説明

記録装置

【課題】インク吐出領域を移動可能に設けられているリブを備える記録装置において、移動可能なリブによるインクミストの発生を低減すること。
【解決手段】搬送された被記録材Pの被記録面にインクを吐出して記録を実行する記録ヘッド27と、前記記録ヘッド27と対向する側のインク吐出領域36と、搬送された被記録材Pの前記被記録面の反対側を支持するリブと、を備え、前記リブは前記インク吐出領域35の上方を移動するように設けられている可動リブ3であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録実行領域に搬送された被記録材の被記録面にインクを吐出して記録を実行する記録ヘッドと、前記記録実行領域に搬送された被記録材の前記被記録面と反対側の被支持面を支持する複数のリブとを備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から被記録材(以下、「用紙」ともいう)の被記録面に余白を形成することなく記録を実行する、いわゆる「縁無し記録」に対応したインクジェットプリンターが開発されている。前記インクジェットプリンターにおいて縁無し記録を実行する場合には、記録実行領域に搬送された被記録材の前記被記録面と反対側の被支持面を複数のリブで支持した状態で、被記録材の端縁の外側にもインクが吐出されるようになっている。
【0003】
また、記録ヘッドからインクが吐出されるインク吐出領域には、縁無し記録の際、リブよりも低い位置において、被記録材に着弾しなかったインクを受けるための凹部等のインク受け部が設けられている。そしてこのインク受け部には、インクミストの発生を低減させるため、インク吸収材を配置したり、表面に細かい凹凸部を設けたりしている。
【0004】
そして、このような縁無し記録に対応したインクジェットプリンターを記している特許文献1において、上記のような用紙を支持するリブが、インク吐出領域内を用紙の搬送方向に沿ってスライド可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−78377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、用紙を支持するリブがインク吐出領域内を移動可能に構成されていると、リブがスライドするためのスリットをインク吐出領域に設ける必要がある。
【0007】
しかしながら、インク吐出領域にスリットを設けてしまうと、前述のようなインクミストの発生低減のために設けられているインク吸収材や凹凸部の設置面積がスリットの面積分減ってしまうことになる。特に縁無し記録の際は、リブ自体は被記録材の下に位置しているが、スリットの一部は被記録材に覆われることなく露出している。これではインクミストの発生を助長することになり、記録品質を低下する要因になる。
【0008】
本発明の目的は、インク吐出領域を移動可能に設けられているリブを備える記録装置において、移動可能なリブによるインクミストの発生を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明に係る記録装置の第1の態様は、搬送された被記録材の被記録面にインクを吐出して記録を実行する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと対向する側のインク吐出領域と、搬送された被記録材の前記被記録面の反対側を支持するリブと、を備え、前記リブは前記インク吐出領域の上方を移動するように設けられている可動リブであることを特徴とするものである。
【0010】
本態様によれば、可動リブを設けてもインク吐出領域におけるインク吸収材等の面積を減少させることがない。従って、記録ヘッドから吐出されたインクであって被記録材に着弾しないインク、即ち記録の実行に使用されず打ち捨てられたインクを当該インク吐出領域において効果的に受けることができ、インクミストの発生を少なくすることができる。
【0011】
本発明に係る記録装置の第2の態様は、前記インク吐出領域には、インク吸収材が配置されており、前記可動リブは前記インク吸収材の上方を移動することを特徴とする。
