説明

設備診断装置及び設備診断方法

【課題】複数の異なる動作を実行する設備に対しても、短期間でかつ高精度でその動作状態を診断することが可能な設備診断装置及び設備診断方法を提供する。
【解決手段】設備診断装置1は、設備2が発生する動作音を集音する集音部10と、設備2が正常動作しているときの、設備2の複数の動作が実行される所定期間の設備2の動作音の時間周波数スペクトルである基準スペクトルを記憶する記憶部13と、集音部10により集音された所定期間の動作音を時間周波数変換することにより、所定期間の動作音に対応する時間周波数スペクトルを算出する時間周波数解析部21と、時間周波数スペクトルと基準スペクトルとを比較することにより、設備2の複数の動作のそれぞれの動作音に対応するスペクトル成分を特定する比較部22と、各スペクトル成分に基づいて、設備2に異常が発生しているか否かを判定する判定部23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備の動作中に発生する音を解析することにより、設備の動作状態を診断する設備診断装置及び設備診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機械の動作中に発生する音を解析することにより、その機械の動作状態を診断する技術が開発されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された故障診断装置は、周波数解析手段により、測定した音あるいは振動の0次及び一次以降の線形予測係数を求める。そして故障診断装置は、0次の線形予測係数と、一次以降の線形予測係数とをそれぞれ乗算することにより得られた乗算値を計測時間に沿って表示手段に表示させる。
また、特許文献2に開示された回転機器の状態診断支援装置は、正常稼動時の動作音と採取した動作音との差で異常を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−57210号公報
【特許文献2】特開2005−77111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の動作音の解析による診断技術は、一定速度で回転する回転体など、単一的な動作をする装置に対する故障診断には有効である。これは、単一的な動作をする装置が正常時に発生する動作音は基本的に一種類しかなく、その装置の動作中に集音された動作音を正常動作時の動作音と比較することが容易であるためである。
しかし、例えば、自動車部品の生産設備のように、部品の搬送、保持、組み付けまたは洗浄など、複数の異なる動作を実行する設備は、動作ごとに異なる特徴を持つ動作音を発生する。そのため、この診断技術を用いた診断装置及び方法により、複数の異なる動作を実行する設備の動作状態を診断しようとすると、その診断装置及び方法は、設備の動作ごとに動作音を取得し、それぞれの動作音を解析する必要がある。したがって、この診断技術を用いた診断装置及び方法は、複数の異なる動作を実行する設備を診断するために長時間を要してしまう。
【0006】
また、電流計、電圧計、形状測定装置などの各種の測定装置を用いて複数の異なる動作を実行する設備を診断する場合も、それら測定装置を診断の対象となる設備に取り付けたり、診断の対象となる設備を分解しなければならないため、設備を診断するために要する時間は膨大なものとなる。特に、診断対象となる装置が生産設備である場合、診断に要する時間が長くなるほど、その生産設備を休止する時間が長くなってしまうため、その生産設備の利用者の経済的損失も大きくなる。したがって、動作状態の診断に要する時間は短いほど望ましい。
一方、作業者が、動作音を聞いたり、あるいは目視によって、複数の異なる動作を実行する設備の動作状態を診断しようとすると、作業者の官能評価または勘によって、異常な動作の原因となる故障箇所を特定することになる。そのため、作業者の熟練度、体調などによって故障箇所の検出精度が変動してしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、複数の異なる動作を実行する設備に対しても、短期間でかつ高精度でその動作状態を診断することが可能な設備診断装置及び設備診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の記載によれば、本発明の一つの形態として、設備診断装置が提供される。係る設備診断装置は、設備(2)が発生する動作音を集音する集音部(10)と、設備(2)が正常動作しているときの、設備(2)の複数の動作が実行される所定期間の設備(2)の動作音の時間周波数スペクトルである基準スペクトルを記憶する記憶部(13)と、集音部(10)により集音された所定期間の動作音を時間周波数変換することにより、所定期間の動作音に対応する時間周波数スペクトルを算出する時間周波数解析部(21)と、時間周波数スペクトルと基準スペクトルとを比較することにより、設備(2)の複数の動作のそれぞれの動作音に対応するスペクトル成分を特定する比較部(22)と、各スペクトル成分に基づいて、設備(2)に異常が発生しているか否かを判定する判定部(23)とを有する。
係る構成を有することにより、この設備診断装置は、複数の異なる動作を実行する設備に対しても、短期間でかつ高精度でその動作状態を診断することができる。
