誘導体化インスリンペプチドの経口投与に適した医薬組成物
本発明は、誘導体化インスリンペプチド、少なくとも1つの極性有機溶媒および少なくとも1つの親油性構成成分を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物、ならびに該医薬組成物を使用する治療方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導体化インスリンペプチド、少なくとも1つの極性有機溶媒および少なくとも1つの親油性構成成分を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物、ならびに該医薬組成物を使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、グルコースを活用する能力が、部分的または完全に喪失している代謝障害であり、この障害は、例えば、インスリンを用いて治療することができる。
【0003】
インスリンを送達するための一般的なアプローチは、侵襲性でもありかつ不都合でもある非経口投与である。したがって、タンパク質に基づいた医薬品の非侵襲性経路、例として、経口送達についての研究が増加している。しかし、インスリンペプチド等の治療用のペプチドまたはタンパク質の投与は、経口投与が好ましいが、消化(GI)管における酵素分解、薬物流出ポンプ、腸粘膜からの不十分なかつ変動する吸収等のいくつかの障壁、ならびに肝臓における初回通過代謝に起因して、非経口経路に限定されることが多い。ヒトインスリンは、胃(ペプシン)、腸管腔(キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ等)およびGI管の粘膜表面(アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、エンテロペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ等)において見出される種々の消化酵素によって分解される。
【0004】
これは、残念なことである。というのは、多くのペプチドおよび多くのタンパク質は、臨床的に有効であることが証明されており、投与が簡単であり、かつレシピエントが許容できるのであれば、これらの使用がより広まり得るであろうからである。
【0005】
経口によるタンパク質/ペプチドの送達についての最近の製剤設計は、プロテアーゼ阻害剤、浸透増強剤、ポリマーベースの送達系、およびインスリンコンジュゲートとの同時製剤を含む。
【0006】
薬物を、哺乳動物、例えば、ヒトに経口投与するための有用なビヒクルには、マイクロエマルジョンプレコンセントレート(microemulsion preconcentrate)があり、これはまた、SMEDDS(自己マイクロエマルジョン化薬物送達系(self microemulsifying drug delivery system)、またはSEDDS(自己乳化薬物送達系(self emulsifying drug delivery system))とも呼ばれている。SEDDSまたはSMEDDSは、例えば、少なくとも1つの油性成分またはその他の親油性成分、少なくとも1つの界面活性剤、場合により親水性成分、および必要に応じて、任意のその他の薬剤または賦形剤を含む。この系の構成成分が、水性媒体、例えば、水と接触すると、ほとんどまたは全く撹拌しなくても、水中油型のエマルジョンまたはマイクロエマルジョン等のマイクロエマルジョンまたはエマルジョンが自発的に形成する。マイクロエマルジョンは、2つの非混和性の液体を含む熱力学的に安定な系であり、この系においては、一方の液体が、界面活性剤の存在によって他方の液体中に微細に分かれている。形成したマイクロエマルジョンの外観は、例えば、透明もしくは半透明、やや不透明、乳白色であるか、または分散相の粒子サイズが小さいことから不透明ではないもしくは実質的に不透明ではないように見える。
【0007】
複数のシームレスミニカプセル(seamless minicapsule)を含む医薬製剤に関するWO2006/035418は、改変植物油、界面活性剤、共溶媒、胆汁酸塩、インスリンおよびロイペプチンを含むインスリンのSEDDS組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/035418
【特許文献2】WO95/07931
【特許文献3】WO2005/012347
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Handbook of Chemistry and Physics、CMC Press
【非特許文献2】Griffin WC、「Classification of Surface-Active Agents by ‘HLB’」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1(1949)、311頁
【非特許文献3】Davies JT、「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity(1957)、426〜438頁
【非特許文献4】Handbook of Pharmaceutical Excipients、Roweら編、4版、Pharmaceutical Press(2003)
【非特許文献5】GreeneおよびWuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons、1999
【非特許文献6】Hudson and Andersen、Peptide Science、76巻(4)、298〜308頁(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、経口投与のための、誘導体化インスリンを含む物理的かつ化学的に安定な医薬組成物が依然として求められている。したがって、本発明は、特に興味深い生物学的利用率の特徴、特に興味深い薬物動態学的な特徴、安定性の改善、および薬学的に許容できるカプセル剤中への充填の簡便性等の加工の改善を示す、誘導体化インスリンを含有する経口投与に特に適した組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物に関する。
【0012】
一態様では、この医薬組成物は、透明な非含水性の液体の形態をとる。
【0013】
一態様では、この医薬組成物は、透明な非含水性の液体であり、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む。
【0014】
一態様では、この医薬組成物は、少なくとも1つの界面活性剤を含み、この医薬組成物は、自発的分散性である。
【0015】
一態様では、この医薬組成物中においては、誘導体化インスリンペプチドは、アシル化インスリンペプチドである。
【0016】
また、本発明は、薬物として使用するための医薬組成物も企図する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】脂質を基剤とする医薬組成物中に製剤化した800nmol/kgのインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、すなわち、20%プロピレングリコールおよび80%Capmul MCM C8/10中に溶解させたインスリン(-□-)の、一晩絶食させた雄のWistarラットへの経口投与(4ml/kg)後の血中グルコース低下作用を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。インスリン誘導体を含有しないビヒクルを対照として投与した(-■-)。
【図2】異なる脂質を基剤とする送達系、すなわち、(-■-)30%プロピレングリコールおよび70%Capmul MCM C8、(-□-)30%プロピレングリコールおよび70%Capmul MCM C8/10、(-×-)30%プロピレングリコールおよび70%Capmul MCM C10、(-〇-)30%プロピレングリコールおよび70%Capmul PG8中に製剤化したインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=5〜6)。30%プロピレングリコールおよび70%カプリル酸プロピレングリコール(Capmul PG8)中に溶解させたこのインスリン誘導体を有する送達系が、最も高い血漿への暴露を示した。
【図3】異なる医薬組成物、すなわち、(-■-)20%プロピレングリコールおよび80%Capmul MCM C8/C10、(-□-)20%プロピレングリコール、50%Capmul MCM C8/10および30%Labrasol、(-×-)20%プロピレングリコール、50%Capmul MCM C8/C10および30%Chremophor RH40中に製剤化したインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=5〜6)。
【図4】SEDDS中のインスリン誘導体B29N(eps)-ヘキサデカンジオイル-ガンマ-L-Glu,A14E B25H desB30ヒトインスリン4800nmol/kg(-□-)、またはSEDDS中のB28Dヒトインスリン4800nmol/kg(-■-)の、一晩絶食させた雄のSPRDラットへの経口投与(4ml/kg)後の血中グルコース低下作用を示すグラフである。SEDDS組成物は、62.5%プロピレングリコール、31.25%Capmul MCM 10および6.25%ポロキサマー407中に溶解させた当該インスリンである(平均±SEM、n=6)。インスリンを含有しないビヒクルを対照として投与した(-▲-)。記載の医薬組成物中では、アシル化インスリンは、非アシル化インスリンと比較して、血中グルコース低下作用の持続を示した。
【図5】15%プロピレングリコール、55%Capmul MCMおよび30%Labrasol中に製剤化したインスリン誘導体(-▲-)A) A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-▼-)B)A14E,B16H,B25H,B29K((N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル)),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-〇-)C)A14E,B25H,B29K(N(eps)[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体(-□-)D)A14E,B16H,B25H,B29K(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。試料の調製:当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【図6】55%プロピレングリコール、35%Capmul MCMおよび10%Poloxamer 407中に製剤化したインスリン誘導体(-■-)A) A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-◇-)B)A14E,B16H,B25H,B29K((N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル)),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-×-)C)A14E,B25H,B29K(N(eps)[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体(-□-)D)A14E,B16H,B25H,B29K(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン(120nmol/kg)の、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。試料の調製:当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【図7】55%プロピレングリコール、35%Capmul MCMおよび10%Poloxamer 407中に製剤化したインスリン誘導体(-□-)A)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-◇-)B)A1N-オクタデカンジオイル-ガンマ-L-グルタミル-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルA14E B25H □B29R desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-▼-)C)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-g-Glu),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-■-)D)A14E,B25H,(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB27,desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体(-×-)E)A14E,B25H,B29K(N(eps)イコサンジオイル-gGlu),desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。試料の調製:当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【図8】絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中へ注射した、水中またはプロピレングリコール中に溶解させたインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。
【図9】異なる医薬組成物、すなわち、(-■-)15%プロピレングリコールおよび40%Labrasolおよび45%Rylo MG08 (カプリル酸グリセロール)、(-□-)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、30%Rylo MG 10(カプリン酸グリセロール)および15%カプリル酸プロピレングリコール、(-×-)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、45%Rylo MG10(カプリン酸グリセロール)、ならびに(-△-)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、30%Rylo MG08(カプリル酸グリセロール)、15%カプリル酸プロピレングリコール中に製剤化したインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=5〜6)。試料の調製:当該インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【図10】雄のビーグル犬(体重17kg)における、15%プロピレングリコール、40%Labrasolおよび45%Capmul MCM(カプリル酸/カプリン酸グリセロール)を用いて製剤化した、180nmol/kgのインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)を含有する腸溶性HPMCカプセル剤の経口投与後の血中グルコース低下作用を示すグラフである。
【図11】雄のビーグル犬(体重17kg)における、インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの24時間の血漿への暴露プロファイル(pMで示す)を示すグラフである。これは、15%プロピレングリコール、40%Labrasolおよび45%Rylo MG08 Pharma(カプリル酸グリセロール)中に溶解させた30nmol/kgのこのインスリン誘導体を含有する腸溶性の軟ゼラチンカプセル剤の経口投与後のプロファイルである。軟ゼラチンカプセル剤は、Eudragit L 30 D-55を用いてコーティングされていた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、ならびに場合により界面活性剤(d)および/または少なくとも1つの固体の親水性構成成分(e)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物に関する。
【0019】
本発明による医薬組成物を使用して、誘導体化インスリンペプチド、極性有機溶媒、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または固体の親水性構成成分を含む、経口投与に特に適した非含水性組成物を得ることができることが見出されるに至った。
【0020】
したがって、驚くべきことに、本発明による医薬組成物は、経口投与された該誘導体化インスリンペプチドの取込みの有効性を増強し、かつ作用プロファイルも維持されることが見出されるに至った。
【0021】
また、本発明による組成物中の誘導体化インスリンペプチドは、良好な安定性を有することも見出されるに至った。
【0022】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの固体の親水性構成成分(d)を含む医薬組成物に関し、該医薬組成物は、油性溶液の形態をとる。
【0023】
別の態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および少なくとも1つの固体の親水性構成成分(d)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物に関し、該医薬組成物は、油性溶液の形態をとる。さらに別の態様では、この少なくとも1つの固体の親水性構成成分(d)は、少なくとも1つの固体の親水性ポリマーである。さらに別の態様では、少なくとも1つの固体の親水性構成成分を含むこの医薬組成物は、界面活性剤を含有せず、該界面活性剤は、少なくとも8であるHLB値を有する。すなわち、一態様では、この組成物中には、少なくとも8であるHLB値を有する界面活性剤は存在しない。
【0024】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、少なくとも1つの界面活性剤(d)、および場合により少なくとも1つの固体の親水性構成成分(e)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物に関し、該医薬組成物は、自発的分散性である。
【0025】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物に関し、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとる。
【0026】
この非含水性の液体医薬組成物が、透明な溶液の形態をとる場合、この組成物は、その物理的安定性が改善されているというさらなる利点を有する。本発明の一態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については6週間超安定であり、保管については3年超安定である。
【0027】
本発明の別の態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については4週間超安定であり、保管については3年超安定である。
【0028】
本発明のさらなる態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については4週間超安定であり、保管については2年超安定である。
【0029】
本発明のその上さらなる態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については2週間超安定であり、保管については2年超安定である。
【0030】
本発明のその上さらなる態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については1週間超安定であり、保管については1年超安定である。
【0031】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物に関し、この医薬組成物は、透明な油性溶液の形態をとる。
【0032】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)を含む非含水性の液体医薬組成物に関し、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとる。
【0033】
本発明の一態様では、全ての構成成分が、液体または溶解状態の固体として存在する。したがって、誘導体化インスリンペプチドは、前記の態様では、少なくとも1つの極性有機溶媒中に溶解させることができる。
【0034】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物に関し、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、該医薬組成物は、自発的分散性である。
【0035】
一態様では、本発明による医薬組成物は、非含水性の油性溶液の医薬組成物および/またはSEDDSもしくはSMEDDSの医薬組成物である。
【0036】
本発明によるSEDDSおよびSMEDDSの医薬組成物は、このインスリン誘導体の腸吸収を増強し、このインスリン誘導体の酵素分解を低下させる追加の利点も有する。
【0037】
一態様では、本発明による医薬組成物は、自己乳化薬物送達系(SEDDS)である。したがって、本発明者は、本発明によるSEDDSによって、例えば、皮下においてしばしば使用される水溶液および/または脂質を含有しない極性溶媒の溶液等の伝統的な医薬組成物と比較して経口生物学的利用率が改善されていることを見出すに至った。
【0038】
誘導体化インスリンペプチドは、本発明によるこの医薬組成物の薬学的に許容できる極性有機溶媒中の水溶性が高いことが見出されるに至った。したがって前記医薬組成物中の必要な極性有機溶媒の量は、比較的少ない。このことによって、本発明による医薬組成物の、カプセル剤の材料との適合性が改善され得る。
【0039】
また、本発明は、親油性構成成分、界面活性剤および極性有機溶媒、ならびに場合により固体の親水性構成成分(e)を含む担体中に誘導体化インスリンペプチドを含む医薬組成物にも関する。固体の親水性構成成分が存在する態様では、親油性構成成分および界面活性剤からなる群から選択される構成成分のうちの少なくとも1つが、液体または半固体である。液体の親水性構成成分(e)が存在する態様では、親油性構成成分および界面活性剤の両方が固体であり得る。一態様では、この界面活性剤は、液体または半固体である。一態様では、固体の親水性構成成分が存在する。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「担体」は、治療上活性な水溶性の誘導体化インスリンペプチドを生物学的な膜を越えてまたは体液内で輸送する薬学的に許容できるビヒクルを指す。本発明の担体は、親油性構成成分および極性有機溶媒、ならびに場合により固体の親水性構成成分および/または界面活性剤を含む。一態様では、この担体は、親油性構成成分および極性有機溶媒、ならびに場合により界面活性剤を含む。一態様では、この担体は、親油性構成成分、極性有機溶媒および界面活性剤を含む。本発明の担体を、水性媒体、例えば、水、水を含有する流体、または消化管の胃液等、哺乳動物のin vivo媒体と接触させる、またはこうした水性媒体を用いて分散させるもしくは希釈すると、この担体は、エマルジョン構造またはコロイド構造を自発的に生成することができる。このコロイド構造は、固体であってもよく、またはドメイン、液滴、ミセル、混合ミセル、ベシクルおよびナノ粒子を含めた、液体粒子であってもよい。
【0041】
一態様では、この医薬組成物を水性媒体と接触させると、マイクロエマルジョン等のエマルジョンが自発的に形成する。特に、本発明の送達系が経口摂取されると、エマルジョンまたはマイクロエマルジョンが哺乳動物の消化管中で形成される。また、上記の構成成分に加えて、この自発的分散性プレコンセントレートは、緩衝剤、pH調節剤、安定化剤等のその他の賦形剤、およびそのような薬学的用途に適切であると当業者が認識するその他のアジュバントを場合により含有してもよい。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「非含水性の」は、医薬組成物の調製の間に水を添加しない組成物を指す。この医薬組成物中の誘導体化インスリンペプチドおよび/または賦形剤のうちの1つもしくは複数が、本発明による医薬組成物を調製する前からそうしたペプチドおよび/または賦形剤に結合している少量の水を有する場合がある。一態様では、本発明による非含水性の医薬組成物は、10%w/w未満の水を含む。別の態様では、本発明による組成物は、5%w/w未満の水を含む。本発明による組成物は、別の態様では、4%w/w未満の水を含み、別の態様では、3%w/w未満の水を含み、別の態様では、2%w/w未満の水を含み、さらに別の態様では、1%w/w未満の水を含む。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「マイクロエマルジョンプレコンセントレート」は、水性媒体、例えば、水または経口適用後の消化液中で、マイクロエマルジョン、例えば、水中油型マイクロエマルジョンを自発的に形成する組成物を意味する。この組成物は、水性媒体中で、例えば、1:5、1:10、1:50または1:100以上の希釈度で希釈されると自己乳化する。
【0044】
極性有機溶媒中の誘導体化インスリンペプチドの高い溶解性に起因して、SEDDS中の極性有機溶媒の総量を低く保つことができ、このことによって、一方では、この製剤の、カプセル剤の材料との適合性が改善され、他方では、この組成物により大きな設計空間が与えられる。
【0045】
本発明による医薬組成物は、親油性構成成分および有機極性構成成分を含む。この薬物送達系の構成成分は、任意の相対量で存在し得る。一態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の重量に関して最大50%の極性有機構成成分を含む。すなわち、その担体の重量の最大50%が、極性有機構成成分からなる。一態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の重量に関して40%未満、30%未満、20%未満、15%未満または10%未満の極性有機構成成分を含む。さらなる態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の総重量に関して5%〜40%の極性有機溶媒を含む。その上さらなる態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の総重量に関して10%〜30%の極性有機溶媒を含む。一態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の総重量に関して10%〜15%の極性有機溶媒を含む。さらなる態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の総重量に関して約15%の極性有機溶媒を含む。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「約(about)」は、±10%等、規定された数値の合理的な付近の値を含有することを意味する。
【0047】
本発明による医薬組成物は、散剤ではない組成物の形態、すなわち、半固体または液体の形態をとる。
【0048】
一態様では、本発明による医薬組成物は、液体の形態をとる。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「液体」は、室温(「RT」)で液体の状態をとり、例えば、20℃未満の融点を有する構成成分または組成物を意味する。本明細書で使用する場合、室温(RT)は、およそ20〜25℃を意味する。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「半固体」は、室温で液体ではなく、例えば、室温と約40℃との間の融点を有する構成成分または組成物に関する。半固体は、物質の固体および液体の両方の状態の性質および/または属性を有し得る。本明細書で使用する場合、用語「凝固させる」は、固体または半固体を作製することを意味する。
【0051】
本発明による半固体または液体の組成物の例は、例えば、油、溶液、液体または半固体のSMEDDS、および液体または半固体のSEDDSの形態をとる医薬組成物である。
【0052】
本明細書では、「SMEDDS」(自己マイクロエマルジョン化薬物送達系)を、穏やかな撹拌またはGl管中で遭遇するであろう消化運動の条件下で水性媒体に曝されると水中油型マイクロエマルジョンを迅速に形成する、親水性構成成分、界面活性剤、場合により補助界面活性剤、および薬物の等方性混合物と定義する。
【0053】
本明細書では、「SEDDS」(自己乳化薬物送達系)を、穏やかな撹拌またはGl管中で遭遇するであろう消化運動の条件下で水性媒体に曝されると微細な水中油型エマルジョンを自発的に形成する、親水性構成成分、界面活性剤、場合により補助界面活性剤、および薬物の混合物と定義する。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「マイクロエマルジョン」は、その構成成分を水性媒体と接触させると自発的にまたは実質的に自発的に形成される、透明なまたは半透明な、やや不透明な、乳白色の、不透明ではないまたは実質的に不透明ではないコロイド状分散剤を指す。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「エマルジョン」は、その構成成分を水性媒体と接触させると自発的にまたは実質的に自発的に形成される、やや不透明な、乳白色の、または不透明なコロイド状分散剤を指す。
【0056】
マイクロエマルジョンは、熱力学的に安定であり、例えば、固体または液体の状態(例えば、液体の脂質の粒子または液滴)の均質に分散している粒子またはドメインを含有し、これらの粒子またはドメインの平均直径は、標準的な光散乱の技法により、例えば、MALVERN ZETASIZER Nano ZSを使用して測定した場合、約500nm未満、例えば、約400nm未満、または300nm未満、200nm未満、100nm未満であり、約2〜4nm超である。本明細書で使用する場合、用語「ドメインサイズ」は、反復散乱単位(repetitive scattering unit)を指し、例えば、小角X線によって測定することができる。本発明の一態様では、このドメインサイズは、400nmより小さく、別の態様では、300nmより小さく、さらに別の態様では、200nmより小さい。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「自発的分散性」は、プレコンセントレートを指す場合には、本発明の組成物の構成成分を水性媒体と、例えば、単に短期間、例えば、10秒間手で振とうすることによって接触させると、水性媒体で希釈されて、マイクロエマルジョン、エマルジョン、およびその他のコロイド状の系等のコロイド構造を生成することができる組成物を指す。一態様では、本発明による自発的分散性コンセントレートは、SEDDSまたはSMEDDSである。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「親油性構成成分」は、水よりも油に適合する物質、材料または成分を指す。親油性を有する材料は、水に不溶性であるかまたはほとんど不溶性であるが、油またはその他の非極性溶媒には容易に溶解する。用語「親油性構成成分」は、1つまたは複数の親油性物質を含むことができる。複数の親油性構成成分が、この自発的分散性プレコンセントレートの親油性相を構成し、例えば、水中油型のエマルジョンまたはマイクロエマルジョン中の油性の局面を形成することができる。室温では、この自発的分散性プレコンセントレートの親油性構成成分および親油性相は、固体、半固体または液体であり得る。例えば、固体の親油性構成成分が、ペースト、顆粒形態、粉末またはフレークとして存在することができる。2つ以上の賦形剤が親油性構成成分をなす場合には、この親油性構成成分は、液体混合物、固体混合物、または液体と固体の混合物であり得る。
【0059】
本発明の一態様では、この親油性構成成分は、この医薬組成物中に、その担体組成物の少なくとも20%w/wの量で存在する。すなわち、その担体の重量の少なくとも20%が、親油性構成成分からなる。本発明のさらなる態様では、この親油性構成成分は、少なくとも30%w/w、少なくとも50%w/w、少なくとも80%w/w、または少なくとも90%w/wの量で存在する。例えば、この親油性構成成分は、その担体の重量に関して、約5%〜約90%、例えば、約15%〜約60%、例えば、約20%〜約60%、例えば、約20%〜約40%の量で存在することができる。本発明の一態様では、この親油性構成成分は、45%〜55%の量で存在する。本発明の一態様では、この親油性構成成分は、約45%の量で存在する。
【0060】
固体の親油性構成成分、すなわち、室温で固体または半固体である親油性構成成分の例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
1.モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの混合物、例として、WITEPSOL HI5として、Sasol Germany(Witten、ドイツ)から市販されている水素添加ココ-グリセリド(約33.5℃〜約37℃の融点(m.p.));脂肪酸トリグリセリド、例えば、C10〜C22脂肪酸トリグリセリドの例として、植物油等の天然の油および水素添加した油が挙げられ;
2.エステル、例として、MONOSTEOL(約33℃〜約36℃のm.p.)として、Gattefosse Corp.(Paramus、NJ)から市販されているステアリン酸プロピレングリコール(PG);HYDRINE(約44.5℃〜約48.5℃のm.p.)として、Gattefosse Corp.から市販されているパルミトステアリン酸ジエチレングリコール;
3.ポリグリコシル化飽和グリセリド、例として、LABRAFIL M2130 CSとして、Gattefosse Corpから、またはGelucire 33/01として市販されている水素添加パーム/パーム核油PEG-6エステル(約30.5℃〜約38℃のm.p.);
4.脂肪アルコール、例として、LANETTE 14として、Cognis Corp.(Cincinnati、OH)から市販されているミリスチルアルコール(約39℃のm.p.);脂肪酸と脂肪アルコールとのエステル、例えば、パルミチン酸セチル(約50℃のm.p.);例えば、商品名ARLAMOL ISMLの下、Uniqema(New Castle、Delaware)から市販されている、例えば、約43℃の融点を有するモノラウリン酸イソソルビド;
5.PEG-脂肪アルコールエーテル、例として、例えば、BRIJ 52として、Uniqemaから市販されている、約33℃の融点を有するポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、または例えば、BRIJ 72として、Uniqemaから市販されている、約43℃の融点を有するポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル;
6.ソルビタンエステル、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、モノパルミチン酸ソルビタンまたはモノステアリン酸ソルビタン、例えば、SPAN 40またはSPAN 60としてUniqemaから市販されている、それぞれ、約43℃〜48℃または約53℃〜57℃、および41℃〜54℃の融点を有するモノパルミチン酸ソルビタンまたはモノステアリン酸ソルビタン;ならびに
7.モノ-C6〜C14-脂肪酸グルセリルエステル。これらのエステルは、グリセロールを、植物油を用いてエステル化し、それに続いて、分子蒸留することによって得られる。モノグリセリドとして、これらに限定されないが、対称性モノグリセリド(すなわち、β-モノグリセリド)および非対称性モノグリセリド(α-モノグリセリド)の両方が挙げられる。また、モノグリセリドは、一様なグリセリド(その中では、脂肪酸構成要素が、単一の脂肪酸から主として構成される)も、混合性のグリセリド(すなわち、その中では、脂肪酸構成要素が、種々の脂肪酸から構成される)も含む。この脂肪酸構成要素は、鎖長が、例えば、C8〜C14である飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の両方を含むことができる。特に適しているのは、例えば、IMWITOR 312として、Sasol North America(Houston、TX)から市販されているモノラウリン酸グリセリル(約56℃〜60℃のm.p.);IMWITOR 928として、Sasolから市販されているグリセリルモノジココエート(約33℃〜37℃のm.p.);IMWITOR 370として市販されているクエン酸モノグリセリル(約59〜約63℃のm.p.);もしくは例えば、IMWITOR 900として、Sasolから市販されているモノステアリン酸グリセリル(約56℃〜61℃のm.p.);または例えば、IMWITOR 960として、Sasolから市販されている自己乳化モノステアリン酸グリセロール(約56℃〜61℃のm.p.)である。
【0061】
液体および半固体の親油性構成成分、すなわち、室温で液体である親油性構成成分の例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
1.モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、例として、中鎖のモノグリセリドおよびジグリセリドの混合物、CAPMUL MCMとして、Abitec Corp.(Columbus、OH)から市販されているカプリル酸/カプリン酸グリセリル;
2.例えば、C6〜C18、例えば、C6〜C16、例えば、C8〜C10、例えば、C8の脂肪酸モノ脂肪酸グリセリルエステルもしくはジ脂肪酸グリセリルエステル、またはそれらのアセチル化誘導体、例えば、Eastman Chemicals(Kingsport、TN)製のMYVACET 9-45もしくは9-08、またはSasol製のIMWITOR 308もしくは312;モノカプリル酸グリセロール(Danisco製のRylo MG08 Pharma等)、またはモノカプリン酸グリセロール(Danisco製のRylo MG10 Pharma等);
3.例えば、C8〜C20、例えば、C8〜C12の脂肪酸のモノ-またはジ-脂肪酸プロピレングリコールエステル、例えば、LAUROGLYCOL 90、SEFSOL 218、またはCAPRYOL 90、またはAbitec Corp.製のCAPMUL PG-8(カプリル酸プロピレングリコールと同じ);
4.油、例として、紅花油、ゴマ油、扁桃油、落花生油、パーム油、小麦胚種油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ヤシ油、綿実油、大豆油、オリーブ油、および鉱油;
5.例えば、C8〜C20の飽和またはモノ-もしくはジ-不飽和の脂肪酸またはアルコール、例えば、オレイン酸、オレイルアルコール、リノール酸、カプリン酸、カプリル酸、カプロン酸、テトラデカノール、ドデカノール、デカノール;
6.例えば、C8〜C12の中鎖脂肪酸トリグリセリド、例えば、MIGLYOL 812、または長鎖脂肪酸トリグリセリド、例えば、植物油;
7.トランスエステル化エトキシル化植物油、例えば、LABRAFIL M2125 CSとして、Gattefosse Corpから市販されている植物油;
8.脂肪酸と第一級アルコールとの、例えば、C8〜C20脂肪酸とC2〜C3アルコールとのエステル化化合物、例えば、リノール酸エチル、例えば、NIKKOL VF-EとしてNikko Chemicals(東京、日本)から市販されているリノール酸エチル、酪酸エチル、カプリル酸エチルオレイン酸(ethyl caprylate oleic acid)、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、およびカプリル酸エチル;
9.必須油、またはスペアミント油、丁子油、レモン油およびハッカ油等の植物に特徴的な香りを与える揮発油のクラスのいずれか;
10.必須油の画分または構成要素、例として、メントール、カルバクロールおよびチモール;
11.合成油、例として、トリアセチン、トリブチリン;
12.クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル;
13.脂肪酸ポリグリセロールエステル、例えば、モノオレイン酸ジグリセリル、例えば、Nikko Chemicals製のDGMO-C、DGMO-90、DGDO;ならびに
14.ソルビタンエステル、例えば、脂肪酸ソルビタンエステル、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、例えば、SPAN 20として、Uniqemaから市販されているモノラウリン酸ソルビタン。
