説明

記録装置

【課題】予熱を十分に行って、高品質な印画を実現可能とさせる記録装置を提供する。
【解決手段】メディアMを搬送する搬送部2と、メディアMに流体を噴射するインクジェットヘッド31と、インクジェットヘッド31と対向する位置でメディアMを支持する第1の支持面50と、インクジェットヘッド31よりも搬送方向上流側でメディアMを支持する第2の支持面55を有すると共に該第2の支持面55上のメディアMを加熱するプレヒーター部41と、第1の支持面50及び第2の支持面55の少なくともいずれか一方に対するメディアMの浮きを検出する浮き検出センサー70と、浮き検出センサー70の検出結果に基づいて、第2の支持面55上におけるメディアMの加熱状態を制御する制御装置80と、を有するプリンター1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に流体を噴射して画像や文字等を記録する記録装置の一つとして、インクジェット式プリンターが知られている。このインクジェット式プリンターにおいて、浸透乾燥や蒸発乾燥を必要とするインク(流体)を用いる場合、記録媒体に噴射したインクを乾燥させるために、加熱装置を設ける必要がある。
【0003】
特許文献1には、記録媒体の搬送経路におけるインクジェットヘッドの上流側において記録媒体を予熱する予熱装置を設け、インクを噴射する前に、予め記録媒体を所定温度以上に加熱することで、着弾したインクの凝集、滲み等を抑制して、高品質な印画を実現可能とさせる手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4429923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクの乾燥に関して、着弾時の記録媒体の記録面温度は高温であるほど好ましいが、印字領域において記録媒体を急激に加熱してしまうと、熱膨張による伸び等によって印字不良の原因となるシワが発生する。このシワに対し、従来では、上記予熱装置を設け、印字領域に入る前に記録媒体を予熱して熱膨張差を軽減することによるシワ対策を講じている。すなわち、印字領域における目標温度と、予熱装置における加熱温度とを同等にするよう温度制御している。
【0006】
しかしながら、このように温度制御しても、実際問題、予熱装置における加熱が不十分となって、記録媒体にシワが発生する事例がみられている。この原因としては、例えば、上記従来技術のように、記録媒体を支持する支持部材の加熱による熱伝導方式を採用する場合、記録媒体との接触不良によって、加熱が不十分となることが考えられる。また、他の外乱(例えば周囲の温度や湿度等)の影響によるものも考えられる。
【0007】
なお、この問題に対して、印字領域において記録媒体を支持するプラテンをリブ付きのものとし、記録媒体の熱伸びをリブによって吸収緩和することも考えられるが、リブ付のプラテンは高価であり、また、リブと接触する部位と接触しない部位とで、温度分布が生じ得るため、インクの乾燥にムラができ、画質に影響を与えてしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、予熱を十分に行って、高品質な印画を実現可能とさせる記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、記録媒体を搬送する搬送装置と、上記記録媒体に流体を噴射する記録ヘッドと、上記記録ヘッドと対向する位置で上記記録媒体を支持する第1の支持面と、上記記録ヘッドよりも搬送方向上流側で上記記録媒体を支持する第2の支持面を有すると共に該第2の支持面上の上記記録媒体を加熱する加熱装置と、上記第1の支持面及び上記第2の支持面の少なくともいずれか一方に対する上記記録媒体の浮きを検出する浮き検出装置と、上記浮き検出装置の検出結果に基づいて、上記第2の支持面上における上記記録媒体の加熱状態を制御する制御装置と、を有する記録装置を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、記録媒体を予熱する加熱装置の設定温度制御だけでは判断し得ない加熱不足を、実際に、記録媒体の支持面に対する浮きにより判断し、これに基づいて第2の支持面上における記録媒体の加熱状態を制御することにより、印字領域に入る前に記録媒体を十分に加熱させる。加熱装置において記録媒体が十分に加熱されれば、第1の支持面においても熱膨張差によるシワは発生し得ないため、印字領域において記録媒体をリブ付でない平板等で支持でき、高品質な印画を実現可能とさせることができる。
