説明

試料作製方法および試料作製装置

【課題】 TEM観察などに適した良好な薄膜試料を確実に作製できる試料作製方法および試料作製装置を提供する。
【解決手段】 高輝度画素抽出手段10は、撮像手段8で撮像された試料像に対して、所定のしきい値Kより大きな強度を有し、且つ試料の薄膜化に伴ってその強度が前記しきい値Kより大きくなった高輝度画素Pを抽出する。判定手段11は、高輝度画素抽出手段10で抽出された高輝度画素Pがその試料像上において所定個数以上連なっているかどうかを判定する。判定手段11は、高輝度画素Pが所定個数以上連なっていると判定した場合、試料へのイオンビーム照射を停止させる信号をイオン銃制御手段12に送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過電子顕微鏡などで観察される試料を作製するための試料作製方法および試料作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される薄膜試料を作製する方法として、たとえば特許第3263920号公報(特許文献1)に記載されている方法が知られている。この特許文献1に記載されている方法においては、試料上に遮蔽材を配置し、遮蔽材の上方から遮蔽材と試料にイオビームを照射し、遮蔽材で遮蔽されなかった試料部分をイオンエッチングするようにしている。その際、薄膜試料が出来上がるように、遮蔽材を試料上で2段階に移動させて試料をエッチングするようにしている。
上記特許は本件特許出願人が出願したものであるが、本件特許出願人は昨年、薄膜試料をより確実に得ることができる新しい試料作製方法について特許出願を行った(特願2004−283802)。この出願における方法においては、図1(a)に示すように、ベルト状の遮蔽材を試料上にほぼ垂直に立てて配置し、遮蔽材の左斜め上方と右斜め上方から遮蔽材と試料に向けてイオンビームを照射し、試料のほぼ中央部分に貫通孔hが開くように試料をイオンエッチングするようにしている。この貫通孔hの周縁部分Aは薄膜となっており、その薄膜Aの厚さはTEM観察に適した厚さとなっている。なお、図1(b)は、図1(a)の試料を側面B側から見た図である。
【0003】
【特許文献1】特許第3263920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図1に示した方法においては、試料に貫通孔hが開いた時点で、すなわちTEM観察に適した厚さの薄膜Aが出来た時点で、試料へのイオンビーム照射を停止させなければならい。これは、試料に貫通孔hが開いたにも拘わらず引き続いて試料にイオンビームを照射すると、図2に示すように周縁部分Aがさらにエッチングされて丸まってしまい、周縁部分AがTEM観察できないぐらいに厚くなってしまうからである。
このように図1に示した方法においては、試料に貫通孔hが開いたら直ぐにイオンビーム照射を停止させることが非常に重要となるが、本件発明者らはこれまで、そのイオンビーム照射停止を自動的に行う装置の開発を進めてきた。その開発段階で本件発明者らは公知の手法をいろいろと試みたが、そのイオンビーム照射停止はタイミングよく行われなかった。たとえば、試料に光を照射して試料の透過光を検出し、その透過光の強度がしきい値以上になったらイオンビーム照射を自動的に停止させる手法を試みたが、その停止のタイミングがうまく合わず、TEM観察に適した薄膜試料を確実に作製することができなかった。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みて成されたものであり、その目的は、TEM観察などに適した良好な薄膜試料を確実に作製できる試料作製方法および試料作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の試料作製方法は、試料の左側面および右側面、または、それらの側面の何れか一方の側面にイオンビームを照射して試料をイオンエッチングし、試料を薄膜化するようにした試料作製方法において、以下の(a)〜(d)のステップにより、試料へのイオンビーム照射を停止、または試料へのイオンビーム照射の条件を変更するようにしたことを特徴とする。
(a)試料にイオンビームを照射すると共に試料の左右の側面の何れか一方の側面に光を照射し、試料の他方の側面を撮像手段で撮像する。
(b)撮像された試料像に対して、所定のしきい値より大きな強度を有し、且つ前記試料の薄膜化に伴ってその強度が前記しきい値より大きくなった高輝度画素を抽出する。
(c)抽出された高輝度画素がその試料像上において所定個数以上連なっているかどうかを判定する。
(d)(c)で所定個数以上連なっていると判定された場合、試料へのイオンビーム照射を停止、または試料へのイオンビーム照射の条件を変更する。
【発明の効果】
【0007】
したがって本発明によれば、TEM観察などに適した良好な薄膜試料を確実に作製できる試料作製方法および試料作製装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
図3は、本発明の試料作製装置の一例を示した図である。まず装置構成を説明する。
【0010】
図3において1は真空チャンバであり、真空チャンバ1内部の試料室2は排気装置(図示せず)により排気されている。試料室2には試料3と遮蔽材4が配置されており、試料3と遮蔽材4は図示していないホルダにそれぞれセットされている。
【0011】
試料3の厚さdは100μm程度、縦方向の寸法dは700μm程度、横方向の寸法dは図4(試料室2に配置された試料3などの斜視図)に示すように2.5mm程度である。一方、ベルト状(リボン状またはテープ状)の遮蔽材4の厚さtは図4に示すように10μm程度、幅wは2mm程度である。この遮蔽材4は図3,図4に示すように試料3上に垂直に立てて配置されており、遮蔽材4はz軸上に位置していてx軸方向に張られている。
