説明

誘導加熱調理容器、及び調理セット

【課題】冷凍又は冷蔵された食品などの加熱対象を市場に流通させる際の包装容器として使用することができるとともに、これを購入した消費者は、そのまま市販の電磁調理器により蒸し器として手軽に、かつ、安全に利用でき、さらに、種類の異なる複数の食材を小分けに収容して、種々の蒸し料理を簡易に提供することができる誘導加熱調理容器、及びそのような誘導加熱調理容器に食材を収容してなる調理セットを提供する。
【解決手段】高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体30が底部21側に取り付けられた蒸気発生容器20の開口部を覆うトレー25と、トレー25上に配置される個別容器40の底面とに所定の配列パターンで蒸気孔25a,41aを穿設するとともに、トレー25上に個別容器40を配置したときに、トレー25側の蒸気孔25aと個別容器40の底面側の蒸気孔41aとを連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルにより発生する高周波磁界によって渦電流が誘起され、そのジュール熱により発熱する誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱調理容器、及びそのような誘導加熱調理容器に食材を収容してなる調理セットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス機器が主流であった加熱調理機器に代わって、一般に、電磁調理器と称される加熱調理機器が、安全性、清潔性、利便性、経済性などの観点から、飲食業などにおける業務用のみならず、一般家庭においても広く普及するようになってきている。
【0003】
しかしながら、この種の電磁調理器は、内部に備えた電磁誘導加熱コイルにより高周波磁界を発生させ、誘起された渦電流によって生じるジュール熱により加熱対象物を加熱するというものである。このため、炎を使わずに加熱調理を行うことができる反面、その原理上、使用できる調理器具が限られてしまい、鉄、鉄ホーローなどの磁性金属からなる専用の調理器具を用いなければならないという不利があった。
【0004】
このような状況下、上記した電磁調理器の不利を解消するものとして、例えば、特許文献1には、蒸し鍋用土鍋の底に、発熱体としてアルミニウムや銀の薄い金属層を配して電磁調理器で蒸し料理ができるようにした土鍋が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−238738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、食のインスタント化が進み、電子レンジで加熱するだけで食することができるようになっている種々の食品が、冷凍又は冷蔵されて市場に流通している。このような流通形態において、包装容器をそのまま調理容器として使用できれば便利である。そのなかでも、特に、シューマイに代表されるような蒸し料理にあっては、本来の風味を損なわないためにも、電子レンジで加熱するのではなく、蒸気により加熱するのが好ましい。
【0007】
このため、電磁調理器により包装容器がそのまま蒸し器として利用できると非常に手軽で、便利であるが、特許文献1にあるような蒸し鍋用土鍋は、包装容器として兼用するには不向きである。
さらに、上記のような包装容器として兼用することができる調理容器において、種類の異なる複数の食材を小分けにして収容し、消費者は、好みに応じて任意の組み合わせで食材を購入して、これらを同時に蒸して加熱調理できれば、種々の蒸し料理を味わうことができるようになり、これによって流通可能な食品の範囲がより拡大することが期待できるものの、そのような調理容器は未だ上市されていない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、冷凍又は冷蔵された食品などの加熱対象を市場に流通させる際の包装容器として使用することができるとともに、これを購入した消費者は、そのまま市販の電磁調理器により蒸し器として手軽に、かつ、安全に利用でき、さらに、種類の異なる複数の食材を小分けに収容して、種々の蒸し料理を簡易に提供することができる誘導加熱調理容器、及びそのような誘導加