説明

試薬容器

【課題】内容量が多く重い場合にも、容易に運搬することが可能な試薬容器を提供する。
【解決手段】この試薬容器1は、分析装置に用いる液体試薬を収容するための容器本体2と、容器本体2に取り付けられ、使用者が容器本体2を吊り下げた状態で把持するための帯状の把持部3と、を備え、把持部3は、一端側および他端側が容器本体2に取り付けられた帯状部材30と、帯状部材30の縁部34からはみ出すように帯状部材30に設けられた保護部材40とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬容器に関し、特に、分析装置に用いられる液体試薬を収容するための試薬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置においては、様々な種類の液体試薬が使用される。分析装置の測定項目や、分析装置の処理能力によっては、例えば5リットル程度といったある程度量の多い液体試薬を収容する試薬容器が用いられる場合もある。このような容器は重量も体積も大きくなるため、運搬等の取扱いが不便であった。このような大型の液体容器の取扱いを向上させる技術として特許文献1に記載の容器が知られている。
【0003】
上記特許文献1には、テープ状の取手を有する容器が開示されている。この容器は、直方体形状を有し、3〜5リットル以上の容量を有する。テープ状の取手は、合成樹脂からなり、容器の対向する一対の両側面の上端部近傍にテープ状の取手の両端が貼り付けられている。これにより、テープ状の取手が容器の上面を跨ぐように設けられ、使用者が取手を把持して試薬容器を吊り下げるようにして運搬することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−345077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、使用者がテープ状の取手を把持して容器を持ち上げる際、容器の重みにより取っ手が使用者の手指に食い込み、使用者が痛みを感じたり、手指の皮膚を痛めたりする虞がある。このため、内容量が多く重い試薬容器の運搬が容易でないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、内容量が多く重い場合にも、容易に運搬することが可能な試薬容器を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における試薬容器は、分析装置に用いる液体試薬を収容するための容器本体と、容器本体に取り付けられ、使用者が容器本体を吊り下げた状態で把持するための帯状の把持部と、を備え、把持部は、一端側および他端側が容器本体に取り付けられた帯状部材と、帯状部材の縁部からはみ出すように帯状部材に設けられた保護部材とを含む。
【0008】
この発明の一の局面による試薬容器では、上記のように、把持部に、一端側および他端側が容器本体に取り付けられた帯状部材と、帯状部材の縁部からはみ出すように帯状部材に設けられた保護部材とを設けることによって、使用者が帯状部材と保護部材との両方を把持して試薬容器を運搬することができるので、保護部材により、使用者の手指への把持部の食い込みが抑制されて使用者が痛みを感じるのを抑制することができる。また、保護部材が帯状部材の縁部からはみ出すため、帯状部材の縁部と使用者の手指との間に保護部材を確実に介在させることができる。この結果、帯状部材の縁部が使用者の手指を傷つけることを抑制することができる。以上から、本発明によれば、試薬容器の内容量が多く重い場合にも、試薬容器を容易に運搬することができる。
【0009】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、帯状部材の短手方向における保護部材の幅は、帯状部材の短手方向の幅よりも大きくなるように形成され、保護部材は、帯状部材の長手側の両縁部からそれぞれはみ出すように設けられている。このように構成すれば、使用者の手指と帯状部材の両方の縁部との間に、それぞれ保護部材を確実に介在させることができるので、帯状部材の縁部で使用者の手指を痛めるのを効果的に抑制することができる。
【0010】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、保護部材は、帯状部材の長手方向の中央部近傍の所定領域に、少なくとも設けられている。このように構成すれば、使用者が把持する可能性が高い帯状部材の中央部分に保護部材が設けられるので、使用者が把持部を把持する際に使用者に保護部材の形成領域を容易に把持させることができる。
【0011】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、帯状部材は、容器本体の上面に対向する第1の面と、第1の面の裏側である第2の面とを有し、保護部材は、帯状部材の第1の面に設けられている。このように構成すれば、把持部を把持した際に試薬容器の重量がかかる方の面に保護部材が配置されるので、使用者の手指への把持部の食い込みをより効果的に抑制することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、保護部材は、帯状部材の容器本体への取り付け領域を除き、帯状部材の第1の面の略全面に設けられている。このように構成すれば、把持部の把持位置によることなく、把持部が使用者の手指へ食い込むのを保護部材により確実に抑制することができる。
