説明

認知障害の処置のためのピラゾロピリジンの使用

本発明は、神経変性病状を有する個体の認知を改善、増強または促進するために用いられる方法に関する。より具体的には、本発明は、神経変性疾患の個体の認知能力を改善するための、ピラゾロピリジン族の化合物の使用に関する。本発明は、種々の神経変性疾患、特にアルツハイマー病および血管型痴呆の個体の状態を改善するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、遺伝学および医学に関するものである。それは、特に、神経変性疾患の処置のための、特に神経変性疾患の個体の認知を改善、増強または促進するための、新規な組成物および方法に関するものである。より具体的には、本発明は、神経変性疾患の個体の認知能力を改善するための、ピラゾロピリジン族由来の化合物の使用に関するものである。本発明は、異なる神経変性疾患、特にアルツハイマー病または血管型痴呆の個体の認知を改善するのに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
無数の神経変性疾患が、アポトーシスまたはプログラムされた細胞死という現象に連結した構成要素もしくは時期を有するとして記載されている。中枢神経系の神経変性疾患(たとえば筋萎縮性側索硬化症−ALS、パーキンソン病、アルツハイマー病または血管型痴呆)はもとより、末梢の、特に目の神経変性疾患も引用することができる。これらの疾患は、主として、対症療法、特に、関連する炎症性現象の処置を有するが、特に関与する代謝機序が複雑なこと、および原因となる因子が多様なことにより、これらの障害の真の原因に対しては、処置法はほとんどない。
【0003】
本出願人が提出した国際公開特許公報WO03/016563は、神経変性疾患の処置のための新規な神経毒性分子標的および新規な治療手段を記載している。これらの手段は、4型ホスホジエステラーゼの活性または発現の調整に基づく。
【0004】
出願人が提出した国際公開特許公報PCT/FR04/00366は、目の神経変性疾患を処置するための、4型ホスホジエステラーゼの活性または発現の調整に基づく新規な手段を提唱している。
【0005】
WO01/78709、WO01/81348、WO01/81345およびWO03/045949は、神経科疾患に関連する一定の事象、たとえばペプチド凝集体の形成(WO01/78709)、TAUタンパク質のリン酸化(WO01/81348)またはGSK−3という酵素の遮断(WO01/81345およびWO03/045949)の処置の際のピラゾロピリジンの使用に関するものである。
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
ここで、本願は、アルツハイマー病および血管型痴呆で観察されるような、認知機能が変化した神経変性疾患に対する、新規な治療方策に関するものである。これらの方策は、本発明者らが同定した一つまたはそれ以上の代謝チャンネルの調整に基づくものであって、神経細胞の興奮毒性およびアポトーシスの出現、発展および進行に関係し合っており、神経変性疾患および認知機能に特に関連が深い。
【0007】
より具体的には、本願は、認知障害、特にアルツハイマー病および血管型痴呆によって誘発されたそれを処置するための、エタゾラートをはじめとする、ピラゾロピリジン族の化合物の有利かつ顕著な特性の表出に由来する。したがって、本願は、神経変性疾患の患者における認知問題の処置または軽減を目的とする、新規な治療方策を提唱する。
【0008】
したがって、一般的には、本発明は、神経変性疾患、特に神経変性疾患に関連する認知障害を処置するための、ピラゾロピリジン族の化合物の使用に関する。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病または血管型痴呆の個体における認知障害の処置または改善のためにピラゾロピリジン族化合物を用いることである。
【0010】
本発明の、より一般的な態様は、神経変性疾患、より詳しくは、アルツハイマー病および血管型痴呆、またはそのような疾患の患者における認知の問題もしくは障害の処置を目的とする医薬組成物を製造するためのGABA(A)の調節物質およびフリーラジカルの使用にも関する。
【0011】
本発明の特定の目的は、神経変性疾患の患者における認知障害の処置を目的とする医薬組成物を製造するためにピラゾロピリジン族の化合物を用いることである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、神経変性疾患の患者における認知または認知知覚を強化する方法であって、上記に定義された化合物を患者に投与することを含む方法である。有利にも、本発明の方法は、更に、神経変性疾患におけるニューロンの興奮毒性を阻害または軽減することを可能にする。
【0013】
作用機序と関連づけるものではないが、認知障害に対する本発明化合物の予期せぬ、かつ好都合な有益な作用は、GABA(A)レセプターおよびミトコンドリアに対する二重衝撃によって説明することができるように思われる。実際、本発明は、病気を有する患者の脳内での、PDE4、AKAP1およびGABA(A)RAPL1のmRNAの発現の変化を特徴とする、最初の三つの分子的事象の同定を記載する。これらの事象は、興奮毒性および/またはニューロン死の現象と適時に相関し、認知問題に関係するGABAシグナリングに対する変更の存在を立証する。したがって特に、本発明は、一方ではアルツハイマー病の患者の前頭葉前部皮質から抽出されたmRNAと、他方では同じ年齢の対照個体の脳の同じ領域から抽出されたmRNAとの間の、GABA(A)レセプターのεサブユニットをコードしているmRNAのスプライシングに対する変更の存在を明らかにする。この発見は、このタンパク質が、GABA(A)レセプターの提示および脱感作に関与していること、ならびに加齢、および年齢に連関する過程が、このGABA(A)レセプターを脱感作するのに要する時間の延長に関連することから特に興味深い。したがって、これらの過程、および特に認知障害は、GABAチャンネルおよびミトコンドリアに作用する、本発明による化合物によって補償することができる可能性がある。
【0014】
上記により、本発明は、アルツハイマー病、より一般的には認知障害の処置のための治療標的としてGABA(A)レセプターを選択するのに不可欠である、新規な要素を紹介し、こうしてアルツハイマー病および血管型痴呆をはじめとする神経変性疾患の処置、より具体的には認知障害を処置するのにピラゾロピリジン族化合物を用いたときに観察される、生物学的および治療的効果を理解することを可能にする。実施例に示された結果は、特に、有害な状況にある動物の記憶能力を改善する際のこれらの化合物の有効性を例示する。
【0015】
発明の詳細な説明
興奮毒性およびアポトーシスは、ニューロン死の二つの主因である。多方面のアポトーシスチャンネルは、ミトコンドリアから発し、アポトーシスの出現の決定的な点の一つは、たとえば、ミトコンドリア移動孔(MTPP)の開口である。ミトコンドリアの機能不全によるフリーラジカルの過剰産生(ROS)は、アポトーシスの調節を不均衡にさせ、こうして、興奮毒性に対するニューロンの脆弱性の増大を誘導する。
【0016】
これら二つの現象、すなわちフリーラジカルの過剰産生および興奮毒性は、年齢、およびアルツハイマー病、血管型痴呆、パーキンソン病およびALSのような神経変性疾患によるニューロン死を伴う病理学的機序に役割を果たしている。実際、フリーラジカルは、少なくとも部分的には、高齢の脳の欠損の原因となることが立証されている。酸化ストレスは、アルツハイマー病、血管型痴呆、パーキンソン病およびALSの進行に関与している。酸化ストレスは、酸化促進剤と抗酸化剤との間のホメオスタシス障害の結果であり、これが、有害なフリーラジカルの発生へと導く。
【0017】
本発明者らは、60日齢のSLAモデル動物の脳におけるRNAスプライシングの変化のレパートリーを確立し、これを、DATAS手法(出願WO99/46403に記載)による定性的示差スクリーニングによって達成した。このレパートリーは、疾患の発症に関連する代替スプライシングの事象の最大数を考慮するように、脳サンプルおよび脊椎から予めニューロンを単離することなく抽出したRNAから構成した。このようにして作成されたレパートリーは、興奮毒性の現象の枢要な因子、たとえばカリウムチャンネルおよびNMDAレセプターを含む、200を越える別個の配列を有する。このレパートリーを構成する配列の特異性は、90日齢の動物で実施された遺伝子発現の同じ定性的示差分析が、特に異なる興奮毒性マーカーが不在である異なるレパートリーで終わった事実によって証明される。スプライシング改変の分析から、分子的事象は、疾患の時期に応じて異なることが確認される。
【0018】