熱調理容器に食材を収容してなる調理セットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る誘導加熱調理容器は、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体が、底部側に取り付けられた蒸気発生容器と、前記蒸気発生容器の開口部を覆うトレーと、前記トレー上に配置される一つ以上の個別容器と、を備え、前記トレーと、前記個別容器の底面とに、所定の配列パターンで蒸気孔を穿設するとともに、前記トレー上の所定の位置に、前記個別容器を配置したときに、前記トレーに穿設された蒸気孔と、前記個別容器の底面に穿設された蒸気孔とが連通するようにした構成としてある。
【発明の効果】
【0010】
上記構成とした本発明によれば、個別容器に、種々の食材を小分けにして収容して蒸すことにより、種々の蒸し料理を簡易に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
[第一実施形態]
まず、本発明に係る誘導加熱調理容器の第一実施形態について説明する。
なお、図1は、本実施形態に係る誘導加熱調理容器の基本構成を説明するための概略断面図である。
【0013】
図1に示す加熱調理容器1は、蒸気発生容器20を備えており、この蒸気発生容器20の底部21側には、誘導加熱発熱体30が取り付けられている。
誘導加熱発熱体30としては、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルから発生する高周波磁界により渦電流が誘起され、その電気抵抗によりジュール熱が生じて発熱し得る導電性材料、例えば、アルミニウム,ニッケル,金,銀,銅,白金,鉄,コバルト,錫,亜鉛など、又はこれらの合金、あるいは、導電性を付与した樹脂フィルムや紙などの導電性材料を用いることができる。
より具体的には、例えば、金属材料としてアルミニウムを用いる場合、誘導加熱発熱体3は、0.10〜100μm程度の厚みのアルミニウム箔を用いて形成することができる。
【0014】
なお、誘導加熱発熱体30を除く、蒸気発生容器20及び後述する他の構成部材は、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの合成樹脂材料、さらには、紙や、ガラスなど、種々の汎用の非磁性材料にて形成することができる。これらの材料を利用することにより、電磁調理器で使用可能な誘導加熱調理容器1を安価に提供することが可能となる。
【0015】
蒸気発生容器20には、水50が収容されるようになっており、底部21の周りを囲むようにして側壁部22が立設されている。蒸気発生容器20の底部21は、円形状、正方形状、矩形状、他の多角形状など、任意の形状とすることができる。蒸気発生容器20に水50を収容したときに、収容された水50に誘導加熱発熱体30が浸されるようになっていれば、蒸気発生容器20の具体的な形態や、誘導加熱発熱体30の取り付け手段は特に限定されない。
【0016】
また、加熱調理容器1は、一般に、市販の電磁調理器の上に置いて使用されることから、蒸気発生容器20の大きさは、使用する電磁調理器が備える加熱コイルの大きさに応じて設定することができる。例えば、市販の家庭用電磁調理器が備える一般的な加熱コイルは、内径5cm程度、外径20cm程度であり、業務用のものであれば、もっと大きいものもあるが、使用が想定される電磁調理器に応じて大きさを適宜定めておくものとする。
【0017】
蒸気発生容器20の開口部側には、側壁部22の内周縁の全周に沿って段部23が設けられている。そして、多数の蒸気孔25aが穿設されたトレー25が、蒸気発生容器20の開口部を覆うようにして、段部23に支持されている。これにより、蒸気発生容器20に収容された水50に浸された状態で誘導加熱発熱体30を発熱させ、水50を沸騰させると、水50の沸騰によって発生した蒸気が、トレー25に穿設された蒸気孔25aから噴き出すようになっている。
【0018】
また、加熱調理容器1は、調理対象となる種々の食材を小分けに収容できるようにした複数の個別容器40を備えている。個別容器40は、容器本体41と蓋体42とを有しており、容器本体41の底面には蒸気孔41aが穿設され、蓋体42の天面には蒸気孔42aが穿設されている。そして、各個別容器40は、図示するように、トレー25の上に横に並べて配置するとともに、上下に重ねても配置できるようになっている。
