説明

診断および毒物学用のシンテニーゲノムアレイの調製および使用のためのアレイ、方法およびキット

本発明は、生検または体液試料または癌細胞培養のような細胞集団において遺伝子異常を検出するため、異なる種のシンテニー染色体鎖を比較するため、これによって、アレイをベースとするゲノムハイブリダイゼーションの実行を最適化するための、アレイ、アレイをベースとする方法、装置およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、分子生物学、遺伝子診断およびアレイ、または「チップ」もしくは「バイオチップ」技術に関する。特に、本発明は、細胞、生物または細胞集団における、例えば、癌細胞もしくは胚性細胞における染色体異常を測定するための、および複数の生物において相同である染色体シンテニー鎖に影響を及ぼす欠失に関する複数の異なる生物種の染色体異常を比較するための方法を提供する。本発明は、方法、該方法によって作製されるアレイ、および診断、予後診断(prognosis)および毒物学用の核酸の分析のためのキットを提供する。
【0002】
(背景技術)
ゲノムDNAアレイをベースとするチップは、試料を個々の中期染色体とハイブリダイズさせることに頼る伝統的な全染色体分析法の多くの制限を解決する可能性をもっている。固定化ゲノムDNAが広げた中期である中期ハイブリダイゼーションと異なって、アレイをベースとするハイブリダイゼーションは、バイオチップまたはアレイプラットフォーム上にアレイとして配置された固定化核酸を使用する。該アレイハイブリダイゼーション法は、単一の、タイムリーな、対費用効果の高い、高感度の方法でゲノム全体にわたるDNA配列コピー数情報をもたらすことができ、その分析は、主に、アレイ内のDNAエレメントの数、大きさおよびマップ位置に依存する。典型的には、該アレイの作製には、各々が平均約150キロベース(kb)のクローン化ゲノムDNAを収容することができる細菌性人工染色体またはBACが使用される。
【0003】
アレイゲノムプロファイリングは遺伝子試験の革命的進歩を示すが、該技術のある面が実施を制限し続けている。多くの場合、担体への核酸プローブの適用および固定化はスポットの表面の全域でゲノム核酸の不均一な沈着を生じ、顕微鏡のような拡大下で見た場合に均質ではない試料を生じる。また、担体の領域と非特異的結合した核酸試験試料および参照試料の稀ではあるが厄介な不完全除去が分析の複雑さを引き起こし得る。
【0004】
(発明の実施態様の概要)
毒物学および環境分析における課題は、実験動物を用いて得られた結果を、ヒトにおいて観察されるかもしれないものまたはヒトに影響を及ぼすものまたはヒトに影響を及ぼすかもしれないものと比較することである。
【0005】
本発明の特徴的な実施態様は、一のアレイ中に複数の固定化エレメントを有する核酸アレイであって、該エレメントが担体上のアドレス可能な位置にあり、該エレメントが担体上に沈着した核酸の「スポット」またはパッチである、核酸アレイである。特徴的な本発明のアレイについて、複数のエレメントは複数の生物の各々からの染色体シンテニー鎖からの核酸配列を含んでおり、エレメントの第1セットおよび該エレメントにおける核酸配列の第2セットは、該第1セットおよび該第2セットが異なる生物種からのものであるように選択され、生物の第1種のシンテニー染色体からのエレメントは、生物の第2種のシンテニー染色体からの核酸配列と相同である核酸配列を有する。
【0006】
本明細書において用いられるアレイなる用語は、表面上に、複数の、この場合、非常に多数の、例えば、少なくとも10個、または少なくとも100個、または少なくとも200個、または少なくとも1,000個のエレメントを含む。該エレメントは一般的に非同一であるが、統計的有意性のために二重または三重のスポットが用いられる。各非同一エレメントは、そのエレメントについてのマーカーであり、それを同一表面上の他の非同一エレメントと区別する核酸配列を有する核酸を含有する。アレイなる用語は、また、各スポットが「アドレス可能」であるような、すなわち、既知の位置および既知の核酸配列内容物を有するような、規則正しい配列を含む。
【0007】
キャリブレーションスポットは、2002年3月27日に出願された米国特許出願番号第10/112,657号に記載されているように、本明細書における各アレイの実施態様に含まれる。一の実施態様において、キャリブレーションスポットは、アレイの他のエレメントの非同一配列の全てまたは実質的に全てを有する試料を含む。もう1つの実施態様において、種々の濃度または希釈のキャリブレーションスポットが各アレイに含まれる。さらにもう1つの実施態様において、キャリブレーションスポットは、予備標識することができるかまたは予備標識しない既知の量のキャリブレーション分子を含む。例えば、該キャリブレーション分子は、ヒトおよびマウスDNAの核酸エレメントを有するシンテニーアレイについてキャリブレーションスポットとして使用されるエシェリキア・コリ(Escherichia coli)DNAまたはアフリカツメガエル(Xenopus laevis)DNAのような、アレイの残りのエレメントにおける目的の種以外の種から得ることができる;他の実施態様において、キャリブレーション分子は、自然発生のまたは非天然の核酸配列を有するシンテニー核酸であり得る。
【0008】
一般に、本明細書の実施態様のシンテニーアレイのエレメントは、クローン化ゲノムDNAである核酸を有する。例えば、クローン化ゲノムDNAは、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、哺乳動物人工染色体(MAC)、およびP1ファージ人工染色体(PAC)からなるベクターの群から選択されるベクター上に保有される。
【0009】
また、一般に、生物種の少なくとも1つは哺乳動物である。しかしながら、作物または淡水魚の種のような2つの異なる生物を比較するもののような「シンテニーアレイ」の他の実施態様は本発明の範囲内と想定される。種々の実施態様において、生物の少なくとも1つは哺乳動物であり、例えば、該生物の少なくとも1つはヒトである。また、少なくとも1つの生物は、齧歯類、非ヒト霊長類、海洋哺乳動物、淡水哺乳動物、ウサギ目の動物、ブタ、ウシ、肉食動物、ヤギ、ウマ、両生類、魚および昆虫からなる群から選択される。より詳しくは、少なくとも1つの生物は、ゴリラ、チンパンジー、サル、イヌ、ハムスター、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、カエル、ヒキガエル、ゼブラフィッシュおよびハエからなる群から選択される。典型的なアレイにおいて、生物種はヒトおよびマウスである。ヒト−マウスアレイについて、例えば実験マウスまたはマウス細胞の遺伝毒性に対する効果をヒト細胞(例えば培養における)に対する遺伝毒性に対する効果と比較することができる。さらにもう1つの典型的なアレイにおいて、生物種はヒトおよび野生動物である。
【0010】
非ヒト生物のいずれかは、関連する実施態様において、トランスジェニックである。すなわち、特定の表現型を修正することができる特定の新規活性を得るために組成物をスクリーニングするために使用されるトランスジェニックマウスは、本明細書においてシンテニーアレイ(「チップ」)とのハイブリダイゼーションのために、DNAの供給源として使用される。このような方法で、生物または細胞のいずれものスクリーンは、また、遺伝毒性について分析されて、特に、染色体異常を引き起こさない化合物を同定することができる。さらに、本明細書における動物は、本明細書において用いられる場合に誘発されるかまたは遺伝的に存在し、ヒトまたは非ヒト動物の疾患のものと類似の症状および表現型を有し、該疾患を治療することができる作用因子の分析に有用である動物の疾患を意味する「モデル」疾患を有することができる。
【0011】
第1種の核酸のエレメントの少なくとも1つは、第2種の核酸のエレメントの少なくとも1つと少なくとも50%相同である。また、第1種の核酸のエレメントの少なくとも1つは、第2種の核酸のエレメントの少なくとも1つと少なくとも70%相同であるか、または、第2種の核酸のエレメントの少なくとも1つと約80%、約85%、約90%、約95%または約99%相同である。
【0012】
アレイエレメントは、少なくとも1つの種の少なくとも1つの染色体を表示する核酸配列を含む。関連する実施態様において、アレイエレメントは、少なくとも1つの種のゲノムを表示する核酸配列を含む。少なくとも1つの染色体を表示するとは、核酸試料とアレイとのハイブリダイゼーションから得られるデータが染色体のp末端からq末端までプロットされ得るような染色体に沿って異なる位置からの配列を含有する少なくとも3つ、4つ、5つまたはそれ以上のエレメントがアレイに存在することを意味する。同様に、少なくとも1つのゲノムを表示するとは、ゲノム内の染色体の全てが表示されること、例えば、ヒトアレイにおいては、22常染色体全ておよびX染色体およびY染色体の各々に沿って異なる位置からの配列を含有するエレメントが該アレイ中に存在することを意味する。関連する実施態様において、該アレイの該エレメントは、少なくとも2つの種のゲノムを表示する核酸配列を含む。
【0013】
上記シンテニーアレイまたは以下の方法の全てについて、さらなる実施態様は、アレイをマルチアレイ表面として提供することを含む。マルチアレイ表面は、単一担体上に上記アレイのいずれかを複数有する。複数のアレイの各々は、他の非連続的であるパターンで表面上にプリントされ、その結果、複数のハイブリダイゼーションを同一担体上で行うことができる。例えば、2つのアレイは、スライドガラスの各端に1つずつプリントすることかでき、3つは、各端に1つのアレイおよび中央に1つ線状配列でプリントすることができる。複数のアレイ内の個々のアレイは、また、Teflonストリップのような疎水性ストリップによって隔てることができる;別法として、または加えて、スライドのような表面のバリヤー(「障壁」)または盛り上がった部分を、アレイをプリントする前に存在するように特注設計することができるか、または後で加えることができる。本明細書におけるアレイのさらなる実施態様において、ハイブリダイゼーションバッファーにデキストランまたはポリエチレングリコールのような増粘性溶質(viscosity-enhancing solute)を加えて、実行される複数のハイブリダイゼーションの分離を増強することができる。最後に、マルチアレイ表面内の各アレイ上の各ハイブリダイゼーション混合物にカバースリップのようなカバーを別々に適用することができる。
【0014】
本発明のもう1つの特徴的な実施態様は、生物種の細胞に対する組成物の遺伝毒性を測定する方法であって、第1種の試験細胞または細胞集団を該組成物と接触させること;接触した試験細胞または集団から核酸の試料を得ること;および核酸を担体上のアドレス可能な位置に固定したシンテニー核酸のアレイとハイブリダイズさせることによって試料核酸のゲノムを異常について分析すること(ここで、シンテニーアレイは、第1種のゲノムからの核酸の配列のエレメントを有し、少なくとも生物の第2種のゲノムからのシンテニー核酸の配列のエレメントを有する)を含む方法である。
【0015】
一般に、第2種はヒトである。また、試験細胞を組成物と接触させることとは、いくつかの実施態様において、培養中の第1種の細胞または集団に組成物を加えることである。細胞培養物の使用は、例えば、ヒト細胞に対する種々の作用因子の作用を測定することを可能にする。
【0016】
別の実施態様において、試験細胞または集団を接触させることとは、インビボで第1種の細胞を処置すること、すなわち、無傷生物、一般的には多細胞生物を処置することである。かくして、インビボで細胞を処理することとは、経口投与、局所投与、経皮投与および注射からなる群から選択される経路によって組成物を投与することである。注射は、静脈内、皮下、腹腔内、およびいずれもの他の標準的な経路であり得る。処置はまた、種に依存して、直腸投与、膣内投与、クモ膜下腔内投与によるものであり得る。
【0017】
当該方法の実施態様において、第1種は、自然環境中の組成物に暴露される対象体である。該対象体は、野生動物または植物のような「野生」生物であり得るか、または該対象体は、遺伝毒性作用因子の存在について測定するために野生の状態に置かれた研究室にて用いられるような実験動物であり得る。異なる実施態様において、対象体は、遺伝毒性であることがこれまで知られていなかった作用因子に不注意にまたは意図的に暴露されたヒトまたは動物患者であり得る。
【0018】
したがって、当該方法において、試験種である第1種は、ゴリラ、チンパンジー、サル、イヌ、ハムスター、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、カエル、ヒキガエル、魚および昆虫からなる群から選択される。第1種の例は、非ヒトトランスジェニック実験動物である。第1種のもう1つの例は、モデル疾患を有する動物、例えば、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)を有するマウス、または非肥満糖尿病マウス(NOD)、または糖尿病を誘発させるべくストレプトゾトシンで処置したマウスである。しかしながら、当該方法は、種々の異なる環境に従って実施することができるので、第1種は、ヒト細胞またはヒト対象体であり得る。
【0019】
当該方法に従って接触した生物のゲノムを分析することとは、試験細胞からの核酸のハイブリダイゼーションを参照細胞または細胞集団からの核酸のハイブリダイゼーションと比較することを含む。参照細胞は、第1種からのものである;別法としては、参照細胞は、第2種からのもの、または第3種からのものである。いくつかの実施態様において、参照細胞または細胞集団は、組成物を投与されておらず、それ以外は試験細胞と同一である。一般に、本明細書における当該方法の実施態様のいずれかにおいて、担体上のアレイ中に固定したエレメントの核酸はクローン化DNAである。
【0020】
当該方法は、一般に、ハイブリダイゼーション前に、試験細胞核酸および参照細胞の各々を第1検出可能標識および第2検出可能標識で別々に標識することを含む。例えば、第1標識および第2標識は蛍光染料であり、該染料は異なる発光スペクトルを有する。
【0021】
当該方法は、また、標識後に、第1標識または染料で標識した試験細胞核酸および第2標識または染料で標識した参照細胞核酸の第1混合物を調製すること、および第2標識または染料で標識した試験細胞核酸および第1標識または染料で標識した参照細胞核酸の第2混合物を調製すること、および第1混合物および第2混合物の各々をシンテニーアレイの反復と別々にハイブリダイズすることを含む。
【0022】
当該方法は、また、第1混合物および第2混合物の各々について各エレメントと第1標識または染料および第2標識または染料のハイブリダイゼーションの程度の比率を正規化することによって試験細胞のゲノムを比較することを含む。当該方法は、また、得られた比率のセットをp末端からq末端まで染色体に沿った距離としての核酸の各々の位置の関数としてプロットすることを含む。ゲノムを比較することは、また、染色体異常を有する試験生物の染色体を同定することである。該染色体異常は、欠失または増幅のようなコピー数の増加または減少を含み、また、染色体に沿った位置でこれまで特徴付けられていなかった核酸配列の存在を含む転座、逆位および挿入も含む。
【0023】
当該方法は、また、試験生物の固定化エレメントのアレイに関して試験試料における異常の染色体に沿った染色体位置を同定することを含む。当該方法は、また、第1種が非ヒトであり、シンテニーアレイがヒトゲノムのエレメントを含む場合、ヒトゲノムにおける異常の相同染色体および染色体位置を決定することを含む。これに関連して、「相同染色体」なる用語は、別の種の染色体と実質的な核酸相同性を有する一の種の染色体を意味する。異なる生物における配列相同性を記載するためにしばしば用いられるもう1つの用語は「オルソロガス」である。
【0024】
当該方法は、また、化学組成物の遺伝毒性の程度の指標として試験試料核酸における染色体異常の量を参照試料核酸における染色体異常と比較するによって使用することができる。また、試験種および別の生物種(例えば、ヒト)における異常の染色体位置の比較を行うことができる。
【0025】
当該方法は、以下に例示するがこれらに限定されるものではない組成物の遺伝毒性を分析するために使用される:有害業種化合物、化学兵器、風媒性の塵、光化学スモッグ、天然産物、化粧品、食品添加物、農作物、工業化合物、新規化学物質、リード化合物、医薬品、汚水、および環境試料、ならびにこれらの作用因子またはこれらの作用因子のいずれかの成分のいずれかの抽出物または調製物。
【0026】
本発明のもう1つの特徴的な実施態様は、自然環境下での生物種の細胞について遺伝毒性因子の存在を同定する方法であって、該環境下で生物の第1種の試験細胞または細胞集団を得ること;試験細胞または集団から核酸の試料を得ること;および該核酸を担体上のアドレス可能な位置に固定したシンテニー核酸のアレイとハイブリダイズさせることによって試料核酸のゲノムを異常について分析すること(ここで、シンテニーアレイは、第1種のゲノムからの核酸の配列のエレメントを有しており、少なくとも生物の第2種のゲノムからのシンテニー核酸の配列のエレメントを有する)を含む方法である。第1種は、野生生物、すなわち、自然環境下にライフサイクルを有するものであっても、該環境下に置かれていた実験室株であってもよい。別法として、第1種は、例えば職業環境下の物理的力または化学組成物であってもよい職業上の危険にさらされたヒトのような不注意に作用因子に暴露されたヒトであり得る。
【0027】
本明細書で提供される本発明の実施態様にはまた、複数の生物種のゲノムからのヌクレオチド配列をもつ固定化核酸エレメントを有するシンテニーアレイおよび容器を含む、上記のいずれかに従った方法を使用するためのキットがある。該キットは、また、試薬のいずれか、例えば、複数の検出可能な標識、および/または核酸の増幅のためのポリメラーゼ、または該アレイとのハイブリダイゼーションから得られるデータを得るためおよび/または分析するためのコンピュータープログラム、ならびに使用説明書を含むことができる。
【0028】
本明細書で提供されるさらにもう1つの特徴的な実施態様は、疾患の進行の間に対象体の細胞における染色体異常の存在および位置を同定する方法であって、該疾患に罹患している細胞から核酸試料を得ること;該試料を、第1種のゲノムからの核酸を有する第1シンテニー核酸アレイのエレメントとハイブリダイズさせること;さらに、該試料を、第2種のゲノムからの核酸を有する第2シンテニー核酸アレイのエレメントとハイブリダイズさせること(ここで、第1アレイおよび第2アレイのエレメントは担体上に固定されている)を含む方法である。したがって、当該方法は、疾患の進行の異なるステージを表す時点で対象体からの細胞のさらなる核酸試料を得ることを含む。疾患の進行は、複数の異なる時点、すなわち、少なくとも2つの異なる時点からの試料における染色体異常を比較することによって決定することができる。
