説明

試料ホルダ

【課題】測定光を透過させる分析が可能で、試料の変形や汚染を防止可能な試料ホルダを提供すること。
【解決手段】表面の試料支持面(2b)に試料(S)が支持され且つ表面側から裏面側に延びる複数の吸引孔(2a)が形成された光学透過材料製の試料支持部材(2)と、前記複数の吸引孔(2a)が接続され且つ前記試料支持部材(2)の表面側に対して負圧に排気された減圧空間(K)を有し、前記試料支持部材(2)を支持する減圧空間形成部材(4)と、を備えた試料ホルダ(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光等の測定光が入射される試料を保持する試料ホルダに関し、特に、測定光が試料および試料ホルダを透過する測定が可能な前記試料ホルダに関する。
本発明の試料ホルダは、顕微分析又は分光分析等に使用される測定光の光路中に着脱自在に装着して使用される。
【背景技術】
【0002】
従来、試料を分析する際に使用される試料ホルダとして、次の(J01),(J02)の技術が知られている。
(J01)特許文献1(特開平9−61319号公報)記載の技術
特許文献1には、紙や布などの平面上で薄い試料表面の光学特性を測定するために、試料が表面に支持される金網のようなメッシュ状支持体(12)と、メッシュ状支持体(12)が支持され且つ内部が排気される試料台枠(11)とを有する試料ステージを使用して、試料をメッシュ状支持体(12)に圧力差により吸着して保持する技術が記載されている。
【0003】
(J02)特許文献2(特開平9−15213号公報)記載の技術
特許文献2には、サンプルが光を吸収したことに起因するサンプルの体積変化により発生する音響信号を計測する光吸収計測装置用のサンプルホルダーに関し、パイプ状のサンプルホルダー(1)の内部を排気して減圧すると共に、Oリングのような弾性支持部材(2)を介して、円板状のサンプル(7)を吸引して支持する技術が記載されている。また、前記特許文献2には、音響検出において雑音(ノイズ)の影響を低減するために、サンプル(7)を通過した後の入射光(6)の光路に、何も配置しないようにしたり、音を伝えにくい弾性体(9)を配置したり、光を吸収しにくい(透過しやすい)合成石英ガラス(34)を配置することも記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−61319号公報(段落番号「0006」、第1図、第2図)
【特許文献2】特開平9−15213号公報(段落番号「0019」〜「0027」、「0041」、第1図、第2図、第4図、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術(J01)では、金網のような金属体を使用すると、入射光が金網で遮断されてしまう恐れがある。したがって、従来技術(J01)記載の技術では、試料表面での反射光を利用する分析には使用可能であるが、透過光を利用する分析には十分な光量が取れないため使用できない問題がある。
前記従来技術(J02)では、Oリングのような弾性支持部材を介してパイプ状のサンプルホルダーに支持する構成では、中央部が吸引され、周縁部がOリングで支持されるため、吸引された中央部が湾曲してしまい、試料が変形する恐れがある。また、試料が小さい場合には利用できない。
【0006】
従来のFT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy:フーリエ変換赤外分光法)のような透過光を利用する分析法の装置では、試料は、両面テープやガム等で試料ホルダに保持されたり、ネジや板バネ等で挟み付けて試料ホルダに固定されていることが一般的であった。しかし、両面テープ等を使用すると粘着剤が試料や試料ホルダに付着し、試料や試料ホルダが汚れてしまうという問題があった。また、ネジ等を使用すると試料が変形する恐れがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、前述の事情に鑑み、測定光を透過させる分析が可能で、試料の変形や汚染を防止可能な試料ホルダを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、前記課題を解決するために案出した本発明の構成を説明するが、本発明の構成要素には、後述の実施例の構成要素との対応を容易にするため、実施例の構成要素の符号をカッコで囲んだものを付記している。なお、本発明を後述の実施例の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施例に限定するためではない。