15.リン脂質、例えば、アルキル-O-リン脂質、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジ-O-アルキルホスファチジン酸、L-アルファ-リゾホスファチジルコリン(LPC)、L-アルファ-リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、L-アルファ-リゾホスファチジルグリセロール(LPG)、L-アルファ-リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、L-アルファ-ホスファチジン酸(PA)、L-アルファ-ホスファチジルコリン(PC)、L-アルファ-ホスファチジルエタノールアミン(PE)、L-アルファ-ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、L-アルファ-ホスファチジルイノシトール(PI)、L-アルファ-ホスファチジルセリン(PS)、リゾ-ホスファチジルコリン、リゾ-ホスファチジルグリセロール、LARODANから市販されているsn-グリセロホスホリルコリン、またはLipoid GmbHから市販されている大豆リン脂質(Lipoid S100)。
【0062】
本発明の一態様では、この親油性構成成分は、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドからなる群から選択される1つまたは複数である。さらなる態様では、この親油性構成成分は、モノグリセリドおよびジグリセリドからなる群から選択される1つまたは複数である。その上さらなる態様では、この親油性構成成分は、Capmul MCMまたはCapmul PG-8である。その上さらなる態様では、この親油性構成成分は、Capmul PG-8である。さらに別の態様では、この親油性構成成分は、モノカプリル酸グリセロール(例えば、Danisco製のRylo MG08 Pharma)である。
【0063】
用語「極性有機溶媒」は、本明細書の一態様では、O-H結合もしくはN-H結合を含有する、親水性、水混和性の炭素含有溶媒である「極性のプロトン性有機溶媒」、またはそれらの混合物を指す。極性は、溶媒の比誘電率または双極子モーメントに反映される。溶媒の極性によって、その溶媒がどの種類の化合物を溶解させることができるか、およびその溶媒がどのその他の溶媒または液体化合物と混和するかが決定される。典型的には、極性有機溶媒は、極性化合物を最も良好に溶解させ、非極性溶媒は、非極性化合物を最も良好に溶解させる。すなわち、「似たものどうしはよく溶ける(like dissolves like)」。無機塩(例えば、塩化ナトリウム)のような極性の高い化合物は、極性の強い溶媒中にしか溶解しない。
【0064】
本発明の極性有機溶媒を、溶媒から選択することができ、誘導体化インスリンペプチドが、前記極性有機溶媒中では、その他の溶媒中よりも良好な溶解性を示す。
【0065】
アシル化インスリンペプチド等の誘導体化インスリンペプチドを、プロピレングリコール、グリセロールおよびPEG200等の非含水性の薬学的に許容できる極性有機溶媒中に多量に溶解させることができることもさらに見出されるに至った。一態様では、少なくとも20%(w/w)の誘導体化インスリンペプチドが、本発明による非含水性の薬学的に許容できる極性有機溶媒中に溶解する。すなわち、20%w/wの誘導体化インスリンペプチドをこの極性有機溶媒に添加すると、透明な溶液が得られる。別の態様では、少なくとも25%、30%、40%または50%(w/w)の誘導体化インスリンペプチドが、本発明による非含水性の薬学的に許容できる極性有機溶媒中に溶解する。
【0066】
したがって、この極性有機溶媒は、O-H結合もしくはN-H結合を含有する、親水性、水混和性の炭素含有溶媒、またはそれらの混合物を指すことができる。極性は、溶媒の比誘電率または双極子モーメントに反映される。溶媒の極性によって、その溶媒がどの種類の化合物を溶解させることができるか、およびその溶媒がどのその他の溶媒または液体化合物と混和するかが決定される。典型的には、極性溶媒は、極性化合物を最も良好に溶解させ、非極性溶媒は、非極性化合物を最も良好に溶解させる。すなわち、「似たものどうしはよく溶ける」。無機塩(例えば、塩化ナトリウム)のような極性の高い化合物は、極性の強い溶媒中にしか溶解しない。
【0067】
本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、20超、好ましくは、20〜50の範囲の比誘電率を有する溶媒である。Table 1(表1)に、異なる極性有機溶媒の例を、参照としての水と一緒に列挙する。
【0068】
Table 1(表1). 選択された極性有機溶媒および参照としての水の比誘電率(静電誘電率)(Handbook of Chemistry and Physics、CMC Press、比誘電率は、緩和が発生しない静電場または比較的低い周波数において測定される)。
【0069】
【表1】
【0070】
現在の状況では、1,2-プロパンジオールとプロピレングリコールとを互換的に使用する。現在の状況では、プロパントリオールとグリセロールとを互換的に使用する。現在の状況では、エタンジオールとエチレングリコールとを互換的に使用する。
【0071】
本発明の一態様では、この極性有機溶媒は、ポリオールからなる群から選択される。本明細書で使用する場合、用語「ポリオール」は、複数のヒドロキシル基を含有する化合物を指す。
【0072】
本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、ジオールおよびトリオールからなる群から選択される。本明細書で使用する場合、用語「ジオール」は、2つのヒドロキシル基を含有する化合物を指す。本明細書で使用する場合、用語「トリオール」は、3つのヒドロキシル基を含有する化合物を指す。
【0073】
本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、グリセロール(プロパントリオール)、エタンジオール(エチレングリコール)、1,3-プロパンジオール、メタノール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、エタノールおよびイソプロパノール、またはそれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される。本発明の別の態様では、この極性有機溶媒はグリセロールである。この極性有機溶媒は、高い投与量においてさえ生体適合性であり、高い溶媒としての能力(solvent capacity)を、例えば、インスリンペプチドおよびGLP-1化合物について有する。本発明の別の態様では、この極性有機溶媒は、プロピレングリコールおよびエチレングリコールからなる群から選択される。これらの極性有機溶媒は、低い粘度を有し、中等度の用量においては生体適合性であり、非常に高い極性有機溶媒としての能力を、例えば、インスリンペプチドおよびGLP-1化合物について有する。本発明の別の態様では、この極性有機溶媒はプロピレングリコールである。
【0074】
この極性有機溶媒は、この可溶化された誘導体化インスリンペプチドの、例えば、メイラード反応による化学的劣化を最小限に留めるために、好ましくは、純度が高く、例えば、アルデヒド、ケトンおよびその他の還元性不純物の含有量は低くあるべきである。グリシルグリシンおよびエチレンジアミンのような捕捉分子を、ポリオール等の極性有機溶媒を含む製剤に添加して、誘導体化インスリンペプチドの劣化を低下させることができ、一方、抗酸化剤を添加して、さらなる還元性不純物の形成速度を低下させることもできる。
【0075】
本発明の一態様では、この極性有機溶媒は、この医薬組成物中に、その担体組成物の重量に関して1〜50%w/wの量で存在する。すなわち、その担体の重量の1%〜50%が、極性有機構成成分からなる。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、5〜40%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、5〜30%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この有機極性溶媒は、10〜30%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、10〜25%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、10〜15%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、約20%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、約15%w/wの量で存在する。
【0076】
本発明の一態様では、この極性有機溶媒は、プロピレングリコールであり、この医薬組成物の担体中に、1〜50%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、5〜40%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、10〜30%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、10〜25%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、10〜20%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、10〜15%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、約20%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、約15%w/wの量で存在する。
【0077】
本発明の一態様では、この極性有機溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。さらなる態様では、この極性有機溶媒はグリセロールである。さらなる態様では、この極性有機溶媒は、グリセロールとプロピレングリコールとの混合物である。その上さらなる態様では、この極性有機溶媒はプロピレングリコールである。
【0078】
この医薬組成物を、室温で固体または半固体にするためまたはそうするのを支援するために、固体の親水性構成成分を、この医薬組成物に添加することができる。この親水性構成成分は、2つ以上の賦形剤を含むことができる。2つ以上の賦形剤が親水性構成成分をなす場合には、この親水性構成成分は、液体混合物、固体混合物、または液体と固体の混合物であり得る。
【0079】
固体の親水性構成成分が存在する場合、この医薬組成物の担体は、重量に関して、約1%〜約25%、例えば、約2%〜約20%、例えば、約3%〜約15%、例えば、約4%〜約10%の固体の親水性構成成分を含むことができる。
【0080】
親水性構成成分の例はPEGであり、PEGは、一般に、式H(OCH2CH2)n0Hに従うエチレンオキシドのポリマーであり、式中、nは、このポリマーの平均分子量と相関する。
【0081】
本発明に有用なPEGの種類を、その物質の状態、すなわち、この物質が室内の温度および圧力で固体または液体の形態で存在するかどうかによってカテゴリーに分けることができる。本明細書で使用する場合、「固体のPEG」は、この物質が室内の温度および圧力で固体の状態をとるような分子量を有するPEGを指す。例えば、1,000と10,000との間の範囲の分子量を有するPEGは、固体のPEGである。そのようなPEGとして、これらに限定されないが、PEG 1000、PEG 1550、PEG 2000、PEG 3000、PEG 3350、PEG 4000またはPEG 8000が挙げられる。特に有用な固体のPEGは、1,450と8,000との間の分子量を有するPEGである。固体のPEGとしてとりわけ有用なPEGは、PEG 1450、PEG 3350、PEG 4000、PEG 8000、それらの誘導体、およびそれらの混合物である。種々の分子量のPEGが、CARBOWAX SENTRYシリーズとして、Dow Chemicals(Danbury、CT)から市販されている。さらに、固体のPEGは、結晶構造またはポリマーマトリックスを有し、このことは、本発明においては、特に有用な属性である。また、鎖長および末端基以外はPEGと同一の構造を有するポリエチレンオキシド(「PEO」)も、本発明において使用するのに適している。種々のグレードのPEOが、POLYOXとして、Dow Chemicalsから市販されている。PEOは、例えば、約100,000〜7,000,000の範囲の分子量を有する。本発明の親水性構成成分は、PEG、PEOおよび前述したものの任意の組合せを含むことができる。
【0082】
本発明の親水性構成成分は、場合により、低級アルカノール、例えば、エタノールを含んでもよい。エタノールの使用は必須ではないが、エタノールの使用によって、担体中の誘導体化インスリンペプチドの溶解性が改善する場合、保存性が改善する場合、および/または薬物沈殿のリスクが低下する場合がある。
【0083】
代替の例示的な態様では、この担体の親水性構成成分が、単一の親水性構成成分、例えば、固体のPEG、例えば、PEG 1450、PEG 3350、PEG 4000およびPEG 8000からなる。この例示的な態様では、このマイクロエマルジョン構成成分の親水性相は、単一の親水性物質からなる。例えば、担体がPEG 3350を含む場合、この担体は、その他の親水性物質、例えば、エタノール等の低級アルカノール(低級アルキルはC1〜C4である)も、水も含有しない。
【0084】
さらに別の代替の例示的な態様では、この担体の親水性構成成分は、固体のPEGの混合物からなる。例えば、この親水性構成成分は、PEG 1450、PEG 3350、PEG 4000、PEG 8000、それらの誘導体、ならびにそれらの任意の組合せおよび混合物を含む。
【0085】
一態様では、この担体は、1つまたは複数の界面活性剤、すなわち、場合により、界面張力を低下させる界面活性剤または表面活性剤の混合物を含む。この界面活性剤は、例えば、非イオン性、イオン性または両性である。界面活性剤は、その界面活性剤の調製に関与する副産物または未反応の開始物質を含有する複合混合物である場合があり、例えば、ポリオキシエチル化により作製された界面活性剤は、もう1つの副産物、例えば、PEGを含有する場合がある。本発明による1つまたは複数の界面活性剤は、少なくとも8である親水性親油性バランス(HLB)値を有する。例えば、この界面活性剤は、8〜30、例えば、12〜30、12〜20または13〜15の平均HLB値を有し得る。この界面活性剤は本来、液体であっても、半固体であっても、または固体であってもよい。
【0086】
界面活性剤の親水性親油性バランス(HLB)は、その界面活性剤が親水性または親油性である程度の尺度であり、HLBは、Griffin(Griffin WC、「Classification of Surface-Active Agents by ‘HLB’」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1(1949)、311頁)またはDavies(Davies JT、「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity(1957)、426〜438頁)の記載に従って、その分子の異なる領域についての値を計算することによって決定される。
【0087】
本明細書で使用する場合、用語「界面活性剤」は、任意の物質、特に、液体対空気、液体対液体、液体対容器、または液体対任意の固体のような表面および界面において吸着することができる洗剤を指す。この界面活性剤は、洗剤、例として、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(Gattefosse製のLabrasol等)、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール分解化(polyglycolyzed)グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート-20等のポリソルベート、ポロキサマー188およびポロキサマー407等のポロキサマー、脂肪酸ポリ-オキシエチレンソルビタンエステル、アルキル化誘導体およびアルコキシル化誘導体等のポリオキシエチレン誘導体(ツイーン、例えば、ツイーン-20もしくはツイーン-80)、モノグリセリドまたはそれらのエトキシル化誘導体、ジグリセリドまたはそれらのポリオキシエチレン誘導体、グリセロール、コール酸またはその誘導体、レシチン、アルコール、ならびにリン脂質、グリセロリン脂質(レシチン、セファリン、ホスファチジルセリン)、グリセロ糖脂質(ガラクトピラノシド)、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)およびスフィンゴ糖脂質(セラミド、ガングリオシド)、DSS(ドクサートナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドクサートカルシウム(CAS登録番号[128-49-4])、ドクサートカリウム(CAS登録番号[7491-09-0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム)、ホスファチジン酸ジパルミトイル、カプリル酸ナトリウム、胆汁酸ならびにその塩およびグリシンコンジュゲートまたはタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパン-スルホン酸、アニオン性(アルキル-アリール-スルホン酸塩)の一価の界面活性剤、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン、リゾリン脂質(例えば、エタノールアミン、コリン、セリンもしくはスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)、リゾホスファチジルコリンおよびホスファチジルコリンのアルキル誘導体、アルコキシル(アルキルエステル)誘導体、アルコキシ(アルキルエーテル)誘導体、例えば、リゾ-ホスファチジルコリンおよびジパルミトイルホスファチジルコリンのラウロイル誘導体およびミリストイル誘導体、さらに、コリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトールならびに正に帯電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルスレオニンである極性頭部基の改変形態、双性イオン界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホン酸、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホン酸、ドデシル-リン酸コリン、ミリストイルリゾホスファチジルコリン、鶏卵リゾレシチン)、カチオン性界面活性剤(四級アンモニウム塩)(例えば、臭化セチル-トリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、非イオン性界面活性剤(例えば、ドデシルβ-D-グルコピラノシド、ドデシルβ-D-マルトシド、テトラデシルβ-D-グルコピラノシド、デシルβ-D-マルトシド、ドデシルβ-D-マルトシド、テトラデシルβ-D-マルトシド、ヘキサデシルβ-D-マルトシド、デシルβ-D-マルトトリオシド、ドデシルβ-D-マルトトリオシド、テトラデシルβ-D-マルトトリオシド、ヘキサデシルβ-D-マルトトリオシド、n-ドデシル-スクロース、n-デシル-スクロースのようなアルキルグルコシド)、脂肪アルコールエトキシレート(例えば、オクタエチレングリコールモノトリデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノテトラデシルエーテルのようなポリオキシエチレンアルキルエーテル)、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーとしてのブロックコポリマー(Pluronics/Tetronics、Triton X-100)、エトキシル化ソルビタンアルカノエート界面活性剤(例えば、ツイーン-40、ツイーン-80、Brij-35)、フシジン酸誘導体(例えば、タウロ-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウム等)、C8〜C20の長鎖脂肪酸およびそれらの塩(例えば、オレイン酸およびカプリル酸)、アシルカルニチンおよび誘導体、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンのN-アシル化誘導体、またはリシンもしくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リシン、アルギニンまたはヒスチジンと中性アミノ酸または酸性アミノ酸との任意の組合せを含むジペプチドのN-アシル化誘導体、中性アミノ酸と2つの帯電したアミノ酸との任意の組合せを含むトリペプチドのN-アシル化誘導体から選択することができる。あるいは、この界面活性剤は、イミダゾリン誘導体またはそれらの混合物からなる群から選択してもよい。
【0088】
固体の界面活性剤の例として、これらに限定されないが、
1.天然のヒマシ油または水素添加したヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物。天然のヒマシ油または水素添加したヒマシ油を、エチレンオキシドと約1:35〜約1:60のモル比で反応させ、場合により、この生成物からこのPEG構成成分を取り出すことができる。種々のそのような界面活性剤、例えば、BASF Corp.(Mt. Olive、NJ)製のCREMOPHORシリーズ、例として、PEG40水素添加ヒマシ油であり、約50〜60のけん化価、約1未満の酸価、約2%未満の水分含有量、すなわち、フィッシャー法による水分含有量、約1.453〜1.457のnD60、および約14〜16のHLBを有するCREMOPHOR RH 40が市販されており;
2.Uniqema製のMYRJシリーズ、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53等のポリオキシエチレンステアリン酸エステルを含むポリオキシエチレン脂肪酸エステル。MYRJシリーズ中の特定の化合物が、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53、およびMYRJ 52として入手可能なPEG-40-ステアリン酸であり;
3.Uniqema製のツイーンシリーズ、例えば、ツイーン60を含むソルビタン誘導体;
4.ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンのコ-ポリマーおよびブロックコ-ポリマーまたはポロキサマー、例えば、BASF製のPluronic F127、Pluronic F68;
5.ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、C12〜C18アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテル等、例えば、BRIJシリーズとして知られ、Uniqemaから市販されているポリオキシル10-もしくは20-セチルエーテル、またはポリオキシル23-ラウリルエーテル、またはポリオキシル20-オレイルエーテル、またはポリ-オキシル10-、20-もしくは100-ステアリルエーテル。BRIJシリーズからの特に有用な製品は、BRIJ 58;BRIJ 76;BRIJ 78;BRIJ 35、すなわち、ポリオキシル23ラウリルエーテル;およびBRIJ 98、すなわち、ポリオキシル20オレイルエーテルである。これらの製品は、約32℃〜約43℃の間のm.p.を有し;
6.Eastman Chemical Co.から入手可能な、約36℃のm.p.を有する水溶性トコフェリルPEGコハク酸エステル、例えば、TPGS、例えば、ビタミンE TPGS;
7.例えば、5〜35[CH2-CH2-O]単位、例えば、20〜30単位を有するPEGステロールエーテル、例えば、Chemron(Paso Robles、CA)製のSOLULAN C24(Choleth-24およびCetheth-24);また、使用することができる類似の製品が、NIKKOL BPS-30(ポリエトキシル化30植物ステロール)およびNIKKOL BPSH-25(ポリエトキシル化25植物ステロール)として知られ、Nikko Chemicalsから市販されている製品であり;
8.例えば、4〜10、または4、6もしくは10の様々なグリセロール単位を有するポリグリセロール脂肪酸エステル。例えば、モノステアリン酸デカ-/ヘキサ-/テトラグリセリル、例えば、Nikko Chemicals製のDECAGLYN、HEXAGLYNおよびTETRAGLYNが特に適しており;
9.アルキレンポリオールのエーテルまたはエステル、例えば、それぞれ、GELUCIRE 44/14およびGELUCIRE 50/13であるラウロイルマクロゴール-32グリセリドおよび/またはステアロイルマクロゴール-32グリセリド;
10.C18置換等、飽和のC10〜C22の、例えば、ヒドロキシ脂肪酸のポリオキシエチレンモノエステル;例えば、PEGが、例えば、約600〜900、例えば、約660ダルトンMWである、例えば、12ヒドロキシステアリン酸PEGエステル、例えば、BASF(Ludwigshafen、20 ドイツ)製のSOLUTOL HS 15。BASF技術小冊子MEF 151 E(1986)によれば、SOLUTOL HS 15は、約70重量%のポリエトキシル化12-ヒドロキシステアリン酸および約30重量%の非エステル化ポリエチレングリコール構成成分を含む。SOLUTOL HS 15は、90〜110の水素価、53〜63のけん化価、最大1の酸価、および0.5重量%の最大水分含有量を有し;
11.ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-アルキルエーテル、例えば、C12〜C18のアルコールのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-エーテル、例えば、NIKKOL PBC 34として、Nikko Chemicalsから市販されているポリオキシエチレン-20-ポリオキシプロピレン-4-セチルエーテル;
12.ポリエトキシル化ジステアリン酸、例えば、ATLAS G 1821の商品名の下、Uniqemaから市販されているもの、およびNIKKOCDS-6000Pの商品名の下、Nikko Chemicalsから市販されているもの;ならびに
13.レシチン、例えば、大豆リン脂質、例えば、LIPOID S75として、Lipoid GmbH(Ludwigshafen、ドイツ)から市販されている大豆リン脂質、またはPHOSPHOLIPON 90として、Nattermann Phospholipid(Cologne、ドイツ)から市販されている卵リン脂質
が挙げられる。
【0089】
液体の界面活性剤の例として、これらに限定されないが、いずれもUniqemaから入手可能なツイーン20、ツイーン40およびツイーン80等のソルビタン誘導体、SYNPERONIC L44、およびポリオキシル10-オレイルエーテルが挙げられ、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasol)も挙げられる。
【0090】
本発明のこの医薬組成物の担体は、重量に関して約0%〜約95%、例えば、重量に関して約5%〜約80%、例えば、重量に関して約10%〜約70%、例えば、重量に関して約20%〜約60%、例えば、重量に関して約30%〜約50%の界面活性剤を含むことができる。本発明の一態様では、この担体は、30〜40%w/wの界面活性剤を含む。本発明の一態様では、この担体は、約40%w/wの界面活性剤を含む。
【0091】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンのコ-ポリマーおよびブロックコ-ポリマーまたはポロキサマー、例えば、BASF製のPluronic F127、Pluronic F68である。
【0092】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、ポロキサマーである。さらなる態様では、この界面活性剤は、ポロキサマー188、ポロキサマー407、およびポロキサマー407とポロキサマー188との混合物からなる群から選択される。
【0093】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasol等のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド)である。
【0094】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、ラウロイルポリオキシルグリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なGelucire 44/14)である。
【0095】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、BASF製のCremophor RH40である。
【0096】
本発明の特定の態様では、この医薬組成物は、医薬組成物中に通常見出される追加の賦形剤も含むことができ、そのような賦形剤として、これらに限定されないが、抗酸化剤、抗菌剤、酵素阻害剤、安定化剤、保存剤、香料、甘味剤、および参照により本明細書に組み込まれているHandbook of Pharmaceutical Excipients、Roweら編、4版、Pharmaceutical Press(2003)に記載されているその他の構成成分が挙げられる。
【0097】
これらの追加の賦形剤は、この医薬組成物の総重量に関して、約0.05〜5%の量であり得る。抗酸化剤、抗菌剤、酵素阻害剤、安定化剤または保存剤は典型的には、この医薬組成物の総重量に関して、最大約0.05〜1%をなす。甘味剤または矯味剤は典型的には、この医薬組成物の総重量に関して、最大約2.5%または5%をなす。
【0098】
抗酸化剤の例として、これらに限定されないが、アスコルビン酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、ブチルヒドロキシルアニソールおよびブチルヒドロキシルトルエンが挙げられる。
【0099】
本発明の一態様では、この組成物は、緩衝剤を含む。本明細書で使用する場合、用語「緩衝剤」は、医薬組成物中の、緩衝剤がない場合には化学反応に起因して発生するであろうこの組成物のpHが経時的に変化する傾向を低下させる化合物を指す。緩衝剤には、リン酸ナトリウム、TRIS、グリシンおよびクエン酸ナトリウム等の化学物質がある。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「保存剤」は、微生物の活動(増殖および代謝)を阻止するまたは遅延させるために医薬組成物に添加する化合物を指す。薬学的に許容できる保存剤の例は、フェノール、m-クレゾール、およびフェノールとm-クレゾールとの混合物である。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「安定化剤」は、ペプチドを安定化させる、すなわち、そのような組成物の有効期間および/または使用期間を延長させるために、ペプチド含有医薬組成物に添加する化学物質を指す。医薬製剤中で使用される安定化剤の例は、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、グリシルグリシン、エチレンジアミン、クエン酸、EDTA、亜鉛、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ならびに界面活性剤、ならびにアルファ-トコフェロールおよびl-アスコルビン酸のような抗酸化剤である。
【0102】
本発明のさらなる態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドを含有する医薬組成物を調製するためのプロセスは、この薬物と、極性有機溶媒、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または親水性構成成分を含む担体とを密接に混合するステップを含む。例えば、誘導体化インスリンペプチドとこの担体を、例えば、約20℃〜約80℃まで加熱することによって液化させ、次いで、室温まで冷却することによって凝固させることができる。
【0103】
極性有機溶媒、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または親水性構成成分を含む担体を別個に調製してから、この担体と、誘導体化インスリンペプチドとを密接に混合することができる。あるいは、この担体の構成成分のうちの1つまたは2つ以上を、誘導体化インスリンペプチドと一緒に混合してもよい。
【0104】
誘導体化インスリンペプチドを、この極性有機溶媒中に溶解させ、次いで、この脂質構成成分および場合により界面活性剤と混合することができる。
【0105】
その上さらなる態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチドを含有する、SEDDSまたはSMEDDS等の医薬組成物(これは、カプセル剤、例えば、腸溶性カプセル剤、軟カプセル剤または腸溶性軟カプセル剤中に充填することができる)を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、以下のステップを含む:
(a)最初に、誘導体化インスリンペプチドを、極性有機溶媒(プロピレングリコール等)中に溶解させるステップと、
(b)次いで、親油性構成成分、界面活性剤、および場合により追加の構成成分と混合するステップ。
【0106】
本発明の一態様では、この医薬組成物を調製するためのプロセスを、低い温度(例えば、室温または室温未満)で実施する。
【0107】
本発明による医薬組成物を調製する場合、誘導体化インスリンペプチドを、例えば、極性有機溶媒中に、以下の方法を使用して溶解させることができる:
a)誘導体化インスリンペプチドの、場合により賦形剤を含む水溶液を提供し、
b)このpH値を、誘導体化インスリンペプチドのpIを1pH単位または2pH単位または2.5pH単位上回るかまたは下回る標的pH値に調節し、
c)凍結乾燥およびスプレー乾燥等の従来の乾燥技術により、誘導体化インスリンペプチドから水を除去し(脱水状態)、
d)該極性非水性溶媒中に、例えば、撹拌、回転またはその他の混合方法により、誘導体化インスリンペプチドを混合し、溶解させ、
e)場合により、この非水性誘導体化インスリンペプチド溶液をろ過または遠心分離して、未溶解の無機塩を除去し、
f)場合により、残存量の水を、例えば、固体の乾燥剤の添加または真空乾燥により除去する。
【0108】
一態様では、誘導体化インスリンペプチドを、この極性有機溶媒中に、以下の方法により溶解させる:
a)誘導体化インスリンペプチドの、場合により亜鉛およびグリシルグリシン等の安定化剤を含有する水溶液を提供し、
b)このpH値を、誘導体化インスリンペプチドのpIを1pH単位または2pH単位または2.5pH単位上回るかまたは下回るpH値に、例えば、この溶液に、塩酸または水酸化ナトリウム等、不揮発性の塩基または酸を添加することよって調節し、
c)凍結乾燥およびスプレー乾燥等の従来の乾燥技術により、誘導体化インスリンペプチドから水を除去し(脱水状態)、
d)該極性非水性溶媒中に、例えば、撹拌、回転またはその他の混合方法により、誘導体化インスリンペプチドを混合し、溶解させ、
e)場合により、この非水性誘導体化インスリンペプチド溶液をろ過または遠心分離して、未溶解の無機塩を除去し、
f)場合により、残存量の水を、例えば、固体の乾燥剤の添加または真空乾燥により除去する。
【0109】
「揮発性の塩基」によって、加熱時におよび/または減圧下である程度蒸発する塩基、例えば、室温で65Pa超の蒸気圧を有する塩基、または室温で65Pa超の蒸気圧を有する塩基を含む水性の共沸混合物を意味する。揮発性の塩基の例は、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、二級アミン、三級アミン、アリールアミン、脂肪族アミンもしくは炭酸水素アンモニウム、または組合せである。例えば、揮発性の塩基は、炭酸水素塩、炭酸塩、アンモニア、ヒドラジン、または有機塩基、例として、低級脂肪族アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびそれらの塩であり得る。さらに、揮発性の塩基は、水酸化アンモニウム、エチルアミンもしくはメチルアミン、またはそれらの組合せであってもよい。
【0110】
「揮発性の酸」は、加熱時におよび/または減圧下である程度蒸発する酸、例えば、室温で65Pa超の蒸気圧を有する酸、または室温で65Pa超の蒸気圧を有する酸を含む水性の共沸混合物を意味する。揮発性の酸の例は、炭酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸である。
【0111】
本明細書で言及する場合、「不揮発性の塩基」は、加熱時に蒸発しないかまたは部分的にしか蒸発しない塩基、例えば、室温で65Pa未満の蒸気圧を有する塩基を意味する。この不揮発性の塩基を、アルカリ金属塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類金属の水酸化物およびアミノ酸、またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。不揮発性の塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムである。
【0112】
本明細書で言及する場合、「不揮発性の酸」は、加熱時に蒸発しないかまたは部分的にしか蒸発しない酸、例えば、室温で65Pa未満の蒸気圧を有する酸を意味する。不揮発性の酸の例は、塩酸、リン酸および硫酸である。
【0113】
本明細書で使用する場合、用語「治療上活性な誘導体化インスリンペプチド」または「治療用誘導体化インスリンペプチド」は、糖尿病および/または高血糖症ならびにそれらに由来する合併症の臨床所見を治癒させる、軽減するまたは部分的に停止させることができる誘導体化インスリンペプチドを指す。
【0114】
本明細書で使用する場合、本発明のさらなる態様では、用語「治療上活性な誘導体化インスリンペプチド」または「治療用誘導体化インスリンペプチド」は、治療上の使用のために開発されつつある誘導体化インスリンペプチドまたは治療上の使用のために開発された誘導体化インスリンペプチドを意味する。
【0115】
治療活性を示すことを達成するのに適切な量を、「治療有効量」と定義する。
【0116】
それぞれの目的に有効な量は、疾患または損傷の重症度、ならびに対象の体重および全身状態に依存する。適切な投与量の決定は、日常的な実験を使用して、値の行列を構築し、このマトリックス中の異なる点を試験することによって達成することができ、これはいずれも、訓練を受けた医師または獣医の通常の技能の範囲に属することを理解されたい。
【0117】
この治療上活性な誘導体化インスリンペプチドは、最大約40%、例として、この医薬組成物の総重量の最大約20%、または約0.01%以上、例として、約0.1%以上の量で存在することができる。この治療上活性な誘導体化インスリンペプチドは、この組成物の総重量に関して、本発明の一態様では、約0.01%〜約30%の量で存在することができ、さらなる態様では、約0.01%〜20%、約0.1%〜30%、約1%〜20%、または約1%〜10%の量で存在することができる。しかし、誘導体化インスリンペプチドの特定のレベルは、使用する極性有機溶媒または場合により親水性構成成分もしくは界面活性剤、あるいはそれらの混合物中の誘導体化インスリンペプチドの溶解性、投与様式、ならびに患者のサイズおよび状態を含めて、薬学分野で周知の因子に従って選ばれるものとする。
【0118】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容できる」は、通常の薬学的適用に適していること、すなわち、患者等において重大な有害事象を発生させないことを意味する。
【0119】
本明細書で使用する場合、用語「疾患の治療」は、疾患、状態または障害を発症している患者の管理および看護を意味する。治療の目的は、疾患、状態または障害と闘うことである。治療は、活性化合物を投与して、疾患、状態または障害を排除または制御すること、ならびに疾患、状態または障害と関連がある症状または合併症を軽減すること、および疾患、状態または障害を予防することを含む。
【0120】
本明細書で使用する場合、用語「疾患の予防」を、疾患が臨床的に開始する前に、疾患を発症するリスクがある個体を管理および看護することと定義する。予防の目的は、疾患、状態または障害の発症と闘うことであり、この活性化合物を投与して、症状または合併症の開始を阻止するまたは遅延させること、および関連の疾患、状態または障害の発症を阻止するまたは遅延させることを含む。
