説明

試料抽出容器

【課題】 部品点数が少なく、コストを低減し感染拡大をさらに予防できる試料抽出容器を提供することを目的とする。
【解決手段】 第1部品1は、開口部20aを液密に閉鎖できるように形成され第1ねじ部12を備える封止キャップ11からなり、第2部品2は、開口部20aを有する容器本体20と、開口部20aに液密に装着できるように形成されるノズル筒30と、容器本体20とノズル筒30とを連結する連結帯40とが、一体成形されてなる。容器本体20の開口部20aの周囲には、第1ねじ部12と螺合する第2ねじ部24が形成され、容器本体20とノズル筒30のそれぞれには、互いに噛み合う係合爪23、37が形成され、ノズル筒30は、ノズル本体31と、ノズル本体31の外周部に形成され第1ねじ部12と螺合する第3ねじ部34を有するねじ筒31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者が感染症等にかかっているかどうかを検出するための、試料抽出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、試料抽出容器が実用に供されており、例えば、検査者は、綿棒を使用し綿球を患部に接触させ試料を採取し、綿棒を試料抽出容器に入れ、同容器の内部に溜められた溶液へ綿球を接触させ、試料を抽出し、同容器から診断用試薬を備えた検査装置へ溶液を滴下する。また、滴下が完了した後、検査者は、廃棄後に感染が拡大しないように、同容器を蓋などで密封し廃棄する。
【0003】
さて、この種の試料抽出容器の部品点数は、容器1個当たりの製造コストや製造のための金型のコスト低減の点だけでなく、むしろ、次に述べるように感染拡大の予防という観点から、できる限り少ないのが望ましい。
【0004】
(1)まず、試料抽出容器の部品点数が多くなると、検査者が手を動かす頻度が増える。したがって、それだけ検査者の手が、検体を含む液体に触れたり、さらに触れた液体を他の部品に移す危険性が高まる。
【0005】
(2)試料抽出容器の各部品の形状は、略円柱状をなすことが多く、転がりやすい。そして、部品点数が多いと、各部品があちこちにおかれることになり、検体を含む液体に触れた部品が、検査者の意図に反して、転がって移動し、ぬぐい液や溶液などをあたりに、まき散らす結果になることがある。こうなると、感染拡大のおそれが極めて大となる。
【0006】
(3)さらに、検査者が多数の患者の検査を行う場合のように、試料抽出容器そのものの個数が多いとき、各試料抽出容器の部品点数が多ければ、部品と部品との取り違え、検査者の誤り、あるいは、部品の紛失など、正確な検査を妨げる要因が指数関数的に増加、即ち、大幅に増えることになる。
【0007】
この種の試料抽出容器の部品個数は、通常の場合、次の4つである(例えば、特許文献1(登録実用新案第3107824号公報の図4)参照)。即ち、1:容器本体、2:容器本体キャップ(通常、容器本体には既に溶液が内蔵されているため、その溶液が不用意に漏れでないようにするため、このキャップが必要となる)、3:滴下ノズル(容器本体キャップが取り外されたあとそのかわりに装着される)、4:滴下ノズルキャップ(滴下ノズルから溶液を滴下した後容器本体内に残存する溶液が不用意に漏れでないようにするため、このキャップが必要となる)。さらに、試料抽出容器の使用後、1:容器本体、3:滴下ノズル及び4:滴下ノズルキャップは一体化されるが、2:本体キャップはそうならず、無用の廃棄物となる。
【0008】
本出願人は、先に特許文献2(特開2007−40710号公報)記載の容器を提案した。このものによれば、使用前の部品点数は、次の3つである。即ち、1:容器本体、2:滴下ノズルキャップ、3:容器本体の蓋と滴下ノズルとをヒンジで一体連結した部材(なお、蓋の中心部から外向きに突出する突起が形成されており、この突起を折り切って取り除くことにより、容器本体が外部に開口するようになっている)。これによれば、使用前の部品点数(見かけ上3つ)が1つ少なくなっており、上記通常のものよりも一歩前進していると言えよう。しかしながら、使用後(つまり廃棄される直前の段階)では、突起が容器本体から切り離されているから、突起そのものも実質的な部品点数に含まれると考えることもできる(実際、この突起は開口部に近く溶液が接触しやすい)。さらに、試料抽出容器の使用後、1:容器本体、3:容器本体の蓋と滴下ノズルとをヒンジで一体連結した部材及び2:滴下ノズルキャップは一体化されるが、容器本体から切り離された突起はそうならず、無用の廃棄物となる。
【0009】
