説明

設備機器管理システム及び設備機器管理方法

【課題】設備機器の構成のバリエーションによる発報データの処理負荷のばらつきを考慮した負荷の均一化が行える設備機器管理システム及び設備機器管理方法を提供する。
【解決手段】発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dにおける発報データの処理が規定時間を超えるか否か判断する(ステップS2)。規定時間を超えていれば、発報データに含まれるデータ量少なくなるように発報回数を増やすために、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dが負荷分散装置82を介して空調コントローラ69a,60cに次回の発報時刻を早めるよう指示を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備機器管理システム及び設備機器管理方法に関し、特に通信回線を介して複数の設備機器を遠隔から管理する設備機器管理装置及び設備機器管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設備機器管理システムは、ビルなどの所定物件に配置された空調機などの設備機器を遠隔から管理するため、所定物件ごとに設けられた空調コントローラを備えている。また、これらを集中的に遠隔から管理するため、公衆通信回線を介して複数の空調コントローラに接続された中央管理装置を備えている(たとえば、特許文献1参照。)。この中央管理装置は、複数の空調コントローラから送られてくる非常に多くの発報データを複数の情報処理装置で処理している。複数の情報処理装置における非常に多くの発報データの処理負荷を分散するため、負荷分散装置が中央管理装置に備えられており、負荷分散装置が発報データを複数の情報処理装置に振り分けている。
【特許文献1】特開2004‐232980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、負荷分散装置を備えているにも拘らず、設備機器の構成のバリエーションから生じる発報データの処理負荷のばらつきなどが原因で、情報処理装置における発報データの処理の渋滞を十分に解消できない状況が発生することがある。図9は、日報発報の発報データと、それに基づき作成されるデータベースのテーブルとを示している。この場合、データベースのテーブルには、状態の値が時刻01:00と時刻02:00と時刻03:00の3回にわたって追加される。
【0004】
例えば、物件1:状態数の少ない機種(状態数20)が20台あり、物件2:状態数の多い機種(状態数200)が2台あるという、2つの物件について考える。日報発報の発報データの状態の値の取得時間間隔が1時間の場合、物件1のコントローラと物件2のコントローラは、1時間あたりの状態数がともに合計400で(機種構成のための管理情報が一部含まれるが)、両方のデータサイズは同じものとなる。この場合、受信したデータの読み込み時間及び処理負荷は両方とも大きく変わらない。しかし、日報発報に関するデータをデータベースサーバに登録する過程において、機種単位で登録するため、物件1では1日分の登録は20(台)×24時間=480回、つまりデータベースサーバへの登録が480回発生するが、物件2では2×14=48回となり、データベースサーバへのアクセスは物件の方が圧倒的に多くなる。このデータベースサーバへのアクセスがボトルネックとなるため、物件1において、より多くの処理負荷が発生する。
【0005】
現在、コンビニエンスストア向けのもので状態数が20程度と比較的少なく、データ取得の間隔は5分単位である。その一方で、複数台の室内機を1台の室外機で運転制御するマルチパッケージ型空調システムでは状態数が300を超えるものもあり、状態数が増加する傾向にある。
【0006】
本発明の課題は、設備機器の構成のバリエーションによる発報データの処理負荷のばらつきを考慮した負荷の均一化が行える設備機器管理システム及び設備機器管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る設備機器管理システムは、複数の設備機器を遠隔から管理する設備機器管理システムである。設備機器管理システムは、第1記憶装置を有する複数の監視装置と、負荷分散装置と、負荷分散装置に接続され第2記憶装置を有する複数の情報処理装置とを備えている。複数の監視装置の第1記憶装置には第1情報が記憶されている。複数の監視装置は、接続されている設備機器に関するデータを、第1情報に従って所定時間分まとめて発報データとして送信する。負荷分散装置は、通信回線を介して複数の監視装置の発報データを受信する。また、負荷分散装置は、通信回線を介して第1記憶装置の第1情報を書き換え可能に構成されている。複数の情報処理装置は、発報データを処理するために第2記憶装置に発報データを記憶する。また、第1情報を書き換えるために発報データの処理時間に関する第2情報を複数の情報処理装置は負荷分散装置に与える。
【0008】
本発明によれば、負荷分散装置は、処理時間の掛かるいわゆる処理負荷の重い発報データを送ってきた監視装置に対して、第1情報を書き換えることにより、その監視装置が次に送信する発報データをまとめるための所定時間を短くすることができる。それにより、監視装置が発信する発報データのうち処理負荷の重い発報データのデータ量を少なくすることができる。
【0009】
第2発明に係る設備機器管理システムは、第1発明の設備機器管理システムであって、複数の情報処理装置は、相互に第2記憶装置を読み取り可能に構成されている。複数の情報処理装置は、待ち行列に登録されたデータ数に応じて、自己の第2記憶装置に記憶されている発報データを他者の待ち行列に登録して処理する。
【0010】
本発明によれば、第1情報の書き換えによって発報データの処理時間の均一化が図られていることから、待ち行列のデータ数が処理負荷と強い相関を持つものとなっている。そこで、自己の情報処理装置の待ち行列に多数の発報データが登録されている場合は、自己の情報処理装置に負荷が偏っていると判断できることから、自己の情報処理装置の第2記憶装置に記憶されている発報データを他者の待ち行列に登録して処理する。それにより、複数の情報処理装置の待ち行列に登録された発報データの数が均一化される。
【0011】
第3発明に係る設備機器管理システムは、第1発明または第2発明の設備機器管理システムであって、第2記憶装置に記憶している発報データを、発報データの内容に応じて順番を入れ替えて待ち行列に登録する。
【0012】
本発明によれば、発報データの内容に応じて、複数の情報処理装置が発報データを待ち行列に登録する順番の入れ替えを行うことができる。それにより、内容によって発報データの処理を急がないものは待ち行列に登録する順番を遅らせる一方、処理を急ぐ発報データから順に待ち行列に登録することができる。
【0013】
第4発明に係る設備機器管理方法は、複数の設備機器を遠隔から管理する設備機器管理方法である。この設備機器管理方法の第1工程では、設備機器に関するデータを所定時間分まとめて発報データとして監視装置が発信する。第2工程では、発報データを受信して、複数の情報処理装置に振り分けていずれかの情報処理装置の待ち行列に登録する。第3工程では、発報データの情報処理装置での処理時間に応じて、次回送信すべき発報データについて、設備機器に関するデータをまとめる所定時間を監視装置に指示する。