なお、図1では、個別容器40内に収容された調理対象の図示を省略している。
【0019】
ここで、個別容器40の具体的な形態は、図示する例には限定されない。収容する調理対象に応じて、又は使い勝手やデザイン性などを考慮して、容器本体41の底面を、円形状、扇形状、三角形状、正方形状、矩形状、他の多角形状とするなど、任意の形状とすることができる。さらに、全ての個別容器40を同じ高さとせずに、異なる高さの個別容器40を混在させて使用することもでき、例えば、二つ分の個別容器40を連結したものなどのように、大きさを異ならせた個別容器40を混在させて使用することもできる。
【0020】
個別容器40の容器本体41の底面に穿設される蒸気孔41aは、トレー25の蒸気孔25aから噴き出す蒸気が個別容器40内に導入されるように、トレー25に穿設される蒸気孔25aと同一の配列パターンで穿設してある。
すなわち、個別容器40をトレー25上に横に並べて配置するにあたり、個別容器40が配置されるトレー25上の位置を定めておくとともに、当該位置に穿設された蒸気孔25aと、当該位置に配置された個別容器40の容器本体41の底面に穿設された蒸気孔41aとが連通するように、個別容器40がトレー上に配置される位置と、トレー25に穿設された蒸気孔25aの配列パターンと、個別容器40の容器本体41の底面に穿設される蒸気孔41aの配列パターンとを関連づけて、これらを設定する。
このようにすることで、トレー25に穿設された蒸気孔25aから噴き出す蒸気が個別容器40内に導入され、個別容器40内に収容された調理対象が蒸気に蒸されて、加熱調理できるようにしてある。
【0021】
さらに、図示する例では、個別容器40の容器本体41の底部に穿設された蒸気孔41aと、蓋体42の天面に穿設される蒸気孔42aとを、同一の配列パターンで穿設している。そして、個別容器40を上下に重ねて配置したときに、下方に位置する個別容器40の蓋体42の天面に穿設された蒸気孔42aと、上方に位置する個別容器40の容器本体41の底面に穿設された蒸気孔41aとが連通するようになっている。
このようにすることで、下方に位置する個別容器40内に導入された蒸気が、当該個別容器40内を満たした後に、上方に位置する個別容器40内へと導かれ、上下に積み重ねられた各個別容器40内に収容された調理対象を同時に蒸すことができるようになっている。
【0022】
個別容器40をトレー25上に配置するにあたっては、位置決め手段を設けることができる。
ここで、図2〜図5は、本実施形態に係る誘導加熱調理容器をより具体的に示す説明図であり、図2は、トレー25上に四つの個別容器40を配置した状態を示す平面図であり、図3は、図2に示す状態から個別容器40を取り除いた状態を示す平面図であり、図4は、図3に示す状態からトレー25を取り外した状態を示す平面図である。また、図5は、図2のA−A断面図である。
【0023】
これらの図に示す例では、縦横二つずつ、合計四つの個別容器40がトレー25上に横に並べて配置されている。そして、図3及び図5に示すように、それぞれの個別容器40が配置されるトレー25上の位置には、傾斜部60aと段差部61aとを周方向に沿って交互に等ピッチで放射状に配してなる凹凸形状が形成されている。一方、個別容器40の容器本体41の底面には、トレー25側に形成された凹凸形状と係合する同様の凹凸形状が形成されており、これらの凹凸形状を係合させることで、個別容器40の位置決めがなされるようにしている。
さらに、図2及び図5に示すように、個別容器40の蓋体42の天面にも、トレー25に形成した凹凸形状と同一の凹凸形状が、傾斜部60bと段差部61bとによって形成されており、個別容器40を上下に重ねるときに、互いの凹凸形状が係合することによって位置決めがなされるようにしている。
【0024】
このような位置決め手段を設けることで、トレー25上に個別容器40を配置したときに、トレー25側の蒸気孔25aと個別容器40側の蒸気孔41aとを容易に位置合わせできるようになる。また、個別容器40を上下に重ねるときにも、下側に位置する個別容器40側の蒸気孔42aと、上側に位置する個別容器40側の蒸気孔41aとの位置合わせが容易になる。