【0010】
また、本発明においては、上記制御装置は、上記浮き検出装置の検出結果に基づいて、上記第2の支持面上における上記記録媒体に張力を付与するよう上記搬送装置の駆動を制御するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、搬送装置の駆動により、記録媒体に張力(テンション)を与えて、第2の支持面上における記録媒体の加熱状態を制御する。すなわち、張力付与により、記録媒体の平面度が保たれ、また、第2の支持面に対する浮きがない適切な状態となるため、記録媒体が第2の支持面上において十分に加熱される。
【0011】
また、本発明においては、上記制御装置は、上記浮き検出装置の検出結果に基づいて、上記第2の支持面上における上記記録媒体に与える単位時間当たりの熱量を大きくするよう上記加熱装置の駆動を制御するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、加熱装置の駆動により、記録媒体により大きな熱量を与えて、第2の支持面上における記録媒体の加熱状態を制御する。すなわち、加熱不足を補うような加熱が可能となるため、記録媒体が第2の支持面上において十分に加熱される。
【0012】
また、本発明においては、上記浮き検出装置は、上記記録媒体の温度分布に基づいて上記浮きを検出するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、支持面に対して記録媒体が浮くと高低差が生じ、温度分布が生じることから、この温度分布に基づいて浮きを検出する。
【0013】
また、本発明においては、上記搬送装置は、上記第1の支持面と上記第2の支持面との間で、上記記録媒体を搬送方向と直交する幅方向において隙間をあけて挟持する搬送ローラー対を有しており、上記浮き検出装置は、上記隙間に対応する位置における上記記録媒体の浮きを検出可能に設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、記録媒体の熱伸びは搬送ローラー対によって挟持されてない隙間に逃げて、そこを起点として浮きが生じるので、当該隙間に対応する位置において浮きを検出する。
【0014】
また、本発明においては、上記搬送ローラー対は、上記隙間として、所定の大きさの第1の隙間と、上記第1の隙間より大きい第2の隙間とを有しており、上記浮き検出装置は、上記第2の隙間に対応する位置における上記記録媒体の浮きを検出可能に設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、記録媒体の熱伸びは搬送ローラー対によって挟持されてない隙間のうちより大きいところに逃げて、そこを起点として浮きが生じるので、第1の隙間より大きい第2の隙間を設け、その第2の隙間に浮きを誘導し、効率よく浮きを検出する。
【0015】
また、本発明においては、上記第2の隙間は、上記幅方向において上記記録ヘッドによる印字領域の外に設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第2の隙間に誘導した記録媒体の浮きの影響を印字領域に与えないようにして、高品質な印画を実現可能とさせる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターを示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態における加熱部を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態における搬送部の要部構成及び浮き検出センサーの配置を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における浮き検出センサーの出力を模式的に示す図である。
【図5】本発明の別実施形態における搬送ローラー対の構成及び浮き検出センサーの配置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る記録装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る記録装置として、インクジェット式プリンター(以下、単にプリンターと称する)を例示する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター1を示す構成図である。
プリンター1は、比較的大型のメディア(記録媒体)Mを扱うラージフォーマットプリンター(LFP)である。本実施形態のメディアMは、例えばポリ塩化ビニル系フィルムから形成されている。
