説明

試験プラグ

【課題】試験端子に対する接触状態が不揃いであることに起因してトリップ回路が不用意にトリップ動作することを防止するとともに、試験端子に対する挿抜にかかる操作者の負担軽減を図ること。
【解決手段】試験端子102に対するCT回路側接触子101a、101bの挿入にともなって当該CT回路側接触子101a、101bがCT回路側接触子対403を離間させる前に、トリップ回路側接触子対403を絶縁する絶縁部材501と、CT回路側接触子101a、101bによりCT回路側接触子対403が電気的に接続された後に、トリップ回路側接触子対403を電気的に接続する接続部材と、を備えたトリップ回路側接触子101c、101dを備える試験端子102を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試験プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
CT(Current Transformer)回路の差電流を検知した場合に、遮断器をトリップさせるリレーが設置されている変電所がある。このような変電所においては、変電所内に設けられた配電盤における所定の試験端子に対して試験プラグを挿入(装着)し、挿入した試験プラグを介して取得される電気信号を用いた所定の測定作業がおこなわれる。試験プラグは、所定の作業をおこなうごとに盤に挿入(装着)し、所定の作業後は盤から引き抜いて取り外す。
【0003】
試験プラグが備える各接続部は、それぞれ、試験端子に対して試験プラグが挿入された場合に、試験端子における上部端子または下部端子に接続(接触)する。試験プラグが備える各接続部と試験端子における上部端子または下部端子との接続(接触)状態にばらつきがある場合、差電流が流れてリレーが誤動作するおそれがある。接続(接触)状態のばらつきは、試験端子に対して試験プラグを着脱(挿抜)する際に発生しやすい。
【0004】
このような、試験プラグの挿抜に際しての誤動作を回避するために、従来、たとえば、盤に対する試験プラグの挿入に先立って遮断器への指令回路をトリップロックしていた。また、従来、遮断器への指令回路のトリップロックは、盤からの試験プラグの引き抜き後に解除していた。
【0005】
トリップロックがされていない状態で試験プラグの挿抜をおこなった場合、リレーが誤動作し、変電所内全停事故となってしまう。また、トリップロックの解除を忘れ、トリップロックがされた状態で過電流が流れる事故が発生した場合、本来は動作するはずであった遮断器がトリップ(自動遮断)せず、当該事故によって停電する範囲が不要に拡大されてしまうこともある。
【0006】
また、従来、試験プラグの挿抜をおこなう盤と、トリップロックにかかる操作をおこなう盤とが異なる盤によって実現されている場合には、たとえば、試験プラグの挿入をおこなう前に、トリップロックにかかる操作をおこなう盤においてトリップロックをおこなってから、試験プラグを挿入する盤まで移動して、試験プラグの挿入をおこなわなくてはならない。同様に、たとえば、試験プラグの取り外しをおこなう際には、試験プラグが挿入されている盤において試験プラグを引き抜いてからトリップロックを解除する盤まで移動し、トリップロックの解除をおこなわなくてはならない。
【0007】
このように、従来の技術では、試験プラグの挿抜をおこなう盤と、トリップロックにかかる操作をおこなう盤とが異なる盤によって実現されている場合には、作業箇所が多くなるとともに、作業に際して移動をともなうため、作業がわずらわしく、また、作業箇所を誤認するなどのミスを誘発しやすい。
【0008】
このような不具合を解決するために、従来、たとえば、トリップロック端子を試験端子本体ケースに一体化することにより、試験プラグ挿入操作に際してCT・PT(Potential Transformer)回路とトリップ回路とを同時に切離すようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0009】
また、従来、たとえば、試験端子本体において、全回線のトリップロック端子を直列接続するとともに補助リレー励磁回路を接続することにより、ある一回線の試験プラグ挿入時でも自動的に全回線トリップロックするようにした技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。また、従来、たとえば、試験プラグの中性点N相の接触子の長さを他より短くすることにより、試験プラグが完全に挿入されるまでリレーを非作動状態とするようにした技術があった(たとえば、下記特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭57−36529号公報
【特許文献2】特開昭60−2020号公報
【特許文献3】特開平8−5659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1、2に記載された従来の技術では、試験プラグの挿入操作に際してCT・PT回路とトリップ回路とを同時に切離すことはできない。このため、プラグ接触不揃いが発生することを完全に回避することができず、リレーが誤動作して遮断器がトリップするおそれがあるという問題があった。
【0012】