また、凹凸形状を互いに係合させているので、トレー25上に個別容器40を配置した状態で搬送する際に、個別容器40がトレー25からズレ落ちてしまうのを防止することもできる。このような個別容器40のトレー25からのズレ落ちを有効に防止する上で、傾斜部と段差部とが交差してできる稜線は、図示するような曲線状とするのが好ましいが、直線状であっても個別容器40のズレ落ちは十分に防止できる。
【0025】
また、図示する例では、トレー25及び個別容器40の蓋体42に上記のような位置決め手段を設けるにあたり、傾斜部60a,60bと段差部61a,61bとからなる凹凸形状の中央に凹陥部62a,62bを設け、傾斜部60a,60bと段差部61a,61bがこの凹陥部62a,62bの周囲に隆起して形成されるようにしてある。そして、蒸気孔25a,42aは、傾斜部60a,60bの所定の位置に、周方向に沿って一つ置きに穿設されるとともに、凹陥部62a,62bにも穿設されている(図2及び図3参照)。
一方、個別容器40の容器本体41の底面にも、その中央を容器内方に凹ませることによって、同様の凹陥部が設けられている。そして、この凹陥部の周囲に傾斜部と段差部を相対的に隆起させて形成するとともに、蒸気孔25a,42aと同一の配列パターンで、蒸気孔41aを穿設している。
【0026】
このようにすることで、トレー25の凹陥部62aに形成された蒸気孔25aから噴き出す蒸気は、常に、個別容器40の容器本体41の底面の凹陥部62bに設けた蒸気孔41aから個別容器40内に導入されるところ、個別容器40を周方向に沿って一ピッチ(すなわち、傾斜部一つ分)ずらして回転させると、傾斜部に設けた蒸気孔は互いに塞がれて、個別容器40内に導入される蒸気の量を調整することができる。
なお、上下に重ねられた個別容器40どうしでも、同様にして、下方に位置する個別容器40から、上方に位置する個別容器40に導入される蒸気の量を調整することができる。また、個別容器40をトレー25上に配置したときや、個別容器40を上下に重ねたときに、トレー25側又は個別容器40の蓋体42側に設けた凹陥部62a,62bと、個別容器40の容器本体41側に設けた凹陥部との間には、一定の空隙が形成される。このため、これらの凹陥部に穿設される蒸気孔どうしの配列パターンにずれがあっても、個別容器40内に蒸気を導入することの妨げにはならない。
【0027】
以上のような加熱調理容器1を使用するに際しては、個別容器40に調理対象となる食材を小分けに収容して、トレー25上の所定の位置に個別容器40を配置する。個別容器40は、その数に応じて、トレー25上に横に並べて配置した後、さらに上下に重ねて配置することができるが、個別容器40に収容された調理対象に必要とされる加熱の程度によって、上下の位置関係を適宜調整することができる。
【0028】
次いで、蒸気発生容器20に収容された水50に誘導加熱発熱体30が浸された状態で電磁調理器を作動させ、誘導加熱発熱体30を発熱させることにより、水50を加熱、沸騰させる。すると、水50の沸騰に伴って発生した蒸気が、トレー25に穿設された蒸気孔25aから噴き出して、トレー25上に配置された個別容器40内に導入される。これによって、各個別容器40内に収容された調理対象が蒸気で蒸されて、種々の蒸し料理を簡易に提供することができる。
このとき、個別容器40が上下にも重ねられている場合には、下方に位置する個別容器40内に導入された蒸気が、当該個別容器40内を満たした後に、上方に位置する個別容器40内へと導かれ、上下に積み重ねられた各個別容器40内に収容された調理対象を同時に蒸すことができる。
【0029】
本発明に係る誘導加熱調理容器は、上記のようにして、蒸し料理を簡易に提供できるものであるが、市場におけるより具体的な流通形態としては、例えば、次のようなものが考えられる。
すなわち、調理済みの惣菜や、生魚、生シュウマイ等の半調理品、饅頭等の甘味類、炊飯済みの冷や飯など、蒸気で蒸すだけで食することができる食材を調理対象として、これらの調理対象を個別容器40に収容して店頭で販売する。
そして、これらを購入した者は、家に持ち帰るか又は店内で、別途用意された蒸気発生容器20のトレー25上に、購入した個別容器40を配置するだけで、電磁調理器により蒸し料理を簡易に調理することができ。