【0029】
本明細書における当該方法によって疾患の進行を研究することについて、第1種または第2種はヒトである;この実施態様において、または別の実施態様において、該疾患は、ヒト疾患の動物モデルである。すなわち、該動物モデルは、実験動物の株であるか、またはヒト疾患の研究のために有用な疾患症状を生じるように処置された実験動物である。肺癌、中皮腫、腺癌および前立腺癌のような疾患は、ヒト疾患の研究への実験的な取り組みの技術分野における当業者によく知られている「動物モデル」を有する。
【0030】
典型的には、該疾患は癌であり、例えば、該疾患は、固形腫瘍、血液増殖症状である。該疾患は、皮膚、肺、乳房、頭頸部、前立腺、卵巣、脳、白血病、胃(gastric)、胃(stomach)、食道、膵臓、およびリンパ腫の癌の群から選択される。該疾患は、ステージIの癌である;別法としては、該癌は、ステージII、ステージIIIおよびステージIVの癌から選択される。したがって、ある種の実施態様において、該癌は転移性である。
【0031】
また、本明細書において、担体上に固定化した一のクラスの生物学的巨大分子の複数のエレメントのアレイを調製する方法であって、該アレイの各エレメントは該巨大分子の均一な分布を有しており、該巨大分子の均一な分布が該エレメントの表面全体にわたって得られるような有効なイオン強度のバッファーを含む組成物中の巨大分子と担体を接触させることを含む方法も提供される。該生物学的巨大分子のクラスは、核酸、タンパク質、脂質および炭水化物からなる群から選択される。例えば、核酸はDNAであり、例えば、該核酸はゲノムDNAクローンである。関連する実施態様において、該クローンは、ゲノムの人工的染色体ライブラリーを含む。人工的染色体は、酵母人工的染色体(YAC)、細菌人工的染色体(BAC)、哺乳動物人工的染色体(MAC)およびP1ファージ人工的染色体(PAC)から選択される。好ましい実施態様において、人工的染色体はBACである。
【0032】
したがって、接触工程のためのバッファーのイオン強度は少なくとも100mMであり、例えば、該イオン強度は少なくとも150mMである。また、該イオン強度は1.0M未満であり、例えば、該イオン強度は500mM未満である。ある種の実施態様におけるバッファーは有機イオンを含んでおり、例えば、該バッファーはTRIS N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(TRIS);4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES);3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS);または4−モルホリンエタンスルホン酸(MES)である。好ましい実施態様において、バッファーはTRISである。別法としては、該バッファーは無機イオンを含み、例えば、該バッファーはリン酸イオンを含む。一般に、該バッファーは、また、EDTAを含む。該バッファーは、少なくとも約7のpHを有しており、このpHは約9よりも低い。当該方法は、また、担体上のエレメントのアレイを乾燥させることを含む。本明細書における当該方法またはアレイのいずれかについて、担体は、ガラス、紙、セラミックス、石英、金属、プラスチック、ナイロン、テフロン、シリコーン、およびセルロースアセテートからなる群から選択される。典型的には、担体は、スライドガラスである。
【0033】
本明細書における当該方法のいずれかの実施態様は、また、該アレイをマルチアレイ表面として提供すること、および上記したように同一表面上で一緒にハイブリダイゼーションの各々を行うことを含む。本明細書における当該方法の実施態様は、また、本明細書に記載するようなキャリブレーションスポットのいずれかを使用することを含む。
【0034】
本明細書で提供される本発明のもう1つの実施態様は、容器、および本明細書における方法のいずれかに従った方法によって調製されたアレイを含む、ゲノム異常を分析するためのキットである。例えば、該キットは、また、アレイと核酸の試料とのハイブリダイゼーションのためのバッファーを含む。アドレス可能な位置を有するエレメントのアレイにおいて担体上に生物学的物質の複数の試料を沈着させる方法において、各エレメントの全体にわたって該物質の均一な分布を生じさせるのに十分なイオン強度を有するバッファー中にて該試料を沈着させることを含む改良が行われる。該生物学的物質は典型的にはDNAであるが、該改良はタンパク質のような他の生物学的物質に適用可能である。特に、本明細書におけるアレイについて、該アレイは、複数の生物種からの細胞からの複数の染色体のゲノム配列のエレメントを含み、該配列はシンテニーである。
【0035】
本明細書におけるいずれものキットの実施態様は、また、マルチアレイ表面を有するアレイを有するキットを提供することを含む。本明細書における該キットの実施態様は、また、本明細書に記載するようなキャリブレーションスポットのいずれかと一緒にエレメントを有するアレイを含む。
【0036】
(特定の実施態様の詳細な説明)
アレイハイブリダイゼーションにおいて、試験試料および参照試料(例えば、染色体異常を有しないことが知られている細胞からの試料)の各々の細胞から得られたゲノムDNAの有効量を各々蛍光染料のような検出可能な標識で標識し、次いで、各々をBACのコレクションの各々から得られる核酸のアレイとハイブリダイズさせる。アレイの連続した複製に対してハイブリダイゼーションを繰り返し行うことができる。該アレイは、ヒトのような選択された生物のゲノム全体を実質的にひとまとめにしてカバーするクローン化ゲノムDNAフラグメントを含有する。結果として生じるハイブリダイゼーションは蛍光標識アレイを生じ、そのパターンは、試料中の配列、すなわち、試験ゲノムDNAおよび参照ゲノムDNAとアレイ化BAC中の相同配列とのハイブリダイゼーションを反映する。各試験試料について、試験および参照ゲノムDNA試料の各々における全ての相同配列の、転座のような起こりうる欠失および挿入を含むコピー数は、例えばアレイ中の既知のスポットに位置する個々のBACでの蛍光シグナルとして、ハイブリダイゼーションのパターン、量および位置の両方に直接影響を及ぼすだろう。アプローチの多用途性は、羊水試料、絨毛膜絨毛(CVS)、血液試料および組織生検のような臨床的細胞遺伝子試料におけるDNAコピー数の構造上のバリエーションおよび例えば循環血液細胞または固体腫瘍におけるもののような癌の進行の間に生じるような体細胞的獲得変化の両方の検出を許容する。
【0037】
本発明は、参照または正常試料におけるものと比べた、細胞、組織または細胞培養集団のような試料中の遺伝的変化を測定するためのアレイをベースとする方法、アレイおよびキットを提供する。本発明の方法およびアレイは、これまでに入手可能であったものよりも小さい遺伝的変化を検出する能力、およびクローン的に異なる細胞亜集団を検出する能力がある高レベルの感度をもたらす。本発明の方法およびアレイは、バックグラウンド細胞集団内の(核型基準によって)クローン的に異なる細胞集団を検出するのに十分に高感度である。かくして、本発明の方法およびアレイは、例えば多くの固体腫瘍ならびに異常な遺伝子構造をもつ個体からの他の腫瘍形成的に変化した細胞および試料において見られる遺伝子モザイク現象の複雑なレベルの正確な測定および分析のために特に適している。
【0038】
一の実施態様において、本発明は、遺伝子モザイク現象を検出するための方法およびアレイを提供する。全ゲノムDNAを、既知または未知の遺伝子構成、例えばモザイク現象のレベルを有する細胞集団、例えば、癌細胞集団から単離する。「GTG結合技術」とも称される慣用的なGバンド核型分析(例えば、Wakui 1999 J. Hum. Genet. 44:85-90を参照);蛍光インサイツハイブリダイゼーション(「FISH」、例えば、Zhao (2000) Cancer Genet. Cytogenet. 118:108-111を参照);または分光核型分析(「SKY」、例えば、Veldman (1997) Nat. Genet. 15:406-410を参照)またはそれらの組み合わせ(例えば、Zhao (2001) Cancer Genet. Cytogenet. 127:143-147を参照)によって、予め定められたレベルの遺伝子モザイク現象を得ることができる。本明細書に記載するように、この細胞集団からの全ゲノムDNAのアレイをベースとするゲノムプロファイリングが得られ、該集団全体における異なる核型を有するクローン亜集団の数およびそれらの個々のパーセンテージが測定される。アレイをベースとするプロファイルからのデータを試験ゲノムの各染色体での位置関数として分析し、各々が少なくとも第1染料および第2染料の各々で標識した試料核酸および参照核酸の両方のハイブリダイゼーションの反復によるデータを比較して、遺伝子異常の正確な染色体部位を決定する。
【0039】
もう1つの実施態様において、既知の遺伝子異常または疑わしい遺伝子異常を有する同種の細胞集団から予め単離された全ゲノムDNAを、「正常な」核型または参照核型を有する細胞、例えば、既知の染色体異常を有しない細胞から単離したゲノムDNAと比較試験する。例えば、全ゲノムDNAについてのアレイゲノムプロファイルは、Xqの欠失および16qの同時トリソミーを有する女性流産児について確立されている。正常な46,XXゲノムDNAを有する試験ゲノムDNAの有効量を参照試料として使用する。本明細書で検出可能な遺伝子異常は、従前の方法によっては分からないもの、すなわち、広げた無傷の染色体中期との慣用的なハイブリダイゼーションによって検出できないものを包含する。
【0040】
本発明の方法を使用して試料中のゲノムの異常部位、すなわち、遺伝子異常を測定するためのゲノムアレイを有する方法、装置およびキットを提供することによって、細胞集団の各染色体におけるこのような遺伝子異常の部位を正確にかつ効率的に測定することができる。
【0041】
定義
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解される意味を有する。本明細書で使用する場合、以下の用語は他に特記しない限りそれらに帰する意味を有する。
【0042】
本明細書で使用される「アレイ」または「アレイ」または「DNAアレイ」または「核酸アレイ」または「チップ」または「バイオチップ」なる用語は、本明細書においてさらに詳細に説明するように、定義された位置、すなわち、アドレス可能な既知の位置で担体表面上に固定した、各々が所定量の1つまたはそれ以上の生物学的分子種、例えば、核酸調製物を含む複数の整列されたエレメントである。ある種の実施態様において、生物学的分子のアレイは、タンパク質(ペプチドおよびポリペプチドを含む)、炭水化物または脂質のアレイであり得る。
【0043】
本明細書で使用する「アリール−置換4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インデセン染色体」なる用語は、全ての「ボロンジピロメテンジフルオライドフルオロフォア」または「BODIPY」染料および「ジピロメテンボロンジフルオライド染料」(例えば、米国特許第4,774,339号を参照)または等価物を含み、ハイブリダイゼーション反応において使用する場合、核酸の検出のために該核酸を標識するために一般的に用いられる一群の蛍光染料である;例えば、Chen (2000) J. Org Chem. 65:2900-2906: Chen (2000) J. Biochem. Biophys. Methods 42:137-151を参照。また、米国特許第6,060,324号、第5,994,063号、第5,614,386号、第5,248,782号、第5,227,487号、第5,187,288号も参照。
【0044】
「シアニン5」または「Cy5TM」および「シアニン3」または「Cy3TM」なる用語は、本明細書に詳細に説明するように、Amersham Pharmacia Biotech(ニュージャージー州ピスカタウェイ;Amersham Life Sciences、イリノイ州アーリントン・ハイツ)によって製造される蛍光シアニン染料、または等価物をいう。米国特許第6,027,709号、第5,714,386号、第5,268,486号、第5,151,507号、第5,047,519号を参照。これらの染料は、典型的には、Cy5TMまたはCy3TMと結合した5−アミノ−プロパルギル−2'−デオキシ−シチジン5'−トリホスフェートの形態で核酸に取り込まれる。
【0045】
本明細書で使用する「蛍光染料」および「蛍光標識」なる用語は、ローダミン染料(例えば、テトラメチルローダミン、ジベンゾローダミン、例えば、米国特許第6,051,719号を参照);蛍光染料;「BODIPY」染料および等価物(例えば、ジピロメテンボロンジフルオライド染料、例えば、米国特許第5,274,113号を参照);1−[イソインドリル]メチレン−イソインドールの誘導体(例えば、米国特許第5,433,896号を参照)および全ての等価物を含む全ての既知の蛍光物質を包含する。また、米国特許第6,028,190号、第5,188,934号も参照。
【0046】
本明細書で使用する「〜と特異的にハイブリダイズすること」、「特異的ハイブリダイゼーション」および「〜と選択的にハイブリダイズすること」なる用語は、ストリンジェントな条件下での標的試料核酸分子または標的参照分子と担体表面に固定されたプローブヌクレオチド配列との高度の相補塩基対形成の結果としての核酸塩基対形成二本鎖の形成をいう。「相同的な」なる用語は、2つの核酸配列がストリンジェントな条件下にてハイブリダイズするように塩基対形成のワトソン−クリック則によって十分に相補的であることを意味する。
【0047】
「ストリンジェントな条件」なる用語は、所定の配列の1つの核酸が、他の配列と二本鎖をより少ない程度しか形成しないかまたは全く形成しないことと比べて第2核酸配列(例えば、アレイにおける固定化核酸プローブとハイブリダイズする試料ゲノム核酸)と優先的にハイブリダイズする、すなわち、核酸二本鎖を形成する条件をいう。核酸ハイブリダイゼーション(例えば、アレイにおける場合、サザンまたはノーザン・ハイブリダイゼーション)に関連する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」および「ストリンジェントなハイブリダゼーション洗浄条件」は、配列依存性であり、種々の環境パラメータ下で異なる。一般に、よりストリンジェントな条件は、高温で、ホルムアミドのような水素結合の安定性を低下させるように作用する薬剤の存在下で見られる。本明細書で使用するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、例えば、42℃での50%ホルムアミド、5 X SSCおよび1%SDSを含むバッファー中でのハイブリダイゼーション、または65℃での5 X SSCおよび1%SDSを含むバッファー中でのハイブリダイゼーションを挙げることができ、共に、65℃での0.2 X SSCおよび0.1%SDSの洗浄を用いる。同様のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件はまた、37℃での40%ホルムアミド、1M NaClおよび1%SDSのハイブリダイゼーションバッファーおよび45℃で1 X SSCでの洗浄を包含する。別の、しかし、類似のハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を使用して類似のストリンジェンシーの条件をもたらすことができることは、当業者は容易に理解するであろう。
【0048】
当該技術分野で知られているように、可溶性の試料核酸が固定化核酸と特異的にハイブリダイズするかどうかを決定するのは洗浄条件のストリンジェンシーであるので、正確なハイブリダイゼーションフォーマットは重要ではない。洗浄条件としては、例えば、pH7および少なくとも約50℃または約55℃〜約60℃の温度で約0.02モルの塩濃度;または、72℃で約15分間の約0.15M NaClの塩濃度;または少なくとも約50℃または約55℃〜約60℃の温度で約15〜約20分間の約0.2 X SSCの塩濃度;またはハイブリダイゼーション複合体を、室温で15分間、0.1%SDSを含有する約2 X SSCの塩濃度を有する溶液で2回洗浄し、次いで、68℃で15分間0.1%SDSを含有する0.1 X SSCによって2回洗浄すること;または等価な条件を挙げることができる。洗浄のためのストリンジェントな条件はまた、例えば、42℃での0.2 X SSC/0.1%SDSであり得る。等価なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件の詳細な説明ならびに試薬およびバッファー、例えば、SSCバッファーおよび等価な試薬および条件については、Sambrook、AusubelまたはTijssen(本明細書で引用する)を参照。
【0049】
「核型」なる用語は、細胞または細胞集団のゲノムまたは染色体組成の染色体の様相を意味する。「核型」なる用語はまた、有糸分裂の間に染色体が現れる細胞の核の染色された完全な染色体セットの光学顕微鏡における外見および個体または試料の染色体組(染色体の数を含み、正常なセットまたは正倍数体セットからの逸脱であり得るいずれもの異常を含む)を意味するために用いられる。種々の実施態様において、本発明の方法は、細胞集団が核型において一致するものであろうとなかろうと、または、細胞集団が遺伝子モザイク現象によって特徴付けられるものであろうとなかろうと、細胞集団の核型における異数体変異のような正倍数体セットからの逸脱(試料中の核型亜集団の数および特定の核型を有する細胞集団のパーセントを含む)を測定するために使用することができる。
【0050】
特定の遺伝性および後天性疾患および症状は特徴的な核型を有するので、細胞または細胞集団の染色体関連異常の測定を用いて、これらの疾患および症状を診断、検出または予後診断することができる。同様に、癌または腫瘍集団における遺伝子異常のレベルは、病状または生理機能、例えば、その腫瘍形成能を示すので、癌の核型の測定は、診断、予後診断および治療プランニグに有用である。
【0051】
