詰め替えアダプター
【課題】容器の内容物詰め替え時に懸念される液漏れ液たれを防止しながら、詰め替え作業の負担軽減と効率化を図る方法に用いられる詰め替えアダプターを提供する。
【解決手段】補充用容器から繰り返し使用容器に内容物を詰め替える詰め替えアダプターにおいて、内容物配管と空気配管とよりなる本体と、本体と補充用容器を機密接続する補充用容器機密接続機構と、本体と繰り返し使用容器を機密接続する繰り返し使用容器機密接続機構と、本体の内容物配管と空気配管を開閉可能なバルブと、繰り返し使用容器機密機構が機密状態である場合のみバルブが開放可能であり、バルブが開放状態のときのみ繰り返し使用容器機密機構が機密解除可能であるロック機構を有する詰め替えアダプターを提供する。
【解決手段】補充用容器から繰り返し使用容器に内容物を詰め替える詰め替えアダプターにおいて、内容物配管と空気配管とよりなる本体と、本体と補充用容器を機密接続する補充用容器機密接続機構と、本体と繰り返し使用容器を機密接続する繰り返し使用容器機密接続機構と、本体の内容物配管と空気配管を開閉可能なバルブと、繰り返し使用容器機密機構が機密状態である場合のみバルブが開放可能であり、バルブが開放状態のときのみ繰り返し使用容器機密機構が機密解除可能であるロック機構を有する詰め替えアダプターを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補充用容器から繰り返し使用容器に液状の内容物を詰め替える作業の負荷軽減と効率化に関するもので、紙・プラスチックや金属からなる容器同士で内容物を移し替えるのに用いられる詰め替えアダプターに係る。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチック容器を本品とする商品においては、その買い足しをする場合に同じ容器ではなく、たとえばフィルムを袋状に加工したパウチと呼ばれる容器やごく軽い薄肉のプラスチック容器で購入し、それを本品容器に詰め替えて本品を繰り返し使用することが一般的に行われている。この方法により、内容物の使用量に対する容器重量を軽減することができるようになり、資源保護と廃棄物削減及びコスト削減に有用である。
【0003】
パウチの形状は、注ぎ口が細長いパイプ形状に加工されており、それを繰り返し使用容器の口内に差し込むように移し替える。その際作業者は片手でパウチ底部を、もう一方の手で注ぎ口を支えるため、繰り返し使用容器外部に内容物がこぼれないよう、常時緊張を強いられた。また、麻痺や痺れのある場合は、ひじや手首を支持できない状態で一定の姿勢を維持することが難しいため、このような詰め替え作業は非常に難しかった。
【0004】
また補充用の容器がプラスチック容器であっても事情は変わらず、詰め替え作業は2本の容器をそれぞれ片手で持ちながら、補充用容器を徐々に水平に傾けつつ、両方の口元位置がずれないように保持することが必要であり、移し替え作業の際は、こぼれても支障ないような準備が必要であった。
【0005】
もともと詰め替えのためには、スポイトや漏斗、灯油用のポンプなどの道具を使うことが好ましいと考えるが、それでも作業の不安定さに変わりはなく、たとえば漏斗を使う場合では補充用容器からこぼれる危険は少ないものの、液面が確認しにくいため漏斗に過剰に注出してしまい処置に困ることがあった。
【0006】
そこで最近は、内容物を詰め替えるための工夫がいくつか提案されるようになった。たとえば特許文献1では、本品容器と補充用容器が密閉状態で接合されたうえ、補充側のシール部材が繰り返し使用側のノズルによって破断されることで開栓することで、監視不要で液漏れの心配のない詰め替えが可能であることを謳っている。ところが提案になかでは、前提として繰り返し使用容器のヘッドスペースは補充液量よりも多いという前提が必要である。もしそうではなかった場合、この方法では余剰分は必ずこぼれてしまう。従来の詰め替え作業では、常時あふれる危険があることを予見して監視しているので、もし繰り返し使用容器に残量が多い場合でも、あふれる事故は少なかった。もし、監視フリーの詰め替えを実現するには、万一の場合でもあふれさせない工夫が必要であろう。
【0007】
しかしながら、この提案で主張している監視フリーの考え方は、詰め替えに時間の掛かるもの、たとえば高粘度流体の詰め替え化を促進するためには、有用な考え方である。たとえば容器壁面に付着したシャンプーやドレッシングは、容器を倒立にすることで取り出し可能となることは周知の通りである。この場合、内容物を絞り出したパウチと成形容器とを比べると、前者がフィルムに挟まれた狭い空間に内容物が残留すしやすいのに対して、後者は壁面付着の液体が重力に従って移動することを妨げるものがないので、時間をかける監視フリーの詰め替えには有利と言えよう。
【0008】
特許文献2は、上述した特許文献1の欠点を改善した提案という位置づけと伺える。こ
れはパウチにノズルを設け、繰り返し使用容器側の注出ノズルに差し込むことで弁が開いて内容物が補充され、途中で抜けばパウチ側ノズルは閉塞され時間の詰め替えまで保存可能という提案である。再封可能という利点はあるが、この提案では補充する方のノズル径が補充される本品容器のそれよりも大きくなければならず、監視フリーには不向きである。パウチを乗せられるように形状を工夫するとあるが、漏出の際にはあわてて抜かなければならず、返って容器を倒すなどの危険に晒されることになる。
【0009】
以上のように、詰め替えの容器として漏出の危険がなく再封可能で、しかも繰り返し使用容器の液面が適正な位置で補充を停止できる機能を持った補充用の容器は未だ存在していない。また更に、詰め替え時には、繰り返し使用容器側は流入した内容物の容積分だけ空気を排出しなければならないが、その場合双方の容器を密封することで空気は補充側に流れ込む。この際に空気の脈動して内容物を逆流するため容器振動し、詰め替え中に容器が転倒することがあった。特に、詰め替え開始時は重心位置が高いのでより危険である。また適正量の詰め替えを自動で行える手段は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−099082号公報
【特許文献2】特開2003−267403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は斯かる背景技術の欠点に鑑みてなされたもので、詰め替え作業の負担軽減と効率化を図りながら、確実に容器の内容物詰め替え時に懸念される液漏れ液たれを防止できる方法に用いられる詰め替えアダプターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、補充用容器から繰り返し使用容器に内容物を詰め替える詰め替えアダプターにおいて、内容物配管と空気配管とよりなる本体と、本体と補充用容器を機密接続する補充用容器機密接続機構と、本体と繰り返し使用容器を機密接続する繰り返し使用容器機密接続機構と、本体の内容物配管と空気配管を開閉可能なバルブと、繰り返し使用容器機密機構が機密状態である場合のみバルブが開放可能であり、バルブが開放状態のときのみ繰り返し使用容器機密機構が機密解除可能であるロック機構を有する詰め替えアダプターを提供するものである。