【0014】
本発明によれば、次回送信すべき発報データについて、設備機器に関するデータをまとめる所定時間が、情報処理装置での発報データの処理時間に応じているので、例えば発報データの処理時間が長くなったものの所定時間を短くすることができる。第3工程を繰り返すことにより、発報データを分割して送信回数をふやすこととなる。
【0015】
第5発明に係る設備機器管理方法は、第4発明の設備機器管理方法であって、第2工程では、複数の情報処理装置に一旦振り分けられた発報データを、待ち行列のデータ数より少ない別の情報処理装置に再度振り分ける。
【0016】
本発明によれば、第3工程を繰り返すことにより、第1情報の書き換えによって発報データの処理時間の均一化が図られていることから、待ち行列のデータ数が処理負荷と強い相関を持つものとなっている。そこで、他の情報処理の待ち行列に多数の発報データが入っている場合は、当該他の情報処理装置に負荷が偏っていると判断できることから、第2工程で、当該他の情報処理装置の第2記憶装置に記憶されている発報データを自己の待ち行列に登録して処理する。それにより、複数の情報処理装置の待ち行列に登録された発報データの数が均一化される。
【0017】
第6発明に係る設備機器管理方法は、第4発明または第5発明の設備機器管理方法であって、第2工程において、情報処理装置に発報データを記憶する。また、第2工程において、記憶している発報データを、発報データの内容に応じて順番を入れ替えて待ち行列に登録する。
【0018】
本発明によれば、内容によって発報データの処理を急がないものは待ち行列に登録する順番を遅らせる一方、処理を急ぐ発報データから順に待ち行列を登録する。それにより、処理を急がない発報データを情報処理装置の処理が集中しない時間帯に処理することができる。
【発明の効果】
【0019】
第1発明に係る設備機器管理システムでは、監視装置が発信する発報データのうち処理負荷の重い発報データの1回当たりのデータ量を減らすことができる。それにより、情報処理装置でのデータ処理時間が均一化するようデータ量が減らされた発報データを負荷分散装置が振り分けることとなり、複数の情報処理装置における負荷の均一化を図ることができる。
【0020】
第2発明の設備機器管理システムでは、情報処理装置の待ち行列に積まれる発報データ数の均一化により、複数の情報処理装置の負荷を均一化することができる。
【0021】
第3発明の設備機器管理システムでは、処理を急がない発報データを情報処理装置の処理が集中しない時間帯に処理することができるようになり、発報データの処理の時間的な分散を図り、複数の情報処理装置の処理負荷を均一化することができる。
【0022】
第4発明の設備機器管理方法では、第3工程が繰り返されることで、情報処理装置での処理時間が均一化されるよう一回あたりの発報データのデータ量が減らされるため、複数の情報処理装置の負担を均一化することができる。
【0023】
第5の発明の設備機器管理方法では、第2工程により情報処理装置の待ち行列に積まれる発報データ数の均一化することで、複数の情報処理装置の負荷を均一化することができる。
【0024】
第6発明の設備機器管理方法では、第2工程において処理を急がない発報データを情報処理装置の処理が集中しない時間帯に処理することができるようになり、発報データの処理の時間的な分散を図り、複数の情報処理装置の処理負荷を均一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る設備管理システムである空調機器管理システムを図について説明する。
【0026】
<空調機器管理システムの管理対象>
図1に示すマルチ式空調機器50a,50b,50cが空調機器管理システムの管理対象である。マルチ式空調機器50a,50bは第1ビル101に配置され、マルチ式空調機器50cは第2ビル102に配置される。このマルチ式空調機器50a,50b,50cは、ビル101,102内の冷暖房や調湿などの空気調和機能を有する。マルチ式空調機器50a,50b,50cでは、図1に示されるように、1台または複数台の室外機20a,20b,20cに対してそれぞれ複数の室内機10a,10b,10cが冷媒配管(図示せず)および通信回線55a,55b,55cにより接続される。
【0027】
<空調機器管理システムの構成要素>
図1に示されるように、空調機器管理システム150は、マルチ式空調機器50a,50b,50cに通信回線54a,54cによって接続された空調コントローラ60a,60cと、公衆通信回線120を介して空調コントローラ60a,60cに接続している中央管理装置80を備える。
【0028】
(1)空調コントローラ
空調コントローラ60a,60cは、図2に示されるように、マルチ式空調機50a,50b,50cの監視装置であって、主にCPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)64,ROM(Read Only Memory)65、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)66、I/O(Input/output)制御部67、モデム用インターフェース69、空調機器用インターフェース70、モデム71、及び空調機器用コネクタ72から構成されている。ここで、CPU61、RAM64、ROM65、EEPROM66、及びI/O制御部67は、例えば、マイクロコンピュータであって、相互に第1バス線68によって接続されており、1つの集積回路を構成している。また、モデム用インターフェース69及び空調機器用インターフェース70は、第2バス線73a,73bを介してI/O制御部67に接続されている。モデム71は、第1通信線74を介してモデム用インターフェース69に接続されている。空調機器用コネクタ72は、第2通信線75を介して空調機器用インターフェース70に接続されている。
【0029】
CPU61は、ROM65に記憶されている監視制御プログラムを読み込むとともにEEPROM66に記述されている監視制御に関するデータを読み込み、読み込んだ監視制御プログラムに従って動作し、また、RAM64,ROM65、EEPROM66及びI/O制御部67に指令を出す。CPU61は、自己が保持しているデータ以外に、RAM64、ROM65およびEEPROM66から必要なデータを取得して演算処理を行う。また、このCPU61は、演算処理の処理結果データを、RAM64やEEPROM66に書き込むことができる。
【0030】
RAM64は、CPU61の指示に従って各種データをCPU61に供給し、CPU61から送信されるデータを一時的に記憶する。また、RAM64は、I/O制御部67からデータを取得して一時的に記憶し、CPU61からの命令に応じて一時的に記憶しているデータをI/O制御部67に送信する。
【0031】
ROM65およびEEPROM66は、監視プログラムや各種データを格納している。このROM65およびEEPROM66は、CPU61の指示に従って監視プログラムや各種データをCPU61に供給する。EEPROM66は、電気的に書換え可能であり、マルチ式空調機器50a,50b,50cの監視データなどを書換可能に記憶する。