【0013】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、保護部材は、弾性を有するとともに、シート状に形成されている。このように構成すれば、帯状部材にシート状の保護部材を容易に設けることができるとともに、保護部材の弾性によって使用者の手指に加わる荷重を緩和することができる。
【0014】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、帯状部材は、合成紙からなる。このように構成すれば、把持部を軽量化することができる。また、把持部を樹脂成形部材などにより構成する場合と比べて、材料消費量を削減することができるので、環境への負荷を低減することができる。
【0015】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、保護部材は、発泡樹脂材料からなる。このように構成すれば、たとえばスポンジ状の発泡樹脂材料を用いることにより、軽量で弾性(緩衝性)に優れた保護部材を把持部に設けることができる。これにより、使用者の手指への把持部の食い込みが発泡樹脂材料からなる保護部材によって効果的に抑制されるので、把持部を把持して運搬する際に使用者が痛みを感じるのを効果的に抑制することができる。
【0016】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、容器本体は、紙材を含むシート状材料からなる。このように構成すれば、容易に、試薬容器を軽量化することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、容器本体は、廃棄する際に形状を変化させるための折り目を有する。このように構成すれば、試薬容器の廃棄時に容器本体を折り畳んでコンパクトにすることができる。この結果、廃棄時のかさが減るので、これによっても、環境への負荷を低減することができる。
【0018】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、把持部は、帯状部材の一端から他端にかけて円弧状となるように容器本体に取り付けられている。このように構成すれば、把持部と容器上面との間に隙間を確保することができるので、この隙間に使用者が手を入れやすくなる。このため、容易に試薬容器を取り扱うことができる。
【0019】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、把持部は、容器本体から分離可能に取り付けられている。このように構成すれば、容器本体と把持部とが異なる材料から形成されていても、廃棄時に把持部を分離し、把持部と容器本体とを分別して廃棄することができる。
【0020】
この場合、好ましくは、帯状部材は、容器本体の側面に対して接着剤で取り付けられており、接着面に直交する方向の接着強度よりも、接着面に平行な方向の接着強度の方が大きくなるよう接着されている。このように構成すれば、把持部を把持して試薬容器を運搬する際には把持部が容器本体から外れず、把持部を容器本体から分離する際には接着面に直交する方向に引き剥がすことにより、容易に分離することができる。
【0021】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、容器本体は、容器本体と分析装置とを流体的に接続するための接続口を有する。このように構成すれば、試薬容器の容量が大きく重い場合でも、容器本体と分析装置とをそのまま接続することができるので、容易に試薬容器を取り扱うことができる。
【0022】
この場合、好ましくは、接続口は、平面視において、容器本体の上面で、かつ、把持部と重ならない位置に配置されている。このように構成すれば、接続口を分析装置側に接続する際に、把持部が邪魔にならないので、接続口を分析装置に接続する際の作業性を向上させることができる。
【0023】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、容器本体は、略直方体形状の外形形状を有する。このように構成すれば、輸送時に試薬容器を隙間なく並べることができるので、輸送効率がよく環境への負荷を低減することができる。
【0024】
