説明

診療装置

【課題】表示部を常に注視することなく診療情報を確認できるため、診療に専念することができる診療装置の提供を目的とする。
【解決手段】駆動スイッチ3aや切削工具2に作用する負荷トルクを表示する駆動トルク画面20と、該駆動トルク画面20の表示態様を制御する表示プログラム及び点灯管理プログラムと実行制御する制御回路6を備えた歯科用ハンドピース1において、駆動スイッチ3aや切削工具2に作用する負荷トルクの変化に基づいて、LCD10aによる表示色及び点灯パターンを変化させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、歯科診療等における診療に関する情報を表示する表示手段を備えた診療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、歯科診療等に用いる診療装置において、診断や治療に関する情報を視覚的に表示する表示手段を備えた診療装置が様々提案されている。
例えば、特許文献1に記載の診療装置(歯科用診療装置)は、根管長測定機能を備えるとともに、切削工具駆動用モータ及び表示部を有するハンドピースを備えた根管治療装置であり、根管内部における切削工具の位置に応じて、根管長測定の結果を色の異なる複数のLEDを表示ドットとして点灯消灯の切り替えにより表示するものである。
【0003】
また、異なる分野における電子機器であるものの、合成樹脂を成形する際の温度管理を行うための温度調節器などに用いる表示手段において、計測にともなう現在値を数値表示する表示部を、現在値と設定値との偏差に応じて、バックライトの色が変わるように構成しているものが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
上記特許文献1に記載の診療装置(歯科用診療装置)は、表示態様が単純であるため、限られた診療情報しか表示できなかった。したがって、例えば、術者は、限られた診療情報から、重要な情報を抽出する必要があるため、表示部を常に集中して視認する必要があり、視線の移動なしに診療に専念することが困難であるといった問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載の電子機器を上記診療装置に転用したとしても、診療情報として、動作中の情報である偏差によってのみ表示色が変化するため、測定値が設定偏差外になったかどうかの判断はできるが、あとどの程度で設定偏差を超えるかなどの診療における十分な判断を表示色の変化からすることはできなかった。したがって、例えば、術者は、表示部を常に注視する必要があり、視線の移動なしに診療に専念することが困難であるといった問題が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−038510号公報
【特許文献2】特開平05−011712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、表示部を常に注視することなく診療情報を確認できるため、診療に専念することができる診療装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、診療に関する情報を表示する表示部と、該表示部の表示態様を制御する表示制御部とを備えた表示手段及び診療手段を有する診療装置において、前記表示制御部に、前記診療に関する情報の変化に基づいて、前記表示部に表示する表示色及び点灯パターンの少なくとも一方を変化する表示態様変化手段を備えたことを特徴とする。なお、ここでいう表示色とは、表示部に表示される個々の文字やイラストの色というより、むしろ表示画面全体の色、画面そのものの基本色を指すものである。
【0009】
上記診療に関する情報は、診断情報、治療情報或いは治療状態情報とすることができる。詳述すると、診断情報は、患者を計測対象として得られた根管長、体温、心拍数などの診断結果に関する情報である。治療情報は、例えば切削治療用マイクロモータの回転数、切削工具にかかる負荷、光照射器の動作時間や残り動作時間、或いは診療装置の電池残量等の診療装置を計測対象として得られた治療状態に関する情報である。さらに、治療状態情報は、各診療装置における自動逆転モード、根管長測定単独モード、モータ非動作モード、治療開始当初から逆転するモードなどの動作モードや、基準負荷設定状態、基準位置設定状態、或いは回転数設定状態などの設定モード等の治療装置の状態に関する情報とすることができる。
【0010】
上記表示手段は、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ及び有機ELディスプレイ等とすることができる。
上記診療手段は、診療椅子等の診療台、CT撮影やパノラマ撮影を行うX線撮影装置、空気圧やモータで駆動するハンドピース、空気圧で駆動するエアスケーラー、超音波振動子の振動で駆動する超音波スケーラー、治療用レーザ発生器に接続されるレーザハンドピース、レーザハンドピースの先端に接続されるレーザ照射チップ、光重合用の可視光線照射装置、あるいは口腔内カメラ等の撮像装置とすることができる。
【0011】
この発明により、術者は診断内容や治療状態の概略を一目で把握できるため、より安全に診療することができる。
詳述すると、診療に関する情報、例えば切削工具にかかる負荷を表示する表示手段において、負荷の大きさに応じて表示部全体の表示色又は点灯パターンを変化させることで、視線を患部から表示部へ移動させることなく、どの程度の負荷がかかっているのか等を大まかに判断することができる。またバックライトを備えた液晶表示であればバックライト光源の波長、即ち色を変更することにより同等の効果を持たすことができる。
【0012】
また、診療中は、患者の診療部位を注視することが多いものの、表示部全体の表示色又は点灯パターンが変化することにより、視野の隅に表示部があれば、術者は診療状態を大まかに判断することができる。
【0013】