そして、遮蔽材4と試料3の上面の隙間はわずか10〜30μm程度である。このように試料3上に接近して遮蔽材4が配置されることにより、試料3上には、図3の「イオン遮蔽説明図」に示すように、イオンビーム非照射面3cとその左右にイオンビーム照射面3d,3eが形成される。イオンビーム非照射面3cとは遮蔽材4で覆われた試料面であり、イオン銃5からのイオンビームIが照射されない面である。なお、遮蔽材4は非晶質金属で出来ており、たとえばニッケル−リン(リン10%以上)のような非晶質金属で作られている。
前記イオン銃5は、図3に示すように、真空チャンバ1上部に取り付けられたイオン銃傾斜機構6に保持されている。図3に示す状態は、イオン銃5の光軸Oがz軸と一致している状態である。前記イオン銃傾斜機構6は、試料3上を通るx軸を中心としてイオン銃5を左右にθ傾斜させるためのもの、すなわち、イオン銃5をz軸に対して−y方向とy方向にθ傾斜させるためのものである。なお、イオン銃5としてガスイオン銃が用いられており、たとえばArガスを放電によりイオン化させてArイオンを放出させるガスイオン銃が用いられている。
また、7は光源(光照射手段)であり、光源7は真空チャンバ1の左側面に取り付けられている。この光源7は、試料3の左側面3aに対向するように配置されており、その試料左側面3aに光Lを照射するためのものである。光源7がオフの状態では、試料室2は暗室となっている。
8はCCDカメラのような撮像手段であり、撮像手段8は真空チャンバ1の右側面に取り付けられている。この撮像手段8は、試料3の右側面3bに対向するように配置されており、試料3を挟んで光源7と対向している。撮像手段8は、試料3の右側面3bを撮像するためのものであり、その撮像領域はたとえば図4の点線で囲まれた領域Cである。この領域Cの中には、試料3の上方端部3fから下方端部3gにかけて含まれており、さらに遮蔽材4の下方端部も含まれている。
また、図3において9は中央制御装置である。中央制御装置9はその内部に、高輝度画素抽出手段10と判定手段11とイオン銃制御手段12を備えている。さらに中央制御装置9は、前記光源7と、前記撮像手段8と、前記イオン銃5の電圧電源13と、前記イオン銃傾斜機構6の傾斜駆動源14と、キーボードやマウスなどから成る入力手段15にそれぞれ電気的に接続されている。
以上、図3の装置構成について説明した。以下、動作説明を行う。
まずオペレータは、図3における入力手段15上で「試料種類」の入力を行う。現在セットされている試料3はバルク試料から切り出されたものなので、この場合には「バルク試料」と入力される。この入力にあたっては、中央制御装置9に接続されたCRT画面上に複数の試料種類が表示され、オペレータはその中からマウスクリックで「バルク試料」を選択する。こうして「バルク試料」の入力が行われると、中央制御装置9は、高輝度画素抽出手段10と判定手段11とイオン銃制御手段12の動作モードを「バルク試料」に対応した「貫通孔形成モード」、すなわち、試料3のほぼ中央部分に貫通孔を開ける「貫通孔形成モード」に設定する。
そして、オペレータが入力手段15上で「エッチング開始」の入力を行うと、中央制御装置9のイオン銃制御手段12は前記「貫通孔形成モード」で動作する。すなわちイオン銃制御手段12は、イオン銃5を左(−y方向)に角度θ(たとえば1.5度)傾斜させるための傾斜信号θを傾斜駆動源14に送る。傾斜駆動源14はその傾斜信号θに基づいてイオン銃傾斜機構6を傾斜させる。この結果、イオン銃5はz軸に対して左に1.5度傾斜する。なお、この傾斜角度θ(1.5度)の値は、予めオペレータによって入力手段15上で入力設定されている。
また、前記「エッチング開始」の入力が行われると、中央制御装置9のイオン銃制御手段12は、イオン銃5からイオンビームIを放出させるための信号を電圧電源13に送る。すると電圧電源13は、イオン銃5の各電極間に、イオンビームIを放出させるための所定電圧を印加する。この結果、z軸に対して左に角度θ(1.5度)傾斜したイオン銃5からイオンビームIが放出される。
また、前記「エッチング開始」の入力が行われると、中央制御装置9は、光源7の電源をオンする。これにより光源7から光が放出され、光源7から放出された光Lは、図5(a)に示すように、試料3の左側面3aと遮蔽材4の左側面4aを照射する。また、図5(a)に示すように、イオン銃5から放出され、z軸に対して左にθ(1.5度)傾斜したイオンビームIは、遮蔽材4の左斜め上方から遮蔽材4と試料3を照射する。このイオンビーム照射は所定時間(たとえば5分間)行われる。
また、前記「エッチング開始」の入力が行われると、中央制御装置9は、撮像手段8を動作させるための信号を撮像手段8に送る。すると撮像手段8は、光照射されている試料面の反対側の面、すなわち試料3の右側面3bの連続撮像を開始する。この撮像手段8で撮像された試料像(図4の領域Cに含まれる像)は高輝度画素抽出手段10に送られる。
高輝度画素抽出手段10は、撮像手段8で撮像された試料像を所定の時間間隔(たとえば2秒間隔)でその内部に取り込む。まず高輝度画素抽出手段10は、撮像当初の試料像、すなわちエッチング開始時の試料像Iを取り込む。図6(a)はその取り込まれた試料像Iを示したものであり、図中点線は画素(ピクセル)間の境界を示している。図6(a)において、Dは試料3の右側面3bを表す像であり、この像Dは画素p41,p42,…,p4m,…,p(n−2)1,…,p(n−2)mで作り上げられている。試料3は光源7からの光Lを透過させるものではなく、また試料3の右側面3bに光は照射されていないため、試料3に貫通孔が未だ開いていないこのエッチング開始時においては、像D部分の明るさは真っ暗である。
また、図6(a)において、Eは遮蔽材4の下方端部(右側面4b)を表す像であり、この像Eは画素p11,p12,…,p1m,p21,…,p2mで作り上げられている。この像E部分の明るさも像D部分と同様に真っ暗である。