上記一の局面による試薬容器において、好ましくは、液体試薬は、血球計数装置用試薬または尿中有形成分分析装置用試薬である。血球計数装置に用いられる試薬には、希釈液や溶血剤、洗浄液などがある。また尿中有形成分分析装置に用いられる試薬には、希釈液や洗浄液などがある。これら血球計数装置用試薬や尿中有形成分分析装置といった分析装置は液体中の細胞を分類・計数するものであるが、いずれも生体試料を希釈液や溶血剤で所定の倍率に希釈したり、希釈液や洗浄液を用いて分析装置の流体系の洗浄動作を実行する。またフローサイトメトリー法を利用した分析装置であれば、フローセル内で細胞を含む試料液の層流を形成するために試料液とともに流すためのシース液も用いられる。そのため、これらの試薬は一回の分析で使用する量が多くなる。また、分析装置を使用する医療機関の規模によっては、分析装置一台での分析の回数が一日に数百回を超える場合もあるため、試薬交換作業を行なう頻度を低減するために、数百回から数千回分の分析に用いる試薬を収容可能な大きさの容器を用いる場合がある。このような事情から、血球計数装置用試薬や尿中有形成分分析装置用試薬を収容する容器は大型化しがちである。このため、本発明は、このような血球計数装置用試薬や尿中有形成分分析装置用試薬の試薬容器に適用する場合に特に有効であり、血球計数装置や尿中有形成分分析装置を使用する検査技師による試薬容器の運搬や取り扱いが容易になる。
【0025】
この場合、好ましくは、液体試薬は、希釈液、溶血剤または洗浄液である。上述のとおり、希釈液や溶血剤は分析装置で比較的多くの量が使用されるので、本発明は、希釈液、溶血剤または洗浄液の試薬容器に適用した場合に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態による試薬容器の外観を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による試薬容器の正面図である。
【図3】図1に示した一実施形態による試薬容器の上面図である。
【図4】図1に示した一実施形態による試薬容器の側面図である。
【図5】図1に示した試薬容器を分析装置と接続した状態を示した斜視図である。
【図6】図1に示した一実施形態による試薬容器の把持部を示した下面図である。
【図7】図1に示した一実施形態による試薬容器の把持部を示した拡大断面図である。
【図8】図1に示した試薬容器を廃棄する際に折り畳んだ状態を示した図である。
【図9】本発明の一実施形態による試薬容器の第1変形例における把持部を示した拡大断面図である。
【図10】本発明の一実施形態による試薬容器の第2変形例における把持部を示した拡大断面図である。
【図11】本発明の一実施形態による試薬容器の第3変形例における把持部を示した拡大断面図である。
【図12】本発明の一実施形態による試薬容器の第4変形例における把持部を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態で開示する試薬容器の寸法、内容量はあくまで一例であり、本発明がそれらに限られるものではない。
【0028】
まず、図1〜図8を参照して、本発明の一実施形態による試薬容器1の全体構成について説明する。
【0029】
本実施形態による試薬容器1は、検体分析を行う分析装置に用いる液体試薬を収容するものである。試薬容器1は、図1に示すように、液体試薬を収容する容器本体2と、使用者が容器本体2を吊り下げた状態で把持するための帯状の把持部3とを備えている。容器本体2には、たとえば分析装置の一例である血球計数装置用の希釈液や溶血剤などの液体試薬が収容される。
【0030】
容器本体2は、幅および奥行きL1、高さH1の直方体状形状を有する。容器本体2は、約4リットルの液体試薬を収容可能に構成されている。容器本体2は、紙材を含むシート状材料から形成されており、たとえば、ポリエチレン、紙およびバリアフィルムなどが積層されたシート状の複合材により形成されている。容器本体2は、図1〜図4に示すように、上面2aと、前面2bと、側面2cおよび2dと、背面2eと、底面2fとを有している。容器本体2は、上端開放の略直方体状形状に形成された後、上端(開放端)を接合部2gで接合されて密閉構造とし、余った延長部2hを両側面2cおよび2d側にそれぞれ折り畳んで接着することにより、図1に示す略直方体形状に形成されている。各側面(前面2b、側面2cおよび2d)には、収容する液体試薬の種類、製品名など、各種の印字(図示省略)が付されている。
【0031】
容器本体2の上面2aには、分析装置(図示せず)と容器本体2とを流体的に接続するための接続口21が設けられている。接続口21は、上面2aから上方(Z1方向)に突出するように形成され、開閉用のキャップ22が取り付けられている。図3に示すように、接続口21は、平面視において、上面2aの中心から前面2b側(Y2方向側)に外れた位置に配置されており、接続口21は、把持部3とは上下(Z方向)に重ならない位置に配置されている。図5に示すように、試薬容器1の使用時には、接続口21からキャップ22(図1参照)が取り外されたのち、分析装置のコネクタ50が接続口21に接続される。コネクタ50は、チューブ51と連通するとともに、コネクタ50に接続され容器本体2内部で下方へ延伸する吸引チューブ(図示せず)を有しており、コネクタ50を接続口21に接続する際、吸引チューブは容器本体2内に挿入される。分析装置の使用時においては、容器本体2内部の試薬が、容器本体2内の吸引チューブ、コネクタ50およびチューブ51を介して分析装置に吸引される。このような吸引チューブやコネクタとして、たとえば特開平9-297146号公報や、米国特許出願公開2005/0191211号公報に開示された構成のものを用いることができる。分析装置を使用するために一度コネクタ50が接続口21に接続されると、試薬容器1内の試薬が使用されて次に試薬容器1を交換する時まで、接続された状態のままで使用される。
