記録装置
【課題】記録媒体の搬送精度の低下を抑制し、かつ、斜行を補正することができる、記録媒体の搬送方法を提供する。
【解決手段】記録装置には、ロール状の記録媒体を保持する給紙部と、記録媒体の幅方向に走査する記録ヘッドが設けられており、記録ヘッドからのインク吐出で記録媒体に記録を行う記録部とが設けられている。給紙部と記録部との間に設けた搬送ローラによって記録部に間欠搬送される記録媒体の斜行量に応じて、記録媒体にかかる張力を張力付与機構によって調整しながら、記録媒体を記録部に搬送する。
【解決手段】記録装置には、ロール状の記録媒体を保持する給紙部と、記録媒体の幅方向に走査する記録ヘッドが設けられており、記録ヘッドからのインク吐出で記録媒体に記録を行う記録部とが設けられている。給紙部と記録部との間に設けた搬送ローラによって記録部に間欠搬送される記録媒体の斜行量に応じて、記録媒体にかかる張力を張力付与機構によって調整しながら、記録媒体を記録部に搬送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状の記録媒体に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置には、A2以上の大判サイズの記録媒体に画像などを記録可能なものがある。この記録装置においては、記録媒体として、ロール紙(以下、ロール紙が巻き回されたロール部分を「ロール部」とし、ロール部から引き出された部分を「用紙部」とする)が利用されることが多い。ロール部からの用紙部の引き出しは、現状、搬送ローラによって行われている。しかしながら、このような記録装置で使用されるロール紙はロール状に巻き回されているため、単票紙に比べて重量が大きく、ロール部から用紙部を引き出すときの搬送ローラにかかる負荷は大きなものとなっている。そのため、搬送ローラを駆動する搬送モータの駆動力のみでは、ロール部が回転せず、ロール紙が破断する等の可能性がある。そこで、ロール部を回転させるためのロールモータを設け、搬送モータと共にロールモータを駆動させながら、ロール部から用紙部を引き出すようにする記録装置が開発されている。
【0003】
この種の記録装置としては、例えば特許文献1に開示されているものが知られている。この記録装置は、搬送ローラと、ロールモータと、搬送モータと、ロール紙に生じる張力を測定する張力測定手段と、張力の測定結果に基づいて、ロールモータか搬送モータの少なくとも一方の駆動を制御するモータ制御部と、を有し、ロール紙を間欠搬送する。この構成では、張力測定手段によって精度よく測定された張力に基づいてモータがフィードバック制御され、ロール紙の搬送量を決定するので、ロール紙に作用する張力を適切なものに制御可能となり、ロール紙の巻径の変化による張力の変動を防ぐことができる。
【0004】
これとは異なる構成の記録装置として、特許文献2に開示されているものが知られている。この記録装置は、搬送ローラと、搬送モータと、ロール紙のロール部の外周面に当接可能な位置に配置されている繰り出しローラと、繰り出しモータと、搬送ローラの停止時間において繰り出しローラを回転させる制御部とを有する。搬送モータは搬送ローラを回転させ、繰り出しモータは繰り出しローラを回転させる。この構成では、搬送ローラによる用紙部の搬送動作終了から次の搬送動作開始までの間に、搬送ローラの搬送動作による搬送量に対応する量だけ、ロール紙のロール部を、ロール紙が送り出される方向に回転させておく。これにより、搬送ローラによる搬送時には、用紙部は常に弛みを持つことになり、用紙部を搬送ローラで搬送するときに、用紙部は張力の影響を受けることがないため、用紙部の搬送精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−263044号公報
【特許文献2】特開2007−203564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、用紙部に常に張力が与えられているため、この張力によって用紙部が搬送ローラ上をすべり、制御部から指令された搬送量より実際の搬送量が少なくなることがあり、搬送精度に影響を与える恐れがある。
【0007】
特許文献2では、用紙部に張力がかからないため、特許文献1で問題となる、制御部から指令された搬送量より実際の搬送量が少なくなることを防止することができる。一方、ロール紙のセット位置(ロール部が保持されている位置)のずれに起因して、搬送される用紙部に斜行(スキュー)が発生する場合がある。一般的には、ロール部を、用紙部を巻き取る方向に回転させて、用紙部に張力を与えることで、用紙部を搬送しようとする搬送力と張力とによって、用紙部の斜行が補正され、シワの発生が防止される。しかしながら、特許文献2の構成では、用紙部が弛んでおり、張力が付与されないため、用紙部に斜行が発生した場合、斜行の補正が困難であるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、記録媒体の搬送精度の低下を抑制し、かつ、斜行を補正することができる、記録媒体の搬送方法および記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
記録装置には、ロール状の記録媒体を保持する給紙部と、記録媒体の幅方向に走査する記録ヘッドが設けられ、記録ヘッドからのインク吐出で記録媒体に記録を行う記録部とが設けられている。この記録装置において、給紙部と記録部との間に設けた搬送ローラによって記録部に間欠搬送される記録媒体の斜行量に応じて、記録媒体にかかる張力を張力付与機構によって調整しながら、記録媒体を記録部に搬送する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、記録媒体の搬送精度の低下を抑制しつつ、記録媒体の斜行の補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る記録装置の一実施形態の概略斜視図である。
【図2】図1に示す記録装置の概略側面図である。
【図3】スプールユニットの概略構成図である。
【図4】張力付与機構の概略構成図である。
【図5】搬送ローラ駆動機構の概略構成図である。
【図6】制御部を示したブロック図である。
【図7】用紙部の搬送状態を示す概略図である。
【図8】制御モード1における速度、弛み量、張力および電流と時間との関係を示した図である。
【図9】制御モード2における速度、弛み量、張力および電流と時間との関係を示した図である。
【図10】用紙部が斜行した様子を示す平面図である。
【図11】斜行量と制御モードの関係を示す図である。
【図12】第1の実施形態における記録動作の流れを示したフローチャートである。
【図13】第2の実施形態における制御モード1および制御モード2の、速度、弛み量、張力および電流と時間の関係を示す図である。
【図14】第3の実施形態における記録動作の流れを示すフローチャートである。
【図15】第4の実施形態における記録動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
【0013】
[実施形態1]
図1は、本発明に係る記録装置の一実施形態の概略斜視図である。図2は、図1に示す記録装置の概略側面図である。なお、図1、2において、記録装置の内部構造を分かりやすくするために、外枠の一部を省略して図示している。
【0014】
本発明の記録装置1は、記録媒体であるロール紙6が配置される給紙部と、ロール紙6の搬送方向で給紙部の下流側に、ロール紙6に記録を行う記録部と、記録部の下流側に、記録部で記録されたロール紙6を排紙する排紙部と、を有する。
【0015】
給紙部には、ロール状に巻き回されたロール紙6がスプールシャフト5によって固定されている。なお、ロール紙6の、ロール状に巻き回された部分を「ロール部6a」、ロール紙6の、ロール部6aから引き出された部分を「用紙部6b」とする。
【0016】
記録部には、インク吐出をする記録ヘッド2と、記録ヘッド2を載置するキャリッジ3とが備えられており、キャリッジ3はキャリッジシャフト4と不図示のガイドレールに沿って、方向D1、つまり用紙部6bの幅方向に往復走査が可能となっている。また、キャリッジ3の側面には、用紙部6bの有無および用紙部6bの幅方向の端部が検出でき、かつ、用紙部6bの斜行量を検知することができる斜行量検知手段である、用紙端部検出センサ13が配設されている。したがって、キャリッジ3を往復走査させる事により、用紙端部検出センサ13によって用紙部6bの幅を検出することができる。また、所定量(例えば、300mm)を搬送させて搬送の前後で用紙部6bの幅方向の端部の位置を検出する事で、用紙部6bの斜行量を検出することができる。
【0017】
排紙部には排紙カバー14が設けられており、記録部から排出される用紙部6bは、排紙カバー14上をすべり、不図示の排紙バスケットに収納されるようになっている。
【0018】
給紙部と記録部の間には、給紙部から搬送されるロール紙6の用紙部6bを記録部へガイドするための搬送路が外ガイド7と内ガイド8とで形成されている。搬送路の下流には、一方の端部に搬送ロールギア22(図5参照)が設けられた搬送ローラ10と搬送ローラ10に対向しているピンチローラ11とからなるローラ対が設けられている。給紙部から搬送されたロール紙6の用紙部6bはこのローラ対で挟持され記録部に搬送される。