【0009】
また請求項2の記載によれば、判定部(23)は、複数の動作のうちの第1の動作に対応する動作音のスペクトル成分と、第2の動作に対応する動作音のスペクトル成分間の時間間隔が、正常動作時における第1の動作と第2の動作間の時間間隔と異なる場合、設備(2)に異常が発生していると判定することが好ましい。
これにより、この設備診断装置は、設備が有する各部の動作タイミングがずれたことを検出することができる。
【0010】
また請求項3の記載によれば、判定部(23)は、比較部(22)により複数の動作のうちの何れかに対応するスペクトル成分が検出されなかった場合、設備(2)に異常が発生していると判定することが好ましい。
これにより、この設備診断装置は、設備が実行するはずの何れかの動作が実行されなかったことを検出することができる。
【0011】
あるいは請求項4の記載によれば、判定部(23)は、複数の動作の何れにも対応しないスペクトル成分が検出された場合、設備(2)に異常が発生していると判定することが好ましい。
これにより、この設備診断装置は、設備が発した異常音を検出することができるので、設備に何らかの異常が発生したことを検出できる。また、異常音に相当するスペクトル成分の周波数帯域は、設備の正常な動作による動作音のスペクトル成分の周波数帯域と異なる。そのため、この設備診断装置は、設備の正常な動作による動作音が発生している間に、異常音が発生していても、設備に異常が発生したことを検出することができる。
【0012】
さらに請求項5の記載によれば、判定部(23)は、設備(2)に異常が発生していると判定した場合、その判定の根拠となったスペクトル成分が、設備(2)に発生した特定の異常に対応する異常原因条件を満たす場合、設備(2)に発生した異常の原因を、その異常原因条件に関連付けられた原因であると推定することが好ましい。
なお、設備に異常が発生しているとの判定の根拠になったスペクトル成分は、時間周波数スペクトルから検出されたスペクトル成分だけでなく、本来何れかの動作に対応するスペクトル成分として検出されるべきスペクトル成分のうち、未検出のスペクトル成分であってもよい。
【0013】
さらに請求項6の記載によれば、本発明の他の形態として、設備診断方法が提供される。係る設備診断方法は、設備が発生する動作音を集音するステップと、集音された、設備の複数の動作が実行される所定期間の動作音を時間周波数変換することにより、所定期間の動作音に対応する時間周波数スペクトルを算出するステップと、時間周波数スペクトルと、設備が正常動作しているときの、所定期間の設備の動作音の時間周波数スペクトルである基準スペクトルとを比較することにより、設備の複数の動作のそれぞれの動作音に対応するスペクトル成分を特定するステップと、各スペクトル成分に基づいて、設備に異常が発生しているか否かを判定するステップとを含む。
係る手順を含むことにより、この設備診断方法は、複数の異なる動作を実行する設備に対しても、短期間でかつ高精度でその動作状態を診断することができる。
【0014】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一つの実施形態による設備診断装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した設備診断装置の制御部の機能ブロック図である。
【図3】基準スペクトルの一例を示す図である。
【図4】設備の動作音に対する時間周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る設備診断装置により実行される設備診断処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一つの実施形態による設備診断装置について説明する。
この設備診断装置は、診断対象設備が一定の周期で繰り返し実行する複数の動作を含む1動作サイクル中に生じた動作音を集音する。そしてこの設備診断装置は、集音した音を時間周波数変換することにより、その1動作サイクルの動作音の時間周波数スペクトルを算出する。この設備診断装置は、算出した時間周波数スペクトルを、診断対象設備が正常に動作しているときの1動作サイクルの動作音に対応する基準時間周波数スペクトルと比較することにより、各動作ごとのスペクトル成分を特定することで、設備の異常の有無を判定する。
【0017】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る設備診断装置1の全体構成を示す概略構成図である。
本実施形態では、診断対象である設備の一例である設備2は、ベルトコンベア7上を搬送されるそれぞれのワーク3を、可動フレーム5に取り付けられた二つの回転ブラシ4−1、4−2で順に掃くことにより、ワーク3の表面に付着したゴミを除去する。そのために、設備2は制御回路6を有し、この制御回路6が二つの回転ブラシ4−1、4−2及び可動フレーム5を制御する。すなわち、可動フレーム5は、制御回路6から受け取った制御信号に応じて、ワーク3の上面に対して平行に移動したり、あるいは、ワーク3の上面に対して垂直に移動する。このため、制御回路6は、回転ブラシ4−1、4−2の何れか一方をワーク3に接触させることができる。また回転ブラシ4−1、4−2は、それぞれ、制御回路6から受け取った制御信号に応じて、一定の回転速度で回転するか、あるいは停止する。