さらにまた、診療装置の動作モードや設定モードの変化を、表示部における表示色の変化で表示する場合、今、どの動作モードが選択されているのか(例えば、自動逆転モード、根管長測定単独モード(モータ非動作モード)、治療開始当初から逆転するモード等)、現在の設定内容が一目で分かるため、誤操作を防止することができる。したがって、術者は診断内容や治療状態の概略を一目で把握でき、より安全に診療することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記表示態様変化手段を、予め設定された段階に応じて、前記表示色及び前記点灯パターンの少なくとも一方を段階的に変化する構成とすることができる。
【0015】
この発明により、術者は、表示部を常に注視せずとも、診療の程度を概略把握することができ、治療する患部から表示部に視線を大きく移動させる必要がないので、より安全に診療することができる。詳しくは、表示部全体の表示色及び点灯パターンの少なくとも一方が診療情報に応じて段階的に変化するため、診療状態の程度を、表示部を常に注視せずとも、術者は診療状態を大まかに判断することができる。したがって、視線を患部から表示部へ移動させることなく、診療状態を大まかに判断しながら確実な診療を行うことができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記表示態様変化手段を、前記診療に関する情報の変化に基づいて、前記表示色及び前記点灯パターンの少なくとも一方の変化に加えて、前記表示部に表示する表示内容を変化させるものとすることができる。
【0017】
上記表示内容は、診断内容や治療状態についての詳細な情報に関して表示する内容であり、より具体的には、診断内容や治療状態を数値化し、その数値のデジタル数値や、数値化したものを個数化した点灯ドットの個数、あるいは文字情報やイラスト等として表示する内容とすることができる。
【0018】
この発明により、術者はより安全に診療することができる。具体的には、表示部における表示色の変化や点灯パターンの変化により、およその診療状態を判断した術者がさらに詳細な診療情報が必要だと判断した場合に、視線を表示部に移して、診断内容や治療状態について、数値化したデジタル数値等の表示内容を確認することができる。したがって、必要に応じて詳細な情報を取得でき、それ以外の状態では、視線を表示部へ移動させることなく大まかな判断をしながら診療することができる。
【0019】
また、この発明の態様として、前記表示部を、バックライトを備えた液晶ディスプレイで構成し、前記表示態様変化手段が、前記バックライトが発光する発光色及び前記バックライトによる点灯パターンの少なくとも一方を変化するものとすることができる。
【0020】
この発明により、コンパクト且つ容易な構成で、表示部全体の表示色や点灯パターンを変化させることができる。したがって、表示部の表示態様を変化させるためのコスト増加を抑制することができるとともに、小型の診療装置に装着することができる。
【0021】
また、この発明の態様として、前記表示制御部に、前記表示態様変化手段による前記表示色及び前記点灯パターンの少なくとも一方の変化を停止する変化停止手段を備えることができる。
【0022】
この発明により、術者や患者等の利用者の嗜好に応じて表示態様の変化させることができる。詳しくは、例えば、表示部の点灯パターンを変化させることを術者や患者等の利用者が好まない場合、診療情報に応じた表示部の点灯パターンの変化を停止し、表示部全体の表示色だけを変化させて診療情報の変化を表示することができる。したがって、表示部の表示態様変化を利用者の嗜好に合せることで、利用者の満足度を向上することができる。
【0023】
また、この発明の態様として、前記診療に関する情報が、電気的根管長測定による測定データ、歯周ポケットの深さ測定データ、切削治療用マイクロモータの回転数、切削工具にかかる負荷、光照射器の動作時間や残り動作時間、診療装置の電池残量、診療装置の動作モード、診療装置の設定モードのうち少なくともいずれか1つの情報であることができる。
【0024】
この発明により、より正確な診療を行うことができる。詳しくは、診断情報である電気的根管長測定による測定データ及び歯周ポケットの深さ測定データ、治療情報である切削治療用マイクロモータの回転数、切削工具にかかる負荷、光照射器の動作時間や残り動作時間、及び診療装置の電池残量、並びに治療状態情報である診療装置の動作モード、診療装置の設定モードの変化を、表示部全体の表示色や点灯パターンを変化させて表示させることができるため、術者は表示部を常に注視することなく、上記診療に関する情報を大まかに判断することができる。
【0025】
また、この発明の態様として、音響又は音声によって前記診療に関する情報の変化を報知する聴覚的報知手段を備えることができる。
この発明により、より安全且つ正確な診療を行うことができる。詳しくは、例えば、視線が患部に集中し、視界の隅に配置していた診療装置の表示部全体の表示色や点灯パターンの変化に気づかない場合であっても、視線に依存しない聴覚に対して、診療情報の変化を報知することができ、確実に診療情報の変化を術者に認識させることができる。したがって、患部への視線が集中し、表示部の表示色や点灯パターンの変化を見落としやすい術者であっても、確実に診療情報の変化を認識して、安全且つ正確な診療を行うことができる。
【0026】
また、この発明の態様として、診療装置本体を、充電池を内蔵したコードレス機器で構成し、前記診療装置本体に、前記表示手段を搭載することができる。
この発明により、より確実に診療情報の変化を認識して、さらに安全且つ正確な診療を行うことができる。
【0027】
詳しくは、診療装置本体に表示部を有する表示手段を搭載しているため、例えば、診療装置本体から離れた場所に表示手段が配置された診療装置の場合と比較して、表示部の変化を確実に認識できるとともに、表示部を目視する際の視線の移動距離を少なくすることができる。したがって、患部と表示部との間の視線の移動をすばやくでき、より確実に診療情報の変化を認識して、さらに安全且つ正確な診療を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、表示部を常に注視することなく診療情報を確認できるため、診療に専念できる診療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】歯科用ハンドピースの斜視図。
