説明

記録装置

【課題】転倒防止の為のスタンドを設けない場合であっても、転倒の生じ難い性質を有する縦置き型記録装置を提供する。
【解決手段】設置時の装置の高さ方向寸法Hが、装置の奥行き方向寸法Dより大なる縦置き型のインクジェットプリンター1であって、インクジェット記録ヘッド59と、用紙搬送方向と直交する方向に延びる軸体により形成され、回転することにより用紙を搬送する搬送駆動ローラー46と、を備え、奥行き方向寸法Dに対して、インクジェット記録ヘッド59及び搬送駆動ローラー46が装置中央領域に位置している。これにより、装置のバランスが保たれ、転倒が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に記録を行う記録装置に関し、特に設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大なる縦置き型の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンター等に代表される記録装置は、例えば設置時の省スペース化(特に、平面方向の省スペース化)を目的として、或いはその他の理由により、所謂「縦置き型」に構成されることがある。即ち、設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大きくなる様に構成されることがあり、この様な記録装置は、例えば特許文献1〜5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205630号公報
【特許文献2】特開2002−127751号公報
【特許文献3】特開2002−205859号公報
【特許文献4】特開平06−79935号公報
【特許文献5】特開平05−325729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縦置き型の記録装置は、設置時の省スペース化を図ることができる一方で、設置時の形態上、倒れやすいという性質を有している。このため、例えば上記特許文献5に記載のプリンターでは、スタンド兼スタッカー部材を設け、横置き利用時にスタッカーとして機能する部材を、縦置き利用時にスタンドとして機能するよう構成されている。
【0005】
この様に横置き利用時にスタッカーとして機能する部材を、縦置き利用時にスタンドとして機能するよう構成することで、スタンドとして単一の機能を発揮する部材を設ける場合に比して装置のコストアップを防止することができるものの、縦置き設置のみを前提とした場合には成立しない。また、いずれにせよ縦置き設置時にはスタンドが平面方向のスペースを占有することとなってしまう。
【0006】
他方、記録装置には、記録ヘッドなどの「重量物」、即ち容積の割合に重い構成要素が設けられるが、この様な重量物が適正に配置されていないと、縦置き型の記録装置においてはより一層転倒を招きやすくなる。
【0007】
そこで本発明はこの様な状況に鑑み成されたものであり、その目的は、転倒防止の為のスタンドを設けない場合であっても、転倒の生じ難い性質を有する縦置き型記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、本発明の第1の態様は、設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大なる縦置き型記録装置であって、被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、被記録媒体を搬送する搬送ローラーと、を備え、前記横幅方向寸法及び前記奥行き方向寸法のうちいずれか小さい寸法方向に対して、前記記録ヘッド及び前記搬送ローラーが装置中央領域に位置していることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、縦置き型記録装置は、被記録媒体を搬送する搬送ローラー、および被記録媒体に記録を行う記録ヘッド、即ち「重量物」となり易い構成が、横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のうちいずれか小さい寸法方向、つまり「倒れやすい寸法方向」に対して、中央領域に配置されているので、装置のバランスを保つことができ、転倒し難い縦置き型記録装置を構成することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、被記録媒体を鉛直方向に沿って収容する被記録媒体収容部から被記録媒体を装置下側に向けて給送し、反転ローラーによって送り方向を反転させて装置上側に向けて搬送する略U字状の被記録媒体搬送経路を備え、前記反転ローラーが、前記記録ヘッド及び前記搬送ローラーとともに、前記横幅方向寸法及び前記奥行き方向寸法のうちいずれか小さい寸法方向に対して装置中央領域に位置していることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、縦置き型記録装置は、被記録媒体を反転させる反転ローラーを備えているが、反転ローラーは被記録媒体を反転させる為に大径化され易く、即ち重量物となり易い。