制御された、およびトランスジェニックの60日齢の動物のRNAにDATASを実施することによって、特に興味深く、予想外の方法で、ホスホジエステラーゼ4BのmRNA、AKAP1タンパク質(「キナーゼ固着性タンパク質」)およびGABA(A)RAPL1タンパク質(「GABA(A)レセプター関連類タンパク質1」)に由来するcDNAのフラグメントを単離することが可能になった。
【0019】
AMPcを加水分解できるPDE4Bタンパク質は、AMPcの細胞内濃度の調節に関与している。AKAP1タンパク質は、(AMPcによって活性化される)キナーゼAタンパク質の調節サブユニットをミトコンドリアの膜に固定し、ミトコンドリア移動孔の活性を調節する。得られた結果は、対応するRNAの構造的改変、特に非コード3’部内の領域の欠失と連結した、病理的な神経組織におけるPDE4Bのはるかに傑出した発現を示す。この結果は、DATASによって同定された配列におけるmRNAの不安定化配列の存在と完全に両立する。PDE4BのmRNAのこれらの不安定化配列の、代替ポリアデニル化配列をスプライシングするか、または用いることによる欠失は、好ましくはRNAのコード部分の安定化へと、したがってまた発現の増大へと導くことができる。この事象は、対照個体ではなく病体個体の脳で生じる。
【0020】
その上、AKAP1に由来するフラグメントの同定は、このタンパク質が、興奮毒性およびニューロン死過程の発症に関与することを立証している。AKAP1は、キナーゼAタンパク質の調節サブユニット、および末梢ベンゾジアゼピンレセプター(PBR)と作用し合うが、後者は、ミトコンドリア移動孔の開口、すなわちアポトーシスの実行を特徴とする開口の調節に関与する。その結果、本発明は、AKAP1がニューロン死のような細胞死の現象へのPBRの干渉を調節することを示唆する。
【0021】
GABA(A)RAPL1に由来するフラグメントの同定は、GABA(A)レセプターに依存するシグナリングの失調を強調する。この所見は、シナプス伝達の、特にGABA(A)レセプターとのその相互作用による、インヒビターとしての神経伝達物質の重要性と完全に両立する。この阻害は、興奮毒性によるニューロン死へと導きうる、持続的な興奮からニューロンを保護することを可能にする。したがって、本発明者らの研究は、GABA(A)レセプターの提示および脱感作に関与する調節のレベルの変更を示す。
【0022】
より具体的には、本発明者らが記載する発見は、認知問題に関連するGABAシグナリングに対する変更の存在を例示する。本発明は、一方ではアルツハイマー病の患者の前頭葉前部皮質から抽出されたmRNAと、他方では同じ年齢の対照個体の脳の同じ領域から抽出されたmRNAとの間の、GABA(A)レセプターのεサブユニットをコードしているmRNAのスプライシングの変更の存在も明らかにする。このサブユニットの異常は、ヒトの病理学では未だかつて報告されていない。
【0023】
上記により、本発明は、ここに、神経細胞における興奮毒性およびアポトーシスの出現、発症および進行に相関し、神経変性疾患および認知機能に特に関連する、これらの代謝チャンネルの調整に基づく、認知障害に対する新規な治療方策を提唱することを可能にする。
【0024】
上に示したとおり、本発明は、一般的には、(血管型痴呆をはじめとする)神経変性疾患、特に神経変性疾患に関連する認知障害を処置するための、ピラゾロピリジン族の化合物の使用に関する。
【0025】
本願は、認知障害、特にアルツハイマー病および血管型痴呆によって誘発されたそれを処置するための、エタゾラートをはじめとする、ピラゾロピリジン族の化合物の好都合かつ顕著な特性を報告する。
【0026】
本発明の明細書中、用語「処置」は、予防的、治療的および緩和的な処置はもとより、患者の看護(苦痛の軽減、寿命の向上、疾患の進行の減速、ニューロン生存の改善、興奮毒性またはアポトーシスからのニューロンの保護等々)等々も意味する。更に、処置は、他の薬剤または処置と組み合わせて、特に疾患の事象の遷延、たとえばカスパーゼインヒビターその他の活性化合物を対象として、実施することができる。
【0027】
本発明は、個体における認知障害の処置に、すなわちこれらの効果の軽減および/または患者における認知知覚の改善に特に適合する。
【0028】
本発明の意味では、ピラゾロピリジン族の化合物(またはリガンド)は、好都合には、下式(I)を有し、いずれの位置においても置換されていることができるか、またはできない任意の化合物を意味する。:
【0029】
【化1】

【0030】
本発明に用いられるピラゾロピリジン族の化合物は、特に、下記の化合物から選ばれる:
−下式(II):
【0031】
【化2】

【0032】
を有するエタゾラート(本発明の好適実施態様である)
− 4−ブチルアミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル(トラカゾレート)、
− 4−ブチルアミノ−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 1−(4−アミノ−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−1−イル)−β−D−1−デオキシ−リボフラノース
− 1−エチル−4−(N′−イソプロピリデン−ヒドラジノ)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル(SQ 20009)、
− 4−アミノ−6−メチル−1−n−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン
− 4−アミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル(デスブチルトラカコレート)、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボキサミド、
− 1−エチル−6−メチル−4−メチルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−プロピル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 1−エチル−4−エチルアミノ−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−アミノ−1−ブチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 5−(4−アミノ−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−1−イル)−2−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−3−オール、
− 1−アリル−4−アミノ−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸、
− 4−アミノ−1−エチル−3,6−ジメチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−ジメチルアミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 1−エチル−6−メチル−4−プロピルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−アミノ−1−ブタ−3−エニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−アリルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−イソプロピルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−N−n−プロピル−1H−ピラゾロ−[3,4−b]ピリジン−5−カルボキサミド、
− 4−アミノ−1−ブチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−プロパ−2−イニルアミド
− 4−アミノ−1−(3−メチル−ブチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−N−(2−プロペニル)カルボキサミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ブチルアミド、
