説明

試料採取方法およびその装置

【課題】 地盤などの試料採取に適した方法およびその装置の提供。
【解決手段】 この試料採取装置10によれば、試料を採取する被採取領域1に試料採取管11を貫入し(試料採取管貫入工程)、被採取領域1に貫入した試料採取管11の下端周辺に、下端を閉塞した冷媒注入管15を挿入し(冷媒注入管挿入工程)、試料採取管11及び冷媒注入管15を囲うように、被採取領域1に断熱管16を挿入し(断熱管挿入工程)と、冷媒注入管15内に冷媒18を注入し、試料採取管11の下端近傍の被採取領域1を凍結させて試料採取管11の下端を閉塞することができる(試料採取管閉塞工程)。これにより試料採取管11に収容された試料を試料採取管11と一緒に引き上げることで、試料を採取することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料採取方法およびその試料採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の強度や変形などの力学特性および生態系、各種汚染などの地盤環境状況を調査するために行われる地盤中の試料は、熱や水を加えず、攪乱することなく不攪乱採取することが望ましい。一般に低強度粘性土地盤や砂質土の不攪乱試料採取は、サンプラーによる採取や地盤全体を凍結させるロータリー式ボーリングでサンプリングする方法や、各種特殊サンプラーで行っている。しかし、サンプラーによる採取は、1回の採取量が少なくて、試料調査に必要な採取量に達するまで何回も採取しなければならない。また、採取した試料を調査に適した形状に成型する工数の多い成型作業が必要になる。地盤全体を凍結させるサンプリング法は、地盤全体を凍結させることによる地盤環境の変状が生じる不具合がある。さらに、特殊サンプラーによる採取法を含め、採取のための設備が高コストになる、長時間採取となる、大型重量機器作業となる、といった諸問題がある。
【0003】
これらの問題から、点吸引式ボーリングにより不攪乱状態で試料を採取する装置が開発され、実用化されている(例えば、特許文献1参照)。この試料採取装置は、被採取領域である地盤に挿入して地盤中の試料を管内部に収容する内管(試料採取管)と、試料採取管の外周に隙間を持たせて配備した外管と、内管と外管の間に配置した複数本の吸引管と複数本の冷媒注入管を備えている。内管の下端部を地盤に静的貫入させ、外管の下端を地盤に接触させて内管との間の地盤表層部の土砂を吸引管で吸い込んで除去する。この土砂除去の動作を繰り返し行うことで、内管をさらに地盤に静的貫入させ、内管の内部に規定量の試料を収容する。地盤に内管を所定深さまで静的貫入させ、内管の下端より少し下方にある地盤に、冷媒注入管の下端部を挿入して冷媒の液体窒素を注入し、地盤を凍結させる。この凍結で内管の下端近傍域の地盤全体を凍結させて凍結塊を形成し、この凍結塊で内管の下端部を閉塞する。内管を下端部の凍結塊と共に地盤から引き上げて試料を採取する。
【特許文献1】特開2004−45308号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように冷媒注入管から液体窒素を地盤に直接に注入して凍結させる場合、地盤の状況によって液体窒素の浸透状況が変動し、安定した形態で凍結させることが難しい。また、地盤に浸透した冷媒の全てが凍結に有効利用されたかが不明なため、使用する冷媒の量の適正な管理が難しく、適正な凍結作業をするには作業員に高度な熟練をする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る試料採取方法は、試料を採取する被採取領域に下端が開口した試料採取管を貫入する試料採取管貫入工程と、被採取領域に貫入した試料採取管の下端周辺に、下端を閉塞した冷媒注入管を挿入する冷媒注入管挿入工程と、試料採取管及び前記冷媒注入管を囲うように、被採取領域に断熱管を挿入する断熱管挿入工程と、冷媒注入管内に冷媒を注入し、前記試料採取管の下端近傍の被採取領域を凍結させて試料採取管の下端を閉塞する試料採取管閉塞工程とを備えたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る試料採取装置は、被採取領域に貫入する下端が開口した試料採取管と、試料採取管の下端周辺の外側に延在した、下端を閉塞した冷媒注入管と、試料採取管及び前記冷媒注入管を囲うように配設した断熱管とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る試料採取方法によれば、冷媒が地盤などの被採取領域に注入されず、冷媒注入管内に注入して冷媒注入管を介して吸熱させながら被採取領域を凍結させるので、冷媒の使用量と被採取領域の凍結状態との相関関係が明確に把握できて、冷媒の適正な管理が容易にでき、この適正な管理で冷媒の有効利用率を改善することができる。さらに、冷媒を被採取領域に注入しないので、冷媒が地盤などの被採取領域に与える影響がなくなり、採取する試料への影響を極力少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る試料採取方法及びその装置を図面に基づいて説明する。
