説明

試験装置

【課題】本体部とテストヘッド間のケーブル量を従来に比較して1/2以下に抑えると共に、フェイルメモリのオプション構成に柔軟性を持たせることが可能な試験装置を実現する。
【解決手段】本体部に収納されたパターン発生部からの信号を、光ファイバを介してテストヘッドに接続する試験装置において、光ファイバは、WDMカップラまたはDWDMカップラを介してパターン発生部とテストヘッドを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部に収納されたパターン発生部からの信号を、光ファイバを介してテストヘッドに接続する試験装置に関するものである。本発明が適用される被試験対象デバイス(以下、DUT(Device Under Test))は、主としてメモリICである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の試験装置の構成例を示す機能ブロック図である。試験装置は、本体部10と、DUT30のピンに接続して所定の試験を実行するテストヘッド20と、本体部10とテストヘッド20間を接続する伝送ケーブル41,42よりなる。
【0003】
本体部10は、パターン発生部11、フェイルメモリ12、送信バッファ13、受信バッファ14を収納している。パターン発生部11は、DUT30をテストするための複数のテストパターン信号を発生する。
【0004】
このテストパターン信号は、数百Mbps〜数Gbpsに達する。このテストパターン信号は、信号毎に送信バッファ13を経て数m〜十数mの伝送ケーブル41を介してテストヘッド20に伝送される。テストヘッド20からのフェイル情報は、伝送ケーブル42を介して受信バッファ14を経てフェイルメモリ12に渡される。
【0005】
テストヘッド20は、複数のピンカードから構成されており、各ピンカードは、伝送ケーブル41に接続される受信バッファ21、伝送ケーブル42に接続される送信バッファ22、受信バッファ21を介してテストパターン信号を入力するタイミング発生部23a〜23n、タイミング発生部の信号をDUT30のピンに供給すると共に、ピンに発生する信号を検出するドライバ/コンパレータ24a〜24nを備える。
【0006】
更に、各ピンカードはドライバ/コンパレータにより取得されるDUTの信号とテストパターン信号を入力して良否を判定する判定部25a〜25nを備え、これら判定部のフェイル情報が送信バッファ22を介して本体部10に伝送される。
【0007】
このような構成における動作を説明する。テストヘッド20では伝送されたテストパターン信号を受信バッファ21で受信し、波形整形を行いタイミング発生部23a〜23n及び判定部25a〜25nに送信する。
【0008】
タイミング発生部23a〜23nでは、テストパターン信号をタイミング信号に変換してドライバ/コンパレータ24a〜24nのドライバに送信する。ドライバでは、タイミング信号のHi/LoレベルをDUT30に合わせたHi/Loレベルに変換してDUT30のピンに出力する。
【0009】
これらの一連の動作により、DUT30にテスト信号が印加され、所定のテストが実行される。一方、入力されたテスト信号に対してDUT30は、それに対応した信号を出力する。DUT30から出力された信号は、ドライバ/コンパレータ24a〜24nのコンパレータにより、アナログのHi/Lo信号を論理レベルのHi/Lo信号に変換され、判定部25a〜25nに送信される。
【0010】
判定部25a〜25nでは、パターン発生部11で発生した期待値パターンと比較して、その値が同一であればPass、違っていればFailと判断する。この情報は判定部内の小容量メモリに蓄えることが可能である。しかしながらメモリ試験装置においてメモリのリダンダンシー等の用途で大容量のフェイルメモリ12が必要となる場合が多い。
【0011】
このフェイルメモリ12は、DUT30のメモリ容量や個数により必要容量も変わるため、オプション実装であることが多い。判定部25a〜25nで判定されたPass/Fail情報は、送信バッファ22で波形整形され、伝送ケーブル42を通過し、本体部10の受信バッファ14で再度波形整形されフェイルメモリ12に転送される。
【0012】
これら一連の動作は、制御コントローラ50が、パターン発生部11、フェイルメモリ12、タイミング発生部23a〜23n、判定部25a〜25nの動作条件を設定することにより実行される。
【0013】
図6は、特許文献1に開示されている従来の試験装置の他の構成例を示す機能ブロック図である。図5との相違点は、伝送ケーブル41,42を光ファイバ60,70に変更した構成にある。
【0014】
これに伴い、図5の送信バッファ13,22及び受信バッファ14,21が、夫々E/O(電気/光変換回路)60a,70a及びO/E(光/電気変換回路)70b,60bに変更されている。試験装置としての動作は、図5の実施形態と同一である。
【0015】