また、上述した特許文献2に記載された従来の技術では、一回線の試験プラグ挿入時でも自動的に全回線トリップロックしてしまう。このため、盤に試験プラグを挿入している間は他回線のリレーを有効に活用することができないという問題があった。
【0013】
また、上述した特許文献3に記載された従来の技術では、リレー用の試験端子には有効な効果を発揮するものの、遠隔監視制御装置の計測用の試験端子には適用できないという問題があった。さらに、上述した特許文献3に記載された従来の技術では、リレーは非動作であるが、不揃いは発生している可能性があった。このため、トリップロック端子をロックした方がより確実であり、確実性に劣るという問題があった。
【0014】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、試験端子に対する接触状態が不揃いであることに起因してトリップ回路が不用意にトリップ動作することを防止するとともに、試験端子に対する挿抜にかかる操作者の負担軽減を図ることができる試験端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる試験プラグは、離間可能に接触する複数の接触子対を備えた試験端子に対して挿抜される試験プラグであって、前記複数の接触子対のうちCT回路に接続された接触子対(以下「CT回路側接触子対」という)を離間させる位置に挿入され、少なくとも前記試験端子に対して所定位置まで挿入された状態において、離間させた前記CT回路側接触子対を電気的に接続するCT回路側接触子と、前記試験端子に対する前記CT回路側接触子の挿入にともなって前記複数の接触子対のうちトリップ回路に接続された接触子対(以下「トリップ回路側接触子対」という)を離間させる位置に挿入され、前記CT回路側接触子が所定位置まで挿入された状態において前記トリップ回路側接触子対を電気的に接続するトリップ回路側接触子と、を備え、前記トリップ回路側接触子が、前記試験端子に対する前記CT回路側接触子の挿入にともなって当該CT回路側接触子が前記CT回路側接触子対を離間させる前に、前記トリップ回路側接触子対を絶縁する絶縁部材と、前記CT回路側接触子により前記CT回路側接触子対が電気的に接続された後に、前記トリップ回路側接触子対を電気的に接続する接続部材と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる試験プラグは、上記の発明において、前記絶縁部材が、前記試験端子からの前記CT回路側接触子の引き抜きにともなって、前記CT回路側接触子対から前記CT回路側接触子が引き抜かれる前に前記トリップ回路側接触子対を絶縁し、前記CT回路側接触子が前記CT回路側接触子対から引き抜かれた後に前記トリップ回路側接触子対から引き抜かれることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる試験プラグは、上記の発明において、前記トリップ回路側接触子が、前記CT回路側接触子より長く、前記絶縁部材が、前記トリップ回路側端子の先端から所定の長さまでの範囲に設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる試験プラグは、上記の発明において、前記トリップ回路側接触子が、当該トリップ回路側接触子の挿抜方向に沿って設けられ、離間することによって前記トリップ回路から絶縁される主接触子対および前記トリップ回路に常時接続された副接触子対を備えたトリップ回路側接触子対に挿入され、前記試験端子に対する前記CT回路側接触子の挿入にともなって、前記副接触子対を離間させた後に前記主接触子対を離間させ、前記接続部材が、前記CT回路側接触子対と前記CT回路側接触子とが電気的に接続した後に、前記副接触子対に電気的に接続することを特徴とする。
【0019】
上記の発明によれば、操作者に対して試験端子に対して試験プラグを挿入する動作をおこなわせるだけで、CT回路側接触子とCT回路側接触子対とが電気的に接続される前にトリップ回路を開放することができる。
【0020】
また、上記の発明によれば、操作者に対して、試験端子に対して試験プラグを挿入する動作をおこなわせるだけで、CT回路側接触子によりCT回路側接触子対が電気的に接続された後にふたたびトリップ回路を有効にすることができる。
【0021】
また、上記の発明によれば、操作者に対して試験端子から試験プラグを引き抜く動作をおこなわせるだけで、トリップ回路側接触子対を電気的に絶縁した状態で、CT回路側接触子対の間からCT回路側接触子を引き抜いてCT回路側接触子対を接触させ、通常状態に復帰させることができる。
【0022】
このように、上記の発明によれば、操作者に対して試験端子に対して試験プラグを挿抜する動作をおこなわせるだけで、CT回路側接触子とCT回路側接触子対との接触状態が不安定である間はトリップ回路を開放することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明にかかる試験プラグによれば、操作者に対して試験端子に対して試験プラグを挿抜する動作をおこなわせるだけで、CT回路側接触子とCT回路側接触子対との接触状態が不安定である間はトリップ回路を開放することができるので、試験端子に対する接触状態が不揃いであることに起因してトリップ回路が不用意にトリップ動作することを防止するとともに、試験端子に対する挿抜にかかる操作者の負担軽減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明にかかる実施の形態のテストターミナルの構成を示す説明図(その1)である。