【0121】
各単位投与量が、0.1mg〜300mgの誘導体化インスリンペプチド、例えば、約0.1mg、1mg、5mg、10mg、15mg、25mg、50mg、90mg、100mg、200mg、250mg、300mgの誘導体化インスリンペプチド、例えば、5mgと300mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを適切に含有する。本発明の一態様では、各単位投与量は、10mgと300mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。さらなる態様では、単位投与剤形は、10mgと100mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。本発明のその上さらなる態様では、この単位投与剤形は、20mgと300mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。本発明のその上さらなる態様では、この単位投与剤形は、50mgと150mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。本発明のその上さらなる態様では、この単位投与剤形は、20mgと100mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。そのような単位投与剤形は、療法の特定の目的に応じて、1日に1〜5回投与するのに適している。
【0122】
用語「ポリペプチド」または「ペプチド」を、本明細書では互換的に使用して、ペプチド結合により接続されている少なくとも5つの構成要素のアミノ酸から構成される化合物を意味する。これらの構成要素のアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸の群からのものである場合もあれば、遺伝暗号によってコードされない天然のアミノ酸、および合成アミノ酸である場合もある。遺伝暗号がコードしない天然のアミノ酸は、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、オルニチン、リン酸化セリン、D-アラニンおよびD-グルタミンである。合成アミノ酸は、化学合成によって製造されたアミノ酸、すなわち、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸のD-異性体、例として、D-アラニンおよびD-ロイシン、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Abu(α-アミノ酪酸)、Tle(tert-ブチルグリシン)、β-アラニン、3-アミノメチル安息香酸、アントラニル酸を含む。
【0123】
本明細書で使用する場合、「インスリンペプチド」を用いて、CysA7とCysB7との間およびCysA20とCysB19との間のジスルフィド架橋、ならびにCysA6とCysA11との間の内部ジスルフィド架橋を有するヒトインスリン、ブタインスリンもしくはウシインスリン、またはそれらのインスリン類似体もしくは誘導体を意味する。
【0124】
ヒトインスリンは、2つのポリペプチド鎖、すなわち、それぞれ21個および30個のアミノ酸残基を含有するA鎖およびB鎖からなる。これらのA鎖およびB鎖は、2つのジスルフィド架橋によって相互接続されている。ほとんどのその他の種に由来するインスリンは類似するが、いくつかの位置においては、アミノ酸の置換を含有する場合がある。
【0125】
本明細書で使用する場合、インスリン類似体は形式上、天然に存在するインスリンの構造、例えば、ヒトインスリンの構造から、天然のインスリン中に存在する少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは置換すること、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって誘導することができる分子構造を有するポリペプチドである。
【0126】
一態様では、本発明によるインスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて8つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。一態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて7つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。一態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて6つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて5つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて4つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて3つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて2つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。
【0127】
本発明による誘導体化インスリンペプチドは、天然に存在するインスリン、あるいは例えば、インスリン骨格中の1つもしくは複数の位置に側鎖を導入すること、またはインスリン中のアミノ酸残基の基を酸化もしくは還元すること、または遊離のカルボキシル基をエステル基もしくはアミド基に変換することによって、化学的に改変されているインスリン類似体である。その他の誘導体は、ヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンのB29位等の遊離のアミノ基またはヒドロキシ基をアシル化することによって得られる。アシル化ポリペプチドの非限定的な例を、例えば、参照により本明細書に組み込まれているWO95/07931中に見出すことができる。
【0128】
したがって、誘導体化インスリンペプチドは、少なくとも1つの共有結合の改変、例として、インスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸につながる側鎖を含むヒトインスリンまたはインスリン類似体である。
【0129】
本明細書では、誘導体化インスリンの命名を、以下の原則に従って行う。名前を、ヒトインスリンと比べた突然変異および改変(アシル化)に従って与える。アシル部分を命名するためには、命名を、IUPAC命名法、およびその他の場合には、ペプチド命名法に従って行う。例えば、アシル部分を命名する場合、
【0130】
【化1】
【0131】
は、例えば、「オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG」、または「17-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-GIu-OEG-OEG」であり得、式中、OEGは、アミノ酸-NH(CH2)2O(CH2)2OCH2CO-についての略語表記法であり、γ-L-Glu(またはg-L-Glu)は、アミノ酸ガンマグルタミン酸部分のL-型についての略語表記法である。
【0132】
改変ペプチドまたはタンパク質のアシル部分は、純粋な鏡像異性体の形態をとることができ、この不斉アミノ酸部分の立体配置は、DもしくはLのいずれかである(またはR/S用語法を使用する場合には、RもしくはSのいずれかである)か、あるいは鏡像異性体の混合物(DとL/RとS)の形態をとることができる。本発明の一態様では、アシル部分は、鏡像異性体の混合物の形態をとる。一態様では、このアシル部分は、純粋な鏡像異性体の形態をとる。一態様では、このアシル部分の不斉アミノ酸部分は、L体である。一態様では、このアシル部分の不斉アミノ酸部分は、D体である。
【0133】
一態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、インスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸においてアシル化されているインスリンペプチドである。
【0134】
一態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、プロピレングリコール中に溶解する。別の態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、プロピレングリコール溶液中に溶解し、この溶液は、少なくとも20%w/wの誘導体化インスリンペプチドを含む。本発明のさらに別の態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、プロピレングリコール溶液中に溶解し、この溶液は、少なくとも30%w/wの誘導体化インスリンペプチドを含む。
【0135】
本発明の一態様では、誘導体化インスリンペプチドは、極性有機溶媒中に溶解させる前にpH最適化して、この極性有機溶媒中の溶解性を改善する。
【0136】
用語「pH最適化」を使用する場合、本明細書では、誘導体化インスリンペプチドが、水溶液中の誘導体化インスリンペプチドのpIから少なくとも1pH単位外れている標的pHにおいて脱水されていることを意味する。したがって、本発明の一態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドの等電点を1pH単位超上回る。本発明の別の態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドの等電点を1pH単位超下回る。さらなる態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドのpIを1.5pH単位超上回るかまたは下回る。その上さらなる態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドのpIを2.0pH単位以上上回るかまたは下回る。その上さらなる態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドのpIを2.5pH単位以上上回るかまたは下回る。その上さらなる態様では、標的pHは、誘導体化インスリンペプチドのpIを上回る。
【0137】
誘導体化インスリンペプチドに関連して本明細書で使用する場合、用語「脱水状態」は、水溶液から乾燥されている誘導体化インスリンペプチドを指す。本明細書で使用する場合、用語「標的pH」は、脱水状態の誘導体化インスリンペプチドを、純水中に戻して、およそ40mg/ml以上の濃度とした場合に確立する水のpHを指す。この標的pHは典型的には、誘導体化インスリンペプチドを乾燥によって回収した誘導体化インスリンペプチドの水溶液のpHと同一である。しかし、この溶液が、揮発性の酸または塩基を含有する場合には、誘導体化インスリンペプチド溶液のpHは、標的pHと同一ではない。誘導体化インスリンペプチドのpHの履歴が、極性有機溶媒中で可溶化し得る誘導体化インスリンペプチドの量についての決定因子であることが見出されるに至った。
【0138】
本明細書で使用する場合、用語「誘導体化インスリンペプチドのpI」は、誘導体化インスリンペプチドの等電点を指す。
【0139】
本明細書で使用する場合、用語「等電点」は、ペプチド等の巨大分子の全体的な正味の電荷がゼロとなるpH値を意味する。ペプチドの場合、いくつかの帯電した基がある場合があり、等電点においては、全てのこれらの電荷の和がゼロとなる。等電点を上回るpHでは、このペプチドの全体的な正味の電荷は負となり、一方、等電点を下回るpHでは、このペプチドの全体的な正味の電荷は正となる。
【0140】
タンパク質のpIを、等電点電気泳動等の電気泳動の技法により実験的に決定することができる。
【0141】
pH勾配が、ポリアクリルアミドゲル等の抗対流性の媒体(anticonvective medium)中で確立される。タンパク質をこの系に導入すると、このタンパク質が、このゲルにわたって適用された電場の影響を受けて遊走する。正に帯電したタンパク質は、カソードに遊走する。最終的には、このタンパク質は移動して、その正味の電荷がゼロとなる、pH勾配中のある点に到達し、この点で、タンパク質の焦点が合ったといわれる。この点が、このタンパク質の等電点pH(pI)である。次いで、このタンパク質を、このゲル上に固定し、染色する。次いで、既知のpI値を有するマーカー分子に対して、ゲル上のこのタンパク質の位置を比較することによって、このタンパク質のpIを決定することができる。
【0142】
当業者であれば、所与のpH値におけるタンパク質の正味の電荷を、従来法により理論的に推定することができる。基本的には、タンパク質の正味の電荷は、そのタンパク質中の帯電したアミノ酸、すなわち、アスパラギン酸(β-カルボキシル基)、グルタミン酸(δ-カルボキシル基)、システイン(チオール基)、チロシン(フェノール基)、ヒスチジン(イミダゾール側鎖)、リシン(ε-アンモニウム基)、およびアルギニン(グアニジウム基)の部分的な電荷の和と同等になる。さらにまた、タンパク質の末端基(α-NH2およびα-COOH)の電荷も考慮すべきである。イオン化できる基の部分的な電荷を、固有のpKa値から計算することができる。
【0143】
誘導体化インスリンペプチドの乾燥、すなわち、脱水は、任意の従来の乾燥方法、例えば、スプレー乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、開放乾燥および接触乾燥によって実施することができる。本発明の一態様では、誘導体化インスリンペプチド溶液を乾燥させて、約10%未満の水分含有量を得る。水分含有量は、実験の部における記載に従って、乾燥試験(重量測定)による喪失をもとに計算した/そうした喪失により測定した場合、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満であり得る。
【0144】
本発明の一態様では、誘導体化インスリンペプチドを、スプレー乾燥する。本発明のさらなる態様では、誘導体化インスリンペプチドを、凍結乾燥する。
【0145】
一態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、(特定の突然変異により)タンパク質分解に対して安定化され、B29-リシンにおいてさらにアシル化されているインスリンペプチドである。別の態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、アシル化、プロテアーゼ安定化インスリンであるインスリンペプチドであり、このプロテアーゼ安定化インスリン類似体は、ヒトインスリンから、以下の欠失または置換のうちの1つまたは複数において逸脱する:A18位のQ、A21位のA、GもしくはQ、B1位のGもしくはQ、またはB1位のアミノ酸残基の欠失、B3位のQ、SもしくはT、またはB3位のアミノ酸残基の欠失、B13位のQ、B27位のアミノ酸残基の欠失、B28位のD、EもしくはR、およびB30位のアミノ酸残基の欠失。
【0146】
広い態様では、プロテアーゼ安定化インスリンは、インスリン類似体であり、親インスリンと比べて、少なくとも2つの疎水性アミノ酸が、親水性アミノ酸で置換されており、これらの置換は、親インスリンの2つ以上のプロテアーゼ切断部位の内部にあるかまたはそれらの部位にごく接近しており、そのようなインスリン類似体は場合により、1つまたは複数の追加の突然変異をさらに含む。
【0147】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンは、インスリン類似体であり、
- A12位のアミノ酸が、GluもしくはAspであり、かつ/またはA13位のアミノ酸が、His、Asn、GluもしくはAspであり、かつ/またはA14位のアミノ酸が、Asn、Gln、Glu、Arg、Asp、GlyもしくはHisであり、かつ/またはA15位のアミノ酸が、GluもしくはAspであり;ならびに
- B24位のアミノ酸が、Hisであり、かつ/またはB25位のアミノ酸が、Hisであり、かつ/またはB26位のアミノ酸が、His、Gly、AspもしくはThrであり、かつ/またはB27位のアミノ酸が、His、Glu、GlyもしくはArgであり、かつ/またはB28位のアミノ酸が、His、GlyもしくはAspであり;ならびに
このインスリン類似体は場合により、1つまたは複数の追加の突然変異をさらに含む。
【0148】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンは、式1:
XaaA(-2)-XaaA(-1)-XaaA0-Gly-Ile-Val-Glu-Gln-Cys-Cys-XaaAB-Ser-Ile-Cys-XaaA12-XaaA13-XaaA14-XaaA15-Leu-Glu-XaaA18-Tyr-Cys-XaaA21
式(I)(配列番号1)
のA鎖のアミノ酸配列、
および式2:
XaaB(-2)-XaaB(-1)-XaaB0-XaaB1-XaaB2-XaaB3-XaaB4-His-Leu-Cys-Gly-Ser-XaaB10-Leu-Val-Glu-Ala-Leu-XaaB16-Leu-Val-Cys-Gly-Glu-Arg-Gly-XaaB24-XaaB25-XaaB26-XaaB27-XaaB28-XaaB29-XaaB30-XaaB31-XaaB32
式(2)(配列番号2)
のB鎖のアミノ酸配列
を含むインスリン類似体であり、
式中、
XaaA(-2)は、不在またはGlyであり;
XaaA(-1)は、不在またはProであり;
XaaAoは、不在またはProであり;
XaaA8は独立に、ThrおよびHisから選択され;
XaaA12は独立に、Ser、AspおよびGluから選択され;
XaaA13は独立に、Leu、Thr、Asn、Asp、Gln、His、Lys、Gly、Arg、Pro、SerおよびGluから選択され;
XaaA14は独立に、Tyr、Thr、Asn、Asp、Gln、His、Lys、Gly、Arg、Pro、SerおよびGluから選択され;
XaaA15は独立に、Gln、AspおよびGluから選択され;
XaaA18は独立に、Asn、LysおよびGlnから選択され;
XaaA21は独立に、AsnおよびGlnから選択され;
XaaB(-2)は、不在またはGlyであり;
XaaB(-1)は、不在またはProであり;
XaaB0は、不在またはProであり;
XaaB1は、不在であるか、または独立に、PheおよびGluから選択され;
XaaB2は、不在またはValであり;
XaaB3は、不在であるか、または独立に、AsnおよびGlnから選択され;
XaaB4は独立に、GlnおよびGluから選択され;
XaaB10は独立に、His、Asp、ProおよびGluから選択され;
XaaB16は独立に、Tyr、Asp、Gln、His、ArgおよびGluから選択され;
XaaB24は独立に、PheおよびHisから選択され;
XaaB25は独立に、Asn、PheおよびHisから選択され;
XaaB26は、不在であるか、または独立に、Tyr、His、Thr、GlyおよびAspから選択され;
XaaB27は、不在であるか、または独立に、Thr、Asn、Asp、Gln、His、Lys、Gly、Arg、Pro、SerおよびGluから選択され;
XaaB28は、不在であるか、または独立に、Pro、His、GlyおよびAspから選択され;
XaaB29は、不在であるか、または独立に、LysおよびGlnから選択され;
XaaB30は、不在またはThrであり;
XaaB31は、不在またはLeuであり;
XaaB32は、不在またはGluであり;
C末端は場合により、アミドとして誘導体化されていてもよく;
A鎖のアミノ酸配列とB鎖のアミノ酸配列とが、A鎖の7位のシステインとB鎖の7位のシステインとの間のジスルフィド架橋、およびA鎖の20位のシステインとB鎖の19位のシステインとの間のジスルフィド架橋によって接続されており、A鎖の6位のシステインと11位のシステインとがジスルフィド架橋によって接続されている。
【0149】
「desB30インスリン」を用いて、「desB30ヒトインスリン」は、B30アミノ酸残基を欠くインスリンおよびその類似体を意味する。
【0150】
「親インスリン」によって、ヒトインスリンまたはブタインスリン等の天然に存在するインスリンを意味する。あるいは、親インスリンは、インスリン類似体であってもよい。
【0151】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンは、以下の化合物からなる群から選択される。A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B28D、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B16E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B1E、B25H、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B1E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B1E、B16E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B16E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B26D、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B28D、desB30ヒトインスリン;A14E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B27E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B25H、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B25H、B27E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14D、B25H、desB30ヒトインスリン;B25N、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、B25N、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B27E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B28E、desB30ヒトインスリン;B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;B1E、B25H、B27E、desb30ヒトインスリン;A8H、B1E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;B25N、B27D、desB30ヒトインスリン;A8H、B25N、B27D、desB30ヒトインスリン;B25H、B27D、desB309ヒトインスリン;A8H、B25H、B27D、desB30ヒトインスリン;A(-1)P、A(0)P、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B(-1)P、B(0)P、B25H、desB30ヒトインスリン;A(-1)P、A(0)P、A14E、B(-1)P、B(0)P、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B30T、B31L、B32Eヒトインスリン;A14E、B25Hヒトインスリン;A14E、B16H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B10P、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B10E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B4E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14H、B16H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14H、B10E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13H、A14E、B10E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13H、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、B3Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B24H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B26G、B27G、B28G、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、A21Q、B3Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、A21Q、B3Q、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、B3Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A13H、A14E、B1E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13N、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13N、A14E、B1E、B25H、desB30ヒトインスリン;A(-2)G、A(-1)P、A(0)P、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B(-2)G、B(-1)P、B(0)P、B25H、desB30ヒトインスリン;A(-2)G、A(-1)P、A(0)P、A14E、B(-2)G、B(-1)P、B(0)P、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B27R、B28D、B29K、desB30ヒトインスリン;A
14E、B25H、B27R、B28D、B29K、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B26T、B27R、B28D、B29K、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27R、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27H、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、B3Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A13E、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A12E、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A15E、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13E、B25H、desB30ヒトインスリン;A12E、B25H、desB30ヒトインスリン;A15E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、desB27、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B26D、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27R、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27N、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27D、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27Q、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27G、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27K、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27P、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27S、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27T、desB30ヒトインスリン;A13R、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13N、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13D、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13Q、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13E、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13G、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13H、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13K、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13P、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13S、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13T、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16R、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16D、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14R、B25H、desB30ヒトインスリン;A14N、B25H、desB30ヒトインスリン;A14D、B25H、desB30ヒトインスリン;A14Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14G、B25H、desB30ヒトインスリン;A14H、B25H、desB30ヒトインスリン;A8H、B10D、B25Hヒトインスリン;およびA8H、A14E、B10E、B25H、desB30ヒトインスリン。
【0152】
好ましくは、本発明のアシル化インスリンは、プロテアーゼ安定化インスリン分子中のリシンアミノ酸残基に、1つのアシル化基のみがつながってモノ置換されている。
【0153】
一態様では、プロテアーゼ安定化インスリンにつながるアシル部分は、一般式:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)
を有し、
式中、nは、0または1〜3の範囲の整数であり;mは、0または1〜10の範囲の整数であり;pは、0または1〜10の範囲の整数であり;Acyは、約8〜約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり;AA1は、天然の直鎖または環状のアミノ酸残基であり;AA2は、酸性アミノ酸残基であり;AA3は、天然のアルキレングリコール含有アミノ酸残基であり;AA1、AA2およびAA3が、式中に出現する順は、独立に交換することができ;AA2は、式に沿って数回存在することができ(例えば、Acy-AA2-AA32-AA2-);AA2は、式に沿って独立に(=異なって)数回存在することができ(例えば、Acy-AA2-AA32-AA2-);Acy、AA1、AA2および/またはAA3の間の接続は、アミド(ペプチド)結合であり、これらの結合は形式上、Acy、AA1、AA2およびAA3のそれぞれから水素原子またはヒドロキシル基(水)を除去することによって得ることができ;プロテアーゼ安定化インスリンは、式(I)のアシル部分中のAA1残基、AA2残基もしくはAA3残基のC末端を介して、または式(I)の部分中に存在するAA2残基の側鎖のうちの1つを介してつながることができる。
【0154】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンにつながるアシル部分は、一般式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)を有し、式中、AA1は、Gly、D-もしくはL-Ala、βAla、4-アミノ酪酸、5-アミノ吉草酸、6-アミノヘキサン酸、D-もしくはL-Glu-α-アミド、D-もしくはL-Glu-γ-アミド、D-もしくはL-Asp-α-アミド、D-もしくはL-Asp-β-アミド、または以下の式のうちの1つの基から選択される。
【0155】
【化2−1】
【化2−2】
【0156】
それらの基は、これらの式から、水素原子および/またはヒドロキシル基が除去されており、式中、qは、0、1、2、3または4である。
【0157】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンにつながるアシル部分は、一般式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)を有し、式中、AA1は、上記の定義に従い、AA2は、L-もしくはD-Glu、L-もしくはD-Asp、L-もしくはD-ホモGlu、または以下の式のうちのいずれかから選択される。
【0158】
【化3】
【0159】
それらは、これらの式から、水素原子および/またはヒドロキシル基が除去されており、式中、矢印は、AA1、AA2、AA3のアミノ基、またはプロテアーゼ安定化インスリンのアミノ基につながる点を示す。
【0160】
AA1と呼ぶ中性の環状アミノ酸残基は、飽和六員環状炭素を含有し、場合により窒素ヘテロ原子を含有するアミノ酸であり、好ましくは、この環は、シクロヘキサン環またはピペリジン環である。好ましくは、この中性の環状アミノ酸の分子量は、約100〜約200Daの範囲に及ぶ。
【0161】
AA2と呼ぶ酸性のアミノ酸残基は、最大約200Daの分子量を有するアミノ酸であり、2つのカルボン酸基および1つの一級または二級のアミノ基を含む。
【0162】
AA3と呼ぶ中性のアルキレングリコール含有アミノ酸残基は、アルキレングリコール部分、場合により、一方の末端にカルボン酸の官能基をかつ他方の末端にアミノ基の官能基を含有するオリゴアルキレングリコール部分またはポリアルキレングリコール部分である。
【0163】
本明細書では、用語アルキレングリコール部分は、モノ-アルキレングリコール部分およびオリゴ-アルキレングリコール部分を網羅する。モノアルキレングリコールおよびオリゴアルキレングリコールは、モノエチレングリコールおよびオリゴエチレングリコールに基づいた鎖、モノプロピレングリコールおよびオリゴプロピレングリコールに基づいた鎖、ならびにモノブチレングリコールおよびオリゴブチレングリコールに基づいた鎖、すなわち、反復単位-CH2CH2O-、-CH2CH2CH2O-または-CH2CH2CH2CH2O-に基づく鎖を含む。このアルキレングリコール部分は、単分散である(十分に定義された長さ/分子量を有する)。モノアルキレングリコール部分は、各末端に異なる基を含有する-OCH2CH2O-、-OCH2CH2CH2O-または-OCH2CH2CH2CH2O-を含む。
【0164】
本明細書で言及するように、AA1、AA2およびAA3が、式(I)(Acy-AA1n-AA2m-AA3p-)を有するアシル部分中に出現する順番は、独立に交換することができる。その結果、式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-はまた、例えば、式Acy-AA2m-AA1n-AA3p-および式Acy-AA3p-AA2m-AA1n-のような部分も網羅し、式中、Acy、AA1、AA2、AA3、n、mおよびpは、本明細書の定義に従う。
【0165】
本明細書で言及するように、部分Acy、AA1、AA2および/またはAA3の間の接続は形式上、親化合物からの水の除去により、アミド結合(ペプチド結合)(-CONH-)を形成することによって得られ、形式上、親化合物からそうしたアミド結合が構築される。このことは、式(I)(Acy-AA1n-AA2m-AA3p-、式中、Acy、AA1、AA2、AA3、n、mおよびpは、本明細書の定義に従う)を有するアシル部分についての完全な式を得るためには、形式上、用語Acy、AA1、AA2およびAA3によって示される化合物を得、それらから水素および/またはヒドロキシルを除去して、形式上、そのようにして得られた構築用ブロックを、そのようにして得られた遊離末端において接続しなければならないことを意味する。
【0166】
本発明のアシル化インスリン類似体中に存在し得る、式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-のアシル部分の非限定的具体例を以下に示す。
【0167】
【化4−1】
【化4−2】
【化4−3】
【化4−4】
【化4−5】
【0168】
式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-のアシル部分の上記の非限定的具体例のうちのいずれもが、
インスリン類似体の上記の非限定的具体例のうちのいずれか中に存在するリシン残基のイプシロンアミノ基につながり、それによって、本発明のアシル化インスリン類似体のさらなる具体例をもたらすことができる。
【0169】
インスリン類似体中のリシン残基中に、式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-の所望の基を導入することによって、プロテアーゼ安定化インスリンを、本発明のアシル化プロテアーゼ安定化インスリンに変換することができる。式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-の所望の基は、任意の好都合な方法によって導入することができ、そのような反応について、多くの方法が、先行技術中に開示されている。本明細書の実施例から、詳細がより明らかになる。
【0170】
また、本発明は、アシル化プロテアーゼ安定化インスリンを含む医薬組成物にも関し、このプロテアーゼ安定化インスリンのA鎖中のC末端のアミノ酸残基は、A21アミノ酸残基である。
【0171】
本発明のさらなる態様では、インスリン誘導体は、B29-Nε-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-ミリストイルヒトインスリン、B29-Nε-パルミトイルヒトインスリン、B28-Nε-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B28-Nε-パルミトイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B30-Nε-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30-Nε-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29-Nε-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-Nε-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンからなる群から選択される。
【0172】
本発明の別の態様では、インスリン誘導体は、B29-N(ε)-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリンである。
【0173】
本発明の別の態様では、インスリン誘導体は、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンである。
【0174】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および少なくとも1つの界面活性剤(d)を含み、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、(b)、(c)および(d)の相対量が、10〜15%(b)、45〜55%(c)および30〜40%(d)である。
【0175】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および少なくとも1つの界面活性剤(d)を含み、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、(b)、(c)および(d)の相対量が、15%(b)、45%(c)および40%(d)である。