【図2】歯科用ハンドピースのブロック図。
【図3】歯科用ハンドピースの液晶表示部の表示態様の変化についての説明図。
【図4】歯科用ハンドピースの液晶表示部の設定モードにおける表示態様の変化についての説明図。
【図5】根管長測定器の斜視図。
【図6】根管長測定器のブロック図。
【図7】根管長測定器の液晶表示部の表示態様の変化についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0031】
コードレス根管拡大形成器である歯科用ハンドピース1の液晶表示部10の表示態様の変化について、図1〜3とともに説明する。
図1は歯科用ハンドピース1の斜視図を示し、図2は歯科用ハンドピース1のブロック図を示し、図3は歯科用ハンドピース1の液晶表示部10の表示態様の変化についての説明図を示している。
【0032】
歯科用ハンドピース1は、先端に切削工具2を交換可能に装着するとともに、中間部に駆動スイッチ3aを有するモータ駆動操作部3と、液晶表示部10及び設定操作ボタン4(4a,4b,4c)を有するハンドピース本体5とを接続して構成している。
【0033】
さらに詳しくは、モータ駆動操作部3には、上述したように駆動スイッチ3aを有するとともに、モータ3bと、モータ3bを駆動するためのモータ駆動装置3cとを内蔵している。なお、モータ3bとモータ駆動装置3cとは接続され、駆動スイッチ3aとモータ駆動装置3cとは、後述する制御回路6に接続されている。そして、モータ3bは、切削工具2を回転させるため、その駆動力を切削工具2まで伝達するよう、歯車や回転軸等の機構を介して切削工具2に接続されている。
【0034】
また、液晶表示部10及び設定操作ボタン4を有するハンドピース本体5は、図2に示すように、制御回路6、バッテリ7、ブザー8及びON/OFFスイッチ9を内蔵している。なお、上述のモータ駆動装置3c、設定操作ボタン4、バッテリ7、ブザー8、ON/OFFスイッチ9及び液晶表示部10は、制御回路6に接続され、制御回路6の制御によって作動する構成である。
【0035】
なお、モータ駆動装置3cは制御回路6に接続され、押圧式のスイッチである駆動スイッチ3aが押下されることで、制御回路6を介して、モータ3bが作動し、切削工具2が回転する構成である。
【0036】
設定操作ボタン4は、設定画面において選択項目を選択するための選択ボタン4a,4bと、選択ボタン4a,4bによる選択を決定するための決定ボタン4cとで構成している。
【0037】
バッテリ7は、蓄電池で構成するバッテリであり、充電可能、且つ交換可能に構成している。なお、歯科用ハンドピース1を駆動させるための電源として、乾電池を用いてもよい。
【0038】
ブザー8は、制御回路6の制御に基づいて、所望の音程や所定の出力テンポでアラーム音を鳴らすブザーであるが、これに限定されず、バイブレータを駆動させた場合の振動音をアラーム音の代替として用いてもよい。
ON/OFFスイッチ9は、手動操作または所定時間の経過によって、歯科用ハンドピース1の電源のON/OFFを切替える切り替えスイッチである。
【0039】
液晶表示部10は、液晶モニタディスプレイ(以下において、「LCD」(Liquid Crystal Display)とする)10aと、LCD10aの背面側で照明のために発光するバックライト10bとで構成している。なお、バックライト10bは、後述する表1に示すように、赤色LED、青色LED及び緑色LEDの可視光線を発光する3色の発光体で構成し、後述の表示プログラムによる発光制御によってそれぞれのON/OFFを切替えて、所望の表示色による所望の点灯パターンで発光できるように構成している。
【0040】
制御回路6は、CPUとROMとRAMで構成される制御回路であり、歯科用ハンドピース1を用いた診療に必要な各種プログラムと、歯科用ハンドピース1を用いた診療に必要な各種データを格納している。
例えば、制御回路6には、表示プログラム、モータ駆動制御プログラム、駆動状態検出プログラム、設定プログラム、バッテリ残量検出プログラム、治療情報取得プログラム、ブザー制御プログラム或いは、点灯管理プログラムなどを格納している。
【0041】
詳しくは、上記表示プログラムは、液晶表示部10のバックライト10bの点灯状態を制御する制御プログラムであり、駆動状態検出プログラムによって検出されたモータの回転数やモータにかかる負荷トルクといった駆動状態、バッテリ残量検出プログラムによって検出されたバッテリ残量、設定操作ボタン4による設定状態等に応じて、上記点灯管理プログラムで管理する表示態様に応じた表示色や点灯パターンを表示制御するプログラムである。
【0042】
また、上記モータ駆動制御プログラムは、駆動スイッチ3aによりモータ3bを作動させるためにモータ駆動装置3cを制御するプログラムであり、駆動スイッチ3aによってモータ3bを駆動させる駆動制御のみならず、駆動状態検出プログラムによって検出された駆動状態のうちモータ3bの駆動負荷(負荷トルク)に基づき、モータ3bの駆動力(駆動トルク)を低減する駆動力低減制御や、駆動方向(回転方向)を逆転する駆動方向逆転制御、あるいは駆動を停止する駆動停止制御を実行することができる。
【0043】
さらに、上記駆動状態検出プログラムはモータ3bの駆動負荷(負荷トルク)等の駆動状態を検出するプログラムであり、上記設定プログラムは設定操作ボタン4によって設定された設定を反映させるためのプログラムであり、上記バッテリ残量検出プログラムはバッテリ7のバッテリ残量を検出するプログラムである。
【0044】