【0019】
記録部には、ロール紙6の用紙部6bを支持するプラテン12が設けられており、記録ヘッド2を搭載したキャリッジ3は、プラテン12と間隔をおいて対向するように位置している。
【0020】
記録部と排紙部との間には、カッター29が配置されており、カッター29で用紙部6bの、画像などが記録された部分の後端を切断するようになっている。なお、記録装置1の本体には搬送モータ24が設けられているが、詳しくは後述する。
【0021】
図3に、ロール紙6の取り付けユニットの概略構成図を示す。本発明においては、ロール紙6のロール部6aは、図3に示す取り付けユニットであるスプールユニット16によって記録装置1の本体に取り付けられている。スプールユニット16は、スプールシャフト5と、スプールシャフト5に固定された基準側フランジ26と、スプールシャフト5を挿入可能な非基準側フランジ27と、を有する。基準側フランジ26には、スプールシャフト5とは反対の面にロールギア17が設けられている。なお、基準側フランジ26のスプールシャフト5側には基準側装填部26aが設けられ、非基準側フランジ27のスプールシャフト5側には、非基準側装填部27aが設けられている。
【0022】
ロール紙6の芯である中空の紙管15にスプールシャフト5を差し込み、紙軸15に基準側装填部26aを押し込むことで、ロール部6aの一端が基準側フランジ26によって保持される。次に、ロール部6aの他端側から、非基準側フランジ27の非基準側装填部27aを紙筒15に押し込み、スプールシャフト5を非基準側装填部27aに通すことで、ロール部6aの他端が非基準側フランジ27によって保持される。
【0023】
基準側フランジ26と非基準側フランジ27は、記録装置1の本体に回転可能に保持されている。そのため、スプールシャフト5も回転可能であり、同様にロール部6aも回転可能となっている。
【0024】
図4に、張力付与機構の概略構成図を示す。張力付与機構40は、スプールユニット16と、記録装置1の本体内に設けられた、ギア19aを有するロールモータ19およびロールモータ19の駆動力を、ギア19aからスプールユニット16のロールギア17に伝達するロール入力ギア18と、を有する。また、ロール入力ギア18にはエンコーダフィルム20が取り付けられており、エンコーダフィルム20の回転動作をエンコーダセンサ21で検出可能となっている。
【0025】
ロール入力ギア18の回転速度は、エンコーダフィルム20の回転速度と同じであるため、エンコーダフィルム20の回転速度をエンコーダセンサ21によって検知する。そして、検知したデータを基にロールモータ19の駆動制御が行なわれる。ロールモータ19は、主に、無負荷駆動、所定力による励磁駆動、ロール紙逆転駆動を行う。所定力による励磁駆動では、用紙部6bの搬送方向とは逆向きの張力(バックテンション)を与えながら用紙部6bを搬送することで、ロール紙6を給紙部にセットしたときに生じる斜行の補正やたるみを取ることができる。なお、張力の負荷調整は、ロールモータ19に流れる電流を調整することでロールモータ19の発生トルクを制御して行う。
【0026】
図5に、搬送ローラ駆動機構の概略構成図を示す。搬送ローラ駆動機構50は、搬送ローラ10の搬送ロールギア22と、記録装置1の本体内に設けられた、ギア24aを有する搬送モータ24と搬送モータ24の駆動力を、ギア24aから搬送ロールギア22に伝達する搬送入力ギア23と、を有する。また、搬送入力ギア23には、エンコーダフィルム28が取り付けられており、エンコーダフィルム28の回転動作をエンコーダセンサ25で検出可能となっている。
【0027】
搬送入力ギア23の回転速度は、エンコーダフィルム28の回転速度と同じであるため、エンコーダフィルム28の回転速度をエンコーダセンサ25によって検知する。そして、検知したデータを基に搬送モータ24の駆動制御が行なわれる。
【0028】
次に、ロール紙6の用紙部6bが給紙部から記録部に供給されて排紙部に排紙されるまでの流れを説明する。給紙部に固定されているロール紙6のロール部6aから用紙部6bがユーザによって引き出される。引き出されたロール紙6、つまり用紙部6bはユーザによってさらに搬送され、外ガイド7と内ガイド8とで形成される搬送路を経由して、互いに間隔をあけて位置している搬送ローラ10とピンチローラ11の間に向かう。なお、搬送ローラ10とピンチローラ11とからなるローラ対の上流には、不図示の用紙検出手段が設けられている。この用紙検出手段によって用紙部6bが検知されると、互いに間隔を有していた搬送ローラ10とピンチローラ11とが近接し、用紙部6bを挟持する。これ以降は、搬送ローラ10の回転によって、用紙部6bは給紙部から自動で送り出される。
【0029】
用紙部6bは搬送ローラ10によって、記録ヘッド2と対向する記録位置に設けられたプラテン12まで搬送される。なお、この際、キャリッジ3に搭載された用紙端部検出センサ13によって、用紙部6bの幅や斜行量の検出を行う。なお、この斜行量によって、異なる制御モードで記録を行うが、詳しくは後述する。
【0030】
そして、キャリッジ3がキャリッジシャフト4に沿って往復走査して、記録ヘッド2からのインク吐出により1ライン分の記録を用紙部6に行う。そして、所定量だけ用紙部6bを搬送し、再度1ライン分の記録を行う。この1ライン分の記録と搬送を繰り返すことで、用紙部6bに所定の記録が行われる。
【0031】
記録が終了すると、搬送ローラ10によって、用紙部6bの、記録が行われた部分の後端が、用紙カッター29による切断位置に位置するまで用紙部6bが搬送され、用紙カッター29にて切断される。記録部分を有する用紙部6bは、排紙カバー14上をすべり、不図示の排紙バスケットに収納される。
【0032】
図6は、制御部を示したブロック図である。制御部100は、ロールモータ19および搬送モータ24の制御を実現し、張力付与機構40や搬送ローラ駆動機構50の制御を実現するための部分である。制御部100は不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、モータドライバ等で構成されている。そして、制御部100は、主制御部110、ロールモータ制御部120、および搬送モータ制御部130を有している。主制御部110は、ロールモータ19と搬送モータ24との相関駆動を実現するため、ロールモータ制御部120と、搬送モータ制御部130との両方に対して指令を与える。ロールモータ制御部120は、制御モード1と制御モード2の2つの制御モードを有する。用紙端部検出センサ13により検知した用紙部13の斜行量は、主制御部110にフィードバックされ、その斜行量を基にロールモータ制御部120の制御モードを切り替える。
【0033】
ロールモータ19の動きは、ロール入力ギア18に取り付けられたエンコーダフィルム20の動きをエンコーダセンサ21で検知し、その結果をロールモータ制御部120にフィードバックさせることで制御されている。同様に、搬送モータ24の動きは、搬送入力ギア23に取り付けられたエンコーダフィルム28の動きをエンコーダセンサ25で検知し、検知結果を搬送モータ制御部130にフィードバックさせることで制御されている。
【0034】
図7は、用紙部6bの搬送状態を示す概略図である。搬送ローラ10とロール部6aの間の用紙部6bにかかる張力をTpap、搬送ローラ10の搬送速度(搬送ローラ10の断面の円周上の速度)をVlf、ロール部6aからの用紙部6bの送り速度(ロール部6aの断面の円周上の速度)をVrollとする。また、搬送ローラ10とロール紙6aの間のロール紙6bの弛み量をSpap、用紙部6bの実際の搬送速度をVpapとする。Vlf、Vroll、Vpapについては図中矢印の方向、つまり用紙部6bが送り出される方向が正となる。ここで、用紙部6bの搬送速度は搬送ローラ10の速度で決定されるので、Vpap=Vlfとなる。弛み量Spapについては、弛みが無い状態を弛み量0とし、弛んだ量を絶対値で表示する。以降に示す波形図の力関係においては、図7に示す方向をそれぞれ基準として説明する。
【0035】
次に、本実施形態における搬送ローラ10とロール部6aの動作関係について図8を用いて説明する。図8は、制御モード1における速度、弛み量、張力および電流と時間との関係を示した図であり、図9は、制御モード2における速度、弛み量、張力および電流と時間との関係を示した図である。なお、いずれの図も、(a)は、縦軸に搬送ローラ10の搬送速度Vlf、横軸に時間Tを取ったものである。(b)は、縦軸に用紙部6bの送り速度Vroll、横軸に時間Tを取ったものである。(c)は、縦軸に用紙部6bの弛み量Spap、横軸に時間Tを取ったものである。(d)は、縦軸に用紙部6bにかかる張力Tpap、横軸に時間Tを取ったものである。(e)は、縦軸にロールモータ19に通電される電流I、横軸に時間Tを取ったものである。なお、電流Iが正の値のときは、張力付与機構40によって、ロール部6aは、用紙部6bを送り出す方向(図7では反時計周り)に回転し、電流Iが負の値の時にはロール部6aは、用紙部6bを巻き取る方向(図7では時計回り)に回転する。
【0036】
搬送ローラ10の搬送速度Vlfは、加速領域(時間Ta‐Tc間)、定速領域(時間Tc‐Te間)、および減速領域(時間Te‐Tf間)の3つの領域をもつ動作波形となる。
【0037】
