説明

試料ホルダー先端部、試料ホルダー、及び当該試料ホルダー先端部の製造方法

【課題】
したがって、本発明の目的は、像への影響を低減する試料ホルダー先端部を提供することにある。
【解決手段】
【0070】
本発明の試料ホルダー先端部は、試料と、前記試料を搭載する先端部とを有する試料ホルダー先端部であって、前記先端部の回転軸と、前記試料の回転軸とが略一致することを特徴とする。本発明の試料ホルダー先端部の製造方法は、試料を切りだす工程と、試料ホルダー先端部の試料搭載部分へ、前記切りだした試料を取り付ける工程と、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程とからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダー先端部、試料ホルダー、及び当該試料ホルダー先端部の製造方法に関し、特に、試料ホルダー先端部の回転軸と、試料の回転軸とが略一致する試料ホルダー先端部、試料ホルダー、及び当該試料ホルダー先端部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに電子顕微鏡用試料作製手法として、試料をナノレベルで切り取って、当該試料を試料ホルダーに取り付けることができる技術が知られている。例えば、元試料7が固定される試料ステージ6と、元試料7の特定箇所に垂直方向から収束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射系2と、試料ステージ6の斜め上方に位置し、所定の観察用試料ホルダーが上記垂直方向に対して斜め方向に挿入されるとともに、該挿入された観察用試料ホルダーを上記斜め方向に移動可能に支持するサイドエントリーステージ3とを有し、サイドエントリーステージ3に支持された観察用試料ホルダーの先端部に元試料7の特定箇所から取り出された試料片が固定される試料作製装置が知られている(特許文献1)。当該作製手法を使用すれば、例えば図6のように試料片を任意の場所に接着することができる。
【0003】
図6に示すような試料片は、電子線トモグラフィーにより結晶内部の格子欠陥を3次元可視化する際に有利な試料片である。なお、電子線トモグラフィーとは、物質のナノ構造を3次元で観察・解析する方法であり、ナノ構造可視化技術して着目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−93353
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1によれば、まず、円柱や、四角柱を含めて、柱状試料を準備することは非常に困難であるという問題を有する。通常、台形状など厚みが不均一な形状になりやすい傾向がある。また、仮に、円柱状試料を何らかの方法で準備できたとしても、下記のような問題を有する。すなわち、図7に示すように、柱状試料(円柱、四角柱を問わない)を準備したとしても、多くの場合、柱状試料を針状ホルダー先端に取り付けようとすると、ホルダー回転軸上に試料回転軸を置くことは極めて困難である。
【0006】
また、例えば、直径100nmの柱状の試料片を切り出し針(以下、Needle)先端へ取り付けることができたと仮定して、従来の方法ではホルダー回転軸と試料回転軸が同じ軸上にないため、図8に示すように、実際に観察できる領域はもとの領域より狭くなる。また、上下の余計な試料の厚みによる入射波側、透過波側へのファクターが像に影響を及ぼすという問題点を有する。
【0007】
このように、ホルダー回転軸と、試料回転軸とが同じ軸上にない場合であっても、2軸傾斜可能な機構を有する試料ホルダーによれば、補正により正しい像を得ることができるが、理想的には、ホルダー回転軸と、試料回転軸とが略同一軸上に存在し、回転軸中心から試料外側側面までの距離が略等しいことが望ましい。しかしながら、ホルダー回転軸と、試料回転軸とが略同一軸上に存在する技術は、これまで知られていない。
【0008】
したがって、本発明の目的は、像への影響を低減する試料ホルダー先端部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者は、試料ステージ、試料固定台の構成、及び試料加工方法について鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
【0010】
