説明

診断検査のための人工的な突然変異対照

特定の遺伝性疾患に関する診断アッセイなどの、遺伝子検査アッセイにおいて陽性対照として利用できる人工的組成物が開示される。そのような対照を利用して、特定の突然変異の有無を確認することができる。そのような組成物を作出する方法、およびそれらの使用方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本出願は、遺伝子診断検査で使用できる陽性対照サンプル、そのようなサンプルを作出する方法、およびその使用の方法に関する。なお、本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2004年3月11日付で出願された米国仮出願第60/552,979号の恩典を主張する。
【0002】
政府支援の承認
本発明は疾病対策予防センターからの助成番号200-2000-10030の米国政府支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒトゲノム計画によって加速された疾病遺伝子発見の急速な進展が、今度は、分子診断検査室によって検査される分析物、とりわけ遺伝性疾患検査に関与するものの数の連続的な拡大を促している。遺伝子発見から臨床検査転換までの期間は、検査の臨床的有用性の十分な理解のため、所望とされるよりも短くあってよいかどうかを疑問視する者もいる。
【0004】
しかしその必要性が満足されたとしても、新たな試験開発の速度や分析の標的とされる遺伝子および突然変異の数の多さが別の障害をもたらしている、つまり関心対象の突然変異を含む十分に特徴付けされた対照材料の不足である(Williams et al. Arch. Pathol. Lab. Med. 127:1353-8, 2003(非特許文献1))。これらの材料は試験の研究および開発のため、試験の検証および評価のため、アッセイで陽性対照として、ならびに米国病理医協会(CAP)や米国臨床遺伝学会(ACMG)が合同で提供する全国的かつ国際的な技能検査プログラム(Grody, Diagn. Molec. Pathol. 3:221-3, 1994(非特許文献2); Dequeker et al. Nature Rev. Genet. 2:717-23, 2001(非特許文献3); Richards and Grody, Clin. Chem. 49:717-8, 2003(非特許文献4))およびCDCが提供する性能評価プログラム(CDCウェブサイト上のModel Performance Evaluation Program (MPEP)を参照のこと)などの品質保証プログラムのための供給源として利用される。
【0005】
天然源からのこれらの対照材料の調達は、多くの標的突然変異の希少性、臨床試料の量の限定、患者サンプルを既存の貯蔵所(Coriell研究所などの)に寄託するのに自ら乗り出すおよびその必要性を認識する臨床家への依存、ならびにインフォームド・コンセント、サンプル所有権および遺伝子のプライバシーなどの規制管理によって阻まれている。容易に利用できる、有効な突然変異対照の不足が臨床の分子遺伝学的検査の向上に対し大きな障害であることが判明している。それ故、この目的を果たしうる代替的対照が必要とされている。
【0006】
【非特許文献1】Williams et al. Arch. Pathol. Lab. Med. 127:1353-8, 2003
【非特許文献2】Grody, Diagn. Molec. Pathol. 3:221-3, 1994
【非特許文献3】Dequeker et al. Nature Rev. Genet. 2:717-23, 2001
【非特許文献4】Richards and Grody, Clin. Chem. 49:717-8, 2003
【発明の開示】
【0007】
概要
遺伝病の分子遺伝学的検査のための簡単に手に入る、患者由来の材料の不足が、検査室の技能および品質管理手順に対する主な障害になっている。本明細書に示される組成物および方法は、患者由来の突然変異陽性サンプルの代替物を提供する。開示される組成物および方法は、天然のヒトサンプルに似せるようデザインされた関心対象の突然変異を含む合成サンプルを提供する。開示される組成物は、診断および臨床の検査室のための許容されるおよび現実的な性能評価対照および品質管理試薬として機能し、それ故に従来の患者由来の突然変異サンプルに対する信頼のできる代用物となりうる。この組成物および方法は同様に、一貫性があり再生可能な、陽性対照材料の供給源を提供し、それにより永久的資源の可能性を提供することができる。例えば、開示される組成物を増やし、標的配列の忠実度を無期限に維持することができる。
【0008】
特定の例では、開示される組成物および方法は比較的単純、強力、および再現可能であり、多くの遺伝子および疾患に対する多種多様な突然変異サンプルの作出に適用可能である。具体的な例は遺伝的および非遺伝的疾患(例えば、癌マーカー)、感染症の病原体および宿主マーカー、微生物の抗生物質耐性遺伝子、ならびに分子に基づく微生物タイピングおよびサブタイピングを含むが、これらに限定されることはない。対照は個別にまたはセットで、例えば、分子遺伝学的検査または感染症検査で使用されてもよい。
【0009】
開示される組成物および方法は、遺伝物質のための実際の患者を同定するおよび求める必要を減らすまたはなくすことができ、どんなに稀有であっても、望まれる任意の突然変異(遺伝病を引き起こすものなどの)を有する合成標的配列を調製するのに使用することができる。嚢胞性線維症遺伝子(CFTR)を利用し、特定の例を本明細書に開示するが、本開示は、CFTRを含む配列および嚢胞性線維症を引き起こす突然変異に限定されることはない。実際に、開示される組成物および方法を利用して、疾患を引き起こす突然変異などの、関心対象の任意の遺伝子中の任意の突然変異を含む合成核酸分子を作出することができる。
【0010】
本明細書に開示されるのは、例えば、疾患を引き起こすまたはもたらすものなどの、1つまたは複数の遺伝子突然変異をスクリーニングする診断アッセイにおいて、陽性対照として利用できる組成物である。特定の例では、そのような組成物は、被験体由来ではない材料を含む、つまり、それらは人工的にまたは合成的に作出された核酸分子だけを含む。1つの例では、組成物は、少なくとも1種の突然変異(1つの変異対立遺伝子などの)を含んだ合成標的配列および関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列(野生型配列などの)を含む。例えば、標的突然変異がヘテロ接合突然変異であるなら、合成標的配列は、突然変異させた対立遺伝子を含んだ核酸分子を含むことができ、その一方で合成標的対照配列は、対応する野生型核酸分子(その突然変異が他方の核酸鎖に起こりうる少なくともその位置の)を含む。特定の例では、少なくとも1種の突然変異を含んだ合成標的配列および関心対象の遺伝子領域を含んだ合成標的対照配列は、別個の核酸分子上に存在し、いくつかの例では、その別個の分子は1:1のモル比で(ヘテロ接合突然変異に相当するよう)組成物中に存在する。いくつかの例では、組成物は、例えば、天然に存在する生物源から得られる対照配列の中のバックグラウンドDNAの濃度を模倣する所望のバックグラウンド濃度まで組成物中のDNA濃度を増加させるため、キャリアDNAをさらに含む。
【0011】
別の例では、組成物は、キャリアDNAおよび少なくとも1種の突然変異、例えば、2つの対立遺伝子中1種の突然変異を含んだ合成標的配列を含む。例えば、標的の突然変異がホモ接合突然変異であるなら、合成標的配列は、両対立遺伝子に突然変異を含んだ核酸分子を含むことができる。キャリアDNAを組成物中に含めて、総DNA濃度を標的の量にまで増加させる。いくつかの例では、組成物は、関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列(野生型配列などの)をさらに含む。特定の例では、少なくとも1種の突然変異を含んだ合成標的配列および関心対象の遺伝子領域を含んだ合成標的対照配列は、別個の核酸分子上に存在し、いくつかの例では、その別個の分子は2:1のモル比で(例えば、ホモ接合突然変異に相当するよう)組成物中に存在する。
【0012】
特定の例では、合成標的配列中の突然変異は、非遺伝的疾患(後天性の非遺伝的癌マーカーなどの)を含めて、遺伝子疾患(例えば、嚢胞性線維症)などの、遺伝病と関係している。別の例では、合成標的配列中の突然変異は、突然変異した微生物と関係している。別の例では、合成標的配列中の突然変異は、抗菌剤(抗生物質製剤または抗ウイルス剤などの)に対する、または抗癌剤(化学療法剤などの)に対する抵抗性の増加または減少などの、薬物抵抗性と関係している。
【0013】
少なくとも1種の突然変異を含む合成標的配列は、オリゴヌクレオチドなどの直鎖状の核酸分子、またはプラスミドもしくは人工染色体などのベクターの一部とすることができる。少なくとも1種の突然変異を含む合成標的配列の長さは、理想としては、利用される診断方法による突然変異の検出を可能とするのに十分長い。特定の例では、少なくとも1種の突然変異を含む合成標的配列は200〜4000ヌクレオチドなどの、長さが少なくとも200ヌクレオチド、例えば、少なくとも2000ヌクレオチドである。少なくとも1種の突然変異を含む合成標的配列は、突然変異をヘテロ接合、ヘミ接合、またはホモ接合状態で含むことができる。
【0014】
関心対象の遺伝子領域を含んだ合成標的対照配列は、完全長の遺伝子またはその断片を含むことができる。例えば、関心対象の遺伝子領域は、疾患と関係する突然変異が起こる遺伝子の1つまたは複数の断片を含むことができる。遺伝子中の複数の突然変異が特定の疾患と関係することが知られているなら、突然変異と関係する各領域を含んだ遺伝子の断片を(例えば、標的配列のライゲーションまたは化学的合成により)ともに連結することができる。特定の例では、関心対象の遺伝子領域を含んだ合成標的対照配列は、人工染色体の一部である。
【0015】
同様に提供されるのは、組成物を作製する方法である。特定の例では、この方法を利用して、性能評価、技能検査およびアッセイ品質管理、ならびに遺伝子検査の評価および検証を含め、品質管理用の陽性対照サンプルを作出することができる。特定の例では、その方法は合成による突然変異標的配列を、関心対象の遺伝子領域を包含する別個の合成標的対照配列と合わせて、人工的な陽性対照を形成させる段階を含む。そのような対照は同様に、DNAを所望の量にまで増加させるため、別のキャリアDNAを含むことができる。別の例では、その方法は合成による突然変異標的配列をキャリアDNAと合わせて、人工的な陽性対照を形成させる段階を含む。別の例では、その対照を、例えば相同組換えによって、細胞中の遺伝子を突然変異させることで作出し、結果的に得られた、標的の突然変異を含む細胞を単離する(または細胞から核酸を単離する)。
【0016】
キャリアDNAは、例えば、被験体から得られる対照サンプル中に存在すると思われる非標的DNAの濃度に類似した非標的DNAの濃度を供与することで、被験体から調製される対照サンプル中に通常存在する非標的DNAを模倣する。特定の例では、キャリアDNAは、標的DNAが由来する種とは異なる種から得られる。その方法は、特定の例では、例えば、組換え技術、突然変異誘発を利用して、または化学的合成により、突然変異を標的配列に導入し、それによって突然変異させた標的配列を作出する段階を含む。本明細書に記述される典型的な方法(部位特異的突然変異誘発および相同組換えなどの)では、標的の突然変異を有する合成標的配列が作出されるが、本開示はそのような方法に限定されることはない。特定の例では、関心対象の遺伝子領域を包含する標的対照配列は、関心対象の配列を含んだBACを含む。または、関心対象の遺伝子領域を包含する標的対照配列は、関心対象の標的遺伝子領域をクローニングし、人工染色体などの、ベクターにそれを導入することにより作出することができる。
【0017】
開示される組成物を遺伝子診断アッセイにおいて使用する方法も本明細書に開示される。例えば、開示される組成物は、配列決定法および対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーション法などの、さまざまな突然変異検出方法で使用することができる。特定の例では、その方法は被験体において遺伝病を診断する方法である。そのような例では、その方法は、遺伝病と関係する1つまたは複数の遺伝子突然変異が被験体から得られるサンプルの中に存在するかどうかを判定する段階を含むことができる。同じ診断方法を利用し、開示される組成物(これは被験体サンプルにおいてスクリーニングされた1つまたは複数の関心対象の遺伝子突然変異を有する合成標的配列を含む)を含んだ並列サンプルを分析して、遺伝病と関係する1つまたは複数の遺伝子突然変異が開示の組成物中に存在するかどうかを判定する。この方法により被験体サンプルと開示の組成物の両方で突然変異が同定されるなら、このことは被験体が疾患を抱えているまたは疾患の保因者であることを示唆する。この方法により開示の組成物で突然変異が同定されるが、被験体サンプルでは同定されないなら、このことは被験体が疾患を抱えていないまたは疾患の保因者ではないことを示唆する。
【0018】
同様に本願の開示により提供されるのは、開示される組成物を含むキットである。
【0019】
本発明の前述のおよび他の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照して続く、以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
【0020】
配列表
添付の配列表の中の核酸およびアミノ酸配列は、ヌクレオチドに対する標準的な文字略号を用いて示されている。各核酸配列の片鎖しか示されていないが、表示されている鎖への言及により、その相補鎖が含まれるものと理解される。
【0021】
SEQ ID NO: 1〜4は核酸プライマー配列を示す。
【0022】
詳細な説明
略語および用語
用語および方法の以下の説明は、本願の開示をより良く記述するためにおよび本願の開示の実施に際して当業者をガイドするために提供される。「a (1つの)」、「an (1つの)」および「the (その)」という単数形は、文脈上明らかに他を意味しない限り、1つまたは2つ以上のことをいう。例えば、「遺伝子突然変異を含む」という用語は、単一のまたは複数の突然変異(欠失突然変異を含む)を含み、「少なくとも1つの遺伝子突然変異を含む」という語句にまたは「1つまたは複数の遺伝子突然変異を含む」という語句に等価と見なされる。「または(もしくは)」という用語は、文脈上明らかに他を意味しない限り、記述されている代替要素のうちの単一の要素または2つもしくは複数の要素の組合せのことをいう。例えば、「BRCA1またはBRCA2」という語句は、BRCA1、BRCA2またはBRCA1とBRCA2の両方の組合せのことをいう。本明細書で用いられる「含む(comprises)」とは、「含む(includes)」を意味する。すなわち、「AまたはBを含む(comprising A or B)」とは、付加的な要素を除外することなく、「A、BまたはAとBを含む(including A, B, or A and B)」を意味する。
【0023】
他に説明のない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者に共通して理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記述されるものに類似のまたは同等の方法および材料を本願の開示の実施または試験に際して使用できるが、適当な方法および材料を以下に記述する。材料、方法および例は単なる例示に過ぎず、限定するものであるとは意図されない。

ASO: 対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド
BAC: 細菌人工染色体
MAC: 哺乳類人工染色体
PBMC: 末梢血単核細胞
PCR: ポリメラーゼ連鎖反応
YAC: 酵母人工染色体
【0024】
対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド(ASO)分析:
突然変異が遺伝子配列などの、核酸配列の中に存在するかどうかを判定する方法。この方法では、正常または変異対立遺伝子のいずれかに選択的にハイブリダイズするように、プローブまたはプライマーを設計する。これらのプローブをその他2つのプローブとともに使用して、例えば、PCRにより突然変異部位の前後の配列を増幅する。特定の例では、増幅DNAを例えば、スロット・ブロッティングを用いてニトロセルロースにアプライする。次いで、ニトロセルロースフィルターを正常型または変異型プローブとハイブリダイズさせ、プローブと増幅DNAとの間で複合体を生成させる。プローブを例えば、放射性標識、フルオロフォアまたは化学発光化合物で標識して、プローブの検出を可能にすることができる。
【0025】
結果として生じた複合体(またはその欠如)を分析して、被験体の増幅DNAが正常であるかもしくは突然変異している(例えば、欠失している)かどうか、または両方の配列が存在するかどうかを判定する。正常配列しか存在していなければ、被験体はその特異的な突然変異を持っていない。突然変異配列しか検出されなければ、被験体はその変異に対しホモ接合性またはヘミ接合性である。両方の配列が存在するなら、被験体はその変異に対しヘテロ接合性である。
【0026】
核酸分子の増幅:
遺伝子または遺伝子の断片、例えば、疾患を引き起こす突然変異を含む遺伝子の領域などの、核酸分子のコピー数を増加させること。結果的に生じた増幅産物は単位複製配列と呼ばれる。
【0027】
インビトロ増幅の1例が、被験体から得られた生物学的サンプル(PBMCを含むサンプルなどの)、または開示される陽性対照の組成物をオリゴヌクレオチドプライマーのペアと、サンプル中の核酸分子とのプライマーのハイブリダイゼーションを可能にする条件の下で接触させるPCRである。プライマーを適当な条件の下で伸長させ、鋳型から解離させ、その後、再びアニールさせ、伸長させ、解離させて、核酸分子のコピー数を増加させる。インビトロ増幅技術のその他の例としては、定量リアルタイムPCR (TaqMan PCR; Applied Biosystemsなどの)、鎖置換増幅(USPN 5,744,311を参照のこと); 無転写等温増幅(USPN 6,033,881を参照のこと); 修復連鎖反応増幅(WO 90/01069を参照のこと); リガーゼ連鎖反応増幅(EP-A-320308を参照のこと); ギャップフィリングリガーゼ連鎖反応増幅(USPN 5,427,930を参照のこと); リガーゼ検出とPCRの共役反応(coupled ligase detection and PCR) (USPN 6,027,889を参照のこと); およびNASBA(商標) RNA無転写増幅(USPN 6,025,134を参照のこと)が挙げられる。
【0028】
人工染色体(AC):
クローニングされたDNA配列からアッセンブルされ、複製起点、セントロメアおよびテロメアをコードする最小の染色体。特定の例では、人工染色体は完全長の真核細胞遺伝子(約100〜300 kbであるものなどの)、または関心対象の遺伝子領域などの、外因性のDNA挿入断片を含む。ACの非限定的な具体例としては、細菌人工染色体(BAC)、哺乳類人工染色体(MAC)、P-1人工染色体(PAC)および酵母人工染色体(YAC)が挙げられる。
【0029】
人工または合成核酸分子:
例えば、組換え法(クローニングおよび部位特異的突然変異誘発など)または化学的合成により、エクスビボまたはインビトロで得られる、または作出されるDNA分子またはRNA分子。
【0030】
細菌人工染色体(BAC):
細菌に形質転換しクローニングするために外因性のDNA挿入断片を挿入できる、大腸菌(E. coli)稔性因子(F-因子)などの、細菌の性または稔性プラスミドに基づいた核酸構築体。非常に大きな挿入断片(少なくとも100キロベース、kb、例えば、100〜300 kbのものなど)を挿入することができる。BACはそれにより、真核細胞遺伝子全体(フランキング調節領域を含め)が単一のクローンに含まれるようにできる。概説としては、Mejiaら(Genome Res. 7:179-86, 1997)を参照されたい。
【0031】
キャリアDNA:
存在するDNAの総量の濃度を標的濃度にまで増加させるためにサンプルまたは組成物(診断アッセイにおけるサンプルまたは組成物などの)の中に含まれる、ゲノムDNAなどの、DNA。例えば、サンプル中に存在するDNAの総量は、被験体から得られるサンプル中に存在すると思われる濃度に類似するDNAの濃度とすることができる。特定の例では、組成物の中に含まれるキャリアDNAの量は、少なくとも1 μg/20 μl、例えば少なくとも20 μg/20 μl、例えば少なくとも50 μg/20 μlである。1つの例では、濃度は50 μg/20 μlである。特定の例では、キャリアDNAは1〜50 μg/20 μl、例えば20〜50 μg/20 μlの範囲で存在する。
【0032】
1つの例では、キャリアDNAは診断アッセイに使われるプライマーとの交差反応性を減らすため、被験体サンプル中のものとは異なる種のものである。例えば、被験体がヒトであるならば、特定の例では、サケ精子DNA、仔ウシ胸腺DNA、マウスDNA、ウサギDNA、ニシン精子DNA、大腸菌DNA、サッカロマイセス(Saccharomyces) DNAまたはバクテリオファージM13 DNAなどの、非ヒトキャリアDNAが使われる。別の例では、被験体がウシであるならば、特定の例では、ヒト胎盤DNAなどの、ウシ以外のキャリアDNAが使われる。いくつかの例では、キャリアDNAは剪断される。
【0033】
ヌクレオチドまたはアミノ酸の欠失:
核酸配列からの1つまたは複数のヌクレオチド(またはタンパク質配列からの1つまたは複数のアミノ酸)の除去であって、除去される配列の両側の領域がともに連結されるようになる。
【0034】
診断する:
被験体が遺伝子突然変異から生じる疾患などの、疾患または障害を有するかどうかを判定すること。疾患は、例えば、特定の突然変異が被験体に存在するかどうかの判定の結果などの、検査結果に基づいて診断することができる。
【0035】
ジデオキシフィンガープリント法(ddF):
突然変異が標的または遺伝子配列などの、核酸配列に存在するかどうかを判定する方法。この方法は、ジデオキシ配列決定法とPCR増幅されたセグメントにおける単一塩基およびその他の配列変化の存在を検出できるSSCP法との間の混成である。ddF法は1種のジデオキシヌクレオチドを用いたSanger配列決定反応、その後の非変性ゲル電気泳動を含む。配列変化のおおよその位置をddFパターンから判断することができる。SSCP法と同様に、ゲノムDNAを同じプライマーセットで増幅する。分析は放射性標識を用い手動でまたは自動配列決定装置での蛍光技術により行うことができる。
【0036】
遺伝子:
遺伝の物理的および機能的単位。遺伝子は一般的に、プロモーターまたはオペレーターなどの、調節配列の制御下にあるペプチドをコードする核酸配列である。遺伝子は、ペプチドをコードする読み取り枠、ならびにエキソンおよび(任意で)イントロン配列を含むことができる。イントロンは所与の遺伝子の中に存在するDNA配列であり、タンパク質に翻訳されず、通常はエキソンの間に見出される。遺伝子のコード配列は、適切な調節配列の制御下に置かれると、転写され、ペプチドに翻訳される(インビボで、インビトロでまたはインサイチューで)部分である。コード配列の境界は5'(アミノ)末端の開始コドンおよび3'(カルボキシル)末端の停止コドンにより判断することができる。
【0037】
転写および翻訳制御配列は、細胞中での発現などの、コード配列の発現をもたらすプロモーター、エンハンサーおよびターミネーターなどのDNA調節配列を含むが、これらに限定されることはない。ポリアデニル化シグナルは典型的な真核生物制御配列である。プロモーターは、RNAポリメラーゼを結合することや下流(3'方向)のコード配列の転写を開始することができる調節領域である。さらに、遺伝子は、分泌されるまたは細胞の表面に発現されるタンパク質のコード配列の始めの位置にシグナル配列を含むことができる。この配列は、細胞に指令してペプチドを移行させる、成熟ペプチドのN末端の、シグナルペプチドをコードすることができる。
【0038】
遺伝子疾患に関与する(または関連する)遺伝子:
その突然変異が被験体において疾患またはその他の障害を引き起こす遺伝子(核酸分子および対応するタンパク質を含め)。
【0039】
遺伝子領域:
完全長の遺伝子またはその断片、例えば、遺伝子の少なくとも100個の連続ヌクレオチド。特定の例では、遺伝子領域は、突然変異した場合に、疾患(遺伝子疾患などの)を引き起こすまたは疾患と関連付けられる遺伝子の(およびいくつかの例ではヌクレオチド周囲の)位置を含む。
【0040】
遺伝子疾患:
1つまたは複数の核酸またはアミノ酸の置換、欠失、挿入またはその組合せなどの、遺伝子突然変異から生じる被験体における疾患またはその他の障害。そのような突然変異は、被験体においてヘテロ接合またはホモ接合状態で起こる可能性がある。典型的な遺伝子疾患は、嚢胞性線維症、ある種の癌(家族性乳癌、結腸癌および卵巣癌などの)、トリヌクレオチドリピート伸長と関連する障害(ハンチントン舞踏病(HD)および運動失調、例えば、脊髄小脳失調などの)、家族性地中海熱(FMF)、家族性大腸ポリープ症(FAP)、異常血色素症(アルファ・サラセミアなどの)、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)、遺伝性網膜芽細胞腫(RB)、多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)、静脈血栓形成傾向、脆弱X、コネキシン26関連難聴、カナバン病、テイ・サックス病、軟骨形成不全症、脊髄性筋萎縮症、Muenke症候群頭蓋骨癒合症、ケネディ病、筋強直性ジストロフィー、Saethre-Chotzen頭蓋うっ血(craniostasis)および脊髄性筋萎縮症を含むが、これらに限定されることはない。典型的な遺伝病は、化学療法薬などの、治療薬に対する抵抗性が増進している。
【0041】
ヌクレオチドまたはアミノ酸の挿入:
核酸配列への1つもしくは複数のヌクレオチドの付加、またはタンパク質配列への1つもしくは複数のアミノ酸の付加。
【0042】
単離された:
「単離された」生物学的成分(核酸分子、タンパク質または細胞小器官などの)は、その成分が天然に存在している生物の細胞中の他の生物学的成分、例えば、他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質ならびに細胞小器官から実質的に分離されている、または精製分離されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質は、標準的な精製方法により精製された核酸分子およびタンパク質を含む。この用語は同様に、宿主細胞中で組換え発現により調製された核酸分子およびタンパク質ならびに化学的に合成された核酸分子およびタンパク質を包含する。
【0043】
突然変異:
遺伝的変異源としての核酸またはタンパク質配列の任意の変化であって、特定の例では疾患を引き起こす。例えば、突然変異は染色体の非コード領域の中での特異的変化、例えば、遺伝子の調節領域の中または近傍での変化を含め、遺伝子または染色体の中に発生しうる。突然変異の種類は、塩基置換点突然変異(転移または塩基転換などの)、欠失および挿入を含むが、これらに限定されることはない。ミスセンス突然変異はコード化タンパク質の配列の中に異なるアミノ酸を導入するものであり; ナンセンス突然変異は新しい停止コドンを導入するものであり; およびサイレント突然変異はコドンの第3番目の位置の塩基変化を多くの場合には伴って同じアミノ酸を導入するものである。挿入または欠失の場合、突然変異は、多数のコドンの読み違いを引き起こし(および多くの場合、代替フレーム中の停止コドンの存在によってコード化産物の異常終結をもたらし)うるフレームシフト突然変異またはインフレーム(配列全体のフレームを変化させない)とすることができる。
【0044】
核酸分子(または配列):
cDNA、mRNA、ゲノムDNAおよび合成(例えは、化学的に合成された)DNAを含むが、これらに限定されないデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマー。核酸分子は二本鎖または一本鎖とすることができる。一本鎖の場合、核酸分子はセンス鎖またはアンチセンス鎖とすることができる。さらに、核酸分子は環状または直鎖状とすることができる。
【0045】
本開示は完全長の遺伝子またはその断片(例えば、オリゴヌクレオチド)などの、遺伝病に関与する特定の長さの遺伝子を含んだ単離核酸分子を含む。そのような分子は、遺伝子配列の少なくとも10個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも1000個、少なくとも2000個、少なくとも3000個または場合によっては少なくとも4000個(またはそれ以上)の連続ヌクレオチドを、例えば、関心対象の遺伝子領域(例えば、疾患を引き起こしうる突然変異の位置を含んだ領域)から含むことができる。
【0046】
ヌクレオチド:
ピリミジン、プリンもしくはその合成類似体などの、糖に連結した塩基、またはペプチド核酸(PNA)のように、アミノ酸に連結した塩基を含む核酸単量体を含むが、これらに限定されることはない。ヌクレオチドはポリヌクレオチド中の1つの単量体である。ヌクレオチド配列とは、ポリヌクレオチド中の塩基の配列のことをいう。
【0047】
読み取り枠(ORF):
内部終結コドンなしにアミノ酸をコードする一連のヌクレオチドトリプレット(コドン)。これらの配列は、通常、ペプチドに翻訳可能である。
【0048】
PCR (ポリメラーゼ連鎖反応):
変性、プライマーとのアニーリング、およびその後DNAポリメラーゼによる伸長のサイクルを利用して、標的DNA配列のコピー数を増幅する技術をいう。
【0049】
末梢血単核細胞(PBMC):
1つの円形の核を有する血液中に存在する細胞。例としてはリンパ球、単球およびナチュラルキラー細胞が挙げられる。
【0050】
プラスミド:
自律的に複製できるベクターの一種。プラスミドは、環状および二本鎖DNAとできる染色体外DNA分子である。プラスミドは突然変異(疾患と関連した突然変異などの)を含んだ標的DNA配列、または関心対象のその他の遺伝子領域などの、外因性または外来性DNA配列を含むことができる。
【0051】
精製された:
「精製された」という用語は、絶対的な純度を必要とはせず; むしろこれは相対的な用語と意図される。すなわち、例えば、精製されたタンパク質調製物は、言及されているタンパク質が細胞内のその天然環境中のタンパク質よりも純粋なものである。例えば、タンパク質の調製物は、そのタンパク質が調製物の総タンパク質含量の少なくとも50%に相当するように精製される。同様に、精製されたオリゴヌクレオチド調製物は、オリゴヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの複合混合物を含む環境中におけるよりも純粋なものである。
【0052】
組換え:
組換え核酸分子は、天然には存在しない配列を有するまたは2つの別に分離された配列セグメントの人工的な組合せによって作出された配列を有するものである。特定の例では、この人工的な組合せは、化学的合成によりまたは単離された核酸分子のセグメントの人工的操作により、例えば、遺伝子工学技術により達成される。
【0053】
サンプル:
核酸分子(cDNAまたはmRNAなどの)、タンパク質、細胞またはその組合せを含むものなどの、生物学的試料。典型的なサンプルは、末梢血、血漿、血清、尿、唾液、組織生検、肺洗浄液、喀痰、口腔内サンプル(ブラシ、スワブおよびうがい液などの)、外科標本、羊水穿刺サンプル、絨毛膜絨毛サンプル、細胞(細胞系および細胞ペレットなどの)および剖検材料を含むが、これらに限定されることはない。1つの例では、サンプルは末梢血単核細胞(PBMC)を含む。特定の例では、サンプルはサンプル種の組合せもしくは混合物、またはサンプル材料の希釈物および混合物などの「擬似」サンプル、ならびに人工的に生成されたサンプルを含む。
【0054】
一本鎖高次構造多型(SSCP)分析:
突然変異が、例えば、標的配列の中に存在するかどうかを判定するために利用できる方法。この方法では、突然変異によるDNAの立体構造変化を分析することで、突然変異が検出される。手短に言えば、ゲノムDNAを被験体から単離し、突然変異を含む領域を、例えば、PCRを用いて増幅する。PCR反応に使われるプライマーを標識してDNA断片を標識してもよく、またはDNAを銀染色法により直接的に視覚化してもよい。結果的に生じた断片を、例えば、ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により分離する。正常サンプル由来のバンドは、突然変異またはキャリアサンプルとは異なる電気泳動移動度を有するであろう。このサンプルを配列決定法により分析することができる。
【0055】
被験体:
ヒトおよび動物被験体を含め、生きている多細胞脊椎動物。動物被験体の特定の例としては、家庭内動物(ネコおよびイヌなどの)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジおよびヤギ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、スナネズミ、モルモットおよび非ヒト霊長類)、ならびに鳥類、爬虫類および魚類が挙げられる。
【0056】
標的配列:
1つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失、挿入、増幅またはその組合せなどの、1つまたは複数の特異的な遺伝子突然変異に相当する、ゲノム中の特定領域に位置するヌクレオチドの配列。この標的は、例えば、コード配列、コード配列に対応する非コード鎖、またはコード配列の5'もしくは3'側の配列とすることができる。標的配列の例としては、遺伝子疾患と関連するその配列が挙げられる。
【0057】
トランス遺伝子:
ベクターによって細胞に供給できる、外因性の核酸配列。
【0058】
ベクター:
遺伝物質をある細胞から別のものに移入するのに利用できる媒介物。ベクターは、例えば、ウイルス由来の核酸分子(DNAなどの)、プラスミド、またはベクターの自己複製能を消失せずにDNA断片を挿入できる高等生物の細胞であってもよい。ベクターを利用して外因性DNAを細胞に導入し、それによりDNA断片の複製を大量に可能とすることができる。ベクターは、複製起点などの、ベクターを細胞中で複製可能にする核酸配列を含むことができ、同様に1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子およびその他の遺伝要素を含むことができる。ベクターの例はプラスミド、コスミドおよび人工染色体を含むが、これらに限定されることはない。
