説明

誘導加熱式流体加熱装置

【課題】 誘導加熱式流体加熱装置に用いられる加熱体がどのような寸法であっても、加工が容易で、安価に製作することの可能な誘導加熱式流体加熱装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 流体の流通される配管に結合される非金属材で形成した加熱管内に嵌挿された誘導加熱により発熱される発熱体を、誘導加熱材で形成された所定長さの細管を複数束ねて構成することにより、発熱体に穿孔加工することが必要なくなり、製作が容易で安価となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘導加熱により水などの流体を加熱する誘導加熱式流体加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱によって配管中を流れる流体を加熱する装置として、特許文献1に示されるような誘導加熱式流体加熱装置が知られている。
【0003】
この従来の誘導加熱式流体加熱装置1は、図3に示すように、図示しない配管に結合されるとともに、その中に誘導加熱により発熱する発熱体5を嵌挿した非金属材で形成された加熱管4と、この加熱管4の外周に断熱材6を介して巻装された加熱コイル2とこれに高周波電力を供給する高周波電源3とで構成される。加熱管4内の発熱体5は、磁性材で形成された円柱体に軸線方向(流体の流通方向)に貫通した多数の細孔5aを穿孔して形成される。加熱コイル2に高周波電源3から高周波電力が供給されると、電磁誘導作用により、加熱管4内に嵌挿された発熱体5に誘導電流が発生し、この電流によって発熱体5が発熱する。したがって加熱管4にその一端から加熱する流体を適当な流速で供給すると、流体は、発熱体5に設けられ流体を通すための多数の細孔5aを通り抜ける間にこの発熱体5により加熱され、昇温されて他端から流出する。
【特許文献1】特開2002−305074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような流体加熱装置において使用される発熱体は、発熱して高温となるので耐熱性の高い磁性材で形成することが必要である。このような磁性材の円柱体に多数の細孔を貫通させる加工は比較的高度の加工技術を必要とするので、加工コストが高くなる。加工コストが高くなっても加工ができればよいが、例えば、直径が数10cmの磁性ステンレス鋼の発熱体に直径数cm〜数mmの貫通細孔を数10個、数10cmの長さ加工する必要がある等の場合は、加工できないこともある。
【0005】
この発明は、このような不都合を解消するため、誘導加熱式流体加熱装置に用いられる加熱体が、特殊な加工技術を必要としないで容易に加工でき、安価に製作することが可能な誘導加熱式流体加熱装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を達成するため、この発明は、流体の流通される配管に結合される非金属材で形成した加熱管と、この加熱管内に嵌挿され流体を流通させるための流通路の設けられた誘導加熱材で形成した発熱体と、前記加熱管の外周に巻装され前記発熱体を誘導加熱する加熱コイルとを備えてなる誘導加熱式流体加熱装置において、前記加熱体を誘導加熱材で形成された細管を所要本数束ねて構成したことを特徴とする。
【0007】
そして、前記細管としては円管を、そして磁性を有するステンレス鋼製の円管を使用するのがよい。
【0008】
また、この発明の流体加熱装置は、水蒸気の加熱に用いるのに適している。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、流体の流通される配管の途中設けた非金属材で形成した加熱管と、この加熱管内に設置され流体を流通させるための流通路が多数設けられた誘導加熱材で形成した発熱体と、前記加熱管の外周に巻装され前記発熱体を誘導加熱する加熱コイルとを備えてなる誘導加熱式流体加熱装置おいて、前記加熱体を誘導加熱材で形成された細管を複数束ねて構成しているので、発熱体は、流体の流通路となる細管を所定の長さに切断したものを所要本数束ねるだけで構成できることから、最も加工技術の要求される穿孔加工が不要となり、発熱体を容易かつ安価に製作することができる。また、発熱体を構成する細管を円管とした場合は、隣接する細管との間に互いに接触しない空所が発生し、この空所にも流体を流すことができるので、発熱体における細管は、内周面および外周面で流体との熱交換を行うようになるため、熱交換面積が拡がり加熱効率を高めることができる効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【0011】
図1は、この発明の実施例の構成を示す部分的に切断した縦断面図である。
【0012】
図1において、10は誘導加熱式流体加熱装置である。この流体加熱装置10は、流体を供給する配管に結合される非金属材で形成された断面円形の加熱管14と、この加熱管14の外周に断熱材16を介して巻装された加熱コイル12と、この加熱コイル12に高周波電力を供給する高周波電源13と、加熱管14内に嵌挿された磁性材で形成した発熱体15とで構成される。加熱管14が金属材で構成されると、これに誘導電流が流れ発熱体15の磁束密度が減少し、結果として発熱体15に発熱量が減少する。さらに、加熱管14では外径側で発熱するため、この部分の発熱は外部に逃げやすく、結果的に発熱効率は減少する。