時間Tbは、搬送ローラ10による用紙部6bの搬送速度Vlfよりも、ロール部6aの送り速度Vrollのほうが大きくなる時点である。したがって、時間Ta‐Tb間では、用紙部6bに張力Tpapがかかる張力発生領域となる。この領域(時間Ta‐Tb間)では、ロールモータ19には正方向の電流が流れ、ロール部6aを図7中における反時計回り方向(用紙部6bを送り出す方向)に回転するようにロールモータ19を動作させている。しかしながら、搬送ローラ10がそれ以上の加速度で用紙部6bを搬送しているので、ロール部6aは、搬送ローラ10によって連れ回っている状態となる。そのため、用紙部6bの弛み量Spapは発生せず、用紙部6bにかかる張力Tpapが発生する。このように搬送ローラ10によってロール紙6aが加速させられる状況では、用紙部6bには搬送方向と逆方向に慣性力が発生して張力Tpapが上昇する。しかしながら、制御モード1では、ロールモータ19に正方向の所定電流IAを与えることで張力Tpapの上昇を抑えて、所定張力TpapAになるように制御している。
【0038】
なお、このロールモータ19に通電する電流の量を変化させることで、用紙部6bの張力Tpapを変化させることが可能である。所定電流IAよりも電流を大きくすれば、ロールモータ19が、ロール部6aから用紙部6bを送り出す方向(図7では反時計回り方向)にさらに加速するため、用紙部6bにかかる張力Tpapは所定張力TpapAよりも小さくなる。所定電流IAよりも電流を小さくすれば、逆に張力Tpapは所定張力TpapAよりも大きくなる。図9に示す制御モード2では、所定電流IAよりも大きな所定電流IBを与えることで、用紙部6bにかかる張力を、所定電力IAのときの張力TpapAよりも小さな張力TpapBにすることができる。
【0039】
これ以降の説明は、図8に示す制御モード1と図9に示す制御モード2とで同様である。次に、時間Tbになる前に、ロールモータ19へ通電する電流Iを増加させていくと、時間Tb‐Tcの間では、用紙部6bの送り速度Vrollが、搬送ローラ10による用紙部6bの搬送速度Vlfを上回る。そのため弛み量Spap>0、張力Tpap=0となる。搬送ローラ10の加速領域(時間Ta‐Tc)後、定速領域(時間Tc‐Te)および減速領域(時間Te‐Tf)では、搬送ローラ10による用紙部6bの搬送速度Vlfと用紙部6bの送り速度Vrollとが一致する状態(Vlf=Vroll)で動作する。そのため、弛み量Spapが所定弛み量SpapA(SpapB)、張力Tpapが0にて維持されることになる。搬送ローラ10の動作終了後(時間Tf)にはロールモータ19を、用紙部6bを巻き取る方向(用紙部6bの搬送方向とは逆:図7では時計回り方向)に回転させ、用紙部6bの弛み量がSpap=0(時間Tg)となるまで弛み取りを行う。用紙部6bの弛み取りは、搬送ローラ10の動作停止(時間Tf)から次の用紙部6bの供給動作開始(時間Ta’)までの間に完了する。以上の動作は、搬送ローラ10の間欠搬送が行われるたびに、毎回実施される。
【0040】
上述した張力発生領域(時間Ta‐Tb)において、所定張力TpapA、TpapBを発生させるのは、用紙部6bに発生した斜行を補正するためである。ここで図10を用いて、用紙部6bの斜行が補正されるメカニズムについて説明する。図10は、用紙部が斜行した様子を示す平面図であり、(a)は用紙部6bが斜行状態で搬送されているときの搬送力Hと張力Tpapの状態を示す平面図であり、(b)は斜行状態で搬送されている用紙部6bに実際に作用する有効搬送力Fを示す平面図である。図10(a)に示すように、用紙部6bが一方の側方であるP2側端部側に斜行した状態で搬送されると、用紙部6bの他方の側方であるP1側端部が張り、P2側端部が緩む。このため張力Tpapとしては、P1側端部で強く、P2側端部で弱くなる。搬送ローラ10とピンチローラ11とのローラ対によって発生する搬送力Hは、斜行の有無に関わらず、P1側端部およびP2側端部とも、均等な搬送力Hとなる。一方、用紙部6bに対して実際に作用する有効搬送力Fは搬送力Hと張力Tpapとの差である。したがって、図10(b)に示すように、実際に作用する有効搬送力FはP2側端部で強く、P1側端部で弱くなり、用紙部6bはP2側端部からP1側端部へ斜行が補正されることになる。つまり、斜行補正は張力Tpapが大きいほど、P2側端部とP1側端部の張力の差も大きくなって、斜行補正の効果が大きくなる。なお、張力Tpapは搬送ローラ10によって用紙部6bに加速度が与えられているとき、用紙部6b自身の慣性力が張力を増やす方向に働くため、最も効果的に張力Tpapを発生させることが可能である。
【0041】
一方で、この張力Tpapが働いている間は、搬送ローラ10では用紙部6bにスリップが発生しやすくなる。そこで、本実施形態では、張力発生領域(時間Ta‐Tb間)以降の領域(時間Tb‐Tf間)では、用紙部6bに張力Tpapを発生させないようにし、搬送精度を保つようにしている。
【0042】
以上のことから、制御モード1は制御モード2に比べて用紙部6bにかかる張力が大きいため、斜行補正の効果が大きい(図8参照)。一方で、制御モード2は、制御モード1よりも用紙部6bにかかる張力が小さいので、搬送精度を保った搬送が可能となる(図9参照)。
【0043】
なお、本実施形態ではロールモータ19に正方向の電流を加えているが、場合によっては負方向の電流を加えて、慣性力による張力に加算してロールモータ19による張力を発生させても良い。また、ロール紙6の状態(坪量、幅サイズ、巻径)によって用紙部6bの慣性力は変化するため、ロール紙6の状態によって所定電流Iを変化させる必要がある。
【0044】
また、制御モード1と制御モード2とで、所定張力TpapをTpapA>TpapBとしているが、TpapA=TpapBとし、張力発生領域(時間Ta‐Tb)を制御モード2よりも制御モード1のほうが長くなるように時間を設定してもよい。これにより、制御モード1は制御モード2と比較して、より長い時間をかけて用紙部6bの斜行を補正することができるため、斜行補正の効果が大きくなる。
【0045】
次に、図11および図12を参照して、斜行量検知手段により検知した斜行量に応じて、制御モード1と制御モード2とを切り替える、本発明に係る記録装置の記録動作について説明する。図11は斜行量と制御モードの関係を示す図である。図12は本実施形態における記録動作の手順を示すフローチャートである。なお、本実施形態の制御動作を「第1の制御」と定義する。
【0046】
図11に示すように、斜行検知手段である用紙端部検出センサ13で用紙部6bの斜行量を検知した結果、斜行量が予め定められた基準値であるob1と同じかまたは小さい場合は制御モード2を用いる。そして、斜行量がob1よりも大きく、ob1より大きな値として予め定められた上限値であるob2以下の場合は制御モード1を用いる。これは、斜行補正の効果が制御モード1>制御モード2となるように張力を調整しているためである。
【0047】
また、斜行量がob2より大きければユーザによって再度ロール紙6を給紙部にセットし直すことを不図示のオペレーションパネル上に表示する。制御モード1において、記録動作における斜行補正の効果にも限界がある。そのため、制御モード1を用いても斜行により記録した画像にスジがでる恐れがあるような大きな斜行量の場合は、ロール紙6の再セットを行う必要があるため、ユーザにロール紙6の再セットを指示する。
【0048】
次に、図12を使って、具体的な記録動作の手順を説明する。記録動作が開始して、ロール紙6の給紙が開始される(S01)と、用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させて、搬送前後での用紙部6bの端部位置を用紙端部検出センサ13で検出することにより斜行量を検出する(S02)。斜行量がob1以下であるか判定し(S03)、斜行量がob1以下である場合は、制御モード2で記録を行う(S04)。斜行量がob1より大きい場合は、斜行量がob2以下であるか判定する(S05)。斜行量がob1より大きくob2以下であれば、制御モード1で記録を行う(S06)。斜行量がob2より大きければ、ユーザによって再度ロール紙6がセットし直され、再度給紙される(S07)。各制御モードでの記録を行い(S04、S06)、1つの画像の記録が終了すると(S08)、次の画像の記録が行われるかどうかの判断をする(S09)。次の画像の記録が行われる場合、給紙を行うステップ(S01)に戻り、以降、上述と同じステップを行う。つまり、本実施形態では、1つの画像に対して斜行量の判定を1回行うこととなる。
【0049】
以上説明したように、1つ目の画像記録時における用紙部6bの斜行量がob1より大きくob2以下であれば、斜行補正の効果が大きい制御モード1で用紙部6bの搬送が行われる。そのため、より早く斜行を補正することが可能となる。制御モード1での記録動作にて斜行が補正され、用紙部6bの斜行量がob1以下となれば、次の画像記録時以降の用紙部6bの搬送には制御モード2が用いられるため、張力Tpapに起因して生じる搬送量の誤差が小さい用紙部6bの搬送が可能となる。また逆に、制御モード2による用紙部6bの搬送途中に、何らかの外力が用紙部6bに加わり、斜行量が大きくなっても(ob1より大きくob2以下)、次画像の記録動作では、斜行補正の効果が大きい制御モード1で用紙部6bの搬送を行うことが可能である。したがって、搬送精度の低下を抑制しつつ、斜行の補正を行うことができる。