本態様によれば、インク吐出領域の全体にインク吸収材の面積を減少させることなく配置できるので、よりインクミストの発生を少なくすることができる。
【0012】
本発明に係る記録装置の第3の態様は、前記インク吐出領域には、固定リブが設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、可動リブだけでなく、固定リブによっても被記録材を支持することができるので、被記録材の支持が安定し、記録品質をより高めることができる。
【0013】
本発明に係る記録装置の第4の態様は、前記可動リブは、ラックピニオン機構によって移動することを特徴とする。
本態様よれば、可動リブを簡単な構成により形成することができる。
【0014】
本発明に係る記録装置の第5の態様は、前記可動リブは、被記録材の縁無し記録の際に、移動することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る記録装置の内部構造の概略を示す側断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る記録装置を示す可動リブが移動している状態の斜視図。
【図3】本発明の実施例1に係る記録装置の可動リブの作動態様を示す移動前の側断面図。
【図4】本発明の実施例1に係る記録装置の可動リブの作動態様を示す移動中の側断面図。
【図5】本発明の実施例1に係る記録装置の可動リブの作動態様を示す移動後の側断面図。
【図6】本発明の実施例2に係る記録装置を示す可動リブが移動している状態の斜視図。
【図7】本発明の実施例3に係る記録装置を示す可動リブが移動している状態の斜視図。
【図8】本発明の実施例4に係る記録装置を示す可動リブが移動している状態の斜視図。
【図9】本発明の実施例5に係る記録装置を示す可動リブが移動している状態の平面図。
【図10】本発明の実施例6に係る記録装置を示す可動リブが移動している状態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1から図5に示す実施例1と、図6に示す実施例2と、図7に示す実施例3と、図8に示す実施例4と、図9に示す実施例5と、図10に示す実施例6とを例にとって、本発明の記録装置1の構成と、可動リブ3の作動態様について具体的に説明する。
尚、以下の説明では、最初に図1に基づいて本発明の記録装置1の基本的構成について説明し、次いで本発明の特徴的構成について前述した実施例1から実施例6の六つの実施例を例にとって順番に説明して行く。
【0017】
図示の記録装置1は、被記録材である用紙Pの被記録面に余白を形成することなく記録を実行する、いわゆる「縁無し記録」に対応したインクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)である。
本実施例のインクジェットプリンター1は、記録実行領域23に搬送された被記録材である用紙Pの被記録面にインクを吐出して記録を実行する記録ヘッド27と、前記記録実行領域23に搬送された用紙Pの前記被記録面と反対側の被支持面を支持する複数のリブ2と、前記リブ2の支持面9より低い位置にインク吸収面33が位置するようにインクの吐出領域35に設けられ、前記記録ヘッド27から吐出されたインクであって被記録材に着弾しないインクを受けるインク吸収材37とを備えている。
【0018】
更に図1に即して構成を説明すると、本実施例のインクジェットプリンター1は、給送用セット部13に積畳状態でセットされた用紙Pを最上位のものから順番に一枚ずつ搬送経路16に向けて給送する給送部17と、前記搬送経路16に給送された用紙Pに搬送力を付与して記録実行領域23に導き、記録実行後の用紙Pを外部に排出させる搬送部20と、記録実行領域23に導かれた用紙Pの被記録面に各色のインクを吐出して記録を実行する記録ヘッド27を備えた記録実行部25と、記録実行領域23に導かれた用紙Pの前記被記録面と反対側の被支持面を支持する複数のリブ2を備えた支持案内部31と、前記リブ2の支持面9より低い位置にインク吸収面33が位置するようにインク吐出領域35を覆うインク吸収材37と、を具備することによって基本的に構成されている。