− 4−アミノ−1−ブタ−3−イニル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−1−ブタ−3−エニル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−アリルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−(3−メチル−ブチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のイソブチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ブチルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−(3−メチル−ブタ−2−エニル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−シクロプロピルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ヒドロキサム酸エチル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のプロパ−2−イニルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−エニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−プロピルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−シクロプロピルメチル−アミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸の2−メチル−アリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−アリルアミド(ICI 190,622)、
− 4−アミノ−1−ペンタ−4−イニル−N−2−プロペニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボキサミド、
− 4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−プロパ−2−イニルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ブタ−2−イニルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−1−(2−シクロプロピル−エチル)−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−1−ヘキサ−5−イニル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−シクロプロピルメチル−アミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のブタ−3−エニルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のシクロプロピルメチルエステル、
− 4−ブチルアミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−アリルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸の2−シクロプロピル−エチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のシクロプロピルメチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のシクロプロピルメチルエステル、
− 4−アミノ−1−ベンジル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ベンジルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−フェニルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のベンジルエステル、
− 4−アジド−1−β−D−リボフラノシルピラゾロ[3,4−b]ピリジン、
− 1−ペンタ−3−イニル−N−2−プロペニル−4−プロピオンアミド−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボキサミド、
− 2−(4−アミノ−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−1−イル)−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−3,4−ジオール、
− 2−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−エタノール、
− 3−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−プロパン−1−オール、
− 3−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−酢酸のプロピルエステル、
− 2−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−プロピオン酸のエチルエステル、
− 2−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−ペンタン酸のエチルエステル、
− 2−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−安息香酸のエチルエステル、
− 3−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−ペンタン酸のプロピルエステル
− N−ベンジリデン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−フラン−2−イルメチレン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−(4−フルオロ−ベンジリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−(3−フラン−2−イル−アリリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−(4−メトキシ−ベンジリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− 4−[(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラゾノメチル]−ベンゾニトリル、
− N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチレン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(4−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(4−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(5−ニトロ−フラン−2−イルメチレン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(2−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(6−ニトロ−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチレン)−ヒドラジン、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−(ピリジン−4−イルメチル)−アミド、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−(テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル)−アミド、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−(5−ヒドロキシ−ペンチル)−アミド、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−[3−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−プロピル]−アミド、
− 4−tert−ブチルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−シクロプロピルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−プロピルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−フェニルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−ブチルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−(2−エトキシ−エチルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