【0059】
野生型:
核酸またはタンパク質配列の天然に存在する、非突然変異型。複数の対立遺伝子のなかで、集団内の頻度が最も高い対立遺伝子は、通常(必ずしもそうとは限らないが)、野生型である。「天然の」という用語は、「野生型」の同義語として使用されうる。野生型配列は天然の供給源(被験体などの)から得ることができ、または天然に存在する野生型配列を同じ配列を有する人工のポリヌクレオチドを作出することで合成により得ることができる。
【0060】
核酸組成物
現在、分子遺伝学的検査のための、とりわけ稀有な障害のためのおよびたまに起こる突然変異のための簡単に手に入る陽性対照が不足している。これは、利用できる陽性対照サンプルには、得ることが困難でありうる患者由来の材料が使われているためである。このことで、稀有な障害またはたまに起こる突然変異のための陽性対照サンプルを得ることがとりわけ負担になっている。本願の開示は、遺伝子解析の間に陽性対照として利用できる組成物であって、天然のヒトサンプルに十分に類似した組成物を提供する。開示される組成物は、標的の突然変異を含んだ患者由来の材料の代わりに、合成核酸分子を含む。標的の突然変異を人工的に作出できることで(例えば、部位特異的突然変異誘発、相同組換えまたは化学的合成を用いて)、稀有な疾患(例えば、網膜芽細胞腫)における突然変異、またはたまに起こる共通の遺伝子疾患における突然変異(例えば、嚢胞性線維症と関係するCFTRの1078delT突然変異)などの、稀有な突然変異を含んだサンプルなどの、さまざまな陽性対照サンプルの作出が可能になる。開示される組成物および方法は、標的の突然変異を有する被験体から対照サンプルを作出する必要を減らすことができる。さらに、その組成物および方法は、一貫性があり再生可能な、陽性対照材料の供給源を提供する。特定の例では、開示される組成物を増やし、それにより標的配列の忠実度を無期限に維持することができる。
【0061】
特定の例では、開示される組成物は、単一のポリヌクレオチド分子上に存在する(例えば、単一のオリゴヌクレオチドまたは単一のベクターの中に存在する)、または別個のポリヌクレオチド分子上に(例えば、2つの異なるオリゴヌクレオチドまたは2つの別個のベクター上に)存在するかのいずれかとできる合成標的配列および合成標的対照配列を含む。標的配列は1種または複数種の突然変異(例えば、1つまたは2つの対立遺伝子中に)を含み、合成標的対照配列は関心対象の遺伝子領域を(例えば、ヘテロ接合突然変異の陽性対照として役立つよう)包含する。そのような組成物は、いくつかの例では、サンプル中の総DNA濃度を標的のレベルで提供するキャリアDNAも含む。他の例では、開示される組成物は1種または複数種の突然変異(2つの対立遺伝子中の突然変異などの)を有する合成標的配列およびキャリアDNA (例えば、ホモ接合突然変異の陽性対照として役立つよう)を含む。いくつかの例では、そのような組成物は、関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列をさらに含む。
【0062】
突然変異させた合成標的配列は、1種または複数種の突然変異を含むオリゴヌクレオチドなどの、直鎖状の核酸分子とすることができる。他の例では、突然変異させた合成標的配列は、例えば、プラスミドまたは人工染色体などのベクターの一部として、環状の核酸分子である。同様に、関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列は、人工染色体などのベクターの一部とすることができる。関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列は、1つまたは複数の標的突然変異の位置に野生型配列を含む。例えば、標的突然変異がΔF508 CFTR突然変異であるならば、対照配列はこの位置に野生型配列を含むであろう。しかしながら、対照配列は、特定のアッセイで診断されていない、配列中のその他の突然変異を含むことができよう。例えば、標的突然変異がΔF508 CFTR突然変異であるならば、対照配列は、嚢胞性線維症とは関係のない突然変異、または特定のアッセイにおいてスクリーニングされていない、嚢胞性線維症と関係する別のCFTR突然変異(del1078Tなどの)を含むことができよう。
【0063】
突然変異を有する合成標的配列
合成標的配列は、関心対象の診断アッセイによる突然変異の検出を可能にする任意の長さとすることができる。例えば、診断アッセイが核酸分子の増幅を必要とするなら、合成標的配列は関心対象の診断方法により、プライマーとのハイブリダイゼーションおよびその後の増幅を可能とするのに十分なだけ長い。同様に、合成標的配列が制限酵素で消化されなければならない場合、標的配列は適切な制限部位を含むのに十分なだけ長い。特定の例では、1種または複数種の突然変異を有する合成標的配列は、少なくとも100個のヌクレオチド、例えば、少なくとも200個のヌクレオチド、少なくとも500個のヌクレオチド、少なくとも1000個のヌクレオチド、少なくとも1500個のヌクレオチド、少なくとも2000個のヌクレオチドまたは少なくとも3000個のヌクレオチド、例えば、100〜4000個のヌクレオチド、100〜1000個のヌクレオチド、100〜200個のヌクレオチド、2000〜3000個のヌクレオチドまたは2000〜4000個のヌクレオチドを含む。具体的な例では、1種または複数種の突然変異を有する合成標的配列は、少なくとも2000個のヌクレオチドを含み、プラスミドの一部である。
【0064】
合成標的配列は少なくとも1個の、少なくとも2個の、少なくとも3個の、少なくとも4個の、少なくとも5個の、少なくとも10個の、少なくとも15個の、または少なくとも20個の突然変異などの、少なくとも1個の突然変異を含む。そのような突然変異は単一の核酸分子上に存在することができる、例えば、標的配列中の少なくとも2個の突然変異を含む単一の合成オリゴヌクレオチド。別の例では、個々の突然変異は、それぞれが固有の突然変異を有する個々のオリゴヌクレオチドなどの、異なる核酸分子の中に存在する。特定の例では、そのような合成構築体の組合せが使用される。1つの例では、突然変異を含む合成標的配列はベクターの一部であり、各ベクターが標的配列中の異なる突然変異(または突然変異の異なる組合せ)を含む。
【0065】
特定の例では、突然変異は、通常、標的配列内の中央に置かれる、例えば、標的配列の中央位置の少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50または少なくとも100ヌクレオチドなどの、標的配列の中央位置の少なくとも5ヌクレオチドの範囲内にある。他の例では、突然変異は合成標的配列の5'または3'末端の近傍にある、例えば、標的配列の5'または3'末端の少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50または少なくとも100ヌクレオチドなどの、標的配列の5'または3'末端の少なくとも5ヌクレオチドの範囲内にある。
【0066】
特定の例では、合成標的配列中の突然変異は遺伝子疾患に関連している。例えば、突然変異は遺伝子疾患などの、特定の疾患を引き起こすまたは特定の疾患と関係することが知られていることがある。遺伝子疾患の例は、嚢胞性線維症、癌(乳癌、結腸癌および卵巣癌などの)、トリヌクレオチドリピート伸長と関連する障害(ハンチントン舞踏病(HD)および運動失調などの)、家族性地中海熱(FMF)、家族性大腸ポリープ症(FAP)、異常血色素症、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)、遺伝性網膜芽細胞腫(RB)、多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)、および静脈血栓形成傾向を含むが、これらに限定されることはない。その他の非限定的な例が以下に示される。CFTR遺伝子中の突然変異を検出するため特定の例が本明細書に示されるが、開示される特定の突然変異に、またはCFTR遺伝子にも本開示は限定されない。
【0067】
1つの例では、遺伝子疾患は遺伝性非ポリープ性大腸癌(MSH2およびMLH1遺伝子に加えてその他のもの)、多発性内分泌腺腫症2型(RET癌原遺伝子)、家族性大腸ポリープ症(APC遺伝子)、網膜芽細胞腫(RB遺伝子)、リ・フラウメニ症候群(p53遺伝子)および家族性メラノーマ(p16遺伝子)などの、稀有な疾患である。別の例では、遺伝子疾患は稀有な疾患ではないが、突然変異が稀にまたはたまに起こるものである。特定の例はCFTRの1078delT突然変異を含むが、これに限定されることはない。
【0068】
特定の例では、遺伝子疾患は嚢胞性線維症であり、突然変異はCFTR標的配列中の突然変異である。嚢胞性線維症と関連する1つまたは複数のCFTR突然変異を有する合成標的配列を含む組成物を、特定のCFTR突然変異に対する分子遺伝学的検査などの、嚢胞性線維症の診断における陽性対照として利用することができる。1000種を超える突然変異がCFTR遺伝子で報告されており、それらのほとんどが極めて稀である。突然変異対照の包括的セットを備えたFDA公認の市販の検査キットは利用可能とされていない。NIH委員会、ACMGおよび米国産科婦人科学会の提言を受けて、CF突然変異保因者の大規模集団保因者スクリーニングが最近になって始められた(Grody et al. Genet. Med. 3: 149-54, 2001)。しかしながら、25種の推奨される突然変異および関連する多型の完全なパネルのための基準がなかったので、診断共同体は日常的な品質保証基準を満たすうえで不利な立場に立たされていた。25種の突然変異は以下のCFTR突然変異を含む: ΔF508、ΔI507、621 + 1G>T、G85E、1078delT、R553X、G542X、R117H、R334W、3849 + 10 kb C>T、R1162X、G551D、1717-1G>A、R347P、2789 + 5G>A、2184delA、W1282X、A455E、711 + 1G>T、3659delC、3120 + 1G>A、N1303K、R560T、1898 + 1G>AおよびI148T。それ故、1つの例では、開示される組成物は、これらの突然変異の全25種が存在するような、1種または複数種の突然変異させた合成標的配列を含む。1つの例では、その組成物は、各標的配列が25種の突然変異の1つを含む、25種の突然変異させた合成標的配列を含む。具体的な例では、突然変異させた合成標的配列はプラスミドなどの、ベクターの一部である。そのような組成物はキットの一部とすることができる。
【0069】
合成標的配列の中に含まれることができる突然変異の例は、嚢胞性線維症と関係することが知られている以下のCFTR突然変異の1つまたは複数を含むが、これらに限定されることはない: G85E、R117H、ΔF508、1078delTまたはN1303K。さらなる例が本明細書に示される。具体的な例では、1000種を超える公知のCFTR突然変異の1つまたは複数が単一の核酸分子上に存在する、例えば、標的CFTR配列中の1〜25種の突然変異、1〜10種の突然変異または1〜3種の突然変異を含む単一の合成オリゴヌクレオチド。例えば、G85E、R117HおよびΔF508突然変異を含む合成オリゴヌクレオチドを、開示される組成物の中に使用することができる。
【0070】
別の例では、個々のCFTR突然変異は、それぞれが固有のCFTR突然変異を有する個々の合成オリゴヌクレオチドなどの、異なる核酸分子の中に存在する。例えば、G85E CFTR突然変異を含む合成CFTR配列、R117H CFTR突然変異を含む合成CFTR配列、およびΔF508 CFTR突然変異を含む合成CFTR配列を、CFのための陽性対照組成物の中に使用することができる。単一の突然変異を含むそのような合成CFTR標的配列を、各ベクターがCFTR標的配列中の異なる突然変異(または突然変異の組合せ)を含む、ベクターの一部として使用することができる。具体的な例では、その組成物は、それぞれが異なるCFTR突然変異を有する、少なくとも25種の合成標的CFTR配列を含む。本明細書に示されるおよび当業者に知られる突然変異に基づいて、1つまたは複数のCFTR突然変異を含むその他の合成標的配列を作出することができる。
【0071】
別の例では、遺伝性疾患は乳癌または卵巣癌であり、突然変異はBRCA1またはBRCA2標的配列中の突然変異である。家族性乳癌または卵巣癌と関係する1つまたは複数のBRCA1またはBRCA2突然変異を有する合成標的配列を含んだ組成物を、(特定のBRCA1またはBRCA2突然変異に対する分子遺伝学的検査などの)そのような癌の診断における陽性対照として、およびそのような突然変異の保因者を同定するために使用することができる。
【0072】
合成標的配列の中に含まれることができる突然変異の例は、乳癌または卵巣癌と関係することが知られている以下のBRCA1突然変異の1つまたは複数を含むが、これらに限定されることはない: よく見られるアシュケナジム・ユダヤ人(Ashkenazi-Jewish)系の突然変異185delAGおよび5382insC、ならびに稀有な(非ユダヤ人系の)突然変異1135insA、1675delA、1499insA、2804delAAおよびG563X。合成標的配列の中に含まれることができる突然変異の例は、乳癌または卵巣癌と関係することが知られている以下のBRCA2突然変異の1つまたは複数を含むが、これらに限定されることはない: 6174delT、6503delTT、L2776X、A2951T、999del5および4486delG。さらなる例が本明細書に示される。具体的な例では、300種を超える公知のBRCA1およびBRCA2突然変異の1つまたは複数が単一の核酸分子上に存在する、例えば、標的BRCA1またはBRCA2配列中の1〜10種の突然変異、1〜5種の突然変異または1〜3種の突然変異を含む単一の合成オリゴヌクレオチド。例えば、1135insA BRCA1および6174delT BRCA2突然変異を含む合成オリゴヌクレオチドを、開示される組成物の中に使用することができる。
【0073】
別の例では、個々のBRCA1またはBRCA2突然変異は、それぞれが固有のBRCA1またはBRCA2突然変異を有する個々の合成オリゴヌクレオチドなどの、異なる核酸分子の中に存在する。例えば、1135insA BRCA1突然変異を含む合成BRCA1配列、1675delA BRCA1突然変異を含む合成BRCA1配列、および1499insA BRCA1突然変異を含む合成BRCA1配列を、そのような突然変異が被験体に存在するかどうかを判定するための陽性対照組成物の中に使用することができる。別の例では、A2951T BRCA2突然変異を含む合成BRCA2配列、6174delT BRCA2突然変異を含む合成BRCA2配列、および4486delG BRCA2突然変異を含む合成BRCA2配列を、そのような突然変異が被験体に存在するかどうかを判定するための陽性対照組成物の中に使用することができる。単一の突然変異を含むそのような合成BRCA1およびBRCA2標的配列を、各ベクターがBRCA1またはBRCA2標的配列中の異なる突然変異(または突然変異の組合せ)を含む、ベクターの一部として使用することができる。具体的な例では、その組成物は、それぞれが異なるBRCA1またはBRCA2突然変異を有する、少なくとも10種の合成標的BRCA1またはBRCA2配列を含む。本明細書に示されるおよび当業者に知られる突然変異に基づいて、1つまたは複数のBRCA1またはBRCA2突然変異を含むその他の合成標的配列を作出することができる。
【0074】
遺伝子疾患(遺伝性および非遺伝性)のさらなる例、およびこれらの疾患と関係することが知られている典型的な突然変異が以下に示される。特定の癌と関係するものなどの、非遺伝性疾患および対応する突然変異の例も示される。この情報ならびに当業者に知られている遺伝子疾患およびその関連突然変異に関する情報に基づいて、障害と関係する任意の遺伝子およびその対応する突然変異に対する合成標的配列を作出することができる。
【0075】
関心対象の遺伝子領域を包含する配列
関心対象の遺伝子領域を含む合成標的配列を開示される組成物の中に含めて、内部陰性対照を供与する。この陰性対照配列は、アッセイにより検出される突然変異を含まない被験体から得られるサンプルにおいて検出されるものと類似のシグナルを発生させるために使われる。この合成標的対照配列は、いくつかの例では、遺伝子疾患を抱えていない、または遺伝子疾患の保因者ではない被験体に通常見出される核酸配列である。例えば、対照配列はある集団に存在する多型変異を含めて、野生型配列とすることができる。1つの例では、この配列は標的の疾患に対し野生型であるが、別の疾患と関係する突然変異を含む。別の例では、対照配列は標的の突然変異と関係する領域において野生型核酸配列を含むが、標的の疾患と関係する1つまたは複数のその他の突然変異を含む。例えば、スクリーニングされる突然変異が423G→T APC突然変異(家族性大腸ポリープ症のスクリーニング方法などの)であるならば、対照配列は423位に野生型ヌクレオチド(G423、または疾患に関係しない多型)を含むが、1957A→G APC突然変異などの、FAPと関係する1つまたは複数のその他のAPC突然変異を含むことができよう。
【0076】
