誘導プレート及びその製造方法
【課題】 視覚健常者に対する誘導表示が消え難い誘導プレート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 表面に凸部2を有し、暗所でも使用可能な行き先誘導プレートであって、合成ゴムを主成分とする誘導表示部材3が、前記合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体1の表面に取り付けてある。
【解決手段】 表面に凸部2を有し、暗所でも使用可能な行き先誘導プレートであって、合成ゴムを主成分とする誘導表示部材3が、前記合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体1の表面に取り付けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の行き先を案内するために、人の通る床面や壁面等に設置する誘導プレートに関するもので、視覚障害者のために表面に多数の凸部を有し歩行面に設置して使用する点字シートや点字ブロック等の誘導プレートだけでなく、暗所では、視覚健常者に、非常口の存在を示すために人の走る様子を描いたピクトグラム、その他、人に適切な行き先方向を示すための誘導プレート、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導プレートは、その表面に凸部を有しており、視覚障害者のためのものとして、道路や駅などの公共施設に設置されている。一般的に誘導プレートとしては、線状で台形の凸部を平行に配置することにより進む方向を表して、人を目的地まで誘導するものや、点字プレートのように点状で円錐台形の凸部が配置してあり、警告や位置表示するものが知られている。そして、視覚障害者は、このような誘導プレートの凹凸を足底で感じ取ることにより、情報を得ている。
【0003】
近年、このような誘導プレートの上に物等が放置され、視覚障害者の通行の妨げになっているという問題がある。このような問題に対しては、視覚健常者にも誘導プレートの存在をアピールして注意の喚起を図るために、点字プレートや点字ブロック等の誘導プレートの表面に背景画や文字、図形等を表示する誘導技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、視覚障害者に対する情報のみを有する誘導プレートに、視覚健常者に対する情報を表示して1つの部材とするもの(例えば、特許文献2参照)や、点字プレートや点字ブロック等の誘導プレートに文字や図形を施すと共に蓄光剤を用いることにより、暗所においても視覚健常者に対して誘導可能な誘導プレート(例えば、特許文献3参照)について検討されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−256332号公報
【特許文献2】特開2003−316253号公報
【特許文献3】特開2001−148090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の、特許文献1や特許文献3に記載されている誘導プレートでは、その表面に文字、図形等を印刷等によって直接表示しているため、人が歩行することによって摩擦し、表示が消えてしまうという問題がある。特に災害発生時に誘導できるように設置しているものもあるが、実際に災害が発生した場合には表面の表示が消えてしまって暗所では視覚健常者を誘導できない虞がある。
【0007】
また、特許文献2に記載されているように文字、図形等の表示の上に透明なシートを接着させることにより、人の歩行による摩擦から表示を保護するものもあるが、接着剤の劣化等により透明なシートが剥がれる場合があり、視覚障害者が剥がれかけのシートに躓く危険性がある。また、シートが剥がれた後は、上述の通り摩擦によって表示が消える可能性がある。
【0008】
また、特許文献3に記載されているように、点字ブロックに蓄光剤を施したり、その上の点字の無い部分に文字、絵柄、矢印等を塗布したりしたのでは、点字ブロックがゴム製の場合、蓄光剤や文字等が剥がれる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、視覚障害者に対して、適切な誘導表示ができるだけでなく、一般の視覚健常者に、特に、老人ホーム等の視覚健常者に対しても、災害発生時における暗所等において、誘導表示が消え難い誘導プレート及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る誘導プレートの第1特徴構成は、表面に凸部を有し、暗所でも使用可能な行き先誘導プレートであって、合成ゴムを主成分とする誘導表示部材が、前記合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体の表面に取り付けてある点にある。
【0011】
つまり、この構成によれば、誘導プレート上の表示は印刷等と異なり、誘導表示部材をプレート本体に取り付けてあるため、歩行等の摩擦によっても消えることはない。
また、誘導表示部材は、誘導表示部材を構成する合成ゴムの分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体に取り付けてあるため、接着剤を使用しなくても強固に結合させることができる。したがって、接着剤の経時劣化等によって、誘導表示部材が剥がれる虞はない。
【0012】
本発明に係る誘導プレートの第2特徴構成は、前記誘導表示部材は、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムのいずれかを主成分とする点にある。
【0013】
つまり、この構成によれば、エチレンプロピレンゴム及びブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムは、良好な耐摩擦性を有するため、誘導プレートに適している。特にエチレンプロピレンゴムは、耐磨耗性に加え、耐候性にも優れているため誘導プレートを屋外で使用する場合にも適している。
【0014】
本発明に係る誘導プレートの第3特徴構成は、前記誘導表示部材に、蓄光剤が配合してある点にある。
【0015】
つまり、この構成によれば、災害発生時等の非常時において、停電等により周りが暗くなった場合であっても、誘導表示部材を視認することができる。このため、一般に人々を誘導表示により、非常口等に誘導することが可能となる。
【0016】
本発明に係る誘導プレートの第4特徴構成は、前記誘導表示部材の色相が、前記プレート本体の色相と同系統である点にある。
【0017】
つまり、この構成によれば、例えば、誘導表示部材を非常口等に誘導できるように予め表示しておいても、平常時のような周りが明るい状態では、誘導表示部材を目立たないようにすることができる。そして、停電等により周りが暗くなった場合にのみ人々を誘導することができる。
【0018】
本発明に係る誘導プレートの第5特徴構成は、前記誘導表示部材の表面ないし裏面に、前記凸部の一部が形成してある点にある。
【0019】
つまり、この構成によれば、プレート本体の凸部の代わりに誘導表示部材の表面ないし裏面に凸部を形成させることができる。このため、誘導表示部材の形状や取付位置は、プレート本体の凸部を有していない部分のみに限定されない。すなわち、任意の形状の誘導表示部材を、プレート本体上の任意の位置に取り付けることができる。
【0020】