したがって、いずれにしても、コスト及び感染拡大予防の観点から、さらに部品点数が少ない試料抽出容器が求められている。
【特許文献1】登録実用新案第3107824号公報
【特許文献2】特開2007−40710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、部品点数が少なく、そのためコスト低減及び感染拡大をさらに予防できる試料抽出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る試料抽出容器は、第1部品と、第2部品とからなる試料抽出容器であって、第1部品は、所定形状をなす開口部を液密に閉鎖できるように形成されるとともに第1ねじ部を備える封止キャップからなり、第2部品は、開口部を有する有底の容器本体と、開口部に液密に装着できるように形成されるノズル筒と、容器本体とノズル筒とを連結し所定長さを有する連結帯とが、一体成形されてなり、容器本体の開口部の周囲には、第1ねじ部と螺合する第2ねじ部が形成され、容器本体とノズル筒のそれぞれには、互いに噛み合う係合爪が形成され、これらの係合爪が噛み合うことにより、ノズル筒は、開口部に装着され、ノズル筒は、開口部を介して容器本体内の溶液を外部へ吐出するノズル本体と、ノズル本体の外周部に形成され第1ねじ部と螺合する第3ねじ部を有するねじ筒とを備える。
【0012】
この構成により、試料抽出容器の部品点数は、第1部品と第2部品との2つだけであり、従来技術の半分まで削減することができる。これにより、感染拡大をより予防できるし、コスト低減に資することができる。
【0013】
また、2つの部品点数によっても、次に述べるように支障なく、試料抽出作業を実施できる。
【0014】
まず、試料抽出作業前には、ノズル筒は開口部から外されているが、連結帯により容器本体と一体になっている。そして、一般に、容器本体内には溶液が入れられているが、封止キャップの第1ねじ部と開口部の第2ねじ部が螺合しているため、溶液は外部に漏出することがない。
【0015】
次に、試料を溶液に接触させる前に、検査者は、封止キャップを開口部から外し、試料を溶液に接触させ試料の抽出を完了した後に、容器本体とノズル筒のそれぞれの係合爪を噛み合わせ、ノズル本体を開口部に装着する。この際、これらの係合爪を噛み合わせるだけで足り、ノズル筒を容器本体に対して相対的に数回回転させるような必要はないため、連結帯がねじ切れるような事態となることはない。
【0016】
さらに、検査者は、容器本体の開口部及びノズル筒のノズル本体を介し、ノズル筒の吐出口より容器本体内の溶液を外部に吐出し、その後、ノズル筒の第3ねじ部と、封止キャップの第1ねじ部を螺合し、再び、容器本体の開口部を密閉する。即ち、封止キャップの第1ねじ部は、第2ねじ部及び第3ねじ部の両方に共用されることになる。
【0017】
この後、第1部品と第2部品とは、一体的に廃棄されるが、この廃棄の際に、第1部品と第2部品から除外される要素(無用の廃棄物)はなく、感染拡大を一層効果的に予防できる。
【0018】
第2の発明に係る試料抽出容器は、容器本体の下部には開口部から下向きに挿入される綿球がこすりつけられることにより、綿球に付着する試料を抽出する抽出部が形成されている。
【0019】
この構成において、抽出部により、効率よく試料を抽出できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、試料抽出容器の部品点数を大幅に削減でき、それだけ感染拡大を有効に防止できると共に、検査者は、支障なく試料抽出作業を実施できる。また、部品点数が少ないから、容器製造に要するコスト低減にも資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態における試料抽出容器の断面図である。
【0022】
図1に示すように、本形態の試料抽出容器は、大きく分けて、第1部品1と、第2部品2との、2ピースからなる。
【0023】
なお、図1では、説明の都合上、第1部品1と第2部品2とが離れた状態を示しているが、試料の抽出作業が開始される前(つまり、本形態の試料抽出容器が検査者に提供される状態)では、第2部品2の容器本体20内には、一般に、溶液Sが入れられており、溶液Sの封止のために、第1部品1と第2部品2と(封止キャップ11と容器本体20と)は、一体化された状態にある。
【0024】
第1部品1は、封止キャップ11からなる。封止キャップ11は、断面略凸字状の回転体をなし、望ましくは、存在が疑われる検体の種類(例えば、アデノウイルス、インフルエンザウイルス等)毎に定められた色に着色された樹脂から構成される。本例の封止キャップ11は、同心円状をなす三重の筒体をなし、最も外周側筒体の内周面には、容器本体20の開口部20a付近に形成される第2ねじ部24及びノズル筒30の第3ねじ部34に、それぞれ螺合する、第1ねじ部12が形成される。