【0032】
I/O制御部67は、モデム用インターフェース69に着信するデータや、空調機器用インターフェース70に送信されてくるデータ等をCPU61やRAM64等に対して出力する。また、I/O制御部67は、EEPROM66やRAM64に記憶されている各種データやCPU61の制御信号などを中央管理装置80やマルチ式空調機器50a,50b,50cに送信するためにモデム用インターフェース69及び空調機器用インターフェース70に出力する。
【0033】
モデム用インターフェース69及び空調機器用インターフェース70は通信線74,75を介してモデム71及び空調機器用コネクタ72に接続されている。モデム用インターフェース69は、モデム71に着信するデータを受信し、受信したデータをCPU61が処理可能な形式に変換する一方、I/O制御部67からモデム71に出力されるデータや制御信号などをモデム71が処理可能な形式に変換する。空調機器用インターフェース70は、マルチ式空調機器50a,50b,50cから送信されてくるデータ等を受信し、受信したデータ等をCPU61が処理可能な形式に変換する一方、マルチ式空調機器50a,50b,50cに出力されるデータ等をマルチ式空調機器50a,50b,50cが処理可能な形式に変換する。
【0034】
モデム71は、EEPROM66に記憶されている発報データの送受信に関する情報に基づくCPU61からの指令に基づいて、EEPROM66に格納されるマルチ式空調機器50a,50b,50cに関する各種データのうちの日報発報の発報データを、所定時間毎に公衆通信回線120を介して、中央管理装置80に送信する。通常、空調コントローラ60a、60c…は1日1回程度の頻度で日報発報のデータを送信するが、空調機器の種類や構成によって頻度やデータの内容や容量が異なる。また、日報発報のデータを送信する回数については、日報発報のデータの負荷の割合に応じて発報する回数を変えことがあるが、発報する回数の変え方については後述する。中央管理装置80が管理する空調コントローラ60a,60c…の数は数千に及ぶため、一日に受信する日報発報のデータの回数も膨大なものとなる。また、CPU61においてマルチ式空調機器50a,50b,50cに異常が発生したと判定された場合、CPU61の指示に従って異常識別コード、マルチ式空調機器50a,50b,50cの機種番号や機種名などのデータ、及びビル101,102を特定するための顧客識別データなどを即座に公衆通信回線120を介して中央管理装置80にモデム71が送信する。その外、試運転時に、空調コントローラ60a,60c…から試運転に関するデータがモデム71から送信される。空調機器用コネクタ72には、マルチ式空調機器50a,50b,50cの室外機20a,20b,20cが接続される。
【0035】
(2)中央管理装置
図3は、空調機器コントローラ60a,60c…に公衆通信回線120を介して接続されている中央管理装置80の構成を説明するためのブロック図である。
【0036】
図3に示す中央管理装置80は、DNS(Domain Name Service)サーバ81と、負荷分散装置82と、4台の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83d、ウェブサーバ84と、バッチ処理用サーバ85と、データベースサーバ86と、バックアップ用データベースサーバ87と、ファクシミリサーバ88と、メールサーバ89を備える。DNSサーバ81と、負荷分散装置82と、4台の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83d、ウェブサーバ84と、バッチ処理用サーバ85と、データベースサーバ86と、バックアップ用データベースサーバ87と、ファクシミリサーバ88と、メールサーバ89は、ハブなどを用いて構築されるネットワークを介して相互に接続され、相互にデータや制御信号を伝送することができる。
【0037】
DNSサーバ81は、公衆通信回線120を介して送受信するデータのIPアドレスをホスト(ドメイン)名に、ホスト名をIPアドレスに変換する。それにより、中央管理装置80は、多数の空調コントローラ60a,60c…などを特定して、特定した空調コントローラ60a,60c…などとの間でデータや制御信号の送受信を行う。負荷分散装置82は、DNSサーバ81で特定された空調コントローラ60a,60c…等から送信されてくるデータを4台の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのいずれかに分配する。例えば、IPアドレスの値やハッシュ値などを用いて、4台の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dにランダムに振り分ける。
【0038】
4台の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dは、負荷分散装置82から割り振られた発報データを記憶する。発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dは、日報発報と異常発報の発報データの処理をマルチスレッドすなわち並列で進める。発報データの処理を進めるために、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dは、受信した発報データの処理をキューに登録する。そして、キューに登録された順序に従って、スレッドを実行する。ただし、負荷分散装置82から日報発報の発報データを割り振られた発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dが発報データの処理をするとは限らない。発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのうち自己のキューに登録されている処理数が所定の数量を超える場合には、他の発報データ処理サーバのスレッドにて処理を実行する。このような処理先の変更については後程詳細に説明する。
【0039】
4台の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dで処理された発報データはデータベースサーバ86に記憶される。また、ウェブサーバ84は、発報データの解析結果などを表示するために用いられる。ただし、ウェブサーバ84の構成は発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dと同じであるが、これらサーバの構成については後述する。
【0040】
バッチ処理用サーバ85は、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの機能を全て含んでおり、1台の発報データ処理サーバとしても機能する。バッチ処理用サーバ85は、通常は、データベースサーバ86に記憶されている処理後の発報データを用いて、一日に一回、一時間単位のデータを一日単位のデータに変換して報告書用のデータを作成する。また、数ヶ月に1度や1年に1度の割合で発報データの処理を行う報告書作成のためのデータ処理を行う。報告書を作成する場合、バッチ処理用サーバ85は、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dと同じ機能を使って、発報データ処理サーバが行う日報発報の発報データの処理を行うこともある。