【0009】
(本発明)
前記技術的課題を解決するために、請求項1記載の試料ホルダ(1,1′,1″,41)は、
表面の試料支持面(2b)に試料(S,S1,S2,S3)が支持され且つ表面側から裏面側に延びる複数の吸引孔(2a)が形成された光学透過材料製の試料支持部材(2,2′,2″)と、
前記複数の吸引孔(2a)が接続され且つ前記試料支持部材(2,2′,2″)の表面側に対して減圧された減圧空間(K)を有し、前記試料支持部材(2,2′,2″)を支持する減圧空間形成部材(4,11,11″)と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
(本発明の作用)
前記構成要件を備えた請求項1記載の試料ホルダ(1,1′,1″,41)は、光学透過材料製の試料支持部材(2,2′,2″)の表面の試料支持面(2b)には、試料(S,S1,S2,S3)が支持される。前記試料支持部材(2,2′,2″)には、表面側から裏面側に延びる複数の吸引孔(2a)が形成されている。前記試料支持部材(2,2′,2″)を支持する減圧空間形成部材(4,11,11″)は、減圧空間(K)を有する。前記減圧空間(K)は、前記複数の吸引孔(2a)が接続され、且つ、前記試料支持部材(2,2′,2″)の表面側に対して減圧されている。
したがって、試料支持面(2b)に支持された試料(S,S1,S2,S3)は、減圧された減圧空間(K)に接続された吸引孔(2a)により吸引され、試料支持面(2b)に吸着、保持される。この結果、試料(S,S1,S2,S3)は、試料支持面(2b)により面で保持され且つ圧力差で吸着されるため、試料(S,S1,S2,S3)の変形や粘着剤を使用することによる汚染を防止することができる。また、試料支持面(2b)を構成する試料支持部材(2,2′,2″)が光学透過材料により構成されているため、透過光の損失が低く、透過光を利用した分析を行うことができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の試料ホルダ(1,41)において、
試料(S,S1,S2,S3)を測定する測定光(L)を透過させる透過材料製の前記減圧空間形成部材(4)、
を備えたことを特徴とする。
前記構成要件を備えた請求項2記載の発明では、前記減圧空間形成部材(4)が試料(S,S1,S2,S3)を測定する測定光(L)を透過させる透過材料製であるため、測定光(L)の光路上に減圧空間形成部材(4)を配置することができ、減圧空間形成部材(4)を透過した測定光(L)を利用して分析を行うことができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の試料ホルダ(1′,1″)において、
前記試料支持部材(2,2′,2″)に対向離隔して配置された光学透過材料製の底部材(12,12″)と、前記試料支持部材(2,2′,2″)と前記底部材(12,12″)との間に配置された壁部材(13,13″)と、を有する前記減圧空間形成部材(11,11″)であって、前記底部材(12,12″)と前記壁部材(13,13″)と前記試料支持部材(2,2′,2″)とに囲まれた空間により構成された前記減圧空間(K)を有する前記減圧空間形成部材(11,11″)、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記構成要件を備えた請求項3記載の発明では、前記試料支持部材(2,2′,2″)に対向離隔して配置された底部材(12,12″)は、光学透過材料で作製されている。壁部材(13,13″)は、前記試料支持部材(2,2′,2″)と前記底部材(12,12″)との間に配置されている。したがって、底部材(12,12″)が光学透過材料で作製されているため、試料支持部材(2,2′,2″)を通過した透過光が底部材(12,12″)も透過するので、精度の高い透過測定をおこなうことができる。また、底部材(12,12″)と壁部材(13,13″)を別個に作製できるため、作製、組み立てが容易にでき、さらに、壁部材(13,13″)は光学透過材料で作製しなくてもよいため、低コスト化が図れる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の試料ホルダ(1′,41)において、
前記試料支持面(2b)よりも小さい前記試料(S,S1,S2,S3)と、
前記試料(S,S1,S2,S3)が収容される試料収容孔(21a,21b,21c,21d)が形成され且つ、前記試料支持面(2b)と同形またはより大きな外形を有する試料支持面カバー(21,21′)と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
