説明

設備制御システム

【課題】機器コントローラに対して設備機器についての機器作動指令を指令する第1層コンピュータに異常が生じた際にも、設備機器の作動を極力停止させないようにして設備機器の稼動効率の低下を抑制し、しかも機器コストが高くなることを抑制することが可能な設備制御システムを提供する。
【解決手段】作業指令にしたがって機器コントローラに対して機器作動指令を指令する第1層プログラムを実行する第1層コンピュータに異常が生じたときに、当該第1層コンピュータが実行していた第1層プログラムを前記第2層コンピュータに実行させるか否かを人為操作により選択する選択手段が備えられ、選択手段にて選択された選択情報にしたがって代替指令を出力する代替指令出力手段が設けられ、第2層コンピュータが、代替指令出力手段が出力する代替指令に基づいて、異常を生じた第1層コンピュータで実行されていた第1層プログラムを実行するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つ又は複数の設備機器と、その設備機器の作動を制御する一つ又は複数の機器コントローラと、一つ又は複数の前記機器コントローラのうちの全部または一部を自己が担当する機器コントローラとして、当該機器コントローラに対して前記設備機器についての機器作動指令を指令しかつ前記機器コントローラから送信される前記設備機器の作動結果の管理を行うための一つ又は複数の第1層プログラムを実行する一つ又は複数の第1層コンピュータと、前記設備機器を作動させることによって実現しようとする作業についての要求である作業要求にしたがって、前記作業要求を処理するために必要な前記設備機器を作動させるべく、一つ又は複数の前記第1層コンピュータに対して作業指令を指令し、かつ、前記第1層コンピュータから送信される前記設備機器の作動結果に基づいて前記作業要求に係る作業の結果の管理を行うための第2層プログラムを実行する単一の第2層コンピュータと、が備えられた設備制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる設備制御システムは、例えば、設備機器として、物品収納棚と自己との間で物品を出し入れするスタッカークレーンを備える自動倉庫、設定された軌道に沿って物品を搬送する仕分台車、上記自動倉庫におけるスタッカークレーンの搬出入箇所と仕分台車の搬出入箇所との間で物品を入出庫する入出庫コンベヤ、及び、仕分台車の搬出入箇所と物品出荷箇所との間で物品を入出荷する入出荷コンベヤ、等を備えて構成される物流設備に適用されるものである。
【0003】
このような物流設備における設備制御システムは、設備機器の作動を制御する機器コントローラに対して設備機器についての機器作動指令を指令し、且つ、機器コントローラから送信される設備機器の作動結果の管理を行うプログラム(第1層プログラム)を実行するコンピュータ(第1層コンピュータ)と、その第1層コンピュータに対して、作業指令を指令し、且つ、その第1層コンピュータから送信される設備機器の作動結果の管理を行うプログラム(第2層プログラム)を実行するコンピュータ(第2層コンピュータ)と、を備えて構成されている。
【0004】
第2層コンピュータは、作業指令を処理するために作動させることが必要な設備機器を担当する第1層コンピュータに対して、入出庫スケジュール等に基づく作業要求にしたがって作業指令を指令する。そして、第1層コンピュータは、その作業指令に基づいて、自己が担当する機器コントローラに対して、設備機器の機器作動指令を指令する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の物流設備の設備制御システムにおいては、第1層コンピュータ(自動倉庫の制御装置)が、設備全体を管理する第2層コンピュータ(設備コントローラ)からの作業指令に基づいて、スタッカークレーン等の各機器の作動を個別に制御する機器コントローラへの機器作動指令を指令する。そして、第1層コンピュータは、機器コントローラからの作動結果の情報に基づいて、物品収納棚の複数の物品収納部の夫々に一意に付与される収納位置の情報と、その収納位置に収納された夫々の物品に固有の識別情報とを対応付けて、物品収納部に収納される物品を特定する情報である物品管理情報を管理するように構成されている。この物品管理情報は、通信回線を通じて第2層コンピュータに出力され、第2層コンピュータは、その収納位置の情報と物品固有の識別情報とに基づいて、これらを対応付けた棚データ(在庫データ)を作成して在庫管理を行うように構成されている。
【0006】
上記特許文献1の物流設備の設備制御システムは、このように構成されるものであるから、例えば第2層コンピュータに異常が生じ、その後、異常が生じる前に保持していたデータ等が初期化された状態で復旧された場合においても、第1層コンピュータが保持していた物品管理情報に基づいて在庫管理のための棚データ(在庫データ)を再構成できるものとなり、迅速な復旧が可能である。
【0007】
しかしながら、このような構成では、第2層コンピュータに異常が生じた後にそれが復旧した際の在庫データの復旧作業は容易であるものの、第1層コンピュータに異常が生じた際にはその第1層コンピュータが担当する設備機器を継続して稼動させることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−136705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
コンピュータによる情報処理システムにおいては、ある処理を行うプログラムを実行するコンピュータに異常が生じたときに、そのコンピュータにて実行されていたプログラムが行うべき処理が継続できなくなるという問題を回避するために、運用中のコンピュータ(運用系コンピュータと称する)と、そのコンピュータの機能の代替のみを目的とするコンピュータ(待機系コンピュータと称する)とを備えて、運用系コンピュータに異常が生じたときには、その運用系コンピュータから待機系コンピュータにフェールオーバーして、異常が生じた運用系コンピュータが実行していたプログラムによる処理を待機系コンピュータに引き継ぐ形態で、その情報処理システムを停止することなく実行する無停止システムが実現されている。このような無停止システムを高可用性クラスタリングという。
【0010】
高可用性クラスタリングを行なう場合、運用系コンピュータと待機系コンピュータとの間にHeartBeatと呼ばれる相互監視機構等を設けて異常検知を行う。しかしながら、高可用性クラスタリングにおいては、運用系コンピュータと待機系コンピュータとの間におけるネットワークの瞬断を運用系コンピュータに異常が生じたと相互監視機構が誤認する等によって、運用系コンピュータは正常に稼動しているにもかかわらず待機系コンピュータがシステムによって自動的に起動され、いわゆるスプリットブレインシンドロームが発生する虞がある。
【0011】
上記特許文献1に示すような設備制御システムにおいて、第1層コンピュータを運用系コンピュータとする高可用性クラスタリングを導入した場合、第1層コンピュータと待機系コンピュータとの間におけるネットワークの瞬断を第1層コンピュータの異常と誤認する等して上述のスプリットブレインシンドロームが発生すると、同一の第1層プログラムを実行する第1層コンピュータが2つ存在する状態となり、一つの設備機器に対応する機器コントローラに対して複数の作動指令が指令される虞がある。例えば、スタッカークレーンに対応する機器コントローラに対して、上記複数の作動指令として前進指令と後退指令とが同時に発生すると、機器コントローラはスタッカークレーンをどのように作動させればよいか判断できなくなる虞がある。このような場合、機器コントローラは、設備機器を保護すべくその作動を停止させる指令を出すこととなり、設備機器の稼動効率の低下を招くものとなっていた。このような理由から、設備制御システムでは、スプリットブレインシンドロームの発生を的確に抑制して、設備機器の稼動効率の低下を抑制することが可能な無停止システムの実現が要請されていた。また、高可用性クラスタリングでは、運用系コンピュータに対して、その運用系コンピュータを代替させることのみを目的とする待機系コンピュータを備える必要があるため、設備コストが高くなっていた。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機器コントローラに対して設備機器についての機器作動指令を指令する第1層コンピュータが設けられた設備制御システムにおいて、当該第1層コンピュータに異常が生じた際にも、設備機器の作動が停止することを抑制して、設備機器の稼動効率の低下を抑制し、しかも機器コストが高くなることを抑制することが可能な設備制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る設備制御システムの第1特徴構成は、一つ又は複数の設備機器と、その設備機器の作動を制御する一つ又は複数の機器コントローラと、一つ又は複数の前記機器コントローラのうちの全部または一部を自己が担当する機器コントローラとして、当該機器コントローラに対して前記設備機器についての機器作動指令を指令しかつ前記機器コントローラから送信される前記設備機器の作動結果の管理を行うための一つ又は複数の第1層プログラムを実行する一つ又は複数の第1層コンピュータと、前記設備機器を作動させることによって実現しようとする作業についての要求である作業要求にしたがって、前記作業要求を処理するために必要な前記設備機器を作動させるべく、一つ又は複数の前記第1層コンピュータに対して作業指令を指令し、かつ、前記第1層コンピュータから送信される前記設備機器の作動結果に基づいて前記作業要求に係る作業の結果の管理を行うための第2層プログラムを実行する単一の第2層コンピュータと、が備えられたものであって、