【0025】
封止キャップ11の最も内周側には、下向きに突出するノズル栓14が突設され、後述するように、ノズル栓14は、ノズル32に挿入されると、ノズル32を封止する。
【0026】
ノズル栓14と第1ねじ部12の中間には、下向きに延出するインナーシール部13が筒状下向きに設けられ、封止キャップ11の第1ねじ部12を第2ねじ部24に螺合すると、インナーシール部13が容器本体20の開口部20aに密着し、開口部20aは液密に封止される。
【0027】
図1に示すように、第2部品2は、開口部20aを有する有底の容器本体20と、開口部20aに液密に装着できるように形成されるノズル筒30と、容器本体20とノズル筒30とを連結し所定長さを有する連結帯40とが、一体成形されてなる。この所定長さとは、図1に示すように、ノズル筒30を容器本体20から外した状態と、図3(a)に示すように、ノズル筒30を容器本体20に装着した状態と、これらの状態の中間の状態において、連結帯40に無理な力が作用しないように予め設定される。例えば、この所定長さ(長手方向)は、ノズル筒30の全幅の約1.2倍程度に設定すればよい。また、図にはあらわれていないが、連結帯40の幅(長手方向と直交する方向)は、ノズル筒30の全幅とほぼ一致させるなど、適宜幅広に形成することが、連結帯40の破断等を防止するために望ましい。このようにするときは、連結帯40の中央部に適宜、矩形穴部等を開口し、連結帯40の強度と連結帯40の曲げやすさとを、調和させるのも望ましい。
【0028】
上述したように、第2部品2は、容器本体20と、ノズル筒30と、連結帯40とが、一体成形されてなる。ここで、検査者が、試料抽出の最中に、容器本体20の内部を外部から視認しやすくするため、第2部品2全体を、透明又は半透明の合成樹脂を材料とする射出成型品とすることが望ましい。こうすれば、安価に製造でき、使い捨ての使用態様を採用できるし、堅牢であるため、破損のおそれは少ない。
【0029】
容器本体20の開口部20aの周囲には、第1ねじ部12と螺合する第2ねじ部24が形成される。そして、容器本体20において、第2ねじ部24のやや上方には、係合爪23が形成され、また、ノズル筒30のうち、係合爪23に対応する位置には、係合爪23と噛み合う係合爪37が形成される。
【0030】
図3(a)に示すように、図1に示す状態から、連結帯40を湾曲させ、ノズル筒30を上下反転させた上で、これらの係合爪23、37を噛み合わせると、係合爪37の内周側に設けられるインナーシール部36が、容器本体20の開口部20aと液密に密着し、ノズル筒30が容器本体20に装着される。
【0031】
図1の例では、連結帯40の両端部は、容器本体20から外周側に突出して設けられる円環状のフランジ22と、ノズル筒30の外筒35の縁部とに、それぞれ連結されているが、連結帯40の連結位置は、適宜変更しても差し支えない。なお、容器本体20のフランジ22は、封止キャップ11が装着されたときに、封止キャップ11の下端縁に当接しこれを支持する。
【0032】
容器本体20の内部空間は、概ね、先細り(上方が太く、下方に至るに従い細くなる)形状をなす。
【0033】
容器本体20の下部には、図2に示すように、開口部20aから下向きに挿入される、綿棒16の綿球17がこすりつけられることにより、綿球17に付着する試料を抽出する抽出部21が形成されている。抽出部21は、粗面、縦溝、凹凸、あるいはこれらの組み合わせから構成される。抽出部21を利用すると、綿球17から綿球17に付着するぬぐい液をしごいたり、こそぎ落とすなどして、効率よく試料を抽出できる。本例では、容器本体20は、透明又は半透明であり、検査者は、抽出部21付近を外部から視認できるため、操作の確実性を向上できる。なお、本形態では、綿棒を使用する例を述べているが、本形態の試料抽出容器の用途は、必ずしも綿棒を使用する場合に限定されない。例えば、ピペット、注射器等他の治具あるいは用具を用いて試料を採取しても差し支えない。
【0034】
さて図1の状態では、ノズル筒30は、上下反転した姿勢にある。即ち、ノズル本体31の吐出口32は、下を向いている。ノズル本体31の外周部には、円筒状をなすねじ筒33が突設され、ねじ筒33の外周面には、封止キャップ11の第1ねじ部12と螺合する第3ねじ部34が形成される。
【0035】
次に、本形態の試料抽出容器を用いた試料抽出作業について説明する。
【0036】
