説明

記録装置

【課題】記録装置が認識している用紙の材種と実際に記録が実行される用紙の材種とが異なっている場合に、前記用紙のインクの浸潤に起因する紙詰まり等の搬送不良の虞を低減して記録を実行できるようにする。
【解決手段】給送用セット部3にセットされている用紙Pを記録実行領域23側に送り出す給送用ローラー9と、給送用ローラー9を駆動する駆動源10と、記録実行領域23に搬送された用紙にインクを吐出して記録を実行する記録ヘッド27と、給送用ローラー9によって用紙を送り出すときの駆動源10の電流値を計測する計測部12と、計測部12で計測された電流値に基いて、記録装置が認識している被記録材の材種35に対応する通常インク吐出量による記録の実行と、前記通常インク吐出量よりも少ないインク吐出量による記録の実行とを切り換えて実行可能な制御部33とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給送用セット部にセットされている被記録材を記録実行領域側に送り出す給送用ローラと、前記給送用ローラを駆動する駆動源と、前記記録実行領域に搬送された被記録材にインクを吐出して記録を実行する記録ヘッドとを備える記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の記録装置で使用できる被記録材(以下代表的に単に「用紙」ともいう)の種類(以下「材種」又は「紙種」ともいう)は、多岐に及んでおり、普通紙、インクジェット専用紙、写真用紙、葉書等、用紙の表面にコート層があるものとないもの、用紙の厚さ等の違いによって生ずる腰が強いものと弱いもの、紙以外の材質のものなど種々の材種が存在している。
【0003】
記録装置は、記録実行に際してユーザーから紙種の情報が入力され、その紙種情報に基いて定まるインク吐出量によって記録が実行されるようになっている。例えば紙種がインクジェット専用紙である場合は、そのインクジェット専用紙用に定められたインク吐出量で記録が行われ、普通紙である場合は普通紙用に定められたインク吐出量で記録が行われるようになっている。
ここで、普通紙用のインク吐出量は、インクジェット専用紙用のインク吐出量よりも少なく設定される。その理由は、普通紙にインクジェット専用紙並みのインク吐出量で記録を行うと、普通紙にとって過負荷の記録となって当該用紙に対するインクの浸潤が多くなってカールが発生する虞があるからである。
【0004】
下記の特許文献1、特許文献2には、記録装置で実際に記録が実行される被記録材の紙種を用紙の腰の強さの強弱によって判別し、当該判別結果に基づいて用紙の厚さに応じた画像形成条件を定めたり、用紙の排出方向の振り分けを行って、適切な記録を実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−335167号公報
【特許文献2】特開平5−186090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、記録装置にユーザーが入力した紙種が例えばインクジェット専用紙であるが、ユーザーが誤って普通紙を給送用セット部にセットしてしまい、記録実行領域に送られた実際の紙種は普通紙である場合、記録装置が認識している紙種はインクジェット専用紙であるので、インクジェット専用紙用のインク吐出量の多い写真並みの高画質の記録が普通紙に対して実行されることになる。
【0007】
そのため、普通紙にとって過負荷の記録となって当該用紙に対するインクの浸潤が多くなってカールしたり、コックリング量が大きくなり、記録ヘッドや用紙の搬送経路上の構造物に用紙が接触し、或いは突き当たって用紙の紙詰まり等を生じさせる問題がある。
【0008】
また、インクジェットプリンターの普及に伴って、自分で年賀状等のデザインを作成して印刷するユーザーが増加している。そして、これらのユーザーの間では、インクジェット用の葉書に本印刷する前に当該葉書のサイズにカットした普通紙等を使用して、試し印刷が行われることがある。
【0009】
この場合インクジェットプリンターが認識している紙種は、インクジェット用の葉書であるので、上記と同様の問題が生じる虞がある。
【0010】
前記特許文献1、特許文献2には、記録装置が認識している紙種と実際に記録実行領域に送られた紙種が異なる場合の問題については記載も示唆も無い。
【0011】