一つ又は複数の前記第1層コンピュータが、前記作業指令にしたがって、当該第1層コンピュータが担当する1つ又は複数の前記機器コントローラに対して機器作動指令を指令すべく、一つ又は複数の前記第1層プログラムを実行するように構成され、前記第1層コンピュータに異常が生じたときに、当該第1層コンピュータが実行していた一つ又は複数の前記第1層プログラムを前記第2層コンピュータに実行させるか否かを人為操作により選択する選択手段が備えられ、
異常が生じた前記第1層コンピュータにて実行されていた一つ又は複数の前記第1層プログラムを代替対象プログラムとして実行させる代替指令を指令する代替指令出力手段が備えられ、
前記代替指令出力手段が、前記選択手段にて選択された選択情報にしたがって、前記代替指令を出力するように構成され、
前記第2層コンピュータが、前記代替指令出力手段が出力する前記代替指令に基づいて、前記代替対象プログラムを実行するように構成されている点にある。
【0014】
すなわち、第1層コンピュータに異常が生じたときに、当該第1層コンピュータが実行していた一つ又は複数の第1層プログラムを第2層コンピュータに実行させるか否かを人為操作により選択し、その選択情報にしたがって第2層コンピュータが、異常が生じた第1層コンピュータにて実行されていた一つ又は複数の第1層プログラムを実行することになる。
【0015】
つまり、利用者が人為操作によって第1層コンピュータが実行していた第1層プログラムを第2層コンピュータに実行させるか否かを選択するものとなるから、第1層コンピュータに異常が生じてその第1層コンピュータにて実行される第1層プログラムが機能しない状態となっていることを確認した上で、当該第1層プログラムを第2層コンピュータにて実行させることができる。したがって、第1層コンピュータに異常が生じていないにもかかわらず、何らかの理由で(例えば、第1層コンピュータと第2層コンピュータとの間のネットワークに瞬断が生じた等の理由で)第1層コンピュータに異常が生じたとシステムが誤認して、第1層コンピュータにて実行されていた第1層プログラムが自動的に第2層コンピュータで実行され、第1層コンピュータと第2層コンピュータとの双方で同一の1層用プログラムが実行される事態を回避することができる。
上述のように第1層コンピュータと第2層コンピュータとの双方で同一の第1層プログラムが実行されると、一つの設備機器に対応する機器コントローラに、第1層コンピュータで実行される第1層プログラムと第2層コンピュータで実行される第1層プログラムとの双方から異なる機器作動指令が指令される虞がある。このように1つの機器コントローラに異なる複数の機器作動指令が指令されると、機器コントローラは、設備機器を保護するためにその作動を停止させることになり、設備機器の作動効率が低下することになるが、第1特徴構成によれば、第1層コンピュータと第2層コンピュータとの双方で同一の第1層プログラムが実行される事態を回避することができるから、夫々の第1層プログラムから異なる機器作動指令が指令されることが抑制され、設備機器の作動効率の低下を抑制することができる。
【0016】
しかも、第1特徴構成によれば、第1層コンピュータに異常が生じたときに、その第1層コンピュータで実行されていた第1層プログラムを第2層コンピュータに実行させる、つまり、異常が生じた第1層コンピュータの代替を第2層コンピュータで行うことが可能となるため、第1層コンピュータを代替させることのみを目的とするコンピュータを別途備える必要が無く、機器コストが高くなることを抑制することができる。
【0017】
要するに、第1特徴構成によれば、機器コントローラに対して設備機器についての機器作動指令を指令する第1層コンピュータが設けられた設備制御システムにおいて、当該第1層コンピュータに異常が生じた際にも、設備機器の作動が停止することを抑制して、設備機器の稼動効率の低下を抑制することが可能となり、しかも機器コストが高くなることを抑制することが可能な設備制御システムが提供できる。
【0018】
本発明に係る設備制御システムの第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記代替指令出力手段が、異常が生じた前記第1層コンピュータにて実行されていた前記第1層プログラムの全部を前記代替対象プログラムとして、前記第2層コンピュータに実行させる代替指令を指令自在に構成されている点にある。
【0019】
すなわち、異常が生じた第1層コンピュータで実行されていた第1層プログラムの全部を、第2層コンピュータで実行させることができるものであるから、異常が生じた第1層コンピュータで実行されていた第1層プログラムが単一である場合はもちろん、異常が生じた第1層コンピュータで第1層プログラムが複数実行されていた場合であっても、それらの第1層プログラムを第2層コンピュータで代替して実行することが可能となり、第1層コンピュータに異常が生じた際にも、設備機器の作動が停止することを抑制して、設備機器の稼動効率の低下を抑制することができる。
なお、第2層コンピュータの処理能力が、第2層プログラムに加えて複数の第1層プログラムを実行するのに十分でない場合には、当該複数の第1層プログラムの夫々を、処理速度を低下させて実行するコンピュータへの負荷を低減させる形態で実行する(縮退運転と称する)ことによって、複数の第1層プログラムのうちのいずれかを停止させることなく、第2層プログラムと第1層プログラムとを第2層コンピュータで実行することが可能となる。
【0020】
要するに、第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、第1層コンピュータに異常が生じた際にも、すべての設備機器が作動する状態を維持することができる。
【0021】
本発明に係る設備制御システムの第3特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記第1層コンピュータにて複数の前記第1層プログラムが実行され、前記選択手段が、異常が生じた前記第1層コンピュータにて実行されていた複数の前記第1層プログラムの一部を前記代替対象プログラムとして選択自在に構成され、前記代替指令出力手段が、前記選択手段にて選択された前記代替対象プログラムを前記第2層コンピュータに実行させる代替指令を指令自在に構成されている点にある。
【0022】
すなわち、異常が生じた第1層コンピュータにて複数の第1層プログラムが実行されていた場合、その複数の前記第1層プログラムの一部を代替対象プログラムとして、第2層コンピュータで実行することができる。
つまり、それら複数の第1層プログラムのうち、システムの稼動にとって重要度の高いプログラムと重要度の低いプログラムとがある場合において、重要度の高いプログラムと重要度の低いプログラムとの全てを第2層コンピュータで実行すると、当該第2層コンピュータの処理能力の上限を超過してしまい、それにより、第2層コンピュータにおいて元来実行されていた第2層プログラムの処理が適正に行われない又はその処理速度が低下するなどの問題の発生が懸念されるときには、利用者の判断により、重要度の高いプログラムを選択的に代替実行させることで、第2層コンピュータにおける負荷を適正な範囲内に収めて、第2層コンピュータにおいて元来実行されていた第2層プログラムを適正に実行させながら、複数の代替対象プログラムのうち重要度の高いプログラムを第2層コンピュータで実行することが可能となる。
【0023】
要するに、第3特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、第2層コンピュータにおいて元来実行されていた第2層プログラムを適正に実行させながら、複数の代替対象プログラムのうち重要度の高いプログラムを第2層コンピュータで実行することが可能な設備制御システムが提供できる。
【0024】
本発明に係る設備制御システムの第4特徴構成は、上記第1〜第3のいずれかの特徴構成に加えて、前記第1層コンピュータと前記第2層コンピュータとの間で通信される前記作業指令のデータ及び前記作動結果のデータを中継するバッファ手段が設けられ、
