説明

設備診断装置

【課題】複数のプーリでベルトを駆動する駆動設備にセンサを設けてデータ収集し、主成分分析を用いて診断する設備診断装置において、設備の運転状態を異常要因を速やかに特定して的確な診断を行う。
【解決手段】時系列データ収集部4にて時系列データを収集し、多次元データ生成部5にて多次元データを生成し、所定の条件の下で収集して生成した多数の多次元データに対し、パターン生成部6にて主成分分析を行って特徴空間を決定しパターン情報を記憶部7に記憶する。そして、新規多次元データに対し、記憶される各パターンからのマハラノビス距離を距離演算部8にて演算して、どのパターンにどの程度近いかを判定して運転状態を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のプーリでベルトを駆動する駆動設備を診断する診断装置に関し、特に、振動、音響などの波形データを収集し主成分分析を用いて診断する診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象設備の劣化を診断する従来の方法は、設備の波形データを、該設備が正常な時点を含む複数の時間帯において取得し、前記複数の時間帯それぞれの前記波形データの一部を解析時間とし、該解析時間帯を、分割時間帯に分割し、該分割時間帯をT個の時間帯に分割し、前記T個の時間帯それぞれについて、前記波形データをフーリエ変換して、分割された周波数帯域毎の強さを求める。そして、前記周波数帯域毎の強さを標準化し、前記標準化された周波数帯域毎の強さを用いて、前記分割時間帯毎の主成分得点を求める。前記分割時間帯毎の主成分得点を求める際、主成分得点を求める際に使用する固有ベクトルは、前記設備が正常な時点における固有ベクトルである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2004−20193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の設備診断では、主成分分析を用いて正常データの分布に従ったマップを決定し、新たな取得データをこのマップ上で評価するものである。このような診断では、設備が正常/異常の診断は容易であるが、設備が複雑な場合、異常要因の特定を短時間で行うのは困難であった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するために成されたものであって、複数のプーリでベルトを駆動する駆動設備を、該設備の運転状態の正常/異常、また異常要因を速やかに特定して診断する信頼性の高い設備診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による設備診断装置は、複数のプーリでベルトを駆動する設備の所定箇所にセンサを設けて振動、音響などの波形データを収集し、主成分分析を用いて上記設備の運転状態の診断を行う。また、上記設備が正常運転される時点を含んで、上記波形データを時系列で収集する時系列データ収集手段と、上記各時系列データから多次元データを生成する多次元データ生成手段と、正常状態を含む上記設備の各運転状態における上記多次元データに対して主成分分析を行い、正常状態を含む各運転状態に対する特徴空間をそれぞれ生成し、該各特徴空間を示すパターン情報を記憶するパターン情報生成記憶手段と、
新たに収集され生成された新規多次元データから、上記各特徴空間のパターン情報に基づいて、該各特徴空間への距離を演算する距離演算手段と、該演算された距離に基づいて上記新規多次元データにおける運転状態を判定する判定手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
このような設備診断装置では、主成分分析により正常状態を含む各運転状態に対する特徴空間をそれぞれ生成して各パターン情報を記憶しておき、時点の運転状態を示す新規多次元データを取得して上記各特徴空間への距離、即ち記憶された各パターンの示す各運転状態にどの程度近いかを演算するため、正常かどうかの判定と同時にどのような異常状態であるかも判定でき、異常要因を速やかに特定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による設備診断装置を図について説明する。図1は、この発明の実施の形態1による設備診断装置の概略構成を示すブロック図である。
設備診断装置1は、設備2の所定箇所に設けられた加速度センサ3から得られる振動データを収集して、設備2の運転状態を診断する。この設備診断装置1は、図に示すように、加速度センサ3から得られる振動データを時系列データとして時系列で収集する時系列データ収集部4と、各時系列データから多次元データを生成する多次元データ生成部5と、設備2の各運転状態における多次元データに対して主成分分析を行って各運転状態に対する特徴空間を生成しそのパターン情報を演算するパターン生成部6と、該パターン情報を記憶するパターン記憶部7とを備える。また、新たな多次元データから上記各特徴空間への距離を演算する距離演算部8と、該演算された距離に基づいて運転状態を判定する判定部9と、入出力部10とを備える。