【0009】
試料採取装置10は、図1に示すように、被採取領域1に貫入する下端が開口した試料採取管11と、試料採取管11の下端周辺の外側に延在した、下端を閉塞した冷媒注入管15と、試料採取管11及び冷媒注入管15を囲うように配設した断熱管16とを備えている。
【0010】
この試料採取装置10によれば、試料を採取する被採取領域1に試料採取管11を貫入し(試料採取管貫入工程)、被採取領域1に貫入した試料採取管11の下端周辺に、下端を閉塞した冷媒注入管15を挿入し(冷媒注入管挿入工程)、試料採取管11及び冷媒注入管15を囲うように、被採取領域1に断熱管16を挿入し(断熱管挿入工程)、冷媒注入管15内に冷媒18を注入し、試料採取管11の下端近傍の被採取領域1を凍結させて試料採取管11の下端を閉塞する(試料採取管閉塞工程)。これにより試料採取管11に収容された試料を試料採取管11と一緒に引き上げることで、試料を採取することができる。
【0011】
以下、この試料採取装置10及びその試料採取方法を詳細に説明する。
【0012】
図1に示される試料採取装置10は、例えば、飽和地盤や含水量の多い不飽和地盤において、試料を採取する場合にも適用可能である。以下、ここでの被採取領域1を必要に応じて地盤1と称する。
【0013】
試料採取装置10は、図1に示すように、この実施形態では、試料採取管(内管)11と、吸引掘進管(外管)12と、ガイド管13と、吸引管14と、冷媒注入管15と、断熱管16で構成している。
【0014】
試料採取管11は、被採取領域1に貫入するべく下端が開口したものであって、地盤1に静的貫入される略鉛直な円筒状のものを用いている。試料採取管11の下端部外周縁は、逆円錐状のテーパ面31に形成している。
【0015】
吸引掘進管(外管)12は、試料採取管11の外周に所定の隙間を持たせて同軸に配置した円筒状の外管である。吸引掘進管12の下端部外周にガイド管13が固定されている。ガイド管13の下端は、吸引掘進管12の下端より少し下方に位置する。
【0016】
試料採取管11は、上端に蓋板21が固定され、この蓋板21の上面中央に鉛直な支持ロッド22の下端部が固定されている。支持ロッド22は回転筒24を貫通するように装着しており、回転筒24の上方に延在した支持ロッド22の上端部に吊りワイヤ25を繋留している。吊りワイヤ25は、図示しない櫓で吊り下げられ、支持ロッド22を介して図1に示す試料採取装置10全体を上下動可能に吊り下げて支持している。回転筒24の下端には、蓋板23が固定されており、蓋板23の下面に、吸引掘進管12の上端を固定している。回転筒24と吸引掘進管12は蓋板23の上下面に同心軸上に固定している。回転筒24の上端部には略水平なハンドル26を固定している。回転筒24は支持ロッド22に対して周方向に回転自在に装着しており、ハンドル26を操作することにより、回転筒24、蓋板23及び吸引掘進管12が回動操作できる。回転筒24の途中の上下2箇所には保護枠27、28を連結している。上下の保護枠27、28には、吸引管14と冷媒注入管15を上下に貫通させている。吸引管14と冷媒注入管15は、試料採取管11と吸引掘進管12の間の周方向隙間Sに延在させている。
【0017】
吸引管14は、図2に示すように、試料採取管11と吸引掘進管12の間の周方向隙間Sに複数配設されており、この実施形態では、斯かる周方向隙間Sに6本配設、周方向等間隔(60°間隔)で軸方向に延在させている。吸引管14は、それぞれ保護枠27、28、及び、吸引掘進管12の内周面に固定している。吸引管14の下端は開口し、吸引掘進管12の下端とほぼ同じ高さまで延在している。吸引管14の上端はハンドル26上に固定した吸引手段29に連結している。吸引手段29は、例えば、吸引ポンプで構成できる。
【0018】