本発明の目的は、記録装置が認識している被記録材の材種(紙種)と実際に記録が実行される被記録材の材種(紙種)とが異なっている場合に、被記録材のインクの浸潤に起因する紙詰まり等の搬送不良の虞を低減して記録を実行できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明に係る記録装置の第1の態様は、給送用セット部にセットされている被記録材を記録実行領域側に送り出す給送用ローラーと、前記給送用ローラーを駆動する駆動源と、前記記録実行領域に搬送された被記録材にインクを吐出して記録を実行する記録ヘッドと、前記給送用ローラーによって被記録材を送り出すときの前記駆動源の電流値を計測する計測部と、前記計測部で計測された電流値に基いて、記録装置が認識している被記録材の材種に対応する通常インク吐出量による記録の実行と、前記通常インク吐出量よりも少ないインク吐出量による記録の実行とを切り換えて実行可能な制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0013】
ここで、本明細書で使用する「記録装置が認識している被記録材の材種」には、ユーザーが記録開始に先立って入力ないし選択した設定情報と、当該記録装置の目的から予め決まっている材種、例えば当該記録装置が葉書専用機であれば葉書というように予め決まっている材種との両方が含まれる。
【0014】
給送用セット部にセットされている被記録材を給送用ローラーによって記録実行領域側に送り出す際に給送用ローラーを駆動する駆動源の電流値は、被記録材の材種によって異なる。腰の強い材種(紙種)は、腰の弱い材種よりも前記電流値が大きくなる。具体的には、インクジェット専用紙やインクジェット用の葉書等のような腰の強い材種(紙種)は、普通紙のような腰の弱い材種よりも前記電流値が大きくなる。従って、被記録材を給送用ローラーで送り出すときの前記電流値を計測することで、材種の違いを判定することが可能である。
即ち本態様によれば、ユーザーの入力する材種情報によって記録装置が認識している被記録材の材種とは別に、実際に記録が行われる被記録材の材種情報を前記給送用ローラーの駆動源の電流値を計測することで得ることができ、以って記録装置が認識している被記録材の材種(紙種)と実際に記録が実行される被記録材の材種(紙種)とが同じか否かを判定することが可能になる。
【0015】
更に本態様によれば、記録装置が認識している被記録材の材種に対応する通常インク吐出量による記録の実行と、前記通常インク吐出量よりも少ないインク吐出量による記録の実行とを切り換えて実行可能である。従って、前記電流値の計測に基く前記判定によって記録装置が認識している被記録材の材種よりも腰の弱い材種であると判定された場合には、記録装置が認識している被記録材の材種に対応する通常インク吐出量よりも少ないインク吐出量に切り換えて記録を実行することができる。
これにより、ユーザーが誤って腰の弱い材種をセットしてしまった場合や、葉書専用機でユーザーが前記試し印刷を行った場合などにおいて、腰の弱い材種に対して過負荷のインク吐出量で記録が行われることを避けて、前記カール等の問題のない適切なインク吐出量での記録を実行することができる。従って、被記録材のインクの浸潤に起因する紙詰まり等の搬送不良の虞を低減して記録を実行することができる。
【0016】
本発明に係る記録装置の第2の態様は、前記第1の態様において、前記制御部は、記録装置が認識している前記材種に基づいて実行される第1の記録実行モードと、前記第1の記録実行モードよりもインク吐出量の少ない第2の記録実行モードとを備え、前記計測部で計測された電流値に基いて、前記第1の記録実行モードと前記第2の記録実行モードのいずれかで記録が実行されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、第1の記録実行モードよりもインク吐出量の少ない第2の記録実行モードを備え、前記計測された電流値に基いて、前記第1の記録実行モードを前記第2の記録実行モードに切り換えて記録を実行することが可能である。
従って、記録装置が認識している材種が高画質でインク吐出量の多い設定(第1の記録実行モード)で記録が実行されるものであっても、計測された電流値に基く材種がインク吐出量の多い設定に適しない材種であれば、インク吐出量の少ない第2の記録実行モードに切り換えて記録を実行可能である。これにより前記インクの浸潤に起因する被記録材の紙詰まり等の発生を容易に防止することができる。
【0018】
本発明に係る記録装置の第3の態様は、前記第2の態様において、前記計測部で計測された電流値が設定値より小さいときは前記第2の記録実行モードで記録が実行されることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、前記設定値を定めておくことにより、容易に前記第2の態様の作用効果を得ることができる。
【0020】