本明細書において使用する場合、「検出可能な組成物で標識した」または「検出可能に標識した」なる語句は、本明細書に記載するような検出可能な組成物または部分、すなわち、標識を含む核酸をいう。該標識は、核酸として、別の生物学的分子、例えば本明細書に記載するような「分子ビーコン」としてのステムループ構造の形態の核酸であり得る。標識は、例えばニックトランスレーション、ランダムプライマー伸長法、縮重プライマーを用いる増幅などによって、核酸中に取り込むことができる、比色分析的にまたは放射活性物質で標識した塩基(または、検出可能な標識と結合することができる塩基)であってよい。標識は、いずれもの手段、例えば、視覚的、分光学的、光化学的、生物発光的、化学発光的、生化学的、蛍光的、免疫化学的、物理学的または化学的手段によって、検出することができる。適当な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライドまたはフィコエリトリンが挙げられる;化学発光物質の一例はルミノールである;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンである。
【0052】
本明細書において使用する場合、「核酸」なる用語は、一本鎖態または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドをいう。該用語は、天然ヌクレオチドの既知のアナログを含有する核酸を包含する。該用語はまた、合成主鎖を有する核酸様構造も包含する。本発明によって提供されるDNA主鎖アナログとしては、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホラミデート、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3'−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3'−N−カルバメート、モルホリノカルバメート、およびペプチド核酸(PNA)が挙げられる;Oligonucleotides and Analogues, a Practical Approach, edited by F. Eckstein, IRL Press at Oxford University Press (1991);Antisense Strategies, Annals of the New York Academy of Sciences, Volume 600, Eds. Baserga and Denhardt (NYAS 1992);Milligan (1993) J. Med. Chem. 36:1923-1937;Antisense Research and Applications (1993, CRC Press)を参照。PNAは、ペプチドおよびペプチド関連主鎖、例えば、N−(2−アミノエチル)グリシン単位を含有する。ホスホロチオエート結合は、例えば、米国特許第6,031,092号;第6,001,982号;第5,684,148号に記載されている;WO 97/03211;WO 96/39154;Mata (1997) Toxicol. Appl. Pharmacol. 144:189-197も参照。該用語に包含される他の合成主鎖としては、メチルホスホネート結合またはメチルホスホネート・ホスホジエステル交互結合(例えば、米国特許第5,962,674号;Strauss-Soukup (1997) Biochemistry 36:8692-8698を参照)およびベンジルホスホネート結合(例えば、米国特許第5,532,226号;Samstag (1996) Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6:153-156を参照)が挙げられる。本明細書で使用する場合、「核酸」なる用語は、構造的には、遺伝子、DNA、RNA、cDNA、mRNAなる用語、および化学的または酵素的に得られる誘導体およびコピー(オリゴヌクレオチドプライマー、プローブおよび増幅産物なる用語を含む)を含む。
【0053】
「ゲノムDNA」または「ゲノム核酸」なる用語は、1個またはそれ以上の細胞の核から単離した核酸を意味し、全細胞DNAまたは全ゲノムDNAから得られる核酸(例えば、該DNAから、単離された核酸、増幅された核酸、クローン化された核酸、該DNAの合成バージョン)を包含する。ゲノムDNAは、真核生物種を包含するいずれもの生物源からのものであって、細菌およびラン藻類のような原核生物またはウイルスのような無細胞である微生物からのものであってもよい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「核酸を含む試料」または「核酸の試料」なる用語は、別の核酸とのハイブリダイゼーションまたはその組み合わせ(例えば、固定化プローブまたは標的とのハイブリダイゼーション)に適当な形態(例えば、可溶性水溶液として)の、DNA、RNA、または天然源から単離したDNAもしくはRNAを表示する核酸を含む試料をいう。核酸は、ゲノムまたは遺伝子の複数の単離した部分、クローン化した部分または増幅した部分として得ることができる;例えば、実質的にゲノム全体、特定の染色体の実質的に全てまたは一部、または選択された配列(例えば、特定のプロモーター、遺伝子、増幅または制限フラグメント、cDNAライブラリー等)からのゲノムDNA、mRNAまたはcDNAであってよい。核酸試料は、特定の細胞、組織または体液から抽出しても、本明細書に記載するような、細胞系を含む細胞培養液からのものまたは貯蔵した組織試料からのものであってもよい。
【0055】
本明細書で使用する場合、「コンピューター」および「プロセッサー」なる用語は、それらの最も広い一般情勢のもとに用いられ、このようなデバイス全てを取り込む。本発明の方法は、いずれものコンピューター/プロセッサーをいずれもの既知のソフトウェアまたは方法と併用して実施することができる。例えば、コンピューター/プロセッサーは、マイクロプロセッサーおよびデータ転送バスのような慣用的な素子を含む、慣用の汎用デジタル・コンピューター、例えば、パーソナル「ワークステーション」コンピューターであってよい。コンピューター/プロセッサーは、また、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー、フラッシュメモリーなど、またはオプショナル磁気ディスク記憶装置のような大容量記憶装置のようないずれもの形態の記憶素子を含むことができる。
【0056】
核酸の作成および操作
本発明の方法の実施は、核酸の単離、合成、クローン化、増幅、標識化およびハイブリダイゼーション(例えば、ハイブリダイゼーション)を含む。本明細書に記載するように、分析のための核酸およびアレイ上の固定化核酸は、染色体の所定の一部もしくは全体またはゲノム全体を含む、ゲノムDNAを表示し得る。比較ゲノムハイブリダイゼーション(ハイブリダイゼーション)反応は、例えば、米国特許第5,830,645号および第5,976,790号を参照。核酸試料は、検出可能な部分、例えば、蛍光染料で標識され、例えば、第1試料を第1染料で標識し、第2試料を第2染料で標識することができる(例えば、Cy3TMおよびCy5TM)。一の実施態様において、試験試料核酸は、少なくとも1つの検出可能な部分、例えば、例えばハイブリダイゼーションの1回目の反復において使用するための、核酸の第2試料または参照試料を標識するのに使用するものとは異なる蛍光染料で標識される。2回目の反復では、試験試料および参照試料の標識のために用いた染料を逆にし、1回目の反復から得られたデータを、標識化、発光の検出、およびランダムな非特異的結合のような効率のようないずれもの変数についての対照として、2回目の反復から得られたデータと比較する。
【0057】
特定の実施態様において、核酸は、PCRのような標準的な技術を使用して増幅することができる。増幅はまた、ハイブリダイゼーション前に核酸をサブクローン化または標識するために使用することができる。試料および/または固定化核酸は、本明細書に記載するように検出可能に標識することができる。試料およびアレイ上のプローブは、ゲノムの1つまたはそれ以上の特定の(予備選択した)部分からの核酸源、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物のコレクション、染色体の実質的に全体的なセット、選択した染色体または染色体フラグメント、または実質的に全体的なゲノムから、例えば、クローン(例えば、BAC、PAC、YACなど)のコレクションから生成することができ、集合的に該核酸源を表示することができる。アレイ固定化核酸またはゲノム核酸試料は、担体上でのスプリッティングまたはプリンティングの前に、ある種の手段で、例えば、反復核酸のブロッキングまたは除去により、または、選択した核酸の富化により、処理することができる。
【0058】
固定化プローブ(例えば、アレイを形成するために担体上でスポットまたはプリントした)に試料を加え、ハイブリダイゼーションおよび洗浄後、アドレス可能な位置(例えば、アレイ上のスポット)および各スポットでの各染料の量を読み取る。アレイ固定化核酸は、本明細書に記載するようなクローン化DNA、例えば、YAC、BAC、PACなどの形態であり得る。一の実施態様において、アレイ上の各「スポット」またはプローブ・エレメントは、既知の配列、例えば、ゲノムの既知のセグメント、および/またはゲノムの染色体の各々での既知の位置、または他の配列を有する。
【0059】
一般的な技術
本発明を実施するために使用する核酸は、RNA、cDNA、ゲノムDNA、ベクター、ウイルスまたはそのハイブリッドのいずれであろうと、種々の源のいずれかから単離され、遺伝子操作され、増幅され、および/または発現/組換えにより産生される。細菌細胞に加えて、例えば哺乳動物、酵母、昆虫または植物細胞発現系を含むいずれもの組換え発現系を使用することができる。
【0060】
例えばCarruthers (1982) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47:411-418;Adams (1983) J. Am. Chem. Soc. 105:661;Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444;Frenkel (1995) Free Radic. Biol. Med. 19:373-380;Blommers (1994) Biochemistry 33:7886-7896;Narang (1979) Meth. Enzymol. 68:90;Brown (1979) Meth. Enzymol. 68:109;Beaucage (1981) Tetra. Lett. 22:1859;米国特許4,458,066号に記載されているような周知の化学合成技術によってインビトロで核酸を合成することができる。次いで、相補鎖を化学的に合成し、適当な条件下にて鎖を一緒にアニールすることによって、または、DNAポリメラーゼをプライマー配列と一緒に用いて相補鎖を酵素的に合成するための鋳型として一本鎖を用いることによって、二本鎖DNAフラグメントを得ることができる。
【0061】
例えばサブクローン化、プローブの標識化(クレノウポリメラーゼ、ニックトランスレーション、増幅を使用するランダム−プライマー標識化)、配列決定、ハイブリダイゼーション、Gバンド形成、SKY、FISHなどのような核酸の操作のための技術は科学文献および特許文献に十分に記載されており、例えば、Sambrook, ed., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL (2ND ED.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Ausubel, ed. John Wiley & Sons, Inc., New York (1997);LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY: hybridization WITH NUCLEIC ACID PROBES, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993)を参照。
【0062】
ゲノム核酸のクローン
本発明の方法、キットおよび装置において使用されるゲノム核酸、例えば、アレイ上に固定されたものまたは試料として使用されるものは、種々のビヒクル中にクローン化することによって得ることができ操作することができる。必要ならば、ゲノム核酸試料をスクリーニングし、いずれものゲノムDNA源から再度クローン化または増幅することができる。かくして、種々の態様において、本発明の方法で使用されるゲノム核酸の形態(アレイおよび試料を含む)としては、ゲノムDNA、例えば、ゲノムライブラリー(ヒトのような哺乳動物の人工染色体、サテライト人工染色体、酵母人工染色体、細菌人工染色体、P1人工染色体などに含まれる)が挙げられる。
【0063】
哺乳動物人工染色体(MAC)およびヒト人工染色体(HAC)は、例えば、Ascenzioni (1997) Cancer Lett. 118:135-142;Kuroiwa (2000) Nat. Biotechnol. 18:1086-1090;および米国特許第5,288,625号;第5,721,118号;第6,025,155号;および第6,077,697号に記載されている。MACは、400キロベース(Kb)よりも大きい挿入体を含有することができる。例えば、Mejia (2001) Am. J. Hum. Genet. 69:315-326を参照。Auriche (2001) EMBO Rep. 2:102-107では、5.5キロベースの大きさをもつヒトミニ染色体が構築された。
【0064】
サテライト人工染色体またはサテライトDNAベース人工染色体(SATAC)は、例えば、Warburton (1997) Nature 386:553-555;Roush (1997) Science 276:38-39;Rosenfeld (1997) Nat. Genet. 15:333-335に記載されている。SATACは、様々な哺乳動物種の細胞において誘導された新規染色体形成によって作成することができる;例えば、Hadlaczky (2001) Curr. Opin. Mol. Ther. 3:125-132;Csonka (2000) J. Cell Sci. 113 (Pt 18):3207-3216を参照。
【0065】
酵母人工染色体(YAC)を使用することもでき、典型的には、80〜700kbの範囲の大きさの挿入体を含有する。YACは100万塩基対までの大きさのゲノムフラグメントの安定な増殖のために使用されてきた;例えば、米国特許第5,776,745号;および第5,981,175号;Feingold (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8637-8641;Tucker (1997) Gene 199:25-30;Adam (1997) Plant J. 11:1349-1358;およびZeschnigk (1999) Nucleic Acids Res. 27:21を参照。
【0066】
細菌人工染色体(BAC)は、120Kbまたはそれ以上の大きさの挿入体を含有することができるベクターである。例えば、米国特許第5,874,259号;第6,277,621号;および第6,183,957号を参照。BACは、イー・コリ(E. coli)Fファクタープラスミド系に基づいており、BAC中にクローン化されたDNAは、マイクログラムの量で精製することができる。BACプラスミドは1〜2のコピー数で細菌細胞中に維持されるので、YACを用いて観察される望ましくない遺伝子再編成が減少または排除される;例えば、Cao (1999) Genome Res. 9:763-774を参照。
【0067】
P1人工染色体(PAC)、P1バクテリオファージ誘導ベクターは、Woon (1998) Genomics 50:306-316;Reid (1997) Genomics 43:366-375;Nothwang (1997) Genomics 41:370-378;およびKern (1997) Biotechniques 23:120-124に記載されている。P1は、75〜100Kb DNA挿入体を含有することができる、イー・コリに感染するバクテリオファージである。PACは、ラムダライブラリーとほぼ同様にスクリーニングされる。
【0068】
他のクローニングビヒクル、例えば、組換えウイルス;コスミド、プラスミドまたはcDNAを使用することもできる;例えば、米国特許第5,501,979号;第5,288,641号;および第5,266,489号を参照。
【0069】
これらのベクターは、例えばルシフェラーゼおよび緑色蛍光タンパク質遺伝子(例えば、Baker (1997) Nucleic Acids Res 25:1950-1956を参照)のようなマーカー遺伝子を含むことができる。配列、挿入体、クローン、ベクターなどは、天然源から単離することができるか、または、ATCCまたはGenBankライブラリーまたは商業的供給元のような供給元から入手することができるか、または、合成法または組換え法によって作製することができる。
【0070】
核酸の増幅
オリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅を用いて、本発明の方法で使用されるゲノム核酸を産生または操作、例えば、サブクローン化すること、固定化核酸または試料核酸に標識を取り込むこと、アレイとハイブリダイズさせた核酸を検出またはそのレベルを測定することなどができる。増幅、典型的には縮重プライマーでの増幅もまた、検出可能なプローブ(例えば、Cy5TMまたはCy3TM−シトシン・コンジュゲート)を、固定化ゲノムDNAとハイブリダイズさせるために使用される試験または対照ゲノムDNAを表示する核酸に取り込むために有用である。増幅を用いて、試料中の核酸の量を定量することができる。例えば、米国特許第6,294,338号を参照。増幅法は、また、当該技術分野において周知であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR;例えば、PCR PROTOCOLS, A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS, ed. Innis, Academic Press, N.Y. 1990、およびPCR STRATEGIES (1995), ed. Innis, Academic Press, Inc., N.Y.を参照);リガーゼ連鎖反応(LCR;例えば、Barringer 1990, Gene 89:117を参照);転写増幅(例えば、Kwoh 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173);自立した配列複製(例えば、Guatelli 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874を参照);Qベータレプリカーゼ増幅(例えば、Smith 1997, J. Clin. Microbiol. 35:1477-1491を参照);自動Q−ベータレプリカーゼ増幅アッセイ(例えば、Burg 1996, Mol. Cell. Probes 10:257-271を参照);および他のRNAポリメラーゼ媒介技術、例えば、核酸配列ベース増幅、または「NASBA」(例えば、Birch 2001, Lett. Appl. Microbiol. 33:296-301;Greijer 2001, J. Virol. Methods 96:133-147を参照)が挙げられる。