なお、パターン生成部6とパターン記憶部7とでパターン情報生成記憶手段を構成し、入出力部10は出力手段と入力手段とを併せて構成するものである。
【0009】
このように構成される設備診断装置1にて診断する設備2を図2に示す。図2に示すように、複数のプーリ11でコンベヤベルト12を駆動して汚泥13a、13bを移送する設備2であり、下水の処理設備等に用いられる。上方から所定量の汚泥13aをコンベヤベルト12上に落下させ、所定の処理位置まで移送する。
このような設備2の運転状態を診断するために、設備2の所定箇所にセンサ3を設置して、運転中の設備2から音、振動、温度などの波形データを収集する。この場合、加速度センサ3を用いて振動データを収集する。
【0010】
次に、設備診断装置1の各部の動作について以下に説明する。
時系列データ収集部4は、加速度センサ3にて検出される振動データを時系列データとして、所定の単位時間毎に時系列で収集する。
多次元データ生成部5では、各時系列データから多次元データを生成する。例えば、図3に示すように、1つの波形データである時系列データを周波数スペクトルに変換し、帯域ごとの周波数強度のデータからなるP次元データX=[x,x,・・・x]を生成する。
パターン生成部6では、所定の条件の下で収集された時系列データから生成された多数の多次元データに対し主成分分析を行って、これらの多次元データが構成する特徴空間を決定する。即ち、この条件の多次元データの平均値、回転行列、固有値を演算して、これらをこの条件の特徴空間を示すパターン情報としてパターン記憶部7に保持する。
【0011】
パターン生成部6での主成分分析について説明する。
いま、P個の変数によるP次元データX=[x,x,・・・,x]についてN個のサンプルがあるとする。各変数の平均値を演算して多次元データの平均値M=[m,m,・・・,m]を演算し、該平均値からの偏差データY=[y,y,・・・,y](=X−M)をN個用意し、Mを中心とする特徴空間を決定する。
主成分分析とは、P個の変数y(p=1,2,・・・,P)の持つ情報を、情報の損失を最小限に抑えながらyの一次結合として与えられる互いに独立なQ(Q≦P)個の主成分(総合的指標)z(q=1,2,・・・,Q)を用いて表現する手法である。この場合、主成分の個数は最大のP個とし、特徴空間の構成要素Z=[z,z,・・・,z]に変換するための回転行列をRとすると、Z=R×Yとなる。即ち、上記偏差データYを回転行列Rを用いて軸変換する。ここで、Zの第1主成分zの分散は、yのあらゆる一次式の持つ分散の中で最大であり、第q主成分zの分散は、第1〜第(q−1)主成分の全てと無相関な1次式の持つ分散の中で最大である。
このように主成分分析を行って求められる、多次元データの平均値M、回転行列R、各主成分の分散を表す固有値λ=[λ,λ,・・・,λ]を、上記N個のP次元データXに基づく特徴空間を示すパターン情報としてパターン記憶部7に保持する。
【0012】
距離演算部8では、多次元データ生成部5にて生成される新たな多次元データを取得すると、パターン記憶部7が保持している各パターン情報に基づいて、取得した新規多次元データと各パターン(特徴空間)との距離をそれぞれ演算する。ここでは、距離として分散を考慮したマハラノビス距離を用い、分散の大きいデータほど距離が小さくなる。なお、パターン記憶部7では、少なくとも1つの正常状態のパターンを含んでパターンIからパターンXまでのパターン情報を保持しているものとし、距離演算部8は、例えばパターンαからのマハラノビス距離を、以下のように演算する。
【0013】
パターンαのパターン情報を、
パターンαの平均値:Mα=[mα1,mα2,・・・,mαP
パターンαの回転行列:Rα
固有値:λ=[λα1,λα2,・・・,λαP
として、新規多次元データX=[x,x,・・・x]を以下のように軸変換する。
α=Rα×(X−Mα)=[zα1,zα2,・・・,zαP
さらに、Zαの各要素に(λα1)(−1/2),(λα2)(−1/2),・・・,(λαP)(−1/2)を乗じて、以下のように軸方向に圧縮する。
α=[zα1・(λα1)(−1/2),zα2・(λα2)(−1/2),・・・,zαP・(λαP)(−1/2)]=[dα1,dα2,・・・,dαP
このP次元データDαが示すP次元空間上の点から原点までの距離Dを算出すると、この距離Dが新規多次元データXのパターンαからのマハラノビス距離となる。
【0014】
このように、パターン記憶部7が保持しているパターンIからパターンXまでのパターン全てに対して、新規多次元データXの各パターンからのマハラノビス距離を算出する。
上述した特徴空間を、各主成分の軸方向に固有値の(-1/2)乗を乗じて分散を揃えるように圧縮して生成したものとすると、取得した新規多次元データXから変換して得られる上記P次元データDαは、新規多次元データXをパターンαが示す特徴空間上の座標に変換したデータとなる。
【0015】