【0013】
また、請求項2の発明では、補充用容器から繰り返し使用容器側に内容物配管と空気配管からなる繰り返し使用容器延長配管が設けられている請求項1記載の詰め替えアダプターを提供するものである。
【0014】
また、請求項3の発明では、本体より補充用容器側に空気配管が延長されている請求項1または2記載の詰め替えアダプターを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に掲げた詰め替えアダプターを用いて内容物の詰め替えを行えば、詰め替えアダプター1の一方に脱着可能な開口部を有する補充用容器2を取り付け、もう一方に繰り返し使用容器3を取り付け、両者を隙間なく結合する機密接続することで、詰め替え時の液漏れや液だれを防止する詰め替え方法を用いることが可能になる。
【0016】
すなわち、この方法で繰り返し使用容器とアダプターの結合が終了すると、バルブ121の動作ロックが外れて、バルブを閉止から開放に変えることが可能となる。この際に、
誤って繰り返し使用容器とアダプターとの結合を外そうとしても外れないようアダプター回転ロックピン142が掛かる。次に詰め替え作業が終了したら、バルブ121を閉止させるが、この操作によってアダプター回転ロックピン142が解除され繰り返し使用容器3と詰め替えアダプター1が機密状態を解くことで分離可能となる。そして分離作業を始めると、バルブ開閉ロックピンが124作動しバルブが開けられなくなる構造である。
【0017】
従って、上記のような動作機構を備えた詰め替え用アダプター1を介して内容物の詰め替えを行うことで、作業時に液漏れがなく、しかも繰り返し使用容器を詰め替え用アダプターと結合しているので容器を保持する作業が非常に簡単になった。
【0018】
また、場合によっては機密状態を保った結合状態のまま放置することで、時間の掛かる詰め替え作業を無人化することも可能となった。またと内容物の詰め替え中に繰り返し使用容器の分離動作を行えないようにすることで、過誤によって詰め替え中に結合を分離する危険性を排除できるので、仮に長時間放置して作業の進捗を忘れてしまっても、安心して中断した作業の続きができるようになった。
【0019】
請求項2の発明は、繰り返し使用容器3の注ぎ足し量が補充用容器2の入れ目量に満たない場合でも、適正な継ぎ足し量で自動的に停止させるための手段である。これは水を満たした瓶を倒立させてカップに注ぐと、瓶の口元位置で水の放出が止まる現象を利用したもので、口元面に掛かる水圧が上下とも等しい場合に生じる現象である。周知の現象であるが、これを内容物の詰め替えに利用することで新たな作用を生む。
【0020】
ひとつは詰め替え時の監視が不要となることである。すでに請求項1で液漏れや液だれを防止する機能および長時間放置の機能を付与しているが、必要以上の量を詰め替える懸念は残されていた。それはたとえば、繰り返し使用容器3にまだ十分な量が残っているにも関わらず、うっかり詰め替え作業を始めてしまった場合や、繰り返し使用容器3が補充用容器2よりも容量が小さい場合などである。もし規定量で停止しないと、詰め替え用アダプタを外した途端に内容物がこぼれてしまう。したがってこの機能は、請求項1の機能をより高めることに有用である。
【0021】
請求項3の発明は、繰り返し使用容器3に残留する空気の移動経路である空気配管を内容物の配管である内容物配管と分離することで、内容物の速やかでかつ定常的な移動を補助し、また、内容物に対して空気が逆流することで生じる衝撃によって容器が転倒することを未然に防止することを目的としたものである。
【0022】
空気用配管7を施さない場合、補充用容器2と繰り返し使用容器3を接続することで、液漏れ液だれ防止は可能であるが、詰め替え作業中に繰り返し使用容器3から排除されるべき空気を内容物の流れに対して逆流するように補充用容器2に流すことになり、それが間欠的に脈動となって流れるため、衝撃が大きい場合は結合された容器が転倒する場合があった。転倒により詰め替えアダプター1の結合が外れて内容物が飛散したり、ガラスの場合は破損の危険もあった。また脈動が発生すると、転倒が生じるばかりか、補充用容器2の内容物は滑らかに下降してこない。これは補充用容器2のエンドスペースに負圧が働くためである。
【0023】
繰り返し使用容器3から内容物を逆流してくる空気によって負圧が緩和され、再び内容物が流れ出る。液面が下降するとまた、負圧が大きくなる、この繰り返しであった。そこで繰り返し使用容器3からの空気の移動を内容物の移動とは別経路にしたうえで、極力内容物との接触を避けることにより、このような不都合な挙動を回避することが可能となった。従来の詰め替え方法では両容器をしっかり握っていたために、認識されなかった課題である。請求項3の内容も請求項2と同様、請求項1の機能を高めることに有用と言える
。
【0024】
特に、内容物配管6も空気配管7も、繰り返し使用容器3の方向に入れ目線近傍まで伸ばすことで、脈動なく滑らかな内容物詰め替えが可能であり、更に過充填せずに自動停止機能を付与することが可能となった。従って、内容物の詰め替え作業を完全に監視なしで行うことが可能となり、特にシャンプーやドレッシング、食用オイルといった高粘度の内容物でも詰め替えることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】詰め替え開始前の状態の詰め替えアダプターと補充用容器と繰り返し使用容器を説明する部分断面正面図。
【図2】図1の詰め替えアダプターと補充用容器と繰り返し使用容器の詰め替え開始中の状態を説明する部分断面正面図。
【図3】図1の詰め替えアダプターの正面組立てを説明する部分断面正面図。
【図4】図1の詰め替えアダプターの側面組立てを説明する部分断面側面図。
【図5】図1の詰め替えアダプターのカバーリングの構造の部分断面正面図。
【図6】図1の詰め替えアダプターのカバーリングを除いた詰め替えアダプター部品の部分断面側面図。
【図7】図1の詰め替えアダプターの詰め替えに用いられる本体キャップの構造を説明する部分断面正面図。
【図8】図1の詰め替えアダプターのバルブの繰り返し使用容器開閉ロックが働いた状態を説明する部分断面正面図。
【図9】図1の詰め替えアダプターのバルブの繰り返し使用容器開閉ロックが解除された状態を説明する部分断面正面図。
【図10】図1の詰め替えアダプターのカバーリングが固定された状態を説明する部分断面正面図。
【図11】図1の詰め替えアダプターのバルブ開閉ロックが働いた状態を説明する部分断面正面図。
【図12】図1の詰め替えアダプターのバルブ開閉ロックが解除された状態を説明する部分断面正面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の最良の一実施形態を説明する。
【0027】
