説明

試薬カートリッジ容器用押さえ具

【課題】
試薬類が封入された試薬カートリッジ容器を専用測定装置内で固定する際に、固定が不十分であると、サンプリングノズルの吸排異常、カートリッジの転倒、光学的測定における光路変化等の問題が発生する。容器の開口がシールされていると、シール開封時の試薬の飛散や、シールブレイカーを別途設ける必要がある。
【解決手段】
開口部がシールされた試薬カートリッジ容器を測定装置内で固定する押さえ具であって、
(1)試薬カートリッジ容器の上面を覆う大きさに形成された基板と、
(2)基板に設けられた、試薬カートリッジ内の試薬を吸排するためのサンプリングノズルの昇降運動を妨げないような貫通孔と、
(3)貫通孔周辺に設けられた、シールを開封するためのブレイカー部と、
を有し、該測定装置内で昇降移動と、任意で水平移動が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬類が収容された試薬カートリッジ容器を、その専用測定装置内で固定するための押さえ具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの血液等の体液中の微量成分を定量分析することにより、病気の診断や治療に役立たせようとするいわゆる診断薬の分野において、従来から、種々の特異選択的反応が利用されている。このような特異選択的反応は、血液等の体液を検体とし、この中に存在する蛋白質等の微量成分の量を測定することを目的とするものであり、例えば、抗原抗体反応等が挙げられる。また、このような抗原抗体反応と発色等の測定に必須の反応とを組み合わせることにより、いわゆる免疫測定法等が行われている。
【0003】
近年、この分野での改良が進み、現在では免疫測定法の工程のすべてを自動的に行う自動測定法が盛んになってきている。それらは、図5におけるBで示されるように、必要な全ての試薬類がパック化された複数個の槽を有するカートリッジを用い、カートリッジに対応する専用の自動測定装置で簡易に分析が可能なものである。使用者はカートリッジ内の反応槽へ検体を入れ、自動測定装置へセットするだけでよい(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0004】
これらのカートリッジは、封入された試薬を保護するために、アルミラミネート片等で貼着されていることが通常である。そのアルミシールは、測定前に使用者に予め剥がされるか、測定装置内のシールブレイカー等に自動的に破かれることで、試薬類が反応に呈される。なお、図5におけるBは、既にアルミシールを剥がした状態を示す。
【0005】
このようなカートリッジ試薬へ適用される免疫測定法としては、酵素免疫測定法(EIA法)や、蛍光免疫測定法(FIA)、化学発光免疫測定法(CLIA)、免疫比濁法(TIA法)、ラテックス免疫比濁法(LTIA)などがあるが、このなかでも、酵素免疫測定法(EIA)及びラテックス凝集法は、光学測定を行うことで高感度でありながらも平易な測定法として汎用されている。
【0006】
【特許文献1】特開平3−181853号公報
【特許文献2】特開平8−122336号公報
【特許文献3】特開平11−316226号公報
【特許文献4】特開2001−318101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カートリッジを装置内にセットするだけのシステムは、使用者にとって使い易い反面、カートリッジのセット状態や、測定中の外力(振動など)により、装置内においてカートリッジ内の試薬の吸排行為を行うためのサンプリングノズルが望まない槽に挿入されたり、ノズルがカートリッジの上面に当たることでカートリッジの転倒事故が発生したり、不安材料が存在する。また、例えば光学測定を行う場合ならば光路が変化してしまい、測定精度が悪化する可能性がある。
【0008】
また、カートリッジ内の各槽が開放状態になる場合、迷光対策も必要となる。測定装置は遮光のためのカバーが装備されていることが通常だが、そのカバーの閉じ方が不充分である場合や、装置内部の発光物に注意する必要もあり、迷光対策は重要である。
【0009】
