試料の分析方法、および分析器具
【課題】
本発明の目的は、プロテインチップ等の固体基板にスポットされた抗原と、抗体と反応させる場合において、スポット中心部と周辺部における反応を均一化することに関する。
【解決手段】
本発明は、基板にスポットされた第一溶液を、これより大きな反応用孔にて覆い、反応用穴孔に第二溶液を供給し、第一溶液と第二溶液を反応させることに関する。これにより、第一溶液と第二溶液の反応を、スポット中心部と周辺部において略均一にでき、手軽かつ高精度に基板上で分析できる。
本発明の目的は、プロテインチップ等の固体基板にスポットされた抗原と、抗体と反応させる場合において、スポット中心部と周辺部における反応を均一化することに関する。
【解決手段】
本発明は、基板にスポットされた第一溶液を、これより大きな反応用孔にて覆い、反応用穴孔に第二溶液を供給し、第一溶液と第二溶液を反応させることに関する。これにより、第一溶液と第二溶液の反応を、スポット中心部と周辺部において略均一にでき、手軽かつ高精度に基板上で分析できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板において試料を分析する技術に関する。例えば、プロテインチップ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
意匠第1213441号において、液体サンプルをスポット対象物にスポットするために用いるスポット用シールが開示されている。スポット用シールには、円形の穴が、4行12列となるように配置されている。スライドガラス等のスポット対象部にスポット用シールを貼付けし、穴部分に液体サンプルを滴下する。そして、スポット用シールを剥がし、サンプルがスポットされたスライドガラス等を検査・計測機器にセットする。
【0003】
また、意匠第1211698号において、液体サンプルをスポット対象物にスポットするための、4枚のシールが重なったスポット用シールが開示されている。各シールの形状は同じであり、穴の大きさや、配置場所は同一である。
【0004】
【非特許文献1】意匠第1213441号
【非特許文献2】意匠第1211698号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、意匠第1213441号開示のスポット用シールを用いて、基板上で分析を行うことを思いついた。その具体的方法は、例えば、スポット用シールを基板に貼付けし、スポット用孔に測定サンプルを滴下し、基板に測定サンプルを固定する。そして、引き続き、同じスポット用孔に分析試薬を滴下する。この工程を繰り返すことで、測定サンプルと分析試薬の相互作用反応を行うというものである。
【0006】
しかしながら、本願発明者は、上記方法は手軽であるものの、分析精度があまり良くないことに気がついた。そして、鋭意検討した結果、スポット中心部と周辺部とにおいて反応に差があり、測定精度が低下していることを見出した。また、スポット用シールと基板との境界部に(つまり、スポット用孔の外周部に)、液体サンプルが溜まり易いことが、この原因であることも突き止めた。スポット用孔の周辺部に測定サンプルや分析試薬が多く溜まり、スポット周辺部において反応が活発に起こってしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、スポット中心部と周辺部における反応を均一化することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板にスポットされた第一溶液を、これより大きな反応用孔にて覆い、反応用穴孔に第二溶液を供給し、第一溶液と第二溶液を反応させることに関する。これにより、第一溶液と第二溶液の反応を、スポット中心部と周辺部において略均一にできる。
【0009】
尚、第一溶液には、免疫分析の場合の一次抗体含有溶液や、抗原含有溶液を含む。また、第二溶液には、抗原を認識する二次抗体含有溶液や、二次抗体と特異的に結合し、検出のための標識処理を施された三次抗体含有溶液を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、手軽かつ高精度に基板上で分析できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、上記及びその他の、本発明の新規な特徴と効果について、図面を参酌して説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、これらの変更も本発明に包含されるものである。
【実施例1】
【0012】
本実施例では、スポット用シールと試薬用シールを用い、固体基板上にて試料と試薬とを反応させ、分析を行う場合を説明する。固体基板上で解析できる反応としては、タンパク質,低分子化合物,核酸,脂質,糖質,生細胞などの生体内分子が関与する相互作用、例えば抗原抗体反応,リガンド−レセプター反応,酵素−基質の触媒反応などがある。
【0013】
図1(a)〜(c)に、本実施例にて利用する器具を示す。
【0014】
図1(a)に示すスポット用シール101は、固体基板上の所定位置に溶液をスポットする為のシールである。固体基板と略同じ大きさのものが好ましい。本実施例においては、縦26mm×横76mmの疎水性シートである。その上に、直径2mmのスポット用孔103を縦3列×横5列に5mm間隔で配置し、計15スポット用孔103から成るスポットグループを2グループ備えている。2つのスポットグループを、それぞれ異なる種類のサンプルの測定用として用いることができる。
【0015】
図1(b)に示す試薬用シール102は、固体基板上の所定位置に試薬を供給する為のシールであり、試薬用孔104を備えている。固体基板、及びスポット用シールと同じ大きさのものが好ましい。本実施例においては、縦26mm×横76mmの疎水性シートである。その上に、スポット用シールの1スポットグループ内にある15個のスポット用孔103を包含できる大きさの試薬用孔104を二つ備えている。試薬用孔104は、縦15mm×横24mmの長方形状であり、1.5mm 間隔で2つ並べて配置されている。ここで、試薬用孔104の大きさは、スポット用シールのスポット用孔103より大きいことが好ましい。固体基板上に固定化した試料のスポット径よりも大きくする為である。試薬用孔104の外周と、スポットの外周との距離は、使用する試料,溶液組成,プロトコル,スポット形状等に依存する。例えば、30%グリセロール,10%BSAを含んだ溶液に、タンパク質抗原や抗体などの試料や試薬を希釈して測定を行う場合は、試薬用孔104の外周がスポットの外周から少なくとも0.6mm 以上離れていることが好ましい。この数値は、これらの試料溶液を同じ大きさのスポット用孔103内部に繰り返し添加して反応を行い、スポットの断面のシグナル強度のデータを取得し、スポット内部のシグナル強度の平均値を上回る領域の、スポット外周からの距離をもとに算出できる。
【0016】
スポット用シール101及び試薬用シール102は、耐水性の素材や吸湿性の低い素材(例えば、疎水性シート)を加工して作成できる。その裏面は、シール等の粘着性のある素材になっており、固体基板に直接貼付けることができる。また、固体基板に対して親和性があり、密着させることのできる素材を使用することも可能である。例えば、固体基板がガラス製のスライドガラスである場合、PDMS(polydimethylsiloxane(ポリジメチルシロキサン))などのシリコーンポリマー等を用いることができる。
【0017】
もちろん、スポット用シール101や試薬用シール102は上述の構造に限定されず、使用目的に応じ、その形状を変更してもよい。
【0018】
例えば、スポットグループを一つのみとしても良いし、スポットグループを3以上としてもよい。一つのスポットグループに含まれるスポット数は1つでも良く、複数でも良い。スポット用孔103の形状は通常円形であるが、これに限定されず、楕円,三角形,四角形,多角形でも良い。大きさも特に限定されず、使用する試料を微量に抑えたい場合は、例えば直径0.5mm の円形が望ましい。スポット用孔の配置パターンも特に限定されないが、固体基板を洗浄した場合などに隣のスポットから試料の混入が起こらない距離、例えば2mmだけ離して配置することが望ましい。
【0019】
試薬用孔104の形状であるが、例えば一つのスポット用孔のみを包括する試薬用孔であれば、スポット用孔と同じ形状でサイズが大きいものが望ましい。複数のスポット用孔を包括する試薬用孔であれば、試薬用孔の内周が全てのスポット用孔の外周から測定に影響を与えない距離だけ離れているものが望ましく、例えば四角形のような形状を使用することができる。試薬用孔の配置パターンは、スポットグループの配置パターンと合っていることが望ましい。例えば、試薬用孔を縦2列×横3列のように配置してもよい。また、極微量の試料をスポットできる自動スポッターを使用する場合であれば、試薬用孔を縦
10列×横10列のようにしてもよい。
【0020】
図1(c)に示す固体基板105は、その上に目的の試料をスポット状に固定化し、この試料と特異的に結合する物質を固体基板上に捕捉して検出するためのものである。例えば、縦26mm×横76mmのスライドグラスである。