【0019】
図1に示すように、プリンター1は、ロール・ツー・ロール方式でメディアMを搬送する搬送部(搬送装置)2と、メディアMに対してインク(流体)を噴射して画像や文字等を記録する記録部3と、メディアMを加熱する加熱部4とを有する。これら各構成部は、本体フレーム5に支持されている。
【0020】
搬送部2は、ロール状のメディアMを送り出すロール21と、送り出されたメディアMを巻き取るロール22とを有する。搬送部2は、ロール21,22間の搬送経路においてメディアMを搬送する搬送ローラー対24を有する。また、搬送部2は、メディアMに張力を付与するテンションローラー25を有する。テンションローラー25は、揺動フレーム26に支持されている。
【0021】
記録部3は、搬送されるメディアMに対してインクを噴射するインクジェットヘッド(記録ヘッド)31と、インクジェットヘッド31を搭載して幅方向(図1において紙面垂直方向)に往復移動自在なキャリッジ32とを有する。インクジェットヘッド31は、複数のノズルを備え、メディアMとの関係で選択されて浸透乾燥や蒸発乾燥を必要とするインクを噴射可能な構成となっている。
【0022】
加熱部4は、メディアMを加熱することによりインクをメディアMに速やかに乾燥定着させ、滲みやぼやけを防止して、画質を高める構成となっている。
加熱部4は、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向上流側でメディアMを予熱するプレヒーター部(加熱装置)41と、記録部3と対向する位置でメディアMを加熱する媒体支持部ヒーター部42と、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向下流側でメディアMを加熱するアフターヒーター部43とを有する。
【0023】
本実施形態では、プレヒーター部41におけるヒーター41aの加熱温度が、40℃に設定されている。また、本実施形態では、媒体支持部ヒーター部42におけるヒーター42aの加熱温度が、ヒーター41aと同じく40℃(目標温度)に設定されている。また、本実施形態では、アフターヒーター部43におけるヒーター43aの加熱温度が、ヒーター41a,42aよりも高い50℃に設定されている。
【0024】
プレヒーター部41は、メディアMを常温から目標温度(媒体支持部ヒーター部42における温度)に向けて徐々に昇温させることによって、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。
また、媒体支持部ヒーター部42は、目標温度を維持した状態でインクの着弾をメディアMに受けさせて、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。
【0025】
また、アフターヒーター部43は、メディアMを目標温度よりも高い温度まで昇温させ、メディアMに着弾したインクのうち未だ乾燥していないものを速やかに乾燥させ、少なくともロール22で巻き取る前に、着弾したインクをメディアMに完全に乾燥定着させる構成となっている。
【0026】
続いて、本実施形態の加熱部4における特徴的な構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態における加熱部4を示す構成図である。図2においては、加熱部4のうち、プレヒーター部41及び媒体支持部ヒーター部42にかかる部分を模式的に示している。
【0027】
図2に示すように、媒体支持部ヒーター部42は、メディアMを支持する第1の支持面50を備える第1の支持部材51を有する。第1の支持部材51は、金属製の平板であり、メディアMの搬送方向と直交する幅方向(図2において紙面垂直方向)に延在して設けられている。第1の支持部材51は、メディアMを幅方向に亘って支持するために、メディアMの幅よりも大きな幅を有する。
【0028】
第1の支持部材51の第1の支持面50と逆側の面52には、ヒーター42aが配線されている。ヒーター42aは、チューブヒーターであり、不図示のアルミテープを介して逆側の面52に貼付されている。したがって、ヒーター42aは、逆側の面52から熱伝導により第1の支持部材51を伝熱加熱すると共に、第1の支持面50上に支持されたメディアMを背面側から間接的に加熱する構成となっている。
【0029】