前記バッファ手段が、前記第1層コンピュータ及び前記第2層コンピュータの夫々に付与された識別情報に基づいて、それら相互の間のデータの送受を中継するように構成され、
前記代替指令出力手段が、前記代替指令を出力する前に、当該第1層コンピュータに付与されていた前記識別情報を前記第2層コンピュータに引き継がせる識別情報引継指令を指令するように構成されている点にある。
【0025】
すなわち、バッファ手段が、第1層コンピュータ及び第2層コンピュータの夫々に付与された識別情報(例えば、IPアドレスやホスト名)に基づいて、それら相互の間で通信されるデータの送受を中継するように構成され、代替指令出力手段が、代替指令を出力する前に、異常が生じた第1層コンピュータに付与されていた識別情報を第2層コンピュータに引き継がせる識別情報引継指令を指令するものであるから、第1層コンピュータに異常が生じてその第1層コンピュータにて実行されていた第1層プログラムを第2層コンピュータにて実行させるときにおいても、バッファ手段が、異常が生じた第1層コンピュータが送受していたデータを、代替先の第2層コンピュータとの間で中継することができるものとなる。
【0026】
したがって、第1層コンピュータに異常が生じて、当該第1層コンピュータで実行されていた第1層プログラムを第2層コンピュータに実行させる場合においても、いずれの第1層プログラム又は第2層プログラムも、自己が管理する指令及び報告データの送信先の識別情報を変更する必要がないものとなる。
【0027】
要するに、第4特徴構成によれば、上記第1〜第3特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、第1層コンピュータに異常が生じて、当該第1層コンピュータで実行されていた第1層プログラムを第2層コンピュータに実行させる場合においても、いずれの第1層プログラム又は第2層プログラムも、自己が管理する指令及び報告データの送信先の識別情報を変更する必要がないものとなり、構成の簡素化が可能な設備制御システムが提供できる。
【0028】
本発明に係る設備制御システムの第5特徴構成は、上記第1〜第4のいずれかの特徴構成に加えて、前記一つ若しくは複数の第1層コンピュータ又は前記第2層コンピュータから前記設備機器の作動状態に関する情報を収集して表示するモニタリング用プログラムを実行するモニタリング用コンピュータが設けられ、
前記代替指令出力手段が、異常が生じた前記モニタリング用コンピュータにて実行されていた前記モニタリング用プログラムを第2代替対象プログラムとして実行させる第2代替指令を指令自在に構成され、
前記代替指令出力手段が、前記選択手段にて選択された選択情報に基づいて、前記第2層コンピュータに対して前記第2代替指令を指令自在に構成されている点にある。
【0029】
すなわち、一つ若しくは複数の第1層コンピュータ又は第2層コンピュータから設備機器の作動状態に関する情報を収集して表示するモニタリング用プログラムを実行するモニタリング用コンピュータが存在する場合において、そのモニタリング用コンピュータに異常が生じたときには、そのモニタリング用コンピュータにおいて実行されていたモニタリング用プログラムを第2層コンピュータで実行することができるため、モニタリング用コンピュータを代替するために別途コンピュータを用意する必要が無く、設備制御システムの構築コストが削減できる。
【0030】
要するに、第5特徴構成によれば、上記第1〜第4特徴構成のいずれかに加えて、モニタリング用コンピュータを代替するために別途コンピュータを用意する必要が無く、構築コストが削減可能な設備制御システムが提供できる。
【0031】
本発明に係る設備制御システムの第6特徴構成は、上記第1〜第5のいずれかの特徴構成に加えて、前記第1層コンピュータが複数設けられ、前記第1層コンピュータのうちの2台以上が前記代替対象プログラムを実行可能な第1層代替候補コンピュータとして設定され、
前記選択手段が、前記第1層代替候補コンピュータとして設定されている前記第1層コンピュータのうち異常が発生した前記第1層コンピュータを除く前記第1層コンピュータのいずれに前記代替対象プログラムを実行させるかを人為操作により選択自在に構成されている点にある。
【0032】
すなわち、第1層コンピュータが複数設けられ、第1層コンピュータのうちの2台以上が代替対象プログラムを実行可能な第1層代替候補コンピュータとして設定されているから、異常が生じた第1層コンピュータにて実行されていた代替対象プログラムをそれら第1層代替候補コンピュータのいずれかにて実行することができる。そして、それら第1層代替候補コンピュータのうちのいずれに代替対象プログラムを実行させるかを選択することができるから、例えば他の第1層コンピュータの処理能力に余裕がある場合には、その第1層コンピュータを選択して代替を実行させることができ、可用性の高い設備制御システムが提供できるものとなる。
【0033】
本発明に係る設備制御システムの第7特徴構成は、上記第1〜第6のいずれかの特徴構成に加えて、前記設備機器が物流設備における物品搬送装置にて構成され、
前記第1層コンピュータが前記物品搬送装置の作動を制御する前記機器コントローラを管理するように構成され、
前記第2層コンピュータが物流設備の全体における物品の搬送情報を管理するように構成され、
前記作業要求が物流設備における物品の搬送要求である点にある。
【0034】
すなわち、物品搬送装置の作動を制御する前記機器コントローラを管理する第1層コンピュータに異常が生じた場合においても、その第1層コンピュータにて実行されていた第1層プログラムを、物流設備の全体における物品の搬送情報を管理する第2層コンピュータで代替して実行することが可能となる。したがって、第1層コンピュータが担当する機器コントローラが制御する物品搬送装置の作動を停止させることを極力抑制して、適切に物流設備における物品搬送装置を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】物流設備の全体平面図
【図2】設備管理システムの機能ブロック及びネットワーク接続を表す図
【図3】代替実行時の処理に関するフローチャート
【図4】選択手段の表示画面を示す図
【図5】選択手段の表示画面を示す図
【図6】プログラムの代替状態を表す図
【図7】プログラムの代替状態を表す図
【図8】プログラムの代替状態を表す図
【図9】プログラムの代替状態を表す図
【図10】プログラムの代替状態を表す図
【図11】プログラムの代替状態を表す図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係る設備制御システムを物流設備1に適用した場合について、図面に基づいて説明する。
この物流設備1は、図1に示すように、物品収納棚2とスタッカークレーン51とからなる自動倉庫Jと、その自動倉庫Jに備えるスタッカークレーン51との間で物品Bを受け渡しする入出庫コンベヤ52と、物品Bを外部との間で入荷する入荷部5または出荷する出荷部6としての入出荷コンベヤ53と、走行レール4に沿って走行自在で入出庫コンベヤ52と入出荷コンベヤ53との間で物品を載置搬送する仕分台車50と、を備えて構成されている。
【0037】
物品収納棚2は、複数の物品収納部を縦横に並べて、前面側を物品の出し入れのために開口させる状態で構成され、その前面側を対向させる状態で離間して複数設けられている。また、対向する物品収納棚2の間には、スタッカークレーン51の走行用の走行レール3が設けられている。
【0038】
スタッカークレーン51は、走行レール3上を走行移動自在な走行車輪を備えた走行台車と、走行台車に立設された昇降案内マストとを備え、昇降台が昇降案内マストに支持される状態で昇降移動可能に構成されている。そして、昇降台に備える移載装置と物品収納部との間で、物品を移載可能に構成されている。
走行レール3の一端部には、スタッカークレーン51の作動を制御する地上側コントローラ51hが設けられている。また、スタッカークレーン51の走行台車には、図示しないが移動体側コントローラが設けられている。そして、地上側コントローラ51hと移動体側コントローラとが、赤外線等で相互に通信自在に構成されている。地上側コントローラ51hと移動体側コントローラとによって、スタッカークレーンコントローラ51Cが構成されている。
スタッカークレーン51の移載装置の近傍には、物品の識別情報(バーコードやICタグ等に記録された情報)を読み取る物品識別センサS1が設けられ、読み取った情報がスタッカークレーンコントローラ51Cに入力されるように構成されている。
【0039】
入出庫コンベヤ52は、スタッカークレーン51との間で物品の移載が可能な物品収納棚2の端部である棚側入出庫箇所52aと、仕分台車50との間で物品の移載が可能な状態で備えられる仕分台車50の走行レール4横側部に位置する端部である台車側入出庫箇所52bとを備えている。そして、入出庫コンベヤ52は、入出庫コンベヤコントローラ52Cによって、その作動を制御されるように構成されている。