【図2】この発明にかかる実施の形態のテストターミナルの構成を示す説明図(その2)である。
【図3】試験端子の配置例を示す説明図である。
【図4】試験プラグおよび試験端子の構成を示す説明図(その1)である。
【図5】試験プラグおよび試験端子の構成を示す説明図(その2)である。
【図6】試験プラグおよび試験端子の構成を示す説明図(その3)である。
【図7】試験プラグおよび試験端子の構成を示す説明図(その4)である。
【図8】試験プラグおよび試験端子の構成を示す説明図(その5)である。
【図9】導通バーを示す説明図である。
【図10】テストターミナルの導通状態を示す説明図(その1)である。
【図11】テストターミナルの導通状態を示す説明図(その2)である。
【図12】テストターミナルの導通状態を示す説明図(その3)である。
【図13】試験プラグの挿入位置を示す説明図(その1)である。
【図14】試験プラグの挿入位置を示す説明図(その2)である。
【図15】試験プラグの挿入位置を示す説明図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる試験プラグの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
(テストターミナルの構成)
まず、この発明にかかる実施の形態のテストターミナルの構成について説明する。この発明にかかる実施の形態においては、4極のテストターミナルへの適用例を示している。図1および図2は、この発明にかかる実施の形態のテストターミナルの構成を示す説明図である。図1および図2において、この発明にかかる実施の形態のテストターミナル100は、試験プラグ(テストプラグ)101と試験端子(テスト端子)102とを備えている。
【0027】
試験プラグ101は、接触子(CT回路側接触子対、トリップ回路側接触子対)101a、101b、101c、101dを備えている。この実施の形態においては、4極のテストターミナル100であるため、試験プラグ101は、4つの接触子101a、101b、101c、101dを備えている。
【0028】
試験端子102は、試験プラグ101が備える接触子101a、101b、101c、101dの挿入を受け付けるプラグ挿入口103が設けられた箱体104を備えている。テストターミナル100においては、プラグ挿入口103を介して、箱体104に対して試験プラグ101の接触子101a、101b、101c、101dを挿抜することによって、試験プラグ101を試験端子102に対して着脱することができる。
【0029】
図3は、試験端子102の配置例を示す説明図である。図3において、試験端子102は、配電盤300に設けられる。試験端子102は、配電盤300がなす盤面においてプラグ挿入口103が開口するように、配電盤300に組み込まれている。配電盤300の近傍には、トリップロック端子301が設けられている。トリップロック端子301は、バーを外すことにより遮断指令をロックすることができる。トリップロック端子301については、公知の技術であるため説明を省略する。
【0030】
(試験プラグ101および試験端子102の構成)
つぎに、試験端子102および試験プラグ101の構成について説明する。図4〜図8は、試験プラグおよび試験端子の構成を示す説明図である。図4においては、試験端子102および試験プラグ101の一部断面を示している。図5においては、試験プラグ101を図4における紙面上側から見た状態を示している。図6においては、試験プラグ101を図5における矢印A方向から見た状態を示している。図7においては、試験プラグ101を図5における矢印B方向から見た状態を示している。図8においては、試験プラグ101を図5における矢印C方向から見た状態を示している。
【0031】
図4において、試験端子102は、上部端子401および下部端子402を備えている。上部端子401および下部端子402は、それぞれ、試験端子102の箱体104の外側に突出している。上部端子401および下部端子402は、一部がCT回路に接続され、別の一部が遮断器への指令回路(以下、「トリップ回路」という)に接続される。CT回路およびトリップ回路については、公知の技術であるため説明を省略する。
【0032】
試験端子102が備える箱体104内には、複数の接触子対403が設けられている。この実施の形態においては、4つの接触子対403が設けられている。4つの接触子対403のうちの2つの接触子対403は、CT回路に接続されている。4つの接触子対403のうちの別の2つの接触子対403は、トリップ回路に接続されている。以下、適宜、CT回路に接続された接触子対403をCT回路側接触子対、トリップ回路に接続された接触子対をトリップ回路側接触子対とし、符号403を付して説明する。
【0033】
CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403は、それぞれ、離間可能に接触する一対の可動接触板403a、403bによって構成されている。可動接触板403a、403bは、金属材料などの導電性を有する材料によって形成された平板によって実現することができる。
【0034】
CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403は、それぞれ、主接触部と副接触部とを備えている。主接触部および副接触部は、一対の可動接触板403a、403bを、それぞれ長手方向に沿って折り曲げる(湾曲させる)ことによって形成されている。箱体104内には、CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403において、副接触部どうしが互いに当接する方向に、一対の可動接触板403a、403bを付勢する圧縮コイルスプリング404aが設けられている。
【0035】
試験端子102に対して試験プラグ101が挿入されていない状態においては、CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403において、副接触部どうしが当接している。試験端子102に対して試験プラグ101が挿入されている状態においては、CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403における副接触部は、それぞれ、挿入された試験プラグ101が備えるCT回路側接触子対403あるいはトリップ回路側接触子対403に当接する。
【0036】
また、箱体104内には、CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403において、主接触部どうしが互いに当接する方向に、一対の可動接触板403a、403bを付勢する圧縮コイルスプリング404bが設けられている。試験端子102に対して試験プラグ101が挿入されていない状態においては、CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403において、主接触部どうしが当接している。試験端子102に対して試験プラグ101が挿入されている状態においては、CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403における主接触部は、それぞれ、挿入された試験プラグ101が備えるCT回路側接触子対403あるいはトリップ回路側接触子対403に当接する。
【0037】
また、CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403において、プラグ挿入口103側とは反対側の端部には、それぞれ、中断接点が設けられている。CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403において、一方の可動接触板403a(図4における紙面上側の可動接触板403a)に設けられた中断接点は、試験端子102に対して試験プラグ101を挿入していない状態において、中継接続部材405を介して下部端子402に接続されている。
【0038】
CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403において、他方の可動接触板403b(図4における紙面下側の可動接触板403b)に設けられた中断接点は、試験端子102に対して試験プラグ101を挿入していない状態において、中継接続部材405を介して上部端子401に接続されている。
【0039】
試験端子102の箱体104内には、支持導体406が設けられている。支持導体406は、金属材料など導電性を有する材料によって形成されている。支持導体406は、それぞれ、上部端子401あるいは下部端子402に接続されている。CT回路側接触子対403およびトリップ回路側接触子対403をなす一対の可動接触板403a、403bは、それぞれ、副接触部と主接触部との間において、支持導体406に常時接触している。
【0040】
図4、図5、図6、図7および図8において、試験プラグ101は、前部端子407と後部端子408とを備えている。前部端子407および後部端子408は、端子支持部410に設けられている。前部端子407と後部端子408との間には、導通バー(図9を参照)を着脱可能に設けることができる。
【0041】
前部端子407および後部端子408は、端子支持部410の高さ方向(図5における紙面上下方向)、および、端子支持部410の幅方向(図5における紙面左右方向)において、それぞれ、互い違いに配列されている。上記の上部端子401および下部端子402も、前部端子407および後部端子408の配列と同様に(図示を省略する)、箱体104の高さ方向および幅方向において、それぞれ、互い違いに配列されている。
【0042】
接触子101a、101b、101c、101dは、絶縁性を有する絶縁材料によって形成されている。接触子101a、101b、101c、101dは、それぞれ、試験端子102における上部端子401に接触する接続部材411と、試験端子102における下部端子402に接触する接続部材411とを備えている。接続部材411は、金属などの材料によって形成されており、導電性を有する。