【0071】
核酸のハイブリダイゼーション
本発明の方法を実施するに際して、核酸、例えば、単離、クローン化または増幅したゲノム核酸の試料を固定化核酸とハイブリダイズさせる。種々の実施態様において、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件は中位〜ストリンジェントな条件下で行われる。核酸のハイブリダイゼーションへの広範囲のガイドは、例えば、Sambrook Ausubel, Tijssenに見られる。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、所定のイオン強度およびpHで、特定の配列についての熱融解点(TM)よりも約5℃低く選択される。TMは、標的参照試料配列標識化分子の50%が完全にマッチしたプローブとハイブリダイズする温度(所定のイオン強度およびpH下)である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブについてのTMと等しくなるように選択される。アレイ上に100を超える相補残基を有する相補核酸のハイブリダイゼーションのための典型的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、標準的なハイブリダイゼーション溶液(例えば、Sambrookを参照)を使用する42℃を含み、該ハイブリダイゼーションは一夜行われる。典型的な高度にストリンジェントな洗浄条件は、72℃で約15分間の0.15M NaClを含むことができる。典型的なストリンジェントな洗浄条件は、また、65℃で15分間の0.2 X SSC洗浄(例えば、Sambrookを参照)を含むことができる。一の態様において、高度なストリンジェンシー洗浄よりも、バックグラウンド・プローブシグナルを除去するための中位または低いストリンジェンシー洗浄が先行する。例えば100を超えるヌクレオチドの二本鎖のための典型的な中位ストリンジェンシー洗浄は、45℃で15分間の1 X SSCを含む。例えば100を超えるヌクレオチドの二本鎖のための典型的に低いストリンジェンシー洗浄は、40℃で15分間の4 x〜6X SSCを含むことができる。
【0072】
種々の実施態様において、本発明のアレイをベースとする比較ハイブリダイゼーション(ハイブリダイゼーション)反応を実施するに際して、蛍光染料Cy3TMおよびCy5TMを使用して、2つの試料からの核酸フラグメントを区別して標識し、例えば、参照または正常対照からの核酸を、細胞または組織からの試験試料核酸と比較する。多くの商業的装置は、2つの染料の検出に適応するように設計される。Cy5TMまたは蛍光物質または他の酸化感受性化合物の安定性を増加させるために、ハイブリダイゼーション混合物、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液において酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーを使用することができる。かくして、Cy5TMシグナルは、劇的に増加し、長いハイブリダイゼーション時間が可能となる。2001年4月19日に出願した同時係属中の米国特許出願番号第09/839,658号を参照。
【0073】
ハイブリダイゼーション感受性をさらに増加させるために、ハイブリダイゼーションは、管理された不飽和湿度環境下にて行うことができる;かくして、湿度が飽和していないならば、ハイブリダイゼーション効率は有意に改善される。湿度が動的に管理されるならば、すなわち、ハイブリダイゼーションの間、湿度が変化するならば、ハイブリダイゼーションを改善することができる。ハウジング、ならびにプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、洗浄および/または検出段階の間の湿度をオペレーターに管理させるコントロールを含むアレイデバイスを使用することができる。該デバイスは、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、洗浄および検出工程を含む手順サイクル全体の間の湿度(および温度および他のパラメーター)のプレプログラミングを可能にする検出、管理および記憶素子を有することができる。
【0074】
本発明の方法は、温度変動を含むハイブリダイゼーション条件を組み込むことができる。ハイブリダイゼーションは、温度が正確にまたは比較的一定レベル(例えば、ほとんどの商業的オーブンについてと同様にプラスまたはマイナス2〜3℃)に設定されている条件と比べて、変化する温度環境において非常に良好な効率を有する。反応チャンバー温度は、例えばオーブンまたは変化する温度を生じる能力を有する他のデバイスによって、変動的に変更することができる。
【0075】
本発明の方法は、浸透圧変動を含むハイブリダイゼーション条件を含むことができる。ハイブリダイゼーション効率(すなわち、平衡までの時間)もまた、変化する高/低浸透圧性、例えば、溶質勾配を含むハイブリダイゼーション環境によって増強することができる。溶質勾配は、デバイス中にて生じる。例えば、低い塩のハイブリダイゼーション溶液をアレイハイブリダイゼーションチャンバーの片側に置き、高い塩のバッファーを他方に置いて、該チャンバー中で溶質勾配を生じさせる。
【0076】
核酸のフラグメント化および消化
本発明の方法を実施するに際して、固定化核酸および試料核酸を種々の長さでクローン化するか、標識するか、または固定することができる。例えば、一の態様において、ゲノム核酸は、約200塩基よりも短い長さを有することができる。この小さいサイズに限定される標識化ゲノムDNAの使用は、例えばアレイをベースとするハイブリダイゼーションにおいて、分子プロファイル分析の解像度を有意に改善する。例えば、このように小さなフラグメントの使用は、反復配列および固定化核酸に対する他の望ましくない「バックグラウンド」クロスハイブリダイゼーションの有意な抑制を可能にする。反復配列ハイブリダイゼーションの抑制は、コピー数差異(例えば、増幅または欠失)の検出またはユニーク配列の検出の信頼度を大きく増加させる。
【0077】
結果として生じるフラグメント長は、例えばDNaseでの処理によって、変更することができる。ニックトランスレーション反応におけるDNaseとDNAポリメラーゼとの比率の調節は、消化産物の長さを変化させる。標準的なニックトランスレーションキットは、典型的には、300〜600塩基対フラグメントを生じる。必要に応じて、標識した核酸をさらに、200塩基のセグメントにフラグメント化することができ、約25〜30塩基まで低下させることができる。DNAのランダム酵素的消化は、他のフラグメント化法を伴おうが伴うまいが、例えばDNAエンドヌクレアーゼ、例えばDNase(例えば、Herrera (1994) J. Mol. Biol. 236:405-411;Suck (1994) J. Mol. Recognit. 7:65-70を参照)、または二塩基制限エンドヌクレアーゼCviJI(例えば、Fitzgerald (1992) Nucleic Acids Res. 20:3753-3762を参照)および標準的なプロトコール(例えば、Sambrook、Ausubelを参照)を使用して行われる。
【0078】
他の方法、例えば、機械的剪断、超音波処理(例えば、Deininger (1983) Anal. Biochem. 129:216-223を参照)および類似のもの(例えば、Sambrook、Ausubel、Tijssenを参照)を使用してゲノムDNAをフラグメント化することもできる。例えば、1つの機械的技術は、DNA試料がシリンジ・ポンプによって小さな穴を通って押し出される場合に生じるポイント−シンク流体力学に基づいている。例えば、Thorstenson (1998) Genome Res. 8:848-855を参照。フラグメントサイズは、キャピラリー電気泳動法において動的サイズふるい分け高分子溶液を使用するDNAフラグメント化の分析を示すSiles (1997) J. Chromatogr. A. 771:319-329によるような例えばサイジング電気泳動法を含む種々の技術によって評価することができる。フラグメントサイズはまた、例えばマトリックス支援レーザー脱離/イオン化法飛行時間型質量分析法によって測定することもできる。例えば、Chiu (2000) Nucleic Acids Res. 28:E31を参照。
【0079】
比較ゲノムハイブリダイゼーション(ハイブリダイゼーション)
アレイをベースとする比較ゲノムハイブリダイゼーション反応で本発明の方法を使用して、試料中の染色体異常を検出することができるか、または、例えば生検または体液試料の如き組織のような細胞集団中にて遺伝子モザイクを検出することができる。ハイブリダイゼーションは、変化、例えば、配列または配列のコピー数の変化の獲得または損失を受けているゲノムの領域を検出するために使用することができる分子細胞遺伝学的アプローチである。腫瘍細胞のゲノムの分析は、異常の領域を検出して、進行中のプロセスをモニターすることができる。
【0080】
ハイブリダイゼーション反応は、試験試料対対照試料の遺伝子組成を比較する;例えば、ゲノムDNAの試験試料(例えば、1つまたはそれ以上の遺伝子欠失を有すると思われる細胞集団からの)が、「ネガティブ」対照、例えば「正常」または「野生型」遺伝子型である参照試料、または「ポジティブ」対照、例えば、既知の癌細胞、または既知の欠失、例えば、既知の転座または欠失または増幅などを有する細胞と比較した場合、増幅または欠失または変異したセグメントを有するかどうか。
【0081】
本発明の方法は、比較ゲノムハイブリダイゼーションを行うための全ての既知の方法および手段およびそれらのバリエーションを用いて実施することができる。例えば、米国特許第6,197,501号;第6,159,685号;第5,976,790号;第5,965,362号;第5,856,097号;5,830,645号;第5,721,098号;第5,665,549号;および第5,635,351号;ならびにDiago (2001) American J. of Pathol. May, 158(5);1623-1631;Theillet (2001) Bull. Cancer 88:261-268;Werner (2001) Pharmacogenomics 2:25-36;Jain (2000) Pharmacogenomics 1:287-307を参照。
【0082】
アレイまたは「バイオチップ」
一の実施態様における本発明は、アレイおよびその製造方法を提供する。別の実施態様において、本明細書における該方法は、「アレイ」または「DNAアレイ」または「核酸アレイ」または「バイオチップ」とも称される既知の「アレイ」またはそのバリエーションを用いて実施することができる。アレイは、一般に、複数の「プローブエレメント」または「スポット」であり、各プローブエレメントは、担体表面の既知または所定の(アドレス可能な)位置で固定した所定の量の1つまたはそれ以上の生物学的分子、例えば、ポリペプチド、核酸分子、またはプローブを含む。典型的には、固定化生物学的分子を、試料およびアレイ中の分子の間の特異的結合、例えば、ハイブリダイゼーションのために試料と接触させる。固定化核酸は、特異的メッセージ(例えば、cDNAライブラリーとして)、または例えば、染色体の実質的に全体もしくはサブセクションまたはゲノム(ヒトゲノムを含む)の実質的に全体を含む遺伝子(例えばゲノムライブラリー)からの配列を含有することができる。他のエレメントまたはスポットは、正および負の対照などのような参照配列を含有することができる。アレイのエレメントは、種々のサイズおよび種々の密度で担体表面に並べられる。アレイの異なるプローブエレメントは、同一の分子種を、例えば異なる量、密度、サイズ、標識・非標識などで有することができる。
【0083】
スポットのサイズおよび密度またはエレメントサイズは、標識の性質、担体支持体(固体、半固体、線維、キャピラリーまたは多孔質である)などのような多くのファクターに依存する。各スポットまたはエレメントは、実質的に同一の核酸配列を含むことができるか、または別法として、異なる長さおよび/または配列の核酸の混合物であり得る。かくして、例えば、スポットまたはエレメントは、DNAのクローン化した小片を1コピー以上含有し、各コピーは、本明細書に記載した方法によって、異なる長さのフラグメントに分解され得る。
【0084】
一の実施態様において、アレイは、2つまたはそれ以上の異なる種の染色体の高度に相同な配列からのシンテニー配列の全てまたは実質的に全てをコードするスポットを含有することができる。シンテニー配列は、同一染色体、例えば、古典的遺伝子分析で結びつけられていようがいまいが、第1ヒト染色体のような大きな染色体、またはヒトX染色体のような小さな染色体に位置するものである。一の実施態様において、シンテニーアレイは、ヒトおよび哺乳動物のような別の脊椎動物(例えば、ヒトおよびマウスのような齧歯類、またはヒトおよびチンパンジー)の各々からの相同配列を含有する1つまたはそれ以上の染色体からのシンテニー配列を有するエレメントを含有する。別法として、脊椎動物は、カエル(Rana)またはアフリカツメガエル(Xenopus)またはゼブラフィッシュのような非哺乳動物であってもよい。別の実施態様において、シンテニーアレイは、ヒトおよび目的の無脊椎動物種(例えば、ヒトおよびショウジョウバエ(Drosophila))からの1つまたはそれ以上の染色体からのシンテニー配列を有するエレメントを含有する。例えば各々の種からのシンテニーであることが知られているクローンを使用してクローン化BACライブラリーから得られた固定化配列は、種々のアドレス可能な位置でアレイ中に置かれる。
【0085】
例えばヒトおよびマウスのような別の種からの染色体の同定可能な領域を有する核酸のスポットのアレイを有するシンテニーアレイは、当業者に知られている、ゲノム全体を含むBACライブラリーのようなライブラリーを使用して作製することができる。次いで、これらを使用して、疾患または病状を有するヒト対象体から得た試料およびヒト疾患に関するモデルである動物モデルが知られている動物対象体からの得た試料を分析することができる。動物モデルが知られている疾患の例としては、肺癌、中皮腫、腺癌および前立腺癌が挙げられる。
【0086】
別法として、これらのアレイを使用して、化学組成物に暴露されたかまたはそれを投与された細胞、生物、または細胞集団のゲノムの分析によって、試験動物のゲノムに対する該化学組成物の遺伝毒性、すなわち、変異原性を試験することができる。細胞集団は、化学物質に暴露された生物から得ることができるか、または、インビトロまたはエキソビボで培養し、次いで、化学組成物に暴露され得る。本発明のアレイは、ゲノム全体に対する化学物質の作用を試験することにより、ゲノム全体に対する化学物質の作用を示す結果を得、これらの分析をヒトゲノムと関連づけると共に、多数の生物または長期間の分析を必要とする現行のトキソロジカル分析法に取って代わるかまたは該分析法を補うことができる。
【0087】
複数の生物の相同配列を有するシンテニーアレイを作製することができ、その結果、化学物質に暴露したマウス細胞から、または特定の癌を有するマウス細胞から採取した試料を、例えば、ヒト、マウス、イヌおよびカエルからのシンテニー固定化アレイ化プローブ配列を用いて同時に時間的に効率よく分析することができる。
【0088】
アレイは、いずれもの担体、例えば、固体表面(例えば、ニトロセルロース、ガラス、石英、溶融シリカ、プラスチックなど)上に固定した核酸を含むことができる。例えば、蛍光を測定する場合のシクロオレフィンポリマーを含むマルチウェルプラットフォームを記載している米国特許第6,063,338号を参照。本発明の方法で使用されるアレイは、ハイブリダイゼーションおよび洗浄反応の間の湿度および温度を管理するための素子を有するハウジングを含むことができる。
【0089】
本発明の方法を実施するに際して、既知のアレイならびにアレイを作製および使用する方法またはそのバリエーション(例えば、米国特許第6,277,628号;第6,277,489号;第6,261,776号;第6,258,606号;第6,054,270号;第6,048,695号;第6,045,996号;第6,022,963号;第6,013,440号;第5,965,452号;第5,959,098号;第5,856,174号;第5,830,645号;第5,770,456号;第5,632,957号;第5,556,752号;第5,143,854号;第5,807,522号;第5,800,992号;第5,744,305号;第5,700,637号;第5,556,752号;および第5,434,049号に記載されている)を全体的にまたは部分的に組み込むことができる;また、WO 99/51773;WO 99/09217;WO 97/46313;WO 96/17958も参照;また、Johnston (1998) Curr. Biol. 8:R171-R174;Schummer (1997) Biotechniques 23:1087-1092;Kern (1997) Biotechniques 23:120-124;Solinas-Toldo (1997) Genes, Chromosomes & Cancer 20:399-407;Bowtell (1999) Nature Genetics Supp. 21:25-32も参照。また、米国特許出願公開第20010018642号;第20010019827号;第20010016322号;第20010014449号;第20010014448号;第20010012537号;第20010008765号も参照。種々の実施態様における本発明は、いずれもの既知のアレイを使用することができる。例えば、GeneChipsTM(カリフォルニア州サンタクララのAffymetrix);SpectralChipTM Mouse BAC Arrays、SpectralChipTM Human BAC ArraysおよびCustom Arrays(テキサス州ヒューストンのSpectral Genomics)、およびそれらの添付の製造者の使用説明書。