【0021】
固体基板の種類には、ニトロセルロースやPVDF等のメンブレン,ガラス,ウエハー等のシリコン,プラスチック等の樹脂,金属等に、必要に応じて試料の固定に適した修飾を施したものを用いることができる。修飾の種類には、物理吸着によって目的分子を固定化することができるポリ−L−リジンやアミノシラン,共有結合によって目的分子を固定化することができるアルデヒド基やエポキシ基のような官能基、及び目的分子との親和性を利用して固定化することができるアビジンやNi−NTAなどを用いることができる。又、ポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルのような、親水性の多孔質マトリックスの薄層から成る基板にも利用できる。
【0022】
図2に本実施の分析手順を示す。本実施例では、上述した器具の他、ピペッター201,密閉容器204,気相インキュベーター、及び検出装置を用いる。
【0023】
ピペッター201は、固体基板上に、任意の分量で試料をスポットする為のものである。
【0024】
密閉容器204は、固体基板を少量の水滴203と共に密封することにより、容器の内部の湿度を長時間を保ち、固体基板上の試料の蒸発を防ぐことができる。
【0025】
気相インキュベーターは、試料及び固体基板に適した温度を保持するためのものである。
【0026】
検出装置は、固体基板を測定するためのものであり、分析に適した検出系及び装置を用いる。ここで得られた数値から、固体基板上に固定化された物質の定性・定量的な分析を行う。例えば、標識が蛍光物質の場合、蛍光検出スキャナーや蛍光顕微鏡を使用する。標識が放射性同位体であればオートラジオグラフィー,標識が酵素であればそれぞれ対応する基質や発光,発色試薬等を組み合わせて用いる。あるいは検出にSPR(Surface
Plasmon Resnance)装置を使用することも考えられる。SPRとは金属表面の励起状態である表面プラズモン波を共鳴励起する現象であり、2つの分子が結合・解離することによる質量変化の検出に利用することができる。質量変化を感知するため、標識を必要としない利点がある。更に固体基板上に補足した試料を質量分析装置により解析するためにも利用することができる。この場合、固体基板上に補足した試料に必要に応じて過剰なエネルギーを吸収するためのマトリックスを添加し,レーザー照射によって分子をイオン化した後に質量分析により試料の同定を行うことができる。
【0027】
以下、図2を参照し、スポット用シールと試薬用シールを用いた分析作業工程を説明する。本実施例では、試料のスポット(A),試料の固定(B),試薬の添加(C),試料と試薬の反応(D),検出(E)の順番で作業を進める。
【0028】
まず、試料のスポット(A)では、スポット用シール101を固体基板105に添付し、マイクロピペッター201を使用して、1次抗体や抗原など試料202を手動で滴下する。これにより、固体基板上の所定位置に、測定サンプルなどの複数の試薬をスポットできる。
【0029】
次に、試料の固定(B)では、固体基板を水滴203とともに密閉容器204中に保持し、試料の固体基板上への結合反応を行う。これにより、固体基板上にスポットされた複数の試料の蒸発を防ぐことができる為、複数の試料を固体基板に確実に固定できる。
【0030】
尚、試料のスポット(A)、及び試料の固定(B)は、スポット用シール101を用いるかわりに、市販の自動スポッター(接触型,非接触型)等により行うこともできる。
【0031】
次に、試薬の添加(C)では、スポット用シール101を剥がした後に試薬用シール
102を固体基板上に貼付けする。この際、固体基板上に固定された試料を、試薬用シール02の試薬用孔104が覆うようにする。本実施例では、スポット用シール101における1スポットグループに関連する、固体基板上に縦3列×横5列にてスポットされた
15個の試料が、一つの試薬用孔104に覆われるようにする。そして、二つの試薬用孔104内部に、2次抗体や3次抗体等の試薬205をそれぞれ添加する。これにより、1スポットグループに関連する15個の試料を、略同時・略同一条件で、同一の試薬と反応させることができる。また、試薬用孔104に異なる試薬を供給することにより、同一の固体基板上にて、異なる反応を、略同時に実施することができる。
【0032】
そして、試料と試薬の反応(D)では、固体基板を水滴とともに密封容器中に保持し、スポット状に固定化された試料と試薬の反応を行う。これにより、固体基板上の試薬の蒸発を防ぐことができる為、試薬と試料を確実に反応させることができる。
【0033】
最後に、検出(E)において、固体基板上を検出装置にて検出し、画像206を得る。これにより、試料と試薬の反応を確認できる。
【0034】
〔実験〕
抗原抗体反応に基づくタンパク質定量について、本実施例の効果を検証した。抗原抗体反応は、腫瘍マーカーであるヒトCEA(Carcinoembryonic antigen 癌胎児性抗原) 及びCRP(C-reactive protein C反応性プロテイン)の定量である。
【0035】
尚、本実験では、溶解溶液,ブロッキング剤,洗浄溶液を用いる。
【0036】
溶解溶液は、試料、及び試薬を溶解するためのものであり、急激なpH変化を避けて試料を安定に保つために緩衝溶液を用いる。また、試料、及び試薬の蒸発を防ぎ、なおかつ安定に保つためにグリセロール等の湿潤剤を必要に応じて20〜40%程度加える。固体基板に最初に固定化する物質以外の溶解に用いる溶解溶液には、非特異的吸着を防止するために、必要に応じてブロッキング剤を適当な濃度添加する。
【0037】
ブロッキング剤は、固体基板上の未反応の領域をブロッキングするためのものである。固体基板上における目的物質が固定化されなかった領域に、他の物質が吸着して非特異的なシグナルの増加を引き起こすことを防ぐことができる。ブロッキング剤は、固体基板や試料、及び試薬の性質に応じて選択する。例えば、BSA(Bovine Serum Albumin)やスキムミルクのような不活性なタンパク質や、PEG(Polyethylene Glycol)、PVA
(Polyvinyl Alcohol)などのポリマーを用いる。
【0038】
洗浄溶液は、未反応の試料、及び試薬を効率よく取り除くためのものである。例えば、上述の緩衝溶液に、必要に応じてTween20,Triton X等の界面活性剤を加えたものを用いる。
【0039】
実験手順は次のとおりである。まず、固体基板105にスポット用シール101を貼付けし、各スポットに1次抗体を滴下し、固体基板上に1次抗体を固定化した(1次抗体の固体基板への固定化)。次に、固体基板上の未反応の領域をブロッキングした(ブロッキング)。次に、各スポットに、それぞれ異なる濃度の抗原を添加し、測定対象となる抗原を1次抗体に補足させた(1次抗体による抗原の捕捉)。次に、スポット用シール101を剥がして試薬用シール102を貼付けし、試薬用孔内に、抗原を認識する2次抗体を滴下し、反応させた(2次抗体との反応)。次に、試薬用孔内に、2次抗体と特異的に結合し、検出のための標識処理を施した3次抗体を滴下し、反応させた(標識3次抗体との反応)。次に、試薬用シール102を剥がし、固体基板上を検出スキャナーによって検出した(蛍光スキャナーによる検出)。そして、スポット用シールのみを用いた場合と比較した(実験の結果)。
【0040】
〔1次抗体の固体基板への固定化〕
本実験では、固体基板としてProteochip TypeA(Proteogen,Soul,Korea)を用いた。
Proteochipはカリックスクラウン誘導体の一種であるタンパク質結合試薬‘ProLinker’をスライドグラス(大きさ縦26mm×横76mm)上に結合したプロテインチップであり、特に抗体の固定化に優れ、抗体の抗原結合能力を保ったまま高密度かつ均一に固定化できる。また、スポット用シールとして、固体基板と同じ大きさの、縦26mm×横76mmの疎水性シート上に、直径2mmのスポット用孔を縦3列×横5列に5mm間隔で配置し、計15スポットを備えたスポットグループを2グループ備えたものを用いた。一方のスポットグループをCEA測定用、もう一方のスポットグループをCRP測定用とした。
【0041】
ProteoChip TypeAにはあらかじめスポット用シール101を貼付けした。マウス由来抗ヒトCEAモノクローナル抗体(Fitzgerald,MA,USA)及びマウス由来抗ヒトCRPモノクローナル抗体(Fitzgerald,MA,USA)を、30%Glycerolを含んだPBS
(pH=7.4) を用いて100μg/mlに希釈した。これらを、マイクロピペッター
201を用いて1.5μlずつスポットした。
【0042】
Proteochip TypeA を隅に水滴203をいれた密閉容器204に入れ、37℃で一晩インキュベートして1次抗体をProteochip TypeAに固定化した。固定化後、Proteochip
TypeAを50mlの洗浄溶液中に浸漬し、10分間振とうして未反応の抗体を取り除いた。洗浄後、濾紙により余分な水分を取り除いた。