特定の例では、関心対象の遺伝子領域は、特定の診断アッセイの標的とされる1種または複数種の突然変異に対する陰性(野生型)シグナルを供与するのに十分な対照配列の長さを含む。例えば、関心対象の遺伝子領域は完全長の野生型配列(例えば、大きな遺伝子セグメントに対し複数種の突然変異が検出される場合)を含むことができ、または例えば、もっと短い遺伝子配列セグメントに対しほんのわずかな(例えば、1種、2種または3種の)突然変異しか検出されない場合、完全長の野生型配列の断片(例えば、完全長の配列の2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1または100分の1)を含むことができる。
【0077】
例えば、診断アッセイが1種の突然変異を検出するためだけに使われるなら、関心対象の突然変異が見出される位置に対応する遺伝子配列の断片を含んだ野生型配列の少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、または少なくとも2000ヌクレオチドの配列などの、野生型配列の対応領域を使用することができる。別の例では、例えば、診断アッセイが標的配列中の2種、3種、4種または5種の突然変異などの、数種の突然変異を検出するために使われる場合、野生型配列の対応領域を使用することができ、必要に応じ、ともに連結して連続配列を供与することができる。特定の例では、各対応領域は、関心対象の突然変異に対応する遺伝子配列の領域を含んだ野生型配列の少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、または少なくとも2000ヌクレオチドである。別の例では、診断アッセイが標的配列中の少なくとも10種、少なくとも20種、または場合により少なくとも30種の突然変異などの、多数の突然変異を検出するために使われるなら、完全長の野生型遺伝子配列を使用することができる。
【0078】
1つの例では、合成標的対照配列は人工染色体などの、ベクターの一部である。人工染色体は、非常に大きい(少なくとも100キロベースなどの)外因性のDNA挿入断片を「運ぶ」ために通常使われる。特定の例では、人工染色体は細菌人工染色体(BAC)、哺乳類人工染色体(MAC)、または酵母人工染色体(YAC)である。関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列は、単一のベクターの中に存在している必要はない。例えば、合成標的対照配列を少なくとも2つの人工染色体などの、2つまたはそれ以上のベクターの間で分割することができる。合成による完全長の対照遺伝子配列(完全長の野生型配列などの)が使われる特定の例では、これを少なくとも2つの人工染色体の間で分割する。
【0079】
キャリア核酸分子
キャリアDNAは、サンプル中のDNAの総濃度を調整するために利用できる任意のDNAを含む。特定の例では、ゲノムキャリアDNAなどの、キャリアDNAを利用して、サンプル中に存在する総DNAの濃度を標的の量にまで増加させる。標的の量は、利用される診断アッセイに依存するであろう。例えば、サンプル中に存在するDNAの総量は、被験体のサンプルから得られうる濃度に類似するDNAの濃度とすることができる。特定の例では、組成物の中に含まれるキャリアDNAの量は、少なくとも1 μg/20 μl、例えば少なくとも20 μg/20 μl、例えば少なくとも50 μg/20 μlである。1つの例では、濃度は50 μg/20 μlである。いくつかの例では、キャリアDNAは、例えばこれを剪断または超音波処理に供することで断片化される。
【0080】
診断アッセイに使われるプライマーまたはその他の作用薬との交差反応性を減らすため、いくつかの例では、キャリアDNAは分析される被験体とは異なる種由来である。例えば、被験体がヒトであるならば、特定の例では、サケ精子DNA、仔ウシ胸腺DNA、マウスDNA、ウサギDNA、ニシン精子DNA、大腸菌DNA、サッカロマイセスDNAまたはバクテリオファージM13 DNAなどの、非ヒトキャリアDNAが使われる。
【0081】
ベクター
上に開示されるように、突然変異を含む合成標的配列、および関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列は、プラスミド、コスミド、バクテリオファージ、動物ウイルスまたは人工染色体などの、ベクターの一部とすることができる。例えば、そのような合成標的配列をベクターの中に連結することができる。
【0082】
本願の開示に適したベクターは任意の標準的なクローニングベクターを含む。特定の例はpKC30 (Shimatake and Rosenberg, 1981, Nature 292:128)、pKK177-3 (Amann and Brosius, 1985, Gene 40:183)、pETベクター(Studiar and Moffatt, 1986, J. Mol. Biol. 189:113)、pPNT (Stratagene, La Jolla, CA)、およびpUC18を含むが、これらに限定されることはない。具体的な例では、レトロウイルス、アデノウイルスおよびヘルペスウイルスベクターなどの、ウイルスベクターが使用される。別の例では、ラムダDNA (例えば、ラムダ-gt10)、M13ファージベクターおよびBluscript KS+などの、バクテリオファージベクターが使用される。一般に、バクテリオファージベクターは約20 kbの挿入断片を受け入れることができる。別の例では、コスミドベクター(これは一般に約30〜45 kbのDNAを受け入れることができる)が使用される。典型的なコスミドベクターはStratageneから入手可能なSuperCos1である。
【0083】
人工染色体を利用して、非常に大きい(100キロベース、kb程度またはそれ以上のものなどの)外因性のDNA挿入断片を「運ぶ」ことができる。特定の例としてはBAC (大腸菌F-因子に基づく)、PAC (P-1由来の人工染色体; バクテリオファージP1 F-因子に基づく)、MACおよびYACが挙げられる。人工染色体としてのYAC、BAC、PACおよびMACなどの大きなクローンの概説はMonacoおよびLarin (Trends Biotechnol. 12:280-6, 1994)によって提供されている。
【0084】
合成による非感染性微生物の核酸配列
他の例では、開示される組成物は合成による非感染性微生物の核酸配列を含む。そのような組成物は、例えば、微生物(細菌、真菌、原生動物またはウイルスなどの)において1種または複数種の突然変異の存在を検出するアッセイで陽性対照として使われてもよく、または検出系において生物を模倣する非感染性の対照材料として使われてもよい。生物それ自体の培養物の一定分量、または微生物に感染していることが分かっているサンプルが通常は対照に使われている。しかしながら、生物が特に感染性である場合、いくつかの例で、そのようなサンプルでは厄介な安全措置の利用が必要になる場合がある。そのような対照は加熱または化学物質によって不活化されうるが、このような処理は、アッセイの結果に影響を与える生化学的変化をもたらすことがある。PCR単位複製配列が同様に対照として使われてきたが、それらは診断アッセイ系において生物を模倣してはいない。
【0085】
それ故、本開示により提供されるのは、いくつかの例で、微生物における突然変異の対照の永久的供給源となる、合成による非感染性微生物の核酸配列を含んだ組成物である。特定の例では、そのような配列は少なくとも200ヌクレオチド、例えば、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、または少なくとも4000ヌクレオチドである。特定の例では、合成による非感染性微生物の配列は、感染性微生物の遺伝子配列の非感染性断片、または突然変異させた(配列を非感染性にした)感染性微生物の配列である。いくつかの例では、そのような組成物は非感染性の細菌株をさらに含む。特定の例では、合成による非感染性微生物の配列はプラスミドなどの、ベクターの中に存在する。これらのベクターを細菌形質転換によって非感染性の、しかし類似の細菌株に導入することができる。または、相同組換えを通じて合成による非感染性配列を宿主「非感染性」細菌株のゲノム中に導入するために、ベクターを利用することができる。
【0086】
人工的な突然変異を含む組成物の作出方法
一過性のトランスフェクション、持続性のトランスフェクション、部位特異的突然変異誘発、および相同組換えのような技術を通じた遺伝子操作などの、人工的に構築されたサンプル(例えば、突然変異または非感染性微生物の配列を有するサンプル)を作出するために利用できるいくつかの潜在的な方法が存在する。部位特異的突然変異誘発、組換え操作(recombineering)および相同組換えについて特定の例を示すが、当業者はその他の方法を利用できることを認識するであろう。例えば、標的の突然変異標的配列は、例えば、DNA合成機を用いて化学的に合成されてもよい。
【0087】
開示される方法を利用して、特に本明細書に記述されるものなどの、任意の遺伝子中の任意の突然変異に対する人工的配列を作出することができる。
【0088】
部位特異的突然変異誘発
部位特異的突然変異誘発を利用して、直鎖状DNA配列などの標的配列、またはプラスミドもしくは人工染色体などのベクター中の標的配列の中に1つまたは複数の標的突然変異を導入することができる。市販のキット(Promega, Madison, WIのものなどの)を使うことができる。手短に言えば、2本のミスマッチプライマーを利用してPCRにより、野生型の標的配列を増幅し、それらのプライマーのうちの少なくとも一方が1つまたは複数の標的の突然変異を導入する。標的配列がベクター中に存在する特定の例では、他方のプライマーがベクターのマルチクローニング部位中の制限消化配列の1つを破壊する。結果的に、成功裏に突然変異されたプラスミドだけがその特定の制限酵素を用いた切断に抵抗性となるはずである。
【0089】
特定の例では、関心対象の標的配列を突然変異誘発し、必要に応じて、ベクターの中に連結する。別の例では、標的配列を最初にベクターの中に挿入し、その後で突然変異誘発する。
【0090】
相同組換え
相同組換えを利用して、細胞中に存在する標的配列などの、標的配列の中に突然変異を導入することができる。結果的に生じた組換え細胞は、内因性の正常対立遺伝子の一方または両方の代わりに関心対象の変異対立遺伝子を含む安定な細胞系である。それ故、本願の開示により提供されるのは、1つまたは複数のヌル変異などの、標的の突然変異が導入された細胞である。これらの細胞を増殖し、その後、標的の突然変異を有する疑いのある被験体由来の血液試料を模倣する細胞サンプルとして使用することができる。いくつかの例では、細胞からDNA(例えば、ゲノムDNA)などの、核酸を精製する。単離された核酸を利用して、標的突然変異の陽性対照組成物を配合することもできる。
【0091】
相同組換えは、天然遺伝子の正確な遺伝子座の位置でのトランス遺伝子の正確かつ永続的な染色体への組込みを可能にする。この方法はトランス遺伝子の1コピーのみの組込みと内因性対立遺伝子の交換(または「ノックアウト」)を引き起こす。突然変異検出(例えば、診断検査施設による)の標的になるトランス遺伝子は、天然遺伝子としての正確な染色体座の位置にあり、同じ制限エンドヌクレアーゼ部位で囲まれているはずである。結果的に生じる永続的に形質転換された突然変異細胞系は、このように単一の野生型遺伝子コピーに代わる単一の突然変異遺伝子コピーを含んでおり、現実的なヘテロ接合性を引き起こすはずである。突然変異のホモ接合対照を含む人工的な陽性対照サンプルは、同じ細胞系で相同組換えを2回繰り返すことによって得ることができる。
【0092】
相同組換えは、トランスフェクト細胞での二重選択手順に依る。陽性選択の場合、抗生物質耐性遺伝子(ネオマイシンなどの)を高効率のウイルスプロモーターの制御下としてトランス遺伝子構築体の中に組み入れて、トランスフェクト細胞への単一コピーの組込みが適切な抗生物質(ジェネティシン、G418などの)に対する耐性を与えるのに十分であることを保証する。陰性選択の場合、単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ遺伝子(HSV-tk)をトランス遺伝子構築体の3'末端に連結することができる。構築体中に両方のマーカーが存在することは、両方の抗生物質(G418およびガンシクロビルなどの)に対する耐性で選択された培養物において、無作為な組込み事象とは対照的に、相同組込み事象に有利に働く傾向がある。例えば、どちらのタイプの組込みもネオマイシン耐性(neoR)遺伝子を導入し、細胞をG418耐性に形質転換しうるが、相同交叉では、反対にガンシクロビル感受性を与えうるHSV-tk遺伝子が排除されるはずである。
【0093】
関心対象の配列を包含する領域(疾患と関係する突然変異を含む領域などの)をpPNTベクター(Stratagene, La Jolla, CA)などの、クローニングベクターにクローニングする。このベクターはマルチクローニング部位ならびにneoR遺伝子カセット(またはその他の抗生物質耐性配列)および連鎖tk遺伝子(またはその他の陰性選択配列)を含むことができる。突然変異を含んだ関心対象の遺伝子を包含する領域が利用可能であるなら、その突然変異した配列をベクターに直接的にクローニングすることができる。または、例えば、稀有な突然変異を含んだ人工的サンプルを作出するため、部位特異的突然変異誘発を利用して、標的の突然変異を野生型配列に導入することができる(例えば、Transformerシステム, Clontech, Palo Alto, CAを用いて)。例えば、野生型配列をプラスミドにクローニングした後、部位特異的突然変異誘発を利用して、突然変異を野生型配列に導入することができる。手短に言えば、2本のミスマッチプライマーを利用してPCRにより、野生型配列を増幅し、それらのプライマーのうち一方が標的の突然変異を導入し、その一方でもう一方がマルチクローニング部位中の制限消化配列の1つを破壊する。成功裏に突然変異されたプラスミドだけがその特定の制限酵素を用いた切断に抵抗性となるはずであり、これを続けてミスマッチ修復欠損BMH71-18大腸菌宿主細胞に形質転換することができ、これから、突然変異した配列を大量に増やすことができる。
【0094】
結果的に得られたベクターを任意のレシピエント細胞種に導入することができる。利用できる細胞系の例はHepG2、PZ-HPV-7およびHEK細胞系を含むが、これらに限定されることはない。具体的な例では、細胞はリンパ芽球様細胞(RGA-1細胞系などの)である。リン酸カルシウム沈殿法、エレクロトポレーション法またはリポソーム移入法(例えば、リポフェクトアミンまたはFuGENE-6脂質試薬(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis)を用いて)などの、任意の方法を利用して、相同組換えベクターを細胞に導入することができる。相同組換え体を両抗生物質(G418およびガンシクロビルなどの)に対するその耐性によって選択し、トランス遺伝子の適切な方向性を前述のPCR法によってまたはサザンブロットによってさらに確認することができる。この方法によってスクリーニングされ検証された細胞コロニーを遺伝子診断アッセイにおける陽性対照として利用することができる。
【0095】
組換え操作
組換え操作(組換えを介した遺伝子操作)は相同組換えに基づく高効率の遺伝子組換え系であり、これを利用してBACなどの、ベクターの一部である標的配列の中に突然変異を導入することができる。特定の例では、野生型配列をBACにクローニングし、次いで組換え操作を用い突然変異誘発して、1つまたは複数の標的突然変異を野生型配列に導入し、それにより突然変異標的配列を作出する。組換え操作の方法は当業者に公知である(例えば、Zhang et al., Nature Biotech. 18: 1314-7, 2000; Zhang et al. Nature Genetics 20: 123-8, 1998; およびDatsenko and Wanner, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-5, 2000を参照のこと)。組換え操作の概説はCourtら(Annu. Rev. Genet. 36:361-88, 2002)およびCopelandら(Nature Rev. Genet., 2: 769-779, 2001)の中で見出すことができる。
【0096】
手短に言えば、ファージラムダに見出される組換え遺伝子を利用して、突然変異をBAC (またはその他のプラスミド)に導入する。組換え操作は3つのλRedコード化遺伝子exo、betおよびgamを利用して可能となる。exoは5'から3'方向のエキソヌクレアーゼをコードし、これは導入された二本鎖DNAターゲティングカセット(dsDNA)から3'突出部を作出する。betは対合タンパク質をコードし、これは3'突出部に結合し、BAC上に存在する相補DNAとのそのアニーリングと相同組換えを媒介する。同時に、gamは大腸菌RecBCDエキソヌクレアーゼの阻害因子をコードし、それによって直鎖状のDNAターゲティングカセットをRecBCDによる分解から保護する。誘導性プロモーターを利用し、λ Red (またはプロファージRacの対応するRecEおよびRecT遺伝子)を多コピープラスミドから発現させることができる。または、これらの遺伝子は安定に組込まれた欠損λファージから発現されてもよく、この場合exo、betおよびgamは温度感受性リプレッサーcI857のストリンジェントな制御の下で、強力なファージプロモーターpLにより制御される。このファージ系では、細菌が32℃に保たれると、exo、betおよびgamは発現されない。細菌をたった15分間42℃に移すことで、これらの遺伝子は即座に非常に高いレベルまで誘導され、相同組換えは非常に効率的である。