【0043】
4本の接触子101a、101b、101c、101dのうちの2本は、接続部材411を介してCT回路に接続される。4本の接触子のうちの別の2本は、トリップ回路に接続される。トリップ回路に接続される接触子(以下「トリップ回路側接触子」という)101c、101dは、CT回路に接続される接触子(以下「CT回路側接触子」という)101a、101bよりも長い。すなわち、トリップ回路側接触子101c、101dの端子支持部410側の端部から反対側の端部(先端)までの長さは、CT回路側接触子101a、101bの端子支持部410側の端部から反対側の端部(先端)までの長さよりも長い。
【0044】
CT回路側接触子101a、101bに設けられた接続部材411は、CT回路側接触子101a、101bにおける上側(図7における紙面上側)の面、および、CT回路側接触子101a、101bにおける下側(図7における紙面下側)の面をそれぞれ覆うように設けられている。トリップ回路側接触子101c、101dに設けられた接続部材411は、トリップ回路側接触子101c、101dにおける上側(図8における紙面上側)の面の一部、および、トリップ回路側接触子101c、101dにおける下側(図8における紙面下側)の面の一部をそれぞれ覆うように設けられている。トリップ回路側接触子101c、101dに設けられた接続部材411は、それぞれ、トリップ回路側接触子101c、101dにおける端子支持部410側に設けられている。
【0045】
これにより、トリップ回路側接触子101c、101dの先端側は、絶縁材料が露出している。この実施の形態においては、トリップ回路側接触子101c、101dを構成する絶縁材料のうち、先端から接続部材が設けられている部分までの範囲においてトリップ回路側接触子101c、101dの表面に露出している絶縁材料によって絶縁部材を実現することができる。以下、絶縁部材を、符号501を付して説明する。
【0046】
絶縁部材501は、プラグ挿入口103を介して試験プラグ101を試験端子102に挿入する際に、CT回路側接触子101a、101bがCT回路側接触子対403に接触するよりも前にトリップ回路側接触子対403にするとともに、CT回路側接触子101a、101bがCT回路側接触子対403に接触した後に、トリップ回路側接触子101c、101dに設けられた接続部材がトリップ回路側接触子対403に接触するような範囲に設けられている。
【0047】
図9は、導通バーを示す説明図である。図9において、導通バー901は、金属材料など導電性を有する材料によって形成されている。導通バー901は、前部端子407に接触することにより前部端子407に電気的に接続される接触部902と、後部端子408に接触することにより前部端子407に電気的に接続される接触部903と、これらの2つの接触部を電気的に接続する接続部904と、によって構成されている。
【0048】
(テストターミナル100の導通状態)
つぎに、テストターミナル100の導通状態について説明する。図10、図11および図12は、テストターミナル100の導通状態を示す説明図である。図10、図11および図12において、上記の構成を備えたテストターミナル100は、試験プラグ101が試験端子102に挿入される前は、トリップ回路側接触子対403を介して導通されている(図10を参照)。
【0049】
プラグ挿入口103を介して試験プラグ101を試験端子102に挿入した場合、トリップ回路側接触子101c、101dがCT回路側接触子101a、101bよりも長く、かつ、トリップ回路側接触子101c、101dの先端側は絶縁材料が露出しているため、トリップ回路側接触子対403の間に入り込んだトリップ回路側接触子101c、101dの絶縁部材501によってトリップ回路側接触子対403が離間される。この状態においては、トリップ回路側接触子対403からトリップ回路側接触子101c、101dへの導通はない。すなわち、トリップ回路が開放され、トリップロックがおこなわれた状態となる(図11を参照)。
【0050】
プラグ挿入口103を介して試験プラグ101を試験端子102に完全に挿入した場合、トリップ回路側接触子対403に、トリップ回路側接触子101c、101dが備える接続部材411が接触する。これにより、トリップ回路がふたたび形成される(図12を参照)。このように、この実施の形態の試験プラグ101を用いることにより、プラグ挿入口103を介して試験プラグ101を試験端子102に挿入するだけで、CT回路側接触子対403とCT回路とが接続されるよりも先に、トリップ回路を開放することができる。
【0051】
また、この実施の形態の試験プラグ101を用いることにより、プラグ挿入口103を介して試験プラグ101を試験端子102に挿入するだけで、試験プラグ101を試験端子102に完全に挿入した後にトリップロックを解除し、トリップ回路を機能させることができる。
【0052】
一方、CT回路側接触子101a、101bは、トリップ回路側接触子対403の間にトリップ回路側接触子101c、101dが入り込んだ後に、CT回路側接触子対403の間に入り込む。CT回路側接触子101a、101bの上面および下面には、それぞれ、接続部材411が一面に設けられているため、CT回路側接触子対403とCT回路側接触子101a、101bとの間において導通が生じる。すなわち、CT回路は開放されず、導通状態を維持する。