本発明の試料ホルダー先端部は、試料と、前記試料を搭載する先端部とを有する試料ホルダー先端部であって、前記先端部の回転軸と、前記試料の回転軸とが略一致することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の試料ホルダー先端部の好ましい実施態様において、前記試料が、前記試料の回転軸を中心とした柱状であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の試料ホルダー先端部の好ましい実施態様において、前記柱状が、多角柱であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の試料ホルダー先端部の好ましい実施態様において、前記先端部の中で前記試料を搭載する部分が、ニードルであり、ニードルの回転軸と、前記試料の回転軸とが略一致することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の試料ホルダー先端部の好ましい実施態様において、前記試料ホルダー先端部が、着脱可能であることを特徴とする。
【0015】
本発明の試料ホルダーは、本発明の試料ホルダー先端部を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、ホルダー本体と、前記ホルダー本体の長手方向に直交する軸回りに回転可能な軸傾斜機構とを有し、前記軸傾斜機構が、前記長手方向に直交する所望の軸回りに回転させるための駆動フレームと、前記駆動フレームへ接続されるリンク部材とを有し、前記リンク部材が、少なくとも2つの支点を介して前記ホルダー本体へ固定されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の試料ホルダー先端部の製造方法は、試料を切りだす工程と、試料ホルダー先端部の試料搭載部分へ、前記切りだした試料を取り付ける工程と、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程とからなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の試料ホルダー先端部の製造方法の好ましい実施態様において、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程において、前記試料搭載部分の回転軸を中心として、試料を回転させながら、試料を削ることにより前記柱状を得ることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の試料ホルダー先端部の製造方法の好ましい実施態様において、前記柱状が、多角柱であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、補正修正することなく、実際に観察できる領域を従来より拡大することが可能であるという有利な効果を奏する。また、本発明によれば、ホルダー回転軸(厳密にいえば、ホルダー先端部の試料搭載部分、例えば、針、ニードル等の回転軸)と、試料回転軸とが略同一軸にあるため、上下の余計な試料の厚みによる入射波側、透過波側へのファクターが像に影響をほとんど及ぼさないという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施態様における試料ホルダー先端部の一例を示す図である。
【図2】図2は、試料中の観察したい場所を示す図である。
【図3】図3は、切りだした後の試料片の概略を示す図である。
【図4】図4は、ニードル部(針部)へ試料片を取り付けた後の模式図を示す。
【図5】図5は、試料を作成する加工法の一例を示す図である。
【図6】図6は、試料ホルダー先端部に、取り付けられた試料片を示す図である。
【図7】図7は、試料ホルダー先端部に、取り付けられた円柱状試料を示す図である。
【図8】図8は、観察したい試料の回転軸と、試料ホルダーの回転軸とがずれている場合を示す図である。
【図9】図9は、本発明の構成の一例を示すβ傾斜軸方向から見たβ軸駆動構成の概念図である。
【図10】図10は、本発明の構成の一例を示す試料ホルダー先端部の斜視図である。
【図11】図11は、本発明の構成の一例を示す試料ホルダー先端部の斜視図である。
【図12】θ回転軸部の基本構造の立体覗図である。
【図13】θ回転軸部の軸受け部を、軸方向から視た断面図である。
【図14】本発明の構成の一例を示すクランプ機構と披試料固定台を保持する試料押さえとの接続部に被試料固定台のセンター位置を芯とする円弧の接合面をあらわした図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の試料ホルダー先端部は、試料と、前記試料を搭載する先端部とを有する試料ホルダー先端部であって、前記先端部の回転軸と、前記試料の回転軸とが略一致する。まず、本発明における試料ホルダーとは、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope)(STEM)などの電子顕微鏡に主として使用されているものを例示することができる。試料は、これら電子顕微鏡の観察用に提供されるものであり、試料ホルダーは、当該試料を搭載する先端部を有する。本発明において、先端部の回転軸とは、例えば、針、ニードル状の先端部である場合には、当該針又はニードルの長手方向を軸として、当該軸回りに回転する軸をいう。
