説明

詰替容器

【課題】詰替容器内の内容物を容器内に容易かつ短時間で移し替えられる詰替容器を提供すること。
【解決手段】内容物が充填される有底筒状の容器本体11と、容器本体11の上側部分24内に配設されて容器本体11を閉塞し、中心軸線Oに沿って容器本体11に対してスライド移動可能な中栓部材12と、中栓部材12を中心軸線Oに沿ってスライド移動可能に支持する支持部材13と、を備え、中栓部材12には、内部と容器本体11内とを連通可能で支持部材13により開放可能に閉塞される開口部35と、内容物が移し替えられる被詰替容器2の口部開口端2Bに当接するフランジ部34と、が形成され、開口部35が、中栓部材12を中心軸線Oに沿って容器本体11内に押し込むことで支持部材13における中心軸線O方向に沿う容器本体11の底部21側の端縁を越えて容器本体11内に開口し、中栓部材12の内部と容器本体11内とを連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、詰替容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、容器内の内容物を使い切った後に、容器を廃棄しないで詰替容器から内容物を容器内に移し替え、容器を引き続き使用する需要者が増えている。従来から、詰め替え時に内容物が容器の外側にこぼれ落ちたり、内容物が空気に触れることで例えば内容物の香りが散逸したり、あるいは内容物が吸湿したりするなどの問題が指摘されている。
このような問題を解決するための手段として、例えば詰替容器を気密性を有する袋体とすることで、内容物の詰め替えに際して容器内に内容物を詰替容器ごと収納することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−188266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の詰替容器においても、以下の課題が残されている。すなわち、容器内に内容物を詰替容器ごと収容すると、内容物を適量取り出すことが難しく、また容器が例えば透明な材質で形成されていると形状が保持されない袋体が容器の外側から透けて見えるために見栄えが悪くなり、さらに内容物の残量を確認することが困難であるという問題がある。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、詰替容器内の内容物を容器内に容易かつ短時間で移し替えられる詰替容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の詰替容器は、内容物が充填される有底筒状の容器本体と、該容器本体の口部内に配設されて前記容器本体を閉塞し、容器軸に沿って前記容器本体に対してスライド移動可能な中栓部材と、前記中栓部材を前記容器軸に沿ってスライド移動可能に支持する支持部と、を備え、前記中栓部材には、内部と前記容器本体内とを連通可能で前記支持部により開放可能に閉塞される開口部と、前記内容物が移し替えられる被詰替容器の開口端に当接する当接部と、が形成され、前記開口部が、前記中栓部材を前記容器軸に沿って前記容器本体内に押し込むことで前記支持部における前記容器軸方向に沿う前記容器本体の底部側の端縁を越えて前記容器本体内に開口し、前記中栓部材の内部と前記容器本体内とを連通することを特徴とする。
【0006】
この発明では、詰替容器を倒立姿勢にした状態で、中栓部材を容器軸に沿って容器本体に対して相対的に押し込んで容器本体内に向けてスライド移動させると、開口部が容器本体内に開口して容器本体内と中栓部材内とを連通し、内容物が開口部を介して被詰替容器内に移動する。すなわち、当接部を被詰替容器の開口端に当接させた状態で詰替容器を被詰替容器に対して押し込むと、中栓部材は、開口部と共に支持部に対して相対的に容器軸に沿って容器本体内に向けてスライド移動する。そして、開口部は、支持部における容器本体の底部側の端縁よりも押し込み方向に移動する。これにより、開口部は、支持部による閉塞状態から開放されて容器本体内に開口する。このように、詰替容器を被詰替容器に対して押し込むだけで被詰替容器の詰め替えが行えるため、詰替容器内の内容物を容易かつ短時間で移し替えることができる。
【0007】
また、本発明の詰替容器は、前記当接部が、前記中栓部材における前記容器本体の口部側の端縁よりも前記底部側に位置していることが好ましい。
この発明では、当接部を被詰替容器の口部と当接させると、中栓部材の一部が被詰替容器の口部内に進入して配置されるため、被詰替容器の口部によって中栓部材の迅速な位置決めがなされると共に、内容物が移し替えられる際に外気との接触時間を短くすることができる。このため、内容物を移し替えるときに被詰替容器に対して詰替容器が位置ずれすることを防止すると共に、例えば内容物の香りが散逸したり、あるいは内容物が吸湿したりすることをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0008】
