説明

記録装置

【課題】記録装置において、キャリッジをガイドする部材などの精度に係らずキャリッジの姿勢変化による記録位置ずれを高精度に補正でき、また、キャリッジの移動自体を安定的に行なう。
【解決手段】記録ヘッドの傾き補正量を求める処理を総ての基準マーク間に関して行う。そして、所定のタイミングで、キャリッジの往路の移動動作を開始する(S107)。この移動では、キャリッジが基準マークkの位置に到達(S108)するごとに、ステップS106で求めメモリに格納した、基準マークkから基準マークk+1の間のカムモータの駆動データを読み出し(S109)、そのデータに基づいて記録ヘッドを傾かせるためのカムモータを駆動する(S110)。これにより、基準マークkから基準マークk+1の間に、この区間のキャリッジの姿勢変化を相殺するよう記録ヘッドを傾けることができ、結果として、キャリッジの姿勢変化による記録位置ずれを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、詳しくは、記録媒体を走査する記録ヘッドの走査方向における姿勢変動に起因した記録位置ずれを補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドを記録媒体に対して走査させ、この走査の間に、例えば、記録ヘッドからインクを吐出させて記録を行なう記録装置では、一般に、記録ヘッドを搭載したキャリッジを移動させて記録ヘッドの走査を行なう。このキャリッジの移動において、例えば、キャリッジを支持しつつその移動を案内するキャリッジレールなどの、支持・案内部材の精度や取り付け誤差などの原因によって、キャリッジの位置ないし姿勢が変動することがある。このような変動があると、キャリッジに搭載される記録ヘッドもその走査において姿勢が変動し、結果として、記録ヘッドから吐出されたインクの着弾位置が本来の位置からずれて記録画質が損なわれることがある。
【0003】
このような記録ヘッドの走査における姿勢変動による記録位置ずれを補正する技術として、特許文献1には、キャリッジの移動に伴ってその姿勢変動をセンサによって検出し、検出される変動量に応じて、記録ヘッドの姿勢変化を抑制する方法が記載されている。具体的には、検出されるキャリッジの姿勢変動に応じて、アクチュエータを作用させてキャリッジの一部をガイド部材に当接させてこのガイド部材に沿わせるようにし、キャリッジの姿勢が変化しないようしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−090875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、アクチュエータを作用させてキャリッジの一部をガイド部材に当接させてこのガイド部材に沿わせるようにする方式では、依然として、ガイド部材の精度などに依存するという問題がある。すなわち、キャリッジの一部をガイド部材に当接させていることから、キャリッジないし記録ヘッドの姿勢が、当接するガイド部材の精度などに依存することに変りはないという問題がある。また、キャリッジの一部をガイド部材に当接した状態でキャリッジを移動させるため、キャリッジの移動に対して比較的大きな負荷が生じ、キャリッジ移動自体の安定性を低下させるという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、ガイド部材などの精度に係らずキャリッジの姿勢変化による記録位置ずれを高精度に補正でき、また、キャリッジの移動自体を安定的に行なうことができる記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明では、ヘッドを搭載したキャリッジを移動させることにより当該ヘッドの走査を行なう記録装置であって、キャリッジの移動範囲に面して配設される部材であって、当該移動の方向に沿って配列する複数の基準マークが設けられた部材と、前記配列する複数の基準マークにおける1つの基準マークから次の基準マークを前記キャリッジが移動する間に当該キャリッジが傾くときの傾き量のデータを保持する傾きデータ保持手段と、前記1つの基準マークから次の基準マークを前記キャリッジが移動する間に、前記傾き量データに基づき、前記キャリッジの傾きによるヘッドの傾きを相殺するようヘッドを傾かせる傾き制御手段と、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の構成によれば、キャリッジをガイドする部材などの精度に係らずキャリッジの姿勢変化による記録位置ずれを高精度に補正でき、また、キャリッジの移動自体を安定的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る記録装置の記録部の概略構成を示す図である。
【図2】図1で説明した構成における、キャリッジレール、レール調整板およびレール支持板を装置の正面から見た模式図である。
【図3】キャリッジの傾きを検出するための基準マークおよびそれを検知するセンサを説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態の記録装置における制御構成のうち、特に、センサによる基準マークの検出に基づいた記録ヘッドの姿勢制御のための処理回路構成を示すブロック図である。