前記構成要件を備えた請求項4記載の発明では、前記試料支持面(2b)と同形の外形を有する試料支持面カバー(21,21′)の試料収容孔(21a,21b,21c,21d)には、試料支持面(2b)よりも小さい試料(S,S1,S2,S3)が収容される。したがって、試料支持面(2b)が試料(S,S1,S2,S3)と試料支持面カバー(21,21′)とによりカバーされるため、試料支持面カバー(21,21′)を設けない場合に比べて、試料(S,S1,S2,S3)の吸着力を確保でき、確実に試料ホルダ(1′,41)に保持できると共に、吸引孔(2a)が塵や埃等で詰まることも防止できる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の試料ホルダ(1′,41)において、
複数の試料(S,S1,S2,S3)の大きさに対応して形成された複数の試料収容孔(21a,21b,21c,21d)を有する前記試料支持面カバー(21′)、
を備えたことを特徴とする。
前記構成要件を備えた請求項5記載の発明では、試料支持面カバー(21′)には、複数の試料(S,S1,S2,S3)の大きさに対応して形成された複数の試料収容孔(21a,21b,21c,21d)が設けられているので、1つの試料支持面カバー(21′)で複数の大きさの試料(S,S1,S2,S3)に対応することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の試料ホルダ(1,1″,41)において、
光学透過材料製の前記試料支持部材(2,2′,2″)を支持する光学透過プレート支持部材(3,3″)と、
前記光学透過プレート支持部材(3,3″)を介して前記試料支持部材(2,2′,2″)を支持する前記減圧空間形成部材(4,11″)と、
を備えたことを特徴とする。
前記構成要件を備えた請求項6記載の発明では、光学透過プレート支持部材(3,3″)は、光学透過材料製の前記試料支持部材(2,2′,2″)を支持する。前記減圧空間形成部材(4,11″)は、前記光学透過プレート支持部材(3,3″)を介して前記試料支持部材(2,2′,2″)を支持する。したがって、試料(S,S1,S2,S3)を支持する部分のみ光学透過材料製の試料支持部材(2,2′,2″)とすることでき、試料ホルダ(1,1″,41)を任意の形状とすることができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の試料ホルダ(1″)において、
複数の前記試料支持部材(2,2′,2″)を支持する前記光学透過プレート支持部材(3″)、
を備えたことを特徴とする。
前記構成要件を備えた請求項7記載の発明では、光学透過プレート支持部材(3″)は、複数の前記試料支持部材(2,2′,2″)を支持するので、一度に複数の試料(S1,S2,S3)を保持することができ、複数の試料(S1,S2,S3)を一度に分析することもできる。
【発明の効果】
【0019】
前述の本発明は、測定光を透過させる分析が可能で、試料の変形や汚染を防止可能な試料ホルダを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の実施例1の試料ホルダの説明図であり、図1Aは試料が支持された状態での平面図、図1Bは試料が支持された状態での正面図である。
図2は本発明の実施例1の試料ホルダの説明図であり、図2Aは試料が支持されていない状態の試料ホルダの側断面図、図2Bは図2Aに示す状態から試料支持部材と減圧空間形成部材とが離隔した状態の説明図、図2Cは試料支持部材と減圧空間形成部材の平面図である。
図1,図2において、測定光としての赤外光を使用するFT−IRで使用可能な実施例1の試料ホルダ1は、試料Sが表面に支持される試料支持部材2を有する。実施例1では、前記試料支持部材2は、円板状の光学透過プレートにより構成されている。前記試料支持部材2は、光学透過材料の一例としてのGe(ゲルマニウム)により構成されており、表面側から裏面側に延びる微細な吸引孔2aが複数形成されている。なお、前記試料支持部材2の表面の試料支持面2bの直径は、広く一般的に使用される試料Sのサイズに合わせて13mmとすることが好適である。また、各吸引孔2aは、支持される試料Sのサイズや重量、排気装置Vの排気性能に応じて変形可能であるが、直径5μm〜100μmとすることができ、20μm〜50μmが好適である。さらに、光学透過材料としては、検出したい波長の透過光に対する透過特性に対応し且つ前記微細な吸引孔2aが形成可能な光学透過材料を選択可能であるが、例えば、ガラス、Ge、サファイア、CaF、BaF、MgF、LiF、KBr、KCl、NaCl,MgO、石英、シリコン、ZnSe、ZnS、GaAs,方解石(CaCO)等が挙げられる。