【0032】
容器本体2には、廃棄時に容器本体2を折り畳んで形状を変化させるための折り目23が設けられている。具体的には、図1および図4に示すように、両側面2cおよび2dに、Y方向の中央を所定位置まで上下に延びる折り目23aと、底面2f側の両角部からそれぞれ折り目23aの下端まで斜めに延びる折り目23bおよび23cとが形成されている。また、折り目23a〜23cの合流部分から背面2e側に延び、背面2eを横切って(図2参照)両側面2cおよび2dをつなぐように延びる折り目23dが、容器本体2に形成されている。
【0033】
図1〜図4に示すように、把持部3は、帯状部材30と、帯状部材30の長手側の両縁部34からそれぞれはみ出すように設けられた保護部材40とを含む。把持部3は、帯状部材30の両端が容器本体2の側面2cおよび2dにそれぞれ接着されることにより容器本体2に取り付けられている。把持部3は、廃棄時には、帯状部材30を剥がすことにより容器本体2から分離可能に構成されている。
【0034】
図2に示すように、把持部3は、帯状部材30が一端側(側面2c側)から他端側(側面2d側)にかけて、容器本体2の上面2aを跨ぐ円弧状となるように設けられている。このため、把持部3は、長手方向の中央で最大高さH2だけ容器本体2の上面2aから離間している。高さH2は、把持部3を把持する際に使用者が上面2aの間に手を入れ易いような大きさに設定されている。また、図3に示すように、把持部3は、平面視において、容器本体2の前後方向(Y方向)の中央部に配置されている。
【0035】
図6および図7に示すように、帯状部材30は、長さ(長手方向の長さ)L2、幅(短手方向の長さ)W1、および、厚みt1を有する。帯状部材30は、ポリプロピレン系の樹脂材料を主原料とする厚み(t1=)約0.1mmの合成紙からなる。帯状部材30には、片側表面(下面31)の全面にわたって接着剤が塗布されている。したがって、帯状部材30の下面31は接着面となっており、帯状部材30は、この下面31側で容器本体2の両側面2cおよび2dに接着されている。帯状部材30の上面32には、接着剤は塗布されていない。
【0036】
帯状部材30は、両端の長さL3の領域が容器本体2に対する接着領域33となっている。接着領域33の長さL3は、帯状部材30の幅W1よりも大きい。また、図2に示すように、帯状部材30は、接着面(側面2cおよび2d)に直交する法線方向(X方向)の接着強度よりも、接着面に平行な方向(Z方向およびY方向)の接着強度の方が大きくなるように構成されている。帯状部材30は、使用者が把持部3を把持して試薬容器1を吊り下げた場合に、Z方向に作用する容器本体2の重量を十分に支えることが可能な接着強度で接着されている。一方、使用者が試薬容器1を廃棄する際には、接着面(側面2cおよび2d)に直交する法線方向(X方向)に帯状部材30を引き剥がすことにより、容易に把持部3を容器本体2から分離することが可能である。なお、接着領域33は、本発明の「取り付け領域」の一例である。
【0037】
なお、図1および図4に示すように、帯状部材30の幅W1は、容器本体2の接合部2gの幅Wgよりも大きくなるように形成されており、帯状部材30は、両側面2cおよび2d(延長部2h)において、接合部2gよりも幅広の領域で接合部2gと部分的にオーバーラップするように接着されている。延長部2hは、側面2c(2d)と重なるよう構成されるため、容器本体2において変形に強い箇所である。従って、帯状部材30を延長部2hに接着することで、使用者が帯状部材30を把持して試薬容器1を吊り下げた状態で把持したときに、容器本体2が大きく変形することを抑制できる。
【0038】
保護部材40は、把持部3を把持する際に使用者の手指を保護するために設けられている。図6および図7に示すように、保護部材40は、長さ(長手方向の長さ)L4、幅(短手方向の長さ)W2を有し、厚みt2のシート状に形成されている。保護部材40は、弾性を有する厚み(t2=)約2mmの発泡ポリエチレンからなる。
【0039】
また、保護部材40は、容器本体2の上面2aと対向する帯状部材30の下面31に接着されて、帯状部材30に固定されている。具体的には、保護部材40は、帯状部材30の中央の長さL4(L4=L2−(2×L3))の接着領域に貼り付けられている。すなわち、保護部材40は、帯状部材30の容器本体2への接着領域33を除く、下面31の略全面に設けられている。
【0040】
