説明

設計支援システム

【課題】フレームに発砲体を適宜配設したクレイモデルの基本骨格の設計から、発砲体の出図作業までを効率的に行うことができる設計支援システムを提供する。
【解決手段】設計支援システムは、フレームに複数の発砲体を配設したクレイモデルの基本骨格を3次元データで表したマスタモデルを記憶する記憶手段と、前記マスタモデルの外形形状を変更するための外形パラメータを作成する外形パラメータ作成手段と、前記外形パラメータを変更入力する入力手段と、前記入力手段により入力された外形パラメータに基づいて、前記マスタモデルの外形形状を変更し、再構築するモデル構築手段と、前記マスタモデルの外形形状の変更に連動して、再構築されたモデルに配設されている各発砲体データを展開し、出図用に投象した図形を作成する展開投象手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のクレイモデルを設計支援する設計支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の開発・設計期間縮小の流れで、実物大試作品も短期製作が求められるようになった。例えば、自動車の設計においては、実寸大のクレイモデルを用いてデザインを検討している。このようなデザイン検討用のクレイモデルは、鉄芯から構成されるフレームに発砲スチロールを適宜配設した基本骨格に、クレイを盛りつけることにより、作製される。
【0003】
そして、このようなフレームに発砲スチロールを適宜配設した基本骨格は、鉄芯から構成されるフレームの形状、大きさ、該フレームに配設される発砲スチロールの外形形状、厚み、大きさの設定、設定した発砲体の出図作業等を、車両のモデル毎に、制作者がCADにて1つ1つ作業する必要があった。そのため、クレイモデルの製作には、相当な時間・コストがかかり、制作者の熟練も要することとなる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−258673号公報
【特許文献2】特開2004−42747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、フレームに発砲体(発泡スチロール)を適宜配設したクレイモデルの基本骨格の設計から、発砲体の出図作業までを効率的に行うことができる設計支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両のクレイモデルを設計支援する設計支援システムであって、フレームに複数の発砲体を配設したクレイモデルの基本骨格を3次元データで表したマスタモデルを記憶するモデル記憶手段と、前記マスタモデルの外形形状を変更するための外形パラメータを作成する外形パラメータ作成手段と、前記外形パラメータを変更入力する入力手段と、前記入力手段により入力された外形パラメータに基づいて、前記マスタモデルの外形形状を変更し、再構築するモデル構築手段と、前記マスタモデルの外形形状の変更に連動して、再構築されたモデルに配設されている各発砲体データを展開し、出図用に投象した図形を作成する展開投象手段と、を備える。
【0007】
また、前記設計支援システムにおいて、前記再構築されたモデルに配設されている各発砲体データの厚さデータを読み出し、同じ厚さの発砲体データをグループ化するグループ化手段を備え、前記展開投象手段は、前記グループ化した発砲体データ毎に出図用に投象した図形を作成することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フレームに発砲体を適宜配設したクレイモデルの基本骨格の設計から、発砲体の出図作業までを効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について以下説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車両のクレイモデルを設計支援する設計支援システムを実現するコンピュータの構成例を示す図である。図1に示すように、コンピュータは、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションのような汎用コンピュータや、専用のコンピュータを適用することが可能である。
【0011】
コンピュータは、入力部、表示部、印刷部、制御部、モデル記憶部、外形パラメータ作成部、モデル構築部、展開投象部、グループ化部、を備えている。入力部は、キーボード、マウス等のポインティングデバイスを用いて構成されている。表示部は、CRT、液晶ディスプレイ等の様々な表示装置とそのドライバ回路等から構成されている。印刷部は、プリンタのような印刷装置とそのドライバ回路等から構成される。
【0012】
コンピュータは、CPU等のプロセッサ、ROM、RAM、入出力ユニット、外部記憶装置を備えている。外部記憶装置には、CPUが実行すべき各種のプログラムが記憶されており、CPUは、外部記憶装置から主記憶装置(RAM)にロードされたプログラムを実行することによって、コンピュータを図1に示すような制御部、モデル記憶部、外形パラメータ作成部、モデル構築部、展開投象部、グループ化部を備える装置として機能させる。
【0013】