そしてこのような重量物としての反転ローラーが、上述した搬送ローラーおよび記録ヘッドと同様に、横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のうちいずれか小さい寸法方向、つまり「倒れやすい寸法方向」に対して、中央領域に配置されているので、装置のバランスを保つことができ、転倒し難い縦置き型記録装置を構成することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記搬送ローラーが、金属軸により形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記搬送ローラーが、金属軸により形成されているので、前記搬送ローラーの重量が大きくなるが、当該搬送ローラーは上記の通り前記横幅方向寸法及び前記奥行き方向寸法のうちいずれか小さい寸法方向に対して装置中央領域に位置しているため、装置のバランスを保つことができ、転倒し難い縦置き型記録装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの、全体の外観斜視図。
【図2】本発明に係るインクジェットプリンターの、用紙カセットを取り外した状態の外観斜視図。
【図3】本発明に係るインクジェットプリンターの、上部の外観斜視図。
【図4】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図。
【図5】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図。
【図6】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図。
【図7】用紙カセット(上部カバーを閉じた状態)の外観斜視図。
【図8】用紙カセット(上部カバーを開いた状態)の外観斜視図。
【図9】(A)、(B)は用紙搬送経路のバリエーションを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1から図9を参照しながら本発明に係る記録装置の一実施形態であるインクジェットプリンターについて説明する。図1は本実施形態に係るインクジェットプリンター1の、全体の外観斜視図、図2は用紙カセット11を取り外した状態の外観斜視図、図3はインクジェトプリンター1の上部外観斜視図、図4〜図6は同側断面、図7及び図8は用紙カセット11の外観斜視図(図7は上部カバーを閉じた状態、図8は上部カバーを開いた状態)、図9(A)、(B)は用紙搬送経路のバリエーションを示す図である。
【0015】
尚、図4〜図6はインクジェットプリンター1の用紙搬送経路上に配置されるローラーを図示する為に、ほぼ全てのローラーを同一面上に描いているが、用紙幅方向(図4〜図6の紙面表裏方向)の位置は必ずしも一致しているとは限らない(一致している場合もある)。また、各図において示すx−y−z座標系は、x方向が装置の横幅方向及び用紙幅方向であり、y方向が装置の奥行き方向(以下、場合により「装置の厚み方向」と言う場合もある)、z方向が装置高さ方向(鉛直方向)を示している。
【0016】
〓〓〓1.インクジェットプリンターの全体構成〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
以下、インクジェットプリンター1の全体構成について概説する。インクジェットプリンター1は、設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大なる縦置き型のインクジェットプリンターであって、本実施形態では高さ方向寸法(図1において符号H)が、横幅方向寸法(図1において符号W)及び奥行き方向寸法(図1において符号D)のいずれよりも大なる様に構成されている。また、本実施形態では、横幅方向寸法Wが奥行き方向寸法Dよりも大きくなっている。
【0017】