判定部9では、距離演算部8での演算結果である、新規多次元データXの各パターンからのマハラノビス距離に基づいて、各パターンが示す運転状態に対してどの程度近いかを判定する。図4は、パターンIの特徴空間とパターンIIの特徴空間に対し、新規多次元データXの各パターンからのマハラノビス距離を演算して各パターンからの近さ程度を判定した場合を示す。14aはパターンIの特徴空間上で示した新規多次元データ、14bはパターンIIの特徴空間上で示した新規多次元データで、各パターンからのマハラノビス距離15a、15bに基づいて、新規多次元データXはパターンIからは比較的遠く、パターンIIからは比較的近いことが判る。
【0016】
入出力部10では、判定部9からの判定結果を図5のように表示することができる。これは、新規多次元データの各パターンI〜Xからのマハラノビス距離の逆数をグラフで表示したもので、各パターンに対する近さを表し、取得した新規多次元データはパターンIIに最も近いことが判る。
【0017】
次に、設備診断装置1にて設備2を診断する流れについて以下に説明する。
設備診断装置1は、設備診断を行う診断モードと、該設備診断に先立って正常状態を学習する初期学習モードとを有して、2種のモードを切り替えて運転する。
設備診断装置1の設備診断を実施するには、少なくとも正常状態のパターン情報をパターン記憶部7に記憶しておくことが必要であり、設備診断装置1を設備2に最初に設置するときなど、設備診断に先立ってある一定期間を正常データ収集期間とし、初期学習モードで正常状態を学習する。なお、この正常データ収集期間では、設備2の状態を所定の正常状態に保って運転する。
【0018】
即ち、初期学習モードにおいて、設備2が正常状態の時系列データを時系列データ収集部4にて収集して、多次元データ生成部5にて多次元データを生成する。そして、この正常データ収集期間で収集され生成された多次元データに対して、パターン生成部6は、上述したように主成分分析を行い、これらの多次元データが構成する特徴空間を決定し、これら多次元データの平均値、回転行列、固有値を演算して、初期正常状態のパターン情報としてパターン記憶部7に保持する。
【0019】
次いで、設備診断装置1を診断モードに切り替えて設備診断を行う。なお、時系列データ収集部4にて所定の単位時間毎に時系列で収集され多次元データ生成部5にて生成された多次元データは、一定期間保持しておく。
診断モードでは、新たに取得した新規多次元データに対し、パターン記憶部7が記憶している各パターン情報に対応する各特徴空間へのマハラノビス距離を、上述したように距離演算部8にて演算する。そして、判定部8にて各特徴空間への近さ程度を判定して、入出力部10にて表示する。パターン記憶部7内に初期正常状態のパターン情報、例えばパターンIのみ記憶されている場合は、初期正常状態にどの程度近いかで、初期正常状態を継続しているかどうかの結果が得られる。パターン記憶部7内に複数のパターン情報が記憶されている場合は、各特徴空間への近さ程度から、新規多次元データが示す運転状態が判る。
【0020】
上記診断モードにおいて、判定部8は、新規多次元データがいずれの特徴空間からも予め設定された所定以上のマハラノビス距離で離間する未知ケースか否かを判定する機能を有し、未知ケースと判定されると、入出力部10は警報を出力するなどして操作員に報知する。操作員は、この状態を点検して、設備2のメンテナンスや汚泥運搬量などの運転モードの変更などによる新たな正常状態であるか、故障などによる異常状態であるかを確認する。この場合、パターン生成部6は、未知ケースと判定された新規多次元データを含んでそれ以前の所定の期間に収集された多次元データに対して主成分分析を行って新たな特徴空間を生成してそのパターン情報をパターン記憶部7に記憶する。また、正常種別、異常種別など、この運転状態を識別する識別記号を入出力部10から入力可能とし、操作員が識別記号を入力することにより、新たに記憶されるパターン情報は、上記識別記号を付加して記憶する。
【0021】
入出力部10では、判定部9からの判定結果を表示する。図5で示したように、新規多次元データの各パターンI〜Xからのマハラノビス距離の逆数をグラフで表示することで、各パターンに対する近さを視覚的に表わす。この場合、パターン情報の識別記号としてI〜Xを表示した。
また、入出力部10からの警報出力は、新規多次元データが未知ケースである場合だけでなく、異常状態を示すパターン(特徴空間)からの近さ程度が所定値以上であるとき、そのパターンが示す異常状態であるとして警報を出力する。この場合、所定値以上の近さ程度を有するパターンが異常状態のパターンであるかどうか、上記付加された識別記号により判断できる。例えばIから始まるパターンを異常状態、Aから始まるパターンを正常状態として識別記号を設定して用いると、表示したときにも判りやすい。
なお、異常状態の場合は、操作員により設備2に対し必要な処置を施した後、診断を継続する。
【0022】
