部筐体の配置を示す上面図である。以下、供給部の駆動源による記録ヘッド交換カバーの開閉の駆動動作について、図6〜図9を用いて説明する。
【0026】
インクタンク内に空気を供給する駆動源545の片方の軸には駆動源プーリ545aを圧入している。駆動ベルト545bを通じて駆動源545から記録ヘッド交換カバーシャフト56に駆動の伝達を行う。記録ヘッド交換カバーシャフト56から記録ヘッド交換カバー駆動ユニットへの駆動伝達はベベルギアによって行う。記録ヘッド交換カバー駆動ユニットは記録ヘッド交換駆動ギア571、摩擦パッド572、記録ヘッド交換アーム573で構成されている。スポンジで構成された摩擦パッド572は記録ヘッド交換駆動ギア571に固定されている。摩擦パッド572はゴムを用いてもよい。記録ヘッド交換アーム573は摩擦パッド572の摩擦力を利用して、回転可能となるように記録ヘッド交換駆動ギア571に取り付けている。記録ヘッド交換アーム573のボス573aが回転して記録ヘッド交換カバー55のガイド溝55a(図8参照)を摺動することによって、記録ヘッド交換カバー55の開閉動作を行う。ここで、駆動源545が第1の回転方向に回転すると、記録ヘッド交換カバー55の閉蓋駆動を行い、且つインクタンク50に空気を供給する(インクタンク50内を加圧する)駆動制御が連動する(第1モード)。また、駆動源545が第1の回転方向の反対の第2の回転方向に回転すると、記録ヘッド交換カバー55の開蓋駆動を行い、且つ空気圧開放弁544の開口によって空気供給の駆動解除が連動する(第2モード)。この第1モードにおいては、インクタンク50に空気を供給することでインクタンク50から記録ヘッド7へとインクが供給される。後述するが、記録ヘッド7へインクが供給されるタイミングは、記録ヘッド交換カバー55が完全に閉じられた後に供給されるように構成されている。
【0027】
なお、第1の回転方向は、駆動源545の正回転でも逆回転のどちらを用いてもよい。また、記録ヘッド交換アーム573のリブ573bが供給部筐体58のリブ58aもしくはリブ58bと当接すると、記録ヘッド交換アーム573の動作が規制され、摩擦パッド572および記録ヘッド交換駆動ギア571と空回りする。これによって、駆動源545の回転動作において、記録ヘッド交換アーム573は所定の角度の範囲しか回動動作を行わない。そのため、記録ヘッド交換カバー55は開蓋・閉蓋状態を保つことができる。図6に示す駆動伝達は一例であり、駆動ベルト545bの代わりにギアで駆動を伝達してもよい。また、摩擦パッド572の摩擦力を利用して記録ヘッド交換カバー55を駆動することで、ユーザが記録ヘッド交換カバー55の駆動中に接触した際でも記録ヘッド交換アーム573が摩擦パッド572上で空回りする。そのため、記録ヘッド交換カバー55で物を挟み込むことを防止できるフェールセーフを図った構成となっている。
【0028】
次に、記録ヘッド交換カバー55と記録ヘッド交換アーム573の位置関係について説明する。図10は、記録ヘッド交換カバーが閉蓋している時の記録ヘッド交換アーム573の状態図を示している。駆動源545がインクタンク内に空気供給を行っている時は、これに連動して記録ヘッド交換カバー55が閉蓋される方向に記録ヘッド交換アーム573は回動する。そのため、記録装置1が記録中でインクが供給されている状態では、記録ヘッド交換カバー55が常に閉蓋しており開くことはできない。記録ヘッド交換カバー55を開蓋する時には、記録ヘッド交換アーム573は位置iから移動を初めて、位iiを越えなければならない。そのため、記録装置1が稼動停止状態(電源オフ)においても、ユーザが記録ヘッド交換カバー55を開蓋させようとした際は、記録ヘッド交換アーム573は記録ヘッド交換カバー55を閉蓋しようとする力が作用する。そのため、記録装置1の稼動停止中には記録ヘッド交換カバー55は閉じており開蓋させることが出来ない。これによって、記録装置の動作・停止中にも関わらず、ユーザが誤って記録ヘッド交換カバー55を開蓋させて記録ヘッド7を交換することを防止することができる。
【0029】