【0053】
試験プラグ101を試験端子102から引き抜く際には、トリップ回路側接触子対403の間に絶縁部材501が位置づけられることによって、CT回路側接触子対403とCT回路側接触子101a、101bとが接触している状態において、トリップ回路を開放することができる。
【0054】
その後、試験プラグ101を試験端子102からさらに引き抜くと、CT回路側接触子対403の間からCT回路側接触子101a、101bが引き抜かれ、CT回路側接触子対403どうしが接触する。その後、トリップ回路側接触子101c、101dがトリップ回路側接触子対403の間から引き抜かれる。これにより、トリップロックを解除し、トリップ回路を機能させることができる。
【0055】
このように、テストターミナル100においては、トリップロック端子301を試験端子102本体ケースに一体化するとともに、CT回路に対する試験プラグ101の操作中のみトリップ回路を開放(トリップロック)する構造とされている。具体的には、試験プラグ101において、トリップ回路側接触子101c、101dを、絶縁性を有する材料によって形成する(絶縁物とする)とともに、CT回路側接触子101a、101bより長くしている。トリップ回路側接触子101c、101dの長さは、CT回路より先にトリップ回路を開放するような長さとしている。
【0056】
また、試験プラグ101において、トリップ回路側接触子101c、101dの導電部である接続部材を、試験プラグ101の試験端子102に対する挿入が完了した状態において副接触部と接触するような長さとしている。これにより、試験プラグ101の試験端子102に対する挿入が完了した状態においては、試験プラグ101のトリップ回路側の前部端子407と後部端子408とを介してトリップ回路が形成される。また、試験プラグ101において、トリップ回路側の前部端子407と後部端子408とに導通バー901を挿入しておくことにより、試験プラグ101操作中のみトリップ回路を開放することができる。
【0057】
また、テストターミナル100においては、試験プラグ101を試験端子102から引き抜く場合も、試験プラグ101を試験端子102に対して挿入する場合と同様に、CT回路のプラグ操作中のみにトリップ回路を開放(トリップロック)する構造とされている。
【0058】
上述した実施の形態においては、接続部材間を絶縁する絶縁材料が露出するような構成のトリップ回路側接触子101c、101dとしたが、これに限るものではない。たとえば、既存の試験プラグ101におけるトリップ回路側接触子の先端に、絶縁性を有する材料によって形成されたキャップを設けた構成としてもよい。また、あるいは、既存の試験プラグ101におけるトリップ回路側接触子の先端を、絶縁性を有する材料によって挟み込むような構成としてもよい。なお、上述した試験プラグ101は、CT回路が4相であれば8極の試験端子102に適用することができる。
【0059】
そして、上記のような構造の試験プラグ101とすることにより、試験プラグ101の試験端子102に対する接触状態が不揃いであることによるリレー誤動作を防止することができる。また、上記のような構造の試験プラグ101とすることにより、トリップロック失念によるリレー誤動作を防止することができる。また、上記のような構造の試験プラグ101とすることにより、トリップロックの戻し忘れを防止することができる。
【0060】
また、上記のような構造の試験プラグ101とすることにより、試験プラグ101操作時のみトリップロックをおこなうことができ、操作時以外はリレーを活かすことができる。さらに、上記のような構造の試験プラグ101とすることにより、トリップ回路側の前部端子407と後部端子408との間における導通バー901を外すだけで、トリップロックしたままの状態を維持することもできる。また、上記のような構造の試験プラグ101とすることにより、遠隔監視制御装置の計測用の試験端子102にも適用できる。また、上記のような構造の試験プラグ101とすることにより、遠隔監視制御装置の試験プラグ101着脱時に、他盤にあるトリップロックをする必要がなくなる。
【0061】
図13、図14および図15は、試験プラグ101の挿入位置を示す説明図である。図13、図14および図15において、従来は、受電盤1310に設けられた試験端子102に対して試験プラグを挿抜(着脱)する際に、トリップ回路をトリップロックしていた。また、従来は、遠隔監視制御装置1220に設けられた試験端子102に対して試験プラグを挿抜(着脱)する際に、トリップ回路をトリップロックしていた。図13において符号1301は、差電流リレーを示している。
【0062】
従来、トリップロックに際しては、図14および図15に示したように、トリップロック端子1401、1501におけるバー1401a、1501aを、作業者が手動によって外すことによってトリップロックをおこなっていた。このため、たとえば、試験プラグの挿抜をおこなう盤と、トリップロックにかかる操作をおこなう盤とが異なる盤によって実現されている場合には、試験プラグの挿抜をおこなう前に、トリップロックにかかる操作をおこなう盤においてトリップロックやトリップロックの解除をおこなわなくてはならず、煩わしい作業をともなっていた。