なお、インク吐出領域35において、インク吸収材37は必須なものではなく、インクミストの発生を低減するため、インク吸収材37の他に、インク吐出領域の表面に細かな凹凸を形成する構成でも構わない。
【0019】
給送用セット部13は、一例として用紙載置部15を備えることによって構成されており、給送部17は、ホッパー18との挟圧送り作用によって用紙Pを繰り出す一例として側面視D字形状の給送用ローラー19を備えることによって構成されている。
搬送部20は、一対のニップローラーによって構成され、記録実行領域23の上流位置に配置される搬送用ローラー21と、同じく一対のニップローラーによって構成され、記録実行領域23の下流位置に配置される排出用ローラー22と、を備えることによって構成されている。
【0020】
記録実行部25は、前記記録ヘッド27と、該記録ヘッド27を搭載して用紙Pの搬送方向Aと交差する用紙Pの幅方向Bを走査方向として往復移動するキャリッジ29とを備えることによって構成されている。
【0021】
支持案内部31は、上面に前記インク吸収材37を装着するための凹部39が形成された矩形枠状の部材で(図2)、図示のインクジェットプリンター1にあっては、前記凹部39内と該凹部39の上流位置と下流位置に前記リブ2として機能する固定リブ5A、5B、5Cが用紙Pの幅方向Bに適宜の間隔を空けて複数設けられている。
また、前記凹部39内に設けられている固定リブ5Aの間には、後述する本発明の特徴的構成部材である前記リブ2として機能する可動リブ3が複数設けられている。
【0022】
インク吸収材37は、前記支持案内部31の凹部39に対して装着される一例として矩形平板状の部材である。インク吸収材37としては、インク吸収性を有する多孔質のスポンジ状の部材が一例として使用されている。そして、該インク吸収材37を前記凹部39に装着した時、前述した可動リブ3と固定リブ5Aの支持面9がインク吸収材37のインク吸収面33よりも高くなるように構成されている。このように構成するために、当該インク吸収材37には前記可動リブ3と固定リブ5Aを受け入れるために上下に貫通した窓部38が複数形成されている。
尚、前記可動リブ3を受け入れる窓部38は、可動リブ3の移動に伴って開口するため、可動リブ3の背面に図2中、仮想線で示すようなカバーフィルム40を取り付けておき、前記窓部38の開口を塞ぐようにすることも可能である。
【0023】
[実施例1](図1〜図5参照)
実施例1に係るインクジェットプリンター1Aでは、可動リブ3Aが前記インク吸収材37の上方を移動するように設けられている。具体的には、図3から図5に示す作動機構41が支持案内部31内に組み込まれており、用紙Pの搬送と関連付けて前記作動機構41を動作させることによって、可動リブ3Aを図示のように用紙Pの搬送方向Aに移動させながら用紙Pの搬送を行っている。
前記作動機構41は、支持案内部31の一例として底部に設けられているピニオン43と、該ピニオン43と噛み合うラック45とを備えるラックピニオン機構によって構成されている。
【0024】
そして、前記ピニオン43を回転させるための動力は、搬送用ローラー21に動力を伝達しているギア輪列等から得ても良いし別個独立のモーター等から取得することが可能である。
また、前記ラック45には上方に向って延びるアーム47が一体に設けられており、該アーム47の上端部に一例として下流側に張り出すように前記可動リブ3Aが取り付けられている。
尚、前記可動リブ3Aは、図3に示すように移動する前の状態ではバネ48の付勢力によって前記固定リブ5Aの設置範囲49内に位置するように一例として設けられている。
【0025】
また、本実施例では、前記可動リブ3Aが移動する前の状態で、前記固定リブ5Aの下流側端面51の位置と、可動リブ3Aの下流側端面53の位置とがほぼ一致するように設けられている。そして、前記可動リブ3Aの移動ストロークSは、図5に示すように用紙Pの搬送速度とほぼ同速度で前記可動リブ3を搬送方向Aに移動させたとき、用紙Pの先端部11がカールにより下方のインク吸収材37に接触することなく、前記凹部39の下流に位置している前記固定リブ5Cの支持面9に到達することができるストロークに設定されている。