本発明に係る誘導プレートの製造方法の特徴手段は、予め有機過酸化物で加硫した加硫状態の合成ゴムを主成分とする誘導表示部材と、当該合成ゴムを構成する分子構造単位を含み、有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体とを重ねて、一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、前記プレート本体の表面に前記誘導表示部材を取り付ける点にある。
【0021】
つまり、この手段によれば、接着剤等を使用しなくても誘導表示部材をプレート本体に取り付けることができる。このため、接着剤の経時劣化等によって、誘導表示部材が剥がれる虞はない。
【0022】
また、本発明に係る誘導プレートの製造方法としては、有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とする誘導表示部材と、当該合成ゴムを構成する分子構造単位を含み、予め有機過酸化物で加硫した加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体とを重ねて、一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、前記プレート本体の表面に前記誘導表示部材を取り付けてもよい。この手段によっても同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る誘導プレートは、表面に凸部を有し、暗所でも使用可能な行き先誘導プレートであって、合成ゴムを主成分とする誘導表示部材が、前記合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体の表面に取り付けてあるものである。これにより、誘導表示部材をプレート本体に取り付けてあるため、歩行等の摩擦によっても消えることはなく、また、接着剤を使用しなくても強固に結合させることができるため、接着剤の経時劣化等によって、誘導表示部材が剥がれる虞はない。
【0024】
以下、本発明に係る誘導プレートについて、その一例を図1及び2に示して説明する。すなわち、誘導プレートは、縦横が30cmの合成ゴムを主成分とするプレートで、プレート本体1の上に歩行者の足底に当たる点状であって、D1が22mm、D2が12mmの円錐台形の凸部2を縦横5列のマトリックス状に並べて形成されており、その中央箇所に視覚健常者を誘導するための矢印形状の誘導表示部材3が一体的に配設されている。そして、この誘導プレートは、視覚障害者の歩行において、歩道、駅舎、建築物内、その他の床材に警告または位置表示用として敷設して使用される。なお、誘導表示部材3の矢印形状は、特に限定されないが、例えば、図5〜8に示すような形状が例示される。なお、T1は7mm、T2は5mmである。
【0025】
また、本発明に係る誘導プレートの別の一例は、図3及び4に示すように、縦横が30cmの合成ゴムを主成分とするプレートで、プレート本体1の上に歩行者の足底に当たる線状であって、W1が27mm、W2が17mmの台形の凸部2を4列に並べて形成されており、中央部に視覚健常者を誘導するための矢印形状の誘導表示部材3が一体的に配設されている。そして、この誘導プレートは、視覚障害者の歩行において、歩道、駅舎、建築物内、その他の床材に直線歩行における方向指示用として敷設して使用される。なお、誘導表示部材3の矢印形状は、特に限定されないが、例えば、図9〜12に示すような形状が例示される。なお、T3は7mmである。
【0026】
プレート本体1は、誘導表示部材3の主成分となる合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするものである。合成ゴムの種類としては、特に限定されないが、その上を人が歩行するものであるため、耐磨耗性のあるものが好ましく、このような観点からは、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムのいずれかを主成分とするものが好ましい。そして、特に本発明の誘導プレートを屋外で使用する場合には、さらに耐候性を有するエチレンプロピレンゴムを主成分とするものが好ましい。もちろん、例えば、エチレンプロピレンゴムとスチレンブタジエンゴムのように複数の合成ゴムを混合して用いることもできる。
したがって、誘導表示部材3に、スチレンブタジエンゴムを主成分とするものを適用する場合には、プレート本体1には、スチレンブタジエンゴムの分子構造単位の一部であるブタジエンゴムから構成されているブタジエンゴム、または、分子構造単位がすべて同一のスチレンブタジエンゴムそのものを主成分とするものが適用できる。また、同様に誘導表示部材3に、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴムを主成分とするものを適用する場合には、プレート本体1には、エチレンプロピレンゴムに対しては、分子構造単位がすべて同一のエチレンブタジエンゴムそのものを主成分とするもの、また、ブタジエンゴムに対しては、同様に、分子構造単位がすべて同一のブタジエンゴムそのものを主成分とするもの、または、分子構造単位の一部であるブタジエンゴムが含有されているスチレンブタジエンゴムを主成分とするものが適用できる。
このように同一の分子構造単位を有する合成ゴムを主成分とするもの同士によって、プレート本体1と誘導表示部材3とを接着剤を使用しなくても強固に結合させることができるため、非常に剥がれ難い誘導プレートを得ることができる。
【0027】
また、誘導表示部材3には、蓄光剤を配合することもできる。すなわち、蓄光剤を配合することによって、災害発生時等の非常時において、停電等により周りが暗くなった場合であっても、誘導表示部材3を視認可能にすることができるため誘導表示の形状を矢印だけでなく、人の走る様子を描いたピクトグラム等、非常口の存在を示す誘導表示とすることにより、人々を非常口等に誘導することが可能となる。
なお、混合する蓄光剤の種類は特に限定されず、従来公知の蓄光剤を適用することができる。また、蓄光剤の粒径についても特に限定されないが、粒径が大きい方が蓄光性が大きくなるものの、耐磨耗性が低下するため、平均粒径は2〜60μm程度が好ましい。蓄光剤の配合割合は、合成ゴム100部に対して10〜60部が好ましいが、配合割合が多くなるとゴムとしての物性が低下する懸念があり、またコスト面も考慮すれば、30部程度がより好ましい。
【0028】
誘導表示部材3に蓄光剤を配合する場合には、ゴム自体が光を透過させる透明性を有することが好ましく、このような観点からも上記と同様にエチレンプロピレンゴムやブタジエンゴム主成分とするものを好ましく適用することができる。さらにゴムの透明性を向上させるためにはシリカを40〜80部程度混合させることができる。また、このような誘導表示部材3を加硫処理する場合には、透明性を保持する観点から硫黄加硫の場合には、加硫剤が表面に移行したり変色するため、有機過酸化物を用いて行うことが好ましい。
【0029】
また、誘導表示部材3に蓄光剤を配合する場合には、誘導表示部材3の色相を、プレート本体1の色相と同系統とすることができる。例えば、誘導表示部材3を非常口等に誘導できるように予め表示しておいても、周りが明るい状態では目立たないため、人々は平常時には誘導プレート上の誘導表示に影響を受けない。そして、停電等により周りが暗くなった場合にのみ視認可能となり、人々を誘導することができる。すなわち、本発明の誘導プレートの実施形態の好ましい一例は、図13に示すように、ビル等の床材に敷設され、災害発生時等の非常時において停電等により周りが暗くなった場合に、人々を誘導表示により、非常口等に誘導することが可能となるような、平常時には視覚障害者専用物であって、非常時に健常者との共用物となるものである。
