説明

誘導ブロック及びその製造方法

【課題】機械的強度、耐酸性等に優れ、特に耐磨耗性に優れるため、良好な耐久性が発揮でき、必要により着色も良好な誘導ブロック及び該ブロックを簡便に、しかも短期間に製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の誘導ブロックは、改質硫黄100質量部と、粒径5mm以下の細骨材10〜1000質量部とを含み、上面に警告又は誘導用の凸部を有するブロック状の改質硫黄含有成型物からなる。本発明の製造方法は、改質硫黄溶融物100質量部と、粒径5mm以下の細骨材10〜1000質量部とを含む原材料を120〜160℃で混合する工程(A)と、該溶融混合物を、内底面に所定の凹部を有する型枠に導入する工程(B)と、型枠に導入した溶融混合物を冷却固化する工程(C)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者、視覚弱者を含む歩行者や車椅子使用者等に、その位置や方向を案内又は警告するための誘導ブロック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導ブロックは、視覚障害者や車椅子使用者等が、主に足や杖、車椅子等でその存在及び形状を認知しうるように、半球状等の点状又は線状の凸部を上面に設けたブロックであり、視覚的にも確認できるように着色が施されているものが多く利用されている。該誘導ブロックは、歩道、公園、駅、各種施設等の広範囲に敷設され、現在では多く普及している。
誘導ブロックとしては、従来、一体成形したコンクリートブロックが主に利用されていたが、上面の凸部の耐磨耗性に問題があり、現在では、上面に凸部を有するゴム製や樹脂製の板状物やシート等をコンクリートブロックの上面に貼着したもの等が多く普及している。例えば、特許文献1には、コンクリートブロックに中空のプラスチックのカバーを設けたものが、また、特許文献2には、プラスチックで成型された成型物等が提案されている。
しかし、このようなゴムや樹脂をコンクリートと一体化させた誘導ブロックは、その一体化のための作業や敷設作業が煩雑化し易く、また、コンクリートブロック自体の製造においてもその機械的強度発現のための養生に2〜3日程度かかるという問題がある。
【0003】
ところで、近年、コンクリートに代わる土木、建設資材として、耐酸性、機械的強度、遮水性等に優れる硫黄含有資材が、例えば、特許文献3や4等を含め、多数提案され、利用されはじめている。
このような硫黄含有資材は、該資材中の改質硫黄の溶融温度が通常120℃以上であるため、120〜160℃程度に保持した改質硫黄溶融物を、所定の型枠に流し込み成型固化させることにより製造されている。このような硫黄含有資材については、セメントコンクリートよりも優れた曲げ強度を発現させることができることも知られている。
しかし、従来、硫黄含有資材が、誘導ブロック等の耐磨耗性を必要とする用途に利用できることや、誘導ブロックとしての着色が可能である点については知られていない。
【特許文献1】特開2001−81742号公報
【特許文献2】特開2001−271315号公報
【特許文献3】WO2004−11384号パンフレット
【特許文献4】特開2005−82475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、機械的強度、耐酸性等に優れ、特に耐磨耗性に優れるため、良好な耐久性が発揮でき、必要により着色も良好な誘導ブロックを提供することにある。
本発明の別の課題は、機械的強度、耐酸性等に優れ、特に耐磨耗性に優れるため、良好な耐久性が発揮でき、必要により着色も良好な誘導ブロックを、簡便に、しかも短期間に製造することができる誘導ブロックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、改質硫黄100質量部と、粒径5mm以下の細骨材10〜1000質量部とを含み、上面に警告又は誘導用の凸部を有するブロック状の改質硫黄含有成型物からなる誘導ブロックが提供される。
また本発明によれば、改質硫黄溶融物100質量部と、粒径5mm以下の細骨材10〜1000質量部とを含む原材料を120〜160℃で混合する工程(A)と、工程(A)で調製した溶融混合物を、内底面に所定の凹部を有する型枠に導入する工程(B)と、型枠に導入した溶融混合物を冷却固化する工程(C)とを含む誘導ブロックの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の誘導ブロックは、特定の改質硫黄含有成型物からなるので、機械的強度、耐酸性等に優れ、特に耐磨耗性に優れるため、良好な耐久性を発揮する。しかも、着色性も良好であるので、従来のセメントコンクリートブロックを利用した誘導ブロックに代わっての利用が期待できる。
本発明の誘導ブロックの製造方法は、改質硫黄溶融物と特定の細骨材とを含む原材料を、溶融混合物として、特定の型枠に導入し、冷却固化するという簡便な方法を採用し、セメントコンクリートブロックの強度発現のための養生等を必要としないので、本発明の誘導ブロックを、容易に短期間で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の誘導ブロックは、視覚障害者、視覚弱者を含む歩行者や車椅子使用者等に、その位置や方向を案内又は警告するために、上面に、半球状等の点状又は線状等の凸部を有するブロックである。
該凸部の形状及び大きさ等は、公知の誘導ブロックに準じたものとすることができる。
また、ブロックの大きさは、特に限定されないが、通常、規格に応じた大きさとすることができる。
【0008】