尚、奥行き方向(y方向)や横幅方向(x方向)は、本明細書では便宜的な概念で用いるものとし、つまり装置の設置時には必ずしもユーザー(使用者)に対して面積の広い横幅方向(x方向)の面が対峙するとは限らず、面積の狭い奥行き方向(y方向)の面が対峙する場合もあるし、これらのいずれでもなく斜め方向に設置される場合もある。但し、どの様な方向に設置された場合であっても、高さ方向(z方向)は必ず鉛直(重力)方向に沿った方向となる。
【0018】
インクジェットプリンター1は、薄型の箱状体を成す筐体2によって装置外観が構成されており、装置上面には操作ボタン等が配置されて成る操作パネル3や、インターフェースケーブルを接続する為のインターフェースケーブル接続部8が設けられている。
【0019】
また、装置上面は複数の着脱可能なインクカートリッジ6を装着するインクカートリッジ装着部が設けられており、符号7は当該インクカートリッジ装着部を開閉する為のインクカートリッジカバーを示している。尚、このインクカートリッジカバー7は、インクカートリッジ6の交換時にユーザーにより開閉される。
【0020】
また、装置上面には記録の行われた用紙を排出する為の用紙排出口4が設けられており、符号5は当該用紙排出口4を開閉する用紙排出口カバーを示している。尚、この用紙排出口カバー5は、ユーザーによって開閉可能に構成されているとともに、仮に閉じた状態で記録が実行されようとすると、図示を省略する開閉機構によって自動的に開くように構成されている。
【0021】
図2において符号11は複数枚の記録用紙(単票紙:以下「用紙P」と言う)を堆積状態で収容(セット)可能な「被記録媒体収容部」としての用紙カセットを示しており、この用紙カセット11は図2に示す様に筐体2に対して着脱可能に構成されており、装着することで図1に示す様にインクジェットプリンター1の外観を構成し、取り外すことで装置内部の用紙搬送経路が露呈して紙ジャム処理等を行える様になっている。
【0022】
用紙カセット11は、大略的には、図7及び図8に示す様にトレイ状のカセット本体12に、開閉可能な上部外側カバー15と、揺動可能な可動トレイ23と、を備えて成る。上部外側カバー15は、カセット本体12の略中央部に設けられた回動支点15aを中心に回動することにより、図7に示す閉状態と、図8に示す開状態と、をとり得るようになっている。そして上部外側カバー15が開いた状態では、図8に示すようにカセット本体12の用紙収容空間が表れて、用紙Pを収容可能となる。
【0023】
用紙カセット11が装着された状態においてカセット上部(図7及び図8において左側)となる側は、用紙サイズに合わせて伸縮自在に構成されており、具体的にはカセット本体12に対して上部スライドトレイ18が用紙送り方向(カセット装着状態において鉛直方向)にスライド可能に設けられている。
【0024】
また、上部外側カバー15に対しても同様に上部内側カバー16が用紙送り方向にスライド可能に設けられており、これら上部スライドトレイ18及び上部内側カバー16を用紙サイズに合わせてスライドさせることにより、用紙サイズに適した用紙収容空間を形成できる様になっている(図5及び図6の状態)。
【0025】
次に、カセット本体12にはエッジガイド21が用紙幅方向にスライド可能に設けられており、このエッジガイド21により、用紙サイズに応じた適切な位置で、セットされた用紙Pのエッジがガイドされる。尚、上部外側カバー15には、長穴15bがエッジガイド21の変位方向に延びるように形成されており、この長穴15bから、エッジガイド21の一部が上部外側カバー15の外側に突出できる様になっている(図7)。
【0026】
上部外側カバー15の外側に突出したエッジガイド21の一部には、つまみ部21bが接続されており、このつまみ部21bにより、上部外側カバー15を閉じた状態であっても、エッジガイド21をスライド操作できる様になっている。即ち、上部外側カバー15を閉じた後に、用紙エッジを適切にガイドする位置でないことが判明した場合には、上部外側カバー15を開けることなく、エッジガイド21が操作可能となっている。
【0027】
次に、用紙カセット11が装着された状態においてカセット下部(図7及び図8において右側)、即ち用紙先端となる側には、可動トレイ23が設けられている。可動トレイ23は、所謂ホッパーとして機能するものであり、具体的には揺動支点23aを中心に揺動可能に設けられており、揺動することにより、収容された用紙Pの先端を給送ローラー37(後述)に圧接させる状態(図6)と、離間させる状態(図4)と、をとり得る様になっている。
【0028】
可動トレイ23は、用紙先端に対応する位置に、用紙幅方向に沿って適宜の間隔で複数の開口部24aが形成されており、この開口部24aにより、収容された用紙Pに対して給送ローラー37が圧接できる様になっている。尚、符号12cはカセット本体12により構成された、用紙先端を支持する為の用紙先端支持壁である。用紙カセット11が装着された状態において収容された用紙Pは、その先端が用紙先端支持壁12cに当接した状態で支持される。