また制御回路6は、設備2の動作状態を示す信号、例えば、可動フレーム5が所定の動作を開始することを示す信号を設備診断装置1へ出力する。
【0018】
設備2は、所定の動作順序に従って可動フレーム5及び回転ブラシ4−1、4−2を動作させる。そして設備2は、その所定の順序に従った可動フレーム5及び回転ブラシ4−1、4−2の動作を1動作サイクルとして、ワーク3ごとにその動作サイクルに含まれる各動作を実行する。
ここで、設備2の可動フレーム5が移動する場合、あるいは、何れかの回転ブラシがワーク3を掃く場合、可動フレーム5あるいは回転ブラシ4−1若しくは4−2が機械的に動作することによる動作音が発生する。また、可動フレーム5が移動するときに生じる動作音と、回転ブラシ4−1または4−2がワーク3を掃くときに生じる動作音は異なる。さらにこれらの動作音は異なる時間に発生する。
【0019】
そこで、設備診断装置1は、設備2の1動作サイクルごとの動作音を解析することにより、設備2の動作状態を診断する。そのために、図1に示すように、設備診断装置1は、マイクロフォン10と、増幅器11と、アナログ−デジタル変換器12と、記憶部13と、通信部14と、表示部15と、制御部16とを有する。
【0020】
マイクロフォン10は、集音部として機能し、設備2が動作することにより生じる動作音を集音し、その集音された音の強度に応じた測定信号を、時系列のアナログ電気信号であるアナログ音声信号として出力する。本実施形態では、周波数帯域20Hz〜20kHzのコンデンサ型マイクロフォンを用いた。しかし、マイクロフォン10として、圧電型マイクロフォンなどの他の方式のマイクロフォンを使用してもよい。また、集音可能な音の周波数帯域も、上記に限られず、例えば100Hz〜18kHzのものを使用してもよい。マイクロフォンの方式、及び測定可能な周波数帯域は、診断対象となる設備の種類、大きさ、または構造などによって、適宜最適なものを選択することが可能である。
【0021】
増幅器11は、マイクロフォン10から取得したアナログ音声信号を増幅して、アナログ−デジタル変換器12へ出力する。そしてアナログ−デジタル変換器12は、増幅されたアナログ音声信号を、デジタル音声信号に変換する。本実施形態では、アナログ−デジタル変換器12として、入力されたアナログ信号をサンプリング周波数44.1kHzでサンプリングし、解像度16bitのデジタル信号として出力するものを使用した。なお、アナログ−デジタル変換器は上記のものに限られず、異なるサンプリング周波数および解像度を有するものを使用してもよい。例えば、アナログ−デジタル変換器12として、サンプリング周波数48kHz、解像度12bitのものを使用してもよい。
デジタル化された音声信号は、制御部16へ送られる。
【0022】
記憶部13は、ハードディスクのような磁気記録媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、またはフラッシュメモリのような半導体メモリ、CD−RW、DVD−R/Wのような読み書き可能な光記録媒体及びそのアクセス装置のうちの少なくとも一つを有する。記憶部13は、制御部16で使用されるプログラム、各種のデータなどを記憶する。さらに記憶部13は、設備2が正常動作しているときの1動作サイクル分の動作音の時間周波数スペクトルである基準スペクトルを記憶する。また記憶部13は、設備2の診断中に測定された動作音に対応するデジタル音声信号を、デジタル音声信号が取得された時刻とともに制御部16が解析するまで一時的に記憶する。
記憶部13は、制御部16からの要求に応じて、各種のプログラム、データまたは基準スペクトルを制御部16へ渡す。
【0023】
通信部14は、設備診断装置1と、設備2あるいは他の装置(例えば、設備2が設置された工程を管理する管理装置)とを所定の通信規格に従った回線にて接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信部14は、設備2の制御回路6から、設備2が所定の動作を開始することを示す信号を受信し、その信号を制御部16へ渡す。また通信部14は、設備2を制御するための制御信号、例えば、設備2を停止させたり、特定の動作を実行させる制御信号を、制御部16から受け取り、設備2の制御回路6へ送信する。
さらに通信部14は、制御部16から受け取った、設備2の診断結果情報を他の装置へ出力してもよい。
【0024】
表示部15は、設備2の診断結果、その他の所定の情報などを表示するものであり、例えば、液晶ディスプレイを有する。そして、表示部15は、制御部16による設備2の診断結果を表示する。また表示部15は、制御部16が設備2に異常が発生したと判定した場合、推定された異常原因に対応するメッセージを表示する。
なお、設備診断装置1は、表示部15とは別個に、あるいは表示部15と一体化されたスピーカを有していてもよい。そして設備診断装置1は、設備2が正常動作していないと判定したときは、スピーカに設備2が正常動作していないことを表す警報音声を発させてもよい。さらに、制御部16による設備2の診断結果が、通信部14を介して他の装置へ出力される場合、表示部15は省略されてもよい。
【0025】