また、アルミラミネートでシールされているカートリッジの場合、手で剥がすと試薬が飛散する危険性もあるために、装置内部で自動的にシールを破ることが好ましいが、自動的にシールへ穴を開けるためだけの機構を付属させると、装置自体の構造が複雑になり、故障頻度の高い高価な装置になってしまう。かといって、装置内においてカートリッジ内の試薬の吸排行為を行うためのサンプリングノズルをシールブレイカーとして兼用させると、サンプリングノズルの破損等につながる。
【0010】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたもので、試薬カートリッジ容器を測定装置内で確実に固定し、迷光を防ぐこともでき、安全にシールを破きつつ、サンプリングノズルでの吸排動作を円滑に行うことを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明は、開口部がシールされた試薬カートリッジ容器を測定装置内で固定する押さえ具であって、
(1)該試薬カートリッジ容器の上面を覆う大きさに形成された基板と、
(2)該基板に設けられた、該試薬カートリッジ内の試薬を吸排するためのサンプリングノズルの昇降運動を妨げないような貫通孔と、
(3)該貫通孔周辺に設けられた、該シールを開封するためのブレイカー部と、
を有し、該測定装置内で昇降移動が可能であることを特徴とする試薬カートリッジ容器用押さえ具である。
【0012】
基板は、試薬カートリッジ容器の上面を覆う大きさであるため、例えば試薬カートリッジ全体を均一に押さえることができる。
【0013】
基板は貫通孔を有している。この貫通孔は、試薬カートリッジ容器における各槽に対応した個数と位置で存在しており、試薬カートリッジ内の試薬を吸排するためのサンプリングノズルの昇降運動を妨げないようになっている。
【0014】
貫通孔周辺には、シールを開封するためのブレイカー部が設けられている。ブレイカー部は、一般的なシールブレイカーと同様に、鋭利な先端を有する平刃であったり、貫通孔周辺に沿った円筒形の薄刃などを使用したりすることができる。基板が試薬カートリッジの上面へ当接された際に、当該ブレイカー部が自動的にシールを破くことができるように、ブレイカー部の先端は下方を向きつつ、基板から突き出している格好になる。ブレイカー部は貫通孔の周辺に設けられているために、貫通孔を塞ぐことはなく、サンプリングノズルが貫通孔を通して試薬カートリッジ内の試薬を吸排する際の妨げにはならない。
【0015】
基板が試薬カートリッジの上面へ当接されるために、本発明の押さえ具は、測定装置内で昇降移動が可能であることが、構成として必要である。基板の昇降動作は、測定装置内の機構により達成できる。測定装置内において、使用前には基板は持ち上げられている状態にあり、試薬カートリッジ容器が測定装置内の所定の箇所にセットされると、基板が降下し、試薬カートリッジの上面へ当接される。ブレイカー部によるシールの開封行為のための相対的水平移動動作もまた、測定装置内の機構により達成できる。
【0016】
本発明の試薬カートリッジ容器用押さえ具は、さらに、該ブレイカー部による該シールの開封行為のために、相対的水平移動が可能であることもできる。これは、ブレイカー部が降下してシールを突き破った後、そのままシールを引き裂く原理でシールを完全に破断させるものである。試薬カートリッジ容器と押さえ具が「相対的に」水平移動すればよく、試薬カートリッジ容器を固定して押さえ具側を水平移動させてもよいし、押さえ具を固定して試薬カートリッジ容器側を移動させてもよい。この態様は、ブレイカー部が一般的なシールブレイカーと同様に鋭利な先端を有するリーマー状の突刃や、平刃である際に特に有効である。
【0017】
本発明の試薬カートリッジ容器用押さえ具は、基板が光非透過性物質であることもできる。例えば、光学測定用のためにカートリッジ本体が透明材質(ポリスチレンなど)で成型されていた場合などに、カートリッジ上部からの望まない迷光を防ぐことができる。
【0018】