【0090】
担体表面
本発明を実施するために使用されるアレイは、硬質、半硬質または軟質材料の担体表面を有することができる。担体表面は、平坦または平面であってよく、ウェル、隆起領域、蝕刻溝、孔、ビーズ、フィラメントなどとして造形することができる。担体は、「捕獲プローブ」が直接または間接的に結合することができるいずれもの材料のものであり得る。例えば、適当な材料としては、紙、ガラス(例えば、米国特許第5,843,767号を参照)、セラミックス、石英または他の結晶性担体(例えば、ガリウムアルセナイド)、金属、メタロイド、ポリアクリロイルモルホリド、種々のプラスチックおよびプラスチック共重合体、Nylon.TM、Teflon.TM、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリスチレン/ラテックス、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)(例えば、米国特許第6,024,872号を参照)、シリコーン(例えば、米国特許第6,096,817号を参照)、ポリホルムアルデヒド(例えば、米国特許第4,355,153号および第4,652,613号を参照)、セルロース(例えば、米国特許第5,068,269号を参照)、酢酸セルロース(例えば、米国特許第6,048,457号を参照)、ニトロセルロース、種々の膜およびゲル(例えば、シリカエーロゲル、例えば、米国特許第5,795,557号を参照)、常磁性または超常磁性微粒子(例えば、米国特許第5,939,261号を参照)などを挙げることができる。反応性官能基は、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ基などであり得る。シラン(例えば、モノ−およびジヒドロキシアルキルシラン、アミノアルキルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン)は、アミン官能基の反応のためのヒドロキシル官能基を提供することができる。
【0091】
核酸および検出可能な部分: 標識の取り込みおよびアレイのスキャニング
本発明の方法は、検出可能な標識を結合した、例えば、検出可能な部分を取り込んだかまたは検出可能な部分と結合した、核酸を使用する。いずれもの検出可能な部分を使用することができる。検出可能な部分との結合は共有であっても非共有であってもよい。別の実施態様において、アレイ固定化核酸および試料核酸は区別して検出可能であり、例えば、それらは異なる標識を有し、異なるシグナルを発する。さらに別の実施態様において、アレイ固定化核酸を添加せず、試験試料核酸および参照核酸を区別してブレンドし、ハイブリダイゼーションのもう1回の反復において、この区別的標識を変える。
【0092】
有用な検出可能な標識またはタグとしては、例えば、放射性標識、例えば32P、35S、3H、14C、125I、131I;蛍光染料(例えば、Cy5TM、Cy3TM、FITC、ローダミン、ランタニドリン光物質、Texas red)、高電子密度試薬(例えば、金)、酵素、例えば、ELISAにおいて一般的に使用される酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシターゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、比色標識(例えば、コロイド金)、磁性標識(例えば、DynabeadsTM)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または抗血清もしくはモノクローナル抗体が利用可能ないずれものハプテンおよびタンパク質が挙げられる。該標識は、検出しようとする核酸に直接取り込むことができるか、または、核酸とハイブリダイズするかまたは結合する連結部分を有するプローブまたは抗体に付着させることができる。ペプチドは、二次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体のための結合部位、転写活性化因子ポリペプチド、金属結合ドメイン、エピトープタグ)によって認識される所定のポリペプチドエピトープを(例えば、ヌクレオシド塩基に)取り込むことによって検出可能にすることができる。標識は、種々の長さのスペーサーアームによって付着させて、可能性のある立体障害を減ずるかまたは他の有用なまたは所望の特性に影響を与えることができる。例えば、Mansfield (1995) Mol Cell Probes 9:145-156を参照。アレイをベースとするハイブリダイゼーションにおいて、蛍光物質は、一緒に組にすることができる;例えば、1つの蛍光物質が対照試料(例えば、既知または通常の核型の核酸)を標識し、もう1つの蛍光物質が試験試料核酸(例えば、CVSまたは癌細胞試料からのもの)を標識する。典型的なペアは、ローダミンとフルオレセイン(例えば、DeRisi (1996) Nature Genetics 14:458-460を参照);リッサミン結合核酸アナログとフルオレセイン結合ヌクレオチドアナログ(例えば、上掲のShalon (1996)を参照);Spectrum Red.TMおよびSpectrum Green.TM(イリノイ州ダウナーズ・グローブのVysis);Cy3TMとCy5TM(Cy3TMとCy5TMは一緒に使用することができ、どちらもAmersham Life Sciences(イリノイ州アーリントン・ハイツ)によって製造されている蛍光シアニン染料である)である。シアニン、ならびにメロシアニン、スチリルおよびオキソノール染料のような関連染料は、特に、強い吸光性であり、高発光性である。例えば、米国特許第4,337,063号;第4,404,289号;および第6,048,982号を参照。
【0093】
他の蛍光性ヌクレオチドアナログを使用することができる。例えば、Jameson (1997) Methods Enzymol. 278:363-390;Zhu (1994) Nucleic Acids Res. 22:3418-3422を参照。米国特許第5,652,099号および第6,268,132号にはまた、蛍光性オリゴヌクレオチドを生成するために、酵素的合成または化学合成のいずれかによって核酸、例えば、DNAおよび/またはRNA、またはオリゴヌクレオチドに取り込むためのヌクレオシドアナログが記載されている。米国特許第5,135,717号には、蛍光標識として使用するためのフタロシアニンおよびテトラベンゾトリアザポルフィリン試薬が記載されている。
【0094】
共有または非共有手段によって、例えば、転写によって、例えば、クレノウポリメラーゼを使用してランダム−プライマー標識化によって、または「ニックトランスレーション」または増幅によって、または等価な手段によって、試験または参照試料のゲノム核酸に、および必要に応じて「標的」核酸に検出可能な部分を取り込むことができる。例えば、一の態様において、ヌクレオシド塩基を検出可能な部分、例えば、蛍光染料、例えば、Cy3TMまたはCy5TMと結合し、次いで、試料ゲノム核酸に取り込む。ゲノムDNAの試料は、非標識dCTPと混合したCy3TM−またはCy5TM−dCTPコンジュゲートを用いて取り込むことができる。Cy5TMは、典型的には、633nmのHeNeレーザー光線によって励起し、680nmでの発光を採集する。例えば、Bartosiewicz (2000) Archives of Biochem. Biophysics 376:66-73;Schena (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619;Pinkel (1998) Nature Genetics 20:207-211;Pollack (1999) Nature Genetics 23:41-46も参照。
【0095】
別の実施態様において、PCRまたはニックトランスレーションを行って核酸を標識するために、アリルアミン−dUTPを蛍光染料のシクシンイミジル−エステル誘導体またはハプテン(例えば、ビオチンまたはジゴキシゲニン)とカップリングすることによって合成された修飾核酸を使用する;この方法は、最も一般的な蛍光性ヌクレオチドのカスタム調製を可能にする。例えば、Henegariu (2000) Nat. Biotechnol. 18:345-348を参照。
【0096】
本発明の方法のある種の実施態様において、検出可能な組成物での標識化(検出可能な部分での標識化)はまた、核酸、例えば、「分子ビーコン」または「アプタマービーコン」としてのステムループ構造の形態の核酸に付着した核酸のような別の生物学的分子を含むことができる。検出可能な部分としての分子ビーコンは、当該技術分野において周知である;例えば、Sokol (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:11538-11543では、5'末端および3'末端に適合した蛍光性ドナーおよびアクセプター発色団を有する「分子ビーコン」レポーターオリゴデオキシヌクレオチドを合成した。相補核酸鎖の不在下では、蛍光共鳴エネルギー転移がシグナル発光を妨げる場合には、分子ビーコンはステムループ配座のままである。相補配列とのハイブリダイゼーション後、ステムループ構造は開いて、ドナー部分およびアクセプター部分の間の物理的距離を増大させ、それにより蛍光共鳴エネルギー転移を減少させ、適当な波長の光によってビーコンが励起した場合に検出可能なシグナルを発光させる。例えば、Gリッチ18量体三重鎖形成性オリゴデオキシリボヌクレオチドからなる分子ビーコンを記載するAntony (2001) Biochemistry 40:9387-9395を参照。米国特許第6,277,581号および第6,235,504号を参照。
【0097】
アプタマービーコンは、分子ビーコンと同様である;例えば、Hamaguchi (2001) Anal. Biochem. 294:126-131;Poddar (2001) Mol. Cell. Probes 15:161-167;Kaboev (2000) Nucleic Acids Res. 28:E94を参照。アプタマービーコンは、1つがリガンド結合を可能にする2つまたはそれ以上の配座を採用することができる。蛍光消光ペアを使用してリガンド結合によって誘導される配座の変化をレポートすることができる。例えば、Yamamoto (2000) Genes Cells 5:389-396;およびSmirnov (2000) Biochemistry 39:1462-1468を参照。
【0098】
核酸を蛍光染料で標識するための方法に加えて、複数のフルオロフォアの同時検出のための方法も当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,539,517号;第6,049,380号;第6,054,279号;および第6,055,325号を参照。例えば、スペクトログラフは、光検出器の二次元アレイ上に発光スペクトルを撮像することができる;かくして、アレイの完全なスペクトル的分解画像が得られる。フルオロフォアの光物理学、例えば、蛍光量子収率および光破壊収率、ならびに検出器の感度は、オリゴヌクレオチドアレイについての読取時間パラメーターである。十分なレーザー出力ならびに低い光破壊収率を有するCy5TMおよび/またはCy3TMの使用を用いて、アレイは、5秒未満で読み取ることができる。
【0099】
2つまたはそれ以上の蛍光物質または蛍光染料(例えば、Cy3TMおよびCy5TM)の混合物の検出および分析のためには複数の蛍光物質の各々の量を示す重ね合わせ像を作成するのが望ましい。2つまたはそれ以上の画像を得るために、該アレイを同時に、または経時的にスキャンすることができる。本発明の方法を実施することを含むアレイスキャニングシステムにおいて電荷結合素子またはCCDが使用される。かくして、本発明の方法で使用されるCCDは、多色蛍光画像をスキャンし分析することができる。
【0100】
本発明の方法を実施するために、ハイブリダイゼーション後にアレイをスキャンするためおよびさらに多色蛍光画像を分析するためのアレイ読み取りまたは「スキャニング」装置を含む装置および方法を使用または適用することができる;例えば、米国特許第6,294,331号;第6,261,776号;第6,252,664号;第6,191,425号;第6,143,495号;第6,140,044号;第6,066,459号;第5,943,129号;第5,922,617号;第5,880,473号;第5,846,708号;および第5,790,727号;および本明細書においてアレイのディスカッションにおいて引用した特許を参照。米国特許出願公開第20010018514号;および第20010007747号も参照。
【0101】
本発明の方法は、また、例えば担体位置の関数としての蛍光強度を測定する工程、「外れ値」(予め定められた統計的分布から逸脱するデータ)を除去する工程、または残りのデータからの固定化アレイ標的の相対的な結合アフィニティーを算出する工程を含むことができるデータ分析を含む。得られたデータは、発光または標的およびプローブの間の結合アフィニティーに従って変化する各領域における色付き画像として表示することができる。例えば、米国特許第5,324,633号;第5,863,504号;および第6,045,996号を参照。本発明はまた、支持体上に位置する試料の標識マーカーを検出するための装置を組み込むことができる。例えば、米国特許第5,578,832号を参照。
【0102】
一の実施態様において、データは、2つの独立したアレイからの正規化データの比率プロットとして表示される。例えば、Cy5TM標識参照試料に対して正規化したCy3TM標識化試験試料データは赤色で示され、Cy3TM標識参照試料に対して正規化したCy5TM標識化試験試料データは青色で示される。個々のクローンの各々からの縦座標に示される正規化比率は、横座標に沿って染色体での位置に従って、線形に順序付けられて表示され、その結果、各染色体について、p−アーム末端クローンは左側に表示され、q−アーム末端は右側に表示される。赤色プロットおよび青色プロットのために逆数値(各々参照対照に対して正規化した)を使用し、その結果、1つまたはそれ以上のBACクローンの欠失である遺伝子異常が有意である場合には、得られた赤色関数および青色関数は反対方向(正方向および負方向)に逸脱する。同様に、1つまたはそれ以上のBACクローンと比べて挿入である遺伝子異常が観察される場合には、2つの関数は同一方向(共に正)に逸脱する。例えば非特異的結合または他のランダム作用による有意でない逸脱が2つの関数のうちの1つだけに出現する。
【0103】
試料調製のためのゲノム核酸の供給源
本発明は、アレイをベースとする比較ゲノムハイブリダイゼーションを行うことによって細胞集団または組織もしくは体液試料のような核酸を含む試料における染色体異常を検出する方法を提供する。核酸は、ゲノムDNAから単離、増幅、またはクローン化することができる。ゲノムDNAはいずれもの供給源からのものであり得、例えば、化学組成物または物理的力に暴露した対象体または細胞から、核酸試料が調製される細胞、組織または体液試料を採取して、該組成物または力が遺伝子欠失に関連するかどうかを測定し、該異常性を、病変または症状を有するかまたはその疑いがある患者のものと比較する。該組成物または力と染色体異常との間で因果関係を確立することができるか、または、病態または症状の診断または予後診断を、遺伝子欠失、例えば、ゲノム核酸塩基置換、増幅、欠失および/または転座を有する細胞を含む癌または腫瘍と結び付けることができる。試験試料(および対照参照試料)は、組織または体液のような細胞試料、例えば、羊水試料、CVS、血清、血液、腱、血液または尿試料、中枢神経系(CNS)または骨髄穿刺、糞便試料、唾液、涙、組織および外科生検、針生検またはパンチ生検からの核酸などであってよい。参照試料は、各分析のために用いられる標準、すなわち、染色体異常についての負の対照、または特定の既知の症候群、欠失または疾患についての正の対照としての均一な標準であり得る。
【0104】
細胞、組織または体液試料を単離する方法は当業者に周知であり、試料供給源としては、穿刺、組織切片、血液または他の生体液の採取、外科生検または針生検などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。患者から得られる「臨床試料」としては、組織学のために採取された凍結切片またはパラフィン切片が挙げられる。該試料はまた、(細胞培養)の上清、細胞溶解物、染色体異常および遺伝子または染色体コピー数の変化を含む遺伝子異常を検出するのが望ましい組織培養からの細胞から得ることもできる。
【0105】
染色体異常
本発明の方法、アレイおよびキットは、化学組成物もしくは調製物、または物理的力の遺伝毒性作用を検出するために使用することができ、また、異種の種からの1つまたはそれ以上のモデルを使用して目的の種、すなわち、ヒトについて推定して、疾患および症状を診断するため、適当な治療計画を作成するため、および予後診断を作成するために使用することもできる。本明細書における方法およびアレイは、単一表面上の1以上の種または属からの染色体のシンテニー鎖を分析することによって、ヒト細胞の使用の代用を提供する。生物のゲノムの選択された部分での数および位置から核酸配列をもつクローンを選択することによってシンテニーアレイをアレンジして2つまたはそれ以上の種の生物における目的の染色体または染色体の一部に焦点を合わせることができるか、または、複数の生物種の少なくとも1つのゲノム全体を含むことができる。染色体欠失または異常の原因は、1つまたはそれ以上の組成物または力と結び付けることができ、さらに、1つまたはそれ以上の既知の遺伝子欠失と結び付けることができる。また、本発明の方法、装置およびキットは、疾患、例えば、ゲノム核酸塩基置換、増幅、欠失および/または転座を持つ細胞を含む癌または腫瘍、または遺伝性疾患の進行を分析するために使用することができる。場合によっては、患者からの腫瘍または他の癌細胞集団における異なる遺伝子構造(核型)を含む異なる亜集団の量または度合いは、癌を分類することまたは治療計画または予後診断を作成するのに役立ち得る。
【0106】
染色体異常はまた、先天性奇形および自然流産の一般的な原因でもある。それらは、染色体の様々な部分の欠失、挿入、転座および増幅のような構造異常;倍数性;モノソミー;トリソミー;およびモザイク現象を含む。
【0107】