制御部16は、1個または複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。そして制御部16は、アナログ−デジタル変換器12から受け取った、設備2の動作音に対応するデジタル音声信号を解析することにより、設備2の動作状態を診断する。
図2に、制御部16により実現される機能を表す機能ブロック図を示す。制御部16は、時間周波数解析部21、比較部22及び判定部23を有する。制御部16が有するこれらの各部は、制御部16が有するプロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、制御部16が有するこれらの各部は、それら各部の機能を実現する専用の演算回路であってもよい。
【0026】
時間周波数解析部21は、設備2の動作音に対応するデジタル音声信号を、設備2の1動作サイクルごとに時間周波数変換することにより、設備2の1動作サイクルの動作音に対応する時間周波数スペクトルを求める。そのために、時間周波数解析部21は、例えば、記憶部13に一時的に記憶されているデジタル音声信号から、動作サイクルの最初の動作が開始された時刻から次の動作サイクルの最初の動作が開始された時刻までの期間に対応する信号を、1動作サイクルの動作音に対応する信号として抽出する。なお、動作サイクルの最初の動作が開始された時刻は、設備2の制御回路6から、制御部16がその最初の動作が開始されたことを示す信号を受信した時刻とすることができる。
本実施形態では、時間周波数解析部21は、設備2の動作音に対応するデジタル音声信号をウェーブレット変換することにより時間周波数スペクトルを算出する。ウェーブレット変換は、以下の式に基づいて行われる。
【数1】

ここでh(t)は、測定開始からの経過時間tにおける、デジタル音声信号の強度であり、関数Ψ(y)は、マザーウェーブレットである。また、aは周波数を決定するためのパラメータ、bは時間軸上の平行移動量を規定するパラメータである。
【0027】
本実施形態では、マザーウェーブレットとして、ガボール関数を用いた。なお、マザーウェーブレットとして、ガボール関数の代わりに、メキシカンハット関数など、音声解析等の信号解析においてマザーウェーブレットとして使用される別の関数を使用してもよい。
時間周波数解析部21は、算出された時間周波数スペクトルを比較部22へ渡す。
【0028】
比較部22は、時間周波数解析部21から受け取った時間周波数スペクトルを基準スペクトルと比較する。そして比較部22は、時間周波数スペクトルから、設備2の1動作サイクルに含まれる各動作に相当するスペクトル成分を検出する。
【0029】
例えば、比較部22は、基準スペクトルに含まれる、特定の動作に対応するスペクトル成分と、時間周波数スペクトルとを、時間軸方向にずらしながらパターンマッチングを実行することにより、時間のずれ量を変数とする相関値を求める。そして比較部22は、特定の動作に対応するスペクトル成分と時間周波数スペクトルとが最も一致したときのスペクトル成分、すなわち、相関値の最大値に対応する時間周波数スペクトルのスペクトル成分を、その特定の動作に対応するものとする。ただし比較部22は、相関値の最大値が、所定の閾値未満である場合には、その特定の動作に対応するスペクトル成分は検出されなかったと判定してもよい。なお、所定の閾値は、シミュレーションまたは実験結果に応じて適切な値に設定される。例えば、所定の閾値は、実験による測定結果から得られた、同一の動作に対応する別個に取得された二つのスペクトル成分の相関値の最小値とすることができる。
【0030】
また、比較部22は、パターンマッチングの対象とする時間周波数スペクトルの範囲を、その特定の動作が行われる可能性のある時間帯に限定してもよい。例えば、設備2の1動作サイクルにおいて最初に行われる動作に対応する基準スペクトルのスペクトル成分に対して、比較部22は、パターンマッチングの対象とする時間周波数スペクトルの範囲を、時間周波数スペクトルの最初から、1動作サイクルに相当する所要時間の1/4〜1/3が経過するまでの範囲に限定してもよい。
【0031】
さらに、比較部22は、設備2の1動作サイクルに含まれる動作のうち、基準となる一つの動作に対応する時間周波数スペクトル中のスペクトル成分を検出すると、その基準となる動作に対応するスペクトル成分が存在する時間を基準として、他の動作に対応するスペクトル成分を検出する時間の範囲を設定してもよい。例えば、設備2が正常に動作しているのであれば、可動フレーム5が移動する時間と、それぞれの回転ブラシ4−1、4−2がワーク3を掃いている時間との相対的な関係は予め決まっている。そこで、例えば、可動フレーム5が下降して、回転ブラシ4−1をワーク3に接触させる動作に対応するスペクトル成分が測定された時間周波数スペクトルの中から検出されたとする。この場合、比較部22は、回転ブラシ4−1をワーク3に接触させる動作が終了してから、回転ブラシ4−1または回転ブラシ4−2がそれぞれワーク3を掃くのを開始するまでの時間差を、設備2の設定に基づいて決定する。そして比較部22は、回転ブラシ4−1をワーク3に接触させる動作に対応するスペクトル成分が検出された時刻から、上記の時間差を加えた時刻以降で、回転ブラシ4−1または回転ブラシ4−2がそれぞれワーク3を掃く動作に対応するスペクトル成分を検出する。
【0032】