この実施の形態による設備診断装置1では、所定の条件の下で収集された時系列データから生成された多数の多次元データに対し主成分分析を行って、これらの多次元データが構成する特徴空間を決定し、パターン情報を記憶する。そして、新規多次元データに対し、保持した各パターンが示す特徴空間からの距離を演算して運転状態を判定するため、新規多次元データが、どのパターンにどの程度近いかを判定して運転状態を診断することができ、正常か異常かだけでなく、異常要因の診断も同時に短時間で行える。また、時系列データから多次元データを生成するには、各時系列データを帯域毎の周波数強度に変換して行うため、容易に1つの波形データから多次元データを生成することができ、主成分分析を行うことができる。
また、判定に用いる距離として統計的な分散を考慮したマハラノビス距離を用いるため、運転状態がどのパターンにどの程度近いかを信頼性よく判定でき、診断の信頼性が向上する。
【0023】
また、設備診断に先立って正常状態を学習する初期学習モードにより、初期正常状態のパターンを生成して記憶し、その後診断モードにして診断開始できるため、設備診断装置1以外の別の装置や人手に頼らず、診断の基準となる初期正常状態を効率よく学習できると共に、学習終了後に速やかに診断に移行できる。さらに、診断モードにおいて、新規多次元データがいずれのパターンからも所定以上離れているときは、未知ケースとして新たな特徴空間を生成してパターン情報を記憶するため、新たな運転状態を常に学習することができ、診断の基準となるパターン情報を容易に最新の状態にできると共に、種々の異常状態、また複数の正常状態に対してそれぞれパターン情報を持つことができ、運転状態の診断における信頼性がさらに向上する。
【0024】
また、新規多次元データが未知ケースとされたとき、該新規多次元データを含んでそれ以前の所定の期間に収集された多次元データに対して主成分分析を行ってパターン情報を演算して記憶するため、未知ケースに対して速やかで確実に新たな特徴空間を生成してパターン情報を記憶できる。また、未知ケースの場合には警報を出力して、記憶されている運転状態とは異なる異常であることを操作員に知らせ、必要な処置を促すことができる。また、新たに生成されるパターン情報に付加する識別記号を入力可能としたため、パターン情報に異常種別、正常種別を識別するための情報を容易に付加できて利用できる。さらに、診断による判定結果、即ち新規多次元データが、どのパターンにどの程度近いかをパターン情報に付加された異常種別、正常種別を付加して表示するため、診断および判定結果を的確に表示できる。
【0025】
なお、初期正常状態のパターン情報生成時に、メンテナンスの調整などにより正常データ収集期間で収集された多次元データの分布が非線形に広がる場合がある。このため、正常データ収集期間で各データ間の類似度を表す距離を算出して類似しているもの同士を結合させるクラスタ分析を併せて行うことにより、複数の初期正常状態を示すパターンを生成可能としても良い。これにより、初期正常状態を示す特徴空間の過剰な広がりを防ぎ、設備診断の信頼性が向上する。
【0026】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、加速度センサ3を用いて振動データを収集したが、センサは複数であっても良い。例えば設備2の二箇所に加速度センサを設置し同期してデータ収集する場合、これらの間の振動の伝達関数の変化を知ることができるので、異常が発生した場合の情報量が多くなり、診断の信頼性が向上する。この場合、これら複数のセンサからの複数の時系列データから1つのベクトルデータである多次元データを生成するが、複数のセンサから収集したデータをそれぞれで帯域ごとの周波数強度に変換してから、一つのベクトルデータとして表すことによって多次元データを生成する。あるいは、複数のセンサからのデータ間の伝達関数を求めて多次元データに利用しても良い。また、時系列データから周波数スペクトルに変換する代わりにクロススペクトルを用いても良い。
なお、複数のセンサは、加速度センサと音声マイクなど、異なる種類のセンサであっても良い。
【0027】
また、時系列データから周波数毎に複数の有次元・無次元パラメータ(実効値、尖り度など)を算出して多次元データを生成する、あるいは時系列データの実行値、分散、モーメントなど基本統計量を算出して多次元データを生成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態1による設備診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による設備を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1における多次元データの生成を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1における新規多次元データの各パターンからの近さ程度を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態1における判定結果の出力表示を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 設備診断装置、2 設備、3 センサ、4 時系列データ収集部、