【0029】
続いて、図4〜図6を参照しながらインクジェットプリンター1の内部構成、具体的には用紙搬送経路について、説明する。上述の様に構成された用紙カセット11が鉛直に装着された状態において、用紙カセット11の先端と対向する位置には「反転ローラー」としての給送ローラー37が設けられている。給送ローラー37は、用紙幅方向に延びる駆動軸37aに、用紙幅方向に適宜の間隔を開けて複数配置されており(図2)、図示を省略するモーターにより駆動され、用紙先端と接した状態で回転することにより用紙Pを下流側へと送り出す。
【0030】
給送ローラー37によって下方へ送り出された用紙Pは、当該給送ローラー37及び当該給送ローラー37の外周面と対向配置されたガイド部材40、41によって上向きに反転させられ、「搬送ローラー」としての搬送駆動ローラー46、及び搬送従動ローラー47(用紙搬送手段を構成する)の間へと送られる。即ち、給送ローラー37およびガイド部材40、41を備えて構成された「用紙反転部」により、用紙Pが湾曲反転する略U字状の搬送経路が形成されている。尚、符号38は、給送ローラー37による用紙Pの給送をアシストする従動ローラーである。
【0031】
搬送駆動ローラー46は図示しないモーターにより回転駆動されるローラーであり、本実施形態では用紙幅方向に延びる金属軸の表面に耐摩耗粒子が付着されて成り、インクジェットプリンター1の構成要素のうち重量物に属している。
【0032】
搬送従動ローラー47は本実施形態では樹脂材料によって形成されたローラーであり、搬送駆動ローラー46の軸線方向に沿って適宜の間隔を開けて複数配置され、搬送駆動ローラー46に向けて図示しない付勢手段の付勢力により付勢された状態で設けられる。そして搬送駆動ローラー46との間で用紙Pを挟圧することで、従動回転する。
【0033】
搬送駆動ローラー46の下流側には、インクジェット記録ヘッド59と、案内部材48とが対向する様に設けられている。インクジェット記録ヘッド59は、キャリッジ58に設けられており、キャリッジ58は、用紙幅方向に延びるキャリッジガイド軸55にガイドされながら、図示しないモーターの動力を受けることにより用紙幅方向に往復動する様に構成されている。
【0034】
尚、キャリッジ58において符号58aは用紙幅方向に延びる形状を成すキャリッジガイド板56を挟み込む被ガイド部を示している。即ち、キャリッジ58はキャリッジガイド軸55を挿通させる軸受部を有しているが、キャリッジ58は図示する様に傾斜姿勢で設けられるため、キャリッジガイド軸55を中心として回動しようとする傾向が生じるが、被ガイド部58aがキャリッジガイド板56を挟み込むように構成されている為、上記回動傾向が止められ、キャリッジ58の姿勢が定まる様に構成されている。
【0035】
尚、上述した様に本実施形態ではインクカートリッジ6が装置本体の側に設けられ、即ちインクカートリッジ6がキャリッジ58から独立して設けられた所謂オフキャリッジタイプに構成されている。しかしこれに限られず、インクカートリッジ6がキャリッジ58に搭載された、所謂オンキャリッジタイプであっても構わない。また本実施形態では、キャリッジ58が用紙幅方向に移動しながら記録を行う構成(シリアルプリンター)であるが、キャリッジ58が用紙幅方向に移動しない、用紙幅をカバ−する固定式の記録ヘッドを用いても良い。更に、インクジェット記録方式に限らず、その他の記録方式であっても良い。
【0036】
次いでインクジェット記録ヘッド59と対向配置された案内部材48は、樹脂材料により形成され、用紙Pを支持することで用紙Pの記録面とインクジェット記録ヘッド59との間のギャップを規定する。また、案内部材48は、インクジェット記録ヘッド59と対向する面には縁無し印刷時に用紙端から外れた領域に吐出されるインクを受ける凹部(不図示)が形成されており、更にこの凹部の中には、インクを吸収するインク吸収材(不図示)が設けられている。そして更に、案内部材48の下方には、打ち捨てられたインクを貯留する廃液タンク(不図示)が配置されている。
【0037】
次に、インクジェット記録ヘッド59の下流に設けられた案内ローラー49は、用紙Pの案内部材48からの浮き上がりを防止し、案内ローラー49の下流に設けられた、排出駆動ローラー51及び排出従動ローラー52を備えてなる用紙排出手段は、記録の行われた用紙Pを装置外部に排出する。尚、本実施形態では、排出駆動ローラー51はゴムローラーにより構成され、用紙幅方向に伸びる金属軸の軸線方向に沿って適宜の間隔を空けて複数設けられ、そして図示しないモーターにより回転駆動される。また、案内ローラー49及び排出従動ローラー52は、外周に沿って歯を有する歯付きローラーにより構成され、用紙Pと接して従動回転する。