本実施形態では、保護部材40は、帯状部材30の長手側の両縁部34からそれぞれ、長さLdだけはみ出すように設けられている。具体的には、保護部材40の幅W2が、帯状部材の幅W1よりも大きくなるように形成されている。保護部材40は、帯状部材30と幅方向(短手方向)の中心を一致させた状態で帯状部材30に接着されている。このため、保護部材40は、幅W2と幅W1との差分に応じた長さLd(Ld=(W2−W1)/2)だけ短手方向にはみ出している。
【0041】
なお、保護部材40のようなシート状部材を所定寸法に形成(裁断)する際には、長手方向または短手方向のいずれかの裁断面に波打ちが発生することが多い。この波打ちは、波打ち方向の伸縮により寸法精度に影響する。そこで、保護部材40は、端面41に短手方向の波打ちが現れるように形成されている。これにより、保護部材40の長手方向の寸法のばらつきが抑制される。また、保護部材40は、保護部材40の機能上、帯状部材30の縁部34から短手方向にはみ出ていればよく、かつ、幅W2が長さL4に比べて十分に小さいため、保護部材40の短手方向において波打ちによる寸法のばらつきの影響はほとんどない。波打ちによる短手側(幅方向)寸法のばらつきも考慮して、保護部材40のはみ出し部分の長さLdは、少なくとも約1mm以上で、数mm程度となるように設定されている。
【0042】
次に、図1〜図3および図8を参照して、試薬容器1の廃棄時の折り畳み手順について説明する。
【0043】
まず、図1の状態において、両側面2cおよび2d(図2参照)からそれぞれ延長部2hを剥がしながら起こす。次に、接合部2gを上面2aから起こした後、上面2aの前面2b側の2隅と、背面2e(図3参照)側の2隅とを合わせるようにして容器本体2の上部を平坦に畳む。そして、平坦にした上部から下部に向けて、両側面2cおよび2dのY方向の中央を上下方向の折り目23aに沿って山折りに折り畳む。つまり、前面2bと背面2eとが合わさるように両側面2cおよび2dを折り目23aで二つ折りにする。
【0044】
さらに、斜めに延びる折り目23bおよび23cに囲まれる三角形状の側面部分Aを、底面2f(設置面)までX方向外側に折り畳む。この際、試薬容器1の底部は、底面2fと、底面2fのX方向両側の三角形状の側面部分Aとで、六角形状(図8参照)になる。
【0045】
最後に、側面部分Aと、底面2fとからなる六角形状部分の背面2e側の半分を、折り目23dで背面2e側に折り込む。これにより、試薬容器1が、図8に示した平坦な折り畳み状態に変形される。なお、各部の位置関係を分かり易くするため、図8では把持部3を残した状態で折り畳んでいるが、把持部3は、試薬容器1を変形させる前、または変形させた後に帯状部材30を剥がして分離させればよい。
【0046】
本実施形態では、上記のように、把持部3に、一端側および他端側が容器本体2に取り付けられた帯状部材30と、帯状部材30の長手側の縁部34からはみ出すように帯状部材30に設けられた保護部材40とを設けることによって、使用者が帯状部材30と保護部材40との両方を把持して試薬容器1を運搬することができる。これにより、保護部材40によって、使用者の手指への把持部3の食い込みが抑制されて使用者が痛みを感じるのを抑制することができる。また、保護部材40が帯状部材30の長手側の縁部34からはみ出すため、帯状部材30の縁部34と使用者の手指との間に保護部材40を確実に介在させることができる。この結果、帯状部材30の縁部34が使用者の手指を傷つけることを抑制することができる。以上から、本実施形態による試薬容器1では、試薬容器1の内容量が多く重い場合にも、試薬容器1を容易に運搬することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、保護部材40の幅W2を、帯状部材30の幅W1よりも大きくなるように形成するとともに、保護部材40を、帯状部材30の長手側の両縁部34からそれぞれはみ出すように設けることによって、使用者の手指と帯状部材30の両方の縁部34との間に保護部材40を確実に介在させることができる。これにより、薄い帯状部材30の縁部34で使用者の手指が切れたりすることを防止することができるので、把持部3を把持する際に使用者の手指を痛めるのをより効果的に抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、保護部材40を、帯状部材30の下面31に設けることによって、把持部3を把持した際に試薬容器1の重量がかかる方の面に保護部材40が配置されるので、使用者の手指への把持部3の食い込みをより効果的に抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、保護部材40を、帯状部材30の容器本体2への接着領域33を除く帯状部材30の下面31の略全面に設けることによって、把持部3の把持位置によることなく、把持部3が使用者の手指へ食い込むのを保護部材40により確実に抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、保護部材40を、弾性を有する発泡ポリエチレンによりシート状に形成することによって、帯状部材30にシート状の保護部材40を容易に設けることができる。また、保護部材40の弾性によって使用者の手指に加わる荷重を緩和することができる。