− 4−ベンジルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、および
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−フェネチルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル。
【0033】
該化合物は、塩、エステル、ラセミ化合物、活性異性体等々の形態であることができる。該化合物がフリーラジカルから細胞を防護できる能力は、in vitroで検査することができる。特に好適な化合物は、エタゾラート、トラカゾラートまたはカルタゾラート、より好ましくはエタゾラートである。
【0034】
上記により、本発明は、神経変性疾患に関連する認知障害の処置のための治療標的として、フリーラジカルの調整とGABA(A)レセプターの調整とを結びつける治療行為を初めて提唱する。特定の実施態様によれば、本発明は、これらの疾患の未熟な段階で認知障害を処置するのに用いることができる。それは、特に、アルツハイマー病、血管型痴呆、ハンチントン舞踏病およびパーキンソン病の症例に適用可能である。
【0035】
本発明の特定の目的は、アルツハイマー病および血管型痴呆の患者における認知障害を処置するための医薬の製造のための、ピラゾロピリジン化合物の使用である。
【0036】
本発明のもう一つの目的は、脳虚血を処置するための医薬の製造のための、ピラゾロピリジン化合物、特にエタゾラートの使用である。
【0037】
本発明のもう一つの目的は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病および血管型痴呆、またはそのような疾患の患者における認知問題もしくは疾患を処置することを目的とする医薬組成物を製造するための、GABA(A)および/またはフリーラジカルのモジュレーターの使用に関するものである。該モジュレーター化合物は、フリーラジカル(ROS)の発現または活性を調整することができる、起源が天然または合成である任意の化学的化合物、特に、植物、細菌、ウイルス、動物、真核動物、合成または半合成の起源を有する、有機もしくは無機の分子であることができる。
【0038】
本発明の枠組みの中で用いられる化合物は、種々の方法で処方し、投与することができる。投与は、当業者に公知のいかなる方法により、好ましくは、経口、または注射により全身、または局所的に行うことができる。注射は、代表的には、眼内、腹腔内、脳内、静脈内、動脈内、皮下または筋内の経路を通じて投与する。経口または全身的経路による投与が好ましい。投与量は、当業者が変更することができる。代表的には、本質的に化学的である化合物について、約0.01〜100mg/kgを注射する。具体的な単位用量は、たとえば、投与量あたり0.5〜40mgである。言うまでもなく、注射を、薬学的に許容され得るその他の活性薬剤または何らかの担体(たとえば、安定剤の存在下での緩衝液、生理食塩水溶液、等張液等々)と併用して繰り返し投与することもできる。
【0039】
薬学的に許容され得る担体または賦形剤は、緩衝液、溶媒、結合剤、安定剤、乳化液等々から選ぶことができる。緩衝液または希釈液は、特に、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳糖、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、澱粉、グラニュー糖およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC:徐放用)である。結合剤は、たとえば、澱粉、ゼラチン、およびショ糖、グルコース、デキストロース、乳糖等々のような充填液である。天然または合成ガムも、たとえば特に、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等々を用いることができる。その他の賦形剤は、たとえば、セルロースおよびステアリン酸マグネシウムである。たとえば多糖類(アカシア、寒天、アルギン酸、グアーガムおよびトラガカント、キチンまたはその誘導体、ならびにセルロースエーテル)のような安定剤を、該処方物に組み込むことができる。溶媒または溶液は、たとえば、リンゲル液、水、蒸留水、リン酸緩衝液、リン酸化生理食塩水その他の慣用の流体である。
【0040】
本発明は、哺乳動物、特にヒトに用いることができる。実施例に示された結果は、興奮毒性、酸化ストレスまたは脳虚血の条件下に置かれたニューロンの生存率を向上させるため、また有害な状況にある動物の記憶能力を向上させるためのエタゾラートの有効性を例示している。
【0041】
本発明は、試験、キットまたは検出過程、スクリーニングを開発し、またはこれらの疾患を、個体における遺伝子、メッセンジャー、またはPDE4もしくはAKAP1もしくはGABA(A)RAPL1タンパク質の失調もしくは変化の存在の確定に基づいて、in vitroで診断することを可能にする。本発明は、そのような試験を実施するための手段、特にプローブ、プライマー、細胞、試薬等々も提供する。
【0042】
本発明は、神経変性疾患の処置のための候補分子をスクリーニングする(分子が、AKAP1、GABA(A)RAPL1、GAB(A)レセプターおよび/またはPDE4、特に上記のようなこれらの遺伝子またはタンパク質の変化した形態に結合できる能力を確定することを包含する)ための試験もしくは過程も提供する。
【0043】
本発明のその他の態様および利点は、例示的であり、限定的ではないとして考慮されなければならない、以下の実施例の読解から明白になると思われる。
【実施例1】
【0044】
分子興奮毒性標的としてのPDE4、AKAP1およびGABA(A)RAPL1の同定
種々の段階に対応する動物の脳サンプルから抽出したポリアデニル化RNA(ポリA+)を用い、疾患の発症に連結する代替スプライシングという事象の最大数を考慮に入れるために、ニューロンを予め単離せずに、示差定性的分析を実施した。
【0045】
ポリA+RNAは、当業者に公知の手法に従って調製した。特に、これは、チオシアン酸グアニジウムのようなカオトロピック薬剤を用いた処理、次いで溶媒(たとえばフェノール、クロロホルム)を用いた総RNAの抽出であることができる。これらの方法は、当業者に周知であり[Maniatisら、Chomczynsliら、Anal. Biochem. 162 (1987) 156を参照されたい]、商業的に入手できるキットを用いることによって、容易に実施することができる。これらの総RNAを用いて出発して、当業者に公知の、商業的キットが提唱する古典的な方法に従って、ポリA+RNAを調製した。
【0046】
これらのポリA+RNAを、逆転写酵素を援用した逆転写反応のための基質として役立てた。好都合には、古典的な逆転写酵素で得られるものよりサイズが大きい、第一の相補的DNA鎖を得るのを可能にする、RNアーゼH活性を有しない逆転写酵素を用いた。RNアーゼH活性のないこれらの逆転写酵素標品は、商業的に入手可能である。
【0047】
疾患の発症動態の各時点(30日、60日および90日)について、ポリA+RNAおよび一本鎖cDNAを、トランスジェニック動物(T)および同系の対照動物(C)から調製した。
【0048】
DATASの手法によれば、動態の各時点について、mRNA(C)とcDNA(T)とのハイブリダイゼーション、およびmRNA(T)とcDNA(C)との交換的ハイブリダイゼーションを理解する。
【0049】
次いで、これらのmRNA/cDNAヘテロ二本鎖分子を、DATASの手法からのプロトコルに従って精製した。
【0050】
相補的DNAと対合しなかったRNA配列は、RNアーゼHの作用によってこれらのヘテロ二本鎖分子から遊離されるため、この酵素は、対合したRNA配列を分解する。これらの非対合配列は、さもなければ互いに相同であったRNA間に存在する、質的な差を表す。これらの質的な差は、RNA配列のいかなる個所でも、5’、3’、または配列内、顕著にはコーディング配列内に定位することができる。その位置によれば、これらの配列は、スプライシングの改変であるばかりでなく、転座または欠失の結果でもあることができる。次いで、質的な差を表すRNA配列を、当業者に公知の手法、特にDATASの手法の特許に記載されたものに従ってクローニングした。
【0051】
これらの配列を、示差定性的バンクであるcDNAバンク内で再類別した。これらのバンクの一つは、健常な状態の特異的エキソンおよびイントロンを含み;その他のバンクは、病理的状態に特徴的なスプライシング事象を含んだ。