本発明の方法はまた、1つまたはそれ以上の染色体の全てまたは一部、例えば、新生児無培養血液試料からのゲノムDNAからの第13染色体、第18染色体、第21染色体、X染色体およびY染色体の異数性(正倍数性、一般的に完全な二倍性からの逸脱)を検出するために使用することができる(例えば、Jalal (1997) Mayo Clin. Proc. 72:705-710を参照)。モザイク現象は、妊娠9〜11週目にCVSによって測定した生存可能な妊娠の約1%〜2%に見られた。それは、二倍性胎児およびトリソミー胎児のどちらの妊娠においても検出されており、子宮内胎児生存に対して重要な影響を及ぼすと思われる。例えば、Harrison (1993) Hum. Genet. 92:353-358を参照。ヒト起源のまたは別の種からの実験細胞を使用して、化学組成物または物理的力によって生じる異数性について分析し、別の種における染色体およびそのホモログのシンテニークローンセットに沿って異常を報告するようにアレイを設計する。
【0108】
卵母細胞および胚の着床前遺伝子診断は、胚移植体外受精(IVF)プログラム前に異常な胚に対して選択するための選択の技術となっている。かくして、別の実施態様において、本発明の方法は、卵母細胞および胚の着床前遺伝子診断および構造異常の診断のために使用される。例えば、Fung (2001) J. Histochem. Cytochem. 49:797-798を参照。本発明の方法、装置およびキットは、CVSおよび胎児の核型分析と併せて有用である。例えば、Sanz (2001) Fetal Diagn. Ther. 16:95-97を参照。
【0109】
遺伝子モザイク現象は、前核のマイクロインジェクションによって作られるトランスジェニック動物の間でたびたび起こる。交配前に生殖細胞系モザイク現象について創始動物のスクリーニングのための成功した方法は、トランスジェニック系の繁殖に関連する費用を非常に削減し、遺伝子導入家畜生産の効率を改善する。本明細書における方法を使用するシンテニーアレイは、スライドガラスのような単一表面上の種々の種の動物の分析を可能にする。各分析において、試験試料および参照核酸の混合物を2つ調製する:試験試料は第1検出可能標識および異なる区別できる第2標識の各々で別々に標識し、それぞれ、第2検出可能標識および第1検出可能標識の各々で標識した参照試料と混合する。2つの混合物を、複数のアレイを有する表面上、すなわち、マルチアレイ表面上のシンテニーアレイの反復とハイブリダイズさせる。アレイの反復の各々は、種の各々からの染色体のシンテニー鎖からの核酸を有するエレメントを有する。各々の種について得られた結果を第2種またはそれ以外の種から得られた結果と直接比較する。その後、種の1つを化学組成物、物理的力、または症状の進行の分析についての代用として使用することができる。本発明は、トランスジェニック動物の生産、特に、交配前の生殖系列モザイク現象についての創始動物のスクリーニングに有用である。例えば、Ibanez (2001) Mol. Reprod. Dev. 58:166-172を参照。
【0110】
生物全体および培養細胞を使用する毒物学
本明細書における方法は、生物(動物、植物、真菌類などの種)および培養細胞の試料から得られる細胞試料における異常の分析に適している。細胞は、初代培養物であっても樹立細胞系であってもよい。初代培養物は、例えば、環境における化学的または物理的因子に(試験試料を)暴露させた後生動物全体または多細胞植物から、または参照試料として使用することができる非暴露対照生物から採取した細胞試料であり得る。生物、初代培養物および樹立細胞系は、厳格な管理研究室条件下で因子に暴露させられるか、または、有害因子の存在について環境をモニターするために自然環境下に置かれるか、またはこの環境下で遺伝毒性因子の可能性のある既往歴をモニターリングする手段として環境から得られた野生生物である。
【0111】
初代細胞培養物は、細胞培養の技術分野における当業者に知られている培地を使用する培養方法によって組織および器官から得られる。適当な動物細胞型は、腹水、上皮(表皮、気管/気管支、腎尿細管、造血性を含む)細胞、内皮細胞、壁細胞、リンパ球などである。細胞は、BN(Brown Norway)ラットのような野生型非近交系株から、または、F344ラットのような近交系同質遺伝子株から得ることができ、この近交系同質遺伝子株のいくつかは、化学的因子に対して非近交系株よりも実質的に高い感受性を示し、例えば、数十〜数百倍少ない量の該因子で同様の作用を表すことによって示されるように数十〜数百倍感受性が高い。適当な齧歯類株は、マサチューセッツ州ウィルミントンのCharles River Laboratoryから入手される。
【0112】
本明細書におけるシンテニーアレイを使用する毒物学実験はまた、遺伝子組換え生物または変異株を用いて行われ、それらのいずれも1つまたはそれ以上の導入遺伝子または変異誘発遺伝子にとってヘテロ接合性であってもホモ接合性であってもよい(Dashwood, R., J. Biochem. Mol. Biol. 36(1)35-42, 2003を参照)。非肥満糖尿病マウス(NOD)のような変異動物、またはヒト疾患のモデル系を得るように処置された動物、例えば、ストレプトゾシン処置糖尿病マウス、もしくは実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE、多発性硬化症のモデル)を有するミエリン処置マウスを使用することができる。また、遺伝子内の1組または数組の塩基対にまたがる点変異または欠失の頻度および性質を検出するために、lacZ、lacI、c−myc/lacZ、rpsL、およびgptΔトランスジェニック動物のような改変レポーター遺伝子を有するマウスモデル株、およびp53+/-、XPA-/-、XPL-/-などのようなノックアウト株が使用されてきた。マウス変異株は、メーン州バー・ハーバーのJackson Laboratoriesまたは他の供給元から入手可能である。しかしながら、これらの株には環境中の因子に応答する欠失、増殖または他の主要な染色体変化のような大きい染色体異常を検出することができるように改変されたものはないが、インビボでのこれらの細胞系または株または齧歯類のいずれも本明細書における方法によってかかる染色体異常について分析することができる。本明細書の実施例2に従って細胞試料からDNAを調製し、標識し、実施例4に記載するように、ヒトおよび非ヒト種(例えば、ラットまたはマウスのような齧歯類種)のどちらとも一緒に使用するために設計されたシンテニーアレイについて試験する。得られたデータは、かかるレポーター遺伝子の使用によって得られたものと相補的であり、どちらのデータも同一グループの動物から得ることができる。
【0113】
有利には、本明細書におけるシンテニーアレイを使用して得られたデータは、試験試料における染色体異常の存在および試験生物(例えば、ラット、マウス、モルモット)の染色体におけるその位置のどちらも示し、さらに、ヒトのような別の種の相同染色体におけるその位置を示す。したがって、ヒトにおける予定される計画毒性試験を行うことができない場合、本明細書では該試験生物を代用として使用する。
【0114】
マルチアレイ表面
本明細書で提供されるマルチアレイは、アレイの複数のコピー、すなわち、生物学的分子(例えば、核酸)のアレイを各表面に有する。本明細書において使用する場合、「マルチアレイ表面」または「表面」なる用語は、担体の片側または片面に適用された複数のマイクロアレイを有する製品を意味する。一般に、マイクロアレイは、該アレイが非連続であるような配置で担体の片面にプリントされるか、スポットされるか、または、沈着される。すなわち、該アレイは、表面上で違いに離れているか、または、各アレイの大きさおよび各アレイ内でスポットの間隔に比べて接触しない。
【0115】
複数のアレイを有するマルチアレイ表面は、以下の方法に望ましい:単一表面上で二重または三重にハイブリダイゼーションを行う。本発明以前は、単一表面上に存在する二重もしくは三重またはより大きい数の複製スポットが記載されていたが、全てのスポットが生物学的試料から調製した単一のハイブリダイゼーション混合物のハイブリダイゼーションに暴露された。ハイブリダイゼーション混合物は、典型的には試験対象体または参照対象体からの核酸試料を含有する溶液であり、蛍光染料で標識されるか、または、各々が同一または異なる染料で標識された異なる起源の核酸の2つの異なる試料の混合物である。ハイブリダイゼーション混合物は、表面のアレイのスポットまたはエレメントとのハイブリダイゼーションの前に形成され、例えば、該混合物は、第1蛍光染料で標識した試験対象体からの核酸および異なる区別できる染料で標識した参照試料からの核酸を含む。参照試料は、試験対象体と同一の種の正常な個体からの核酸であり得るか、または、異なる種の核酸または単一のBACクローンまたはBACクローン混合物からの核酸であり得る。BACクローンについて、NCBIは、ヒトBAC資源を維持し、ゲノムの細胞遺伝学、放射線ハイブリッド、連鎖、および配列マップを組み込んだ大きいインサートクローンに関するゲノムワイドな情報を提供する。www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/cyto/hrbc.shtmlを参照。
【0116】
かかるデータを分析するに際して、一般に「標識逆転」、「標識交換」または「染料交換」分析法として記載される蛍光標識を入れ替える2つの異なるフォーマットにおいてハイブリダイゼーションを行うことが望ましい。染料交換分析法において、少なくとも2つの核酸試料が比較されるべきであり、少なくとも2つの混合物が調製される。第1混合物において、第1蛍光染料のような第1標識を使用して参照核酸プローブを同定し、第2蛍光染料のような第2標識を使用して試験試料を同定し、各々の標識化後、混合物を調製する。次いで、標識を逆転させ、すなわち、参照核酸プローブが第2染料を担持し、試験試料が第1染料を担持する第2混合物を調製する。2つの混合物の各々は、固定化クローン化核酸の各々との各溶液核酸、参照および試験試料のハイブリダイゼーションの量をプロットするための参照を提供する。結果を、染色体上のクローン化固定化核酸の各々の一次元位置の関数としてプロットする。染色体の一部または全体、または、複数の染色体、または、完全な染色体の組(場合によっては性染色体を含む常染色体)、すなわち、ゲノム全体の表示がなされる。両方のデータセットを分析することから得られる結果を合わせて、標識逆転を使用しなかった場合に検出できない変化を明らかにする。これは、染料交換データが一緒にプロットされた場合、1.0の比からの小さな変動が統計学的には有意になり、単一の混合物だけを使用した場合には有意ではないからである。
【0117】
また、多数の試験対象体を同一の参照試料と比較するのが望ましい。これらのいずれの使用においても、単一表面の同一アレイの多数の反復が非常に有利または必要である。
【0118】
本明細書に記載される方法および表面以前は、いくつかの異なる表面の各々にプリントしたエレメントのアレイの複数または多数のレプリカを使用してかかる分析を行うことが必要であった。各レプリカは、アレイ内のエレメントの全ての一の完全な反復を有するか、または、点在したエレメントを有する2つの反復を有することができるか、または、互いに近くに配置された2つの反復を有することができ、2つの反復は、単一のハイブリダイゼーション混合物の向上した正確さについて統計学的レプリカとしての役割を果たす。2つの異なる混合物の各々の個別の完全性を維持しながら、単一表面をこの2つの異なる混合物と成功裏に接触させることができなかった。例えば、本発明の方法以前は、染料交換分析は、2つの混合物を用いて行われた。第1混合物は、第1染料で標識した試験核酸と第2染料で標識した参照核酸を混合した混合物であり、第2混合物は、第2染料で標識した試験核酸と第1染料で標識した参照核酸を混合したものであり、2つの混合物を2つの異なる表面の各々の別々のアレイを使用して分析した。
【0119】
異なる核酸混合物の各々の別々のハイブリダイゼーションのための多数の異なる表面の使用は、例えば、条件の変動、各核酸の濃度のマイナーなバリエーション、濃度のバリエーションによる各表面へのスポットの結合およびハイブリダイゼーションの効率、各々別々の表面とのハイブリダイゼーション時の洗浄方法または溶液のマイナーなバリエーションによる非特異的結合物質の溶出の異なる効率、または各々別々の表面とのハイブリダイゼーション後にアレイを可視化し評価するために使用されるスキャナーの光電子増倍管設定のバリエーションの変動の元となり得る。したがって、本明細書で提供される本発明の表面は、単一表面上に一緒に存在する複数のアレイであるマルチアレイを有することによって、以前の一般的な使用におけるこの問題点について対処する。
【0120】
限定されない一例において、2つのアレイは標準的な顕微鏡スライドガラスのような平坦な担体の遠位末端に位置するが、担体の別の形状および大きさならびにアレイの形状および大きさは、本明細書において考えられる表面、キットおよび方法の範囲内である。例えば、担体は、1インチ×3インチの顕微鏡スライドであってよく、両端に1つずつの2つアレイ、または直線的配置の4つのアレイのような複数のアレイを有していてよい。方形スライドのような大きい担体は、各コーナーに1つずつの4つのアレイ、または各辺に3つのアレイおよび中央に1つのアレイの9つのアレイを有することができる。
【0121】
また、本明細書に記載されるように、バリヤーの不在下での表面の実施態様に加えて、ハイブリダイゼーションの間、各アレイ上に沈着した液体の分離を維持するためのバリヤーを使用することができ、該バリヤーは、アレイの各々の間に置かれる。該バリヤーは、担体面または表面の水平面より高い高さを有する物理的「堤防」または「ダム」であり、かかるバリヤーは、製造された、または後に付加された、担体の隆起した部分を含む。別法として、該バリヤーは、1つのアレイから別のアレイへの水溶液の流れを妨げることができる「ストリップ」を設けるように担体にプリントされた疎水性材料であってもよい。該バリヤーは、マイクロアレイをプリントまたは沈着してマルチアレイ表面を作製する前または後に付加することができる。
【0122】
該バリヤーは、水溶液に溶解しない材料からなり、該材料は疎水性である。バリヤー構築またはプリンティングのための典型的な疎水性材料としては、ポリエチレン、シリコーン、パラフィンおよびTeflonRが挙げられる。
【0123】
単一担体の単一表面上に多数のアレイを有する「マルチアレイ表面」を使用するハイブリダイゼーションは、アレイの反復に各々のハイブリダイゼーション混合物を加え、ハイブリダイゼーション混合物をカバーで保護して蒸発による溶液の容量減少を防ぐことによって行われる。該カバーは、また、適当なマイクロアレイと上記したように1つまたはそれ以上の染料で標識した特定の試料または試料の混合物との各ハイブリダイゼーションを制限するように働く。予め決められた量のハイブリダイゼーション混合物を各アレイの上に沈着させ、その結果、例えば液体上に直接置かれるような、カバーの付加は、試料核酸がアレイ内の相補配列とハイブリダイズすることができるアレイ上に結果として生じる液体の薄層を生じる。表面上の各アレイについてのハイブリダイゼーションは個々のカバーの下で行われる。
【0124】
ハイブリダイゼーションの条件は変更することができる。例えば、ハイブリダイゼーション溶液は、表面上での多重ハイブリダイゼーションの液体分離を改善し確実なものとするように変更することができる。例えば、ハイブリダイゼーションの間に核酸と相互作用しない1つまたはそれ以上の溶質を加えることによってハイブリダイゼーション液体の粘性を増大させて流動性を低下させることができる。典型的な溶質としては、グリセロールのような粘稠液体である小分子;デキストランによって代表されるがこれに限定されるものではない糖のような小分子のポリマー;およびコーンスターチのようなデンプン;アルブミンおよびゼラチンのような合成ポリペプチドおよび自然発生のタンパク質であるアミノ酸のポリマー;および合成ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、またはポリアクリルアミドまたはアガロースが挙げられ、各溶質は、固定化核酸との相互作用およびハイブリダイゼーション(アニーリングして二本鎖複合体を形成する)のための溶解核酸の可動性に有意に影響を及ぼさずに粘性を増大させるのに十分な濃度である。増粘性溶質は、化学的に変更させて、その性質を改良してもよく、例えば、細菌および真菌類の細胞外酵素による消化に対して抵抗性であるようにすることができる。ハイブリダイゼーションのための溶液は、抗生物質および増殖阻害物質と一緒に貯蔵して、貯蔵の間の破壊を妨げることができる;別法として、溶液は、後の使用のための好都合な貯蔵のために冷凍または凍結乾燥させることができる。
【0125】
本明細書におけるマルチアレイ表面および方法は、染料交換分析の実施に限定されない。例えば、アレイの2つまたはそれ以上、例えば、4つ、5つ、6つまたは9つの反復を有するマルチアレイ表面を使用して、多数の試料、例えば、染色体障害を有する、核家族の複数のメンバーまたは複数の兄弟姉妹および発端者を分析することができ、別々のハイブリダイゼーションを使用して多数のマイクロアレイを有する単一担体上で一緒に分析することができる。また、複数の対象体を単一担体上で同時に分析することができるか、または、一の対象体を異なる参照試料の混合物中で分析することができる。異なる参照試料は、複数の異なる試験試料との比較の標準としての多くの反復使用のために関連する異なる種の各々から、または1つまたはそれ以上のいくつかの異なる既知の導入遺伝子または変異、異なる予め決定された単一のBACクローン核酸、または1つまたはそれ以上のBACクローンからの核酸の混合物を有する特定の動物株から予め調製することができる。
【0126】
キャリブレーションスポットおよび疾患陰性クローンを使用する染色体分析
試料のハイブリダイゼーションのための正の対照として働き、アレイ中に位置するキャリブレーションスポットは記載されている(2003年10月2日に公開された米国特許出願公開第2003-0186250-A1を参照、出典明示によりその全体として本明細書の記載とする)。本明細書で提供される表面および方法の実施態様において、キャリブレーションスポットは、クローン化核酸のサブセット、例えば、染色体障害または疾患に関連することがいずれの公表された参考文献によっても知られていない配列をもつヒトゲノムのこれらクローンを含むことができる。既知の染色体位置の核酸の特定のクローン化配列に適用される場合、「非反応性」なる用語は、核酸がいずれもの試験対象体からのゲノム核酸と完全に一般的にハイブリダイズすることを意味し、すなわち、染色体障害の偽の「陽性」診断を提供しないので「非反応性」である。非反応性またはバックボーンクローンはハイブリダイゼーションの正の対照であるので、したがって、それらは、染色体障害の検出のための試験試料と非反応性であると考えられる。