【0043】
〔ブロッキング〕
50mlの3%BSAを含んだPBS(pH=7.4)にProteochip TypeAを浸漬し、1.5 時間穏やかに振とうした。ブロッキング溶液を捨てた後、50mlの洗浄溶液を加え、10分間振とうした。洗浄後、濾紙により余分な水分を取り除いた。
【0044】
〔1次抗体による抗原の捕捉〕
ヒト組換えCEA及びCRPを30%Glycerol,10%BSAを含んだPBS(pH=7.4 )を用いて1ng/ml〜1μg/mlに希釈した。これらの抗原溶液及びネガティブコントロールを、それぞれ対応する1次抗体を固定化したスポットに対し、マイクロピペッター201を用いて1.5μlずつスポットした。Proteochip TypeAを、隅に水滴203をいれた密閉容器204に入れ、37℃で1時間インキュベートして抗原を一次抗体と反応させた。抗原溶液を吸引によって除いた後、50mlの洗浄溶液中にProteochipTypeAを浸漬し、15分間振とうして未反応の抗原を取り除いた。窒素ガス吹き付けにより余分な水分を取り除いた後、スポット用シールを剥がした。
【0045】
〔2次抗体との反応〕
試薬用シールを、試薬用孔がProteochip TypeA のスポット領域と同位置になるようにして貼付けした。本実験では、試薬用シールは固体基板、及びスポット用シールと同じ大きさの、縦26mm×横76mmの疎水性シート上に、スポット用シールの一つのグループ内にある15個のスポット用孔を包含する大きさである縦15mm×横24mmの試薬用孔を、
1.5mm間隔で2つ並べて配置したものを使用した。
【0046】
ウサギ由来抗ヒトCEAポリクローナル抗体(Fitzgerald,MA,USA)及びヤギ由来抗ヒトCRPポリクローナル抗体(Fitzgerald,MA,USA)を30%Glycerol,
10%BSAを含んだPBS(pH=7.4)を用いてそれぞれ100μg/mlに希釈した。そして、これらを各試薬用孔内部に200μlずつ添加した。
【0047】
Proteochip TypeA を、隅に水滴203をいれた密閉容器204に入れ、37℃で30分インキュベートして抗原と反応させた。抗体溶液を吸引により除いた後、50mlの洗浄溶液中にProteochip TypeA を浸漬し、15分間振とうして未反応の抗体を取り除いた。洗浄後、窒素ガス吹き付けにより余分な水分を取り除いた。
【0048】
〔標識3次抗体との反応〕
CEA検出用のCy5標識ヤギ由来抗ウサギIgGポリクローナル抗体(Zymed
laboratories Inc, San Francisco,CA)、及びCRP検出用のCy5標識ロバ由来抗ヤギIgGポリクローナル抗体(Chemicon Inernational. Inc, Temecula,CA)を30%Glycerol ,10%BSAを含んだPBS(pH=7.4)を用いて2μg/mlに希釈した。そして、これらを各試薬用孔内部に200μlずつ添加した。
【0049】
Proteochip TypeA を、隅に水滴203をいれた密閉容器204に入れ、37℃で30分インキュベートして2次抗体と反応させた。抗体溶液を吸引により除いた後、50mlの洗浄溶液中にProteochip TypeA を浸漬し、15分間振とうして未反応の抗体を取り除いた。洗浄後、窒素ガス吹き付けにより余分な水分を取り除き、試薬用シールを剥がした。
【0050】
〔蛍光スキャナーによる検出〕
蛍光検出用スキャナーScan Array Express(Packard BioScience, Billerica,MA)を用いてProteochip TypeAをスキャンした。スキャンした画像の解析にはQuantumArray(Packard BioScience, Billerica,MA)を使用した。
【0051】
〔実験の結果〕
図3(a)〜(c)に、本実施例におけるCEAとCRPの測定結果を示す。図3(a)は蛍光検出で得られたスキャン画像のイメージ図、図3(b),図3(c)はそれぞれ
CEA,CRPのシグナル強度を数値化したグラフである。
【0052】
複数のスポットを包含する大きさの試薬用孔を備えた試薬用シールを用い、複数のスポットに対して共通して使用できる試薬を添加することにより、スポット操作を省いて実験操作を簡易化し、作業時間を短縮することができた。
【0053】
また、固体基板を2つの領域に分ける事のできる試薬用シールを用いることにより、一枚の固体基板上で2種類のタンパク質をそれぞれ異なる条件で測定することができた。タンパク質はそれぞれ機能するための最適条件、たとえば適したpH,補因子,塩濃度等が異なっている。従ってプロテインチップのメリットである多項目,高集積型のタンパク質解析を実現するためには、測定には一枚のプロテインチップ上でタンパク質ごとに異なる条件を採用することが望ましい。試薬用シールの使用によって、試薬の他、ブロッキング溶液,洗浄溶液等もタンパク質ごとに異なるものを用いることが可能であり、多項目・高集積型のプロテインチップ技術の確立に寄与する技術である。
【0054】
図4は、スポット用シールのみを使用して反応の全工程を行った場合の測定結果である。図4(a)は蛍光スキャン画像であり、スポット内部のシグナル強度のばらつきを示す。図4(b)は、図4(a)のA−A′におけるシグナル強度を数値化したグラフである。図5は、本実施例における測定結果である。図5(a)は蛍光スキャン画像である。図5(b)は、図5(a)のB−B′におけるシグナル強度を数値化したグラフである。
【0055】
スポット用孔より大きな試薬用孔を備えた試薬用シールを用いることにより、スポット用シールのみを使用した場合に問題となっていたスポット内部のシグナル強度のばらつきを低減することができた。具体的には、スポット用シールのみを用いた場合ではスポット内部のシグナル強度のばらつきがCV値で55%であったが、試薬用シールを併用することで36%に低減でき、測定精度を向上させることに成功した。スポット用シールのみを用いた場合、スポット用シールを固体基板に貼付けすることによりスポット内部が凹状になり、スポット周辺部に液体サンプルが残存しやすいことが原因と推測される。また、スポット操作の際にピペッターの先端部が固体基板に接触して、その部分にあらかじめ固定化してあった分子が剥離することも原因の一つと考えられる。
【実施例2】
【0056】
本実施例は、実施例1におけるスポット用シールと試薬用シールを重ね合わせたような、二層シールに関する。以下、図6(a)〜(d)を参照し、実施例1との主な相違点のみを説明する。
【0057】
図6(a)に示す二層シール601は、スポット用孔を備えたスポット用上層部材602の下に、スポット用孔より大きな試薬用孔606を備えた試薬用下層部材603を重ねて貼付けしたものである。試薬用孔内に包含される位置に、スポット用孔が配置されている。必要に応じ、スポット用上層部材602の上、スポット用上層部材602と試薬用下層部材603の間、試薬用下層部材603の下に、別部材を配置して、二層以上の多層としてもよい。例えば、スポット用上層部材602と試薬用下層部材603の間に、第2の試薬用部材を配置して、三層とすることが考えられる。
【0058】
図6(b)にスポット用上層部材602を示す。固体基板及び試薬用下層部材603と略同じ大きさのものが好ましく、本実施例においては、縦26mm×横76mmの疎水性シートである。その上に、直径2mmのスポット用孔103を縦3列×横5列に5mm間隔で配置し、計15のスポット用孔604から成るスポットグループを2グループ備えている。それぞれ異なる種類のサンプルの測定用として用いることができる。また、2つのスポットグループに対応する底面側には、その試薬用下層部材603の試薬用孔と略同じ形状の段差605が設けらている。この段差605は、スポット用上層部材602と試薬用下層部材603を重ね合わせた際に、試薬用孔606にはめ込まれる。
【0059】
図6(c)に試薬用下層部材603を示す。固体基板及びスポット用上層部材602と略同じ大きさのものが好ましく、本実施例においては、縦26mm×横76mmの疎水性シートである。その上に、スポット用上層部材602の1スポットグループ内にある15個のスポット用孔604を包含できる大きさの試薬用孔606を二つ備えている。試薬用孔
606は、縦15mm×横24mmの長方形状であり、1.5mm 間隔で2つ並べて配置されている。
【0060】
図6(d)に二層シール601の使用状態を示す。分析においては、二層シール601を固体基板105に貼付けする。この際、スポット用上層部材602の段差605も固体基板105に密着する。そして、スポット用孔に試料を滴下し、固体基板上に試料を固定化する。その後、スポット用上層部材602を剥がし、固体基板上に残された試薬用下層部材603を、試薬との反応工程に用いる。
【0061】
本実施例においては、スポット用上層部材602と試薬用下層部材603はあらかじめ適した位置に組み合わされており、スポット用上層部材602を剥がした後に固体基板上に残された試薬用下層部材603をそのまま利用できる。このため、スポット用孔604と試薬用孔606の位置ずれを回避できる。また、試薬用シールを再度配置するという操作を省略することもできる。