また、図6(a)においてFは、遮蔽材4と試料3の隙間を通った光Lを表す像であり、この像Fは画素p31,…,p3mで作り上げられている。像F部分の明るさは光Lの明るさに対応して明るい。
また、図6(a)においてGは、試料3の下方を通った光Lを表す像であり、この像Gは画素p(n−1)1,…,p(n−1)m,…,pnmで作り上げられている。この像G部分の明るさも像F部分と同様に、光Lの明るさに対応して明るい。
(1)さて、高輝度画素抽出手段10は、取り込んだエッチング開始時の試料像Iに対し、各画素(p11〜pnm)の信号強度をしきい値Kと比較し、しきい値Kより大きな強度を有する画素を抽出する。このしきい値Kは、光Lを表す画素(現時点では画素p31,…,p3mおよびp(n−1)1,…,p(n−1)m,…,pnm)が抽出されるように、予めオペレータによって入力手段15上で設定されている。すなわち図6(b)に示すように、光Lを表す画素の強度Jよりやや低い強度Kがしきい値Kとして設定されている。なお、現時点においては、試料右側面像Dを構成する画素p41,p42,…,p4m,…,p(n−2)1,…,p(n−2)mの強度と、遮蔽材像Eを構成する画素p11,p12,…,p1m,p21,…,p2mの強度は、図6(b)における強度Lである。その強度Lはほぼ零に等しい。
(2)このようなしきい値Kの設定により、高輝度画素抽出手段10は、光Lを表す画素p31,…,p3mおよびp(n−1)1,…,p(n−1)m,…,pnmを抽出する。高輝度画素抽出手段10は、こうして光Lを表す画素を抽出することにより、試料3の上方端部(3f)と下方端部(3g)に対応する画素をそれぞれ特定する。すなわち高輝度画素抽出手段10は、抽出した画素p31,…,p3mに基づき、試料上方端部(3f)に対応する画素として画素p41,p42,…,p4mを特定する。同様に高輝度画素抽出手段10は、抽出した画素p(n−1)1,…,p(n−1)mに基づき、試料下方端部(3g)に対応する画素として画素p(n−2)1,…,p(n−2)mを特定する。
(3)高輝度画素抽出手段10は、このように試料上方端部(3f)と試料下方端部(3g)に対応する画素を特定することにより、試料右側面像Dの画素領域を認識する。この場合に高輝度画素抽出手段10は、試料右側面像Dは画素p41,p42,…,p4m,…,p(n−2)1,…,p(n−2)mで構成されていることを認識する。
(4)こうして高輝度画素抽出手段10は試料右側面像Dの画素領域を認識すると、その画素領域内に判定領域D’を設定する。高輝度画素抽出手段10は、たとえば図6(c)に示すように判定領域D’を設定する。この判定領域D’は画素p〜p60を含む領域であり、試料中央部分に貫通孔が開いたことを検出できるように像Dの中央部分に設定される。
(5)そして高輝度画素抽出手段10は、上記(1)の抽出結果を参照し、判定領域D’内の画素p〜p60の中に前記しきい値Kより大きな強度を有する高輝度画素Pが存在しているか否かを判断する。イオンエッチングが進んで試料3に貫通孔が開くと、光Lがその貫通孔を通って撮像手段8で検出されるため、判定領域D’内の画素p〜p60の何れかが前記しきい値Kより大きな強度を有するようになる。しかし、エッチング開始時の現時点では、試料3に貫通孔は開いていないので判定領域D’内に高輝度画素Pは存在しない。高輝度画素抽出手段10は高輝度画素Pが存在するときだけ判定手段11にその情報を送るので、この場合には高輝度画素抽出手段10は判定手段11に何も出力しない。
以上、試料像Iに対する高輝度画素抽出手段10の処理(上記(1)〜(5)の処理)について説明した。この後、高輝度画素抽出手段10は、試料像Iを取り込んでから2秒経過すると、撮像手段8で撮像された試料像Iを取り込む。そして高輝度画素抽出手段10は、試料像Iに対して前記(1)〜(5)の処理を行う。この時点でも未だ試料3に貫通孔は開いておらず、前記処理(5)において前記高輝度画素Pは抽出されない。従って、高輝度画素抽出手段10は判定手段11に対して何も出力しない。
以後、高輝度画素抽出手段10は2秒間隔で試料像I,I,…を取り込み、各試料像に対して前記(1)〜(5)の処理を行う。実際にはイオンエッチング開始から1時間以上経過しないと試料3に貫通孔は開かないため、高輝度画素抽出手段10はイオンエッチング開始から1時間ほどの間は判定手段11に対して何も出力しない。
さて、図5(b)は、イオンエッチング開始から5分後の試料3を示した図である。図5(b)に示すように、イオンビームIが照射されたイオンビーム照射面3d,3eはイオンエッチングされている。これに伴い、試料3の左側面3aと右側面3bの一部もエッチングされている。
一方、遮蔽材4で覆われてイオンビームIが照射されなかったイオンビーム非照射面3cは、エッチングされずにそのまま残っている。そして、試料3に対して遮蔽材4の左斜め上方からイオンビームが照射されたため、試料3の左側面3a側が右側面3b側よりも多くエッチングされており、また、左側面3a側が右側面3b側よりも内側(z軸側)に深くエッチングされている。
以上のようにして、試料3に対して遮蔽材4の左上方からイオンビーム照射が行われると、次にイオン銃制御手段12は、イオン銃5を右(y方向)に角度θ(1.5度)傾斜させるための傾斜信号θを傾斜駆動源14に送る。傾斜駆動源14はその傾斜信号θに基づいてイオン銃傾斜機構6を傾斜させる。この結果、イオン銃5はz軸に対して右に1.5度傾斜する。
このイオン銃5の傾斜により、図7(a)に示すように、z軸に対して右にθ(1.5度)傾斜したイオンビームIが、遮蔽材4の右斜め上方から遮蔽材4と試料3を照射する。このイオンビーム照射は所定時間(たとえば5分間)行われる。
図7(b)は、イオン銃5を右に傾斜させ、試料3にイオンビームを5分間照射した後の試料3を示した図である。図7(b)に示すように、今度は、試料3のうち右側面3b側が大きくエッチングされている。一方、遮蔽材4で覆われてイオンビームIが照射されなかったイオンビーム非照射面3cは、エッチングされずにそのまま残っている。