【特許文献1】特開2006−153766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような従来技術では、測定チャンネル数の増加により、本体部10とテストヘッド20間の伝送ケーブル数または光ファイバ数が増加し、ハンドラーやプローバにヘッドを接続する際の負荷が増大する問題がある。また、試験装置を設置するための設置工数が増大する問題がある。
【0017】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、本体部とテストヘッド間のケーブル量を従来に比較して1/2以下に抑えると共に、フェイルメモリのオプション構成に柔軟性を持たせることが可能な試験装置の実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)本体部に収納されたパターン発生部からの信号を、光ファイバを介してテストヘッドに接続する試験装置において、
前記光ファイバは、WDMカップラまたはDWDMカップラを介して前記パターン発生部と前記テストヘッドを接続することを特徴とする試験装置。
【0019】
(2)前記本体部はフェイルメモリを備え、前記WDMカップラまたはDWDMカップラの少なくとも1チャンネルは、前記テストヘッドからのフェイル情報を前記フェイルメモリに渡すことを特徴とする(1)に記載の試験装置。
【0020】
(3)前記フェイルメモリは、前記DWDMカップラの任意のチャンネルから前記フェイル情報を取得することを特徴とする(2)に記載の試験装置。
【0021】
(4)前記WDMカップラまたはDWDMカップラは、前記本体部が前記フェイルメモリを実装する場合に、選択的に前記光ファイバに接続されることを特徴とする(2)または(3)に記載の試験装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の構成によれば、必要な部分に電気/光変換回路とWDMカップラを接続するのみで、本体部とテストヘッド間の光ファイバの本数を増加することなく、フェイルメモリの拡張オプションを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は、本発明を適用した試験装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。図5、図6で説明した従来装置と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
試験装置としての動作は、従来装置と同一のため、説明を省略する。本発明の特徴部は、光ファイバ100a〜100nを用いた本体部10とテストヘッド20間の通信において、本体部10側にWDMカップラ200a〜200nを、テストヘッド側20にWDMカップラ300a〜300nを用いることにより、光ファイバを双方向通信経路とする構成にある。
【0025】
光ファイバ通信において、1本の光ファイバで複数の異なる波長の光を用いて多重化を行なうWDM(波長多重:Wavelength Division Multiplexing)技術は周知であり、光受動部品としてWDMカップラが市販されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0026】
図2は、本発明に適用されるWDMカップラの動作原理説明図である。1本の光ファイバを双方向に通信させるためには、本体部からテストヘッド方向の通信波長と、テストヘッドから本体部方向への通信波長を異なる波長とする必要がある。
【0027】
図示の具体例では、本体部からテストヘッド方向の通信波長を1.31μm、テストヘッドから本体部方向への通信波長を1.55μmとしている。WDMカプラ300は、波長依存性を有する3ポートで構成されている。
【0028】
ポート1とポート2間は1.31μmを双方向で通信でき、1.55μmは透過することができない。ポート3とポート1間は1.55μmを双方向で通信でき、1.31μmは透過することができない。またポート2とポート3間はアイソレーションされている。この特性を利用することで、双方向通信を実現させることができる。
【0029】
この双方向通信機能の利用により、図6で必要とされた光ファイバ60及び70の2系統の伝送路は、1系統の光ファイバ100a〜100nのみにすることができ、ケーブルの本数を1/2に減少させることができる。
【0030】
図3は、フェイルメモリ実装の有無に対応した、WDMカップラのオプション実装形態を示す機能ブロック図である。テストヘッド内の回路は、いくつかのピンカードPa〜Pnに分割して実装されており、図3はその1回路分Paの実装例を示している。
【0031】
図3(A)は、本体部10にフェイルメモリ12を実装せず、これにフェイル情報を受け渡す回路を実装していない状態を示す。本体部10からの光ファイバ100aは、光コネクタCaを介してピンカードPa内に導かれる。