【0062】
尚、本実施例では段差605を用いているが、例えば、スポット用上層部材602に段差のない柔らかなシートを用いても良い。
【実施例3】
【0063】
本実施例は、実施例1におけるスポット用シールと試薬用シールとを一体型したような、一体型シールに関する。以下、図7(a)(b)を参照し、実施例1との主な相違点のみを説明する。
【0064】
図7(a)に示す一体型シール701は、スポット用孔を縦3列×横5列に5mm間隔で配置し、計15スポット用孔から成るスポットグループを2グループ備えている。そして、各スポットグループの周りに、切れ目と折れ目が設けられている。この折れ目に従って、スポットグループを含む一体型シール701の一部を折り曲げると、縦15mm×横24mmの長方形状の試薬用部位702が形成される。
【0065】
図7(b)に一体型シール701の使用状態を示す。分析においては、一体型シール
701を固体基板105に貼付けし、スポット用孔に試料を滴下し、固体基板上に試料を固定化する。そして、一体型シール701の一部を折れ目に従って折り曲げ、形成された試薬用部位702を、試薬との反応工程に用いる。
【0066】
本実施例においては、一体型シール701の一部を折り曲げた後に固体基板上に形成された試薬用部位702そのまま利用できるため、位置ずれの問題を回避した上で、試薬用シールを再度配置するという操作を省略することができる。また、一体型シールは、一層のシール上に切れ目と折り目を設ければ製造できる為、製造工程が容易である。
【0067】
尚、本実施例では一体型シール701の一部を折れ目に従って折り曲げて試薬用部位
702を形成しているが、例えば、一体型シール701の一部を切り取って試薬用部位
702を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
臨床検査分野,創薬分野など、生体内分子の大規模な定量・解析が必要とされている分野において、特に利用が期待される。又、検出装置等と組み合わせた解析システムとしての利用も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1(a)】スポット用シールを示す。
【図1(b)】試薬用シールを示す。
【図1(c)】固体基板を示す。
【図2】実施例1における分析手順の具体的作業工程を示す。
【図3(a)】実施例1におけるCEAとCRPの測定結果(スキャン画像)のイメージ図である。
【図3(b)】CEAのシグナル強度を数値化したグラフである。
【図3(c)】CRPのシグナル強度を数値化したグラフである。
【図4(a)】スポット用シールのみを使用した場合の蛍光スキャン画像である。
【図4(b)】図4(a)のA−A′におけるシグナル強度を数値化したグラフである。
【図5(a)】実施例1を用いた場合の蛍光スキャン画像である。
【図5(b)】図5(a)のB−B′におけるシグナル強度を数値化したグラフである。
【図6(a)】実施例2における二層シールを示す。
【図6(b)】スポット用上層部材を示す。
【図6(c)】試薬用下部部材を示す。
【図6(d)】二層シールの使用状態を示す。
【図7(a)】実施例3における一体型シールを示す。
【図7(b)】一体型シールの使用状態を示す。
【符号の説明】
【0070】
101…スポット用シール、102…試薬用シール、103…スポット用孔、104…試薬用孔、105…固体基板、201…マイクロピペッター、202,205…試料,試薬、203…水滴、204…密閉容器、206…測定画像、601…二層シール、602…スポット用上層部材、603…試薬用下層部材、604…スポット用孔、605…段差、606…試薬用孔、701…一体型シール、702…試薬用部位。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板において試料を分析する技術に関する。例えば、プロテインチップ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
意匠第1213441号において、液体サンプルをスポット対象物にスポットするために用いるスポット用シールが開示されている。スポット用シールには、円形の穴が、4行12列となるように配置されている。スライドガラス等のスポット対象部にスポット用シールを貼付けし、穴部分に液体サンプルを滴下する。そして、スポット用シールを剥がし、サンプルがスポットされたスライドガラス等を検査・計測機器にセットする。
【0003】
また、意匠第1211698号において、液体サンプルをスポット対象物にスポットするための、4枚のシールが重なったスポット用シールが開示されている。各シールの形状は同じであり、穴の大きさや、配置場所は同一である。
【0004】
【非特許文献1】意匠第1213441号
【非特許文献2】意匠第1211698号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、意匠第1213441号開示のスポット用シールを用いて、基板上で分析を行うことを思いついた。その具体的方法は、例えば、スポット用シールを基板に貼付けし、スポット用孔に測定サンプルを滴下し、基板に測定サンプルを固定する。そして、引き続き、同じスポット用孔に分析試薬を滴下する。この工程を繰り返すことで、測定サンプルと分析試薬の相互作用反応を行うというものである。
【0006】
しかしながら、本願発明者は、上記方法は手軽であるものの、分析精度があまり良くないことに気がついた。そして、鋭意検討した結果、スポット中心部と周辺部とにおいて反応に差があり、測定精度が低下していることを見出した。また、スポット用シールと基板との境界部に(つまり、スポット用孔の外周部に)、液体サンプルが溜まり易いことが、この原因であることも突き止めた。スポット用孔の周辺部に測定サンプルや分析試薬が多く溜まり、スポット周辺部において反応が活発に起こってしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、スポット中心部と周辺部における反応を均一化することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板にスポットされた第一溶液を、これより大きな反応用孔にて覆い、反応用穴孔に第二溶液を供給し、第一溶液と第二溶液を反応させることに関する。これにより、第一溶液と第二溶液の反応を、スポット中心部と周辺部において略均一にできる。
【0009】
尚、第一溶液には、免疫分析の場合の一次抗体含有溶液や、抗原含有溶液を含む。また、第二溶液には、抗原を認識する二次抗体含有溶液や、二次抗体と特異的に結合し、検出のための標識処理を施された三次抗体含有溶液を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、手軽かつ高精度に基板上で分析できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、上記及びその他の、本発明の新規な特徴と効果について、図面を参酌して説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、これらの変更も本発明に包含されるものである。
【実施例1】
【0012】
本実施例では、スポット用シールと試薬用シールを用い、固体基板上にて試料と試薬とを反応させ、分析を行う場合を説明する。固体基板上で解析できる反応としては、タンパク質,低分子化合物,核酸,脂質,糖質,生細胞などの生体内分子が関与する相互作用、例えば抗原抗体反応,リガンド−レセプター反応,酵素−基質の触媒反応などがある。
【0013】
図1(a)〜(c)に、本実施例にて利用する器具を示す。
【0014】
図1(a)に示すスポット用シール101は、固体基板上の所定位置に溶液をスポットする為のシールである。固体基板と略同じ大きさのものが好ましい。本実施例においては、縦26mm×横76mmの疎水性シートである。その上に、直径2mmのスポット用孔103を縦3列×横5列に5mm間隔で配置し、計15スポット用孔103から成るスポットグループを2グループ備えている。2つのスポットグループを、それぞれ異なる種類のサンプルの測定用として用いることができる。
【0015】
図1(b)に示す試薬用シール102は、固体基板上の所定位置に試薬を供給する為のシールであり、試薬用孔104を備えている。固体基板、及びスポット用シールと同じ大きさのものが好ましい。本実施例においては、縦26mm×横76mmの疎水性シートである。その上に、スポット用シールの1スポットグループ内にある15個のスポット用孔103を包含できる大きさの試薬用孔104を二つ備えている。試薬用孔104は、縦15mm×横24mmの長方形状であり、1.5mm 間隔で2つ並べて配置されている。ここで、試薬用孔104の大きさは、スポット用シールのスポット用孔103より大きいことが好ましい。固体基板上に固定化した試料のスポット径よりも大きくする為である。試薬用孔104の外周と、スポットの外周との距離は、使用する試料,溶液組成,プロトコル,スポット形状等に依存する。例えば、30%グリセロール,10%BSAを含んだ溶液に、タンパク質抗原や抗体などの試料や試薬を希釈して測定を行う場合は、試薬用孔104の外周がスポットの外周から少なくとも0.6mm 以上離れていることが好ましい。この数値は、これらの試料溶液を同じ大きさのスポット用孔103内部に繰り返し添加して反応を行い、スポットの断面のシグナル強度のデータを取得し、スポット内部のシグナル強度の平均値を上回る領域の、スポット外周からの距離をもとに算出できる。