【0030】
このように、本発明に係る誘導加熱調理容器は、個別容器40に種々の調理対象を収容しておくことで、電磁調理器により簡易に種々の蒸し料理を味わうことができる調理セットとして市場に流通させることもできる。
そして、このような調理セットとして市場に流通させるにあたり、調理対象は個別容器40に小分けに収容されているので、従来の市販の弁当のように、搬送時に食材が偏ってしまうという心配がない。また、購入者は、好みに応じて種々の組み合わせで食材を選ぶことができ、選択の自由度が格段に高い。
なお、本発明において、調理対象は個別容器40に小分けに収容されていることから、電磁調理器が使用できない状況にあっても、購入者は、個別容器40を取り分けて、例えば、電子レンジで加熱するなど、代わりの手段を用いて調理対象を加熱調理することも可能である。
【0031】
[第二実施形態]
次に、本願発明に係る誘導加熱調理容器の第二実施形態について説明する。
なお、図6は、本実施形態に係る誘導加熱調理容器の基本構成を説明するための概略断面図である。
【0032】
前述した第一実施形態では、トレー25上に個別容器40だけを配置しているが、本実施形態では、個別容器40とともに、湯煎容器45をトレー25に保持させて、蒸し料理と同時に、スープ、ソース、ルー、酒などの液状のものを湯煎することができるようにしてある。
【0033】
このため、本実施形態にあっては、トレー25の一部を陥没させて受け穴26を形成し、この受け穴26を湯煎容器保持部としている。そして、受け穴26の側面には、図示するような通水孔27が設けられており、受け穴26の内側と外側とで、水50の水位が同じになるようになっている。
【0034】
このような受け穴26は、水50の注水口としても利用できる。このため、図7に示すように、受け穴26の内面には、ケガキ線などで水位線51を設けておくのが好ましい。水位線51を設けることで、必要量の水50を注水する作業が容易になる。
なお、受け穴26を注水口とすると、水50を注水する際にトレー25を取り外す必要がなくなる。このため、トレー25を蒸気発生容器20に固着することにより、使用者の目に、誘導加熱発熱体30が触れにくくすることができる。
【0035】
また、湯煎容器保持部は、図8に示すような挿通孔28とすることもできる。この場合、湯煎容器45には、図示するような段部45aを形成しておく。これによって、段部45aが挿通孔28の周縁部分に支持されて、挿通穴28からの蒸気漏れを防ぎつつ、トレー25に湯煎容器45を保持させることができる。
【0036】
以上のような湯煎容器保持部をトレー25に形成するにあたり、受け穴26や挿通穴28の周囲には、前述したような凹凸形状からなる位置決め手段を設けておくこともできる。このようにすることで、湯煎容器45の代わりに、個別容器40を配置させることができる。
【0037】
以上、本発明に係る誘導加熱調理容器について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0038】
例えば、誘導加熱発熱体30には、選択的に過剰に発熱するようにされた部位を形成しておくことで、沸騰する水50の水位が下がって誘導加熱発熱体30が水面上に露出したときに、当該部位を他の部位に優先して破断させることができる。このようにすれば、誘導加熱発熱体30の破断により、安全機構が働いて電磁調理器が停止するため、機器の操作によらずに、所定時間経過後に自動的に被加熱物の加熱を終わらせることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明は、冷凍又は冷蔵された食品などの包装容器として使用することができるとともに、市販の電磁調理器により蒸し器として手軽に利用することができる誘導加熱調理容器、及びそのような誘導加熱調理容器に食材を収容してなる調理セットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る誘導加熱調理容器の第一実施形態の基本構成を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明に係る誘導加熱調理容器の第一実施形態を示す平面図である。