本発明の重要な特徴は、詰め替え時の液漏れ液だれを防止するべく、繰り返し使用容器3と補充用容器2を結合するための詰め替えアダプター1を用いることである。このことで、従来のように両者の口元の位置調整に煩わされることなく、また液こぼれに供えた準備も不要となり、気軽に詰め替えることが可能となった。このことは体に障害を抱えた人でも詰め替え作業をやりやすくする一助となった。そして、容器が結合して漏れのない機密状態のときにのみ、詰め替えがなされるようにしたことにより、長時間放置して詰め替えをすることも可能となり、また詰め替えしていたことを忘れてしまっていたとしても、内容物バルブ126を閉じなければ両者を分離できない構造であるため、液漏れ事故の発生する危険は極めて少ない。その一方で、両者を結合することにより新たに生じる課題も浮かび上がったが、この発明ではその対処方法をも提案した。
【0028】
ひとつは詰め替える液量が多すぎた場合の対処方法である。本発明では予め定めた入れ目線近傍に液面が達したら、自動的に詰め替えを止めることが可能な詰め替えアダプターを提案している。この原理は補充用容器2の口元液面に掛かる圧力が均衡することで成立するものである。その挙動は以下の通りである。
【0029】
まず詰め替え時は結合した容器を、補充用容器2が上になるように立たせて行う。詰め替え中に徐々に補充用容器2の液面が低下する一方、間欠的に空気が逆流する。この空気流入は補充用容器2の底部に生じるフットスペース21の気圧が負圧になる場合に発生する。補充側用容器2は倒立しているので、口元は常時内容物に満たされており空気流入を阻止しているのだが、内部の負圧が大きくなると液を押し戻すように空気が入り込む。その結果負圧が大気圧に近づくと空気流入は止まる、これを交互に繰り返すことになる。そして繰り返し使用容器3の液面が内容物配管6の下端である繰り返し使用容器延長配管下端に達すると、口元は完全に塞がれるために空気が侵入できず、フットスペース21に掛かる負圧と補充液高さに由来する下向きの圧力と、繰り返し使用容器のヘッドスペース圧力がつりあったところで、内容物は下降を停止する。以上にように、補充用容器2を倒立状態に保持することが自動停止が好ましいが、もともと両者を結合する構造であることに加えて、詰め替えアダプター1に内容物配管6を組み付けたことによても、この効果を生み出す。
【0030】
補充用容器2の内容量は繰り返し使用容器のそれと比べて、通常は7から8割程度の量であるが、これは1回で移し替えることが出来るよう、安全を見て設定された容量である。しかし頻繁に補充をする場合や、複数の繰り返し使用容器3を活用している場合は、補充用容器2の容量は繰り返し使用容器3のそれを上回る場合もある。その場合、詰め替え作業では液漏れや液だれの危険が付いて回るが、それを避けたい場合に自動停止機能は効果を発揮する。
【0031】
ふたつ目の課題は、詰め替え時に流れに逆らって侵入する空気の挙動である。先ほども述べた通り、この動作は補充用容器2の口元面に係る圧力バランスの変動と関わっている。また流量が大きいと圧力変動も大きくなる。空気が流入する際は内容物の流出が一瞬遮られるので、流体の流れに加速度が生じ、その衝撃荷重で補充用容器が振動する。甚だしい場合は転倒してしまう。当然この様に補充用容器が横になっては詰め替えができない。
【0032】
そこで補充用容器が転倒しない様に、空気配管7の設置したものである。この空気配管は空気専用の配管であり、内容物の流出を遮らずに、かつ補充用容器の内部の負圧に対して即座に空気を入れることで、補充用容器内部の圧力変動を非常に小さくすることを目的とした。その結果、補充用容器が転倒するような衝撃荷重がなくなった上に、内容物の流出も滑らかになったことで、詰め替え時間を短縮する効果ももたらした。
【0033】
さて空気配管7と命名したものの、完全に内容物の侵入を防止することは難しい。本出願では詰め替えアダプター1に空気配管の延長部にあたるパイプの一端を固定して、それを使用時に補充用容器2に取り付ける方法であるため、装着時には内容物の中に浸さなければならない。そのため空気配管7の内面には内容物が侵入する。そこで最小限の侵入量にするために、補充用容器2が倒立する際に空気配管7の自由端が液面から突き出すよう、パイプの長さを設定しておくのが好ましい。
【0034】
以上の内容に基づいて、詰め替えアダプター1の構造と詰め替え作業方法について詳述する。図2は詰め替えアダプター1の断面図である。上部から、補充用容器接続部11、切り替えバルブ12、カバーリング13、繰り返し使用容器接続部14の4組から構成される。接続部には必要に応じて機密接続のためにパッキンなどのシール材を取り付けることが可能である。補充用容器接続部11は補充用容器2を取り付け、内容物の漏出を防止して機密性を出し、かつ、補充用容器2を倒立支持する機能を有する。補充用容器取り付け方法は、ねじ式でも打栓式でもよく、液留め方法はインナーリング止めでも天面パッキン止めでも良い。切り替えバルブ12は手動で流路の開閉を行うもので、空気配管および内容物配管の固定流路121に対して回転流路122の向きを一致させることで流路が開く。操作は切り替えバルブのロックが外れている場合にのみ可能であり、ハンドル123
で行う。切り替えバルブ12は内容物を流すため内容物配管の開閉に用いる内容物バルブ125だけの場合もあるし、必要に応じて逆流する空気を流すための空気配管のバルブである空気バルブ126も併設できる。その場合、移動する内容物と空気の容積は同じであるから、バルブ流路、すなわち内容物配管の有効断面積も粘度や摩擦によるエネルギー損失を補いつつ流量が同等になるよう設定することが望ましい。繰り返し使用容器接続部14は繰り返し使用容器3との接続と液漏れ防止機能を司る。
【0035】
ふたつの接続部は切り替えバルブ12のケーシングを介して接続されており、これらは一体構造でも良いし組み立て構造でも良い。ふたつの接続部はその中心軸が一致していることが望ましいが、各々の接続部中心に対して容器重心がずれている場合は、転倒を防止するために中心軸をずらすことも可能である。カバーリング13は繰り返し使用容器3との接続および切り替えバルブ12のロック機構を備えた部品である。カバーリング13は繰り返し使用容器接続部14を上から覆うように取り付け、内蔵されたピンを介して繰り返し使用容器接続部14と一体となっている。
【0036】
次に詰め替え作業の手順を図2で説明する。最初に補充用容器2を正立にして、詰め替えアダプター1を取付ける。両者を組み付けたら倒立させ、繰り返し使用容器3に組み付ける。図2では繰り返し使用容器3には計量用ノズル41を有する、本体キャップ4を取り付けてあるのでこれに接続する。この接続を完全に行なうと、切り替えバルブ12の操作が可能となるのでハンドル123を回転して詰め替えを行なう。詰め替え時間は内容物によってまちまちである。
【0037】
低粘度の内容物では瞬時に終了するので、監視状態で詰め替えを終了させる場合が多いであろう。また高粘度の内容物では時間が掛かるので、自動停止機構を利用して長時間放置とすることが望ましいであろう。従って詰め替えアダプター1の部品構成は、必要に応じた仕様のものを準備することが望ましい。詰め替え終了後はバルブを閉止してから、詰め替えアダプター1と繰り返し使用容器3を分離する。補充用容器2は内容物が残っている場合はそのまま保存することも可能である。空になった場合は取り外して廃棄する。