【0016】
スポット用シール101及び試薬用シール102は、耐水性の素材や吸湿性の低い素材(例えば、疎水性シート)を加工して作成できる。その裏面は、シール等の粘着性のある素材になっており、固体基板に直接貼付けることができる。また、固体基板に対して親和性があり、密着させることのできる素材を使用することも可能である。例えば、固体基板がガラス製のスライドガラスである場合、PDMS(polydimethylsiloxane(ポリジメチルシロキサン))などのシリコーンポリマー等を用いることができる。
【0017】
もちろん、スポット用シール101や試薬用シール102は上述の構造に限定されず、使用目的に応じ、その形状を変更してもよい。
【0018】
例えば、スポットグループを一つのみとしても良いし、スポットグループを3以上としてもよい。一つのスポットグループに含まれるスポット数は1つでも良く、複数でも良い。スポット用孔103の形状は通常円形であるが、これに限定されず、楕円,三角形,四角形,多角形でも良い。大きさも特に限定されず、使用する試料を微量に抑えたい場合は、例えば直径0.5mm の円形が望ましい。スポット用孔の配置パターンも特に限定されないが、固体基板を洗浄した場合などに隣のスポットから試料の混入が起こらない距離、例えば2mmだけ離して配置することが望ましい。
【0019】
試薬用孔104の形状であるが、例えば一つのスポット用孔のみを包括する試薬用孔であれば、スポット用孔と同じ形状でサイズが大きいものが望ましい。複数のスポット用孔を包括する試薬用孔であれば、試薬用孔の内周が全てのスポット用孔の外周から測定に影響を与えない距離だけ離れているものが望ましく、例えば四角形のような形状を使用することができる。試薬用孔の配置パターンは、スポットグループの配置パターンと合っていることが望ましい。例えば、試薬用孔を縦2列×横3列のように配置してもよい。また、極微量の試料をスポットできる自動スポッターを使用する場合であれば、試薬用孔を縦
10列×横10列のようにしてもよい。
【0020】
図1(c)に示す固体基板105は、その上に目的の試料をスポット状に固定化し、この試料と特異的に結合する物質を固体基板上に捕捉して検出するためのものである。例えば、縦26mm×横76mmのスライドグラスである。
【0021】
固体基板の種類には、ニトロセルロースやPVDF等のメンブレン,ガラス,ウエハー等のシリコン,プラスチック等の樹脂,金属等に、必要に応じて試料の固定に適した修飾を施したものを用いることができる。修飾の種類には、物理吸着によって目的分子を固定化することができるポリ−L−リジンやアミノシラン,共有結合によって目的分子を固定化することができるアルデヒド基やエポキシ基のような官能基、及び目的分子との親和性を利用して固定化することができるアビジンやNi−NTAなどを用いることができる。又、ポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルのような、親水性の多孔質マトリックスの薄層から成る基板にも利用できる。
【0022】
図2に本実施の分析手順を示す。本実施例では、上述した器具の他、ピペッター201,密閉容器204,気相インキュベーター、及び検出装置を用いる。
【0023】
ピペッター201は、固体基板上に、任意の分量で試料をスポットする為のものである。
【0024】
密閉容器204は、固体基板を少量の水滴203と共に密封することにより、容器の内部の湿度を長時間を保ち、固体基板上の試料の蒸発を防ぐことができる。
【0025】
気相インキュベーターは、試料及び固体基板に適した温度を保持するためのものである。
【0026】
検出装置は、固体基板を測定するためのものであり、分析に適した検出系及び装置を用いる。ここで得られた数値から、固体基板上に固定化された物質の定性・定量的な分析を行う。例えば、標識が蛍光物質の場合、蛍光検出スキャナーや蛍光顕微鏡を使用する。標識が放射性同位体であればオートラジオグラフィー,標識が酵素であればそれぞれ対応する基質や発光,発色試薬等を組み合わせて用いる。あるいは検出にSPR(Surface
Plasmon Resnance)装置を使用することも考えられる。SPRとは金属表面の励起状態である表面プラズモン波を共鳴励起する現象であり、2つの分子が結合・解離することによる質量変化の検出に利用することができる。質量変化を感知するため、標識を必要としない利点がある。更に固体基板上に補足した試料を質量分析装置により解析するためにも利用することができる。この場合、固体基板上に補足した試料に必要に応じて過剰なエネルギーを吸収するためのマトリックスを添加し,レーザー照射によって分子をイオン化した後に質量分析により試料の同定を行うことができる。
【0027】
以下、図2を参照し、スポット用シールと試薬用シールを用いた分析作業工程を説明する。本実施例では、試料のスポット(A),試料の固定(B),試薬の添加(C),試料と試薬の反応(D),検出(E)の順番で作業を進める。
【0028】
まず、試料のスポット(A)では、スポット用シール101を固体基板105に添付し、マイクロピペッター201を使用して、1次抗体や抗原など試料202を手動で滴下する。これにより、固体基板上の所定位置に、測定サンプルなどの複数の試薬をスポットできる。
【0029】
次に、試料の固定(B)では、固体基板を水滴203とともに密閉容器204中に保持し、試料の固体基板上への結合反応を行う。これにより、固体基板上にスポットされた複数の試料の蒸発を防ぐことができる為、複数の試料を固体基板に確実に固定できる。
【0030】
尚、試料のスポット(A)、及び試料の固定(B)は、スポット用シール101を用いるかわりに、市販の自動スポッター(接触型,非接触型)等により行うこともできる。
【0031】
次に、試薬の添加(C)では、スポット用シール101を剥がした後に試薬用シール
102を固体基板上に貼付けする。この際、固体基板上に固定された試料を、試薬用シール02の試薬用孔104が覆うようにする。本実施例では、スポット用シール101における1スポットグループに関連する、固体基板上に縦3列×横5列にてスポットされた
15個の試料が、一つの試薬用孔104に覆われるようにする。そして、二つの試薬用孔104内部に、2次抗体や3次抗体等の試薬205をそれぞれ添加する。これにより、1スポットグループに関連する15個の試料を、略同時・略同一条件で、同一の試薬と反応させることができる。また、試薬用孔104に異なる試薬を供給することにより、同一の固体基板上にて、異なる反応を、略同時に実施することができる。
【0032】
そして、試料と試薬の反応(D)では、固体基板を水滴とともに密封容器中に保持し、スポット状に固定化された試料と試薬の反応を行う。これにより、固体基板上の試薬の蒸発を防ぐことができる為、試薬と試料を確実に反応させることができる。
【0033】
最後に、検出(E)において、固体基板上を検出装置にて検出し、画像206を得る。これにより、試料と試薬の反応を確認できる。
【0034】
〔実験〕
抗原抗体反応に基づくタンパク質定量について、本実施例の効果を検証した。抗原抗体反応は、腫瘍マーカーであるヒトCEA(Carcinoembryonic antigen 癌胎児性抗原) 及びCRP(C-reactive protein C反応性プロテイン)の定量である。
【0035】
尚、本実験では、溶解溶液,ブロッキング剤,洗浄溶液を用いる。
【0036】
溶解溶液は、試料、及び試薬を溶解するためのものであり、急激なpH変化を避けて試料を安定に保つために緩衝溶液を用いる。また、試料、及び試薬の蒸発を防ぎ、なおかつ安定に保つためにグリセロール等の湿潤剤を必要に応じて20〜40%程度加える。固体基板に最初に固定化する物質以外の溶解に用いる溶解溶液には、非特異的吸着を防止するために、必要に応じてブロッキング剤を適当な濃度添加する。
【0037】
ブロッキング剤は、固体基板上の未反応の領域をブロッキングするためのものである。固体基板上における目的物質が固定化されなかった領域に、他の物質が吸着して非特異的なシグナルの増加を引き起こすことを防ぐことができる。ブロッキング剤は、固体基板や試料、及び試薬の性質に応じて選択する。例えば、BSA(Bovine Serum Albumin)やスキムミルクのような不活性なタンパク質や、PEG(Polyethylene Glycol)、PVA
(Polyvinyl Alcohol)などのポリマーを用いる。
【0038】