【0127】
キャリブレーションスポットは、アレイ中に存在する他のエレメントのいずれもの組み合わせからの核酸の混合物であり得るか、または、かかるエレメントのサブセットの混合物であり得るか、または、アレイ中にあまり表示されない核酸であり得る。例えば、キャリブレーションスポットは、ユーザーによって選択されたシンテニー染色体を表示するクローンのいずれか1つのシンテニーセットについて、またはヒトゲノムまたはいずれもの他の生物のゲノムにおける染色体の全てについて、上記で定義したバックボーンクローンの混合物であり得る。キャリブレーションスポットの一例は、例えば、バックボーンクローンからの、例えば、バックボーンクローンまたは非反応性クローンのような約10個、約20個、約40個または約80個のクローンからの、核酸の混合物を含んでいてよい。一例であり、限定されないキャリブレーションスポットは、ヒト常染色体および性染色体のセットの各々からの核酸を表示するように選択された72個の非反応性バックボーンクローンを含有する。別のキャリブレーションスポットは、ハイブリダイゼーションを規格化するために、魚または両生類のような無関係の異種の種からの核酸を含有し、その場合、試験試料および参照試料の各ハイブリダイゼーション混合物中に、認識可能な標識を担持する内部対照が付加されるか、または「スパイク」される。
【0128】
各染色体の表示(representation)は、2つの二重染料標識ハイブリダイゼーション(染料交換)の各々において標識の比率を算出することによって行われ、相対量は、通常左側に示されるp末端からの各クローン化染色体部分の距離の関数としてグラフにプロットされる。慣例により、2つの二重標識化物質の1つは、一貫した色(例えば、赤色)でプロットされ、他方は別の色(例えば、青色)でプロットされ、その結果、試験対象体における核酸の一部の検出は、1.0比よりも上に赤色で表示され(図1および2を参照)、増幅のような挿入は、1.0比ラインの上に青色でプロットされる。
【0129】
加えて、図面および実施例に示されるような本明細書において提供されるアレイは、既知の染色体障害に関連していない各染色体の一部からのクローン化核酸を含んでおり、その結果、試験対象体のDNAの染色体の表示は容易になり、所定の染色体上の染色体障害は、この染色体の正常な部分からより容易に区別される。
【0130】
(実施例)
以下の実施例は本発明の実施態様を説明するために提供されるものであり、さらに制限するものであると解釈すべきではない。該方法は、実施例全体にわたって使用される。
【0131】
実施例1. BACクローン核酸アレイの作製
30キロベース(30kb)よりも大きく約300kbまでのインサートを含有するBACクローン(Tart of et al., 1987, CA Cetheda Res. Lab Focus 86:184;カリフォルニア州カールスバッドのBio Laboratoriesから入手可能)をTerrific Broth培地(数多くの供給元から商業的に入手可能)にて増殖する。大きなインサート(例えば、>300kbのクローン)および小さなインサート(約1〜20kb)を使用することもできる。DNAは、修正アルカリ法プロトコール(例えば、Sambrookを参照)によって調製される。標識化実験において使用されるゲノムDNA試料は、RNAおよびタンパク質を実質的に含まないようにプロトコールによって調製される。このための一般的なプロトコールを使用することができ、以下の方法を限定と解釈すべきではない。
【0132】
細胞の溶解および細胞残骸の除去後、DNA試料にリボヌクレアーゼ(DNase−フリー、10mg/ml)を20〜100μg/mlの最終濃度になるまで加え、該混合物を37℃で30分間インキュベートする。プロテイナーゼKを100μg/mlの最終濃度で加え、試料を50℃で1時間インキュベートする。試料を室温に冷却し、等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を加える。円滑な回転またはエンド・ツー・エンド・ターニングによって二相を穏やかに10分間混合し、10,000gで3分間遠心分離することによって相を分離させる。
【0133】
水性層を取り出し、界面物質が観察されなくなるまで同様に再抽出する。クロロホルムを使用して残存フェノールを除去し、混合物を再度遠心分離し、水性層をきれいなチューブに取り出し、12分の1の量の5M NaClを加えることによってDNAを沈殿させる。ゆっくりとしたエンド・ツー・エンド・ターニング回転によって溶液を混合し、次いで、2.5容量の氷冷100%エタノール(または0.75容量の室温イソプロパノール)を加える。氷冷エタノールの添加後、試料を−20℃で30分〜1時間(または、イソプロパノールを使用した場合、室温で約15〜30分間)インキュベートする。
【0134】
最大速度で10分間の微量遠心分離によってDNA沈澱物を回収する。エタノール(またはイソプロパノール)上清を注意深く除去し、ペレットに70%エタノール1mlを加えて沈殿した塩を除去する。70%エタノールを穏やかに除去し、70%エタノールでのペレットの二回目のリンスを行う。二回目の70%エタノールを除去し、ペレットを滅菌蒸留水に溶解する。100〜200ng/μlのDNA濃度が得られ、該DNAは、8,454塩基対ラムダDNA−BstE II消化マーカーよりも大きい平均分子量を有しており、RNAを実質的に含まない。該DNAを本明細書に記載するように標識する。
【0135】
次いで、米国特許第6,048,695号に記載されるように、DNAを化学的に修飾する。次いで、米国特許第6,048,695号に記載されるように、修飾DNAを適切なバッファーに溶解し、きれいなガラス表面に直接プリントする。通常、各クローンに複数のスポットをプリントする。各完全アレイの2つまたはそれ以上の反復またはセットを該表面にプリントする。各完全アレイは、バリヤーによって分離されているか、または、スポットを有しないスペースによって分離されている。すなわち、複数の非連続アレイである。
【0136】
実施例2. ゲノムDNAの標識化
試験試料および参照試料用のゲノムDNAは、実質的に上記のように調製され、RNAおよびタンパク質を実質的に含まない。該DNAを前処理してより均一な小片を得、区別して標識し、本明細書に記載するようにスポットしたアレイを有するスライドとハイブリダイズさせ、洗浄し、スキャンし、染色体異常の検出のために分析する。
【0137】
前処理は、DNase、好ましくは、EcoRIのような四塩基対カッターで消化してゲノムDNAのサイズを減少させることを含む。約1μgの試料DNAをEcoRI(2μlまたは20ユニット)と一緒に37℃で約16時間インキュベートする。0.8%アガロース中での電気泳動によって該反応の完了の程度を分析し、600bp〜≧20kbの相対的に均一なスメアが観察された場合には完了したと決定される。消化が完了した場合、管を72℃で10分間インキュベートすることによって該反応を停止させる。本明細書に記載するフェノール/クロロホルム抽出法およびエタノール沈降法によって、または、等価な手段(Zymo Research kit、DNA Clean and ConcentratorTM−5、カタログ番号D4005、カナダ国オンタリオのHornby)によってDNAを再度精製する。
【0138】
試験試料および参照試料DNAの各々のアリコートをCy3TM−dCTPおよびCy5TM−dCTPの各々で標識して、同時ハイブリダイゼーションを容易にする。水25μl中の再度精製した消化DNA約500μgを2.5Xランダムプライマー反応混合物(Gibco/BRL BioPrime標識キット、ミズーリ州ベテスダのGibco/BRL)20μlに加える。試料を混合し、100℃で5分間インキュベートし、次いで、氷上にて5分間インキュベートする。DNAの各管にSpectral Labeling Buffer(テキサス州ヒューストンのSpectral Genomics, Inc.)2.5μl、およびCy3TM−dCTP(1mmストック)またはCy5TM−dCTP(1mmストック)1.5
μlを加える。次いで、Klenowフラグメント(Gibco/BRL BioPrime Labelingキットから)1μlを加え、溶液を混合し、簡単な遠心分離によって再度回収し、試料を37℃で約1.5〜2時間インキュベートする。試料を氷上に置き、電気泳動(0.8%アガロースを使用)によって分析して、約100bp〜約500bpの範囲を有するにちがいないプローブサイズを測定する。0.5M EDTA(pH8.0)5μlを添加することによって該反応を停止させ、72℃で10分間インキュベートし、次いで、試料を氷上に置く。管の内容物はハイブリダイゼーションの準備ができているか、または、必要とされるまで−20℃で貯蔵することができる。
【0139】
ハイブリダイゼーションのために、標識化試験試料および標識化参照試料の混合物を2つ調製する。Cy3TM標識化試験試料DNAの管内容物をCy5TM標識参照DNAの管内容物と混合し、Cy3TM標識化参照DNAの管内容物をCy5TM標識試験DNAの管内容物と混合する。Spectral Hybridization Buffer(45μl;テキサス州ヒューストンのSpectral Genomics, Inc.)を各管に加え、5M NaCl 11.3μlおよび室温イソプロパノール110μlを加えることによって内容物を沈殿させる。試料を混合し、暗所にて室温で約10〜15分間インキュベートし、最大速度で10分間好ましくは暗所にて遠心分離し、上清を吸引する。ペレットを70%エタノール500μlでリンスし、暗所にて簡単に風乾し、滅菌水10μlを加え、管を室温で5分間インキュベートし、完全に混合する。ペレットが溶解したら、Spectral Hybridization Buffer(テキサス州ヒューストンのSpectral Genomics Inc.)30μlを加え、反復ピペッティングによって管内容物を混合する。72℃で10分間インキュベートすることによって試料を変性させる。
【0140】
実施例3. イオン強度の関数としての核酸スポットのプリンティングの最適化
スポットは、二重ブロックにおいて1つのパターンでスライドガラス上に無人操縦で一般的にプリントする。各ブロックは、数百個のスポットを含有する。乾燥後、各スポットを顕微鏡で調べて、生物学的物質の沈着の質を評価する。高い質は、プリントされたスポットの高い割合の滑らかで均一な外観によって示され、ハイブリダイゼーションの均一なパターンに反映される。低い質は、試料が中央に不均一に沈着するような「山」として、またはいくつかの「丘」として、またはスポットの直径を横切ってX字形に現れるスポットによって示され、同様に分布したハイブリダイゼーションに反映される。
【0141】
スライドガラス上のアレイにおけるスポットの質に対するプリンティングバッファーのイオン強度の作用を測定するために、表1に示すように、6つのBAC DNA試料を調製した。
【0142】
【表1】

全てのバッファーは、400mm NaOHおよび1M TRIS−HCl、0.1M EDTA、pH4.3の標準的な貯蔵溶液から調製した。
【0143】
DNAのアリコートを各管1〜6に加え、スライドガラス上にスポットをプリントし、標準的な方法によって乾燥させた。
【0144】
プリントしたスライドの実験は、管3で見られた条件でプリントしたものの良好な質、すなわち、最大割合のプリントしたスポット上に沈着したDNAの均一な分布を示した;管1、2、4および5についてのバッファー中でプリントしたスポットを有するスライドは管3のバッファーを用いてプリントしたものよりも悪い質の外観のものであり、悪い質のハイブリダイゼーションを提供した。管2〜5におけるこれらの中間イオン強度は、従前使用のバッファー(管1)よりも高いイオン強度を有する。プリントしたスポットの最適な外観は、参照試料のハイブリダイゼーションの最大信頼度および再現性に反映され、管3のバッファーにおいてプリントしたスポットに関して見られた。
【0145】
スポットのプリンティングのためのバッファーの生成は、上記で示したデータの結果として、等量の2つの貯蔵溶液(溶液Iは150mM NaOHであり、溶液IIは300mM TRIS−HCl、30mM EDTA、pH4.3である)を混合することによってさらにプリントするために変更した。このプリンティングバッファーの成分の最終濃度は、75mM NaOH、150mM TRIS−HClおよび15mM EDTAである。
【0146】
実施例4. シンテニーアレイの調製
DNAは、各マウス染色体および目的の各ヒト染色体についてシンテニーであるDNAインサートを有する特徴付けられたBACクローンから上記したように調製される。DNAは、スライドカラス上のアドレス可能な位置(スポット)のアレイに沈着(プリント)される。アレイ化DNAは、ヒトの正常な染色体およびマウスのような他の種の正常な染色体から、または、既知の疾患を有するヒトまたは肺癌、中皮腫、腺癌および前立腺癌のようなヒト疾患のモデルであるマウス疾患を有するマウスの染色体からのものであり得る。ヒトおよび別の種、すなわち、ヒト配列と相同であるマウスシンテニー配列の両方の存在がシンテニーアレイを構成する。
【0147】
シンテニーアレイはまた、ヒト−ラット;ヒト−チンパンジー;ヒト−イヌなどのような他の種DNAの組み合わせについてもプリントされる。
【0148】
試験試料および参照試料(正および負の対照)は、疾患対象体および正常な対象体(固定化DNAのアレイを有することによって同定されるこれらの種の対象体に必ずしも限定されない)のゲノムDNAから調製される。各々を第1蛍光染料および第2蛍光染料で標識し、試験試料および参照試料の混合物を2つ調製する。2つの混合物の各々を表面上の多数のアレイのアレイと別々にハイブリダイズさせる。
【0149】
実施例5. 比率プロット分析を使用する染色体異常の検出
図1aは、p腕からq腕の左から右の順番での、25BACクローンからのDNAの比率の線形表示を使用して、第18染色体の固定化BACクローンとハイブリダイズした患者DNAの試料の比率プロットである。ハイブリダイゼーションを2回繰り返した。1回目は、Cy3TMで標識した試験DNA(患者からのもの)およびCy5TMで標識した参照正常DNAの混合物を用いてハイブリダイゼーションを行った;2回目の反復は、Cy5TMで標識した試験DNA(患者からのもの)およびCy3TMで標識した参照正常DNAの混合物を用いてハイブリダイゼーションを行った。データを分析した後、Cy5:Cy3の比率を測定し、図に示すようにプロットする。
【0150】
両方の正規化関数が同一の3つのq末端BACハイブリダイゼーションについての値を増加させている(どちらも試験試料または参照試料のどちらが比率の分子であるかに関係なく、1.0のモード値からの同時逸脱を示す)ので、第18染色体のq末端で、患者データは欠失を示す。両方の関数が2つのBACクローンに関して反対方向に逸脱するので、図1bに示される同様の比率プロットは、青色(参照試料が分子)DNAが赤色(試験試料DNAが分子)ハイブリダイゼーションよりも大きく、同一患者の第4染色体のq末端のDNAが挿入を有することを示す。
【0151】
図2は、別の男性患者のX染色体の比率プロットを示しており、本明細書に記載したコンピューター処理によって、この染色体のp末端に見られる配列の挿入(増幅)があることが示される。この増幅が少なくとも3つのBACクローンに及ぶことが示される。関数のうち1つだけがモード値1.0からある程度まで逸脱するので、この染色体のq末端で示される逸脱はランダムであり、有意ではないと考えられる。
【0152】
実施例6. シンテニーアレイを使用する染色体異常についての癌組織の試験
肺癌、中皮腫、腺癌および前立腺癌のような特定の癌症状を有するマウスの株の癌細胞を使用してDNA試験試料を調製する。試験試料は、各々異なるステージの各疾患を有する個々のマウスから得られた組織から調製される。本明細書に記載するように、DNAをフラグメント化し、標識化し、ハイブリダイズする。ヒトおよびマウスにおいて高度に相同であるクローン化BAC染色体からのヒトおよびマウスシンテニー配列の各々についてのプローブエレメントを有するシンテニーアレイを使用するハイブリダイゼーションデータの比率プロットから、これらの症状の各々に関連する異常を測定する。
【0153】
次いで、種々のステージの疾患を有するヒト患者から得られた試験試料DNAを使用して、これらの異常の存在、程度および位置を測定し、その結果、癌のステージを診断および予後診断する能力を有する診断装置を確立する。データは、マウス染色体セット上の癌誘発性変化の位置を示すだけでなく、ヒトにおいておよびヒト染色体セット上の相同配列についての遺伝子座で生じるかかる変化の位置も示す。
【0154】
実施例7. シンテニーアレイを用いる毒性試験
試験動物(または試験細胞)(例えば、ラット、マウスまたはモルモットのような齧歯類)の群を化学物質に暴露する。1つの実験では、遺伝毒性活性または変異活性について試験するために1つの群の各試験動物メンバーに一定濃度の1つまたはそれ以上の化学物質を注射し、別の群にはそれぞれ異なる量を投与し、1つの群には担体または溶媒だけを投与し(負の対照)、その結果、一連の濃度の組成物を試験して用量反応曲線を確立する。遺伝毒性活性は、1つまたはそれ以上の欠失/挿入変異、または1つの遺伝子座および染色体から同一または異なる染色体の別の遺伝子座へのDNAの転座、または染色体のある領域の増幅を生じるとして検出される。もう1つの実験では、培養細胞を、単一管中の10の化学物質の群におけるように、一連の化学物質の各々に、個別に、または組み合わせて暴露する。すなわち、遺伝毒性との相互関係を得るために、個別にまたは小グループでさらに分析することができる兄弟姉妹群で関連化学物質を試験する。
【0155】
細胞または生物を1つまたはそれ以上の化学組成物に様々な時間および/または濃度で暴露するかまたは接触させた後、細胞試料から、例えば、剖検または生検からの体組織から、例えば、血液試料のような卵巣組織または精巣組織から、または化学物質に暴露した培養細胞から、DNAを調製する。上記したように、該DNAをフラグメント化し、反対に標識した参照試料と混合すべき試験試料について、2つの蛍光染料または等価な検出可能な標識の各々で標識し、混合物を各々、齧歯類(例えば、マウス)ゲノムおよびヒトゲノムの両方を有するシンテニーアレイの反復、またはプローブエレメントとして配列された特定の染色体からのクローン化核酸とハイブリダイズさせる。データは、齧歯類染色体セットにおいて、およびヒト染色体セットの相同配列について、試験動物または細胞からの試験試料におけるDNA損傷の程度および位置を示す。
【0156】