【0176】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための極性有機溶媒(b)、親油性構成成分(c)、および界面活性剤(d)を含み、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、(b)、(c)および(d)の相対量が、10〜15%(b)、45〜55%(c)および30〜40%(d)、例として、15%(b)、45%(c)および40%(d)である。
【0177】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、誘導体化インスリンペプチド(a)、プロピレングリコール(b)、モノカプリル酸グリセロール(c)、およびlabrasol(d)を含み、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、(b)、(c)および(d)の相対量が、10〜15%(b)、45〜55%(c)および30〜40%(d)、例として、15%(b)、45%(c)および40%(d)である。
【0178】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、50mgと150mgとの間の誘導体化インスリンペプチド(a)を含む。別の態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、70mgと130mgとの間の誘導体化インスリンペプチド(a)を含む。さらに別の態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、約90mgの誘導体化インスリンペプチド(a)を含む。
【0179】
一態様では、誘導体化インスリンペプチド(a)は、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンである。
【0180】
インスリン等のポリペプチドおよびペプチドの生成については、当技術分野で周知である。ポリペプチドまたはペプチドを、例えば、古典的なペプチド合成、例えば、t-Boc化学もしくはFmoc化学またはその他の十分に確立された技法を使用する固相ペプチド合成によって生成することができる。例えば、GreeneおよびWuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons、1999を参照されたい。また、これらのポリペプチドまたはペプチドは、こうした(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を含有し、このペプチドを発現することができる宿主細胞を、適切な栄養培地中で、この(ポリ)ペプチドを発現させる条件下において培養するステップを含む方法によって生成することもできる。非天然のアミノ酸残基を含む(ポリ)ペプチドの場合、これらの非天然のアミノ酸がこの(ポリ)ペプチド中に組み込まれるように、例えば、tRNA突然変異体を使用することによって、組換え細胞を改変すべきである。
【0181】
一態様では、本発明による液体または半固体の医薬組成物は、保管上安定(shelf-stable)である。
【0182】
本明細書で使用する場合、用語「保管上安定な医薬組成物」は、少なくとも治療用タンパク質に関連する規制当局によって要求される期間にわたり安定である医薬組成物を意味する。好ましくは、保管上安定な医薬組成物は、5℃で少なくとも1年間安定である。保管安定性は、化学的安定性および物理学的安定性を含む。化学的不安定性には、共有結合の分解、例として、加水分解、ラセミ化、酸化または架橋結合が関与する。製剤の化学的安定性は、逆相(RP-HPLC)クロマトグラフィーおよび分子ふるいクロマトグラフィー(SE-HPLC)によって評価する。本発明の一態様では、有効期間の間に形成されるペプチドに関連する不純物は、全ペプチド含有量の20%未満である。本発明のさらなる態様では、有効期間の間に形成されるペプチドに関連する不純物は、10%未満である。本発明のさらなる態様では、有効期間の間に形成されるペプチドに関連する不純物は、5%未満である。RP-HPLC解析は典型的には、水-アセトニトリル混合物中または水-エタノール混合物中で行う。一態様では、RP-HPLC工程における溶媒は、塩、例として、Na2SO4、(NH4)2SO4、NaCl、KCl、ならびに緩衝系、例として、リン酸、クエン酸およびマレイン酸を含む。溶媒中の塩の必要濃度は、約0.1M〜約1M、好ましくは0.2Mと0.5Mとの間、最も好ましくは0.3Mと0.4Mとの間であり得る。適切な時間内にカラムからの溶出を達成するために、塩濃度を増加させると、有機溶媒濃度を増加させる必要がある。物理的不安定性には、未変性の構造と比べた立体構造の変化が関与し、それらの変化は、高次構造の喪失、凝集、細線維化、沈殿または表面吸着を含む。インスリンペプチド、GLP-1化合物およびアミリン化合物等のペプチドが、細線維化により不安定になりやすいことが知られている。製剤の物理的安定性を、製剤を異なる温度で種々の時間にわたり保管した後に、例えば、目視検査および比濁分析の従来の手段により評価することができる。立体構造安定性は、円偏光二色性およびNMRにより、例えば、Hudson and Andersen、Peptide Science、76巻(4)、298〜308頁(2004)の記載に従って評価することができる。
【0183】
誘導体化インスリンペプチドの生物学的活性を、当業者に既知のアッセイにおいて、例えば、WO2005/012347の記載に従って測定することができる。
【0184】
本発明の一態様では、本発明による医薬組成物は、使用については6週間超安定であり、保管については3年超安定である。
【0185】
本発明の別の態様では、本発明による医薬組成物は、使用については4週間超安定であり、保管については3年超安定である。
【0186】
本発明のさらなる態様では、本発明による医薬組成物は、使用については4週間超安定であり、保管については2年超安定である。
【0187】
本発明のその上さらなる態様では、本発明による医薬組成物は、使用については2週間超安定であり、保管については2年超安定である。
【0188】
本発明のその上さらなる態様では、本発明による医薬組成物は、使用については1週間超安定であり、保管については1年超安定である。
【0189】
一態様では、本発明による医薬組成物を、高血糖、2型糖尿病、耐糖能の損傷および1型糖尿病の治療または予防のための薬物を調製するために使用する。
【0190】
本発明によるさらなる態様
1.誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、ならびに場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)および/または少なくとも1つの固体の親水性構成成分(e)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物。
2.誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物であって、透明な溶液の形態をとる医薬組成物。
3.少なくとも1つの界面活性剤を含み、自発的分散性である、態様1または2に記載の医薬組成物。
4.少なくとも1つの固体の親水性構成成分を含み、油性溶液の形態をとる、態様1に記載の医薬組成物。
5.該少なくとも1つの親水性構成成分が、少なくとも1つの固体の親水性ポリマーである、態様4に記載の医薬組成物。
6.界面活性剤を含有せず、界面活性剤は、少なくとも8であるHLB値を有する、態様4または5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
7.10%w/w未満の水を含む、態様1から6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
8.5%w/w未満の水を含む、態様1から7のいずれか1つに記載の医薬組成物。
9.2%w/w未満の水を含む、態様1から8のいずれか1つに記載の医薬組成物。
10.1%w/w未満の水を含む、態様1から9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
11.極性有機溶媒が、ポリオールからなる群から選択される、態様1から10のいずれか1つに記載の医薬組成物。
12.極性有機溶媒が、ジオールおよびトリオールからなる群から選択される、態様1から11のいずれか1つに記載の医薬組成物。
13.極性有機溶媒が、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、態様1から12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
14.極性有機溶媒がプロピレングリコールである、態様1から13に記載の医薬組成物。
15.極性有機溶媒がグリセロールである、態様1から14に記載の医薬組成物。
16.誘導体化インスリンペプチドが、アシル化インスリンまたはアシル化インスリン類似体である、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
17.誘導体化インスリンペプチドが、1つまたは複数の位置中で誘導体化されているプロテアーゼ安定化インスリンである、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
18.誘導体化インスリンペプチドが、1つまたは複数の位置中でアシル化されているプロテアーゼ安定化インスリンである、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
19.誘導体化インスリンペプチドが、プロテアーゼ安定化インスリンであり、プロテアーゼ安定化インスリンが、その分子中のリシンアミノ酸残基につながっている唯一のアシル化基を有するようにモノ置換されている、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
20.誘導体化インスリンペプチドが、プロテアーゼ安定化インスリンであり、プロテアーゼ安定化インスリンが、それにつながれているアシル部分を有し、アシル部分が、一般式:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)
[式中、nは、0または1〜3の範囲の整数であり;
mは、0または1〜10の範囲の整数であり;
pは、0または1〜10の範囲の整数であり;
Acyは、約8〜約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり;
AA1は、天然の直鎖または環状のアミノ酸残基であり;
AA2は、酸性アミノ酸残基であり;
AA3は、天然のアルキレングリコール含有アミノ酸残基である]
を有し、
AA1、AA2およびAA3が、式中に出現する順番は、独立に交換することができる、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
21.誘導体化インスリンペプチドが、プロピレングリコール中に溶解する、態様1から20のいずれか1つに記載の医薬組成物。
22.誘導体化インスリンペプチドが、プロピレングリコール溶液中に溶解し、この溶液は、少なくとも20%w/wの誘導体化インスリンペプチドを含む、態様1から21のいずれか1つに記載の医薬組成物。
23.誘導体化インスリンペプチドが、プロピレングリコール溶液中に溶解し、この溶液は、少なくとも30%w/wの誘導体化インスリンペプチドを含む、態様1から22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
24.界面活性剤を含まず、界面活性剤を、少なくとも8であるHLB値を有すると定義する、態様1から2または4から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
25.界面活性剤を含み、その界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、態様1から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
26.界面活性剤を含み、この界面活性剤が、ポリオキシエチレン含有界面活性剤である、態様1から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
27.界面活性剤を含み、この界面活性剤が、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(例として、Gattefosse製のLabrasol)である、態様1から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
28.界面活性剤を含み、この界面活性剤が、Pluronic F-127またはPluronic F-68等のポロキサマー、およびポロキサマーの混合物からなる群から選択される固体の界面活性剤である、態様1から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
29.親油性構成成分が、プロピレングリコールと混合性である、態様1から28のいずれか1つに記載の医薬組成物。
30.親油性構成成分をプロピレングリコールと混合して溶液が得られるように、親油性構成成分が選ばれる、態様1から28のいずれか1つに記載の医薬組成物。
31.親油性構成成分がリン脂質である、態様1から28のいずれか1つに記載の医薬組成物。
32.親油性構成成分が、モノ-グリセリド、ジ-グリセリドおよび/またはトリ-グリセリドである、態様1から30のいずれか1つに記載の医薬組成物。
33.親油性構成成分が、モノ-グリセリドおよび/またはジ-グリセリドである、態様1から30または32のいずれか1つに記載の医薬組成物。
34.親油性構成成分が、カプリル酸プロピレングリコールである、態様1から30のいずれか1つに記載の医薬組成物。
35.親油性構成成分が、モノカプリル酸グリセロールである、態様1から30のいずれか1つに記載の医薬組成物。
36.室温で液体である、態様1から2、4から24または29から35のいずれか1つに記載の医薬組成物。
37.室温で半固体である、態様1から3、6から23または25から34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
38.(c)が、液体または半固体である、態様1から34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
39.(d)が、液体または半固体である、態様1から36のいずれか1つに記載の医薬組成物。
40.固体の親水性構成成分(e)を含む、態様1から34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
41.高血糖の治療において薬物として使用するための、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物。
42.薬物として使用するための、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物。
43.硬カプセル剤中または軟カプセル剤中に被包されている、態様1から42のいずれか1つに記載の医薬組成物。
44.硬カプセル剤または軟カプセル剤が、腸溶性である、態様43に記載の医薬組成物。
45.態様1から44のいずれか1つに記載の医薬組成物を生成する方法。
46.態様45に記載の医薬組成物を生成する方法であって、
(a)誘導体化インスリンペプチドを、極性有機溶媒中に溶解させるステップと、
(b)それに続いて、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または親水性構成成分と混合するステップと
を含む方法。
47.高血糖を治療するための方法であって、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を経口投与するステップを含む方法。
48.肥満を治療するための方法であって、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を経口投与するステップを含む方法。
49.無茶食いまたは過食症を治療するための方法であって、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を経口投与するステップを含む方法。
【0191】
(実施例)
本明細書で使用する略語は、標準的な略語であり、例を以下に示す。βAlaは、ベータ-アラニルであり、tBuは、tert-ブチルであり、γGluは、ガンマL-グルタミルであり、OEGは、[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エチルカルボニルであり、RTは室温である。
【0192】
インスリンペプチドは、当業者に既知の組換え技術を使用して調製した。誘導体化インスリンペプチドは、当業者に既知の組換え技術を使用して調製した。例示的な調製手順としては、実施例1を参照されたい。
【0193】
(実施例1)
A14E,B25H,B29K(Nε-ヘキサデカンジオイル),desB30ヒトインスリン等の誘導体化インスリンペプチドの調製の一般的手順
【0194】
【化5】
【0195】
A14E,B25H,desB30ヒトインスリン(500mg)を、100mM水性Na2CO3(5mL)中に溶解させ、pHを、1N NaOHを用いて10.5に調節した。ヘキサデカン二酸terf-ブチルエステルN-ヒドロキシスクシンイミドエステルを、アセトニトリル(10W/V%)中に溶解させ、このインスリン溶液に添加し、温水(warm tap)下で穏やかに加熱して、沈殿を回避し、室温で30分間放置した。この混合物を凍結乾燥した。この固体を、氷冷95%トリフルオロ酢酸(5%の水を含有する)中に溶解させ、氷上に30分間保った。この混合物を真空下で濃縮し、ジクロロメタンを用いた再蒸発を実施した。残渣を水中に溶解させ、pHを、中性(6〜7)に調節し、この混合物を凍結乾燥した。得られたインスリンを、Source 15Q 21mlカラム上でのイオン交換クロマトグラフィーにより、15mM Tris、50v/v%エタノール、pH7.5(酢酸)中の15〜300mMの酢酸アンモニウムの勾配を用いて数回溶出して精製した。純粋な画分の最終的な脱塩を、RPC 3mLカラム上で、0.1v/v%TFA、50v/v%エタノールを用いて均一濃度で溶出して実施した。得られた純粋なインスリンを凍結乾燥した。
LC-MS(エレクトロスプレー):m/z=1483.2(M+4)/4。計算値:1483.5
【0196】
(実施例2)
誘導体化インスリンペプチド
B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの経口投与
インスリン誘導体B29K(800nmol/kgのNε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(4ml/kg))の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、Capmul MCM C8/10と磁気撹拌によりRTで混合して、透明な均質液体を得た。
【0197】
得られた親油性構成成分を基剤とする医薬組成物は、20%プロピレングリコールおよび80% Capmul MCM C8/10を有した。この医薬組成物を、一晩絶食させた雄のWistarラットに投与した(平均±SEM、n=6)。インスリン誘導体を含有しないビヒクルを対照として投与した。これらの結果を、図1に示す。
【0198】
(実施例3)
種々の親油性構成成分を用いて製剤化した誘導体化インスリンペプチドB29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの血漿への暴露
インスリン誘導体B29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明〜やや不透明な液体を得た。
【0199】
以下の親油性構成成分を基剤とする送達系中に製剤化したインスリン誘導体B29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への、60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に測定した(平均±sem、n=5〜6):
1)30%プロピレングリコールおよび70%capmul mcm c8、
2)30%プロピレングリコールおよび70%capmul mcm c8/10、
3)30%プロピレングリコールおよび70%capmul mcm c10、
4)30%プロピレングリコールおよび70%capmul pg8。
【0200】
30%プロピレングリコールおよび70%カプリル酸プロピレングリコール(capmul pg8)の中に溶解させたインスリン誘導体を有する送達系が、最も高い血漿への暴露を示した。これらの結果を、図2に示す。
【0201】
(実施例4)
界面活性剤を加えて製剤化したまたは加えずに製剤化した誘導体化インスリンペプチドB29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの血漿への暴露
インスリン誘導体B29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0202】
以下の医薬組成物中に製剤化したインスリン誘導体B29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に測定した(平均±SEM、n=5〜6):
20%プロピレングリコールおよび80%Capmul MCM C8/C10、
20%プロピレングリコール、50%Capmul MCM C8/10および30%Labrasol、
20%プロピレングリコール、50%Capmul MCM C8/C10および30%Chremophor RH40。
【0203】
これらの結果を、図3に示す。
【0204】
(実施例5)
SEDDS中に製剤化した場合の、血中グルコース低下作用の比較:誘導体化インスリンペプチド対非誘導体化インスリンペプチド
当該インスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、(58℃で一緒に融解させた)親油性構成成分および界面活性剤を添加し、磁気撹拌により35℃で5〜10分間混合して、透明な均質液体を得たが、この液体はRTでは固化した。経口投与の前に、これらの試料を体温まで加熱して、液体となした。得られたSEDDS組成物は、62.5%プロピレングリコール、31.25%Capmul MCM 10および6.25%ポロキサマー407中に溶解させた当該インスリンからなった(平均±SEM、n=6)。血中グルコース低下作用を、一晩絶食させた雄のSPRDラットに、SEDDS中の誘導体化インスリンペプチドB29(Nε-ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)14E B25H desB30ヒトインスリン4800nmol/kgまたはSEDDS中のB28Dヒトインスリン4800nmol/kgの経口投与(4ml/kg)後に測定した。インスリンを含有しないビヒクルを対照として投与した。このSEDDS医薬組成物中では、誘導体化インスリンペプチドは、非誘導体化インスリンと比較して、血中グルコース低下作用の持続を示した。
【0205】
これらの結果を、図4に示す。
【0206】
(実施例6)
PK研究のための、ラットへの腸内(空腸)注射の方法
麻酔を施したラットに、(誘導体化)インスリンペプチドを腸内(空腸内)に投与した。利用した化合物の血漿濃度、および血中グルコースの変化を、特定の間隔で投与後4時間測定した。それに続いて、薬物動態パラメータを、WinNonLinを使用して計算した。
【0207】
約18時間絶食させた雄のSprague-Dawleyラット(Taconic)、体重250〜300gに麻酔を施した。
【0208】
麻酔を施したラットを、37℃で安定化した恒温の毛布上に置いた。1mlのシリンジを装着した20cmのポリエチレンカテーテルに、インスリン製剤またはビヒクルを充填した。4〜5cmの正中線切開を腹壁中に設けた。このカテーテルを、盲腸から約50cmの空腸中央内に、腸壁を貫通させることによって穏やかに挿入した。腸内容物が存在する場合には、この適用部位を、±10cm移動させた。このカテーテルの先端を、腸セグメントの管腔のおよそ2cm内部に置き、結紮糸を使用せずに固定した。腸を、腹部空洞中の元の位置に注意深く戻し、腹部の壁および皮膚を、それぞれの層においてオートクリップ(autoclip)を用いて閉鎖した。0時点で、このラットに、試験化合物0.4ml/kgまたはビヒクルを、カテーテルを介して投与した。
【0209】
全血グルコース濃度を決定するために、血液試料を、尾部の先端において毛細血管を穿刺することによって、ヘパリン処理10μlのキャピラリーチューブ中に収集した。500μlの分析用緩衝液中への希釈後、血中グルコース濃度を、グルコースオキシダーゼ法により、Biosen自動分析装置(EKF Diagnostic Gmbh、ドイツ)を使用して測定した。平均血中グルコース濃度の測定(平均±SEM)を、各化合物について行った。
【0210】
血漿インスリンペプチド濃度を決定するために、試料を収集した。100μlの血液試料を、EDTAを含有する冷却したチューブ中に採取した。これらの試料を、遠心分離する(7000rpm、4℃、5分)まで氷上に保ち、血漿を、Micronicチューブ中にピペットで採取し、次いで、アッセイするまで、-20℃で凍結させた。これらのインスリン類似体の血漿濃度を、LOCIアッセイを使用して測定した。
【0211】
血液試料を、t=-10(血中グルコースのためのみ)において、t=-1(投与直前)において、および特定の間隔で投与後4時間採取した。
【0212】
血漿濃度-時間プロファイルを、非コンパートメント薬物動態解析により、WinNonlin Professional(Pharsight Inc.、Mountain View、CA、米国)を使用して解析した。
【0213】
計算を、各動物から得た個々の濃度-時間の値を使用して実施した。
【0214】
(実施例7)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
インスリン誘導体:A)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、B)A14E,B16H,B25H,B29K((N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル)),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、C)A14E,B25H,B29K(N(eps)[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体、ならびにD)A14E,B16H,B25H,B29K(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタンデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリンの試料を調製し、これらは、15%プロピレングリコール、55%Capmul MCMおよび30%Labrasolの中に製剤化したインスリン誘導体A)、B)、C)またはD)(120nmol/kg)からなった。
【0215】
これらの試料を、以下の方法により調製した。当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0216】
これらのインスリン誘導体の血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に決定した(平均±SEM、n=6)。
【0217】
これらの結果を、図5に示す。
【0218】
(実施例8)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
インスリン誘導体:A)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、B)A14E,B16H,B25H,B29K((N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル)),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、C)A14E,B25H,B29K(N(eps)[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体、ならびにD)A14E,B16H,B25H,B29K(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタンデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリンの試料を調製し、これらは、55%プロピレングリコール、35%Capmul MCMおよび10%Poloxamer 407の中に製剤化したインスリン誘導体A)、B)、C)またはD)(120nmol/kg)からなった。
【0219】
これらの試料を、以下の方法により調製した。当該インスリン誘導体の凍結乾燥した中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0220】
これらのインスリン誘導体の血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に決定した(平均±SEM、n=6)。
【0221】
これらの結果を、図6に示す。
【0222】
(実施例9)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
インスリン誘導体:A)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、B)A1N-オクタデカンジオイル-ガンマ-L-グルタミル-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルA14E B25H □B29R desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、C)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-g-Glu),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、D)A14E,B25H,(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB27,desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体、ならびにE)A14E,B25H,B29K(N(eps)lcosandioyl-gGlu),desB30ヒトインスリンの試料を調製し、これらは、55%プロピレングリコール、35%Capmul MCMおよび10%Poloxamer 407の中に製剤化したインスリン誘導体A)、B)、C)、D)またはE)からなった。
【0223】
これらの試料を、以下の方法により調製した。当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0224】
これらのインスリン誘導体の血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に決定した(平均±SEM、n=6)。
【0225】
これらの結果を、図7に示す。
【0226】
(実施例10)
水中またはプロピレングリコール中に溶解させた、誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露
インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)を、水中またはプロピレングリコール中に溶解させた。
【0227】
血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への注射後に決定した(平均±SEM、n=6)。これらの結果を、図8に示す。
【0228】
(実施例11)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンを、このインスリン誘導体と、
a)15%プロピレングリコールおよび40%Labrasolおよび45%Rylo MG08(カプリル酸グリセロール)、b)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、30%Rylo MG10(カプリン酸グリセロール)および15%カプリル酸プロピレングリコール、c)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、45%Rylo MG10(カプリン酸グリセロール)、ならびにd)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、30%Rylo MG08(カプリル酸グリセロール)、15%カプリル酸プロピレングリコールと
からなる異なる医薬組成物中に製剤化した。
【0229】
これらの試料を、以下の方法により調製した。インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0230】
様々な医薬組成物中のインスリン誘導体の血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に決定した(平均±SEM、n=5〜6)。これらの結果を、図9に示す。
【0231】
(実施例12)
非含水性SEDDS製剤中の高いインスリン誘導体薬物添加量
インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの種々の量を、SEDDS中に製剤化した。
【0232】
SEDDS中の1%(w/w)インスリン誘導体
最初に、10mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび440mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0233】
SEDDS中の2%(w/w)インスリン誘導体
最初に、20mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび430mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0234】
SEDDS中の3%(w/w)インスリン誘導体
最初に、30mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび420mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0235】
SEDDS中の4%(w/w)インスリン誘導体
最初に、40mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび410mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0236】
SEDDS中の9%(w/w)インスリン誘導体
最初に、90mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび360mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0237】
全てのSEDDSから透明な均質溶液様の製剤を得、このインスリン誘導体は製剤中に完全に溶解した。インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの驚くべきほど高い薬物添加量を、プロピレングリコール、Labrasolおよびモノカプリル酸グリセロール(Rylo MG08 Pharma)を含む非含水性医薬組成物中に溶解させることができた。
【0238】
(実施例13)
SEDDS中のインスリン誘導体をイヌに投与した後の血中グルコース低下作用。
雄のビーグル犬(体重17kg)において、15%プロピレングリコール、40%Labrasolおよび45%Capmul MCM(カプリル酸/カプリン酸グリセロール)を用いて製剤化した、180nmol/kgのインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)を含有する腸溶性HPMCカプセル剤を経口投与した後に、血中グルコース低下作用を測定した。
【0239】
これらの結果を、図10に示す。
【0240】
(実施例14)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
雄のビーグル犬(体重17kg)において、インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの24時間の血漿への暴露プロファイル(pMで示す)を、15%プロピレングリコール、40%Labrasolおよび45%Rylo MG08 Pharma(カプリル酸グリセロール)中に溶解させた30nmol/kgのこのインスリン誘導体を含有する腸溶性の軟ゼラチンカプセル剤を経口投与した後に測定した。これらの軟ゼラチンカプセル剤は、Eudragit L 30 D-55を用いてコートされていた。
【0241】
これらの結果を、図11に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導体化インスリンペプチド、少なくとも1つの極性有機溶媒および少なくとも1つの親油性構成成分を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物、ならびに該医薬組成物を使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、グルコースを活用する能力が、部分的または完全に喪失している代謝障害であり、この障害は、例えば、インスリンを用いて治療することができる。
【0003】
インスリンを送達するための一般的なアプローチは、侵襲性でもありかつ不都合でもある非経口投与である。したがって、タンパク質に基づいた医薬品の非侵襲性経路、例として、経口送達についての研究が増加している。しかし、インスリンペプチド等の治療用のペプチドまたはタンパク質の投与は、経口投与が好ましいが、消化(GI)管における酵素分解、薬物流出ポンプ、腸粘膜からの不十分なかつ変動する吸収等のいくつかの障壁、ならびに肝臓における初回通過代謝に起因して、非経口経路に限定されることが多い。ヒトインスリンは、胃(ペプシン)、腸管腔(キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ等)およびGI管の粘膜表面(アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、エンテロペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ等)において見出される種々の消化酵素によって分解される。
【0004】
これは、残念なことである。というのは、多くのペプチドおよび多くのタンパク質は、臨床的に有効であることが証明されており、投与が簡単であり、かつレシピエントが許容できるのであれば、これらの使用がより広まり得るであろうからである。
【0005】
経口によるタンパク質/ペプチドの送達についての最近の製剤設計は、プロテアーゼ阻害剤、浸透増強剤、ポリマーベースの送達系、およびインスリンコンジュゲートとの同時製剤を含む。
【0006】
薬物を、哺乳動物、例えば、ヒトに経口投与するための有用なビヒクルには、マイクロエマルジョンプレコンセントレート(microemulsion preconcentrate)があり、これはまた、SMEDDS(自己マイクロエマルジョン化薬物送達系(self microemulsifying drug delivery system)、またはSEDDS(自己乳化薬物送達系(self emulsifying drug delivery system))とも呼ばれている。SEDDSまたはSMEDDSは、例えば、少なくとも1つの油性成分またはその他の親油性成分、少なくとも1つの界面活性剤、場合により親水性成分、および必要に応じて、任意のその他の薬剤または賦形剤を含む。この系の構成成分が、水性媒体、例えば、水と接触すると、ほとんどまたは全く撹拌しなくても、水中油型のエマルジョンまたはマイクロエマルジョン等のマイクロエマルジョンまたはエマルジョンが自発的に形成する。マイクロエマルジョンは、2つの非混和性の液体を含む熱力学的に安定な系であり、この系においては、一方の液体が、界面活性剤の存在によって他方の液体中に微細に分かれている。形成したマイクロエマルジョンの外観は、例えば、透明もしくは半透明、やや不透明、乳白色であるか、または分散相の粒子サイズが小さいことから不透明ではないもしくは実質的に不透明ではないように見える。
【0007】