【0041】
データベースサーバ86は、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dが処理した発報データを記憶する。また、データベースサーバ86は、記憶しているデータを、画面表示やバッチ処理のためにウェブサーバ84やバッチ処理用サーバ85に対して出力する。
【0042】
バックアップ用データベースサーバ87は、データのバックアップを行う。そして、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dでデータの消去を行うと、消去作業自体が負荷になるため、バックアップが必要でなくなったデータを、深夜に消去する作業もバックアップ用データベースサーバ87が行っている。このバックアップ用データベースサーバ87は、単にデータの保存等を行うものであり、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのようなデータ処理機能を有しない。
【0043】
ファクシミリサーバ88やメールサーバ89は、異常発報のデータ処理において、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dで行われた異常発報のデータ処理結果を受けて、ファクシミリの送信やメールの送信を行う。
【0044】
(3)発報データ処理サーバ
図4は発報データ処理サーバ83aの構成の概要を示すブロック図である。発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの構成は同じであることから、代表して発報データ処理サーバ83aの構成を説明する。
【0045】
発報データ処理サーバ83aは、CPU91と、メインメモリ92と、ハードディスク93と、時計95と、バス95と、ポート96とを備える。CPU91、メインメモリ92、ハードディスク93、時計95及びポート96は、バス95により接続されており、データや制御信号がバス95を通じて相互に伝送される。ハードディスク93には、発報データを処理するためのプログラムが記憶されており、CPU91は、ハードディスク93のプログラムに従ってメインメモリ92にデータの書き込みや読み出しを行いながら処理を進める。また、ハードディスク93には、データ処理の対象となる発報データが保存されており、CPU91は、データ処理のために、ディスク93に保存されている発報データファイル93d(図5参照)を参照する。アプリケーションプログラムや発報データや発報データの処理結果のハードディスク93への書き込みや読み出しは、CPU91の指令に従って行われる。発報データ処理サーバ83aの外部との間でデータやプログラムなどを入出力する場合には、CPU91の指令に従ってポート96を通じて行われる。このポート96は、例えばハブなどで構築されたネットワークによって、発報データ処理サーバ83b,83c,83dや負荷分散装置82やデータベースサーバ86などに接続されている。
【0046】
(4)ハードディスク
図5は、ハードディスク93に記憶されているデータやプログラムなどの概念を示す図である。ハードディスク93には、オペレーティングシステム93aと、デバイスドライバ93bと、空調監視アプリケーション93cと、発報データファイル93dなどが記憶されている。
【0047】
オペレーティングシステム93aやデバイスドライバ93bにより、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dを動かすことができる。空調監視アプリケーション93cは、空調コントローラ60a,60cなどから負荷分散装置82を介して発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dに送信されてくるマルチ式空調機器50a,50b,50cの発報データを記憶したり処理したりするための方法が記述されているプログラムである。空調監視アプリケーション93cには、処理時間判定アプリケーション93e、サーバ処理移動アプリケーション93fおよび日報処理のキューイングリスト93gが含まれている。処理時間判定アプリケーション93e、サーバ処理移動アプリケーション93fおよび日報処理のキューイングリスト93gについては後ほど説明する。
【0048】
(5)負荷分散装置
図6は、負荷分散装置の構成の概念を示すブロック図である。負荷分散装置82は、ネットワーク側送受信部82aと、処理部82bと、サーバ側送受信部82cと、記憶部82dとを備えている。ネットワーク側送受信部82aは、空調コントローラ60a,60cなどから送信された発報データを受信するとともに、必要な応答を返信する。処理部82bでは、送信されてきた発報データのIPアドレスを取得する。また、処理部82bは、記憶部82dに格納されているプログラムに従って、IPアドレスの変換などを行い、発報データをサーバ側送受信部82cに出力する。サーバ側送受信部82cは、変換されたIPアドレスに従って、4台の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのいずれかを選択して、発報データを送信する。
【0049】
処理部82bは、ネットワーク側送受信部82aで受信した発報データのIPアドレスのハッシュ値を計算し、そのハッシュ値を使ってランダムに発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dに振り分けることにより負荷の分散を図っている。発報データが、図1に示すように公衆通信回線120を通して中央管理装置80に与えられるため、発報データのIPアドレスはランダムに割り振られるからである。したがって、空調コントローラ60a,60cの発報データが発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの中の同じものにいつも送信されるとは限らない。
【0050】
負荷分散装置82は、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dから空調コントローラ60a,60cのEEPROM66に格納されている発報データの送受信に関する情報を書き換えるため、発報データの処理時間に関する情報をサーバ側送受信部82cで受信して記憶部82dに記憶する。そして、ネットワーク側送受信部82aから空調コントローラ60a,60cに返信する際に発報データの処理時間に関する情報を送信し、EEPROM66に記憶されているこの処理時間に関する情報を書き換える。発報データの処理時間に関する情報には、次回の発報時間に関する情報が含まれる。
【0051】
<空調機器管理システムの動作>
(1)基本動作
まず、空調管理システム150の空調コントローラ60a,60c…から発報データが送信される。発報データは、主に、日報発報、異常発報、及び試運転の発報データに分類される。この中で、負荷分散が必要になるのは主に日報発報の発報データであることから、日報発報に重点をおいて説明する。
【0052】