【0052】
クローンの示差発現を、調べた異なる状態から抽出したメッセンジャーRNAから逆転写によって得たプローブとのハイブリダイゼーションによって確認した。示差的にハイブリダイズするクローンを、以後の分析のために保存した。DATASによって同定された配列は、病理的状態と健常状態との間のスプライシングによって示差的に発現されるイントロンおよび/またはエキソンに相当した。これらのスプライシング事象は、疾患の発症の与えられた段階に特異的であるか、または健常状態に特徴的であることができた。
【0053】
これらの配列とデータバンクとの比較は、得られた情報を分類し、その診断または治療の利害による配列の合理的選択を提唱するのを可能にする。
【0054】
対照の、およびトランスジェニックな60日齢の動物のRNAにDATASを実施することによって、ホスホジエステラーゼ4BのmRNAに由来するcDNAのフラグメントを単離することができた。このフラグメントは、60日齢の段階で対照動物に特異的に存在し、そのため、SOD1G93Aについてのトランスジェニック動物では特異的に削除されたエキソンのフラグメントに相当する。このフラグメントは、マウス由来のPDE4Bの終止コドンから参照される第377〜486ヌクレオチド(GenBankで取得可能な配列第AF208023号)をカバーしている。この配列は、2,912個の塩基を含んで、削除されたフラグメントは、第2,760〜2,869塩基に相当する。この領域は、非コード領域であり、3’非コードエキソンを代替的に用いたためか、または二つの代替的なポリアデニル化部位を用いたために、対照動物とトランスジェニック動物との間で示差的に発現された。
【0055】
対照の、およびトランスジェニックな60日齢の動物のRNAにDATASを実施することによって、AKAP1のmRNAに由来するcDNAのフラグメントを単離することもできた。このフラグメントは、60日齢の段階で対照動物に特異的に存在し、そのため、SOD1G93Aについてのトランスジェニック動物では特異的に削除されたエキソンのフラグメントに相当する。このフラグメントは、GenBankで第NM 009648号の下に参照される配列の第1,794〜2,322ヌクレオチドと相同である。この領域は、コード領域であり、代替スプライシングのために、対照動物とトランスジェニック動物との間で示差的に発現された。
【0056】
対照の、およびトランスジェニックな60日齢の動物のRNAにDATASを実施することによって、GABA(A)RAPL1のmRNAに由来するcDNAフラグメントを単離することもできた。このフラグメントは、60日齢の段階で対照動物に特異的に存在し、そのため、SOD1G93Aについてのトランスジェニック動物では特異的に削除されたエキソンのフラグメントに相当する。このフラグメントは、GenBankで第BC024706号の下に参照される配列の第1,055〜1,461ヌクレオチドと相同である。この領域は、非コード3’領域に由来し、対照動物とトランスジェニック動物との間で示差的に発現された。
【0057】
これらの要素は、重要なシグナリングチャンネルを解明かつ定義し、GABA(A)Rに依存するシグナリングが、アルツハイマー病の患者の脳内で変更されていると思われることを示すのを可能にする。実際、一方ではアルツハイマー病の患者の前頭葉前部皮質から抽出されたmRNAと、他方では同じ年齢の対照個体の脳の同じ領域から抽出されたmRNAとの、DATASの手法に従った定性的示差スクリーニングによる分析は、GABA(A)RAPタンパク質(GABA(A)レセプター関連タンパク質)をコードしているmRNAのスプライシングの変更を立証した。この変更は、GenBankで第NM 007278.1号のレパートリーからの配列の第273塩基にあるイントロン配列の135個の塩基の保持を示している。この保持はGABA(A)RAPタンパク質の機能性を、またそのために開放相を改変する。このタンパク質は、GABA(A)レセプターの存在および脱感作に関与していることから、DATAS分析は、シナプス活性調節のこのレベルでの変更を示している。
【0058】
GABAシグナリングは、シナプス活性の負の調節のための最も強力な機序の一つを表す。このGABA(A)レセプターがGABAニューロメジエーターによって刺激されると、イオンチャンネルであるこのレセプターは、ニューロンの再分極に関与する、塩素イオンの進入を許す。GABA(A)レセプターは、二つのαサブユニット、二つのβサブユニット、および一つの付属的な、主としてδ、εまたはγのサブユニットの会合によって形成される五量体構造を有する。
【0059】
GABA(A)レセプターのアゴニストは、不安寛解性であるが、記憶喪失性である。GABA(A)レセプターのアンタゴニストは、不安発生性、痙攣助長性かつ記憶助長性である。
【0060】
加えて、アルツハイマー病の患者の脳内では、GABA(A)レセプターのサブユニットの一つであるβ3サブユニットを、過小発現させることが知られている。
【0061】
海馬に存在し、アルツハイマー病の発症で変更される、第一の脳構造の一つであるεサブユニットは、GABA(A)レセプターに独特の薬理学的特性を与える。実際、ピラゾロピリジン、たとえばトラカゾラートおよびエタゾラートのような薬剤の、εサブユニットを含むGABA(A)レセプターとのβサブユニットを介しての結合は、GABA神経伝達物質との相互作用の後のGABA(A)レセプターの脱感作を加速する。この効果は、加齢がGABA(A)レセプターの脱感作に必要な時間の延長に関連することから、特に興味深い。
【0062】
したがって、アルツハイマー病のような老化に連結した過程でのGABA(A)レセプターの脱感作に必要な期間の延長に関連する、本発明に記載されたようなεサブユニットの変更は、ピラゾロピリジン、たとえばトラカゾラートおよびエタゾラートのような薬剤による患者の処置によって補償することができる。後者の化合物は、PDE4インヒビターであることの利点も提供するのであって、本発明は、興奮毒性現象へのそれの関与を示す。
【0063】
このシグナリングチャンネルに作用する可能性は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病および血管型痴呆のような認知機能の変更に関連する神経変性疾患の特に効果的な処置へと導くことができる。
【実施例2】
【0064】
興奮毒性の阻害
本例では、ラットの小脳の顆粒ニューロン、皮質ニューロンおよび腹側脊髄の細胞を、下記の手法に従って培養に付した。
【0065】
小脳の顆粒細胞の初代培養:
7日齢のWistar系ラットを断頭し、その小脳を切開した。髄膜を除去した後、組織を小片に裁断し、37℃で15分間トリプシン処理した。細胞を、粉砕によって解離させ、10%ウシ胎児血清および2mMグルタミンで強化したイーグル基本培地中で1cm2あたり300,000細胞の密度で培養に付した。翌日、10μMのARA−C、すなわち細胞分裂阻害剤を加えて、膠細胞の増殖を防止した。培養に付して9日後に、細胞を、10μMのD−セリンの存在下でエタゾラート阻害化合物とともに培養に付した後、毒物、すなわち50μMカイニン酸または100μMN−メチル−D−アスパラギン酸を加えた。毒物の直前に8−ブロモcAMPを加えた。処置はすべて、少なくとも二重に、かつ少なくとも二つの異なる培養で実施した。6時間の温置の後、MTT試験によって、毒性を測定した。結果は、非処置群の平均に対して標準化して、ウィルコクソン検定によって統計学的に解析した。0.05以下のpで、有意値を確定した。
【0066】
皮質細胞の初代培養:
Wistar系ラットの16日齢の胚を取り出し、皮質を切開した。37℃で25分間のトリプシン処理の後、細胞を粉砕によって解離させた。10%ウマ血清および10%ウシ胎児血清ならびに2mMグルタミンで強化した最小必須培地中に、1cm2あたり300,000細胞の密度で細胞を播種した。培養4日後に、培地の半分を、5%ウマ血清および2mMグルタミンで強化した最小必須培地と交換した。同じ日に、10μMの5−フルオロ−2−デオキシウリジン、すなわち細胞分裂阻害剤を加えた。培養の7日および11日後に、培地の半分を調整培地と交換した。調整培地は、5%ウマ血清および2mMグルタミンを含有するMEMから作成し;この培地を、皮質星状細胞のカーペット上を一晩通過させてから用いた。第14日に、細胞をエタゾラートインヒビター化合物で処置してから、10μMのD−セリンの存在下で毒物、すなわち50μMカイニン酸または20μMN−メチル−D−アスパラギン酸を加えた。処置はすべて、少なくとも二重に、かつ少なくとも二つの異なる培養で実施した。6時間の温置の後、MTT試験によって、毒性を測定した。結果は、非処置群の平均に対して標準化して、ウィルコクソン検定によって統計学的に解析した。0.05以下のpで、有意値を確定した。
【0067】