さらにまた、上記治療情報取得プログラムは切削工具2の治療時間や治療時の駆動負荷(負荷トルク)等の治療情報を取得するプログラムであり、上記ブザー制御プログラムはブザー8を制御するプログラムであり、上記点灯管理プログラムは測定値、治療状態あるいは設定状態に応じた表示態様、具体的にはバックライト10bの点灯制御を関連付けて管理するプログラムである。
【0045】
さらにまた、歯科用ハンドピース1を用いた診療に必要な各種データとして、切削工具2を使用して治療した治療時間や、予め設定された基準切削負荷値や、診断のための測定データ等を制御回路6に格納している。
【0046】
このように構成した歯科用ハンドピース1において、歯科用ハンドピース1を用いた治療中の切削工具2の駆動負荷(負荷トルク)に応じて液晶表示部10の表示態様を変化させる表示変化について説明する。
【0047】
歯科用ハンドピース1を用いた治療中において、液晶表示部10には、図3(a)に示すように、切削工具2を回転駆動させるための駆動力、即ち駆動トルクを表示するトルク画面20を表示している。
詳しくは、駆動トルク画面20は、液晶表示部10の上部に配置し、表示内容が駆動トルクであることを示す「TORQUE」文字表示部21と、「TORQUE」文字表示部21の下方で駆動トルク値をバー表示するバーグラフ部22とで構成している。
【0048】
なお、駆動トルクは、モータ3b、または、モータ3bによって回転駆動する切削工具2に作用する負荷である負荷トルクに対応して駆動するトルクであり、駆動トルクと負荷トルクとは、本明細書において同義語である。
【0049】
バーグラフ部22は、正面視左側のバー目盛り22aと、該バー目盛り22aの右側で測定値の大小に応じて高さが変化する測定バー22bと、測定バー22bにおいて予め設定した基準トルクバー22cとを表示している。
【0050】
そして、歯科用ハンドピース1は、負荷トルク(駆動負荷)について駆動状態検出プログラムで検出した状態、即ちモータ3bや切削工具2に作用する負荷トルク値を、測定バー22bの高さで表示するとともに、負荷トルクの状態に応じてバックライト10bによる液晶表示部10の全体的な表示色や点灯パターンが変化するよう構成している。さらには、負荷トルクの状態に応じてブザー8によってアラーム音を出力するよう構成している。
【0051】
これにより、歯科用ハンドピース1は、測定バー22bで、負荷トルクの詳細な変化を表示し、またバックライト10bによる液晶表示部10の全体的な表示色や点灯パターン、及びブザー8によるアラーム音の出力テンポの変化によって大まかな負荷トルクの変化を報知することとなる。
【0052】
具体的には、負荷トルクについて「2.0」(単位:N・cm)までを負荷トルクの低い範囲とし、「2.0」から「4.0」までの範囲を負荷トルクのやや高い範囲とし、「4.0」以上の範囲を負荷トルクの高い範囲として制御回路6に予め格納する。さらには、負荷トルク「2.5」を予め設定する基準負荷トルクとして制御回路6に格納する。なお、上記数値は、あくまでも一例に過ぎず、この数値に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0053】
そして、制御回路6は、上記表示プログラム及び点灯管理プログラムによって、負荷トルクが「2.0」以下の負荷トルクの低い範囲ではバックライト10bを、以下の表1に示すように、赤色LED、青色LED及び緑色LEDの発光体のON/OFFを切替えて、水色(赤色LED:OFF、青色LED及び緑色LED:ON)のゆっくりした点滅表示させるとともに、ブザー8をゆっくりしたテンポで出力する制御を実行する(図2(b)参照)。
なお、図3は、白黒でしか図示できないため、バックライト10bによる液晶表示部10の全体的な表示色の変化をハッチング密度で図示している。
【0054】
【表1】

負荷トルクが「2.0」から「4.0」までの負荷トルクのやや高い範囲ではバックライト10bを緑色(赤色LED及び青色LED:OFF、緑色LED:ON)の比較的速い点滅表示させるとともに(図2(c))、ブザー8を負荷トルクの低い範囲でのテンポより速めた普通のテンポで出力する制御を実行する。
【0055】
さらには、負荷トルクが「4.0」以上の負荷トルクの高い範囲ではバックライト10bを紫色(赤色LED及び青色LED:ON、緑色LED:OFF)の連続点灯表示するとともに(図2(d))、ブザー8を負荷トルクのやや高い範囲でのテンポよりさらに速めた早いテンポで出力する制御を実行する。
【0056】
さらにまた、予め設定された基準負荷トルク値を越えると、その基準負荷トルク値が属する範囲におけるバックライト10bによる液晶表示部10の全体的な表示色及び点灯パターンを変化させるとともに、ブザー8の出力テンポを変化させることができる。なお、基準トルクバー22cに示すように、「2.5」に設定した場合、負荷トルクが「2.0」から「4.0」までの負荷のやや高い範囲におけるバックライト10bの緑色の比較的速い点滅表示を、基準負荷トルクが越えることによってバックライト10bを黄色表示(赤色LED及び緑色LED:ON、青色LED:OFF)するとともに(図2(e))、ブザー8を連続出力する。
【0057】
なお、上記範囲における液晶表示部10の全体的な表示色及び点灯パターン、あるいはブザー8の出力テンポの設定も一例に過ぎず、これに限定されるものではない。また、上記範囲において、バックライト10bによる液晶表示部10の全体的な表示色と点灯パターンを変化させるとともに、ブザー8の出力テンポを変化させたが、バックライト10bによる液晶表示部10の全体的な表示色と点灯パターン、及びブザー8の出力テンポのうち、いずれか1つを、あるいはいずれかのうち複数を組み合わせて、変化させてもよい。
【0058】
また、ブザー8の出力音が煩わしい場合もあるので、ブザー8の断続的な出力音に替えて、バックライト10bの色調を変化させることなく同一色調のままで、バックライト10bの点灯、消灯を断続的に行なうことでも、同等の効果を得ることができる。この点灯と消灯とを繰り返す周期を、広げたり縮めたりして切り替える、という表示パターンの変化によっても、術者は診療情報を概略把握することができ、利便性が向上する。