冷媒注入管15は、図1に示すように、試料採取管11の下端周辺の外側に延在し、下端を閉塞した管で構成している。この実施形態では、冷媒注入管15は、試料採取管11と吸引掘進管12の間の周方向隙間Sに、周方向に複数配設している。図2に示す例では、冷媒注入管15は、吸引管14と同様に6本で、それぞれ周方向において吸引管14の中間に延在させ、保護枠27、28、及び、吸引掘進管12の内周面に固定している。冷媒注入管15は、下端部32は試料採取管11の下端より下方に15〜30mm突出するように、試料採取管11に対して軸方向に相対移動可能に配設している。
【0019】
冷媒注入管15は、少なくとも下端を熱伝導と耐久性に優れた金属製熱伝導管で構成するとよい。また、冷媒注入管15の下端部32は、断熱部材を用いて閉塞してもよい。この実施形態では、図3に示すように、冷媒注入管15の下端32は、断熱部材17で閉塞している。断熱部材17は断熱性を備えた円柱状の硬質ゴムで、樹脂接着剤を付けて冷媒注入管15の下端開口部に圧入して定着させている。
【0020】
断熱管16は、試料採取管11及び冷媒注入管15を囲うように配設した断熱性を有する管体である。この実施形態では、断熱管16は、厚さ0.5mm〜5.0mm程度のアクリル製の円筒で、冷媒注入管15に取り付けられ、冷媒注入管15の下端より下方に5.0mm程度突出させている。冷媒注入管15と断熱管16は、試料採取管11に対して軸方向に相対移動可能に配設し、かつ、試料採取管11に対する進退操作可能に配設している。なお、断熱部材の材料や形状は上記に限定されず、種々変更可能である。
【0021】
冷媒注入管15の上部は、図1に示すように、保護枠28を貫通しており、その開口した上端には漏斗部33を一体に設けている。冷媒注入管15は、図4に示すように、下端を閉塞した管で、漏斗部33から規定量の冷媒18を注入すると、冷媒18は冷媒注入管15内を流下して下端部32内に貯留される。冷媒18には、例えば、液体窒素を用いることができる。なお、冷媒18には液体窒素以外の二酸化炭素などを使用することもできるが、液体窒素を用いるのが冷却性能、安全性、低コスト化の点で優位である。
【0022】
以下、図1の試料採取装置10で試料を採取する各工程を説明する。
【0023】
図1の試料採取装置10で試料を採取する際は、まず、試料採取管11を地盤1に嵌入させる(試料採取管貫入工程)。試料採取管11を地盤1に嵌入させる際は、図5(A)の状態で試料採取管11に重り(図示せず)などで静的貫入力Pv(等分布荷重)を掛け、吸引手段29を作動させ、吸引管14で地盤1の表層部41を吸引除去することにより行う。
【0024】
この実施形態では、図5(A)に示すように、試料採取管11の下端部外周を逆円錐状のテーパ面31に形成している。このため、試料採取管11を地盤1に嵌入させると、試料採取管11の下端部31が地盤1に初期貫入量h貫入した状態で安定する。すなわち、この際、試料採取管11に作用する静的貫入力Pvは、図6に示すように、試料採取管11の下端部外周縁のテーパ面31から地盤1に斜め外方に作用する力Piと、試料採取管11の下端部内周面から地盤1に内方に作用する力Po及び剪断力Fvに分力される。これに対して試料採取管11の下端部31に作用する地盤1の反力および摩擦力が釣り合うように、試料採取管11の下端部31が地盤1に嵌入する。
【0025】
この初期貫入で安定している状態において、図5(B)に示すように、試料採取管11の下端部外側に延在した吸引管14で地盤1の表層部41を吸引し除去(除荷)する。この除荷は、ハンドル26を手動で回転させて6本の吸引管14を試料採取管11の回りに旋回させながら行い、試料採取管11の外周全周にわたって吸引管14で地盤1の表層部41を吸引し除去していく。試料採取管11の外周において地盤1の表層部41を除去すると、上記釣り合いが崩れ、これに対して再度、試料採取管11に対して作用する静的貫入力Pvと、地盤1の反力および摩擦力が釣り合うように、深さHxだけ試料採取管11が地盤1に静的に再貫入する。このように吸引管14により地盤1の表層部41を吸引除去することにより、試料採取管11の貫入が進行する。
【0026】
そして、図5(C)に示すように、この再貫入毎に試料採取管11の中に試料42が取り込まれる。試料採取管11の静的貫入が終了すると、所定量の試料42が試料採取管11内に収容される。また、この試料採取装置10は、吸引管14で試料採取管11周囲の地盤1の表層部41を除去しながら試料採取管11を貫入させるので、試料採取管11が所定の深さに達したときには、試料採取管11の周囲に穴20が形成される。
【0027】