この発明にかかる詰替容器によれば、詰替容器を被詰替容器に対して押し込んで中栓部材を介して詰替容器と被詰替容器とを連通させることで、容易かつ短時間で内容物を移し替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明における詰替容器の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0010】
本発明における詰替容器1は、図1に示すように、例えばインスタントコーヒー粉末などの粉体である内容物が充填されて流通するものであって、図2に示すように、ユーザ(購入者)が購入して当該詰替容器1から例えばガラス瓶で形成された被詰替容器2に内容物を移し替えることができるものである。
詰替容器1は、図1に示されるように、容器本体11、中栓部材12及び支持部材(支持部)13を備えている。
なお、容器本体11、中栓部材12及び支持部材13は、それぞれの中心軸が共通軸上に位置している。以下、この共通軸を中心軸線(容器軸)Oと称する。また、本実施形態では、図1において中心軸線Oに沿って容器本体11の開口端側を「上側」とし、その反対側を「下側」とする。さらに、本実施形態では、中心軸線Oと直交する方向を「径方向」とする。
【0011】
容器本体11は、中心軸線Oに沿って延びる有底円筒状をなし、容器開口端11Aにより上方に向けて開口する。また、容器本体11は、図1に示すように、平面視円形の底部21と、底部21の外周縁から上方に向けて延在する胴部22とを備えている。
胴部22の中心軸線Oに沿う中央部分には、段差部23が設けられている。そして、胴部22において段差部23よりも上方の上側部分(口部)24は、段差部23よりも下方の下側部分25と比較して拡径している。また、胴部22の上側部分24の上端縁は、全周にわたって径方向外方に向けて突出しており、この突出部分の上面には、容器本体11を封止するシール部材26が貼付されている。
【0012】
中栓部材12は、中心軸線Oに沿って延びる有底円筒状をなし、栓開口端12Aにより上方に向けて開口する。そして、中栓部材12は、容器本体11の上側部分24の径方向内方に配置されており、支持部材13に対して中心軸線Oに沿ってスライド移動可能に嵌め込まれている。これにより、中栓部材12は、胴部22を閉塞する。また、中栓部材12は、底面部31、側壁部32、折返部33及びフランジ部(当接部)34を備えている。
【0013】
底面部31は、下方に向けて突出して下方に向かうにしたがって漸次縮径する中空円錐体状をなしている。
側壁部32は、中心軸線Oに沿って延びる円筒状をなしており、底面部31の外周縁から上方に向けて延在する。また、側壁部32には、中心軸線Oと平行な面に沿って延在する複数の開口部35が周方向で間隔をあけて設けられている。
【0014】
複数の開口部35は、中栓部材12の外部と内部とを連通可能とする。また、開口部35は、側壁部32の中心軸線Oに沿うほぼ全長にわたって形成されており、中心軸線Oに沿う長さが支持部材13の後述する内壁部42における中心軸線Oに沿う長さよりも長くなっている。
さらに、側壁部32の中心軸線Oに沿う中央部分には、径方向外方に向けて突出する係止片36が設けられている。なお、側壁部32の中心軸線Oに沿う長さは、側壁部32の上端縁が容器本体11の容器開口端11Aよりも上方に突出しない程度となっている。
【0015】
折返部33は、ほぼ円筒状をなしており、側壁部32の上端縁から径方向外方に向けて突出すると共にこの突出部分の外周縁から下方に向けて折り返されている。また、折返部33の外径は、被詰替容器2の口部2Aの内径よりも小さくなっているが、折返部33の外径を被詰替容器2の口部2Aの内径と同等にしてもよい。
フランジ部34は、円環状をなしており、折返部33の下端縁から径方向外方に向けて突出している。また、フランジ部34の外径は、被詰替容器2の口部2Aの外径よりも大きくなっている。
【0016】
支持部材13は、中心軸線Oに沿って延びるほぼ円筒状をなし、外壁部41、内壁部42及び接続部43を備えている。
外壁部41は、円筒状をなしており、外径が胴部22の上側部分24の内径と同等となっている。また、外壁部41の中心軸線Oに沿う長さは、上側部分24の中心軸線Oに沿う長さと同等となっている。そして、外壁部41は、胴部22の上側部分24に嵌め込まれており、その下端縁が胴部22の段差部23と当接している。
【0017】