棚側入出庫箇所52a及び台車側入出庫箇所52bには、夫々、物品の識別情報(バーコードやICタグ等に記録された情報)を読み取る物品識別センサS2a、S2bが設けられている。
【0040】
仕分台車50は、ロータリーエンコーダやドグ検出等の公知の方法によって、自己の走行位置を検出しながら走行自在に構成され、仕分台車コントローラ50Cにてその作動を制御されるように構成されている。また、仕分台車50に備える物品載置部近傍には、自己が載置搬送する物品Bの識別情報(バーコードやICタグ等に記録された情報)を読み取る台車物品センサS0が設けられている。
【0041】
入出荷コンベヤ53は、外部から物品Bを入荷する入荷部としての入荷コンベヤ5と、外部に対して物品Bを出荷する出荷部としての出荷コンベヤ6とを備えている。そして、入荷コンベヤ5、出荷コンベヤ6の夫々の作動を、入出荷コンベヤコントローラ53Cによって制御するように構成されている。また、入荷コンベヤ5における物品搬送方向上流側の端部、及び、出荷コンベヤ6における物品搬送方向上流側の端部には、物品Bの識別情報(バーコードや無線ICタグ等に記録された情報)を読み取る物品識別センサS5、S6が設けられている。
【0042】
すなわち、設備機器としてのスタッカークレーン51、入出庫コンベヤ52、入出荷コンベヤ53、及び、仕分台車50と、各設備機器に対応して設けられ、設備機器の作動を制御する機器コントローラCとしてのスタッカークレーンコントローラ51C、入出庫コンベヤコントローラ52C、入出荷コンベヤコントローラ53C、及び仕分台車コントローラ50Cとが設けられている。
【0043】
機器コントローラCは、例えばマイコン等にて構成され、各設備機器とはシリアルインタフェースや赤外線通信インタフェース等の通信インタフェースによってデータの送受が可能となっている。尚、通信インタフェースは上記に限定されるものではなく、リアルタイム性が確保できる範囲内で各種のインタフェースが利用可能である。
【0044】
設備制御システムは、図2に示すように、複数の機器コントローラCと、機器コントローラCのうちの全部または一部を自己が担当する機器コントローラとして、当該機器コントローラCに対して設備機器についての機器作動指令を指令しかつ機器コントローラCから送信される設備機器の作動結果の管理を行うための一つ又は複数の第1層プログラム11を実行する一つ又は複数の第1層コンピュータ10と、設備機器を作動させることによって実現しようとする作業についての要求である作業要求にしたがって、その作業要求を処理するために必要な設備機器を作動させるべく、一つ又は複数の第1層コンピュータ10に対して作業指令を指令し、かつ、第1層コンピュータ10から送信される設備機器の作動結果に基づいて作業要求に係る作業の結果の管理を行うための第2層プログラム21を実行する単一の第2層コンピュータ20とを備えている。
一つ又は複数の第1層コンピュータ10は、第2層コンピュータ20からの作業指令にしたがって、当該第1層コンピュータ10が担当する1つ又は複数の機器コントローラCに対して機器作動指令を指令すべく、一つ又は複数の第1層プログラム11を実行するように構成されている。
【0045】
また、設備制御システムには、一つ若しくは複数の第1層コンピュータ10又は第2層コンピュータ20から設備機器の作動状態に関する情報を収集して表示するモニタリング用プログラム31を実行する、一つ又は複数のモニタリング用コンピュータ30が設けられている。
【0046】
以下、設備制御システムを構成する機器コントローラC、第1層コンピュータ10、及び第2層コンピュータ20、並びに、その設備制御システムに付帯するモニタリング用コンピュータ30の構成及び接続を示す図2に基づいて説明する。尚、図2は、設備制御システムの一例を説明するものであり、第1層コンピュータ10については1台又は3台以上としてもよく、モニタリング用コンピュータ30については2台以上としてもよい。
【0047】
図2に示すように、機器コントローラC、第1層コンピュータ10、第2層コンピュータ20、及びモニタリング用コンピュータ30は、ネットワークインタフェースを介して相互に通信回線Lにて接続されている。通信回線Lは、例えばスター型トポロジーのLANとして構成され、TCP/IPを利用した通信を行うように構成されている。
なお、LANのセグメントについては、機器コントローラC、第1層コンピュータ10、第2層コンピュータ20、及びモニタリング用コンピュータ30が相互に通信可能な構成であればよく、図2に記載のコンピュータのすべてが同一セグメントに属している必要はない。
【0048】
図2においては、第1層コンピュータ10として、入出庫コンベヤを担当するコンベヤ担当第1層コンピュータ10aとスタッカークレーンを担当するクレーン担当第1層コンピュータ10bとを備える構成を例示している。
本実施形態においては、第1層コンピュータ10は、上記の他に仕分台車50を担当する第1層コンピュータ、及び、入出荷コンベヤ53を担当する第1層コンピュータ等も設けられることになるが、コンベヤ担当第1層コンピュータ10a及びクレーン担当第1層コンピュータ10bと同様の構成であるため、説明を省略する。
コンベヤ担当第1層コンピュータ10a及びクレーン担当第1層コンピュータ10bには、例えばパーソナルコンピュータやPCサーバ等、専用コンピュータではない比較的安価なコンピュータを使用することができる。コンベヤ担当第1層コンピュータ10a及びクレーン担当第1層コンピュータ10bには、CPU、メインメモリ、ハードディスク、ディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイス(マウス)等が備えられ、且つ、ネットワークインタフェースが設けられている。
【0049】
コンベヤ担当第1層コンピュータ10a及びクレーン担当第1層コンピュータ10bの夫々には、入出庫コンベヤ用のコンベヤ担当第1層プログラム11aとスタッカークレーン用のクレーン担当第1層プログラム11bとがインストールされ、加えて、第2層プログラム21、第2層プログラム21が使用するデータベースプログラム25、後述する選択手段及び代替指令出力手段としてのサービス切換プログラム43、後述するバッファ手段としてのメッセージキュープログラム44、及び、モニタリング用プログラム31がインストールされている。
【0050】
コンベヤ担当第1層コンピュータ10aでは、平常運用時(すなわち、他のコンピュータで実行すべきプログラムを代替して実行していないとき)には、インストールされている上記のプログラムのうち、入出庫コンベヤ用のコンベヤ担当第1層プログラム11a、及び、サービス切換プログラム43が実行されている。
また、クレーン担当第1層コンピュータ10bでは、平常運用時には、インストールされている上記のプログラムのうち、スタッカークレーン用のクレーン担当第1層プログラム11b、サービス切換プログラム43、及び、メッセージキュープログラム44が実行されている。
【0051】
第2層コンピュータ20には、第1層コンピュータ10よりも処理能力が高いコンピュータが用いられる。なお、ここでいう処理能力とは、CPUの計算速度、ハードディスクへのアクセス速度等によって相対的に規定される概念である。第2層コンピュータ20には、上記第2層プログラム21と第2層プログラム21が使用するデータベースプログラム25とがインストールされ、加えて、サービス切換プログラム43、メッセージキュープログラム44、モニタリング用プログラム31、コンベヤ担当第1層プログラム11a、及び、クレーン担当第1層プログラム11bがインストールされている。
第2層コンピュータ20では、平常運用時には、インストールされている上記のプログラムのうち、第2層プログラム21、データベースプログラム25、及び、サービス切換プログラム43が実行されている。
【0052】
モニタリング用コンピュータ30は、第1層コンピュータ10と同程度又はそれより処理能力の低いコンピュータを用いることができる。モニタリング用コンピュータ30には、モニタリング用プログラム31がインストールされ、加えて、サービス切換プログラム43、メッセージキュープログラム44、及び、コンベヤ担当第1層プログラム11aがインストールされている。
モニタリング用コンピュータ30では、平常運用時には、インストールされている上記のプログラムのうち、第2層プログラム21、データベースプログラム25、及び、サービス切換プログラム43が実行されている。
【0053】
次に、第1層コンピュータ10、第2層コンピュータ20、又はモニタリング用コンピュータ30にインストールされる各プログラムが実行する処理について説明する。