第1の支持部材51の第1の支持面50と対向する位置には、赤外線ヒーター53が設けられている。赤外線ヒーター53は、第1の支持面50に対し所定距離をあけ、且つ、第1の支持部材51の幅方向に亘って延在して設けられている。したがって、赤外線ヒーター53は、第1の支持面50に直接的に赤外線エネルギーを照射することにより、第1の支持部材51を輻射加熱すると共に、第1の支持面50上にメディアMが支持されている場合には、メディアMの記録面側を直接的に輻射加熱する構成となっている。
【0030】
赤外線ヒーター53は、輻射スペクトルのピークの主要部が2μm〜4μmの領域を含む波長を有する電磁波を照射する構成となっている。これにより、赤外線ヒーター53は、周囲の水分子を含まない構成部材などをあまり昇温させずに、インクに含まれる水分子を振動させて、その摩擦熱により乾燥を速やかに促すことができる。したがって、赤外線エネルギーの大部分をインクに吸収させ、記録面上に着弾したインクを集中的に加熱することができる。
【0031】
赤外線ヒーター53は、反射板54を有しており、インクジェットヘッド31よりも搬送方向下流側から第1の支持面50に向けて斜めに赤外線を照射する構成となっている(図2において点線で示す)。赤外線ヒーター53による赤外線照射範囲は、第1の支持面50上に設定され、インクジェットヘッド31による印字領域を含み、記録面上に着弾したインクを即時に加熱するよう構成されている。本実施形態の反射板54は、略半円弧形状を有し、赤外線照射方向と逆の背面側に配置されている。反射板54は、Al材やSUS材等の金属材からなり、その表面を鏡面仕上げすることで形成されている。
【0032】
プレヒーター部41は、第1の支持部材51よりも搬送方向上流側においてメディアMを支持する第2の支持面55を備える第2の支持部材56を有する。第2の支持部材56は、曲げが形成された金属製の板材であり、第2の支持面55側が全体として略湾曲した凸となる形状を有する。第2の支持部材56も第1の支持部材51と同様の幅で、幅方向に延在して設けられている。第1の支持面50と第2の支持面55は、互いに協働して、メディアMの搬送経路を形成する。
【0033】
第2の支持部材56の第2の支持面55と逆側の面57には、ヒーター41aが配線されている。ヒーター41aは、チューブヒーターであり、不図示のアルミテープを介して逆側の面57に貼付されている。したがって、ヒーター41aは、逆側の面57から熱伝導により第2の支持部材56を伝熱加熱すると共に、第2の支持面55上に支持されたメディアMを背面側から間接的に加熱する構成となっている。
【0034】
第2の支持部材56の第2の支持面55と対向する位置には、浮き検出センサー(浮き検出装置)70が設けられている。本実施形態の浮き検出センサー70は、第2の支持面55に対するメディアMの浮きを検出する構成となっている。
浮き検出センサー70は、制御装置80と電気的に接続されている。制御装置80は、浮き検出センサー70の検出結果に基づいて、第2の支持面55上におけるメディアMの加熱状態を制御する構成となっている。本実施形態の制御装置80は、浮き検出センサー70の検出結果に基づいて、搬送部2の駆動を制御するコンピュータシステムを有する。
【0035】
図3は、本発明の実施形態における搬送部2の要部構成及び浮き検出センサー70の配置を示す斜視図である。図3においては、搬送部2のうち、ロール21及び搬送ローラー対24にかかる部分を模式的に示している。
ロール21は、ロール状のメディアMを保持する支軸R1と、支軸R1を回転駆動させるロール駆動装置61と、支軸R1の回転を検出する回転検出装置64とを有する。
【0036】
ロール駆動装置61は、モーター62と、動力伝達機構63とを有する。モーター62は、制御装置80と電気的に接続されており、制御装置80によって、その駆動が制御されるよう構成されている。例えば、モーター62は、制御装置80の制御の下、正転駆動/逆転駆動の切り替えを行うことが可能となっている。動力伝達機構63は、モーター62の回転軸に噛合する第1のギア63aと、第1のギア63aと噛合すると共に支軸R1と一体回転可能に取り付けられる第2のギア63bとを有する。
【0037】
回転検出装置64は、外周部に多数の透光部を有した円盤状スケール64aと、該透光部に対して発光する発光部及び透光部を通過した光を受光する受光部を備えたフォトセンサー64bとを有する。円盤状スケール64aは、支軸R1に一体回転可能に取り付けられている。フォトセンサー64bは、制御装置80に電気的に接続されており、検出信号を制御装置80に出力するよう構成されている。制御装置80は、回転検出装置64からの出力信号を受信することによって、支軸R1の単位時間当たりの回転量(回転角度)や回転速度等を算出可能となっている。