内壁部42は、円筒状をなしており、外径が外壁部41よりも小さく内径が中栓部材12の側壁部32の外径と同等となっている。また、内壁部42の中心軸線Oに沿う長さは、中栓部材12の側壁部32の下端縁から係止片36までの長さと同等となっている。これにより、中栓部材12は、内壁部42の上端縁が係止片36と当接して係止されるようにして内壁部42に嵌め込まれる。また、内壁部42は、内壁部42の上端縁が係止片36と係止している状態において、側壁部32に形成されている開口部35による容器本体11内と中栓部材12内との連通を閉塞する。このとき、開口部35は、容器本体11の下側部分25の内部と連通していない。
接続部43は、上方に向かうにしたがって漸次縮径する中空円錐台状をなしており、外壁部41の端縁と内壁部42の下端縁とを接続している。また、接続部43は、内壁部42の上端縁が係止片36と係止している状態において、底面部31と共に容器本体11を閉塞する。
【0018】
次に、以上のような構成の詰替容器1を用いた被詰替容器2への内容物の詰め替え方法について説明する。
まず、シール部材26を剥がす。そして、図2に示すように、詰替容器1を倒立姿勢にし、詰替容器1の中心軸線Oと被詰替容器2の容器軸とがほぼ一致するように、中栓部材12を被詰替容器2の口部2A内に配置する。このとき、中栓部材12のフランジ部34は、口部2Aの口部開口端(開口端)2Bと当接する。また、折返部33の外径が口部2Aの内径よりも小さく、中栓部材12が口部2A内に進入して配置されるため、中栓部材12を口部2Aに対して安定して位置決めすることができる。
【0019】
この状態で、詰替容器1を被詰替容器2に向けて中心軸線Oに沿って押し込むと、フランジ部34が被詰替容器2の口部2Aに当接していることから、中栓部材12は、詰替容器1に対して相対的に中心軸線Oに沿って容器本体11の内方に押し込まれようとする。そして、この押し込む力が中栓部材12に伝達することで、係止片36と内壁部42の栓開口端12A側の端縁との係合状態が解除される。これにより、内壁部42が係止片36を乗り越え、中栓部材12の側壁部32は、支持部材13の内壁部42に対して中心軸線Oに沿って容器本体11の内方に向けてスライド移動する。そして、中栓部材12は、中心軸線Oに沿って容器本体11の内方に向けて押し込まれる。
ここで、外壁部41の底部21側の端縁が胴部22の段差部23と当接しているため、上記押し込む力が中栓部材12を介して支持部材13に伝達しても、支持部材13は、中栓部材12と共に胴部22に対して中心軸線Oに沿って容器本体11の内方に向けてスライド移動しない。
【0020】
そして、中栓部材12を容器本体11の内方に向けてさらに押し込んでいくと、内壁部42の栓開口端12A側の端縁が折返部33における径方向外方に向けて突出する部分と当接すると共に、内壁部42の一部が折返部33と側壁部32との間の空隙に収容される。このとき、内壁部42と折返部33との間に形成される間隙と前記折返部33における径方向外方に向けて突出する部分に形成された開口部35の一部とによって、外気との連通路が形成されてもよい。また、内壁部42の全体が係止片36を乗り越えることで、内壁部42における接続部43と接続する端縁が係止片36と係合する。これにより、中栓部材12が支持部材13に対して中心軸線Oに沿って容器本体11の外方に向けてスライド移動しない。
【0021】
このように、中栓部材12を中心軸線Oに沿って容器本体11の内方に押し込むと、開口部35は、内壁部42の底部21側の端縁を越えて容器本体11の下側部分25の内部に向けて開口する。これにより、開口部35は、容器本体11の下側部分25の内部と被詰替容器2とを連通する。容器本体11の内部に充填されている内容物は、開口部35及び中栓部材12の内部を通って被詰替容器2内に注ぎ込まれる。このとき、中栓部材12のフランジ部34が中栓部材12の栓開口端12Aよりも中心軸線Oに沿って底面部31側に後退した位置にあって中栓部材12が口部2A内に進入しているため、安定した姿勢で、速やかな詰め替えが達成される。また、例えば、内壁部42の外面と折返部33の内面とを気密摺動可能に構成した場合などには、詰め替え時における外気と内容物との接触を効果的に抑制することができる。
以上のようにして、詰替容器1を用いて被詰替容器2に内容物を詰め替える。
【0022】
本実施形態における詰替容器1では、詰替容器1を被詰替容器2に対して押し込んで中栓部材12を介して詰替容器1と被詰替容器2とを連通させることで、容易かつ短時間で内容物を被詰替容器2に移し替えることができる。