【0059】
このように、モータ3bや切削工具2に作用する負荷トルクの変化について、バックライト10bによる液晶表示部10の全体的な表示色や点灯パターン及びブザー8の出力テンポを、上記表示プログラム及び点灯管理プログラムによって変化させて出力表示するとともに、モータ3bや切削工具2に作用する負荷トルク値をバーグラフ部22の測定バー22bの高さで詳細に表示するため、術者は、液晶表示部10の表示を注視しなくても、液晶表示部10が術者の視野に入るような配置にすることによって、バックライト10bによる液晶表示部10の全体的な表示色と点灯パターンの変化により、治療部位から目を離さなくても、モータ3bや切削工具2に作用する負荷トルクを大まかに確認することができる。したがって、過負荷によるモータの故障や切削工具の破切を防ぐことができ、治療を効率的に行うことができるようになる。
【0060】
また、ブザー8の出力テンポを変化させることによって、液晶表示部10が見えにくい状況下であっても、モータ3bや切削工具2に作用する負荷トルクの状態確認を補完することができる。これにより、歯科用ハンドピース1を用いる術者は治療により専念できるようになる。
【0061】
さらにまた、液晶表示部10の表示内容、つまりバーグラフ部22の測定バー22bの変化では、液晶表示部10が視野の隅にある場合などでは、その表示内容が変化していることしか判別できないが、液晶表示部10の全体的な表示色や点灯パターンの変化を伴うことによって、表示内容を詳細に確認する必要がない場合には、状態確認のための視線移動がほぼなくなり、治療に専念することができる。
【0062】
また、液晶表示部10の全体的な表示色や点灯パターンの変化を認識することや、さらには、基準負荷トルク値を越えた場合の液晶表示部10の全体的な表示色や点灯パターンを認識することにより、詳細な数値での負荷トルク値をバーグラフ部22の測定バー22bで確認する機会を極力低減することができるため、歯科用ハンドピース1を用いる術者は治療にさらに専念することができる。
【0063】
また、歯科用ハンドピース1のハンドピース本体5に液晶表示部10を搭載しているため、例えば、装置本体から離れた場所にディスプレイが配置された診療装置の場合と比較して、液晶表示部10の全体的な表示色や点灯パターンの変化を確実に認識できるとともに、液晶表示部10を目視する際の患部からの視線の移動距離を少なくすることができる。したがって、患部と液晶表示部10との間の視線の移動をすばやくでき、より確実に負荷トルクの変化を認識して、さらに安全且つ正確な診療を行うことができる。
【0064】
なお、液晶表示部10の全体的な表示色や点灯パターンの変化は、術者や患者の嗜好に応じて設定操作ボタン4によってON/OFF選択できるように構成するとともに、ブザー8によるアラーム音の出力についても、騒がしい環境を嫌う術者や患者のために、設定操作ボタン4によってON/OFF選択できるように構成している。
【0065】
次に、歯科用ハンドピース1において、設定操作ボタン4を用いて、例えば機能を設定する設定モードにおける液晶表示部10の表示態様について、図4とともに示す。なお、図4は歯科用ハンドピース1の液晶表示部10の設定モードにおける表示態様の変化についての説明図を示している。
【0066】
ON/OFFスイッチ9を操作してONした直後の歯科用ハンドピース1は操作待機状態となり、図4(a)に示すように、液晶表示部10には回転数(単位:rpm(rotation per minute))及び設定負荷トルク(単位:N・cm)が上下2段に表示される待機状態画面30を表示する。なお、この待機状態画面30では、液晶表示部10は、バックライト10bによって白色表示(赤色LED、青色LED及び緑色LED:ON)となっている。そして、液晶表示部10における左側には、切削工具2の回転方向(図4では正回転(Forward)を示す文字「F」と円形矢印)、バッテリ残量及び設定モード(図4ではモータ(Motor)用の設定であることを示す文字「M」)を表示している。
【0067】
この待機状態で設定操作ボタン4の決定ボタン4cが押下操作されると、歯科用ハンドピース1は制御回路6によって、回転数などを設定する設定モードに移行し、液晶表示部10に設定画面40を表示する(図4(b)参照)。
【0068】
そして、設定モードに移行したことを報知するために、制御回路6はブザー8によってアラーム音を出力するとともに、バックライト10bによって液晶表示部10の全体的な表示色を変化させる。なお、本実施例においては表示プログラム及び点灯管理プログラムにより、白色表示から水色表示(赤色LED:OFF、青色LED及び緑色LED:ON)に変化させる。また、併せてバックライト10bを点滅させて設定モードへの移行を報知してもよい。
【0069】
さらに、上記設定モード状態において、決定ボタン4cが長押し操作されると、普段あまり設定変更しないが、モータ3bの詳細な動作制御を行うためのモータ駆動装置3cの設定を行う詳細設定モードに移行し、液晶表示部10に詳細設定画面41を表示する(図4(c)参照)。この詳細設定モードでは、例えば、オートトルクスローダウン機能(モータ3bや切削工具にかかる負荷が大きくなるにつれて、段階的に又はなだらかに、自動的に回転数を低下させていく機能)のON/OFF切替を行うことができる。
【0070】
この詳細設定モードへの移行を報知するために、制御回路6は、ブザー8によるアラーム音を出力するとともに、表示プログラム及び点灯管理プログラムによって、バックライト10bを、上記設定モード状態における表示色から変化させる。本実施例においては、上記設定モード状態における水色表示から、バックライト10bを詳細設定モードの緑色表示(赤色LED及び青色LED:OFF、緑色LED:ON)に変化させる。
【0071】