本発明の押さえ具はさらに、試薬温度をモニタリングするセンサを有することもできる。このような試薬カートリッジと測定装置が用いられる際、一般的に、測定装置内部において、外部からの熱的影響をキャンセルしつつ、試薬カートリッジ内部での試薬および検体の反応促進を目的として、温度調節が行われるが、本発明の試薬カートリッジ容器用押さえ具はその際の試薬温度を一時的又はリアルタイムで計測する。このとき、試薬や検体の温度を計測する際には、測定装置内部の雰囲気温度、または試薬が封入されたカートリッジ表面の温度を計測することで、その試薬の温度であるとして間接的に認識する。温度センサで得られた温度情報が、カートリッジ全体の温度調節へフィードバックされる。測定装置におけるカートリッジの温度調節方法は、ヒータを仕込まれた金属ブロックが使用されることが一般的である。例えば、カートリッジに接触する金属ブロックの裏側にシリコンラバーヒータを取りつけて、PID温度制御により該カートリッジ内の複数槽の温度調節を行うことができる。
【0019】
本発明の押さえ具はさらに、ヒータを有することもできる。試薬カートリッジ容器は測定装置内で恒温的に維持されることが通常であり、そのために試薬溶液が蒸発し、試薬槽の内側が曇る場合がある。試薬槽内部が曇ると光学セルを兼用している場合には光学測定結果へ影響を与え、また、溶媒が蒸発することで、性格な濃度で試薬反応が起こらない。しかし、押さえ具内部のヒータが、試薬カートリッジ上面を温めることで、蒸発した溶媒が凝縮しなくなり、曇りが抑えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の押さえ具を用いると、開口部がシールされた試薬カートリッジ容器を測定装置内で確実に固定できると共に、シールを自動的に破いて槽を開封することができ、かつ試薬のサンプリングを妨害することもなく、さらに迷光対策用の部品を追加することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の試薬カートリッジ容器用押さえ具は、図1に示すとおり、基本的に、基板1、貫通孔2、ブレイカー部3とからなる。本発明において、装置内で昇降移動が可能であることが構成的に必須ではあるが、図1にはその動きを図示していない。図1は、Iが上方からの斜視図、IIが下方からの斜視図、およびIIIが断面概念図をそれぞれ示す。図1に示す基板1は、複数個の貫通孔2を有する板状の部材である。別の一態様として、図3に示すように貫通孔2が1個という場合もある。図3では、Iが上方からの斜視図、IIが断面概念図である。
【0022】
図1に示すブレイカー部3は、貫通孔2の周縁から伸長して突き出した円筒形を有している。基板1が試薬カートリッジの上面へ当接された際に、ブレイカー部3が自動的にシールを貫くことができる。なお、この円筒形ブレイカーがシールを貫く際、ブレイカー部3に切り取られたシールの切り屑(シール屑)が、試薬カートリッジ容器の槽へ落ち込んでしまう可能性があるものの、シール屑の組成が、続く化学反応を阻害したり、光学的測定を妨害したりしなければ、シール屑が槽へ落ち込んでも問題はない。若しくは、シール屑が落ち込まないように、つまりシール屑がブレイカー部で完全に切り取られないように、円筒形ブレイカーの刃部の一部を切り欠いておき、シール屑の一部が試薬カートリッジ側に繋がって残るように構成することもできる。また、図示はしないが、円筒形ブレイカーの先端縁に多くの歯を形成し、鋸状としてもよい。
【0023】
また、本発明の別の態様の試薬カートリッジ容器用押さえ具は、図2に示すとおり、基本的に、基板1、貫通孔2、平刃の先端を有する板状ブレイカー部4とからなる。このとき、本発明において昇降能力と相対的水平移動能力は構成的に必須であるが、図2には図示していない。図2は、いが上方からの斜視図、IIが下方からの斜視図である。ブレイカー部4の先端は、平刃となっており、ブレイカー部4が降下してシールを突き破った後、試薬カートリッジ容器と押さえ具が相対的に水平移動することでシールを引き裂き、平刃の幅と同じ幅の開封部を得ることができる。また、リーマーのような錐状の突刃物であっても、好ましく使用することができる。なお、図3に示す貫通孔2が1個の態様において、ブレイカー部4は平刃の先端を有する板状タイプを示している。
【0024】
図4は、本発明の押さえ具Aが、試薬カートリッジ容器Bへ適用される位置関係を示すものである。図5は、図4の位置にあった押さえ具Aが降下し、試薬カートリッジ容器Bの上面へ当接している状態を示すものである。なお、図4においては、試薬カートリッジ容器Bの上面に貼着されている、カートリッジ内に封入された試薬を保護するためにアルミラミネート片を、ブレイカー部と容器の各槽との位置関係を明確にするために、省略している。
【0025】