【0032】
その光ファイバは、光/電気変換回路500aに接続されて電気信号に変換されタイミング発生部23aにテストパターン信号を伝送する。一方DUT30から受信した信号は、ドラバ/コンパレータ24aで受信され、判定部25aでPass/Fail情報として出力される。ここでは、フェイルメモリにフェイル情報を転送しないために、コネクタDaに信号が接続されているのみである。
【0033】
ここでフェイルメモリ12を本体部10に実装し、これにフェイル情報を転送する場合のオプションを図3(B)に示す。ここでは、図3(A)に示したコネクタDaに電気/光変換回路600aを接続し、この電気/光変換回路600aの出力をWDMカップラ300aのポート3に接続する。
【0034】
WDMカップラのポート2を、光/電気変換回路500aに接続し、ポート1を光コネクタCaに接続する。これにより、フェイル情報を本体部に伝送する光ファイバ系統を増設することなく、図1の回路構成を実現することができる。
【0035】
図4は、本発明を適用した試験装置の他の実施形態を示す機能ブロック図である。図1ではWDMカップラ200a〜200n及び300a〜300nとして2波長多重型を示したが、この実施形態ではこれを多波長多重型のDWDM合波/分波器800及び900に置き換える。
【0036】
上り/下りの伝送に対して複数の通信波長を割り当てることにより、理論的には数十〜百数十チャンネルを光ファイバ一本に多重化することが可能となり、チャンネル数にもよるが、1本の光ファイバで本体部10とテストヘッド20間の通信が可能となる。
【0037】
このような多重化構成をとる場合には、任意のチャンネルを指定してテストヘッドからのフェイル情報を本体部のフェイルメモリに転送することが可能である。
【0038】
以上説明した実施形態は、DUTとしてメモリICを例示したが、本発明の適用はこれの限定されるものではなく、IC一般の試験装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を適用した試験装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明に適用されるWDMカップラの動作原理説明図である。
【図3】フェイルメモリ実装の有無に対応した、WDMカップラのオプション実装形態を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明を適用した試験装置の他の実施形態を示す機能ブロック図である。
【図5】従来の試験装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図6】従来の試験装置の他の構成例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
10 本体部
11 パターン発生部
12 フェイルメモリ
20 テストヘッド
23a〜23n タイミング発生部
24a〜24n ドライバ/コンパレータ
25a〜25n 判定部
30 DUT
100a〜100n 光ファイバ
200a〜200n WDMカップラ(本体部側)
300a〜300n WDMカップラ(テストヘッド側)
400a〜400n 電気/光変換回路(本体部側)
500a〜500n 光/電気変換回路(テストヘッド側)
600a〜600n 電気/光変換回路(テストヘッド側)
700a〜700n 光/電気変換回路(本体部側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に収納されたパターン発生部からの信号を、光ファイバを介してテストヘッドに接続する試験装置において、
前記光ファイバは、WDMカップラまたはDWDMカップラを介して前記パターン発生部と前記テストヘッドを接続することを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記本体部はフェイルメモリを備え、前記WDMカップラまたはDWDMカップラの少なくとも1チャンネルは、前記テストヘッドからのフェイル情報を前記フェイルメモリに渡すことを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記フェイルメモリは、前記DWDMカップラの任意のチャンネルから前記フェイル情報を取得することを特徴とする請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記WDMカップラまたはDWDMカップラは、前記本体部が前記フェイルメモリを実装する場合に、選択的に前記光ファイバに接続されることを特徴とする請求項2または3に記載の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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