メッセージキュープログラム44は、前述の第1層コンピュータ10、第2層コンピュータ20、及びモニタリング用コンピュータ30の全てにインストールされ、そのうちいずれかのコンピュータ(たとえばクレーン担当第1層コンピュータ10b)で実行される状態となっている。メッセージキュープログラム44は、第2層コンピュータ20から第1層コンピュータ10に対して送信される作業指令のデータ、及び、第1層コンピュータ10から第2層コンピュータ20に対して送信される設備機器の作動結果に関するデータを、先入れ先出し(FIFO)方式のメモリ領域にて構成されるメッセージキューに蓄積し、第1層コンピュータ及び第2層コンピュータに付与されたIPアドレスを識別情報として、それら相互の間のデータの送受をIPアドレスに基づいて中継するように構成されている。
具体的には、全ての第1層コンピュータ、及び、第2層コンピュータは、上記作業指令データ及び作動結果データをメッセージキュープログラム44が実行されているコンピュータ(以下、「メッセージキュープログラム実行コンピュータ」と称する)としてのクレーン担当第1層コンピュータ10bに対して送信する。クレーン担当第1層コンピュータ10bは、作業指令データ及び作動結果データを受信すると、それをメッセージキュープログラム44のメッセージキューに蓄積する。
ちなみに、蓄積された上記作業指令データ及び作動結果データは、切換えに要する時間に対して十分小さい時間を設定時間として、設定時間の間メッセージキューに保存され、設定時間が経過するとメッセージキューから消去される。
【0054】
第2層プログラム21は、その上位の入力手段又はシステムによって生成される作業要求(例えば、「顧客Aに商品αを10個出荷する」等)にしたがって、物品の搬送を指令する作業指令に係るデータ(作業指令データと称する)を、メッセージキュープログラム実行コンピュータであるクレーン担当第1層コンピュータ10bに付与されたIPアドレスを宛先として送信する。作業指令データは、搬送される物品の識別情報(物品ID)、その物品の搬送初期位置(Fromデータ)、及びその物品の搬送目標位置(Toデータ)とから構成される。作業指令データを受信したクレーン担当第1層コンピュータ10bは、作業指令データを、後述するメッセージキュープログラム44によってクレーン担当第1層コンピュータ10bのメモリ領域に形成されるメッセージキューに蓄積する。
【0055】
コンベヤ担当第1層コンピュータ10a・10bが実行するコンベヤ担当第1層プログラム11a・11bは、クレーン担当第1層コンピュータ10bから配信される、メッセージキュープログラム44のメッセージキューに蓄積された作業指令データを、作業指令として到着順に処理する。すなわち、作業要求を処理するために必要な設備機器を作動させるために、作業指令データにしたがって機器コントローラCに対して機器作動指令を指令する。
作業指令データによる作業指令は、物流設備1における複数種の設備機器のうちの1つ又は複数を使用して実現されるものであるから、1つの作業指令データについて、複数の第1層コンピュータ10が自己の担当する設備機器を制御することになる。
【0056】
具体的には、作業指令データが「物品IDβの物品Bを物品収納棚2におけるある物品収納部から、出荷部6まで搬送する」という内容であった場合、まずスタッカークレーン51用のクレーン担当第1層プログラム11bが、スタッカークレーンコントローラ51Cに対して、物品IDβの物品Bを物品収納部から入出庫コンベヤ52の棚側入出庫箇所52aに搬送すべく、スタッカークレーン51を作動させる機器作動指令を指令する。
スタッカークレーン51が物品IDβの物品Bを入出庫コンベヤ52の棚側入出庫箇所52aに移載すると、スタッカークレーンコントローラ51Cは棚側入出庫箇所52aに設けられる物品識別センサS2aにて物品の物品IDを読み取り、入出庫コンベヤ52用のコンベヤ担当第1層プログラム11aにその物品IDを送信する。
【0057】
コンベヤ担当第1層プログラム11aは、スタッカークレーンコントローラ51Cから受信した物品IDが作業指令データにて搬送を指令された物品IDβである場合、その物品Bを搬送目標位置に搬送すべく、入出庫コンベヤ52に載置された物品Bを棚側入出庫箇所52aから台車側入出庫箇所52bに搬送する機器作動指令を指令する。
物品Bが台車側入出庫箇所52bに到達すると、入出庫コンベヤコントローラ52Cは、台車側入出庫箇所52bに設けられる物品識別センサS2bにて物品の物品IDを読み取り、引き続き物品Bの搬送を行う仕分台車50を担当する第1層プログラム11にその物品IDを送信する。
このようにして、作業指令データにて指令された物品IDβの物品Bが搬送目標位置に到達するまで、第1層コンピュータ10が、自己が担当する機器コントローラCに作業指令を指令する形態で物品が搬送されることになる。
【0058】
また、機器コントローラCの夫々は、作業指令データにて指令された作業を処理するために必要な作動を完了すると、その作動結果の報告、つまり作業指令データ固有の識別番号と、その作業指令データに対応する作動を完了したことを表すデータ(以下、作動結果データと称する)を、自己を担当する第1層プログラム11を実行する第1層コンピュータ10に対して送信する。
第1層プログラム11の夫々は、機器コントローラCから受信した作動結果データを、メッセージキュープログラム実行コンピュータであるクレーン担当第1層コンピュータ10bに付与されたIPアドレスを宛先として送信する。
【0059】
作動結果データを受信したクレーン担当第1層コンピュータ10bは、作動結果データを、メッセージキュープログラム44のメッセージキューに蓄積し、その配信先として設定されている第2層コンピュータ20に対して送信する。第2層コンピュータ20で実行されている第2層プログラム21は、メッセージキュープログラム実行コンピュータから配信される、メッセージキュープログラム44のメッセージキューに蓄積された作動結果データを、蓄積順に処理する。
具体的には、第2層プログラム21は、作動結果データを受信すると、第2層プログラム21と同一のコンピュータで実行されるデータベースプログラム25に指令して、作業指令データの識別番号と機器コントローラCからの作動結果データとを対応付けるデータベースを随時更新するように構成されている。そして、第2層プログラム21は、上記データベースを参照することで、その作業指令データに対応する処理がどの設備機器での搬送作動まで完了しているかを知ることができるものとなる。
【0060】
モニタリング用プログラム31は、システムに1台(又は複数台でもよい)設けられるモニタリング用コンピュータ30(サーバ)にて実行される。モニタリング用コンピュータ30に対しては、複数台のモニタリング用端末が接続可能であり、モニタリング用端末はモニタリング用プログラム31が処理した統計データ等を表示する。モニタリング用プログラム31は、機器コントローラC、第1層プログラム11、及び、第2層プログラム21の一つ又は複数から情報を収集して、設備機器又は設備制御システムの一部又は全部の状態を監視(モニタリング)可能に構成されている。一例として、モニタリング用プログラム31は、設備機器としてのスタッカークレーン51や仕分台車50の作動位置に関する情報やそのMTBF(平均故障時間間隔)、あるいは、入出庫コンベヤ52の故障情報等、各種の情報をモニタリング用コンピュータ30のディスプレイ装置又はモニタリング用端末に表示可能に構成されている。
【0061】
サービス切換プログラム43は、異常が発生したコンピュータで実行されていたプログラムを代替対象プログラムとして、その代替対象プログラムを他のコンピュータで実行するか否かを人為操作により選択し、その代替対象プログラムを当該他のコンピュータで実行させる代替指令を出力するように構成されている。
具体的には、サービス切換プログラム43は、バックグラウンドで実行されるバックグラウンド実行部と利用者への情報表示及び利用者からの指令の入力を行うユーザーインタフェース部とから構成される。サービス切換プログラム43は、1つ又は複数のコンピュータにインストールされることになるが、インストールされるコンピュータは、設備制御システムを構成する第1層コンピュータ10、第2層コンピュータ20、及びモニタリング用コンピュータ30のうちのいずれか1つ又は複数でもよく、また、それらと同一のネットワークに属し、相互に通信可能な他のコンピュータ(例えば、メールサーバ、ファイルサーバ等のサーバ類、又は業務端末等)でもよい。
【0062】
サービス切換プログラム43は、第1層コンピュータ10に異常が生じたときに、当該第1層コンピュータ10に付与されていたIPアドレスを第2層コンピュータ20に引き継がせる識別情報引継指令を指令するように構成されている。
これにより、識別情報引継指令が指令される以前においては第1層コンピュータ10との間で送受されていたデータは、識別情報引継指令が指令された後において第1層コンピュータ10のIPアドレスを引き継いだ第2層コンピュータ20との間で送受信することが可能となる。したがって、当該設備管理システムを構成するコンピュータは、代替の前後で送受信先のコンピュータが変更されたことを意識すること無く情報の送受信を行うことができるものとなる。
【0063】