腹側脊髄細胞の初代培養:
14日齢のWistar系ラット胚から、細胞を単離した。それらが到着次第、妊娠雌ラットを、二酸化炭素を用いて犠牲に供した。一系列の胚を取り出し、PBSを収容する箱に入れた。各胚の脊髄を切開し、腹側脊髄を背側脊髄から分離した。次いで、腹側脊髄を、37℃で20分間トリプシン処理した。ライボヴィッツ(Leibovitz)15なる培地、20%ウマ血清、N2(1x)強化剤、20%グルコース(3.2mg/ml)、7.5%重炭酸塩(1.8mg/ml)およびL−グルタミン(2mM)から作成した培地の添加によって、トリプシンの効果を停止した。粉砕によって、細胞を解離させた。蓄積した組織を除去し、次いで、解離した細胞を、トリパン青による染色によって定量した。細胞を、神経基本培地、ウマ血清(2%)、B27(1x)強化剤およびグルタミン(2mM)から作成した培地に250,000細胞/cm2の密度で播種した。in vitro培養の3日後に、細胞分裂阻害剤であるARA−C(5μM)を細胞に加えて、膠細胞の増殖を阻害した。細胞を、加湿インキュベーター(5%CO2)内で37℃で9日間培養に付した。培養9日後に、細胞を阻害化合物すなわちエタゾラートで処置してから、10μMD−セリンの存在下で25μMN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)を加えた。処置はすべて、少なくとも二重に、かつ少なくとも二つの異なる培養で実施した。毒物としてのNMDA/D−セリンとの温置の3時間後に、MTT試験で毒性が示された。
【0068】
結果は、非処置対照の平均に対して標準化し、ウィルコクソン検定によって統計学的に解析した。0.05以下のpで、有意値を確定した。
【0069】
MTT試験:
毒性は、MTT試験を用いて測定した。化合物との温置の後、MTTを、1ウェルあたり0.5mg/mlの最終濃度で加えた。次いで、暗所で、プラークを37℃で30分間温置した。培地を吸引し、結晶をDMSO(ジメチルスルホキシド)500μl中の懸濁液に戻した。550nmでの吸光度を読み、生存率の百分率を算出した。
【0070】
結果:
得られた結果を、図1〜5に示す。これらの結果は、ニューロン生存の際の本発明の化合物の防護効果を図示するものである。本発明のインヒビターによるニューロンの同時処置の間、興奮毒性誘発の様式(NMDA/セリンおよび/またはカイニン酸)における、用量依存性防護効果が観察された。
【0071】
図1および2は、小脳顆粒細胞に対するエタゾラートを援用して得られた結果を示す。これらの結果は、エタゾラートが、NMDA/セリン処置の場合には40%の、またカイニン酸で誘発される毒性の場合には50%の防護効果を、これらの細胞で達成することができるのを立証するものである。
【0072】
図3および4は、皮質ニューロンに対するエタゾラートを援用して得られた結果を示す。これらの結果は、エタゾラートが、NMDA/セリン処置の場合には47%の、またカイニン酸で誘発される毒性の場合には40%の防護効果を、これらの細胞で達成することができるのを立証するものである。
【0073】
図5は、腹側脊髄細胞に対するエタゾラートで得られた結果を示す。これらの結果は、エタゾラートが、NMDA/セリン処置の場合には36%の防護効果を、これらの細胞で達成することができるのを立証するものである。
【0074】
上記により、本発明は、興奮毒性の機序へのPDE4BおよびGABA(A)レセプターの関与ばかりでなく、興奮毒性に連結したストレスの間にインヒビターがニューロン生存率を保存できる能力も報告するものである。
【実施例3】
【0075】
酸化ストレスの阻害:
本例では、SH−SY5Y系由来の細胞を、当業者に公知の手法に従って培養に付した。ヒト神経芽細胞に由来するこれらの細胞は、発生の未成熟段階でのニューロン前駆細胞を特徴付ける特性を有する。
【0076】
用いた毒素は、酸化ストレスを誘発する6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)である。毒性は、MTT試験によって測定した。
【0077】
図6は、SH−SY5Y系細胞に対するエタゾラートで得られた結果を示す。これらの結果は、エタゾラートが、6−OHDA処置の場合には40%の防護効果を、これらの細胞で達成することができるのを示している。
【0078】
したがって、エタゾラートは、ROSによって誘発される細胞死のin vitroでの強力な防護剤である。
【0079】
したがって、エタゾラートの神経防護の潜在的能力は、実施例2および3で得られた結果によって補強される。
【実施例4】
【0080】
ラットにおける虚血の研究
エタゾラートのin vivoでの防護効果を、ラットにおける脳梗塞のモデルで評価した。この研究の際、脳梗塞は、内頸動脈および脳央の動脈の腔内閉塞によって実現した。8匹のラットからなる一群を、エタゾラート(10mg/kg、経口)で、閉塞前および閉塞後に数回処置した。8匹のラットからなる一群を、参照化合物、すなわちL−NAME(1mg/kg、腹腔内)で、閉塞前および閉塞後に数回処置した。8匹のラットからなる一群は、担体のみで処置した。臨床的観察、神経学的機能試験、および研究後の梗塞の規模の確定によって、効果を評価した。
【0081】
得られた結果は、エタゾラートが、対照に対比して平均して28%の梗塞の規模の縮小を誘発することを示している(図7に例を参照されたい)。一方、エタゾラートで処置した群で対照群に対比して活動低下の改善が観察された(エタゾラート群について31%に対して対照群について42%)。加えて、動物の神経学的評価は、対照群に対比しての処置群における改善を立証した。
【実施例5】
【0082】
水中迷路試験(モリスプール)
この試験は、不利な状況での空間的情報を記憶かつ管理できるラットの能力を評価するのに用いられる。動物にとっての任務は、不透明化な水で満たされた水槽に沈めることによって見ることができない「避難」プラットホームを、距離指標を援用して、位置を見つけることからなる。この装置は、動物の参照記憶を評価することを可能にする(プラットホームは、試験の日ごとに同じ場所にある)。この試験は、試験動物の海馬の機能に依存する記憶性能を評価することを可能にする。特に、この試験は、成年ラット(10ヶ月)の性能と高齢ラット(30ヶ月)のそれとを識別することを可能にする。海馬は、その機能がアルツハイマー病で未成熟に変化する脳の構造である。したがって、モリスプール試験は、当業者によって、アルツハイマー病その他の認知障害に関連する疾患の処置を目的とする化合物の薬理学的特性を評価することができるものとして、特に認識されている。
【0083】
経口投与によりエタゾラート(3mg/kgおよび10mg/kg)で処置した高齢ラット、および担体で処置したラットを、この研究に用いた。モリスプール試験におけるこれらの動物の性能を、成ラットの対照群のそれと比較した。
【0084】
3mg/kgのエタゾラートによる処置は、高齢ラットの性能を僅かに改善した。10mg/kgのエタゾラートによる処置は、重要なことに、高齢ラットの性能を、成熟ラットのそれに更に接近させた。
【0085】
この結果は、エタゾラートが、海馬に依存する記憶および認知特性を改善して、年齢に連動する性能の欠損を軽減するのを可能にすることを示す。この結果は、特にアルツハイマー病のような、年齢に連結した認知問題の処置にエタゾラートが適していることを示している。
【実施例6】
【0086】
ヒトにおける臨床的使用
本例は、神経変性疾患の処置のためのエタゾラートをヒトに用いるための条件を記載する。本例は、本発明の治療上の潜在的能力、およびヒトにおけるその使用の条件を例示する。
【0087】
この研究では、単一の、増加する用量のエタゾラート(0.5、1、2、5、10および20mg)を、0.5および5mgの用量でカプセル剤の形態で、若く、健康な男性の志願被験者8名の異なる逐次的な群に経口的に投与した。この研究は、1個所のセンターで二重盲検として実施し、被験者8名中2名にはプラセボを与えた。評価したパラメータは、製品投与後24時間の臨床的パラメータ(副作用、臨床的徴候の出現、動脈圧または心拍数の変化)、心電図パラメータ(ECG記録)、および生物学的な許容度(血液学および血液生化学、尿検査)であった。製品の血漿中濃度を、製品の投与前後の異なる時間(0.25−0.50−1.00−1.50−2.00−3.00−4.00−5.00−6.00−8.00−10.00−12.00および24.00時間)に各被験者で測定した。製品の尿中濃度も、製品の投与前後に採集した尿で測定した(4、4〜8、8〜12および12〜24時間)。
【0088】