例えば、空調コントローラ60aは、図1に示すマルチ式空調機器50a,50bから通信回線55a,55bを介して送られてくるデータを、図2の空調機器用コネクタ72と空調機器用インターフェース70を介して受信する。図2のCPU61はROM65のプログラムに従って、受信したデータを1時間毎のデータに変換してEEPROM66に格納する。
【0053】
空調コントローラ60aは、ROM65やEEPROM66に格納されているプログラムとデータに従って、1日に所定回数だけ所定時間に、EEPROM66に格納されている1時間毎のデータを日報発報の発報データに含めて、公衆通信回線120を介して中央管理装置80に送信する。日報発報の発報データの量が少なければ、通常は一日に1回発報データを送れば充分であるが、データ処理に時間が掛かる大きな負荷の発報データの場合には、データ量を均一化するために分割する。そのために空調コントローラ60aが1日に送信する日報発報の発報データの送信回数の変更方法については後述する。なお、日報発報の発報データには、上述の1時間毎のデータに加え、送信先やその他のデータが含まれる。
【0054】
一方、異常発報の場合、空調コントローラ60aは、EEPROM66に記憶されている異常発生前30分間にわたる1分毎のデータを異常発報の発報データに含めて送信する。このとき、空調コントローラ60aは、ROM65やEEPROM66に格納されているプログラムやデータに従って、公衆通信回線120を介して中央管理装置80に送信する。
【0055】
中央管理装置80で受信した発報データは、日報発報も異常発報も同じように、DNSサーバ81でIPアドレスが決められ、負荷分散装置82の処理部82bにおいて、4台の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのうちのいずれかに振り分けられる。一方、空調コントローラ60aへは、発報データの処理が終わらなくても、発報データの受信が終われば負荷分散装置82から応答する。
【0056】
発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dで受信した発報データは、ポート96やバス95を介してハードディスク93に記憶される。発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dでは、CPU91の指令に従い、ハードディスク93に格納されている空調監視アプリケーション93cを用いて、日報発報の発報データと異常発報の発報データがマルチスレッドで並行して処理される。このとき、日報発報の発報データは、通常、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのうち受信されたもののスレッドで処理される。そのために、通常は、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dが受信した順に自己のキューに登録して、順次処理を行う。そして、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dで処理されたデータは、データベースサーバ86に格納される。
【0057】
しかし、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのいずれかのキューに偏って多くの発報データが登録されている場合、受信した発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dではないものが処理を行う。また、処理の優先度が低い発報データ、つまり急いで処理をする必要のない発報データについては、処理の順序を遅らせ、あるいはバッチ処理用サーバ85で処理を行う。これらの点に関しては後ほど説明する。
【0058】
発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dで処理されてデータベースサーバ86に格納されているデータを用いて、異常処理の際に、ウェブサーバ84が画面表示を行う。また、異常処理の際に、ファクシミリサーバ88やメールサーバ89からファクシミリや電子メールの送信が行われる。これらの処理も日報発報や異常発報とは異なるスレッドで並行して処理される。
【0059】
発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dに記憶されている発報データは、一日に一回バックアップ用データベースサーバ87を用いて例えば深夜に消去する。そのために、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dは発報データのファイルをバックアップ用データベースサーバ87に転送する。
【0060】
(2)発報データの処理時間の均一化
日報発報の発報データは、図9を用いて説明したように、空調コントローラ60a,60cが管理するマルチ式空調機器50a,50b,50cの構成や種類によって、データの処理に必要な時間が異なる。そこで、処理時間の掛かる発報データを送ってくる空調コントローラ60a,60cに対しては、当該物件について発報回数を1増やし、発報時刻の再割り当てを実施する。
【0061】
発報回数を増やす処理の流れを、図7のフローチャートにより説明する。発報回数を増やす処理の手順については、ハードディスク93の処理時間判定アプリケーション93eに記述されている。
【0062】
発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dでは、日報発報の発報データについて、各発報データの処理に要した時間を、時計94により測定している。ステップS1では、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのCPU91が発報データの処理時間を入手する。そして、CPU91が発報データの処理時間が規定時間内か否かを判定する(ステップS2)。処理時間判定アプリケーション93eに記述されている規定時間に基づいて判定し、規定時間内であれば発報回数を増やす処理をすることなく終了する。
【0063】
ステップS2で、規定時間を超えていると判定された場合、ステップS3に進み、CPU91は、ハードディスク93に格納されている発報データファイル93dから、規定時間を超えていると判定された当該日報発報の発報時刻を入手する。次に、CPU91は、当該日報発報の発報回数を1増やし、ハードディスク93の空調監視アプリケーション93cに記述されている当該日報発報の発報回数に関するデータを書き換える(ステップS4)。
【0064】
CPU91は、処理時間判定アプリケーション93eにより、次回の発報時刻を基点として、増加させた発報回数から仮の発報時刻を求める(ステップS5)。次に、ステップS5で求めた仮の発報時刻から、CPU91は、1時間分の各分に対する登録されている発報回数を求め、1時間の平均回数を求める(ステップS6)。なお、割り当て時刻の最小単位は1分とする。
【0065】
次に、ステップS7に進み、CPU91は、仮の発報時刻の登録されている発報回数がステップS6で求めた平均回数を上回っているか否かを判断する。平均回数を上回っている場合にはステップS8に移行して、CPU91が仮の発報時刻を1分早め、改めて計算し直すためにステップS5に進む。
【0066】