次に、図5に示すように、冷媒注入管15と断熱管16を、試料採取管11の周囲に形成された周方向の穴20に進入させ、斯かる穴20の底において、それぞれ地盤1に押し込み、試料採取管11の下端より少し深い位置まで挿入する(冷媒注入管挿入工程、断熱管挿入工程)。
【0028】
そして、冷媒注入管15内に冷媒18を注入し、試料採取管11の下端近傍の地盤43を凍結させて試料採取管11の下端を閉塞する(試料採取管閉塞工程)。
【0029】
この試料採取管閉塞工程では、各冷媒注入管15には、予め設定された規定量の冷媒18を注入するとよい。冷媒としての液体窒素18の1回の注入量は数cc程度で、何回かの実験データに基づいて適量を予め決めるとよい。冷媒注入管15の下端部32内に液体窒素18が注入されると、下端部32の管壁を介して試料採取管11の下端近傍の地盤43が冷やされ、斯かる地盤43の凍結が始まる。また、冷媒注入管15の下端部32に注入された液体窒素18は、試料採取管11の下端近傍の地盤43から熱を吸収することにより蒸発する。蒸発した液体窒素18は、冷媒注入管15の上端開口の漏斗部33から大気に放出される。下端部32の液体窒素18が蒸発により無くなると、冷媒注入管15に2回目の冷媒注入を行う。このような冷媒注入を試料採取管11の下端近傍の地盤43が完全に凍結するまで、実験データに基づく回数だけ繰り返し行う。
【0030】
図7に冷媒注入管15による試料採取管11の下端近傍における地盤43の凍結の進行状況を示す。冷媒注入管15の外側には断熱管16があるので、断熱管16の外側の地盤に対しては、凍結はほとんど進まない。このため、冷媒18の吸熱作用は、断熱管16の内側の地盤1bに対して集中して作用し、凍結は断熱管16の内側で進行していく。また、この実施形態では、冷媒注入管15の下端32を断熱部材17で閉塞しているので、冷媒注入管15から下方の地盤に対しては凍結があまり進まず、地盤1bの凍結は半径方向内側に進行する。
【0031】
なお、6本の冷媒注入管15に対しては、6本同時に冷媒を注入して、断熱管16の内側の地盤を6本の冷媒注入管15により6方向から同時に凍結させることも可能である。また、試料採取管11の外側に周方向等間隔に配設された冷媒注入管15に対して、タイミングを少しずらして所定の順番に冷媒を注入してもよい。
【0032】
また、図8(A)〜(C)に示すように、6本の冷媒注入管15a〜15fに対して、タイミングを少しずらして所定の順番で冷媒を注入して、断熱管16の内側の地盤1を6本の冷媒注入管15により6方向から所定の順番に凍結させることも可能である。この際、例えば、図8(A)に示すように、直径方向に対向する2本の冷媒注入管15a、15dに冷媒を入れて、斯かる2本の冷媒注入管15a、15dを配設した方向から地盤1を凍結させ、次に、図7(B)に示すように、先の2本の冷媒注入管15a、15dのそれぞれ右回り方向に隣接する別の2本の冷媒注入管15b、15eに冷媒を注入して、斯かる2本の冷媒注入管15b、15eを配設した方向から地盤1を凍結させ、最後に、図8(C)に示すように残り2本の冷媒注入管15c、15fに冷媒を注入して、斯かる2本の冷媒注入管15c、15fを配設した方向から地盤を凍結させてもよい。
【0033】
このように、試料採取管11の周囲に配設された複数の冷媒注入管15に対して、タイミングを少しずらして所定の順番に冷媒18を注入して、試料採取管11の下端近傍の地盤43を所定の方向から所定の順番に凍結させることも可能である。これにより、断熱管16で囲まれた領域において、試料採取管11の下端近傍の地盤43を効率よく、かつ、より確実に凍結させて試料採取管11の下端を閉塞することができる。
【0034】
このように試料採取管11の下端近傍における地盤43を凍結させると、試料採取管11の下端を閉塞して凍結した地盤43の塊は、各冷媒注入管15の下端部32と試料採取管11の下端部に食い込むように強固に固着する。そして、斯かる試料採取管11を冷媒注入管15および断熱管16と一緒に引き上げると、その下端部に凍結した地盤の塊が固着した状態で引き上げられる。これにより、試料採取管11内に収容された試料42は、試料採取管11から脱落せずに採取される。このように試料採取管11により採取された試料42は、試料採取管11により形状と量が規定されるため、この形状と量を地盤調査に使用される形状と量に予め規定しておくことで、後の地盤調査のための成型作業を簡易にすることができる。
【0035】