複数のシームレスミニカプセル(seamless minicapsule)を含む医薬製剤に関するWO2006/035418は、改変植物油、界面活性剤、共溶媒、胆汁酸塩、インスリンおよびロイペプチンを含むインスリンのSEDDS組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/035418
【特許文献2】WO95/07931
【特許文献3】WO2005/012347
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Handbook of Chemistry and Physics、CMC Press
【非特許文献2】Griffin WC、「Classification of Surface-Active Agents by ‘HLB’」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1(1949)、311頁
【非特許文献3】Davies JT、「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity(1957)、426〜438頁
【非特許文献4】Handbook of Pharmaceutical Excipients、Roweら編、4版、Pharmaceutical Press(2003)
【非特許文献5】GreeneおよびWuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons、1999
【非特許文献6】Hudson and Andersen、Peptide Science、76巻(4)、298〜308頁(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、経口投与のための、誘導体化インスリンを含む物理的かつ化学的に安定な医薬組成物が依然として求められている。したがって、本発明は、特に興味深い生物学的利用率の特徴、特に興味深い薬物動態学的な特徴、安定性の改善、および薬学的に許容できるカプセル剤中への充填の簡便性等の加工の改善を示す、誘導体化インスリンを含有する経口投与に特に適した組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物に関する。
【0012】
一態様では、この医薬組成物は、透明な非含水性の液体の形態をとる。
【0013】
一態様では、この医薬組成物は、透明な非含水性の液体であり、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む。
【0014】
一態様では、この医薬組成物は、少なくとも1つの界面活性剤を含み、この医薬組成物は、自発的分散性である。
【0015】
一態様では、この医薬組成物中においては、誘導体化インスリンペプチドは、アシル化インスリンペプチドである。
【0016】
また、本発明は、薬物として使用するための医薬組成物も企図する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】脂質を基剤とする医薬組成物中に製剤化した800nmol/kgのインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、すなわち、20%プロピレングリコールおよび80%Capmul MCM C8/10中に溶解させたインスリン(-□-)の、一晩絶食させた雄のWistarラットへの経口投与(4ml/kg)後の血中グルコース低下作用を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。インスリン誘導体を含有しないビヒクルを対照として投与した(-■-)。
【図2】異なる脂質を基剤とする送達系、すなわち、(-■-)30%プロピレングリコールおよび70%Capmul MCM C8、(-□-)30%プロピレングリコールおよび70%Capmul MCM C8/10、(-×-)30%プロピレングリコールおよび70%Capmul MCM C10、(-〇-)30%プロピレングリコールおよび70%Capmul PG8中に製剤化したインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=5〜6)。30%プロピレングリコールおよび70%カプリル酸プロピレングリコール(Capmul PG8)中に溶解させたこのインスリン誘導体を有する送達系が、最も高い血漿への暴露を示した。
【図3】異なる医薬組成物、すなわち、(-■-)20%プロピレングリコールおよび80%Capmul MCM C8/C10、(-□-)20%プロピレングリコール、50%Capmul MCM C8/10および30%Labrasol、(-×-)20%プロピレングリコール、50%Capmul MCM C8/C10および30%Chremophor RH40中に製剤化したインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=5〜6)。
【図4】SEDDS中のインスリン誘導体B29N(eps)-ヘキサデカンジオイル-ガンマ-L-Glu,A14E B25H desB30ヒトインスリン4800nmol/kg(-□-)、またはSEDDS中のB28Dヒトインスリン4800nmol/kg(-■-)の、一晩絶食させた雄のSPRDラットへの経口投与(4ml/kg)後の血中グルコース低下作用を示すグラフである。SEDDS組成物は、62.5%プロピレングリコール、31.25%Capmul MCM 10および6.25%ポロキサマー407中に溶解させた当該インスリンである(平均±SEM、n=6)。インスリンを含有しないビヒクルを対照として投与した(-▲-)。記載の医薬組成物中では、アシル化インスリンは、非アシル化インスリンと比較して、血中グルコース低下作用の持続を示した。
【図5】15%プロピレングリコール、55%Capmul MCMおよび30%Labrasol中に製剤化したインスリン誘導体(-▲-)A) A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-▼-)B)A14E,B16H,B25H,B29K((N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル)),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-〇-)C)A14E,B25H,B29K(N(eps)[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体(-□-)D)A14E,B16H,B25H,B29K(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。試料の調製:当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【図6】55%プロピレングリコール、35%Capmul MCMおよび10%Poloxamer 407中に製剤化したインスリン誘導体(-■-)A) A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-◇-)B)A14E,B16H,B25H,B29K((N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル)),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-×-)C)A14E,B25H,B29K(N(eps)[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体(-□-)D)A14E,B16H,B25H,B29K(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン(120nmol/kg)の、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。試料の調製:当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【図7】55%プロピレングリコール、35%Capmul MCMおよび10%Poloxamer 407中に製剤化したインスリン誘導体(-□-)A)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-◇-)B)A1N-オクタデカンジオイル-ガンマ-L-グルタミル-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルA14E B25H □B29R desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-▼-)C)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-g-Glu),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体(-■-)D)A14E,B25H,(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB27,desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体(-×-)E)A14E,B25H,B29K(N(eps)イコサンジオイル-gGlu),desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。試料の調製:当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【図8】絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中へ注射した、水中またはプロピレングリコール中に溶解させたインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=6)。
【図9】異なる医薬組成物、すなわち、(-■-)15%プロピレングリコールおよび40%Labrasolおよび45%Rylo MG08 (カプリル酸グリセロール)、(-□-)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、30%Rylo MG 10(カプリン酸グリセロール)および15%カプリル酸プロピレングリコール、(-×-)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、45%Rylo MG10(カプリン酸グリセロール)、ならびに(-△-)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、30%Rylo MG08(カプリル酸グリセロール)、15%カプリル酸プロピレングリコール中に製剤化したインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後の血漿への暴露(pMで示す)を示すグラフである(平均±SEM、n=5〜6)。試料の調製:当該インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【図10】雄のビーグル犬(体重17kg)における、15%プロピレングリコール、40%Labrasolおよび45%Capmul MCM(カプリル酸/カプリン酸グリセロール)を用いて製剤化した、180nmol/kgのインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)を含有する腸溶性HPMCカプセル剤の経口投与後の血中グルコース低下作用を示すグラフである。
【図11】雄のビーグル犬(体重17kg)における、インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの24時間の血漿への暴露プロファイル(pMで示す)を示すグラフである。これは、15%プロピレングリコール、40%Labrasolおよび45%Rylo MG08 Pharma(カプリル酸グリセロール)中に溶解させた30nmol/kgのこのインスリン誘導体を含有する腸溶性の軟ゼラチンカプセル剤の経口投与後のプロファイルである。軟ゼラチンカプセル剤は、Eudragit L 30 D-55を用いてコーティングされていた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、ならびに場合により界面活性剤(d)および/または少なくとも1つの固体の親水性構成成分(e)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物に関する。
【0019】
本発明による医薬組成物を使用して、誘導体化インスリンペプチド、極性有機溶媒、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または固体の親水性構成成分を含む、経口投与に特に適した非含水性組成物を得ることができることが見出されるに至った。
【0020】
したがって、驚くべきことに、本発明による医薬組成物は、経口投与された該誘導体化インスリンペプチドの取込みの有効性を増強し、かつ作用プロファイルも維持されることが見出されるに至った。
【0021】
また、本発明による組成物中の誘導体化インスリンペプチドは、良好な安定性を有することも見出されるに至った。
【0022】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの固体の親水性構成成分(d)を含む医薬組成物に関し、該医薬組成物は、油性溶液の形態をとる。
【0023】
別の態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および少なくとも1つの固体の親水性構成成分(d)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物に関し、該医薬組成物は、油性溶液の形態をとる。さらに別の態様では、この少なくとも1つの固体の親水性構成成分(d)は、少なくとも1つの固体の親水性ポリマーである。さらに別の態様では、少なくとも1つの固体の親水性構成成分を含むこの医薬組成物は、界面活性剤を含有せず、該界面活性剤は、少なくとも8であるHLB値を有する。すなわち、一態様では、この組成物中には、少なくとも8であるHLB値を有する界面活性剤は存在しない。
【0024】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、少なくとも1つの界面活性剤(d)、および場合により少なくとも1つの固体の親水性構成成分(e)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物に関し、該医薬組成物は、自発的分散性である。
【0025】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物に関し、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとる。
【0026】
この非含水性の液体医薬組成物が、透明な溶液の形態をとる場合、この組成物は、その物理的安定性が改善されているというさらなる利点を有する。本発明の一態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については6週間超安定であり、保管については3年超安定である。
【0027】
本発明の別の態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については4週間超安定であり、保管については3年超安定である。
【0028】
本発明のさらなる態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については4週間超安定であり、保管については2年超安定である。
【0029】
本発明のその上さらなる態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については2週間超安定であり、保管については2年超安定である。
【0030】
本発明のその上さらなる態様では、本発明による非含水性の液体医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、使用については1週間超安定であり、保管については1年超安定である。
【0031】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物に関し、この医薬組成物は、透明な油性溶液の形態をとる。
【0032】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)を含む非含水性の液体医薬組成物に関し、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとる。
【0033】
本発明の一態様では、全ての構成成分が、液体または溶解状態の固体として存在する。したがって、誘導体化インスリンペプチドは、前記の態様では、少なくとも1つの極性有機溶媒中に溶解させることができる。
【0034】
一態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物に関し、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、該医薬組成物は、自発的分散性である。
【0035】
一態様では、本発明による医薬組成物は、非含水性の油性溶液の医薬組成物および/またはSEDDSもしくはSMEDDSの医薬組成物である。
【0036】
本発明によるSEDDSおよびSMEDDSの医薬組成物は、このインスリン誘導体の腸吸収を増強し、このインスリン誘導体の酵素分解を低下させる追加の利点も有する。
【0037】
一態様では、本発明による医薬組成物は、自己乳化薬物送達系(SEDDS)である。したがって、本発明者は、本発明によるSEDDSによって、例えば、皮下においてしばしば使用される水溶液および/または脂質を含有しない極性溶媒の溶液等の伝統的な医薬組成物と比較して経口生物学的利用率が改善されていることを見出すに至った。
【0038】
誘導体化インスリンペプチドは、本発明によるこの医薬組成物の薬学的に許容できる極性有機溶媒中の水溶性が高いことが見出されるに至った。したがって前記医薬組成物中の必要な極性有機溶媒の量は、比較的少ない。このことによって、本発明による医薬組成物の、カプセル剤の材料との適合性が改善され得る。
【0039】
また、本発明は、親油性構成成分、界面活性剤および極性有機溶媒、ならびに場合により固体の親水性構成成分(e)を含む担体中に誘導体化インスリンペプチドを含む医薬組成物にも関する。固体の親水性構成成分が存在する態様では、親油性構成成分および界面活性剤からなる群から選択される構成成分のうちの少なくとも1つが、液体または半固体である。液体の親水性構成成分(e)が存在する態様では、親油性構成成分および界面活性剤の両方が固体であり得る。一態様では、この界面活性剤は、液体または半固体である。一態様では、固体の親水性構成成分が存在する。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「担体」は、治療上活性な水溶性の誘導体化インスリンペプチドを生物学的な膜を越えてまたは体液内で輸送する薬学的に許容できるビヒクルを指す。本発明の担体は、親油性構成成分および極性有機溶媒、ならびに場合により固体の親水性構成成分および/または界面活性剤を含む。一態様では、この担体は、親油性構成成分および極性有機溶媒、ならびに場合により界面活性剤を含む。一態様では、この担体は、親油性構成成分、極性有機溶媒および界面活性剤を含む。本発明の担体を、水性媒体、例えば、水、水を含有する流体、または消化管の胃液等、哺乳動物のin vivo媒体と接触させる、またはこうした水性媒体を用いて分散させるもしくは希釈すると、この担体は、エマルジョン構造またはコロイド構造を自発的に生成することができる。このコロイド構造は、固体であってもよく、またはドメイン、液滴、ミセル、混合ミセル、ベシクルおよびナノ粒子を含めた、液体粒子であってもよい。
【0041】
一態様では、この医薬組成物を水性媒体と接触させると、マイクロエマルジョン等のエマルジョンが自発的に形成する。特に、本発明の送達系が経口摂取されると、エマルジョンまたはマイクロエマルジョンが哺乳動物の消化管中で形成される。また、上記の構成成分に加えて、この自発的分散性プレコンセントレートは、緩衝剤、pH調節剤、安定化剤等のその他の賦形剤、およびそのような薬学的用途に適切であると当業者が認識するその他のアジュバントを場合により含有してもよい。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「非含水性の」は、医薬組成物の調製の間に水を添加しない組成物を指す。この医薬組成物中の誘導体化インスリンペプチドおよび/または賦形剤のうちの1つもしくは複数が、本発明による医薬組成物を調製する前からそうしたペプチドおよび/または賦形剤に結合している少量の水を有する場合がある。一態様では、本発明による非含水性の医薬組成物は、10%w/w未満の水を含む。別の態様では、本発明による組成物は、5%w/w未満の水を含む。本発明による組成物は、別の態様では、4%w/w未満の水を含み、別の態様では、3%w/w未満の水を含み、別の態様では、2%w/w未満の水を含み、さらに別の態様では、1%w/w未満の水を含む。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「マイクロエマルジョンプレコンセントレート」は、水性媒体、例えば、水または経口適用後の消化液中で、マイクロエマルジョン、例えば、水中油型マイクロエマルジョンを自発的に形成する組成物を意味する。この組成物は、水性媒体中で、例えば、1:5、1:10、1:50または1:100以上の希釈度で希釈されると自己乳化する。
【0044】
極性有機溶媒中の誘導体化インスリンペプチドの高い溶解性に起因して、SEDDS中の極性有機溶媒の総量を低く保つことができ、このことによって、一方では、この製剤の、カプセル剤の材料との適合性が改善され、他方では、この組成物により大きな設計空間が与えられる。
【0045】
本発明による医薬組成物は、親油性構成成分および有機極性構成成分を含む。この薬物送達系の構成成分は、任意の相対量で存在し得る。一態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の重量に関して最大50%の極性有機構成成分を含む。すなわち、その担体の重量の最大50%が、極性有機構成成分からなる。一態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の重量に関して40%未満、30%未満、20%未満、15%未満または10%未満の極性有機構成成分を含む。さらなる態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の総重量に関して5%〜40%の極性有機溶媒を含む。その上さらなる態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の総重量に関して10%〜30%の極性有機溶媒を含む。一態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の総重量に関して10%〜15%の極性有機溶媒を含む。さらなる態様では、この薬物送達系は、その担体組成物の総重量に関して約15%の極性有機溶媒を含む。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「約(about)」は、±10%等、規定された数値の合理的な付近の値を含有することを意味する。
【0047】
本発明による医薬組成物は、散剤ではない組成物の形態、すなわち、半固体または液体の形態をとる。
【0048】
一態様では、本発明による医薬組成物は、液体の形態をとる。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「液体」は、室温(「RT」)で液体の状態をとり、例えば、20℃未満の融点を有する構成成分または組成物を意味する。本明細書で使用する場合、室温(RT)は、およそ20〜25℃を意味する。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「半固体」は、室温で液体ではなく、例えば、室温と約40℃との間の融点を有する構成成分または組成物に関する。半固体は、物質の固体および液体の両方の状態の性質および/または属性を有し得る。本明細書で使用する場合、用語「凝固させる」は、固体または半固体を作製することを意味する。
【0051】
本発明による半固体または液体の組成物の例は、例えば、油、溶液、液体または半固体のSMEDDS、および液体または半固体のSEDDSの形態をとる医薬組成物である。
【0052】
本明細書では、「SMEDDS」(自己マイクロエマルジョン化薬物送達系)を、穏やかな撹拌またはGl管中で遭遇するであろう消化運動の条件下で水性媒体に曝されると水中油型マイクロエマルジョンを迅速に形成する、親水性構成成分、界面活性剤、場合により補助界面活性剤、および薬物の等方性混合物と定義する。
【0053】
本明細書では、「SEDDS」(自己乳化薬物送達系)を、穏やかな撹拌またはGl管中で遭遇するであろう消化運動の条件下で水性媒体に曝されると微細な水中油型エマルジョンを自発的に形成する、親水性構成成分、界面活性剤、場合により補助界面活性剤、および薬物の混合物と定義する。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「マイクロエマルジョン」は、その構成成分を水性媒体と接触させると自発的にまたは実質的に自発的に形成される、透明なまたは半透明な、やや不透明な、乳白色の、不透明ではないまたは実質的に不透明ではないコロイド状分散剤を指す。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「エマルジョン」は、その構成成分を水性媒体と接触させると自発的にまたは実質的に自発的に形成される、やや不透明な、乳白色の、または不透明なコロイド状分散剤を指す。
【0056】
マイクロエマルジョンは、熱力学的に安定であり、例えば、固体または液体の状態(例えば、液体の脂質の粒子または液滴)の均質に分散している粒子またはドメインを含有し、これらの粒子またはドメインの平均直径は、標準的な光散乱の技法により、例えば、MALVERN ZETASIZER Nano ZSを使用して測定した場合、約500nm未満、例えば、約400nm未満、または300nm未満、200nm未満、100nm未満であり、約2〜4nm超である。本明細書で使用する場合、用語「ドメインサイズ」は、反復散乱単位(repetitive scattering unit)を指し、例えば、小角X線によって測定することができる。本発明の一態様では、このドメインサイズは、400nmより小さく、別の態様では、300nmより小さく、さらに別の態様では、200nmより小さい。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「自発的分散性」は、プレコンセントレートを指す場合には、本発明の組成物の構成成分を水性媒体と、例えば、単に短期間、例えば、10秒間手で振とうすることによって接触させると、水性媒体で希釈されて、マイクロエマルジョン、エマルジョン、およびその他のコロイド状の系等のコロイド構造を生成することができる組成物を指す。一態様では、本発明による自発的分散性コンセントレートは、SEDDSまたはSMEDDSである。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「親油性構成成分」は、水よりも油に適合する物質、材料または成分を指す。親油性を有する材料は、水に不溶性であるかまたはほとんど不溶性であるが、油またはその他の非極性溶媒には容易に溶解する。用語「親油性構成成分」は、1つまたは複数の親油性物質を含むことができる。複数の親油性構成成分が、この自発的分散性プレコンセントレートの親油性相を構成し、例えば、水中油型のエマルジョンまたはマイクロエマルジョン中の油性の局面を形成することができる。室温では、この自発的分散性プレコンセントレートの親油性構成成分および親油性相は、固体、半固体または液体であり得る。例えば、固体の親油性構成成分が、ペースト、顆粒形態、粉末またはフレークとして存在することができる。2つ以上の賦形剤が親油性構成成分をなす場合には、この親油性構成成分は、液体混合物、固体混合物、または液体と固体の混合物であり得る。
【0059】
本発明の一態様では、この親油性構成成分は、この医薬組成物中に、その担体組成物の少なくとも20%w/wの量で存在する。すなわち、その担体の重量の少なくとも20%が、親油性構成成分からなる。本発明のさらなる態様では、この親油性構成成分は、少なくとも30%w/w、少なくとも50%w/w、少なくとも80%w/w、または少なくとも90%w/wの量で存在する。例えば、この親油性構成成分は、その担体の重量に関して、約5%〜約90%、例えば、約15%〜約60%、例えば、約20%〜約60%、例えば、約20%〜約40%の量で存在することができる。本発明の一態様では、この親油性構成成分は、45%〜55%の量で存在する。本発明の一態様では、この親油性構成成分は、約45%の量で存在する。
【0060】
固体の親油性構成成分、すなわち、室温で固体または半固体である親油性構成成分の例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
1.モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの混合物、例として、WITEPSOL HI5として、Sasol Germany(Witten、ドイツ)から市販されている水素添加ココ-グリセリド(約33.5℃〜約37℃の融点(m.p.));脂肪酸トリグリセリド、例えば、C10〜C22脂肪酸トリグリセリドの例として、植物油等の天然の油および水素添加した油が挙げられ;
2.エステル、例として、MONOSTEOL(約33℃〜約36℃のm.p.)として、Gattefosse Corp.(Paramus、NJ)から市販されているステアリン酸プロピレングリコール(PG);HYDRINE(約44.5℃〜約48.5℃のm.p.)として、Gattefosse Corp.から市販されているパルミトステアリン酸ジエチレングリコール;
3.ポリグリコシル化飽和グリセリド、例として、LABRAFIL M2130 CSとして、Gattefosse Corpから、またはGelucire 33/01として市販されている水素添加パーム/パーム核油PEG-6エステル(約30.5℃〜約38℃のm.p.);
4.脂肪アルコール、例として、LANETTE 14として、Cognis Corp.(Cincinnati、OH)から市販されているミリスチルアルコール(約39℃のm.p.);脂肪酸と脂肪アルコールとのエステル、例えば、パルミチン酸セチル(約50℃のm.p.);例えば、商品名ARLAMOL ISMLの下、Uniqema(New Castle、Delaware)から市販されている、例えば、約43℃の融点を有するモノラウリン酸イソソルビド;
5.PEG-脂肪アルコールエーテル、例として、例えば、BRIJ 52として、Uniqemaから市販されている、約33℃の融点を有するポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、または例えば、BRIJ 72として、Uniqemaから市販されている、約43℃の融点を有するポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル;
6.ソルビタンエステル、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、モノパルミチン酸ソルビタンまたはモノステアリン酸ソルビタン、例えば、SPAN 40またはSPAN 60としてUniqemaから市販されている、それぞれ、約43℃〜48℃または約53℃〜57℃、および41℃〜54℃の融点を有するモノパルミチン酸ソルビタンまたはモノステアリン酸ソルビタン;ならびに
7.モノ-C6〜C14-脂肪酸グルセリルエステル。これらのエステルは、グリセロールを、植物油を用いてエステル化し、それに続いて、分子蒸留することによって得られる。モノグリセリドとして、これらに限定されないが、対称性モノグリセリド(すなわち、β-モノグリセリド)および非対称性モノグリセリド(α-モノグリセリド)の両方が挙げられる。また、モノグリセリドは、一様なグリセリド(その中では、脂肪酸構成要素が、単一の脂肪酸から主として構成される)も、混合性のグリセリド(すなわち、その中では、脂肪酸構成要素が、種々の脂肪酸から構成される)も含む。この脂肪酸構成要素は、鎖長が、例えば、C8〜C14である飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の両方を含むことができる。特に適しているのは、例えば、IMWITOR 312として、Sasol North America(Houston、TX)から市販されているモノラウリン酸グリセリル(約56℃〜60℃のm.p.);IMWITOR 928として、Sasolから市販されているグリセリルモノジココエート(約33℃〜37℃のm.p.);IMWITOR 370として市販されているクエン酸モノグリセリル(約59〜約63℃のm.p.);もしくは例えば、IMWITOR 900として、Sasolから市販されているモノステアリン酸グリセリル(約56℃〜61℃のm.p.);または例えば、IMWITOR 960として、Sasolから市販されている自己乳化モノステアリン酸グリセロール(約56℃〜61℃のm.p.)である。
【0061】
液体および半固体の親油性構成成分、すなわち、室温で液体である親油性構成成分の例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
1.モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、例として、中鎖のモノグリセリドおよびジグリセリドの混合物、CAPMUL MCMとして、Abitec Corp.(Columbus、OH)から市販されているカプリル酸/カプリン酸グリセリル;
2.例えば、C6〜C18、例えば、C6〜C16、例えば、C8〜C10、例えば、C8の脂肪酸モノ脂肪酸グリセリルエステルもしくはジ脂肪酸グリセリルエステル、またはそれらのアセチル化誘導体、例えば、Eastman Chemicals(Kingsport、TN)製のMYVACET 9-45もしくは9-08、またはSasol製のIMWITOR 308もしくは312;モノカプリル酸グリセロール(Danisco製のRylo MG08 Pharma等)、またはモノカプリン酸グリセロール(Danisco製のRylo MG10 Pharma等);
3.例えば、C8〜C20、例えば、C8〜C12の脂肪酸のモノ-またはジ-脂肪酸プロピレングリコールエステル、例えば、LAUROGLYCOL 90、SEFSOL 218、またはCAPRYOL 90、またはAbitec Corp.製のCAPMUL PG-8(カプリル酸プロピレングリコールと同じ);
4.油、例として、紅花油、ゴマ油、扁桃油、落花生油、パーム油、小麦胚種油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ヤシ油、綿実油、大豆油、オリーブ油、および鉱油;
5.例えば、C8〜C20の飽和またはモノ-もしくはジ-不飽和の脂肪酸またはアルコール、例えば、オレイン酸、オレイルアルコール、リノール酸、カプリン酸、カプリル酸、カプロン酸、テトラデカノール、ドデカノール、デカノール;
6.例えば、C8〜C12の中鎖脂肪酸トリグリセリド、例えば、MIGLYOL 812、または長鎖脂肪酸トリグリセリド、例えば、植物油;
7.トランスエステル化エトキシル化植物油、例えば、LABRAFIL M2125 CSとして、Gattefosse Corpから市販されている植物油;
8.脂肪酸と第一級アルコールとの、例えば、C8〜C20脂肪酸とC2〜C3アルコールとのエステル化化合物、例えば、リノール酸エチル、例えば、NIKKOL VF-EとしてNikko Chemicals(東京、日本)から市販されているリノール酸エチル、酪酸エチル、カプリル酸エチルオレイン酸(ethyl caprylate oleic acid)、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、およびカプリル酸エチル;
9.必須油、またはスペアミント油、丁子油、レモン油およびハッカ油等の植物に特徴的な香りを与える揮発油のクラスのいずれか;
10.必須油の画分または構成要素、例として、メントール、カルバクロールおよびチモール;
11.合成油、例として、トリアセチン、トリブチリン;
12.クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル;
13.脂肪酸ポリグリセロールエステル、例えば、モノオレイン酸ジグリセリル、例えば、Nikko Chemicals製のDGMO-C、DGMO-90、DGDO;ならびに
14.ソルビタンエステル、例えば、脂肪酸ソルビタンエステル、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、例えば、SPAN 20として、Uniqemaから市販されているモノラウリン酸ソルビタン。
15.リン脂質、例えば、アルキル-O-リン脂質、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジ-O-アルキルホスファチジン酸、L-アルファ-リゾホスファチジルコリン(LPC)、L-アルファ-リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、L-アルファ-リゾホスファチジルグリセロール(LPG)、L-アルファ-リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、L-アルファ-ホスファチジン酸(PA)、L-アルファ-ホスファチジルコリン(PC)、L-アルファ-ホスファチジルエタノールアミン(PE)、L-アルファ-ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、L-アルファ-ホスファチジルイノシトール(PI)、L-アルファ-ホスファチジルセリン(PS)、リゾ-ホスファチジルコリン、リゾ-ホスファチジルグリセロール、LARODANから市販されているsn-グリセロホスホリルコリン、またはLipoid GmbHから市販されている大豆リン脂質(Lipoid S100)。
【0062】
本発明の一態様では、この親油性構成成分は、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドからなる群から選択される1つまたは複数である。さらなる態様では、この親油性構成成分は、モノグリセリドおよびジグリセリドからなる群から選択される1つまたは複数である。その上さらなる態様では、この親油性構成成分は、Capmul MCMまたはCapmul PG-8である。その上さらなる態様では、この親油性構成成分は、Capmul PG-8である。さらに別の態様では、この親油性構成成分は、モノカプリル酸グリセロール(例えば、Danisco製のRylo MG08 Pharma)である。
【0063】
用語「極性有機溶媒」は、本明細書の一態様では、O-H結合もしくはN-H結合を含有する、親水性、水混和性の炭素含有溶媒である「極性のプロトン性有機溶媒」、またはそれらの混合物を指す。極性は、溶媒の比誘電率または双極子モーメントに反映される。溶媒の極性によって、その溶媒がどの種類の化合物を溶解させることができるか、およびその溶媒がどのその他の溶媒または液体化合物と混和するかが決定される。典型的には、極性有機溶媒は、極性化合物を最も良好に溶解させ、非極性溶媒は、非極性化合物を最も良好に溶解させる。すなわち、「似たものどうしはよく溶ける(like dissolves like)」。無機塩(例えば、塩化ナトリウム)のような極性の高い化合物は、極性の強い溶媒中にしか溶解しない。
【0064】
本発明の極性有機溶媒を、溶媒から選択することができ、誘導体化インスリンペプチドが、前記極性有機溶媒中では、その他の溶媒中よりも良好な溶解性を示す。
【0065】
アシル化インスリンペプチド等の誘導体化インスリンペプチドを、プロピレングリコール、グリセロールおよびPEG200等の非含水性の薬学的に許容できる極性有機溶媒中に多量に溶解させることができることもさらに見出されるに至った。一態様では、少なくとも20%(w/w)の誘導体化インスリンペプチドが、本発明による非含水性の薬学的に許容できる極性有機溶媒中に溶解する。すなわち、20%w/wの誘導体化インスリンペプチドをこの極性有機溶媒に添加すると、透明な溶液が得られる。別の態様では、少なくとも25%、30%、40%または50%(w/w)の誘導体化インスリンペプチドが、本発明による非含水性の薬学的に許容できる極性有機溶媒中に溶解する。
【0066】