【0030】
誘導表示部材3の表面には、プレート本体1と同一の成分を有する凸部2を形成することもできるし、誘導表示部材3と同様の成分とすることもできる。すなわち、プレート本体1の凸部2の代わりに誘導表示部材3の表面に凸部2を形成させることができるため、誘導表示部材3の形状や取付位置は、プレート本体1の凸部2を有していない部分のみに限定されず、任意の形状の誘導表示部材3を、プレート本体1上の任意の位置に取り付けることができる。すなわち、誘導表示部材3をプレート本体1に取り付ける前または取り付けた後に、凸部2を本来の誘導プレートが有する位置に形成させればよい。また、誘導表示部材3の裏面に、誘導表示部材3と同様の成分からなる凸部2を形成することもできる。誘導表示部材3の表面、及び裏面に、誘導表示部材3と同様の成分からなる凸部2を形成した場合、凸部2は、誘導表示部材3の蓄光剤と凸部2の発光量を大きくしたり、蓄光剤の組成を相違させることにより、異なる色や模様を形成することもできる。
【0031】
このような本発明に係る誘導プレートの製造方法の一例を示すと、有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体1と、予め有機過酸化物加硫した合成ゴムを主成分とする誘導表示部材3とを重ねて一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、プレート本体1の表面に誘導表示部材3を取り付けるものである。これにより、接着剤等を使用しなくても誘導表示部材をプレート本体に取り付けることができるため、接着剤の経時劣化等によって誘導表示部材が剥がれることがない。
【0032】
誘導表示部材3は、予め有機過酸化物加硫剤が配合してある合成ゴムを主成分とするものを用いて、誘導表示機能を有する任意の形状を形成させる。そして、金型に配置し、プレス成形機にて処理し、有機過酸化物加硫させる。加硫の条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間程度処理することにより、良好に加硫させることができる。また、有機過酸化物加硫剤は、1.5〜2部程度配合することが好ましい。
なお、誘導表示部材3の表面に凸部2を形成させる場合で凸部2をプレート本体と同様の成分とする場合には、誘導表示部材3と凸部2とを金型に配置し、同時に加硫処理することによって行うことができる。また、凸部2を誘導表示部材3と同様の成分とする場合には、上記と同様の方法で、予め表面に凸部2を形成した誘導表示部材3を金型に配置し、加硫処理することにより行うことができる。誘導表示部材3の裏面に誘導表示部材と同様の成分の凸部2を形成する場合にも、予め表面に凸部2を形成した誘導表示部材3を金型に配置することにより、同様にして形成することができる。
【0033】
そして、上述の通り、予め有機過酸化物加硫剤が配合してある合成ゴムを主成分とするプレート本体1を形成させ、有機過酸化物加硫した誘導表示部材3とを重ねて金型に配置し、プレス成形機にて、上記の誘導表示部材3を処理した条件と同様の条件で、好ましく加硫処理することができる。
上記では、プレート本体1として未加硫状態の合成ゴムを使用し、誘導表示部材3として加硫済みの合成ゴムを使用した場合について説明したが、上記方法としては逆に、プレート本体1として加硫済みの合成ゴムを使用し、誘導表示部材3として未加硫状態の合成ゴムを使用しても、同様にして誘導プレートを製造することもできる。
なお、誘導プレート本体1が有する凸部2は、プレート本体1及び誘導表示部材3と共に上記の加硫処理することによって、良好に形成させることができる。
【0034】
このように未加硫のゴムと加硫したゴムとを合わせて、加硫処理することにより、接着剤等を使用することなく、両者を強固に結合させることができるようになる。
以下、プレート本体1に蓄光剤を配合した誘導表示部材3を取り付けた誘導プレートを用い、輝度を測定した実施例について説明する。
【実施例1】
【0035】
有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムに蓄光剤として蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製G−300M)を、それぞれ30部、35部、40部配合した後、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図1及び2に示す凸部2を有する誘導表示部材3を作製した。そして、予め有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムを主成分とする図1及び2に示す黄色のプレート本体1と凸部2とをそれぞれ形成させ、前記誘導表示部材3と重ねて8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図1及び2に示す誘導プレートを得た。
得られた誘導プレートにおける誘導表示部材3の凸部2及び平面部について、励起停止60分後までの残光輝度の測定を行い、その結果を表1に示した。
測定方法は、JIS Z 9107(安全標識について):1998規格に準拠し、励起はD65常用光源により200lxで20分間行い、下地色を黒色、測定温度を23±2℃として行った。
なお、測定機器は、D65常用光源F65−D−A(スガ試験機株式会社製)、照度計IM−5(株式会社TOPCON製)、色彩輝度計BM−5A(株式会社TOPCON製)、ラジオグラフアナライザーNIM−1000(根本特殊化学株式会社製)を使用した。
【0036】
【表1】
【実施例2】
【0037】
実施例1で使用した誘導表示部材3のうち蓄光剤を30部配合したものを用い、プレート本体1の色を緑色にして、実施例1と同様に誘導プレートを作製し、残光輝度を測定した。その結果を表2に示した。
【0038】
【表2】
【実施例3】
【0039】
有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムに蓄光剤として蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製G−300M)を、それぞれ30部、35部、40部配合した後、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図3及び4に示す誘導表示部材3を作製した。そして、予め有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムを主成分とする図3及び4に示す黄色のプレート本体1と凸部2とをそれぞれ形成させ、前記誘導表示部材3と重ねて8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図3及び4に示す誘導プレートを得た。
得られた誘導プレートにおける誘導表示部材3について、実施例1及び2と同様に励起停止60分後までの残光輝度の測定を行い、その結果を表3に示した。
【0040】
【表3】
【実施例4】
【0041】