【0038】
つぎロック機構の動作について図8から図12に基づき説明する。まず、カバーリング13と繰り返し使用容器接続部14をアダプター回転ロックピン142で組み合わせた状態で、該ロックピンの内側突き出し部を本体キャップ4のスライド溝42に合わせて下向きに押し込み、このとき本体キャップ4と繰り返し使用容器接続部14に挟まれたパッキン5が圧縮されて、液状物に対するシールがなされる。このときのロック機構の位置関係を示したものが図8である。下降限まで到達したらカバーリング13を右回転させると、アダプター回転ロックピン142が本体キャップ4の溝終点に達しところで詰め替えアダプター1が回転停止する。ここまでが図9である。
【0039】
そこから更にカバーリング13を回転させると該ロックピンがカムの作用で内側に押出されて繰り返し使用容器3の接続部位置決め溝43に挿入され、繰り返し使用容器14と結合される。カバーリング13は更に回転したところでカバー位置決めピン143が勘合して停止する。ここまでが図10である。
【0040】
アダプター回転ロックピン142が押出されてから、カバーリング13が停止するまでの間に、カバーリング13は繰り返し使用容器接続部14に対して上面から見て相対角度が右回りにずれる。一方、繰り返し使用容器接続部14には切替バルブ12が取付けられ、そこにはバルブ開閉に伴って水平方向に前後するバルブ開閉ロックピン124が備わっている。この先端はカバーリング13と一体のストッパー131によって動きを制限されており、バルブ開閉ロックピン124が動けない状態では、切り替えバル12を操作することは出来ない。それが繰り返し使用容器3と組み合わされ、更にカバーリング13が位置決め部まで進角すると、ストッパー131に設けられた貫通穴132とバルブ開閉ロックピン124の中心軸が一致し、切り替えバルブ12の開閉動作が可能になる。その際、カバーリング13は回転運動を制限されるため、バルブが閉じられない限り詰め替えアダプター1を外すことは出来ない。このようにすることで、詰め替えアダプター1が装着されているときにのみ、バルブ開閉操作を可能にする機構が実現できる。
【0041】
この機構はひとつのボタン操作でいずれか一方のロックが解除できるような機構にすうことも可能である。
【0042】
詰め替えアダプター1と繰り返し使用容器3との結合は、ねじ、特に回転角度が小さい多條ねじを併用してもよい。
【0043】
詰め替え作業を繰り返し使用容器3入れ目線近傍で自動停止させるためには、詰め替えアダプター1の繰り返し使用容器接続部14から内容物配管6を入れ目線近傍まで伸ばして、繰り返し使用容器延長配管を設け、その先端部を注出口となす。パイプ内径は大きいほど詰め替え速度が速くなるが、停止したときの液面から切り替えバルブ12までの残量は繰り返し使用容器3に移るので、予めこの量を計算に入れて配管出口位置を決める必要がある。
【0044】
充填されるに従って繰り返し使用容器3から排除される空気を、詰め替えアダプター1で繋がれた閉じた系で滑らかに補充用容器2に移動させるために空気用配管7を設けるのだが、この配管は通気性を考慮して倒立したときに先端が液面から突き出して空気層に露出していることが望ましい。また、切り替えバルブ12の開き方は、空気バルブ126が内容物バルブ127よりもやや早めに開くようにすると、空気用配管7に侵入した内容物がまず繰り返し使用容器3に移り、更に切り替えバルブ12を開くことで、内容物と空気がそれぞれの配管を一方通行で流れることになるので、脈動による転倒がなくなり滑らかに移し替えることが可能になる。
【0045】
また、空気用配管7の先端にはリードバルブのような簡単な逆止弁をつけておくことにより、先端が液中にあるときには液圧が大気圧を上回るので閉止したままなので、取り付け時に内容物が侵入することを防止できる。
【実施例】
【0046】
<実施例1>
500mlが入れ目量の繰り返し使用容器に残量がないときに、400mlの補充用容器でシャンプーを補充しようとした。これを請求項1の仕様のアダプターを使って100人が1回ずつ移し替え作業を行い、液漏れ液だれの回数を記録した。比較用として、アダプターなしでの移し替えも実施した。アダプターなしで液があふれた場合も液漏れとして計測した。その結果を表1に示した。
【0047】
<実施例2>
500mlが入れ目量の繰り返し使用容器に残量200mlある場合に、400mlの補充用容器でシャンプーを補充しようとした。容器はともに透明およびともに着色不透明の組合せでこれを請求項2の仕様のアダプターを使って100人が1回ずつ移し替え作業を行い、液漏れ液だれの回数および、容量計測を行い記録した。比較用として、アダプターなしでの移し替えも実施した。容量計測結果は平均値と標準偏差をもとめ結果を表2に示した。
【0048】
<実施例3>
500mlが入れ目量の繰り返し使用容器に残量がないときに、400mlの補充用容
器でシャンプーを補充しようとした。これを請求項1及び3の仕様のアダプターを使って100人が各1かいずつ移し替え作業を行い、容器の転倒回数を記録した。その結果を表3に示した。
【0049】
<実施例4>
500mlが入れ目量の繰り返し使用容器に残量が200mlある場合に、400mlの補充用容器でシャンプーを補充しようとした。これを請求項4の仕様のアダプターを使って100人が1回ずつ移し替え作業を行い、液漏れ液だれおよび切り替えバルブを開いてから入れ目量までの充填時間と容量計測を行った。比較用として、アダプターなしでの移し替えも実施した。充填時間と容量計測結果は平均値と標準偏差に書き換えその結果を表4に示した。
【0050】
表は以下の通り。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、補充用容器から繰り返し使用容器に内容物を詰め替える作業に使用される。
【符号の説明】
【0056】
1…詰め替えアダプター
2…補充用容器
3…繰り返し使用容器
4…本体キャップ
5…パッキン
6…内容物配管
7…空気配管
8…繰り返し使用容器延長配管
9…真空ポンプ
11…補充用容器接続部
12…切り替えバルブ
13…カバーリング
14…繰り返し使用容器接続部
41…計量用ノズル
42…スライド溝
43…接続部位置決め溝
121…固定流路
122…回転流路
123…ハンドル
124…バルブ開閉ロックピン
125…ロックピンガイド
126…内容物バルブ
127…空気バルブ
131…ストッパー
132…貫通穴
142…アダプター回転ロックピン
143…カバー位置決めピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、補充用容器から繰り返し使用容器に液状の内容物を詰め替える作業の負荷軽減と効率化に関するもので、紙・プラスチックや金属からなる容器同士で内容物を移し替えるのに用いられる詰め替えアダプターに係る。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチック容器を本品とする商品においては、その買い足しをする場合に同じ容器ではなく、たとえばフィルムを袋状に加工したパウチと呼ばれる容器やごく軽い薄肉のプラスチック容器で購入し、それを本品容器に詰め替えて本品を繰り返し使用することが一般的に行われている。この方法により、内容物の使用量に対する容器重量を軽減することができるようになり、資源保護と廃棄物削減及びコスト削減に有用である。