また比較部22は、測定された時間周波数スペクトルにおいて、基準スペクトルに表された設備2の特定の動作に対応する何れのスペクトル成分とも一致していないスペクトル成分の中から、強度が所定の異常音閾値以上となるスペクトル成分を検出する。このようなスペクトル成分は、設備2が正常に動作している際には発生しない異常音に相当する可能性があるためである。比較部22は、例えば、特定の周波数帯域におけるスペクトル成分の平均値が、一定期間連続して異常音閾値以上の強度を持つと、その一定期間中の特定の周波数帯域のスペクトル成分を異常音に相当するスペクトル成分として検出する。
なお、異常音閾値は、環境音に相当するスペクトル成分を異常音に相当するスペクトル成分として検出しない値に設定されることが好ましい。例えば、異常音閾値は、設備2の可動部(すなわち、回転ブラシ4−1、4−2及び可動フレーム7)が動作していないときの環境音に相当するスペクトル成分の最大強度よりも大きく、かつ設備2の何れかの可動部の動作音に相当するスペクトル成分の強度よりも小さな値に設定される。また、所定の一定期間は、設備2の周囲で発生した突発的な音に相当するスペクトル成分を異常音に相当するスペクトル成分として検出しない期間に設定されることが好ましい。例えば、一定期間は、1秒〜10秒の何れかの値に設定される。また、設備2において発生すると想定される異常に関する異常音が予め実験などにより判明している場合、異常音閾値及び所定の一定期間は、その異常音に対応するスペクトル成分に応じて設定されてもよい。
【0033】
比較部22は、設備2の1動作サイクルに含まれる各動作に対応するスペクトル成分が存在する時間を判定部23へ通知する。また比較部22は、何れかの動作に対応するスペクトル成分が検出されなかった場合、その検出されなかった動作を示す信号も判定部23へ通知する。さらに、比較部22は、異常音に相当するスペクトル成分が検出された場合、その異常音に相当するスペクトル成分が存在する周波数帯域及び時間を判定部23へ通知する。
【0034】
判定部23は、比較部22から受け取った、設備2の各動作に対応するスペクトル成分が存在する時間、検出されなかった動作を示す信号及び異常音に相当するスペクトル成分が存在する周波数帯域及び時間に基づいて、設備2の動作状態を診断する。
【0035】
図3は、基準スペクトルの一例を示す図である。図3において、横軸は経過時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。そして横軸と縦軸で表されたグラフ内の濃度分布は、基準スペクトル300を表す。基準スペクトル300において、濃度が高いほど、スペクトル成分は強い。
また、基準スペクトル300のうち、スペクトル成分301〜306は、それぞれ、設備2の動作音に対応する。例えば、スペクトル成分301は、可動フレーム5がフレーム3の上面に平行に水平移動する際の動作音に対応する。またスペクトル成分302は、可動フレーム5が、回転ブラシ4−1をフレーム3に接触させるよう、下降する際の動作音に対応する。さらに、スペクトル成分303は、回転ブラシ4−1がフレーム3の上面を掃く際の動作音に対応する。またスペクトル成分304は、可動フレーム5が回転ブラシ4−2をフレーム3に接触させるように水平移動する際の動作音に対応する。さらにスペクトル成分305は、回転ブラシ4−2がフレーム3の上面を掃く際の動作音に対応する。そしてスペクトル成分306は、可動フレーム5が、回転ブラシ4−2をフレーム3から離すよう、上昇する際の動作音に対応する。
このように、基準スペクトルでは、設備2の構成要素が動作する度に、その動作が行われる時間、及び動作の種類に応じた周波数に相当するスペクトル成分が大きくなる。
【0036】
図4は、設備2について測定された動作音のデジタル音声信号を時間周波数変換することにより得られた時間周波数スペクトルの一例を示す図である。図4においても、横軸は経過時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。そして横軸と縦軸で表されたグラフ内の濃度分布は、測定された時間周波数スペクトル400を表す。時間周波数スペクトル400において、濃度が高いほど、スペクトル成分は強い。なお、図3及び図4に示したスペクトルは、発明の理解を容易にするための模式的なものであることに留意されたい。
また、時間周波数スペクトル400のうち、スペクトル成分401〜406は、それぞれ、設備2の動作音に対応する。そしてスペクトル成分401〜406が対応する設備2の動作は、図3におけるスペクトル成分301〜306が対応する設備2の動作と等しい。例えば、スペクトル成分401、402、404及び406は、スペクトル成分301、302、304及び306と同様に、可動フレーム5が移動する際の動作音に対応する。またスペクトル成分403及び405は、スペクトル成分303及び305と同様に、回転ブラシ4−1または回転ブラシ4−2がフレーム3の上面を掃く際の動作音に対応する。
【0037】
ここで、図4では、回転ブラシ4−1がフレーム3の上面を掃く際の動作音に対応するスペクトル成分403が観測されている間、スペクトル成分403よりも低い周波数を持つ強いスペクトル成分407が観測されている。図3に示された基準スペクトル300には、このスペクトル成分407に対応するスペクトル成分は存在しない。そのため、設備診断装置1は、スペクトル成分407が設備2の正常動作による動作音とは異なる異常音に対応するものであることが分かる。