実施例3で使用した誘導表示部材3のうち蓄光剤を30部配合したものを用い、プレート本体1の色を緑色にして、実施例3と同様に誘導プレートを作製し、残光輝度を測定した。その結果を表4に示した。
【0042】
【表4】
【0043】
実施例1〜4より、全ての試料において、JIS Z 9107の規格値を超えた良好な結果が得られた。また、配合部数が高い試料ほど、輝度が高くなることが分かった。
【実施例5】
【0044】
有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムに蓄光剤として蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製G−300M)を、30部配合した後、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図1及び2に示す凸部2を有する誘導表示部材3を作製した。そして、予め有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムを主成分とする図1及び2に示す黄色のプレート本体1と凸部2とをそれぞれ形成させ、前記誘導表示部材3と重ねて8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図1及び2に示す誘導プレートを得た。
この誘導プレートについて、JIS Z 9107(安全標識について):1998規格に準拠して励起停止60分後までの残光輝度を測定し、その結果を表5に示した。なお、輝度測定時の測定角は45°及び90°で行った。
なお、測定機器は、輝度計LS−100(ミノルタ株式会社製)、照度計T−10(ミノルタ株式会社製)を使用した。
【実施例6】
【0045】
有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムに蓄光剤として蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製G−300M)を、それぞれ35部、40部配合した後、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図3及び4に示す誘導表示部材3を作製した。そして、予め有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムを主成分とする図3及び4に示す黄色のプレート本体1と凸部2とをそれぞれ形成させ、前記誘導表示部材3と重ねて8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図3及び4に示す誘導プレートを得た。
得られた誘導プレートにおける誘導表示部材3について、実施例5と同様に励起停止60分後までの残光輝度の測定を行い、その結果を表5に示した。
【0046】
【表5】
実施例5、6より、測定角度45°の場合も、測定角度90°の場合と同等の輝度が得られることが分かった。これにより、誘導プレートの真上からだけでなく、人が立った状体から斜め前を見下ろした角度からでも輝度を確保することができるため、暗所において、誘導プレートから離れた場所からでも誘導プレートを見つけることが可能となる。
【0047】
本発明における誘導プレートは、裏面に接着剤を塗布し、その上に剥離紙等を設けた構成としておけば、壁面へ適用する場合には、簡単に施行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る誘導プレートは、歩道、駅舎、建築物内、その他の床材や壁面に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートを示す図
【図2】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートの斜視図
【図3】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートを示す図
【図4】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートの斜視図
【図5】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図6】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートの端面図
【図7】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図8】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートの端面図
【図9】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図10】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の端面図
【図11】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図12】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図13】本発明に係る誘導プレートの使用例を示す図
【符号の説明】
【0050】
1 プレート本体
2 凸部
3 誘導表示部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の行き先を案内するために、人の通る床面や壁面等に設置する誘導プレートに関するもので、視覚障害者のために表面に多数の凸部を有し歩行面に設置して使用する点字シートや点字ブロック等の誘導プレートだけでなく、暗所では、視覚健常者に、非常口の存在を示すために人の走る様子を描いたピクトグラム、その他、人に適切な行き先方向を示すための誘導プレート、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導プレートは、その表面に凸部を有しており、視覚障害者のためのものとして、道路や駅などの公共施設に設置されている。一般的に誘導プレートとしては、線状で台形の凸部を平行に配置することにより進む方向を表して、人を目的地まで誘導するものや、点字プレートのように点状で円錐台形の凸部が配置してあり、警告や位置表示するものが知られている。そして、視覚障害者は、このような誘導プレートの凹凸を足底で感じ取ることにより、情報を得ている。
【0003】
近年、このような誘導プレートの上に物等が放置され、視覚障害者の通行の妨げになっているという問題がある。このような問題に対しては、視覚健常者にも誘導プレートの存在をアピールして注意の喚起を図るために、点字プレートや点字ブロック等の誘導プレートの表面に背景画や文字、図形等を表示する誘導技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、視覚障害者に対する情報のみを有する誘導プレートに、視覚健常者に対する情報を表示して1つの部材とするもの(例えば、特許文献2参照)や、点字プレートや点字ブロック等の誘導プレートに文字や図形を施すと共に蓄光剤を用いることにより、暗所においても視覚健常者に対して誘導可能な誘導プレート(例えば、特許文献3参照)について検討されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−256332号公報