増加する用量を投与するこの段階の終点で、被験者6名の追加群に、ある用量のエタゾラートを二度の機会、すなわち胃空腹時、および脂肪に富む食事の際に与えた。この第二部の目的は、二つの投与条件間での製品の血流量の変化を比較することであった。評価したパラメータは、製品投与後24時間の臨床的パラメータ(副作用、臨床的徴候の出現、動脈圧または心拍数の変化)、心電図パラメータ(ECG記録)、および生物学的な許容度(血液学および血液生化学、尿検査)であった。製品の血漿中濃度を、製品の投与前後の異なる時間(0.25−0.50−1.00−1.50−2.00−3.00−4.00−5.00−6.00−8.00−10.00−12.00および24.00時間)に各被験者で測定した。製品の尿用量も、製品の投与前後に採集した尿から実施した(4、4〜8、8〜12および12〜24時間)。
【0089】
ヒトにおける臨床研究に用いることができるような、耐胃液カプセル剤も、この製品向けに開発した。
【0090】
用量を増大させながら行う第一の研究段階の間に得られた結果は、エタゾラートが充分に許容され、いかなる二次的効果も伴わなかったことを示した。加えて、血漿濃度は、高用量での製品の優れた吸収をヒトで確認した。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】小脳の顆粒細胞において、NMDA/セリンによって誘発された毒性に対するエタゾラートの神経防護効果を示すグラフである。
【図2】小脳の顆粒細胞において、カイニン酸によって誘発された毒性に対するエタゾラートの神経防護効果を示すグラフである。
【図3】皮質ニューロンにおいて、NMDA/セリンによって誘発された毒性に対するエタゾラートの神経防護効果を示すグラフである。
【図4】皮質ニューロンにおいて、カイニン酸によって誘発された毒性に対するエタゾラートの神経防護効果を示すグラフである。
【図5】腹側脊髄細胞において、NMDA/セリンによって誘発された毒性に対するエタゾラートの神経防護効果を示すグラフである。
【図6】SH−SY5Y細胞において、6−ヒドロキシドーパミンによって誘発された毒性に対するエタゾラートの神経防護効果を示すグラフである。
【図7】ラットの脳梗塞モデルにおけるエタゾラートの神経防護効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患の患者における認知障害の処置のための医薬組成物を製造するためのピラゾロピリジン族の化合物の使用。
【請求項2】
化合物がエタゾラートまたはトラカゾラート、好ましくはエタゾラートであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
化合物が下記の化合物から選ばれることを特徴とする、請求項1記載の使用:
4−ブチルアミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル(トラカゾレート)、
4−ブチルアミノ−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
1−(4−アミノ−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−1−イル)−β−D−1−デオキシ−リボフラノース
1−エチル−4−(N′−イソプロピリデン−ヒドラジノ)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル(SQ 20009)、
4−アミノ−6−メチル−1−n−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン
4−アミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル(デスブチルトラカコレート)、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボキサミド、
1−エチル−6−メチル−4−メチルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−プロピル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
1−エチル−4−エチルアミノ−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−アミノ−1−ブチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
5−(4−アミノ−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−1−イル)−2−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−3−オール、
1−アリル−4−アミノ−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸、
4−アミノ−1−エチル−3,6−ジメチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−ジメチルアミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
1−エチル−6−メチル−4−プロピルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−アミノ−1−ブタ−3−エニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−アリルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−イソプロピルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−N−n−プロピル−1H−ピラゾロ−[3,4−b]ピリジン−5−カルボキサミド、
4−アミノ−1−ブチル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−プロパ−2−イニルアミド
4−アミノ−1−(3−メチル−ブチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−N−(2−プロペニル)カルボキサミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ブチルアミド、
4−アミノ−1−ブタ−3−イニル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−1−ブタ−3−エニル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−アリルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−(3−メチル−ブチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のイソブチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ブチルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−(3−メチル−ブタ−2−エニル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−シクロプロピルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ヒドロキサム酸エチル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のプロパ−2−イニルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−エニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−プロピルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−シクロプロピルメチル−アミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸の2−メチル−アリルエステル、
4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−アリルアミド(ICI 190,622)、
4−アミノ−1−ペンタ−4−イニル−N−2−プロペニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボキサミド、
4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−プロパ−2−イニルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ブタ−2−イニルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−1−(2−シクロプロピル−エチル)−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−1−ヘキサ−5−イニル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のアリルエステル、