【0022】
前記試料支持部材2は、金属製の板状の光学透過プレート支持部材3の中央部に接着等により固定支持されている。前記光学透過プレート支持部材3の裏面側には、支持部材2と同じ光学透過プレートの減圧空間形成部材4が貼り合わされている。図2Cにおいて、前記減圧空間形成部材4には、前記試料支持部材2に対応して中央部に形成された凹部4aと、前記凹部4aの後端から後方に延びる排気路4bとが形成されている。前記排気路4bの後端には排気管接続部6が固定支持されている。前記排気管接続部6は、図示しない排気管を介して排気装置V(図1A参照)に接続されている。したがって、図2Aに示すように、前記凹部4aと試料支持部材2の裏面とにより囲まれる空間によって、減圧空間Kが形成される。そして、前記減圧空間Kには、前記試料支持部材2の吸引孔2aが接続され、排気路4bから排気されることで、減圧空間K内部を試料支持部材2の表面側に対して減圧される。
前記符号2〜6を付した部材等により実施例1の試料ホルダ1が構成されている。
【0023】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の試料ホルダ1では、試料支持部材2の表面に試料Sが支持された状態で、排気装置Vにより減圧空間Kの排気を行うことで、圧力差により試料Sが試料支持部材2表面に吸引された状態で保持される。この状態で、測定光L(図1Bの一点鎖線参照)が試料Sに入射されると、試料Sの特性に応じて特定の波長が吸収されて透過する。このとき、測定光Lは、Ge製の試料支持部材2、減圧空間K、測定光に透明な材料(光学透過材料)の減圧空間形成部材4を透過する。
したがって、測定光Lは、透過性が高く且つ光学的な損失が低い光学透過材料や、空間Kを通過するので、透過光を利用して(例えば、分光してスペクトル測定をする等)、試料Sの分析を精度よく行うことができる。また、実施例1の試料ホルダ1では、両面テープ等で接着する従来の場合に比べて、試料Sや試料ホルダ1が粘着剤により汚れることが防止できる。さらに、排気装置Vによる排気を終了するか、試料Sを試料支持部材2の面方向にスライドさせて光学透過プレート支持部材3側に移動させることで容易に試料Sを試料ホルダ1から取り外すことができる。また、実施例1の試料ホルダ1では、試料支持部材2により、試料Sの裏面側の全面が支持されると共に、試料支持部材2に離散的に形成された吸引孔2aで吸引されるため、試料Sが湾曲する等の変形を受けにくく、試料Sの破損を防止することができ、分析後の再利用等が可能となる。また、試料支持部材2を支持する光学透過プレート支持部材3の形状および材料を任意に変更することができるので、使用される分析機器に装着可能な任意の形状とすることができる。
【実施例2】
【0024】
図3は本発明の実施例2の試料ホルダの説明図であり、図3Aは斜視説明図、図3Bは分解された状態の説明図である。
なお、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例2は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
【0025】
図3において、実施例2の試料ホルダ1′は、実施例1の試料ホルダ1と異なり、光学透過プレート支持部材3が省略され、円板状の試料支持部材2の裏面側には、減圧空間形成部材11が支持されている。前記減圧空間形成部材11は、試料支持部材2と対向離隔して配置された底部材12と、底部材12と試料支持部材2との間に配置された円筒パイプ状の壁部材13とを有している。前記底部材12は、試料支持部材2と同様に光学透過材料製で円板状の部材により構成されており、試料支持部材2と異なり吸引孔2aは形成されていない。また、前記壁部材13の側面には、排気装置Vに接続される排気管接続部6が支持されている。
したがって、前記試料支持部材2、壁部材13、底部材12により囲まれた空間により、実施例2の減圧空間Kが構成されており、減圧空間Kは排気管接続部6に接続された排気装置Vにより排気される。
【0026】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2の試料ホルダ1′は、減圧空間Kが排気されて減圧されることにより試料支持部材2の試料支持面2bに試料Sが吸着されて保持され、測定光Lは、試料S、試料支持部材2を透過した後、減圧空間K、光学透過材料製の底部材12を透過する。したがって、実施例2の試料ホルダ1′は、実施例1の試料ホルダ1と同様の作用効果を有する。