図1に示すように、制御部は、上記各機能部の制御を行う。すなわち、制御部は、入力部から入力された指示や情報を対応する機能部に与え、当該機能部に所定の処理を行わせる。また、制御部は、各機能部からその機能部における処理結果を受け取り、情報を表示部に表示させたり、印刷部に印刷を行わせたりする。
【0014】
モデル記憶部には、フレームに複数の発砲体(発砲スチロール)を適宜配設したクレイモデルの基本骨格を3次元データで表したマスタモデルが記憶されている。図2(A)は、フレームの一例を示す図であり、図2(B)は、フレームに複数の発砲体を配設したマスタモデルの一例を示す図である。モデル記憶部には、例えば、大型用、中型用、小型用のマスタモデル(フレームも含む)を記憶させることが好ましい。これにより、クレイモデルの設計作業を効率的に行うことができる。
【0015】
外形パラメータ作成部は、マスタモデルから、例えば、フレームの寸法、発砲体の切断位置、寸法、形状、取り付け角度、厚さ等の外形パラメータ項目を作成する。例えば、ユーザーにより入力部から大型用のマスタモデルが選択されると、外形パラメータ作成部は、大型用のフレームの寸法、発砲体の断面(切断位置)、寸法、形状、取り付け角度、厚さ等のパラメータ項目が作成される。
【0016】
入力部によって上記パラメータ項目の値が変更されると、モデル構築部は、変更前のマスタモデルの外形パラメータの再計算を開始する。そして、その計算結果に基づいて、マスタモデルの外形形状を変更し、モデルを再構築する。例えば、発砲体(データ)の断面を変更した場合、変更後の発砲体断面の値に基づいて、変更前のマスタモデルのパラメータ(フレームの寸法、発砲体の断面(切断位置)、寸法、形状、取り付け角度、厚さ等)が再計算される。すなわち、変更前のマスタモデルのパラメータの1つが変更されると、それに追従してその他のパラメータが再計算され、マスタモデルの外形形状が変更される。このような再計算は、後述する市販CADソフト(例えば、CATIA)の履歴活用機能(フィーチャー機能)を用いることにより、行われる。
【0017】
展開投象部は、マスタモデルの外形形状の変更に連動して、再構築したモデルに配設されている発砲体データを展開して、出図用に投象した図形を作成する。また、グループ化部は、モデル構築部により変更されたマスタモデルの発砲体データの厚さデータを読み出し、同じ厚さの発砲体データをグループ化する。そして、展開投象部はグループ化部と連動して、グループ化した発砲体データ毎に投象した図形を作成する。これにより、ユーザーが発砲体データを一部位毎に投象させる作業を行う必要が無くなり、効率的に出図作業を行うことが可能となる。図3は、再構築したモデルに配設された発砲体データを展開し、出図用に投象した図形の一例を示す図である。図3には、例えば、100、200、300mmの厚さ毎にグループ化した発砲体データを展開、投象した図形を示している。
【0018】
なお、マクロプログラムを作成し、出図用に投象する際に、発砲体の部位の向きを変更し、出図後の用紙の歩留まりが良くなるように配置させたり、用紙サイズを造形したり、発砲体の部位名、接着方向等の記入を自動で行えるようにしてもよい。
【0019】
このような外形パラメータ作成部、モデル構築部、展開投象部及びグループ化部は、三次元CAD(市販CADソフト:例えばCATIA)を用いて構成することができる。
【0020】
図4は、図1に示す設計支援システムの動作の一例を示すフローチャートである。なお、本実施形態に係る設計支援システムでは、三次元CAD(市販CADソフト:例えばCATIA)を用いて動作させるものとする。
【0021】
ステップS10では、ユーザーにより、コンピュータの入力部を操作して、マスタモデルの作成指示が入力されると、その指示が制御部を介してモデル記憶部に与えられ、モデル記憶部は、クレイモデルの基本骨格となるマスタモデルを制御部及び表示部を通じて、ユーザーに提供する。具体的には、市販CADソフト(例えば、CATIA)のパワーコピー機能(格納されたデータを容易に呼び出せる機能)を使用して、例えば、大型用、中型用、小型用のマスタモデルをユーザーが選択して、モデルを作成する。
【0022】
ステップS12では、外形パラメータ作成部により、基本骨格となるマスタモデルから、例えば、フレームの寸法、発砲体の切断位置、寸法、形状、取り付け角度、厚さ等の外形パラメータ項目が作成され、表示部を通じて表示される。
【0023】
ステップS14では、ユーザーは、入力部により、上記パラメータの値を入力(変更)する。図5は、表示部に表示されたフレームの図形の一例を示す図である。例えば、フレームの寸法を変更する場合には、表示部に図5に示すようなフレームが表示され、フレームには寸法構成点Aが複数表示される。ユーザーは寸法構成点Aを指定することにより、その数値を変更することができる。また、例えば、発砲体の切断位置、を変更する場合には、表示部に図2(B)に示すようなマスタモデルが表示され、配設された複数の発砲体のうち変更する発砲体の部位を指定することにより、その切断位置を変更することができる。ここで、発砲体断面等の作成順番がわかるように、形状要素の作成情報が収納された要素グループにメッセージを付けて、表示部に表示させてもよい。