したがって、この極性有機溶媒は、O-H結合もしくはN-H結合を含有する、親水性、水混和性の炭素含有溶媒、またはそれらの混合物を指すことができる。極性は、溶媒の比誘電率または双極子モーメントに反映される。溶媒の極性によって、その溶媒がどの種類の化合物を溶解させることができるか、およびその溶媒がどのその他の溶媒または液体化合物と混和するかが決定される。典型的には、極性溶媒は、極性化合物を最も良好に溶解させ、非極性溶媒は、非極性化合物を最も良好に溶解させる。すなわち、「似たものどうしはよく溶ける」。無機塩(例えば、塩化ナトリウム)のような極性の高い化合物は、極性の強い溶媒中にしか溶解しない。
【0067】
本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、20超、好ましくは、20〜50の範囲の比誘電率を有する溶媒である。Table 1(表1)に、異なる極性有機溶媒の例を、参照としての水と一緒に列挙する。
【0068】
Table 1(表1). 選択された極性有機溶媒および参照としての水の比誘電率(静電誘電率)(Handbook of Chemistry and Physics、CMC Press、比誘電率は、緩和が発生しない静電場または比較的低い周波数において測定される)。
【0069】
【表1】
【0070】
現在の状況では、1,2-プロパンジオールとプロピレングリコールとを互換的に使用する。現在の状況では、プロパントリオールとグリセロールとを互換的に使用する。現在の状況では、エタンジオールとエチレングリコールとを互換的に使用する。
【0071】
本発明の一態様では、この極性有機溶媒は、ポリオールからなる群から選択される。本明細書で使用する場合、用語「ポリオール」は、複数のヒドロキシル基を含有する化合物を指す。
【0072】
本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、ジオールおよびトリオールからなる群から選択される。本明細書で使用する場合、用語「ジオール」は、2つのヒドロキシル基を含有する化合物を指す。本明細書で使用する場合、用語「トリオール」は、3つのヒドロキシル基を含有する化合物を指す。
【0073】
本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、グリセロール(プロパントリオール)、エタンジオール(エチレングリコール)、1,3-プロパンジオール、メタノール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、エタノールおよびイソプロパノール、またはそれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される。本発明の別の態様では、この極性有機溶媒はグリセロールである。この極性有機溶媒は、高い投与量においてさえ生体適合性であり、高い溶媒としての能力(solvent capacity)を、例えば、インスリンペプチドおよびGLP-1化合物について有する。本発明の別の態様では、この極性有機溶媒は、プロピレングリコールおよびエチレングリコールからなる群から選択される。これらの極性有機溶媒は、低い粘度を有し、中等度の用量においては生体適合性であり、非常に高い極性有機溶媒としての能力を、例えば、インスリンペプチドおよびGLP-1化合物について有する。本発明の別の態様では、この極性有機溶媒はプロピレングリコールである。
【0074】
この極性有機溶媒は、この可溶化された誘導体化インスリンペプチドの、例えば、メイラード反応による化学的劣化を最小限に留めるために、好ましくは、純度が高く、例えば、アルデヒド、ケトンおよびその他の還元性不純物の含有量は低くあるべきである。グリシルグリシンおよびエチレンジアミンのような捕捉分子を、ポリオール等の極性有機溶媒を含む製剤に添加して、誘導体化インスリンペプチドの劣化を低下させることができ、一方、抗酸化剤を添加して、さらなる還元性不純物の形成速度を低下させることもできる。
【0075】
本発明の一態様では、この極性有機溶媒は、この医薬組成物中に、その担体組成物の重量に関して1〜50%w/wの量で存在する。すなわち、その担体の重量の1%〜50%が、極性有機構成成分からなる。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、5〜40%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、5〜30%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この有機極性溶媒は、10〜30%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、10〜25%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、10〜15%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、約20%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、この極性有機溶媒は、約15%w/wの量で存在する。
【0076】
本発明の一態様では、この極性有機溶媒は、プロピレングリコールであり、この医薬組成物の担体中に、1〜50%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、5〜40%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、10〜30%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、10〜25%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、10〜20%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、10〜15%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、約20%w/wの量で存在する。本発明のさらなる態様では、プロピレングリコールは、約15%w/wの量で存在する。
【0077】
本発明の一態様では、この極性有機溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。さらなる態様では、この極性有機溶媒はグリセロールである。さらなる態様では、この極性有機溶媒は、グリセロールとプロピレングリコールとの混合物である。その上さらなる態様では、この極性有機溶媒はプロピレングリコールである。
【0078】
この医薬組成物を、室温で固体または半固体にするためまたはそうするのを支援するために、固体の親水性構成成分を、この医薬組成物に添加することができる。この親水性構成成分は、2つ以上の賦形剤を含むことができる。2つ以上の賦形剤が親水性構成成分をなす場合には、この親水性構成成分は、液体混合物、固体混合物、または液体と固体の混合物であり得る。
【0079】
固体の親水性構成成分が存在する場合、この医薬組成物の担体は、重量に関して、約1%〜約25%、例えば、約2%〜約20%、例えば、約3%〜約15%、例えば、約4%〜約10%の固体の親水性構成成分を含むことができる。
【0080】
親水性構成成分の例はPEGであり、PEGは、一般に、式H(OCH2CH2)n0Hに従うエチレンオキシドのポリマーであり、式中、nは、このポリマーの平均分子量と相関する。
【0081】
本発明に有用なPEGの種類を、その物質の状態、すなわち、この物質が室内の温度および圧力で固体または液体の形態で存在するかどうかによってカテゴリーに分けることができる。本明細書で使用する場合、「固体のPEG」は、この物質が室内の温度および圧力で固体の状態をとるような分子量を有するPEGを指す。例えば、1,000と10,000との間の範囲の分子量を有するPEGは、固体のPEGである。そのようなPEGとして、これらに限定されないが、PEG 1000、PEG 1550、PEG 2000、PEG 3000、PEG 3350、PEG 4000またはPEG 8000が挙げられる。特に有用な固体のPEGは、1,450と8,000との間の分子量を有するPEGである。固体のPEGとしてとりわけ有用なPEGは、PEG 1450、PEG 3350、PEG 4000、PEG 8000、それらの誘導体、およびそれらの混合物である。種々の分子量のPEGが、CARBOWAX SENTRYシリーズとして、Dow Chemicals(Danbury、CT)から市販されている。さらに、固体のPEGは、結晶構造またはポリマーマトリックスを有し、このことは、本発明においては、特に有用な属性である。また、鎖長および末端基以外はPEGと同一の構造を有するポリエチレンオキシド(「PEO」)も、本発明において使用するのに適している。種々のグレードのPEOが、POLYOXとして、Dow Chemicalsから市販されている。PEOは、例えば、約100,000〜7,000,000の範囲の分子量を有する。本発明の親水性構成成分は、PEG、PEOおよび前述したものの任意の組合せを含むことができる。
【0082】
本発明の親水性構成成分は、場合により、低級アルカノール、例えば、エタノールを含んでもよい。エタノールの使用は必須ではないが、エタノールの使用によって、担体中の誘導体化インスリンペプチドの溶解性が改善する場合、保存性が改善する場合、および/または薬物沈殿のリスクが低下する場合がある。
【0083】
代替の例示的な態様では、この担体の親水性構成成分が、単一の親水性構成成分、例えば、固体のPEG、例えば、PEG 1450、PEG 3350、PEG 4000およびPEG 8000からなる。この例示的な態様では、このマイクロエマルジョン構成成分の親水性相は、単一の親水性物質からなる。例えば、担体がPEG 3350を含む場合、この担体は、その他の親水性物質、例えば、エタノール等の低級アルカノール(低級アルキルはC1〜C4である)も、水も含有しない。
【0084】
さらに別の代替の例示的な態様では、この担体の親水性構成成分は、固体のPEGの混合物からなる。例えば、この親水性構成成分は、PEG 1450、PEG 3350、PEG 4000、PEG 8000、それらの誘導体、ならびにそれらの任意の組合せおよび混合物を含む。
【0085】
一態様では、この担体は、1つまたは複数の界面活性剤、すなわち、場合により、界面張力を低下させる界面活性剤または表面活性剤の混合物を含む。この界面活性剤は、例えば、非イオン性、イオン性または両性である。界面活性剤は、その界面活性剤の調製に関与する副産物または未反応の開始物質を含有する複合混合物である場合があり、例えば、ポリオキシエチル化により作製された界面活性剤は、もう1つの副産物、例えば、PEGを含有する場合がある。本発明による1つまたは複数の界面活性剤は、少なくとも8である親水性親油性バランス(HLB)値を有する。例えば、この界面活性剤は、8〜30、例えば、12〜30、12〜20または13〜15の平均HLB値を有し得る。この界面活性剤は本来、液体であっても、半固体であっても、または固体であってもよい。
【0086】
界面活性剤の親水性親油性バランス(HLB)は、その界面活性剤が親水性または親油性である程度の尺度であり、HLBは、Griffin(Griffin WC、「Classification of Surface-Active Agents by ‘HLB’」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1(1949)、311頁)またはDavies(Davies JT、「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity(1957)、426〜438頁)の記載に従って、その分子の異なる領域についての値を計算することによって決定される。
【0087】
本明細書で使用する場合、用語「界面活性剤」は、任意の物質、特に、液体対空気、液体対液体、液体対容器、または液体対任意の固体のような表面および界面において吸着することができる洗剤を指す。この界面活性剤は、洗剤、例として、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(Gattefosse製のLabrasol等)、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール分解化(polyglycolyzed)グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート-20等のポリソルベート、ポロキサマー188およびポロキサマー407等のポロキサマー、脂肪酸ポリ-オキシエチレンソルビタンエステル、アルキル化誘導体およびアルコキシル化誘導体等のポリオキシエチレン誘導体(ツイーン、例えば、ツイーン-20もしくはツイーン-80)、モノグリセリドまたはそれらのエトキシル化誘導体、ジグリセリドまたはそれらのポリオキシエチレン誘導体、グリセロール、コール酸またはその誘導体、レシチン、アルコール、ならびにリン脂質、グリセロリン脂質(レシチン、セファリン、ホスファチジルセリン)、グリセロ糖脂質(ガラクトピラノシド)、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)およびスフィンゴ糖脂質(セラミド、ガングリオシド)、DSS(ドクサートナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドクサートカルシウム(CAS登録番号[128-49-4])、ドクサートカリウム(CAS登録番号[7491-09-0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム)、ホスファチジン酸ジパルミトイル、カプリル酸ナトリウム、胆汁酸ならびにその塩およびグリシンコンジュゲートまたはタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパン-スルホン酸、アニオン性(アルキル-アリール-スルホン酸塩)の一価の界面活性剤、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン、リゾリン脂質(例えば、エタノールアミン、コリン、セリンもしくはスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)、リゾホスファチジルコリンおよびホスファチジルコリンのアルキル誘導体、アルコキシル(アルキルエステル)誘導体、アルコキシ(アルキルエーテル)誘導体、例えば、リゾ-ホスファチジルコリンおよびジパルミトイルホスファチジルコリンのラウロイル誘導体およびミリストイル誘導体、さらに、コリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトールならびに正に帯電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルスレオニンである極性頭部基の改変形態、双性イオン界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホン酸、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホン酸、ドデシル-リン酸コリン、ミリストイルリゾホスファチジルコリン、鶏卵リゾレシチン)、カチオン性界面活性剤(四級アンモニウム塩)(例えば、臭化セチル-トリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、非イオン性界面活性剤(例えば、ドデシルβ-D-グルコピラノシド、ドデシルβ-D-マルトシド、テトラデシルβ-D-グルコピラノシド、デシルβ-D-マルトシド、ドデシルβ-D-マルトシド、テトラデシルβ-D-マルトシド、ヘキサデシルβ-D-マルトシド、デシルβ-D-マルトトリオシド、ドデシルβ-D-マルトトリオシド、テトラデシルβ-D-マルトトリオシド、ヘキサデシルβ-D-マルトトリオシド、n-ドデシル-スクロース、n-デシル-スクロースのようなアルキルグルコシド)、脂肪アルコールエトキシレート(例えば、オクタエチレングリコールモノトリデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノテトラデシルエーテルのようなポリオキシエチレンアルキルエーテル)、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーとしてのブロックコポリマー(Pluronics/Tetronics、Triton X-100)、エトキシル化ソルビタンアルカノエート界面活性剤(例えば、ツイーン-40、ツイーン-80、Brij-35)、フシジン酸誘導体(例えば、タウロ-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウム等)、C8〜C20の長鎖脂肪酸およびそれらの塩(例えば、オレイン酸およびカプリル酸)、アシルカルニチンおよび誘導体、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンのN-アシル化誘導体、またはリシンもしくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リシン、アルギニンまたはヒスチジンと中性アミノ酸または酸性アミノ酸との任意の組合せを含むジペプチドのN-アシル化誘導体、中性アミノ酸と2つの帯電したアミノ酸との任意の組合せを含むトリペプチドのN-アシル化誘導体から選択することができる。あるいは、この界面活性剤は、イミダゾリン誘導体またはそれらの混合物からなる群から選択してもよい。
【0088】
固体の界面活性剤の例として、これらに限定されないが、
1.天然のヒマシ油または水素添加したヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物。天然のヒマシ油または水素添加したヒマシ油を、エチレンオキシドと約1:35〜約1:60のモル比で反応させ、場合により、この生成物からこのPEG構成成分を取り出すことができる。種々のそのような界面活性剤、例えば、BASF Corp.(Mt. Olive、NJ)製のCREMOPHORシリーズ、例として、PEG40水素添加ヒマシ油であり、約50〜60のけん化価、約1未満の酸価、約2%未満の水分含有量、すなわち、フィッシャー法による水分含有量、約1.453〜1.457のnD60、および約14〜16のHLBを有するCREMOPHOR RH 40が市販されており;
2.Uniqema製のMYRJシリーズ、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53等のポリオキシエチレンステアリン酸エステルを含むポリオキシエチレン脂肪酸エステル。MYRJシリーズ中の特定の化合物が、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53、およびMYRJ 52として入手可能なPEG-40-ステアリン酸であり;
3.Uniqema製のツイーンシリーズ、例えば、ツイーン60を含むソルビタン誘導体;
4.ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンのコ-ポリマーおよびブロックコ-ポリマーまたはポロキサマー、例えば、BASF製のPluronic F127、Pluronic F68;
5.ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、C12〜C18アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテル等、例えば、BRIJシリーズとして知られ、Uniqemaから市販されているポリオキシル10-もしくは20-セチルエーテル、またはポリオキシル23-ラウリルエーテル、またはポリオキシル20-オレイルエーテル、またはポリ-オキシル10-、20-もしくは100-ステアリルエーテル。BRIJシリーズからの特に有用な製品は、BRIJ 58;BRIJ 76;BRIJ 78;BRIJ 35、すなわち、ポリオキシル23ラウリルエーテル;およびBRIJ 98、すなわち、ポリオキシル20オレイルエーテルである。これらの製品は、約32℃〜約43℃の間のm.p.を有し;
6.Eastman Chemical Co.から入手可能な、約36℃のm.p.を有する水溶性トコフェリルPEGコハク酸エステル、例えば、TPGS、例えば、ビタミンE TPGS;
7.例えば、5〜35[CH2-CH2-O]単位、例えば、20〜30単位を有するPEGステロールエーテル、例えば、Chemron(Paso Robles、CA)製のSOLULAN C24(Choleth-24およびCetheth-24);また、使用することができる類似の製品が、NIKKOL BPS-30(ポリエトキシル化30植物ステロール)およびNIKKOL BPSH-25(ポリエトキシル化25植物ステロール)として知られ、Nikko Chemicalsから市販されている製品であり;
8.例えば、4〜10、または4、6もしくは10の様々なグリセロール単位を有するポリグリセロール脂肪酸エステル。例えば、モノステアリン酸デカ-/ヘキサ-/テトラグリセリル、例えば、Nikko Chemicals製のDECAGLYN、HEXAGLYNおよびTETRAGLYNが特に適しており;
9.アルキレンポリオールのエーテルまたはエステル、例えば、それぞれ、GELUCIRE 44/14およびGELUCIRE 50/13であるラウロイルマクロゴール-32グリセリドおよび/またはステアロイルマクロゴール-32グリセリド;
10.C18置換等、飽和のC10〜C22の、例えば、ヒドロキシ脂肪酸のポリオキシエチレンモノエステル;例えば、PEGが、例えば、約600〜900、例えば、約660ダルトンMWである、例えば、12ヒドロキシステアリン酸PEGエステル、例えば、BASF(Ludwigshafen、20 ドイツ)製のSOLUTOL HS 15。BASF技術小冊子MEF 151 E(1986)によれば、SOLUTOL HS 15は、約70重量%のポリエトキシル化12-ヒドロキシステアリン酸および約30重量%の非エステル化ポリエチレングリコール構成成分を含む。SOLUTOL HS 15は、90〜110の水素価、53〜63のけん化価、最大1の酸価、および0.5重量%の最大水分含有量を有し;
11.ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-アルキルエーテル、例えば、C12〜C18のアルコールのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-エーテル、例えば、NIKKOL PBC 34として、Nikko Chemicalsから市販されているポリオキシエチレン-20-ポリオキシプロピレン-4-セチルエーテル;
12.ポリエトキシル化ジステアリン酸、例えば、ATLAS G 1821の商品名の下、Uniqemaから市販されているもの、およびNIKKOCDS-6000Pの商品名の下、Nikko Chemicalsから市販されているもの;ならびに
13.レシチン、例えば、大豆リン脂質、例えば、LIPOID S75として、Lipoid GmbH(Ludwigshafen、ドイツ)から市販されている大豆リン脂質、またはPHOSPHOLIPON 90として、Nattermann Phospholipid(Cologne、ドイツ)から市販されている卵リン脂質
が挙げられる。
【0089】
液体の界面活性剤の例として、これらに限定されないが、いずれもUniqemaから入手可能なツイーン20、ツイーン40およびツイーン80等のソルビタン誘導体、SYNPERONIC L44、およびポリオキシル10-オレイルエーテルが挙げられ、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasol)も挙げられる。
【0090】
本発明のこの医薬組成物の担体は、重量に関して約0%〜約95%、例えば、重量に関して約5%〜約80%、例えば、重量に関して約10%〜約70%、例えば、重量に関して約20%〜約60%、例えば、重量に関して約30%〜約50%の界面活性剤を含むことができる。本発明の一態様では、この担体は、30〜40%w/wの界面活性剤を含む。本発明の一態様では、この担体は、約40%w/wの界面活性剤を含む。
【0091】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンのコ-ポリマーおよびブロックコ-ポリマーまたはポロキサマー、例えば、BASF製のPluronic F127、Pluronic F68である。
【0092】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、ポロキサマーである。さらなる態様では、この界面活性剤は、ポロキサマー188、ポロキサマー407、およびポロキサマー407とポロキサマー188との混合物からなる群から選択される。
【0093】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasol等のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド)である。
【0094】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、ラウロイルポリオキシルグリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なGelucire 44/14)である。
【0095】
本発明の一態様では、この界面活性剤は、BASF製のCremophor RH40である。
【0096】
本発明の特定の態様では、この医薬組成物は、医薬組成物中に通常見出される追加の賦形剤も含むことができ、そのような賦形剤として、これらに限定されないが、抗酸化剤、抗菌剤、酵素阻害剤、安定化剤、保存剤、香料、甘味剤、および参照により本明細書に組み込まれているHandbook of Pharmaceutical Excipients、Roweら編、4版、Pharmaceutical Press(2003)に記載されているその他の構成成分が挙げられる。
【0097】
これらの追加の賦形剤は、この医薬組成物の総重量に関して、約0.05〜5%の量であり得る。抗酸化剤、抗菌剤、酵素阻害剤、安定化剤または保存剤は典型的には、この医薬組成物の総重量に関して、最大約0.05〜1%をなす。甘味剤または矯味剤は典型的には、この医薬組成物の総重量に関して、最大約2.5%または5%をなす。
【0098】
抗酸化剤の例として、これらに限定されないが、アスコルビン酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、ブチルヒドロキシルアニソールおよびブチルヒドロキシルトルエンが挙げられる。
【0099】
本発明の一態様では、この組成物は、緩衝剤を含む。本明細書で使用する場合、用語「緩衝剤」は、医薬組成物中の、緩衝剤がない場合には化学反応に起因して発生するであろうこの組成物のpHが経時的に変化する傾向を低下させる化合物を指す。緩衝剤には、リン酸ナトリウム、TRIS、グリシンおよびクエン酸ナトリウム等の化学物質がある。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「保存剤」は、微生物の活動(増殖および代謝)を阻止するまたは遅延させるために医薬組成物に添加する化合物を指す。薬学的に許容できる保存剤の例は、フェノール、m-クレゾール、およびフェノールとm-クレゾールとの混合物である。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「安定化剤」は、ペプチドを安定化させる、すなわち、そのような組成物の有効期間および/または使用期間を延長させるために、ペプチド含有医薬組成物に添加する化学物質を指す。医薬製剤中で使用される安定化剤の例は、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、グリシルグリシン、エチレンジアミン、クエン酸、EDTA、亜鉛、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ならびに界面活性剤、ならびにアルファ-トコフェロールおよびl-アスコルビン酸のような抗酸化剤である。
【0102】
本発明のさらなる態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドを含有する医薬組成物を調製するためのプロセスは、この薬物と、極性有機溶媒、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または親水性構成成分を含む担体とを密接に混合するステップを含む。例えば、誘導体化インスリンペプチドとこの担体を、例えば、約20℃〜約80℃まで加熱することによって液化させ、次いで、室温まで冷却することによって凝固させることができる。
【0103】
極性有機溶媒、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または親水性構成成分を含む担体を別個に調製してから、この担体と、誘導体化インスリンペプチドとを密接に混合することができる。あるいは、この担体の構成成分のうちの1つまたは2つ以上を、誘導体化インスリンペプチドと一緒に混合してもよい。
【0104】
誘導体化インスリンペプチドを、この極性有機溶媒中に溶解させ、次いで、この脂質構成成分および場合により界面活性剤と混合することができる。
【0105】
その上さらなる態様では、本発明は、誘導体化インスリンペプチドを含有する、SEDDSまたはSMEDDS等の医薬組成物(これは、カプセル剤、例えば、腸溶性カプセル剤、軟カプセル剤または腸溶性軟カプセル剤中に充填することができる)を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、以下のステップを含む:
(a)最初に、誘導体化インスリンペプチドを、極性有機溶媒(プロピレングリコール等)中に溶解させるステップと、
(b)次いで、親油性構成成分、界面活性剤、および場合により追加の構成成分と混合するステップ。
【0106】
本発明の一態様では、この医薬組成物を調製するためのプロセスを、低い温度(例えば、室温または室温未満)で実施する。
【0107】
本発明による医薬組成物を調製する場合、誘導体化インスリンペプチドを、例えば、極性有機溶媒中に、以下の方法を使用して溶解させることができる:
a)誘導体化インスリンペプチドの、場合により賦形剤を含む水溶液を提供し、
b)このpH値を、誘導体化インスリンペプチドのpIを1pH単位または2pH単位または2.5pH単位上回るかまたは下回る標的pH値に調節し、
c)凍結乾燥およびスプレー乾燥等の従来の乾燥技術により、誘導体化インスリンペプチドから水を除去し(脱水状態)、
d)該極性非水性溶媒中に、例えば、撹拌、回転またはその他の混合方法により、誘導体化インスリンペプチドを混合し、溶解させ、
e)場合により、この非水性誘導体化インスリンペプチド溶液をろ過または遠心分離して、未溶解の無機塩を除去し、
f)場合により、残存量の水を、例えば、固体の乾燥剤の添加または真空乾燥により除去する。
【0108】
一態様では、誘導体化インスリンペプチドを、この極性有機溶媒中に、以下の方法により溶解させる:
a)誘導体化インスリンペプチドの、場合により亜鉛およびグリシルグリシン等の安定化剤を含有する水溶液を提供し、
b)このpH値を、誘導体化インスリンペプチドのpIを1pH単位または2pH単位または2.5pH単位上回るかまたは下回るpH値に、例えば、この溶液に、塩酸または水酸化ナトリウム等、不揮発性の塩基または酸を添加することよって調節し、
c)凍結乾燥およびスプレー乾燥等の従来の乾燥技術により、誘導体化インスリンペプチドから水を除去し(脱水状態)、
d)該極性非水性溶媒中に、例えば、撹拌、回転またはその他の混合方法により、誘導体化インスリンペプチドを混合し、溶解させ、
e)場合により、この非水性誘導体化インスリンペプチド溶液をろ過または遠心分離して、未溶解の無機塩を除去し、
f)場合により、残存量の水を、例えば、固体の乾燥剤の添加または真空乾燥により除去する。
【0109】
「揮発性の塩基」によって、加熱時におよび/または減圧下である程度蒸発する塩基、例えば、室温で65Pa超の蒸気圧を有する塩基、または室温で65Pa超の蒸気圧を有する塩基を含む水性の共沸混合物を意味する。揮発性の塩基の例は、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、二級アミン、三級アミン、アリールアミン、脂肪族アミンもしくは炭酸水素アンモニウム、または組合せである。例えば、揮発性の塩基は、炭酸水素塩、炭酸塩、アンモニア、ヒドラジン、または有機塩基、例として、低級脂肪族アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびそれらの塩であり得る。さらに、揮発性の塩基は、水酸化アンモニウム、エチルアミンもしくはメチルアミン、またはそれらの組合せであってもよい。
【0110】
「揮発性の酸」は、加熱時におよび/または減圧下である程度蒸発する酸、例えば、室温で65Pa超の蒸気圧を有する酸、または室温で65Pa超の蒸気圧を有する酸を含む水性の共沸混合物を意味する。揮発性の酸の例は、炭酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸である。
【0111】
本明細書で言及する場合、「不揮発性の塩基」は、加熱時に蒸発しないかまたは部分的にしか蒸発しない塩基、例えば、室温で65Pa未満の蒸気圧を有する塩基を意味する。この不揮発性の塩基を、アルカリ金属塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類金属の水酸化物およびアミノ酸、またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。不揮発性の塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムである。
【0112】
本明細書で言及する場合、「不揮発性の酸」は、加熱時に蒸発しないかまたは部分的にしか蒸発しない酸、例えば、室温で65Pa未満の蒸気圧を有する酸を意味する。不揮発性の酸の例は、塩酸、リン酸および硫酸である。
【0113】
本明細書で使用する場合、用語「治療上活性な誘導体化インスリンペプチド」または「治療用誘導体化インスリンペプチド」は、糖尿病および/または高血糖症ならびにそれらに由来する合併症の臨床所見を治癒させる、軽減するまたは部分的に停止させることができる誘導体化インスリンペプチドを指す。
【0114】
本明細書で使用する場合、本発明のさらなる態様では、用語「治療上活性な誘導体化インスリンペプチド」または「治療用誘導体化インスリンペプチド」は、治療上の使用のために開発されつつある誘導体化インスリンペプチドまたは治療上の使用のために開発された誘導体化インスリンペプチドを意味する。
【0115】
治療活性を示すことを達成するのに適切な量を、「治療有効量」と定義する。
【0116】
それぞれの目的に有効な量は、疾患または損傷の重症度、ならびに対象の体重および全身状態に依存する。適切な投与量の決定は、日常的な実験を使用して、値の行列を構築し、このマトリックス中の異なる点を試験することによって達成することができ、これはいずれも、訓練を受けた医師または獣医の通常の技能の範囲に属することを理解されたい。
【0117】
この治療上活性な誘導体化インスリンペプチドは、最大約40%、例として、この医薬組成物の総重量の最大約20%、または約0.01%以上、例として、約0.1%以上の量で存在することができる。この治療上活性な誘導体化インスリンペプチドは、この組成物の総重量に関して、本発明の一態様では、約0.01%〜約30%の量で存在することができ、さらなる態様では、約0.01%〜20%、約0.1%〜30%、約1%〜20%、または約1%〜10%の量で存在することができる。しかし、誘導体化インスリンペプチドの特定のレベルは、使用する極性有機溶媒または場合により親水性構成成分もしくは界面活性剤、あるいはそれらの混合物中の誘導体化インスリンペプチドの溶解性、投与様式、ならびに患者のサイズおよび状態を含めて、薬学分野で周知の因子に従って選ばれるものとする。
【0118】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容できる」は、通常の薬学的適用に適していること、すなわち、患者等において重大な有害事象を発生させないことを意味する。
【0119】
本明細書で使用する場合、用語「疾患の治療」は、疾患、状態または障害を発症している患者の管理および看護を意味する。治療の目的は、疾患、状態または障害と闘うことである。治療は、活性化合物を投与して、疾患、状態または障害を排除または制御すること、ならびに疾患、状態または障害と関連がある症状または合併症を軽減すること、および疾患、状態または障害を予防することを含む。
【0120】
本明細書で使用する場合、用語「疾患の予防」を、疾患が臨床的に開始する前に、疾患を発症するリスクがある個体を管理および看護することと定義する。予防の目的は、疾患、状態または障害の発症と闘うことであり、この活性化合物を投与して、症状または合併症の開始を阻止するまたは遅延させること、および関連の疾患、状態または障害の発症を阻止するまたは遅延させることを含む。
【0121】
各単位投与量が、0.1mg〜300mgの誘導体化インスリンペプチド、例えば、約0.1mg、1mg、5mg、10mg、15mg、25mg、50mg、90mg、100mg、200mg、250mg、300mgの誘導体化インスリンペプチド、例えば、5mgと300mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを適切に含有する。本発明の一態様では、各単位投与量は、10mgと300mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。さらなる態様では、単位投与剤形は、10mgと100mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。本発明のその上さらなる態様では、この単位投与剤形は、20mgと300mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。本発明のその上さらなる態様では、この単位投与剤形は、50mgと150mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。本発明のその上さらなる態様では、この単位投与剤形は、20mgと100mgとの間の誘導体化インスリンペプチドを含有する。そのような単位投与剤形は、療法の特定の目的に応じて、1日に1〜5回投与するのに適している。
【0122】
用語「ポリペプチド」または「ペプチド」を、本明細書では互換的に使用して、ペプチド結合により接続されている少なくとも5つの構成要素のアミノ酸から構成される化合物を意味する。これらの構成要素のアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸の群からのものである場合もあれば、遺伝暗号によってコードされない天然のアミノ酸、および合成アミノ酸である場合もある。遺伝暗号がコードしない天然のアミノ酸は、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、オルニチン、リン酸化セリン、D-アラニンおよびD-グルタミンである。合成アミノ酸は、化学合成によって製造されたアミノ酸、すなわち、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸のD-異性体、例として、D-アラニンおよびD-ロイシン、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Abu(α-アミノ酪酸)、Tle(tert-ブチルグリシン)、β-アラニン、3-アミノメチル安息香酸、アントラニル酸を含む。
【0123】
本明細書で使用する場合、「インスリンペプチド」を用いて、CysA7とCysB7との間およびCysA20とCysB19との間のジスルフィド架橋、ならびにCysA6とCysA11との間の内部ジスルフィド架橋を有するヒトインスリン、ブタインスリンもしくはウシインスリン、またはそれらのインスリン類似体もしくは誘導体を意味する。
【0124】
ヒトインスリンは、2つのポリペプチド鎖、すなわち、それぞれ21個および30個のアミノ酸残基を含有するA鎖およびB鎖からなる。これらのA鎖およびB鎖は、2つのジスルフィド架橋によって相互接続されている。ほとんどのその他の種に由来するインスリンは類似するが、いくつかの位置においては、アミノ酸の置換を含有する場合がある。
【0125】
本明細書で使用する場合、インスリン類似体は形式上、天然に存在するインスリンの構造、例えば、ヒトインスリンの構造から、天然のインスリン中に存在する少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは置換すること、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって誘導することができる分子構造を有するポリペプチドである。
【0126】