本発明に係る記録装置の第4の態様は、前記第2の態様又は第3の態様において、前記第2の記録実行モードが実行されるときには、第2の記録実行モードが実行されていることをユーザーに知らせる報知部が作動するように構成されていることを特徴とするものである。
ここで、第2の記録実行モードが実行されていることをユーザーに知らせる報知部は、ユーザーにその旨を知らせることができればよく、特定の構造のものに限定されない。視覚的に知らせる表示部や聴覚的に知らせるスピーカー等が挙げられる。
【0021】
本態様によれば、ユーザーの意思やユーザーの誤装着によって記録装置が認識している被記録材の材種と実際に記録が実行される被記録材の材種とが違っていて本来の記録実行モードと異なる第2の記録実行モードが実行されている場合には、当該第2の記録実行モードが実行されている旨が報知部によってユーザーに伝達される。従って、前記インクの浸潤に起因する被記録材の紙詰まり等が自動的に防止されることに加えて、本来の記録実行モードと異なる記録モードで記録が行われていることに伴なう記録実行品質の変化をユーザーは予め知ることができる。
【0022】
本発明の第5の態様は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様に係る記録装置において、前記記録装置は、葉書専用の記録装置であることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、葉書専用の記録装置にユーザーの意思やユーザーの誤装着によってセットされた被記録材の紙種が葉書以外である場合の前記インクの浸潤に起因する被記録材の紙詰まり等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1に係る記録装置の内部構造の概略を示す側断面図。
【図2】本発明に係る記録装置において給送用ローラーによる被記録材の送り出し時の駆動源の電流値変化を示す図。
【図3】本発明の実施例1に係る記録装置の制御の流れを示すフローチャート。
【図4】本発明の実施例2に係る記録装置の内部構造の概略を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1から図3に示す実施例1と、図4に示す実施例2とを例にとって、本発明の記録装置1の構成と、該記録装置1における被記録材の材種(紙種)に基づいた制御の流れについて具体的に説明する。
【0026】
[実施例1](図1〜図3参照)
最初に図1に基づいて、本発明の記録装置1の基本的構成について説明する。図1に示すように、図示の記録装置1は、紙種の違う複数の用紙Pに記録を実行することが可能なインクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)である。
【0027】
このインクジェットプリンター1は、給送用セット部3にセットされている用紙Pを記録実行領域23側に送り出す給送用ローラー9と、前記給送用ローラー9を駆動する駆動源10と、前記記録実行領域23に搬送された用紙Pにインクを吐出して記録を実行する記録ヘッド27と、前記給送用ローラー9によって用紙Pを送り出すときの前記駆動源10の電流値を計測する計測部12と、前記計測部12で計測された電流値に基いて、当該インクジェットプリンター1が認識している用紙Pの材種(紙種)35に対応する通常インク吐出量Vによる記録の実行と、前記通常インク吐出量Vよりも少ないインク吐出量Vsによる記録の実行とを切り換えて実行可能な制御部33とを備えている。
【0028】
更に図1に即して構成を説明すると、本実施例では、給送用セット部3に積畳状態でセットされた用紙Pを最上位のものから順番に1枚ずつ搬送経路6に向けて給送する給送部7と、該給送部7から給送された用紙Pの通過を検知する検知部11と、搬送経路6に供給された用紙Pに搬送力を付与する搬送部17と、記録実行領域23に供給された用紙Pの被記録面にインクを吐出して記録を実行する記録実行部25と、計測部12によって計測された電流値が送られて該電流値に基づいてインクジェットプリンター1側で認識している用紙Pの紙種35と、実際に搬送されている紙種が同じものであるか否かの判定を行う判定部31と、前記判定部31の判定結果に基づいてインク吐出量の制御を行う制御部33とを備えている。
【0029】
給送用セット部3は、一例として用紙載置部5を備えている。給送部7は、ホッパー8との挟圧送り作用によって用紙載置部5から用紙Pを繰り出す一例として側面視D字形状の給送用ローラー9と、該給送用ローラー9を駆動する駆動モータである駆動源10を備えている。
【0030】