また、実施例2の試料ホルダ1′は、底部材12と壁部材13とが別の部材により構成されているので、各部材の加工や組み立てが容易にできる。また、実施例2の試料ホルダ1′では、壁部材13を測定光Lが透過しないので、壁部材13は光学透過材料に限定されず、任意の材料を使用することができ、低コスト化を図ることもできる。
【実施例3】
【0027】
図4は本発明の実施例3の試料ホルダの説明図であり、実施例2の図3Bに対応する図である。
なお、この実施例3の説明において、前記実施例1、2の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例3は、下記の点で前記実施例1、2と相違しているが、他の点では前記実施例1、2と同様に構成されている。
図4において、実施例3の試料ホルダ1′では、試料支持部材2よりも小さい試料Sの分析を行う場合に、試料支持部材2の試料支持面2bには、試料支持面カバー21が支持される。前記試料支持面カバー21は、外径が試料支持部材2と同様の外径に形成され、中央部に試料Sの外径に対応する試料収容孔21aが形成されている。
【0028】
(実施例3の作用)
前記構成要件を備えた実施例3の試料ホルダ1′では、試料支持面2bの表面積よりも小さい試料Sの分析を行う場合、試料支持面カバー21と試料Sとにより試料支持面2bの全面がカバーされる。試料支持面カバー21を設けない場合には、試料Sにより覆われていない部分の吸引孔2aから減圧空間K側への吸引が優位になり、試料Sの吸引が弱くなる恐れや、試料Sにより覆われていない部分の吸引孔2aに塵や埃等が詰まる恐れがあったが、実施例3の試料ホルダ1′では試料支持面カバー21を設けることにより、試料支持面2bよりも小さな試料Sを使用する場合でも、確実に吸着することができ、吸引孔2aが詰まることも防止できる。さらに試料を通過しない測定光を遮断することができるために、精度のよい測定を可能にする。
【実施例4】
【0029】
図5は本発明の実施例4の試料ホルダの斜視説明図ある。
なお、この実施例4の説明において、前記実施例1〜3の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例4は、下記の点で前記実施例1〜3と相違しているが、他の点では前記実施例1〜3と同様に構成されている。
図5において、実施例4の試料ホルダ1″は、板状の光学透過プレート支持部材3″と、角筒状の壁部材13″および板状の底部材12″とを有する減圧空間形成部材11″とを有する。前記光学透過プレート支持部材3″には、試料支持部材2の外径に対応した3つの装着口(装着部)3a,3b,3cが形成されている。前記装着口3a〜3cには、段差が形成されており、段差により試料支持部材2が着脱可能に支持される。前記各装着口3a〜3cには、大サイズ試料用の試料支持部材2、中サイズ試料用の試料支持部材2′、小サイズ試料用の試料支持部材2″または装着口閉塞用のカバー31のいずれかが装着可能に構成されている。
【0030】
前記大サイズ試料用の試料支持部材2は、大サイズの試料S1を吸着するために、全面に吸引孔2aが形成されており、中サイズ試料用の試料支持部材2′は、中サイズの試料S2を吸着するために、中サイズの試料S2の大きさに対応する領域にのみ吸引孔2aが形成されている。同様に、小サイズ試料用の試料支持部材2″は、小サイズの試料S3を吸着するために、小サイズの試料S3の大きさに対応する領域にのみ吸引孔2aが形成され、装着口閉塞用の装着口カバー31には吸引孔2aが形成されていない。
【0031】
(実施例4の作用)
前記構成要件を備えた実施例4の試料ホルダ1″では、実施例1と同様に、試料Sを吸着して保持できると共に、光学透過プレート支持部材3″に試料支持部材2,2′、2″を最大で3つ装着できるので、複数の試料S1〜S3を前もって用意して、順に測定することができる。また、試料S1〜S3のサイズに合わせて試料支持部材2〜2″を交換することができるので、実施例3の場合と同様に、確実に吸着保持できると共に吸引孔2aの詰まりを防止することができる。さらに、例えば、1つまたは2つの試料Sの分析を行う場合には、試料Sが装着されない装着口3a〜3cには、装着口カバー31を装着することで、減圧空間Kを気密に保つことができる。なお、各試料支持部材2〜2″を複数個準備しておくことで、3つとも同じサイズの試料Sの分析を行うこともできる。
【実施例5】
【0032】
図6は本発明の実施例5の試料ホルダの説明図であり、図6Aは試料支持面カバーの平面図、図6Bは試料支持面カバーが使用された状態の説明図である。