【0003】
パウチの形状は、注ぎ口が細長いパイプ形状に加工されており、それを繰り返し使用容器の口内に差し込むように移し替える。その際作業者は片手でパウチ底部を、もう一方の手で注ぎ口を支えるため、繰り返し使用容器外部に内容物がこぼれないよう、常時緊張を強いられた。また、麻痺や痺れのある場合は、ひじや手首を支持できない状態で一定の姿勢を維持することが難しいため、このような詰め替え作業は非常に難しかった。
【0004】
また補充用の容器がプラスチック容器であっても事情は変わらず、詰め替え作業は2本の容器をそれぞれ片手で持ちながら、補充用容器を徐々に水平に傾けつつ、両方の口元位置がずれないように保持することが必要であり、移し替え作業の際は、こぼれても支障ないような準備が必要であった。
【0005】
もともと詰め替えのためには、スポイトや漏斗、灯油用のポンプなどの道具を使うことが好ましいと考えるが、それでも作業の不安定さに変わりはなく、たとえば漏斗を使う場合では補充用容器からこぼれる危険は少ないものの、液面が確認しにくいため漏斗に過剰に注出してしまい処置に困ることがあった。
【0006】
そこで最近は、内容物を詰め替えるための工夫がいくつか提案されるようになった。たとえば特許文献1では、本品容器と補充用容器が密閉状態で接合されたうえ、補充側のシール部材が繰り返し使用側のノズルによって破断されることで開栓することで、監視不要で液漏れの心配のない詰め替えが可能であることを謳っている。ところが提案になかでは、前提として繰り返し使用容器のヘッドスペースは補充液量よりも多いという前提が必要である。もしそうではなかった場合、この方法では余剰分は必ずこぼれてしまう。従来の詰め替え作業では、常時あふれる危険があることを予見して監視しているので、もし繰り返し使用容器に残量が多い場合でも、あふれる事故は少なかった。もし、監視フリーの詰め替えを実現するには、万一の場合でもあふれさせない工夫が必要であろう。
【0007】
しかしながら、この提案で主張している監視フリーの考え方は、詰め替えに時間の掛かるもの、たとえば高粘度流体の詰め替え化を促進するためには、有用な考え方である。たとえば容器壁面に付着したシャンプーやドレッシングは、容器を倒立にすることで取り出し可能となることは周知の通りである。この場合、内容物を絞り出したパウチと成形容器とを比べると、前者がフィルムに挟まれた狭い空間に内容物が残留すしやすいのに対して、後者は壁面付着の液体が重力に従って移動することを妨げるものがないので、時間をかける監視フリーの詰め替えには有利と言えよう。
【0008】
特許文献2は、上述した特許文献1の欠点を改善した提案という位置づけと伺える。こ
れはパウチにノズルを設け、繰り返し使用容器側の注出ノズルに差し込むことで弁が開いて内容物が補充され、途中で抜けばパウチ側ノズルは閉塞され時間の詰め替えまで保存可能という提案である。再封可能という利点はあるが、この提案では補充する方のノズル径が補充される本品容器のそれよりも大きくなければならず、監視フリーには不向きである。パウチを乗せられるように形状を工夫するとあるが、漏出の際にはあわてて抜かなければならず、返って容器を倒すなどの危険に晒されることになる。
【0009】
以上のように、詰め替えの容器として漏出の危険がなく再封可能で、しかも繰り返し使用容器の液面が適正な位置で補充を停止できる機能を持った補充用の容器は未だ存在していない。また更に、詰め替え時には、繰り返し使用容器側は流入した内容物の容積分だけ空気を排出しなければならないが、その場合双方の容器を密封することで空気は補充側に流れ込む。この際に空気の脈動して内容物を逆流するため容器振動し、詰め替え中に容器が転倒することがあった。特に、詰め替え開始時は重心位置が高いのでより危険である。また適正量の詰め替えを自動で行える手段は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−099082号公報
【特許文献2】特開2003−267403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は斯かる背景技術の欠点に鑑みてなされたもので、詰め替え作業の負担軽減と効率化を図りながら、確実に容器の内容物詰め替え時に懸念される液漏れ液たれを防止できる方法に用いられる詰め替えアダプターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、補充用容器から繰り返し使用容器に内容物を詰め替える詰め替えアダプターにおいて、内容物配管と空気配管とよりなる本体と、本体と補充用容器を機密接続する補充用容器機密接続機構と、本体と繰り返し使用容器を機密接続する繰り返し使用容器機密接続機構と、本体の内容物配管と空気配管を開閉可能なバルブと、繰り返し使用容器機密機構が機密状態である場合のみバルブが開放可能であり、バルブが開放状態のときのみ繰り返し使用容器機密機構が機密解除可能であるロック機構を有する詰め替えアダプターを提供するものである。
【0013】
また、請求項2の発明では、補充用容器から繰り返し使用容器側に内容物配管と空気配管からなる繰り返し使用容器延長配管が設けられている請求項1記載の詰め替えアダプターを提供するものである。
【0014】
また、請求項3の発明では、本体より補充用容器側に空気配管が延長されている請求項1または2記載の詰め替えアダプターを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に掲げた詰め替えアダプターを用いて内容物の詰め替えを行えば、詰め替えアダプター1の一方に脱着可能な開口部を有する補充用容器2を取り付け、もう一方に繰り返し使用容器3を取り付け、両者を隙間なく結合する機密接続することで、詰め替え時の液漏れや液だれを防止する詰め替え方法を用いることが可能になる。
【0016】
すなわち、この方法で繰り返し使用容器とアダプターの結合が終了すると、バルブ121の動作ロックが外れて、バルブを閉止から開放に変えることが可能となる。この際に、
誤って繰り返し使用容器とアダプターとの結合を外そうとしても外れないようアダプター回転ロックピン142が掛かる。次に詰め替え作業が終了したら、バルブ121を閉止させるが、この操作によってアダプター回転ロックピン142が解除され繰り返し使用容器3と詰め替えアダプター1が機密状態を解くことで分離可能となる。そして分離作業を始めると、バルブ開閉ロックピンが124作動しバルブが開けられなくなる構造である。
【0017】
従って、上記のような動作機構を備えた詰め替え用アダプター1を介して内容物の詰め替えを行うことで、作業時に液漏れがなく、しかも繰り返し使用容器を詰め替え用アダプターと結合しているので容器を保持する作業が非常に簡単になった。