図2に示したように、給送用セット部3にセットされている用紙Pを給送用ローラー9によって記録実行領域23側に送り出す際に給送用ローラー9を駆動する駆動源10の電流値は、用紙Pの材種によって異なる。図2において、横軸は給送用ローラー9の回転量θ、縦軸は駆動源10に流れる電流値であり、用紙Pを給送用ローラー9で送り出す際(用紙ピック時)の電流値の変化を示している。腰の強い材種(紙種)の電流値Ibは、腰の弱い材種の電流値Isよりも大きくなる。これは、腰の強い材種(紙種)は、腰の弱い材種よりも送り出し時の負荷が大であることから理解できることである。
【0031】
具体的には、インクジェット専用紙やインクジェット用の葉書等のような材種(紙種)は、それより腰の弱い普通紙のような材種よりも前記電流値が大きくなる。従って、用紙Pを給送用ローラー9で送り出すときの前記電流値を計測することで、材種の違いを判定することが可能である。
【0032】
即ち、ユーザーの入力する材種情報によってインクジェットプリンター1が認識している用紙Pの材種35とは別に、実際に搬送され記録が行われる用紙Pの材種情報を,前記給送用ローラー9の駆動源10の電流値を計測することで得ることができる。これにより、インクジェットプリンター1が認識している用紙Pの材種(紙種)35と実際に記録が実行される用紙Pの材種(紙種)とが同じか否かを判定部31で判定することが可能になる。
【0033】
更に本実施例によれば、前記判定結果を受けて当該制御部33によって、前記インクジェットプリンター1が認識している用紙Pの材種35に対応する通常インク吐出量による記録の実行と、前記通常インク吐出量よりも少ないインク吐出量による記録の実行とを切り換えて実行可能である。従って、前記電流値の計測に基いて前記判定によってインクジェットプリンター1が認識している用紙Pの材種35よりも腰の弱い材種であると判定された場合には、インクジェットプリンター1が認識している用紙Pの材種35に対応する通常インク吐出量よりも少ないインク吐出量に切り換えて記録を実行することができる。
【0034】
これにより、ユーザーが誤って腰の弱い材種をセットしてしまった場合や、葉書専用機でユーザーが前記試し印刷を行った場合などにおいて、腰の弱い材種に対して過負荷のインク吐出量で記録が行われることを避けて、前記カール等の問題のない適切なインク吐出量での記録を実行することができる。従って、被記録材のインクの浸潤に起因する紙詰まり等の搬送不良の虞を低減して記録を実行することができる。
【0035】
検知部11は、用紙Pの先端及び後端の通過を検知して、用紙Pの位置をインクジェットプリンター1自身が認識できるようにするためのものである。本実施例1では、検知部11は、揺動支点45を中心に所定の角度揺動する検知レバー47と、該検知レバー47の角度変化を検知するセンサー55とを備えている。
また、前記検知レバー47は、前記揺動支点45の下方に延びて、搬送経路6を通過する用紙Pに当接することで検知レバー47の揺動を生起させる当接片49と、前記揺動支点45の上方に延びるフラグ部51とを備えている。
【0036】
また、前記検知レバー47は、バネ等の付勢部材57によって、前記当接片49が、図3に示すように、用紙Pが通過する前の状態でほぼ垂直姿勢を維持するように付勢されている。尚、前記付勢部材57の付勢力は、用紙Pの通過によって検知レバー47が揺動し易い大きさに設定されている。
前記センサー55としては、発光部と受光部を備える非接触式の光センサーが一例として採用されており、前記フラグ部51の先端が前記検知レバー47の揺動によって前記発光部と受光部の間を通過する位置に前記センサー55は配設されている。
【0037】
搬送部17は、一対のニップローラーによって構成され、記録実行領域23の上流位置に配置される搬送用ローラー19と、同じく一対のニップローラーによって構成され、記録実行領域23の下流位置に配置される排出用ローラー21とを備えている。
記録実行部25は、前記制御部33によって設定されたインク吐出情報37に基づいて各色のインクを吐出する記録ヘッド27と、該記録ヘッド27を搭載して用紙Pの搬送方向Aと交差する走査方向Bに往復移動するキャリッジ29とを備えている。
【0038】
本実施例では、前記制御部33は、インクジェットプリンター1が認識している前記紙種に基づいて実行される第1の記録実行モード39と、前記第1の記録実行モード39よりもインク吐出量の少ない第2の記録実行モード41とを備え、前記計測部12で計測された電流値に基いて、前記第1の記録実行モード39と前記第2の記録実行モード41のいずれかで記録を実行可能に構成されている。
尚、以下の説明では、説明を解り易くするために、第1の記録実行モード39を「通常記録実行モード」39と、第2の記録実行モード41を「代替記録実行モード」41と言う。