このように、設定モードに応じて、ブザー8によるアラーム音を出力するとともに、バックライト10bによる液晶表示部10の全体的な表示色を変化させることにより、術者は、現在の動作モードが何であるか、今、何を設定している状態なのかを、画面表示内容のみならず、液晶表示部10の全体的な表示色によって判断できるようになり、機器の操作性を向上することができるとともに、誤操作を防止することができる。
【0072】
なお、上記待機状態(図4(a))において、決定ボタン4cを長押し操作することで、上記設定モード(図4(b))を経由せずに上記詳細設定モード(図4(c))に直接移行することもでき、その場合においても、上記詳細設定モードに移行したことを報知するブザー8によるアラーム音の出力及びバックライト10bによって液晶表示部10の全体的な表示色を緑色に変化させる。
【0073】
このような待機状態からの直接詳細設定モードへの移行と、待機状態から設定モードを経由した詳細設定モードへの移行とにおいて、表示色の変化やブザー8によるアラーム音の出力を異なる設定としてもよい。このようにすることにより、設定操作する術者に、設定モードを経由した詳細設定モードへの移行か、直接の詳細モードへの移行かを正確に報知することができる。
【0074】
また、上記説明では、決定ボタン4cを長押し操作して詳細設定モードへの移行することについて説明したが、詳細設定モードへ移行するための決定ボタン4cの操作は上記長押し操作に限定されず、例えば、短い間隔で決定ボタン4cを複数回押下する連続押下操作等の操作によって詳細設定モードに移行するよう構成してもよい。
【実施例2】
【0075】
次に、根管長測定器100の表示部110の表示態様の変化について、図5〜7とともに説明する。
図5は根管長測定器100の斜視図を示し、図6は根管長測定器100のブロック図を示し、図7は根管長測定器100の表示部110の表示態様の変化についての説明図を示している。
【0076】
歯300(図7)の根管301(図7)の歯槽骨側先端である根尖孔301aの位置を電流値や電圧値によって測定する根管長測定器100は、側面視略T字形状の装置本体100aと、装置本体100aに接続されたファイル電極コード103及び口腔電極コード104とで構成している。
【0077】
ファイル電極コード103は、ファイルやリーマなど切削工具102の通電可能な装着を許容するファイル電極103aを先端に備え、コード103bによって後述の制御回路106に接続されている。
【0078】
ファイル電極103aに装着する切削工具102は、患者の歯300の根管301に挿入する切削部102aと、切削部102aの上部に配置し、術者が回転させる際に把持する樹脂性のハンドル102bと、リーマ部102aに対して上下方向の位置をずらすことのできるラバーストッパー102cとで構成している。
【0079】
口腔電極コード104は、患者の口角部に引っかけるフック状の口腔電極104aを先端に有し、コード104bによって後述の制御回路106に接続されている。
【0080】
装置本体100aは、正面上部に液晶表示部110を備え、その下方に、操作ボタン105(105a、105b、105c)及びON/OFFスイッチ109を備えている。
操作ボタン105のうちMODEボタン105aは、モードを変更させるボタンである。
【0081】
操作ボタン105のうちSELECTボタン105bは、機能選択、例えば目標位置の選択やブザー音量の選択のように、所望の選択項目を選択するボタンである。
操作ボタン105のうちSETボタン105cは、SELECTボタン105bによる選択を決定し、設定するボタンである。
【0082】
ON/OFFスイッチ109は、根管長測定器100の主電源のON/OFFを切替えるボタンである。なお、各操作ボタン105の全てを備える必要は必ずしもなく、操作ボタン105のうちいずれを備えるかは、適宜選択される設計事項である。
【0083】
液晶表示部110は、上述の液晶表示部10と同様に、LCD110aと、赤色LED、青色LED及び緑色LEDの3色の発光体で構成するバックライト110bとで構成している。
さらに、装置本体100aは、バッテリ107と、ブザー108と、制御回路106とを内蔵している。
【0084】
バッテリ107は、根管長測定器100を駆動させるための蓄電池で構成するバッテリであり、充電可能、且つ交換可能に構成している。なお、根管長測定器100を駆動させるための電源として、乾電池を用いてもよいし、外部の電源から電力の供給を受ける受電ケーブルを用いてもよい。
【0085】
ブザー108は、制御回路106の制御に基づいて、所望の音程や所定の出力テンポでアラーム音を鳴らすブザーであるが、これに限定されず、バイブレータを駆動させた場合の振動音をアラーム音の代替として用いてもよい。
【0086】
制御回路106は、CPUとROMとRAMで構成される制御回路であり、根管長測定器100を用いた根管長測定に必要な根管長測定回路を有するとともに、根管長測定器100を用いた根管長測定に必要な各種プログラム及びデータを格納している。
【0087】
例えば、制御回路106には、表示プログラム、根管長測定プログラム、設定プログラム、バッテリ残量検出プログラム、ブザー制御プログラム、或いは、点灯管理プログラムなどを格納している。
【0088】
詳しくは、上記表示プログラムは液晶表示部110の表示態様を制御するプログラムであり、根管長測定値等を根管長バーにドット表示したり、バッテリ残量や設定されたアラーム音量を表示したりするプログラムである。
【0089】
より具体的には、上記表示プログラムは、液晶表示部110のバックライト110bの点灯状態を制御する制御プログラムであり、根管長測定プログラムによって測定された根管長、バッテリ残量検出プログラムによって検出されたバッテリ残量、ブザー108の音量設定状態等に応じて、上記点灯管理プログラムで管理する表示態様に応じた表示色や点灯パターンを表示制御するプログラムである。
【0090】
上記根管長測定プログラムは、根管長測定回路によって検出された電流値等から根管長(正確には測定電極である切削工具102の先端位置)を測定するプログラムであり、上記設定プログラムは操作ボタン105によって設定された設定を反映させるためのプログラムであり、上記バッテリ残量検出プログラムはバッテリ107のバッテリ残量を検出するプログラムである。