【図5】記録装置の製造時におけるセンサのキャリッジへの取り付けについて説明する図である。
【図6】(a)〜(c)は、基準マークに対するセンサの検出エリア相対位置と、キャリッジの傾きとの関係を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る記録装置の記録動作を示し、特に、記録ヘッドの姿勢制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る記録装置の記録部の概略構成を示す図であり、当該記録部を側面から見た図として示している。記録部は、キャリッジ101に搭載された記録ヘッド121が、キャリッジ101の移動によってプラテン131上を搬送される紙などの記録媒体Pに対して走査する構成を有している。
【0012】
キャリッジ101の移動のための機構として、レール支持板111に、レール調整板112を介してキャリッジレール113が設けられる。そして、キャリッジレール113は、キャリッジ101に設けられた半円形のレールリング102と摺動可能に係合し、これにより、キャリッジレール113がキャリッジ101の移動を案内することができる。また、レール支持板111の別の箇所にサブレール114が設けられている。そして、サブレール114は、その上下のサブレールコロ103によって挟み込まれ、キャリッジ101の移動に伴ってこのコロ103が回転することによってキャリッジ101の移動を案内することができる。さらに、レール支持板111には、キャリッジ101を搬送させる動力を伝達するためのベルトコロ115が取り付けられている。一方、キャリッジ101には、駆動ベルト104がベルト固定部材105により取り付けられ、その駆動ベルト104がベルトコロ115に掛けられている。これにより、キャリッジモータ(図示せず)の回転によって駆動ベルト104を可動させてキャリッジ101を移動させることができる。以上のキャリッジレール113およびサブレール111は、図の紙面と垂直の方向、すなわち、走査方向に延在し、これにより、キャリッジ101の走査方向の移動を案内することができる。
【0013】
キャリッジ101と記録ヘッド121の間には、記録ヘッド121を、図中右方向に付勢するための押さえバネ122が取り付けられている。また、記録ヘッド121に関して押さえバネ122と対角の位置に、記録ヘッド121を傾ける際の支点となるシャフト123が設けられている。さらに、記録ヘッド121に関して押さえバネ122と対向する位置に、偏心カム124が設けられている。この偏心カム124は、モータ125の駆動によって回転できるよう構成されている。カムセンサ126は、透過型のフォトインタラプタであり、偏心カム124の一部に設けた遮光フラグによって、偏心カム124の位置検出を行なうことができる。この記録ヘッドは、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)のインクそれぞれについて、インク吐出する吐出口を配列した吐出口列を備え、これら4色のインクの吐出口列は記録ヘッドの走査方向に配列されている。
【0014】
図2は、以上説明した構成における、キャリッジレール、レール調整板およびレール支持板を装置の正面から見た模式図である。レール支持板111は、金属板を曲げ加工したものであり、本体の構造部材の一部である。キャリッジレール113をそのままレール支持板111に固定すると、相互の寸法差によりレールに歪みを生じることがある。そこで、レール調整板112を介してキャリッジレール113を固定する。すなわち、レール調整板112には長円形のスリット118が斜めに設けられ、その中にレール調整板112に固定された調整ピン116が挿入されている。レール調整板112を、図2において左右にスライドすると、スリット118に沿ってレール調整板112が上下する。この動作によってレール調整版の高さを調整し、レール調整板112が支持するキャリッジレール113の高さが規定値になったところで、レール調整板112に設けられた固定ネジ117でレール調整板112を支持板111に固定する。
【0015】
以上説明した構成を有した記録装置における、キャリッジの傾き検出について以下に説明する。
【0016】
図3は、キャリッジの傾きを検出するための基準マークおよびそれを検知するセンサを説明する図である。図3に示すように、キャリッジ101には、その走査方向の両端部に第1のセンサ141と第2のセンサ142が取り付けられている。これらのセンサは、CMOSイメージセンサである。一方、プラテン131上の、キャリッジ移動によってそれぞれの上記センサが対向可能な位置に、複数の基準マーク132、133(図3には2つのみが示されている)が設けられている。すなわち、プラテンはキャリッジの移動範囲に面してこれら複数の基準マークを配設している。これら複数の基準マークは、後述するように、キャリッジ101のキャリッジレールを軸とした傾き(姿勢変化)を検出する際に、センサ141、142によってそれぞれ検出されるマークである。