ステップS7で平均回数を上回っていないと判断された場合は、ステップS9に進み、次の日報発報の際、割り当てた発報時刻を発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dから負荷分散装置82を介して空調コントローラ60aに送る(ステップS9)。空調コントローラ60aでは、CPU61が、送られてきた発報時刻になるようEEPROM66に記憶されている発報データの送受信に関する情報を書き換える。それにより、空調コントローラ60aは、次回の日報発報を新たな発報時刻に行うことができる。
【0067】
(3)サーバ間でのデータ処理の移動
図8を用いて、発報データ処理サーバ83bと発報データ処理サーバ83dとの間でのデータ処理の移動について説明する。わかり易くするために、図8には、負荷分散装置82と、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dと、データベースサーバ86とを抜粋し、日報発報と異常発報の処理についての概念を示している。
【0068】
図8において、発報データ処理サーバ83b,83dには、日報発報の発報データファイル83b1,83d1と、日報発報処理用のキュー83b2,83d2と、日報発報処理用のスレッド83b3,83d3がある。また、発報データ処理サーバ83b,83dには、異常発報の発報データファイル83b4,83d4と、異常発報処理用のキュー83b5,83d5と、異常発報処理用のスレッド83b6,83d6がある。図8では、発報データ処理サーバ83a,83cの発報データファイルとキューとスレッドの記載は省略している。
【0069】
発報データファイル83b1,83d1,83b4,83d4は、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのハードディスク93の発報データファイル93d(図5参照)に格納されている。発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのハードディスク93は、相互に共有化されており、例えば、発報データ処理サーバ83aのCPU91が、発報データ処理サーバ83bのハードディスク93のデータを処理することができるようになっている。キュー83b2,83d2,83b5,83d5及びスレッド83b3,83d3,83b6,83d6は、発報データ処理サーバ83b,83dのCPU91が処理を実行するためのプロセスの概念である。キュー83b2,83d2,83b5,83d5に登録された発報データが、キューへの登録順に順次スレッド83b3,83d3,83b6,83d6で処理される。スレッド83b3,83d3,83b6,83d6で処理されたデータは、データベースサーバ86に格納される。
【0070】
図8は、発報データ処理サーバ83bが混雑していて、発報データ処理サーバ83dに余裕がある場合を示している。この状態で、新たに発報データ処理サーバ83bに日報発報と異常発報の発報データが送られてきたものとする。発報データ処理サーバ83bのCPU91は、キュー83b2,83b5に登録されている発報データの数を取得する。そして、キュー83b2,83b5に登録されている発報データの数が規定値を超えていないかを判定する。この場合は、上述のように、発報回数をコントロールすることで、空調コントローラ60a,60cが1回に送信する発報データの処理負荷を均一化しているので、発報データの数が多ければ、処理負荷が大きくなっていると判定できる。
【0071】
ここでは、発報データ処理サーバ83bの日報発報処理用のキュー83b2の発報データの登録数が規定値を超えているので、発報データ処理サーバ83bのCPU91は、新しく受信した日報発報の発報データと異常発報の発報データを処理する他の発報データ処理サーバを探す。このとき、発報データ処理サーバ83a,83c,83dの中で、発報データ処理サーバ83dのキュー83d2に登録されている発報データの数が最も少ないことを探知する。次に、発報データ処理サーバ83bのCPU91は、新たに受信した日報発報と異常発報の発報データを、発報データ処理サーバ83dのキュー83d2,83d5に登録する。ところで、発報データ処理サーバ83bにおいて、異常発報処理用のキュー83b5の発報データの登録数は規定値を超えていないが、一緒に発報データ処理サーバ83dにデータ処理を移動している。これは、発報データ処理サーバ83bで何らかの不具合が発生している可能性が高いため、処理を優先する異常発報を確実に処理するためである。
【0072】
発報データ処理サーバ83dは、キュー83d2,83d5に登録された順に、スレッド83d3,83d6で処理する。その際、発報データ処理サーバ83bがキュー83d2,83d5に登録した発報データを処理するときは、発報データ処理サーバ83bのハードディスク93にアクセスして発報データファイル83b1,83b4の処理を行う。一方、発報データ処理サーバ83bは、発報データ処理サーバ83dのキュー83d2,83d5に登録したことを記録しているので、自己のハードディスク91(発報データファイル83b1)に記憶していてもキュー83d2,83d5に登録した発報データの処理は行わない。
【0073】
(4)発報データ処理サーバ以外での処理
ここまでは、日報発報のデータが負荷分散装置82から各発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dに送信されてきた順に、キュー83b2,83d2,83b5,83d5に登録して、スレッド83b3,83b6,83d3,83d6においてキューの登録順に処理することについて説明した。しかし、日報発報の発報データは、顧客より要求されるサービスの内容によっては常時使用しない場合がある。
【0074】
例えば、店舗の冷蔵庫内の温度を常時監視する場合や、需要家が時々刻々使用する電力量を監視して、デマンドが契約電力値を超えないように負荷設備を制御する場合などでは、発報データを逐次処理する必要がある。一方、単に空調の状況を監視するだけであって報告書を月単位で提出するような場合には、受信後直ぐに日報発報の発報データの処理を行う必要はない。
【0075】
そのため、受信後直ぐに日報発報の発報データの処理を行う必要のないものは、直ぐにキュー83b2,83b5,83d2,83d5に登録しないようにする。そこで、日報発報のうち直ぐに処理しないもののリストテーブルをハードディスク91に日報処理のキューイングリスト93gとして記憶している。発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのCPU91は、受信した日報発報の発報データを参照して、ハードディスク93のキューイングリスト93gの中に、直ぐに処理しないものとしてリストされているかどうかを判定する。
【0076】
もし、直ぐに処理しないものに該当しなければ、キュー83b2,83d2に登録して処理を行う。一方、直ぐに処理しないものに該当する場合には、キュー83b2,83d2に登録しない。
【0077】
直ぐに登録しない日報発報の発報データは、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのキュー83b2,83d2が所定数以下になったときに処理する。例えば、キュー83b2,83d2の登録数が2以下になった場合など、予め条件を設定しておく。それにより、直ぐに83b2,83d2に登録する必要のない発報データの順番を遅らせるように登録順序を入れ替えたのと同じこととなる。