尚、本実施例の場合には、可動リブ3Aの支持面9の高さを固定リブ5A、5B、5Cのそれぞれの支持面9の高さと同じに設定したが、用紙Pの円滑な搬送が可能で、用紙Pの先端部11のインク吸収材37に対する接触が生じない範囲でこれらの支持面9の間に多少の段差があってもよい。
【0026】
次に、図3から図5に基づいて、前記可動リブ3の作動態様を(1)移動前と、(2)移動中と、(3)移動後に分けて説明する。
【0027】
(1)移動前(図3参照)
図3に示すように、可動リブ3Aが移動する前の状態では、該可動リブ3は、バネ48の付勢力によって前記固定リブ5Aの設置範囲49内に位置しており、固定リブ5Aの下流側端面51と可動リブ3Aの下流側端面53の位置はほぼ一致している。
搬送用ローラー21によって搬送力が付与された用紙Pは、その先端部11側が固定リブ5Bを通過し、更に固定リブ5Aに至り、更に該固定リブ5Aの下流側端面51を僅かに過ぎたときに可動リブ3Aが移動を開始するように構成されている。
【0028】
(2)移動中(図4参照)
用紙Pの先端部11が固定リブ5Aの下流側端面51及び移動開始前の位置に在る可動リブ3Aの下流側端面53の位置を僅かに過ぎると、先端に対する縁なし記録が開始する。このとき可動リブ3A及び固定リブ5Aは、いずれも用紙Pの下側に位置するので、記録ヘッド27から吐出されるインクは用紙P上に、または用紙先端から外れてインク吸収材37のインク吸収面33上に着弾する。よって可動リブ3A及び固定リブ5Aはインクが付着して汚れることはない。そして、間欠搬送される用紙Pの搬送速度とほぼ同速度で可動リブ3がバネ48の付勢力に抗して搬送方向Aへの移動するように構成されている。
この移動中は、当該用紙Pの先端部11の被支持面は、可動リブ3A及び固定リブ5Aの支持面9によって支持されているため、下方へのカール又は変形は抑制された状態である。
【0029】
また可動リブ3Aがインク吸収材37の上方を移動するように設けられているため、可動リブ3Aのスライドのためのスリットをインク吸収材37に形成する必要がない。したがって、可動リブ3Aの移動のためにインク吸収材37の機能を犠牲にする必要がないため、インクミストの発生を低減すること可能となる。
【0030】
可動リブ3Aが移動を開始するタイミングは、本実施例では、用紙Pの先端位置を検出する位置センサーから用紙Pの搬送量をカウントすることで取得するように構成されている。
すなわち、先端部11のカールや変形の有無と無関係に可動リブが所定のタイミングで移動を開始し、更に前記先端部11を支えて移動するように構成されている。
尚、用紙Pの先端部11のカールによる下降量を別途のセンサーで検出し、所定の下降量になった時に可動リブ3の移動を開始させるようにすることも可能である。
【0031】
可動リブ3Aの移動は、前述した作動機構41によって行われており、ピニオン43が図4中において反時計方向に回転することによって、ラック45と、該ラック45と一体のアーム47に取り付けられている可動リブ3Aとを、図4中において左方に移動させることによって実行されるようになっている。
この時、用紙Pの先端部11は、固定リブ5Aから離れて該固定リブ5Aによる前記カール等に対する抑制が及ばない下流位置に移動するが、当該用紙Pと共に移動する可動リブ3Aによって下方へのカール等が抑制されるため、当該先端部11が下方のインク吸収材37のインク吸収面33に接触することなく搬送される。
【0032】
(3)移動後(図5参照)
ピニオン43が所定回数回転して、回転を停止すると、可動リブ3Aは、移動ストロークSだけ搬送方向Aに移動して停止する。
この後、用紙Pの先端部11は、停止した可動リブ3Aから離れて該可動リブによる前記抑制が及ばない下流位置に移動するが、当該位置には、前記下流側の固定リブ5Cが位置しており、下方のインク吸収材37のインク吸収面33に接触することなく搬送され、下流の排出用ローラー22に受け渡されるようになっている。
【0033】
当該用紙Pの先端部11が前記排出用ローラー22にニップされた後、ピニオン43は図4と反対の時計方向に回転し、これによりバネ48の付勢力も作用してラック45と可動リブ3とを図3に示す当初の位置に戻す。そして、この状態で用紙Pに対する記録が継続される。
【0034】