【0023】
試料ホルダー回転軸(試料ホルダー先端部の回転軸)を中心として360°回転させた場合、例えば、試料柱の断面中心にフォーカスを求めた場合、入射側および、透過側の厚みによるファクターはすべて一定で 観察できるという観点から、試料ホルダー先端部の回転軸と、試料の回転軸とが略一致することが望ましい。すなわち、本発明の試料ホルダー先端部を用いれば、ホルダー回転軸上に柱状試料回転軸があり、柱状試料回転軸が偏芯しないため、柱状試料回転軸に対しどの傾斜角度で撮影しても条件が整い、連続的な傾斜像の取得に有利であるという効果を奏することになる。
【0024】
したがって、試料柱の断面中心にフォーカスを求めた場合には、試料の回転中心から試料外側の面までの距離が等距離になるように、円柱状の試料を試料ホルダー先端部に設置して、当該試料ホルダーの回転軸と、円柱状の試料の回転軸とを略一致させることが好ましいということになる。
【0025】
また、本発明の試料ホルダー先端部の好ましい実施態様において、前記試料が、前記試料の回転軸を中心とした柱状であることを特徴とする。試料の回転軸を中心とした柱状とすると、入射側および、透過側の厚みによるファクターはすべて一定で観察できるというメリットがある。補正修正等なしに、より正確な電子線トモグラフィー観察を行うのに都合がよい試料となる。好ましい実施態様において、前記柱状が、多角柱であることを特徴とする。これは、理想的には、円柱状の試料が好ましいのであるが、円柱状としなくても、多角柱であれば、例えば、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱、八角柱、・・・・等の多角柱であっても、試料回転中心からの位置が大幅にずれないことから、依然として有利である。特に、形状が八角柱以上ともなれば、ほぼ円柱状に近い形となり、試料作製作業時間も短縮でき、利点が多い。
【0026】
本発明の試料ホルダー先端部の好ましい実施態様において、前記先端部の中で前記試料を搭載する部分が、ニードル(針)であり、ニードル(針)の回転軸と、前記試料の回転軸とが略一致することを特徴とする。また、好ましい実施態様において、前記試料ホルダー先端部が、着脱可能であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の試料ホルダーは、上述した本発明の試料ホルダー先端部を有することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、ホルダー本体と、前記ホルダー本体の長手方向に直交する軸回りに回転可能な軸傾斜機構とを有し、前記軸傾斜機構が、前記長手方向に直交する所望の軸回りに回転させるための駆動フレームと、前記駆動フレームへ接続されるリンク部材とを有し、前記リンク部材が、少なくとも2つの支点を介して前記ホルダー本体へ固定されていることを特徴とする。このような2軸傾斜可能な試料ホルダーを用いれば、上述のように、試料ホルダーの回転軸と、試料の回転軸とがずれていても、補正修正により、所望の像を求めることができる利点を有する。
【0029】
本発明の試料ホルダー先端部に適用できる試料ホルダーは特に限定されず、既存の試料ホルダーに適用することができる。試料ホルダーとして、2軸傾斜可能な試料ホルダーを以下に説明するが、本発明の試料ホルダー先端部は、これら2軸傾斜可能な試料ホルダーに限定して適用できるものではなく、既存の試料ホルダーに例外なく設置可能であり、本発明の試料ホルダー先端部を用いれば、修正補正せずに、所望の電子線トモグラフィ―観察用画像を高精度で得ることができる。
【0030】
試料ホルダーの例として、ホルダー本体と、試料を保持するための試料固定台と、前記ホルダー本体の長手方向に直交する軸回りに回転可能な軸傾斜機構とを有し、前記軸傾斜機構は、前記長手方向に直交する所望の軸回りに回転させるための支点保持部材とは無関係に軸傾斜可能な機構を有するものを挙げることができる。
【0031】
ホルダー本体の材質は、ホルダー自体の機械的な強度を確保できれば特に限定されることはない。試料固定台は、試料を保持するためのもので、試料押さえなどを用いて試料を固定してもよい。この場合、試料は、試料固定台及び試料押さえとの間に挟まれて保持される。また、試料固定台は、試料を保持できれば、特に形状、材質等は限定されない。例えば、長方形、正方形などの多角形、円形など種々の形状を採用できる。好ましい実施態様において、前記試料固定台は、ホルダー本体と脱着可能である。従来では、試料固定台と支点保持部材とは組み込まれて一体として製造されており、試料固定台のみを脱着して別の試料台に容易に交換することができなかったが、本発明の態様によれば、容易に交換可能である。