以後、前記同様にして、イオン銃5が左右に繰り返し傾斜され、z軸に対して左右にそれぞれ1.5度傾斜したイオンビームIによって試料3はエッチングされる。図8はそのエッチングされていく試料3を示した図である。図7(b)のあと図8(a)のように試料3はエッチングされ、図8(a)のあと図8(b)に示すように試料3はエッチングされる。その後、何回かイオン銃5が左右に傾斜されて試料3のイオンエッチングが行われ、図8(c)のように試料3はエッチングされる。図8(a)から図8(c)に示すように、試料3のイオンビーム非照射面3cはエッチングされずに残ったままである。一方、そのイオンビーム非照射面3cの周囲の試料部分は徐々にエッチングされている。そして、図8(c)に示すように、試料3のA部分については、イオンビーム非照射面3cから下方(−z方向)に向かうに従って薄くなっている。しかし、この時点でも未だ試料3に貫通孔は開いておらず、高輝度画素抽出手段10の前記処理(5)において前記高輝度画素Pは未だ検出されない。
図8(d)は、図8(c)のあとイオン銃5の向きが変えられて、試料3に対して更にイオンビームIが照射されている状態を示した図である。図8(c)に示した試料3のA部分が更にイオンエッチングされたため、図8(d)に示すように、時刻Tにおいて試料3に貫通孔Hが開き始めている。この貫通孔Hの位置は試料3の上面から300μm程のところである。
図9(a)は、時刻Tにおいて高輝度画素抽出手段10が撮像手段8から取り込んだ試料像IT1を示したものである。図9(a)に示すように、前記判定領域D’内の画素のうち画素p25だけが明るく光っている。この画素p25は、前記貫通孔Hを通った光L(図8(d)参照)を表す画素である。貫通孔Hの大きさが更に大きくなってくると画素p25の周りの画素も明るくなってくるが、時刻Tの時点では画素p25だけが明るく光っている。
高輝度画素抽出手段10は、このような試料像IT1に対して前記(1)〜(5)の処理を行う。この場合に高輝度画素抽出手段10は、前記処理(1)において、しきい値Kより大きな強度を有する画素の1つとして画素p25を抽出する。このため高輝度画素抽出手段10は、前記処理(5)において、画素p25を判定領域D’内に含まれる高輝度画素Pとして検出する。すると高輝度画素抽出手段10は、その高輝度画素p25の画素位置を表す高輝度画素位置信号p25(x,y)を判定手段11に送る。
判定手段11は、高輝度画素抽出手段10から送られてくる高輝度画素位置信号に基づき、高輝度画素抽出手段10で抽出された高輝度画素Pが試料像(IT1)上において所定個数n以上連なっているかどうか判定する。今、その個数nとして2が設定されており、この個数2は予めオペレータによって入力手段15上で入力設定されている。
この場合、高輝度画素抽出手段10で抽出された高輝度画素Pは画素p25だけであり、高輝度画素抽出手段10から判定手段11に送られた高輝度画素位置信号はp25(x,y)だけである。このため判定手段11は、「高輝度画素抽出手段10で抽出された高輝度画素Pは試料像(IT1)上において2以上連なっていない」と判定する。判定手段11は、「高輝度画素Pが2以上連なっている」と判定したときだけイオン銃制御手段12にイオン照射停止信号を送るので、この場合にはそのイオン照射停止信号はイオン銃制御手段12に送られない。このため、試料3へのイオンビーム照射は引き続き行われる。
さて、図9(b)は、試料像IT1の次に高輝度画素抽出手段10に取り込まれた試料像IT2を示したものである。すなわち、時刻Tから2秒経過後の時刻Tに取り込まれた試料像IT2を示したものである。図9(a)と図9(b)を比較して分かるように、この2秒の間に、画素p25の右隣の画素p26が新たに明るく光るようになったことがわかる。これは、試料3のイオンエッチングが進んで貫通孔Hの大きさが図8(d)の状態よりも少しだけ大きくなったためであり、画素p26は貫通孔Hを通った光Lを表す画素である。
高輝度画素抽出手段10は、この試料像IT2に対して前記(1)〜(5)の処理を行う。この場合に高輝度画素抽出手段10は、前記処理(1)において、しきい値Kより大きな強度を有する画素として画素p25と画素p26を含めて抽出する。このため高輝度画素抽出手段10は、前記処理(5)において、画素p25と画素p26を判定領域D’内に含まれる高輝度画素Pとして検出する。すると高輝度画素抽出手段10は、その高輝度画素p25とp26の画素位置を表す高輝度画素位置信号p25(x,y)、p26(x,y)を判定手段11に送る。
判定手段11は、その高輝度画素位置信号p25(x,y)、p26(x,y)に基づき、高輝度画素p25と高輝度画素p26が試料像(IT2)上において横に2個連なっていると判定する。この結果、判定手段11はイオン銃制御手段12にイオン照射停止信号を送る。このイオン照射停止信号を受けたイオン銃制御手段12は、イオン照射を停止させるための信号を電圧電源13に送る。これにより、イオン銃5よりのイオンビーム放出は停止される。さらにイオン銃制御手段12は、傾斜駆動源14を制御してイオン銃傾斜機構6の傾斜を停止させる。
以上の結果、図9(c)に示す本発明の薄膜試料3が出来上がる。貫通孔Hの周辺部分kは100Å程の薄膜となっており、このような薄膜部分kの厚さはTEM観察に適した厚さである。
以上、図3の本発明装置において、試料3に貫通孔Hを開けて薄膜試料を作製する場合について説明した。上述したように本発明においては、試料の薄膜化に伴って出現した高輝度画素Pを抽出し、その高輝度画素Pが試料像上において所定個数n以上連なった時点でイオン照射を停止するようにしている。このnの値は入力手段15上で任意に設定することができ、その値nを予め実験で求めた最適な値に設定しておくことにより、TEM観察に適した厚さの薄膜が出来上がった時点で常にイオン照射を停止させることができる。