【0050】
[実施形態2]
次に、本発明に係る記録装置の第2の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態とは異なり用紙部6bに一定の張力を付与し続けることが特徴である。なお、第1の実施形態と同じ構成に関しては、同一符号を用い、その説明を省略する。
【0051】
図13は、本実施形態における制御モード1および制御モード2の、速度、弛み量、張力および電流と時間の関係を示す図である。図13中のグラフの縦軸および横軸はそれぞれ第1の実施形態における制御モード1を示す図8および制御モード2を示す図9と同様である。図13で示す制御モード1および制御モード2は、用紙部6bの弛み量Spapを用紙部6bの搬送中は常にほぼゼロとしたものである。この制御モードを適用することで、用紙部6bに張力Tpapを長時間付与することが可能となり、斜行補正の効果が大きくなる。本実施形態においても用紙部6bの斜行量に応じて、ロールモータ19に通電される電流Iを制御し、張力Tpapを調整する。例えば、制御モード1では制御モード2より大きい張力Tpapを付与するため、破線で示した制御モード1の電流I’と、実線で示した制御モード2の電流I’’との間にΔIのオフセットを備える。そのため、制御モード1の張力TpapC>制御モード2の張力TpapDとなる。
【0052】
なお、第2の実施形態の制御モードを制御モード1とし、第1の実施形態の制御モードを制御モード2としても良い。これにより、用紙部6bに張力を付与している時間が制御モード1のほうが長くなるため、張力Tpapが同じでも、制御モード1のほうが斜行補正の効果が大きくなる。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態においても、制御モード1は制御モード2と比較して、用紙部6bにかかる張力が大きいため、斜行補正の効果が大きい。また、制御モード2は用紙部6bにかかる張力が小さいため、制御モード1と比較して、搬送ローラ10における用紙部6bの搬送時にスリップが発生しにくく、搬送量の誤差の小さな用紙部6bの搬送が可能となる。そのため、用紙部6bの斜行量に応じて、制御モードを切り替えることで、用紙部6bの搬送精度の低下を抑制しつつ、斜行の補正を行うことができる。
【0054】
[実施形態3]
次に、本発明に係る記録装置の第3の実施形態について図面を参照して説明する。なお、上述の実施形態と同じ構成に関しては、同一符号を用い、その説明は省略する。
【0055】
本実施形態は、第1の実施形態とは記録動作の流れが異なる。図14は、本実施形態における記録動作の手順を示すフローチャートである。なお、本実施形態の制御動作を「第2の制御」と定義する。
【0056】
記録動作が開始され、ロール紙6の給紙が開始される(S11)と、用紙部6bを所定量搬送させて、搬送前後での用紙部6bの端部位置を用紙端部検出センサ13で検出することにより斜行量を検出する(S12)。このとき、検知回数n=1とする(S13)。斜行量がob1以下であるか判定し(S14)、斜行量がob1以下である場合は、制御モード2を選択する(S15)。斜行量がob1より大きい場合は、斜行量がob2以下であるか判定する(S16)。斜行量がob1より大きくob2以下であれば、制御モード1で記録を行う(S17)。斜行量がob2より大きければ、ユーザによって再度ロール紙6がセットし直され、再度給紙される(S18)。
【0057】
制御モードを選択(S15、S17)したら、次に、斜行の検知間隔X(例えばX=1200mm)×検知回数nが記録画像の長さLより短いかどうかを判定する(S19)。斜行の検知間隔X×検知回数nが記録画像の長さLよりも短い場合には、斜行の検知間隔X分の長さの記録を行う(S20)。そして、再度斜行検知を行う(S21)。このとき、検知回数nを1増やす(S22)。そして、斜行量の判定を行うステップ(S14)に戻り、以降、上述と同様のステップを行う。これを、検知間隔X×検知回数n>記録画像の長さLになるまで繰り返す。検知間隔X×検知回数n>記録画像の長さLになると、記録画像の長さLまで記録を行い(S23)、記録を終了する。
【0058】
以上説明したように、斜行の検知のタイミングを、画像ごとではなく、予め定めた距離である検知間隔ごとにすることによって、バナー記録のような長い画像(例えば10mなど)の場合にも一定の長さごとに斜行検知を行い、制御モードの決定を行う。そのため、常に最適な制御モードで記録を行うことができる。そのため、用紙部6bの搬送精度の低下を抑制しつつ、効率的に斜行の補正を行うことができる。
【0059】
[実施形態4]
次に、本発明に係る記録装置の第4の実施形態について図面を参照して説明する。なお、上述の実施形態と同じ構成に関しては、同一符号を用い、その説明は省略する。
【0060】
本実施形態は、第1の実施形態とは記録動作の流れが異なる。図15は、本実施形態における記録動作の手順を示すフローチャートである。記録前に外部から取り込まれた画像情報の中の記録画像の長さLを読み取る(S31)。記録画像の長さLが、予め定められた基準長さY(例えばY=1200mm)よりも短いか判定する(S32)。記録画像の長さLが基準長さYよりも短い場合、第1の実施形態に示す第1の制御(図12参照)を行い(S33)、記録画像の長さLが所定の基準長さY以上の場合、第2の実施形態に示す第2の制御(図14参照)を行う(S34)。記録を開始して(S35)、1つの画像の記録が終わると(S36)、記録動作が終了する。
【0061】
以上説明したように、記録物の長さによって最適な制御モードに設定できるため、搬送精度の低下を抑制しつつ、効率的に斜行の補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 記録装置
2 記録ヘッド
6 ロール紙(記録媒体)
10搬送ローラ
40張力付与機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状の記録媒体に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置には、A2以上の大判サイズの記録媒体に画像などを記録可能なものがある。この記録装置においては、記録媒体として、ロール紙(以下、ロール紙が巻き回されたロール部分を「ロール部」とし、ロール部から引き出された部分を「用紙部」とする)が利用されることが多い。ロール部からの用紙部の引き出しは、現状、搬送ローラによって行われている。しかしながら、このような記録装置で使用されるロール紙はロール状に巻き回されているため、単票紙に比べて重量が大きく、ロール部から用紙部を引き出すときの搬送ローラにかかる負荷は大きなものとなっている。そのため、搬送ローラを駆動する搬送モータの駆動力のみでは、ロール部が回転せず、ロール紙が破断する等の可能性がある。そこで、ロール部を回転させるためのロールモータを設け、搬送モータと共にロールモータを駆動させながら、ロール部から用紙部を引き出すようにする記録装置が開発されている。
【0003】
この種の記録装置としては、例えば特許文献1に開示されているものが知られている。この記録装置は、搬送ローラと、ロールモータと、搬送モータと、ロール紙に生じる張力を測定する張力測定手段と、張力の測定結果に基づいて、ロールモータか搬送モータの少なくとも一方の駆動を制御するモータ制御部と、を有し、ロール紙を間欠搬送する。この構成では、張力測定手段によって精度よく測定された張力に基づいてモータがフィードバック制御され、ロール紙の搬送量を決定するので、ロール紙に作用する張力を適切なものに制御可能となり、ロール紙の巻径の変化による張力の変動を防ぐことができる。
【0004】
これとは異なる構成の記録装置として、特許文献2に開示されているものが知られている。この記録装置は、搬送ローラと、搬送モータと、ロール紙のロール部の外周面に当接可能な位置に配置されている繰り出しローラと、繰り出しモータと、搬送ローラの停止時間において繰り出しローラを回転させる制御部とを有する。搬送モータは搬送ローラを回転させ、繰り出しモータは繰り出しローラを回転させる。この構成では、搬送ローラによる用紙部の搬送動作終了から次の搬送動作開始までの間に、搬送ローラの搬送動作による搬送量に対応する量だけ、ロール紙のロール部を、ロール紙が送り出される方向に回転させておく。これにより、搬送ローラによる搬送時には、用紙部は常に弛みを持つことになり、用紙部を搬送ローラで搬送するときに、用紙部は張力の影響を受けることがないため、用紙部の搬送精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−263044号公報
【特許文献2】特開2007−203564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、用紙部に常に張力が与えられているため、この張力によって用紙部が搬送ローラ上をすべり、制御部から指令された搬送量より実際の搬送量が少なくなることがあり、搬送精度に影響を与える恐れがある。
【0007】