以下、図3乃至図5に基づいて説明した前述した動作を同様に繰り返すことによって、後続の用紙Pに対しても先端部11の下方へのカール等を抑制した状態で、用紙Pの先端部11をインク吸収材37に接触させることなく、用紙Pの被記録面全体の記録が実行される。
また可動リブ3Aのスライドに伴うインク吸収材37の面積を削減する必要がないので、縁無し記録の際にもインクミストの発生を低減することが可能となる。
【0035】
[実施例2](図6参照)
実施例2に係るインクジェットプリンター1Bは、前記実施例1に係るインクジェットプリンター1Aと基本的に同様の構成を有しており、前記インク吐出領域35の下流側に誘いガイド部7を設け、前記可動リブ3Bの移動ストロークSを前記誘いガイド部7の長さ分、短く設定した点で前記実施例1と相違している。
従って、ここでは前記実施例1と相違する誘いガイド部7の構成とその作動態様を中心にして説明する。
【0036】
即ち、実施例2に係るインクジェットプリンター1Bにあっては、前記インク吐出領域35内の下流側の領域の一部に、前記リブ2の支持面9より低く前記インク吸収面33よりも高いガイド面8を有する用紙Pに対する誘いガイド部7が前記リブ2側に向って延設されている。具体的には、前記インク吐出領域35の下流側に位置する前記支持案内部31に対して、前記インク吐出領域35側に張り出す誘いガイド部7を設けた構造になっている。
【0037】
該誘いガイド部7の前記ガイド面8は、インク吐出領域35側に下り傾斜の案内傾斜面となっており、該誘いガイド部7は平面視矩形の板状の部材によって構成されている。また、誘いガイド部7の上面も用紙Pの先端部11の下方へのカールを規制する支持面9になっている。
本実施例の場合には、可動リブ3Bの役割は、前記固定リブ5Aと誘いガイド部7間の用紙Pの受け渡しをインク吸収材37に用紙Pの先端部11を接触させることなく円滑に実行することである。
【0038】
そして、このようにして構成される本実施例によっても、前記実施例1と同様の作用、効果を奏することができ、更に可動リブ3Bの移動ストロークSを誘いガイド部7の長さ分、短く設定できるので、可動リブ3Bの作動機構41をコンパクトに構成できるという作用、効果も発揮される。
【0039】
[実施例3](図7参照)
実施例3に係るインクジェットプリンター1Cは、可動リブ3Cが凹部39ではなく、該凹部39の上流側の支持案内部31に対して設けられている点で前記実施例1と相違しており、その他の構成については前記実施例1と同様の構成を有している。
従って、ここでは前記実施例1と相違する可動リブ3Cの構成とその作動態様を中心にして説明する。
【0040】
実施例3に係るインクジェットプリンター1Cにあっては、前記凹部39の上流側の支持案内部31に対して可動リブ3Cを保持する図示しない保持構造を設け、該保持構造によって前記インク吸収材37の上方を通る長尺な可動リブ3Cを片持ち梁状に保持しながら該可動リブ3Cを搬送方向Aの下流に向けて移動させる構造になっている。
【0041】
そして、このようにして構成される本実施例によっても、前記実施例1と同様の作用、効果を奏することができ、更にインク吐出領域35となる凹部39に可動リブ3を設けない分、インク吸収材37のインク吸収面33を広く使用することが可能になる。
尚、本実施例の場合には、可動リブ3Cの移動ストロークSが長くなって作動機構41が大型化するが、設置範囲が制約される凹部39と違って、設置範囲に余裕があるから搬送方向Aに大型化した作動機構41であっても設置は可能である。
【0042】
[実施例4](図8参照)
実施例4に係るインクジェットプリンター1Dは、可動リブ3Dが凹部39ではなく、該凹部39の下流側の支持案内部31に対して設けられている点で前記実施例1と相違しており、その他の構成については前記実施例1と同様の構成を有している。
従って、ここでは前記実施例1と相違する可動リブ3Dの構成とその作動態様を中心にして説明する。
【0043】
実施例4に係るインクジェットプリンター1Dにあっては、前記凹部39の下流側の支持案内部31に対して可動リブ3Dを保持する図示しない保持構造を設け、該保持構造によって前記インク吸収材37の上方を通る可動リブ3Dを片持ち梁状に保持して該可動リブ3Dを搬送方向Aの下流に向けて移動させる構造が採用されている。該可動リブ3Dは、長尺なアーム部10の先端に支持面9を有する突部14が設けられ、アーム部10はインクが付着するので用紙Pと接触しないように突部14よりも低く形成されている。