そして、本発明の場合、前記高輝度画素Pが複数出現しても、それらが所定個数n以上連ならないとイオン照射は停止されない。たとえば、2つの高輝度画素Pが離れて出現した場合には、イオン照射は停止されない。このように2つの高輝度画素Pが離れて出現するのは、試料室壁などに当たって反射した光Lが撮像手段8で一時的に検出された場合である。一方、試料3に貫通孔Hが開いた場合には、抽出された複数の高輝度画素Pは連なっている。このため、高輝度画素Pの連なりを検出してイオン照射を停止させる本発明によれば、試料室壁などに当たって反射した光Lが撮像手段8で一時的に検出された場合に誤ってイオン照射が停止されることはなく、試料3に所定の貫通孔Hが開いたときだけイオン照射が正常に停止される。従って本発明においては、TEM観察に適した薄膜試料を確実に作製することができる。
なお、上記例では、高輝度画素Pが横に2個(n=2)連なった場合について説明したが(図9(b)参照)、高輝度画素Pが縦に2個または斜めに2個連なった(並び続く)場合においても、前記判定手段11はイオン照射停止信号をイオン銃制御手段12に送るように動作する。
次に、図3の装置において、シリコンウエハーなどから切り出された試料を薄膜化して、断面試料を作製する場合について説明する。
その場合、まず図10(a)に示すように、100μm(d)×700μm(d)×2.5mm(d)の試料16を用意する。この試料16はシリコンウエハーから切り出されて粗研磨されたものであり、試料16の下方は多層構造となっている。この多層構造部16aを薄膜化して断面試料を作製することがこの場合の目的であり、このように切り出された試料16は、図3の試料3に代わって試料室2に配置される。図10(b)は、試料室2に配置された試料16と前記遮蔽材4を示した図である。図10(b)に示すように、試料16の多層構造部16aは遮蔽材4から700μm程のところに位置している。
さて、試料16の多層構造部16aを薄膜化する場合、まずオペレータは、図3における入力手段15上で「試料種類」の入力を行う。この場合には「多層構造試料」と入力される。こうして「多層構造試料」の入力が行われると、中央制御装置9は、高輝度画素抽出手段10と判定手段11とイオン銃制御手段12の動作モードを「多層構造試料」に対応した「多層構造部薄膜化モード」、すなわち、試料16の多層構造部16aを薄膜化する「多層構造部薄膜化モード」に設定する。
そして、オペレータが入力手段15上で「エッチング開始」の入力を行うと、中央制御装置9のイオン銃制御手段12は前記「多層構造部薄膜化モード」で動作する。すなわちイオン銃制御手段12は、イオン銃5を左(−y方向)に角度θ(たとえば0.7度)傾斜させるための傾斜信号θを傾斜駆動源14に送る。傾斜駆動源14はその傾斜信号θに基づいてイオン銃傾斜機構6を傾斜させる。この結果、イオン銃5はz軸に対して左に0.7度傾斜する。なお、この傾斜角度θ(0.7度)の値は、予めオペレータによって入力手段15上で入力設定されている。
また、前記「エッチング開始」の入力が行われると、中央制御装置9のイオン銃制御手段12は、イオン銃5からイオンビームIを放出させるための信号を電圧電源13に送る。すると電圧電源13は、イオン銃5の各電極間に、イオンビームIを放出させるための所定電圧を印加する。この結果、z軸に対して左に角度θ(0.7度)傾斜したイオン銃5からイオンビームIが放出される。
また、前記「エッチング開始」の入力が行われると、中央制御装置9は、光源7の電源をオンする。これにより光源7から光が放出され、光源7から放出された光Lは、図10(c)に示すように、試料16の左側面16bと遮蔽材4の左側面4aを照射する。また、図10(c)に示すように、イオン銃5から放出され、z軸に対して左にθ(0.7度)傾斜したイオンビームIは、遮蔽材4の左斜め上方から遮蔽材4と試料16を照射する。このイオンビーム照射は所定時間(たとえば5分間)行われる。
また、前記「エッチング開始」の入力が行われると、中央制御装置9は、撮像手段8を動作させるための信号を撮像手段8に送る。すると撮像手段8は、光照射されている試料面の反対側の面、すなわち試料16の右側面16cの連続撮像を開始する。この撮像手段8で撮像された試料像(図4の領域Cに含まれる像)は高輝度画素抽出手段10に送られる。
高輝度画素抽出手段10は、撮像手段8で撮像された試料像を所定の時間間隔(たとえば2秒間隔)でその内部に取り込む。まず高輝度画素抽出手段10は、撮像当初の試料像、すなわちエッチング開始時の試料像Iを取り込む。図11(a)はその取り込まれた試料像Iを示したものであり、図中点線は画素(ピクセル)間の境界を示している。図11(a)において、Qは試料16の右側面16cを表す像であり、この像Qは画素p41,p42,…,p4m,…,p(n−2)1,…,p(n−2)mで作り上げられている。試料16は光源7からの光Lを透過させるものではなく、また試料16の右側面16cに光は照射されていないため、像Q部分の明るさは真っ暗である。
また、図11(a)において、Rは遮蔽材4の下方端部(右側面4b)を表す像であり、この像Rは画素p11,p12,…,p1m,p21,…,p2mで作り上げられている。この像R部分の明るさも像Q部分と同様に真っ暗である。
また、図11(a)においてSは、遮蔽材4と試料16の隙間を通った光Lを表す像であり、この像Sは画素p31,…,p3mで作り上げられている。像S部分の明るさは光Lの明るさに対応して明るい。
また、図11(a)においてTは、試料16の下方を通った光Lを表す像であり、この像Tは画素p(n−1)1,…,p(n−1)m,…,pnmで作り上げられている。この像T部分の明るさも像S部分と同様に、光Lの明るさに対応して明るい。