洗浄溶液は、未反応の試料、及び試薬を効率よく取り除くためのものである。例えば、上述の緩衝溶液に、必要に応じてTween20,Triton X等の界面活性剤を加えたものを用いる。
【0039】
実験手順は次のとおりである。まず、固体基板105にスポット用シール101を貼付けし、各スポットに1次抗体を滴下し、固体基板上に1次抗体を固定化した(1次抗体の固体基板への固定化)。次に、固体基板上の未反応の領域をブロッキングした(ブロッキング)。次に、各スポットに、それぞれ異なる濃度の抗原を添加し、測定対象となる抗原を1次抗体に補足させた(1次抗体による抗原の捕捉)。次に、スポット用シール101を剥がして試薬用シール102を貼付けし、試薬用孔内に、抗原を認識する2次抗体を滴下し、反応させた(2次抗体との反応)。次に、試薬用孔内に、2次抗体と特異的に結合し、検出のための標識処理を施した3次抗体を滴下し、反応させた(標識3次抗体との反応)。次に、試薬用シール102を剥がし、固体基板上を検出スキャナーによって検出した(蛍光スキャナーによる検出)。そして、スポット用シールのみを用いた場合と比較した(実験の結果)。
【0040】
〔1次抗体の固体基板への固定化〕
本実験では、固体基板としてProteochip TypeA(Proteogen,Soul,Korea)を用いた。
Proteochipはカリックスクラウン誘導体の一種であるタンパク質結合試薬‘ProLinker’をスライドグラス(大きさ縦26mm×横76mm)上に結合したプロテインチップであり、特に抗体の固定化に優れ、抗体の抗原結合能力を保ったまま高密度かつ均一に固定化できる。また、スポット用シールとして、固体基板と同じ大きさの、縦26mm×横76mmの疎水性シート上に、直径2mmのスポット用孔を縦3列×横5列に5mm間隔で配置し、計15スポットを備えたスポットグループを2グループ備えたものを用いた。一方のスポットグループをCEA測定用、もう一方のスポットグループをCRP測定用とした。
【0041】
ProteoChip TypeAにはあらかじめスポット用シール101を貼付けした。マウス由来抗ヒトCEAモノクローナル抗体(Fitzgerald,MA,USA)及びマウス由来抗ヒトCRPモノクローナル抗体(Fitzgerald,MA,USA)を、30%Glycerolを含んだPBS
(pH=7.4) を用いて100μg/mlに希釈した。これらを、マイクロピペッター
201を用いて1.5μlずつスポットした。
【0042】
Proteochip TypeA を隅に水滴203をいれた密閉容器204に入れ、37℃で一晩インキュベートして1次抗体をProteochip TypeAに固定化した。固定化後、Proteochip
TypeAを50mlの洗浄溶液中に浸漬し、10分間振とうして未反応の抗体を取り除いた。洗浄後、濾紙により余分な水分を取り除いた。
【0043】
〔ブロッキング〕
50mlの3%BSAを含んだPBS(pH=7.4)にProteochip TypeAを浸漬し、1.5 時間穏やかに振とうした。ブロッキング溶液を捨てた後、50mlの洗浄溶液を加え、10分間振とうした。洗浄後、濾紙により余分な水分を取り除いた。
【0044】
〔1次抗体による抗原の捕捉〕
ヒト組換えCEA及びCRPを30%Glycerol,10%BSAを含んだPBS(pH=7.4 )を用いて1ng/ml〜1μg/mlに希釈した。これらの抗原溶液及びネガティブコントロールを、それぞれ対応する1次抗体を固定化したスポットに対し、マイクロピペッター201を用いて1.5μlずつスポットした。Proteochip TypeAを、隅に水滴203をいれた密閉容器204に入れ、37℃で1時間インキュベートして抗原を一次抗体と反応させた。抗原溶液を吸引によって除いた後、50mlの洗浄溶液中にProteochipTypeAを浸漬し、15分間振とうして未反応の抗原を取り除いた。窒素ガス吹き付けにより余分な水分を取り除いた後、スポット用シールを剥がした。
【0045】
〔2次抗体との反応〕
試薬用シールを、試薬用孔がProteochip TypeA のスポット領域と同位置になるようにして貼付けした。本実験では、試薬用シールは固体基板、及びスポット用シールと同じ大きさの、縦26mm×横76mmの疎水性シート上に、スポット用シールの一つのグループ内にある15個のスポット用孔を包含する大きさである縦15mm×横24mmの試薬用孔を、
1.5mm間隔で2つ並べて配置したものを使用した。
【0046】
ウサギ由来抗ヒトCEAポリクローナル抗体(Fitzgerald,MA,USA)及びヤギ由来抗ヒトCRPポリクローナル抗体(Fitzgerald,MA,USA)を30%Glycerol,
10%BSAを含んだPBS(pH=7.4)を用いてそれぞれ100μg/mlに希釈した。そして、これらを各試薬用孔内部に200μlずつ添加した。
【0047】
Proteochip TypeA を、隅に水滴203をいれた密閉容器204に入れ、37℃で30分インキュベートして抗原と反応させた。抗体溶液を吸引により除いた後、50mlの洗浄溶液中にProteochip TypeA を浸漬し、15分間振とうして未反応の抗体を取り除いた。洗浄後、窒素ガス吹き付けにより余分な水分を取り除いた。
【0048】
〔標識3次抗体との反応〕
CEA検出用のCy5標識ヤギ由来抗ウサギIgGポリクローナル抗体(Zymed
laboratories Inc, San Francisco,CA)、及びCRP検出用のCy5標識ロバ由来抗ヤギIgGポリクローナル抗体(Chemicon Inernational. Inc, Temecula,CA)を30%Glycerol ,10%BSAを含んだPBS(pH=7.4)を用いて2μg/mlに希釈した。そして、これらを各試薬用孔内部に200μlずつ添加した。
【0049】
Proteochip TypeA を、隅に水滴203をいれた密閉容器204に入れ、37℃で30分インキュベートして2次抗体と反応させた。抗体溶液を吸引により除いた後、50mlの洗浄溶液中にProteochip TypeA を浸漬し、15分間振とうして未反応の抗体を取り除いた。洗浄後、窒素ガス吹き付けにより余分な水分を取り除き、試薬用シールを剥がした。
【0050】
〔蛍光スキャナーによる検出〕
蛍光検出用スキャナーScan Array Express(Packard BioScience, Billerica,MA)を用いてProteochip TypeAをスキャンした。スキャンした画像の解析にはQuantumArray(Packard BioScience, Billerica,MA)を使用した。
【0051】
〔実験の結果〕
図3(a)〜(c)に、本実施例におけるCEAとCRPの測定結果を示す。図3(a)は蛍光検出で得られたスキャン画像のイメージ図、図3(b),図3(c)はそれぞれ
CEA,CRPのシグナル強度を数値化したグラフである。
【0052】
複数のスポットを包含する大きさの試薬用孔を備えた試薬用シールを用い、複数のスポットに対して共通して使用できる試薬を添加することにより、スポット操作を省いて実験操作を簡易化し、作業時間を短縮することができた。
【0053】
また、固体基板を2つの領域に分ける事のできる試薬用シールを用いることにより、一枚の固体基板上で2種類のタンパク質をそれぞれ異なる条件で測定することができた。タンパク質はそれぞれ機能するための最適条件、たとえば適したpH,補因子,塩濃度等が異なっている。従ってプロテインチップのメリットである多項目,高集積型のタンパク質解析を実現するためには、測定には一枚のプロテインチップ上でタンパク質ごとに異なる条件を採用することが望ましい。試薬用シールの使用によって、試薬の他、ブロッキング溶液,洗浄溶液等もタンパク質ごとに異なるものを用いることが可能であり、多項目・高集積型のプロテインチップ技術の確立に寄与する技術である。
【0054】
図4は、スポット用シールのみを使用して反応の全工程を行った場合の測定結果である。図4(a)は蛍光スキャン画像であり、スポット内部のシグナル強度のばらつきを示す。図4(b)は、図4(a)のA−A′におけるシグナル強度を数値化したグラフである。図5は、本実施例における測定結果である。図5(a)は蛍光スキャン画像である。図5(b)は、図5(a)のB−B′におけるシグナル強度を数値化したグラフである。
【0055】
スポット用孔より大きな試薬用孔を備えた試薬用シールを用いることにより、スポット用シールのみを使用した場合に問題となっていたスポット内部のシグナル強度のばらつきを低減することができた。具体的には、スポット用シールのみを用いた場合ではスポット内部のシグナル強度のばらつきがCV値で55%であったが、試薬用シールを併用することで36%に低減でき、測定精度を向上させることに成功した。スポット用シールのみを用いた場合、スポット用シールを固体基板に貼付けすることによりスポット内部が凹状になり、スポット周辺部に液体サンプルが残存しやすいことが原因と推測される。また、スポット操作の際にピペッターの先端部が固体基板に接触して、その部分にあらかじめ固定化してあった分子が剥離することも原因の一つと考えられる。