【0091】
さらにまた、上記ブザー制御プログラムはブザー108を作動制御するプログラムであり、上記点灯管理プログラムは測定状態あるいは設定状態に応じた表示態様、具体的にはバックライト110bの点灯制御を関連付けて管理するプログラムである。
また、根管長測定器100を用い測定に必要な各種データとして、測定対象と測定した根管長データとを関連づけて制御回路106に格納している。
【0092】
このように構成された根管長測定器100において、上述のファイル電極コード103、口腔電極コード104、操作ボタン105、バッテリ107、ブザー108、ON/OFFスイッチ109及び液晶表示部110は、制御回路106に接続され、制御回路106の制御によって、電流が流され、あるいは作動する構成である。
【0093】
このように構成した根管長測定器100において、根管長測定器100を用いた根管長測定に応じて液晶表示部110の表示態様を変化させる表示変化について説明する。
根管長測定器100を用いた根管長測定中において、液晶表示部110には、図8(a)に示すように、根管長測定状態についての測定画面200を表示している。
【0094】
測定画面200は、画面中央に略湾曲状に示された根管長バー表示部210と、根管長バー表示部210の正面視左下側で数値を表示する測定値表示部220と、画面右上のバッテリ残量表示部230と、アラーム音量表示部240とを表示している。
【0095】
バッテリ残量表示部230は、上記バッテリ残量検出プログラムで検出されたバッテリ107の残量をバーグラフで表示している。
アラーム音量表示部240は、設定されたブザー108によるアラーム音の音量を表示している。
【0096】
根管長バー表示部210は、根管長測定プログラムで測定した根管長を略水平な複数のバーのドット表示によって表示するものであり、その左側に3、2及び1の目盛りとAPEXが表示されている。
なお、APEXは切削部102aの先端が根尖孔301aに達したとき、根管長バー表示部210のドットがAPEXの位置まで点灯することを示している。また、上記目盛り及び測定値表示部220で表示される測定値は、根尖孔301aから切削部102aの先端までの距離、つまり長さを示すものでなく、根尖孔301aから根管301上端までの根管全長に対する切削部102aの先端の位置を概略比で示している。
また、根管長バー表示部210には、根管長測定の目安として設定するアピカルドット210aを表示している。
【0097】
そして、根管長測定器100は、根管長バー表示部210及び測定値表示部220で根管長測定プログラムによって測定した根管長を表示するとともに、測定された根管長に応じてバックライト110bによる液晶表示部110全体の表示色や点灯パターンが変化するよう構成している。さらには、測定した根管長に応じてブザー108からアラーム音を出力して報知するよう構成している。
【0098】
これにより、根管長測定器100は、根管長バー表示部210及び測定値表示部220によって測定した根管長の詳細な変化を表示し、またバックライト110bによる液晶表示部110全体の表示色や点灯パターン、及びブザー108によるアラーム音の出力テンポの変化によって、大まかな測定根管長の変化を出力することとなる。
【0099】
具体的には、測定根管長について目盛り値「1.0」までを第1レベルとし、「1.0」から「APEX」までの範囲を第2レベルとし、「APEX」の範囲を第3レベルとして制御回路106に予め格納する。さらには、根管長測定の目安値として「0.5」をアピカルドット210aに設定する。なお、上記数値は、あくまでも一例に過ぎず、この数値に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0100】
そして、上記表示プログラム及び点灯管理プログラムによって、切削部102aの先端が図7(e)に示すような位置であり、測定根管長が「1.0」までとなる第1レベルではバックライト110bを、赤色LED、青色LED及び緑色LEDの発光体のON/OFFを切替えて、水色(赤色LED:OFF、青色LED及び緑色LED:ON)のゆっくりした点滅表示させるとともに、ブザー108をゆっくりしたテンポで出力する。
なお、図7は、白黒でしか図示できないため、バックライト110bによる液晶表示部110全体の表示色の変化をハッチング密度で図示している。
【0101】
そのまま、リーマ部102aを挿入し、リーマ部102aの先端が図7(f)に示すような位置であり、測定根管長が「1.0」から「APEX」までとなる第2レベルではバックライト110bを緑色(赤色LED及び青色LED:OFF、緑色LED:ON)の比較的速い点滅表示させるとともに、ブザー108を第1レベルでのテンポより速めた普通のテンポで出力する制御を実行する。
【0102】
さらに、リーマ部102aを挿入し、リーマ部102aの先端が図7(g)に示すような位置であり、第2レベルの範囲ではあるものの、アピカルドット210aで示す根管長測定の目安値である「0.5」を越えた場合、黄色表示(赤色LED及び緑色LED:ON、青色LED:OFF)するとともに、ブザー108を第2レベルでのテンポよりさらに速めた早いテンポで出力する制御を実行する。
【0103】
さらにまた、バックライト110bによる液晶表示部110全体の表示色や点灯パターンの変化及びブザー108のアラーム音の出力テンポの変化によって、根管長測定の目安値を越えたことを認識した術者によって慎重に切削部102aをさらに挿入し、切削部102aの先端が図7(h)に示すような根尖孔301aに達した第3レベルではバックライト110bを紫色(赤色LED及び青色LED:ON、緑色LED:OFF)の連続点灯表示するとともに、ブザー108を連続出力する。
【0104】