(6)さて、高輝度画素抽出手段10は、取り込んだエッチング開始時の試料像Iに対し、各画素(p11〜pnm)の信号強度をしきい値Kと比較し、しきい値Kより大きな強度を有する画素を抽出する。このしきい値Kは、光Lを表す画素(現時点では画素p31,…,p3mおよびp(n−1)1,…,p(n−1)m,…,pnm)が抽出されるように、予めオペレータによって入力手段15上で設定されている。すなわち図6(b)に示したように、光Lを表す画素の強度Jよりやや低い強度Kがしきい値Kとして設定されている。なお、現時点においては、試料右側面像Qを構成する画素p41,p42,…,p4m,…,p(n−2)1,…,p(n−2)mの強度と、遮蔽材像Rを構成する画素p11,p12,…,p1m,p21,…,p2mの強度は、図6(b)における強度Lである。その強度Lはほぼ零に等しい。
(7)このようなしきい値Kの設定により、高輝度画素抽出手段10は、光Lを表す画素p31,…,p3mおよびp(n−1)1,…,p(n−1)m,…,pnmを抽出する。高輝度画素抽出手段10は、こうして光Lを表す画素を抽出することにより、試料16の上方端部16d(図10(c)参照)と下方端部16e(図10(c)参照)に対応する画素をそれぞれ特定する。すなわち高輝度画素抽出手段10は、抽出した画素p31,…,p3mに基づき、試料上方端部16dに対応する画素として画素p41,p42,…,p4mを特定する。同様に高輝度画素抽出手段10は、抽出した画素p(n−1)1,…,p(n−1)mに基づき、試料下方端部16eに対応する画素として画素p(n−2)1,…,p(n−2)mを特定する。
(8)高輝度画素抽出手段10は、このように試料上方端部16dに対応する画素p41,p42,…,p4mと、試料下方端部16eに対応する画素p(n−2)1,…,p(n−2)mを特定すると、画素p(n−2)1,…,p(n−2)mと画素p41,p42,…,p4mの位置関係の情報Uを記憶する。すなわち高輝度画素抽出手段10は、画素p(n−2)1が画素p41から何画素離れた位置に存在しているか、また、画素p(n−2)2が画素p42から何画素離れた位置に存在しているかなどの情報Uを記憶する。
以上、試料像Iに対する高輝度画素抽出手段10の処理(上記(6)〜(8)の処理)について説明した。この後、高輝度画素抽出手段10は、試料像Iを取り込んでから2秒経過すると、撮像手段8で撮像された試料像Iを取り込む。そして高輝度画素抽出手段10は、試料像Iに対して前記(6)の処理を行う。そして高輝度画素抽出手段10は処理(6)の後、次の処理(9)および処理(10)を行う。
(9)前記しきい値Kの設定により、高輝度画素抽出手段10は、光Lを表す画素p31,…,p3mおよびp(n−1)1,…,p(n−1)m,…,pnmを抽出する。高輝度画素抽出手段10は、抽出した画素p31,…,p3mに基づき、試料上方端部16dに対応する画素として画素p41,p42,…,p4mを特定する。そして高輝度画素抽出手段10は、その特定した画素p41,p42,…,p4mの情報と、前記処理(8)で求めた情報Uに基づき、試料下方端部16eに対応する画素として前記画素p(n−2)1,…,p(n−2)m(図11(a)参照)を特定する。
(10)高輝度画素抽出手段10は、上記(6)の抽出結果を参照し、処理(9)で特定した画素p(n−2)1,…,p(n−2)m(試料下方端部16eに対応する画素)の中に前記しきい値Kより大きな強度を有する高輝度画素Pが存在しているか否かを判断する。
以上が処理(10)の内容であるが、この時点では試料下方端部16eはほとんどエッチングされておらず、取り込まれた試料像Iの様子は2秒前の試料像Iと同じである。このため高輝度画素抽出手段10は、試料像Iに対し、試料下方端部16eに対応する画素p(n−2)1,…,p(n−2)mの中に高輝度画素Pは存在しないと判断する。従って、高輝度画素抽出手段10は判定手段11に対して何も出力しない。
この後、高輝度画素抽出手段10は2秒間隔で試料像I,I,…を取り込み、各試料像に対して前記(6)(9)(10)の処理を行う。実際にはイオンエッチング開始から1時間以上経過しないと試料下方端部16eは薄膜化されないため、高輝度画素抽出手段10はイオンエッチング開始から1時間ほどの間は判定手段11に対して何も出力しない。以後、上述したバルク試料のときと同様にしてイオン銃5が左右に繰り返し傾斜され、z軸に対して左右にそれぞれ0.7度傾斜したイオンビームIによって試料16はエッチングされる。
図10(d)は、試料16のイオンエッチングが進んで、試料下方端部16aがかなり薄膜化された状態(時刻Tのときの状態)を示した図である。そして、図11(b)は、時刻Tにおいて高輝度画素抽出手段10が撮像手段8から取り込んだ試料像IT1を示したものである。
図11(b)に示すように、試料下方端部16eに対応する画素p(n−2)1,…,p(n−2)mのうち、画素P75だけが明るく光っている。この画素p75は前記光Lを表す画素であり、試料下方端部16aの薄膜化に伴って出現した高輝度画素p75である。すなわち、試料下方端部16aの薄膜化に伴って試料下方端部16aの一部が図11(c)に示すように欠け、その欠けた部分16fを通った光Lが撮像手段8で検出されたことによって、高輝度画素p75が試料像IT1上に出現している。
高輝度画素抽出手段10は、このような試料像IT1に対して前記(6)(9)(10)の処理を行う。この場合に高輝度画素抽出手段10は、前記処理(6)において、しきい値Kより大きな強度を有する画素の1つとして画素p75を抽出する。このため高輝度画素抽出手段10は、前記処理(10)において、画素p75を高輝度画素Pとして検出する。すると高輝度画素抽出手段10は、その高輝度画素p75の画素位置を表す高輝度画素位置信号p75(x,y)を判定手段11に送る。
判定手段11は、高輝度画素抽出手段10から送られてくる高輝度画素位置信号に基づき、高輝度画素抽出手段10で抽出された高輝度画素Pが試料像(IT1)上において所定個数n以上連なっているかどうか判定する。今、その個数nとして2が設定されており、この個数2は予めオペレータによって入力手段15上で入力設定されている。