図4および図5において、本発明の押さえ具Aと、試薬カートリッジ容器Bとが、図のような位置関係を示すことで、それぞれのブレイカー部が試薬カートリッジ容器のそれぞれの槽へ入り込むことが好ましいために、ブレイカー部の大きさは、各槽の開口部の直径に依存する。円筒形のブレイカー部ならばその円筒形の直径を、平刃型のブレイカー部ならばその平刃の幅を、適宜変更すればよい。ブレイカー部の長さも、カートリッジ容器における槽の深さや内部構造を鑑みて、例えば3mmから10mmなどの長さを取り得る。
【0026】
本発明に関わる試薬カートリッジ容器用押さえ具の形状と大きさは、その基板の形状と大きさに依存する。図4および図5に一連の位置関係を示すように、基板が試薬カートリッジ容器の上面を覆うことが必須であるため、その基板の大きさは、試薬カートリッジ容器の上部面積、ひいては試薬カートリッジ容器の大きさに依存する。すなわち、上記カートリッジの大きさが、自動測定装置に組み込んで用いるためにはより小型であることが好ましいため、押さえ具の形状と大きさは、例えば、縦1〜10cm、横0.5〜5cm、厚さ0.3〜3cm程度の、比較的小型の直方体が挙げられる。
【0027】
基板における貫通孔は、試薬カートリッジ内の試薬を吸排するためのサンプリングノズルの昇降運動を妨げないような条件であれば、個数に制限はなく、試薬カートリッジが例えば7個の槽を有するのであれば、この貫通孔は例えば7個である。もちろん、シールにおける開封の必要性や、基板に対して小さな上面面積を有する試薬カートリッジの場合などを考慮すれば、貫通孔の数が試薬カートリッジにおける槽の数に必ずしも一致しないこともある。例えば、貫通孔が7個で槽が6個、貫通孔が5個で槽が8個という可能性もある。先述の図3のように、貫通孔が1個という場合もある。
【0028】
基板に開けられる貫通孔の大きさは、基板が試薬カートリッジ容器の押さえとして充分に耐え得る強度と構造を保つことができ、かつブレイカー部の設置面積を確保でき、かつ開口された試薬容器への迷光を考慮できるだけの光非透過性を維持できるのであれば、大きさに上限はない。また、貫通孔を通して、サンプリングノズルが試薬カートリッジ内の試薬を吸排するために昇降運動を行うため、該サンプリングノズルが問題なく昇降できるサイズであれば、貫通孔の大きさに下限はない。複数の貫通孔が繋がり、基板の一部がハニカム構造を有しても良い。
【0029】
貫通孔の形状は、円形が好ましいが、楕円形、多角形など、様々な形状を取り得る。また、一つの基板における全て貫通孔が同じ大きさ・形状で統一される必要もなく、試薬カートリッジにおける測定項目や種類、メーカーによる形状の差に応じて、またはそれらを区別することなしに押さえることができるように、かつ基板へ迷光防止の目的を持たせられる範囲内で、貫通孔の位置を含めて、貫通孔の大きさや形状を自由に設定することができる。
【0030】
基板1の材質は、確実にその重量でカートリッジを押さえることができ、かつある程度の剛性を有し、また後述の温度センサが内部に仕込まれる可能性を鑑みて、金属材料からなることができる。その場合、加工し易いようにアルミニウムや銅を用いることができる。その他、各種セラミック、プラスチック、耐熱樹脂なども好ましく使用できる。
【0031】
ブレイカー部の材質は、基板の材質と統一させても良いし、基板の材質と統一すると共に一度に成型しても良いし、別の材質で成型してから基板と接合しても良い。たとえば、基板が金属であってブレイカー部が金属である場合、基板が耐熱樹脂であってブレイカー部が金属である場合、基板がセラミックであってブレイカー部が耐熱樹脂などの組み合わせが挙げられる。
【0032】
本発明に関わる試薬カートリッジ容器用押さえ具が、測定装置内で昇降移動が可能であるために、測定装置側へ、押さえ具を支持する部材からなる支持腕を備えることができる。該支持腕は、押さえ具における基板の一部と接続されており、基板へ昇降動作を付すために、モータ等により駆動するこができる。下降の際のストロークは予め調整しておくこともでき、押さえ具における基板がカートリッジ容器の上面へ当接することで自動的に下降を停止する構造にすることもできる。なお、この支持腕の下方方向へのトルクにより、試薬カートリッジへの付勢が十分であり、試薬カートリッジを押さえることが可能であれば、基板自身が相当の重量を有する必要はない。
【0033】