【0032】
ホルダー本体の長手方向に直交する軸回りに回転可能な軸傾斜機構は、支点保持部材とは無関係に軸傾斜可能である。言い換えれば、本発明において、回転させようとする軸を保持する支点保持部材は、必ずしも必要ではない。これにより、本発明において、支点保持部材の使用をカットすることができたので、ホルダー本体の長手方向に平行な軸(ホルダー軸ともいう)回りに回転させるときに、支点保持部材が障壁とならず、軸傾斜範囲を大幅に改善することができるという優れた効果を有する。
【0033】
また、前記軸傾斜機構は、好ましくは、前記長手方向に直交する所望の軸位置を焦点面で保ちながら傾斜可能である。このように所望の軸位置を焦点面で保ちながら、傾斜できることにより、試料固定台が、ホルダー軸方向へ平行移動したとしても、その移動分を例えば試料ステージにて試料ホルダー軸方向に補正駆動することができるので、正確な測定が引き続き可能である。
【0034】
好ましい実施態様において、前記軸傾斜機構は、前記長手方向に直交する所望の軸回りに回転させるための駆動フレームを有する。さらに、好ましい態様において、前記駆動フレームが前記試料固定台と接続されていることを特徴とする。
【0035】
例えば、前記駆動フレームは、軸として回転可能な少なくとも1つの支点と、前記駆動フレーム内で位置移動可能な支点とを有することにより、ホルダー本体の長手方向に直交する所望の軸回りに回転させることが可能である。また、好ましい実施態様において、前記軸傾斜機構は、前記駆動フレームへ接続されるリンク部材を有してもよい。例えば、ホルダー本体内の部材による往復運動を最終的に軸回りの傾斜運動に変換させる場合には、リンク部材を通じて運動の伝達を行うことが可能である。一例を挙げれば、前記リンク部材が、前記ホルダー本体へ固定された支点を有し、前記駆動フレームの支点を介して接続することにより、ホルダー本体内の部材による往復運度を傾斜運動へ変換可能である。当該リンク部材は、1つ又は複数からなることができ、特に限定されるものではない。また、前記リンク部材は、ホルダー軸上に支点を有していてもよい。
【0036】
このようにして、試料固定台は、前記ホルダー軸上に存在する仮想の支点を中心として、前記長手方向に直交する所望の軸回りに傾斜することが可能である。
【0037】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記ホルダー本体が、前記ホルダー軸回りに回転可能な軸傾斜機構を有する。これは、電子顕微鏡の電子線光軸上に置かれた試料の特性X線分析や、三次元画像解析のための連続的傾斜像を取得の際、試料台を電子線光軸に対し任意に傾斜させるには、試料ホルダーは、試料ホルダー軸のα傾斜軸(以降α傾斜と記す)に回転させるが、結晶性試料などの場合、β軸傾斜を補償することが必要となるので、β軸傾斜機構(以降β傾斜と記す)を備える必要があることからである。
【0038】
さらに、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、電子顕微鏡の試料駆動装置に観察試料を装填するための試料ホルダーの軸上傾斜機構(以降α傾斜と記す)に直交する軸傾斜機構(以降β傾斜と記す)において、β軸傾斜軸上に支点軸を保持する部材を必要とせずに、β傾斜軸位置を焦点面で保ちながら傾斜する。
【0039】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、β軸傾斜軸上に支点軸を保持する部材を必要としないことにより、電子線光軸上に置かれた試料から発生する特性X線を当該電子顕微鏡にとりつけられたX線分析装置間の放出経路おいて、当該部材による障壁が軽減できることを特徴とする。
【0040】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、β軸傾斜軸上に支点軸を保持する部材を必要としないことにより、試料を固定する台のみを容易に取り替え可能な構造とすることを特徴とする。
【0041】
適用可能な試料ホルダーをより詳細に説明するために、以下では、図面を用いて本発明の一例を説明するが、本発明は下記例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0042】