以上のとおり、この試料採取装置10によれば、冷媒18が地盤1に注入されず、冷媒注入管15内に注入して冷媒注入管15を介して吸熱させながら地盤1を凍結させるので、冷媒18の使用量と地盤1の凍結状態との相関関係が明確に把握できて、冷媒18の適正な管理が容易にでき、この適正な管理で冷媒18の有効利用率を改善することができる。さらに、冷媒18を地盤1に注入しないので、冷媒18が地盤1に与える影響がなくなり、採取する試料への影響を極力少なくすることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0037】
例えば、冷媒注入管15の下端部32は、例えば図9に示すように、先端の尖った断熱部材17で閉塞した構造にすることもできる。断熱部材17は、地盤などの試料を採取する用途では、所要の剛性を備えているのが好ましい。また、汚泥などの試料採取に用いる場合などでは要求される剛性の程度も小さく、例えば木栓でもよい。また、冷媒注入管15を地盤1に静的貫入させて試料採取する際に、吸引堀進管12で地盤が崩れるのを防止した試料採取装置で説明したが、汚泥地層や液層など、流動性のある被採取領域において試料を採取する場合は、試料採取管や冷媒注入管や断熱管をそのまま挿入できるので、吸引掘進管や吸引管を省略することも可能である。
【0038】
また、斯かる試料採取装置は、試料採取管で地盤中の試料を不攪乱状態で採取するのに用いることができるが、他の用途として、地盤に埋設された地雷や不発弾を撤去する装置として、また、河川や湖底、海底の汚泥地層の試料を採取する汚泥試料採取装置などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る試料採取装置を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る試料採取装置の底面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る試料採取装置における冷媒注入管の下端部の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る試料採取装置における試料採取管閉塞工程の状態を示す部分断面図である。
【図5】(A)〜(C)は本発明の一実施形態に係る試料採取装置における試料採取管貫入工程の各動作時の概要を示す斜視図である。
【図6】試料採取管貫入工程の状況を示す断面図である。
【図7】試料採取管閉塞工程の状況を示す断面図である。
【図8】(A)〜(C)は、それぞれ試料採取管閉塞工程の地盤の凍結状態を示す図である。
【図9】他の実施形態に係る冷媒注入管の下端部の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 地盤(被採取領域)
10 試料採取装置
11 試料採取管
12 吸引堀進管
14 吸引管
15 冷媒注入管
16 断熱管
17 断熱部材
18 液体窒素(冷媒)
42 試料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を採取する被採取領域に下端が開口した試料採取管を貫入する試料採取管貫入工程と、
前記被採取領域に貫入した試料採取管の下端周辺に、下端を閉塞した冷媒注入管を挿入する冷媒注入管挿入工程と、
前記試料採取管及び前記冷媒注入管を囲うように、被採取領域に断熱管を挿入する断熱管挿入工程と、
前記冷媒注入管内に冷媒を注入し、前記試料採取管の下端近傍の被採取領域を凍結させて試料採取管の下端を閉塞する試料採取管閉塞工程と、
を備えたことを特徴とする試料採取方法。
【請求項2】
前記冷媒注入管は、前記試料採取管の外側において周方向に複数本配設していることを特徴とする請求項1に記載の試料採取方法。
【請求項3】
被採取領域に貫入する下端が開口した試料採取管と、
前記試料採取管の下端周辺の外側に延在した、下端を閉塞した冷媒注入管と、
前記試料採取管及び前記冷媒注入管を囲うように配設した断熱管と、
を備えたことを特徴とする試料採取装置。
【請求項4】
前記冷媒注入管は、下端を断熱部材で閉塞したことを特徴とする請求項3に記載の試料採取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−132058(P2007−132058A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325181(P2005−325181)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】