【0039】
そして、インクジェットプリンター1が認識している前記紙種35が腰の強い用紙であるが、前記電流値によって判定部31が判定した紙種情報は腰の弱い用紙である時に前述した代替記録実行モード41が実行されるようになっている。
【0040】
また、前記電流値の計測によって判定された紙種情報が、インクジェットプリンター1が認識している前記紙種35と同じであるときと、当該認識紙種35よりも腰の強い紙種と判断されたときには、前記通常記録実行モード39が実行されるように構成されている。
また、前記通常記録実行モード39は、インクジェットプリンター1が認識している前記紙種35が腰の強い用紙であるときには、インク吐出量が多くなり、前記紙種35が腰の弱い用紙である時には、インク吐出量が少なくなるように一例として設定されている。
【0041】
これに対し、前記代替記録実行モード41は、前記紙種35が腰の強い用紙であり、前記電流値によって判定された紙種情報が腰の弱い用紙である場合には、常にインク吐出量が少なくなるように設定されている。
従って、前記代替記録実行モード41は、前記紙種35が腰の強い用紙(例えば葉書)であり、前記電流値によって判定された紙種が腰の弱い用紙(例えば葉書のサイズにカットされた普通紙)となる、年賀状の試し印刷等の実行に好適なモードになっている。
【0042】
次に、上記実施例のインクジェットプリンター1Aによる制御の流れを説明する。
先ず、ステップS1でホッパー8が上昇し、給送用ローラー9が回転を開始して用紙載置部5上の最上位の用紙Pの給送を開始し、当該用紙Pの先端を搬送経路6上に進入させる。
次に、ステップS2で前記給送開始時の駆動源12に流れる電流値を計測部12で計測する。
【0043】
そして、ステップS3で、前記電流値が設定値よりも小さいか否かを判断する。
ここで、ユーザーの紙種情報の入力によってインクジェットプリンター1が認識している前記紙種35がインクジェット専用紙やインクジェット用の葉書等のような腰の強い用紙である場合、前記電流値が設定値より小さいときは、実際に搬送されている用紙は普通紙等の腰の弱い用紙ということになり、代替記録実行モードによって記録が実行される(ステップS4)。即ち、前記通常記録実行モードよりもインク吐出量の少ない記録が実行される。
【0044】
一方、前記電流値が設定値と同じかそれより大きいときは、実際に搬送されている用紙は腰の強い用紙ということになり、通常記録実行モードで記録が実行される(ステップS5)。
【0045】
また、ユーザーの紙種情報の入力によってインクジェットプリンター1が認識している前記紙種35が普通紙のような腰の弱い用紙である場合、前記設定値も小さくなるようになっている。よって、実際に搬送されている用紙が普通紙等の腰の弱い用紙であるときは計測される電流値は設定値と同じになり、通常記録実行モードによって記録が実行される(ステップS5)。この場合は、通常記録実行モードであるが、インク吐出量は普通紙に対応した少ない吐出量で記録が実行される。
【0046】
また、前記電流値が設定値より大きいときは、実際に搬送されている用紙は腰の強い用紙ということになるが、この場合は普通紙用のインク吐出量の通常記録実行モードで記録が実行される(ステップS5)。
【0047】
[実施例2](図4参照)
実施例2に係るインクジェットプリンター1Bは、前記実施例1に係るインクジェットプリンター1Aと基本的に同様の構成を有しており、該実施例1の構成に以下詳述する構成を追加した構成になっている。
従って、ここでは前記実施例1と同様の構成については詳細な説明を省略し、実施例2において新たに追加した構成を中心に説明する。
【0048】
具体的には、実施例2に係るインクジェットプリンター1Bでは、前記代替記録実行モード41が実行されるときに、代替記録実行モード41が実行されていることをユーザーに知らせる報知部である視覚的表示部13と聴覚的告知部15とが追加された構成になっている。尚、視覚的表示部13と聴覚的告知部15はいずれか一方だけ設ける構造でもよいのは勿論である。
視覚的表示部13としては、ユーザーの設定情報36等を表示するためにインクジェットプリンター1Bに設けられている液晶ディスプレイ等が利用でき、代替記録実行モード41が実行されているときに、例えば「お試しモード実行中」等と表示部13に表示してユーザーの意図と、記録実行品質とが違う場合の補填を行っている。
【0049】
尚、視覚的表示部13としては、他にLED等のランプの点灯や点滅を利用することが可能であり、その場合には、通常記録実行モード39の実行中と代替記録実行モード41の実行中とでランプの色を変えることも可能である。