【0097】
BAC中に存在する標的配列の中に突然変異を作出する方法は、当技術分野において周知である。1つの方法はRecA依存的であり、シャトルベクターと2つの組換えステップ、つまり組込み、引き続く共組換え体の解離の利用に依る(Yang et al., Nat. Biotechnol., 15:859-865, 1997およびGong et al., Genome Res., 12:1992-8, 2002)。もっと単純でもっと広く使われている方法は、例えば、sacB-neo融合遺伝子を用いた陽性/陰性選択に基づいている(Zhang et al. Nature Genetics 20:123-8, 1998)。neo (カナマイシン)耐性を陽性選択に利用し、その一方でsacB発現から生じるサッカロース毒性を陰性選択に利用している。関連する方法は、I-SceIなどの稀有な制限酵素に対する認識部位を用いた対抗選択に基づいている(Jamsai et al. Genomics 82:68-77; 2003)。選択なしのBAC修飾の方法も知られている(Swaminathan et al. Genesis, 29:14-21; 2001)。この方法は、比較的効率的ではあるが、得られたコロニーのPCRに基づくスクリーニングに依存して標的クローンを同定するものである。BACの操作のためのgalKに基づく陽性/陰性選択系は、Warmingら(突然変異の導入に関してその全体が参照により本明細書に組み入れられるNucleic Acids Res. 33(4):e36, 2005)に記述されている。大腸菌ガラクトースオペロンはgalK遺伝子を含む。galK産物のガラクトキナーゼはガラクトース分解経路の最初のステップを触媒し、ガラクトースをガラクトース-1-リン酸にリン酸化する。ガラクトキナーゼはガラクトース類似体2-デオキシ-ガラクトース(DOG)のリン酸化も効率的に触媒する。この反応の産物はさらに代謝されることができず、有毒な2-デオキシ-ガラクトース-1-リン酸の蓄積を引き起こす。このように、陽性および陰性選択の両方をgalKによって与えることができる。galKは両選択ステップに使われるので、陰性選択後のバックグラウンドが低減され、コロニースクリーニングが必要とされない。galKカセットのサイズが小さく(およそ1200 bpに加えて相同アーム)、PCRによって増幅することやエレクトロポレーションを用いて細菌に導入することがさらに容易である。
【0098】
遺伝子検査の方法
開示される組成物を対照として用い、例えば、被験体において疾患を診断するため、遺伝子突然変異が被験体において存在するかどうかを判定する方法が開示される。開示される人工的組成物は、分子遺伝学的検査に一般に用いられている方法において被験体から得られる対照サンプルを模倣するまたはそのサンプルと殆ど同じように振舞うことができる産物を提供する。この方法を任意の良性の遺伝性遺伝子多型、任意の遺伝性病原遺伝子、および癌原遺伝子に適用することができる。疾患および突然変異の特定の例を以下に示すが、その他数多くのものが当技術分野において知られているように、本開示はそのような疾患および突然変異に限定されることはない。
【0099】
1つの例では、その方法は、例えば、被験体から得られる生物学的サンプルを分析することにより、1つまたは複数の遺伝子突然変異が被験体において存在するかどうかを判定する段階、および1つまたは複数の遺伝子突然変異が開示の人工的な陽性対照組成物の中に存在するかどうかを判定する段階を含む。突然変異が被験体と陽性対照サンプルの両方で検出されるなら、このことは被験体が突然変異を有することを示唆する。突然変異が被験体で検出されないが、陽性対照サンプルで検出されるなら、このことは被験体が突然変異を有していないことを示唆する。
【0100】
被験体においてスクリーニングされる1種または複数種の突然変異は、開示される人工的な陽性対照サンプルにも存在する。例えば、被験体がΔF508 CFTR突然変異の存在についてスクリーニングされているなら、人工的な陽性対照サンプル中の突然変異させた標的配列もΔF508 CFTR突然変異を含み、合成対照配列はF508位をコードするCFTR DNAの領域を含む。1つの例では、少なくとも2種の突然変異がスクリーニングされているなら、この場合には人工的な陽性対照サンプルはその少なくとも2種の突然変異を含む。例えば、被験体が1078delTおよびΔF508 CFTR突然変異の存在についてスクリーニングされているなら、人工的な陽性対照サンプル中の突然変異させた標的配列も1078delTおよびΔF508 CFTR突然変異を含み、その一方で合成対照配列はF508位をコードするCFTR DNAの領域を含み、1078T位を含む。
【0101】
特定の例では、それぞれが1種の突然変異または突然変異の特定の組合せを有する、少なくとも2種の人工的な陽性対照サンプルが使用される。例えば、被験体がE148QおよびM694I MEFV突然変異(これらは家族性地中海熱と関係している)の存在についてスクリーニングされているなら、一方の人工的な陽性対照サンプル中の突然変異させた標的配列はE148Q MEFV突然変異を含むことができ、合成対照配列はE148Q位をコードするMEFV DNAの領域を含み、もう一方の人工的な陽性対照サンプルはM694I MEFV突然変異を含むことができ、合成対照配列はM694I位をコードするMEFV DNAの領域を含む。
【0102】
さまざまな方法(一般に用いられる遺伝子検査プラットフォームを含めて)を利用して、特定の突然変異が核酸配列中に存在するかどうかを判定することができる。特定の例を示すが、本開示はそのような方法に限定されることはない。被験体においておよび人工的な陽性対照サンプルにおいて突然変異を検出するのに利用できる方法の特定の例としては、ヘテロデュプレックス分析、増幅抵抗性突然変異システム(ARMS)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)、一本鎖高次構造多型(SSCP)、対立遺伝子特異的なプローブを用いたリバースドットブロットハイブリダイゼーション、サザンブロッティング、対立遺伝子特異的な制限エンドヌクレアーゼ消化、キャピラリー電気泳動、および直接配列決定が挙げられる。
【0103】
生物学的サンプル
例えば、遺伝子疾患を診断するため、突然変異が被験体において存在するかどうかを判定するうえで本開示での使用に適した試料は、任意の従来の臨床サンプル、例えば、血液または血液分画(血清、白血球、細胞ペレットまたはPMNLなどの)、口腔内サンプル(ブラシ、スワブおよびうがい液などの)、および出生前サンプル(羊水穿刺および絨毛膜絨毛などの)を含む。サンプルは同様に、そのようなサンプルから得られる細胞、細胞系、およびそのようなサンプルからの核酸調製物を含むことができる。そのようなサンプルの取得のための技術は、当技術分野において周知である。そのようなサンプルは従来の方法で調製することができる。
【0104】
1つの例では、サンプルからDNAを得る。通常、10から50 ngの被験体DNAで増幅には十分である。1つの例では、約5 mLの全血をDNAの抽出(約30 μg)およびその後の増幅に使う。しかしながら、DNAが増幅されないなら、もっと大量の血液を集めてもよい。1つの例では、PBMCを単離核酸分子の供給源として使う。
【0105】
サンプルが得られたら、このサンプルは直接使用されても、濃縮されても(例えば、遠心またはろ過により)、精製されても、増幅されてもまたはその組合せとされてもよい。粗溶解物から高度に精製されたDNAに至るまで、さまざまな公知の抽出手順を用いて生物学的サンプルからDNAが調製されてもよい。例えば、市販のキット(InstaGene Matrix, BioRad, Hercules, CA; NucliSens単離キット, Organon Teknika, Netherlandsなどの)を用いて素早いDNA調製を行うことができる。1つの例では、DNA調製方法は、核酸増幅または診断分析に利用できるおよび適応するヌクレオチド調製物をもたらす。
【0106】
典型的な疾患およびその突然変異
嚢胞性線維症(CF)。CFは白色人種の致死性遺伝性疾患の中で最も多く、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子における突然変異によって引き起こされる。1200種を超える突然変異がCFTR遺伝子で報告されており、それらのほとんどが稀である。ΔF508突然変異は最も多いCFTR突然変異である。嚢胞性線維症と関係するCFTRにおけるさらなる突然変異はG85E、R117H、G149R、L206W、R334W、G551D、G542X、R553X、S945L、R1070W、N1303K、1078delT、D1152H、3272-26A→G、S1235R、およびアフリカ人由来の最もよく認められる対立遺伝子3120+1G→Aを含むが、これらに限定されることはない。特定の例では、CFTR突然変異は以下のCFTR突然変異の1つまたは複数を含む: ΔF508、ΔI507、621 + 1G>T、G85E、1078delT、R553X、G542X、R117H、R334W、3849 + 10 kb C>T、R1162X、G551D、1717-1G>A、R347P、2789 + 5G>A、2184delA、W1282X、A455E、711 + 1G>T、3659delC、3120 + 1G>A、N1303K、R560T、1898 + 1G>AおよびI148T。
【0107】
トリヌクレオチドリピート伸長と関連する障害: トリヌクレオチドリピート伸長突然変異は、脆弱X症候群、ハンチントン舞踏病(HD)、脊髄小脳失調(SCA)およびフリードライヒ失調症などの、いくつかの神経筋障害に特有である。HDは翻訳ポリグルタミン病であり、これは第4染色体短腕16.3 (4p16.3)上に位置するハンチントンと名付けられた遺伝子(当初はIT-15として知られていた)の第1エキソン中のCAGリピート伸長から生じる。非罹患群におけるリピートの長さの範囲は6〜35トリプレットである。35よりも長いリピートは、伸長されたと見なされており、リピートの長さが36トリプレットに満たない個体が確証的にHDと診断されたことはない。
【0108】
薬物耐性突然変異: 被験体における突然変異が抗癌剤などの、治療薬に対する抵抗性の増加または減少をもたらすことがある。例えば、bcr-abl融合遺伝子における突然変異は、慢性骨髄性白血病でのグリーベック治療に対する抵抗性を与えることが知られている。さらに、病原体(細菌またはウイルスなどの)における突然変異が、治療薬(抗生物質または抗ウイルス剤などの)に対する抵抗性の増加または減少した病原体をもたらすことがある。それ故、開示される組成物は、治療薬に対する抵抗性と関係することが知られている突然変異を有する合成標的配列を含むことができる。この突然変異の検出(被験体および陽性対照サンプルにおける)によって、被験体(または微生物)は治療薬に対する抵抗性が増加したことが示唆される。この突然変異が被験体で検出されないが、陽性対照で検出されるなら、被験体(または微生物)は治療薬に対する抵抗性が増加していないことが示唆される。
【0109】
家族性地中海熱(FMF)は再発性炎症性多発性漿膜炎によって特徴付けられる遺伝性疾患である。FMFを引き起こすMEFV遺伝子中の突然変異はE148QおよびM694Iを含むが、これらに限定されることはない。
【0110】
家族性大腸腺腫症(FAP)は結腸から直腸に沿った数百から数千の腺腫性ポリープの発生によって特徴付けられる稀有な遺伝子疾患であり、未治療のまま放置された場合、幼齢で癌に至る。APC (大腸腺腫性ポリポーシス)遺伝子中の突然変異がFAPと関係することが明らかにされている。典型的な突然変異はAPC遺伝子全体の欠失、第14エキソンの欠失、ならびに第4エキソン(c.423G→T)、第14エキソン(c.1956C→T、c.1957A→Gおよびc.1957A→C)および第15エキソン(c.1959G→A)中のエキソン突然変異を含むが、これらに限定されることはない。
【0111】
家族性乳癌および卵巣癌: BRCA1 (乳癌(BReast-CAncer)感受性遺伝子1)およびBRCA2中の突然変異が乳癌および卵巣癌と関係することが見出されている。報告された突然変異および多型は300を超えている。多くの稀有な多型が存在する(Shattuck-Eidens et al. JAMA 278:1242-50, 1997)。BRCA1およびBRACA2突然変異の特定の例は、BRCA1の場合1135insA、1675delA、1499insA、2804delAAおよびG563X、ならびにBRCA2の場合6503delTT、L2776X、A2951T、999del5および4486delGを含むが、これらに限定されることはない。さらなる例はアシュケナジム・ユダヤ人系の対立遺伝子BRCA1での185delAGおよび5382insCならびにBRCA2での6174delT (Abeliovich et al., Am. J. Hum. Genet. 60:505-14 1997)、アフリカ人-アメリカ人系の突然変異1832del5および5296del4のほかにBRCA1突然変異1625del5、ならびにBRCA2突然変異1536del4、6696delTCおよび7795delCT (Gao et al., Am J. Hum. Genet. 60:1233-6, 1997; Gao et al., Hum. Genet. 107:186-91, 2000)、およびスカンジナビア人系の突然変異BRCA1での1675delAおよび1135insA (Borg et al., Disease Markers 15:79-84, 1999)などの、民族特異的な突然変異を含む。
【0112】
異常血色素症はヘモグロビンの遺伝性障害を含む。例としてはα-サラセミア、β-サラセミア、および鎌状赤血球障害が挙げられる。β-グロビン遺伝子中のβ-サラセミアと関係する突然変異はGTG→GGG (Val126Gly)、39C→T、コドン77/78位のシトシンの欠失(-C) [CAC(His) CA-またはCTG(Leu)→-TG]、GAG→GCG (Glu26Ala)およびGGC→AGC (Gly29Ser)を含むが、これらに限定されることはない。α2-グロビン遺伝子中のα-サラセミアと関係する突然変異はコドン22位のGGC→GGTおよびコドン23位のGAG→TAG (またはGlu→Term)を含むが、これらに限定されることはない。ヘモグロビン遺伝子中の、鎌状細胞と関係する突然変異はベータ鎖の第6位のE→Vを含むが、これに限定されることはない。
【0113】
遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)は鉄吸収不全によって引き起こされる常染色体劣性疾患である。C282Yは、北欧人種群およびその子孫においてHHを引き起こす最も頻度の高いHFE遺伝子突然変異である。HHを引き起こすHFE遺伝子中のその他の典型的な突然変異はH63DおよびS65Cを含むが、これらに限定されることはない。
【0114】
遺伝性非ポリープ性大腸癌(HPCC): MLH1、MSH2およびMSH6における突然変異はHPCCと関係することが分かっている。MMR遺伝子において300種を超える異なる変化が大多数(約90%)はMLH1およびMSH2で同定されている。突然変異の特定の例は、フレームシフトを引き起こす1塩基対欠失(MLH1: g.38-39insCCCA、g.1971del.T; MSH2: g.163del.C、g.746del.A; MSH6 :g.3320del.A)、MSH2におけるナンセンス突然変異g.1030C→Tは停止コドンをもたらす: p.Q344X、MLH1ナンセンス突然変異g.806C→G、MLH1における2006delAAAAG突然変異、およびhMLH1遺伝子の第2エキソン中のコドン64位での2つのアデノシンヌクレオチドの欠失(190-191delAA)を含むが、これらに限定されることはない。
【0115】
遺伝性網膜芽細胞腫(RB)は、眼内の癌を引き起こす常染色体優性疾患である。RBはRB1遺伝子中の突然変異によって引き起こされる。RBと関連付けられているRB1中の突然変異の例としては78250C→T、RB1の欠失、第2エキソン中の2 bp挿入(5506-5507insAG、R73fsX77)、第13イントロンの最後の不変(invariant)ヌクレオチドに影響を与えるGからAの転位(76429G>A)、第20エキソン中のTからCの転位(156795T→C、L688P)、CGAコドンにおいて停止コドンをもたらすCからTの転位(64348C→T、76430C→T、78238C→T、78250C→Tおよび150037C→T)、第19エキソン中のK616E (1846A→G)、第7エキソン中のAA挿入(684-685insAA)、第16エキソン中のR500G (1498A→G)、および第23エキソン中のA挿入(c.2391-2392insA)を含むが、これらに限定されることはない。
【0116】
多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)は、内分泌腫瘍に関与する常染色体優性の症候群である。RET癌原遺伝子の突然変異がMEN2Aと関係することが分かっている。RETでの突然変異の特定の例はC618S、1900T→C (C634R)、V804LおよびS836Sを含むが、これらに限定されることはない。