【0078】
もし、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの混雑が続いており、一定の期間内にキュー83b2,83d2に登録していないものの処理ができないときは、図3に示すバッチ処理用サーバ85で処理する。そのために、定期的に発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの発報データファイル93dをサーベイする。バッチ処理用サーバ85は、報告書の作成などのバッチ処理用であるため、日報発報の発報データを処理することは可能である。しかし、キュー83b2,83d2に登録していないもの全てをバッチ処理用サーバ85で処理すると、その処理能力を超えてしまうため却ってサーバの増設が必要になる。サーバの増設を避けるため、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dで処理できないときに限ってバッチ処理用サーバ85で処理を行うよう構成している。
【0079】
ところが、マルチ式空調機器50a,50b,50cの場合、異常があったときには、日報発報の発報データを必要とするイレギュラーな場合が発生する場合がある。その様な場合には、通常であれば発報データの処理を急ぐ必要のないものも直ちに処理しなくてはならなくなる。そのため、データベースサーバ86に、直ちに処理する必要のない日報発報の発報データがあることを記憶させておく。また、画面表示のために、ウェブサーバ84が発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのハードディスク91にアクセスする必要があるため、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのハードディスク91を、ウェブサーバ84やバッチ処理用サーバ85と共有できるように構成する。
【0080】
<特徴>
(1)
処理時間の掛かるいわゆる処理負荷の重い発報データが送られてくると、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dは、ハードディスク93の処理時間均一化アプリケーション93eに基づいてEEPROM66の発報データの送受信に関する情報を書き換えるため、次回の日報発報の発報データの発報時間を算出する。そして、次回の日報発報の発報データの発報時間を、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dは、負荷分散装置82に対して出力する。負荷分散装置82は、次回の日報発報の発報データの発報時間を、記憶部82dに記憶する。負荷分散装置82は、次にまた処理時間の掛かるいわゆる処理負荷の重い発報データを送ってきた空調コントローラ60a,60cに対して、発報データの送受信に関する情報を書き換えることにより、その空調コントローラ60a,60cが次に送信する発報データをまとめる所定時間を短くする。
【0081】
空調コントローラ60a,60cが発信する発報データのうち処理負荷の重い発報データのデータ量を少なくすることができる。空調コントローラ60a,60cが発信する発報データのうち処理負荷の重い発報データの1回当たりのデータ量を減らすことができ、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dが一回に処理する発報データの一つ当たりのデータ処理時間が短くなる。このような処理を繰り返すことで、処理負荷の思い発報データは徐々に少なくなり、負荷分散装置82が振り分ける発報データの処理負荷が均一化されることから、それを割り振られた発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dにおける負荷の均一化が図られることとなる。
【0082】
(2)
発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dは、相互にハードディスク93を読み取り可能に構成されている。発報データの送受信に関する情報の書き換えによって発報データの処理時間の均一化が図られていることから、キュー83b2,83b5,83d2,83d5のデータ数が処理負荷と強い相関を持つものとなっている。例えば、発報データ処理サーバ83bのキュー83b2に多数の発報データが入っている場合は、自己つまり発報データ処理サーバ83bに負荷が偏っていると判断できる。このことから、発報データ処理サーバ83bのハードディスク93に記憶されている発報データを他の発報データ処理サーバ83dのキュー83d2に登録して処理する。それにより、発報データ処理サーバ83b,83dのキュー83b2,83d2に登録された発報データの数が均一化される。このように、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのキュー83b2,83b5,83d2,83d5に登録される発報データ数の均一化により、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの負荷を均一化することができる。
【0083】
(3)
発報データの内容に応じて、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dが発報データを待ち行列に入れる順番の入れ替えを行うことができる。それにより、内容によって発報データの処理を急がないものは待ち行列に入れる順番を遅らせる一方、処理を急ぐ発報データから順に待ち行列に入れることができる。処理を急がない発報データを発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの処理が集中しない時間帯に処理することができるようになり、発報データの処理の時間的な分散を図り、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの処理負荷を均一化することができる。
【0084】
(4)
マルチ式空調機器50a,50b,50cに関するデータを所定時間分まとめて発報データとして空調コントローラ60a,60cが発信する。そこで、図7のステップS1およびS2に示すように、発報データの処理に時間の掛かるものを検出する。マルチ式空調機器50a,50b,50cに関するデータをまとめる所定時間が短くなるよう、ステップS3〜ステップ8を経て、次回発報する発報時刻を計算する。そして、次回は早く発報するように次回の発報時刻を空調コントローラ60a,60cに送信する。それにより、発報データの処理時間が長くなったものの所定時間を短くすることができる。つまり、図7に示すステップS1〜S9を繰り返すことにより、発報データを分割して送信回数をふやすこととなる。その結果、処理時間の掛かる重い発報データの一回あたりのデータ量を減らすことができるため、発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの負担を均一化することができる。