【0017】
図4は、本実施形態の記録装置における制御構成のうち、特に、センサによる基準マークの検出に基づいた記録ヘッドの姿勢制御のための処理回路構成を示すブロック図である。
【0018】
図4に示すように、処理回路200では、キャリッジに搭載されたセンサ141、142からの検出データを入力回路201で入力する。そして、入力されたデータは、メモリ208に保存される。このメモリ208は不揮発性のメモリであることから、入力データは、本体の電源が切断されても保存される。このメモリは、図7にて後述されるように、キャリッジの傾き量に関する傾き量データを保持するデータ保持部としても機能する。
【0019】
傾き演算回路202は、メモリ208に保存したデータに基づいてキャリッジ101の傾きを算出する。補正回路203は、傾き演算回路202で算出したキャリッジの傾きに基づき、記録ヘッド121の傾け量を算出する。モータ制御回路204は、補正回路203で算出したデータに基づいて、モータ125の駆動データを出力し、モータドライブ205は、この駆動データに従ってモータ125を駆動する。これにより、キャリッジ101に搭載された記録ヘッド121を、キャリッジの姿勢変化を相殺するように傾けることができる。
【0020】
図3において、キャリッジを進行方向(右から左)に移動させ、センサ141が基準マーク132の位置に到達すると、センサ141を駆動して基準マーク132を検出し、その検出データをメモリ208に保存する。さらに、キャリッジを移動させ、センサ142が基準マーク132の位置に到達すると、センサ142を駆動して基準マーク132を検出し、検出データをメモリ208に保存する。同様に、センサ141が基準マーク133に到達すると、基準マーク133を検出始祖のデータをメモリ208に保存する。さらに、キャリッジを移動させ、センサ142が基準マーク133の位置に到達すると、基準マーク133を検出し、そのデータをメモリ208に保存する。同様にして、プラテン131においてキャリッジの移動方向に所定の間隔で配列する、他の基準マークについても、センサ141、142それぞれで検出を行い、その検出データをメモリ208に保存する。進行方向を逆にして同様の検出およびその検出データの保存を行なう。これらの保存データは、キャリッジの移動に伴う傾きの変化(姿勢変化)を表しており、進行方向ごとの、図7にて後述する記録動作において記録ヘッドの傾き制御に用いられる。
【0021】
ここで、記録装置の製造時におけるセンサ141、142のキャリッジ101への取り付けについて説明する。図5は、この取り付けを説明する図であり、キャリッジ101を上から見た図である。なお、図5では、図示の簡略化のために、キャリッジ上部を透過して、内部の記録ヘッド121、押えバネ122、およびシャフト123が見えるようにしている。また、図5において、一点鎖線は記録ヘッド121の中心線を表している。具体的には、記録ヘッドにおいて走査方向に配列された複数の吐出口列それぞれの中心を連ねた線である。センサ141、142は、製造時にキャリッジに取り付けられる。その際、それぞれのセンサの検出部の中心が記録ヘッド121の上述した中心線と重なるになるとともに、センサ141とセンサ142との距離が規定値の範囲内になるように取り付けられる。この取り付けの後、キャリッジ移動方向に沿って複数配置された、製造時に用いる、つまり基準マークとは別のアライメントマーク301を、それぞれのセンサ141、142によって検出する。そして、それぞれのアライメントマークにおけるセンサ141、142それぞれのずれ量をメモリ208に記憶させる。記憶されたデータは、後述する基準マークの検出時に、その検出データのオフセット量として用いられる。
【0022】
図6(a)〜(c)は、基準マークに対するセンサ141、142の検出エリア相対位置と、キャリッジの傾きとの関係を説明する図であり、図中、符号「1」、「2」で示される要素はそれぞれセンサ141、142に該当する。
【0023】
図6(a)は、キャリッジに傾きが無い場合を示しており、基準マークに対する検出センサ141、142のセンサエリアの位置は同じ(中央)であり、従って、検出センサ141、142は同じデータを検出する。この場合、検出にかかる基準マークでの検出センサ141、142が検出するデータの差はゼロとなり、その差のデータがその基準マークにおける傾きデータとしてメモリ208に保存される。
【0024】
図6(b)は、キャリッジのセンサ142側で傾きがある場合を示している。すなわち、センサ141が基準マークを検出するときは、キャリッジのセンサ141側で傾きが無いため、基準マークがセンサエリアの中央に検出される。これに対し、センサ142が基準マークを検出するときは、キャリッジのセンサ142側が下方に傾いているため、基準マークがセンサエリアに対して上方に移動したデータがその移動量に応じて検出される。この場合、検出に係る基準マークでの、検出センサ141、142が検出するデータの差がその基準マークにおける傾きデータとしてメモリ208に保存される。
【0025】