特許文献2では、用紙部に張力がかからないため、特許文献1で問題となる、制御部から指令された搬送量より実際の搬送量が少なくなることを防止することができる。一方、ロール紙のセット位置(ロール部が保持されている位置)のずれに起因して、搬送される用紙部に斜行(スキュー)が発生する場合がある。一般的には、ロール部を、用紙部を巻き取る方向に回転させて、用紙部に張力を与えることで、用紙部を搬送しようとする搬送力と張力とによって、用紙部の斜行が補正され、シワの発生が防止される。しかしながら、特許文献2の構成では、用紙部が弛んでおり、張力が付与されないため、用紙部に斜行が発生した場合、斜行の補正が困難であるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、記録媒体の搬送精度の低下を抑制し、かつ、斜行を補正することができる、記録媒体の搬送方法および記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
記録装置には、ロール状の記録媒体を保持する給紙部と、記録媒体の幅方向に走査する記録ヘッドが設けられ、記録ヘッドからのインク吐出で記録媒体に記録を行う記録部とが設けられている。この記録装置において、給紙部と記録部との間に設けた搬送ローラによって記録部に間欠搬送される記録媒体の斜行量に応じて、記録媒体にかかる張力を張力付与機構によって調整しながら、記録媒体を記録部に搬送する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、記録媒体の搬送精度の低下を抑制しつつ、記録媒体の斜行の補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る記録装置の一実施形態の概略斜視図である。
【図2】図1に示す記録装置の概略側面図である。
【図3】スプールユニットの概略構成図である。
【図4】張力付与機構の概略構成図である。
【図5】搬送ローラ駆動機構の概略構成図である。
【図6】制御部を示したブロック図である。
【図7】用紙部の搬送状態を示す概略図である。
【図8】制御モード1における速度、弛み量、張力および電流と時間との関係を示した図である。
【図9】制御モード2における速度、弛み量、張力および電流と時間との関係を示した図である。
【図10】用紙部が斜行した様子を示す平面図である。
【図11】斜行量と制御モードの関係を示す図である。
【図12】第1の実施形態における記録動作の流れを示したフローチャートである。
【図13】第2の実施形態における制御モード1および制御モード2の、速度、弛み量、張力および電流と時間の関係を示す図である。
【図14】第3の実施形態における記録動作の流れを示すフローチャートである。
【図15】第4の実施形態における記録動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
【0013】
[実施形態1]
図1は、本発明に係る記録装置の一実施形態の概略斜視図である。図2は、図1に示す記録装置の概略側面図である。なお、図1、2において、記録装置の内部構造を分かりやすくするために、外枠の一部を省略して図示している。
【0014】
本発明の記録装置1は、記録媒体であるロール紙6が配置される給紙部と、ロール紙6の搬送方向で給紙部の下流側に、ロール紙6に記録を行う記録部と、記録部の下流側に、記録部で記録されたロール紙6を排紙する排紙部と、を有する。
【0015】
給紙部には、ロール状に巻き回されたロール紙6がスプールシャフト5によって固定されている。なお、ロール紙6の、ロール状に巻き回された部分を「ロール部6a」、ロール紙6の、ロール部6aから引き出された部分を「用紙部6b」とする。
【0016】
記録部には、インク吐出をする記録ヘッド2と、記録ヘッド2を載置するキャリッジ3とが備えられており、キャリッジ3はキャリッジシャフト4と不図示のガイドレールに沿って、方向D1、つまり用紙部6bの幅方向に往復走査が可能となっている。また、キャリッジ3の側面には、用紙部6bの有無および用紙部6bの幅方向の端部が検出でき、かつ、用紙部6bの斜行量を検知することができる斜行量検知手段である、用紙端部検出センサ13が配設されている。したがって、キャリッジ3を往復走査させる事により、用紙端部検出センサ13によって用紙部6bの幅を検出することができる。また、所定量(例えば、300mm)を搬送させて搬送の前後で用紙部6bの幅方向の端部の位置を検出する事で、用紙部6bの斜行量を検出することができる。
【0017】
排紙部には排紙カバー14が設けられており、記録部から排出される用紙部6bは、排紙カバー14上をすべり、不図示の排紙バスケットに収納されるようになっている。
【0018】
給紙部と記録部の間には、給紙部から搬送されるロール紙6の用紙部6bを記録部へガイドするための搬送路が外ガイド7と内ガイド8とで形成されている。搬送路の下流には、一方の端部に搬送ロールギア22(図5参照)が設けられた搬送ローラ10と搬送ローラ10に対向しているピンチローラ11とからなるローラ対が設けられている。給紙部から搬送されたロール紙6の用紙部6bはこのローラ対で挟持され記録部に搬送される。
【0019】
記録部には、ロール紙6の用紙部6bを支持するプラテン12が設けられており、記録ヘッド2を搭載したキャリッジ3は、プラテン12と間隔をおいて対向するように位置している。
【0020】
記録部と排紙部との間には、カッター29が配置されており、カッター29で用紙部6bの、画像などが記録された部分の後端を切断するようになっている。なお、記録装置1の本体には搬送モータ24が設けられているが、詳しくは後述する。
【0021】
図3に、ロール紙6の取り付けユニットの概略構成図を示す。本発明においては、ロール紙6のロール部6aは、図3に示す取り付けユニットであるスプールユニット16によって記録装置1の本体に取り付けられている。スプールユニット16は、スプールシャフト5と、スプールシャフト5に固定された基準側フランジ26と、スプールシャフト5を挿入可能な非基準側フランジ27と、を有する。基準側フランジ26には、スプールシャフト5とは反対の面にロールギア17が設けられている。なお、基準側フランジ26のスプールシャフト5側には基準側装填部26aが設けられ、非基準側フランジ27のスプールシャフト5側には、非基準側装填部27aが設けられている。
【0022】
ロール紙6の芯である中空の紙管15にスプールシャフト5を差し込み、紙軸15に基準側装填部26aを押し込むことで、ロール部6aの一端が基準側フランジ26によって保持される。次に、ロール部6aの他端側から、非基準側フランジ27の非基準側装填部27aを紙筒15に押し込み、スプールシャフト5を非基準側装填部27aに通すことで、ロール部6aの他端が非基準側フランジ27によって保持される。
【0023】
基準側フランジ26と非基準側フランジ27は、記録装置1の本体に回転可能に保持されている。そのため、スプールシャフト5も回転可能であり、同様にロール部6aも回転可能となっている。
【0024】
図4に、張力付与機構の概略構成図を示す。張力付与機構40は、スプールユニット16と、記録装置1の本体内に設けられた、ギア19aを有するロールモータ19およびロールモータ19の駆動力を、ギア19aからスプールユニット16のロールギア17に伝達するロール入力ギア18と、を有する。また、ロール入力ギア18にはエンコーダフィルム20が取り付けられており、エンコーダフィルム20の回転動作をエンコーダセンサ21で検出可能となっている。
【0025】
ロール入力ギア18の回転速度は、エンコーダフィルム20の回転速度と同じであるため、エンコーダフィルム20の回転速度をエンコーダセンサ21によって検知する。そして、検知したデータを基にロールモータ19の駆動制御が行なわれる。ロールモータ19は、主に、無負荷駆動、所定力による励磁駆動、ロール紙逆転駆動を行う。所定力による励磁駆動では、用紙部6bの搬送方向とは逆向きの張力(バックテンション)を与えながら用紙部6bを搬送することで、ロール紙6を給紙部にセットしたときに生じる斜行の補正やたるみを取ることができる。なお、張力の負荷調整は、ロールモータ19に流れる電流を調整することでロールモータ19の発生トルクを制御して行う。
【0026】
図5に、搬送ローラ駆動機構の概略構成図を示す。搬送ローラ駆動機構50は、搬送ローラ10の搬送ロールギア22と、記録装置1の本体内に設けられた、ギア24aを有する搬送モータ24と搬送モータ24の駆動力を、ギア24aから搬送ロールギア22に伝達する搬送入力ギア23と、を有する。また、搬送入力ギア23には、エンコーダフィルム28が取り付けられており、エンコーダフィルム28の回転動作をエンコーダセンサ25で検出可能となっている。
【0027】
搬送入力ギア23の回転速度は、エンコーダフィルム28の回転速度と同じであるため、エンコーダフィルム28の回転速度をエンコーダセンサ25によって検知する。そして、検知したデータを基に搬送モータ24の駆動制御が行なわれる。
【0028】
次に、ロール紙6の用紙部6bが給紙部から記録部に供給されて排紙部に排紙されるまでの流れを説明する。給紙部に固定されているロール紙6のロール部6aから用紙部6bがユーザによって引き出される。引き出されたロール紙6、つまり用紙部6bはユーザによってさらに搬送され、外ガイド7と内ガイド8とで形成される搬送路を経由して、互いに間隔をあけて位置している搬送ローラ10とピンチローラ11の間に向かう。なお、搬送ローラ10とピンチローラ11とからなるローラ対の上流には、不図示の用紙検出手段が設けられている。この用紙検出手段によって用紙部6bが検知されると、互いに間隔を有していた搬送ローラ10とピンチローラ11とが近接し、用紙部6bを挟持する。これ以降は、搬送ローラ10の回転によって、用紙部6bは給紙部から自動で送り出される。