図9、及び図10のように、β傾斜軸33の傾斜駆動の機構として、ホルダー本体21aの先端に設けたフレーム部材21に固定したピン26を支点とする部材22の駆動力点32を34の回転方向に駆動することにより、部材21に固定したピン27を支点とした部材23及び部材24に伝達され、ピン30とピン31位置が移動することで部材25(試料固定台を含む。)が駆動し、β傾斜軸33は試料ホルダー軸38上を保ちながら傾斜する。この例では、回転を用いて34の回転方向へ駆動して、β傾斜させているが、その他の遠方操作によって、実質的に回転軸の支点保持部材を有することなしに、傾斜させることができれば、本発明は特に限定されることはない。
【0043】
なお、34の方向へ回転運動させるための手段としても特に限定されることはなく、例えば、棒状の部材によって、ホルダー軸方向に平行な往復運動をさせることによっても回転運動させることが可能である。
【0044】
フレーム部材21に固定したピン27を軸とした部材24を回転駆動した際、部材24に取り付けたピン30の位置移動によりβ傾斜軸33は、部材25の傾斜と共にホルダー軸方向に平行移動するが、その移動分を試料ステージにて試料ホルダー軸方向に補正駆動することで、光軸10上でもβ傾斜軸33の傾斜が可能である。
【0045】
これにより、P-P上極13およびP-P下極14の空間ギャップを有効に使うことができるため、α傾斜軸の傾斜範囲大きく確保できる。
【0046】
図9の部材25を、図10のように、試料傾斜駆動フレームアーム部材35と試料台部材(試料固定台)36に分割することで、試料台部材36の部材のみを脱着可能とすることで任意材質や形状の部材に交換できる。
【0047】
なお試料駆動フレームアーム部材35と試料固定部材36の連結にネジ37を用いているが、連結可能な機構なら特に当該構造である必要はなく、例えば、フレームアーム部材35先端をピンセット型構造、つまり試料固定部材36を挟み込む構造にすることで、試料固定部材36のみを、光軸に直交する、面上に対し、回転させて挟むことも可能である。
【0048】
駆動力点32への駆動力の入力においては、試料ホルダーの本体内21aに同軸上に空けられた孔に、先端を楔形状に斜面加工した駆動力の入力用棒部材39を、試料ホルダーの本体の対して挿入することで駆動力点32持ち上げ、逆に当該部材39を引き出す場合には、スプリング40の力で駆動力点32押し戻すことで、試料傾斜駆動フレームアーム35を駆動するが、駆動力の入力手段、及び入力を駆動力点32への伝達する際の構造を限定する必要はない。
【0049】
本発明の試料ホルダー先端部の製造方法は、試料を切りだす工程と、試料ホルダー先端部の試料搭載部分へ、前記切りだした試料を取り付ける工程と、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程とからなることを特徴とする。まず、試料を切り出す工程において、切りだす手段等については、常法により特に限定されない。例えば、FIB(収束イオンビーム)等を利用して試料を切り出すことができる。また、切りだした試料を、試料ホルダー先端部の試料搭載部分への取り付けについても、常法により特に限定されない。次いで、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする。これによって、試料ホルダー、ひいては試料ホルダー先端部の回転軸と、試料の回転軸とを略一致させることが可能となる。試料ホルダー先端部の回転軸と、試料の回転軸とを略一致させることにより、ホルダー回転軸上に柱状試料回転軸があり、柱状試料回転軸が偏芯しないため、柱状試料回転軸に対しどの傾斜角度で撮影しても条件が整い、連続的な傾斜像の取得に有利であるという効果を奏することになる。好ましい実施態様において、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程において、前記試料搭載部分の回転軸を中心として、試料を回転させながら、試料を削ることにより前記柱状を得ることができる。
【0050】
本発明の試料ホルダー先端部の製造方法の好ましい実施態様において、前記柱状が、多角柱である。
【0051】
また、本発明の電子顕微鏡用試料の加工方法は、試料ホルダー先端部の試料搭載部分へ試料を取り付ける工程と、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を回転させて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程とからなることを特徴とする。本発明の試料は、主として、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope)(STEM)などの電子顕微鏡等に用いることができる。まず、試料を切り出す工程において、切りだす手段等については、常法により特に限定されない。