一態様では、本発明によるインスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて8つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。一態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて7つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。一態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて6つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて5つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて4つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて3つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて2つ未満の改変(置換、欠失、付加)を含む。
【0127】
本発明による誘導体化インスリンペプチドは、天然に存在するインスリン、あるいは例えば、インスリン骨格中の1つもしくは複数の位置に側鎖を導入すること、またはインスリン中のアミノ酸残基の基を酸化もしくは還元すること、または遊離のカルボキシル基をエステル基もしくはアミド基に変換することによって、化学的に改変されているインスリン類似体である。その他の誘導体は、ヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンのB29位等の遊離のアミノ基またはヒドロキシ基をアシル化することによって得られる。アシル化ポリペプチドの非限定的な例を、例えば、参照により本明細書に組み込まれているWO95/07931中に見出すことができる。
【0128】
したがって、誘導体化インスリンペプチドは、少なくとも1つの共有結合の改変、例として、インスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸につながる側鎖を含むヒトインスリンまたはインスリン類似体である。
【0129】
本明細書では、誘導体化インスリンの命名を、以下の原則に従って行う。名前を、ヒトインスリンと比べた突然変異および改変(アシル化)に従って与える。アシル部分を命名するためには、命名を、IUPAC命名法、およびその他の場合には、ペプチド命名法に従って行う。例えば、アシル部分を命名する場合、
【0130】
【化1】
【0131】
は、例えば、「オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG」、または「17-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-GIu-OEG-OEG」であり得、式中、OEGは、アミノ酸-NH(CH2)2O(CH2)2OCH2CO-についての略語表記法であり、γ-L-Glu(またはg-L-Glu)は、アミノ酸ガンマグルタミン酸部分のL-型についての略語表記法である。
【0132】
改変ペプチドまたはタンパク質のアシル部分は、純粋な鏡像異性体の形態をとることができ、この不斉アミノ酸部分の立体配置は、DもしくはLのいずれかである(またはR/S用語法を使用する場合には、RもしくはSのいずれかである)か、あるいは鏡像異性体の混合物(DとL/RとS)の形態をとることができる。本発明の一態様では、アシル部分は、鏡像異性体の混合物の形態をとる。一態様では、このアシル部分は、純粋な鏡像異性体の形態をとる。一態様では、このアシル部分の不斉アミノ酸部分は、L体である。一態様では、このアシル部分の不斉アミノ酸部分は、D体である。
【0133】
一態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、インスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸においてアシル化されているインスリンペプチドである。
【0134】
一態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、プロピレングリコール中に溶解する。別の態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、プロピレングリコール溶液中に溶解し、この溶液は、少なくとも20%w/wの誘導体化インスリンペプチドを含む。本発明のさらに別の態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、プロピレングリコール溶液中に溶解し、この溶液は、少なくとも30%w/wの誘導体化インスリンペプチドを含む。
【0135】
本発明の一態様では、誘導体化インスリンペプチドは、極性有機溶媒中に溶解させる前にpH最適化して、この極性有機溶媒中の溶解性を改善する。
【0136】
用語「pH最適化」を使用する場合、本明細書では、誘導体化インスリンペプチドが、水溶液中の誘導体化インスリンペプチドのpIから少なくとも1pH単位外れている標的pHにおいて脱水されていることを意味する。したがって、本発明の一態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドの等電点を1pH単位超上回る。本発明の別の態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドの等電点を1pH単位超下回る。さらなる態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドのpIを1.5pH単位超上回るかまたは下回る。その上さらなる態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドのpIを2.0pH単位以上上回るかまたは下回る。その上さらなる態様では、この標的pHは、誘導体化インスリンペプチドのpIを2.5pH単位以上上回るかまたは下回る。その上さらなる態様では、標的pHは、誘導体化インスリンペプチドのpIを上回る。
【0137】
誘導体化インスリンペプチドに関連して本明細書で使用する場合、用語「脱水状態」は、水溶液から乾燥されている誘導体化インスリンペプチドを指す。本明細書で使用する場合、用語「標的pH」は、脱水状態の誘導体化インスリンペプチドを、純水中に戻して、およそ40mg/ml以上の濃度とした場合に確立する水のpHを指す。この標的pHは典型的には、誘導体化インスリンペプチドを乾燥によって回収した誘導体化インスリンペプチドの水溶液のpHと同一である。しかし、この溶液が、揮発性の酸または塩基を含有する場合には、誘導体化インスリンペプチド溶液のpHは、標的pHと同一ではない。誘導体化インスリンペプチドのpHの履歴が、極性有機溶媒中で可溶化し得る誘導体化インスリンペプチドの量についての決定因子であることが見出されるに至った。
【0138】
本明細書で使用する場合、用語「誘導体化インスリンペプチドのpI」は、誘導体化インスリンペプチドの等電点を指す。
【0139】
本明細書で使用する場合、用語「等電点」は、ペプチド等の巨大分子の全体的な正味の電荷がゼロとなるpH値を意味する。ペプチドの場合、いくつかの帯電した基がある場合があり、等電点においては、全てのこれらの電荷の和がゼロとなる。等電点を上回るpHでは、このペプチドの全体的な正味の電荷は負となり、一方、等電点を下回るpHでは、このペプチドの全体的な正味の電荷は正となる。
【0140】
タンパク質のpIを、等電点電気泳動等の電気泳動の技法により実験的に決定することができる。
【0141】
pH勾配が、ポリアクリルアミドゲル等の抗対流性の媒体(anticonvective medium)中で確立される。タンパク質をこの系に導入すると、このタンパク質が、このゲルにわたって適用された電場の影響を受けて遊走する。正に帯電したタンパク質は、カソードに遊走する。最終的には、このタンパク質は移動して、その正味の電荷がゼロとなる、pH勾配中のある点に到達し、この点で、タンパク質の焦点が合ったといわれる。この点が、このタンパク質の等電点pH(pI)である。次いで、このタンパク質を、このゲル上に固定し、染色する。次いで、既知のpI値を有するマーカー分子に対して、ゲル上のこのタンパク質の位置を比較することによって、このタンパク質のpIを決定することができる。
【0142】
当業者であれば、所与のpH値におけるタンパク質の正味の電荷を、従来法により理論的に推定することができる。基本的には、タンパク質の正味の電荷は、そのタンパク質中の帯電したアミノ酸、すなわち、アスパラギン酸(β-カルボキシル基)、グルタミン酸(δ-カルボキシル基)、システイン(チオール基)、チロシン(フェノール基)、ヒスチジン(イミダゾール側鎖)、リシン(ε-アンモニウム基)、およびアルギニン(グアニジウム基)の部分的な電荷の和と同等になる。さらにまた、タンパク質の末端基(α-NH2およびα-COOH)の電荷も考慮すべきである。イオン化できる基の部分的な電荷を、固有のpKa値から計算することができる。
【0143】
誘導体化インスリンペプチドの乾燥、すなわち、脱水は、任意の従来の乾燥方法、例えば、スプレー乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、開放乾燥および接触乾燥によって実施することができる。本発明の一態様では、誘導体化インスリンペプチド溶液を乾燥させて、約10%未満の水分含有量を得る。水分含有量は、実験の部における記載に従って、乾燥試験(重量測定)による喪失をもとに計算した/そうした喪失により測定した場合、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満であり得る。
【0144】
本発明の一態様では、誘導体化インスリンペプチドを、スプレー乾燥する。本発明のさらなる態様では、誘導体化インスリンペプチドを、凍結乾燥する。
【0145】
一態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、(特定の突然変異により)タンパク質分解に対して安定化され、B29-リシンにおいてさらにアシル化されているインスリンペプチドである。別の態様では、本発明による誘導体化インスリンペプチドは、アシル化、プロテアーゼ安定化インスリンであるインスリンペプチドであり、このプロテアーゼ安定化インスリン類似体は、ヒトインスリンから、以下の欠失または置換のうちの1つまたは複数において逸脱する:A18位のQ、A21位のA、GもしくはQ、B1位のGもしくはQ、またはB1位のアミノ酸残基の欠失、B3位のQ、SもしくはT、またはB3位のアミノ酸残基の欠失、B13位のQ、B27位のアミノ酸残基の欠失、B28位のD、EもしくはR、およびB30位のアミノ酸残基の欠失。
【0146】
広い態様では、プロテアーゼ安定化インスリンは、インスリン類似体であり、親インスリンと比べて、少なくとも2つの疎水性アミノ酸が、親水性アミノ酸で置換されており、これらの置換は、親インスリンの2つ以上のプロテアーゼ切断部位の内部にあるかまたはそれらの部位にごく接近しており、そのようなインスリン類似体は場合により、1つまたは複数の追加の突然変異をさらに含む。
【0147】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンは、インスリン類似体であり、
- A12位のアミノ酸が、GluもしくはAspであり、かつ/またはA13位のアミノ酸が、His、Asn、GluもしくはAspであり、かつ/またはA14位のアミノ酸が、Asn、Gln、Glu、Arg、Asp、GlyもしくはHisであり、かつ/またはA15位のアミノ酸が、GluもしくはAspであり;ならびに
- B24位のアミノ酸が、Hisであり、かつ/またはB25位のアミノ酸が、Hisであり、かつ/またはB26位のアミノ酸が、His、Gly、AspもしくはThrであり、かつ/またはB27位のアミノ酸が、His、Glu、GlyもしくはArgであり、かつ/またはB28位のアミノ酸が、His、GlyもしくはAspであり;ならびに
このインスリン類似体は場合により、1つまたは複数の追加の突然変異をさらに含む。
【0148】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンは、式1:
XaaA(-2)-XaaA(-1)-XaaA0-Gly-Ile-Val-Glu-Gln-Cys-Cys-XaaAB-Ser-Ile-Cys-XaaA12-XaaA13-XaaA14-XaaA15-Leu-Glu-XaaA18-Tyr-Cys-XaaA21
式(I)(配列番号1)
のA鎖のアミノ酸配列、
および式2:
XaaB(-2)-XaaB(-1)-XaaB0-XaaB1-XaaB2-XaaB3-XaaB4-His-Leu-Cys-Gly-Ser-XaaB10-Leu-Val-Glu-Ala-Leu-XaaB16-Leu-Val-Cys-Gly-Glu-Arg-Gly-XaaB24-XaaB25-XaaB26-XaaB27-XaaB28-XaaB29-XaaB30-XaaB31-XaaB32
式(2)(配列番号2)
のB鎖のアミノ酸配列
を含むインスリン類似体であり、
式中、
XaaA(-2)は、不在またはGlyであり;
XaaA(-1)は、不在またはProであり;
XaaAoは、不在またはProであり;
XaaA8は独立に、ThrおよびHisから選択され;
XaaA12は独立に、Ser、AspおよびGluから選択され;
XaaA13は独立に、Leu、Thr、Asn、Asp、Gln、His、Lys、Gly、Arg、Pro、SerおよびGluから選択され;
XaaA14は独立に、Tyr、Thr、Asn、Asp、Gln、His、Lys、Gly、Arg、Pro、SerおよびGluから選択され;
XaaA15は独立に、Gln、AspおよびGluから選択され;
XaaA18は独立に、Asn、LysおよびGlnから選択され;
XaaA21は独立に、AsnおよびGlnから選択され;
XaaB(-2)は、不在またはGlyであり;
XaaB(-1)は、不在またはProであり;
XaaB0は、不在またはProであり;
XaaB1は、不在であるか、または独立に、PheおよびGluから選択され;
XaaB2は、不在またはValであり;
XaaB3は、不在であるか、または独立に、AsnおよびGlnから選択され;
XaaB4は独立に、GlnおよびGluから選択され;
XaaB10は独立に、His、Asp、ProおよびGluから選択され;
XaaB16は独立に、Tyr、Asp、Gln、His、ArgおよびGluから選択され;
XaaB24は独立に、PheおよびHisから選択され;
XaaB25は独立に、Asn、PheおよびHisから選択され;
XaaB26は、不在であるか、または独立に、Tyr、His、Thr、GlyおよびAspから選択され;
XaaB27は、不在であるか、または独立に、Thr、Asn、Asp、Gln、His、Lys、Gly、Arg、Pro、SerおよびGluから選択され;
XaaB28は、不在であるか、または独立に、Pro、His、GlyおよびAspから選択され;
XaaB29は、不在であるか、または独立に、LysおよびGlnから選択され;
XaaB30は、不在またはThrであり;
XaaB31は、不在またはLeuであり;
XaaB32は、不在またはGluであり;
C末端は場合により、アミドとして誘導体化されていてもよく;
A鎖のアミノ酸配列とB鎖のアミノ酸配列とが、A鎖の7位のシステインとB鎖の7位のシステインとの間のジスルフィド架橋、およびA鎖の20位のシステインとB鎖の19位のシステインとの間のジスルフィド架橋によって接続されており、A鎖の6位のシステインと11位のシステインとがジスルフィド架橋によって接続されている。
【0149】
「desB30インスリン」を用いて、「desB30ヒトインスリン」は、B30アミノ酸残基を欠くインスリンおよびその類似体を意味する。
【0150】
「親インスリン」によって、ヒトインスリンまたはブタインスリン等の天然に存在するインスリンを意味する。あるいは、親インスリンは、インスリン類似体であってもよい。
【0151】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンは、以下の化合物からなる群から選択される。A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B28D、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B16E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B1E、B25H、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B1E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B1E、B16E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、A14E、B16E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B26D、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B28D、desB30ヒトインスリン;A14E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B27E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B25H、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B1E、B25H、B27E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14D、B25H、desB30ヒトインスリン;B25N、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、B25N、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B27E、B28E、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B28E、desB30ヒトインスリン;B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;B1E、B25H、B27E、desb30ヒトインスリン;A8H、B1E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A8H、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;B25N、B27D、desB30ヒトインスリン;A8H、B25N、B27D、desB30ヒトインスリン;B25H、B27D、desB309ヒトインスリン;A8H、B25H、B27D、desB30ヒトインスリン;A(-1)P、A(0)P、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B(-1)P、B(0)P、B25H、desB30ヒトインスリン;A(-1)P、A(0)P、A14E、B(-1)P、B(0)P、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B30T、B31L、B32Eヒトインスリン;A14E、B25Hヒトインスリン;A14E、B16H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B10P、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B10E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B4E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14H、B16H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14H、B10E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13H、A14E、B10E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13H、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、B3Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B24H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B26G、B27G、B28G、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、A21Q、B3Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、A21Q、B3Q、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、B3Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A13H、A14E、B1E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13N、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13N、A14E、B1E、B25H、desB30ヒトインスリン;A(-2)G、A(-1)P、A(0)P、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B(-2)G、B(-1)P、B(0)P、B25H、desB30ヒトインスリン;A(-2)G、A(-1)P、A(0)P、A14E、B(-2)G、B(-1)P、B(0)P、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B27R、B28D、B29K、desB30ヒトインスリン;A
14E、B25H、B27R、B28D、B29K、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B26T、B27R、B28D、B29K、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27R、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27H、desB30ヒトインスリン;A14E、A18Q、B3Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A13E、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A12E、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A15E、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13E、B25H、desB30ヒトインスリン;A12E、B25H、desB30ヒトインスリン;A15E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、desB27、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B26D、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27R、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27N、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27D、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27Q、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27E、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27G、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27K、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27P、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27S、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、B27T、desB30ヒトインスリン;A13R、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13N、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13D、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13Q、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13E、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13G、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13H、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13K、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13P、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13S、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A13T、A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16R、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16D、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B16H、B25H、desB30ヒトインスリン;A14R、B25H、desB30ヒトインスリン;A14N、B25H、desB30ヒトインスリン;A14D、B25H、desB30ヒトインスリン;A14Q、B25H、desB30ヒトインスリン;A14E、B25H、desB30ヒトインスリン;A14G、B25H、desB30ヒトインスリン;A14H、B25H、desB30ヒトインスリン;A8H、B10D、B25Hヒトインスリン;およびA8H、A14E、B10E、B25H、desB30ヒトインスリン。
【0152】
好ましくは、本発明のアシル化インスリンは、プロテアーゼ安定化インスリン分子中のリシンアミノ酸残基に、1つのアシル化基のみがつながってモノ置換されている。
【0153】
一態様では、プロテアーゼ安定化インスリンにつながるアシル部分は、一般式:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)
を有し、
式中、nは、0または1〜3の範囲の整数であり;mは、0または1〜10の範囲の整数であり;pは、0または1〜10の範囲の整数であり;Acyは、約8〜約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり;AA1は、天然の直鎖または環状のアミノ酸残基であり;AA2は、酸性アミノ酸残基であり;AA3は、天然のアルキレングリコール含有アミノ酸残基であり;AA1、AA2およびAA3が、式中に出現する順は、独立に交換することができ;AA2は、式に沿って数回存在することができ(例えば、Acy-AA2-AA32-AA2-);AA2は、式に沿って独立に(=異なって)数回存在することができ(例えば、Acy-AA2-AA32-AA2-);Acy、AA1、AA2および/またはAA3の間の接続は、アミド(ペプチド)結合であり、これらの結合は形式上、Acy、AA1、AA2およびAA3のそれぞれから水素原子またはヒドロキシル基(水)を除去することによって得ることができ;プロテアーゼ安定化インスリンは、式(I)のアシル部分中のAA1残基、AA2残基もしくはAA3残基のC末端を介して、または式(I)の部分中に存在するAA2残基の側鎖のうちの1つを介してつながることができる。
【0154】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンにつながるアシル部分は、一般式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)を有し、式中、AA1は、Gly、D-もしくはL-Ala、βAla、4-アミノ酪酸、5-アミノ吉草酸、6-アミノヘキサン酸、D-もしくはL-Glu-α-アミド、D-もしくはL-Glu-γ-アミド、D-もしくはL-Asp-α-アミド、D-もしくはL-Asp-β-アミド、または以下の式のうちの1つの基から選択される。
【0155】
【化2−1】
【化2−2】
【0156】
それらの基は、これらの式から、水素原子および/またはヒドロキシル基が除去されており、式中、qは、0、1、2、3または4である。
【0157】
別の態様では、プロテアーゼ安定化インスリンにつながるアシル部分は、一般式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)を有し、式中、AA1は、上記の定義に従い、AA2は、L-もしくはD-Glu、L-もしくはD-Asp、L-もしくはD-ホモGlu、または以下の式のうちのいずれかから選択される。
【0158】
【化3】
【0159】
それらは、これらの式から、水素原子および/またはヒドロキシル基が除去されており、式中、矢印は、AA1、AA2、AA3のアミノ基、またはプロテアーゼ安定化インスリンのアミノ基につながる点を示す。
【0160】
AA1と呼ぶ中性の環状アミノ酸残基は、飽和六員環状炭素を含有し、場合により窒素ヘテロ原子を含有するアミノ酸であり、好ましくは、この環は、シクロヘキサン環またはピペリジン環である。好ましくは、この中性の環状アミノ酸の分子量は、約100〜約200Daの範囲に及ぶ。
【0161】
AA2と呼ぶ酸性のアミノ酸残基は、最大約200Daの分子量を有するアミノ酸であり、2つのカルボン酸基および1つの一級または二級のアミノ基を含む。
【0162】
AA3と呼ぶ中性のアルキレングリコール含有アミノ酸残基は、アルキレングリコール部分、場合により、一方の末端にカルボン酸の官能基をかつ他方の末端にアミノ基の官能基を含有するオリゴアルキレングリコール部分またはポリアルキレングリコール部分である。
【0163】
本明細書では、用語アルキレングリコール部分は、モノ-アルキレングリコール部分およびオリゴ-アルキレングリコール部分を網羅する。モノアルキレングリコールおよびオリゴアルキレングリコールは、モノエチレングリコールおよびオリゴエチレングリコールに基づいた鎖、モノプロピレングリコールおよびオリゴプロピレングリコールに基づいた鎖、ならびにモノブチレングリコールおよびオリゴブチレングリコールに基づいた鎖、すなわち、反復単位-CH2CH2O-、-CH2CH2CH2O-または-CH2CH2CH2CH2O-に基づく鎖を含む。このアルキレングリコール部分は、単分散である(十分に定義された長さ/分子量を有する)。モノアルキレングリコール部分は、各末端に異なる基を含有する-OCH2CH2O-、-OCH2CH2CH2O-または-OCH2CH2CH2CH2O-を含む。
【0164】
本明細書で言及するように、AA1、AA2およびAA3が、式(I)(Acy-AA1n-AA2m-AA3p-)を有するアシル部分中に出現する順番は、独立に交換することができる。その結果、式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-はまた、例えば、式Acy-AA2m-AA1n-AA3p-および式Acy-AA3p-AA2m-AA1n-のような部分も網羅し、式中、Acy、AA1、AA2、AA3、n、mおよびpは、本明細書の定義に従う。
【0165】
本明細書で言及するように、部分Acy、AA1、AA2および/またはAA3の間の接続は形式上、親化合物からの水の除去により、アミド結合(ペプチド結合)(-CONH-)を形成することによって得られ、形式上、親化合物からそうしたアミド結合が構築される。このことは、式(I)(Acy-AA1n-AA2m-AA3p-、式中、Acy、AA1、AA2、AA3、n、mおよびpは、本明細書の定義に従う)を有するアシル部分についての完全な式を得るためには、形式上、用語Acy、AA1、AA2およびAA3によって示される化合物を得、それらから水素および/またはヒドロキシルを除去して、形式上、そのようにして得られた構築用ブロックを、そのようにして得られた遊離末端において接続しなければならないことを意味する。
【0166】
本発明のアシル化インスリン類似体中に存在し得る、式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-のアシル部分の非限定的具体例を以下に示す。
【0167】
【化4−1】
【化4−2】
【化4−3】
【化4−4】
【化4−5】
【0168】
式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-のアシル部分の上記の非限定的具体例のうちのいずれもが、
インスリン類似体の上記の非限定的具体例のうちのいずれか中に存在するリシン残基のイプシロンアミノ基につながり、それによって、本発明のアシル化インスリン類似体のさらなる具体例をもたらすことができる。
【0169】
インスリン類似体中のリシン残基中に、式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-の所望の基を導入することによって、プロテアーゼ安定化インスリンを、本発明のアシル化プロテアーゼ安定化インスリンに変換することができる。式Acy-AA1n-AA2m-AA3p-の所望の基は、任意の好都合な方法によって導入することができ、そのような反応について、多くの方法が、先行技術中に開示されている。本明細書の実施例から、詳細がより明らかになる。
【0170】
また、本発明は、アシル化プロテアーゼ安定化インスリンを含む医薬組成物にも関し、このプロテアーゼ安定化インスリンのA鎖中のC末端のアミノ酸残基は、A21アミノ酸残基である。
【0171】
本発明のさらなる態様では、インスリン誘導体は、B29-Nε-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-ミリストイルヒトインスリン、B29-Nε-パルミトイルヒトインスリン、B28-Nε-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B28-Nε-パルミトイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B30-Nε-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30-Nε-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29-Nε-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-Nε-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-Nε-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンからなる群から選択される。
【0172】
本発明の別の態様では、インスリン誘導体は、B29-N(ε)-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリンである。
【0173】
本発明の別の態様では、インスリン誘導体は、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンである。
【0174】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および少なくとも1つの界面活性剤(d)を含み、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、(b)、(c)および(d)の相対量が、10〜15%(b)、45〜55%(c)および30〜40%(d)である。
【0175】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および少なくとも1つの界面活性剤(d)を含み、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、(b)、(c)および(d)の相対量が、15%(b)、45%(c)および40%(d)である。
【0176】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための極性有機溶媒(b)、親油性構成成分(c)、および界面活性剤(d)を含み、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、(b)、(c)および(d)の相対量が、10〜15%(b)、45〜55%(c)および30〜40%(d)、例として、15%(b)、45%(c)および40%(d)である。
【0177】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、誘導体化インスリンペプチド(a)、プロピレングリコール(b)、モノカプリル酸グリセロール(c)、およびlabrasol(d)を含み、この医薬組成物は、透明な溶液の形態をとり、(b)、(c)および(d)の相対量が、10〜15%(b)、45〜55%(c)および30〜40%(d)、例として、15%(b)、45%(c)および40%(d)である。
【0178】
一態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、50mgと150mgとの間の誘導体化インスリンペプチド(a)を含む。別の態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、70mgと130mgとの間の誘導体化インスリンペプチド(a)を含む。さらに別の態様では、本発明の非含水性の液体医薬組成物は、約90mgの誘導体化インスリンペプチド(a)を含む。
【0179】
一態様では、誘導体化インスリンペプチド(a)は、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンである。
【0180】
インスリン等のポリペプチドおよびペプチドの生成については、当技術分野で周知である。ポリペプチドまたはペプチドを、例えば、古典的なペプチド合成、例えば、t-Boc化学もしくはFmoc化学またはその他の十分に確立された技法を使用する固相ペプチド合成によって生成することができる。例えば、GreeneおよびWuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons、1999を参照されたい。また、これらのポリペプチドまたはペプチドは、こうした(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を含有し、このペプチドを発現することができる宿主細胞を、適切な栄養培地中で、この(ポリ)ペプチドを発現させる条件下において培養するステップを含む方法によって生成することもできる。非天然のアミノ酸残基を含む(ポリ)ペプチドの場合、これらの非天然のアミノ酸がこの(ポリ)ペプチド中に組み込まれるように、例えば、tRNA突然変異体を使用することによって、組換え細胞を改変すべきである。
【0181】
一態様では、本発明による液体または半固体の医薬組成物は、保管上安定(shelf-stable)である。
【0182】