【特許文献2】特開2003−316253号公報
【特許文献3】特開2001−148090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の、特許文献1や特許文献3に記載されている誘導プレートでは、その表面に文字、図形等を印刷等によって直接表示しているため、人が歩行することによって摩擦し、表示が消えてしまうという問題がある。特に災害発生時に誘導できるように設置しているものもあるが、実際に災害が発生した場合には表面の表示が消えてしまって暗所では視覚健常者を誘導できない虞がある。
【0007】
また、特許文献2に記載されているように文字、図形等の表示の上に透明なシートを接着させることにより、人の歩行による摩擦から表示を保護するものもあるが、接着剤の劣化等により透明なシートが剥がれる場合があり、視覚障害者が剥がれかけのシートに躓く危険性がある。また、シートが剥がれた後は、上述の通り摩擦によって表示が消える可能性がある。
【0008】
また、特許文献3に記載されているように、点字ブロックに蓄光剤を施したり、その上の点字の無い部分に文字、絵柄、矢印等を塗布したりしたのでは、点字ブロックがゴム製の場合、蓄光剤や文字等が剥がれる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、視覚障害者に対して、適切な誘導表示ができるだけでなく、一般の視覚健常者に、特に、老人ホーム等の視覚健常者に対しても、災害発生時における暗所等において、誘導表示が消え難い誘導プレート及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る誘導プレートの第1特徴構成は、表面に凸部を有し、暗所でも使用可能な行き先誘導プレートであって、合成ゴムを主成分とする誘導表示部材が、前記合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体の表面に取り付けてある点にある。
【0011】
つまり、この構成によれば、誘導プレート上の表示は印刷等と異なり、誘導表示部材をプレート本体に取り付けてあるため、歩行等の摩擦によっても消えることはない。
また、誘導表示部材は、誘導表示部材を構成する合成ゴムの分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体に取り付けてあるため、接着剤を使用しなくても強固に結合させることができる。したがって、接着剤の経時劣化等によって、誘導表示部材が剥がれる虞はない。
【0012】
本発明に係る誘導プレートの第2特徴構成は、前記誘導表示部材は、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムのいずれかを主成分とする点にある。
【0013】
つまり、この構成によれば、エチレンプロピレンゴム及びブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムは、良好な耐摩擦性を有するため、誘導プレートに適している。特にエチレンプロピレンゴムは、耐磨耗性に加え、耐候性にも優れているため誘導プレートを屋外で使用する場合にも適している。
【0014】
本発明に係る誘導プレートの第3特徴構成は、前記誘導表示部材に、蓄光剤が配合してある点にある。
【0015】
つまり、この構成によれば、災害発生時等の非常時において、停電等により周りが暗くなった場合であっても、誘導表示部材を視認することができる。このため、一般に人々を誘導表示により、非常口等に誘導することが可能となる。
【0016】
本発明に係る誘導プレートの第4特徴構成は、前記誘導表示部材の色相が、前記プレート本体の色相と同系統である点にある。
【0017】
つまり、この構成によれば、例えば、誘導表示部材を非常口等に誘導できるように予め表示しておいても、平常時のような周りが明るい状態では、誘導表示部材を目立たないようにすることができる。そして、停電等により周りが暗くなった場合にのみ人々を誘導することができる。
【0018】
本発明に係る誘導プレートの第5特徴構成は、前記誘導表示部材の表面ないし裏面に、前記凸部の一部が形成してある点にある。
【0019】
つまり、この構成によれば、プレート本体の凸部の代わりに誘導表示部材の表面ないし裏面に凸部を形成させることができる。このため、誘導表示部材の形状や取付位置は、プレート本体の凸部を有していない部分のみに限定されない。すなわち、任意の形状の誘導表示部材を、プレート本体上の任意の位置に取り付けることができる。
【0020】
本発明に係る誘導プレートの製造方法の特徴手段は、予め有機過酸化物で加硫した加硫状態の合成ゴムを主成分とする誘導表示部材と、当該合成ゴムを構成する分子構造単位を含み、有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体とを重ねて、一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、前記プレート本体の表面に前記誘導表示部材を取り付ける点にある。
【0021】
つまり、この手段によれば、接着剤等を使用しなくても誘導表示部材をプレート本体に取り付けることができる。このため、接着剤の経時劣化等によって、誘導表示部材が剥がれる虞はない。
【0022】
また、本発明に係る誘導プレートの製造方法としては、有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とする誘導表示部材と、当該合成ゴムを構成する分子構造単位を含み、予め有機過酸化物で加硫した加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体とを重ねて、一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、前記プレート本体の表面に前記誘導表示部材を取り付けてもよい。この手段によっても同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る誘導プレートは、表面に凸部を有し、暗所でも使用可能な行き先誘導プレートであって、合成ゴムを主成分とする誘導表示部材が、前記合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体の表面に取り付けてあるものである。これにより、誘導表示部材をプレート本体に取り付けてあるため、歩行等の摩擦によっても消えることはなく、また、接着剤を使用しなくても強固に結合させることができるため、接着剤の経時劣化等によって、誘導表示部材が剥がれる虞はない。
【0024】
以下、本発明に係る誘導プレートについて、その一例を図1及び2に示して説明する。すなわち、誘導プレートは、縦横が30cmの合成ゴムを主成分とするプレートで、プレート本体1の上に歩行者の足底に当たる点状であって、D1が22mm、D2が12mmの円錐台形の凸部2を縦横5列のマトリックス状に並べて形成されており、その中央箇所に視覚健常者を誘導するための矢印形状の誘導表示部材3が一体的に配設されている。そして、この誘導プレートは、視覚障害者の歩行において、歩道、駅舎、建築物内、その他の床材に警告または位置表示用として敷設して使用される。なお、誘導表示部材3の矢印形状は、特に限定されないが、例えば、図5〜8に示すような形状が例示される。なお、T1は7mm、T2は5mmである。
【0025】