【0024】
ステップS16では、変更されたパラメータの値に基づいて、マスタモデルのパラメータ(フレームの寸法、発砲体の切断位置、寸法、形状、取り付け角度、厚さ)を再計算する。そして、再計算した値に基づいて、モデル構築部により、マスタモデルの外形形状を変更し、再構築する。そして、再構築したモデルを表示部に表示する。具体的には、市販CADソフト(例えば、CATIA)の履歴活用機能(フィーチャー機能)を使用して、マスタモデルのパラメータのうち、発砲体の切断位置を変更すれば、他のパラメータも全て追従して変更(再計算)される。履歴活用機能(フィーチャー機能)とは、モデル作成の作業手順、モデルの各パラメータを履歴として蓄積し、その手順やパラメータを変更することで、変更後のモデルを作成することができる機能である。
【0025】
このように、ユーザーは、例えば、発砲体の切断位置を変更するだけで、モデルを作成することができるため、パラメータの変更に伴う寸法の再測定などを行う必要はない。その結果、作業の効率化を図ることができる。
【0026】
ステップS18では、展開投象部により、マスタモデルの外形形状の変更に連動して、再構築したモデルの発砲体データを平面展開し、出図用平面に投象した図形を表示部に表示する。具体的には、市販CADソフト(例えば、CATIA)の履歴活用機能(フィーチャー機能)を使用して、マスタモデルの外形形状の変更に連動して(すなわち、パラメータ変更と連動して)、変更後の発砲体データを平面展開し、出図用平面に投象させる。
【0027】
展開投象の際に、グループ化部により、変更後のマスタモデルの発砲体データのうち、同一の厚さを有する発砲体データ毎にグループ化(例えば、100mm、200mm、300mm毎の厚さにグループ化)させ、展開投象部により、そのグループ毎に投象させた図形を表示部に表示させてもよい。
【0028】
発砲体データの部位の向きを変更し、出図後の用紙の歩留まりが良くなるように配置させたり、発砲体データの部位名、接着方向等の記入も行えるマクロプログラムを表示部に表示させ、そのマクロプログラムを起動させてもよい。
【0029】
ステップS20では、発砲体データを展開、投象した図形を、印刷部により印刷出力する。
【0030】
以上のように、フレームに複数の発砲体を配設したクレイモデルの基本骨格を3次元データで表したマスタモデルを記憶する記憶手段と、マスタモデルの外形形状を変更するための外形パラメータを作成する外形パラメータ作成手段と、外形パラメータを変更入力する入力手段と、入力手段により入力された外形パラメータに基づいて、マスタモデルの外形形状を変更し、再構築するモデル構築手段と、マスタモデルの外形形状の変更に連動して、再構築されたモデルに配設されている各発砲体データを展開し、出図用に投象した図形を作成する展開投象手段と、を備える車両のクレイモデルを設計支援する設計支援システムを用いることにより、フレームに発砲体を適宜配設したクレイモデルの基本骨格の設計から、発砲体の出図作業までを効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る車両のクレイモデルを設計支援する設計支援システムを実現するコンピュータの構成例を示す図である。
【図2】(A)は、フレームの一例を示す図であり、(B)は、フレームに複数の発砲体を配設したマスタモデルの一例を示す図である。
【図3】再構築したモデルに配設された発砲体データを展開し、出図用に投象した図形の一例を示す図である。
【図4】図1に示す設計支援システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】表示部に表示されたフレームの図形の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のクレイモデルを設計支援する設計支援システムであって、
フレームに複数の発砲体を配設したクレイモデルの基本骨格を3次元データで表したマスタモデルを記憶するモデル記憶手段と、
前記マスタモデルの外形形状を変更するための外形パラメータを作成する外形パラメータ作成手段と、
前記外形パラメータを変更入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された外形パラメータに基づいて、前記マスタモデルの外形形状を変更し、再構築するモデル構築手段と、
前記マスタモデルの外形形状の変更に連動して、再構築されたモデルに配設されている各発砲体データを展開し、出図用に投象した図形を作成する展開投象手段と、を備えることを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の設計支援システムであって、前記再構築されたモデルに配設されている各発砲体データの厚さデータを読み出し、同じ厚さの発砲体データをグループ化するグループ化手段を備え、
前記展開投象手段は、前記グループ化した発砲体データ毎に出図用に投象した図形を作成することを特徴とする設計支援システム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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