例えば、FIB(収束イオンビーム)等を利用して試料を切り出すことができる。また、切りだした試料を、試料ホルダー先端部の試料搭載部分への取り付けについても、常法により特に限定されない。次いで、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする。これによって、試料ホルダー、ひいては試料ホルダー先端部の回転軸と、試料の回転軸とを略一致させることが可能となる。試料ホルダー先端部の回転軸と、試料の回転軸とを略一致させることにより、ホルダー回転軸上に柱状試料回転軸があり、柱状試料回転軸が偏芯しないため、柱状試料回転軸に対しどの傾斜角度で撮影しても条件が整い、連続的な傾斜像の取得に有利であるという効果を奏することになる。好ましい実施態様において、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程において、前記試料搭載部分の回転軸を中心として、試料を回転させながら、試料を削ることにより前記柱状を得ることができる。好ましくは、前記柱状が多角柱である。
【0052】
以下では、図を参照して、本発明の試料ホルダー先端部、試料ホルダー、及び試料ホルダー先端部の製造方法を説明するが、本発明は、これらに限定解釈されることを意図するものではない。
【0053】
図1は、本発明の試料ホルダー先端部の一部を示す図である。図中、1はニードル部(針部)、2は試料(八角柱)、3は試料断面を示す。図1は、本発明の製造方法による最終的な柱状試料の完成図の一例を示している。この例においては、FIB chamber stubsを用いているが、特に限定されない。本作製プロセスによる柱状試料の形状は、八角柱をしておりほぼ円柱状の形と言うことができる。本作製プロセスの利点について言及すると、試料ホルダー回転軸を中心として360°回転させた場合、例えば、試料柱の断面中心にフォーカスを求めた場合、入射側および、透過側の厚みによるファクターはすべて一定で観察できる。つまり、ホルダー回転軸上に柱状試料回転軸があり、柱状試料回転軸が偏芯しないため、柱状試料回転軸に対しどの傾斜角度で撮影しても条件が整い、連続的な傾斜像の取得に有利となる。
【0054】
まず、切りだしをFIB技術を用いて行った場合を例にして、図を用いて説明する。図2は、試料中の観察したい場所を示す図である。図2中、4は元の試料サンプル、5は試料(試料片)である。元となる試料サンプル4から、所望の場所の観察したい試料片5を切りだす。すなわち、観察したい試料から従来のFIBによるマイクロサンプリングを用いて、観察したい場所を適当な大きさで試料片として切り出す。例えば、FIB技術を用いた場合、この切り出し工程にて大まかに切り出した部位(被試料)は、TEMの試料ホルダーに装着可能な被試料を支持する部材(以降、被試料固定台、ニードル、針等)へ移し換える為に、DB−FIBの備え付けられたプローブ制御機構を用い、プローブの先端を大まかに切り出した部位(被試料)に接触させ、接触部をイオンビームにてディポジション接合させることができる。
【0055】
図3は、切りだした後の試料片の概略を示す図である。図3中、5は試料(試料片)である。
【0056】
試料片5のニードル(針)部への取り付け工程の一例は、以下のようである。図4は、ニードル部(針部)へ試料片を取り付けた後の模式図を示す。1はニードル部(針部)、5は試料(試料片)、6は試料片を正面から見た様子、7は試料ホルダー回転軸(試料ホルダー先端部の回転軸。α又はX軸ともいう。)、8は試料回転軸、9はFIB Chanber Stub(FIBチャンバースタブ)、10は試料押さえ部材のクランプ部、11は試料ホルダー先端部、12は試料固定台をクランプして回転するθ回転軸をそれぞれ示す。写真右上図の○で囲んだ部分の拡大図が、図4の下図で示されている。試料ホルダー先端部の回転軸7と、試料の中心軸8とがずれている様子が分かる。切り出した試料片5をFIB装置に付属しているオムニプローブでNeedle CFSのNeedle部先端へ取り付けることができる(図4参照)。
【0057】
柱状試料の切り出しの例は、以下のようである。図5は、試料を作成する加工法の一例を示す図である。5は試料(試料片)、6は試料片を正面から見た様子、13はイオンビームを示す。本柱状試料作製プロセスで用いるFIB Chamber Stubsは、45°ずつ回転する機構になっている。図5のように、回転させるごとに両側をIon Beam(緑線)で削っていく作業を数回繰り返すことで八角柱(図1)を作製できる。
【0058】