本発明に関わる試薬カートリッジ容器用押さえ具が、ブレイカー部によるシールの開封行為のために、相対的水平移動を可能せしめる場合、測定装置側へ、押さえ具を支持する部材からなる支持腕を備えることができる。この水平移動のための支持腕は、前述の昇降動作のための支持腕と共通にしてもよいし、昇降用とは別駆動系統の水平用の支持腕を設けても良い。押さえ具と試薬カートリッジ容器を相対的に水平移動させる際、試薬カートリッジ容器の転倒を防止するために、例えばカートリッジがセットされるスライドテーブル上の所定位置のセット部自身が、カートリッジを載せた状態(カートリッジとセット部が嵌合している等)で水平移動することもできる。
【0034】
本発明はさらに、基板が光非透過性物質であることもできる。光非透過性物質からなる基板が試薬カートリッジ容器の上面に当接し、完全に試薬カートリッジ容器の上面を覆う格好(図5の状態)になり、上方からの迷光が遮られる。この基板が光非透過性物質である場合には、材質として、金属、各種セラミック、有色樹脂なども好ましく使用できる。
【0035】
本発明はさらに、試薬温度をモニタリングするセンサを有することもできる。試薬や検体の温度を計測する際には、測定装置内部の雰囲気温度、または試薬が封入されているカートリッジ容器表面の温度を計測することで、その試薬の温度であるとして間接的に認識することが一般的である。本発明において、温度センサの種類は、熱起電力を計測し、温度換算するもの(熱電対など)、熱に敏感な抵抗体を用いて、温度変化によって変動する抵抗値を測定し温度換算するもの(サーミスタ、白金温度センサなど)、サーモスタットなどが好ましく使用できる。それら温度センサの構造や大きさは特に限定されないが、押さえ具における基板の表面または内部に取り付け可能であることが要求される。非接触型センサの他、カートリッジ上面に当接することを利用した接触型センサを使用することもできる。これら温度センサは、液体試薬や検体試料の影響を考えて、浸水防止のために防水処理を施したものを使用することができる。
【0036】
本発明の押さえ具はさらに、ヒータを有することもできる。カートリッジ上部に当接する基板へヒータを組み込むと好ましい。図5のように、基板がカートリッジ上面をあたかも蓋のように覆うことで、蒸発した溶媒を凝結させることなく保つことができる。また、試薬槽において熱放散が抑えられ、カートリッジ全体の温調を制御しやすくもなる。ヒータの種類としては、一般的な抵抗加熱によるヒータ、つまりシーズヒータ、シリコンラバーラインヒータ、シリコンコードヒータ、高電力金属皮膜抵抗などを使用することができる。過熱を防止するために、サーモスタットを組み込むこともできる。
【0037】
シール片としては、例えば、アルミニウム箔や高分子フィルム等を、例えば、ホットメルト型接着剤でカートリッジ上部表面に接着させたもの等が用いられる。アルミニウム箔によるシールは、ブレイカー部により容易に破られることができ、かつ密封性も良好であることから好ましい。
【実施例】
【0038】
さらに理解を深めるために、図6を利用して、本発明に係る試薬カートリッジ容器用押さえ具が使用される状態を例示する。なお、図6では、必要な構成のみを記載しており、特に説明のない限り、適宜省略された構成もある。
【0039】
図6における(1)は、試薬カートリッジBと、該試薬カートリッジBをセットすべきセット部Sと、本発明に係る押さえ具Aの、断面概念図と、それらの位置関係を示した観念図である。なお、セット部Sは主に、試薬の温度を調節するための温調ブロックも兼ねていることが通常であり、図6でもそのような構造を示唆しているが、もちろんこれに限るものではない。
【0040】
セット部Sと押さえ具Aの位置関係は、通常、試薬カートリッジBをセット部Sへセットしやすいように、セット部Sの真上に押さえ具Aは無い。使用者が試薬カートリッジBをセット部Sへセットしやすいように、セット部Sは測定装置(図示せず)の外部に露出していることが通常である。例えば、スライドテーブルの上にセット部Sが設置されており、そのスライドテーブルが測定装置内部へ引き込まれることで、試薬カートリッジBが装置内部へ誘導される。
【0041】