【0038】
搬送ローラー対24は、第1の支持面50と第2の支持面55との間に設けられており(図2参照)、駆動ローラー24aと、従動ローラー24bとを有する。駆動ローラー24aは、ローラー駆動装置65によって、回転駆動する構成となっている。一方、従動ローラー24bは、駆動ローラー24aの回転駆動により従動回転する構成となっている。駆動ローラー24aは、ローラー駆動装置65と、回転検出装置68とを有する。
【0039】
ローラー駆動装置65は、モーター66と、動力伝達機構67とを有する。モーター66は、制御装置80と電気的に接続されており、制御装置80によって、その駆動が制御されるよう構成されている。例えば、モーター66は、制御装置80の制御の下、正転駆動/逆転駆動の切り替えを行うことが可能となっている。動力伝達機構67は、モーター66の回転軸と駆動ローラー24aの軸端との間に掛け渡されたベルトBを有する。
【0040】
回転検出装置68は、外周部に多数の透光部を有した円盤状スケール68aと、該透光部に対して発光する発光部及び透光部を通過した光を受光する受光部を備えたフォトセンサー68bとを有する。円盤状スケール68aは、駆動ローラー24aの軸端に一体回転可能に取り付けられている。フォトセンサー68bは、制御装置80に電気的に接続されており、検出信号を制御装置80に出力するよう構成されている。制御装置80は、回転検出装置68からの出力信号を受信することによって、駆動ローラー24aの単位時間当たりの回転量(回転角度)や回転速度等を算出可能となっている。
【0041】
上記構成の駆動ローラー24aは、搬送方向と直交する幅方向に延在して設けられており、メディアMの背面側に配置されている。一方、従動ローラー24bは、幅方向において隙間Gをあけて複数設けられており、メディアMの記録面側に配置されている。なお、従動ローラー24bは、不図示のホルダーに支持され、且つ、不図示のバネ部材によって駆動ローラー24aの周面に向けて付勢されている。したがって、上記構成の搬送ローラー対24は、メディアMを幅方向において隙間Gをあけて挟持する構成となっている。
【0042】
浮き検出センサー70は、隙間Gに対応する位置におけるメディアMの浮きを検出可能に設けられている。浮き検出センサー70の検出領域Xは、搬送ローラー対24よりも搬送方向上流側であって搬送ローラー対24の近傍に設定されている。また、浮き検出センサー70の検出領域Xは、幅方向に延在し、幅方向における長さが、点在する隙間Gの全てを含むことができる大きさに設定されている。本実施形態の浮き検出センサー70は、検出領域Xにおける温度分布を検出可能な赤外線アレイセンサーを有し、当該温度分布に基づいて、メディアMの浮きを検出する構成となっている。
【0043】
図4は、本発明の実施形態における浮き検出センサー70の出力を模式的に示す図である。なお、図4における濃淡は、温度の高低を示している。
浮き検出センサー70は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する複数のサーモパネルを2次元マトリクス状に配置した構成を有し、検出領域Xの温度分布を、図4に示すようにエリアで検出する。第2の支持面55に対してメディアMが浮くと高低差が生じ、温度分布が生じることから、この温度分布に基づいて浮きを検出することができる。
【0044】
具体的に、第2の支持面55に対して浮いた部位は、第2の支持部材からの熱伝導が不十分となり、また、外気の影響で温度が下がる。そうすると、第2の支持面55に対して浮いた部位と第2の支持面55に接触して熱伝導が十分な部位との間で温度差が生まれ、温度分布が生じる。本実施形態では、検出領域Xが設定された位置において、メディアMが最低限到達しているべき温度を閾値に設定し、当該閾値を基準として、メディアMの浮きを検出する構成となっている。
【0045】
例えば、メディアMがプレヒーター部41の最下流部に到達した時の温度(プレヒート目標温度)が、媒体支持部ヒーター部42における温度(目標温度:40℃)の±5℃以内となるように設定されている場合には、35℃を閾値として設定する。そして、当該設定された閾値よりも低い温度の部位が検出された場合には、メディアMに浮きが発生したと判断することができる。
【0046】
続いて、浮き検出センサー70の検出結果に基づく、制御装置80による搬送部2の制御について、プリンター1の印字動作と併せて説明する。