また、本発明に係る誘導プレートの別の一例は、図3及び4に示すように、縦横が30cmの合成ゴムを主成分とするプレートで、プレート本体1の上に歩行者の足底に当たる線状であって、W1が27mm、W2が17mmの台形の凸部2を4列に並べて形成されており、中央部に視覚健常者を誘導するための矢印形状の誘導表示部材3が一体的に配設されている。そして、この誘導プレートは、視覚障害者の歩行において、歩道、駅舎、建築物内、その他の床材に直線歩行における方向指示用として敷設して使用される。なお、誘導表示部材3の矢印形状は、特に限定されないが、例えば、図9〜12に示すような形状が例示される。なお、T3は7mmである。
【0026】
プレート本体1は、誘導表示部材3の主成分となる合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするものである。合成ゴムの種類としては、特に限定されないが、その上を人が歩行するものであるため、耐磨耗性のあるものが好ましく、このような観点からは、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムのいずれかを主成分とするものが好ましい。そして、特に本発明の誘導プレートを屋外で使用する場合には、さらに耐候性を有するエチレンプロピレンゴムを主成分とするものが好ましい。もちろん、例えば、エチレンプロピレンゴムとスチレンブタジエンゴムのように複数の合成ゴムを混合して用いることもできる。
したがって、誘導表示部材3に、スチレンブタジエンゴムを主成分とするものを適用する場合には、プレート本体1には、スチレンブタジエンゴムの分子構造単位の一部であるブタジエンゴムから構成されているブタジエンゴム、または、分子構造単位がすべて同一のスチレンブタジエンゴムそのものを主成分とするものが適用できる。また、同様に誘導表示部材3に、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴムを主成分とするものを適用する場合には、プレート本体1には、エチレンプロピレンゴムに対しては、分子構造単位がすべて同一のエチレンブタジエンゴムそのものを主成分とするもの、また、ブタジエンゴムに対しては、同様に、分子構造単位がすべて同一のブタジエンゴムそのものを主成分とするもの、または、分子構造単位の一部であるブタジエンゴムが含有されているスチレンブタジエンゴムを主成分とするものが適用できる。
このように同一の分子構造単位を有する合成ゴムを主成分とするもの同士によって、プレート本体1と誘導表示部材3とを接着剤を使用しなくても強固に結合させることができるため、非常に剥がれ難い誘導プレートを得ることができる。
【0027】
また、誘導表示部材3には、蓄光剤を配合することもできる。すなわち、蓄光剤を配合することによって、災害発生時等の非常時において、停電等により周りが暗くなった場合であっても、誘導表示部材3を視認可能にすることができるため誘導表示の形状を矢印だけでなく、人の走る様子を描いたピクトグラム等、非常口の存在を示す誘導表示とすることにより、人々を非常口等に誘導することが可能となる。
なお、混合する蓄光剤の種類は特に限定されず、従来公知の蓄光剤を適用することができる。また、蓄光剤の粒径についても特に限定されないが、粒径が大きい方が蓄光性が大きくなるものの、耐磨耗性が低下するため、平均粒径は2〜60μm程度が好ましい。蓄光剤の配合割合は、合成ゴム100部に対して10〜60部が好ましいが、配合割合が多くなるとゴムとしての物性が低下する懸念があり、またコスト面も考慮すれば、30部程度がより好ましい。
【0028】
誘導表示部材3に蓄光剤を配合する場合には、ゴム自体が光を透過させる透明性を有することが好ましく、このような観点からも上記と同様にエチレンプロピレンゴムやブタジエンゴム主成分とするものを好ましく適用することができる。さらにゴムの透明性を向上させるためにはシリカを40〜80部程度混合させることができる。また、このような誘導表示部材3を加硫処理する場合には、透明性を保持する観点から硫黄加硫の場合には、加硫剤が表面に移行したり変色するため、有機過酸化物を用いて行うことが好ましい。
【0029】
また、誘導表示部材3に蓄光剤を配合する場合には、誘導表示部材3の色相を、プレート本体1の色相と同系統とすることができる。例えば、誘導表示部材3を非常口等に誘導できるように予め表示しておいても、周りが明るい状態では目立たないため、人々は平常時には誘導プレート上の誘導表示に影響を受けない。そして、停電等により周りが暗くなった場合にのみ視認可能となり、人々を誘導することができる。すなわち、本発明の誘導プレートの実施形態の好ましい一例は、図13に示すように、ビル等の床材に敷設され、災害発生時等の非常時において停電等により周りが暗くなった場合に、人々を誘導表示により、非常口等に誘導することが可能となるような、平常時には視覚障害者専用物であって、非常時に健常者との共用物となるものである。
【0030】
誘導表示部材3の表面には、プレート本体1と同一の成分を有する凸部2を形成することもできるし、誘導表示部材3と同様の成分とすることもできる。すなわち、プレート本体1の凸部2の代わりに誘導表示部材3の表面に凸部2を形成させることができるため、誘導表示部材3の形状や取付位置は、プレート本体1の凸部2を有していない部分のみに限定されず、任意の形状の誘導表示部材3を、プレート本体1上の任意の位置に取り付けることができる。すなわち、誘導表示部材3をプレート本体1に取り付ける前または取り付けた後に、凸部2を本来の誘導プレートが有する位置に形成させればよい。また、誘導表示部材3の裏面に、誘導表示部材3と同様の成分からなる凸部2を形成することもできる。誘導表示部材3の表面、及び裏面に、誘導表示部材3と同様の成分からなる凸部2を形成した場合、凸部2は、誘導表示部材3の蓄光剤と凸部2の発光量を大きくしたり、蓄光剤の組成を相違させることにより、異なる色や模様を形成することもできる。
【0031】
このような本発明に係る誘導プレートの製造方法の一例を示すと、有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体1と、予め有機過酸化物加硫した合成ゴムを主成分とする誘導表示部材3とを重ねて一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、プレート本体1の表面に誘導表示部材3を取り付けるものである。これにより、接着剤等を使用しなくても誘導表示部材をプレート本体に取り付けることができるため、接着剤の経時劣化等によって誘導表示部材が剥がれることがない。
【0032】
誘導表示部材3は、予め有機過酸化物加硫剤が配合してある合成ゴムを主成分とするものを用いて、誘導表示機能を有する任意の形状を形成させる。そして、金型に配置し、プレス成形機にて処理し、有機過酸化物加硫させる。加硫の条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間程度処理することにより、良好に加硫させることができる。また、有機過酸化物加硫剤は、1.5〜2部程度配合することが好ましい。