バックグラウンド実行部は、サービス切換プログラム43がインストールされているコンピュータの起動と同時にバックグラウンドプロセスとして起動されるようになっている。また、サービス切換プログラム43は、起動されてから設定時間(例えば5秒)おきに、サービス切換プログラム43が起動されている全てのコンピュータに対して自らが起動していることを示す起動通知データを送信する。なお、起動通知データは、UDPマルチキャストによって送信される。そして、サービス切換プログラム43のバックグラウンド実行部は、受信した起動通知データに基づいて、サービス切換プログラム43が実行されているコンピュータ(以下、サービス切換プログラム実行コンピュータと称する)についての起動又は停止を管理する起動コンピュータリストを更新するように構成されている。
【0064】
ユーザーインタフェース部は、平常運用時には実行されておらず、利用者の起動指令(例えばアイコンのクリック等)によって起動されるようになっている。
図4及び図5に示すように、ユーザーインタフェース部が起動されると、利用者に対してサービス切換プログラム実行コンピュータの夫々についてその起動状態を一覧表示する情報ウィンドウW1をディスプレイに表示する。図4(a)は、コンベヤ担当第1層コンピュータ10a、クレーン担当第1層コンピュータ10b、第2層コンピュータ20、及び、モニタリング用コンピュータ30(サーバ1〜サーバ4)が正常に作動している状態、図4(b)は、スタッカークレーン51用のクレーン担当第1層コンピュータ10b(サーバ2)に異常が生じてクレーン担当第1層プログラム11bが停止している状態を示している。
つまり、サービス切換プログラム43が、第1層コンピュータ10に異常が生じたときに、当該第1層コンピュータ10が実行していた一つ又は複数の第1層プログラム11を第2層コンピュータ20に実行させるか否かを人為操作により選択する選択手段と、選択手段にて選択された選択情報にしたがって、異常が生じた第1層コンピュータ10にて実行されていた一つ又は複数の第1層プログラム11を代替対象プログラムとして実行させる代替指令を指令する代替指令出力手段とを備えて構成されている。
【0065】
以下、クレーン担当第1層コンピュータ10bに異常が生じてクレーン担当第1層プログラム11bが停止した場合に他のコンピュータでクレーン担当第1層プログラム11bを実行させるまでの作業の流れを、図3のフローチャート、及び、図4及び図5の画面遷移図に基づいて説明する。
【0066】
図3に示すように、クレーン担当第1層コンピュータ10bに異常が生じてクレーン担当第1層プログラム11bが停止したことを警報表示等により知得した利用者がサービス切換プログラム43のユーザーインタフェース部を起動すると、図4(b)に示す情報ウィンドウW1が表示される(#1)。
情報ウィンドウW1には「終了」ボタンが表示されており、情報ウィンドウW1で各コンピュータの状態を確認した上で、対応の必要がないと判断された場合には、終了を指令することができる(#2)。
【0067】
#2にて終了が選択されなかった場合、サービス切換プログラム43は、処理の対象となるコンピュータを指定する入力を待つ状態となる。
この実施形態においては、第1層コンピュータ10が2つ設けられ、その2つの第1層コンピュータ10が第1層代替候補コンピュータとして設定されている。そして、その2つの第1層代替候補コンピュータと、1つの第2層コンピュータ20と、1つのモニタリング用コンピュータ30とが、代替対象プログラムを実行可能なコンピュータとして設定されている。
情報ウィンドウW1においてクレーン担当第1層コンピュータ10bを指定(例えばクレーン担当第1層コンピュータ10bに対応する矩形領域にマウスポインタを位置させ、マウスボタンをクリックする等)すると、図5(a)に示すように、起動コンピュータリストにて管理されている情報に基づきクレーン担当第1層プログラム11bを実行可能なコンピュータを表示し、いずれのコンピュータにてクレーン担当第1層プログラム11bを実行させるかを人為操作により選択する(すなわち、代替先コンピュータを選択入力する)選択ウィンドウW2が表示される。
選択ウィンドウW2には、第1層代替候補コンピュータとして設定されている第1層コンピュータ10のうち異常が発生した第1層コンピュータ10を除く第1層コンピュータ10と、第2層コンピュータ20と、モニタリング用コンピュータ30とが選択可能なコンピュータとして表示される。そして、そのいずれに代替対象プログラムを実行させるかを人為操作により選択自在に構成されている(#3〜5)。
尚、図4、5には、情報ウィンドウW1に、2台の第1層コンピュータ10、第2層コンピュータ20、及びモニタリング用コンピュータ30の4台のコンピュータの情報を表示する場合を例示したが、上記情報ウィンドウW1は、表示内容のスクロール又はページ変更等により、さらに多くのコンピュータの情報を表示させることができる。
【0068】
選択ウィンドウW2において、代替先コンピュータとしてサーバ1、すなわち第2層コンピュータ20を選択入力して「確定」ボタンを押下すると、サービス切換プログラム43は、クレーン担当第1層コンピュータ10bで実行されていたクレーン担当第1層プログラム11bを代替対象プログラムとして第2層コンピュータ20に実行させる代替指令を指令する(#6、#7)。なお、このとき、異常が発生したクレーン担当第1層コンピュータ10bで実行されていたクレーン担当第1層プログラム11bが適切に停止していない場合を考慮して、クレーン担当第1層コンピュータ10bを物理的にネットワークから切り離しておく(たとえばLANケーブルを抜いておく等)ことが望ましい。
【0069】
サービス切換プログラム43は、代替指令にしたがって、第2層コンピュータ20にインストールされているクレーン担当第1層プログラム11bを起動した後、異常が生じたクレーン担当第1層コンピュータ10bに付与されていたIPアドレスを、第2層コンピュータ20のネットワークインタフェースに仮想IPアドレスとして付与する。以降、当該設備管理システムを構成するコンピュータは、クレーン担当第1層コンピュータ10bで実行されていたクレーン担当第1層プログラム11bに代えて、第2層コンピュータ20で実行されるクレーン担当第1層プログラム11bと情報の送受信を行うことになる。なお、図示はしないが、本実施形態では、メッセージキュープログラム44もクレーン担当第1層プログラム11bで実行する構成としているため、クレーン担当第1層プログラム11bに異常が生じるとメッセージキュープログラム44も停止することとなる。したがって、上記代替指令が指令されると同時に、メッセージキュープログラム44を代替対象プログラムとして第2層コンピュータ20に実行させる指令も指令される。
そして、第2層コンピュータ20で実行されるクレーン担当第1層プログラム11bは、第2層コンピュータ20で実行されているメッセージキュープログラム44によってメッセージキューに蓄積された作業指令データに基づいて、スタッカークレーン51に機器作動指令を指令することになる。
【0070】
なお、モニタリング用コンピュータ30に異常が生じた場合において、#3でモニタリング用コンピュータ30を選択したときには、選択ウィンドウW2には、そのモニタリング用コンピュータ30で実行されていたモニタリング用プログラム31を実行可能なコンピュータを表示し、いずれのコンピュータにてモニタリング用プログラム31を実行させるかを人為操作により選択する(すなわち、代替先コンピュータを選択入力する)ことになる(#3〜5)。そして、上述したように、選択ウィンドウW2において、代替先コンピュータを選択して「確定」ボタンを押下すると、サービス切換プログラム43は、モニタリング用コンピュータ30で実行されているモニタリング用プログラム31を停止させる停止指令をモニタリング用コンピュータ30に対して指令し、続いて、異常が生じたモニタリング用コンピュータ30で実行されていたモニタリング用プログラム31を代替対象プログラムとして代替先コンピュータに実行させる第2代替指令を指令する(#6、#7)。
サービス切換プログラム43は、第2代替指令にしたがって、第2層コンピュータ20にインストールされているモニタリング用プログラム31を起動した後、異常が生じたモニタリング用コンピュータ30に付与されていたIPアドレスを、代替先のコンピュータ(コンベヤ担当第1層コンピュータ10a、クレーン担当第1層コンピュータ10b、又は第2層コンピュータ20のうち指定されたもの)のネットワークインタフェースに仮想IPアドレスとして付与する。それ以降、当該設備管理システムを構成するコンピュータは、モニタリング用コンピュータ30で実行されていたモニタリング用プログラム31に代えて、代替先として指定されたコンピュータで実行されるモニタリング用プログラム31と情報の送受信を行うことになる。
【0071】