【0117】
非遺伝性の癌マーカー: BRCA1/2のような遺伝性の癌マーカーに加えて、特定の腫瘍と関連付けられる関心対象の体細胞突然変異を含む組成物を、本開示の教示に基づいて作出することができる。例としては膵臓癌でのK-ras突然変異(コドン12および13におけるものなどの)、肺癌でのp53突然変異、および消化管間質腫瘍でのc-kit突然変異(第11エキソンにおけるものなどの)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0118】
p53関連疾患としては、突然変異p53核酸分子またはタンパク質における突然変異と関連付けられる疾患が挙げられる。例えば、突然変異p53分子は、腫瘍の増殖もしくは成長を低減するもしくは抑制する能力、細胞周期を調節する能力、アポトーシスを誘導する能力、転写因子として作用する能力、またはその組合せが低下している。典型的な突然変異p53配列はYamadaら(Cancer Res. 51:5800-5, 1991)、Mashiyamaら(Oncogene 6:1313-8, 1991)およびPellerら(DNA Cell Biol. 14:983-90, 1995)の中に開示されている。特定の例では、p53突然変異は第4〜7エキソンのいずれかの中に存在する。
【0119】
静脈血栓形成傾向は、静脈系において凝塊形成を引き起こす障害を含む。ヒト第5因子ライデン遺伝子(Arg506Gln多型をもたらす1691G→A転位; R485K多型をもたらす1628G→A転位; Arg306Thr突然変異をもたらす1091G→C転位; Arg306Gly突然変異をもたらす1090A→G転位; およびHis1299Arg多型をもたらす4070A→G転位); フィブリノゲン(Thr312Ala); メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHRF) (677C→Tおよび1298A→C); およびプロトロンビン(G20210A突然変異)での置換を含むが、これらに限定されない、幾つかの遺伝子における突然変異が血栓症のリスク増大と関係することが知られている。
【0120】
キット
本願の開示は同様に、本明細書に開示される核酸分子および組成物を含むキットを提供する。例えば、キットは遺伝(遺伝性または非遺伝性)病を診断するための、または例えば被験体もしくは微生物は治療薬に対する抵抗性が増加したもしくは減少したかどうかを判定するための1つまたは複数の陽性対照を含むことができる。特定の例では、開示される組成物の各作用物質は、別個の容器中で提供される。1つの例では、キットは関心対象の各標的突然変異に対する別個の容器を含む。
【0121】
1つの例では、キットはACMG提言の25種のCFTR突然変異などの、CFTR陽性対照サンプルのセットを含む。別の例では、キットは遺伝子に基づく血栓形成素因検査に利用できる陽性対照(ヒト第5因子ライデン、フィブリノゲン、MTHRFおよびプロトロンビンにおける突然変異に対する陽性対照サンプルなど)のセットを含む。
【0122】
実施例1
サンプルの構築および調製
本実施例はCFTR遺伝子での突然変異を検出するための診断サンプルを作出するのに利用される方法について記述する。しかしながら、本開示は、単一の突然変異を含む人工的DNAサンプルにもCFTR遺伝子だけにも限定されることはない。例えば、本実施例において記述されるものに類似の方法を利用し、それぞれが単一の突然変異を含んだ複数の特徴付けされたプラスミドを加えることで、複数の突然変異を単一の標的配列に作出することができる。さらに、単一のプラスミドを操作して、標的配列の中に2つ以上の突然変異を含有させることができる。この方法を利用して、遺伝子疾患と関係することが知られている突然変異を有するものなどの、疾患を引き起こすその他の遺伝子から、標的配列を含む人工的配列を作出することもできる。
【0123】
CFTR遺伝子は第7染色体(7q31.2)上に位置する。これはサイズがおよそ250 kbであり、27個のエキソンを含む(Zielenski and Tsui, Ann. Rev. Genet. 29:777-807, 1995)。以下の突然変異を利用して、人工的DNAサンプルを作出した: G85E (第3エキソン)、N1303K (第21エキソン)および1078delT (第7エキソン)。G85EおよびN1303Kはそれぞれ、オリジナルのACMGパネルにおいて最も5'および3'側の突然変異に相当する。1078delTはCoriell貯蔵所またはその他利用可能な供給元から現在利用できない突然変異である。G85Eおよび1078delT標的配列は、N1303Kよりも稀有であり、すなわち天然の供給源(患者サンプルなどの)から得ることが困難である; 後者を、CFTR構築体がオリジナルのACMGパネル中の可能な突然変異を全て包含していることを主に保証するためのマーカーとして利用した。(1078delTはその希少性のため、最近になってコア突然変異スクリーニングパネルから除かれた; Watson et al. Genet. Med. 6:387-91, 2004)。
【0124】
図1は、利用した戦略を示している。野生型(非突然変異) CFTR遺伝子を含むヒトBAC DNA (ResGen, Birmingham, AL)から、関心対象の突然変異部位を含むと思われるCFTRの断片(2〜4 kb)をPCR増幅した。ともに完全なCFTR遺伝子とフランキング配列とを含むBACクローンCIT-B068P20 (AC000111)およびCIT-B 133K23 (AC000061)をPCR増幅のためのCFTR核酸材料の供給源として役立てた。
【0125】
各セグメントに対する突然変異部位が概ね増幅遺伝子産物の中央に位置するように、野生型CFTRの断片をPCR増幅した。プライマー配列5'-tgg gga ggg aaa tag atg gga aaa ggt aat-3'(SEQ ID NO:1)および5'-tta caa gcc aag cag agc ata gaa agg-3'(SEQ ID NO:2)は、G85突然変異部位を含む3 kbの単位複製配列をもたらし、その一方でプライマー配列5'-aaa tgc cag gta ccc aca tgc act atg cca-3'(SEQ ID NO:3)および5'-tct tca ttt tct tct ctg ctc ctc tct acc-3'(SEQ ID NO:4)は、1078突然変異部位を含む2.4 kbの単位複製配列をもたらした。
【0126】
得られた増幅配列を続いて標準的なクローニングベクター(pCR2.1およびpCRII, Invitrogen)に連結し、1ラウンドの部位特異的突然変異誘発(Promega, Madison, WI)に供して、標的のCFTR遺伝子突然変異を導入した。関心対象のエキソンの配列解析および制限消化パターン分析により、今度は標的の突然変異を含んだ標的のCFTR配列を含むプラスミドを同定した。
【0127】
単一のCFTR突然変異とフランキング遺伝子領域とを含むこれらのプラスミドを、人工的な突然変異サンプルの作出のための基礎とした。各プラスミド種(関心対象の突然変異を持つおよび持たない)ならびにBAC 068P20および133K23の大量調製物を精製し、特徴付けし、定量化した。これら別個のDNA供給源の等モル比を合わせることにより、各人工的サンプルを初めに配合した。
【0128】
CFTR突然変異の最新アッセイは遺伝子中の複数の部位を標的とし、単一の標的突然変異だけを標的とはしないので、アッセイにより標的とされるがサンプル中には存在していないその突然変異全てに対し陰性(野生型)シグナルが検出されるようにBAC DNAを含めた。これはサンプルの一部に第3の対立遺伝子を加えるが、その量はごくわずかなので、それが大部分のアッセイにおいて両対立遺伝子のシグナルバランスに影響を与えることはない(実施例3を参照のこと)。
【0129】
各サンプルに対する各DNA供給源のおおよその濃度を決めるための計算は、典型的なCAP/ACMG技能サンプル(緩衝液20 μL中50 μg DNA)において予想されうる各対立遺伝子の相対モル濃度に主として基づいた。[大体、ゲノムDNA 50 μgはヒト染色体の1セット(3×109塩基対)の2×10-17モルにほぼ等しい]。これらのサンプルを作出するため、50 μg/20 μLサケ精子DNA 200 μLを各プラスミド10 μLおよびBAC DNA (各BACに対し) 10 μLと混合した。この混合物を各20 μLの10サンプルに分けた。プラスミド濃度はおよそ1 ng/μLであり、BACはおよそ14ピコグラム/μLであった。プラスミドはおよそ6 kbであり、その一方でBACは150 kbおよび88 kbであった。
【0130】
フランキングDNAを突然変異部位に付加することで、遺伝子突然変異の検出と同定に利用できる工程類の融通性が高められる。2つのBACクローンはCFTR遺伝子配列全体を利用可能にし、それにより人工的組成物を被検体から得られるサンプルにさらに酷似させるまたは擬態させることができる。
【0131】
人工的サンプルを被検体から得られる核酸分子のサンプルにさらに擬態させるため、バルクおよびバックグラウンドのゲノムDNAキャリアに対しサケ精子DNAの形でキャリア核酸分子を加えた。それが主要なDNA成分であったので、オリゴヌクレオチドプライマーセットのいずれかを用いたPCR分析の鋳型としてサケ精子DNAを用いた場合に、AMP-FLP法または市販のCFTRハイブリダイゼーションアッセイ(Roche Diagnostics, Indianapolis)のいずれによっても予想されるサイズの増幅産物が観測されないことを確認した。
【0132】
以下の5つの遺伝子型のそれぞれについてサンプルを配合し分析した: 野生型(ホモ接合性、正常)、ホモ接合性G85E、ホモ接合性1078delT、ヘテロ接合性G85Eおよびヘテロ接合性1078delT。PCR/制限消化アッセイおよび標準的なリバースラインブロット技術(図2)を用いてアッセイした場合に、各サンプルは「天然」サンプル(被験体から得られたサンプル)と見分けがつかないことが認められた。
【0133】
実施例2
確認的DNA配列決定
構築された断片の忠実性を保証するためおよびPCR誤取込みエラーまたはその他の原因による予想外の変種の導入を検出するため、標準的なABI技術を利用して、1078delT突然変異を持つまたは持たないCFTR第7エキソンを含むプラスミドを配列決定した。野生型配列も突然変異配列もどちらも変化はなく、各構築体中に存在していた(図3)。
【0134】
実施例3
人工的なCFTR突然変異対照の利用
実施例1で作出された5つの人工的DNAサンプルを、CFTR突然変異スクリーニングのさまざまな検査プラットフォームを使用しているパイロット検査施設9箇所で検査した。この結果を表1に要約する。
【0135】
(表1)パイロット検査要約

【0136】
この結果から、5つのDNA検査サンプルが複数の全検査プラットフォームでの標的のヒト遺伝子型の模倣で再現性があったことが示唆される。施設のなかにはサンプル挙動でわずかな異常に気付くところもあったが、ただ1つの突然変異サンプルが間違って(ホモ接合性の代わりにヘテロ接合性1078delTとして)同定されたのみであった。リバースドットブロット技術を利用して、5つの検査サンプルを最適化したので、類似の検査方法(2つの異なる製造元による)を利用している施設は、デザインされた各サンプルの遺伝子型を識別するのは難しいことではなかった。
【0137】
その他の検査プラットフォームのなかには、ABI Genotyper技術、専売特許の多重ハイブリダイゼーションアッセイ、増幅抵抗性突然変異システム(ARMS)、および2種の異なる専売特許DNAマイクロアレイシステムがあった。マイクロアレイの1施設では少し多い変異体のずれが報告されたものの、これらのプラットフォームのそれぞれが概ね正しい結果を得ていた(表2): ヘテロ接合性サンプルでの野生型比率および1078delT「ホモ接合性」サンプルでの野生型配列の誤った検出は上記のとおり。
【0138】
(表2)各方法によるパイロット性能

1検査室; 解釈に影響を与えはしなかった。
【0139】
表2に示されるとおり、リバースラインブロットにおいてであれまたはマイクロアレイ装置を用いてであれ、人工的な陽性対照サンプルは対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーションプラットフォームで最も確実に機能した。観測された間違いの理由は、実施例1で調製された人工的サンプルが最初に他のプラットフォームで最適化されたという事実による可能性が高い。例えば、「ホモ接合性」サンプルが微量の野生型配列で構成されていると決定付けられた人工的サンプル、および1078delTサンプルにおいてこれを検出したマイクロアレイ施設は、そのプラットフォームがヘテロ接合体配列のその対立遺伝子検出において極めて感度が高いことを示すものであった。
【0140】
初めに疑わしい結果を出した唯一のプラットフォームがARMSアッセイであり、これでは部位特異的突然変異誘発によって導入されたものに加えて、5つのサンプルの全てで余分なCFTR突然変異が検出された。さらなる調査により、このアッセイにおいて、人工的サンプル中の鋳型DNAの濃度が患者サンプルから使用されたものよりも10〜100倍高いことが明らかになった。検査室で分析の前にサンプルを希釈してもらうと、そもそもかなり薄かった余分なバンドのいくつかは消失した。
【0141】
DNA配列決定法を利用した1検査室では、人工的サンプル中のCFTR「遺伝子」全体を分析することができており、おまけにサンプルの全てで予想外の(共通していたが)M470V多型(ヒトゲノム計画の初期にこれらのBAC構築用のDNAを提供した者によって明らかに持ち込まれた)が検出された。
【0142】
実施例4
BRCA1およびBRCA2サンプルの構築および調製
本実施例はBRCA1およびBRCA2遺伝子での突然変異を検出するための診断サンプルを作出するのに利用される方法について記述する。この方法はCFTR遺伝子に対し実施例1に記述されているものに類似している。特定の突然変異について記述するが、当業者は類似の方法を利用して、その他のBRCA1またはBRCA2突然変異を導入できることを認識するであろう。さらに、本実施例に記述されるものに類似の方法を利用して、それぞれが単一の突然変異を含む複数の特徴付けされたプラスミドの付加により、複数の突然変異を単一の標的配列に作出することができる。同様に、単一のプラスミドを操作して、標的配列中に2つ以上の突然変異を含有させることができる。
【0143】
6174delT BRCA2突然変異を利用して、合成による標的突然変異BRCA2配列を作出することができる。野生型(非突然変異) BRCA2遺伝子を含むヒトBAC DNA (ResGen, Birmingham, AL)から、関心対象の突然変異部位を含んだBRCA2の断片(2〜4 kb)をPCR増幅した。BACクローンCTD 2343K5をPCR増幅のためのBRCA2核酸材料の供給源として役立てた。
【0144】
野生型BRCA2の3 kb断片をPCR増幅し、シャトルベクターにクローニングした。実施例1に記載の部位特異的突然変異誘発を利用して、6174delT BRCA2突然変異(またはその他任意の標的突然変異)を挿入することができる。関心対象のエキソンの配列解析および制限消化パターン分析により、6174delT BRCA2突然変異を含んだ標的配列を含むプラスミドを同定することができる。
【0145】
突然変異配列を含むプラスミド、および野生型配列を含むBACの等モル比を合わせることにより、人工的な陽性対照サンプルを配合する。さらに、バルクの場合、例えば、濃度を標的の量にするため、サケ精子DNAなどのキャリアDNAを加えることができる。
【0146】
BRCA1遺伝子の場合、例えば、実施例5に記述される方法を利用して、組織培養での相同組換えによって大きな欠失をBRCA1遺伝子に導入することができる。野生型(非突然変異) BRCA1遺伝子を含むヒトBAC DNA (ResGen, Birmingham, AL)から、第2エキソンを含めBRCA1のおよそ2 kbの欠失をもたらしうるBRCA1の断片をPCR増幅した。BACクローンCTD-3199J23をPCR増幅のためのBRCA1核酸材料の供給源として役立てた。次に、この領域をクローニングベクター(pPNTなどの)にクローニングし、ベクターを細胞に導入して、相同組換えおよび第2エキソンを含めBRCA1の約2 kbの欠失を可能にすることができる。特定の典型的な例を実施例5に示す。
【0147】
細胞からゲノムDNAを単離することにより、人工的な陽性対照サンプルを配合する。さらに、バルクの場合、例えば、濃度を標的の量(50 μg/20 μlなどの)にするため、サケ精子DNAなどのキャリアDNAを加えることができる。サンプルまたは細胞を、例えば、配列決定法、PCR/制限消化アッセイを用いたアッセイ法または標準的なリバースラインブロット技術により分析して、それらが標的の突然変異を含むことを確認することができる。
【0148】
例えば、実施例7に記述される方法を利用して、これらの対照サンプルをBRCA1またはBRCA2遺伝子中の突然変異をスクリーニングする診断アッセイでの陽性対照として利用することができる。
【0149】
実施例5
相同組換えによる標的配列の突然変異