図2に示すように、メディアMが、第1の支持面50上の印字領域まで搬送されてくると、インクジェットヘッド31により印字が開始される。媒体支持部ヒーター部42では、ヒーター42aによって、第1の支持部材51が所定温度(本実施形態では40℃)となっている。インクジェットヘッド31は、キャリッジ32に搭載されて、幅方向に往復移動しながら印字を行う。
【0047】
赤外線ヒーター53は、第1の支持面50上に設定された所定の赤外線照射範囲に向けて赤外線を照射する。赤外線照射範囲には、インクジェットヘッド31による印字領域が含まれているため、インクを着弾させた記録面の領域からキャリッジ32が退避すると、当該領域は、輻射スペクトルのピークの主要部が2μm〜4μmの領域を含む波長で直接に輻射加熱される。そうすると、着弾したインクに含まれる水分子が振動し、その摩擦熱により蒸発・乾燥が促され、メディアMに対して滲み等を生じさせることなくインクが定着することとなる。
【0048】
このとき、プレヒーター部41におけるメディアMの予熱が不十分であると、媒体支持部ヒーター部42における加熱により、メディアMが熱伸びし、その熱膨張差でもって印字不良の原因となるシワが発生する。特に、本実施形態のように、媒体支持部ヒーター部42に赤外線ヒーター53を設ける場合、輻射加熱によりメディアMの記録面側が急速加熱されるため、シワ対策として、印字領域に入る前にメディアMは十分に加熱されていることが必要である。
【0049】
メディアMが、媒体支持部ヒーター部42の加熱により熱伸びすると、第1の支持面50と第2の支持面55との間で、メディアMを挟持する搬送ローラー対24の隙間Gを起点として、メディアMの浮きが生じる(図3参照)。すなわち、メディアMの熱伸びは、駆動ローラー24aと従動ローラー24bとによって挟持されていない部分である隙間Gに逃げ込み、そこを起点として浮きが生じる。このメディアMの浮きが成長すると、搬送ローラー対24が設けられる位置から、搬送方向両側に伸びる縦のシワとなる。この縦のシワが、印字領域まで侵入すると、印字不良の原因となる。
【0050】
浮き検出センサー70は、隙間Gに対応する位置に設けられ、第2の支持面55に対するメディアMの浮きを検出する。浮き検出センサー70の検出領域Xは、幅方向において、点在する隙間Gの全てを含むことができる大きさを有しているため、いずれの隙間GにおいてメディアMの浮きが発生しても、検出漏れをなくすことができる。浮き検出センサー70は、検出領域XにおけるメディアMの温度分布に基づいて、メディアMの浮きを検出する。具体的には、予め設定された閾値(例えば35℃)よりも低い温度の部位が検出された場合に、メディアMに浮きが発生したと判断する。
【0051】
浮き検出センサー70の検出結果は、制御装置80に出力される(図2参照)。制御装置80は、浮き検出センサー70の検出結果に基づいて、第2の支持面55上におけるメディアMの加熱状態を制御する。本実施形態の制御装置80は、浮き検出センサー70によってメディアMの浮きが発生したと検出された場合は、プレヒーター部41における加熱が不十分であるとして、第2の支持面55におけるメディアMに張力(テンション)を付与するよう搬送部2の駆動を制御する。
【0052】
具体的に、制御装置80は、図3に示すロール駆動装置61のモーター62を、逆転駆動させ、メディアMに対しバックテンションを付与する。搬送部2の駆動により、メディアMに張力が付与されると、メディアMが略湾曲した第2の支持面55に沿って密着し、平面度が保たれ、第2の支持面55に対する浮きがない適切な加熱状態となる。そうすると、第2の支持部材56からの熱伝導によって、メディアMが第2の支持面55上において十分に加熱されることとなる。
【0053】
このように、第2の支持面55上におけるメディアMの加熱状態を制御し、プレヒーター部41においてメディアMが十分に加熱されれば、媒体支持部ヒーター部42において加熱されても熱膨張差によるシワは発生し得ないため、印字領域においてメディアMをリブ付でない平板の第1の支持部材51で支持でき、インクの乾燥にムラがなく、着弾したインクの凝集、滲み等を抑制し、高品質な印画を実現可能とさせることができる。
【0054】