【実施例2】
【0056】
本実施例は、実施例1におけるスポット用シールと試薬用シールを重ね合わせたような、二層シールに関する。以下、図6(a)〜(d)を参照し、実施例1との主な相違点のみを説明する。
【0057】
図6(a)に示す二層シール601は、スポット用孔を備えたスポット用上層部材602の下に、スポット用孔より大きな試薬用孔606を備えた試薬用下層部材603を重ねて貼付けしたものである。試薬用孔内に包含される位置に、スポット用孔が配置されている。必要に応じ、スポット用上層部材602の上、スポット用上層部材602と試薬用下層部材603の間、試薬用下層部材603の下に、別部材を配置して、二層以上の多層としてもよい。例えば、スポット用上層部材602と試薬用下層部材603の間に、第2の試薬用部材を配置して、三層とすることが考えられる。
【0058】
図6(b)にスポット用上層部材602を示す。固体基板及び試薬用下層部材603と略同じ大きさのものが好ましく、本実施例においては、縦26mm×横76mmの疎水性シートである。その上に、直径2mmのスポット用孔103を縦3列×横5列に5mm間隔で配置し、計15のスポット用孔604から成るスポットグループを2グループ備えている。それぞれ異なる種類のサンプルの測定用として用いることができる。また、2つのスポットグループに対応する底面側には、その試薬用下層部材603の試薬用孔と略同じ形状の段差605が設けらている。この段差605は、スポット用上層部材602と試薬用下層部材603を重ね合わせた際に、試薬用孔606にはめ込まれる。
【0059】
図6(c)に試薬用下層部材603を示す。固体基板及びスポット用上層部材602と略同じ大きさのものが好ましく、本実施例においては、縦26mm×横76mmの疎水性シートである。その上に、スポット用上層部材602の1スポットグループ内にある15個のスポット用孔604を包含できる大きさの試薬用孔606を二つ備えている。試薬用孔
606は、縦15mm×横24mmの長方形状であり、1.5mm 間隔で2つ並べて配置されている。
【0060】
図6(d)に二層シール601の使用状態を示す。分析においては、二層シール601を固体基板105に貼付けする。この際、スポット用上層部材602の段差605も固体基板105に密着する。そして、スポット用孔に試料を滴下し、固体基板上に試料を固定化する。その後、スポット用上層部材602を剥がし、固体基板上に残された試薬用下層部材603を、試薬との反応工程に用いる。
【0061】
本実施例においては、スポット用上層部材602と試薬用下層部材603はあらかじめ適した位置に組み合わされており、スポット用上層部材602を剥がした後に固体基板上に残された試薬用下層部材603をそのまま利用できる。このため、スポット用孔604と試薬用孔606の位置ずれを回避できる。また、試薬用シールを再度配置するという操作を省略することもできる。
【0062】
尚、本実施例では段差605を用いているが、例えば、スポット用上層部材602に段差のない柔らかなシートを用いても良い。
【実施例3】
【0063】
本実施例は、実施例1におけるスポット用シールと試薬用シールとを一体型したような、一体型シールに関する。以下、図7(a)(b)を参照し、実施例1との主な相違点のみを説明する。
【0064】
図7(a)に示す一体型シール701は、スポット用孔を縦3列×横5列に5mm間隔で配置し、計15スポット用孔から成るスポットグループを2グループ備えている。そして、各スポットグループの周りに、切れ目と折れ目が設けられている。この折れ目に従って、スポットグループを含む一体型シール701の一部を折り曲げると、縦15mm×横24mmの長方形状の試薬用部位702が形成される。
【0065】
図7(b)に一体型シール701の使用状態を示す。分析においては、一体型シール
701を固体基板105に貼付けし、スポット用孔に試料を滴下し、固体基板上に試料を固定化する。そして、一体型シール701の一部を折れ目に従って折り曲げ、形成された試薬用部位702を、試薬との反応工程に用いる。
【0066】
本実施例においては、一体型シール701の一部を折り曲げた後に固体基板上に形成された試薬用部位702そのまま利用できるため、位置ずれの問題を回避した上で、試薬用シールを再度配置するという操作を省略することができる。また、一体型シールは、一層のシール上に切れ目と折り目を設ければ製造できる為、製造工程が容易である。
【0067】
尚、本実施例では一体型シール701の一部を折れ目に従って折り曲げて試薬用部位
702を形成しているが、例えば、一体型シール701の一部を切り取って試薬用部位
702を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
臨床検査分野,創薬分野など、生体内分子の大規模な定量・解析が必要とされている分野において、特に利用が期待される。又、検出装置等と組み合わせた解析システムとしての利用も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1(a)】スポット用シールを示す。
【図1(b)】試薬用シールを示す。
【図1(c)】固体基板を示す。
【図2】実施例1における分析手順の具体的作業工程を示す。
【図3(a)】実施例1におけるCEAとCRPの測定結果(スキャン画像)のイメージ図である。
【図3(b)】CEAのシグナル強度を数値化したグラフである。
【図3(c)】CRPのシグナル強度を数値化したグラフである。
【図4(a)】スポット用シールのみを使用した場合の蛍光スキャン画像である。
【図4(b)】図4(a)のA−A′におけるシグナル強度を数値化したグラフである。
【図5(a)】実施例1を用いた場合の蛍光スキャン画像である。
【図5(b)】図5(a)のB−B′におけるシグナル強度を数値化したグラフである。
【図6(a)】実施例2における二層シールを示す。
【図6(b)】スポット用上層部材を示す。
【図6(c)】試薬用下部部材を示す。
【図6(d)】二層シールの使用状態を示す。
【図7(a)】実施例3における一体型シールを示す。
【図7(b)】一体型シールの使用状態を示す。
【符号の説明】
【0070】
101…スポット用シール、102…試薬用シール、103…スポット用孔、104…試薬用孔、105…固体基板、201…マイクロピペッター、202,205…試料,試薬、203…水滴、204…密閉容器、206…測定画像、601…二層シール、602…スポット用上層部材、603…試薬用下層部材、604…スポット用孔、605…段差、606…試薬用孔、701…一体型シール、702…試薬用部位。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の分析方法であって、
スポット用孔を備えたスポット用部材を基板に配置し、
スポット用孔に第一溶液を供給し、
スポット用孔より大きな反応用孔を備えた反応用部材を基板に配置し、基板にスポットされた第一溶液を反応用孔により覆い、
反応用孔第二溶液を供給し、第一溶液と第二溶液とを反応させる方法。
【請求項2】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材が複数のスポット用孔を備え、
反応用孔が、基板にスポットされた複数の第一溶液を覆い、
反応用孔に第二溶液を供給し、複数の第一溶液を略同時に反応させる方法。
【請求項3】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材が複数のスポット用孔を備え、
前記反応用部材が複数の反応用孔を備え、
基板にスポットされた複数の第一溶液を、複数の反応用孔により分割するように覆い、
複数の反応用孔に2種類以上の溶液をそれぞれ供給し、複数の第一溶液を2種類以上の溶液と反応させる方法。
【請求項4】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、基板に貼付けできるシールである方法。
【請求項5】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、直接的又は間接的に、剥離可能に積層され、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が積層された状態において、スポット用孔に第一溶液を供給し、
前記反応用部材から前記スポット用部材を剥離した後に、反応用孔に第二溶液を供給する方法。
【請求項6】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、直接的又は間接的に固定され、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が固定された状態において、スポット用孔に第一溶液を供給し、
スポット用部材を基板から実質的に除去した後に、反応用孔に第二溶液を供給する方法。
【請求項7】
請求項1記載の分析方法であって、
前記第一溶液が、タンパク質を含有し、
前記第二溶液が、タンパク質と反応する試薬を含有する方法。