なお、この実施例5の説明において、前記実施例1〜4の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例5は、下記の点で前記実施例1〜4と相違しているが、他の点では前記実施例1〜4と同様に構成されている。
図6において、実施例5の試料支持面カバー21′は、装着される試料Sの大きさに対応して、4つの試料収容口21a〜21dが形成されている。
【0033】
(実施例5の作用)
前記構成を備えた実施例5の試料ホルダ1′では、試料支持部材2と同じサイズの試料Sの分析を行う場合には試料支持面カバー21′を使用せずに吸着保持でき、試料支持部材2よりも小さなサイズの試料Sの分析を行う場合には、図6Bに示すように、試料支持面カバー21′を、分析対象の試料Sのサイズに応じて、試料支持部材2の面方向にスライドさせることで、試料Sと試料支持面カバー21′とにより試料支持面2bの全面がカバーできる。この結果、実施例5の試料ホルダ1′は、実施例3と同様に、試料支持面2bよりも小さな試料Sを使用する場合でも、確実に吸着することができ、吸引孔2aが詰まることも防止できる。また、試料Sのサイズに応じて、試料支持面カバーを複数個作成する必要が無く、1つの試料支持面カバー21′を使用して複数のサイズの試料Sに対応することができる。
【実施例6】
【0034】
図7は本発明の実施例6の試料ホルダの説明図であり、図7Aは試料支持面カバーが装着された状態の試料ホルダの平面図、図7Bは図7Aの側面図である。
なお、この実施例6の説明において、前記実施例1〜5の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例6は、下記の点で前記実施例1〜5と相違しているが、他の点では前記実施例1〜5と同様に構成されている。
図7において、実施例6の試料ホルダ41は、実施例1の試料ホルダ1において、光学透過プレート支持部材3の上面に、試料支持部材2を挟んで二対のカバーガイド部材42が固定支持されている。前記カバーガイド部材42の間には、実施例5と同様に構成された試料支持面カバー21′がスライド移動可能に支持されており、左右方向(Y軸方向)にガイドされる。
【0035】
(実施例6の作用)
前記構成を備えた実施例6の試料ホルダ41では、試料支持面カバー21′をガイド部材42に沿って移動させることで、試料Sのサイズに対応する試料収容孔21a〜21dを試料支持部材2の位置に容易に移動させることができる。他に、実施例6の試料ホルダ41は、実施例1,5と同様に作用効果を有する。
【0036】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H05)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、試料ホルダ1,1′、1″、41や試料Sの大きさ、装着口3a〜3cの数、試料収容口21a〜21dの数、吸引孔2aの分布や孔径等は、例示した数値や大きさに限定されず、設計や使用目的等に応じて、任意に変更可能である。
(H02)前記実施例において、試料ホルダ1,1′、1″、41は、試料支持面2bが、水平面になるように支持する場合を例示したが、これに限定されず、鉛直方向に沿った状態で分析機器に装着されたり、傾斜した状態で装着される場合にも適用可能である。
【0037】
(H03)前記実施例において、試料ホルダ1,1′、1″、41は、測定光Lの透過光を利用する分析機器に好適に使用可能であるが、反射光を使用する分析機器(例えば、可視紫外分光法、蛍光分光法、ラマン分光法等の分析機器)の試料ホルダとして使用することも可能である。すなわち、複数の異なる方式で分析を行う分析機器の間で共通した試料ホルダとして使用することも可能である。
(H04)前記実施例において、例えば、減圧空間内に反射鏡を設け、試料支持部材2を透過した光を所定の方向に反射させ、分析に使用することも可能である。
(H05)前記実施例において、減圧空間Kを減圧するために、排気装置Vで排気したが、これに限定されず、光の透過を妨げない範囲で、減圧可能な任意の方法を採用可能である。例えば、吸引孔2aに垂直な方向に高速で流体(水等)を流すことで減圧空間Kを減圧するいわゆるアスピレータを採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は本発明の実施例1の試料ホルダの説明図であり、図1Aは試料が支持された状態での平面図、図1Bは試料が支持された状態での正面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1の試料ホルダの説明図であり、図2Aは試料が支持されていない状態の試料ホルダの側断面図、図2Bは図2Aに示す状態から試料支持部材と減圧空間形成部材とが離隔した状態の説明図、図2Cは試料支持部材と減圧空間形成部材の平面図である。