【0029】
用紙部6bは搬送ローラ10によって、記録ヘッド2と対向する記録位置に設けられたプラテン12まで搬送される。なお、この際、キャリッジ3に搭載された用紙端部検出センサ13によって、用紙部6bの幅や斜行量の検出を行う。なお、この斜行量によって、異なる制御モードで記録を行うが、詳しくは後述する。
【0030】
そして、キャリッジ3がキャリッジシャフト4に沿って往復走査して、記録ヘッド2からのインク吐出により1ライン分の記録を用紙部6に行う。そして、所定量だけ用紙部6bを搬送し、再度1ライン分の記録を行う。この1ライン分の記録と搬送を繰り返すことで、用紙部6bに所定の記録が行われる。
【0031】
記録が終了すると、搬送ローラ10によって、用紙部6bの、記録が行われた部分の後端が、用紙カッター29による切断位置に位置するまで用紙部6bが搬送され、用紙カッター29にて切断される。記録部分を有する用紙部6bは、排紙カバー14上をすべり、不図示の排紙バスケットに収納される。
【0032】
図6は、制御部を示したブロック図である。制御部100は、ロールモータ19および搬送モータ24の制御を実現し、張力付与機構40や搬送ローラ駆動機構50の制御を実現するための部分である。制御部100は不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、モータドライバ等で構成されている。そして、制御部100は、主制御部110、ロールモータ制御部120、および搬送モータ制御部130を有している。主制御部110は、ロールモータ19と搬送モータ24との相関駆動を実現するため、ロールモータ制御部120と、搬送モータ制御部130との両方に対して指令を与える。ロールモータ制御部120は、制御モード1と制御モード2の2つの制御モードを有する。用紙端部検出センサ13により検知した用紙部13の斜行量は、主制御部110にフィードバックされ、その斜行量を基にロールモータ制御部120の制御モードを切り替える。
【0033】
ロールモータ19の動きは、ロール入力ギア18に取り付けられたエンコーダフィルム20の動きをエンコーダセンサ21で検知し、その結果をロールモータ制御部120にフィードバックさせることで制御されている。同様に、搬送モータ24の動きは、搬送入力ギア23に取り付けられたエンコーダフィルム28の動きをエンコーダセンサ25で検知し、検知結果を搬送モータ制御部130にフィードバックさせることで制御されている。
【0034】
図7は、用紙部6bの搬送状態を示す概略図である。搬送ローラ10とロール部6aの間の用紙部6bにかかる張力をTpap、搬送ローラ10の搬送速度(搬送ローラ10の断面の円周上の速度)をVlf、ロール部6aからの用紙部6bの送り速度(ロール部6aの断面の円周上の速度)をVrollとする。また、搬送ローラ10とロール紙6aの間のロール紙6bの弛み量をSpap、用紙部6bの実際の搬送速度をVpapとする。Vlf、Vroll、Vpapについては図中矢印の方向、つまり用紙部6bが送り出される方向が正となる。ここで、用紙部6bの搬送速度は搬送ローラ10の速度で決定されるので、Vpap=Vlfとなる。弛み量Spapについては、弛みが無い状態を弛み量0とし、弛んだ量を絶対値で表示する。以降に示す波形図の力関係においては、図7に示す方向をそれぞれ基準として説明する。
【0035】
次に、本実施形態における搬送ローラ10とロール部6aの動作関係について図8を用いて説明する。図8は、制御モード1における速度、弛み量、張力および電流と時間との関係を示した図であり、図9は、制御モード2における速度、弛み量、張力および電流と時間との関係を示した図である。なお、いずれの図も、(a)は、縦軸に搬送ローラ10の搬送速度Vlf、横軸に時間Tを取ったものである。(b)は、縦軸に用紙部6bの送り速度Vroll、横軸に時間Tを取ったものである。(c)は、縦軸に用紙部6bの弛み量Spap、横軸に時間Tを取ったものである。(d)は、縦軸に用紙部6bにかかる張力Tpap、横軸に時間Tを取ったものである。(e)は、縦軸にロールモータ19に通電される電流I、横軸に時間Tを取ったものである。なお、電流Iが正の値のときは、張力付与機構40によって、ロール部6aは、用紙部6bを送り出す方向(図7では反時計周り)に回転し、電流Iが負の値の時にはロール部6aは、用紙部6bを巻き取る方向(図7では時計回り)に回転する。
【0036】
搬送ローラ10の搬送速度Vlfは、加速領域(時間Ta‐Tc間)、定速領域(時間Tc‐Te間)、および減速領域(時間Te‐Tf間)の3つの領域をもつ動作波形となる。
【0037】
時間Tbは、搬送ローラ10による用紙部6bの搬送速度Vlfよりも、ロール部6aの送り速度Vrollのほうが大きくなる時点である。したがって、時間Ta‐Tb間では、用紙部6bに張力Tpapがかかる張力発生領域となる。この領域(時間Ta‐Tb間)では、ロールモータ19には正方向の電流が流れ、ロール部6aを図7中における反時計回り方向(用紙部6bを送り出す方向)に回転するようにロールモータ19を動作させている。しかしながら、搬送ローラ10がそれ以上の加速度で用紙部6bを搬送しているので、ロール部6aは、搬送ローラ10によって連れ回っている状態となる。そのため、用紙部6bの弛み量Spapは発生せず、用紙部6bにかかる張力Tpapが発生する。このように搬送ローラ10によってロール紙6aが加速させられる状況では、用紙部6bには搬送方向と逆方向に慣性力が発生して張力Tpapが上昇する。しかしながら、制御モード1では、ロールモータ19に正方向の所定電流IAを与えることで張力Tpapの上昇を抑えて、所定張力TpapAになるように制御している。
【0038】
なお、このロールモータ19に通電する電流の量を変化させることで、用紙部6bの張力Tpapを変化させることが可能である。所定電流IAよりも電流を大きくすれば、ロールモータ19が、ロール部6aから用紙部6bを送り出す方向(図7では反時計回り方向)にさらに加速するため、用紙部6bにかかる張力Tpapは所定張力TpapAよりも小さくなる。所定電流IAよりも電流を小さくすれば、逆に張力Tpapは所定張力TpapAよりも大きくなる。図9に示す制御モード2では、所定電流IAよりも大きな所定電流IBを与えることで、用紙部6bにかかる張力を、所定電力IAのときの張力TpapAよりも小さな張力TpapBにすることができる。
【0039】
これ以降の説明は、図8に示す制御モード1と図9に示す制御モード2とで同様である。次に、時間Tbになる前に、ロールモータ19へ通電する電流Iを増加させていくと、時間Tb‐Tcの間では、用紙部6bの送り速度Vrollが、搬送ローラ10による用紙部6bの搬送速度Vlfを上回る。そのため弛み量Spap>0、張力Tpap=0となる。搬送ローラ10の加速領域(時間Ta‐Tc)後、定速領域(時間Tc‐Te)および減速領域(時間Te‐Tf)では、搬送ローラ10による用紙部6bの搬送速度Vlfと用紙部6bの送り速度Vrollとが一致する状態(Vlf=Vroll)で動作する。そのため、弛み量Spapが所定弛み量SpapA(SpapB)、張力Tpapが0にて維持されることになる。搬送ローラ10の動作終了後(時間Tf)にはロールモータ19を、用紙部6bを巻き取る方向(用紙部6bの搬送方向とは逆:図7では時計回り方向)に回転させ、用紙部6bの弛み量がSpap=0(時間Tg)となるまで弛み取りを行う。用紙部6bの弛み取りは、搬送ローラ10の動作停止(時間Tf)から次の用紙部6bの供給動作開始(時間Ta’)までの間に完了する。以上の動作は、搬送ローラ10の間欠搬送が行われるたびに、毎回実施される。
【0040】
上述した張力発生領域(時間Ta‐Tb)において、所定張力TpapA、TpapBを発生させるのは、用紙部6bに発生した斜行を補正するためである。ここで図10を用いて、用紙部6bの斜行が補正されるメカニズムについて説明する。図10は、用紙部が斜行した様子を示す平面図であり、(a)は用紙部6bが斜行状態で搬送されているときの搬送力Hと張力Tpapの状態を示す平面図であり、(b)は斜行状態で搬送されている用紙部6bに実際に作用する有効搬送力Fを示す平面図である。図10(a)に示すように、用紙部6bが一方の側方であるP2側端部側に斜行した状態で搬送されると、用紙部6bの他方の側方であるP1側端部が張り、P2側端部が緩む。このため張力Tpapとしては、P1側端部で強く、P2側端部で弱くなる。搬送ローラ10とピンチローラ11とのローラ対によって発生する搬送力Hは、斜行の有無に関わらず、P1側端部およびP2側端部とも、均等な搬送力Hとなる。一方、用紙部6bに対して実際に作用する有効搬送力Fは搬送力Hと張力Tpapとの差である。したがって、図10(b)に示すように、実際に作用する有効搬送力FはP2側端部で強く、P1側端部で弱くなり、用紙部6bはP2側端部からP1側端部へ斜行が補正されることになる。つまり、斜行補正は張力Tpapが大きいほど、P2側端部とP1側端部の張力の差も大きくなって、斜行補正の効果が大きくなる。なお、張力Tpapは搬送ローラ10によって用紙部6bに加速度が与えられているとき、用紙部6b自身の慣性力が張力を増やす方向に働くため、最も効果的に張力Tpapを発生させることが可能である。