また、保護部材40を、発泡ポリエチレンで形成することにより、軽量で弾性(緩衝性)に優れた保護部材を把持部3に設けることができる。これにより、使用者の手指への把持部3の食い込みが発泡ポリエチレンからなる保護部材40によって効果的に抑制されるので、把持部3を把持して運搬する際に使用者が痛みを感じるのをより効果的に抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、ポリプロピレン系の樹脂材料を主原料とする合成紙からなる帯状部材30を設けることによって、把持部3を軽量化することができる。また、把持部3を樹脂成形部材などにより構成する場合と比べて、材料消費量を削減することができるので、環境への負荷を低減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、紙材を含むシート状の複合材からなる容器本体2を設けることによって、容易に、試薬容器1を軽量化することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、廃棄する際に形状を変化させるための折り目23(23a〜23d)を容器本体2に設けることによって、試薬容器1の廃棄時に容器本体2を折り畳んでコンパクトにすることができる。この結果、廃棄時のかさが減るので、これによっても、環境への負荷を低減することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、把持部3を、帯状部材30の一端から他端にかけて円弧状となるように容器本体2に設けることによって、把持部3と容器本体2の上面2aとの間に高さH2分だけ隙間を確保することができる。これにより、この隙間に使用者が手を入れやすくなるため、容易に試薬容器1を取り扱うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、把持部3を、廃棄する際に容器本体2から分離可能に取り付けることによって、容器本体2と把持部3とが異なる材料から形成されていても、廃棄時に把持部3を分離し、把持部3と容器本体2とを分別して廃棄することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、帯状部材30を、容器本体2の側面2cおよび2dに対して接着剤で取り付けるとともに、接着面に直交する法線方向(X方向)の接着強度よりも、接着面に平行な方向(Y方向およびZ方向)の接着強度の方が大きくなるよう接着することによって、把持部3を容器本体2から容易に分離することができる。この場合にも、把持部3を把持して試薬容器1を運搬する際には、把持部3が容器本体2から外れることなく運搬することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、容器本体2に、容器本体2と分析装置とを流体的に接続するための接続口21を設けることによって、試薬容器1の容量が大きく重い場合でも、容器本体2と分析装置とをそのまま接続することができる。このため、液体試薬を移し替える作業などを要することなく、容易に試薬容器1を取り扱うことができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、平面視において、容器本体2の上面2aで把持部3と重ならない位置に接続口21を配置することによって、接続口21を分析装置側に接続する際に、把持部3が邪魔にならないので、接続口21を分析装置側に接続する際の作業性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、略直方体形状の容器本体2を設けることによって、輸送時に試薬容器1を隙間なく並べることができる。これにより、試薬容器1の輸送効率が高くなるので、環境への負荷を低減することができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、血球計数装置用の液体試薬(希釈液または溶血剤)を収容する試薬容器に本発明を適用した例を示した。これにより、比較的多くの量の試薬を用いる血球計数装置に使用される試薬容器1の運搬や取り扱いが容易になる。また、希釈液や溶血剤は血球計数装置で比較的多くの量が使用されることが多いので、本実施形態による試薬容器1は希釈液または溶血剤の試薬容器として特に有効である。
【0061】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0062】