【0038】
次に、排出駆動ローラー51及び排出従動ローラー52による用紙Pの排出方向は、本実施形態では用紙カセット11に向かう様に斜め上方に設定されており、これにより排出される用紙Pは、図6に示す様に用紙カセット11を構成する上部外側カバー15に摺接しながら、装置上方に排出される。尚、図6における破線は、用紙搬送経路を搬送される用紙Pの通過軌跡を示している。
【0039】
〓〓〓2.装置の転倒防止対策〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
次いで、インクジェットプリンター1における転倒防止対策について説明する。
以上の様に構成されたインクジェットプリンター1は、上述の通り縦置き型の構成を有していることから、その設置時の形態上、倒れやすいという性質を有している。このため本実施形態に係るインクジェットプリンター1では、x方向(用紙搬送方向と直交する方向)に延びる軸体により形成され、回転することにより用紙Pを搬送する搬送駆動ローラー46と、インクジェット記録ヘッド59と、のこれらが、y方向(装置の奥行き(厚み)方向)寸法に対し、中央領域に配置されている。
【0040】
より具体的には、図4において符号Dはy方向寸法であり、符号Cはy方向における搬送駆動ローラー46及びインクジェット記録ヘッド59の占有領域を示している。また符号A、Bは、y方向において装置外観面から占有領域Cまでの距離を示している。本実施形態では距離A、Bは厳密には1:1ではないものの、一方側を基準とした場合の比率が、[1]:[0.7〜1.3]になる様に構成されており、y方向寸法Dに対して中央領域に位置する様に配置されている。
【0041】
この様に、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、重量物としての搬送駆動ローラー46、及びインクジェット記録ヘッド59を、「倒れやすい寸法方向」としてのy方向(装置の奥行き(厚み)方向)に対して、中央領域に配置したので、装置のバランスを保つことができ、転倒し難い縦置き型インクジェットプリンターを構成することができる。
【0042】
また本実施形態では、搬送駆動ローラー46及びインクジェット記録ヘッド59に加えて、用紙送り方向を反転させる反転ローラーとしての給送ローラー37も、y方向(装置の奥行き(厚み)方向)寸法に対し、中央領域に配置されている。即ち、本実施形態では径の大なる給送ローラー37は、搬送駆動ローラー46及びインクジェット記録ヘッド59と同様に重量物であり、この様な重量物としての給送ローラー37がy方向寸法に対して中央領域に配置されることで、より一層転倒し難い縦置き型インクジェットプリンターを構成することができる。
【0043】
尚、本実施形態では上述の通り、搬送駆動ローラー46、インクジェット記録ヘッド59、給送ローラー37、のこれらをy方向(装置の奥行き(厚み)方向)寸法に対し、中央領域に配置したが、これに限られず、更にその他の重量物が存在すれば、併せてこれを中央領域に配置することで、より一層転倒し難い縦置き型インクジェットプリンターを構成することができる。この様な重量物としては、例えば、排出駆動ローラー51の回転軸や、用紙搬送経路の構成要素以外にも、例えばキャリッジガイド軸55や、電源ユニット(不図示)などが挙げられる。
【0044】
本実施形態では上述の通り、搬送駆動ローラー46、インクジェット記録ヘッド59、給送ローラー37、のこれら全てをy方向(装置の奥行き(厚み)方向)寸法に対し、中央領域に配置したが、これらのうち、いずれか1つ或いは2つを中央領域に配置する対象とすることもできる。
【0045】
更に、上記の様に構成することで、装置全体の重心G(不図示)を、y方向(装置の奥行き(厚み)方向)寸法に対し、中央領域に設定することができ、転倒し難い縦置き型インクジェットプリンターを構成することができる。
【0046】
更に加えて、重心Gをz方向(装置高さ方向)の中央位置より下方に設定することで、より一層転倒し難い縦置き型インクジェットプリンターを構成することができる。本実施形態では、図4から明かな様に搬送駆動ローラー46、インクジェット記録ヘッド59、給送ローラー37、のこれらをz方向(装置高さ方向)の中央位置より下方に配置しているので、装置全体の重心Gがz方向(装置高さ方向)の中央位置より下方に設定され、より一層転倒し難い縦置き型インクジェットプリンターを構成している。