図6(c)は、キャリッジのセンサ142側で、図6(b)に示す場合と逆に上方に傾きがある場合を示している。この場合は、センサ142が基準マークを検出するときは、キャリッジのセンサ142側が上方に傾いているため、基準マークがセンサエリアに対して下方に移動したデータがその移動量に応じて検出される。そして、同様に、検出に係る基準マークでの、検出センサ141、142が検出するデータの差がその基準マークにおける傾きデータとしてメモリ208に保存される。このように、センサによって複数の基準マークそれぞれのキャリッジに対する相対位置を検出し、この検出結果に基づいて、1つの基準マークから次の基準マークに関する前記傾き量のデータを算出する。図4に示した傾き演算回路202は、この傾き量算出部として機能する。また、この基準マークの検出は、記録時のキャリッジの移動状態と同じ条件で行なう。
【0026】
なお、上述した隣接する2つの基準マークの間隔は、キャリッジに搭載された第1センサ141と第2センサ142との間の距離と同じか、または短い間隔である。
【0027】
以上のように、キャリッジの移動方向に配列する複数の基準マークそれそれで求められる、センサ141、142による検出データの差である、傾きデータは、基準マークごとにメモリ208に保存される。
【0028】
図7は、本実施形態に係る記録装置の記録動作を示し、特に、記録ヘッドの姿勢制御を示すフローチャートである。
【0029】
図7において、記録モードを含む記録データを受信し(S101)、記録動作が開始されると、先ず、キャリッジの移動、すなわち、記録ヘッドの走査を開始する前に、基準マークごとの傾きデータに基づく各基準マーク間の傾き量を求める処理を行なう。最初に、受信データから記録モードを確認する(S102)。キャリッジの速度は記録モードによって定まっているので、各基準マーク間の距離から、基準マーク間のキャリッジの移動時間を求める(S103)。具体的には、本実施形態では、2つのセンサのうち移動方向前方に位置する、例えば第1センサ141が、k番目(kは、1〜nのいずれかの整数で、nは基準マークの数)の基準マークkを通過してから、同じ前方の第1センサ141が、k+1番目の基準マークk+1を通過するまでの時間を求める。
【0030】
次に、図6(a)〜(c)にて上述したように、メモリに保存された、検出センサ141、142が検出するデータの差である、基準マークごとの傾きデータを読み出す(S104)。そして、傾き演算回路202によって、基準マーク間のキャリッジの傾き量を求める(S105)。具体的には、ステップS104で読み出した、基準マークkの傾きデータが示す値と基準マークk+1の傾きデータが示す値の差を求める。そして、この差を、ステップS103で求めた、基準マークkと基準マークk+1との間の移動時間で割った商、つまり、単位あたりの傾き量を求める。
【0031】
次に、ステップS105で求めた単位時間当たりの傾き量を、単位時間当たりの記録ヘッドの傾き補正量に変換する。具体的には、記録ヘッドを傾けるための偏心カムの、単位時間当たりの回転角に変換し、さらに、このカムを回転させるモータの、単位時間当たりの回転数に変換する(S106)。
【0032】
以上説明した記録ヘッドの傾き補正量を求める処理を総ての基準マーク間に関して行う。そして、所定のタイミングで、キャリッジの往路の移動動作を開始する(S107)。この移動では、キャリッジが基準マークkの位置に到達(S108)するごとに、ステップS106で求めメモリに格納した、基準マークkから基準マークk+1の間のカムモータの駆動データを読み出し(S109)、そのデータに基づいてカムモータを駆動する(S110)。そして、次の基準マークk+1の位置に到達すると(S111)、往路の記録が終了であるか否かを判断する(S112)。記録が終了していなければ、現在の基準マークの位置をkとして、S109へ戻り同様の処理を行なう。以上の処理によって、基準マークから次の基準マークの間に、この区間のキャリッジの姿勢変化による記録ヘッドの傾きを相殺するよう記録ヘッドを傾けることができ、結果として、キャリッジの姿勢変化による記録位置ずれを抑制することができる。
【0033】
往路の記録が終了(S112)したと判断したときは、次に、記録が終了か否かを判断する(S113)。記録が終了でないときは、復路の記録を行う。復路の記録でも同様に記録ヘッドの傾き補正をする。すなわち、キャリッジが復路の移動を開始して、キャリッジが基準マークkの位置に到達するごとに(S114)、基準マークkから基準マークk−1のカムモータの駆動データを読み出し(S115)、データに基づいてカムモータを駆動する(S116)。そして、次の基準マークk−1の位置に到達すると(S117)、復路の記録が終了であるか否かを判断する(S118)。記録が終了していなければ、現在の基準マークの位置をkとして、ステップS115の処理を繰り返す。復路の記録が終了すると(S118)、記録が終了か否かを判断する(S119)。記録が終了であればそのまま終了するが、記録が続行される場合は、往路の記録を行うため、ステップS108へ処理を移行する。
【0034】