次に、記録ヘッド交換の一連の動作について図11、図12を用いて説明する。図11は、記録装置1の動作中のキャリッジ部と記録ヘッド交換カバー55の状態を示す上面図であり、図12(a)、(b)、(c)は、記録ヘッドの交換の一連動作を示す斜視図である。ミドルフレーム91の一部に切り欠きを設けているため、記録媒体が排紙されずにエラーに陥った時でもアクセスカバーを開蓋すれば、ユーザが記録媒体を取り出す空間は確保されている。これによって、記録媒体を取り除き、エラーから復帰することができる。この時にレバーロック622と記録ヘッド交換カバー55はオーバーラップしているため、図5(a)で示したようにユーザはレバーロック622を用いてセットレバー621を開蓋することが出来ない。これによって、記録装置の動作・停止中においては、記録ヘッド7をキャリッジ60から取り外すことが出来ないため、ユーザが不用意に記録ヘッド7を交換することを防止することができる。
【0030】
図11では、レバーロック622の一部と記録ヘッド交換カバー55とがオーバーラップする構成であるが、セットレバー621の少なくとも一部と記録ヘッド交換カバー55とがオーバーラップする構成であってもよい。図3で示した記録ヘッド交換シーケンスが終了後、記録ヘッド交換カバー55は開蓋しているので、レバーロック622と記録ヘッド交換カバー55のオーバーラップは解消されている(図12(a))。これによって、ユーザはレバーロック622を用いてセットレバー621を回動させることが出来る(図12(b))。そしてセットレバー621を回動させた後に、記録ヘッド7を取り外すことが可能となる(図12(c))。これによって、ユーザは手順を間違えることなく、容易に記録ヘッド7の交換をすることが可能になる。また、記録装置1の動作・停止中には、記録ヘッド交換カバー55は常に閉蓋された状態であるために、誤って記録ヘッド7を交換することがない。
【0031】
記録ヘッド7を交換してアクセスカバーを閉蓋し、アクセスカバーの開閉を検知するセンサがアクセスカバーの閉蓋を検知した後に、記録ヘッド交換カバー55の閉蓋動作およびインク供給駆動を行う。ここで記録ヘッド交換カバー55の閉蓋動作後に、空気圧開放弁544(図2参照)を閉塞させる駆動制御を行う方が好ましい。記録ヘッド交換カバー55が閉じる前は、空気圧開放弁544を開口しておくことによりインクタンク内への空気供給は行われない。これによって、記録ヘッド交換カバー55の閉蓋動作中に記録ヘッド7を不用意に取り外しても、ジョイントベース61(図5(a)参照)からインクの飛散を防止することができる。
【0032】
このように、1つの駆動源の所定方向の回転動作により、インク供給、記録ヘッド交換カバーの開閉を行う。これによって、記録装置の動作中にユーザが誤った手順でヘッド交換を行うことを未然に防止し、ユーザが不用意に記録ヘッドを交換しようとしてもインクの飛散を防止することができるフェールセーフを実現することができた。
【0033】
(その他の実施形態)
次に、本記録装置にインクタンク内のインクを攪拌する攪拌手段を設けた場合の実施形態について説明する。図13は、駆動源の回転方向における供給動作、記録ヘッド交換カバーと攪拌手段の動作状態を示した図である。記録ヘッド交換駆動シャフト56の一端に片方向の回転のみに駆動を伝達する駆動手段を通じてインクタンク50内のインクを攪拌する駆動手段を設ける。駆動源545が第1の回転方向に駆動している際は、インクタンク50内に空気供給の駆動制御を行うことでインクタンク50内を加圧し、かつ、記録ヘッド交換カバー55の閉蓋駆動を行う。この時に、攪拌手段は攪拌駆動を行わない。また、駆動源545が第2の回転方向に駆動している際は、空気圧開放弁544の開口によって、空気供給の駆動を止めてインクタンク50内の加圧解除を行い、かつ、記録ヘッド交換カバー55の開蓋駆動を行う。この時には、攪拌手段は攪拌駆動を行う。攪拌動作中は記録ヘッド交換カバー55が開蓋する駆動を行うため、ユーザが誤って記録ヘッド7を交換するおそれがある。そのため、キャリッジ60は、ユーザがアクセスできない領域に退避を行う。これによって、攪拌動作中に記録ヘッド交換カバー55が開蓋していても、ユーザが誤って記録ヘッド7を交換することができない。また、退避ポジションまで移動を行い、キャリッジロック81(ロック部材)にキャリッジ60が当接することによってキャリッジ60が移動できないようにロックをする駆動制御を行ってもよい。これも同様の効果が生じる。