図11は、本発明の構成の一例を示す試料ホルダー先端部の斜視図である。20は電子顕微鏡の電子線光軸、21はフレーム部材(試料ホルダー主軸21aの先端に設けた一体の部材)、21aは試料ホルダー主軸、22はリンク部材1、33はβ回転軸位置、35はβ傾斜駆動フレームアーム、37は試料台とβ傾斜駆動フレームアームを連結固定するネジ(ホルダー先端部)、38はホルダー挿入軸及びα傾斜軸、39は駆動力の入力用棒部材(駆動力点を押し上げるため部材)、40はスプリング(駆動力点を押し下げるため部材)である。図5に示すように作製された試料ホルダー先端部は、たとえば、37のように試料ホルダーに組み込まれて試料ホルダーを構成することができる。
【0059】
ここで、本発明に用いた収束イオンビーム装置の一例について、補足説明すると以下のようである。今回用いたFIB装置は、被試料を取り付けた被試料固定台をFIB装置に既存する5軸(X軸、Y軸、Z軸、ローテーション軸、ユーセントリック傾斜軸を指す)駆動機構に対し新たな軸(θ軸ともいう。)、つまりFIB光軸上に対して、直行するアジマス軸上にて最低180°回転(反転)可能な軸機構を組みこんだものを用いている。
【0060】
これによれば、既存の5軸ステージのローテーション軸を180°回転させることで、試料の両面を、SEM観察監視可能下のもとでFIB照射によるエッチング薄膜化処理が可能となる。θ軸回転機構の回転軸は、任意の回転角度位置に停止し保持することが可能とする事で、ステッピングモーターや制御装置を削除できるので、利用者へのコスト負担を軽減できる効果を有する。
【0061】
上記説明において、ステッピングモーターや制御装置は不要だが、θ軸回転機構の回転軸部をステッピングモーターにて任意の角度に回転、停止可能な機構構成も可能であるので本発明は、ステッピングモーターや制御装置の有無には言及しない。
【0062】
本発明に適用可能なFIB装置の一例を示せば、当該装置は、FIB装置内に既存する試料ステージに追加、および脱着可能なθ回転機構において、図12に示すように、ねじ頭状の溝つきノブ部60をドライバーや指で回すことで、試料5をデポジット接続した試料固定台又はニードル等は、回転機構の軸受け部61に組み込まれたθ回転軸57を介して回転可能であり、図13に示す様に回転部の構造は、θ回転軸57に特定の角度に切り出したθ回転軸の回転位置基準面65と軸受け部61に設けたV溝基準面66に収まり、θ回転軸角度保持が可能な構造を有する。
【0063】
なお図13に示す押さえフック62は、引きバネ68を介しV溝66と引き合っているので、その中に挟まったθ軸回転軸57は、軸受けフレーム59との接触部位に設けたV溝基準面66に押し当てられ、さらに押さえフック62にもV溝基準面66と同等の角度を設けることで、θ軸回転軸57は、任意の正確な回転角度にてさらに安定的停止、及び保持が可能である。
【0064】
なお、θ軸回転機構の構成は、図13で示す様に、θ軸回転する軸57に回転位置基準面65面を8面(45°度分割)設けているが、その分割数は、適選な4面(90°度分割)や6面(60°分割)など、任意の多様な回転基準面65を設け、それに伴い軸受けフレーム59のV溝基準面66の角度を変更し組み合わせることが可能となるので、θ軸回転軸57の分割数を特に限定されることを意図するものではない。
【0065】
また本発明の態様によれば、図14のクランプ機構は、θ回転軸57及びクランプ部材58にて、試料固定台を保持する試料押さえ56との接続部に試料の中心位置を芯とする円弧の接合面69を設けることで、クランプの際に被試料センター位置の軸ズレを最小に抑える効果があり、なお接合面69の形状はV型など試料固定台の中心を交点とするラジアル方向上で接続軸に対称な構造なら、特に円弧に限定されることを意図するものではない。
【0066】
なお図14のクランプ機構において回転軸57及びクランプ部材58の開閉構造は、ネジやクリップで良く、また試料固定台を挟む上下の試料押さえ(試料ホルダー先端部の一種)56又は試料ホルダー先端部の固定は、ネジやクリップまたは接着剤でも良いので、固定方法に対し特に限定されることを意図するものではない。
【0067】
本発明の態様によれば、図14の試料固定台は、試料押さえ56を介しクランプ機構部本体と脱着可能であるので、試料固定台は試料押さえ56と共に容易に交換可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
近年、透過型電子顕微鏡TEMを利用してナノレベルの構造観察や、X線分析、及び三次元解析など多様な利用方法が可能になってきたが、それに伴いTEM試料作成技術も重要な課題となっており、本技術は、広範な分野において応用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 ニードル部(針部)
2 試料(八角柱)
3 試料断面
4 元の試料サンプル
5 試料(試料片)
6 試料片を正面から見た様子
7 試料ホルダー回転軸(試料ホルダー先端部の回転軸)