このように、根管長測定器100は、リーマ部102aの先端位置が根尖孔301a(APEX)に近づくにつれて、バックライト110bによる液晶表示部110全体の表示色又は点灯パターンが変化するとともに、ブザー108のアラーム音の出力が変化するため、術者は、液晶表示部110の表示を注視しなくても、視界のどこかに液晶表示部110が入るよう根管長測定器100を配置するだけで、治療部位から目を離さなくても、リーマ部102aの先端位置が根尖孔301a(APEX)に近づいている、あるいは根尖孔301a(APEX)に達したことを感覚的に認識することができる。
【0105】
したがって、リーマ部102aが根尖孔301aを突き抜けて歯肉に侵入する可能性を軽減することができ、予後のよい治療を行うことができる。
なお、液晶表示部110全体の表示色や点灯パターンの変化は、術者や患者の嗜好に応じて操作ボタン105によってON/OFF選択できるように構成するとともに、ブザー108によるアラーム音の出力についても、騒がしい環境を嫌う術者や患者のために、操作ボタン105によってON/OFF選択できるように構成している。
【0106】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の診療に関する情報は、負荷トルク、設定モード及び測定根管長に対応し、
以下同様に、
診療手段は、切削工具2を装着したモータ駆動操作部3、及び根管長測定器100における切削工具102を装着したファイル電極コード103及び口腔電極コード104に対応し、
表示部は、駆動トルク画面20、設定画面40、詳細設定画面41及び測定画面200に対応し、
表示手段及び液晶ディスプレイは、液晶表示部10,110に対応し、
表示制御部は、制御回路6,106で実行制御する表示プログラム及び点灯管理プログラムに対応し、
診療装置及びコードレス機器は、歯科用ハンドピース1及び根管長測定器100に対応し、
表示態様変化手段は、表示プログラム及び点灯管理プログラムを実行制御する制御回路6,106に対応し、
変化停止手段は、設定操作ボタン4及び操作ボタン105に対応し、
聴覚的報知手段は、ブザー8,108に対応し、
充電池は、バッテリ7,107に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0107】
例えば、表示手段で表示されるバーグラフや文字やイラスト、及びそれらの配置については、顧客の要望や設計の容易性などに応じて、適宜種々のものが採用可能である。また、診療に関する情報として、上記負荷トルク、設定モード及び測定根管長に限定されず、歯周ポケットの深さ測定データ、切削治療用マイクロモータの回転数、光照射器の動作時間や残り動作時間、診療装置の電池残量、診療装置の動作モードであってもよい。
【0108】
また、ブザー8,108による報知において、上記説明においてはアラーム音の出力テンポを変化させたが、音程を連続的に変化させて報知してもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…歯科用ハンドピース
2,102…切削工具
3…モータ駆動操作部
4…設定操作ボタン
6,106…制御回路
7,107…バッテリ
8,108…ブザー
10,110…液晶表示部
10b,110b…バックライト
20…駆動トルク画面
40…設定画面
41…詳細設定画面
100…根管長測定器
103…ファイル電極コード
104…口腔電極コード
105…操作ボタン
200…測定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療に関する情報を表示する表示部と、該表示部の表示態様を制御する表示制御部とを備えた表示手段及び診療手段を有する診療装置において、
前記表示制御部に、
前記診療に関する情報の変化に基づいて、前記表示部に表示する表示色及び点灯パターンの少なくとも一方を変化する表示態様変化手段を備えた
診療装置。
【請求項2】
前記表示態様変化手段を、
予め設定された段階に応じて、前記表示色及び前記点灯パターンの少なくとも一方を段階的に変化する構成とした
請求項1に記載の診療装置。
【請求項3】
前記表示態様変化手段を、
前記診療に関する情報の変化に基づいて、前記表示色及び前記点灯パターンの少なくとも一方の変化に加えて、前記表示部に表示する表示内容を変化する
請求項1又は2に記載の診療装置。
【請求項4】
前記表示部を、バックライトを備えた液晶ディスプレイで構成し、
前記表示態様変化手段が、
前記バックライトが発光する発光色及び前記バックライトによる点灯パターンの少なくとも一方を変化する
請求項1乃至3のいずれかに記載の診療装置。
【請求項5】
前記表示制御部に、
前記表示態様変化手段による前記表示色及び前記点灯パターンの少なくとも一方の変化を停止する変化停止手段を備えた
請求項1乃至4のいずれかに記載の診療装置。
【請求項6】
前記診療に関する情報が、
電気的根管長測定による測定データ、歯周ポケットの深さ測定データ、切削治療用マイクロモータの回転数、切削工具にかかる負荷、光照射器の動作時間や残り動作時間、診療装置の電池残量、診療装置の動作モード、診療装置の設定モードのうち少なくともいずれか1つの情報である
請求項1乃至5のいずれかに記載の診療装置。
【請求項7】
音響又は音声によって前記診療に関する情報の変化を報知する聴覚的報知手段を備えた
請求項1乃至6のいずれかに記載の診療装置。
【請求項8】
診療装置本体を、充電池を内蔵したコードレス機器で構成し、
前記診療装置本体に、前記表示手段を搭載した
請求項1乃至7のいずれかに記載の診療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−135950(P2011−135950A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296456(P2009−296456)
【出願日】平成21年12月26日(2009.12.26)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】