【0018】
また、場合によっては機密状態を保った結合状態のまま放置することで、時間の掛かる詰め替え作業を無人化することも可能となった。またと内容物の詰め替え中に繰り返し使用容器の分離動作を行えないようにすることで、過誤によって詰め替え中に結合を分離する危険性を排除できるので、仮に長時間放置して作業の進捗を忘れてしまっても、安心して中断した作業の続きができるようになった。
【0019】
請求項2の発明は、繰り返し使用容器3の注ぎ足し量が補充用容器2の入れ目量に満たない場合でも、適正な継ぎ足し量で自動的に停止させるための手段である。これは水を満たした瓶を倒立させてカップに注ぐと、瓶の口元位置で水の放出が止まる現象を利用したもので、口元面に掛かる水圧が上下とも等しい場合に生じる現象である。周知の現象であるが、これを内容物の詰め替えに利用することで新たな作用を生む。
【0020】
ひとつは詰め替え時の監視が不要となることである。すでに請求項1で液漏れや液だれを防止する機能および長時間放置の機能を付与しているが、必要以上の量を詰め替える懸念は残されていた。それはたとえば、繰り返し使用容器3にまだ十分な量が残っているにも関わらず、うっかり詰め替え作業を始めてしまった場合や、繰り返し使用容器3が補充用容器2よりも容量が小さい場合などである。もし規定量で停止しないと、詰め替え用アダプタを外した途端に内容物がこぼれてしまう。したがってこの機能は、請求項1の機能をより高めることに有用である。
【0021】
請求項3の発明は、繰り返し使用容器3に残留する空気の移動経路である空気配管を内容物の配管である内容物配管と分離することで、内容物の速やかでかつ定常的な移動を補助し、また、内容物に対して空気が逆流することで生じる衝撃によって容器が転倒することを未然に防止することを目的としたものである。
【0022】
空気用配管7を施さない場合、補充用容器2と繰り返し使用容器3を接続することで、液漏れ液だれ防止は可能であるが、詰め替え作業中に繰り返し使用容器3から排除されるべき空気を内容物の流れに対して逆流するように補充用容器2に流すことになり、それが間欠的に脈動となって流れるため、衝撃が大きい場合は結合された容器が転倒する場合があった。転倒により詰め替えアダプター1の結合が外れて内容物が飛散したり、ガラスの場合は破損の危険もあった。また脈動が発生すると、転倒が生じるばかりか、補充用容器2の内容物は滑らかに下降してこない。これは補充用容器2のエンドスペースに負圧が働くためである。
【0023】
繰り返し使用容器3から内容物を逆流してくる空気によって負圧が緩和され、再び内容物が流れ出る。液面が下降するとまた、負圧が大きくなる、この繰り返しであった。そこで繰り返し使用容器3からの空気の移動を内容物の移動とは別経路にしたうえで、極力内容物との接触を避けることにより、このような不都合な挙動を回避することが可能となった。従来の詰め替え方法では両容器をしっかり握っていたために、認識されなかった課題である。請求項3の内容も請求項2と同様、請求項1の機能を高めることに有用と言える
。
【0024】
特に、内容物配管6も空気配管7も、繰り返し使用容器3の方向に入れ目線近傍まで伸ばすことで、脈動なく滑らかな内容物詰め替えが可能であり、更に過充填せずに自動停止機能を付与することが可能となった。従って、内容物の詰め替え作業を完全に監視なしで行うことが可能となり、特にシャンプーやドレッシング、食用オイルといった高粘度の内容物でも詰め替えることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】詰め替え開始前の状態の詰め替えアダプターと補充用容器と繰り返し使用容器を説明する部分断面正面図。
【図2】図1の詰め替えアダプターと補充用容器と繰り返し使用容器の詰め替え開始中の状態を説明する部分断面正面図。
【図3】図1の詰め替えアダプターの正面組立てを説明する部分断面正面図。
【図4】図1の詰め替えアダプターの側面組立てを説明する部分断面側面図。
【図5】図1の詰め替えアダプターのカバーリングの構造の部分断面正面図。
【図6】図1の詰め替えアダプターのカバーリングを除いた詰め替えアダプター部品の部分断面側面図。
【図7】図1の詰め替えアダプターの詰め替えに用いられる本体キャップの構造を説明する部分断面正面図。
【図8】図1の詰め替えアダプターのバルブの繰り返し使用容器開閉ロックが働いた状態を説明する部分断面正面図。
【図9】図1の詰め替えアダプターのバルブの繰り返し使用容器開閉ロックが解除された状態を説明する部分断面正面図。
【図10】図1の詰め替えアダプターのカバーリングが固定された状態を説明する部分断面正面図。
【図11】図1の詰め替えアダプターのバルブ開閉ロックが働いた状態を説明する部分断面正面図。
【図12】図1の詰め替えアダプターのバルブ開閉ロックが解除された状態を説明する部分断面正面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の最良の一実施形態を説明する。
【0027】
本発明の重要な特徴は、詰め替え時の液漏れ液だれを防止するべく、繰り返し使用容器3と補充用容器2を結合するための詰め替えアダプター1を用いることである。このことで、従来のように両者の口元の位置調整に煩わされることなく、また液こぼれに供えた準備も不要となり、気軽に詰め替えることが可能となった。このことは体に障害を抱えた人でも詰め替え作業をやりやすくする一助となった。そして、容器が結合して漏れのない機密状態のときにのみ、詰め替えがなされるようにしたことにより、長時間放置して詰め替えをすることも可能となり、また詰め替えしていたことを忘れてしまっていたとしても、内容物バルブ126を閉じなければ両者を分離できない構造であるため、液漏れ事故の発生する危険は極めて少ない。その一方で、両者を結合することにより新たに生じる課題も浮かび上がったが、この発明ではその対処方法をも提案した。
【0028】
ひとつは詰め替える液量が多すぎた場合の対処方法である。本発明では予め定めた入れ目線近傍に液面が達したら、自動的に詰め替えを止めることが可能な詰め替えアダプターを提案している。この原理は補充用容器2の口元液面に掛かる圧力が均衡することで成立するものである。その挙動は以下の通りである。
【0029】
まず詰め替え時は結合した容器を、補充用容器2が上になるように立たせて行う。詰め替え中に徐々に補充用容器2の液面が低下する一方、間欠的に空気が逆流する。この空気流入は補充用容器2の底部に生じるフットスペース21の気圧が負圧になる場合に発生する。補充側用容器2は倒立しているので、口元は常時内容物に満たされており空気流入を阻止しているのだが、内部の負圧が大きくなると液を押し戻すように空気が入り込む。その結果負圧が大気圧に近づくと空気流入は止まる、これを交互に繰り返すことになる。そして繰り返し使用容器3の液面が内容物配管6の下端である繰り返し使用容器延長配管下端に達すると、口元は完全に塞がれるために空気が侵入できず、フットスペース21に掛かる負圧と補充液高さに由来する下向きの圧力と、繰り返し使用容器のヘッドスペース圧力がつりあったところで、内容物は下降を停止する。以上にように、補充用容器2を倒立状態に保持することが自動停止が好ましいが、もともと両者を結合する構造であることに加えて、詰め替えアダプター1に内容物配管6を組み付けたことによても、この効果を生み出す。