したがって、上述した本実施形態によれば、メディアMを搬送する搬送部2と、メディアMに流体を噴射するインクジェットヘッド31と、インクジェットヘッド31と対向する位置でメディアMを支持する第1の支持面50を有すると共に該第1の支持面50上のメディアMを加熱する媒体支持部ヒーター部42と、インクジェットヘッド31よりも搬送方向上流側でメディアMを支持する第2の支持面55を有すると共に該第2の支持面55上のメディアMを加熱するプレヒーター部41と、第2の支持面55に対するメディアMの浮きを検出する浮き検出センサー70と、浮き検出センサー70の検出結果に基づいて、第2の支持面55上におけるメディアMの加熱状態を制御する制御装置80と、を有するプリンター1を採用することによって、メディアMを予熱するプレヒーター部41の設定温度制御だけでは判断し得ない加熱不足を、実際に、メディアMの支持面に対する浮きにより判断し、これに基づいて第2の支持面55上におけるメディアMの加熱状態を制御することにより、印字領域に入る前にメディアMを十分に加熱することができる。
したがって、本実施形態では、予熱を十分に行って、高品質な印画を実現可能とさせるプリンター1が得られる。
【0055】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態では、浮き検出センサー70は、第2の支持面55に対するメディアMの浮きを検出すると説明したが、メディアMの浮きは、隙間Gを起点として搬送方向両側に生じるため、浮き検出センサー70は、第1の支持面50に対するメディアMの浮きを検出する構成であっても良いし、第1の支持面50及び第2の支持面55の両方に対するメディアMの浮きを検出する構成であっても良い。
【0057】
また、例えば、上記実施形態では、浮き検出センサー70は赤外線アレイセンサーであり、幅方向において、点在する隙間Gの全てを含む検出領域Xにおいて、メディアMの浮きを検出すると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0058】
例えば、図5に示す別実施形態のように、搬送ローラー対24を、上述した隙間Gとして、所定の大きさの第1の隙間G1と、第1の隙間G1より大きい第2の隙間G2とを有するように構成し、浮き検出センサー70は、第2の隙間G2に対応する位置におけるメディアMの浮きを検出可能に設けられているという構成を採用しても良い。
メディアMの熱伸びは、幅の狭い第1の隙間G1よりも、幅の広い第2の隙間G2に逃げ易く、第2の隙間G2を起点として優先的に浮きが生じる。このため、搬送ローラー対24に、第1の隙間G1より大きい第2の隙間G2を設け、その第2の隙間G2にメディアMの浮きを誘導すれば、広い検出領域を持たないセンサーであっても、効率よくメディアMの浮きを検出することができる。したがって、例えば、浮き検出センサー70として、局所的な距離を検出する距離センサー等を用いることもできる。
【0059】
ところで、第1の隙間G1より大きい第2の隙間G2を設けると、そこに優先的に熱伸びが誘導されるため、第2の隙間G2を起点とする搬送方向両側に伸びる縦のシワがより大きく、且つ、長くなる。そうすると、印画に影響を与え易くなるため、当該第2の隙間G2を、幅方向において、インクジェットヘッド31による印字領域Kの外に設けることが好ましい。この構成によれば、第2の隙間G2に誘導したメディアMの浮きの影響を印字領域Kに与えないようにして、高品質な印画を実現可能とさせることができる。
【0060】
また、例えば、上記実施形態では、制御装置80は、ロール駆動装置61のモーター62を逆転駆動させ、メディアMに対しバックテンションを付与すると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、ロール21による搬送速度を、搬送ローラー対24による搬送速度よりも相対的に小さくして、その速度差でもってメディアMに対して張力を付与する構成であっても良い。なお、ロール駆動装置61のモーター62を逆転駆動させ、メディアMに対しバックテンションを付与する場合は、そのタイミングを搬送ローラー対24の駆動に応じて設定することが好ましい。例えば、搬送ローラー対24が、インクジェットヘッド31のワンパス毎にメディアMを間欠的に搬送する場合には、その搬送停止時間中においてバックテンションを付与すれば、印画に影響を与えないようにすることができる。なお、搬送ローラー対24の搬送/搬送停止のタイミングは、例えば回転検出装置68によって検出することができる。
【0061】
また、例えば、上記実施形態では、制御装置80は、上記浮き検出センサー70の検出結果に基づいて、第2の支持面55上におけるメディアMに張力を付与するよう搬送部2の駆動を制御すると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