この場合、高輝度画素抽出手段10で抽出された高輝度画素Pは画素p75だけであり、高輝度画素抽出手段10から判定手段11に送られた高輝度画素位置信号はp75(x,y)だけである。このため判定手段11は、「高輝度画素抽出手段10で抽出された高輝度画素Pは試料像(IT1)上において2以上連なっていない」と判定する。判定手段11は、「高輝度画素Pが2以上連なっている」と判定したときだけイオン銃制御手段12にイオン照射停止信号を送るので、この場合にはそのイオン照射停止信号はイオン銃制御手段12に送られない。このため、試料3へのイオンビーム照射は引き続き行われる。
さて、図12(a)は、試料像IT1の次に高輝度画素抽出手段10に取り込まれた試料像IT2を示したものである。すなわち、時刻Tから2秒経過後の時刻Tに取り込まれた試料像IT2を示したものである。図12(a)と図11(b)を比較して分かるように、この2秒の間に、画素p72とp74とp77とp79が新たに明るく光るようになったことがわかる。これは、イオンエッチングによって試料下方端部16aの薄膜化が進み、試料下方端部16aが図12(b)に示すようにギザギザ状になったためであり、画素p72,p74,p75,p77,p79はそのギザギザ状に欠けた部分を通った光Lを表す画素である。
高輝度画素抽出手段10は、この試料像IT2に対して前記(6)(9)(10)の処理を行う。この場合に高輝度画素抽出手段10は、前記処理(6)において、しきい値Kより大きな強度を有する画素として画素p72,p74,p75,p77,p79を含めて抽出する。このため高輝度画素抽出手段10は、前記処理(10)において、画素p72,p74,p75,p77,p79を高輝度画素Pとして検出する。すると高輝度画素抽出手段10は、その高輝度画素p72とp74とp75とp77とp79の画素位置を表す高輝度画素位置信号p72(x,y)、p74(x,y)、p75(x,y)、p77(x,y)、p79(x,y)を判定手段11に送る。
判定手段11は、それらの高輝度画素位置信号に基づき、高輝度画素p74と高輝度画素p75が試料像(IT2)上において試料下方端部のエッジ方向に2個連なっていると判定する。この結果、判定手段11はイオン銃制御手段12にイオン照射停止信号を送る。このイオン照射停止信号を受けたイオン銃制御手段12は、イオン照射を停止させるための信号を電圧電源13に送る。これにより、イオン銃5よりのイオンビーム放出は停止される。さらにイオン銃制御手段12は、傾斜駆動源14を制御してイオン銃傾斜機構6の傾斜を停止させる。
以上の結果、図12(b)に示した本発明の薄膜試料16が出来上がる。多層構造部16aの部分は最も薄く、その厚さはTEM観察に適した100Å程度である。
以上、図3の装置の動作を説明した。なお、本発明は上記例に限定されるものではなく、その他の変形例も包含するものである。
たとえば上記例では、判定手段11は、高輝度画素Pが試料像上で所定個数以上連なっていると判定した場合、イオン照射停止信号をイオン銃制御手段12に供給するようにしている。そのイオン照射停止信号の代わりに、判定手段11が仕上げ加工信号をイオン銃制御手段12に供給するようにしてもよい。その仕上げ加工信号を受けたイオン銃制御手段12は、試料を照射するイオンビームの強度がそれまでより低くなるような信号を電圧電源13に送る。すると、イオン銃5の引出電極に印加される電圧がそれまでより低く設定され、イオン銃5から放出されるイオンの量はそれまでより少なくなる。こうしてイオンビームの強度がそれまでより低く設定されて、試料の仕上げ加工が行われる。この仕上げ加工はたとえば30分間行われ、その後、試料へのイオンビーム照射が停止される。
また、上記例では、高輝度画素抽出出段10は2秒間隔で撮像手段8から像を取り込むようにしているが、撮像手段8から像を連続して取り込み、取り込んだ像に対して上記処理を行うようにしてもよい。
また、上記例では、イオン銃5を左右に傾斜させるようにしたが、2つのイオン銃を配置し、一方のイオン銃から発生したイオンビームを前記遮蔽材の左斜め上方から遮蔽材と試料に向けて照射し、他方のイオン銃から発生したイオンビームを前記遮蔽材の右斜め上方から遮蔽材と試料に向けて照射するようにしてもよい。そのようにすれば、上記例のおよそ2倍の速度で薄膜試料を作製することができる。
また、上記例では、試料の左側面と右側面にイオンビームを照射するようにしたが、それらの側面の何れか一方の側面だけにイオンビームを照射して試料を薄膜化するようにしてもよい。
また、上記例では、イオン銃5をz軸に対して左右に傾斜させるようにしたが、イオン銃側は傾斜させずに固定し、試料と遮蔽材を一緒に傾斜させるようにしてもよい。
また、上記例では、z軸に対して左右にそれぞれ傾斜したイオンビームで試料をエッチングするようにしたが、z軸上を通るイオンビームで試料をエッチングする工程(すなわち遮蔽材の真上からイオンビームを照射する工程)と、z軸に対して左右どちらか一方に傾斜(たとえば3度)したイオンビームで試料をエッチングする工程を交互に繰り返し行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】特願2004−283802における試料作製を説明するために示した図である。
【図2】従来の問題点を説明するために示した図である。
【図3】本発明の試料作製装置の一例を示した図である。
【図4】図3の装置を説明するために示した図である。
【図5】図3の装置の動作を説明するために示した図である。
【図6】図3の装置の動作を説明するために示した図である。
【図7】図3の装置の動作を説明するために示した図である。
【図8】図3の装置の動作を説明するために示した図である。
【図9】図3の装置の動作を説明するために示した図である。
【図10】図3の装置の動作を説明するために示した図である。
【図11】図3の装置の動作を説明するために示した図である。