【0013】
発熱体15は、この発明にしたがって、詳細を図2に示すように断面が円形の磁性材で形成された細管15aを所要本数、加熱管14内に収まるように円形に束ねて構成する。発熱体15の材質が非磁性と磁性のステンレスでは、例えば電源13の運転周波数が20kHzとすると、非磁性では表面から10mm位の厚みで、磁性では0.3mm位の厚みに誘導電流が分布するため、磁性の方が発熱に優れる。よって、磁性の方が望ましい。
【0014】
細管15aは、磁性ステンレス鋼製パイプ等の円管を所定の長さに切断したものを、集積密度を高めるために相互に接触させて所要本数束ね、必要により図示しない結束帯などにより結束する。このとき、各細管15aの周囲にも部分的に相互に接触しない部分が空所Sbとして残る。
【0015】
このように所定長さの細管15aを所要本数束ねて構成した発熱体15を、加熱管14に嵌挿すると図2に示すように、細管15aの内部に本来的に形成された内部空所Saと、細管15aを束ねたとき各細管の外周に形成される外部空所Sbとが発熱体15を貫通する流体の流通路となる。
【0016】
したがって、加熱管14の一端から流体が供給されると、供給された流体は、加熱管14内の発熱体15の各細管15a内の内部空所Saによる流通路と各細管15a間に形成された外部空所Sbによる流通路とを通って加熱管14の他端から流出する。
【0017】
このように構成された流体加熱装置において、加熱コイル12に高周波電源13から高周波電力を供給すると、加熱コイル12が高周波磁界を発生し、この磁界による電磁誘導作用により磁性体で形成された発熱体15の細管15aのそれぞれに渦電流や誘導電流が流れ、この電流によって細管15aが発熱する。加熱管14の一端から供給された流体が発熱体15の細管の内部空所Saによる流通路と外部空所Sbによる流通路を流通する間に各細管が発生する熱で加熱され、昇温されて加熱管14の他端から流出する。
【0018】
高周波電源13から供給する電力の周波数が低かったり、発熱体15の細管15aの厚さが薄かったりすると加熱効率が低下することがあるが、この場合には、細管を磁性材で形成することにより、誘導電流の浸透深さが浅くなり細管の表層を誘導電流が流れるようになり加熱効率を高めることができる。
【0019】
この発明によれば、加熱管内に設ける発熱体を、中実の材料に多数の細孔を穿孔して形成するのではなく、予め内部に貫通孔を備えた細管を所定長さに切断したものを所要本数束ねて形成するので、精密加工技術を必要とする穿孔加工が不要となる分、製作が容易になり、製作コストも低減される。また、発熱体の細管と流体とが細管の内周面だけでなく外周面とも接触して、熱伝達を行うので流体の加熱効率を高くできる。さらに、発熱体の熱容量が小さくできるので、出口側の流体温度の制御を迅速に行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明の流体加熱装置は、蒸気発生装置で発生された水蒸気を再加熱して過熱蒸気を生成するのに利用すると、電気で加熱するので過熱蒸気の温度を精密にコントロールすることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例の構成を示す部分的に切断した縦断面図である。
【図2】この発明に使用する発熱体の平面断面図である。
【図3】従来の誘導加熱式流体加熱装置の示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10:誘導加熱式流体加熱装置
12:加熱コイル
13:高周波電源
14:加熱管
15:発熱体
15a:細管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流通される配管に結合される非金属材で形成した加熱管と、この加熱管内に嵌挿され流体を流通させるための流通路の設けられた誘導加熱材で形成した発熱体と、前記加熱管の外周に巻装され前記発熱体を誘導加熱する加熱コイルとを備えてなる誘導加熱式流体加熱装置において、前記発熱体を誘導加熱材で形成された細管を所要本数束ねて構成したことを特徴とする誘導加熱式流体加熱装置。
【請求項2】
前記細管を断面が円形の円管としたことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱式流体加熱装置。
【請求項3】
前記細管を磁性を有するステンレス鋼で形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の誘導加熱式流体加熱装置。
【請求項4】
前記流体が水蒸気であることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の誘導加熱式流体加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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