なお、誘導表示部材3の表面に凸部2を形成させる場合で凸部2をプレート本体と同様の成分とする場合には、誘導表示部材3と凸部2とを金型に配置し、同時に加硫処理することによって行うことができる。また、凸部2を誘導表示部材3と同様の成分とする場合には、上記と同様の方法で、予め表面に凸部2を形成した誘導表示部材3を金型に配置し、加硫処理することにより行うことができる。誘導表示部材3の裏面に誘導表示部材と同様の成分の凸部2を形成する場合にも、予め表面に凸部2を形成した誘導表示部材3を金型に配置することにより、同様にして形成することができる。
【0033】
そして、上述の通り、予め有機過酸化物加硫剤が配合してある合成ゴムを主成分とするプレート本体1を形成させ、有機過酸化物加硫した誘導表示部材3とを重ねて金型に配置し、プレス成形機にて、上記の誘導表示部材3を処理した条件と同様の条件で、好ましく加硫処理することができる。
上記では、プレート本体1として未加硫状態の合成ゴムを使用し、誘導表示部材3として加硫済みの合成ゴムを使用した場合について説明したが、上記方法としては逆に、プレート本体1として加硫済みの合成ゴムを使用し、誘導表示部材3として未加硫状態の合成ゴムを使用しても、同様にして誘導プレートを製造することもできる。
なお、誘導プレート本体1が有する凸部2は、プレート本体1及び誘導表示部材3と共に上記の加硫処理することによって、良好に形成させることができる。
【0034】
このように未加硫のゴムと加硫したゴムとを合わせて、加硫処理することにより、接着剤等を使用することなく、両者を強固に結合させることができるようになる。
以下、プレート本体1に蓄光剤を配合した誘導表示部材3を取り付けた誘導プレートを用い、輝度を測定した実施例について説明する。
【実施例1】
【0035】
有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムに蓄光剤として蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製G−300M)を、それぞれ30部、35部、40部配合した後、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図1及び2に示す凸部2を有する誘導表示部材3を作製した。そして、予め有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムを主成分とする図1及び2に示す黄色のプレート本体1と凸部2とをそれぞれ形成させ、前記誘導表示部材3と重ねて8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図1及び2に示す誘導プレートを得た。
得られた誘導プレートにおける誘導表示部材3の凸部2及び平面部について、励起停止60分後までの残光輝度の測定を行い、その結果を表1に示した。
測定方法は、JIS Z 9107(安全標識について):1998規格に準拠し、励起はD65常用光源により200lxで20分間行い、下地色を黒色、測定温度を23±2℃として行った。
なお、測定機器は、D65常用光源F65−D−A(スガ試験機株式会社製)、照度計IM−5(株式会社TOPCON製)、色彩輝度計BM−5A(株式会社TOPCON製)、ラジオグラフアナライザーNIM−1000(根本特殊化学株式会社製)を使用した。
【0036】
【表1】
【実施例2】
【0037】
実施例1で使用した誘導表示部材3のうち蓄光剤を30部配合したものを用い、プレート本体1の色を緑色にして、実施例1と同様に誘導プレートを作製し、残光輝度を測定した。その結果を表2に示した。
【0038】
【表2】
【実施例3】
【0039】
有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムに蓄光剤として蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製G−300M)を、それぞれ30部、35部、40部配合した後、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図3及び4に示す誘導表示部材3を作製した。そして、予め有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムを主成分とする図3及び4に示す黄色のプレート本体1と凸部2とをそれぞれ形成させ、前記誘導表示部材3と重ねて8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図3及び4に示す誘導プレートを得た。
得られた誘導プレートにおける誘導表示部材3について、実施例1及び2と同様に励起停止60分後までの残光輝度の測定を行い、その結果を表3に示した。
【0040】
【表3】
【実施例4】
【0041】
実施例3で使用した誘導表示部材3のうち蓄光剤を30部配合したものを用い、プレート本体1の色を緑色にして、実施例3と同様に誘導プレートを作製し、残光輝度を測定した。その結果を表4に示した。
【0042】
【表4】
【0043】
実施例1〜4より、全ての試料において、JIS Z 9107の規格値を超えた良好な結果が得られた。また、配合部数が高い試料ほど、輝度が高くなることが分かった。
【実施例5】
【0044】
有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムに蓄光剤として蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製G−300M)を、30部配合した後、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図1及び2に示す凸部2を有する誘導表示部材3を作製した。そして、予め有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムを主成分とする図1及び2に示す黄色のプレート本体1と凸部2とをそれぞれ形成させ、前記誘導表示部材3と重ねて8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図1及び2に示す誘導プレートを得た。
この誘導プレートについて、JIS Z 9107(安全標識について):1998規格に準拠して励起停止60分後までの残光輝度を測定し、その結果を表5に示した。なお、輝度測定時の測定角は45°及び90°で行った。
なお、測定機器は、輝度計LS−100(ミノルタ株式会社製)、照度計T−10(ミノルタ株式会社製)を使用した。
【実施例6】
【0045】
有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムに蓄光剤として蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製G−300M)を、それぞれ35部、40部配合した後、8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図3及び4に示す誘導表示部材3を作製した。そして、予め有機過酸化物加硫剤を1.5部配合したエチレンプロピレンゴムを主成分とする図3及び4に示す黄色のプレート本体1と凸部2とをそれぞれ形成させ、前記誘導表示部材3と重ねて8〜10MPaの圧力で、170℃、10分間処理し、図3及び4に示す誘導プレートを得た。
得られた誘導プレートにおける誘導表示部材3について、実施例5と同様に励起停止60分後までの残光輝度の測定を行い、その結果を表5に示した。
【0046】
【表5】