【図12】図3の装置の動作を説明するために示した図である。
【符号の説明】
【0013】
1…真空チャンバ、2…試料室、3…試料、3a…試料の左側面、3b…試料の右側面、3c…イオンビーム非照射面、3d,3e…イオンビーム照射面、3f…上方端部、3g…下方端部、4…遮蔽材、4a…遮蔽材の左側面、4b…遮蔽材の右側面、5…イオン銃、6…イオン銃傾斜機構、7…光源、8…撮像手段、9…中央制御装置、10…高輝度画素抽出手段、11…判定手段、12…イオン銃制御手段、13…電圧電源、14…傾斜駆動源、15…入力手段、16…試料、16a…多層構造部、16b…試料の左側面、16c…試料の右側面、16d…上方端部、16e…下方端部、D’…判定領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の左側面および右側面、または、それらの側面の何れか一方の側面にイオンビームを照射して試料をイオンエッチングし、試料を薄膜化するようにした試料作製方法において、
以下の(a)〜(d)のステップにより、試料へのイオンビーム照射を停止、または試料へのイオンビーム照射の条件を変更するようにしたことを特徴とする試料作製方法
(a)試料にイオンビームを照射すると共に試料の左右の側面の何れか一方の側面に光を照射し、試料の他方の側面を撮像手段で撮像する
(b)撮像された試料像に対して、所定のしきい値より大きな強度を有し、且つ前記試料の薄膜化に伴ってその強度が前記しきい値より大きくなった高輝度画素を抽出する
(c)抽出された高輝度画素がその試料像上において所定個数以上連なっているかどうかを判定する
(d)(c)で所定個数以上連なっていると判定された場合、試料へのイオンビーム照射を停止、または試料へのイオンビーム照射の条件を変更する。
【請求項2】
試料上にイオンビーム非照射面とその左右にイオンビーム照射面を形成するための遮蔽材であって、ベルト状またはリボン状またはテープ状の遮蔽材を試料上にほぼ垂直に立てて配置し、
その遮蔽材の左斜め上方または直上から遮蔽材と試料に向けてイオンビームを照射すると共に、遮蔽材の右斜め上方から遮蔽材と試料に向けてイオンビームを照射し、
前記イオンビーム非照射面をイオンエッチングせずに残して、その左右のイオンビーム照射面をイオンエッチングして試料の左側面および右側面をイオンエッチングし、
前記イオンビーム非照射面から下方に向かうに従って薄くなる薄膜試料を作製するようにした
ことを特徴とする請求項1記載の試料作製方法。
【請求項3】
試料に貫通孔が開くように前記イオンビームの照射方向を設定した場合、前記高輝度画素がその試料像上において縦、横または斜めの何れかに所定個数以上連なっているかどうかを判定するようにした
ことを特徴とする請求項2記載の試料作製方法。
【請求項4】
試料の下方端部が薄膜化されるように前記イオンビームの照射方向を設定した場合、前記高輝度画素がその試料像上において試料下方端部に対応する位置に存在し、且つ試料下方端部のエッジ方向に所定個数以上連なっているかどうかを判定するようにした
ことを特徴とする請求項2記載の試料作製方法。
【請求項5】
高輝度画素が試料像上において所定個数以上連なっていると判定された場合、試料を照射するイオンビームの強度をそれまでより低くして仕上げ加工を行うようにした
ことを特徴とする請求項1記載の試料作製方法。
【請求項6】
試料の左側面および右側面、または、それらの側面の何れか一方の側面にイオンビームを照射して試料をイオンエッチングし、試料を薄膜化するようにした試料作製装置において、
試料の左右の側面の何れか一方の側面に光を照射する光照射手段と、
試料の他方の側面を撮像する撮像手段と、
撮像手段で撮像された試料像に対して、所定のしきい値より大きな強度を有し、且つ前記試料の薄膜化に伴ってその強度が前記しきい値より大きくなった高輝度画素を抽出する高輝度画素抽出手段と、
高輝度画素抽出手段で抽出された前記高輝度画素がその試料像上において所定個数以上連なっているかどうかを判定する判定手段と、
判定手段において前記高輝度画素が所定個数以上連なっていると判定された場合、試料へのイオンビーム照射を停止、または試料へのイオンビーム照射の条件を変更する手段
を備えたことを特徴とする試料作製装置。
【請求項7】
試料上にイオンビーム非照射面とその左右にイオンビーム照射面を形成させるため、試料上にほぼ垂直に立てて配置されたベルト状またはリボン状またはテープ状の遮蔽材と、
その遮蔽材の左斜め上方から遮蔽材の左側面と試料に向けてイオンビームを照射する手段と、
前記遮蔽材の右斜め上方から遮蔽材の右側面と試料に向けてイオンビームを照射する手段を備え、
前記イオンビーム非照射面から下方に向かうに従って薄くなる薄膜試料が出来るように、前記イオンビームの照射方向がそれぞれ設定されている
ことを特徴とする請求項6記載の試料作製装置。
【請求項8】
試料に貫通孔が開くように前記イオンビームの照射方向が設定された場合、前記判定手段は、前記高輝度画素がその試料像上において縦、横または斜めの何れかに所定個数以上連なっているかどうかを判定する
ことを特徴とする請求項7記載の試料作製装置。
【請求項9】
試料の下方端部が薄膜化されるように前記イオンビームの照射方向が設定された場合、前記高輝度画素抽出手段は、その試料上において試料下方端部に対応する位置に出現した前記高輝度画素を抽出し、前記判定手段は、その抽出された高輝度画素がその試料像上において所定個数以上連なっているかどうかを判定する
ことを特徴とする請求項7記載の試料作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−300759(P2006−300759A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123560(P2005−123560)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】