【0034】
1つの駆動源545の回転方向による駆動制御を行うため、例えば駆動源545であるモータの動作不良等が発生しても、ユーザは記録ヘッド7を交換することができなくなる。このため、インクの漏洩を防止することができる。さらに、インクタンク50内のインクを攪拌する駆動手段を設けることで、インクの沈降から生じるインク濃度ムラによる画質低下を抑えることが出来る。
【0035】
このように、1つの駆動源の所定方向の回転動作により、インク供給、記録ヘッド交換カバーの開閉、インクの攪拌を行う。これによって、記録装置の動作中にユーザが誤った手順で記録ヘッド交換を行うことを未然に防止し、ユーザが不用意に記録ヘッドを交換しようとしてもインクの飛散を防止することができるフェールセーフを実現することができた。
【符号の説明】
【0036】
1 記録装置
50 インクタンク
55 ヘッド交換カバー
60 キャリッジ
545 駆動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載可能なキャリッジと、前記インクを貯蔵しておく貯蔵手段と、駆動源の動作によって前記貯蔵手段に空気を送り込んで加圧することで前記貯蔵手段から前記記録ヘッドに前記インクを供給する供給手段と、閉じた際に前記記録ヘッドを覆う部材の少なくとも一部を覆う開閉可能なカバーと、を備え、
前記カバーの開閉は前記駆動源の動作によって行われ、
前記駆動源の動作によって前記貯蔵手段への加圧と共に前記カバーを閉じる動作を行い、
前記駆動源の動作によって前記貯蔵手段への加圧の解除と共に前記カバーを開く動作を行い、
前記供給手段が前記貯蔵手段に空気を送り込んで加圧している際には、前記カバーは開くことができないことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記駆動源の第1の回転方向への回転動作によって、前記供給手段が前記貯蔵手段に空気を送り込んで加圧する動作および前記カバーを閉じる動作を行う第1モードと、前記駆動源の第2の回転方向への回転動作によって、前記供給手段が前記貯蔵手段への加圧を解除する動作および前記カバーを開く動作を行う第2モードと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
稼動停止状態の際には前記カバーは閉じられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記駆動源は、摩擦力を利用して前記カバーを駆動する摩擦パッドを備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記カバーが閉じられた後に、前記貯蔵手段に貯蔵された前記インクが前記記録ヘッドへと供給されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記駆動源の駆動により前記貯蔵手段に貯蔵されている前記インクを攪拌する攪拌手段を備え、該攪拌手段が攪拌する際には、前記供給手段による前記貯蔵手段への加圧は解除されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記キャリッジを所定方向に移動させる移動手段を備え、前記攪拌手段によって攪拌する際には、前記移動手段によって前記キャリッジをユーザがアクセスできない位置に退避させることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記キャリッジに当接することで該キャリッジの動作を制限するロック部材を備え、前記攪拌手段によって攪拌する際には、前記ロック手段によって前記キャリッジの動作を制限することを特徴とする請求項6に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−56840(P2011−56840A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210364(P2009−210364)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】