【0063】
これに対して、この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101は、トリップ回路に接続された試験端子102に対して試験プラグ101を挿入する動作をおこなわせるだけで容易かつ確実にトリップロックをおこなうことができるとともに、試験端子102から試験プラグ101を引き抜く動作をおこなわせるだけで容易かつ確実に通常状態に復帰させることができる。
【0064】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101は、離間可能に接触する複数の接触子対403を備えた試験端子102に対して挿抜される試験プラグ101であって、CT回路側接触子対403を離間させる位置に挿入され、少なくとも試験端子102に対して所定位置まで挿入された状態において、離間させたCT回路側接触子対403を電気的に接続するCT回路側接触子101a、101bと、試験端子102に対するCT回路側接触子101a、101bの挿入にともなってトリップ回路側接触子対403を離間させる位置に挿入され、CT回路側接触子101a、101bが所定位置まで挿入された状態においてトリップ回路側接触子対403を電気的に接続するトリップ回路側接触子101c、101dと、を備え、トリップ回路側接触子101c、101dが、試験端子102に対するCT回路側接触子101a、101bの挿入にともなって当該CT回路側接触子101a、101bがCT回路側接触子対403を離間させる前に、トリップ回路側接触子対403を絶縁する絶縁部材501と、CT回路側接触子101a、101bによりCT回路側接触子対403が電気的に接続された後に、トリップ回路側接触子対403を電気的に接続する接続部材と、を備えたことを特徴としている。
【0065】
この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101によれば、操作者に対して、試験端子102に対して試験プラグ101を挿入する動作をおこなわせるだけで、CT回路側接触子101a、101bとCT回路側接触子対403とが電気的に接続される前にトリップ回路を開放することができる。
【0066】
これにより、CT回路側接触子対403に対するCT回路側接触子101a、101bの挿入に際しては、確実にトリップロックをおこなうことができ、CT回路側接触子101a、101bとCT回路側接触子対403との接触状態が不揃いであることに起因してトリップ回路が不用意にトリップ動作することを防止することができる。
【0067】
また、この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101によれば、操作者に対して、試験端子102に対して試験プラグ101を挿入する動作をおこなわせるだけで、CT回路側接触子101a、101bによりCT回路側接触子対403が電気的に接続された後にふたたびトリップ回路を有効にすることができる。これにより、試験プラグ101を介して試験用電源を接続するなどの作業中に、CT回路の差電流を検知した場合に遮断器をトリップさせることができ、試験端子102に接続されている電気機器や回路などの負荷を保護することができる。
【0068】
また、この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101は、絶縁部材501が、試験端子102からのCT回路側接触子101a、101bの引き抜きにともなって、CT回路側接触子対403からCT回路側接触子101a、101bが引き抜かれる前にトリップ回路側接触子対403を絶縁し、CT回路側接触子101a、101bがCT回路側接触子対403から引き抜かれた後にトリップ回路側接触子対403から引き抜かれることを特徴としている。
【0069】
この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101によれば、操作者に対して試験端子102から試験プラグ101を引き抜く動作をおこなわせるだけで、トリップ回路側接触子対403を電気的に絶縁した状態で、CT回路側接触子対403の間からCT回路側接触子101a、101bを引き抜いてCT回路側接触子対403を接触させ、通常状態に復帰させることができる。
【0070】
これにより、操作者に対して、試験端子102から試験プラグ101を引き抜く動作をおこなわせるだけで、トリップロック回路を開放した状態で、CT回路側接触子対403に対するCT回路側接触子101a、101bの挿抜に際してのトリップロックおよびトリップロックの解除をおこなうことができ、試験端子102に対する試験プラグ101の挿抜にかかる操作者の負担軽減を図ることができる。
【0071】