なお、本実施形態の記録ヘッドの傾き補正用のモータの制御について説明する。本実施形態では、モータとしてDCモータを用いる。モータの回転速度を制御するため、モータ制御回路204にてPWM信号を生成し、モータドライブ205へ送信する。モータドライブ205は、PWM信号に基づいてモータ125の回転を制御する。
【0035】
また、本実施形態の装置において基準マーク間の傾きの差を検出するタイミングは次のとおりである。先ず、記録装置の起動時または記録開始前である。あるいは記録装置の設置時における、初期動作のタイミングで検出するものである。初期動作で実施することにより、それ以降は記録ヘッドの傾きが補正された記録ができる。次に、記録枚数あるいはキャリッジの移動回数がそれぞれ所定値になったタイミングで実施する。装置を稼動することにより、キャリッジレールの汚れ、キャリッジレールおよびレールリングの磨耗等が発生し、キャリッジの搬送状態が経時変化することがあるからである。
【0036】
次に、本実施形態の記録装置における記録モードの違いによるキャリッジの移動速度について説明する。一般に、記録モードは、記録装置に接続されたホストコンピュータから、USB等のインターフェースにより記録データとともに送信される。一方、記録装置の記録モードは、記録装置によっていくつかのモードが決められている。さらに、その記録モードによって、キャリッジの移動速度が決まっている。本実施形態では、上述した方法で、プリンタの持つ搬送速度に合わせたキャリッジの傾きデータを検出し、不揮発性のメモリ208に保存する。記録時には、送信されてきた記録モードに合わせたデータをメモリ208から読み出して傾き制御を行いながら記録するため、ドットの記録位置ずれが少なくなり、記録画質が向上される。
【0037】
(他の実施形態)
本発明の上述した実施形態は、記録ヘッドを搭載するキャリッジの姿勢変化に起因した記録ヘッドの傾き補正に本発明を適用したものであるが、本発明の適用はこの形態に限られない。例えば、記録装置において記録媒体上に記録されたパッチなどを測食する溜めの測色ヘッドを備える場合にも適用できる。すなわち、記録装置において測色ヘッドを搭載したキャリッジがその移動に伴って姿勢変化する場合に、その測色ヘッドの傾き補正にも本発明を適用することができる。
【0038】
また、記録ヘッドはインクジェット方式に限られない。例えば、熱転写方式の記録ヘッドがキャリッジに搭載され、キャリッジの移動によりってその記録ヘッドの走査を行なう記録装置に対して本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
101 キャリッジ
102 レールリング
103 サブレールコロ
111 レール支持板
112 レール調整板
113 キャリッジレール
121 記録ヘッド
122 押さえバネ
123 シャフト123
124 偏心カム
125 モータ
126 カムセンサ
131 プラテン
132、133 基準マーク
141 第1センサ
142 第2センサ
203 ヘッドの傾け量を算出する回路
204 モータ制御回路
205 モータドライブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドを搭載したキャリッジを移動させることにより当該ヘッドの走査を行なう記録装置であって、
キャリッジの移動範囲に面して配設される部材であって、当該移動の方向に沿って配列する複数の基準マークが設けられた部材と、
前記配列する複数の基準マークにおける1つの基準マークから次の基準マークを前記キャリッジが移動する間に当該キャリッジが傾くときの傾き量のデータを保持する傾きデータ保持手段と、
前記1つの基準マークから次の基準マークを前記キャリッジが移動する間に、前記傾き量のデータに基づき、前記キャリッジの傾きによるヘッドの傾きを相殺するようヘッドを傾かせる傾き制御手段と、
を具えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記キャリッジに取り付けられたセンサを有し、当該キャリッジを移動させることにより、前記センサによって前記配列する複数の基準マークそれぞれの当該キャリッジに対する相対位置を検出し、前記検出結果に基づいて、前記1つの基準マークから次の基準マークに関する前記傾き量のデータを算出する傾き量算出手段、をさらに具えたことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記傾き量のデータの算出は、前記記録装置の記録開始前、前記記録装置の起動時、または記録枚数あるいはキャリッジの移動回数が所定値になったタイミングで行なうことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記複数の基準マークの検出は、記録時のキャリッジの移動状態と同じ条件で行なうことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111776(P2013−111776A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257447(P2011−257447)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】