【0047】
また、本実施形態では用紙カセット11がy方向(装置の奥行き(厚み)方向)寸法に対し、一方側の端に配置されている。このため、用紙が最大収容枚数のときと、最小収容枚数のときとで、装置全体の重心Gがy方向で大きく動くことになり、転倒のし易さに影響が生じる場合もあるので、用紙の収容枚数に拘わらず、装置全体の重心Gが例えば図4の領域Cに入るように、重量物の配置やその重さを設定すれば、より一層転倒し難い縦置き型インクジェットプリンターを構成することもできる。
【0048】
〓〓〓3.搬送経路における記録ヘッドの位置〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
次いで、用紙搬送経路におけるインクジェット記録ヘッド59の配置位置について説明する。
本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、上述の通り、用紙カセット10から装置下側に向けて給送された用紙Pを、給送ローラー37とその外側のガイド部材40、41によって形成された反転経路部によって、送り方向を反転させて装置上側に向けて搬送する略U字状の用紙搬送経路を有しているが、インクジェット記録ヘッド59を備えて成る記録部は、反転経路部より下流側に設けられている。
【0049】
ここで仮に、インクジェット記録ヘッド59が反転経路部の上流側、或いは反転経路部の途中に設けられていると、記録終了後に用紙をきつく湾曲させる必要が生じ、記録品質の低下を招く虞がある。特に、インクジェット記録を行った後の用紙は、用紙幅方向に波打つ傾向(コックリング)が形成されることがあり、この様な状態の用紙を湾曲反転させると、コックリングが潰れ、皺が発生する虞がある。
【0050】
しかしながら本実施形態に係るインクジェットプリンター1では、上述の通り、反転経路部より下流側にインクジェット記録ヘッド59が設けられており、記録の行われた用紙Pを,略U字状の湾曲反転経路で湾曲させることがないので、所望する適切な記録結果を得ることができる。
【0051】
尚、本実施形態では、給送ローラー37により形成された反転経路部から下流側は、用紙搬送経路が傾斜しているが(図4において示す角度α:一例として12°)、これに限られず、例えば図9(A)に示すように給送ローラー37により形成された反転経路部から下流側が鉛直方向に沿っていても構わない(即ち,図4において示す角度αが0°)。
【0052】
また、本実施形態では、インクジェット記録ヘッド59が、略U字状の用紙搬送経路の外側に設けられている。従って、仮に紙ジャムが発生した場合には、その除去処理が容易となる。但し、図9(B)に示すように、インクジェット記録ヘッド59を、略U字状の用紙搬送経路の内側に設けることもできる。この場合には、用紙搬送経路の外側にインクジェット記録ヘッド59やキャリッジ58を設置する為の大きなスペースを確保する必要がなく、装置の小型化を図ることができる。
【0053】
〓〓〓4.用紙搬送経路の形態〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
次いで、インクジェットプリンター1における用紙搬送経路の形態について更に詳説する。本実施形態に係るインクジェットプリンター1の用紙搬送経路は、図4に示すように、鉛直方向に沿ってセットされた用紙カセット11から用紙Pを装置下側に向けて給送し、給送ローラー37によって形成された反転経路部によって送り方向を反転させて装置上側に向けて搬送する略U字状の搬送経路であるが、給送ローラー37によって形成された反転経路部によって搬送方向を下向きから上向きに切り換えた後の経路が、用紙カセット11側に向けて傾斜している。
【0054】
図4において示す角度αはその傾斜角度を示しており、0°<α<90°の範囲に設定されるが、本実施形態では一例としてα=12°に設定されている。この様に、給送ローラー37によって搬送方向を下向きから上向きに切り換えた後の経路が用紙カセット11側に向けて傾斜しているので、当該傾斜経路部の上方に空きスペースが形成され、この空きスペースにインクジェット記録ヘッド59及びキャリッジ58を配置することで装置の厚み方向寸法(y方向寸法)増大を回避することができる。
【0055】
また、用紙搬送経路が傾斜していることで、用紙Pを上向きに排出する際に用紙Pがふらつかず、姿勢を安定させることができる。尚、本実施形態では傾斜経路においてインクジェット記録ヘッド59をヘッド面を傾斜させた状態で配置し、また案内部材48の用紙案内面(記録ヘッドと対向する面)を傾斜させた状態で配置しているが、これらを傾斜経路に設けることに限定されるものではなく、その前後、例えば鉛直経路や水平経路に設けられていても良い。