【0030】
補充用容器2の内容量は繰り返し使用容器のそれと比べて、通常は7から8割程度の量であるが、これは1回で移し替えることが出来るよう、安全を見て設定された容量である。しかし頻繁に補充をする場合や、複数の繰り返し使用容器3を活用している場合は、補充用容器2の容量は繰り返し使用容器3のそれを上回る場合もある。その場合、詰め替え作業では液漏れや液だれの危険が付いて回るが、それを避けたい場合に自動停止機能は効果を発揮する。
【0031】
ふたつ目の課題は、詰め替え時に流れに逆らって侵入する空気の挙動である。先ほども述べた通り、この動作は補充用容器2の口元面に係る圧力バランスの変動と関わっている。また流量が大きいと圧力変動も大きくなる。空気が流入する際は内容物の流出が一瞬遮られるので、流体の流れに加速度が生じ、その衝撃荷重で補充用容器が振動する。甚だしい場合は転倒してしまう。当然この様に補充用容器が横になっては詰め替えができない。
【0032】
そこで補充用容器が転倒しない様に、空気配管7の設置したものである。この空気配管は空気専用の配管であり、内容物の流出を遮らずに、かつ補充用容器の内部の負圧に対して即座に空気を入れることで、補充用容器内部の圧力変動を非常に小さくすることを目的とした。その結果、補充用容器が転倒するような衝撃荷重がなくなった上に、内容物の流出も滑らかになったことで、詰め替え時間を短縮する効果ももたらした。
【0033】
さて空気配管7と命名したものの、完全に内容物の侵入を防止することは難しい。本出願では詰め替えアダプター1に空気配管の延長部にあたるパイプの一端を固定して、それを使用時に補充用容器2に取り付ける方法であるため、装着時には内容物の中に浸さなければならない。そのため空気配管7の内面には内容物が侵入する。そこで最小限の侵入量にするために、補充用容器2が倒立する際に空気配管7の自由端が液面から突き出すよう、パイプの長さを設定しておくのが好ましい。
【0034】
以上の内容に基づいて、詰め替えアダプター1の構造と詰め替え作業方法について詳述する。図2は詰め替えアダプター1の断面図である。上部から、補充用容器接続部11、切り替えバルブ12、カバーリング13、繰り返し使用容器接続部14の4組から構成される。接続部には必要に応じて機密接続のためにパッキンなどのシール材を取り付けることが可能である。補充用容器接続部11は補充用容器2を取り付け、内容物の漏出を防止して機密性を出し、かつ、補充用容器2を倒立支持する機能を有する。補充用容器取り付け方法は、ねじ式でも打栓式でもよく、液留め方法はインナーリング止めでも天面パッキン止めでも良い。切り替えバルブ12は手動で流路の開閉を行うもので、空気配管および内容物配管の固定流路121に対して回転流路122の向きを一致させることで流路が開く。操作は切り替えバルブのロックが外れている場合にのみ可能であり、ハンドル123
で行う。切り替えバルブ12は内容物を流すため内容物配管の開閉に用いる内容物バルブ125だけの場合もあるし、必要に応じて逆流する空気を流すための空気配管のバルブである空気バルブ126も併設できる。その場合、移動する内容物と空気の容積は同じであるから、バルブ流路、すなわち内容物配管の有効断面積も粘度や摩擦によるエネルギー損失を補いつつ流量が同等になるよう設定することが望ましい。繰り返し使用容器接続部14は繰り返し使用容器3との接続と液漏れ防止機能を司る。
【0035】
ふたつの接続部は切り替えバルブ12のケーシングを介して接続されており、これらは一体構造でも良いし組み立て構造でも良い。ふたつの接続部はその中心軸が一致していることが望ましいが、各々の接続部中心に対して容器重心がずれている場合は、転倒を防止するために中心軸をずらすことも可能である。カバーリング13は繰り返し使用容器3との接続および切り替えバルブ12のロック機構を備えた部品である。カバーリング13は繰り返し使用容器接続部14を上から覆うように取り付け、内蔵されたピンを介して繰り返し使用容器接続部14と一体となっている。
【0036】
次に詰め替え作業の手順を図2で説明する。最初に補充用容器2を正立にして、詰め替えアダプター1を取付ける。両者を組み付けたら倒立させ、繰り返し使用容器3に組み付ける。図2では繰り返し使用容器3には計量用ノズル41を有する、本体キャップ4を取り付けてあるのでこれに接続する。この接続を完全に行なうと、切り替えバルブ12の操作が可能となるのでハンドル123を回転して詰め替えを行なう。詰め替え時間は内容物によってまちまちである。
【0037】
低粘度の内容物では瞬時に終了するので、監視状態で詰め替えを終了させる場合が多いであろう。また高粘度の内容物では時間が掛かるので、自動停止機構を利用して長時間放置とすることが望ましいであろう。従って詰め替えアダプター1の部品構成は、必要に応じた仕様のものを準備することが望ましい。詰め替え終了後はバルブを閉止してから、詰め替えアダプター1と繰り返し使用容器3を分離する。補充用容器2は内容物が残っている場合はそのまま保存することも可能である。空になった場合は取り外して廃棄する。
【0038】
つぎロック機構の動作について図8から図12に基づき説明する。まず、カバーリング13と繰り返し使用容器接続部14をアダプター回転ロックピン142で組み合わせた状態で、該ロックピンの内側突き出し部を本体キャップ4のスライド溝42に合わせて下向きに押し込み、このとき本体キャップ4と繰り返し使用容器接続部14に挟まれたパッキン5が圧縮されて、液状物に対するシールがなされる。このときのロック機構の位置関係を示したものが図8である。下降限まで到達したらカバーリング13を右回転させると、アダプター回転ロックピン142が本体キャップ4の溝終点に達しところで詰め替えアダプター1が回転停止する。ここまでが図9である。
【0039】
そこから更にカバーリング13を回転させると該ロックピンがカムの作用で内側に押出されて繰り返し使用容器3の接続部位置決め溝43に挿入され、繰り返し使用容器14と結合される。カバーリング13は更に回転したところでカバー位置決めピン143が勘合して停止する。ここまでが図10である。
【0040】
アダプター回転ロックピン142が押出されてから、カバーリング13が停止するまでの間に、カバーリング13は繰り返し使用容器接続部14に対して上面から見て相対角度が右回りにずれる。一方、繰り返し使用容器接続部14には切替バルブ12が取付けられ、そこにはバルブ開閉に伴って水平方向に前後するバルブ開閉ロックピン124が備わっている。この先端はカバーリング13と一体のストッパー131によって動きを制限されており、バルブ開閉ロックピン124が動けない状態では、切り替えバル12を操作することは出来ない。それが繰り返し使用容器3と組み合わされ、更にカバーリング13が位置決め部まで進角すると、ストッパー131に設けられた貫通穴132とバルブ開閉ロックピン124の中心軸が一致し、切り替えバルブ12の開閉動作が可能になる。その際、カバーリング13は回転運動を制限されるため、バルブが閉じられない限り詰め替えアダプター1を外すことは出来ない。このようにすることで、詰め替えアダプター1が装着されているときにのみ、バルブ開閉操作を可能にする機構が実現できる。