【0085】
<変形例>
(A)
先の実施形態に係る空調機器管理システム150では、マルチ式空調機器50a,50b,50cを管理対象としたが、本発明の管理対象は、マルチ式空調機器50a,59b,50cに限られない。監視対象は、例えば、セントラル式空調機器などの他形式の空調機器であってもよいし、照明機器、給湯機などの設備機器であっても良い。
【0086】
(B)
先の実施形態に係る空調機器管理システム150は、DNSサーバ81を1台用いた例を示したが、DNSサーバ81は故障やセキュリティー対策のため複数台用いてもよい。
【0087】
(C)
先の実施形態に係る空調機器管理システム150は、負荷分散装置82が1台の場合について説明したが、負荷分散装置82を複数台備えてもよい。
【0088】
(D)
先の実施形態に係る空調機器管理システム150は、図8を用いて説明した日報発報処理用のキュー83b2に多数の発報データが登録されている場合、発報データ処理サーバ83bが自己のキュー83b2の登録数を判断して、他の発報データ処理サーバ83dのキューに登録する例を示したが、次のようにしてもよい。発報データ処理サーバ83aのキューの監視を発報データ処理サーバ83bが行い、発報データ処理サーバ83bのキューの監視を発報データ処理サーバ83cが行い、発報データ処理サーバ83cのキューの監視を発報データ処理サーバ83dが行い、発報データ処理サーバ83cのキューの監視を発報データ処理サーバ83dが行う。そして、監視対象の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dのキューに規定を超える登録がある場合には、キューに登録の少ない発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dに指示して、キューの登録が少ない発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dが自己のキューに監視対象の発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dの発報データを登録するようにしてもよい。つまり、いずれかの発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dが監視して、キューの登録が多い場合には監視しているものがキューに登録しないサーバとキューに登録するサーバに指示を出せばよい。
【0089】
(E)
先の実施形態に係る空調機器管理システム150は、図8を用いて説明した日報発報処理用のキュー83b2の監視は発報データ処理サーバ83a,83b,83c,83dが行う場合について説明したが、監視は負荷分散装置82が行ってもよい。監視結果に基づいて、負荷分散装置82がキューに登録しないサーバとキューに登録するサーバに指示を出せばよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態に係る空調機器管理システムの構成を示す図。
【図2】図1の空調機器管理システムの空調コントローラの構成を示すブロック図。
【図3】図1の空調機器管理システムの中央管理装置の構成を示すブロック図。
【図4】図3の中央管理装置の発報データ処理サーバの構成を示すブロック図。
【図5】図4の発報データ処理サーバのハードディスクの記憶内容を説明するための図。
【図6】図3の中央管理装置の負荷分散装置の構成を示すブロック図。
【図7】図3の中央管理装置の動作を示すフローチャート。
【図8】図3の中央管理装置の動作を説明するための図。
【図9】設備機器に特有の問題点を説明するための図。
【符号の説明】
【0091】
50a,50b,50c マルチ式空調機器(設備機器)
60a,60c 空調コントローラ(監視装置)
66 EEPROM(第1記憶装置)
82 負荷分散装置
83a,83b,83c,83d 発報データ処理サーバ(情報処理装置)
83a,83b,83c,83d キュー(待ち行列)
93 ハードディスク(第2記憶装置)
120 公衆通信回線(通信回線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設備機器(50a,50b,50c)を遠隔から管理する設備機器管理システム(150)であって、
第1記憶装置(66)を有し、接続されている前記設備機器に関するデータを、前記第1記憶装置に記憶されている第1情報に従って所定時間分まとめて発報データとして送信する複数の監視装置(60a,60c)と、
通信回線(120)を介して前記複数の監視装置の前記発報データを受信するとともに、前記通信回線を介して前記第1記憶装置の前記第1情報を書換可能に構成されている負荷分散装置(82)と、
前記負荷分散装置に接続され、第2記憶装置(93)を有し、前記発報データを処理するために前記第2記憶装置に前記発報データを記憶するとともに、前記第1情報の書換えのために前記発報データの処理時間に関する第2情報を前記負荷分散装置に与える複数の情報処理装置(83a,83b,83c,83d)と、
を備える設備機器管理システム。
【請求項2】
前記複数の情報処理装置は、相互に前記第2記憶装置を読み取り可能に構成され、前記待ち行列(83b2,83b5,83d2,83d5)に登録されたデータ数に応じて、自己の前記第2記憶装置に記憶されている前記発報データを他者の前記待ち行列に登録して処理する、請求項1に記載の設備機器管理システム。
【請求項3】
前記複数の情報処理装置は、前記第2記憶装置に記憶している発報データを、前記発報データの内容に応じて順番を入れ替えて待ち行列に登録するよう構成されている、請求項1または請求項2に記載の設備機器管理システム。
【請求項4】
複数の設備機器(50a,50b,50c)を遠隔から管理する設備機器管理方法であって、
前記設備機器に関するデータを所定時間分まとめて発報データとして監視装置(60a,60c)が発信する第1工程と、
前記発報データを受信して、複数の情報処理装置(83a,83b,83c,83d)に振り分けていずれかの前記情報処理装置の待ち行列に登録する第2工程と、
前記発報データの前記情報処理装置での処理時間に応じて、次回送信すべき前記発報データについて、前記設備機器に関するデータをまとめる前記所定時間を前記監視装置に指示する第3工程と、
を備える設備機器管理方法。
【請求項5】
前記第2工程は、複数の情報処理装置に一旦振り分けられた前記発報データを、前記待ち行列のデータ数のより少ない別の前記情報処理装置に再度振り分ける工程を含む、請求項4に記載の設備機器管理方法。
【請求項6】
前記第2工程は、
前記情報処理装置に前記発報データを記憶する工程と、
記憶している前記発報データを、前記発報データの内容に応じて順番を入れ替えて待ち行列に登録する工程と、
を含む請求項4または請求項5に記載の設備機器管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−21904(P2010−21904A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182161(P2008−182161)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】