また、スペクトル成分406が生じた時間は、スペクトル成分405が発生している時間帯と重複している。これに対し、基準スペクトル300では、スペクトル成分406に対応するスペクトル成分306が生じた時間は、スペクトル成分405に対応するスペクトル成分305が発生している時間帯よりも後となっている。このことから、設備診断装置1は、スペクトル成分406に対応する可動フレーム5の動作が正常でないと判断できる。
【0038】
そこで、判定部23は、設備2の複数の動作のうちの任意の二つの動作音に対応する各スペクトル成分間の時間間隔が、正常動作時におけるその二つの動作間の時間間隔と異なるか否か調べる。そして二つの動作音に対応する各スペクトル成分間の時間間隔が正常動作時の時間間隔と異なっている場合、判定部23は、設備2に異常が発生していると判定する。例えば、判定部23は、設備2の時間的に連続した二つの動作に対応するスペクトル成分が存在する時間同士の間隔と、基準スペクトルにおける対応する二つの時間の間隔との差の絶対値を求める。そして判定部23は、その差の絶対値が、基準スペクトルにおける対応する二つの時間の間隔に対する所定の割合よりも大きければ、設備2に異常が発生したと判定する。なお、所定の割合は、設備2が正常に動作している場合においても生じる、その時間の間隔の変動幅の最大値と時間間隔の比率に1.1程度の安全係数を乗じた値、例えば、0.1とすることができる。
【0039】
また、判定部23は、何れかの動作音に対応するスペクトル成分が検出されなかった場合、あるいは異常音に相当するスペクトル成分が検出されている場合も、設備2に異常が発生したと判定する。
【0040】
さらに、判定部23は、設備2に何らかの異常が発生したと判定した場合、測定された時間周波数スペクトルに基づいてその異常原因を推定する。
そこで判定部23は、設備2に異常が発生したと判定する原因となったスペクトル成分が、予め定められた様々な異常に対応する異常原因条件を満たすか否かにより、異常原因を推定する。
例えば、事前に想定される設備2の様々な異常発生時における時間周波数スペクトルである、異常スペクトルが記憶部13に予め記憶される。そして判定部23は、設備2に異常が発生したと判定する原因となったスペクトル成分と、各異常スペクトルとの相関値を、パターンマッチングにより算出する。判定部23は、異常が発生したと判定する原因となったスペクトル成分と、何れかの異常スペクトルとの相関値が、互いに関連があるとみなせる最小相関値に相当する異常特定閾値よりも高い場合、異常原因条件を満たすと判定する。そして判定部23は、設備2においてその異常スペクトルに相当する異常が発生したと推定する。例えば、図4に示された回転ブラシ4−1の回転中に発生した異常音に相当するスペクトル成分407と、回転ブラシの磨耗に相当する異常スペクトルとの相関値が異常特定閾値よりも高ければ、判定部23は、設備2の異常原因は回転ブラシ4−1の磨耗であると推定する。
【0041】
また、異常原因条件は、特定周波数帯域におけるスペクトルの強度値と、発生時間によって規定されてもよい。例えば、異常原因条件の一つとして、回転ブラシ4−2がワーク3を掃いている音に相当するスペクトル成分が観測されている間に、可動フレーム5の動作音に相当するスペクトルが観測されたことが、可動フレーム5の異常であると規定される。この場合、判定部23は、回転ブラシ4−2がワーク3を掃いている音に相当するスペクトル成分が観測されている時間と、可動フレーム5の動作音に相当するスペクトルが観測されている時間との関係を調べ、その関係が上記の異常原因条件を満たしていれば、可動フレーム5に異常が発生したと推定する。
また、可動フレーム5に関する異常原因条件の他の一つの例として、何れかの回転ブラシがワーク3を掃く音に相当するスペクトル成分が検出されず、かつ、可動フレーム5がその回転ブラシをワーク3へ接触させる方向へ移動する動作音に相当するスペクトル成分が検出されないことが規定される。この場合、判定部23は、それら二つのスペクトル成分が検出されなかった場合、可動フレーム5に異常が発生したと推定する。
【0042】
判定部23は、推定した異常原因に対応するメッセージを記憶部13から読み込む。そして判定部23は、そのメッセージを表示部15に表示させる。また判定部23は、設備2に異常が発生したと判定した場合、通信部14を介して設備2の制御回路6へ、設備2を停止させる制御信号を送信してもよい。
【0043】
以下、図5に示したフローチャートを参照しつつ、本発明の一つの実施形態に係る設備診断装置1による設備診断処理について説明する。なお、図5に示される設備診断処理は、制御部16により制御される。
【0044】
図5に示すように、設備診断装置1は、マイクロフォン10を介して、設備2の動作音を集音する(ステップS101)。集音された動作音は、増幅器11により増幅され、その後アナログ−デジタル変換器12によりデジタル音声信号に変換される。そしてデジタル音声信号となった動作音は、一旦記憶部13に記憶される。
【0045】