例えば、制御装置80は、浮き検出センサー70の検出結果に基づいて、第2の支持面55上におけるメディアMに与える単位時間当たりの熱量を大きくするようプレヒーター部41の駆動を制御するという構成を採用しても良い。この構成によれば、加熱不足を補うような加熱が可能となるため、メディアMを第2の支持面55上において十分に加熱することができ、シワ対策となる。この場合、制御装置80とヒーター41aとを電気的に接続し、浮き検出センサー70によってメディアMの浮きが発生したと検出されたとき、制御装置80は、例えばヒーター41aによる加熱レベルを引き上げる制御を行う。
なお、搬送部2の駆動の制御と、このプレヒーター部41の駆動の制御とを適宜組み合わせて適用できることは言うまでもない。
【0062】
また、例えば、上記実施形態においては、記録装置がプリンター1である場合を例にして説明したが、プリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【0063】
また、記録装置としては、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。本発明は、例えば微小量の液滴を吐出させる記録ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。また、記録媒体としては、ポリ塩化ビニルやペットフィルム等のプラスチックフィルム以外に、用紙、機能紙、合成紙、基板や金属板などを包含するものとする。
【符号の説明】
【0064】
1…プリンター(記録装置)、2…搬送部(搬送装置)、24…搬送ローラー対、31…インクジェットヘッド(記録ヘッド)、41…プレヒーター部(加熱装置)、42…媒体支持部ヒーター部、50…第1の支持面、55…第2の支持面、70…浮き検出センサー(浮き検出装置)、80…制御装置、G…隙間、G1…第1の隙間、G2…第2の隙間、K…印字領域、M…メディア(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送装置と、
前記記録媒体に流体を噴射する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと対向する位置で前記記録媒体を支持する第1の支持面と、
前記記録ヘッドよりも搬送方向上流側で前記記録媒体を支持する第2の支持面を有すると共に該第2の支持面上の前記記録媒体を加熱する加熱装置と、
前記第1の支持面及び前記第2の支持面の少なくともいずれか一方に対する前記記録媒体の浮きを検出する浮き検出装置と、
前記浮き検出装置の検出結果に基づいて、前記第2の支持面上における前記記録媒体の加熱状態を制御する制御装置と、を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記浮き検出装置の検出結果に基づいて、前記第2の支持面上における前記記録媒体に張力を付与するよう前記搬送装置の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記浮き検出装置の検出結果に基づいて、前記第2の支持面上における前記記録媒体に与える単位時間当たりの熱量を大きくするよう前記加熱装置の駆動を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記浮き検出装置は、前記記録媒体の温度分布に基づいて前記浮きを検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記第1の支持面と前記第2の支持面との間で、前記記録媒体を搬送方向と直交する幅方向において隙間をあけて挟持する搬送ローラー対を有しており、
前記浮き検出装置は、前記隙間に対応する位置における前記記録媒体の浮きを検出可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記搬送ローラー対は、前記隙間として、所定の大きさの第1の隙間と、前記第1の隙間より大きい第2の隙間とを有しており、
前記浮き検出装置は、前記第2の隙間に対応する位置における前記記録媒体の浮きを検出可能に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記第2の隙間は、前記幅方向において前記記録ヘッドによる印字領域の外に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−39737(P2013−39737A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178266(P2011−178266)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】