本発明の多数の実施態様を記載した。それにもかかわらず、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく種々の変更を行うことができることが理解されるであろう。したがって、他の実施態様は特許請求の範囲の範囲内である。
【0157】
実施例8. トランスジェニック動物において染色体異常を分析するためのシンテニーアレイ
多種多様のトランスジェニック動物が研究および試験のために利用可能である。遺伝子機能を欠いている動物、この実施例では、一酸化窒素シンターゼ(NOS)をコードする遺伝子における破壊を有するマウス株をスクリーニングのために使用して、表現型を修正する能力を有する組成物を同定することができる(2001年10月30日に発行された米国特許第6,310,270号)。処置群および対照群における各動物の血液試料からDAN試料を調製され、上記実施例に記載したように2つの蛍光染料の各々で標識し、上記のように標識化試料および異なって標識化した参照DNAの混合物を調製する。処置および対照動物DNA混合物を、各アレイブロック中にヒトおよびマウスBACクローン化DNAの各々を有するシンテニーチップとハイブリダイズさせる。
【0158】
結果はこれらの組成物のうちのどれが破壊された表現型NOSを修正する際に活性であるか、試験動物において染色体異常を引き起こさなかったかを示す。組成物の大部分が染色体異常を引き起こさないことが考えられ、そこで、ベンゼンのような染色体異常を引き起こすことが知られている因子を投与した動物のさらなる正の対照群が含まれる。この実施例では、同一グループの試験および対照動物において、組成物を、薬理活性、NOSの欠失の修正、および染色体異常の誘発の両方、すなわち、催奇形性および変異原性についてスクリーンする。シンテニーチップ読み取りは、マウスおよびヒトエレメントを含有しており、マウス参照DNAと比較してマウスにおいて観察されるいずれもの染色体異常が新しく生じたと考えられるので、該染色体異常は、マウス染色体およびゲノム、ならびにシンテニーチップの単一表面上のヒトゲノムの相同エレメントの両方に関して同時に分析される。
【0159】
実施例9. ヒト疾患の動物モデルにおける染色体異常を分析するためのシンテニーアレイ
非肥満糖尿病(NOD)マウスの群に様々な組成物の各々を投与して、これらがI型またはインシュリン欠乏性糖尿病を治療または予防する能力を有するかどうかを判定する。因子を静脈内投与する。
【0160】
治療プロトコールの最後に、処置および対照群における各動物の血液試料からDNA試料を調製し、上記実施例に記載したように2つの蛍光染料の各々で標識し、標識試料および異なって標識した参照DNAの混合物を上記のように調製する。処置および対照動物DNA混合物を、各アレイブロック中のヒトおよびマウスBACクローン化DNAの各々を有するシンテニーチップとハイブリダイズさせる。
【0161】
結果は、これらの組成物のうちのどれがモデル疾患、糖尿病を治療する際に活性であるか、試験動物において染色体異常を引き起こさなかったかを示す。組成物の大部分が染色体異常を引き起こさないことが考えられ、そこで、該実施例において、染色体異常を引き起こすことが知られている因子を投与した動物の正の対照群を含むことができる。このように、同一グループの試験および対照動物において、組成物を薬理活性、糖尿病の治療、および変異原性の両方についてスクリーンした。シンテニーチップ読み取りは、マウスおよびヒトエレメントを含有しており、マウス参照DNAと比較してマウスにおいて観察されるいずれもの染色体異常が新しく生じたと考えられるので、該染色体異常は、マウス染色体およびゲノム、ならびにシンテニーチップの単一表面上のヒトゲノムの相同エレメントの両方に関して同時に分析される。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1aは、正常な対照と比較した発育遅延および中枢神経系脱髄を有する12歳の患者の第18染色体の比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)の比率プロットであり、約7メガベース(Mb)の18q末端の欠失を示す。遺伝物質の欠失は、第18染色体q末端である図面の右側での、Cy5TM標識参照試料と比べたCy3TM標識試験試料の増加によって示される(アレイと一緒に商業上入手可能なグラフィックス・ソフトウェアを使用して赤色で示される)。図1bは、図1aと同一の患者の第4染色体のCGHの比率プロットであり、3.7Mbの4qでの遺伝物質の増加を示す。遺伝物質の増加は、第4染色体q末端である図面の右側での、Cy3TM標識試験試料と比べたCy5TM標識参照試料の増加によって示される(アレイと一緒に商業上入手可能なグラフィックス・ソフトウェアを使用して青色で示される)。
【図2】正常な男性対照と比べた男性患者のX染色体の比率プロットであり、(X染色体のp末端で)遠位Xp複製を示す。遺伝物質の増加は、Cy3TM標識試験試料と比べたCy5TM標識参照試料の増加によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体上のアドレス可能な位置の一のアレイ中に複数の固定化エレメントを含む核酸アレイであって、この複数のエレメントが染色体シンテニー鎖からの核酸配列を含み、エレメントの第1セットが生物の第1種からのものであり、エレメントの第2セットが第2種からのものであり、この第1種と第2種は異なるものであり、生物の第1種からのエレメント中の核酸が、生物の第2種のシンテニー染色体からの核酸エレメント中の核酸配列に対して相同である核酸配列を含む、核酸アレイ。
【請求項2】
エレメントの第1セットの核酸がクローン化ゲノムDNAである、請求項1記載のアレイ。
【請求項3】
クローン化ゲノムDNAが、酵母人工染色体(YAC)、バクテリア人工染色体(BAC)、哺乳動物人工染色体(MAC)およびP1ファージ人工染色体(PAC)からなるベクターの群から選択されるベクター上に保有される、請求項2記載のアレイ。
【請求項4】
少なくとも1つの生物が、齧歯類、非ヒト霊長類、海生哺乳動物、ウサギ目の動物、ブタ、ウシ、肉食動物、ヤギ、ウマ、両生類、魚および昆虫からなる群から選択される、請求項1〜3いずれか1項記載のアレイ。
【請求項5】
少なくとも1つの生物が、非ヒトトランスジェニック哺乳動物またはモデル疾患を有する哺乳動物である、請求項1〜3いずれか1項記載のアレイ。
【請求項6】
少なくとも1つの生物がヒトである、請求項1〜3いずれか1項記載のアレイ。
【請求項7】
少なくとも1つの生物が、ゴリラ、チンパンジー、サル、イヌ、ハムスター、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、カエル、ヒキガエル、ゼブラフィッシュおよびハエからなる群から選択される、請求項1〜3いずれか1項記載のアレイ。
【請求項8】
生物種がヒトおよびマウスである、請求項1〜3いずれか1項記載のアレイ。
【請求項9】
アレイが、さらに、各アレイが第1セットの核酸エレメントおよび第2セットの核酸エレメントを含む複数の非連続アレイを含むマルチアレイ表面を含む、請求項1〜8いずれか1項記載のアレイ。
【請求項10】
第1種の核酸のエレメントの少なくとも1つが第2種の核酸のエレメントの少なくとも1つと少なくとも約50%相同である、請求項1〜9いずれか1項記載のアレイ。
【請求項11】
第1種の核酸のエレメントの少なくとも1つが第2種の核酸のエレメントの少なくとも1つと少なくとも約70%相同である、請求項1〜10いずれか1項記載のアレイ。
【請求項12】
第1種の核酸のエレメントの少なくとも1つが第2種の核酸のエレメントの少なくとも1つと少なくとも約90%相同である、請求項1〜11いずれか1項記載のアレイ。
【請求項13】
が少なくとも1つのキャリブレーションスポットを含む、請求項1〜12いずれか1項記載のアレイ。
【請求項14】
エレメントが少なくとも1つの種の少なくとも1つの染色体を表示する核酸配列を含む、請求項1〜13いずれか1項記載のアレイ。
【請求項15】
エレメントが少なくとも1つの種のゲノムを表示する核酸配列を含む、請求項1〜14いずれか1項記載のアレイ。
【請求項16】
複数の非連続アレイの各々がバリヤーによってお互いに隔てられている、請求項9〜15いずれか1項記載のアレイ。
【請求項17】
生物種の細胞に対する環境中の組成物または物理的力の遺伝毒性を測定する方法であって、
第1種の試験細胞または細胞集団を該組成物または該力と接触させること;
接触した試験細胞または集団から核酸試料を得ること;および
該試料の核酸を担体上のアドレス可能な位置に固定したシンテニー核酸のアレイとハイブリダイズさせることによって該試料の核酸を異常について分析すること(ここで、該シンテニーアレイは、第1種のゲノムからのシンテニー核酸の配列を含むエレメントを有し、かつ、少なくとも生物の第2種のゲノムからのシンテニー核酸の配列のエレメントを有する)
を含む、方法。
【請求項18】
第2種がヒトである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
接触させることが、細胞または集団に組成物を添加すること、または細胞または集団を力に暴露することである(ここで、細胞または集団は細胞培養におけるものである)、請求項17〜18いずれか1項記載の方法。
【請求項20】
試験細胞または集団がインビボでの第1種の生物である、請求項17〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
インビボで細胞または生物を処置することが、経口投与、局所投与、経皮投与、注射からなる群から選択される経路により組成物を投与すること、または細胞または生物を力に暴露することである、請求項17〜18いずれか1項記載の方法。
【請求項22】
インビボで第1種を接触させることが、生物を自然環境下で該組成物または該力に暴露することである、請求項18〜18および請求項20のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
第1種がゴリラ、チンパンジー、サル、イヌ、ハムスター、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、カエル、ヒキガエル、魚および昆虫からなる群から選択される、請求項17〜22いずれか1項記載の方法。
【請求項24】
接触した生物のゲノムを分析することが、さらに、試験細胞からの核酸の試料とアレイとのハイブリダイゼーションと、参照細胞からの核酸の試料とアレイとのハイブリダイゼーションとを比較することを含む、請求項17〜23いずれか1項記載の方法。
【請求項25】
参照細胞が第1種、第2種または第3種のいずれかからの細胞である、請求項17〜24いずれか1項記載の方法。
【請求項26】
第1種がトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはモデル疾患を有する哺乳動物である、請求項17〜24いずれか1項記載の方法。
【請求項27】
参照細胞が、組成物を投与していない第1種の細胞であり、この投与していないこと以外は試験細胞と同一である、請求項17〜25いずれか1項記載の方法。
【請求項28】
さらに、試験細胞からの核酸とアレイとのハイブリダイゼーションおよび参照細胞からの核酸とアレイとのハイブリダイゼーションを、各々とキャリブレーションスポットとのハイブリダイゼーションと比較することを含む、請求項17〜27いずれか1項記載の方法。
【請求項29】
さらに、ハイブリダイズさせる前に、試験細胞核酸および参照細胞核酸の各々を第1蛍光染料および第2蛍光染料で別々に標識すること(ここで、第1染料および第2染料は異なる発光スペクトルを有する)を含む、請求項17〜28いずれか1項記載の方法。
【請求項30】
さらに、標識後、第1染料で標識した試験細胞核酸および第2染料で標識した参照細胞核酸を含む第1混合物を調製すること、および、第2染料で標識した試験細胞核酸および第1染料で標識した参照細胞核酸を含む第2混合物を調製すること、および、第1混合物および第2混合物の各々をシンテニーアレイの反復と別々にハイブリダイズさせることを含む、請求項17〜29いずれか1項記載の方法。
【請求項31】
シンテニーアレイの反復が、複数の非連続シンテニーアレイを含むマルチアレイ表面であり、混合物をアレイとハイブリダイズさせることが第1混合物および第2混合物の各々を複数のシンテニーアレイのメンバーに別々に適用することである、請求項17〜30いずれか1項記載の方法。
【請求項32】
さらに、第1染料および第2染料と第1混合物および第2混合物の各々についての各エレメントとのハイブリダイゼーションの程度の比率を正規化することによって試験細胞および参照細胞のゲノムを比較することを含む、請求項17〜31いずれか1項記載の方法。
【請求項33】
さらに、得られた比率のセットをp−末端からq−末端までの染色体に沿った距離としての核酸の各々の位置の関数としてプロットして、試験細胞染色体の表示を得ることを含む、請求項17〜32いずれか1項記載の方法。
【請求項34】
第1混合物および第2混合物をマルチアレイ表面のシンテニーアレイの反復とハイブリダイズさせることが、さらに、該混合物の各々に別々にカバーを適用すること、バリヤーによって隔てられた領域に該混合物を適用すること、および該混合物の各々に増粘性溶質を添加することのうち少なくとも1つを含む、請求項31〜33いずれか1項記載の方法。
【請求項35】
さらに、試験生物の染色体異常の染色体および染色体位置を同定することを含む、請求項17〜34いずれか1項記載の方法。
【請求項36】
第1種が非ヒトであり、シンテニーアレイがヒトゲノムのエレメントを含み、該方法が、さらに、ヒトゲノムにおける異常の相同染色体および染色体位置を測定することを含む、請求項17〜35いずれか1項記載の方法。
【請求項37】
担体上のアレイ中に固定したエレメントの核酸がクローン化DNAを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
参照試料核酸と比べた試験試料核酸中の染色体異常の量が組成物または力の遺伝毒性の程度の指標である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
組成物または力が、有害業種化合物、化学兵器、風媒性の塵、光化学スモッグ、天然産物、化粧品、食品添加物、農作物、工業化合物、新規化学物質、リード化合物、医薬品、汚水および環境試料、およびその抽出物または調製物、放射性物質からの放射、紫外線ビームおよびX線ビームからなる群から選択される、請求項17〜38いずれか1項記載の方法。
【請求項40】
マルチアレイ表面の反復の各々が、さらに、少なくとも1つのキャリブレーションスポットを含む、請求項30〜39いずれか1項記載の方法。
【請求項41】
キャリブレーションスポットがアレイ中の複数のエレメントからの核酸配列を含む、請求項28および40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
表面上に固定した生物の複数の種のゲノムからのヌクレオチド配列をもつ核酸エレメントを有する少なくとも1つのシンテニーアレイ、および容器を含む、請求項17〜41いずれか1項記載の方法を使用するためのキット。
【請求項43】
さらに、複数の検出用標識、および使用説明書を含む、請求項42記載のキット。
【請求項44】
少なくとも1つのシンテニーアレイが複数のシンテニーアレイを有するマルチアレイ表面を含む、請求項42〜43いずれか1項記載のキット。
【請求項45】
疾患の進行の間に対象体の細胞において染色体異常の存在および位置を同定する方法であって、
該疾患に冒されている細胞から核酸試料を得ること;および
該試料を、第1種のゲノムからの核酸を有する第1シンテニー核酸アレイのエレメントとハイブリダイズさせ、さらに、該試料を、第2種のゲノムからの核酸を有する第2シンテニー核酸アレイのエレメントとハイブリダイズさせることによって、該試料を染色体異常について分析すること(第1アレイおよび第2アレイのエレメントは担体上に固定されている)
を含む、方法。
【請求項46】
第1種または第2種がヒトである、請求項45記載の方法。
【請求項47】
疾患がヒト疾患の動物モデルである、請求項45〜46いずれか1項記載の方法。
【請求項48】
疾患が癌である、請求項45〜47いずれか1項記載の方法。
【請求項49】
疾患が固形腫瘍または血液増殖症状である、請求項45〜48いずれか1項記載の方法。
【請求項50】
疾患が、皮膚、肺、乳房、頭頸部、前立腺、卵巣、脳、白血病、胃(gastric)、胃(stomach)、食道、膵臓、およびリンパ腫の癌からなる群から選択される、請求項45〜49いずれか1項記載の方法。
【請求項51】
疾患がステージIの癌である、請求項45〜50いずれか1項記載の方法。
【請求項52】
癌がステージII、ステージIIIおよびステージIVの癌から選択される、請求項45〜50いずれか1項記載の方法。
【請求項53】
癌が転移性である、請求項45〜50いずれか1項記載の方法。
【請求項54】
さらに、疾患の進行の異なるステージを表す時点で対象体からの細胞のさらなる核酸試料を得ることを含む、請求項45〜53いずれか1項記載の方法。
【請求項55】
疾患が、肺癌、中皮腫、腺癌および前立腺癌からなる動物癌の群から選択される、請求項45〜54いずれか1項記載の方法。
【請求項56】
担体が、複数のシンテニーアレイを有するマルチアレイ表面を含み、該アレイが第1種の核酸エレメントおよび第2種の核酸エレメントを含む、請求項45〜55いずれか1項記載の方法。
【請求項57】
担体が、さらに、アレイの複数のエレメントからの核酸エレメントを含む少なくとも1つのキャリブレーションスポットを含む、請求項45〜56いずれか1項記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−521014(P2007−521014A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522687(P2006−522687)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/025124
【国際公開番号】WO2005/012500
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.テフロン
【出願人】(506423109)パーキンエルマー・エルエイエス・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PerkinElmer LAS, Inc.
【Fターム(参考)】