【図3】図3は本発明の実施例2の試料ホルダの説明図であり、図3Aは斜視説明図、図3Bは分解された状態の説明図である。
【図4】図4は本発明の実施例3の試料ホルダの説明図であり、実施例2の図3Bに対応する図である。
【図5】図5は本発明の実施例4の試料ホルダの斜視説明図ある。
【図6】図6は本発明の実施例5の試料ホルダの説明図であり、図6Aは試料支持面カバーの平面図、図6Bは試料支持面カバーが使用された状態の説明図である。
【図7】図7は本発明の実施例6の試料ホルダの説明図であり、図7Aは試料支持面カバーが装着された状態の試料ホルダの平面図、図7Bは図7Aの側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1′,1″,41…試料ホルダ、
2,2′,2″…試料支持部材、
2…大サイズ試料用の試料支持部材、
2′…中サイズ試料用の試料支持部材、
2″…小サイズ試料用の試料支持部材、
31…装着口閉塞用のカバー、
2a…吸引孔、
2b…試料支持面、
3,3″…光学透過プレート支持部材、
3a,3b,3c…装着部、
4,11,11″…減圧空間形成部材、
4a…凹部、
4b…排気路、
6…排気管接続部、
12,12″…底部材、
13,13″…壁部材、
21,21′…試料支持面カバー、
21a,21b,21c,21d…試料収容孔、
42…カバーガイド部材、
K…減圧空間、
L…測定光、
S,S1,S2,S3…試料、
V…排気装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の試料支持面に試料が支持され且つ表面側から裏面側に延びる複数の吸引孔が形成された光学透過材料製の試料支持部材と、
前記複数の吸引孔が接続され且つ前記試料支持部材の表面側に対して減圧された負圧空間を有し、前記試料支持部材を支持する減圧空間形成部材と、
を備えたことを特徴とする試料ホルダ。
【請求項2】
試料を測定する測定光を透過させる透過材料製の前記減圧空間形成部材、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の試料ホルダ。
【請求項3】
前記試料支持部材に対向離隔して配置された光学透過材料製の底部材と、前記試料支持部材と前記底部材との間に配置された壁部材と、を有する前記減圧空間形成部材であって、前記底部材と前記壁部材と前記試料支持部材とに囲まれた空間により構成された前記減圧空間を有する前記減圧空間形成部材、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の試料ホルダ。
【請求項4】
前記試料支持面よりも小さい前記試料と、
前記試料が収容される試料収容孔が形成され且つ、前記試料支持面と同形の外形を有する試料支持面カバーと、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の試料ホルダ。
【請求項5】
複数の試料の大きさに対応して形成された複数の試料収容孔を有する前記試料支持面カバー、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の試料ホルダ。
【請求項6】
光学透過材料製の前記試料支持部材を支持する光学透過プレート支持部材と、
前記光学透過プレート支持部材を介して前記試料支持部材を支持する前記減圧空間形成部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の試料ホルダ。
【請求項7】
複数の前記試料支持部材を支持する前記光学透過プレート支持部材、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載の試料ホルダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−268059(P2008−268059A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112801(P2007−112801)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(593230855)株式会社エス・テイ・ジャパン (13)
【Fターム(参考)】