また、詰替容器1では、中栓部材12のフランジ部34を栓開口端12Aよりも下方に形成することで、詰替容器1を被詰替容器2の口部2Aに配置したときに中栓部材12が口部2A内に進入する。そのため、詰替容器1では、短時間で内容物を被詰替容器2に移し替えることができ、例えば内容物の香りが散逸したり、あるいは内容物が吸湿したりすることをより確実に防止できる。
さらに、詰替容器1では、支持部材13が中栓部材12と共に胴部22に対して中心軸線Oに沿ってスライド移動しないため、支持部材13を胴部22に例えば接着するなど固定する必要がなくなる。そのため、詰替容器1では、詰替容器1を用いた被詰替容器2への内容物の詰め替え後に支持部材13を容器本体11から容易に分離することができる。したがって、詰替容器1の分解が容易になって内容物を移し替えた後の詰替容器1の分別が容易になる。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、フランジ部は、中栓部材の上端縁よりも下方に後退して位置しているが、上端縁に形成されていてもよい。
開口部は、側壁部の中心軸線に沿うほぼ全長にわたって形成されているが、中栓部材を容器本体の内方に押し込む前において中栓部材が容器本体を閉塞すると共に中栓部材を押し込んだ後に中栓部材が容器本体の内部と被詰替容器とを連通できれば、他の形状であってもよい。
中栓部材は、開口端を有するほぼ有底円筒状をなしているが、中栓部材を押し込んだ後に容器本体の内部と被詰替容器との連通がなされれば、上端が開口していない形状など、他の形状であってもよい。
容器本体と支持部材とは、別部材として形成されているが、支持部材が中栓部材と共に中心軸線に沿ってスライド移動されなければよく、一体に形成されてもよい。
シール部材は、中栓部材を押し込む前において中栓部材が容器本体を閉塞するため、設けられていなくてもよい。
中栓部材は、上端が容器本体の開口端から上方に突出しないように配置されているが、中栓部材を押し込む前において中栓部材が容器本体を閉塞しているため、上端が容器本体の開口端から上方に突出するように配置されてもよい。
詰替容器を用いた詰め替え方法は、詰替容器を被詰替容器に対して押し込む方法に限らず、あらかじめ中栓部材を容器本体に対して相対的にスライド移動させて押し込むことで中栓部材と容器本体とを連通させた後に詰替容器を倒立姿勢で被詰替容器の口部に配置する方法であってもよい。
詰替容器内に充填される内容物は、粉体に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明によれば、詰替容器内の内容物を容器内に容易かつ短時間で移し替えられる詰替容器に関して、産業上の利用可能性が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態における詰替容器を示す軸方向断面図である。
【図2】図1に示す詰替容器を用いた被詰替容器の詰め替え方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 詰替容器、2 被詰替容器、2B 口部開口端(開口端)、11 容器本体、12 中栓部材、13 支持部材(支持部)、21 底部、24 上側部分(詰替容器の口部)、34 フランジ部(当接部)、35 開口部、O 中心軸線(容器軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填される有底筒状の容器本体と、
該容器本体の口部内に配設されて前記容器本体を閉塞し、容器軸に沿って前記容器本体に対してスライド移動可能な中栓部材と、
前記中栓部材を前記容器軸に沿ってスライド移動可能に支持する支持部と、を備え、
前記中栓部材には、内部と前記容器本体内とを連通可能で前記支持部により開放可能に閉塞される開口部と、前記内容物が移し替えられる被詰替容器の開口端に当接する当接部と、が形成され、
前記開口部が、前記中栓部材を前記容器軸に沿って前記容器本体内に押し込むことで前記支持部における前記容器軸方向に沿う前記容器本体の底部側の端縁を越えて前記容器本体内に開口し、前記中栓部材の内部と前記容器本体内とを連通することを特徴とする詰替容器。
【請求項2】
前記当接部が、前記中栓部材における前記容器本体の口部側の端縁よりも前記底部側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の詰替容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−76828(P2010−76828A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249621(P2008−249621)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】