本発明の誘導ブロックは、改質硫黄及び特定の細骨材を特定割合で含む。
前記改質硫黄は、例えば、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等を硫黄改質剤により重合したものであって、硫黄と硫黄改質剤との反応物である。
【0009】
硫黄改質剤としては、例えば、炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン及びそのオリゴマー、シクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
改質硫黄は、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合することにより得ることができる。この際、硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜20質量%、特に、1.0〜10質量%の割合が好ましい。
【0010】
前記特定の細骨材は、粒径5mm以下、好ましくは1mm以下の細骨材であって、例えば、天然石、砂、れき、珪砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、石炭灰、燃料焼却灰、電気集塵灰、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、粘土鉱物、活性炭及びガラス粉末等からなる群より選択される1種又は2種以上の細骨材が挙げられる。
粒径が5mmを超える場合には、成形時の凸部の形成に問題が生じる恐れがあり、また、表面平滑性が低下する恐れがある。
細骨材としては、誘導ブロックの耐酸性を更に向上させるために、少なくともCa及びSiを含み、細骨材中のCa、Si、Alを酸化物換算したCaO/(SiO2+Al2O3)の割合が、質量比で0.2以下の無機細骨材の使用が好ましい。前記細骨材中のCaO/(SiO2+Al2O3)の割合は、Ca量をCaOに換算し、Si量をSiO2に換算して、Al量をAl2O3に換算してそれぞれ質量比により決定できる。この際、Alは必ずしも含まれなくて良い。
このような細骨材としては、例えば、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、石英粉、砂、ガラス粉末、電気集塵灰等のシリカ成分を主体とする細骨材の1種又は2種以上が挙げられる。
【0011】
本発明の誘導ブロックにおいて、前記細骨材の含有割合は、改質硫黄100質量部に対して、通常、10〜1000質量部、特に100〜800質量部、更には300〜800質量部が好ましい。該細骨材の含有割合が10質量部未満では、強度の低下の恐れがあり、1000質量部を超えると、固着が悪い恐れがある。
【0012】
本発明の誘導ブロックには、少なくともその凸部を含む上面を着色するために、着色剤を含有させることができる。
着色剤としては、例えば、黄色着色剤、具体的には、製品名C.I.PIG.No.Y-151、Y-74、Y-154、Y-139、Y-65(大日本インキ社製)等が挙げられる。
着色剤を含有させる場合の含有割合は、少なくともその凸部を含む上面を着色しうる量であれば特に限定されず適宜選択することができるが、通常、得られる誘導ブロック全量に対して、1〜10質量%の範囲から選択することができる。
【0013】
本発明の誘導ブロックには、前記改質硫黄、特定の細骨材及び着色剤の他に、本発明の所望の目的を損なわない範囲で、例えば、繊維質充填材、薄片状粒子等や各種添加剤を適量含有させることもできる。
繊維質充填材としては、例えば、カーボンファイバー、グラスファイバー、鋼繊維、アモルファス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0014】
本発明の製造方法は、改質硫黄溶融物と、前記特定の細骨材とを上述の特定割合で含む原材料を120〜160℃で混合する工程(A)を含む。
改質硫黄溶融物は、硫黄と硫黄改質剤とを公知の各種加温可能なミキサー等を用いて、120〜160℃の範囲で溶融混合し、例えば、硫黄を充分に改質し、耐酸性や耐磨耗性等を向上させるために、140℃における粘度が通常0.05〜1.0Pa・s、好ましくは0.05〜0.5Pa・s程度となるように混合することにより得ることができる。
改質硫黄溶融物、前記細骨材、必要により着色剤等を含む原材料を120〜160℃で混合するには、細骨材を予め120〜155℃程度に加熱し、必要により他の材料とともに改質硫黄溶融物と溶融状態を維持する所望温度で混合することにより行うことができる。
【0015】
本発明の製造方法は、前記工程(A)で調製した溶融混合物を、内底面に所定の凹部を有する型枠に導入する工程(B)を含む。
前記型枠は、耐熱性を有する金属製等の型枠が使用でき、その内底面の凹部は、製造する誘導ブロックの上面に形成される凸部の大きさ、形状、数に対応する凹部であって、適宜選択して形成することができる。型枠の大きさ及び厚さは、誘導ブロックの規格に合わせて適宜選択することができる。また、型枠の内面には、離型剤を塗布することもできる。
また型枠は、溶融混合物の導入にあたり、得られる誘導ブロックの表面平滑性等を改善するために、ジャケット式加熱機等の加熱装置を備えた型枠の使用が好ましい。
このような型枠を使用する場合には、例えば、溶融混合物を導入するにあたり、型枠を50〜150℃程度に加熱しておき、後述する工程(C)において徐々に温度を降下させ冷却することができる。
【0016】
工程(B)において、型枠への溶融混合物の導入は、通常、1回で行うことができるが、例えば、着色剤を含む溶融混合物を最初に導入した後、ある程度硬化させ、次いで着色剤を