【0041】
この機構はひとつのボタン操作でいずれか一方のロックが解除できるような機構にすうことも可能である。
【0042】
詰め替えアダプター1と繰り返し使用容器3との結合は、ねじ、特に回転角度が小さい多條ねじを併用してもよい。
【0043】
詰め替え作業を繰り返し使用容器3入れ目線近傍で自動停止させるためには、詰め替えアダプター1の繰り返し使用容器接続部14から内容物配管6を入れ目線近傍まで伸ばして、繰り返し使用容器延長配管を設け、その先端部を注出口となす。パイプ内径は大きいほど詰め替え速度が速くなるが、停止したときの液面から切り替えバルブ12までの残量は繰り返し使用容器3に移るので、予めこの量を計算に入れて配管出口位置を決める必要がある。
【0044】
充填されるに従って繰り返し使用容器3から排除される空気を、詰め替えアダプター1で繋がれた閉じた系で滑らかに補充用容器2に移動させるために空気用配管7を設けるのだが、この配管は通気性を考慮して倒立したときに先端が液面から突き出して空気層に露出していることが望ましい。また、切り替えバルブ12の開き方は、空気バルブ126が内容物バルブ127よりもやや早めに開くようにすると、空気用配管7に侵入した内容物がまず繰り返し使用容器3に移り、更に切り替えバルブ12を開くことで、内容物と空気がそれぞれの配管を一方通行で流れることになるので、脈動による転倒がなくなり滑らかに移し替えることが可能になる。
【0045】
また、空気用配管7の先端にはリードバルブのような簡単な逆止弁をつけておくことにより、先端が液中にあるときには液圧が大気圧を上回るので閉止したままなので、取り付け時に内容物が侵入することを防止できる。
【実施例】
【0046】
<実施例1>
500mlが入れ目量の繰り返し使用容器に残量がないときに、400mlの補充用容器でシャンプーを補充しようとした。これを請求項1の仕様のアダプターを使って100人が1回ずつ移し替え作業を行い、液漏れ液だれの回数を記録した。比較用として、アダプターなしでの移し替えも実施した。アダプターなしで液があふれた場合も液漏れとして計測した。その結果を表1に示した。
【0047】
<実施例2>
500mlが入れ目量の繰り返し使用容器に残量200mlある場合に、400mlの補充用容器でシャンプーを補充しようとした。容器はともに透明およびともに着色不透明の組合せでこれを請求項2の仕様のアダプターを使って100人が1回ずつ移し替え作業を行い、液漏れ液だれの回数および、容量計測を行い記録した。比較用として、アダプターなしでの移し替えも実施した。容量計測結果は平均値と標準偏差をもとめ結果を表2に示した。
【0048】
<実施例3>
500mlが入れ目量の繰り返し使用容器に残量がないときに、400mlの補充用容
器でシャンプーを補充しようとした。これを請求項1及び3の仕様のアダプターを使って100人が各1かいずつ移し替え作業を行い、容器の転倒回数を記録した。その結果を表3に示した。
【0049】
<実施例4>
500mlが入れ目量の繰り返し使用容器に残量が200mlある場合に、400mlの補充用容器でシャンプーを補充しようとした。これを請求項4の仕様のアダプターを使って100人が1回ずつ移し替え作業を行い、液漏れ液だれおよび切り替えバルブを開いてから入れ目量までの充填時間と容量計測を行った。比較用として、アダプターなしでの移し替えも実施した。充填時間と容量計測結果は平均値と標準偏差に書き換えその結果を表4に示した。
【0050】
表は以下の通り。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、補充用容器から繰り返し使用容器に内容物を詰め替える作業に使用される。
【符号の説明】
【0056】
1…詰め替えアダプター
2…補充用容器
3…繰り返し使用容器
4…本体キャップ
5…パッキン
6…内容物配管
7…空気配管
8…繰り返し使用容器延長配管
9…真空ポンプ
11…補充用容器接続部
12…切り替えバルブ
13…カバーリング
14…繰り返し使用容器接続部
41…計量用ノズル
42…スライド溝
43…接続部位置決め溝
121…固定流路
122…回転流路
123…ハンドル
124…バルブ開閉ロックピン
125…ロックピンガイド
126…内容物バルブ
127…空気バルブ
131…ストッパー
132…貫通穴
142…アダプター回転ロックピン
143…カバー位置決めピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補充用容器から繰り返し使用容器に内容物を詰め替える詰め替えアダプターにおいて、内容物配管と空気配管とよりなる本体と、本体と補充用容器を機密接続する補充用容器機密接続機構と、本体と繰り返し使用容器を機密接続する繰り返し使用容器機密接続機構と、本体の内容物配管と空気配管を開閉可能なバルブと、繰り返し使用容器機密機構が機密状態である場合のみバルブが開放可能であり、バルブが開放状態のときのみ繰り返し使用容器機密機構が機密解除可能であるロック機構を有する詰め替えアダプター。
【請求項2】
補充用容器から繰り返し使用容器側に内容物配管と空気配管からなる繰り返し使用容器延長配管が設けられている請求項1記載の詰め替えアダプター。
【請求項3】
本体より補充用容器側に空気配管が延長されている請求項1または2記載の詰め替えアダプター。
【請求項1】
補充用容器から繰り返し使用容器に内容物を詰め替える詰め替えアダプターにおいて、内容物配管と空気配管とよりなる本体と、本体と補充用容器を機密接続する補充用容器機密接続機構と、本体と繰り返し使用容器を機密接続する繰り返し使用容器機密接続機構と、本体の内容物配管と空気配管を開閉可能なバルブと、繰り返し使用容器機密機構が機密状態である場合のみバルブが開放可能であり、バルブが開放状態のときのみ繰り返し使用容器機密機構が機密解除可能であるロック機構を有する詰め替えアダプター。
【請求項2】
補充用容器から繰り返し使用容器側に内容物配管と空気配管からなる繰り返し使用容器延長配管が設けられている請求項1記載の詰め替えアダプター。
【請求項3】
本体より補充用容器側に空気配管が延長されている請求項1または2記載の詰め替えアダプター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−46401(P2011−46401A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195549(P2009−195549)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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