4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−シクロプロピルメチル−アミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のブタ−3−エニルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のシクロプロピルメチルエステル、
4−ブチルアミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−アリルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸の2−シクロプロピル−エチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のシクロプロピルメチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のシクロプロピルメチルエステル、
4−アミノ−1−ベンジル−6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−ベンジルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−フェニルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のベンジルエステル、
4−アジド−1−β−D−リボフラノシルピラゾロ[3,4−b]ピリジン、
1−ペンタ−3−イニル−N−2−プロペニル−4−プロピオンアミド−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボキサミド、
2−(4−アミノ−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−1−イル)−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−3,4−ジオール、
2−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−エタノール、
3−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−プロパン−1−オール、
3−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−酢酸のプロピルエステル、
2−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−プロピオン酸のエチルエステル、
2−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−ペンタン酸のエチルエステル、
2−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−安息香酸のエチルエステル、
3−(6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ)−ペンタン酸のプロピルエステル
N−ベンジリデン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−フラン−2−イルメチレン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−(4−フルオロ−ベンジリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−(3−フラン−2−イル−アリリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−(4−メトキシ−ベンジリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
4−[(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラゾノメチル]−ベンゾニトリル、
N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチレン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(4−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(4−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(5−ニトロ−フラン−2−イルメチレン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(2−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イル)−N′−(6−ニトロ−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチレン)−ヒドラジン、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−(ピリジン−4−イルメチル)−アミド、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−(テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル)−アミド、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−(5−ヒドロキシ−ペンチル)−アミド、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−[3−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−プロピル]−アミド、
4−tert−ブチルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−シクロプロピルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−プロピルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−フェニルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−ブチルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−(2−エトキシ−エチルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、
4−ベンジルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル、および
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−フェネチルアミノ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸のエチルエステル。
【請求項4】
アルツハイマー病、血管型痴呆、パーキンソン病またはハンチントン病の患者における認知障害の処置のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
神経変性疾患、特にアルツハイマー病および血管型痴呆の患者における認知障害の処置のための医薬組成物の製造のためのエタゾラートの使用。
【請求項6】
組成物を経口的または全身的に投与することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−520427(P2007−520427A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516332(P2006−516332)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001630
【国際公開番号】WO2005/000302
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(599022270)エグゾニ・テラピューティック・ソシエテ・アノニム (12)
【氏名又は名称原語表記】EXONHIT THERAPEUTICS SA
【Fターム(参考)】