【請求項8】
試料の分析方法であって、
基板に第一溶液をスポットし、
スポットされた第一溶液より大きな反応用孔を備えた反応用部材を基板に配置し、基板にスポットされた第一溶液を反応用孔により覆い、
反応用孔に第二溶液を供給し、第一溶液と第二溶液とを反応させる方法。
【請求項9】
請求項8記載の分析方法であって、
基板に複数の第一溶液をスポットし、
反応用孔が、基板にスポットされた複数の第一溶液を覆い、
反応用孔に第二溶液を供給し、複数の第一溶液を略同時に反応させる方法。
【請求項10】
請求項8記載の分析方法であって、
前記反応用部材が複数の反応用孔を備え、
基板に複数の第一溶液をスポットし、
基板にスポットされた複数の第一溶液を、複数の反応用孔により分割するように覆い、
複数の反応用孔に2種類以上の溶液をそれぞれ供給し、複数の第一溶液を2種類以上の溶液と反応させる方法。
【請求項11】
請求項8記載の分析方法であって、 前記第一溶液が、タンパク質を含有し、
前記第二溶液が、タンパク質と反応する試薬を含有する方法。
【請求項12】
請求項8記載の分析方法であって、
スポット用孔を備えたスポット用部材を基板に配置し、スポット用孔に第一溶液を供給し、基板に第一溶液をスポットする方法。
【請求項13】
基板に配置でき、スポット用孔を備えたスポット用部材と、
基板に配置でき、スポット用孔より大きな反応用孔を備えた反応用部材とを含む分析器具。
【請求項14】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材が、複数のスポット用孔を備え、
前記反応用部材が、複数のスポット用孔を覆える大きさの反応用孔を備える分析器具。
【請求項15】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材が、複数のスポット用孔を備え、
前記反応用部材が、複数の反応用孔を備える分析器具。
【請求項16】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、基板に貼付けできるシールである分析器具。
【請求項17】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、直接的又は間接的に積層され、
前記スポット用部材が前記反応用部材より剥離可能であり、
スポット用孔と反応用孔が重なっている分析器具。
【請求項18】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、直接的又は間接的に固定され、
前記スポット用部材が、前記反応用孔の中に納まり、
前記反応用孔の中から、前記スポット用部材を、実質的に除去できる分析器具。
【請求項19】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材が、タンパク質を含有する第一溶液を、基板上の所定位置に供給する為の部材であり、
前記反応用部材が、タンパク質と反応する試薬を含有する第二溶液を、基板上の所定位置に供給する為の部材である分析器具。
【請求項1】
試料の分析方法であって、
スポット用孔を備えたスポット用部材を基板に配置し、
スポット用孔に第一溶液を供給し、
スポット用孔より大きな反応用孔を備えた反応用部材を基板に配置し、基板にスポットされた第一溶液を反応用孔により覆い、
反応用孔第二溶液を供給し、第一溶液と第二溶液とを反応させる方法。
【請求項2】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材が複数のスポット用孔を備え、
反応用孔が、基板にスポットされた複数の第一溶液を覆い、
反応用孔に第二溶液を供給し、複数の第一溶液を略同時に反応させる方法。
【請求項3】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材が複数のスポット用孔を備え、
前記反応用部材が複数の反応用孔を備え、
基板にスポットされた複数の第一溶液を、複数の反応用孔により分割するように覆い、
複数の反応用孔に2種類以上の溶液をそれぞれ供給し、複数の第一溶液を2種類以上の溶液と反応させる方法。
【請求項4】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、基板に貼付けできるシールである方法。
【請求項5】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、直接的又は間接的に、剥離可能に積層され、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が積層された状態において、スポット用孔に第一溶液を供給し、
前記反応用部材から前記スポット用部材を剥離した後に、反応用孔に第二溶液を供給する方法。
【請求項6】
請求項1記載の分析方法であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、直接的又は間接的に固定され、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が固定された状態において、スポット用孔に第一溶液を供給し、
スポット用部材を基板から実質的に除去した後に、反応用孔に第二溶液を供給する方法。
【請求項7】
請求項1記載の分析方法であって、
前記第一溶液が、タンパク質を含有し、
前記第二溶液が、タンパク質と反応する試薬を含有する方法。
【請求項8】
試料の分析方法であって、
基板に第一溶液をスポットし、
スポットされた第一溶液より大きな反応用孔を備えた反応用部材を基板に配置し、基板にスポットされた第一溶液を反応用孔により覆い、
反応用孔に第二溶液を供給し、第一溶液と第二溶液とを反応させる方法。
【請求項9】
請求項8記載の分析方法であって、
基板に複数の第一溶液をスポットし、
反応用孔が、基板にスポットされた複数の第一溶液を覆い、
反応用孔に第二溶液を供給し、複数の第一溶液を略同時に反応させる方法。
【請求項10】
請求項8記載の分析方法であって、
前記反応用部材が複数の反応用孔を備え、
基板に複数の第一溶液をスポットし、
基板にスポットされた複数の第一溶液を、複数の反応用孔により分割するように覆い、
複数の反応用孔に2種類以上の溶液をそれぞれ供給し、複数の第一溶液を2種類以上の溶液と反応させる方法。
【請求項11】
請求項8記載の分析方法であって、 前記第一溶液が、タンパク質を含有し、
前記第二溶液が、タンパク質と反応する試薬を含有する方法。
【請求項12】
請求項8記載の分析方法であって、
スポット用孔を備えたスポット用部材を基板に配置し、スポット用孔に第一溶液を供給し、基板に第一溶液をスポットする方法。
【請求項13】
基板に配置でき、スポット用孔を備えたスポット用部材と、
基板に配置でき、スポット用孔より大きな反応用孔を備えた反応用部材とを含む分析器具。
【請求項14】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材が、複数のスポット用孔を備え、
前記反応用部材が、複数のスポット用孔を覆える大きさの反応用孔を備える分析器具。
【請求項15】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材が、複数のスポット用孔を備え、
前記反応用部材が、複数の反応用孔を備える分析器具。
【請求項16】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、基板に貼付けできるシールである分析器具。
【請求項17】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、直接的又は間接的に積層され、
前記スポット用部材が前記反応用部材より剥離可能であり、
スポット用孔と反応用孔が重なっている分析器具。
【請求項18】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材及び前記反応用部材が、直接的又は間接的に固定され、
前記スポット用部材が、前記反応用孔の中に納まり、
前記反応用孔の中から、前記スポット用部材を、実質的に除去できる分析器具。
【請求項19】
請求項13記載の分析器具であって、
前記スポット用部材が、タンパク質を含有する第一溶液を、基板上の所定位置に供給する為の部材であり、
前記反応用部材が、タンパク質と反応する試薬を含有する第二溶液を、基板上の所定位置に供給する為の部材である分析器具。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【公開番号】特開2006−38656(P2006−38656A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219487(P2004−219487)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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