本実施例は、前記実施例3を、凹部39を中心にして前後に反転させた構造にほぼ相当しており、実施例3が用紙Pの搬送に伴なって可動リブ3Cを徐々に下流に進行させたのに対して、本実施例では用紙Pの搬送に伴なって可動リブ3Dを徐々に下流に後退させるように作動させる。
【0044】
そして、このようにして構成される本実施例によっても、前記実施例1と同様の作用、効果を奏することができ、更にインク吐出領域35となる凹部39に可動リブ3を設けない分、前記実施例3と同様、インク吸収材37のインク吸収面33を広く使用することが可能になる。
尚、本実施例の場合にも、前記実施例3と同様、可動リブ3Dの移動ストロークSが多少長くなって作動機構41が幾分大型化するが、設置範囲が制約される凹部39と違って、設置範囲に余裕があるから搬送方向Aに幾分大型化した作動機構41であっても設置は可能である。
【0045】
[実施例5](図9参照)
実施例5に係るインクジェットプリンター1Fは、可動リブ3Fが、使用が想定される用紙Pの幅方向Bの両端部Eに対応する位置に存するように複数配置されている点で前記実施例1と相違しており、その他の構成については前記実施例1と同様の構成を有している。
従って、ここでは前記実施例1と相違する可動リブ3Fの配置態様とその作用、効果を中心にして説明する。
【0046】
具体的には、図9に示すように、使用が想定される用紙Pとして、A3縦サイズのものP1、A4縦サイズのものP2、葉書縦サイズのものP3の3種類を一例として設定し、これら3種類の用紙P1、P2、P3の両端部E1、E2、E3に対応する位置に可動リブ3Fを配置するという構成を採用している。
因みに、用紙Pの先端部11に生じている下向きのカール等を抑制する場合、用紙Pの両端部Eの被支持面を支持するのが効果的であるため、前記3種類の用紙P1、P2、P3のぞれぞれの両端部E1、E2、E3に対応する位置に可動リブ3Fを配置したものである。
【0047】
そして、このようにして構成される本実施例によっても、前記実施例1と同様の作用、効果を奏することができ、更に本実施例にあっては、可動リブ3Fの効果的な配置によって、少ない可動リブ3Fで用紙Pの先端部11における下向きのカール等の抑制を図ることが可能になり、部品点数を少なくすることで製品コストの削減にも寄与し得る。
【0048】
[実施例6](図10参照)
実施例6に係るインクジェットプリンター1Gは、幅方向Bに並設されている複数の可動リブ3Gのうち、記録を実行する用紙Pに対応した可動リブ3Gのみを移動させるようにした点で前記実施例1と相違しており、その他の構成については前記実施例1と同様の構成を有している。
従って、ここでは前記実施例1と相違する可動リブ3Gの作動態様を中心にして説明する。
【0049】
図10においては、A3縦サイズまでの用紙Pに対応したインクジェットプリンター1Gにおいて、A4縦サイズの用紙P2に記録を実行している場合の可動リブ3Gの作動態様が図示されている。
幅方向Bに並設されている可動リブ3Gは、使用が想定される用紙Pのサイズに対応して配置されている図示のようなクラッチ機構65A、65B等を介して動力伝達のON、OFFを切り替えることができるように構成されている。
【0050】
そして、図示の状態では、内方(ホームポジション側)のクラッチ機構65AがON、外方のクラッチ機構65BがOFFになっており、外方のクラッチ機構65Bの内側に位置する可動リブ3Gのみが移動し、外方のクラッチ機構65Bの外側に位置する可動リブ3Gは移動しないようになっている。
尚、図示は省略するが、A3縦サイズの用紙P1に記録を実行する場合には、2基のクラッチ機構65A、65Bを共にONにしてすべての可動リブ3Gが移動できるようにし、葉書縦サイズの用紙P3に記録を実行する場合には、2基のクラッチ機構65A、65Bを共にOFFにして内方のクラッチ機構65Aの内側に位置する可動リブ3Gのみを移動させるようにする。
【0051】