#7の処理の終了後、サービス切換プログラム43は、#2の処理に戻るように構成される。これは、複数の第1層コンピュータ10に異常が生じた場合に、#3〜#7の処理を異常の生じた第1層コンピュータ10の数だけ繰り返す場合があるためであり、#2において「終了」を指令すると、ユーザーインタフェース部を終了することができる。
【0072】
次に、サービス切換プログラム43で指令される代替指令のパターンを、図6〜10に基づいて説明する。図6は、図3のフローチャート及び図4及び図5で説明した代替の形態を説明する図であり、クレーン担当第1層コンピュータ10bに異常が生じたときにおいて、異常が生じたクレーン担当第1層コンピュータ10bで実行されていたクレーン担当第1層プログラム11bを第2層コンピュータで実行させる場合を示している。
【0073】
図7は、コンベヤ担当第1層コンピュータ10aとクレーン担当第1層コンピュータ10bとの双方に異常が生じた場合において、代替対象プログラムとなるコンベヤ担当第1層プログラム11aとクレーン担当第1層プログラム11bのうち、クレーン担当第1層プログラム11bのみを第2層コンピュータで実行させる場合を示している。すなわち、例えば第2層コンピュータ20の処理能力の余力が、コンベヤ担当第1層プログラム11aとクレーン担当第1層プログラム11bとの双方を実行させるに十分でない場合、コンベヤ担当第1層プログラム11aとクレーン担当第1層プログラム11bのうち重要度の高いプログラムのみを実行すべく、選択することができる。
【0074】
図8は、コンベヤ担当第1層コンピュータ10aとクレーン担当第1層コンピュータ10bとの双方に異常が生じた場合において、代替対象プログラムとなるコンベヤ担当第1層プログラム11aとクレーン担当第1層プログラム11bの双方を第2層コンピュータ20で実行させる場合を示している。つまり、サービス切換プログラム43が、異常が生じた第1層コンピュータ10にて実行されていた第1層プログラム11の全部を代替対象プログラムとして、第2層コンピュータ20に実行させる代替指令を指令自在に構成されている。このとき、第2層コンピュータ20が、コンベヤ担当第1層コンピュータ10aとクレーン担当第1層コンピュータ10bとの双方を実行する処理能力を有していないときには、コンベヤ担当第1層コンピュータ10aとクレーン担当第1層コンピュータ10bとの双方の処理速度を低下させて第2層コンピュータ20への負荷を低減させる形態で実行させることによって、コンベヤ担当第1層コンピュータ10a又はクレーン担当第1層コンピュータ10bのいずれかを停止させることなく、第1層コンピュータに異常が生じた際にも、すべての設備機器が作動する状態を維持することができるものとなる。
【0075】
図9は、複数設けられた第1層コンピュータ10のうちの2台以上が代替対象プログラムを実行可能な第1層代替候補コンピュータとして設定されている場合において、代替対象プログラムを、第1層代替候補コンピュータとして設定されている第1層コンピュータ10のうち異常が発生していないコンベヤ担当第1層コンピュータ10aで実行させる場合を示している。
【0076】
図10は、コンベヤ担当第1層コンピュータ10aに異常が生じたときにおいて、異常が生じたコンベヤ担当第1層コンピュータ10aで実行されていたコンベヤ担当第1層プログラム11aをモニタリング用コンピュータ30で実行させる場合を示している。
【0077】
図11は、クレーン担当第1層コンピュータ10bとモニタリング用コンピュータ30とに異常が生じたときにおいて、異常が生じたクレーン担当第1層コンピュータ10b及びモニタリング用コンピュータ30で実行されていたクレーン担当第1層プログラム11b及びモニタリング用プログラム31とを第2層コンピュータ20で実行させる場合を示している。
【0078】
このように、本実施形態に係る設備制御システムによれば、第1層コンピュータ10に異常が生じたときに、当該第1層コンピュータ10が実行していた一つ又は複数の第1層プログラム11を第2層コンピュータ20又はモニタリング用コンピュータ30にて実行させるか否かを人為操作により選択することで、設備機器の作動を極力停止させないようにして、設備機器の稼動効率の低下を抑制することが可能となり、しかも異常が生じた第1層コンピュータ10が実行していた一つ又は複数の第1層プログラム11を、そもそも設備制御システムで使用している第2層コンピュータ20又はモニタリング用コンピュータ30で実行させることで、設備コストが高くなることを抑制することが可能な設備制御システムが提供できるものとなる。
【0079】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、選択手段が、単一の代替対象プログラムを第2層コンピュータ20に実行させるかを選択自在に構成される例を示したが、このような構成に代えて、代替対象プログラムが複数存在する場合(例えば、第1層プログラム11を実行する第1層コンピュータ10が複数あるときにおいて複数の第1層コンピュータ10に異常が生じたとき、又は、1つの第1層コンピュータ10にて複数の第1層プログラム11が実行され、その第1層コンピュータ10に異常が生じたとき)において、その複数の代替対象プログラムのうちのいずれを第2層コンピュータ20に実行させるかを選択自在に構成してもよい(図7参照)。
【0080】
このように構成することによって、複数の代替対象プログラムのうち、システムの稼動にとって重要度の高いプログラムと重要度の低いプログラムとがある場合において、重要度の高いプログラムと重要度の低いプログラムとの全てを第2層コンピュータ20で実行すると、当該第2層コンピュータ20の処理能力の上限を超過してしまい、それにより、第2層コンピュータ20の処理速度又は処理効率が低下することが懸念されるときには、利用者の判断により、重要度の高いプログラムを選択的に実行させることで、第2層コンピュータ20の処理速度又は処理効率の低下を抑制しながら、複数の代替対象プログラムのうち重要度の高いプログラムを第2層コンピュータ20で実行することが可能となる。
【0081】
(2)上記実施形態では、代替指令出力手段が代替指令を指令する場合において、異常が生じた第1層コンピュータ10にて実行されていた第1層プログラム11を停止させるべく、当該第1層コンピュータ10に対して停止指令を指令する構成を例示したが、このような構成に代えて、その第1層プログラム11が停止しているか否かをチェックし、そのチェック結果を表示するように構成してもよい。
【0082】
(3)上記実施形態では、メッセージキュープログラム44が、第1層コンピュータ10及び第2層コンピュータ20に付与されたIPアドレスを識別情報として、それら相互の間のデータの送受をIPアドレスに基づいて中継し、第1層コンピュータ10に異常が生じたときに、当該第1層コンピュータ10に付与されていたIPアドレスを第2層コンピュータ20に引き継がせる識別情報引継指令を指令する構成を例示したが、このような構成に代えて、ホスト名を識別情報として第1層コンピュータ10と第2層コンピュータ20との間のデータの送受をホスト名に基づいて中継し、第1層コンピュータ10に異常が生じたときに、当該第1層コンピュータ10に付与されていたホスト名を第2層コンピュータ20に引き継がせる識別情報引継指令を指令するように構成してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、サービス切換プログラム43が、代替指令にしたがって、代替先コンピュータにインストールされている代替対象プログラムを起動した後、異常が生じたコンピュータに付与されていたIPアドレスを、代替先コンピュータのネットワークインタフェースに仮想IPアドレスとして付与するように構成したが、このような構成に代えて、ホスト名を識別情報として、代替先コンピュータにインストールされている代替対象プログラムを起動した後、異常が生じたコンピュータに付与されていたホスト名を、代替先コンピュータに対して付与するように構成してもよい。
【0084】
(4)上記実施形態では、代替指令出力手段が、異常が生じたモニタリング用コンピュータ30にて実行されていたモニタリング用プログラム31を第2代替対象プログラムとして実行させる第2代替指令を出力可能とする構成を例示したが、モニタリング用プログラム31を代替対象プログラムとしないように構成してもよい。
【0085】
(5)上記実施形態では、設備機器による搬送の終端側箇所に物品Bが到着したときに、引き続き搬送を行う設備機器の機器コントローラCを担当する第1層プログラム11に物品IDを送信する形態で、作業指令データにおける搬送初期位置から搬送目標位置まで順次設備機器を作動させるべく第1層プログラム11が機器コントローラCに機器作動指令を指令する構成を例示したが、このような構成に代えて、設備機器の作動の完了を機器コントローラCが自己を担当する第1層プログラム11に報告し、その第1層プログラム11が、次に作動させるべき設備機器を担当する第1層プログラム11に物品Bの搬送を開始する搬送開始要求を通知する形態で、第1層プログラム11同士の間で情報を送受する構成としてもよい。