次に、制御部16の時間周波数解析部21は、設備2の1動作サイクル分の動作音を時間周波数変換することにより、1動作サイクルに相当する動作音の時間周波数スペクトルを算出する(ステップS102)。時間周波数スペクトルは、制御部16の比較部22に送られる。そして比較部22は、時間周波数スペクトルを、設備2が正常動作しているときの1動作サイクル分の動作音の時間周波数スペクトルである基準スペクトルと比較することにより、設備2の1動作サイクルに含まれる各動作に対応するスペクトル成分を抽出する(ステップS103)。そして比較部22は、設備2の1動作サイクルに含まれる各動作に対応するスペクトル成分が存在する時間を処理部14の判定部23へ通知する。また比較部22は、何れかの動作に対応するスペクトル成分が検出されなかった場合、その検出されなかった動作を示す信号も判定部23へ通知する。さらに、比較部22は、異常音に相当するスペクトル成分が検出された場合、その異常音に相当するスペクトル成分が存在する周波数帯域及び時間を判定部23へ通知する。
【0046】
判定部23は、設備2の各動作に対応するスペクトル成分間の間隔が、正常動作時のその動作の時間間隔と異なるか否か判定する(ステップS104)。各動作に対応するスペクトル成分間の間隔が、正常動作時のその動作の時間間隔と異なれば、判定部23は異常フラグの一つである動作時間異常フラグをONにする(ステップS105)。
ステップS104において、各動作に対応するスペクトル成分間の間隔が、正常動作時のその動作の時間間隔と等しい場合、あるいはステップS105の後、判定部23は、設備2の1動作サイクル中に実行される全ての動作に対応するスペクトル成分が検出されたか否か判定する(ステップS106)。そして何れかの動作に対応するスペクトル成分が検出されていなければ、判定部23は、異常フラグの他の一つである未動作異常フラグをONにする(ステップS107)。
一方、ステップS106において、設備2の1動作サイクル中に実行される全ての動作に対応するスペクトル成分が検出されている場合、あるいはステップS107の後、判定部23は、設備2の何れの動作にも対応しないスペクトル成分が検出されたか否か判定する(ステップS108)。そして設備2の何れの動作にも対応しないスペクトル成分が検出されている場合、判定部23は、異常フラグのさらに他の一つである異常音フラグをONにする(ステップS109)。
【0047】
ステップS108において、設備2の何れの動作にも対応しないスペクトル成分が検出されていない場合、あるいはステップS109の後、判定部23は、何れかの異常フラグがONとなっているか否か判定する(ステップS110)。何れの異常フラグもOFFである場合、判定部23は、設備2は正常動作していると判定する。そして設備診断装置1は設備診断処理を終了する。
一方、ステップS110において、何らかの異常フラグがONとなっている場合、判定部23は、異常発生と判定する原因となったスペクトル成分に基づいて、異常原因を推定する(ステップS111)。そして判定部23は、推定された異常原因に対応するメッセージを記憶部13から読み込み、そのメッセージを表示部15に表示させる(ステップS112)。
ステップS112の後、設備診断装置1は、設備診断処理を終了する。
【0048】
以上説明してきたように、本発明の一つの実施形態に係る設備診断装置は、診断対象設備が一定の周期で繰り返し実行する複数の動作を含む1動作サイクル中に生じた動作音を集音する。そしてこの設備診断装置は、集音した音を時間周波数変換することにより、その1動作サイクルの動作音の時間周波数スペクトルを算出する。そしてこの設備診断装置は、算出した時間周波数スペクトルを、診断対象設備が正常に動作しているときの1動作サイクルの動作音に対応する基準時間周波数スペクトルと比較することにより、各動作の動作音に対応するスペクトル成分を正確に特定できる。そのため、この設備診断装置は、各動作に対応するスペクトル成分が所定のタイミングで検出できたか否か、あるいは正常動作時には存在しない異常な動作音に対応するスペクトル成分を特定することができるので、設備の異常の有無を正確に判定できる。このように、この設備診断装置は、1動作サイクル分の動作音を一度に集音するだけで、設備の異常の有無を判定できるので、複数の異なる動作を実行する設備に対しても、短期間でかつ高精度でその動作状態を診断することができる。
【0049】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、時間周波数解析部は、設備の1動作サイクルの動作音に対応するデジタル音声信号を所定の時間間隔で分割し、分割されたそれぞれのデジタル音声信号を、高速フーリエ変換あるいは離散コサイン変換することにより、時間周波数スペクトルを算出してもよい。この場合、所定の時間間隔は、例えば、設備の1動作サイクルに含まれる個々の動作が継続する時間よりも短く設定されることが好ましい。これにより、設備の1動作サイクルの動作音に対応するデジタル音声信号をウェーブレット変換したときと同様に、異なる時間に行われた動作に対応するスペクトル成分が異なる時間に表れる。そのため、時間周波数解析部は、異なる時間に行われた二つの動作に対応するスペクトル成分を区別することができる。