実施例5、6より、測定角度45°の場合も、測定角度90°の場合と同等の輝度が得られることが分かった。これにより、誘導プレートの真上からだけでなく、人が立った状体から斜め前を見下ろした角度からでも輝度を確保することができるため、暗所において、誘導プレートから離れた場所からでも誘導プレートを見つけることが可能となる。
【0047】
本発明における誘導プレートは、裏面に接着剤を塗布し、その上に剥離紙等を設けた構成としておけば、壁面へ適用する場合には、簡単に施行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る誘導プレートは、歩道、駅舎、建築物内、その他の床材や壁面に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートを示す図
【図2】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートの斜視図
【図3】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートを示す図
【図4】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートの斜視図
【図5】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図6】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートの端面図
【図7】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図8】本発明に係る警告または位置表示用の誘導プレートの端面図
【図9】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図10】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の端面図
【図11】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図12】本発明に係る直線歩行における方向指示用の誘導プレートにおける誘導表示部材の例を示す図
【図13】本発明に係る誘導プレートの使用例を示す図
【符号の説明】
【0050】
1 プレート本体
2 凸部
3 誘導表示部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凸部を有し、暗所でも使用可能な行き先誘導プレートであって、
合成ゴムを主成分とする誘導表示部材が、前記合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体の表面に取り付けてある誘導プレート。
【請求項2】
前記誘導表示部材は、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムのいずれかを主成分とする請求項1に記載の誘導プレート。
【請求項3】
前記誘導表示部材に、蓄光剤が配合してある請求項1または2に記載の誘導プレート。
【請求項4】
前記誘導表示部材の色相が、前記プレート本体の色相と同系統である請求項3に記載の誘導プレート。
【請求項5】
前記誘導表示部材の表面ないし裏面に、前記凸部の一部が形成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘導プレート。
【請求項6】
予め有機過酸化物で加硫した加硫状態の合成ゴムを主成分とする誘導表示部材と、当該合成ゴムを構成する分子構造単位を含み、有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体とを重ねて、一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、前記プレート本体の表面に前記誘導表示部材を取り付ける誘導プレートの製造方法。
【請求項7】
有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とする誘導表示部材と、当該合成ゴムを構成する分子構造単位を含み、予め有機過酸化物で加硫した加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体とを重ねて、一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、前記プレート本体の表面に前記誘導表示部材を取り付ける誘導プレートの製造方法。
【請求項1】
表面に凸部を有し、暗所でも使用可能な行き先誘導プレートであって、
合成ゴムを主成分とする誘導表示部材が、前記合成ゴムを構成する分子構造単位のうち少なくとも1種類と同一の分子構造単位を含む合成ゴムを主成分とするプレート本体の表面に取り付けてある誘導プレート。
【請求項2】
前記誘導表示部材は、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムのいずれかを主成分とする請求項1に記載の誘導プレート。
【請求項3】
前記誘導表示部材に、蓄光剤が配合してある請求項1または2に記載の誘導プレート。
【請求項4】
前記誘導表示部材の色相が、前記プレート本体の色相と同系統である請求項3に記載の誘導プレート。
【請求項5】
前記誘導表示部材の表面ないし裏面に、前記凸部の一部が形成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘導プレート。
【請求項6】
予め有機過酸化物で加硫した加硫状態の合成ゴムを主成分とする誘導表示部材と、当該合成ゴムを構成する分子構造単位を含み、有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体とを重ねて、一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、前記プレート本体の表面に前記誘導表示部材を取り付ける誘導プレートの製造方法。
【請求項7】
有機過酸化物加硫剤を配合した未加硫状態の合成ゴムを主成分とする誘導表示部材と、当該合成ゴムを構成する分子構造単位を含み、予め有機過酸化物で加硫した加硫状態の合成ゴムを主成分とするプレート本体とを重ねて、一定圧力で加熱することにより、前記未加硫状態の合成ゴムを加硫させて、前記プレート本体の表面に前記誘導表示部材を取り付ける誘導プレートの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−118203(P2006−118203A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306843(P2004−306843)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(504391606)株式会社SDS (1)
【出願人】(593030808)株式会社中央電工製作所 (1)
【出願人】(000145471)株式会社十川ゴム (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(504391606)株式会社SDS (1)
【出願人】(593030808)株式会社中央電工製作所 (1)
【出願人】(000145471)株式会社十川ゴム (28)
【Fターム(参考)】
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