本実施例は遺伝子疾患と関係する配列などの、標的配列に突然変異を導入するのに利用できる特定の典型的な相同組換え方法について記述する。標的配列のヌル変異を作出するための方法も提供される。突然変異をCFTRに導入するため、特定の例について記述するが、当業者であれば類似の方法を利用して、突然変異を関心対象の任意の標的配列に導入できることを認識するであろう。
【0150】
特定の例では、関心対象の配列を包含する領域は2〜4 kbなどの、長さが少なくとも2 kbである。相同組換えはトランス遺伝子を2つの別個の断片(真ん中に、neoRなどの、抗生物質耐性マーカーを有する)に分割するので、関心対象の配列を包含する領域を二分してクローニングベクターに挿入する(図4)。1つの例では、標的の突然変異をアームの一方の外端に導入し、その結果、隣接する外因性のフランキング領域にハイブリダイズする一方のプライマーと構築体の少し内部方向のしかし重要な突然変異を包含するもう一方のプライマーとを用いて、レシピエントゲノムへのその組込みの成功を簡単な、短いPCR増幅で容易にモニターすることができる。
【0151】
例えば、関心対象の各突然変異部位に対する2つの標的化アーム、つまりサイズが4〜6 kbの長いアーム、およびサイズが2〜4 kbの短いアームを作出することができる。配列が連続する、これらの標的化アームは野生型配列からPCR増幅することができる。例えば、CFTRに対する陽性対照サンプルを作出するため、CFTR遺伝子を含むヒトBAC DNA (ResGen, Birmingham, AL)から、アームをPCR増幅することができる。ともに完全なCFTR遺伝子とフランキング配列とを含むBACクローンCIT-B 068P20 (AC000111)およびCIT-B 133K23 (AC000061)をPCR増幅のためのCFTR核酸材料の供給源として役立てることができる。
【0152】
結果的に得られたアームをpPNTベクター(Stratagene, La Jolla, CA)などの、クローニングベクターにクローニングする。このベクターはマルチクローニング部位ならびにneoR遺伝子カセット(またはその他の抗生物質耐性配列)および連鎖tk遺伝子を含むことができる。突然変異を含んだ関心対象の遺伝子を包含する領域が利用可能であるなら、その突然変異した配列をベクターに直接的にクローニングすることができる。しかしながら、突然変異、例えば、稀有な突然変異が利用可能でないなら、部位特異的突然変異誘発を利用して、標的の突然変異を野生型配列に導入することができる。例えば、野生型配列をプラスミドにクローニングした後、部位特異的突然変異誘発を利用して、突然変異を野生型配列に導入することができる(例えば、実施例1を参照のこと)。手短に言えば、2本のミスマッチプライマーを利用してPCRにより、野生型配列を増幅し、それらのプライマーのうち一方が標的の突然変異を導入し、その一方でもう一方がマルチクローニング部位中の制限消化配列の1つを破壊する。成功裏に突然変異されたプラスミドだけがその特定の制限酵素を用いた切断に抵抗性となるはずであり、これを続けてミスマッチ修復欠損BMH71-18大腸菌宿主細胞に形質転換することができ、これから、突然変異した配列を大量に増やすことができる。
【0153】
結果的に得られたベクターをHepG2、PZ-HPV-7またはHEK細胞系などの、レシピエント細胞に導入する。1つの例では、細胞はリンパ芽球様細胞である。任意の方法を利用して、相同組換えベクターを細胞に導入することができる。特定の例では、FuGENE-6脂質試薬(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis)が使われる。相同組換え体をG418とガンシクロビルの両方に対するその耐性によって選択し、トランス遺伝子の適切な方向性を前述のPCR法によってまたはサザンブロットによってさらに確認する。
【0154】
この方法によってスクリーニングされ検証された細胞コロニーを次のとおり陽性対照として利用することができる。人工的サンプルを作出するため、ゲノムDNAの単離など、核酸を細胞から単離する。人工的サンプルは、単離されたDNAを含む。そのような人工的な陽性対照サンプルは、例えば、対立遺伝子特異的なプローブを用いたリバースドットブロットハイブリダイゼーション、サザンブロッティング、対立遺伝子特異的な制限エンドヌクレアーゼ消化、キャピラリー電気泳動、およびDNA配列決定などの方法で、分子遺伝学的検査の間に使用することができる。
【0155】
突然変異構築体中のneoR遺伝子の存在が人工的な陽性対照サンプルに間違った結果をもたらすならば、neoR遺伝子が後に除去される条件付き置換系を利用することができる。例えば、cre/lox系を利用して、neoR遺伝子配列を除去することができる。手短に言えば、除去される挿入断片(neoR遺伝子などの)を、バクテリオファージP1に由来する、2つのloxP部位の間にクローニングする(「loxPにより取り囲む(floxed)」)。P1 creリコンビナーゼの存在下において、loxP部位の間で部位特異的な組換えが起こり、それらの間の配列の切除をもたらす。成功裏の相同組換えが行われた後に、pBS185 (GIBCO/BRL, Rockville, MD)などのcre-発現ベクターを用いた一過性トランスフェクションによって、不要な配列の除去を達成することができよう。相同組換えは2度行われるので(各対立遺伝子に対し1度)、cre/lox法は、特異的な突然変異のホモ接合性を模倣する人工的サンプルに利用することができる。必要に応じ、オワンクラゲ(Aequorea jellyfish)緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子に連結されたneoR融合体を利用して、細胞からの蛍光の消失を観察することにより、組換え細胞からのneoR遺伝子の切除の成功をモニターすることができる。
【0156】
cre-lox系(またはその他の組換え系)を利用して組換え遺伝子全体を切除し、標的遺伝子に対し「ヌル」である(殆どまたは完全に欠失されている)対立遺伝子を残すこともできる。反対側の対立遺伝子に対し繰り返した場合には、完全にヌルの細胞系(すなわち、任意の機能的遺伝子を欠くもの)を作出することができる。それ故、本開示により提供されるのは、1つまたは2つのヌル標的遺伝子を含んだヌル細胞系である。これらのヌル細胞、およびこれらのヌル細胞から単離された核酸を陽性対照として利用することができる。
【0157】
実施例6
陽性対照組成物の作出
本実施例は、突然変異させた合成標的配列を含む人工的な陽性対照を作出するのに利用できる方法を提供する。当業者であれば、類似の方法を利用して、非感染性微生物の核酸配列を含む陽性対照組成物を作出できることを認識するであろう。
【0158】
疾患と関係することが知られている配列などの標的配列を、疾患と関係する1種または複数種の突然変異を含むように突然変異させる。例えば、疾患がCFであるならば、標的配列はCFTR (またはその断片)であり、突然変異は以下の1つまたは複数を含むことができよう: G149R、L206W、G551D、S945L、R1070W、N1303K、D1152H、3272-26A→G、S1235R、3120+1G→A、ΔF508、ΔI507、621 + 1G>T、G85E、1078delT、R553X、G542X、R117H、R334W、3849 + 10 kb C>T、R1162X、G551D、1717-1G>A、R347P、2789 + 5G>A、2184delA、W1282X、A455E、711 + 1G>T、3659delC、3120 + 1G>A、N1303K、R560T、1898 + 1G>AおよびI148T。標的配列は完全長の配列を含む必要はなく、100〜4000ヌクレオチドのような、少なくとも100ヌクレオチドであるものなどの、その断片を含むことができる。部位特異的突然変異誘発、相同組換え、およびその他のものなどの、配列を突然変異させる方法は公知である。標的配列を標準的なクローニングベクター(例えば、pCR2.1およびpCRII)などの、ベクターにクローニングし、それから突然変異させてもよく、または初めに突然変異させ、それからクローニングベクターにクローニングしてもよい。
【0159】
関心対象の遺伝子領域を含む合成標的対照配列はBACなどの、ベクターの中に存在する。多くのヒト遺伝子(またはその断片)を含むBACは、公的に入手可能である。または、標準的なクローニング方法を利用して、そのような構築体を作出することができる。
【0160】
ヘテロ接合突然変異の陽性対照配列を作出するため、突然変異させた合成標的配列および関心対象の合成対照遺伝子領域を1:1のモル比で混合する。キャリアDNA少なくとも1 μg/サンプル2 μl、例えばDNA 50 μg/20 μLなどの、キャリアDNA、例えば、サケ精子DNAをさらに加えて、分析されるヒト臨床サンプルにおいて認められるものに類似した量までDNA濃度を増加させることができる。
【0161】
ホモ接合突然変異の陽性対照配列を作出するため、突然変異させた合成標的配列およびキャリアDNAを混合する。キャリアDNA少なくとも1 μg/サンプル2 μl、例えばDNA 50 μg/20 μLなどの、キャリアDNAを加えて、分析されるヒト臨床サンプルにおいて認められるものに類似した量までDNA濃度を増加させる。
【0162】
実施例7
診断の方法
本実施例は、例えば、被験体において疾患を診断するため、被験体が遺伝子突然変異を有するかどうかを判定するのに利用できる典型的な方法について記述する。これらの方法では、分子遺伝学的検査に一般に用いられている方法において被験体から得られる対照サンプルと殆ど同じように振舞う、本明細書に記述される人工的な陽性対照サンプルを活用する。BRCA2突然変異を同定するために、例えば、乳癌または卵巣癌を診断するため、特定の例を示すが、本開示は乳癌/卵巣癌およびBRCA2突然変異に限定されることはない。同様に、CFTR突然変異を同定するために、例えば、CFを診断するため、特定の例を示すが、本開示はCFおよびCFTR突然変異に限定されることはない。本実施例に示される情報に基づき、利用者は開示される陽性対照サンプルを利用して、被験体(または微生物)が任意の公知の遺伝子突然変異を有するかどうかを判定することができる。
【0163】
被験体由来のサンプルを分析して、1つまたは複数の遺伝子突然変異が存在するかどうかを判定する。例えば、標準的な静脈穿刺法を利用し、血液サンプル(またはその分画) (少なくとも1 ml、少なくとも5 ml、5 ml、または1〜10 mlなどの)を被験体から採取することができる。サンプルは直接的に使用されても、またはサンプル中のDNAが単離されてもよい。微生物の配列が分析される例では、サンプルを被験体から採取し培養して、精製微生物を得ることができる。DNAが分析のために微生物から単離されてもよく、または微生物が直接的に使用されてもよい。このサンプルを、標的の突然変異の検出を可能にする遺伝子スクリーニングアッセイに供する。対立遺伝子特異的なプローブを用いたリバースドットブロットハイブリダイゼーション、サザンブロッティング、対立遺伝子特異的な制限エンドヌクレアーゼ消化、キャピラリー電気泳動、およびDNA配列決定などの、任意のそのような方法を利用することができる。
【0164】
本方法は同様に、上記で使われた同じ遺伝子スクリーニングアッセイを利用して、開示される人工的な陽性対照組成物の中に突然変異が存在することが、その方法によって検出されるかどうかを判定する段階を含む。突然変異が被験体(または微生物)と陽性対照サンプルの両方で検出されるなら、このことは被験体(または微生物)が突然変異を有することを示唆する。突然変異が被験体(または微生物)で検出されないが、陽性対照サンプルで検出されるなら、このことは被験体(または微生物)が突然変異を有していないことを示唆する。
【0165】
1つの例では、単一の突然変異がスクリーニングされる。例えば、被験体がBRCA2突然変異における6174delTの存在についてスクリーニングされているなら、人工的な陽性対照サンプル中の突然変異させた標的配列もBRCA2突然変異における6174delTを含み、合成対照配列は6174T位を含んだBRCA2 DNAの領域を含む。6174delT突然変異が被験体と陽性対照サンプルの両方で検出されるなら、このことは被験体がその突然変異を有することを示唆する。6174delT突然変異が被験体で検出されないが、陽性対照サンプルで検出されるなら、このことは被験体がその突然変異を有していないことを示唆する。しかしながら、6174delT突然変異が陽性対照サンプルで検出されないなら、このことは利用されている特定のアッセイで(または特定のアッセイ条件の下で)適切な対照として陽性対照が機能していることを示唆するので、被験体の遺伝的状態に関して確定的な判定を行うことはできない。
【0166】
多数の突然変異がCFTR遺伝子全体中に広がっているにもかかわらず、CFはDNA配列決定アッセイによる検査に供されていない。この理由は、そのアッセイがスクリーニング検査であるには多くの場合、あまりに難儀であり費用がかかるためである。その代わりに、個々の突然変異が通常、1度に1つもしくは対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションによる多重パネルで(例えば、Wall et al. Hum. Mutat. 5:333-8, 1995; DeMarchi et al. Arch. Pathol. Lab. Med. 118:26-32, 1994; Grody et al. Am. J. Hum. Genet. 60:935-47, 1997を参照のこと)、または電気泳動的な断片分析(Chong and Thibodeau Mayo Clin. Proc. 65:1072-6, 1990)により検出されている。開示される方法は複数の突然変異のスクリーニングを同時に、例えば、CFと関係する25種の異なるCFTR突然変異のスクリーニングを可能にする。
【0167】
1つの例では、以下の方法を利用して、25種の異なるCFTR突然変異の1つまたは複数が被験体において存在するかどうかを判定する。1つの例では、25種のCFTR突然変異としてはΔF508、ΔI507、621 + 1G>T、G85E、1078delT、R553X、G542X、R117H、R334W、3849 + 10 kb C>T、R1162X、G551D、1717-1G>A、R347P、2789 + 5G>A、2184delA、W1282X、A455E、711 + 1G>T、3659delC、3120 + 1G>A、N1303K、R560T、1898 + 1G>AおよびI148Tが挙げられる。血液サンプルを前述のように被験体から採取し、診断アッセイ(リバースハイブリダイゼーションストリップでのASOプローブ、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、制限酵素消化、またはDNAマイクロアレイもしくはマイクロビーズハイブリダイゼーションなどの)を利用して、25種の突然変異を同定する。
【0168】
さらに、診断アッセイを利用し、人工的な陽性対照サンプル(これは25種全ての突然変異を有する単一のサンプル[例えば、異なるベクター上の各突然変異]、または25種の突然変異を分割した少なくとも2つのサンプル[例えば、2つ以上の突然変異を含んだ少なくとも1つのベクターを有する]とすることができる)をスクリーニングして、25種の突然変異を特定のアッセイで検出できることを確認することができよう。例えば、被験体がΔF508、ΔI507、621 + 1G>T、G85E、1078delT、R553X、G542X、R117H、R334W、3849 + 10 kb C>T、R1162X、G551D、1717-1G>A、R347P、2789 + 5G>A、2184delA、W1282X、A455E、711 + 1G>T、3659delC、3120 + 1G>A、N1303K、R560T、1898 + 1G>AおよびI148T CFTR突然変異の存在についてスクリーニングされているなら、人工的な陽性対照サンプル中の突然変異させた標的配列もΔF508、ΔI507、621 + 1G>T、G85E、1078delT、R553X、G542X、R117H、R334W、3849 + 10 kb C>T、R1162X、G551D、1717-1G>A、R347P、2789 + 5G>A、2184delA、W1282X、A455E、711 + 1G>T、3659delC、3120 + 1G>A、N1303K、R560T、1898 + 1G>AおよびI148T CFTR突然変異を含む。
【0169】
開示される本発明の原理を適用できる多くの可能な態様を考えると、例示される態様は本発明の単なる好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないと認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲により定義される。本発明者らはしたがって、これらの特許請求の範囲および趣旨の中に入る全てを本発明者らの発明として主張するものである。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】ゲノムDNAからの関心対象のCFTR遺伝子領域の増幅、その後のプラスミドクローニングおよび部位特異的突然変異誘発の一般戦略を示す概略図である。