8 試料回転軸
9 FIB Chanber Stub(FIBチャンバースタブ)
10 試料押さえ部材のクランプ部
11 試料ホルダー先端部
12 試料固定台をクランプして回転するθ回転軸
13 イオンビーム
14 観察できる領域
20 電子顕微鏡の電子線光軸
21 フレーム部材(試料ホルダー主軸21aの先端に設けた一体の部材)
21a 試料ホルダー主軸
22 リンク部材1
23 リンク部材2
24 リンク部材3
25 リンク部材4 (β傾斜試料台フレームアーム)
26 固定ピン1
27 固定ピン2
28 移動ピン1
29 移動ピン2
30 組み付けピン1
31 移動ピン3
32 駆動力点
33 β回転軸位置
34 駆動力点の動き
35 β傾斜駆動フレームアーム
36 試料台
37 試料台とβ傾斜駆動フレームアームを連結固定するネジ
38 ホルダー挿入軸 及びα傾斜軸
39 駆動力の入力用棒部材 (駆動力点を押し上げるため部材)
40 スプリング (駆動力点を押し下げるため部材)
51 試料固定台
54 FIB光軸(エッチング、及びデポジット処理)方向
55 SEM観察軸(観察可能方向)
56 試料固定台を挟む試料台押さえ部材
57 試料固定台クランプして回転するθ回転軸
58 試料押さえ部材のクランプ部(の爪)
59 試料固定台のフレーム本体、およびθ軸受け台座
60 ねじ溝が刻まれたθ回転軸のノブ
61 θ回転軸の軸受け部
62 θ回転軸を押さえ付けるための部材(押さえフック)
63 既存ステージのローテーション軸
64 既存ステージと連結するためのスタブピン
65 θ回転軸の回転位置基準面
66 θ回転軸の軸受け相当するV溝基準面
67 θ回転軸を押さえ付けるための部材の支点
68 θ回転軸を押さえ付けるための部材を引き付けるスプリング
69 円弧に加工された試料台押さえ部材とθ回転軸のクランプ部の接合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と、前記試料を搭載する先端部とを有する試料ホルダー先端部であって、前記先端部の回転軸と、前記試料の回転軸とが略一致することを特徴とする試料ホルダー先端部。
【請求項2】
前記試料が、前記試料の回転軸を中心とした柱状である請求項1記載の試料ホルダー先端部。
【請求項3】
前記柱状が、多角柱である請求項2記載の試料ホルダー先端部。
【請求項4】
前記先端部の中で前記試料を搭載する部分が、ニードルであり、ニードルの回転軸と、前記試料の回転軸とが略一致することを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の試料ホルダー先端部。
【請求項5】
前記試料ホルダー先端部が、着脱可能である請求項1〜4項のいずれか1項に記載の試料ホルダー先端部。
【請求項6】
請求項1〜5項のいずれか1項に記載の試料ホルダー先端部を有することを特徴とする試料ホルダー。
【請求項7】
ホルダー本体と、前記ホルダー本体の長手方向に直交する軸回りに回転可能な軸傾斜機構とを有し、前記軸傾斜機構が、前記長手方向に直交する所望の軸回りに回転させるための駆動フレームと、前記駆動フレームへ接続されるリンク部材とを有し、前記リンク部材が、少なくとも2つの支点を介して前記ホルダー本体へ固定されていることを特徴とする請求項6記載の試料ホルダー。
【請求項8】
請求項1〜5項のいずれか1項に記載の試料ホルダー先端部の製造方法であって、試料を切りだす工程と、試料ホルダー先端部の試料搭載部分へ、前記切りだした試料を取り付ける工程と、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程とからなる試料ホルダー先端部の製造方法。
【請求項9】
前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程において、前記試料搭載部分の回転軸を中心として、試料を回転させながら、試料を削ることにより前記柱状を得ることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記柱状が、多角柱である請求項7又は8項に記載の方法。
【請求項11】
試料ホルダー先端部の試料搭載部分へ試料を取り付ける工程と、前記試料搭載部分の回転軸に合わせて、前記試料を回転させて、前記試料を加工して、前記試料を回転軸を中心とした柱状にする工程とからなる電子顕微鏡用試料の加工方法。
【請求項12】
前記柱状が、多角柱である請求項11記載の方法。

【図3】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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