【図3】図2に示す状態から個別容器を取り除いた状態を示す平面図である。
【図4】図3に示す状態からトレー25を取り外した状態を示す平面図である。
【図5】図2のA−A断面図である。
【図6】本発明に係る誘導加熱調理容器の第二実施形態の基本構成を説明するための概略断面図である。
【図7】第二実施形態におけるトレーの一例を示す説明図である。
【図8】第二実施形態の変形例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 加熱調理容器
20 蒸気発生容器
25 トレー
25a 蒸気孔
30 誘導加熱発熱体
40 個別容器
41a 蒸気孔
42a 蒸気孔
50 水
60a,60b 傾斜部
61a,61b 段差部
62a,62b 凹陥部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体が、底部側に取り付けられた蒸気発生容器と、
前記蒸気発生容器の開口部を覆うトレーと、
前記トレー上に配置される一つ以上の個別容器と、
を備え、
前記トレーと、前記個別容器の底面とに、所定の配列パターンで蒸気孔を穿設するとともに、
前記トレー上の所定の位置に、前記個別容器を配置したときに、前記トレーに穿設された蒸気孔と、前記個別容器の底面に穿設された蒸気孔とが連通するようにしたことを特徴とする誘導加熱調理容器。
【請求項2】
前記個別容器が配置される前記トレー上の所定の位置に、傾斜部と段差部とを周方向に沿って交互に等ピッチで放射状に配してなる凹凸形状を形成するとともに、
前記個別容器の底面には、前記トレーに形成された凹凸形状と係合する凹凸形状を形成した請求項1に記載の誘導加熱調理容器。
【請求項3】
前記トレーに形成された前記凹凸形状の中央に凹陥部を設けるとともに、
前記個別容器の底面に形成された前記凹凸形状の中央にも凹陥部を設け、
少なくとも前記トレー側の凹陥部と前記個別容器の底面側の凹陥部の両方に蒸気孔が穿設されるようにして、
前記トレーに穿設される蒸気孔と、前記個別容器の底面に穿設される蒸気孔とを同一の配列パターンとした請求項2に記載の誘導加熱調理容器。
【請求項4】
前記個別容器の天面に、所定の配列パターンで蒸気孔を穿設するとともに、
前記個別容器を上下に重ねて配置したときに、前記個別容器の底面に穿設された蒸気孔と、前記個別容器の天面に穿設された蒸気孔とが連通するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理容器。
【請求項5】
前記個別容器の天面に、傾斜部と段差部とを周方向に沿って交互に等ピッチで放射状に配してなる凹凸形状を形成するとともに、
前記個別容器の底面には、前記個別容器の天面に形成された凹凸形状と係合する凹凸形状を形成した請求項4に記載の誘導加熱調理容器。
【請求項6】
前記個別容器の天面に形成された前記凹凸形状の中央に凹陥部を設けるとともに、
前記個別容器の底面に形成された前記凹凸形状の中央にも凹陥部を設け、
少なくとも前記個別容器の天面側の凹陥部と前記個別容器の底面側の凹陥部の両方に蒸気孔が穿設されるようにして、
前記トレーに穿設される蒸気孔と、前記個別容器の底面に穿設される蒸気孔とを同一の配列パターンとした請求項5に記載の誘導加熱調理容器。
【請求項7】
前記傾斜部と前記段差部とが交差してできる稜線が、曲線状である請求項2,3,5又は6のいずれか1項に記載の誘導加熱調理容器。
【請求項8】
前記トレーに、湯煎容器保持部を設けた請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘導加熱調理容器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の誘導加熱調理容器が備える前記個別容器に、調理対象を小分けに収容したことを特徴とする調理セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−34337(P2009−34337A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201202(P2007−201202)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】