【図2】市販の逆ハイブリダイゼーションストリップシステム(Roche Linear Array CF Gold 1.0)を用いてCFTR突然変異G85Eおよび1078delTに対し構築されたヘテロ接合およびホモ接合産物の自家パイロット検査の結果を示すハイブリダイゼーションストリップのデジタル画像である。比較のため実際の患者サンプルの検査結果も示されている(ストリップ6)。観察の遺伝子型は1、検査される突然変異に対し陰性; 2、G85Eホモ接合; 3、1078delTホモ接合; 4、G85Eヘテロ接合; 5、1078delTヘテロ接合; 6、検査される突然変異に対し陰性である。
【図3】野生型および1078delT突然変異を含むプラスミドの第7エキソン配列決定を示すトレースである。パネルAは野生型第7エキソン配列を含むプラスミドのセグメントを示す。パネルBは1078delT突然変異を含むプラスミドの対応セグメントを示す。矢印は、野生型には存在しているが突然変異を含む配列では欠失しているTの位置を示す。
【図4】ゲノムDNAからのCFTR標的アームの増幅、その後のプラスミドクローニングおよび部位特異的突然変異誘発の一般戦略を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽性対照サンプルを作出する方法であって、以下の段階を含む方法:
突然変異を含んだ合成標的配列および関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列を含む組成物を提供し、それにより陽性対照サンプルを作出する段階。
【請求項2】
組成物がサンプル中のDNAの総濃度を所望の量にまで増加させるために含まれるキャリアDNAをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
突然変異を含んだ合成標的配列および関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列が別個のポリヌクレオチド分子上に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
別個のポリヌクレオチド分子がベクターを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
1種または複数種の突然変異を標的配列に導入し、それにより突然変異を含んだ合成標的配列を作出する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
1種または複数種の突然変異を標的配列に導入する段階が、標的配列の部位特異的突然変異誘発を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
突然変異を標的配列に導入する段階が以下の段階を含む、請求項5記載の方法:
ベクター中に存在する、関心対象の遺伝子領域を包含する標的の野生型配列を突然変異させる段階。
【請求項8】
関心対象の遺伝子領域を包含する標的の野生型配列をベクターに導入する段階をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
陽性対照サンプルを作出する方法であって、以下の段階を含む方法:
サンプル中のDNAの総濃度を所望の量にまで増加させるために含まれるキャリアDNAおよび突然変異を含んだ合成標的配列を含む組成物を提供し、それにより陽性対照サンプルを作出する段階。
【請求項10】
陽性対照サンプルを作出する方法であって、以下の段階を含む方法:
突然変異を細胞中の合成標的配列に導入し、それにより組換え細胞を作出する段階; および
導入された突然変異に対する陽性対照サンプルを形成するために組換え細胞を単離する段階。
【請求項11】
導入された突然変異に対する陽性対照サンプルを形成するために組換え細胞からDNAを単離する段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項10記載の方法により産生される細胞。
【請求項13】
請求項1記載の方法により作出された陽性対照サンプルを含む組成物。
【請求項14】
突然変異を含んだ合成標的配列; および
関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列
を含む、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
組成物中のDNAの総濃度を所望の量にまで増加させるために含まれるキャリアDNAをさらに含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
請求項9記載の方法により作出された陽性対照サンプルを含む組成物。
【請求項17】
組成物中のDNAの総濃度を所望の量にまで増加させるために含まれる、キャリアDNA; および
突然変異を含んだ合成標的配列
を含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
合成標的配列が直鎖状のDNA配列である、請求項15記載の組成物。
【請求項19】
突然変異を含んだ合成標的配列がベクター中に存在する、請求項15記載の組成物。
【請求項16】
ベクターがプラスミドまたは人工染色体を含む、請求項19記載の組成物。
【請求項17】
合成標的配列が少なくとも100ヌクレオチドを含む、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
合成標的配列が少なくとも1000ヌクレオチドを含む、請求項15記載の組成物。
【請求項19】
合成標的配列が2000〜4000ヌクレオチドを含む、請求項15記載の組成物。
【請求項20】
合成標的配列が少なくとも2種の突然変異を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項21】
合成標的配列が少なくとも5種の突然変異を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項22】
ベクターが少なくとも2つのベクターを含み、各ベクターが、異なる突然変異を有する合成標的配列を含む、請求項19記載の組成物。
【請求項23】
合成標的配列中の突然変異が遺伝子疾患に関係する、請求項15記載の組成物。
【請求項24】
遺伝子疾患が遺伝性疾患である、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
遺伝性疾患が嚢胞性線維症、家族性癌、家族性卵巣癌、ハンチントン舞踏病(HD)、脊髄小脳失調、家族性地中海熱(FMF)、家族性大腸ポリープ症(FAP)、遺伝性非ポリープ性大腸癌、異常血色素症、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)、遺伝性網膜芽細胞腫(RB)、多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)、静脈血栓形成傾向、網膜芽細胞腫、リ・フラウメニ症候群、家族性メラノーマ、脆弱X、コネキシン26関連難聴、カナバン病、テイ・サックス病、軟骨形成不全症、脊髄性筋萎縮症、Muenke症候群頭蓋骨癒合症、ケネディ病、筋強直性ジストロフィー、Saethre-Chotzen頭蓋うっ血(craniostasis)または脊髄性筋萎縮症である、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
遺伝子疾患が嚢胞性線維症であり、合成標的配列中の突然変異がΔF508、G85E、R117H、G149R、L206W、R334W、G551D、G542X、R553X、S945L、R1070W、N1303K、1078delT、D1152H、3272-26A→G、S1235R、または3120+1G→A CFTR突然変異を含む、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
遺伝子疾患が嚢胞性線維症であり、合成標的配列中の突然変異がΔF508、ΔI507、621 + 1G>T、G85E、1078delT、R553X、G542X、R117H、R334W、3849 + 10 kb C>T、R1162X、G551D、1717-1G>A、R347P、2789 + 5G>A、2184delA、W1282X、A455E、711 + 1G>T、3659delC、3120 + 1G>A、N1303K、R560T、1898 + 1G>A、またはI148T CFTR突然変異を含む、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
遺伝子疾患が遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)であり、合成標的配列中の突然変異がC282Y、H63D、またはS65C HFE突然変異を含む、請求項25記載の組成物。
【請求項29】
遺伝子疾患が乳癌または卵巣癌であり、合成標的配列中の突然変異が1135insA、1675delA、1499insA、2804delAA、G563X、185delAG、5382insC、1675delA、1625del5、もしくは1135insA BRCA1突然変異または6503delTT、L2776X、A2951T、999del5、4486delG、1536del4、6696delTC、7795delCT、もしくは6174delT BRCA2突然変異を含む、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
遺伝子疾患が非遺伝性遺伝子疾患である、請求項23記載の組成物。
【請求項29】
遺伝子疾患が治療薬に対し抵抗性である、請求項23記載の組成物。
【請求項30】
合成標的配列中の突然変異が感染症と関係する、請求項17記載の組成物。
【請求項31】
突然変異させた合成標的配列が非感染性である、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
感染症が微生物を含む、請求項30記載の組成物。
【請求項33】
突然変異させた合成標的配列が、微生物のタイピングおよびサブタイピングに関係する突然変異を含む、請求項30記載の組成物。
【請求項34】
突然変異させた合成標的配列が、治療薬への抵抗性に対する微生物の抵抗性の増加と関係する突然変異を含む、請求項32記載の組成物。
【請求項35】
治療薬が抗生物質または抗ウイルス剤を含む、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
合成標的対照配列が野生型配列を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項37】
合成標的対照配列が人工染色体をさらに含む、請求項15記載の組成物。
【請求項38】
人工染色体が細菌人工染色体(BAC)、哺乳類人工染色体(MAC)、P-1人工染色体(PAC)または酵母人工染色体(YAC)である、請求項37記載の組成物。
【請求項39】
人工染色体がBACである、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
関心対象の遺伝子領域が、遺伝子疾患において突然変異している遺伝子の部分を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項41】
遺伝子疾患において突然変異している遺伝子の部分が、遺伝子疾患において突然変異している1つまたは複数のヌクレオチド、および1つまたは複数のヌクレオチド周辺の少なくとも近接する100ヌクレオチドを含む、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
関心対象の遺伝子領域が少なくとも100ヌクレオチドを含む、請求項40記載の組成物。
【請求項43】
関心対象の遺伝子領域が少なくとも2000ヌクレオチドを含む、請求項40記載の組成物。
【請求項44】
関心対象の遺伝子領域が完全長の遺伝子を含む、請求項40記載の組成物。
【請求項45】
完全長の遺伝子が少なくとも2つの人工染色体の間で分割される、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
キャリアDNAがゲノムDNAを含む、請求項15記載の組成物。
【請求項47】
キャリアDNAが非ヒトDNAを含む、請求項15記載の組成物。
【請求項48】
非ヒトDNAがサケ精子DNAを含む、請求項47記載の組成物。
【請求項49】
キャリアDNAが組成物中に1〜50 μg/20 μlの濃度で存在する、請求項15記載の組成物。
【請求項50】
突然変異を含んだ合成標的配列および関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列が少なくとも1:1のモル比で組成物中に存在する、請求項15記載の組成物。
【請求項51】
突然変異を含んだ合成標的配列および関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的対照配列が2:1のモル比で組成物中に存在する、請求項15記載の組成物。
【請求項52】
突然変異を含むおよび少なくとも200ヌクレオチドを含む合成標的配列を含んだベクター;
関心対象の遺伝子領域を包含する合成標的野生型配列を含んだBAC
を含む組成物。
【請求項53】
組成物中のDNAの総濃度を所望の量にまで増加させるために含まれるキャリアDNAをさらに含む、請求項52記載の組成物。
【請求項54】
被験体において遺伝子突然変異を検出する方法であって、以下の段階を含む方法:
遺伝子突然変異が被験体から得られるサンプル中に存在するかどうかを判定する段階;
遺伝子突然変異が請求項15または17記載の組成物中に存在するかどうかを判定するであり、ここでサンプルおよび組成物中の遺伝子突然変異の存在は、遺伝子突然変異が被験体に存在していることを示し、およびサンプル中ではなく組成物中の遺伝子突然変異の存在は、遺伝子突然変異が被験体に存在しないことを示す段階。
【請求項55】
遺伝子突然変異が関係する疾患を被験体において診断する方法である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
遺伝子突然変異が遺伝性突然変異である、請求項54記載の方法。
【請求項57】
遺伝子突然変異が非遺伝性突然変異である、請求項54記載の方法。
【請求項58】
サンプルが血液サンプルを含む、請求項54記載の方法。
【請求項59】
被験体がヒト被験体である、請求項54記載の方法。
【請求項60】
遺伝子突然変異が治療薬に対する病原体の抵抗性の増加と関係しており、被験体が病原体である、請求項54記載の方法。
【請求項61】
病原体が細菌、ウイルス、真菌、または原生動物である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
遺伝子突然変異が遺伝子疾患と関係する、請求項54記載の方法。
【請求項63】
遺伝子疾患を診断する方法である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
遺伝子疾患が嚢胞性線維症、家族性癌、家族性卵巣癌、ハンチントン舞踏病(HD)、運動失調症、家族性地中海熱(FMF)、家族性大腸ポリープ症(FAP)、遺伝性非ポリープ性大腸癌、異常血色素症、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)、遺伝性網膜芽細胞腫(RB)、多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)、静脈血栓形成傾向、網膜芽細胞腫、リ・フラウメニ症候群、家族性メラノーマ、脆弱X、コネキシン26関連難聴、カナバン病、テイ・サックス病、軟骨形成不全症、脊髄性筋萎縮症、Muenke症候群頭蓋骨癒合症、ケネディ病、筋強直性ジストロフィー、Saethre-Chotzen頭蓋うっ血または脊髄性筋萎縮症である、請求項62記載の方法。
【請求項65】
遺伝子疾患が嚢胞性線維症であり、遺伝子突然変異がCFTR突然変異であり、合成標的配列がCFTR突然変異を含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
CFTR突然変異がΔF508、ΔI507、621 + 1G>T、G85E、1078delT、R553X、G542X、R117H、R334W、3849 + 10 kb C>T、R1162X、G551D、1717-1G>A、R347P、2789 + 5G>A、2184delA、W1282X、A455E、711 + 1G>T、3659delC、3120 + 1G>A、N1303K、R560T、1898 + 1G>A、またはI148T CFTR突然変異を含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
請求項15または17記載の組成物を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−528227(P2007−528227A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503040(P2007−503040)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008108
【国際公開番号】WO2005/086938
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(503245650)アメリカ合衆国 (9)
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】