また、この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101は、トリップ回路側接触子101c、101dが、CT回路側接触子101a、101bより長く、絶縁部材501が、トリップ回路側端子の先端から所定の長さまでの範囲に設けられていることを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101によれば、簡易な構成によって、CT回路側接触子101a、101bがCT回路側接触子対403を離間させる前にトリップ回路側接触子対403を電気的に絶縁することができる。
【0072】
これにより、簡易な構成によって、CT回路側接触子101a、101bとCT回路側接触子対403との接触状態が不揃いであることに起因してトリップ回路が不用意にトリップ動作することを防止することができる。
【0073】
また、この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101は、トリップ回路側接触子101c、101dが、当該トリップ回路側接触子101c、101dの挿抜方向に沿って設けられ、離間することによってトリップ回路から絶縁される主接触子対403およびトリップ回路に常時接続された副接触子対403を備えたトリップ回路側接触子対403に挿入され、試験端子102に対するCT回路側接触子101a、101bの挿入にともなって、副接触子対403を離間させた後に主接触子対403を離間させ、接続部材411が、CT回路側接触子対403とCT回路側接触子101a、101bとが電気的に接続した後に、副接触子対403に電気的に接続することを特徴としている。
【0074】
この発明にかかる実施の形態の試験プラグ101によれば、CT回路側接触子101a、101bとCT回路側接触子対403とが電気的に接続される前にトリップ回路を開放し、CT回路側接触子対403とCT回路側接触子101a、101bとが電気的に接続された後に、ふたたびトリップ回路を有効にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、この発明にかかる試験プラグは、遮断器をトリップさせるリレーが設置された電気施設における点検作業などに用いる試験プラグに有用であり、特に、大電流をあつかう電気施設における点検作業に用いる試験プラグに適している。
【符号の説明】
【0076】
100 テストターミナル
101 試験プラグ
101a、101b CT回路側接触子
101c、101d トリップ回路側接触子
102 試験端子
403 CT回路側接触子対、トリップ回路側接触子対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間可能に接触する複数の接触子対を備えた試験端子に対して挿抜される試験プラグであって、
前記複数の接触子対のうちCT回路に接続された接触子対(以下「CT回路側接触子対」という)を離間させる位置に挿入され、少なくとも前記試験端子に対して所定位置まで挿入された状態において、離間させた前記CT回路側接触子対を電気的に接続するCT回路側接触子と、
前記試験端子に対する前記CT回路側接触子の挿入にともなって前記複数の接触子対のうちトリップ回路に接続された接触子対(以下「トリップ回路側接触子対」という)を離間させる位置に挿入され、前記CT回路側接触子が所定位置まで挿入された状態において前記トリップ回路側接触子対を電気的に接続するトリップ回路側接触子と、
を備え、
前記トリップ回路側接触子は、
前記試験端子に対する前記CT回路側接触子の挿入にともなって当該CT回路側接触子が前記CT回路側接触子対を離間させる前に、前記トリップ回路側接触子対を絶縁する絶縁部材と、前記CT回路側接触子により前記CT回路側接触子対が電気的に接続された後に、前記トリップ回路側接触子対を電気的に接続する接続部材と、を備えたことを特徴とする試験プラグ。
【請求項2】
前記絶縁部材は、前記試験端子からの前記CT回路側接触子の引き抜きにともなって、前記CT回路側接触子対から前記CT回路側接触子が引き抜かれる前に前記トリップ回路側接触子対を絶縁し、前記CT回路側接触子が前記CT回路側接触子対から引き抜かれた後に前記トリップ回路側接触子対から引き抜かれることを特徴とする請求項1に記載の試験プラグ。
【請求項3】
前記トリップ回路側接触子は、前記CT回路側接触子より長く、
前記絶縁部材は、前記トリップ回路側端子の先端から所定の長さまでの範囲に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の試験プラグ。
【請求項4】
前記トリップ回路側接触子は、
当該トリップ回路側接触子の挿抜方向に沿って設けられ、離間することによって前記トリップ回路から絶縁される主接触子対および前記トリップ回路に常時接続された副接触子対を備えたトリップ回路側接触子対に挿入され、
前記試験端子に対する前記CT回路側接触子の挿入にともなって、前記副接触子対を離間させた後に前記主接触子対を離間させ、
前記接続部材は、前記CT回路側接触子対と前記CT回路側接触子とが電気的に接続した後に、前記副接触子対に電気的に接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の試験プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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