【0056】
また、本実施形態では、用紙排出手段を構成する排出駆動ローラー51及び排出従動ローラー52による用紙排出方向が、用紙カセット11に向かっており、これにより図6に示すように排出される用紙Pが用紙カセット11(具体的には、本実施形態では上部外側カバー15、或いは上部外側カバー15及び上部内側カバー16)に摺接しつつ排出される様になっている。
【0057】
従って、排出される用紙Pの姿勢がより一層安定する。また、排出される用紙Pが、既に排出された用紙Pを押し付けることで、既に排出された用紙Pがばたつかず整然と堆積される。更に、用紙カセット11の一部をスタッカとして利用できるので、部品点数の削減により装置の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0058】
尚、本実施形態では、上記の様に用紙排出方向が用紙カセット11に向かう結果、用紙カセット11と、用紙排出口4と、のこれらが、装置の厚み方向(y方向)においてその中心位置より一方側の端に偏倚した位置に配置された状態となっている。従って、装置上面においては比較的広い連続したスペースを確保することができ、装置レイアウトの自由度を高めることができる。例えば、本実施形態の様に、装置上面に操作スイッチ等から成る操作パネル3を配置する場合には、その設計の自由度を確保できる。
【0059】
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでも無い。例えば、本実施形態では本発明を記録装置の一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、液体噴射装置一般に適用することも可能である。
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
【0060】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0061】
1 インクジェットプリンター、2 筐体、3 操作パネル、4 用紙排出口、5 用紙排出口カバー、6 インクカートリッジ、7 インクカートリッジカバー、8 インターフェースケーブル接続部、11 用紙カセット、12 カセット本体、15 上部外側カバー、15a 回動支点、15b 長穴、16 上部内側カバー、18 上部スライドトレイ、21 エッジガイド、21a 揺動支点、21b つまみ部、23 可動トレイ、23a 揺動支点、37 給送ローラー、38 従動ローラー、40、41 ガイド部材、46 搬送駆動ローラー、47 搬送従動ローラー、48 案内部材、49 案内ローラー、51 排出駆動ローラー、52 排出従動ローラー、55 キャリッジガイド軸、56 キャリッジガイド板、58 キャリッジ、59 インクジェット記録ヘッド、P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大なる縦置き型記録装置であって、
被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
被記録媒体を搬送する搬送ローラーと、を備え、
前記横幅方向寸法及び前記奥行き方向寸法のうちいずれか小さい寸法方向に対して、前記記録ヘッド及び前記搬送ローラーが装置中央領域に位置している、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の縦置き型記録装置において、被記録媒体を鉛直方向に沿って収容する被記録媒体収容部から被記録媒体を装置下側に向けて給送し、反転ローラーによって送り方向を反転させて装置上側に向けて搬送する略U字状の被記録媒体搬送経路を備え、
前記反転ローラーが、前記記録ヘッド及び前記搬送ローラーとともに、前記横幅方向寸法及び前記奥行き方向寸法のうちいずれか小さい寸法方向に対して装置中央領域に位置している、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の縦置き型記録装置において、前記搬送ローラーが、金属軸により形成されている、
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−76242(P2012−76242A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220801(P2010−220801)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】