たとえば、上記実施形態では、血球計数装置用の液体試薬(希釈液または溶血剤)を収容する試薬容器に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、尿中有形成分分析装置に用いられる液体試薬の試薬容器に本発明を適用してもよい。また、液体試薬として、希釈液や溶血剤以外の試薬を収容してもよい。例えば、液体試薬は洗浄液やシース液であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、容器本体を、ポリエチレン、紙およびバリアフィルムなどが積層された複合材により形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、いわゆるポリ容器のような樹脂成形容器や、柔軟な袋状の樹脂製容器を容器本体として用いてもよい。その他、容器本体を樹脂以外の材料により形成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、把持部の帯状部材を、ポリプロピレン系の樹脂材料を主原料とする合成紙により形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポリプロピレン系以外の樹脂材料を主原料とする合成紙や、合成紙以外の紙材料により帯状部材を形成してもよい。また、これら以外の他の材料により帯状部材を形成してもよい。帯状部材には、薄く、軽量で丈夫な材料が材料消費量や搬送の容易さの点から好ましい。このような薄くて強い帯状部材を用いた場合にも、本発明によれば、保護部材により使用者の手指を保護することが可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、把持部の保護部材を、発泡ポリエチレンにより形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発泡ポリエチレン以外の発砲樹脂材料や、発泡樹脂材料以外のゴムシートなどの樹脂材料により保護部材を形成してもよい。また、これら以外の他の材料により保護部材を形成してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、容器本体の上面と対向する帯状部材の下面に保護部材を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図9に示す第1変形例による把持部3aのように、保護部材40を、帯状部材30の上面32側に設けてもよい。このように構成しても、使用者が把持部を握り込む際に、帯状部材30の縁部34と使用者の手指との間に保護部材40を介在させて手指を保護することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、保護部材の幅W2を帯状部材の幅W1よりも大きく形成して、帯状部材の両縁部からそれぞれ保護部材がはみ出るようにした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図10に示す第2変形例による把持部3bのように、2つの保護部材140を帯状部材30の両縁部34からそれぞれはみ出すように設けてもよい。この他、保護部材が帯状部材の片側の縁部からのみはみ出すように、保護部材を設けてもよい。ただし、上記実施形態のように帯状部材30よりも幅広の保護部材40を帯状部材30の全幅にわたって設ける場合には、使用者が把持部3を把持した場合に帯状部材30の幅方向にしわが寄って細くなるのを防止することができるので、使用者の手指に荷重が集中するのを抑制することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、保護部材を、帯状部材の下面側で縁部からはみ出るようにした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図11に示す第3変形例による把持部3cのように、保護部材240を帯状部材30の上面32および下面31の両側で、縁部34からはみ出るように設けて、帯状部材30の縁部34を包み込むようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、保護部材を、帯状部材の下面側において、接着領域を除く略全面に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図12に示す第4変形例による把持部3dのように、保護部材340を帯状部材30の長手方向(X方向)の中央部近傍の所定領域だけに設けてもよい。この第4変形例のように保護部材340を少なくとも帯状部材30の長手方向の中央部近傍の所定領域に設ければ、使用者が把持する可能性が高い帯状部材30の中央部分に保護部材340が設けられるので、使用者が把持部3dを把持する際に使用者に保護部材340の形成領域を容易に把持させることができる。なお、本発明では、保護部材を帯状部材の長手方向の中央部以外の部分にのみ設けてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、廃棄時に変形させるための折り目を容器本体に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、容器本体に折り目を設けなくてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、直方体形状の容器本体を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、容器本体を直方体形状以外の円筒形状や立方体形状に形成してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、把持部を容器本体の側面に接着して、廃棄時に分離可能に構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば把持部を容器本体に一体的に形成して、分離できないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 試薬容器