本明細書で使用する場合、用語「保管上安定な医薬組成物」は、少なくとも治療用タンパク質に関連する規制当局によって要求される期間にわたり安定である医薬組成物を意味する。好ましくは、保管上安定な医薬組成物は、5℃で少なくとも1年間安定である。保管安定性は、化学的安定性および物理学的安定性を含む。化学的不安定性には、共有結合の分解、例として、加水分解、ラセミ化、酸化または架橋結合が関与する。製剤の化学的安定性は、逆相(RP-HPLC)クロマトグラフィーおよび分子ふるいクロマトグラフィー(SE-HPLC)によって評価する。本発明の一態様では、有効期間の間に形成されるペプチドに関連する不純物は、全ペプチド含有量の20%未満である。本発明のさらなる態様では、有効期間の間に形成されるペプチドに関連する不純物は、10%未満である。本発明のさらなる態様では、有効期間の間に形成されるペプチドに関連する不純物は、5%未満である。RP-HPLC解析は典型的には、水-アセトニトリル混合物中または水-エタノール混合物中で行う。一態様では、RP-HPLC工程における溶媒は、塩、例として、Na2SO4、(NH4)2SO4、NaCl、KCl、ならびに緩衝系、例として、リン酸、クエン酸およびマレイン酸を含む。溶媒中の塩の必要濃度は、約0.1M〜約1M、好ましくは0.2Mと0.5Mとの間、最も好ましくは0.3Mと0.4Mとの間であり得る。適切な時間内にカラムからの溶出を達成するために、塩濃度を増加させると、有機溶媒濃度を増加させる必要がある。物理的不安定性には、未変性の構造と比べた立体構造の変化が関与し、それらの変化は、高次構造の喪失、凝集、細線維化、沈殿または表面吸着を含む。インスリンペプチド、GLP-1化合物およびアミリン化合物等のペプチドが、細線維化により不安定になりやすいことが知られている。製剤の物理的安定性を、製剤を異なる温度で種々の時間にわたり保管した後に、例えば、目視検査および比濁分析の従来の手段により評価することができる。立体構造安定性は、円偏光二色性およびNMRにより、例えば、Hudson and Andersen、Peptide Science、76巻(4)、298〜308頁(2004)の記載に従って評価することができる。
【0183】
誘導体化インスリンペプチドの生物学的活性を、当業者に既知のアッセイにおいて、例えば、WO2005/012347の記載に従って測定することができる。
【0184】
本発明の一態様では、本発明による医薬組成物は、使用については6週間超安定であり、保管については3年超安定である。
【0185】
本発明の別の態様では、本発明による医薬組成物は、使用については4週間超安定であり、保管については3年超安定である。
【0186】
本発明のさらなる態様では、本発明による医薬組成物は、使用については4週間超安定であり、保管については2年超安定である。
【0187】
本発明のその上さらなる態様では、本発明による医薬組成物は、使用については2週間超安定であり、保管については2年超安定である。
【0188】
本発明のその上さらなる態様では、本発明による医薬組成物は、使用については1週間超安定であり、保管については1年超安定である。
【0189】
一態様では、本発明による医薬組成物を、高血糖、2型糖尿病、耐糖能の損傷および1型糖尿病の治療または予防のための薬物を調製するために使用する。
【0190】
本発明によるさらなる態様
1.誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、ならびに場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)および/または少なくとも1つの固体の親水性構成成分(e)を含む非含水性の液体または半固体の医薬組成物。
2.誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物であって、透明な溶液の形態をとる医薬組成物。
3.少なくとも1つの界面活性剤を含み、自発的分散性である、態様1または2に記載の医薬組成物。
4.少なくとも1つの固体の親水性構成成分を含み、油性溶液の形態をとる、態様1に記載の医薬組成物。
5.該少なくとも1つの親水性構成成分が、少なくとも1つの固体の親水性ポリマーである、態様4に記載の医薬組成物。
6.界面活性剤を含有せず、界面活性剤は、少なくとも8であるHLB値を有する、態様4または5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
7.10%w/w未満の水を含む、態様1から6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
8.5%w/w未満の水を含む、態様1から7のいずれか1つに記載の医薬組成物。
9.2%w/w未満の水を含む、態様1から8のいずれか1つに記載の医薬組成物。
10.1%w/w未満の水を含む、態様1から9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
11.極性有機溶媒が、ポリオールからなる群から選択される、態様1から10のいずれか1つに記載の医薬組成物。
12.極性有機溶媒が、ジオールおよびトリオールからなる群から選択される、態様1から11のいずれか1つに記載の医薬組成物。
13.極性有機溶媒が、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、態様1から12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
14.極性有機溶媒がプロピレングリコールである、態様1から13に記載の医薬組成物。
15.極性有機溶媒がグリセロールである、態様1から14に記載の医薬組成物。
16.誘導体化インスリンペプチドが、アシル化インスリンまたはアシル化インスリン類似体である、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
17.誘導体化インスリンペプチドが、1つまたは複数の位置中で誘導体化されているプロテアーゼ安定化インスリンである、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
18.誘導体化インスリンペプチドが、1つまたは複数の位置中でアシル化されているプロテアーゼ安定化インスリンである、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
19.誘導体化インスリンペプチドが、プロテアーゼ安定化インスリンであり、プロテアーゼ安定化インスリンが、その分子中のリシンアミノ酸残基につながっている唯一のアシル化基を有するようにモノ置換されている、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
20.誘導体化インスリンペプチドが、プロテアーゼ安定化インスリンであり、プロテアーゼ安定化インスリンが、それにつながれているアシル部分を有し、アシル部分が、一般式:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)
[式中、nは、0または1〜3の範囲の整数であり;
mは、0または1〜10の範囲の整数であり;
pは、0または1〜10の範囲の整数であり;
Acyは、約8〜約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり;
AA1は、天然の直鎖または環状のアミノ酸残基であり;
AA2は、酸性アミノ酸残基であり;
AA3は、天然のアルキレングリコール含有アミノ酸残基である]
を有し、
AA1、AA2およびAA3が、式中に出現する順番は、独立に交換することができる、態様1から15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
21.誘導体化インスリンペプチドが、プロピレングリコール中に溶解する、態様1から20のいずれか1つに記載の医薬組成物。
22.誘導体化インスリンペプチドが、プロピレングリコール溶液中に溶解し、この溶液は、少なくとも20%w/wの誘導体化インスリンペプチドを含む、態様1から21のいずれか1つに記載の医薬組成物。
23.誘導体化インスリンペプチドが、プロピレングリコール溶液中に溶解し、この溶液は、少なくとも30%w/wの誘導体化インスリンペプチドを含む、態様1から22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
24.界面活性剤を含まず、界面活性剤を、少なくとも8であるHLB値を有すると定義する、態様1から2または4から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
25.界面活性剤を含み、その界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、態様1から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
26.界面活性剤を含み、この界面活性剤が、ポリオキシエチレン含有界面活性剤である、態様1から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
27.界面活性剤を含み、この界面活性剤が、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(例として、Gattefosse製のLabrasol)である、態様1から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
28.界面活性剤を含み、この界面活性剤が、Pluronic F-127またはPluronic F-68等のポロキサマー、およびポロキサマーの混合物からなる群から選択される固体の界面活性剤である、態様1から23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
29.親油性構成成分が、プロピレングリコールと混合性である、態様1から28のいずれか1つに記載の医薬組成物。
30.親油性構成成分をプロピレングリコールと混合して溶液が得られるように、親油性構成成分が選ばれる、態様1から28のいずれか1つに記載の医薬組成物。
31.親油性構成成分がリン脂質である、態様1から28のいずれか1つに記載の医薬組成物。
32.親油性構成成分が、モノ-グリセリド、ジ-グリセリドおよび/またはトリ-グリセリドである、態様1から30のいずれか1つに記載の医薬組成物。
33.親油性構成成分が、モノ-グリセリドおよび/またはジ-グリセリドである、態様1から30または32のいずれか1つに記載の医薬組成物。
34.親油性構成成分が、カプリル酸プロピレングリコールである、態様1から30のいずれか1つに記載の医薬組成物。
35.親油性構成成分が、モノカプリル酸グリセロールである、態様1から30のいずれか1つに記載の医薬組成物。
36.室温で液体である、態様1から2、4から24または29から35のいずれか1つに記載の医薬組成物。
37.室温で半固体である、態様1から3、6から23または25から34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
38.(c)が、液体または半固体である、態様1から34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
39.(d)が、液体または半固体である、態様1から36のいずれか1つに記載の医薬組成物。
40.固体の親水性構成成分(e)を含む、態様1から34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
41.高血糖の治療において薬物として使用するための、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物。
42.薬物として使用するための、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物。
43.硬カプセル剤中または軟カプセル剤中に被包されている、態様1から42のいずれか1つに記載の医薬組成物。
44.硬カプセル剤または軟カプセル剤が、腸溶性である、態様43に記載の医薬組成物。
45.態様1から44のいずれか1つに記載の医薬組成物を生成する方法。
46.態様45に記載の医薬組成物を生成する方法であって、
(a)誘導体化インスリンペプチドを、極性有機溶媒中に溶解させるステップと、
(b)それに続いて、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または親水性構成成分と混合するステップと
を含む方法。
47.高血糖を治療するための方法であって、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を経口投与するステップを含む方法。
48.肥満を治療するための方法であって、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を経口投与するステップを含む方法。
49.無茶食いまたは過食症を治療するための方法であって、態様1から38のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を経口投与するステップを含む方法。
【0191】
(実施例)
本明細書で使用する略語は、標準的な略語であり、例を以下に示す。βAlaは、ベータ-アラニルであり、tBuは、tert-ブチルであり、γGluは、ガンマL-グルタミルであり、OEGは、[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エチルカルボニルであり、RTは室温である。
【0192】
インスリンペプチドは、当業者に既知の組換え技術を使用して調製した。誘導体化インスリンペプチドは、当業者に既知の組換え技術を使用して調製した。例示的な調製手順としては、実施例1を参照されたい。
【0193】
(実施例1)
A14E,B25H,B29K(Nε-ヘキサデカンジオイル),desB30ヒトインスリン等の誘導体化インスリンペプチドの調製の一般的手順
【0194】
【化5】
【0195】
A14E,B25H,desB30ヒトインスリン(500mg)を、100mM水性Na2CO3(5mL)中に溶解させ、pHを、1N NaOHを用いて10.5に調節した。ヘキサデカン二酸terf-ブチルエステルN-ヒドロキシスクシンイミドエステルを、アセトニトリル(10W/V%)中に溶解させ、このインスリン溶液に添加し、温水(warm tap)下で穏やかに加熱して、沈殿を回避し、室温で30分間放置した。この混合物を凍結乾燥した。この固体を、氷冷95%トリフルオロ酢酸(5%の水を含有する)中に溶解させ、氷上に30分間保った。この混合物を真空下で濃縮し、ジクロロメタンを用いた再蒸発を実施した。残渣を水中に溶解させ、pHを、中性(6〜7)に調節し、この混合物を凍結乾燥した。得られたインスリンを、Source 15Q 21mlカラム上でのイオン交換クロマトグラフィーにより、15mM Tris、50v/v%エタノール、pH7.5(酢酸)中の15〜300mMの酢酸アンモニウムの勾配を用いて数回溶出して精製した。純粋な画分の最終的な脱塩を、RPC 3mLカラム上で、0.1v/v%TFA、50v/v%エタノールを用いて均一濃度で溶出して実施した。得られた純粋なインスリンを凍結乾燥した。
LC-MS(エレクトロスプレー):m/z=1483.2(M+4)/4。計算値:1483.5
【0196】
(実施例2)
誘導体化インスリンペプチド
B29K(Nεオクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの経口投与
インスリン誘導体B29K(800nmol/kgのNε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(4ml/kg))の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、Capmul MCM C8/10と磁気撹拌によりRTで混合して、透明な均質液体を得た。
【0197】
得られた親油性構成成分を基剤とする医薬組成物は、20%プロピレングリコールおよび80% Capmul MCM C8/10を有した。この医薬組成物を、一晩絶食させた雄のWistarラットに投与した(平均±SEM、n=6)。インスリン誘導体を含有しないビヒクルを対照として投与した。これらの結果を、図1に示す。
【0198】
(実施例3)
種々の親油性構成成分を用いて製剤化した誘導体化インスリンペプチドB29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの血漿への暴露
インスリン誘導体B29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明〜やや不透明な液体を得た。
【0199】
以下の親油性構成成分を基剤とする送達系中に製剤化したインスリン誘導体B29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への、60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に測定した(平均±sem、n=5〜6):
1)30%プロピレングリコールおよび70%capmul mcm c8、
2)30%プロピレングリコールおよび70%capmul mcm c8/10、
3)30%プロピレングリコールおよび70%capmul mcm c10、
4)30%プロピレングリコールおよび70%capmul pg8。
【0200】
30%プロピレングリコールおよび70%カプリル酸プロピレングリコール(capmul pg8)の中に溶解させたインスリン誘導体を有する送達系が、最も高い血漿への暴露を示した。これらの結果を、図2に示す。
【0201】
(実施例4)
界面活性剤を加えて製剤化したまたは加えずに製剤化した誘導体化インスリンペプチドB29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの血漿への暴露
インスリン誘導体B29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0202】
以下の医薬組成物中に製剤化したインスリン誘導体B29K(Nε-オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に測定した(平均±SEM、n=5〜6):
20%プロピレングリコールおよび80%Capmul MCM C8/C10、
20%プロピレングリコール、50%Capmul MCM C8/10および30%Labrasol、
20%プロピレングリコール、50%Capmul MCM C8/C10および30%Chremophor RH40。
【0203】
これらの結果を、図3に示す。
【0204】
(実施例5)
SEDDS中に製剤化した場合の、血中グルコース低下作用の比較:誘導体化インスリンペプチド対非誘導体化インスリンペプチド
当該インスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、(58℃で一緒に融解させた)親油性構成成分および界面活性剤を添加し、磁気撹拌により35℃で5〜10分間混合して、透明な均質液体を得たが、この液体はRTでは固化した。経口投与の前に、これらの試料を体温まで加熱して、液体となした。得られたSEDDS組成物は、62.5%プロピレングリコール、31.25%Capmul MCM 10および6.25%ポロキサマー407中に溶解させた当該インスリンからなった(平均±SEM、n=6)。血中グルコース低下作用を、一晩絶食させた雄のSPRDラットに、SEDDS中の誘導体化インスリンペプチドB29(Nε-ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)14E B25H desB30ヒトインスリン4800nmol/kgまたはSEDDS中のB28Dヒトインスリン4800nmol/kgの経口投与(4ml/kg)後に測定した。インスリンを含有しないビヒクルを対照として投与した。このSEDDS医薬組成物中では、誘導体化インスリンペプチドは、非誘導体化インスリンと比較して、血中グルコース低下作用の持続を示した。
【0205】
これらの結果を、図4に示す。
【0206】
(実施例6)
PK研究のための、ラットへの腸内(空腸)注射の方法
麻酔を施したラットに、(誘導体化)インスリンペプチドを腸内(空腸内)に投与した。利用した化合物の血漿濃度、および血中グルコースの変化を、特定の間隔で投与後4時間測定した。それに続いて、薬物動態パラメータを、WinNonLinを使用して計算した。
【0207】
約18時間絶食させた雄のSprague-Dawleyラット(Taconic)、体重250〜300gに麻酔を施した。
【0208】
麻酔を施したラットを、37℃で安定化した恒温の毛布上に置いた。1mlのシリンジを装着した20cmのポリエチレンカテーテルに、インスリン製剤またはビヒクルを充填した。4〜5cmの正中線切開を腹壁中に設けた。このカテーテルを、盲腸から約50cmの空腸中央内に、腸壁を貫通させることによって穏やかに挿入した。腸内容物が存在する場合には、この適用部位を、±10cm移動させた。このカテーテルの先端を、腸セグメントの管腔のおよそ2cm内部に置き、結紮糸を使用せずに固定した。腸を、腹部空洞中の元の位置に注意深く戻し、腹部の壁および皮膚を、それぞれの層においてオートクリップ(autoclip)を用いて閉鎖した。0時点で、このラットに、試験化合物0.4ml/kgまたはビヒクルを、カテーテルを介して投与した。
【0209】
全血グルコース濃度を決定するために、血液試料を、尾部の先端において毛細血管を穿刺することによって、ヘパリン処理10μlのキャピラリーチューブ中に収集した。500μlの分析用緩衝液中への希釈後、血中グルコース濃度を、グルコースオキシダーゼ法により、Biosen自動分析装置(EKF Diagnostic Gmbh、ドイツ)を使用して測定した。平均血中グルコース濃度の測定(平均±SEM)を、各化合物について行った。
【0210】
血漿インスリンペプチド濃度を決定するために、試料を収集した。100μlの血液試料を、EDTAを含有する冷却したチューブ中に採取した。これらの試料を、遠心分離する(7000rpm、4℃、5分)まで氷上に保ち、血漿を、Micronicチューブ中にピペットで採取し、次いで、アッセイするまで、-20℃で凍結させた。これらのインスリン類似体の血漿濃度を、LOCIアッセイを使用して測定した。
【0211】
血液試料を、t=-10(血中グルコースのためのみ)において、t=-1(投与直前)において、および特定の間隔で投与後4時間採取した。
【0212】
血漿濃度-時間プロファイルを、非コンパートメント薬物動態解析により、WinNonlin Professional(Pharsight Inc.、Mountain View、CA、米国)を使用して解析した。
【0213】
計算を、各動物から得た個々の濃度-時間の値を使用して実施した。
【0214】
(実施例7)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
インスリン誘導体:A)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、B)A14E,B16H,B25H,B29K((N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル)),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、C)A14E,B25H,B29K(N(eps)[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体、ならびにD)A14E,B16H,B25H,B29K(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタンデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリンの試料を調製し、これらは、15%プロピレングリコール、55%Capmul MCMおよび30%Labrasolの中に製剤化したインスリン誘導体A)、B)、C)またはD)(120nmol/kg)からなった。
【0215】
これらの試料を、以下の方法により調製した。当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0216】
これらのインスリン誘導体の血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に決定した(平均±SEM、n=6)。
【0217】
これらの結果を、図5に示す。
【0218】
(実施例8)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
インスリン誘導体:A)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、B)A14E,B16H,B25H,B29K((N(eps)エイコサンジオイル-gGlu-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル)),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、C)A14E,B25H,B29K(N(eps)[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体、ならびにD)A14E,B16H,B25H,B29K(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタンデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB30ヒトインスリンの試料を調製し、これらは、55%プロピレングリコール、35%Capmul MCMおよび10%Poloxamer 407の中に製剤化したインスリン誘導体A)、B)、C)またはD)(120nmol/kg)からなった。
【0219】
これらの試料を、以下の方法により調製した。当該インスリン誘導体の凍結乾燥した中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0220】
これらのインスリン誘導体の血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に決定した(平均±SEM、n=6)。
【0221】
これらの結果を、図6に示す。
【0222】
(実施例9)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
インスリン誘導体:A)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、B)A1N-オクタデカンジオイル-ガンマ-L-グルタミル-[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルA14E B25H □B29R desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、C)A14E,B25H,B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-g-Glu),desB30ヒトインスリン、インスリン誘導体、D)A14E,B25H,(N(eps)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]),desB27,desB30ヒトインスリン、およびインスリン誘導体、ならびにE)A14E,B25H,B29K(N(eps)lcosandioyl-gGlu),desB30ヒトインスリンの試料を調製し、これらは、55%プロピレングリコール、35%Capmul MCMおよび10%Poloxamer 407の中に製剤化したインスリン誘導体A)、B)、C)、D)またはE)からなった。
【0223】
これらの試料を、以下の方法により調製した。当該インスリン誘導体の凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0224】
これらのインスリン誘導体の血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への120nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に決定した(平均±SEM、n=6)。
【0225】
これらの結果を、図7に示す。
【0226】
(実施例10)
水中またはプロピレングリコール中に溶解させた、誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露
インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)を、水中またはプロピレングリコール中に溶解させた。
【0227】
血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への注射後に決定した(平均±SEM、n=6)。これらの結果を、図8に示す。
【0228】
(実施例11)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンを、このインスリン誘導体と、
a)15%プロピレングリコールおよび40%Labrasolおよび45%Rylo MG08(カプリル酸グリセロール)、b)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、30%Rylo MG10(カプリン酸グリセロール)および15%カプリル酸プロピレングリコール、c)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、45%Rylo MG10(カプリン酸グリセロール)、ならびにd)15%プロピレングリコール、40%Labrasol、30%Rylo MG08(カプリル酸グリセロール)、15%カプリル酸プロピレングリコールと
からなる異なる医薬組成物中に製剤化した。
【0229】
これらの試料を、以下の方法により調製した。インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの凍結乾燥した、中性pHの粉末を、プロピレングリコール中にRTで溶解させ、完全に溶解させてから、当該脂質構成成分および当該界面活性剤を添加し、磁気撹拌によりRTで5〜10分間混合して、透明な均質液体を得た。
【0230】
様々な医薬組成物中のインスリン誘導体の血漿への暴露(pMで示す)を、絶食させた雄のSPRDラットの空腸中央中への60nmol/kg(0.4ml/kg)の腸注射後に決定した(平均±SEM、n=5〜6)。これらの結果を、図9に示す。
【0231】
(実施例12)
非含水性SEDDS製剤中の高いインスリン誘導体薬物添加量
インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの種々の量を、SEDDS中に製剤化した。
【0232】
SEDDS中の1%(w/w)インスリン誘導体
最初に、10mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび440mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0233】
SEDDS中の2%(w/w)インスリン誘導体
最初に、20mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび430mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0234】
SEDDS中の3%(w/w)インスリン誘導体
最初に、30mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび420mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0235】
SEDDS中の4%(w/w)インスリン誘導体
最初に、40mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび410mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0236】
SEDDS中の9%(w/w)インスリン誘導体
最初に、90mgのインスリン誘導体を、150mgのプロピレングリコール中に溶解させ、溶解後、400mgのLabrasolおよび360mgのRylo MG08とRTで混合した。
【0237】
全てのSEDDSから透明な均質溶液様の製剤を得、このインスリン誘導体は製剤中に完全に溶解した。インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの驚くべきほど高い薬物添加量を、プロピレングリコール、Labrasolおよびモノカプリル酸グリセロール(Rylo MG08 Pharma)を含む非含水性医薬組成物中に溶解させることができた。
【0238】
(実施例13)
SEDDS中のインスリン誘導体をイヌに投与した後の血中グルコース低下作用。
雄のビーグル犬(体重17kg)において、15%プロピレングリコール、40%Labrasolおよび45%Capmul MCM(カプリル酸/カプリン酸グリセロール)を用いて製剤化した、180nmol/kgのインスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)を含有する腸溶性HPMCカプセル剤を経口投与した後に、血中グルコース低下作用を測定した。
【0239】
これらの結果を、図10に示す。
【0240】
(実施例14)
SEDDS中に製剤化した誘導体化インスリンペプチドの血漿への暴露。
雄のビーグル犬(体重17kg)において、インスリン誘導体B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンの24時間の血漿への暴露プロファイル(pMで示す)を、15%プロピレングリコール、40%Labrasolおよび45%Rylo MG08 Pharma(カプリル酸グリセロール)中に溶解させた30nmol/kgのこのインスリン誘導体を含有する腸溶性の軟ゼラチンカプセル剤を経口投与した後に測定した。これらの軟ゼラチンカプセル剤は、Eudragit L 30 D-55を用いてコートされていた。
【0241】
これらの結果を、図11に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物であって、透明な溶液の形態をとる医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの界面活性剤を含み、自発的分散性である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
10%w/w未満の水を含む、請求項1から2のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記極性有機溶媒が、ポリオールからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
親油性構成成分をプロピレングリコールと混合した際に溶液が得られるように、親油性構成成分が選ばれる、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
親油性構成成分が、モノ-グリセリドおよび/もしくはジ-グリセリド、またはカプリル酸プロピレングリコールである、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
誘導体化インスリンペプチドが、アシル化インスリンペプチドである、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
誘導体化インスリンペプチドが、プロテアーゼ安定化インスリンであり、プロテアーゼ安定化インスリンが、それにつながれているアシル部分を有し、アシル部分が、一般式:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)
[式中、nは、0または1〜3の範囲の整数であり;
mは、0または1〜10の範囲の整数であり;
pは、0または1〜10の範囲の整数であり;
Acyは、約8〜約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり;
AA1は、中性の直鎖または環状のアミノ酸残基であり;
AA2は、酸性アミノ酸残基であり;
AA3は、中性のアルキレングリコール含有アミノ酸残基である]
を有し、
AA1、AA2およびAA3が、式中に出現する順番は、独立に交換することができる、
請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
硬カプセル剤または軟カプセル剤中に被包されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
硬カプセル剤または軟カプセル剤が、腸溶性である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物を生成する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の医薬組成物を生成する方法であって、
(a)誘導体化インスリンペプチドを、極性有機溶媒中に溶解させるステップと、
(b)それに続いて、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または親水性構成成分と混合するステップと
を含む方法。
【請求項14】
薬物として使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項1】
誘導体化インスリンペプチド(a)、誘導体化インスリンペプチドのための少なくとも1つの極性有機溶媒(b)、少なくとも1つの親油性構成成分(c)、および場合により少なくとも1つの界面活性剤(d)を含む非含水性の液体医薬組成物であって、透明な溶液の形態をとる医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの界面活性剤を含み、自発的分散性である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
10%w/w未満の水を含む、請求項1から2のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記極性有機溶媒が、ポリオールからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
親油性構成成分をプロピレングリコールと混合した際に溶液が得られるように、親油性構成成分が選ばれる、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
親油性構成成分が、モノ-グリセリドおよび/もしくはジ-グリセリド、またはカプリル酸プロピレングリコールである、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
誘導体化インスリンペプチドが、アシル化インスリンペプチドである、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
誘導体化インスリンペプチドが、プロテアーゼ安定化インスリンであり、プロテアーゼ安定化インスリンが、それにつながれているアシル部分を有し、アシル部分が、一般式:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p-(I)
[式中、nは、0または1〜3の範囲の整数であり;
mは、0または1〜10の範囲の整数であり;
pは、0または1〜10の範囲の整数であり;
Acyは、約8〜約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり;
AA1は、中性の直鎖または環状のアミノ酸残基であり;
AA2は、酸性アミノ酸残基であり;
AA3は、中性のアルキレングリコール含有アミノ酸残基である]
を有し、
AA1、AA2およびAA3が、式中に出現する順番は、独立に交換することができる、
請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
硬カプセル剤または軟カプセル剤中に被包されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
硬カプセル剤または軟カプセル剤が、腸溶性である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物を生成する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の医薬組成物を生成する方法であって、
(a)誘導体化インスリンペプチドを、極性有機溶媒中に溶解させるステップと、
(b)それに続いて、親油性構成成分、ならびに場合により界面活性剤および/または親水性構成成分と混合するステップと
を含む方法。
【請求項14】
薬物として使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−510438(P2012−510438A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537906(P2011−537906)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062126
【国際公開番号】WO2010/060667
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511099685)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062126
【国際公開番号】WO2010/060667
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511099685)
【Fターム(参考)】
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