そして、このようにして構成される本実施例によっても、前記実施例1と同様の作用、効果を奏することができ、更に本実施例にあっては、可動リブ3Gの効果的な使用によって可動リブ3Gの無駄な移動を防止して可動リブ3Gの摩耗を防止し、記録実行時の消費電力の削減を図ることが可能になる。
尚、用紙Pのサイズ毎に動作させる可動リブ3Gに対する動力伝達の切り替えは、前述したように単一の駆動源から得た動力をクラッチ機構65等を利用して切り替える他、駆動源を複数設けて個別に必要な駆動源を動作させる構成であってもよい。
【0052】
[他の実施例]
本発明に係る記録装置1は以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えば、支持案内部31に対して設けられる複数のリブ2をすべて可動リブ3によって構成することも可能である。また、移動開始前の可動リブ3の位置を固定リブ5の設置範囲49から可動リブ3の一部がはみ出した位置に設定することも可能である。
【0053】
また、可動リブ3の移動方向は、用紙Pの搬送方向Aの下流側だけでなく上流側に設定することが可能であり、搬送方向Aの上流側と下流側の両方に可動リブ3を移動させて使用することも可能である。
また、可動リブ3は、用紙Pの先端部11の下向きのカール等の抑制に使用する場合に限らず、用紙Pの終端部12の下向き変形の抑制に使用したり、用紙Pの先端部11と終端部12の両方の下向きのカール等の抑制に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、2 リブ、3 可動リブ、
5 固定リブ、7 誘いガイド部、8 案内傾斜面、9 支持面、11 先端部、
12 終端部、13 給送用セット部、15 用紙載置部、16 搬送経路、
17 給送部、18 ホッパー、19 給送用ローラー、20 搬送部、
21 搬送用ローラー、22 排出用ローラー、23 記録実行領域、
25 記録実行部、27 記録ヘッド、29 キャリッジ、31 支持案内部、
33 インク吸収面、35 インク吐出領域、37 インク吸収材、38 窓部、
39 凹部、40 カバーフィルム、41 作動機構、43 ピニオン、
45 ラック、47 アーム、48 バネ、49 設置範囲、51 下流側端面、
53 下流側端面、65 クラッチ機構、 P 用紙(被記録材)、A 搬送方向、
B 幅方向、S 移動ストローク、E 両端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送された被記録材の被記録面にインクを吐出して記録を実行する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと対向する側のインク吐出領域と、
搬送された被記録材の前記被記録面の反対側を支持するリブと、を備え、
前記リブは前記インク吐出領域の上方を移動するように設けられている可動リブであることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記インク吐出領域には、インク吸収材が配置されており、
前記可動リブは前記インク吸収材の上方を移動することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記インク吐出領域には、固定リブが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
可動リブは、ラックピニオン機構によって移動することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載された記録装置。
【請求項5】
前記可動リブは、被記録材の縁無し記録の際に、移動することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載された記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−162027(P2012−162027A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25167(P2011−25167)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】