2 容器本体
2a 上面
2c、2d 側面
3、3a、3b、3c、3d 把持部
21 接続口
23(23a、23b、23c、23d) 折り目
30 帯状部材
31 下面(第1の面)
32 上面(第2の面)
33 接着領域(取り付け領域)
34 縁部
40 140 240 340 保護部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置に用いる液体試薬を収容するための容器本体と、
前記容器本体に取り付けられ、使用者が前記容器本体を吊り下げた状態で把持するための帯状の把持部と、を備え、
前記把持部は、一端側および他端側が前記容器本体に取り付けられた帯状部材と、前記帯状部材の縁部からはみ出すように前記帯状部材に設けられた保護部材とを含む、試薬容器。
【請求項2】
前記帯状部材の短手方向における前記保護部材の幅は、前記帯状部材の短手方向の幅よりも大きくなるように形成され、
前記保護部材は、前記帯状部材の長手側の両縁部からそれぞれはみ出すように設けられている、請求項1に記載の試薬容器。
【請求項3】
前記保護部材は、前記帯状部材の長手方向の中央部近傍の所定領域に、少なくとも設けられている、請求項1または2に記載の試薬容器。
【請求項4】
前記帯状部材は、前記容器本体の上面に対向する第1の面と、前記第1の面の裏側である第2の面とを有し、
前記保護部材は、前記帯状部材の前記第1の面に設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項5】
前記保護部材は、前記帯状部材の前記容器本体への取り付け領域を除き、前記帯状部材の前記第1の面の略全面に設けられている、請求項4に記載の試薬容器。
【請求項6】
前記保護部材は、弾性を有するとともに、シート状に形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項7】
前記帯状部材は、合成紙からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項8】
前記保護部材は、発泡樹脂材料からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項9】
前記容器本体は、紙材を含むシート状材料からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項10】
前記容器本体は、廃棄する際に形状を変化させるための折り目を有する、請求項9に記載の試薬容器。
【請求項11】
前記把持部は、前記帯状部材の前記一端から前記他端にかけて円弧状となるように前記容器本体に取り付けられている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項12】
前記把持部は、前記容器本体から分離可能に取り付けられている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項13】
前記帯状部材は、前記容器本体の側面に対して接着剤で取り付けられており、接着面に直交する方向の接着強度よりも、接着面に平行な方向の接着強度の方が大きくなるよう接着されている、請求項12に記載の試薬容器。
【請求項14】
前記容器本体は、前記容器本体と分析装置とを流体的に接続するための接続口を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項15】
前記接続口は、平面視において、前記容器本体の上面で、かつ、前記把持部と重ならない位置に配置されている、請求項14に記載の試薬容器。
【請求項16】
前記容器本体は、略直方体形状の外形形状を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項17】
前記液体試薬は、血球計数装置用試薬または尿中有形成分分析装置用試薬である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項18】
前記液体試薬は、希釈液、溶血剤または洗浄液である、請求項17に記載の試薬容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−224391(P2012−224391A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96374(P2011−96374)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】