5 多次元データ生成部、6 パターン生成部、7 パ間ターン記憶部、
8 距離演算部、9 判定部、10 入出力部、11 プーリ、12 コンベヤベルト、
14a,14b 新規多次元データ、15a,15b マハラノビス距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプーリでベルトを駆動する設備の所定箇所にセンサを設けて振動、音響などの波形データを収集し、主成分分析を用いて上記設備の運転状態の診断を行う設備診断装置において、
上記設備が正常運転される時点を含んで、上記波形データを時系列で収集する時系列データ収集手段と、
上記各時系列データから多次元データを生成する多次元データ生成手段と、
正常状態を含む上記設備の各運転状態における上記多次元データに対して主成分分析を行い、正常状態を含む各運転状態に対する特徴空間をそれぞれ生成し、該各特徴空間を示すパターン情報を記憶するパターン情報生成記憶手段と、
新たに収集され生成された新規多次元データから、上記各特徴空間のパターン情報に基づいて、該各特徴空間への距離を演算する距離演算手段と、
該演算された距離に基づいて上記新規多次元データにおける運転状態を判定する判定手段とを備えることを特徴とする設備診断装置。
【請求項2】
上記距離演算手段にて演算する上記各特徴空間への距離は、該各特徴空間の分散を考慮したマハラノビス距離であることを特徴とする請求項1記載の設備診断装置。
【請求項3】
設備診断を行う診断モードと、該設備診断に先立って正常状態を学習する初期学習モードとを有し、
上記初期学習モードにおいて、上記設備が正常状態の時系列データを上記時系列データ収集手段にて収集して、上記多次元データ生成手段にて多次元データを生成し、該正常状態の多次元データに対して上記パターン情報生成記憶手段は、主成分分析を行い初期正常状態のパターン情報を生成して記憶し、
上記診断モードにおいて、上記新規多次元データを収集し、上記距離演算手段にて、上記パターン情報生成記憶手段が記憶している各パターン情報に対応する各特徴空間への距離を演算し、上記判定手段にて該各特徴空間への近さ程度を判定すると共に、いずれの特徴空間からも所定以上の距離で離間する未知ケースか否かを判定し、該未知ケースと判定された場合、上記パターン情報生成記憶手段は、該新規多次元データに基づく主成分分析により新たな特徴空間を生成してそのパターン情報を記憶することを特徴とする請求項1または2記載の設備診断装置。
【請求項4】
上記新規多次元データが上記判定手段にて上記未知ケースと判定された場合、上記パターン情報生成記憶手段は、該新規多次元データを含んでそれ以前の所定の期間に収集された多次元データに対して上記主成分分析を行うことを特徴とする請求項3記載の設備診断装置。
【請求項5】
上記新規多次元データが上記判定手段にて上記未知ケースと判定された場合に報知する出力手段と、該未知ケースの異常種別あるいは正常種別を外部から入力する入力手段とを備え、上記パターン情報生成記憶手段が該新規多次元データに基づいて生成して記憶するパターン情報に上記異常種別あるいは正常種別を付加することを特徴とする請求項3または4記載の設備診断装置。
【請求項6】
上記出力手段は、上記新規多次元データの上記各特徴空間への近さ程度を、上記記憶されたパターン情報に付加され上記各特徴空間を識別する正常種別、異常種別と共に表示することを特徴とする請求項5記載の設備診断装置。
【請求項7】
上記初期学習モードにおいて、上記パターン情報生成記憶手段が初期正常状態のパターン情報を生成して記憶する際、クラスタ分析により複数のパターン情報を生成可能とすることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の設備診断装置。
【請求項8】
上記多次元データ生成手段は、上記各時系列データを帯域毎の周波数強度に変換して上記多次元データを生成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の設備診断装置。
【請求項9】
上記多次元データ生成手段は、複数の上記センサから得た複数の時系列データに基づいて1つのベクトルデータである上記多次元データを生成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の設備診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−108107(P2007−108107A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301329(P2005−301329)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(591043581)東京都 (107)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【Fターム(参考)】