【0041】
一方で、この張力Tpapが働いている間は、搬送ローラ10では用紙部6bにスリップが発生しやすくなる。そこで、本実施形態では、張力発生領域(時間Ta‐Tb間)以降の領域(時間Tb‐Tf間)では、用紙部6bに張力Tpapを発生させないようにし、搬送精度を保つようにしている。
【0042】
以上のことから、制御モード1は制御モード2に比べて用紙部6bにかかる張力が大きいため、斜行補正の効果が大きい(図8参照)。一方で、制御モード2は、制御モード1よりも用紙部6bにかかる張力が小さいので、搬送精度を保った搬送が可能となる(図9参照)。
【0043】
なお、本実施形態ではロールモータ19に正方向の電流を加えているが、場合によっては負方向の電流を加えて、慣性力による張力に加算してロールモータ19による張力を発生させても良い。また、ロール紙6の状態(坪量、幅サイズ、巻径)によって用紙部6bの慣性力は変化するため、ロール紙6の状態によって所定電流Iを変化させる必要がある。
【0044】
また、制御モード1と制御モード2とで、所定張力TpapをTpapA>TpapBとしているが、TpapA=TpapBとし、張力発生領域(時間Ta‐Tb)を制御モード2よりも制御モード1のほうが長くなるように時間を設定してもよい。これにより、制御モード1は制御モード2と比較して、より長い時間をかけて用紙部6bの斜行を補正することができるため、斜行補正の効果が大きくなる。
【0045】
次に、図11および図12を参照して、斜行量検知手段により検知した斜行量に応じて、制御モード1と制御モード2とを切り替える、本発明に係る記録装置の記録動作について説明する。図11は斜行量と制御モードの関係を示す図である。図12は本実施形態における記録動作の手順を示すフローチャートである。なお、本実施形態の制御動作を「第1の制御」と定義する。
【0046】
図11に示すように、斜行検知手段である用紙端部検出センサ13で用紙部6bの斜行量を検知した結果、斜行量が予め定められた基準値であるob1と同じかまたは小さい場合は制御モード2を用いる。そして、斜行量がob1よりも大きく、ob1より大きな値として予め定められた上限値であるob2以下の場合は制御モード1を用いる。これは、斜行補正の効果が制御モード1>制御モード2となるように張力を調整しているためである。
【0047】
また、斜行量がob2より大きければユーザによって再度ロール紙6を給紙部にセットし直すことを不図示のオペレーションパネル上に表示する。制御モード1において、記録動作における斜行補正の効果にも限界がある。そのため、制御モード1を用いても斜行により記録した画像にスジがでる恐れがあるような大きな斜行量の場合は、ロール紙6の再セットを行う必要があるため、ユーザにロール紙6の再セットを指示する。
【0048】
次に、図12を使って、具体的な記録動作の手順を説明する。記録動作が開始して、ロール紙6の給紙が開始される(S01)と、用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させて、搬送前後での用紙部6bの端部位置を用紙端部検出センサ13で検出することにより斜行量を検出する(S02)。斜行量がob1以下であるか判定し(S03)、斜行量がob1以下である場合は、制御モード2で記録を行う(S04)。斜行量がob1より大きい場合は、斜行量がob2以下であるか判定する(S05)。斜行量がob1より大きくob2以下であれば、制御モード1で記録を行う(S06)。斜行量がob2より大きければ、ユーザによって再度ロール紙6がセットし直され、再度給紙される(S07)。各制御モードでの記録を行い(S04、S06)、1つの画像の記録が終了すると(S08)、次の画像の記録が行われるかどうかの判断をする(S09)。次の画像の記録が行われる場合、給紙を行うステップ(S01)に戻り、以降、上述と同じステップを行う。つまり、本実施形態では、1つの画像に対して斜行量の判定を1回行うこととなる。
【0049】
以上説明したように、1つ目の画像記録時における用紙部6bの斜行量がob1より大きくob2以下であれば、斜行補正の効果が大きい制御モード1で用紙部6bの搬送が行われる。そのため、より早く斜行を補正することが可能となる。制御モード1での記録動作にて斜行が補正され、用紙部6bの斜行量がob1以下となれば、次の画像記録時以降の用紙部6bの搬送には制御モード2が用いられるため、張力Tpapに起因して生じる搬送量の誤差が小さい用紙部6bの搬送が可能となる。また逆に、制御モード2による用紙部6bの搬送途中に、何らかの外力が用紙部6bに加わり、斜行量が大きくなっても(ob1より大きくob2以下)、次画像の記録動作では、斜行補正の効果が大きい制御モード1で用紙部6bの搬送を行うことが可能である。したがって、搬送精度の低下を抑制しつつ、斜行の補正を行うことができる。
【0050】
[実施形態2]
次に、本発明に係る記録装置の第2の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態とは異なり用紙部6bに一定の張力を付与し続けることが特徴である。なお、第1の実施形態と同じ構成に関しては、同一符号を用い、その説明を省略する。
【0051】
図13は、本実施形態における制御モード1および制御モード2の、速度、弛み量、張力および電流と時間の関係を示す図である。図13中のグラフの縦軸および横軸はそれぞれ第1の実施形態における制御モード1を示す図8および制御モード2を示す図9と同様である。図13で示す制御モード1および制御モード2は、用紙部6bの弛み量Spapを用紙部6bの搬送中は常にほぼゼロとしたものである。この制御モードを適用することで、用紙部6bに張力Tpapを長時間付与することが可能となり、斜行補正の効果が大きくなる。本実施形態においても用紙部6bの斜行量に応じて、ロールモータ19に通電される電流Iを制御し、張力Tpapを調整する。例えば、制御モード1では制御モード2より大きい張力Tpapを付与するため、破線で示した制御モード1の電流I’と、実線で示した制御モード2の電流I’’との間にΔIのオフセットを備える。そのため、制御モード1の張力TpapC>制御モード2の張力TpapDとなる。
【0052】
なお、第2の実施形態の制御モードを制御モード1とし、第1の実施形態の制御モードを制御モード2としても良い。これにより、用紙部6bに張力を付与している時間が制御モード1のほうが長くなるため、張力Tpapが同じでも、制御モード1のほうが斜行補正の効果が大きくなる。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態においても、制御モード1は制御モード2と比較して、用紙部6bにかかる張力が大きいため、斜行補正の効果が大きい。また、制御モード2は用紙部6bにかかる張力が小さいため、制御モード1と比較して、搬送ローラ10における用紙部6bの搬送時にスリップが発生しにくく、搬送量の誤差の小さな用紙部6bの搬送が可能となる。そのため、用紙部6bの斜行量に応じて、制御モードを切り替えることで、用紙部6bの搬送精度の低下を抑制しつつ、斜行の補正を行うことができる。
【0054】
[実施形態3]
次に、本発明に係る記録装置の第3の実施形態について図面を参照して説明する。なお、上述の実施形態と同じ構成に関しては、同一符号を用い、その説明は省略する。
【0055】
本実施形態は、第1の実施形態とは記録動作の流れが異なる。図14は、本実施形態における記録動作の手順を示すフローチャートである。なお、本実施形態の制御動作を「第2の制御」と定義する。
【0056】
記録動作が開始され、ロール紙6の給紙が開始される(S11)と、用紙部6bを所定量搬送させて、搬送前後での用紙部6bの端部位置を用紙端部検出センサ13で検出することにより斜行量を検出する(S12)。このとき、検知回数n=1とする(S13)。斜行量がob1以下であるか判定し(S14)、斜行量がob1以下である場合は、制御モード2を選択する(S15)。斜行量がob1より大きい場合は、斜行量がob2以下であるか判定する(S16)。斜行量がob1より大きくob2以下であれば、制御モード1で記録を行う(S17)。斜行量がob2より大きければ、ユーザによって再度ロール紙6がセットし直され、再度給紙される(S18)。
【0057】
制御モードを選択(S15、S17)したら、次に、斜行の検知間隔X(例えばX=1200mm)×検知回数nが記録画像の長さLより短いかどうかを判定する(S19)。斜行の検知間隔X×検知回数nが記録画像の長さLよりも短い場合には、斜行の検知間隔X分の長さの記録を行う(S20)。そして、再度斜行検知を行う(S21)。このとき、検知回数nを1増やす(S22)。そして、斜行量の判定を行うステップ(S14)に戻り、以降、上述と同様のステップを行う。これを、検知間隔X×検知回数n>記録画像の長さLになるまで繰り返す。検知間隔X×検知回数n>記録画像の長さLになると、記録画像の長さLまで記録を行い(S23)、記録を終了する。
【0058】