【0086】
(6)上記実施形態では、第1層コンピュータ10が1種類の機器コントローラCに対して機器作動指令を指令する構成を例示したが、このような構成に代えて、1台の第1層コンピュータ10が、複数種の機器コントローラCに対して機器作動指令を指令するように構成してもよい。このような例として、例えばスタッカークレーン51、入出庫コンベヤ52、仕分台車50等を備えた倉庫の設備機器の作動を制御する設備制御システムに、第1層コンピュータ10を1台のみ備える場合が考えられる。このように構成した場合、第1層コンピュータ10は受信した作業指令データの指令にしたがって、スタッカークレーンコントローラ51C、入出庫コンベヤコントローラ52C、仕分台車コントローラ50Cに順次指令を送信することになる。
【0087】
(7)上記実施形態では、本発明の設備制御システムを物流設備1に適用した構成について説明したが、このような構成に代えて、例えば本発明の設備制御システムを生産ラインに適用することも可能である。すなわち、設備機器が生産ラインにおける各種生産装置にて構成され、第1層コンピュータ10が生産装置の作動を制御する機器コントローラCを管理するように構成され、第2層コンピュータ20が生産設備の全体における物品の搬送情報を管理するように構成され、作業要求が生産設備における物品の生産要求であるように構成してもよい。
【0088】
(8)上記実施形態では、通信回線Lをスター型トポロジーのLANとして構成し、TCP/IPを利用した通信を行うように構成する例を示したが、このような構成に限定されるものではない。たとえば、ネットワークトポロジーをバス型やリング型としてもよく、また、ネットワークプロトコルについては、独自プロトコルを利用することもできる。
【0089】
(9)上記実施形態では、メッセージキュープログラム44を、クレーン担当第1層コンピュータ10bにて実行させる構成を例示したが、このような構成に限定されるものではなく、たとえば、他の第1層コンピュータ10(コンベヤ担当第1層コンピュータ10a等)や第2層コンピュータ20等で実行させる構成としてもよく、メッセージキュープログラム44を実行するコンピュータは任意に設定可能である。なお、その場合において、メッセージキュープログラム44が実行されているコンピュータに異常が生じたときは、上記実施形態に示したようにサービス切換プログラム43によって指令される代替指令により代替先のコンピュータに代替させる構成に代えて、予め設定されたバックアップ用コンピュータにて代替させる等、各種の構成が適用可能である。
【0090】
(10)上記実施形態では、異常が発生したクレーン担当第1層コンピュータ10bで実行されていたクレーン担当第1層プログラム11bが適切に停止していない場合を考慮して、人為的にクレーン担当第1層コンピュータ10bを物理的にネットワークから切り離しておく構成としたが、このような構成に代えて、代替指令出力手段としてのサービス切換プログラム43が代替指令を指令する場合において、異常が生じた第1層コンピュータ10にて実行されていた第1層プログラム11を停止させるべく、当該第1層コンピュータ10に対して停止指令を指令するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0091】
C 機器コントローラ
10 第1層コンピュータ
11 第1層プログラム
20 第2層コンピュータ
21 第2層プログラム
30 モニタリング用コンピュータ
31 モニタリング用プログラム
43 サービス切換プログラム
44 メッセージキュープログラム
W2 選択ウィンドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ又は複数の設備機器と、その設備機器の作動を制御する一つ又は複数の機器コントローラと、
一つ又は複数の前記機器コントローラのうちの全部または一部を自己が担当する機器コントローラとして、当該機器コントローラに対して前記設備機器についての機器作動指令を指令しかつ前記機器コントローラから送信される前記設備機器の作動結果の管理を行うための一つ又は複数の第1層プログラムを実行する一つ又は複数の第1層コンピュータと、
前記設備機器を作動させることによって実現しようとする作業についての要求である作業要求にしたがって、前記作業要求を処理するために必要な前記設備機器を作動させるべく、一つ又は複数の前記第1層コンピュータに対して作業指令を指令し、かつ、前記第1層コンピュータから送信される前記設備機器の作動結果に基づいて前記作業要求に係る作業の結果の管理を行うための第2層プログラムを実行する単一の第2層コンピュータと、が備えられた設備制御システムであって、
一つ又は複数の前記第1層コンピュータが、前記作業指令にしたがって、当該第1層コンピュータが担当する1つ又は複数の前記機器コントローラに対して機器作動指令を指令すべく、一つ又は複数の前記第1層プログラムを実行するように構成され、
前記第1層コンピュータに異常が生じたときに、当該第1層コンピュータが実行していた一つ又は複数の前記第1層プログラムを前記第2層コンピュータに実行させるか否かを人為操作により選択する選択手段が備えられ、
異常が生じた前記第1層コンピュータにて実行されていた一つ又は複数の前記第1層プログラムを代替対象プログラムとして実行させる代替指令を指令する代替指令出力手段が備えられ、
前記代替指令出力手段が、前記選択手段にて選択された選択情報にしたがって、前記代替指令を出力するように構成され、
前記第2層コンピュータが、前記代替指令出力手段が出力する前記代替指令に基づいて、前記代替対象プログラムを実行するように構成されている設備制御システム。
【請求項2】
前記代替指令出力手段が、異常が生じた前記第1層コンピュータにて実行されていた前記第1層プログラムの全部を前記代替対象プログラムとして、前記第2層コンピュータに実行させる代替指令を指令自在に構成されている請求項1記載の設備制御システム。
【請求項3】
前記第1層コンピュータにて複数の前記第1層プログラムが実行され、
前記選択手段が、異常が生じた前記第1層コンピュータにて実行されていた複数の前記第1層プログラムの一部を前記代替対象プログラムとして選択自在に構成され、
前記代替指令出力手段が、前記選択手段にて選択された前記代替対象プログラムを前記第2層コンピュータに実行させる代替指令を指令自在に構成されている請求項1記載の設備制御システム。
【請求項4】
前記第1層コンピュータと前記第2層コンピュータとの間で通信される前記作業指令のデータ及び前記作動結果のデータを中継するバッファ手段が設けられ、
前記バッファ手段が、前記第1層コンピュータ及び前記第2層コンピュータの夫々に付与された識別情報に基づいて、それら相互の間のデータの送受を中継するように構成され、
前記代替指令出力手段が、前記代替指令を出力する前に、当該第1層コンピュータに付与されていた前記識別情報を前記第2層コンピュータに引き継がせる識別情報引継指令を指令するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項記載の設備制御システム。
【請求項5】
前記一つ若しくは複数の第1層コンピュータ又は前記第2層コンピュータから前記設備機器の作動状態に関する情報を収集して表示するモニタリング用プログラムを実行する、モニタリング用コンピュータが設けられ、
前記代替指令出力手段が、異常が生じた前記モニタリング用コンピュータにて実行されていた前記モニタリング用プログラムを第2代替対象プログラムとして実行させる第2代替指令を指令自在に構成され、
前記代替指令出力手段が、前記選択手段にて選択された選択情報に基づいて、前記第2層コンピュータに対して前記第2代替指令を指令自在に構成されている請求項1〜4のいずれか1項記載の設備制御システム。
【請求項6】
前記第1層コンピュータが複数設けられ、前記第1層コンピュータのうちの2台以上が前記代替対象プログラムを実行可能な第1層代替候補コンピュータとして設定され、
前記選択手段が、前記第1層代替候補コンピュータとして設定されている前記第1層コンピュータのうち異常が発生した前記第1層コンピュータを除く前記第1層コンピュータのいずれに前記代替対象プログラムを実行させるかを人為操作により選択自在に構成されている請求項1〜5のいずれか1項記載の設備制御システム。
【請求項7】
前記設備機器が物流設備における物品搬送装置にて構成され、
前記第1層コンピュータが前記物品搬送装置の作動を制御する前記機器コントローラを管理するように構成され、
前記第2層コンピュータが物流設備の全体における物品の搬送情報を管理するように構成され、
前記作業要求が物流設備における物品の搬送要求である請求項1〜6のいずれか1項記載の設備制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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