図6における(2)は、測定装置の機構により、試薬カートリッジBが測定装置内部へ誘導されている状態を示す。図から判るように、試薬カートリッジBが装置内へ引き込まれることで、押さえ具Aにおけるブレイカー部の直下に、試薬カートリッジBの開口部および開封されるべきシールが来る。試薬カートリッジBおよびセット部Sが引き込まれる際の構造は、図示していないが、スライドテーブルやアームなどが使用できる。
【0042】
続いて、図6における(3)に示すように、押さえ具Aが降下動作を開始し、押さえ具Aを構成する基板がカートリッジB上面に当接され、ブレイカー部がシールに穴を開ける。このとき、図6での実施態様は、ブレイカー部が平刃型のタイプを示しており、ブレイカー部がシールに刺さった状態で、続いて図6(4)に示すように、さらに試薬カートリッジBがセット部Sと共に測定装置内部へ水平移動し、シールがブレイカー部により引き裂かれ、シールが完全に破断される。このとき、図6(4)では、押さえ具Aを固定して試薬カートリッジB容器側を水平移動させているが、もちろん、試薬カートリッジB容器を固定して押さえ具A側を相対的に移動させてもよい。
【0043】
シールが完全に破断されると、図6(5)に示すように、基板に設けられた貫通孔を通してサンプリングノズルが槽内に差し込まれ、試薬液等の吸排運動が行われる。この後、例えば試薬カートリッジBが複数の槽を有しており、そのいくつかの槽において光学的測定を行う場合などは、吸引された試薬と検体が混合され、その光学的測定用の槽へ分注され、光学的測定が行われる。このとき、光非透過性の基板が完全に試薬カートリッジB容器の上面を覆う状態で当接されているため、外部からの迷光もなく、良好な光学的測定結果が得られる。なお、光学的測定は、図示していないがセット部S(温度調節ブロック兼用)の任意の箇所に光路用の極細貫通孔を設けるか、基板における貫通孔を利用して、測光を行う。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明にかかる試薬カートリッジ容器用押さえ具の、上方および下方からの斜視図、並びに断面概念図を示した図である。
【図2】本発明にかかる別の態様の試薬カートリッジ容器用押さえ具の、上方および下方からの斜視図を示した図である。
【図3】本発明にかかるまた別の態様の試薬カートリッジ容器用押さえ具の、上方からの斜視図、並びに断面概念図を示した図である。
【図4】本発明にかかる試薬カートリッジ容器用押さえ具の使用状態を示す観念図である。
【図5】本発明にかかる試薬カートリッジ容器用押さえ具の適用状態を示す観念図である。
【図6】本発明にかかる一態様の押さえ具の、試薬カートリッジ容器と組み合わされた状況を示す観念図である。
【符号の説明】
【0045】
1:基板
2:貫通孔
3:ブレイカー部
A:押さえ具
B:試薬カートリッジ
S:セット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部がシールされた試薬カートリッジ容器を測定装置内で固定する押さえ具であって、
(1)該試薬カートリッジ容器の上面を覆う大きさに形成された基板と、
(2)該基板に設けられた、該試薬カートリッジ内の試薬を吸排するためのサンプリングノズルの昇降運動を妨げないような貫通孔と、
(3)該貫通孔周辺に設けられた、該シールを開封するためのブレイカー部と、
を有し、該測定装置内で昇降移動が可能であることを特徴とする試薬カートリッジ容器用押さえ具。
【請求項2】
さらに、該ブレイカー部による該シールの開封行為のために、相対的水平移動が可能である、特許請求の範囲第1項に記載の試薬カートリッジ容器用押さえ具。
【請求項3】
基板が光非透過性物質である、特許請求の範囲第1又は2項に記載の試薬カートリッジ容器用押さえ具。
【請求項4】
さらに、試薬温度をモニタリングするセンサを有する、特許請求の範囲第1から3項のいずれかに記載の試薬カートリッジ容器用押さえ具。
【請求項5】
さらに、ヒータ機能を有する、特許請求の範囲第1から4項のいずれかに記載の試薬カートリッジ容器用押さえ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−125978(P2006−125978A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313909(P2004−313909)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】