一方、聴覚的告知部15としては、スピーカー等が利用でき、ユーザーに音声で代替記録実行モード41が実行されていることを知らせたり、ブザー音その他の音やメロディーで代替記録実行モード41が実行されていることをユーザーに知らせるようにすることも可能である。
【0050】
また、前記視覚的表示部13と聴覚的告知部15は、常時同時に作動させる他、ユーザーの設定情報36等に基づいて視覚的表示部13と聴覚的告知部15を切り換えて作動させることも可能である。
そして、このようにして構成される本実施例によっても、前記実施例1と同様の作用、効果が発揮され、更に本実施例にあっては、前記ユーザーの意図と、記録実行品質とが違った場合の補填効果が得られるから、よりユーザーに親切なインクジェットプリンター1Bを提供することが可能になる。
【0051】
[他の実施例]
本発明に係る記録装置1は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えば、本発明に係る記録装置1は、紙種やサイズの違う複数種の用紙Pに記録を実行できるタイプの記録装置の他、一定の紙種とサイズの用紙(例えば葉書)Pに記録を実行するために製造された専用機であっても構わない。
そして、この専用機の場合には記録装置1側で認識している用紙Pの紙種35は、ユーザーによる設定情報36に関係なく、予め決められている当該一定の用紙Pとなる。
【符号の説明】
【0052】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、3 給送用セット部、5 用紙載置部、
6 搬送経路、7 給送部、8 ホッパー、9 給送用ローラー、11 検知部、
13 視覚的表示部、15 聴覚的告知部、17 搬送部、19 搬送用ローラー、
21 排出用ローラー、23 記録実行領域、25 記録実行部、27 記録ヘッド、
29 キャリッジ、31 判定部、33 制御部、35 紙種、36 設定情報、
37 インク吐出情報、39 第1の記録実行モード(通常記録実行モード)、
41 第2の記録実行モード(代替記録実行モード)、45 揺動支点、
47 検知レバー、49 当接片、51 フラグ、55 センサー、57 付勢部材、
59 当接案内部、P 用紙(被記録材)、A 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送用セット部にセットされている被記録材を記録実行領域側に送り出す給送用ローラーと、
前記給送用ローラーを駆動する駆動源と、
前記記録実行領域に搬送された被記録材にインクを吐出して記録を実行する記録ヘッドと、
前記給送用ローラーによって被記録材を送り出すときの前記駆動源の電流値を計測する計測部と、
前記計測部で計測された電流値に基いて、記録装置が認識している被記録材の材種に対応する通常インク吐出量による記録の実行と、前記通常インク吐出量よりも少ないインク吐出量による記録の実行とを切り換えて実行可能な制御部と、を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載された記録装置において、
前記制御部は、
記録装置が認識している前記材種に基づいて実行される第1の記録実行モードと、前記第1の記録実行モードよりもインク吐出量の少ない第2の記録実行モードとを備え、
前記計測部で計測された電流値に基いて、前記第1の記録実行モードと前記第2の記録実行モードのいずれかで記録が実行されるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載された記録装置において、
前記計測部で計測された電流値が設定値より小さいときは前記第2の記録実行モードで記録が実行されることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された記録装置において、
前記第2の記録実行モードが実行されるときには、第2の記録実行モードが実行されていることをユーザーに知らせる報知部が作動するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された記録装置において、
前記記録装置は、葉書専用の記録装置であることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171215(P2012−171215A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35502(P2011−35502)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】