含有しない溶融混合物を導入する等、複数回に分けて導入することもできる。
また、工程(B)における溶融混合物の型枠への導入において、該溶融混合物を内底面の凹部等に蜜に充填するため等に、所望期間、好ましくは混合溶融物の導入開始時から導入終了後ある程度の間、型枠を振動させることが好ましい。該振動は、型枠を載置する箇所に、所望の振動機等を設置することにより行うことができる。
【0017】
本発明の製造方法は、前記型枠に導入した溶融混合物を冷却固化する工程(C)を含む。
工程(C)において冷却固化は、工程(B)において溶融混合物を型枠に導入した後、自然冷却により行うことができる。型枠として上述の加熱装置を備えた型枠を用いた場合には、得られる誘導ブロックの表面平滑性をより改善するために、型枠温度を徐々に降下させながら冷却することが好ましい。溶融混合物の冷却固化は、通常、1〜10時間で終了することができる。
冷却固化した誘導ブロックは、公知の方法により離型することができる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
縦横長さが300mm、高さが60mm(凹部の深さを含まない)であり、内底面に、最大直径55mm、最大深さ5mmの半球状凹部を25個均等に有する、ジャケット式加熱機を備える金属製型枠(a)と、縦横長さが300mm、高さが60mm(凹部の深さを含まない)であり、内底面に、幅45mm、長さ300mm、深さ5mmの線状凹部を均等に4本有する、ジャケット式加熱機を備える金属性型枠(b)とを準備した。
密閉型撹拌混練機に固体硫黄10gを入れ、120℃で溶融後、130℃に保持した。この際の粘度をB型粘度計で測定したところ0.018Pa・sであった。続いて、約130℃に加熱溶融したテトラハイドロインデン10gをゆっくり添加し、撹拌した。反応が始まり発熱反応により系の温度が約140℃となった。その後、温度上昇が終了したことを確認し、その際の反応系の粘度を測定したところ約0.1Pa・s程度であった。
次に上記状態において、粒径5mm以下であり、平均粒径3mmのスラグ20kgからなる140℃に予熱した細骨材及び着色剤としてY−151を100g投入し混合を開始した。混合物の温度を150℃に制御し20分間混合した。混合終了後、得られた溶融状態の改質硫黄含有物を、予め140℃に加熱した型枠(a)及び型枠(b)にそれぞれ導入した。導入中、型枠には振動を与えた。
改質硫黄含有物の導入後、型枠の加熱温度を徐々に下げ、30分後に80℃にした後、2時間放置し、脱型して誘導ブロックを製造した。
得られた各誘導ブロックは、型どおりの形状を保持しており、凸部を有する上面側は黄色に着色されていた。
【0019】
比較例1
縦横長さが300mm、高さが60mm(凹部の深さを含まない)であり、内底面に、最大直径55mm、最大深さ5mmの半球状凹部を25個均等に有する金属製型枠に、水120kg、セメント350kg、砂利950kg及び砂900kgの、水/セメント比が35%程度のコンクリート組成物を導入し、3日間養生して誘導ブロックを製造した。得られた誘導ブロックは、型どおりの形状を保持していた。
【0020】
実施例1の型枠(a)で製造した誘導ブロック及び比較例1で製造した誘導ブロックについて、曲げ強度及びASTMC779−82Aによる耐摩耗試験を行った。
その結果、実施例1の誘導ブロックの曲げ強度は11N/mm2であるのに対し、比較例1の誘導ブロックは、3.5N/mm2であった。また、耐摩耗性は、実施例1の誘導ブロックの方が、比較例1の誘導ブロックよりも約30%高い耐摩耗性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質硫黄100質量部と、粒径5mm以下の細骨材10〜1000質量部とを含み、上面に警告又は誘導用の凸部を有するブロック状の改質硫黄含有成型物からなる誘導ブロック。
【請求項2】
改質硫黄含有成型物が、着色剤を含み、少なくとも凸部を含む表面を着色した請求項1記載の誘導ブロック。
【請求項3】
細骨材が、天然石、砂、れき、珪砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、石炭灰、燃料焼却灰、電気集塵灰、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、粘土鉱物、活性炭及びガラス粉末からなる群より選択される1種又は2種以上からなる請求項1又は2記載の誘導ブロック。
【請求項4】
改質硫黄溶融物100質量部と、粒径5mm以下の細骨材10〜1000質量部とを含む原材料を120〜160℃で混合する工程(A)と、
工程(A)で調製した溶融混合物を、内底面に所定の凹部を有する型枠に導入する工程(B)と、
型枠に導入した溶融混合物を冷却固化する工程(C)とを含む誘導ブロックの製造方法。
【請求項5】
工程(A)における原材料が、着色材を含む請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
工程(B)において、型枠を所定期間振動させる請求項4又は5記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−262797(P2007−262797A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91341(P2006−91341)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(390015336)株式会社上田商会 (8)
【Fターム(参考)】