また、時間周波数解析部は、1動作サイクル分の動作音に対応するデジタル音声信号を複数回取得し、その複数回のデジタル音声信号を平均化したものを、時間周波数変換してもよい。あるいは時間周波数解析部は、1動作サイクル分の動作音に対応するデジタル音声信号から算出された時間周波数スペクトルを、複数回の動作サイクルについてそれぞれ算出し、それら時間周波数スペクトルを平均化したものを比較部へ出力してもよい。これにより、設備診断装置は、単発的な事象により生じた音声を設備の異常動作音として検出してしまうことを避けることができる。
【0050】
さらに、他の実施形態によれば、設備診断装置は、診断対象設備の各部を逐次撮影するためのビデオカメラを有してもよい。そして設備診断装置の制御部は、そのビデオカメラにより逐次撮影された設備の画像に基づいて、設備がその各動作サイクルに含まれる動作を開始する前の基準状態となったことを検知する。設備診断装置は、設備が基準状態となったと判定した時から、マイクロフォンを介して1動作サイクルの実行に要する時間の間、設備の動作音を集音する。これにより、設備診断装置は、既存の設備を改造することなく、正確に1動作サイクル分の動作音に対応する時間周波数スペクトルを取得できる。したがって、この設備診断装置は、既存の設備に対しても何ら改造することなく、その設備の動作状態を診断することができる。
なお、制御部は、設備の画像に基づいて、設備が基準状態となったことを検知するために、例えば、設備が有する各可動部の特徴的な形状を、例えばパターンマッチングにより認識する。そして制御部は、各可動部の特徴的な形状の位置が、基準状態におけるそれらの位置に存在することを検出することにより、設備が基準状態となったと判定できる。
上記のように、当業者は、本発明の範囲内で様々な修正を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 設備診断装置
2 設備
3 ワーク
4−1、4−2 回転ブラシ
5 可動フレーム
6 制御回路
7 ベルトコンベア
10 マイクロフォン
11 増幅器
12 アナログ−デジタル変換器
13 記憶部
14 通信部
15 表示部
16 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備(2)が発生する動作音を集音する集音部(10)と、
前記設備(2)が正常動作しているときの、前記設備(2)の複数の動作が実行される所定期間の前記設備(2)の動作音の時間周波数スペクトルである基準スペクトルを記憶する記憶部(13)と、
前記集音部(10)により集音された前記所定期間の動作音を時間周波数変換することにより、前記所定期間の動作音に対応する時間周波数スペクトルを算出する時間周波数解析部(21)と、
前記時間周波数スペクトルと前記基準スペクトルとを比較することにより、前記設備(2)の複数の動作のそれぞれの動作音に対応するスペクトル成分を特定する比較部(22)と、
前記各スペクトル成分に基づいて、前記設備(2)に異常が発生しているか否かを判定する判定部(23)と、
を有することを特徴とする設備診断装置。
【請求項2】
前記判定部(23)は、前記複数の動作のうちの第1の動作に対応する動作音のスペクトル成分と、第2の動作に対応する動作音のスペクトル成分間の時間間隔が、正常動作時における前記第1の動作と前記第2の動作間の時間間隔と異なる場合、前記設備(2)に異常が発生していると判定する、請求項1に記載の設備診断装置。
【請求項3】
前記判定部(23)は、前記比較部(22)により前記複数の動作のうちの何れかに対応するスペクトル成分が検出されなかった場合、前記設備(2)に異常が発生していると判定する、請求項1または2に記載の設備診断装置。
【請求項4】
前記判定部(23)は、前記複数の動作の何れにも対応しないスペクトル成分が検出された場合、前記設備(2)に異常が発生していると判定する、請求項1〜3の何れか一項に記載の設備診断装置。
【請求項5】
前記判定部(23)は、前記設備(2)に異常が発生していると判定した場合、当該判定の根拠となったスペクトル成分が、前記設備(2)に発生した特定の異常に対応する異常原因条件を満たす場合、前記設備(2)に発生した異常の原因を、当該異常原因条件に関連付けられた原因であると推定する、請求項1〜4の何れか一項に記載の設備診断装置。
【請求項6】
設備が発生する動作音を集音するステップと、
集音された前記設備の複数の動作が実行される所定期間の動作音を時間周波数変換することにより、前記所定期間の動作音に対応する時間周波数スペクトルを算出するステップと、
前記時間周波数スペクトルと、前記設備が正常動作しているときの、前記所定期間の前記設備の動作音の時間周波数スペクトルである基準スペクトルとを比較することにより、前記設備の複数の動作のそれぞれの動作音に対応するスペクトル成分を特定するステップと、
前記各スペクトル成分に基づいて、前記設備に異常が発生しているか否かを判定するステップと、
を含むことを特徴とする設備診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−266327(P2010−266327A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117663(P2009−117663)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】