以上説明したように、斜行の検知のタイミングを、画像ごとではなく、予め定めた距離である検知間隔ごとにすることによって、バナー記録のような長い画像(例えば10mなど)の場合にも一定の長さごとに斜行検知を行い、制御モードの決定を行う。そのため、常に最適な制御モードで記録を行うことができる。そのため、用紙部6bの搬送精度の低下を抑制しつつ、効率的に斜行の補正を行うことができる。
【0059】
[実施形態4]
次に、本発明に係る記録装置の第4の実施形態について図面を参照して説明する。なお、上述の実施形態と同じ構成に関しては、同一符号を用い、その説明は省略する。
【0060】
本実施形態は、第1の実施形態とは記録動作の流れが異なる。図15は、本実施形態における記録動作の手順を示すフローチャートである。記録前に外部から取り込まれた画像情報の中の記録画像の長さLを読み取る(S31)。記録画像の長さLが、予め定められた基準長さY(例えばY=1200mm)よりも短いか判定する(S32)。記録画像の長さLが基準長さYよりも短い場合、第1の実施形態に示す第1の制御(図12参照)を行い(S33)、記録画像の長さLが所定の基準長さY以上の場合、第2の実施形態に示す第2の制御(図14参照)を行う(S34)。記録を開始して(S35)、1つの画像の記録が終わると(S36)、記録動作が終了する。
【0061】
以上説明したように、記録物の長さによって最適な制御モードに設定できるため、搬送精度の低下を抑制しつつ、効率的に斜行の補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 記録装置
2 記録ヘッド
6 ロール紙(記録媒体)
10搬送ローラ
40張力付与機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の記録媒体を保持する給紙部と、前記記録媒体の幅方向に走査する記録ヘッドが設けられており、前記記録ヘッドからのインク吐出で前記記録媒体に記録を行う記録部と、を有する記録装置における記録媒体の搬送方法であって、
前記給紙部と前記記録部との間に設けた搬送ローラによって前記記録部に間欠搬送される前記記録媒体の斜行量に応じて、前記記録媒体にかかる張力を張力付与機構によって調整しながら、前記記録媒体を前記記録部に搬送する、記録媒体の搬送方法。
【請求項2】
前記搬送ローラが前記記録媒体の搬送を開始してから、次の搬送を開始するまでの時間を、前記記録媒体に張力をかける時間と前記記録媒体に張力をかけない時間とに分け、前記張力をかける時間では、前記記録媒体にかかる張力を前記張力付与機構で調整する、請求項1に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項3】
前記記録媒体の搬送において、常に前記記録媒体に一定の前記張力がかかるようにする、請求項1に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項4】
前記斜行量が予め定めた基準値と同じかまたは小さいときは、前記基準値よりも大きいときに比べて前記記録媒体にかける張力を小さくする、請求項1から3のいずれか1項に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項5】
前記斜行量が予め定めた基準値と同じかまたは小さいときは、前記張力をかける時間を短くし、前記斜行量が前記基準値よりも大きいときは前記張力をかける時間を長くする、請求項2に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項6】
前記記録媒体に記録される1つの画像に対して、前記斜行量の検知を1回行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項7】
前記記録媒体が予め定めた距離だけ搬送される度に、前記斜行量の検知を行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項8】
前記記録媒体に記録される画像の、前記記録媒体の搬送方向の長さと、予め定めた基準長さとを比較し、前記画像の長さが前記基準長さよりも短いときには、前記画像ごとに、前記斜行量の検知を行い、前記画像の長さが前記基準長さよりも長いときには、前記記録媒体が予め定められた距離だけ搬送される度に、前記斜行量の検知を行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項9】
ロール状の記録媒体を保持する給紙部と、前記記録媒体の幅方向に走査する記録ヘッドが設けられており、前記記録ヘッドからのインク吐出で前記記録媒体に記録を行う記録部と、を有する記録装置であって、
前記給紙部に保持された前記記録媒体を、前記記録媒体を送り出す方向および巻き取る方向に回転可能に保持する張力付与機構と、
前記給紙部と前記記録部の間に設けられ、前記給紙部から搬送された前記記録媒体を前記記録部に間欠搬送する、搬送ローラと、
前記記録装置の本体に設けられ、前記張力付与機構と前記搬送ローラとを制御する制御部と、
前記記録部に搬送される前記記録媒体の斜行量を検知する斜行量検知手段と、を有し、
前記斜行量検知手段により検知された前記斜行量に応じて、前記張力付与機構は前記記録媒体にかかる張力を調整する、記録装置。
【請求項1】
ロール状の記録媒体を保持する給紙部と、前記記録媒体の幅方向に走査する記録ヘッドが設けられており、前記記録ヘッドからのインク吐出で前記記録媒体に記録を行う記録部と、を有する記録装置における記録媒体の搬送方法であって、
前記給紙部と前記記録部との間に設けた搬送ローラによって前記記録部に間欠搬送される前記記録媒体の斜行量に応じて、前記記録媒体にかかる張力を張力付与機構によって調整しながら、前記記録媒体を前記記録部に搬送する、記録媒体の搬送方法。
【請求項2】
前記搬送ローラが前記記録媒体の搬送を開始してから、次の搬送を開始するまでの時間を、前記記録媒体に張力をかける時間と前記記録媒体に張力をかけない時間とに分け、前記張力をかける時間では、前記記録媒体にかかる張力を前記張力付与機構で調整する、請求項1に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項3】
前記記録媒体の搬送において、常に前記記録媒体に一定の前記張力がかかるようにする、請求項1に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項4】
前記斜行量が予め定めた基準値と同じかまたは小さいときは、前記基準値よりも大きいときに比べて前記記録媒体にかける張力を小さくする、請求項1から3のいずれか1項に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項5】
前記斜行量が予め定めた基準値と同じかまたは小さいときは、前記張力をかける時間を短くし、前記斜行量が前記基準値よりも大きいときは前記張力をかける時間を長くする、請求項2に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項6】
前記記録媒体に記録される1つの画像に対して、前記斜行量の検知を1回行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項7】
前記記録媒体が予め定めた距離だけ搬送される度に、前記斜行量の検知を行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項8】
前記記録媒体に記録される画像の、前記記録媒体の搬送方向の長さと、予め定めた基準長さとを比較し、前記画像の長さが前記基準長さよりも短いときには、前記画像ごとに、前記斜行量の検知を行い、前記画像の長さが前記基準長さよりも長いときには、前記記録媒体が予め定められた距離だけ搬送される度に、前記斜行量の検知を行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の記録媒体の搬送方法。
【請求項9】
ロール状の記録媒体を保持する給紙部と、前記記録媒体の幅方向に走査する記録ヘッドが設けられており、前記記録ヘッドからのインク吐出で前記記録媒体に記録を行う記録部と、を有する記録装置であって、
前記給紙部に保持された前記記録媒体を、前記記録媒体を送り出す方向および巻き取る方向に回転可能に保持する張力付与機構と、
前記給紙部と前記記録部の間に設けられ、前記給紙部から搬送された前記記録媒体を前記記録部に間欠搬送する、搬送ローラと、
前記記録装置の本体に設けられ、前記張力付与機構と前記搬送ローラとを制御する制御部と、
前記記録部に搬送される前記記録媒体の斜行量を検知する斜行量検知手段と、を有し、
前記斜行量検知手段により検知された前記斜行量に応じて、前記張力付与機構は前記記録媒体にかかる張力を調整する、記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−28442(P2013−28442A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166427(P2011−166427)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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