まず、上述したように、本形態の試料抽出容器が検査者の手元に届いた際には、封止キャップ11により開口部20aが封止され、溶液Sは、容器本体20内に液密に収納されている。
【0037】
次に、図2に示すように、検査者は、綿棒16を用いて試料を採取し、また、封止キャップ11を容器本体20から外して、開口部20aを露呈させる。そして、検査者は、開口部20aから、綿棒16を容器本体20内へ入れ、綿球17を抽出部21へ進め、溶液Sに接触させて試料を溶液Sへ移し・混合する。
【0038】
次に、検査者は、ノズル筒30を図2の状態から上下反転させ、図3(a)に示すように、ノズル筒30を容器本体20の開口部20aに装着する。この際、係合爪23、37を互いに噛み合わせるだけで足り、例えば螺合するようにノズル筒30を、容器本体20に対して何回転も回転させるような必要はなく、連結帯40の破断、ねじ切れなどを心配する必要はない。
【0039】
さらに、図3(b)に示すように、検査者は、ノズル本体31の吐出口32が下向きとなるように、容器本体20とノズル筒30とが連結されたものを反転させ、テストアッセイ50等の検査装置へ溶液を必要な量だけ滴下する。
【0040】
滴下が完了したら、検査者は、再び、図3(a)に示すように、吐出口32が上向きとなるように、容器本体20とノズル筒30とが連結されたものを反転させ、さらに、図4に示すように、封止キャップ11の第1ねじ部12と、ノズル筒30の第3ねじ部34とを螺合し、吐出口32(即ち、開口部20a)を封止する。このとき、ノズル本体31の吐出口32に、封止キャップ11のノズル栓14が嵌り込んで、溶液Sは液漏れしない状態に保持される。
【0041】
そして、検査者は、図4の状態にある試料抽出容器を、一体的に廃棄することができ、廃棄後も、液密性が維持される。また、以上の説明から明らかなように、試料抽出容器から取り除かれ、あるいは分離される、部品や部分は基本的に存在しないので、そのような部品あるいは部分を介して、感染が拡大することはあり得ず、感染をそれだけ一層効果的に予防できる。要するに、図4から明らかなように、本形態の試料抽出容器では、無用の廃棄物は、実質的にゼロである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態における試料抽出容器の断面図(抽出前)
【図2】本発明の一実施の形態における試料抽出容器による抽出プロセス説明図(抽出中)
【図3】(a)本発明の一実施の形態における試料抽出容器による抽出プロセス説明図(ノズル筒装着時) (b)本発明の一実施の形態における試料抽出容器による抽出プロセス説明図(滴下時)
【図4】本発明の一実施の形態における試料抽出容器による抽出プロセス説明図(密封時)
【符号の説明】
【0043】
1 第1部品
2 第2部品
11 封止キャップ
12 第1ねじ部
13、36 インナーシール部
14 ノズル栓
20 容器本体
20a 開口部
21 抽出部
22 フランジ
23、37 係合爪
24 第2ねじ部
30 ノズル筒
31 ノズル本体
32 吐出口
33 ねじ筒
34 第3ねじ部
35 外筒
40 連結帯
50 テストアッセイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品と、第2部品とからなる試料抽出容器であって、
前記第1部品は、所定形状をなす開口部を液密に閉鎖できるように形成されるとともに第1ねじ部を備える封止キャップからなり、
前記第2部品は、前記開口部を有する有底の容器本体と、前記開口部に液密に装着できるように形成されるノズル筒と、前記容器本体と前記ノズル筒とを連結し所定長さを有する連結帯とが、一体成形されてなり、
前記容器本体の前記開口部の周囲には、前記第1ねじ部と螺合する第2ねじ部が形成され、
前記容器本体と前記ノズル筒のそれぞれには、互いに噛み合う係合爪が形成され、これらの係合爪が噛み合うことにより、前記ノズル筒は、前記開口部に装着され、
前記ノズル筒は、前記開口部を介して前記容器本体内の溶液を外部へ吐出するノズル本体と、前記ノズル本体の外周部に形成され前記第1ねじ部と螺合する第3ねじ部を有するねじ筒とを備えることを特徴とする試料抽出容器。
【請求項2】
前記容器本体の下部には前記開口部から下向きに挿入される綿球がこすりつけられることにより、前記綿球に付着する試料を抽出する抽出部が形成されている請求項1記載の試料抽出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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